(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-18
(45)【発行日】2024-01-26
(54)【発明の名称】炭素繊維含有ポリプロピレン組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/10 20060101AFI20240119BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20240119BHJP
C08K 7/06 20060101ALI20240119BHJP
B29C 70/06 20060101ALI20240119BHJP
B29K 105/06 20060101ALN20240119BHJP
【FI】
C08L23/10
C08L23/26
C08K7/06
B29C70/06
B29K105:06
(21)【出願番号】P 2020173997
(22)【出願日】2020-10-15
【審査請求日】2023-06-02
(31)【優先権主張番号】P 2020059559
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 俊
(72)【発明者】
【氏名】沼倉 正彦
(72)【発明者】
【氏名】瀬野 賢一
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-024766(JP,A)
【文献】特開2020-196882(JP,A)
【文献】特開2017-132933(JP,A)
【文献】特開2014-098134(JP,A)
【文献】特開2013-163805(JP,A)
【文献】国際公開第2017/057527(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/039569(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
B29C 70/06
B29K 105/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン(成分1)と炭素繊維(成分2)と変性ポリプロピレン(成分3)を含み、以下の要件の全てを充足する炭素繊維含有ポリプロピレン組成物:
要件1:成分1と成分2と成分3のそれぞれの重量の合計を100重量%として、成分1の含有量が30~98重量%の範囲であり、成分2の含有量が1~50重量%の範囲であり、成分3の含有量が1~20重量%の範囲であり;
要件2-1:成分2は、C-O結合、C=O結合、O-C=O結合、C-C結合及びC-N結合を含み、C-O結合、C=O結合、O-C=O結合、C-C結合及びC-N結合のそれぞれのスペクトル面積の合計を100%として、C-O結合の
スペクトル面積が1~24%の範囲であ
り、
ここで、前記スペクトル面積は、Al Kαを用いたX線光電子分光法分析により測定される。
【請求項2】
ポリプロピレン(成分1)と炭素繊維(成分2)と変性ポリプロピレン(成分3)を含み、以下の要件の全てを充足する炭素繊維含有ポリプロピレン組成物:
要件1:成分1と成分2と成分3のそれぞれの重量の合計を100重量%として、成分1の含有量が30~98重量%の範囲であり、成分2の含有量が1~50重量%の範囲であり、成分3の含有量が1~20重量%の範囲であり;
要件2-3:成分2は、C-O結合、C=O結合、O-C=O結合、C-C結合及びC-N結合を含み、C-O結合、C=O結合、O-C=O結合、C-C結合及びC-N結合のそれぞれのスペクトル面積の合計を100%として、C-O結合の含有量が1~24%の範囲であり、かつ、C=O結合及びO-C=O結合のそれぞれの
スペクトル面積の合計が4~15%の範囲であ
り、
ここで、前記スペクトル面積とは、Al Kαを用いたX線光電子分光法分析により測定されるものを意味する。
【請求項3】
成分1が、MFR(230℃、荷重21.2N)が23g/10分~100g/10分であるポリプロピレン単独重合体である、請求項1又は2に記載の炭素繊維含有ポリプロピレン組成物。
【請求項4】
成分3が、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、エポキシ変性ポリプロピレン及びカルボジイミド変性ポリプロピレンからなる群から選ばれる少なくとも1種の変性ポリプロピレンである、請求項1~3のいずれかに記載の炭素繊維含有ポリプロピレン組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の炭素繊維含有ポリプロピレン組成物を含む成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維含有ポリプロピレン組成物及び該組成物を含む成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車部材には、ポリプロピレン組成物からなる部材が用いられており、その部材の力学強度を向上させるために、ポリプロピレンにガラス繊維を混錬した組成物からなる部材が用いられている。
【0003】
しかし、自動車部材には軽量化が求められていることから、ガラス繊維より比重が小さい炭素繊維を利用すること、さらに最近は、リサイクル炭素繊維を利用することが注目されている。
【0004】
炭素繊維は、その1本は直径約7μmの繊維であり、通常、その表面にサイジング剤が付与されて数千本から数万本の束として用いられる。そして、その束を3~6mmの長さに切断して、ポリプロピレンに混錬して用いられる。そのサイジング剤としては、ポリプロピレン、エポキシ化合物やウレタン化合物が用いられている。
【0005】
リサイクル炭素繊維について、使用された炭素繊維(例えば、航空機に使用されたもの)は焼成した後、再利用されうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-166921号公報
【文献】国際公開第2016/188886号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、繊維強化ポリプロピレン組成物の軽量化を図りさらに力学強度を向上させるという課題を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、炭素繊維を用いてポリプロピレン組成物を含む部材の力学強度を向上させようとして、炭素繊維とポリプロピレンの界面に注目し、特に炭素繊維の表面を検討して本発明を見出した。
【0009】
具体的には、ポリプロピレン組成物を強化するために炭素繊維を用いることによって軽量化を図り、さらに、炭素繊維の表面に特定の結合とその含有量を有することを特徴とすることによって、組成物又はその組成物を含む成形体(自動車部材等)の引張強度及び曲げ強度を高くすることを見出した。
【0010】
本発明は以下に関するが、それに限定されない。
[発明1]
ポリプロピレン(成分1)と炭素繊維(成分2)と変性ポリプロピレン(成分3)を含み、以下の要件の全てを充足する炭素繊維含有ポリプロピレン組成物:
要件1:成分1と成分2と成分3のそれぞれの重量の合計を100重量%として、成分1の含有量が30~98重量%の範囲であり、成分2の含有量が1~50重量%の範囲であり、成分3の含有量が1~20重量%の範囲であり;
要件2-1:成分2は、C-O結合、C=O結合、O-C=O結合、C-C結合及びC-N結合を含み、C-O結合、C=O結合、O-C=O結合、C-C結合及びC-N結合のそれぞれのスペクトル面積の合計を100%として、C-O結合の含有量が1~24%の範囲である。
[発明2]
ポリプロピレン(成分1)と炭素繊維(成分2)と変性ポリプロピレン(成分3)を含み、以下の要件の全てを充足する炭素繊維含有ポリプロピレン組成物:
要件1:成分1と成分2と成分3のそれぞれの重量の合計を100重量%として、成分1の含有量が30~98重量%の範囲であり、成分2の含有量が1~50重量%の範囲であり、成分3の含有量が1~20重量%の範囲であり;
要件2-2:成分2は、C-O結合、C=O結合、O-C=O結合、C-C結合及びC-N結合を含み、C-O結合、C=O結合、O-C=O結合、C-C結合及びC-N結合のそれぞれのスペクトル面積の合計を100%として、C=O結合及びO-C=O結合のそれぞれの含有量の合計が4~15%の範囲である。
[発明3]
ポリプロピレン(成分1)と炭素繊維(成分2)と変性ポリプロピレン(成分3)を含み、以下の要件の全てを充足する炭素繊維含有ポリプロピレン組成物:
要件1:成分1と成分2と成分3のそれぞれの重量の合計を100重量%として、成分1の含有量が30~98重量%の範囲であり、成分2の含有量が1~50重量%の範囲であり、成分3の含有量が1~20重量%の範囲であり;
要件2-3:成分2は、C-O結合、C=O結合、O-C=O結合、C-C結合及びC-N結合を含み、C-O結合、C=O結合、O-C=O結合、C-C結合及びC-N結合のそれぞれのスペクトル面積の合計を100%として、C-O結合の含有量が1~24%の範囲であり、かつ、C=O結合及びO-C=O結合のそれぞれの含有量の合計が4~15%の範囲である。
[発明4]
成分3が、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、エポキシ変性ポリプロピレン及びカルボジイミド変性ポリプロピレンからなる群から選ばれる少なくとも1種の変性ポリプロピレンである、発明1~3のいずれかに記載の炭素繊維含有ポリプロピレン組成物。
[発明5]
発明1~4のいずれかに記載の炭素繊維含有ポリプロピレン組成物を含む成形体。
【発明の効果】
【0011】
ポリプロピレン組成物が本発明の特徴を備えることによって、繊維強化ポリプロピレン組成物及びその組成物を含む成形体の軽量化及び力学強度の向上に成功した。
【発明を実施するための形態】
【0012】
定義
本明細書において開示されている全ての数は、「約」又は「概ね」という単語がそれと関連して使用されようとなかろうと、近似値である。それらは、1パーセント、2パーセント、5パーセント、又は時には10~20パーセントで変動してもよい。下限RL及び上限RUを伴う数値の範囲が開示されている場合はいつも、範囲に含まれる任意の数が特に開示される。特に、範囲内の下記の数が特に開示される。R=RL+k*(RU-RL)(式中、kは、1パーセントずつ増加する1パーセント~100パーセントの範囲の変数であり、すなわち、kは、1パーセント、2パーセント、3パーセント、4パーセント、5パーセント、...、50パーセント、51パーセント、52パーセント、...、95パーセント、96パーセント、97パーセント、98パーセント、99パーセント、又は100パーセントである)。さらに、上記に記載の2つのRの数によって定義される任意の数値の範囲もまた、特に開示される。
【0013】
数値範囲を表す「下限~上限」の記載は、「下限以上、上限以下」を表し、「上限~下限」の記載は、「上限以下、下限以上」を表す。すなわち、これらの記載は、下限及び上限を含む数値範囲を表す。
【0014】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0015】
炭素繊維含有ポリプロピレン組成物
本発明の炭素繊維含有ポリプロピレン組成物は、ポリプロピレン(「成分1」と称することもある)と炭素繊維(「成分2」と称することもある)と変性ポリプロピレン(「成分3」と称することもある)を含む。
【0016】
ポリプロピレン(成分1)
ポリプロピレン(成分1)としては、例えば以下が挙げられる:
プロピレン単独重合体、
プロピレン-エチレンランダム共重合体、
プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体、
プロピレン-エチレン-α-オレフィン共重合体、
プロピレン単独重合体成分又は主にプロピレンからなる共重合体成分(以下、重合体成分Iと称することもある)と、エチレン及びα-オレフィンから選択されるモノマーの少なくとも1種とプロピレンとを共重合して得られる共重合体(以下、重合体成分IIと称することもある)とからなるプロピレンブロック共重合体。
これらのポリプロピレンは単独で使用しても良く、少なくとも2種を併用しても良い。
【0017】
成分1に用いられるα-オレフィンとして、好ましくは1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセンであり、より好ましくは1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンである。
【0018】
前記プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体としては、例えば、プロピレン-1-ブテンランダム共重合体、プロピレン-1-ヘキセンランダム共重合体、プロピレン-1-オクテンランダム共重合体等が挙げられる。
【0019】
前記プロピレン-エチレン-α-オレフィン共重合体としては、例えば、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-エチレン-1-オクテン共重合体等が挙げられる。
【0020】
前記プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体、プロピレン-エチレン-α-オレフィン共重合体に含有されるエチレン又はα-オレフィンの含有量は、通常0.01~30重量%であり、好ましくは0.1~20重量%である。ただし、前記共重合体の全量を100重量%とする。
【0021】
前記プロピレン系ブロック共重合体の前記重合体成分Iが主にプロピレンからなる共重合体成分である場合、前記重合体成分Iには、エチレン及び炭素原子数4~12のα-オレフィンから選択される少なくとも1種のオレフィンが含有され、その含有量は、通常0.01~30重量%である。ただし、前記重合体成分Iの全量を100重量%とする。
【0022】
前記重合体成分Iが主にプロピレンからなる共重合体成分である場合、例えば、プロピレン-エチレン共重合体成分、プロピレン-1-ブテン共重合体成分、プロピレン-1-ヘキセン共重合体成分等が挙げられる。
【0023】
前記プロピレン系ブロック共重合体の前記重合体成分IIとしては、例えば、プロピレン-エチレン共重合体成分、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体成分、プロピレン-エチレン-1-ヘキセン共重合体成分、プロピレン-エチレン-1-オクテン共重合体成分、プロピレン-1-ブテン共重合体成分、プロピレン-1-ヘキセン共重合体成分、プロピレン-1-オクテン共重合体成分等が挙げられる。
【0024】
前記重合体成分IIに含有されるエチレン及び炭素原子数4~12のα-オレフィンから選択される少なくとも1種のオレフィンの含有量は、通常1~80重量%であり、好ましくは20~70重量%、さらに好ましくは30~60重量%である。ただし、前記重合体成分IIの全量を100重量%とする。
【0025】
前記プロピレン系ブロック共重合体に含有される重合体成分IIの含有量は、通常1~70重量%であり、好ましくは5~50重量%、さらに好ましくは10~40重量%である。ただし、前記プロピレン系ブロック共重合体の全量を100重量%とする。
【0026】
前記重合体成分Iと前記重合体成分IIからなるプロピレン系ブロック共重合体としては、例えば以下が挙げられる:
(プロピレン)-(プロピレン-エチレン)共重合体、
(プロピレン)-(プロピレン-エチレン-1-ブテン)共重合体、
(プロピレン)-(プロピレン-エチレン-1-ヘキセン)共重合体、
(プロピレン)-(プロピレン-1-ブテン)共重合体、
(プロピレン)-(プロピレン-1-ヘキセン)共重合体、
(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-エチレン)共重合体、
(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-エチレン-1-ブテン)共重合体、
(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-エチレン-1-ヘキセン)共重合体、
(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-1-ブテン)共重合体、
(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-1-ヘキセン)共重合体、
(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-エチレン)共重合体、
(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-エチレン-1-ブテン)共重合体、
(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-エチレン-1-ヘキセン)共重合体、
(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-1-ブテン)共重合体、
(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-1-ヘキセン)共重合体。
【0027】
炭素繊維(成分2)
炭素繊維(成分2)は、従来公知の種々の炭素繊維を使用することができる。具体的には、ポリアクリルニトリル系、レーヨン系、ピッチ系、ポリビニルアルコール系、再生セルロース系、メゾフェーズピッチから製造されたピッチ系等の炭素繊維が挙げられる。
【0028】
成分2の繊維径は特に限定されないが、繊維の強化、強化繊維束の生産性の向上、ペレットの連続製造の際の繊維束をつなぐ手間の低減及び生産性の向上のためには、好ましくは3μm以上、より好ましくは8μm以上である。また、ペレット長が決まっている場合における繊維のアスペクト比の向上のためには、前記繊維径は、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下である。
【0029】
成分2のアスペクト比は特に限定されないが、繊維の強化のためには、5以上が好ましい。また、成形性の向上のためには、前記アスペクト比は6000以下が好ましい。成分2のアスペクト比は、平均繊維径と平均繊維長から、(平均繊維長)÷(平均繊維径)によって求めることができる。
【0030】
成分2の原料としては、連続状繊維束が用いられ、これはトウとして市販されている。通常、その平均繊維径は3~30μm、フィラメント集束本数は500~24,000本である。好ましくは平均繊維径4~10μm、集束本数6,000~15,000本である。
【0031】
他に、(成分2として、チョップドストランドを用いることもできる。このチョップドストランドの長さは、通常1~20mm、繊維の径は3~30μm程度、好ましくは4~10μmのものである。
【0032】
本発明の炭素繊維含有ポリプロピレン組成物を構成する成分2の繊維長は、通常、0.05~200mm、好ましくは0.2~50mm、より好ましくは4~20mmである。
【0033】
平均アスペクト比(繊維長/繊維径)は、通常、5~6000、好ましくは10~3000、より好ましくは15~2000である。
【0034】
成分2の表面は、酸化エッチングや被覆などで表面処理を行ったものが好ましい。酸化エッチング処理としては、空気酸化処理、酸素処理、酸化性ガスによる処理、オゾンによる処理、コロナ処理、火炎処理、(大気圧)プラズマ処理、酸化性液体(硝酸、次亜塩素酸アルカリ金属塩の水溶液、重クロム酸カリウム-硫酸、過マンガン酸カリウム-硫酸)等が挙げられる。炭素繊維を被覆する物質としては、炭素、炭化珪素、二酸化珪素、珪素、プラズマモノマー、フェロセン、三塩化鉄等が挙げられる。
【0035】
また、必要に応じてウレタン系、オレフィン系(ポリプロピレンなど)、アクリル系、ナイロン系、ブタジエン系及びエポキシ系(特殊エポキシ含む)、ポリエステル系等のサイジング剤を使用してもよい。
【0036】
変性ポリプロピレン(成分3)
変性ポリプロピレン(成分3)としては、極性を付与するようポリプロピレンを変性したものであれば特に限定されないが、例えば(無水)カルボン酸、エポキシド、オキサゾリン、イソシアネート、カルボジイミド等で変性したポリプロピレンが挙げられ、好ましくは、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、カルボジイミド変性ポリプロピレン、エポキシ変性ポリプロピレンが挙げられる。
【0037】
無水マレイン酸変性ポリプロピレン(ポリプロピレンMM)
成分2としての無水マレイン酸変性ポリプロピレン(ポリプロピレンMMと称することもある)としては、例えば以下の1~4が挙げられる:
1.プロピレンの単独重合体に、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体をグラフト重合して得られる変性ポリプロピレン、
2.少なくとも2種の単量体からなるプロピレン共重合体に、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体をグラフト重合して得られる変性ポリプロピレン、
3.プロピレンを単独重合した後に少なくとも2種のオレフィンを共重合して得られるブロック共重合体に、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体をグラフト重合して得られる変性プロピレン、
4.プロピレンと、任意で少なくとも1種のオレフィンと、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体をランダム共重合あるいはブロック共重合して得られる変性ポリプロピレン。
【0038】
ポリプロピレンMMの製造には、例えば、“実用 ポリマーアロイ設計”(井出文雄著、工業調査会(1996))、Prog. Polym. Sci.,24,81-142(1999)、特開2002-308947号公報等に記載されている方法など、種々の方法を用いることができる。すなわち、溶液法、バルク法、溶融混練法のいずれの方法を用いてもよい。また、これらの方法を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
ポリプロピレンMMの製造に用いられる不飽和カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。また、不飽和カルボン酸の誘導体としては、前記の不飽和カルボン酸から誘導される酸無水物、エステル化合物、アミド化合物、イミド化合物、金属塩等が挙げられ、その具体例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸グリシジル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、フマル酸ジメチルエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイン酸ジアミド、フマル酸モノアミド、マレイミド、N-ブチルマレイミド、メタクリル酸ナトリウム等が挙げられる。また、クエン酸やリンゴ酸のように、ポリプロピレンにグラフト重合する工程で脱水して不飽和カルボン酸を生じる化合物を用いてもよい。
不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体として、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸のグリシジルエステル、無水マレイン酸である。
【0040】
ポリプロピレンMMとして好ましくは、
(1)プロピレン単量体と、任意でエチレン単量体とを主な構成単位とするポリプロピレンに、無水マレイン酸をグラフト重合することによって得られる変性ポリプロピレン、
(2)プロピレン単量体と、任意でエチレン単量体とを主な成分とするオレフィンと、メタクリル酸グリシジルエステル又は無水マレイン酸とを共重合することによって得られる変性ポリプロピレン、
が挙げられる。
【0041】
また、繊維強化樹脂成形品の衝撃強度、疲労特性、剛性等の機械的強度の観点から、ポリプロピレンMMとして好ましくは、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体に由来する重合単量体単位を0.01~10重量%含有する無水マレイン酸変性ポリプロピレンである。特に、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体を用いて、ランダム共重合あるいはブロック共重合によって得られるポリプロピレンMMの場合には、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体に由来する重合単量体単位の含有量は3~10重量%が好ましく、グラフト重合によって得られるポリプロピレンMMの場合には、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体に由来する重合単量体単位の含有量は0.01~10重量%が好ましい。
【0042】
カルボジイミド変性ポリプロピレン(ポリプロピレンCM)
カルボジイミド変性ポリプロピレン(ポリプロピレンCMと称することもある)は、カルボジイミド基と反応する基を有するポリプロピレン(重合体C´と称することもある)と、カルボジイミド基含有化合物(化合物Cと称することもある)とを反応させることにより得られる。具体的には、両者を溶融混練するなどの方法が挙げられる。
【0043】
以下に、溶融混練する場合の例を示す。重合体C´と、化合物Cとを溶融混練する方法としては、重合体C´と化合物Cを同時に、又は逐次的に、たとえばヘンシェルミキサー、V型ブレンダー、タンブラーブレンダー、リボンブレンダーなどに装入して混練した後、単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどで溶融混練する方法が例示できる。これらのうちでも、多軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどの混練性能に優れた装置を使用すると、各成分がより均一に分散・反応された重合体組成物を得ることができるため好ましい。
【0044】
押出機を用いて溶融混練を行う場合、重合体C´と化合物Cは、予め混合した後にホッパーから供給しても良いし、一部の成分をホッパーから供給し、ホッパー部付近から押出機先端の間の任意の部分に設置した供給口よりその他の成分を供給しても良い。
【0045】
上記各成分を溶融混練する際の温度は、混合する各成分の融点のうち、最も高い融点以上とする。具体的には、好ましくは150~300℃、より好ましくは200~280℃、更に好ましくは230~270℃の範囲で溶融混練を行う。
【0046】
ポリプロピレンCMは190℃又は230℃での流動性に優れるものである。ポリプロピレンCMの190℃又は230℃、2.16Kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.01~400g/10分、より好ましくは0.1~300g/10分、更に好ましくは1~200g/10分の範囲である。このような範囲にあると、強化繊維の補強性や分散性に優れ、好ましい。
【0047】
ポリプロピレンCMの製造には、例えば、“実用 ポリマーアロイ設計”(井出文雄著、工業調査会(1996))、Prog. Polym. Sci.,24,81-142(1999)など、種々の方法を用いることができる。すなわち、溶液法、バルク法、溶融混練法のいずれの方法を用いてもよい。また、これらの方法を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
ポリプロピレンCMを製造するにあたり、重合体C´中のカルボジイミド基と反応する基のモル数と、化合物Cのモル数の比を、1:0.2~10.0、好ましくは1:0.4~8、更に好ましくは1:2~8を満たす配合比にすることで、重合体C´と化合物Cの反応効率が高く、かつ、流動性に優れるポリプロピレンCMが得られる点で好ましい。
【0049】
また、ポリプロピレンCMは、ポリプロピレンCM100gに対し、カルボジイミド基の含有量は特に限定されないが、強化繊維の補強効果や耐水劣化性の向上効果を高めるために、好ましくは1mmol以上、より好ましくは5mmol以上、さらに好ましくは10mmol以上である。また、成形加工性、強化繊維の補強効果、分散性の向上効果、経済性を高めるためには、前記含有量は、好ましくは200mmol以下、より好ましくは150mmol以下、さらに好ましくは100mmol以下である。かかる観点で、ポリプロピレンCMを製造する際には、ポリプロピレンCM中のカルボジイミド基の含有量が上記範囲となるように、化合物Cの配合量を調整するのが良い。
【0050】
さらに、ポリプロピレンCMを製造するにあたり、重合体C´中のカルボジイミド基と反応する基と、化合物C中のカルボジイミド基との反応の制御も重要である。重合体C´中のカルボジイミド基と反応する基と、化合物C中のカルボジイミド基との反応の進行度合いは、例えば、以下の方法により調査することが可能である。
【0051】
重合体C´、及び反応により得られたポリプロピレンCMの熱プレスシ-トをそれぞれ作製した後に、赤外吸収分析装置を用いて赤外線吸収を測定する。得られたチャートから、重合体C´及びポリプロピレンCM中のカルボジイミド基と反応する基を有する化合物のピーク強度に起因する吸収帯(無水マレイン酸を用いた場合は、1790cm-1)の吸光度の、反応前後の吸光度を比較して、下記式を用いて反応率Cを計算できる。
反応率C(%)=XC/YC×100
XC=反応前重合体C´のカルボジイミド基と反応する基の吸光度-反応後ポリプロピレンCMのカルボジイミド基と反応する基の吸光度
YC=反応前重合体C´のカルボジイミド基と反応する基の吸光度
【0052】
ポリプロピレンCMについて上記方法で求めた反応率は、好ましくは20~100%、より好ましくは25~100%、更に好ましくは40~100%の範囲にある。
【0053】
また、ポリプロピレンCMは、上記のように化合物Cのカルボジイミド基(N=C=N)が、重合体C´中のカルボジイミド基と反応する基と反応することで製造されるが、ポリプロピレンと結合している化合物Cに由来するカルボジイミド残基が重合体C´中に存在してもよく、それが強化繊維と相互作用し、補強性や分散性に寄与する。このカルボジイミド残基量は、IR測定で2130~2140cm-1にあるN=C=N基の収縮振動に起因するピークの大きさとして捉えることが可能である。
【0054】
ポリプロピレンCMは、2種以上の重合体C´を含んでいてもよく、2種以上の化合物Cを含んでいてもよい。
【0055】
また、ポリプロピレンCMには、本発明の目的を損なわない範囲で、公知のプロセス安定剤、耐熱安定剤、耐熱老化剤等を添加することも可能である。
【0056】
カルボジイミド基と反応する基を有するポリプロピレン(重合体C´)
カルボジイミド基と反応する基を有するポリプロピレン(重合体C´)は、ポリプロピレンに、カルボジイミド基と反応する化合物を導入することにより得ることができる。
【0057】
カルボジイミド基と反応する化合物としては、カルボジイミド基との反応性を有する活性水素を持つ基を有する化合物が挙げられ、具体的には、カルボン酸、アミン、アルコール、チオール等から由来する基を持つ化合物である。これらの中では、カルボン酸から由来する基を持つ化合物が好適に用いられ、中でも特に不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体が好ましい。また、活性水素を持つ基を有する化合物以外でも、水などにより容易に活性水素を有する基に変換される基を有する化合物も好ましく使用することができる。具体的にはエポキシ基、グリシジル基を有する化合物が挙げられる。本発明において、カルボジイミド基と反応する化合物は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0058】
カルボジイミド基と反応する化合物として不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体を用いる場合、カルボン酸基を1以上有する不飽和化合物、無水カルボン酸基を1以上有する不飽和化合物及びそれらの誘導体を挙げることができる。不飽和基としては、ビニル基、ビニレン基、不飽和環状炭化水素基などを挙げることができる。具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ノルボルネンジカルボン酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸などの不飽和カルボン酸、又はこれらの酸無水物あるいはこれらの誘導体(例えば酸ハライド、アミド、イミド、エステルなど)が挙げられる。具体的な化合物の例としては、塩化マレニル、マレニルイミド、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸無水物、マレイン酸ジメチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジメチル、シトラコン酸ジエチル、テトラヒドロフタル酸ジメチル、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸ジメチル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレ-ト、メタクリル酸アミノエチル及びメタクリル酸アミノプロピルなどを挙げることができる。
【0059】
これらの中で、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸無水物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジルメタクリレート、メタクリル酸アミノプロピルが好ましい。更には、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸無水物などのジカルボン酸無水物であることが特に好ましい。特に、本発明において、カルボジイミド基と反応する化合物としては、無水マレイン酸が最も好ましい。
【0060】
カルボジイミド基と反応する化合物をポリプロピレンに導入する方法としては、種々の方法を採用することが可能であるが、例えば、ポリプロピレン主鎖にカルボジイミド基と反応する化合物をグラフト共重合する方法や、プロピレン等のオレフィンとカルボジイミド基と反応する化合物をラジカル共重合する方法等を例示することができる。以下に、グラフト共重合する場合とラジカル共重合する場合に分けて、具体的に説明する。
【0061】
グラフト共重合
重合体C´は、ポリプロピレン主鎖に対し、カルボジイミド基と反応する基を有する化合物をグラフト共重合することによって得ることが可能である。
【0062】
ポリプロピレン主鎖として用いられるポリプロピレンは、プロピレン単位を主成分とする単独重合体又は共重合体である。副成分が存在する場合、副成分のオレフィン単位として、プロピレン以外の炭素原子数2~20(C2~20)―好ましくはC2~10、より好ましくはC2~8―の脂肪族α-オレフィン、環状オレフィン、非共役ジエン、芳香族オレフィンが用いられてもよい。ここで、「主成分」とは、ポリプロピレン中のプロピレン単位の含有量が、通常50モル%以上であり、好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上である。前記副成分となりうるオレフィンの好ましい例として、エチレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、テトラシクロドデセン、ノルボルネン及びスチレンが挙げられる。また、当該ポリプロピレンとして、アイソタクチック構造、シンジオタクチック構造の両者ともに使用可能であり、立体規則性についても特段の制限はない。
【0063】
グラフト変性に用いるポリプロピレンの密度は、好ましくは、0.8~1.1g/cm3、より好ましくは0.8~1.05g/cm3、更に好ましくは0.8~1g/cm3である。ASTM D1238による190℃又は230℃、2.16kg荷重におけるポリプロピレンのメルトフローレート(MFR)は、通常0.01~500g/10分、好ましくは0.05~300g/10分、さらに好ましくは0.1~100g/10分である。ポリプロピレンの密度及びMFRがこの範囲にあれば、変性後のグラフト共重合体の密度、MFRも同程度となることからハンドリングしやすい。
【0064】
また、グラフト変性に用いられるポリプロピレンの結晶化度は、通常2%以上、好ましくは5%以上、さらに好ましくは10%以上である。結晶化度がこの範囲にあれば、変性後のグラフト共重合体のハンドリングに優れる。
【0065】
グラフト変性に用いられるポリプロピレンのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した数平均分子量(MnbasePP)は、好ましくは5,000~500,000、さらに好ましくは10,000~100,000である。MnbasePPがこの範囲にあれば、ハンドリングに優れる。数平均分子量は、プロピレン-エチレン系ポリオレフィンにおいては、コモノマー量(エチレン量)が10モル%未満であればポリプロピレン換算、10モル%以上であればプロピレン-エチレン換算(プロピレン含有量70モル%を基準)で求めることが可能である。
【0066】
上記のようなポリプロピレンの製造は、従来から公知のいずれの方法によっても行うことができる。例えば、チタン系触媒、バナジウム系触媒、メタロセン触媒などを用いて重合することができる。また、ポリプロピレンは、樹脂及びエラストマーのいずれの形態でもよく、アイソタクチック構造、シンジオタクチック構造の両者ともに使用可能であり、立体規則性についても特段の制限はない。市販の樹脂をそのまま利用することも可能である。
【0067】
重合体C´をグラフト共重合により得る場合には、上記のグラフト主鎖となるポリプロピレンに、カルボジイミド基と反応する化合物、及び必要に応じてその他のエチレン性不飽和単量体等をラジカル開始剤の存在下、グラフト共重合する。
【0068】
カルボジイミド基と反応する化合物をポリプロピレン主鎖にグラフトさせる方法については特に限定されず、溶液法、溶融混練法等、公知のグラフト重合法を採用することができる。
【0069】
ラジカル共重合
重合体C´は、カルボジイミド基と反応する化合物と、プロピレン等のオレフィンとをラジカル共重合することによっても得ることが可能である。前記オレフィンとしては、上述のグラフト主鎖となるポリオレフィンを形成する場合のオレフィンと同一のものを採用することが可能である。また、カルボジイミド基と反応する化合物も上述の通りである。
【0070】
カルボジイミド基と反応する化合物とオレフィンとをラジカル共重合させる方法については特に限定されず、公知のラジカル共重合法を採用することができる。
【0071】
グラフト共重合及びラジカル共重合などのいずれの共重合方法を採用する場合であっても、重合体C´は、次のような条件を満たすものが良い。
【0072】
重合体C´中におけるカルボジイミド基と反応する基の含有量は特に限定されないが、ポリプロピレンCMの骨格となる化合物Cと重合体C´との結合部分を増やして繊維強化ポリプロピレン組成物における強化繊維の補強性や分散性を高めるために、0.01重量%以上が好ましい。また、カルボジイミド基と反応する基の、化合物Cによる架橋を抑制してポリプロピレンCMの製造を容易にするために、前記含有量は10重量%以下が好ましく、より好ましくは3重量%以下、さらに好ましくは2重量%以下である。
【0073】
重合体C´の架橋を防止するためには、重合体C´の数平均分子量が低いこと、また、(カルボジイミド基と反応する基のモル数)/(重合体C´分子鎖のモル数)のモル比が小さいことが好ましい。これは即ち、重合体C´の一つの分子鎖上にカルボジイミド基と反応する基が複数でなく、なるべく単数で存在している場合には、化合物Cのカルボジイミド基(N=C=N)が、重合体C´のカルボジイミド基と反応する基と反応する際、架橋及びゲル化することなく結合できることを意味している。
【0074】
重合体C´をグラフト重合により得る場合には、グラフト主鎖となるポリプロピレンがエチレン含有量の多い樹脂であると、エチレン-ブテン共重合体のようなα-オレフィン共重合量の多い樹脂に比較すると製造時に架橋しやすい傾向がある。そのため、エチレン含有量の多い樹脂をグラフト主鎖として用いて、かつ架橋を抑制して製造するためには、カルボジイミド基と反応する基が、重合体C´の一つの分子鎖上になるべく単数で存在するよう調整することが好ましい。
【0075】
また、グラフト主鎖となるポリプロピレンが熱分解により低分子量化しやすい樹脂である場合には、架橋による高粘度化の現象は起こりにくい。そのため、熱分解しやすい樹脂をグラフト主鎖として用いる場合には、カルボジイミド基と反応する基が、重合体C´の一つの分子鎖上に複数存在しても、高粘度化せずにポリプロピレンCMを製造できる場合がある。
【0076】
カルボジイミド基と反応する基を有する重合体C´のASTM D1238による荷重2.16kg、190℃又は230℃におけるメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.01~500g/10分、より好ましくは0.05~300g/10分である。上記範囲にあると、強化繊維の補強性や分散性の向上効果に優れたポリプロピレンCMが得られる。
【0077】
また、重合体C´の密度は、好ましくは0.8~1.1g/cm3、より好ましくは0.8~1.05g/cm3、更に好ましくは0.8~1g/cm3である。
【0078】
カルボジイミド基含有化合物(化合物C)
カルボジイミド基含有化合物(化合物C)は、好ましくは下記一般式(4)で示される繰り返し単位を有するポリカルボジイミドである。
-N=C=N-R1- (4)
(式中、RCは2価の有機基を示す。)
【0079】
ポリカルボジイミドの合成法は、特に限定されるものではないが、例えば有機ポリイソシアネ-トを、イソシアネ-ト基のカルボジイミド化反応を促進する触媒の存在下で反応させることにより、ポリカルボジイミドを合成することができる。
【0080】
化合物Cのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めたポリスチレン換算数平均分子量(MnC)は、好ましくは400~500,000、より好ましくは1,000~10,000、更に好ましくは2,000~4,000である。MnCがこの範囲にあると、強化繊維の補強性や分散性の向上効果に優れたポリプロピレンCMが得られるため好ましい。
【0081】
化合物Cには、モノカルボジイミドを添加してもよく、単独又は複数のカルボジイミド基含有化合物を混合して使用することも可能である。
【0082】
なお、市販のカルボジイミド基含有化合物をそのまま使用することも可能である。市販のカルボジイミド基含有化合物としては、日清紡績株式会社製 カルボジライト(登録商標)HMV-15CA、カルボジライト(登録商標)HMV-8CAやカルボジライト(登録商標)LA1、ラインケミー社製 スタバクゾール(登録商標)Pやスタバクゾール(登録商標)P400などが挙げられる。
【0083】
化合物C及び得られたポリプロピレンCMにおけるカルボジイミド基含有量は、13C-NMR、IR、滴定法等により測定でき、カルボジイミド当量として把握することが可能である。13C-NMRでは130~142ppm、IRでは2130~2140cm-1のピ-クを観察する。
【0084】
13C-NMR測定は、たとえば次のようにして行われる。すなわち、試料0.35gをヘキサクロロブタジエン2.0mlに加熱溶解させる。この溶液をグラスフィルター(G2)で濾過した後、重水素化ベンゼン0.5mlを加え、内径10mmのNMRチューブに装入する。そして日本電子製GX-500型NMR測定装置を用い、120℃で13C-NMR測定を行う。積算回数は、10,000回以上とする。
【0085】
IR測定は、例えば、次のようにして行われる。すなわち、試料を250℃、3分で熱プレスしてシ-トを作製した後に、赤外分光光度計(日本分光製、FT-IR 410型)を用いて透過法で、該シートの赤外吸収スペクトルを測定する。測定条件は、分解能を2cm-1、積算回数を32回とする。
【0086】
透過法での赤外吸収スペクトルは、ランベルト・ベールの法則で示されるように、サンプル厚みに反比例し、吸光度そのものがサンプル中のカルボジイミド基の濃度をあらわすものではない。そのため、カルボジイミド基含有量を測定するためには、測定するサンプルの厚みを揃えるか、内部標準ピークを用いてカルボジイミド基のピーク強度を規格化する必要がある。
【0087】
IR測定によりポリプロピレンCMのカルボジイミド基含有量を測定する場合には、あらかじめカルボジイミド基の濃度が既知のサンプルを用いて、IR測定を行ない、2130~2140cm-1に現われるピークの吸光度と内部標準ピークの吸光度の比を用いて検量線を作成しておき、サンプルの測定値を検量線に代入し、濃度を求める。
【0088】
内部標準ピークとしては、ポリプロピレン骨格に由来するピークを用いても良いし、あらかじめ内部標準物質をサンプル中の濃度が一定となるように混合し、測定に用いても良い。
【0089】
エポキシ変性ポリプロピレン(ポリプロピレンEM)
エポキシ変性ポリプロピレン(ポリプロピレンEMと称することもある)は、エポキシ基と反応する基を有するポリプロピレン(重合体E´と称することもある)と、エポキシ基含有化合物(化合物Eと称することもある)とを反応させることにより得られる。具体的には、両者を溶融混練するなどの方法が挙げられる。
【0090】
以下に、溶融混練する場合の例を示す。重合体E´と、化合物Eとを溶融混練する方法としては、重合体E´と化合物Eを同時に、又は逐次的に、たとえばヘンシェルミキサー、V型ブレンダー、タンブラーブレンダー、リボンブレンダーなどに装入して混練した後、単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどで溶融混練する方法が例示できる。これらのうちでも、多軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどの混練性能に優れた装置を使用すると、各成分がより均一に分散・反応された重合体組成物を得ることができるため好ましい。
【0091】
押出機を用いて溶融混練を行う場合、重合体E´と化合物Eは、予め混合した後にホッパーから供給しても良いし、一部の成分をホッパーから供給し、ホッパー部付近から押出機先端の間の任意の部分に設置した供給口よりその他の成分を供給しても良い。
【0092】
上記各成分を溶融混練する際の温度は、混合する各成分の融点のうち、最も高い融点以上とする。具体的には、好ましくは150~300℃、より好ましくは200~280℃、更に好ましくは230~270℃の範囲で溶融混練を行う。
【0093】
ポリプロピレンEMは190℃又は230℃での流動性に優れるものである。ポリプロピレンEMの190℃又は230℃、2.16Kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.01~400g/10分、より好ましくは0.1~300g/10分、更に好ましくは1~200g/10分の範囲である。このような範囲にあると、強化繊維の補強性や分散性に優れ、好ましい。
【0094】
ポリプロピレンEMの製造には、例えば、“実用 ポリマーアロイ設計”(井出文雄著、工業調査会(1996))、Prog. Polym. Sci.,24,81-142(1999)など、種々の方法を用いることができる。すなわち、溶液法、バルク法、溶融混練法のいずれの方法を用いてもよい。また、これらの方法を組み合わせて用いてもよい。
【0095】
ポリプロピレンEMを製造するにあたり、重合体E´中のエポキシ基と反応する基のモル数と、化合物Eのモル数の比を、1:0.2~10.0、好ましくは1:0.4~8.0、更に好ましくは1:2.0~8.0を満たす配合比にすることで、重合体E´と化合物Eの反応効率が高く、かつ、流動性に優れるポリプロピレンEMが得られる点で好ましい。
【0096】
また、ポリプロピレンEMは、ポリプロピレンEM100gに対し、エポキシ基の含有量は特に限定されないが、強化繊維の補強効果や耐水劣化性の向上効果を高めるために、好ましくは1mmol以上、より好ましくは5mmol以上、さらに好ましくは10mmol以上である。また、成形加工性、強化繊維の補強効果、分散性の向上効果、経済性を高めるためには、前記含有量は、好ましくは200mmol以下、より好ましくは150mmol以下、さらに好ましくは100mmol以下である。かかる観点で、ポリプロピレンEMを製造する際には、ポリプロピレンEM中のエポキシ基の含有量が上記範囲となるように、化合物Eの配合量を調整するのが良い。
【0097】
さらに、ポリプロピレンEMを製造するにあたり、重合体E´中のエポキシ基と反応する基と、化合物E中のエポキシ基との反応の制御も重要である。重合体E´中のエポキシ基と反応する基と、化合物E中のエポキシ基との反応の進行度合いは、例えば、以下の方法により調査することが可能である。
【0098】
重合体E´、及び反応により得られたポリプロピレンEMの熱プレスシ-トをそれぞれ作製した後に、赤外吸収分析装置を用いて赤外線吸収を測定する。得られたチャートから、重合体E´及びポリプロピレンEM中のエポキシ基と反応する基を有する化合物のピーク強度に起因する吸収帯(無水マレイン酸を用いた場合は、1790cm-1)の吸光度の、反応前後の吸光度を比較して、下記式を用いて反応率を計算できる。
反応率E(%)=XE/YE×100
XE=反応前重合体E´のエポキシ基と反応する基の吸光度-反応後ポリプロピレンEMのエポキシ基と反応する基の吸光度
YE=反応前重合体E´のエポキシ基と反応する基の吸光度
【0099】
ポリプロピレンEMについて上記方法で求めた反応率は、好ましくは20~100%、より好ましくは25~100%、更に好ましくは40~100%の範囲にある。
【0100】
また、ポリプロピレンEMは、上記のように化合物Eのエポキシ基が、重合体E´中のエポキシ基と反応する基と反応することで製造されるが、ポリプロピレンと結合している化合物Eに由来するエポキシ残基が重合体E´中に存在してもよく、それが強化繊維と相互作用し、補強性や分散性に寄与する。このエポキシ残基量は、IR測定で899~910cm-1にあるエポキシ基の収縮振動に起因するピークの大きさとして捉えることが可能である。
【0101】
ポリプロピレンEMは、2種以上の重合体E´を含んでいてもよく、2種以上の化合物Eを含んでいてもよい。
【0102】
また、ポリプロピレンEMには、本発明の目的を損なわない範囲で、公知のプロセス安定剤、耐熱安定剤、耐熱老化剤等を添加することも可能である。
【0103】
エポキシ基と反応する基を有するポリプロピレン(重合体E´)
エポキシ基と反応する基を有するポリプロピレン(重合体E´)は、ポリプロピレンに、エポキシ基と反応する化合物を導入することにより得ることができる。
【0104】
エポキシ基と反応する化合物としては、エポキシ基との反応性を有する活性水素を持つ基を有する化合物が挙げられ、具体的には、カルボン酸、アミン、フェノール、チオール等から由来する基を持つ化合物である。これらの中では、カルボン酸から由来する基を持つ化合物が好適に用いられ、中でも特に不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体が好ましい。本発明において、エポキシ基と反応する化合物は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0105】
エポキシ基と反応する化合物として不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体を用いる場合、カルボン酸基を1以上有する不飽和化合物、無水カルボン酸基を1以上有する不飽和化合物及びそれらの誘導体を挙げることができる。不飽和基としては、ビニル基、ビニレン基、不飽和環状炭化水素基などを挙げることができる。具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ノルボルネンジカルボン酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸などの不飽和カルボン酸、又はこれらの酸無水物あるいはこれらの誘導体(例えば酸ハライド、アミド、イミド、エステルなど)が挙げられる。具体的な化合物の例としては、塩化マレニル、マレニルイミド、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸無水物、マレイン酸ジメチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジメチル、シトラコン酸ジエチル、テトラヒドロフタル酸ジメチル、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸ジメチル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メタクリル酸アミノエチル及びメタクリル酸アミノプロピルなどを挙げることができる。
【0106】
これらの中で、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸無水物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メタクリル酸アミノプロピルが好ましい。更には、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸無水物などのジカルボン酸無水物であることが特に好ましい。特に、本発明において、エポキシ基と反応する化合物としては、無水マレイン酸が最も好ましい。
【0107】
エポキシ基と反応する化合物をポリプロピレンに導入する方法としては、種々の方法を採用することが可能であるが、例えば、ポリプロピレン主鎖にエポキシ基と反応する化合物をグラフト共重合する方法や、プロピレン等のオレフィンとエポキシ基と反応する化合物をラジカル共重合する方法等を例示することができる。以下に、グラフト共重合する場合とラジカル共重合する場合に分けて、具体的に説明する。
【0108】
グラフト共重合
重合体E´は、ポリプロピレン主鎖に対し、エポキシ基と反応する基を有する化合物をグラフト共重合することによって得ることが可能である。
【0109】
ポリプロピレン主鎖として用いられるポリプロピレンは、プロピレン単位を主成分とする単独重合体又は共重合体である。副成分が存在する場合、副成分のオレフィン単位として、プロピレン以外の炭素原子数2~20(C2~20)―好ましくはC2~10、より好ましくはC2~8―の脂肪族α-オレフィン、環状オレフィン、非共役ジエン、芳香族オレフィンが用いられてもよい。ここで、「主成分」とは、ポリプロピレン中のプロピレン単位の含有量が、通常50モル%以上であり、好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上である。前記副成分となりうるオレフィンの好ましい例として、エチレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、テトラシクロドデセン、ノルボルネン及びスチレンが挙げられる。また、当該ポリプロピレンとして、アイソタクチック構造、シンジオタクチック構造の両者ともに使用可能であり、立体規則性についても特段の制限はない。
【0110】
グラフト変性に用いるポリプロピレンの密度は、好ましくは、0.8~1.1g/cm3、より好ましくは0.8~1.05g/cm3、更に好ましくは0.8~1g/cm3である。ASTM D1238による190℃又は230℃、2.16kg荷重におけるポリプロピレンのメルトフローレート(MFR)は、通常0.01~500g/10分、好ましくは0.05~300g/10分、さらに好ましくは0.1~100g/10分である。ポリプロピレンの密度及びMFRがこの範囲にあれば、変性後のグラフト共重合体の密度、MFRも同程度となることからハンドリングしやすい。
【0111】
また、グラフト変性に用いられるポリプロピレンの結晶化度は、通常2%以上、好ましくは5%以上、さらに好ましくは10%以上である。結晶化度がこの範囲にあれば、変性後のグラフト共重合体のハンドリングに優れる。
【0112】
グラフト変性に用いられるポリプロピレンのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した数平均分子量(Mn)は、好ましくは5,000~500,000、さらに好ましくは10,000~100,000である。Mnがこの範囲にあれば、ハンドリングに優れる。数平均分子量は、プロピレン-エチレン系ポリオレフィンにおいては、コモノマー量(エチレン量)が10モル%未満であればポリプロピレン換算、10モル%以上であればプロピレン-エチレン換算(プロピレン含有量70モル%を基準)で求めることが可能である。
【0113】
上記のようなポリプロピレンの製造は、従来から公知のいずれの方法によっても行うことができる。例えば、チタン系触媒、バナジウム系触媒、メタロセン触媒などを用いて重合することができる。また、ポリプロピレンは、樹脂及びエラストマーのいずれの形態でもよく、アイソタクチック構造、シンジオタクチック構造の両者ともに使用可能であり、立体規則性についても特段の制限はない。市販の樹脂をそのまま利用することも可能である。
【0114】
重合体E´をグラフト共重合により得る場合には、上記のグラフト主鎖となるポリプロピレンに、エポキシ基と反応する化合物、及び必要に応じてその他のエチレン性不飽和単量体等をラジカル開始剤の存在下、グラフト共重合する。
【0115】
エポキシ基と反応する化合物をポリプロピレン主鎖にグラフトさせる方法については特に限定されず、溶液法、溶融混練法等、公知のグラフト重合法を採用することができる。
【0116】
ラジカル共重合
重合体E´は、エポキシ基と反応する化合物と、プロピレン等のオレフィンとをラジカル共重合することによっても得ることが可能である。前記オレフィンとしては、上述のグラフト主鎖となるポリオレフィンを形成する場合のオレフィンと同一のものを採用することが可能である。また、エポキシ基と反応する化合物も上述の通りである。
【0117】
エポキシ基と反応する化合物とオレフィンとをラジカル共重合させる方法については特に限定されず、公知のラジカル共重合法を採用することができる。
【0118】
グラフト共重合及びラジカル共重合などのいずれの共重合方法を採用する場合であっても、重合体E´は、次のような条件を満たすものが良い。
【0119】
重合体E´中におけるエポキシ基と反応する基の含有量は特に限定されないが、ポリプロピレンEMの骨格となる化合物Eと重合体E´との結合部分を増やして繊維強化ポリプロピレン組成物における強化繊維の補強性や分散性を高めるために、0.01重量%以上が好ましい。また、エポキシ基と反応する基の、化合物Eによる架橋を抑制してポリプロピレンEMの製造を容易にするために、前記含有量は10重量%以下が好ましく、より好ましくは3重量%以下、さらに好ましくは2重量%以下である。
【0120】
重合体E´の架橋を防止するためには、重合体E´の数平均分子量が低いこと、また、(エポキシ基と反応する基のモル数)/(重合体E´分子鎖のモル数)のモル比が小さいことが好ましい。これは即ち、重合体E´の一つの分子鎖上にエポキシ基と反応する基が複数でなく、なるべく単数で存在している場合には、化合物Eのエポキシ基が、重合体E´のエポキシ基と反応する基と反応する際、架橋及びゲル化することなく結合できることを意味している。
【0121】
重合体E´をグラフト重合により得る場合には、グラフト主鎖となるポリプロピレンがエチレン含有量の多い樹脂であると、エチレン-ブテン共重合体のようなα-オレフィン共重合量の多い樹脂に比較すると製造時に架橋しやすい傾向がある。そのため、エチレン含有量の多い樹脂をグラフト主鎖として用いて、かつ架橋を抑制して製造するためには、エポキシ基と反応する基が、重合体E´の一つの分子鎖上になるべく単数で存在するよう調整することが好ましい。
【0122】
また、グラフト主鎖となるポリプロピレンが熱分解により低分子量化しやすい樹脂である場合には、架橋による高粘度化の現象は起こりにくい。そのため、熱分解しやすい樹脂をグラフト主鎖として用いる場合には、エポキシ基と反応する基が、重合体E´の一つの分子鎖上に複数存在しても、高粘度化せずにポリプロピレンEMを製造できる場合がある。
【0123】
エポキシ基と反応する基を有する重合体E´のASTM D1238による荷重2.16kg、190℃又は230℃におけるメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.01~500g/10分、より好ましくは0.05~300g/10分である。上記範囲にあると、強化繊維の補強性や分散性の向上効果に優れたポリプロピレンEMが得られる。
【0124】
また、重合体E´の密度は、好ましくは0.8~1.1g/cm3、より好ましくは0.8~1.05g/cm3、更に好ましくは0.8~1g/cm3である。
【0125】
エポキシ基含有化合物(化合物E)
エポキシ基含有化合物(化合物E)は、好ましくは下記一般式(8)で示される繰り返し単位を有するポリエポキシドである。
【化1】
(式中、R
E1は2価の有機基を示し、R
E2及びR
E3は互いに独立して1価の有機基を示し、不斉炭素はエポキシド構造に反さないことを条件として任意の立体配置を示す。)
【0126】
ポリエポキシドの合成法は、特に限定されるものではないが、例えば有機ポリオレフィンを、二重結合のエポキシ化反応を促進する触媒の存在下で反応させることにより、ポリエポキシドを合成することができる。
【0127】
化合物Eのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めたポリスチレン換算数平均分子量(Mn)は、好ましくは400~500,000、より好ましくは1,000~10,000、更に好ましくは2,000~4,000である。数平均分子量(Mn)がこの範囲にあると、強化繊維の補強性や分散性の向上効果に優れたポリプロピレンEMが得られるため好ましい。
【0128】
化合物Eには、モノエポキシドを添加してもよく、単独又は複数のエポキシ基含有化合物を混合して使用することも可能である。
【0129】
なお、市販のエポキシ基含有化合物をそのまま使用することも可能である。市販のエポキシ基含有化合物としては、日産工業株式会社製 TEPIC-S、TEPIC-LやTEPIC-HPなどが挙げられる。
【0130】
化合物E及び得られたポリプロピレンEMにおけるエポキシ基含有量は、13C-NMR、IR、滴定法等により測定でき、エポキシド当量として把握することが可能である。13C-NMRでは52ppm、IRでは899~910cm-1のピ-クを観察する。
【0131】
13C-NMR測定は、たとえば次のようにして行われる。すなわち、試料0.35gをヘキサクロロブタジエン2.0mlに加熱溶解させる。この溶液をグラスフィルター(G2)で濾過した後、重水素化ベンゼン0.5mlを加え、内径10mmのNMRチューブに装入する。そして日本電子製GX-500型NMR測定装置を用い、120℃で13C-NMR測定を行う。積算回数は、10,000回以上とする。
【0132】
IR測定は、例えば、次のようにして行われる。すなわち、試料を250℃、3分で熱プレスしてシ-トを作製した後に、赤外分光光度計(日本分光製、FT-IR 410型)を用いて透過法で、該シートの赤外吸収スペクトルを測定する。測定条件は、分解能を2cm-1、積算回数を32回とする。
【0133】
透過法での赤外吸収スペクトルは、ランベルト・ベールの法則で示されるように、サンプル厚みに反比例し、吸光度そのものがサンプル中のエポキシ基の濃度をあらわすものではない。そのため、エポキシ基含有量を測定するためには、測定するサンプルの厚みを揃えるか、内部標準ピークを用いてエポキシ基のピーク強度を規格化する必要がある。
【0134】
IR測定によりポリプロピレンEMのエポキシ基含有量を測定する場合には、あらかじめエポキシ基の濃度が既知のサンプルを用いて、IR測定を行ない、899~910cm-1に現われるピークの吸光度と内部標準ピークの吸光度の比を用いて検量線を作成しておき、サンプルの測定値を検量線に代入し、濃度を求める。
【0135】
内部標準ピークとしては、ポリプロピレン骨格に由来するピークを用いても良いし、あらかじめ内部標準物質をサンプル中の濃度が一定となるように混合し、測定に用いても良い。
【0136】
含有量
本発明の炭素繊維含有ポリプロピレン組成物に含まれるポリプロピレン(成分1)、炭素繊維(成分2)、及び変性ポリプロピレン(成分3)の含有量について、成分1と成分2と成分3のそれぞれの重量の合計を100重量%として、成分1の含有量は30~98重量%、好ましくは50~90重量%、より好ましくは60~80重量%の範囲である。成分2の含有量は1~50重量%、好ましくは3~40重量%、より好ましくは10~30重量%の範囲である。成分3の含有量は1~20重量%、好ましくは3~30重量%、より好ましくは5~20重量%の範囲である。
【0137】
炭素繊維表面
本発明の炭素繊維含有ポリプロピレン組成物に含まれる炭素繊維(成分2)はその表面に、前記ポリプロピレン組成物の力学強度が高まるように、C-O結合、C=O結合、O-C=O結合、C-C結合、及びC-N結合を所定の量で含む。なお、前記及び下記態様のいずれでも、「C-O結合」は「O-C=O結合」中のC-O結合を含めず、「C=O結合」は「O-C=O結合」中のC=O結合を含めない。
【0138】
一態様において、成分2は、C-O結合、C=O結合、O-C=O結合、C-C結合及びC-N結合を含み、C-O結合、C=O結合、O-C=O結合、C-C結合及びC-N結合のそれぞれのスペクトル面積の合計を100%として、C-O結合の含有量が1~24%、好ましくは3~20%、より好ましくは5~15%の範囲である。
【0139】
一態様において、成分2は、C-O結合、C=O結合、O-C=O結合、C-C結合及びC-N結合を含み、C-O結合、C=O結合、O-C=O結合、C-C結合及びC-N結合のそれぞれのスペクトル面積の合計を100%として、C=O結合及びO-C=O結合のそれぞれの含有量の合計が4~15%、好ましくは5~12%、より好ましくは5~8%の範囲である。
【0140】
一態様において、成分2は、C-O結合、C=O結合、O-C=O結合、C-C結合及びC-N結合を含み、C-O結合、C=O結合、O-C=O結合、C-C結合及びC-N結合のそれぞれのスペクトル面積の合計を100%として、C-O結合の含有量が5~24%、好ましくは3~20%、より好ましくは5~15%の範囲であり、かつ、C=O結合及びO-C=O結合のそれぞれの含有量の合計が4~15%、好ましくは5~12%、より好ましくは5~8%の範囲である。
【0141】
炭素繊維表面における結合成分の算出方法
炭素繊維表面の各結合量は、X線光電子分光法装置により測定され得る。必要に応じ、測定前に、未反応のサイジング剤を除去する等の前処理を行ってもよい。
励起源として、単色化したAl Kα線(1486.6eV)やMg Kα線(1253.6eV)などの特性X線を用いることができる。
得られるスペクトルは、公知の方法で各結合に波形分離できる。
例えば、実施例に記載の方法で炭素繊維表面における各結合成分量を算出できる。
【0142】
成形体
本発明の炭素繊維含有ポリプロピレン組成物は、例えば、下記方法により成形体を製造するために使用される。
成形体の製造方法としては、前記ポリプロピレン組成物を溶融し、成形して成形体を得る工程を有する成形体の製造方法が挙げられる。
成形方法としては、押出成形法、及び射出成形法が挙げられる。押出成形により、例えばシート状の成形体が得られる。射出成形により、射出成形体が得られる。
射出成形法としては、例えば、一般的な射出成形法、射出発泡成形法、超臨界射出発泡成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、ガスアシスト射出成形法、サンドイッチ成形法、サンドイッチ発泡成形法、及びインサート・アウトサート成形法が挙げられる。
【0143】
用途
本発明の炭素繊維含有ポリプロピレン組成物及び成形体は、例えば、自動車内装部品及び外装部品等の自動車部材として使用できる。
【実施例】
【0144】
以下、実施例及び比較例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はそれに限定されない。
【0145】
炭素繊維表面における結合成分の算出方法
【0146】
サイジング剤の除去
ダイオネクス社製の高速溶媒抽出装置ASE-200の設定温度を80℃とし、炭素繊維0.2gを容積が11mlの抽出セル容器にいれて、高速溶媒抽出装置ASE-200に設置した。テトラヒドロフラン(関東化学、特級、安定剤不含)11mlを抽出セル容器に注入後、抽出セル容器内の圧力を1000psiに加圧し、15分間保持した。窒素を用いて、抽出セル容器の排出口からテトラヒドロフランを約半分ほど追い出し、再び抽出セル容器内のテトラヒドロフランが11mlになるまで注入後、抽出セル容器内の圧力を1000psiに加圧し、10分間保持した。さらにもう一度、窒素を用いて、抽出セル容器の排出口からテトラヒドロフランを約半分ほど追い出し、再び抽出セル容器内のテトラヒドロフランが11mlになるまで注入後、抽出セル容器内の圧力を1000psiに加圧し、10分間保持した。その後、抽出セル容器に窒素を2分間注入し、抽出セル容器の排出口からテトラヒドロフランを追い出した。抽出セル容器から炭素繊維を取り出し、40℃で少なくとも15時間真空乾燥した。
【0147】
X線光電子分光法(XPS)分析
次いで、上述の作業を施した炭素繊維をX線光電子分光法装置(島津/KRATOS社製AXIS ULTRA DLD)に設置した。X線源として、単色化したAl Kα(1486.6eV)を用いてこれを励起光とした。出力は、管電流を10mA、管電圧を15 kVにそれぞれ設定し、試料法線と光電子取り出し方向とのなす角度で定義される光電子取り出し角度を0°として測定した。得られた炭素1sスペクトルのバックグラウンドをShirley法により除去した。
【0148】
バックグラウンドを除去した炭素1sスペクトルに対して、Lorentz関数の割合を30%としたGauss-Lorentz複合関数を用い、Composites: Part A 90 (2016) 653-661 (Bo Gao et al.)に記載されている方法に従い、C-C結合成分、C-N結合成分、C-O結合成分、C=O結合成分、O-C=O結合成分に由来するピークにそれぞれ波形分離した。
【0149】
波形分離により得られたC-C結合成分、C-N結合成分、C-O結合成分、C=O結合成分、O-C=O結合成分それぞれのスペクトル面積を求め、C-C結合成分、C-N結合成分、C-O結合成分、C=O結合成分、O-C=O結合成分の合計量100%に対する、C-O結合成分のスペクトルの面積が占める割合及びC=O結合成分のスペクトルの面積とO-C=O結合成分のスペクトルの面積の合計量が占める割合を算出した。
【0150】
変性ポリプロピレンの合成例
【0151】
無水マレイン酸変性ポリプロピレン-1
WO2020/009090に記載の合成例2を用いた。
【0152】
カルボジイミド変性ポリプロピレン-1
上記で合成した無水マレイン酸変性ポリプロピレン-1を100重量%と、カルボジイミド基含有化合物(日清紡社製、商品名カルボジライト(登録商標)HMV-15CA(カルボジイミド当量262g/モル)を1.7重量%と、酸化防止剤1(住友化学株式会社製 スミライザーGA80)を0.2重量%と、酸化防止剤2(住友化学株式会社製 スミライザーGP)を0.2重量%混合し、二軸混練機(株式会社テクノベル製、KZW-15、スクリュー径15mm、L/D=45、シリンダー温度250℃、回転数300rpm、吐出2kg/hr)にて真空ベントから脱気しながら、溶融混練し、カルボジイミド変性ポリプロピレン-1を得た。得られたカルボジイミド変性ポリプロピレン-1のMFR(230℃、2.16kg荷重)は18g/10分であった。
【0153】
エポキシ変性ポリプロピレン-1
上記で合成した無水マレイン酸変性ポリプロピレン-1を100重量%と、エポキシ基含有化合物(日産化学工業株式会社製、商品名TEPIC―S(エポキシ当量105g/eq)を0.67重量%と、酸化防止剤1を0.2重量%と、酸化防止剤2を0.2重量%混合し、二軸混練機(株式会社テクノベル製、KZW-15、スクリュー径15mm、L/D=45、シリンダー温度250℃、回転数300rpm、吐出2kg/hr)にて真空ベントから脱気しながら、溶融混練し、エポキシ変性ポリプロピレン-1を得た。得られたエポキシ変性ポリプロピレン-1のMFR(230℃、2.16kg荷重)は69g/10分であった。
【0154】
炭素繊維2
カーボンファイバーリサイクル工業社製CFRI T8S103Cを100mLの磁性るつぼに約10g量り取り、電気炉(株式会社東京技術研究所製TFD-20C-Z)内に入れた。電気炉を室温から500℃まで約65℃/minで昇温し、500℃下で1時間静置し、炭素繊維2を得た。
得られた炭素繊維2を上述に記載の方法でサイジング剤の除去を行い、上述に記載の方法でC-O結合の含有量とC=O結合及びO-C=O結合のそれぞれの含有量の合計を測定したところ、C-O結合の含有量は19.3%であり、C=O結合及びO-C=O結合のそれぞれの含有量の合計は11.3%であった。
【0155】
使用した材料
実施例及び比較例では、以下の材料を使用した。
【0156】
1.ポリプロピレン(成分1)
ポリプロピレン単独重合体1(住友化学株式会社製ノーブレンHR100EG)
MFR(230℃、荷重21.2N):23g/10分
融点:164℃
ポリプロピレン単独重合体2(住友化学株式会社製ノーブレンHU100EG)
MFR(230℃、荷重21.2N):100g/10分
融点:164℃
【0157】
2.炭素繊維(成分2)
炭素繊維1(カーボンファイバーリサイクル工業社製CFRI T8S103C)
C-O結合:5.2%、C=O結合及びO-C=O結合の合計:5.8%
炭素繊維2(炭素繊維-1を500℃で1時間加熱処理)
C-O結合:19.3%、C=O結合及びO-C=O結合の合計:11.3%
炭素繊維3(帝人株式会社製Tenax-A PCS171200)
C-O結合:14.2%、C=O結合及びO-C=O結合の合計:7.3%
炭素繊維4(帝人株式会社製Tenax-J IM C443)
C-O結合:24.7%、C=O結合及びO-C=O結合の合計:2.7%
炭素繊維5(SGLカーボンジャパン株式会社製SIGRAFIL C C6―4.0/240-T130)
C-O結合:27.4%、C=O結合及びO-C=O結合の合計:3.1%
【0158】
3.変性ポリプロピレン(成分3)
変性ポリプロピレン1
上記合成例の無水マレイン酸変性ポリプロピレン
変性ポリプロピレン2
上記合成例のカルボジイミド変性ポリプロピレン
変性ポリプロピレン3
上記合成例のエポキシ変性ポリプロピレン
【0159】
4.その他の材料
酸化防止剤3:BASFジャパン株式会社製 イルガノックス1010
酸化防止剤4:BASFジャパン株式会社製 イルガフォス168
【0160】
溶融混錬及び射出成形体の製造
【0161】
実施例1
ポリプロピレン単独重合体1 70重量%と、変性ポリプロピレン1 10重量%と、炭素繊維1 20重量%と、ポリプロピレン単独重合体1と変性ポリプロピレン1と炭素繊維1の合計100重量部に対して、酸化防止剤3 0.2重量部と、酸化防止剤4 0.2重量部とを混合し、混合物を得た。混合物を40mm単軸押出機(VS40-28型ベント式押出機、田辺プラスチックス社製)により、シリンダー温度220℃、スクリュー回転数100rpmにて溶融混錬を行い、ペレット化し、炭素繊維含有ポリプロピレン組成物を得た。得られた炭素繊維含有ポリプロピレン組成物を、射出成形機(株式会社名機製作所製M-70CSJ)を用いて、シリンダー温度220℃、金型温度50℃、射出速度20mm/秒の条件で射出成形を行い、ISO試験片の射出成形体を得た。
【0162】
実施例2~8及び比較例1~4
表1に示した材料を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例2~8及び比較例1~4の炭素繊維含有ポリプロピレン組成物を製造した。
【0163】
物性の評価
1.メルトマスフローレイト(単位:g/10分)
JIS K 7210に規定された方法に従って、測定温度230℃で、荷重2.16kgで、メルトマスフローレイトを測定した。
【0164】
2.密度(単位:g/cm3)
上記の「溶融混錬及び射出成形体の製造」に記載の成形方法によって成形された成形体を80mm×10mm×4mmのサイズに切り出したものを試験片として用いて、JIS K7112に規定のA法である水中置換法に従って、密度を測定した。
【0165】
3.引張り破断強度(単位:MPa)
上記の「溶融混錬及び射出成形体の製造」に記載の成形方法によって成形された厚みが4mmである試験片を用いて、ISO 527-2に規定された方法に従って、引張り速度50mm/分で、引張り破断強度(US)を測定した。
【0166】
4.曲げ強度(単位:MPa)
上記の「溶融混錬及び射出成形体の製造」に記載の成形方法によって成形された厚みが4mmである試験片を用いて、ISO 178に規定された方法に従って、荷重速度2.0mm/分で、曲げ強度(FS)を測定した。
【0167】