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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】レーザー加工装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20240122BHJP
【FI】
B23K26/00 P
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019238020
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021104542
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】河野 文弥
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-010373(JP,A)
【文献】特開2004-223553(JP,A)
【文献】特開昭62-148089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物に吸収される波長を有するレーザービームを照射することにより該被加工物を加工するレーザービーム照射ユニットと、
該被加工物を撮像するための撮像ユニットと、
該撮像ユニットで該被加工物を撮像することにより取得された画像を処理する処理部と、を備え、
該処理部は、
該レーザービーム照射ユニットから1つの該被加工物の一面側にレーザービームを照射することで該一面側に形成された複数の加工痕を該撮像ユニットで撮像して得られた画像から、該画像の第1方向に沿う複数の第1位置と各第1位置での明るさとを含む第1ヒストグラムと、該第1方向に直交する第2方向に沿う複数の第2位置と各第2位置での明るさとを含む第2ヒストグラムと、を作成するヒストグラム作成部と、
該ヒストグラム作成部によって作成された該第1ヒストグラム及び該第2ヒストグラムに基づいて、各加工痕が形成されている領域の境界を決定する決定部と、
を有し、
該ヒストグラム作成部は、
各第1位置において、第1位置を通り該第2方向に平行な直線上に位置する複数の画素の明るさの尺度を示す値を積算することにより該第1ヒストグラムを作成し、
各第2位置において、第2位置を通り該第1方向に平行な直線上に位置する複数の画素の明るさの尺度を示す値を積算することにより該第2ヒストグラムを作成することを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項2】
該処理部は、該領域に対して、該第2方向の異なる位置にそれぞれ位置し該第1方向に平行な複数の直線の各直線上で、複数の画素の明るさを示す第3ヒストグラムと、該第1方向の異なる位置にそれぞれ位置し該第2方向に平行な複数の直線の各直線上で、複数の画素の明るさを示す第4ヒストグラムと、を作成することにより、加工痕の輪郭を検出する輪郭検出部を更に含むことを特徴とする請求項に記載のレーザー加工装置。
【請求項3】
該処理部は、各加工痕の重心、又は、各加工痕の真円からのずれを算出することを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザー加工装置。
【請求項4】
レーザー加工装置を用いて被加工物の一面側にレーザービームを照射することで複数の加工痕を形成した後、各加工痕が形成されている領域を確認するための方法であって、
該被加工物に吸収される波長を有する該レーザービームを該被加工物に照射して1つの該被加工物の該一面側に該複数の加工痕を形成する加工痕形成ステップと、
該加工痕形成ステップで形成された該複数の加工痕を撮像して画像を取得する撮像ステップと、
該レーザー加工装置の処理部が、該画像の第1方向に沿う複数の第1位置と各第1位置での明るさとを含む第1ヒストグラムと、該第1方向と直交する第2方向に沿う複数の第2位置と各第2位置での明るさとを含む第2ヒストグラムと、を作成するヒストグラム作成ステップと、
該処理部が、該ヒストグラム作成ステップで作成された該第1ヒストグラム及び該第2ヒストグラムに基づいて、各加工痕が形成されている領域の境界を決定する決定ステップと、
を備え
該ヒストグラム作成ステップでは、該処理部が、
各第1位置において、第1位置を通り該第2方向に平行な直線上に位置する複数の画素の明るさの尺度を示す値を積算することにより該第1ヒストグラムを作成し、
各第2位置において、第2位置を通り該第1方向に平行な直線上に位置する複数の画素の明るさの尺度を示す値を積算することにより該第2ヒストグラムを作成することを特徴とする方法。
【請求項5】
該領域に対して、該処理部が、該第2方向の異なる位置にそれぞれ位置し該第1方向に平行な複数の直線の各直線上で、複数の画素の明るさを示す第3ヒストグラムと、該第1方向の異なる位置にそれぞれ位置し該第2方向に平行な複数の直線の各直線上で、複数の画素の明るさを示す第4ヒストグラムと、を作成することにより、各加工痕の輪郭を検出する輪郭検出ステップを更に備えることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項6】
該輪郭検出ステップの後、該処理部が、各加工痕の重心、又は、各加工痕の真円からのずれを算出する算出ステップを更に備えることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物の一面側にレーザービームを照射することで複数の加工痕を形成するレーザー加工装置、及び、各加工痕が存在する領域を確認するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被加工物に吸収される波長を有するレーザービームを被加工物に照射して被加工物を加工するレーザー加工装置において、レーザービームの形状は加工品質に影響する。レーザービームの形状は、例えば、レーザービームで実際に被加工物を加工した後、加工結果を観察することで確認される。
【0003】
一例において、平板状の被加工物の一面側をレーザービームで線状に加工する場合、まず、レーザー加工装置に設けられた保持テーブルで被加工物の一面とは反対側に位置する他面側を保持する。次いで、レーザービームの照射方向に対して略直交する所定の方向に保持テーブルを移動させて、被加工物の一面側をレーザービームで線状に加工する(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
加工時には、レーザービームを集光させる集光レンズの高さを複数の異なる高さに位置付けて、各高さに応じた複数の線状の加工痕を形成する。例えば、集光レンズを第1高さに配置して線状の第1加工痕を形成する。
【0005】
次いで、集光レンズを第1高さとは異なる第2高さに配置し、且つ、第1加工痕とは異なる領域にレーザービームを照射して、線状の第2加工痕を形成する。被加工物の一面側に複数の線状の加工痕を形成した後、各加工痕の幅を観察することにより、レーザービームの形状が確認される。
【0006】
ところで、被加工物の上面に複数の点状の加工痕を形成することで、レーザービームの形状を確認する場合がある。この場合、まず、複数の点状の加工痕が形成された上面の画像を取得する。次いで、この画像に基づいて、加工痕の輪郭の検出、レーザービームの形状の合否判定等を行う。
【0007】
しかし、輪郭の検出、合否判定等を人が行うと、処理作業に多大な時間を要する。また、加工領域と非加工領域との境界を決める基準、合否判定の基準等が作業者によって変わる可能性がある。そこで、これらの処理作業を、レーザー加工装置を用いて自動的に行うことが考えられる。
【0008】
例えば、まず、各々1つの加工痕を含む複数の小領域の境界の座標を作業者が指定した上で、各小領域に対して画像処理等を施すことにより、加工痕の輪郭を自動で検出することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2013-78785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、境界の座標の指定は、加工痕の位置が変わる度に行う必要があるので、専門知識を有する作業者しか作業を行えず、更に、作業に時間が掛かるという問題がある。
【0011】
本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、複数の小領域の境界の座標を作業者が指定することなく、画像内において加工痕が形成されている領域の境界をレーザー加工装置により自動で決定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によれば、被加工物に吸収される波長を有するレーザービームを照射することにより該被加工物を加工するレーザービーム照射ユニットと、該被加工物を撮像するための撮像ユニットと、該撮像ユニットで該被加工物を撮像することにより取得された画像を処理する処理部と、を備え、該処理部は、該レーザービーム照射ユニットから1つの該被加工物の一面側にレーザービームを照射することで該一面側に形成された複数の加工痕を該撮像ユニットで撮像して得られた画像から、該画像の第1方向に沿う複数の第1位置と各第1位置での明るさとを含む第1ヒストグラムと、該第1方向に直交する第2方向に沿う複数の第2位置と各第2位置での明るさとを含む第2ヒストグラムと、を作成するヒストグラム作成部と、該ヒストグラム作成部によって作成された該第1ヒストグラム及び該第2ヒストグラムに基づいて、各加工痕が形成されている領域の境界を決定する決定部と、を有し、該ヒストグラム作成部は、各第1位置において、第1位置を通り該第2方向に平行な直線上に位置する複数の画素の明るさの尺度を示す値を積算することにより該第1ヒストグラムを作成し、各第2位置において、第2位置を通り該第1方向に平行な直線上に位置する複数の画素の明るさの尺度を示す値を積算することにより該第2ヒストグラムを作成するレーザー加工装置が提供される。
【0013】
好ましくは、該処理部は、該領域に対して、該第2方向の異なる位置にそれぞれ位置し該第1方向に平行な複数の直線の各直線上で、複数の画素の明るさを示す第3ヒストグラムと、該第1方向の異なる位置にそれぞれ位置し該第2方向に平行な複数の直線の各直線上で、複数の画素の明るさを示す第4ヒストグラムと、を作成することにより、加工痕の輪郭を検出する輪郭検出部を更に含む。
【0014】
また、好ましくは、該処理部は、各加工痕の重心、又は、各加工痕の真円からのずれを算出する。
【0015】
本発明の他の態様によれば、レーザー加工装置を用いて被加工物の一面側にレーザービームを照射することで複数の加工痕を形成した後、各加工痕が形成されている領域を確認するための方法であって、該被加工物に吸収される波長を有する該レーザービームを該被加工物に照射して1つの該被加工物の該一面側に該複数の加工痕を形成する加工痕形成ステップと、該加工痕形成ステップで形成された該複数の加工痕を撮像して画像を取得する撮像ステップと、該レーザー加工装置の処理部が、該画像の第1方向に沿う複数の第1位置と各第1位置での明るさとを含む第1ヒストグラムと、該第1方向と直交する第2方向に沿う複数の第2位置と各第2位置での明るさとを含む第2ヒストグラムと、を作成するヒストグラム作成ステップと、該処理部が、該ヒストグラム作成ステップで作成された該第1ヒストグラム及び該第2ヒストグラムに基づいて、各加工痕が形成されている領域の境界を決定する決定ステップと、を備え、該ヒストグラム作成ステップでは、該処理部が、各第1位置において、第1位置を通り該第2方向に平行な直線上に位置する複数の画素の明るさの尺度を示す値を積算することにより該第1ヒストグラムを作成し、各第2位置において、第2位置を通り該第1方向に平行な直線上に位置する複数の画素の明るさの尺度を示す値を積算することにより該第2ヒストグラムを作成する方法が提供される。
【0016】
好ましくは、該方法は、該領域に対して、該処理部が、該第2方向の異なる位置にそれぞれ位置し該第1方向に平行な複数の直線の各直線上で、複数の画素の明るさを示す第3ヒストグラムと、該第1方向の異なる位置にそれぞれ位置し該第2方向に平行な複数の直線の各直線上で、複数の画素の明るさを示す第4ヒストグラムと、を作成することにより、各加工痕の輪郭を検出する輪郭検出ステップを更に備える。
【0017】
また、好ましくは、該方法は、該輪郭検出ステップの後、該処理部が、各加工痕の重心、又は、各加工痕の真円からのずれを算出する算出ステップを更に備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様に係るレーザー加工装置は、複数の加工痕を含む画像を処理する処理部を備える。処理部は、ヒストグラム作成部を有する。ヒストグラム作成部は、画像の第1方向に沿う複数の第1位置と各第1位置での明るさとを含む第1ヒストグラムと、第1方向に直交する第2方向に沿う複数の第2位置と各第2位置での明るさとを含む第2ヒストグラムと、を当該画像から作成する。
【0019】
処理部は、決定部を更に有する。決定部は、ヒストグラム作成部によって作成された明るさのヒストグラムに基づいて、複数の加工痕の各々が存在する領域の境界を決定する。それゆえ、加工痕が形成されている領域の境界をレーザー加工装置が自動で決定できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】レーザー加工装置の斜視図である。
図2】複数の加工痕を含む画像の模式図である。
図3】第1の実施形態に係る方法のフロー図である。
図4図4(A)はヒストグラム作成ステップを説明する図であり、図4(B)は決定ステップを説明する図である。
図5】輪郭検出ステップを説明する図である。
図6】第2の実施形態に係るヒストグラム作成ステップ及び決定ステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。図1は、レーザー加工装置2の斜視図である。なお、図1では、レーザー加工装置2の構成要素の一部を機能ブロックで示す。
【0022】
また、図1に示すX軸方向(左右方向、加工送り方向、第1方向)、Y軸方向(前後方向、割り出し送り方向、第2方向)、及び、Z軸方向(鉛直方向、高さ方向)は、互いに直交する。
【0023】
レーザー加工装置2は、各構造を支持する直方体状の基台4を備える。基台4の上面には、Y軸方向移動ユニット10が設けられている。Y軸方向移動ユニット10は、Y軸方向に平行な一対のY軸ガイドレール12を有する。
【0024】
一対のY軸ガイドレール12は、基台4の上面に固定されている。一対のY軸ガイドレール12には、Y軸移動テーブル14がスライド可能に取り付けられている。Y軸移動テーブル14の裏面側(下面側)には、ナット部(不図示)が設けられている。
【0025】
ナット部には、Y軸ガイドレール12と平行に配置されたY軸ボールネジ16が回転可能な態様で結合されている。また、Y軸ボールネジ16の一端には、Y軸パルスモータ18が連結されている。
【0026】
Y軸パルスモータ18でY軸ボールネジ16を回転させれば、Y軸移動テーブル14は、Y軸ガイドレール12に沿ってY軸方向に移動する。Y軸移動テーブル14の上面側には、X軸方向移動ユニット20が設けられている。
【0027】
X軸方向移動ユニット20は、X軸方向に平行な一対のX軸ガイドレール22を有する。一対のX軸ガイドレール22は、Y軸移動テーブル14の上面に固定されている。一対のX軸ガイドレール22には、X軸移動テーブル24がスライド可能に取り付けられている。
【0028】
X軸移動テーブル24の下面側には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、X軸ガイドレール22と平行に配置されたX軸ボールネジ26が回転可能な態様で結合されている。X軸ボールネジ26の一端には、X軸パルスモータ28が連結されている。
【0029】
X軸パルスモータ28でX軸ボールネジ26を回転させれば、X軸移動テーブル24は、X軸ガイドレール22に沿ってX軸方向に移動する。X軸移動テーブル24の上面側には、円筒形状のテーブル基台30が固定されている。
【0030】
テーブル基台30の上部には、略円盤状のチャックテーブル32が設けられている。チャックテーブル32には、テーブル基台30内に設けられたモータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。
【0031】
回転駆動源が発生する力によって、チャックテーブル32は、Z軸方向に対して概ね平行な回転軸の周りに回転できる。チャックテーブル32は、金属製の枠体を有する。この枠体の上部側には、円盤状の空間から成る凹部(不図示)が形成されている。
【0032】
この凹部には、気体等を吸引するための流路(不図示)の一端が接続されている。また、流路の他端にはエジェクタ等の吸引源(不図示)が接続されている。枠体の凹部には、円盤状の多孔質プレート(不図示)が固定される。
【0033】
吸引源を動作させると、多孔質プレートの上面(保持面32a)には負圧が発生する。保持面32a上には、被加工物11等が載置される。被加工物11は、例えば、シリコンで形成されており、各々略平坦な一面11a及び他面11bを含む円盤形状を有する。
【0034】
なお、被加工物11の材料はシリコンに限定されず、被加工物11は他の材料で形成されてもよい。また、被加工物11は、各々異なる材料で形成された複数の基板(例えば、シリコン基板及びサファイア基板)が貼り合わされた積層基板であってもよい。
【0035】
被加工物11の他面11b側には、被加工物11よりも大きな径を有する樹脂製の保護テープ13が貼り付けられる。保護テープ13は、例えば、基材層と粘着層との積層構造を有し、この粘着層側が被加工物11の他面11bに貼り付けられる。
【0036】
保護テープ13の外周部には、被加工物11の外径よりも大きな径の開口を有する金属製の環状のフレーム15が貼り付けられる。この様にして、被加工物11が保護テープ13を介してフレーム15に支持された被加工物ユニット17が形成される。被加工物11は、被加工物ユニット17の形態で、搬送及び加工される。
【0037】
チャックテーブル32の枠体の側方には、複数のクランプ32bが設けられている。被加工物ユニット17を、一面11aが上方に位置し且つ他面11bが下方に位置する様に保持面32a上に載置した後、各クランプ32bによりフレーム15が挟持される。
【0038】
基台4のY軸方向の一方(後方)側の端部近傍における基台4の上面には、四角柱状の支持部40が固定されている。支持部40のX軸方向の一方の側面にはZ軸方向移動ユニット42が設けられている。
【0039】
Z軸方向移動ユニット42は、Z軸方向に略平行な一対のZ軸ガイドレールを有する。各Z軸ガイドレールは、支持部40の一側面に固定されている。各Z軸ガイドレールには、Z軸移動板46がスライド可能に取り付けられている。
【0040】
Z軸移動板46の裏面側(即ち、支持部40側)には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、Z軸ガイドレールと平行に配置されたZ軸ボールネジ(不図示)が回転可能な態様で結合されている。
【0041】
Z軸ボールネジの一端には、Z軸パルスモータ44が連結されている。Z軸パルスモータ44でZ軸ボールネジを回転させれば、Z軸移動板46は、Z軸ガイドレールに沿ってZ軸方向に移動する。
【0042】
Z軸移動板46の表面側(裏面とは反対側)には、ホルダ48が固定されている。ホルダ48には、高さ方向がY軸方向と平行な円柱形状の空洞部が形成されている。この空洞部には、円筒形状のケーシング52が固定されている。ケーシング52は、レーザービーム照射ユニット50を構成する。
【0043】
レーザービーム照射ユニット50は、レーザー発振によりパルス状のレーザービームを生じさせるレーザー発振器(不図示)を含む。レーザー発振器は、例えば、Nd:YAG又はNd:YVOで形成されたロッド状のレーザー媒質を有する。
【0044】
レーザー発振器から出射されたレーザービームは、レーザービーム調整ユニット(不図示)、ミラー等の光学部品などを経て、ケーシング52のY軸方向の他方(前方)側の端部に設けられた集光器54に入射する。集光器54内には、レーザービームを集光させるための集光レンズ(不図示)が設けられている。
【0045】
集光レンズの光軸は、Z軸方向と略平行に配置されており、集光レンズから出射されるレーザービームは、保持面32aに向かって略垂直に照射される。一例において、レーザービームは、被加工物11に吸収される波長(例えば、波長が355nm)、20kHzから50kHzの繰り返し周波数、3.0Wから6.0Wの出力平均を有する。
【0046】
ケーシング52のX軸方向の他方(右)には、カメラユニット(撮像ユニット)56が設けられている。カメラユニット56は、例えば、可視光カメラであり、対物レンズ(不図示)と、対物レンズを介して被写体からの可視光で受光する撮像素子(不図示)とを有する。撮像素子は、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサやCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサである。
【0047】
基台4の上方はカバー部(不図示)で覆われており、このカバー部の前方側の側面には、入出力装置58が設けられている。入出力装置58は、例えばタッチパネルである。入出力装置58は、作業者が加工条件等を入力するときに使用する入力部と、加工条件や画像等を表示する表示部と、を兼ねている。
【0048】
レーザー加工装置2は、各構成要素を制御する制御部60を有する。制御部60は、Y軸方向移動ユニット10、X軸方向移動ユニット20、回転駆動源、吸引源、Z軸方向移動ユニット42及びレーザービーム照射ユニット50等の動作を制御する。
【0049】
制御部60は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置と、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の主記憶装置と、フラッシュメモリー、ハードディスクドライブ等の補助記憶装置と、を含むコンピュータによって構成されている。補助記憶装置に記憶されるソフトウェアに従い処理装置等を動作させることによって、制御部60の機能が実現される。
【0050】
制御部60は、カメラユニット56で撮像された画像を処理する処理部62を有する。処理部62は、例えば、上述の処理装置に読み込まれることで実行されるプログラム等のソフトウェアである。なお、処理部62は、ソフトウェアに限定されず、特定用途向け集積回路(ASIC)等のハードウェアであってもよい。
【0051】
処理部62は、ヒストグラム作成部64を有する。ヒストグラム作成部64は、画像を構成する複数の画素のうち所定方向に沿って並んでいる各画素の位置を横軸とし、画素の明るさを縦軸とする、ヒストグラムを作成する。
【0052】
例えば、ヒストグラム作成部64は、X軸方向(第1方向)の位置を横軸とし、Y軸方向に沿って一列に並んでいる複数の画素の明るさの尺度を示す値の積算値を縦軸とする第1ヒストグラムを作成する。
【0053】
また、ヒストグラム作成部64は、Y軸方向(第2方向)の位置を横軸とし、X軸方向に沿って一列に並んでいる複数の画素の明るさの尺度を示す値の積算値を縦軸とする第2ヒストグラムを作成する。
【0054】
処理部62は、画像中に離散的に存在する各加工痕の大まかな範囲を決定する決定部66を更に有する。例えば、加工痕が画像の背景に比べて明るい場合、決定部66は、第1ヒストグラムと第2ヒストグラムとにおいて明るさの積算値が比較的低い位置を特定する。
【0055】
次いで、決定部66は、積算値が比較的低いX軸方向の位置を通りY軸方向に平行である仮想的な直線と、積算値が比較的低いY軸方向の位置を通りX軸方向に平行である仮想的な直線と、を設定することで画像を区画する。
【0056】
処理部62は、決定部66により区画された小領域に対して、加工痕の輪郭を検出する輪郭検出部68を更に有する。本実施形態の輪郭検出部68は、小領域に対して、X軸方向に沿って一列に並んでいる複数の画素の明るさを示す第3ヒストグラムと、Y軸方向に沿って一列に並んでいる複数の画素の明るさを示す第4ヒストグラムとを作成することで、加工痕の輪郭を検出する。
【0057】
次に、レーザー加工装置2を用いて被加工物11の一面11a側に加工痕A(図2参照)を形成し、加工痕Aが形成されている領域を確認するための方法について説明する。図3は、第1の実施形態に係る方法のフロー図である。
【0058】
当該方法では、まず、加工痕形成ステップ(S10)が行われる。加工痕形成ステップ(S10)では、一面11aが上方に露出する態様で被加工物11等をチャックテーブル32で保持した後、一面11a側にパルス状のレーザービームを照射して、被加工物11を加工する。
【0059】
本実施形態では、一面11a側に1つの加工痕Aを形成した後、一旦、照射を停止する。そして、集光器54に対してチャックテーブル32をX軸方向及びY軸方向の少なくともいずれかの方向に移動させて、レーザービームの照射位置を変える。
【0060】
照射位置を変えた後、再び、一面11a側に他の1つの加工痕Aを形成する。この様にして、一面11a側の異なる位置に21個の加工痕A(図2に示す加工痕Aから加工痕A21)を形成する。
【0061】
なお、本実施形態では、照射位置を変えるときに、集光器54の集光レンズの高さを異なる高さに位置付ける。具体的には、加工痕Aでは、レーザービームの集光点を被加工物11の内部に位置付ける。
【0062】
また、照射位置を変えるたびに集光点を段階的に上方に動かすことで、加工痕A、A、A…A10を順次形成する。次いで、加工痕A11を形成するときには、加工痕A10を形成したときの集光点の高さよりも上に位置する一面11aに集光点を位置付けた状態で、レーザー加工を行う。
【0063】
その後、同様に、照射位置を変えるたびに集光点を段階的に上方に動かし、加工痕A12、A13、A14…A21を順次形成する。つまり、加工痕A12…A21を形成するときには、一面11aよりも上方に集光点を位置付ける。
【0064】
加工痕形成ステップ(S10)の後、撮像ステップ(S20)を行う。撮像ステップ(S20)では、カメラユニット56で一面11aを撮像し、形成された全ての加工痕Aを含む画像70を取得する。
【0065】
図2は、複数の加工痕Aを含む画像70の模式図である。本実施形態の加工痕Aは、画像70中の背景に比べて明るく表示される。なお、画像70は、グレースケール又はフルカラーで表示される多値画像であってよく、白黒で表示される二値画像であってもよい。
【0066】
撮像ステップ(S20)の後、ヒストグラム作成ステップ(S30)を行う。ヒストグラム作成ステップ(S30)では、ヒストグラム作成部64が、画像70から、X軸方向に沿って配置されている複数の第1位置72(図4(A)参照)での明るさを示す第1ヒストグラムBを作成する。
【0067】
本実施形態の第1ヒストグラムBは、各第1位置72において、第1位置72を通りY軸方向に平行な直線上に位置する複数の画素の明るさの尺度を示す値を積算することにより作成される。図4(A)は、ヒストグラム作成ステップ(S30)を説明する図である。なお、図4(A)に示す第1位置72の数は例示であり、これより多くてもよい。
【0068】
図4(A)の下側に示すグラフの横軸はX座標であり、同グラフの縦軸は明るさを示す。本実施形態において各加工痕Aは、加工痕Aが形成されていない領域に比べて明るく表示されるので、第1位置72を通るY軸方向に平行な直線において、加工痕Aに位置する画素の数が多いほど、明るさの尺度を示す値は高くなる。
【0069】
ヒストグラム作成部64は、更に、画像70から、Y軸方向に沿う複数の第2位置74での明るさを示す第2ヒストグラムBを作成する。なお、図4(A)に示す第2位置74の数は例示であり、これより多くてもよい。
【0070】
本実施形態の第2ヒストグラムBは、各第2位置74において、第2位置74を通りX軸方向に平行な直線上に位置する複数の画素の明るさの尺度を示す値を積算することにより作成される。図4(A)の左側に示すグラフの横軸はY座標であり、同グラフの縦軸は明るさを示す。
【0071】
ヒストグラム作成ステップ(S30)の後、作成された第1ヒストグラムBと第2ヒストグラムBとに基づいて、画像70中に離散的に存在する各加工痕Aが形成されている領域の境界を決定部66が決定する(決定ステップ(S40))。
【0072】
本実施形態の決定部66は、第1ヒストグラムBにおいて明るさが極小値、最小値等の低い値Cとなる第1位置72(図4(B)に示すX、X、X及びX)を特定する。そして、値Cとなる第1位置72を通りY軸方向に平行な複数の仮想的な直線D(図4(B)に示すDX1、DX2、DX3及びDX4)で画像70を区画する。
【0073】
同様に、決定部66は、第2ヒストグラムBにおいて明るさが極小値、最小値等の低い値Cとなる第2位置74(図4(B)に示すY、Y、Y及びY)を特定する。そして、値Cとなる第2位置74を通りX軸方向に平行な複数の仮想的な直線D(図4(B)に示すDY1、DY2、DY3及びDY4)で画像70を区画する。
【0074】
図4(B)は、決定ステップ(S40)を説明する図である。図4(B)の下側に示すグラフの横軸はX座標であり、同グラフの縦軸は明るさを示す。また、図4(B)の左側に示すグラフの横軸はY座標であり、同グラフの縦軸は明るさを示す。
【0075】
図4(B)に示す例では、第1ヒストグラムB及び第2ヒストグラムBにおいて、値Cは共通である。また、複数の直線DX1、DX2、DX3及びDX4と、複数の直線DY1、DY2、DY3及びDY4とにより、画像70は格子状に区画され、複数の小領域Eが形成されている。
【0076】
各小領域E内には、加工痕Aが存在する可能性が高い。本実施形態では、この様にして、各加工痕Aが形成されている領域の境界をレーザー加工装置2が自動で決定できる。つまり、加工痕Aを含む小領域Eが自動的に判定される。
【0077】
従って、小領域Eの境界に対応する座標の指定を、加工痕Aの位置が変わる度に指定し直す必要がない。また、レーザー加工装置2が自動で小領域Eの境界を決定するので、専門知識を有する作業者でなくとも作業ができる。
【0078】
なお、第1ヒストグラムBにおいてX及びXの間に位置するピークは、他のピークに比べて低い。これに対して、第2ヒストグラムBにおいてY及びYの間に位置するピークは、他のピークに比べて高い。
【0079】
それゆえ、処理部62は、ピークの差異に基づいて、X及びXの間では、(X,Y)、(X,Y)、(X,Y)及び(X,Y)の4点で囲まれる小領域Eにのみ加工痕Aが存在すると判断できる。
【0080】
決定ステップ(S40)の後、輪郭検出部68が、各加工痕Aの輪郭を検出する(輪郭検出ステップ(S50))。図5は、輪郭検出ステップ(S50)を説明する図である。なお、図5では、1つの加工痕Aの輪郭の模式図を示す。
【0081】
輪郭検出部68は、各小領域Eに対して、第3ヒストグラムB及び第4ヒストグラムBを作成する。第3ヒストグラムBは、Y軸方向の異なる位置にそれぞれ位置しX軸方向に平行な複数の直線Fの各直線上での複数の画素の明るさを示す。
【0082】
図5では、3つの直線F、F及びF上での複数の画素の明るさを示す3つの第3ヒストグラムB3-1、B3-2及びB3-3を例示する。各第3ヒストグラムBの横軸はX座標であり、縦軸は明るさである。
【0083】
第4ヒストグラムBは、X軸方向の異なる位置にそれぞれ位置しY軸方向に平行な複数の直線Gの各直線上での複数の画素の明るさを示す。図5では、3つの直線G、G及びG上での複数の画素の明るさを示す3つの第4ヒストグラムB4-1、B4-2及びB4-3を例示する。各第4ヒストグラムBの横軸はY座標であり、縦軸は明るさを示す。
【0084】
第3ヒストグラムB及び第4ヒストグラムBの立ち上がり位置(即ち、X座標及びY座標)は、加工痕Aの縁に対応する。立ち上がり位置をつなぎ合わせることで、加工痕Aの輪郭が特定される。なお、代替的手法として、輪郭検出部68は、エッジ検出等の手法を用いて加工痕Aの輪郭を特定してもよい。
【0085】
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、ヒストグラム作成ステップ(S30)において、ヒストグラム作成部64が複数の画素の明るさの尺度を示す値を積算しない。また、決定ステップ(S40)において、決定部66が、極小値等ではなく、ピーク、立ちあがり等を用いて境界を決定する。係る点が、第1の実施形態と異なる。
【0086】
図6は、第2の実施形態に係るヒストグラム作成ステップ(S30)及び決定ステップ(S40)を示す図である。第2の実施形態のヒストグラム作成部64は、X軸方向に沿う直線Hで、X座標(横軸)及び明るさ(縦軸)を示す第5ヒストグラムBを作成する。第5ヒストグラムBは、Y軸方向の3つ目に位置し且つX軸方向に沿って並んだ5つの加工痕Aを通る直線Hでのヒストグラムである。
【0087】
次いで、決定部66は、第5ヒストグラムBにおいて、ピーク、立ちあがり(エッジ)等が複数存在する場合に、隣接する2つのピークの中間位置、又は、谷を挟んで隣接するエッジの中間位置を小領域Eの境界とする。
【0088】
なお、第5ヒストグラムBにピーク等が存在しない場合には、ヒストグラム作成部64は、ピーク等が得られるまで、直線HをY軸方向に動かして第5ヒストグラムBの作成を繰り返す。
【0089】
ヒストグラム作成部64は、同様に、Y軸方向に沿う直線Hで、Y座標(横軸)及び画素の明るさ(縦軸)を示す第6ヒストグラムBを作成する。第6ヒストグラムBは、X軸方向の1つ目に位置し且つY軸方向に沿って並んだ5つの加工痕Aを通る直線Hでのヒストグラムである。
【0090】
次いで、決定部66は、第6ヒストグラムBにおいて、ピーク、立ちあがり(エッジ)等が複数存在する場合に、隣接する2つのピークの中間位置、又は、谷を挟んで隣接するエッジの中間位置を小領域Eの境界とする。
【0091】
なお、第6ヒストグラムBにピーク等が存在しない場合には、ヒストグラム作成部64は、ピーク等が得られるまで、直線HをX軸方向に動かして第6ヒストグラムBの作成を繰り返す。
【0092】
上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。例えば、輪郭検出ステップ(S50)の後、処理部62は、各加工痕Aが形成されている範囲の面積、各加工痕Aの重心、各加工痕Aの真円からのずれ等を算出してもよい。これにより、レーザービームの形状、レーザー加工装置2の状態等を診断できる。
【0093】
ところで、上述の実施形態では、加工痕Aが画像70において背景に比べて明るく表示される例を説明したが、加工痕Aは画像70において背景に比べて暗く表示されてもよい。この場合、各ヒストグラムでは明暗が反転するので、処理部62の処理内容は、第1又は第2の実施形態に応じて適宜調整される。
【0094】
なお、上述の加工痕Aを確認するための方法は、例えば、レーザー加工装置2を用いて被加工物11にレーザーリフトオフ(laser lift off)加工を施す前に、被加工物11を試験的に加工するときに行われる。
【符号の説明】
【0095】
2 :レーザー加工装置
4 :基台
10 :Y軸方向移動ユニット
20 :X軸方向移動ユニット
30 :テーブル基台
32 :チャックテーブル
32a :保持面
32b :クランプ
40 :支持部
42 :Z軸方向移動ユニット
44 :Z軸パルスモータ
46 :Z軸移動板
48 :ホルダ
50 :レーザービーム照射ユニット
52 :ケーシング
54 :集光器
56 :カメラユニット(撮像ユニット)
58 :入出力装置
60 :制御部
62 :処理部
64 :ヒストグラム作成部
66 :決定部
68 :輪郭検出部
70 :画像
72 :第1位置
74 :第2位置
11 :被加工物,11a:一面,11b:他面
13 :保護テープ
15 :フレーム
17 :被加工物ユニット
A,A,A,A,A,A,A,A,A,A,A10,A11,A12,A13,A14,A15,A16,A17,A18,A19,A20,A21:加工痕
:第1ヒストグラム
:第2ヒストグラム
,B3-1,B3-2,B3-3:第3ヒストグラム
,B4-1,B4-2,B4-3:第4ヒストグラム
:第5ヒストグラム
:第6ヒストグラム
C :値
X1,DX2,DX3,DX4,DY1,DY2,DY3,DY4:直線
E :小領域(領域)
F,F,F,F,G,G,G,G,H,H:直線
図1
図2
図3
図4
図5
図6