(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】光音響波測定装置、方法、プログラム、記録媒体
(51)【国際特許分類】
G01N 29/24 20060101AFI20240122BHJP
A61B 8/13 20060101ALI20240122BHJP
G01N 29/44 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
G01N29/24
A61B8/13
G01N29/44
(21)【出願番号】P 2020074617
(22)【出願日】2020-04-20
【審査請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390005175
【氏名又は名称】株式会社アドバンテスト
(73)【特許権者】
【識別番号】504202472
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人情報・システム研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100113354
【氏名又は名称】石井 総
(72)【発明者】
【氏名】アート スブパアサ
(72)【発明者】
【氏名】島野 美保子
(72)【発明者】
【氏名】浅野 祐太
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 いまり
(72)【発明者】
【氏名】伊田 泰一郎
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 秀明
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-063516(JP,A)
【文献】特開2017-164198(JP,A)
【文献】国際公開第2010/024290(WO,A1)
【文献】特開2010-035806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - A61B 8/15
G01N 21/00 - G01N 21/01
G01N 21/17 - G01N 21/61
G01N 29/00 - G01N 29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一波長のパルス光が照射されることにより測定対象において発生した光音響波の波形を取得する波形取得部と、
前記波形と前記測定対象の種類との対応関係を記録する対応関係記録部と、
取得された前記波形と、前記対応関係記録部の記録内容とに基づき、前記測定対象の種類を特定する種類特定部と、
を備え、
前記波形が、時間と前記光音響波の強度との対応関係を示すものである、
光音響波測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光音響波測定装置であって、
前記対応関係は、前記波形と前記測定対象の種類とを教師データとして、機械学習により得られたものである、
光音響波測定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の光音響波測定装置であって、
前記種類特定部により特定された種類ごとに表示態様を変更して、前記測定対象の画像を表示する画像表示部を備えた光音響波測定装置。
【請求項4】
請求項1に記載の光音響波測定装置であって、
前記対応関係が、前記波形におけるノイズの閾値である、
光音響波測定装置。
【請求項5】
請求項1に記載の光音響波測定装置であって、
前記対応関係が、前記波形における強度の閾値である、
光音響波測定装置。
【請求項6】
単一波長のパルス光が照射されることにより測定対象において発生した光音響波の波形を取得する波形取得工程と、
前記波形と前記測定対象の種類との対応関係を記録する対応関係記録工程と、
取得された前記波形と、前記対応関係記録工程の記録内容とに基づき、前記測定対象の種類を特定する種類特定工程と、
を備え、
前記波形が、時間と前記光音響波の強度との対応関係を示すものである、
光音響波測定方法。
【請求項7】
単一波長のパルス光が照射されることにより測定対象において発生した光音響波の波形を取得する波形取得部を有する光音響波測定装置による測定処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記測定処理が、
前記波形と前記測定対象の種類との対応関係を記録する対応関係記録工程と、
取得された前記波形と、前記対応関係記録工程の記録内容とに基づき、前記測定対象の種類を特定する種類特定工程と、
を備え、
前記波形が、時間と前記光音響波の強度との対応関係を示すものである、
プログラム。
【請求項8】
単一波長のパルス光が照射されることにより測定対象において発生した光音響波の波形を取得する波形取得部を有する光音響波測定装置による測定処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータによって読み取り可能な記録媒体であって、
前記測定処理が、
前記波形と前記測定対象の種類との対応関係を記録する対応関係記録工程と、
取得された前記波形と、前記対応関係記録工程の記録内容とに基づき、前記測定対象の種類を特定する種類特定工程と、
を備え、
前記波形が、時間と前記光音響波の強度との対応関係を示すものである、
記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光音響波の測定に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、光吸収体に対し特定波長のパルス光を照射すると、光エネルギーが吸収される。これにより、光吸収体において、瞬間的な断熱膨張が起き、超音波が発生する。この超音波を圧電素子などのセンサで取得し、画像化することで光吸収体の三次元的な分布を知ることができる。可視化したい光吸収体に合わせて照射する光の波長を変えることで、特定の光吸収体のみを画像化することができる。多波長測定を行い波長ごとの振幅差を利用して測定対象を分類することもできる。
【0003】
なお、組成物や組織の測定に関しては、特許文献1、特許文献2および特許文献3に記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2005-520164号公報
【文献】特表2006-512931号公報
【文献】特表2015-521282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような従来技術によれば、可視化したい光吸収体の種類を変更するためには、照射する光の波長を変えるか多波長化する必要があるが、それには労力がかかる。
【0006】
そこで、本発明は、単一波長のパルス光を複数種類の光吸収体に照射することにより、光吸収体の種類を特定することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる光音響波測定装置は、単一波長のパルス光が照射されることにより測定対象において発生した光音響波の波形を取得する波形取得部と、前記波形と前記測定対象の種類との対応関係を記録する対応関係記録部と、取得された前記波形と、前記対応関係記録部の記録内容とに基づき、前記測定対象の種類を特定する種類特定部とを備えるように構成される。
【0008】
上記のように構成された光音響波測定装置によれば、波形取得部が、単一波長のパルス光が照射されることにより測定対象において発生した光音響波の波形を取得する。対応関係記録部が、前記波形と前記測定対象の種類との対応関係を記録する。種類特定部が、取得された前記波形と、前記対応関係記録部の記録内容とに基づき、前記測定対象の種類を特定する。
【0009】
なお、本発明にかかる光音響波測定装置は、前記対応関係が、前記波形と前記測定対象の種類とを教師データとして、機械学習により得られたものであるようにしてもよい。
【0010】
なお、本発明にかかる光音響波測定装置は、前記種類特定部により特定された種類ごとに表示態様を変更して、前記測定対象の画像を表示する画像表示部を備えるようにしてもよい。
【0011】
本発明は、単一波長のパルス光が照射されることにより測定対象において発生した光音響波の波形を取得する波形取得工程と、前記波形と前記測定対象の種類との対応関係を記録する対応関係記録工程と、取得された前記波形と、前記対応関係記録工程の記録内容とに基づき、前記測定対象の種類を特定する種類特定工程とを備える光音響波測定方法である。
【0012】
本発明は、単一波長のパルス光が照射されることにより測定対象において発生した光音響波の波形を取得する波形取得部を有する光音響波測定装置による測定処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記測定処理が、前記波形と前記測定対象の種類との対応関係を記録する対応関係記録工程と、取得された前記波形と、前記対応関係記録工程の記録内容とに基づき、前記測定対象の種類を特定する種類特定工程とを備えたプログラムである。
【0013】
本発明は、単一波長のパルス光が照射されることにより測定対象において発生した光音響波の波形を取得する波形取得部を有する光音響波測定装置による測定処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータによって読み取り可能な記録媒体であって、前記測定処理が、前記波形と前記測定対象の種類との対応関係を記録する対応関係記録工程と、取得された前記波形と、前記対応関係記録工程の記録内容とに基づき、前記測定対象の種類を特定する種類特定工程とを備えた記録媒体である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態にかかる光音響波測定装置1の構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】測定対象2が黒色ゴムの場合の光音響波の波形(
図2(a))、測定対象2が黒色プラスチックの場合の光音響波の波形(
図2(b))を示すグラフである。
【
図3】画像表示部18の表示態様の一例を示す図である。
【
図4】光音響波測定装置1による測定対象2の走査の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態にかかる光音響波測定装置1の構成を示す機能ブロック図である。本発明の実施形態にかかる光音響波測定装置1は、パルス光源10、波形取得部12、対応関係記録部14、種類特定部16、画像表示部18を備える。
【0017】
パルス光源10は、例えばレーザであり、単一波長のパルス光を測定対象2に照射する。
【0018】
波形取得部12は、例えば圧電素子であり、単一波長のパルス光が照射されることにより測定対象2において発生した光音響波の波形を取得する。
【0019】
対応関係記録部14は、測定対象2において発生した光音響波の波形と測定対象の種類との対応関係を記録する。
【0020】
図2は、測定対象2が黒色ゴムの場合の光音響波の波形(
図2(a))、測定対象2が黒色プラスチックの場合の光音響波の波形(
図2(b))を示すグラフである。なお、
図2において、縦軸は光音響波の強度[dB]、横軸は時間[マイクロ秒]である。
【0021】
測定対象2が黒色ゴムであっても(
図2(a)参照)、黒色プラスチックであっても(
図2(b)参照)、測定対象2において発生した光音響波の強度は、最初にほぼ一定値をとり(波形部分W0)、次に弱くなり(波形部分W1)、極小値をとり(波形部分W2)、その後、強くなっていく(波形部分W3)。
【0022】
しかし、測定対象2(黒色ゴムおよび黒色プラスチック)に、単一波長のパルス光を照射しているにもかかわらず、黒色ゴムの方が(
図2(a)参照)、黒色プラスチックの方よりも(
図2(b)参照)、(1)波形部分W1およびW3において、ノイズがより大きく乗っている、(2)波形部分W2における強度が、より弱い、といった差異がある。
【0023】
このように、単一波長のパルス光を照射している場合であっても、測定対象2において発生した光音響波の波形と、測定対象2の種類とには相関関係がある。
【0024】
対応関係記録部14は、測定対象2において発生した光音響波の波形と、測定対象2の種類との対応関係として、例えば、波形部分W1およびW3におけるノイズの閾値(ノイズが閾値以上の場合は、黒色ゴム)および波形部分W2における強度の閾値(強度が閾値以下の場合は、黒色ゴム)を記録するようにしてもよい。
【0025】
ただし、測定対象2において発生した光音響波の波形と、測定対象2の種類とを教師データとして、機械学習により対応関係を得て、対応関係記録部14に記録すると、高精度な分類が可能となるので好ましい。
【0026】
種類特定部16は、波形取得部12により取得された光音響波の波形と、対応関係記録部14の記録内容とに基づき、測定対象2の種類を特定する。例えば、種類特定部16は、波形部分W1およびW3のノイズおよび波形部分W2における強度を、対応関係記録部14に記録された閾値と比較して、測定対象2の種類(黒色ゴムまたは黒色プラスチック)を特定する。
【0027】
画像表示部18は、種類特定部16により特定された種類ごとに表示態様を変更して、測定対象2の画像を表示する。
【0028】
図3は、画像表示部18の表示態様の一例を示す図である。測定対象2は平板状であり、黒色ゴムの領域および黒色プラスチックの領域を有する。ここで、光音響波測定装置1に対する測定対象2の相対位置が既知であるものとする。また、測定対象2と平行に、光音響波測定装置1を移動させて、測定対象2を走査するものとする。すると、波形取得部12が、測定対象2のどの部分から発生した光音響波の波形を取得しているかが分かるので、測定対象2のどの部分が、どのような種類のもの(黒色ゴムまたは黒色プラスチック)かが、種類特定部16により特定できる。そこで、画像表示部18が、種類特定部16により特定された種類ごとに表示態様を変更して、測定対象2の画像を表示する。測定対象2の画像は、黒色ゴムの領域2aおよび黒色プラスチックの領域2bを、表示態様を変更して表示するものである。
図3においては、黒色ゴムの領域2aおよび黒色プラスチックの領域2bを、塗りつぶしのパターンを変えて図示しているが、表示態様の変更はそれに限定されない(例えば、黒色ゴムの領域2aおよび黒色プラスチックの領域2bを色分けして表示してもよい)。
【0029】
次に、本発明の実施形態の動作を説明する。
【0030】
まず、測定対象2と平行に光音響波測定装置1を移動させて、測定対象2を走査する。
図4は、光音響波測定装置1による測定対象2の走査の一例を示す斜視図である。
図4を参照して、光音響波測定装置1をX方向およびY方向に移動させて、測定対象2を走査する。パルス光源10から単一波長のパルス光が測定対象2に照射されると、測定対象2において光音響波が発生し、波形取得部12によりその波形が取得される。光音響波の波形は、種類特定部16に与えられる。種類特定部16は、さらに、対応関係記録部14の記録内容を参照して、測定対象2の種類を特定する。測定対象2の種類は、画像表示部18に与えられる。画像表示部18は、種類特定部16により特定された種類ごとに表示態様を変更して、測定対象2の画像を表示する(
図3参照)。
【0031】
本発明の実施形態によれば、単一波長のパルス光を複数種類の光吸収体に照射することにより、光吸収体の種類を特定することができる。
【0032】
また、上記の実施形態は、以下のようにして実現できる。CPU、ハードディスク、メディア(USBメモリ、CD-ROMなど)読み取り装置を備えたコンピュータに、上記の各部分、例えば対応関係記録部14、種類特定部16、画像表示部18を実現するプログラムを記録したメディアを読み取らせて、ハードディスクにインストールする。このような方法でも、上記の機能を実現できる。
【符号の説明】
【0033】
1 光音響波測定装置
2 測定対象
2a 黒色ゴムの領域
2b 黒色プラスチックの領域
W1、W2、W3 波形部分
10 パルス光源
12 波形取得部
14 対応関係記録部
16 種類特定部
18 画像表示部