(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】積層造形方法、及び積層造形システム
(51)【国際特許分類】
B22F 3/16 20060101AFI20240122BHJP
B22F 3/105 20060101ALI20240122BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20240122BHJP
B29C 64/371 20170101ALI20240122BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240122BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240122BHJP
【FI】
B22F3/16
B22F3/105
B29C64/153
B29C64/371
B33Y10/00
B33Y30/00
(21)【出願番号】P 2020130670
(22)【出願日】2020-07-31
【審査請求日】2023-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山元 一生
(72)【発明者】
【氏名】山田 貞弘
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-009213(JP,A)
【文献】特開2019-077935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 3/105,3/16,10/00,10/32,12/00,
12/70
B29C 64/00,64/153,64/371,67/00
B33Y 10/00,30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー線を用いて粉体材料に熱を供給して層を造形し、前記層を順次積層して積層造形物を製造する積層造形方法であって、
前記積層造形物を製造する積層造形装置本体を収容する筐体の内側の空間に、複数の純度の窒素ガスを不活性ガスとして供給し、前記空間を所要の不活性ガス雰囲気に置換
し、
低い純度の窒素ガスを前記不活性ガスとして用いる低純度ステップと、
最も高い純度の窒素ガスを前記不活性ガスとして用いる高純度ステップと、を含むパージ工程を行い、
前記低純度ステップにおける窒素ガスの純度が、前記高純度ステップで用いる窒素ガスの純度よりも低く、
前記低純度ステップが、同一又は異なる純度の窒素ガスを前記不活性ガスとして用いる2以上のステップをさらに含む、積層造形方法。
【請求項2】
前記低純度ステップが、同一又は異なる流量の窒素ガスを前記不活性ガスとして用いる2以上のステップをさらに含む、請求項
1に記載の積層造形方法。
【請求項3】
前記低純度ステップは、低い純度から高い純度となるように段階的に前記ステップを行う、請求項
1又は2に記載の積層造形方法。
【請求項4】
前記パージ工程は、前記ステップの間に、前記空間の圧力を減圧するステップを1以上含む、請求項
1乃至3のいずれか一項に記載の積層造形方法。
【請求項5】
エネルギー線を用いて粉体材料に熱を供給して層を造形し、前記層を順次積層して積層造形物を製造する積層造形システムであって、
前記積層造形物を製造する積層造形装置本体を内側の空間に収容する筐体と、
空気を原料とし、複数の純度の窒素ガスを不活性ガスとして導出可能な窒素PSA装置と、
前記窒素PSA装置と前記筐体との間に位置する不活性ガス供給経路と、
前記不活性ガス供給経路に位置し、窒素ガスの流量を規制する流量調整弁と、を備え
、
前記流量調整弁の開度を自在に調整することにより、複数の純度の窒素ガスを不活性ガスとして供給する、積層造形システム。
【請求項6】
エネルギー線を用いて粉体材料に熱を供給して層を造形し、前記層を順次積層して積層造形物を製造する積層造形システムであって、
前記積層造形物を製造する積層造形装置本体を内側の空間に収容する筐体と、
空気を原料とし、複数の純度の窒素ガスを不活性ガスとして導出可能な窒素PSA装置と、
前記窒素PSA装置と前記筐体との間に位置する不活性ガス供給経路と、を備え、
前記不活性ガス供給経路が、2以上の分岐流路に分岐した後、再び合流する、積層造形システム。
【請求項7】
前記分岐流路にそれぞれ位置し、前記分岐流路を閉止又は開放する2以上の第1開閉弁を有する、請求項
6に記載の積層造形システム。
【請求項8】
前記分岐流路を流れる前記不活性ガスの流量が2水準以上である、請求項
6又は7に記載の積層造形システム。
【請求項9】
前記不活性ガス供給経路に位置し、前記不活性ガス供給経路を閉止又は開放する第2開閉弁と、
前記不活性ガス供給経路の前記第2開閉弁の一次側で分岐し、前記第2開閉弁の二次側で前記不活性ガス供給経路に合流するバイパス経路と、
前記バイパス経路に位置し、前記窒素PSA装置から導出される前記不活性ガスを含む流体を用いて前記筐体の内側の前記空間を減圧する減圧機構と、をさらに備える、請求項
5乃至8のいずれか一項に記載の積層造形システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層造形方法、及び積層造形システムに関する。
【背景技術】
【0002】
Additive Manufacturingと称される付加製造技術がある。付加製造技術の一例として、樹脂、金属等の粉体材料を任意の形状の層に造形し、造形した層を順次積層して任意の形状の積層造形物を作製する積層造形装置が知られている。
付加製造技術による積層造形装置の一例として、造形ステージ上の金属粉体をレーザー等で焼結する金属3Dプリンタが知られている。金属3Dプリンタは、焼結した金属層を造形ステージ上で順次積層し、複雑な形状の構造物を短時間で精度よく製造できる。
そのため、金属3Dプリンタは、航空機産業及び医療等の先端技術分野で有望な技術として注目されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の積層造形装置は、不活性ガス雰囲気とされる造形室と、粉体材料層の所定箇所にレーザー光を照射して粉体材料を焼結させて焼結体を形成するレーザー光照射部と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に金属3Dプリンタ等の積層造形装置では、高温のレーザーで金属粉体を溶解して造形物に加工するため、雰囲気中にある酸素分や水分などによって造形物の品質が影響される。そのため、積層造形物を製造する前に、積層造形装置を収容する筐体内を窒素ガス等の不活性ガスで置換する必要がある。
【0006】
しかしながら、製造した造形物を取り出す際や、金属粉体を補充する際、筐体内は大気成分となってしまう。タクトタイムを短縮して生産性を向上するためには、大気成分に置換された筐体内を短時間で不活性ガスに置換する必要がある。一方、筐体内を短時間で不活性ガスに置換するため、高純度の不活性ガスを大流量で筐体内に供給することは不経済である。
【0007】
本発明は、高純度の不活性ガスの使用量を抑制しつつ、筐体内を短時間で不活性ガス雰囲気に置換が可能な積層造形方法、及び積層造形システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を備える。
[1] エネルギー線を用いて粉体材料に熱を供給して層を造形し、前記層を順次積層して積層造形物を製造する積層造形方法であって、
前記積層造形物を製造する積層造形装置本体を収容する筐体の内側の空間に、複数の純度の窒素ガスを不活性ガスとして供給し、前記空間を所要の不活性ガス雰囲気に置換する、積層造形方法。
[2] 低い純度の窒素ガスを前記不活性ガスとして用いる低純度ステップと、
最も高い純度の窒素ガスを前記不活性ガスとして用いる高純度ステップと、を含むパージ工程を行い、
前記低純度ステップにおける窒素ガスの純度が、前記高純度ステップで用いる窒素ガスの純度よりも低い、前項[1]に記載の積層造形方法。
[3] 前記低純度ステップが、同一又は異なる純度の窒素ガスを前記不活性ガスとして用いる2以上のステップをさらに含む、前項[2]に記載の積層造形方法。
[4] 前記低純度ステップが、同一又は異なる流量の窒素ガスを前記不活性ガスとして用いる2以上のステップをさらに含む、前項[2]又は[3]に記載の積層造形方法。
[5] 前記低純度ステップは、低い純度から高い純度となるように段階的に前記ステップを行う、前項[3]又は[4]に記載の積層造形方法。
[6] 前記パージ工程は、前記ステップの間に、前記空間の圧力を減圧するステップを1以上含む、前項[3]乃至[5]のいずれかに記載の積層造形方法。
[7] エネルギー線を用いて粉体材料に熱を供給して層を造形し、前記層を順次積層して積層造形物を製造する積層造形システムであって、
前記積層造形物を製造する積層造形装置本体を内側の空間に収容する筐体と、
空気を原料とし、複数の純度の窒素ガスを不活性ガスとして導出可能な窒素PSA装置と、
前記窒素PSA装置と前記筐体との間に位置する不活性ガス供給経路と、
前記不活性ガス供給経路に位置し、窒素ガスの流量を規制する流量調整弁と、を備える、積層造形システム。
[8] エネルギー線を用いて粉体材料に熱を供給して層を造形し、前記層を順次積層して積層造形物を製造する積層造形システムであって、
前記積層造形物を製造する積層造形装置本体を内側の空間に収容する筐体と、
空気を原料とし、複数の純度の窒素ガスを不活性ガスとして導出可能な窒素PSA装置と、
前記窒素PSA装置と前記筐体との間に位置する不活性ガス供給経路と、を備え、
前記不活性ガス供給経路が、2以上の分岐流路に分岐した後、再び合流する、積層造形システム。
[9] 前記分岐流路にそれぞれ位置し、前記分岐流路を閉止又は開放する2以上の第1開閉弁を有する、前項[8]に記載の積層造形システム。
[10] 前記分岐流路を流れる前記不活性ガスの流量が2水準以上である、前項[8]又は[9]に記載の積層造形システム。
[11] 前記不活性ガス供給経路に位置し、前記不活性ガス供給経路を閉止又は開放する第2開閉弁と、
前記不活性ガス供給経路の前記第2開閉弁の一次側で分岐し、前記第2開閉弁の二次側で前記不活性ガス供給経路に合流するバイパス経路と、
前記バイパス経路に位置し、前記窒素PSA装置から導出される前記不活性ガスを含む流体を用いて前記筐体の内側の前記空間を減圧する減圧機構と、をさらに備える、前項[7]乃至[10]のいずれかに記載の積層造形システム。
【発明の効果】
【0009】
本発明の積層造形方法、及び積層造形システムによれば、高純度の不活性ガスの使用量を抑制しつつ、筐体内を短時間で不活性ガス雰囲気に置換できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1形態の積層造形システムの構成の一例を示す模式図である。
【
図2】本発明の第2形態の積層造形システムの構成の一例を示す模式図である。
【
図3】本発明の第2形態の積層造形システムの構成の一例を示す模式図である。
【
図4】本発明の第3形態の積層造形システムの構成の一例を示す模式図である。
【
図5】本発明の第3形態の積層造形システムの構成の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を適用した一実施形態である積層造形システムについて、それを用いる積層造形方法とともに図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0012】
<積層造形システム>
先ず、本発明の積層造形システムの構成について説明する。
図1~
図4は、本発明を適用した一実施形態である積層造形システムの構成の一例を示す模式図である。
本発明の積層造形システムは、エネルギー線を用いて粉体材料に熱を供給して層を造形し、造形した層を順次積層して積層造形物を製造するものである。
【0013】
(第1形態)
図1に示すように、第1形態の積層造形システム11は、窒素PSA装置1と、内側の空間に積層造形装置本体(図示略)を収容する筐体2と、不活性ガス供給経路3と、流量調整弁4と、排出経路5と、を備えて、概略構成されている。
【0014】
窒素PSA装置1は、特に限定されるものではなく、公知の構成の装置や市販されている装置を用いることができる。このような窒素PSA装置1としては、特許第5917169号に記載の窒素PSA装置や、大陽日酸(株)社製:「RE40/N」等が挙げられる。
【0015】
窒素PSA装置1は、窒素ガスを不活性ガスとして導出する不活性ガス導出口1Aを有する。
【0016】
窒素PSA装置1は、空気を原料とし、複数の純度の窒素ガスを発生できるという特性を有する。窒素PSA装置1において、原料空気の圧縮機、及び吸着剤が充填された充填塔のサイズを組み合わせることで、窒素ガスの純度と流量とが変化する。以下の表1に、一例を示す。
【0017】
【0018】
筐体2の内側の空間の雰囲気を置換するための不活性ガスとして、窒素PSA装置1から導出される窒素ガスを用いることで、高い純度の窒素ガスを供給するだけでなく、低い純度の窒素ガスを大流量で供給することも可能となる。すなわち、純度及び流量を適宜選択した複数の水準の窒素ガスを不活性ガスとして供給することができる。
【0019】
筐体2は、内側に空間を有し、この空間に積層造形装置本体(図示略)を収容するとともに、当該空間を不活性ガス雰囲気に置換することを目的とするものであれば、特に限定されるものではない。
筐体2は、積層造形装置本体のうち、全ての構成を収容する形態であってもよいし、レーザー光照射部、及び造形部を含む一部の構成のみを収容する形態であってもよい。
筐体2の内側の空間は、密閉空間であることが好ましい。
【0020】
積層造形装置本体は、積層造形物を製造可能であれば、特に限定されるものではなく、公知の構成の装置や市販されている装置を用いることができる。このような積層造形装置本体としては、特許6412049号に記載の金属3Dプリンタや、株式会社リコー製;「RICOH AM S5500P」等が挙げられる。
【0021】
筐体2は、内側の空間に不活性ガスを供給するための不活性ガス導入口2Aと、内側の空間から雰囲気ガスを排気するための排気口2Bと、を有する。
また、筐体2は、内側の空間の雰囲気(筐体2内の雰囲気)中の酸素濃度を測定するために、図示略の酸素濃度計を有していてもよい。
さらに、筐体2は、筐体2内の雰囲気中の水分濃度を測定するために、図示略の水分濃度計を有していてもよい。
【0022】
不活性ガス供給経路3は、窒素PSA装置1と筐体2との間に位置する、金属製(例えばSUS製)あるいは樹脂製(例えばPP製)のガス配管である。不活性ガス供給経路3の一端は、窒素PSA装置1の不活性ガス導出口1Aと接続されている。また、不活性ガス供給経路3の他端は、筐体2の不活性ガス導入口2Aと接続されている。これにより、窒素PSA装置1で生成した窒素ガスを不活性ガスとして筐体2の内側の空間に供給できる。
不活性ガス供給経路3には、流量調整弁4と、開閉弁(第2開閉弁)9と、が一次側から順に設けられている。
【0023】
流量調整弁4は、不活性ガス供給経路3に位置する。流量調整弁4は、不活性ガス供給経路3の当該流量調整弁4の二次側における窒素ガスの流量を任意の値に規制する。流量調整弁4としては、特に限定されないが、全閉(開度0%)から全開(開度100%)にわたって開度を自在(連続的、段階的)に調整できるものが好ましい。
流量調整弁4の開度を大きくすることで、濃度が低い窒素ガスを大きな流量で筐体2内に供給できる。一方、流量調整弁4の開度を小さくすることで、濃度が高い窒素ガスを小さな流量で筐体2内に供給できる。
【0024】
開閉弁9は、不活性ガス供給経路3に位置する。開閉弁9は、不活性ガス供給経路3の流路を開放又は遮断する。
【0025】
排出経路5は、筐体2の排気口2Bと接続されている。排出経路5により、筐体2の内側の空間から雰囲気ガスを排気することができる。
【0026】
第1形態の積層造形システム11によれば、筐体2の内側の空間に、窒素PSA装置1によって生成した窒素ガスを不活性ガスとして供給し、筐体2の内側の空間を所要の不活性ガス雰囲気に置換することができる。
【0027】
なお、筐体2内の雰囲気は、造形物の品質に影響がでない酸素量、あるいは水分量であれば、特に限定されるものではない。
筐体2の雰囲気中の酸素濃度としては、例えば、1000ppm以下が挙げられ、100ppm以下がより好ましく、10ppm以下がさらに好ましい。なお、雰囲気中の酸素濃度は、市販の酸素濃度計(例えば、東レエンジニアリング(株)社製:「LC-750L」等)を用いて測定できる。
筐体2の雰囲気中の水分濃度としては、例えば、1000ppm以下が挙げられ、100ppm以下がより好ましく、10ppm以下がさらに好ましい。なお、雰囲気中の水分濃度は、市販の水分計(例えば、Michell社製:「Easidew Transmitter」等)を用いて測定できる。
【0028】
(第2形態)
次に、本発明を適用した第2形態について説明する。第2形態の積層造形システム21は、第1形態の積層造形システム11の構成に加えて、さらに、バイパス経路6、及び減圧機構7を備える構成となっている。このため、
図2及び
図3を用いて第2形態の積層造形システム21について説明する。したがって、第2形態の積層造形システム21については、第1形態の積層造形システム11と同一の構成部分については同じ符号を付すると共に説明を省略する。
【0029】
図2及び
図3に示すように、バイパス経路6は、不活性ガス供給経路3の開閉弁(第2開閉弁)9の一次側で分岐した後、開閉弁9の二次側で不活性ガス供給経路3に再び合流するガス配管である。
ここで、
図2に示すように、開閉弁9が開放状態である場合、窒素PSA装置1から導出され、流量調整弁4により流量が規制された窒素ガスは、不活性ガス供給経路3を介して筐体2の内側の空間に供給される。
一方、
図3に示すように、開閉弁9が閉止状態である場合、窒素PSA装置1から導出され、流量調整弁4により流量が規制された窒素ガスは、開閉弁9を迂回するように、不活性ガス供給経路3からバイパス経路6に供給される。
【0030】
減圧機構7は、バイパス経路6に位置する。減圧機構7は、窒素PSA装置1から導出される窒素ガス(不活性ガス)を含む流体を用いて筐体2の内側の空間を減圧できる機器であれば、特に限定されない。このような機器としては、エゼクタが挙げられる。
なお、減圧機構7により、バイパス経路6は、窒素PSA装置1と減圧機構7との間に位置する経路6Aと、筐体2と減圧機構7との間に位置する経路6Bとに別れる。
【0031】
ここで、
図3に示すように、開閉弁9が閉止状態である場合、窒素PSA装置1から導出された窒素ガスは、不活性ガス供給経路3から経路6Aを介して減圧機構7に導入された後、減圧機構7から排出される。このとき、減圧機構7は、経路6Bを介して筐体2の内側の空間の雰囲気を吸引し、減圧機構7から排出する。すなわち、筐体2の内側の空間は、減圧される。
【0032】
第2形態の積層造形システム21によれば、第1形態の積層造形システム11と同様に、筐体2の内側の空間を所要の不活性ガス雰囲気に置換することができる。
また、第2形態の積層造形システム21によれば、筐体2への供給を停止した際、窒素PSA装置1から導出された窒素ガスを用いて筐体2の内側の空間を減圧できる。
【0033】
(第3形態)
次に、本発明を適用した第3形態について説明する。第3形態の積層造形システム31は、第1形態の積層造形システム11の構成において、流量調整弁4を省略するとともに、不活性ガス供給経路3が2以上に分岐する構成となっている。このため、
図4を用いて第3形態の積層造形システム31について説明する。したがって、第3形態の積層造形システム31については、第1形態の積層造形システム11と同一の構成部分については同じ符号を付すると共に説明を省略する。
【0034】
図4に示すように、第3形態の積層造形システム31では、不活性ガス供給経路3が3本の分岐流路3A,3B,3Cに分岐した後、再び合流する。
【0035】
分岐流路3A,3B,3Cには、流路を開放状態又は閉止状態とする開閉弁(第1開閉弁)9A,9B,9Cと、流路に流れる窒素ガスが所要の流量となるように規制するニードル弁8A,8B,8Cとが、それぞれ設けられている。分岐流路3A,3B,3Cを流れる窒素ガス(不活性ガス)の流量は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。不活性ガス供給経路3が2以上の分岐流路に分岐する場合、分岐流路を流れる窒素ガス(不活性ガス)の流量は2水準以上とすることが好ましい。開閉弁9A,9B,9CCの開閉状態を組み合わせる(選択する)ことで、窒素PSA装置1から筐体2へ供給する窒素ガスの流量を簡便に変更することができる。
【0036】
ここで、分岐流路3A,3B,3Cの流量をそれぞれ10NL/min、20NL/min、40NL/minに調整し、開閉弁9A,9B,9Cの開閉状態を組み合わせた場合の窒素ガスの総流量について、以下の表2に示す。
【0037】
【0038】
表2に示すように、所要の流量に調整した分岐流路を不活性ガス供給経路3に複数設けることにより、電磁弁等の開閉弁9A,9B,9Cの開閉状態を選択するのみで、窒素PSA装置1から筐体2へ供給する窒素ガス(不活性ガス)の流量を多段階(10~70NL/min)に切り替えることができる。
【0039】
第3形態の積層造形システム31によれば、第1形態の積層造形システム11と同様に、筐体2の内側の空間を所要の不活性ガス雰囲気に置換することができる。
また、第3形態の積層造形システム31によれば、不活性ガス供給経路3に複数の分岐流路3A,3B,3Cを設けて分岐流路3A,3B,3Cの開閉状態を選択することで、流量調整弁4を用いることなく窒素PSA装置1から筐体2へ供給する窒素ガス(不活性ガス)の流量を多段階(段階的)に切り替えることができる。
【0040】
<積層造形方法>
次に、上述した積層造形システム11,21,31を用いた、本発明の積層造形方法について説明する。
本発明の積層造形方法は、エネルギー線を用いて粉体材料に熱を供給して層を造形し、造形した層を順次積層して積層造形物を製造する際、筐体2の内側の空間に複数の純度の窒素ガスを不活性ガスとして供給し、筐体2の内側の空間を所要の不活性ガス雰囲気に置換するパージ工程を行う。
【0041】
パージ工程は、最も高い純度の窒素ガスを不活性ガスとして用いる高純度ステップと、高純度ステップで用いる窒素ガスよりも低い純度の窒素ガスを不活性ガスとして用いる低純度ステップと、を含む。
なお、パージ工程は、低純度ステップを高純度ステップよりも先に行い、高純度ステップを最後に行う。すなわち、高純度ステップがパージ工程の最終ステップとなる。
また、パージ工程では、高純度ステップにおける高純度の窒素ガスの流量よりも、低純度ステップにおける低純度の窒素ガスの流量が多い方が好ましい。
【0042】
低純度ステップは、同一又は異なる純度の窒素ガスを不活性ガスとして用いる2以上のステップをさらに含んでいてもよい。
さらに、低純度ステップは、同一又は異なる流量の窒素ガスを不活性ガスとして用いる2以上のステップをさらに含んでいてもよい。
すなわち、低純度ステップは、同一の純度であるが異なる流量の窒素ガスを不活性ガスとして用いる2以上のステップを含んでいてもよいし、同一の流量であるが異なる純度の窒素ガスを不活性ガスとして用いる2以上のステップを含んでいてもよい。
なお、低純度ステップが異なる純度の窒素ガスを不活性ガスとして用いる2以上のステップを含む場合、低い純度から高い純度となるようにステップを行うことが好ましい。
【0043】
パージ工程は、窒素PSA装置1から導出される窒素ガスを不活性ガスとして筐体2に供給することが好ましい。窒素PSA装置1は、導出する窒素ガスの流量を制御することで、窒素ガスを目的とする純度に調整することができる。すなわち、パージ工程では、窒素PSA装置1から導出される窒素ガスの流量を徐々に少なくすることで、窒素ガスの純度を徐々に高くする(低純度ステップから高純度ステップへ移行する)ことができる。
【0044】
パージ工程では、窒素PSA装置1から導出される窒素ガスの流量を連続的に減少することで、窒素ガスの純度を連続的に高くする、無段階制御としてもよいし、筐体2内の酸素濃度の測定値からフィードバックして筐体2に供給する窒素ガスの流量及び純度を選択するフィードバック制御としてもよい。パージ工程を無段階制御、又はフィードバック制御とすることで、筐体2内をより短時間で不活性ガス雰囲気に置換できる。
【0045】
また、パージ工程では、窒素PSA装置1から導出される窒素ガスの流量を段階的に減少することで、窒素ガスの純度を段階的に高くする(低い純度から高い純度となるように多段階のステップを行う)、段階制御としてもよい。パージ工程を段階制御とすることで、簡易的な装置構成で簡単に制御できるため、装置コストが低減して生産性が向上する。
【0046】
なお、パージ工程におけるステップの切り替えのタイミングは、特に限定されるものではなく、パージ時間を短縮するために最適な条件を適宜選択し、決定することが好ましい。
例えば、ある純度及びある流量(所定の水準)の窒素ガスを筐体2内へ導入した際、供給時間と筐体2内の酸素濃度との関係を事前に確認した結果に基づいて決定してもよいし、所定の水準の窒素ガスを用いて筐体2内が目標の酸素濃度となる供給時間の組合せをシミュレーションによって求めてもよい。
【0047】
パージ工程は、各ステップの間に、筐体2内の空間の圧力を減圧するステップを1以上含んでいてもよい。筐体2内の圧力を減圧するステップを設けることで、筐体2内をより短時間で不活性ガス雰囲気に置換できる(パージ時間を短縮できる)。
【0048】
なお、筐体2内の圧力を減圧する方法としては、特に限定されるものではない。
図2及び
図3に示すように、減圧機構7を備える積層造形システム21を用いてもよいし、
図1に示す積層造形システム11、及び
図4に示す積層造形システム31を用いてパージ工程を行う際、各ステップにおいて筐体2内の空間の圧力が大気圧よりも高い圧力(陽圧)となるように窒素ガスを供給し、ステップの切り替え時に窒素ガスの供給を停止して筐体2内の圧力を減圧してもよい。
【0049】
(第4形態)
本発明を適用した第4形態について説明する。第4形態の積層造形方法は、第1形態の積層造形システム11を用いて、パージ工程を行う構成となっている。なお、窒素PSA装置1は、表1に示す特性を有する。
【0050】
[パージ工程]
・ステップ1:流量調整弁4の開度を調整した後、開閉弁9を開放状態とし、60Nm3/hの流量(純度99%)で窒素ガスを筐体2へ供給する。
・ステップ2:酸素濃度が2%に到達後、流量調整弁4の開度を調整し、45Nm3/hの流量(純度99.9%)で窒素ガスを筐体2へ供給する。
・ステップ3:酸素濃度が0.2%に到達後、流量調整弁4の開度を調整し、30Nm3/hの流量(純度99.99%)で窒素ガスを筐体2へ供給する。
・ステップ4:酸素濃度が0.02%に到達後、流量調整弁4の開度を調整し、25Nm3/hの流量(純度99.999%)で窒素ガスを筐体2へ供給する。
・ステップ5:酸素濃度が0.002%に到達後、流量調整弁4を閉止状態とし、開閉弁9を閉止状態として、パージ工程を完了する。
【0051】
第4形態の積層造形方法によれば、高純度の不活性ガスの使用量を抑制しつつ、筐体2内を短時間で不活性ガス雰囲気に置換(パージ)できる。
【0052】
(第5形態)
次に、本発明を適用した第5形態について説明する。第5形態の積層造形方法は、第4形態の積層造形方法のパージ工程に減圧ステップを加える構成となっている。
【0053】
[パージ工程]
・ステップ1:流量調整弁4の開度を調整した後、開閉弁9を開放状態とし、筐体2内の圧力がP1(P1>P0:大気圧)となるように、60Nm3/hの流量(純度99%)で窒素ガスを筐体2へ供給する。
・ステップ2:所定時間経過後(あるいは所定濃度に到達後)、開閉弁9を閉止状態とし、筐体2内の圧力がP(P1>P>P0:大気圧)となるまで筐体2内の雰囲気を排出経路5から排出する。
・ステップ3:流量調整弁4の開度を調整した後、開閉弁9を開放状態とし、筐体2内の圧力がP2(P2>P0:大気圧)となるように、45Nm3/hの流量(純度99.9%)で窒素ガスを筐体2へ供給する。
・ステップ4:所定時間経過後(あるいは所定濃度に到達後)、開閉弁9を閉止状態とし、筐体2内の圧力がP(P2>P>P0:大気圧)となるまで筐体2内の雰囲気を排出経路5から排出する。
・ステップ5:流量調整弁4の開度を調整した後、開閉弁9を開放状態とし、筐体2内の圧力がP3(P3>P0:大気圧)となるように、30Nm3/hの流量(純度99.99%)で窒素ガスを筐体2へ供給する。
・ステップ6:所定時間経過後(あるいは所定濃度に到達後)、開閉弁9を閉止状態とし、筐体2内の圧力がP(P3>P>P0:大気圧)となるまで筐体2内の雰囲気を排出経路5から排出する。
・ステップ7:流量調整弁4の開度を調整した後、開閉弁9を開放状態とし、25Nm3/hの流量(純度99.999%)で窒素ガスを筐体2へ供給する。
・ステップ8:所定時間経過後(あるいは所定濃度に到達後)、開閉弁9を閉止状態とし、パージ工程を完了する。
【0054】
第5形態の積層造形方法によれば、高純度の不活性ガスの使用量を抑制しつつ、より短時間で筐体2内を不活性ガス雰囲気に置換(パージ)できる。
【0055】
(第6形態)
次に、本発明を適用した第6形態について説明する。第6形態の積層造形方法は、第2形態の積層造形システム21を用いて、減圧ステップを含むパージ工程を行う構成となっている。なお、窒素PSA装置1は、表1に示す特性を有する。
【0056】
[パージ工程]
・ステップ1:流量調整弁4の開度を調整した後、開閉弁9を開放状態とし、60Nm3/hの流量(純度99%)で窒素ガスを筐体2へ供給する。
・ステップ2:所定時間経過後(あるいは所定濃度に到達後)、開閉弁9を閉止状態とし、バイパス経路6を介して減圧機構7に窒素ガスを供給して、筐体2内の雰囲気を排出する。
・ステップ3:流量調整弁4の開度を調整した後、開閉弁9を開放状態とし、45Nm3/hの流量(純度99.9%)で窒素ガスを筐体2へ供給する。
・ステップ4:所定時間経過後(あるいは所定濃度に到達後)、開閉弁9を閉止状態とし、バイパス経路6を介して減圧機構7に窒素ガスを供給して、筐体2内の雰囲気を排出する。
・ステップ5:流量調整弁4の開度を調整した後、開閉弁9を開放状態とし、30Nm3/hの流量(純度99.99%)で窒素ガスを筐体2へ供給する。
・ステップ6:所定時間経過後(あるいは所定濃度に到達後)、開閉弁9を閉止状態とし、バイパス経路6を介して減圧機構7に窒素ガスを供給して、筐体2内の雰囲気を排出する。
・ステップ7:流量調整弁4の開度を調整した後、開閉弁9を開放状態とし、25Nm3/hの流量(純度99.999%)で窒素ガスを筐体2へ供給する。
・ステップ8:所定時間経過後(あるいは所定濃度に到達後)、開閉弁9を閉止状態とし、パージ工程を完了する。
【0057】
第6形態の積層造形方法によれば、高純度の不活性ガスの使用量を抑制しつつ、より短時間で筐体2内を不活性ガス雰囲気に置換(パージ)できる。
【0058】
(第7形態)
次に、本発明を適用した第7形態について説明する。第7形態の積層造形方法は、第3形態の積層造形システム31を用いて、減圧ステップを含むパージ工程を行う構成となっている。なお、窒素PSA装置1は、表2に示す流量に規制(調整)された分岐流路3A,3B,3Cを有する。
【0059】
[パージ工程]
・ステップ1:開閉弁9A~9C、及び開閉弁9を開状態とし、70Nm3/hの流量で窒素ガスを筐体2へ供給する。
・ステップ2:所定時間経過後(所定濃度に到達後)、開閉弁9Aを閉状態、開閉弁9B及び開閉弁9Cを開状態とし、60Nm3/hの流量で窒素ガスを筐体2へ供給する。
・ステップ3:所定時間経過後(所定濃度に到達後)、開閉弁9A及び開閉弁9Cを開状態、開閉弁9Bを閉状態とし、50Nm3/hの流量で窒素ガスを筐体2へ供給する。
・ステップ4:所定時間経過後(所定濃度に到達後)、開閉弁9A及び開閉弁9Bを閉状態、開閉弁9Cを開状態とし、40Nm3/hの流量で窒素ガスを筐体2へ供給する。
・ステップ5:所定時間経過後(所定濃度に到達後)、開閉弁9A及び開閉弁9Bを開状態、開閉弁9Cを閉状態とし、30Nm3/hの流量で窒素ガスを筐体2へ供給する。
・ステップ6:所定時間経過後(所定濃度に到達後)、開閉弁9A及び開閉弁9Cを閉状態、開閉弁9Bを開状態とし、20Nm3/hの流量で窒素ガスを筐体2へ供給する。
・ステップ7:所定時間経過後(所定濃度に到達後)、開閉弁9Aを開状態、開閉弁9B及び開閉弁9Cを閉状態とし、10Nm3/hの流量で窒素ガスを筐体2へ供給する。
・ステップ8:所定時間経過後(所定濃度に到達後)、開閉弁9A~9C、及び開閉弁9を閉止状態とし、パージ工程を完了する。
【0060】
第7形態の積層造形方法によれば、簡単な操作により、高純度の不活性ガスの使用量を抑制しつつ、短時間で筐体2内を不活性ガス雰囲気に置換(パージ)できる。
【0061】
以上説明したように、本発明の積層造形システム、及び積層造形方法によれば、高純度の不活性ガスの使用量を抑制しつつ、筐体内を短時間で不活性ガス雰囲気に置換できる。したがって、積層造形物を製造する際の生産性が向上する。
【0062】
また、本発明の積層造形システム、及び積層造形方法によれば、最も高い純度の窒素ガスを不活性ガスとして用いる高純度ステップの運転条件で最適化できるため、窒素ガスを導出する窒素PSA装置1の圧縮機の小型化が可能となり、システム全体の小型化が図れる。
【0063】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、上述した第3形態の積層造形システム31では、不活性ガス供給経路3が3本の分岐流路3A,3B,3Cに分岐する構成を一例として説明したが、これに限定されない。例えば、不活性ガス供給経路3が2本の分岐流路に分岐する構成であってもよいし、4本以上に分岐する構成であってもよい。
【0064】
また、上記第3形態の積層造形システム31では、
図4に示すように、窒素PSA装置1の筐体の外側において不活性ガス供給経路3が3本の分岐流路3A,3B,3Cに分岐する構成を一例として説明したが、これに限定されない。例えば、
図5に示すように、PSA装置1’の筐体の内側に窒素(N
2)発生部10が位置し、不活性ガス供給経路3の一端が窒素(N
2)発生部10の窒素ガス導出口1’Aと接続されるとともに、PSA装置1’の筐体の内側において不活性ガス供給経路3が3本の分岐流路3A,3B,3Cに分岐する構成の積層造形システム31’としてもよい。
【実施例】
【0065】
以下、実施例及び比較例を用いた検証試験によって、本発明の効果を具体的に説明する。なお、本発明は、検証試験の内容に限定されない。
【0066】
(実施例1)
体積1.245m
3の筐体内を窒素ガスで置換(パージ)し、筐体内の雰囲気中の酸素濃度が一般大気の約20.9体積%から0.06体積%となるまで低減させた。
パージ工程は、
図1に示す積層造形システム11を用い、以下のステップで行った。以下の表3に、筐体内の雰囲気中の酸素濃度が0.06体積%に到達した時間(パージ時間)を示す。
【0067】
[パージ工程]
・ステップ1:100NL/minの流量(純度99%)で窒素ガスを筐体へ供給する。
・ステップ2:筐体内の酸素濃度が7体積%に到達した後、80NL/minの流量(純度99.9%)で窒素ガスを筐体へ供給する。
・ステップ3:筐体内の酸素濃度が3体積%に到達した後、50NL/minの流量(純度99.999%)で窒素ガスを筐体へ供給する。
・ステップ4:筐体内の酸素濃度が0.06体積%に到達した後、パージ工程を完了する。
【0068】
(実施例2)
パージ工程以外は、実施例1と同様にして、筐体内を窒素ガスで置換(パージ)した。
パージ工程は、
図1に示す積層造形システム11を用い、以下のステップで行った。以下の表3に、筐体内の雰囲気中の酸素濃度が0.06体積%に到達した時間(パージ時間)を示す。
【0069】
[パージ工程]
・ステップ1:280NL/minの流量(純度99%)で窒素ガスを筐体へ供給する。
・ステップ2:筐体内の酸素濃度が2体積%に到達した後、150NL/minの流量(純度99.9%)で窒素ガスを筐体へ供給する。
・ステップ3:筐体内の酸素濃度が0.2体積%に到達した後、50NL/minの流量(純度99.999%)で窒素ガスを筐体へ供給する。
・ステップ4:筐体内の酸素濃度が0.06体積%に到達した後、パージ工程を完了する。
【0070】
(比較例1)
パージ工程以外は、実施例1と同様にして、筐体内を窒素ガスで置換(パージ)した。
パージ工程は、
図1に示す積層造形システム11を用い、以下のステップで行った。以下の表3に、筐体内の雰囲気中の酸素濃度が0.06体積%に到達した時間(パージ時間)を示す。
【0071】
[パージ工程]
・ステップ1:50NL/minの流量(純度99.999%)で窒素ガスを筐体へ供給する。
・ステップ2:筐体内の酸素濃度が0.06体積%に到達した後、パージ工程を完了する。
【0072】
【0073】
表3に示すように、実施例1及び実施例2は、比較例1と比べて、筐体内の雰囲気中の酸素濃度が目標の酸素濃度に到達するまでの時間が短縮された。また、最も純度の高い窒素ガスの使用量を低減できた。
さらに、実施例2では、実施例1と同じ純度の窒素ガスを用いているが、低純度の窒素ガスを用いたステップにおいて窒素ガスの流量を大きくすることで、さらにパージ時間を短くできることが確認された。なお、実施例2では、比較例1と比較して、最大27%のパージ時間の短縮効果が得られた。
【符号の説明】
【0074】
11,21,31,31’・・・積層造形システム
1・・・窒素PSA装置
2・・・筐体
3・・・不活性ガス供給経路
3A,3B,3C・・・分岐流路
4・・・流量調整弁
5・・・排出経路
6・・・バイパス経路
7・・・減圧機構
8A,8B,8C・・・ニードル弁
9A,9B,9C・・・開閉弁(第1開閉弁)
9・・・開閉弁(第2開閉弁)