(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】流体制御装置、流体制御システム、流体制御方法、及び、流体制御装置用プログラム
(51)【国際特許分類】
G05D 7/06 20060101AFI20240119BHJP
【FI】
G05D7/06 B
(21)【出願番号】P 2020044065
(22)【出願日】2020-03-13
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000127961
【氏名又は名称】株式会社堀場エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【氏名又は名称】上村 喜永
(72)【発明者】
【氏名】赤土 和也
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-020781(JP,A)
【文献】特開2020-013269(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下流側が供給対象と連通する第1流路と、
前記第1流路と並行に設けられ、下流側が前記第1流路と同一の前記供給対象と連通する第2流路と、
前記第1流路上に設けられた流体抵抗と、
前記第1流路上において前記流体抵抗よりも上流側に設けられた第1圧力センサと、
前記第1流路上において前記第1圧力センサよりも上流側に設けられた第1制御バルブと、
前記第2流路上に設けられた第2制御バルブと、
前記第1制御バルブ及び前記第2制御バルブを制御する制御機構と、を備え、
前記制御機構が、
前記第1流路上にある前記第1圧力センサで測定される第1圧力に基づいて、第1圧力が目標バースト圧力となるように前記第2流路上にある前記第2制御バルブを制御
した後、前記第1制御バルブによる流量フィードバック制御に切り替えることを特徴とする流体制御装置。
【請求項2】
前記制御機構が、
第1圧力が目標バースト圧力となった以降で前記供給対象から流体が流出している状態において、目標一定流量となるように前記第1流路上にある前記第1制御バルブを制御する請求項1記載の流体制御装置。
【請求項3】
前記第1流路上において前記流体抵抗よりも下流側に設けられた第2圧力センサをさらに備え、
前記制御機構が、
前記第1圧力センサで測定される第1圧力と前記第2圧力センサで測定される第2圧力とに基づいて前記第1流路を流れる流体の流量を算出する流量算出部と、
前記第1圧力センサで測定される第1圧力と、前記目標バースト圧力の偏差が小さくなるように前記第2制御バルブを制御する第1圧力フィードバック制御部と、
前記流量算出部で算出される測定流量と、
目標一定流量との偏差が小さくなるように前記第1制御バルブを制御する流量フィードバック制御部と、を具備し、
前記流量フィードバック制御部が、第1圧力が目標バースト圧力となってから動作するように構成されている請求項1又は2記載の流体制御装置。
【請求項4】
前記第1圧力フィードバック制御部が、前記第2制御バルブを制御している間、前記第1制御バルブが全閉状態に保たれており、
前記流量フィードバック制御部が、前記第1制御バルブを制御している間、前記第2制御バルブが全閉状態に保たれている請求項3記載の流体制御装置。
【請求項5】
前記第1圧力フィードバック制御部が、第1圧力が目標バースト圧力となった以降で前記供給対象から流体が流出していない状態において、第1圧力が目標バースト圧力よりも低く、目標一定流量に相当する目標維持圧力となるように前記第2制御バルブを制御する請求項3又は4記載の流体制御装置。
【請求項6】
前記制御機構が、
前記第1圧力フィードバック制御部による前記第2制御バルブの制御が行われる前において、前記第2圧力センサで測定される第2圧力に基づいて、前記第2制御バルブを制御する第2圧力フィードバック制御部をさらに備え、
前記第2圧力フィードバック制御部による前記第2制御バルブの制御によって第1圧力が目標バースト圧力よりも高い圧力になった以降において、前記第1圧力フィードバック制御部が、第1圧力が目標バースト圧力となるように前記第2
制御バルブを制御する請求項3乃至5いずれかに記載の流体制御装置。
【請求項7】
前記第1圧力フィードバック制御部が、第1圧力、及び、第2圧力に基づいて算出される前記第1制御バルブ及び前記
第2制御バルブよりも下流側の流路と前記供給対象を含むチャージ容積に流入した流体の質量が、目標バースト圧力に基づいて算出される目標質量となった場合に、第1圧力が目標バースト圧力となるように前記第2
制御バルブの制御を開始する請求項6記載の流体制御装置。
【請求項8】
前記第1流路と前記第2流路が規格化された大きさを有する1つのブロック内に形成された請求項1乃至7いずれかに記載の流体制御装置。
【請求項9】
請求項1乃至8いずれかに記載の流体制御装置と、
前記供給対象の下流側に設けられた開閉バルブと、
前記開閉バルブを制御する開閉バルブ制御器と、を備え、
前記制御機構は、
前記第1圧力センサで測定される第1圧力と、前記目標バースト圧力の偏差が小さくなるように前記第2制御バルブを制御する第1圧力フィードバック制御部を備え、
前記開閉バルブ制御器が、前記第1圧力フィードバック制御部による前記第2
制御バルブの制御によって第1圧力が目標バースト圧力となった以降に前記開閉バルブを開放するように構成されている流体制御システム。
【請求項10】
下流側が
供給対象と連通する第1流路と、前記第1流路と並行に設けられ、下流側が前記第1流路と同一の前記供給対象と連通する第2流路と、前記第1流路上に設けられた流体抵抗と、前記第1流路上において前記流体抵抗よりも上流側に設けられた第1圧力センサと、前記第1流路上において前記第1圧力センサよりも上流側に設けられた第1制御バルブと、前記第2流路上に設けられた第2制御バルブと、を備えた流体制御装置を用いた流体制御方法であって、
前記第1流路上にある前記第1圧力センサで測定される第1圧力に基づいて、第1圧力が目標バースト圧力となるように前記第2流路上にある前記第2制御バルブを制御
した後、前記第1制御バルブによる流量フィードバック制御に切り替えることを特徴とする流体制御方法。
【請求項11】
下流側が供給対象と連通する第1流路と、前記第1流路と並行に設けられ、下流側が前記第1流路と同一の前記供給対象と連通する第2流路と、前記第1流路上に設けられた流体抵抗と、前記第1流路上において前記流体抵抗よりも上流側に設けられた第1圧力センサと、前記第1流路上において前記第1圧力センサよりも上流側に設けられた第1制御バルブと、前記第2流路上に設けられた第2制御バルブと、を備えた流体制御装置に用いられるプログラムであって、
前記第1流路上にある前記第1圧力センサで測定される第1圧力に基づいて、第1圧力が目標バースト圧力となるように前記第2流路上にある前記第2制御バルブを制御
した後、前記第1制御バルブによる流量フィードバック制御に切り替える制御機構としての機能をコンピュータに発揮させることを特徴とする流体制御装置用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体製造装置において各種ガスの圧力又は流量を制御するために用いられる流体制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体の成膜装置の一種である原子層堆積装置(ALD(Atomic Layer Deposition))においては、成分ガスと水蒸気ガスを交互に短時間だけ導入して、オングストローム単位の膜厚で成膜を実現する事が意図されている。
【0003】
このような用途に適した流体制御装置を本出願人は既に出願している(特許文献1参照)。この流体制御装置は、高速でオンオフが切り替えられる開閉バルブの上流側に設けられるものであって、1つの制御バルブ、圧力式の流量センサ、及び、制御機構を備えたものである。開閉バルブが閉止されるオフの間に制御機構は、まず流量センサを構成する上流側の圧力センサの測定圧力が目標バースト圧力となるように圧力フィードバック制御で制御バルブを制御する。その後開閉バルブが開放されるオンとなり、バースト流が発生して下流側の圧力センサの測定圧力が所定値まで低下した時点で制御機構は、流量センサで測定される測定流量が目標一定流量で維持されるように流量フィードバック制御で制御バルブを制御する。このような制御により、開閉バルブがオンとなるたびにほぼ同じバースト流を実現して決められた流量を供給しつつ、バースト流が発生し終わってからは流量フィードバック制御により一定流量を保ち続けることができる。
【0004】
ところで、上記のような制御において開閉バルブがオン期間中に供給される流体の流量の変動等をさらに低減し、流量の制御精度をさらに向上させることが求められつつある。
【0005】
このような課題について本願発明者が鋭意検討を行ったところ、1つの制御バルブにおいて圧力フィードバック制御から流量フィードバック制御に切り替えることで、制御の切替点で流量が変動する可能性があり、改善の余地があることを初めて見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述したような問題に鑑みてなされたものであり、圧力フィードバック制御から流量フィードバック制御への切替があったとしても供給される流量に変動が生じにくくできる流体制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明に係る流体制御装置は、下流側が供給対象と連通する第1流路と、前記第1流路と並行に設けられ、下流側が前記第1流路と同一の前記供給対象と連通する第2流路と、前記第1流路上に設けられた流体抵抗と、前記第1流路上において前記流体抵抗よりも上流側に設けられた第1圧力センサと、前記第1流路上において前記第1圧力センサよりも上流側に設けられた第1制御バルブと、前記第2流路上に設けられた第2制御バルブと、前記第1制御バルブ及び前記第2制御バルブを制御する制御機構と、を備え、前記制御機構が、前記第1流路上にある前記第1圧力センサで測定される第1圧力に基づいて、第1圧力が目標バースト圧力となるように前記第2流路上にある前記第2制御バルブを制御することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る流体制御方法は、下流側が前記供給対象と連通する第1流路と、前記第1流路と並行に設けられ、下流側が前記第1流路と同一の前記供給対象と連通する第2流路と、前記第1流路上に設けられた流体抵抗と、前記第1流路上において前記流体抵抗よりも上流側に設けられた第1圧力センサと、前記第1流路上において前記第1圧力センサよりも上流側に設けられた第1制御バルブと、前記第2流路上に設けられた第2制御バルブと、を備えた流体制御装置を用いた流体制御方法であって、前記第1流路上にある前記第1圧力センサで測定される第1圧力に基づいて、第1圧力が目標バースト圧力となるように前記第2流路上にある前記第2制御バルブを制御することを特徴とする。
【0010】
このようなものであれば、前記第2流路に設けられた前記第2制御バルブによって前記第1流路に設けられた前記第1圧力センサで測定される第1圧力が目標バースト圧力となるように圧力フィードバック制御を行うので、前記供給対象に圧力がチャージされた後に、前記供給対象から流出する流体の流量を一定に保つための制御を前記第2制御バルブではなく、前記第1制御バルブで行う事が可能となる。このため、1つの制御バルブにおいて制御を切り替える場合と比較して制御の切替点における流量の変動等を低減できるようになる。
【0011】
また、供給対象に毎回同じ目標バースト圧力をチャージして、供給対象から流体が流出し始める際のインパルス状のバースト流の流量を毎回ほぼ同じ値にすることができる。
【0012】
前記制御機構が、第1圧力が目標バースト圧力となった以降で前記供給対象から流体が流出している状態において、目標一定流量となるように前記第1流路上にある前記第1制御バルブを制御するものであれば、インパルス状のバースト流が発生した後については、外乱等があってもその流量が維持され、流量制御のロバスト性を高めることができる。
【0013】
前記供給対象から下流側へバースト流が発生した後において、流体の流量を目標一定流量で保つための具体的な制御態様としては、前記第1流路上において前記流体抵抗よりも下流側に設けられた第2圧力センサをさらに備え、前記制御機構が、前記第1圧力センサで測定される第1圧力と前記第2圧力センサで測定される第2圧力とに基づいて前記第1流路を流れる流体の流量を算出する流量算出部と、前記第1圧力センサで測定される第1圧力と、前記目標バースト圧力の偏差が小さくなるように前記第2制御バルブを制御する第1圧力フィードバック制御部と、前記流量算出部で算出される測定流量と、前記目標一定流量との偏差が小さくなるように前記第1制御バルブを制御する流量フィードバック制御部と、を具備し、前記流量フィードバック制御部が、第1圧力が目標バースト圧力となってから動作するように構成されていればよい。
【0014】
前記第1バルブと前記第2バルブとがそれぞれの動作によって相互の制御動作に影響を与えないようにして、圧力フィードバック制御及び流量フィードバック制御の精度をさらに高められるようにするには、前記第1圧力フィードバック制御部が、前記第2制御バルブを制御している間、前記第1制御バルブが全閉状態に保たれており、前記流量フィードバック制御部が、前記第1制御バルブを制御している間、前記第2制御バルブが全閉状態に保たれていればよい。
【0015】
前記制御機構により、第1圧力に基づいた前記第2制御バルブの圧力フィードバック制御から測定流量に基づいた前記第1制御バルブへの流量フィードバック制御へ切り替える際に、前記供給対象から流出する流体の流量に変動が生じにくくし、より制御精度を高められるようにするには、前記第1圧力フィードバック制御部が、第1圧力が目標バースト圧力となった以降で前記供給対象から流体が流出していない状態において、第1圧力が目標バースト圧力よりも低く、目標一定流量に相当する目標維持圧力となるように前記第2制御バルブを制御すればよい。
【0016】
前記流体制御内及び前記供給対象を含む容積内において目標バースト圧力をチャージする際に、チャージ開始当初は前記第2制御バルブが全開とされてより多くの流体が流れ込むようにし、目標バースト圧力に近づいてからは徐々に前記第2制御バルブが閉鎖されるようにして、容積全体を速やかに目標バースト圧力に設定できるようにするには、前記制御機構が、前記第1圧力フィードバック制御部による前記第2制御バルブの制御が行われる前において、前記第2圧力センサで測定される第2圧力に基づいて、前記第2制御バルブを制御する第2圧力フィードバック制御部をさらに備え、前記第2圧力フィードバック制御部による前記第2制御バルブの制御によって第1圧力が目標バースト圧力よりも高い圧力になった以降において、前記第1圧力フィードバック制御部が、第1圧力が目標バースト圧力となるように前記第2バルブを制御すればよい。
【0017】
前述した容積内全体で目標バースト圧力を達成させるのに必要な量よりも多くの流体が流入するのを事前に防ぎつつ、圧力チャージの高速化を実現できるようにするには、前記第1圧力フィードバック制御部が、第1圧力、及び、第2圧力に基づいて算出される前記第1制御バルブ及び前記2制御バルブよりも下流側の流路と前記供給対象を含むチャージ容積に流入した流体の質量が、目標バースト圧力に基づいて算出される目標質量となった場合に、第1圧力が目標バースト圧力となるように前記第2バルブの制御を開始すればよい。
【0018】
圧力フィードバック制御と流量フィードバック制御の切替による流量の変動を低減しつつ、流体制御装置のフットプリントを従来の流体制御装置と同等にコンパクトに構成できるようにするには、前記第1流路と前記第2流路が規格化された大きさを有する1つのブロック内に形成されたものであればよい。
【0019】
特にALD等のような高速のオンオフ制御を繰り返しながら、オン期間に上述したような流量制御を正確に同期させられるようにするには、本発明に係る流体制御装置と、前記供給対象の下流側に設けられた開閉バルブと、前記開閉バルブを制御する開閉バルブ制御器と、を備え、前記開閉バルブ制御器が、前記第1圧力フィードバック制御部による前記第2バルブの制御によって第1圧力が目標バースト圧力となった以降に前記開閉バルブを開放するように構成されている流体制御システムが挙げられる。
【0020】
既存の流体制御装置においてプログラムを更新することにより、本発明に係る流体制御装置と同等の効果が発揮できるようにするには、下流側が供給対象と連通する第1流路と、前記第1流路と並行に設けられ、下流側が前記第1流路と同一の前記供給対象と連通する第2流路と、前記第1流路上に設けられた流体抵抗と、前記第1流路上において前記流体抵抗よりも上流側に設けられた第1圧力センサと、前記第1流路上において前記第1圧力センサよりも上流側に設けられた第1制御バルブと、前記第2流路上に設けられた第2制御バルブと、を備えた流体制御装置に用いられるプログラムであって、前記第1流路上にある前記第1圧力センサで測定される第1圧力に基づいて、第1圧力が目標バースト圧力となるように前記第2流路上にある前記第2制御バルブを制御する制御機構としての機能をコンピュータに発揮させることを特徴とする流体制御装置用プログラムを用いればよい。
【0021】
なお、流体制御装置用プログラムは電子的に配信されるものであってもよいし、CD、DVD、フラッシュメモリ等のプログラム記録媒体に記録されたものであってもよい。
【発明の効果】
【0022】
このように本発明に係る流体制御装置によれば、供給対象と連通する流路として前記第1流路と前記第2流路を備えており、当該第2流路に設けられた前記第2制御バルブで圧力フィードバック制御を行うので、前記供給対象に目標バースト圧力がチャージされた後の制御を前記第1流路に設けられた前記第1制御バルブによる流量フィードバック制御に切り替えることができる。この結果、1つの制御バルブにおいて制御を切り替えた場合と比較して切替点における流量等の変動を低減し、流量制御精度を従来よりもさらに高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1実施形態における流体制御装置、及び、流体制御システムを示す模式図。
【
図2】第1実施形態における開閉バルブのパルス制御動作を示す模式的グラフ。
【
図3】本発明の第1実施形態における流体制御装置のハードウェア部分の詳細な模式図。
【
図4】第1実施形態における開閉バルブの開放前後における各種制御パラメータと第1制御バルブ、及び、第2制御バルブの動作を示すタイミングチャート。
【
図5】第1実施形態における流体制御装置、及び、流体制御システムの動作を示すフローチャート。
【
図6】本発明の第2実施形態における流体制御装置、及び、流体制御システムを示す模式図。
【
図7】第2実施形態における流体制御装置、及び、流体制御システムの動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の第1実施形態に係る流体制御装置100、及び、流体制御システム200について各図を参照しながら説明する。
【0025】
第1実施形態の流体制御システム200は、原子層堆積装置(以下、ALDとも言う)の成膜チャンバに対して各種ガスをパルス制御によって間欠的に供給するものである。例えばALDの成膜チャンバに対しては、プリカーサと呼ばれるTMA等の成分ガスと水蒸気ガスが交互に供給される。このため流体制御システム200は、TMAを供給するための流路と、水蒸気ガスを供給するための流路にそれぞれ1つずつ設けてある。以下の説明では1つの流路に注目して流体制御装置100、及び、流体制御システム200の詳細について説明する。
【0026】
流体制御システム200は、
図1に示すように、流路に設けられた開閉バルブOCVと、流路において開閉バルブOCVよりも上流側に設けられた流体機器モジュールFM、及び、少なくとも前記流体機器モジュールFMの一部を制御する制御機構COMを備えた流体制御装置100と、を備えている。
【0027】
開閉バルブOCVは
図2に示すように所定周期ごとにオンオフが繰り返されるパルス制御により、開放又は全閉が繰り返されるものである。例えばオン期間におけるパルス幅については例えば10msecオーダに設定してあり、全体の周期については100msecオーダに設定してある。ALDにおいてはこのようなパルス制御が例えば1000サイクル繰り返されて、基板上に1000層分の半導体層が形成される。開閉バルブOCVは、オンオフバルブであればよく、例えばALDプロセスように応答性を向上させた空圧弁であってもよいし、ピエゾアクチュエータを用いたピエゾバルブであってもよい。
【0028】
流体制御装置100は、開閉バルブOCVが開放されているオン期間において毎回、ほぼ同じ流量のガスが流れるように
図4のグラフに示すような制御を行う。具体的には、流体制御装置100は、開閉バルブOCVが閉鎖されているオフ期間において目標バースト圧力が開閉バルブOCVの上流側と流体制御装置100との間にある供給対象である下流側ボリュームVにチャージされるように動作する。また、流体制御装置100は、開閉バルブOCVが開放されているオン期間においてはインパルス状のバースト流が発生した後に目標一定流量が維持されるように動作する。
【0029】
以下では流体制御装置100の具体的な構成について詳述する。
【0030】
流体制御装置100の流体機器モジュールFMは、
図1及び
図3に示すように、2つの並列な内部流路である第1流路L1及び第2流路L2が形成されたブロックBに対して複数の機器が取り付けられたものである。流体機器モジュールFMは開閉バルブOCVとは独立してユニット化してあり、配管やガスパネル等に対してブロックBが取り付けられるようにしてある。また、流体機器モジュールFMと開閉バルブOCVとの間には開閉バルブOCVが閉鎖されている状態において流体であるガスが溜められる下流側ボリュームVが配置してある。この下流側ボリュームVは、例えば流路において他の配管部分よりも径が大きく形成された部分である。
【0031】
ブロックBは半導体製造プロセスにおいて用いられる規格により定められた規定の寸法で直方体形状をなすものである。具体的には横幅が20mmで形成されている。本実施形態では10mmの幅ごとに第1流路L1と第2流路L2がそれぞれ形成してある。直方体形状をなすブロックBの下面には、流体が流入する流入ポートPIと、流体が流出する流出ポートPOが形成されている。
図3に示すように第1流路L1及び第2流路L2はブロックBの長手方向に進行しながら並列に延びている。第1流路L1及び第2流路L2の流入ポートPI及び流出ポートPOはそれぞれ別々に形成されているが、
図1に示すように流体制御装置100の上流側にある共通の流体供給源から流体が流入するとともに、第1流路L1及び第2流路L2の下流側はそれぞれ共通の供給対象である下流側ボリュームVに連通する。
【0032】
なお、第1流路L1及び第2流路L2に対して別々の流体供給源から同種の流体が供給されるようにしてもよい。また、ブロックBに対して1つの流入ポートと1つの流出ポートだけを設け、ブロックB内において流入ポートから第1流路L1及び第2流路L2が分岐し、流出ポートにおいて第1流路L1及び第2流路L2が合流するように構成してもよい。
【0033】
図1、
図3(a)及び
図3(b)に示すように第1流路L1に対しては、上流側から順番に第1制御バルブV1、第1圧力センサP1、流体抵抗R、第2圧力センサP2が設けてある。すなわち、ブロックBの横幅半分で通常のマスフローコントローラとほぼ同じ構成が実現されている。また、
図1、
図3(a)及び
図3(c)に示すように第2流路L2に対しては第2制御バルブV2のみが設けてある。これらの各機器はすべてブロックBの上面に取り付けられる。
【0034】
第1制御バルブV1は、例えばピエゾアクチュエータによって弁体が駆動され、弁体と弁座間の開度が制御されるものである。
【0035】
流体抵抗Rは、例えば層流素子であり、前後に差圧を形成して流路に流れるガスの流量を測定するために用いられる。すなわち、第1圧力センサP1、第2圧力センサP2は流体抵抗Rの前後の差圧を測定される第1圧力、及び、第2圧力に基づいて流量を算出できるように構成してある。
【0036】
第1圧力センサP1は、第1制御バルブV1と流体抵抗Rとの間の流路の容積である第1容積内に流入している流体であるガスの圧力を第1圧力として測定するものである。
【0037】
第2圧力センサP2は、開閉バルブOCVと下流側ボリュームVとの間に配置され、流体抵抗Rから開閉バルブOCVに至るまでの流路の容積である第2容積内に流入しているガスの圧力を第2圧力として測定するものである。
【0038】
第1圧力、及び、第2圧力は測定流量を算出するために用いられるだけでなく、後述するようにそれぞれ単独で第2流路L2上にある第2制御バルブV2を制御するために用いられる。
【0039】
第2制御バルブV2は、第1制御バルブV1と同じものである。例えばピエゾアクチュエータによって弁体が駆動され、弁体と弁座間の開度が制御されるものである。
【0040】
制御機構COMは、CPU、メモリ、A/D・D/Aコンバータ、入出力手段等を備えたいわゆるコンピュータによって構成してあり、メモリに格納されている流体制御装置用プログラムが実行されて、各種機器が協業することにより、少なくとも流量算出部FC、流体制御器1、開閉バルブ制御器2としての機能を発揮するものである。
【0041】
流量算出部FCは、第1圧力センサP1で測定される第1圧力、及び、第2圧力センサP2で測定される第2圧力に基づいて、第1流路L1上の流体抵抗Rを流れるガスの流量を算出する。流量の算出式については知られている様々な式を用いることができる。なお、第1圧力センサP1、流体抵抗R、第2圧力センサP2、及び、流量算出部FCが圧力式の流量センサPTMを構成する。
【0042】
流体制御器1は、第1制御バルブV1及び第2制御バルブV2の開度を例えば印加する電圧を変化させて制御するものである。この流体制御器1は、所定の制御タイミングごとに制御対象とする制御バルブ、フィードバックされる値の種類、又は、目標値が変更されて、制御モードが切り替えられるように構成してある。このような制御モードの切り替えによって、開閉バルブOCVが開放されているオン期間においてバースト流が流れた後に一定流量が維持されるようにガスを流す。ここで、バースト流とは開閉バルブOCVが閉鎖されているオフ期間において流路内の容積にチャージされたガスが、開閉バルブOCVが開放された時点で一気に流出する流れを指す。バースト流は、当該バースト流が流れた後に保たれる一定流量よりも瞬間的な流量値が大きく、維持時間は短い。例えば、第1実施形態では、バースト流の流量値は一定流量値に対して2倍以上となる。
【0043】
より具体的には、流体制御器1は、第1圧力フィードバック制御部11、第2圧力フィードバック制御部12、流量フィードバック制御部13、制御切替部14と、を備えている。
【0044】
制御切替部14は、第1圧力フィードバック制御部11、第2圧力フィードバック制御部12、流量フィードバック制御部13のいずれか1つに第1制御バルブV1又は第2制御バルブV2のいずれかに制御を実施させるものである。制御切替部14は流量算出部FCから入力される測定流量、第2圧力センサP2から入力される第2圧力に基づいて、判定条件を満たすごとに第1制御バルブV1又は第2制御バルブV2の制御を切り替える。なお、判定条件等については後述する動作の説明において詳述する。また、制御切替部14は第1制御バルブV1又は第2制御バルブV2において流量又は圧力がフィードバックされて制御されていないものを全閉状態で維持させる。
【0045】
第1圧力フィードバック制御部11は、第1流路L1上にある第1圧力センサP1で測定される第1圧力に基づいて第2流路L2上にある第2制御バルブV2を制御するものである。より具体的には、第1圧力フィードバック制御部11は、設定される目標圧力と第1圧力との偏差が小さくなるように第2制御バルブV2の開度を制御する。なお、第1実施形態では目標圧力として、少なくとも目標バースト圧力と目標維持圧力の2種類が設定され、制御条件が満たされると制御切替部14によって目標値が適宜変更される。ここで、目標バースト圧力は、開閉バルブOCVが閉鎖されている状態において下流側ボリュームVにチャージされるガスの圧力の目標値であって、発生させたいバースト流の流量値の大きさに応じて設定される。また、目標維持圧力は、バースト流が発生した後に維持したい一定流量に応じて設定されるガスの圧力の目標値である。バースト流の流量値は、一定流量よりも大きく設定するので、目標バースト圧力は目標維持圧力よりも高い圧力に設定される。また、第1圧力フィードバック制御部11は、開閉バルブOCVが開放される時点の前後において第2制御バルブV2の開度を制御する。
【0046】
第2圧力フィードバック制御部12は、第1流路L1上にある第2圧力センサP2で測定される第2圧力に基づいて第2流路L2上にある第2制御バルブV2を制御するものである。より具体的には、第2圧力フィードバック制御部12は、設定される目標圧力と第2圧力との偏差が小さくなるように第2制御バルブV2の開度を制御する。また、第2圧力フィードバック制御部12は、開閉バルブOCVが閉鎖されている状態において各制御バルブV1、V2から開閉バルブOCVまでの容積に所定質量のガスが流入するまでの間、第2制御バルブV2の開度を制御する。
【0047】
流量フィードバック制御部13は、流量算出部FCで算出される測定流量に基づいて第1流路L1上にある第1制御バルブV1を制御するものである。より具体的には、流量フィードバック制御部13は、設定される目標流量と測定流量との偏差が小さくなるように第1制御バルブV1の開度を制御する。また、流量フィードバック制御部13は、第1圧力フィードバック制御部11、及び、第2圧力フィードバック制御部12による第2制御バルブV2の制御が行われていない間、第1制御バルブV1の制御を行う。
【0048】
開閉バルブ制御器2は、開閉バルブOCVの開閉タイミングを制御するものであり、例えば予め定められた周期でオンオフを繰り返すパルス制御を行うものである。より具体的には、開閉バルブ制御器2は、流体制御装置100により第1制御バルブV1から開閉バルブOCVまでの流路の容積に目標バースト圧力がチャージされるまでの間は開閉バルブOCVを閉鎖し、チャージされてから所定時間後に開閉バルブOCVを開放するようにそのタイミングが設定してある。なお、開閉バルブ制御器2は、例えば第1圧力センサP1において測定される第1圧力が所定期間、目標バースト圧力が維持された場合には、所定待機時間後に開閉バルブOCVを開放するようにしてもよい。すなわち、開閉バルブ制御器2は、第1圧力、第2圧力、測定流量をトリガ-として動作するように構成してもよい。
【0049】
次にこのように構成された第1実施形態の流体制御システム200による1サイクルの制御動作について
図4のタイミングチャート、及び、
図5のフローチャートを参照しながら説明する。以下の説明では開閉バルブOCVが閉鎖されてオフ期間が始まり、開閉バルブOCVが開放されて再び閉鎖されるまでの間の動作に注目して説明する。
【0050】
図5に示すように、開閉バルブOCVが閉鎖されると(ステップS1)、流体制御器1は、流量フィードバック制御部13によって目標維持流量が維持されるように第1制御バルブV1の制御が行われる(ステップS2)。
図4における閉鎖時流量フィードバック期間に示すように開閉バルブOCVが閉鎖されている間は、流量フィードバック制御により第1制御バルブV1の開度が制御されるとともに、第2制御バルブV2は閉鎖された状態が維持される。第1制御バルブV1から通過するガスは、上流端が第1制御バルブV1及び第2制御バルブV2で規定され、下流端が開閉バルブOCVによって規定される容積に流入し、第1圧力、第2圧力が上昇する。
図5に示すように、制御切替部14において第2圧力が閾値を超えたかどうかの判定が行われ(ステップS3)、超えていない場合にはステップS2の流量フィードバックによって第1制御バルブV1を制御する動作が継続される。
【0051】
一方、第2圧力が閾値を超えた場合には、制御切替部14はユーザにより設定されている目標バースト圧力と、第1制御バルブV1及び第2制御バルブV2から開閉バルブOCVまでの流路の容積に基づいて目標質量Tmを算出する(ステップS4)。ここで、目標質量Tmは例えば第1制御バルブV1及び第2制御バルブV2から開閉バルブOCVまでの流路の容積全体が目標バースト圧力となった場合に充填されているガスの理想質量に対して所定割合だけ小さい値に設定してある。すなわち、目標質量Tmとなった時点では、容積内の一部では目標バースト圧力以上となっていても、全体で平均すると目標バースト圧力には到達していない。目標質量Tmについては流体制御装置100の設計値から算出される第1制御バルブV1から流体抵抗Rまでの第1容積の体積と、流体制御装置100の設計値から算出される流体抵抗RからブロックBの出口までの容積の値、ユーザにより設定される下流側ボリュームVの容積の値から算出される流体抵抗Rから開閉バルブOCVまでの第2容積の体積、及び、第2流路L2において第2制御バルブV2よりも下流側の容積の値の和に目標バースト圧力を乗じることで算出できる。
【0052】
さらに、制御切替部14は流量フィードバック制御部13による第1制御バルブV1の制御から、第2圧力フィードバック制御部12による第2制御バルブV2の制御へと切り替える(ステップS5)。ここで、
図4における第2圧力フィードバック制御期間に示すように、目標バースト圧力と第2圧力との偏差が大きいので、第2圧力フィードバック制御部12によって第2制御バルブV2は、ほぼ全開状態に保たれることによる。したがって、最大の流量でガスが容積に対して流入することになり、容積内の圧力を急速に上昇させることができる。
【0053】
図5に示すように、第2圧力フィードバック制御部12による制御が継続している間、制御切替部14は容積に対して流入している現在のガスの質量を算出する(ステップS6)。ここで、現在のガスの質量は、第1容積の体積に現在測定されている第1圧力を乗じた値と、第2容積の体積及び第2流路L2において第2制御バルブV2よりも下流側の容積の値の和に現在測定されている第2圧力を乗じた値の和として算出される。
【0054】
さらに、制御切替部14は、現在質量Cmと目標質量Tmを比較し(ステップS7)、現在質量Cmが目標質量Tmに到達していない間はステップS5及びステップS6の動作が継続される。現在質量Cmが目標質量Tmと同じ値になった時点で、制御切替部14は第2圧力フィードバック制御部12による第2制御バルブV2の制御から、第1圧力フィードバック制御部11による第2制御バルブV2の制御へと切り替える(ステップS8)。ここで、
図4における第1圧力フィードバック制御期間中のバースト圧チャージ期間の開始点を見ると分かるように、制御が切り替えられた時点では第1圧力は目標バースト圧力を超えているが、第2圧力は目標バースト圧力に到達していない状態となる。これは、流体抵抗Rよりも上流側の第1容積のほうが先にガスが流入するため、第2容積の圧力のほうが遅れて圧力が上昇することと、流体抵抗Rよりも下流側の第2圧力に基づいて第2制御バルブV2を制御していることに起因する。すなわち、第2圧力に基づいて第2制御バルブV2が制御されているので、第1容積内の圧力が先に目標バースト圧力に到達しても第1制御バルブV1の開度が小さくされることがなく、そのまま目標バースト圧力以上となるように開度が維持される。このようにすることで、容積に対してガスを急速に流入させ、容積全体が目標バースト圧力となるまでにかかる時間を短縮している。
【0055】
また、第1圧力フィードバック制御部11による第2制御バルブV2の制御が開始された時点では第1圧力は目標バースト圧力よりも高い圧力となっているので、第2制御バルブV2は閉鎖される方向へと制御される。
【0056】
この結果、流入するガスの量が徐々に低下するとともに第1容積中のガスが第2容積へと移動する。この変化が生じている間、
図4に示すよう、制御切替部14は、第1圧力(第2圧力)が目標バースト圧力になったかどうかを判定する(ステップS9)。第1圧力が目標バースト圧力になっていない間はステップS8の動作が継続され、第1圧力が目標バースト圧力になった時点で、開閉バルブOCVが開放されてバースト流が発生した後において保たれる目標一定流量に相当する圧力である目標維持圧力を算出する(ステップS10)。例えば開閉バルブOCVが開放されている状態では成膜チャンバに接続される流体抵抗Rの下流側はほぼ真空圧に保たれるので、目標一定流量を実現するために必要な目標維持圧力は流量算出式に基づいて算出できる。
【0057】
さらに、制御切替部14は算出された目標維持圧力を第1圧力フィードバック制御部11に対して目標圧力として設定し、目標維持圧力と第1圧力の偏差が小さくなるように第2制御バルブV2の制御が行われるように制御を切り替える(ステップS11)。すなわち、
図4のバースト待機期間に示すように、第1圧力よりも目標維持圧力は低い圧力に設定されるので、
図4及び
図5に示すように、第2制御バルブV2は全閉された状態が保たれる(ステップS12)。
【0058】
図4のバースト待機期間に示すように第1圧力、第2圧力がともに目標バースト圧力で保たれている状態が所定時間継続された後、
図4及び
図5に示すように、開閉バルブ制御器2は開閉バルブOCVを開放し、(ステップS13)、その結果、インパルス状のバースト流が発生する(ステップS14)。また、
図4のバースト期間においても第1圧力フィードバック制御部11は、目標維持流量で第1圧力が保たれるように動作している。
【0059】
バースト期間において、制御切替部14は第2圧力が閾値を下回ったかどうかを判定し(ステップS15)、下回った場合には、制御切替部14は第1圧力フィードバック制御部11による第2制御バルブV2の制御から流量フィードバック制御部13による第1制御バルブV1の制御へと切り替える(ステップS16)。
図4のバースト後流量一定期間に示すように、事前に第1圧力が目標一定流量に相当する目標維持流量となるように制御されているので、バースト流量が目標一定流量まで低下した時点でほとんど変動なく、制御を切り替えることができる。
【0060】
以上のようなステップS1からステップS16までの動作をサイクルごとに繰り返すことにより、各サイクル中に実施される各オン期間において流れる流量がほぼ同じになるように制御される。
【0061】
このように構成された流体制御システム200、及び、流体制御装置100によれば、開閉バルブOCVが閉鎖されている間の期間において、圧力フィードバックによって第1制御バルブV1及び第2制御バルブV2から開閉バルブOCVまでの流路の容積にガスが目標バースト圧力となるようにチャージされるので、開放時に発生するバースト流の流量を毎回ほぼ同じ流量にすることができる。
【0062】
また、バースト流が流れた後の一定流量期間においては制御が第2流路L2上にある第2制御バルブV2に対する圧力フィードバックから第1流路L1上にある第1制御バルブV1に対する流量フィードバックに切り替えられて流れる流量を目標一定流量で保つことができる。このため、オン期間中に例えばガスの供給圧が変動する等といった外乱が発生したとしても、流れる流量に変動が生じにくくなり、流量制御をロバストなものにできる。また、バースト流が流れた後に一定流量に保たれるので、短時間のステップ入力に対して追従するように流量制御を行う場合と比較して、一定流量で安定するまでにかかる立ち上がり時間を短縮し、流量制御として見た場合の応答速度を向上させることができる。
【0063】
さらに、フィードバックがされる値が圧力から流量に切り替えられても制御対象となる制御バルブV1、V2も同時に切り替えられるので、単一の制御バルブに対して制御を切り替える場合と比較して切替点における流量の不連続さや変動を低減できる。
【0064】
加えて、オン期間において流れるガスの流量は圧力フィードバック制御と流量フィードバック制御に基づいて決定されており、オン期間又はオフ期間の時間長さの制御精度に依存せずに決定できる。
【0065】
したがって、開閉バルブOCVが開放されているオン期間において流れるガスの流量は各オン期間において常に同じ値に揃えることができる。このため、ALDのように高速のパルス制御によりガスを成膜チャンバに供給する用途に対しても好適に用いることができる。
【0066】
また、第1制御バルブV1から開閉バルブOCVの容積に対してガスをチャージする際に第2圧力フィードバック制御部12による制御をまず行い、その後、第1圧力フィードバック制御部11へと切り替えることにより、容積全体を目標バースト圧力までチャージするのに必要な時間を短縮できる。このため、パルス制御のサイクル周期を短縮することができ、ALDにおいて全ての半導体層を形成するまでにかかるサイクルタイムを短縮し、半導体製造のスループットを向上させることができる。
【0067】
次に本発明の第2実施形態に係る流体制御システム200、及び、流体制御装置100について
図6及び
図7を参照しながら説明する。なお、第1実施形態において説明した各部について対応するものについては同じ符号を付すこととする。
【0068】
第2実施形態の流体制御装置100は、第1実施形態と比較して制御機構COMの構成が異なっている。すなわち、
図6に示すように第2実施形態の流体制御装置100は第2圧力フィードバック制御部12が省略してあるとともに、制御切替部14、及び、第1圧力フィードバック制御部11の構成が一部異なっている。また、第1実施形態の動作を示す
図5のフローチャートと第2実施形態の動作を示す
図7のフローチャートを比較すると分かるように、第2実施形態では、第1実施形態におけるステップS4、ステップS6が省略され、ステップS5、及び、ステップS7が異なっている。
【0069】
以下では、第1実施形態とは異なっている部分についてのみ詳述する。
【0070】
第2実施形態の第1圧力フィードバック制御部11は、第1制御バルブV1及び第2制御バルブV2から開閉バルブOCVに至る流路の容積に対してガスがチャージされる際の第2制御バルブV2の動作を制御する。すなわち、第1圧力フィードバック制御部11は、
図7のステップS3に示すように第2圧力が閾値を超えた場合には、第1制御バルブV1を目標チャージ圧力と第1圧力の偏差が小さくなるように制御する(ステップS5’)。ここで、目標チャージ圧力は、目標バースト圧力よりも高い圧力であり、例えば第1実施形態における
図4の第2圧力フィードバック期間において達成される第1圧力の最高値が設定される。
【0071】
制御切替部14は、第1圧力が目標チャージ圧力に到達したことを検出すると(ステップS7’)、第1圧力フィードバック制御部11の目標圧力を目標バースト圧力へと下げる。以降の動作については第1圧力フィードバック制御部11、及び、制御切替部14の動作は第1実施形態と同様である。
【0072】
このように構成された第2実施形態の流体制御システム200、及び、流体制御装置100であっても、第1実施形態と同様に短時間で第1制御バルブV1及び第2制御バルブV2から開閉バルブOCVに至る流路の容積全体に目標バースト圧力となるまでガスをチャージすることができる。
【0073】
また、開閉バルブOCV開放前に必要とされる目標チャージ圧力をチャージし、各オン期間において開閉バルブOCVが開放される際に発生するバースト流の流量をほぼ同じにしつつ、バースト流が流れた後は流量フィードバックによる第1制御バルブV1の制御により目標一定流量で保つことができる。
【0074】
したがって、第2実施形態であっても第1実施形態とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0075】
その他の実施形態について説明する。
【0076】
流体制御システムについては、開閉バルブ制御器を省略して例えば開閉バルブの開閉制御については行わないように構成してもよい。すなわち、別のシステムによって開閉バルブの開閉がパルス制御されている場合には、その別のシステムからタイミング信号を取得し、そのタイミング信号に合わせて流体制御器による第1制御バルブ及び第2制御バルブの制御を行うように構成すればよい。
【0077】
流量を一定にするための制御は、測定流量をフィードバックする制御だけでなく、圧力のみをフィードバックして、流体抵抗の上流側の圧力を一定に保つことによる制御であっても構わない。例えば流体抵抗の下流側が真空引きされるような成膜チャンバに接続されており、圧力がほぼ一定に保たれている場合には、流量に相当する差圧を形成することで実質的に流量制御を実現できる。このような制御の場合には第2圧力センサを省略してもよい。
【0078】
開閉バルブが開放されている状態においては、少なくとも一部の期間は流量フィードバック、又は、圧力フィードバックにより目標一定流量が保たれるように構成されていればよい。例えば、バースト流が流れている間については流量フィードバック制御部による制御を行わずに、バースト流の流量が所定流量となってから流量制御を開始するようにしてもよい。
【0079】
開閉バルブが閉鎖されている状態において第1制御バルブ及び第2制御バルブから開閉バルブに至る流路の容積全体に目標バースト圧力となるようにチャージする際に、各実施形態のように第1圧力が一度目標バースト圧力を超えた状態にしないようにしてもよい。すなわち、開閉バルブが閉鎖されている状態において、第1圧力フィードバック制御部による第2制御バルブの制御について最初から目標バースト圧力だけで目標値の変更を行わずに制御を継続してもよい。
【0080】
流体抵抗については層流素子に限られるものではなく、オリフィスやその他の抵抗素子であっても構わない。
【0081】
流体機器モジュールについては、第1バルブ、第1圧力センサ、流体抵抗、第2圧力センサがそれぞれ1つのブロックに取り付けられて単一のユニット化されているものに限られず、各機器がばらばらに流路上に設けられてモジュールを形成するものであってもよい。また、第1流路及び第2流路はそれぞれ単一のブロック内に形成されたものにかぎられず、別々の配管やガスパネルで形成されるものであってもよい。
【0082】
本発明に係る流体制御装置は、ALDにのみ適用されるものではなく、その他のガスや液体の流量制御に用いられるものである。特に開閉バルブについてオン期間とオフ期間が交互に高速で切り替えられるパルス制御等において特に顕著な効果を奏し得る。
【0083】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、様々な実施形態の変形や組み合わせを行っても構わない。
【符号の説明】
【0084】
200・・・流体制御システム
100・・・流体制御装置
FM ・・・流体機器モジュール
COM・・・制御機構
1 ・・・流体制御器
11 ・・・第1圧力フィードバック制御部
12 ・・・第2圧力フィードバック制御部
13 ・・・流量フィードバック制御部
14 ・・・制御切替部
2 ・・・開閉バルブ制御器
L1 ・・・第1流路
V1 ・・・第1バルブ
R ・・・流体抵抗
P1 ・・・第1圧力センサ
P2 ・・・第2圧力センサ
L2 ・・・第2流路
V2 ・・・第2バルブ