(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】シリコーン系コーティング組成物およびこれを含むシリコーン系離型フィルム
(51)【国際特許分類】
C09D 183/04 20060101AFI20240122BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20240122BHJP
C09D 183/07 20060101ALI20240122BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20240122BHJP
C09D 183/05 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
C09D183/04
C09D7/61
C09D183/07
C09D7/20
C09D183/05
(21)【出願番号】P 2022545895
(86)(22)【出願日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 KR2021011406
(87)【国際公開番号】W WO2022045785
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2022-07-27
(31)【優先権主張番号】10-2020-0110321
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ヒョン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ボム・パク
(72)【発明者】
【氏名】ジヒェ・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】クワン・ス・ソ
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-136029(JP,A)
【文献】特開2008-265227(JP,A)
【文献】特開平08-073809(JP,A)
【文献】特開2014-028954(JP,A)
【文献】特開2017-077688(JP,A)
【文献】特開2010-174233(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0079914(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2004-0036400(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒、シリコーン系樹脂、シリコーン系架橋剤、および金属触媒を含み、
重量平均分子量は25,000g/mol以上70,000g/mol以下である下記化学式
2で表されるシリコーン系化合物をさらに含むシリコーン系コーティング組成物
であって、
下記化学式2で表されるシリコーン系化合物の含有量は、前記有機溶媒100重量部に対して4重量部以上、60重量部以下である、シリコーン系コーティング組成物:
【化1】
前記化学式
2において、
R
4
~R
10
は、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換のアルキル基、または置換もしくは非置換のシクロアルキル基であり、
mは、600~1500の整数である。
【請求項2】
前記シリコーン系樹脂は、ビニル末端ポリジメチルシロキサン(vinyl terminated polydimethylsiloxane)である、請求項1に記載のシリコーン系コーティング組成物。
【請求項3】
前記化学式2で表されるシリコーン系化合物のR
4~R
10は、それぞれ独立して、水素、または置換もしくは非置換のアルキル基で
ある、請求項
1に記載のシリコーン系コーティング組成物。
【請求項4】
前記シリコーン系コーティング組成物は、液状組成物の形態である、請求項1に記載のシリコーン系コーティング組成物。
【請求項5】
前記有機溶媒100重量部に対して、
前記シリコーン系樹脂5~30重量部;
前記シリコーン系架橋剤0.05~5重量部;
前記金属触媒0.5~10重量部;および
前記化学式
2で表されるシリコーン系化合物4~60重量部を含む、請求項
1に記載のシリコーン系コーティング組成物。
【請求項6】
前記有機溶媒は、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、およびアセトンのいずれか1つである、請求項
1に記載のシリコーン系コーティング組成物。
【請求項7】
基材層と、
請求項1に記載のシリコーン系コーティング組成物の硬化物であるコーティング層を含むシリコーン系離型フィルム。
【請求項8】
前記コーティング層の厚さは、30nm~500nmである、請求項
7に記載のシリコーン系離型フィルム。
【請求項9】
前記基材層の厚さは、10μm~500μmである、請求項
7に記載のシリコーン系離型フィルム。
【請求項10】
前記基材層は、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、紙、およびこれらの組み合わせからなる群より選択された1つを含む、請求項
7に記載のシリコーン系離型フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年8月31日付で韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2020-0110321号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書は、シリコーン系コーティング組成物およびこれを含むシリコーン系離型フィルムに関する。
【背景技術】
【0003】
離型フィルムは、主に粘着剤の保護、キャリアの役割およびコーティング基材などの用途に適用されている。
【0004】
その構成的な面からみると、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、紙、ポリプロピレン(PP)、およびポリビニルクロライド(PVC)のような基材フィルムに離型性を付与できるコーティング液が塗布されている構造からなっている。
【0005】
このような離型フィルムの主な役割の一つは粘着剤のキャリアの役割であって、必要な所まで運んで適切に除去されることである。
【0006】
IT用に使用される粘着剤の場合、段差を埋める能力を極大化させるために粘着剤がソフト化されており、これによって離型フィルムを除去する時にかかる力である離型剥離力は増大している。
【0007】
この部分が問題になるのは、離型フィルムを除去する工程において自動化工程からなっており、離型フィルムを除去する力が適切にセットされている。
【0008】
しかし、粘着剤のソフト化により離型フィルムの除去は困難になっており、極超軽剥離の離型フィルムに対する必要性が台頭している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、末端にモノビニル構造を含むシリコーン系化合物を含むことにより、コーティング層の架橋密度を低下させてコーティング層の柔軟性(Flexibility)を極大化させ、離型剥離力を低下させることができ、シリコーン転写およびブロッキング問題とは無縁のシリコーン系コーティング組成物を提供しようとする。
【0011】
本発明は、シリコーン系コーティング組成物の硬化物であるコーティング層を含むシリコーン系離型フィルムを提供しようとする。
【0012】
ただし、本発明が解決しようとする課題は上記の課題に制限されず、言及されていないさらに他の課題は下記の記載から当業者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、シリコーン系樹脂、シリコーン系架橋剤、および金属触媒を含み、重量平均分子量は25,000g/mol以上70,000g/mol以下である下記化学式1で表されるシリコーン系化合物をさらに含むシリコーン系コーティング組成物を提供する:
【0014】
【0015】
前記化学式1において、
R1~R3は、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換のアルキル基、または置換もしくは非置換のシクロアルキル基であり、
nは、1~15000の整数である。
【0016】
本発明は、基材層と、前記シリコーン系コーティング組成物の硬化物であるコーティング層とを含むシリコーン系離型フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るシリコーン系コーティング組成物は、末端にモノビニル構造を含むシリコーン系化合物をさらに含むことにより、コーティング層の架橋密度を低下させてコーティング層の柔軟性を極大化させ、離型剥離力を低下させることができ、シリコーン転写およびブロッキング問題とは無縁のシリコーン系離型フィルムを提供することができる。
【0018】
本発明に係るシリコーン系離型フィルムは、既存の超軽剥離の離型製品に比べて粘着剤の物性を改善させることができるという利点がある。
【0019】
本発明の効果は上記の効果に限定されるものではなく、言及されていない効果は本願明細書および添付した図面から当業者に明確に理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の理解のためにより詳細に説明する。
本発明に係るシリコーン系コーティング組成物およびこれを含むシリコーン系離型フィルムについて以下に詳述するが、この時、使用される技術用語および科学用語において他に定義がなければ、この発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が通常理解している意味を有し、下記の説明において本発明の要旨を不必要にあいまいにしうる公知の機能および構成に関する説明は省略する。
【0021】
本明細書において使用される用語を定義すれば、下記の通りである。
本願明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに包含できることを意味する。
【0022】
本願明細書全体において、ある部材が他の部材の「上に」位置しているとする時、これは、ある部材が他の部材に接している場合のみならず、2つの部材の間にさらに他の部材が存在する場合も含む。
【0023】
本願明細書全体において、「重量部」とは、各成分間の重量の比率を意味することができる。
本願明細書全体において、「1つ以上」とは、例えば、「1、2、3、4または5、特に1、2、3または4、より特に1、2または3、さらにより特に1または2」を意味する。
【0024】
本願明細書全体において、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)およびZ平均分子量(Mz+1)は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC、gel permeation chromatography、Water社製)を用いて測定した標準ポリスチレンに対する換算数値である。しかし、前記重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)およびZ平均分子量(Mz+1)はこれに限定されるものではなく、本発明の属する技術分野にて知られた他の方法で測定可能である。
【0025】
本願明細書全体において、コーティング層の離型剥離力は、コーティング層をTesa7475標準粘着テープに2kgの荷重で3回往復圧着して付着させ、設定された温度(70℃)で設定された時間(1日)保管した後、測定機器(Cheminstruments社/AR-1000)を用いて、180゜の剥離角度、0.3m/minの剥離速度によって測定したコーティング層を剥離する平均的な力を意味することができる。この時、測定基準としてはFinal Test Method No.10を適用することができる。
【0026】
本願明細書全体において、コーティング層の残留接着率は、標準テープを2つ用意した。1つの標準テープをSUS板に付着させた。他の1つの標準テープを実施例および比較例のシリコーン系離型フィルムに付着させて20時間保管後に引き剥がし、引き剥がした標準テープをSUS板に付着させた。
【0027】
SUS板に付着している標準テープの剥離力を測定して、何ら処理なしに直接SUS板に付着していた標準テープの剥離力に対する、実施例および比較例の離型フィルムに付着後にSUS板に付着していた標準テープの剥離力の比率(%)から残留粘着率を評価した。
【0028】
本願明細書全体において、コーティング層の基材密着性は、離型フィルムを一定期間ごとに常温(20℃、40%RH)に放置した後、当該離型フィルムを耐摩擦性テスト機に有機溶剤のトルエン(Toluene)をガーゼにつけて3回往復し、コーティング層が脱落した時の期間を測定したことを意味する。
【0029】
本願明細書全体において、「置換もしくは非置換の」とは、重水素;ハロゲン基;シアノ基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;カルボニル基;エステル基;イミド基;アミノ基;ホスフィンオキシド基;アルコキシ基;シクロアルコキシ基;アリールオキシ基;ヘテロシクリルオキシ基;アルキルチオキシ基;アリールチオキシ基;アルキルスルホキシ基;アリールスルホキシ基;シリル基;カルボシリル基;ホウ素基;アルキル基;シクロアルキル基;アルケニル基;アルキニル基;アリール基;アルアルキル基;アルアルケニル基;アルキルアリール基;アルキルアミン基;アラルキルアミン基;ヘテロアリールアミン基;アリールアミン基;アリールホスフィン基;またはN、O、およびS原子のうちの1個以上を含むヘテロアリールからなる群より選択された1個以上の置換基で置換もしくは非置換であるか、前記例示された置換基のうち2以上の置換基が連結された置換もしくは非置換であることを意味する。
【0030】
本願明細書全体において、「2以上の置換基が連結された置換基」とは、ビフェニル基であってもよい。すなわち、ビフェニル基は、アリール基であってもよく、2個のフェニル基が連結された置換基と解釈されてもよい。
【0031】
本明細書において、用語「重水素」とは、最も一般的な同位元素の略2倍の質量、すなわち約2原子質量単位の質量を有する水素の安定した同位元素を指す。
本願明細書全体において、「ハロゲン基」とは、フルオロ(F)、クロロ(Cl)、ブロモ(Br)、またはヨード(I)原子を指す。
【0032】
本明細書において、用語「シアノ基」または「ニトリル基」とは、-C≡N基を意味する。
本願明細書全体において、「イソシアネート基」とは、-N≡C=O基を意味する。
【0033】
本願明細書全体において、「ニトロ基」とは、-NO2基を指す。
本願明細書全体において、「ヒドロキシ基」とは、-OH基を指す。
【0034】
本願明細書全体において、「カルボニル基」とは、-C(=O)-で表される2価の有機ラジカルを意味する。具体的には、前記カルボニル基の炭素数は特に限定されないが、炭素数1~40のものが好ましい。具体的には、下記のような構造の化合物になってもよいが、これに限定されるものではない。
【0035】
本願明細書全体において、「エステル基」とは、-C(=O)O基を指す。具体的には、前記エステル基は、エステル基の酸素が炭素数1~25の直鎖、分枝鎖もしくは環鎖アルキル基、または炭素数6~25のアリール基で置換されていてもよい。具体的には、下記構造式の化合物になってもよいが、これに限定されるものではない。
【0036】
本願明細書全体において、「エーテル」とは、-R-O-R’で表されるものを意味する。前記エーテルにおいて、RまたはR’は、それぞれ互いに独立して、水素、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数3~30のシクロアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、またはこれらの組み合わせであり、これに限定されるものではない。
【0037】
本願明細書全体において、「イミド基」とは、-C(O)NRxC(O)Ryの構造を意味する。具体的には、前記RxおよびRyは、それぞれ独立して、水素、または本明細書に定義されたような置換もしくは非置換のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルアルキル、ヘテロシクリル、またはヘテロシクリルアルキル基であってもよい。具体的には、前記イミド基の炭素数は特に限定されないが、炭素数1~25のものが好ましい。具体的には、下記のような構造の化合物になってもよいが、これに限定されるものではない。
【0038】
本願明細書全体において、「アミノ基」とは、-NH2基を指す。
本願明細書全体において、「ホスフィンオキシド基」とは、-P(=O)RxRyRzの構造を意味する。
【0039】
本願明細書全体において、「アルコキシ基」、「シクロアルコキシ基」、「アリールオキシ基」、および「ヘテロシクリルオキシ基」とは、酸素原子(-O-)を介して分子の残りに付着した、前記アルキル、シクロアルキル、アリール、またはヘテロシクリルのいずれか1つを指す。
【0040】
本願明細書全体において、「アルキルチオキシ基」および「アリールチオキシ基」とは、硫黄原子(-S-)を介して分子の残りに付着した、前記アルキルまたはアリールのいずれか1つを指す。
【0041】
本願明細書全体において、「アルキルスルホキシ基」および「アリールスルホキシ基」とは、-SOを介して分子の残りに付着した、前記アルキルまたはアリールのいずれか1つを指す。
【0042】
本願明細書全体において、「カルボシリル基」とは、Si-C結合を含む炭素、水素、およびケイ素を含む有機シリル基を意味する。具体的には、前記カルボシリルの炭素数は特に限定されないが、炭素数1~10のものが好ましく、シリル数は特に限定されないが、シリル数1~10のものが好ましい。具体的には、前記カルボシリル基の例は、これに限定されるものではないが、メチルシリル(-SiMeH2)、エチルシリル(-SiEtH2)、ジエチルシリル(-SiEt2H)、ジメチルシリル(-SiMe2H)、トリエチルシリル(-SiEt3)、トリメチルシリル(-SiMe3)、1,2-ジメチルジシリル(-SiMeHSiMeH2)、1,4-ジシラブチル(-SiH2CH2CH2SiH3)、ジメチルビニルシリル(-SiMe2CH=CH2)、フェニルシリル(-SiPhH2)などがあるが、これらに限定されない。
【0043】
本願明細書全体において、「シリル基」とは、非置換のシリル基(-SiH3)を意味する。
具体的には、前記シリル基は、具体的には、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、ビニルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルシリル基、フェニルシリル基などがあるが、これらに限定されない。
【0044】
具体的には、前記ホウ素基は、具体的には、トリメチルホウ素基、トリエチルホウ素基、t-ブチルジメチルホウ素基、トリフェニルホウ素基、フェニルホウ素基などがあるが、これらに限定されない。
【0045】
本願明細書全体において、「アルキル基」とは、直鎖もしくは分枝鎖飽和炭化水素を意味する。具体的には、前記アルキル基の炭素数は特に限定されないが、1~40のものが好ましい。一実施態様によれば、前記アルキル基の炭素数は1~20である。もう一つの実施態様によれば、前記アルキル基の炭素数は1~10である。もう一つの実施態様によれば、前記アルキル基の炭素数は1~6である。アルキル基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、1-メチル-ブチル、1-エチル-ブチル、ペンチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、ヘプチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、シクロペンチルメチル、シクロヘクチルメチル、オクチル、n-オクチル、tert-オクチル、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチル、1-エチル-プロピル、1,1-ジメチル-プロピル、イソヘキシル、2-メチルペンチル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシルなどがあるが、これらに限定されない。
【0046】
本願明細書全体において、「シクロアルキル基」とは、炭素原子の完全に飽和および部分的に不飽和の炭化水素環を指す。具体的には、前記シクロアルキル基は特に限定されないが、炭素数3~60のものが好ましく、一実施態様によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3~30である。もう一つの実施態様によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3~20である。もう一つの実施態様によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3~6である。具体的には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、3-メチルシクロペンチル、2,3-ジメチルシクロペンチル、シクロヘキシル、3-メチルシクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル、2,3-ジメチルシクロヘキシル、3,4,5-トリメチルシクロヘキシル、4-tert-ブチルシクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどがあるが、これらに限定されない。
【0047】
本願明細書全体において、「アルケニル基」とは、二重結合を1つ以上含む直鎖もしくは分鎖状の不飽和炭化水素を指す。具体的には、前記アルケニル基は、直鎖もしくは分枝鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが、2~40のものが好ましい。一実施態様によれば、前記アルケニル基の炭素数は2~20である。もう一つの実施態様によれば、前記アルケニル基の炭素数は2~10である。もう一つの実施態様によれば、前記アルケニル基の炭素数は2~6である。具体例としては、ビニル、1-プロペニル、イソプロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、3-メチル-1-ブテニル、1,3-ブタジエニル、アリル、1-フェニルビニル-1-イル、2-フェニルビニル-1-イル、2,2-ジフェニルビニル-1-イル、2-フェニル-2-(ナフチル-1-イル)ビニル-1-イル、2,2-ビス(ジフェニル-1-イル)ビニル-1-イル、スチルベニル基、スチレニル基などがあるが、これらに限定されない。
【0048】
本願明細書全体において、「アルキニル基」とは、三重結合を1つ以上含む直鎖もしくは分鎖状の不飽和炭化水素ラジカルを意味する。具体的には、前記アルキニル基は、直鎖もしくは分枝鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが、2~40のものが好ましい。一実施態様によれば、前記アルキニル基の炭素数は2~20である。もう一つの実施態様によれば、前記アルキニル基の炭素数は2~10である。もう一つの実施態様によれば、前記アルキニル基の炭素数は2~6である。具体例としては、エチニル、プロプ-1-イン-1-イル、プロプ-2-イン-1-イル、ブト-1-イン-1-イル、ブト-1-イン-3-イル、またはブト-3-イン-1-イルなどから選択される短鎖の炭化水素ラジカルであってもよいが、これらに限定されない。
【0049】
本願明細書全体において、「アリール基」とは、1つの水素の除去によって芳香族炭化水素から誘導された有機ラジカルで、一環状または多環状芳香族炭化水素ラジカルを意味する。具体的には、前記アリール基は特に限定されないが、炭素数6~60のものが好ましく、単環式アリール基または多環式アリール基であってもよい。一実施態様によれば、前記アリール基の炭素数は6~30である。一実施態様によれば、前記アリール基の炭素数は6~20である。前記アリール基が単環式アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基などになってもよいが、これらに限定されるものではない。前記多環式アリール基としては、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基、クリセニル基、フルオレニル基などになってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0050】
本願明細書全体において、「フルオレニル基」とは、9-フルオレニルラジカルを意味する。
具体的には、前記フルオレニル基は置換されていてもよいし、置換基2個が互いに結合してスピロ(Spiro)構造を形成してもよい。前記フルオレニル基が置換される場合、などになってもよい。ただし、これに限定されるものではない。
【0051】
本願明細書全体において、「ヘテロアリール基」とは、1つの水素の除去によって芳香族炭化水素から誘導された有機ラジカルで、B、N、O、S、P(=O)、Si、およびPから選択された1つ以上のヘテロ原子を含むヘテロアリールを意味する。具体的には、前記ヘテロアリール基は、炭素数は特に限定されないが、炭素数3~60のものが好ましい。ヘテロアリール基の例としては、チオフェン基、フラン基、ピロール基、イミダゾール基、チアゾール基、オキサゾール基、オキサジアゾール基、トリアゾール基、ピリジル基、ビピリジル基、ピリミジル基、トリアジン基、トリアゾール基、アクリジル基、ピリダジン基、ピラジニル基、キノリニル基、キナゾリン基、キノキサリニル基、フタラジニル基、ピリドピリミジニル基、ピリドピラジニル基、ピラジノピラジニル基、イソキノリン基、インドール基、カルバゾール基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾイミダゾール基、ベンゾチアゾール基、ベンゾカルバゾール基、ベンゾチオフェン基、ジベンゾチオフェン基、ベンゾフラニル基、フェナントロリン基(phenanthroline)、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、フェノチアジニル基、およびジベンゾフラニル基などがあるが、これらのみに限定されるものではない。
【0052】
本願明細書全体において、アルアルキル基、アルアルケニル基、アルキルアリール基、アリールアミン基中のアリール基は、前述したアリール基の例示の通りである。本明細書において、アルアルキル基、アルキルアリール基、アルキルアミン基中のアルキル基は、前述したアルキル基の例示の通りである。
【0053】
本願明細書全体において、ヘテロアリールアミン中のヘテロアリールは、前述したヘテロアリールに関する説明が適用可能である。本明細書において、アルアルケニル基中のアルケニル基は、前述したアルケニル基の例示の通りである。本明細書において、アリーレンは、2価の基であることを除けば、前述したアリール基に関する説明が適用可能である。本明細書において、ヘテロアリーレンは、2価の基であることを除けば、前述したヘテロアリールに関する説明が適用可能である。本明細書において、炭化水素環は、1価の基でなく、2個の置換基が結合して形成したことを除けば、前述したアリール基またはシクロアルキル基に関する説明が適用可能である。本明細書において、ヘテロ環は、1価の基でなく、2個の置換基が結合して形成したことを除けば、前述したヘテロアリールに関する説明が適用可能である。
【0054】
シリコーン系コーティング組成物
本発明は、シリコーン系樹脂、シリコーン系架橋剤、および金属触媒を含み、重量平均分子量は25,000g/mol以上70,000g/mol以下である下記化学式1で表されるシリコーン系化合物をさらに含むシリコーン系コーティング組成物を提供する。
【0055】
【0056】
前記化学式1において、
R1~R3は、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換のアルキル基、または置換もしくは非置換のシクロアルキル基であり、
nは、1~15000の整数である。
【0057】
従来のシリコーン系コーティング組成物は、メイン成分であるシリコーン系樹脂を活用して離型剥離力を低下させるためにコーティング層を極端に上げたり、転写可能なシリコーンを添加する形態で開発され、このような従来のシリコーン系コーティング組成物は、粘着剤にシリコーンが転写されたり、厚いコーティング層によってブロッキング現象が発生する問題があり、既存の超軽剥離の離型フィルムの場合、コーティング層の厚さを高めたり、転写可能なシリコーン成分を添加して実現されて、シリコーン転写により粘着剤の物性が低下するという大きな問題がある。
【0058】
本発明の発明者らは、従来のシリコーン系コーティング組成物の問題点を解決するために、末端にモノビニル構造を含むシリコーン系化合物をさらに含むことにより、コーティング層の架橋密度を低下させてコーティング層の柔軟性を極大化させて離型剥離力を低下させることができ、シリコーン転写およびブロッキング問題とは無縁になり、粘着剤の物性を大きく改善できるシリコーン系コーティング組成物およびこれを含むシリコーン系離型フィルムを開発した。
【0059】
本明細書において、用語「シリコーン系樹脂」とは、1つ以上のシリコン原子(Si)、特に1つ以上のSiO基を含む高度に架橋されたネットワーク-類似重合体を意味する。具体的には、本発明において、シリコーン系樹脂は、ビニル末端ポリジメチルシロキサン(vinyl terminated polydimethylsiloxane)であってもよい。ただし、前記シリコーン系樹脂の種類を前述したものに限定するものではない。
【0060】
本発明によれば、シリコーン系樹脂の多分散指数(Poly Dispersity Index;PDI)は、1~3であってもよい。前記多分散性指数として、重量平均分子量値を数平均分子量で割った値で表したものである。
【0061】
本発明において、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)およびZ平均分子量(Mz+1)は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC、gel permeation chromatography、Water社製)を用いて測定した標準ポリスチレンに対する換算数値である。しかし、前記重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)およびZ平均分子量(Mz+1)はこれに限定されるものではなく、本発明の属する技術分野にて知られた他の方法で測定可能である。
【0062】
本発明によれば、シリコーン系樹脂の重量平均分子量は、100,000g/mol以上600,000g/mol以下であってもよい。具体的には、シリコーン系樹脂の重量平均分子量は、150,000g/mol以上550,000g/mol以下、200,000g/mol以上500,000g/mol以下、または250,000g/mol以上450,000g/mol以下であってもよい。シリコーン系樹脂の重量平均分子量を前述した範囲に調節することにより、シリコーン系コーティング組成物の硬化物を含むコーティング層の離型剥離力は適切な水準に実現できる。
【0063】
本明細書において、用語「シリコーン系架橋剤」とは、当業界にて離型剤組成物の製造に使用されるものを制限なく採用可能である。例えば、前記シリコーン系架橋剤は、1個の分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン、具体的には、ジメチルハイドロジェンシロキシグループ末端封鎖ジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、トリメチルシロキシグループ末端封鎖ジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、トリメチルシロキシグループ末端封鎖ポリ(メチルハイドロジェンシロキサン)、ポリ(ハイドロジェンシルセスキオキサン)、およびメチルハイドロジェンシロキサンの少なくとも1つを含むことができるが、前記シリコーン系架橋剤の種類を限定するものではない。本発明では、シリコーン系架橋剤としてメチルハイドロジェンシロキサンを使用することができる。
【0064】
本発明によれば、金属触媒として、当業界にてシリコーン系コーティング組成物の製造に使用されるものを制限なく採用して使用可能である。具体的には、金属触媒は、白金系触媒を少なくとも含むことができる。また、白金系触媒は、微粒子状白金、炭素粉末担体上に吸着された微粒子状白金、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、および塩化白金酸のオレフィン錯体の少なくとも1つを含むことができるが、白金系触媒の種類を限定するものではない。本発明では、白金系触媒としてPL-50T(信越シリコーン社)を使用することができる。
【0065】
本発明によれば、前記シリコーン系コーティング組成物は、液状組成物の形態であってもよい。
【0066】
本発明によれば、前記シリコーン系コーティング組成物は、有機溶媒;シリコーン系樹脂;シリコーン系架橋剤;金属触媒;および前記化学式1で表されるシリコーン系化合物を含み、前記化学式1で表されるシリコーン系化合物を、前記有機溶媒100重量部に対して4重量部以上、60重量部以下含むことができる。
【0067】
本発明によれば、前記シリコーン系コーティング組成物は、前記有機溶媒100重量部に対して、前記シリコーン系樹脂5~30重量部;前記シリコーン系架橋剤0.05~5重量部;前記金属触媒0.5~10重量部;および前記化学式1で表されるシリコーン系化合物4~60重量部を含むことができる。
【0068】
本発明によれば、前記有機溶媒は、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、およびアセトンのいずれか少なくとも1つであってもよい。ただし、これに限定されるものではなく、当業界にて一般的に知られた有機溶剤の中から自由に選択されるものであってもよい。
【0069】
本発明によれば、シリコーン系樹脂の含有量は、有機溶媒100重量部に対して5重量部以上30重量部以下であってもよい。具体的には、シリコーン系樹脂の含有量は、前記有機溶媒100重量部に対して5.5重量部以上25.5重量部以下、6.5重量部以上21.5重量部以下、7.5重量部以上18.5重量部以下であってもよい。シリコーン系樹脂の含有量を前述した範囲に調節することにより、前記シリコーン系コーティング組成物をより容易に硬化させることができる。
【0070】
本発明によれば、シリコーン系架橋剤の含有量は、有機溶媒100重量部に対して0.05重量部以上5重量部以下であってもよい。具体的には、シリコーン系架橋剤の含有量は、有機溶媒100重量部に対して0.1重量部以上3重量部以下、0.5重量部以上2重量部以下、0.8重量部以上1.5重量部以下であってもよい。シリコーン系架橋剤の含有量を前述した範囲に調節することにより、前記コーティング層の離型剥離力が過度に増加するのを効果的に防止することができる。具体的には、シリコーン系架橋剤の含有量が前述した範囲内の場合、シリコーン系離型フィルムが高温条件で長い時間保管される場合にも、前記コーティング層の離型剥離力が大きく増加するものに抑制可能である。また、前記シリコーン系コーティング組成物の硬化物を含むシリコーン系離型フィルムの耐久性を向上させることができる。
【0071】
本発明によれば、金属触媒の含有量は、有機溶媒100重量部に対して0.5重量部以上10重量部以下であってもよい。具体的には、金属触媒の含有量は、有機溶媒100重量部に対して1重量部以上8重量部以下、1.5重量部以上7重量部以下、2重量部以上4重量部以下であってもよい。具体的には、金属触媒は、シリコーン系樹脂と前記シリコーン系架橋剤の硬化反応を促進させる役割を果たすもので、金属触媒の含有量を前述した範囲に調節することにより、シリコーン系コーティング組成物が未硬化または過硬化することを効果的に抑制することができる。
【0072】
本発明によれば、前記化学式1で表されるシリコーン系化合物の含有量は、有機溶媒100重量部に対して0.1重量部以上80重量部以下であってもよい。具体的には、前記化学式1で表されるシリコーン系化合物の含有量は、前記有機溶媒100重量部に対して0.3重量部以上70重量部以下、0.5重量部以上60重量部以下、1重量部以上60重量部以下、4重量部以上60重量部以下、1重量部以上50重量部以下、4重量部以上50重量部以下、4重量部以上40重量部以下、4重量部以上25重量部以下、15重量部以上25重量部以下であってもよい。具体的には、化学式1で表されるシリコーン系化合物の含有量を前述した範囲に調節することにより、コーティング層の架橋密度を低下させてコーティング層の柔軟性を極大化させ、離型剥離力を低下させることができ、シリコーン転写およびブロッキング問題から解放され得る。
【0073】
本発明によれば、前記化学式1で表されるシリコーン系化合物の重量平均分子量は、25,000g/mol以上70,000g/mol以下であってもよい。具体的には、前記化学式1で表されるシリコーン系化合物の重量平均分子量は、30,000g/mol以上70,000g/mol以下、40,000g/mol以上70,000g/mol以下、または50,000g/mol以上70,000g/mol以下であってもよい。前記化学式1で表されるシリコーン系化合物の重量平均分子量を前述した範囲に調節することにより、シリコーン系コーティング組成物の硬化物を含むコーティング層の離型剥離力の数値が低く、離型剥離力の変化が少ない離型フィルムを実現することができる。
【0074】
本発明によれば、前記化学式1で表されるシリコーン系化合物のR1~R3は、それぞれ独立して、水素、または置換もしくは非置換のアルキル基であり、nは、10~1000の整数であってもよい。
【0075】
より具体的には、前記化学式1で表されるシリコーン系化合物は、下記化学式2で表されてもよい。
【0076】
【0077】
R4~R10は、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換のアルキル基、または置換もしくは非置換のシクロアルキル基であり、
mは、1~1500の整数である。
【0078】
本発明によれば、前記化学式2で表されるシリコーン系化合物のR4~R10は、それぞれ独立して、水素、または置換もしくは非置換のアルキル基であり、mは、10~1000の整数であってもよい。
【0079】
より具体的には、化学式2で表されるシリコーン系化合物は、下記化学式2-1の化合物であってもよい。
【0080】
【0081】
前記化学式2-1において、mは、600~1000の整数である。
【0082】
本発明によれば、シリコーン系コーティング組成物の固形分含有量は、0.5重量%以上30重量%以下であってもよい。具体的には、シリコーン系コーティング組成物の固形分含有量は、1重量%以上25重量%以下、5重量%以上20重量%以下、10重量%以上15重量%以下、1重量%以上5重量%以下、8重量%以上15重量%以下、または20重量%以上28重量%以下であってもよい。
【0083】
本発明によれば、シリコーン系コーティング組成物の固形分含有量を前述した範囲に調節することにより、シリコーン系コーティング組成物を容易に塗布することができる。また、シリコーン系コーティング組成物の硬化時に粘度が急激に増加するのを防止して、塗布時の湿潤性が低下するのを防止することができる。具体的には、シリコーン系コーティング組成物の固形分含有量が前述した範囲内の場合、シリコーン系コーティング組成物に含まれるシリコーン系樹脂の含有量が相対的に少なくて、シリコーン系コーティング組成物の硬化物の耐久性が低下するのを防止することができる。さらに、シリコーン系コーティング組成物の硬化時に粘度が急激に上昇して、硬化物の表面平坦性が低下することを効果的に抑制することができる。
【0084】
本発明によれば、シリコーン系コーティング組成物は、離型剤、シリカ粒子、および光開始剤の少なくとも1つを含むその他の添加剤をさらに含むことができる。ただし、前記その他の添加剤の種類を限定するものではなく、当業界にて用いられる公知の構成を使用することができる。
【0085】
本発明の一実施態様によれば、シリコーン系コーティング組成物は、光硬化または熱硬化により硬化できる。具体的には、シリコーン系コーティング組成物は熱硬化可能であり、シリコーン系コーティング組成物の熱硬化は、100℃以上180℃以下の温度で、30秒以上180秒以下の時間で行われる。シリコーン系コーティング組成物の硬化温度および硬化時間を前述した範囲に調節することにより、シリコーン系コーティング組成物を安定的に硬化させて硬化物の耐久性を向上させることができる。
【0086】
シリコーン系離型フィルム
本発明は、基材層と、前記シリコーン系コーティング組成物の硬化物であるコーティング層とを含むシリコーン系離型フィルムを提供する。
【0087】
本発明に係るシリコーン系離型フィルムは、コーティング層の架橋密度を低下させてコーティング層の柔軟性(Flexibility)を極大化させ、離型剥離力を低下させることができ、シリコーン転写およびブロッキング問題とは無縁になるという利点がある。
【0088】
本発明によれば、シリコーン系離型フィルムは、基材層と、コーティング層とを含み、コーティング層は、シリコーン系コーティング組成物の硬化物を含むことができる。
【0089】
本発明によれば、基材層の一面上にシリコーン系コーティング組成物を塗布し硬化させることにより、基材層の一面上に備えられたコーティング層を含むシリコーン系離型フィルムを提供することができる。シリコーン系コーティング組成物を基材の一面上に塗布する方法としては、公知の工程を使用することができる。具体的には、インクジェットプリンティング工程、ディスペンシング工程、シルクスクリーン工程、スプレーコーティング工程、スピンコーティング工程、ナイフコーティング工程、ディップコーターコーティング工程、メイヤーバーコーティング工程、グラビアコーティング工程、マイクログラビアコーティング工程などを使用することができる。
【0090】
本発明によれば、前記基材層は、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、延伸ポリプロピレン樹脂、セルロースおよびポリ塩化ビニル樹脂の少なくとも1つを含むことができるが、前記基材層の種類を制限するわけではない。
【0091】
本発明によれば、前記基材層の厚さは、10μm以上500μm以下であってもよい。前述した範囲の厚さを有する基材層を含むシリコーン系離型フィルムは、耐久性に優れることができる。
【0092】
本発明によれば、前記コーティング層の厚さは、30nm以上500nm以下であってもよい。
【0093】
本発明の一実施態様によれば、前記コーティング層は、下記式1による離型剥離力の変化量を満足することができる。
[式1]
5%≦|(X-Y)/X|×100≦70%
上記式1中、Xは、コーティング層をTesa7475標準粘着テープに付着させ、常温(25℃)で1日保管した後のコーティング層の離型剥離力(初期離型剥離力)であり、Yは、コーティング層をTesa7475標準粘着テープに付着させ、70℃で1日保管した後のコーティング層の離型剥離力(熱処理後の離型剥離力)を意味する。
【0094】
すなわち、コーティング層をTesa7475標準粘着テープに付着させ、常温(25℃)で1日保管したコーティング層の離型剥離力(初期離型剥離力)に対して、70℃で1日保管したコーティング層の離型剥離力(熱処理後の離型剥離力)の変化量は、5%以上70%以下であってもよい。具体的には、初期離型剥離力に対する熱処理後の離型剥離力の変化量は、5%以上65%以下、5%以上63%以下であってもよい。初期離型剥離力に対する熱処理後の離型剥離力の変化量が前述した範囲を満足するコーティング層を含む離型剥離力は、高温条件でも離型性能を適切な水準に維持できるという利点がある。すなわち、シリコーン系離型フィルムは、実際の製品に備えられた後に、多様な条件に露出し、特に高温条件に露出する場合にも、シリコーン系離型フィルムは、適切な水準の離型性能を実現することができる。
【0095】
本発明によれば、コーティング層の離型剥離力は、前記コーティング層をTesa7475標準粘着テープに付着させ、設定された温度および時間でシリコーン系離型フィルムを保管した後、50RH%の湿度条件で180゜の剥離角度、0.3m/minの剥離速度で測定されるものであってもよい。
【0096】
本発明によれば、コーティング層をTesa7475標準粘着テープに付着させ、常温(25℃)で1日保管した後のコーティング層の離型剥離力は、0.3gf/in以上15gf/in以下、具体的には、離型剥離力は、0.4gf/in以上9.1gf/in以下、0.45gf/in以上6.0gf/in以下、または0.45gf/in以上1.0gf/in以下であってもよい。常温(25℃)で1日保管した後の離型剥離力が前述した範囲を満足するコーティング層を含むシリコーン系離型フィルムは、離型剥離力の変化が少ない。
【0097】
本発明によれば、コーティング層をTesa7475標準粘着テープに付着させ、70℃で1日保管した後のコーティング層の離型剥離力は、0.5gf/in以上15gf/in以下、具体的には、離型剥離力は、0.5gf/in以上11.2gf/in、0.55gf/in以上7.0gf/in以下、または0.55gf/in以上1.0gf/in以下であってもよい。70℃で1日保管した後の離型剥離力が前述した範囲を満足するコーティング層を含むシリコーン系離型フィルムは、高温条件でも優れた離型性能を実現できるというメリットがある。
【0098】
また、常温(25℃)で1日保管した後のコーティング層の離型剥離力および70℃で1日保管した後のコーティング層の離型剥離力は、それぞれその数値が小さいほど、これを用いたシリコーン系離型フィルムの優れた離型性能を実現できるというメリットがある。
【0099】
本発明の一実施態様によれば、前記コーティング層は、下記式2による残留接着率を満足することができる。
[式2]
残留粘着率(%)=(離型フィルムに付着後にSUS板に付着していた標準テープの剥離力/何ら処理なしに直接SUS板に付着していた標準テープの剥離力)×100(%)
【0100】
すなわち、離型フィルムに付着後にSUS板に付着していた標準テープの剥離力に対して、何ら処理なしに直接SUS板に付着していた標準テープの剥離力の残留接着率は、85%以上99.9%以下、好ましくは95%以上99.9%以下であってもよい。
【0101】
前記残留接着率を満たす場合、優れた離型性能を有するシリコーン系離型フィルムを実現できるというメリットがある。
【0102】
本発明の一実施態様によれば、前記コーティング層の基材密着性は、6日以上である。前記基材密着性は、離型層の耐久性を意味するもので、日付が長いほど有利であり、6日以上の基材密着性を有する場合、耐久性に優れたシリコーン系離型フィルムを実現できるというメリットがある。
【実施例】
【0103】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明に係る実施例は種々の異なる形態に変形可能であり、本発明の範囲が以下に述べる実施例に限定されると解釈されない。本明細書の実施例は当業界における平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0104】
1.実施例および比較例:シリコーン系離型フィルムの製造
1)材料の用意
シリコーン系樹脂として重量平均分子量が300,000~400,000g/mol、多分散指数が1.8~2.2のビニル末端ポリジメチルシロキサン(Shin-Etsu Silicon社/KS-847H)、シリコーン系架橋剤(Shin-Etsu Silicon社/X-92-122)、白金系触媒(Shin-Etsu Silicon社/PL-50T)、化学式2-1で表されるシリコーン系化合物(Gelest社/MCSV212、MCR-V21、MCR-V25、およびMCR-V41)、および有機溶媒(溶剤)としてテトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran、THF)を用意した。
【0105】
このように用意された材料により、下記の実施例1~5および比較例1~10のシリコーン系離型フィルムを製造した。
【0106】
【化5】
【化6】
【化7】
(MCS-V212は、前記化学式2-1において、mは、10~20の整数の場合であり、前記MCS-V212は、重量平均分子量が1,200~1,400g/mol、多分散指数が1.5~2.0であり、
MCR-V21は、前記化学式2-1において、mは、60~100の整数の場合であり、前記MCR-V21は、重量平均分子量が5,500~6,500g/mol、多分散指数が1.5~2.0であり、
MCR-V25は、前記化学式2-1において、mは、100~500の整数の場合であり、前記MCR-V25は、重量平均分子量が15,000~20,000g/mol、多分散指数が1.5~2.0であり、
MCR-V41は、前記化学式2-1において、mは、600~1000の整数の場合であり、前記MCR-V41は、重量平均分子量が55,000~65,000g/mol、多分散指数が1.5~2.0である)
【0107】
2)比較例1
テトラヒドロフラン(THF)100重量部に対して、シリコーン系樹脂10重量部、シリコーン系架橋剤1重量部、白金系触媒3重量部、およびシリコーン系化合物(MCR-V41)1重量部を含むシリコーン系コーティング組成物を製造した。
【0108】
以後、製造されたシリコーン系コーティング組成物を、メイヤーバー8番を用いて、厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate;PET、MCC社/T10075S)基材層上に2.5g/m2の厚さに塗布した。以後、基材上に塗布されたシリコーン系コーティング組成物を130℃で1分間乾燥および硬化させた後、50℃で24時間熟成(aging)してシリコーン系離型フィルムを製造した。
【0109】
3)実施例1~5および比較例2~10
比較例1において、シリコーン系コーティング組成物の種類および含有量を下記表1および表2のように変更してシリコーン系コーティング組成物を製造することを除き、前記比較例1と同様の方法で実施例1~5および比較例2~10のシリコーン系離型フィルムを製造した。
【0110】
下記表1および表2に記載の数字は、前記シリコーン系コーティング組成物に含まれた物質の含有量を意味し、それぞれ有機溶媒であるテトラヒドロフラン(THF)100重量部に対する組成物に含まれる物質の重量部を意味する。例えば、下記表1の実施例1は、テトラヒドロフラン(THF)100重量部に対して、シリコーン系樹脂が10重量部であることを意味する。
【0111】
【0112】
【0113】
前記表2の比較例4の場合、シリコーン系コーティング組成物がシリコーン系化合物を含まないことを意味する。
【0114】
4)比較例11
シリコーン系離型フィルム(COSMO AM&T CO社/LL01)を用いた。
【0115】
5)比較例12
シリコーン系離型フィルム(OSUNGRF社/SUL03)を用いた。
【0116】
2.測定方法
実施例および比較例で用意されたものに対して、下記のように物性を測定した。
1)離型剥離力の測定
前記実施例1~実施例5および比較例1~比較例12で製造した離型フィルムの離型剥離力を、下記のように測定した。
【0117】
離型フィルムのコーティング層をTesa7475標準粘着テープに2kgの荷重で3回往復圧着して付着させ、25℃および50RH%雰囲気で1日間保管した後、25℃および50RH%雰囲気で、測定機器(Cheminstruments社/AR-1000)を用いて、離型剥離力を測定した。サンプルサイズ50×1,500mmおよび剥離力の測定サイズ250×1,500mmに対して、180゜の剥離角度、0.3m/minの剥離速度で行い、5回繰り返し測定値の平均値を求めて、離型剥離力(gf/in)を求めた。
【0118】
また、シリコーン系離型フィルムのコーティング層をTesa7475標準粘着テープに2kgの荷重で3回往復圧着して付着させ、70℃および50RH%雰囲気で1日間保管した後、25℃および50RH%雰囲気で、測定機器(Cheminstruments社/AR-1000)を用いて、離型剥離力を測定した。サンプルサイズ50×1,500mmおよび剥離力の測定サイズ250×1,500mmに対して、180゜の剥離角度、0.3m/minの剥離速度で行い、5回繰り返し測定値の平均値を求めて、離型剥離力(gf/in)を求めた。
【0119】
前述した方法により測定した25℃で1日保管した後のコーティング層の離型剥離力(初期離型剥離力)と、70℃で1日保管した後のコーティング層の離型剥離力(熱処理後の離型剥離力)および初期離型剥離力に対する熱処理後の離型剥離力の変化量を、下記表3および表4に示した。
【0120】
【0121】
【0122】
前記表3および表4の離型剥離力の変化量は、下記式1によって計算することができる。
[式1]
離型剥離力の変化量(%)=|(X-Y)/X|×100(%)
上記式1中、Xは、常温(25℃)で1日保管した後のコーティング層の離型剥離力(初期離型剥離力)であり、Yは、70℃で1日保管した後のコーティング層の離型剥離力(熱処理後の離型剥離力)を意味する。
【0123】
前記表3の比較例3の場合、シリコーン系コーティング組成物が未硬化で離型フィルムを製造することができず、それによって剥離力を測定することができなかった。
【0124】
2)残留接着率の測定
実施例1~実施例5および比較例1~比較例12の離型フィルムが粘着剤と接する場合、離型フィルムの一部分が粘着剤に転移されて粘着剤の粘着力が低下するか否かを測定した。
【0125】
標準テープを2つ用意した。1つの標準テープをSUS板に付着させた。他の1つの標準テープを実施例1~実施例5および比較例1~比較例12のシリコーン系離型フィルムに付着させて20時間保管後に引き剥がし、引き剥がした標準テープをSUS板に付着させた。
【0126】
SUS板に付着している標準テープの剥離力を測定して、何ら処理なしに直接SUS板に付着していた標準テープの剥離力に対する、実施例および比較例の離型フィルムに付着後にSUS板に付着していた標準テープの剥離力の比率(%)から残留粘着率を評価した。
【0127】
次の式2は、残留粘着率(%)を示す式である。
[式2]
残留粘着率(%)=(離型フィルムに付着後にSUS板に付着していた標準テープの剥離力/何ら処理なしに直接SUS板に付着していた標準テープの剥離力)×100(%)
【0128】
残留粘着率が95%以上であれば極めて優秀、90%以上95%未満であれば優秀、80%以上90%未満であれば普通、80%未満であれば不良と表し、その結果を下記表5および表6に示した。
【0129】
【0130】
【0131】
前記表5の比較例3の場合、シリコーン系コーティング組成物が未硬化で離型フィルムを製造することができず、それによって残留粘着率を測定することができなかった。
【0132】
3)基材密着性の測定
前記実施例1~実施例5および比較例1~比較例12で製造した離型フィルムの基材密着性を下記のように測定した。離型フィルムを一定期間ごとに常温(20℃、40%RH)に放置した後、当該離型フィルムを、耐摩擦性テスト機に有機溶剤のトルエン(Toluene)をガーゼにつけて3回往復し、コーティング層が脱落した時の期間を測定した。前記方法で測定した基材密着性の程度を、下記表7および表8に記載した。
【0133】
【0134】
【0135】
前記表7の比較例3の場合、シリコーン系コーティング組成物が未硬化で離型フィルムを製造することができず、それによって基材密着性を測定することができなかった。
【0136】
前記表1~表8から分かるように、本発明のシリコーン系コーティング組成物を用いた離型フィルムは、低い離型剥離力の大きさを有し、離型剥離力の変化量が小さく、残留接着率が非常に優れ、基材密着性も6日以上とその性能に優れていることを確認することができた。すなわち、シリコーン転写およびブロッキング問題が少なく、耐久性に優れた離型フィルムの製造が可能であった。
【0137】
これに対し、比較例1および2は、相対的に高い離型剥離力の大きさを有しているので、シリコーン転写およびブロッキング問題が発生する可能性が、本発明のシリコーン系コーティング組成物を用いた離型フィルムより高いことを確認することができた。
【0138】
また、比較例3の場合、シリコーン系コーティング組成物の硬化がなされていないことを確認することができ、比較例4~12の場合、相対的に高い離型剥離力の大きさを有したり、残留接着率が相対的に優れていなかったり、基材密着性が良くないことを確認することができた。すなわち、比較例4~12の場合も、シリコーン転写およびブロッキング問題が発生する可能性が、本発明のシリコーン系コーティング組成物を用いた離型フィルムより高く、また、耐久性が良くないことを確認することができた。