(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】配糖体化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07H 19/067 20060101AFI20240122BHJP
【FI】
C07H19/067
(21)【出願番号】P 2020541322
(86)(22)【出願日】2019-09-06
(86)【国際出願番号】 JP2019035241
(87)【国際公開番号】W WO2020050411
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-04-25
(31)【優先権主張番号】P 2018168135
(32)【優先日】2018-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【氏名又は名称】森本 靖
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 竜也
(72)【発明者】
【氏名】井原 秀樹
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/159374(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/027843(WO,A1)
【文献】Tetrahedron Letters,1980年,Vol. 21, No. 16,pp. 1571-1574
【文献】The Journal of Organic Chemistry,2005年,Vol. 70, No. 15,pp. 5833-5839
【文献】Organic Letters,2005年,Vol. 7, No. 16,pp. 3477-3480
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H 19/067
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(3)で表される配糖体化合物を製造する方法であって、
工程A:
溶媒中で、酸化剤及び酸の存在下で、一般式(1)で表される配糖体化合物と式(2)で表されるエーテル化合物とを反応させて一般式(3)で表される配糖体化合物を製造する工程であって、一般式(1)で表される配糖体化合物と式(2)のエーテル化合物の混合物に酸化剤を添加し、次いで酸を添加する、該工程
【化1】
(式中、
B
aは、アシル基により置換されていてもよいシトシン基、又はウラシル基を表し、
R
1はC1~C6アルキル基、又はフェニル基を表し、そして、
nは0又は1を表す。)を含み、
ここで、
溶媒は、エーテル、炭化水素、ニトリル、ハロゲン化炭化水素、およびこれらの2種類以上の組み合わせ、からなる群から選ばれ、
酸化剤は、N-ハロゲン化スクシンイミドおよびN-ハロゲン化ヒダントインからなる群から選ばれ、そして、
酸は、パーフルオロアルキルカルボン酸およびその塩、アルキルスルホン酸およびその塩、アリールスルホン酸およびその塩、パーフルオロアルキルスルホン酸およびその塩、およびこれらの2種類以上の組み合わせ、からなる群から選ばれる、該方法。
【請求項2】
nが1である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
nが0である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
酸化剤がN-ハロゲン化スクシンイミドである、請求項1~3のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項5】
酸化剤がN-ヨードスクシンイミドである、請求項1~4のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項6】
酸がトリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸銀、およびメタンスルホン酸からなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項1~5のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項7】
酸がトリフルオロメタンスルホン酸である、請求項1~6のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項8】
溶媒
がテトラヒドロフラン
である、請求項1~7のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項9】
R
1がメチル基である、請求項1~8のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項10】
B
aがアセチル基で置換されたシトシン基、又は無置換のウラシル基である、請求項1~9のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項11】
一般式(I)で表されるアミダイト化合物を製造する方法であって、
【化2】
(式中、B
a及びnは前記と同じであり、
G
1及びG
2は同一又は相異なって水酸基の保護基を示し、そして、
G
3は同一又は相異なってアルキル基を示す。)
工程A:請求項1~10のいずれか1つに記載の製造方法によって、一般式(1)で表される配糖体化合物と式(2)で表されるエーテル化合物とを反応させて一般式(3)で表される配糖体化合物を製造する工程を含む、該方法。
【化3】
(式中、B
a、R
1及びnは前記と同じである。)
【請求項12】
工程B:工程Aで得られた一般式(3)で表される配糖体化合物の3’位と5’位の水酸基を脱保護して一般式(4)で表される配糖体化合物を製造する工程
【化4】
(式中、B
a及びnは前記と同じである。)
を更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
脱保護剤としてトリエチルアミン3フッ化水素酸塩又はピリジンフッ化水素酸塩を用いる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
工程C:工程Bで得られた一般式(4)で表される配糖体化合物の5’位の水酸基に保護基G
1を導入し、3’位の水酸基をホスホロアミダイト化して一般式(I)で表されるアミダイト化合物を製造する工程
【化5】
(式中、B
a、n、G
1、G
2及びG
3は前記と同じである。)
を更に含む、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
5’位水酸基の保護基導入試薬として4,4’-ジメトキシトリチルクロリドを用いる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
3’位水酸基のホスホロアミダイト化試薬として2-シアノエチル-N,N,N’,N’-テトライソプロピルホスホロジアミダイトを用いる、請求項14又は15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、日本国特許出願2018-168135号(2018年9月7日出願)に基づくパリ条約上の優先権および利益を主張するものであり、ここに引用することによって、上記出願に記載された内容の全体が本明細書中に組み込まれるものとする。
本発明は、配糖体化合物及びアミダイト化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
RNAは、RNAプローブ、アンチセンスRNA、リボザイム、siRNA、アプタマーなどとして利用可能であり、有用な素材である。
【0003】
RNAは固相合成法などにより合成可能であり、固相合成法ではヌクレオシドのホスホロアミダイト(以下、「アミダイト」と称する)が原料として用いられる。このようなアミダイトの2’位の水酸基の保護基としては、例えば、TBDMS(t-ブチルジメチルシリル)、TOM(トリイソプロピルシリルオキシメチル)、ACE(ビス(2-アセトキシエトキシ)メチル)等が知られている。さらにアミダイトの2’位の水酸基の保護基として、特許文献1、2及び3に開示された保護基が報告されているが、これらの保護基を有するアミダイトの合成方法としては、得られるアミダイトの収率や純度の点で必ずしも満足のいくものではない。
【0004】
アミダイトのポジションアイソマーが存在した場合は、RNAの合成において最終物の合成に悪影響を及ぼすことが知られる(He, Kaizhang and Hasan, Ahmad Classification and Characterization of Impurities in Phosphoramidites Used in Making Therapeutic Oligonucleotides:Risk Mitigation Strategies for Entering Clinical Phases, <URL: https://assets.thermofisher.com/TFS-Assets/BID/Technical-Notes/amidite-impurity-classification-technote.pdf>参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5157168号公報
【文献】特許第5554881号公報
【文献】WO2007/097447
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高純度での目的化合物(アミダイト化合物)の合成が可能となる配糖体化合物及びアミダイト化合物を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
アミダイトの合成反応において、前記特許文献1、2及び3では、以下の一般式(3)で表される配糖体化合物を製造する際に、反応系内にトリフルオロメタンスルホン酸またはトリフルオロメタンスルホン酸銀などの酸を添加し、次いでN-ヨードスクシンイミドまたはN-ブロモスクシンイミドなどの酸化剤を添加することが行われている。そうすると、質量分析を行うと目的物と同一分子量の不純物が生成していることが確認されている。
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、アミダイト化合物の合成反応において一般式(3)で表される配糖体化合物を製造する際に、反応系内に酸化剤(N-ヨードスクシンイミド)を添加し、次いで酸(トリフルオロメタンスルホン酸)を添加することで、目的物と同一分子量の不純物の生成を抑制することができるという知見を得た。結果として、高純度での目的化合物(アミダイト化合物)の合成が可能となる。
【0009】
本発明は、これら知見に基づき、更に検討を重ねて完成されたものであり、次の配糖体化合物及びアミダイト化合物を製造する方法を提供するものである。本発明は以下の項に記載する実施態様を含むが、これらに限定されるものではない。
【0010】
項1. 一般式(3)で表される配糖体化合物を製造する方法であって、
工程A:酸化剤及び酸の存在下で、一般式(1)で表される配糖体化合物と式(2)で表されるエーテル化合物とを反応させて一般式(3)で表される配糖体化合物を製造する工程であって、反応系内に酸化剤を添加し、次いで酸を添加する、該工程
【化1】
(式中、
B
aは、アシル基により置換されていてもよいシトシン基、又はウラシル基を表し、
R
1はC1~C6アルキル基、又はフェニル基を表し、そして、
nは0又は1を表す。)を含み、
ここで、
酸化剤は、N-ハロゲン化スクシンイミドおよびN-ハロゲン化ヒダントインからなる群から選ばれ、そして、
酸は、パーフルオロアルキルカルボン酸およびその塩、アルキルスルホン酸およびその塩、アリールスルホン酸およびその塩、パーフルオロアルキルスルホン酸およびその塩、およびこれらの2種類以上の組み合わせ、からなる群から選ばれる、該方法。
項2. nが1である、項1に記載の製造方法。
項3. nが0である、項1に記載の製造方法。
項4. 酸化剤がN-ハロゲン化スクシンイミドである、項1~3のいずれか1つに記載の製造方法。
項5. 酸化剤がN-ヨードスクシンイミドである、項1~4のいずれか1つに記載の製造方法。
項6. 酸がトリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸銀、およびメタンスルホン酸からなる群から選ばれる少なくとも1つである、項1~5のいずれか1つに記載の製造方法。
項7. 酸がトリフルオロメタンスルホン酸である、項1~6のいずれか1つに記載の製造方法。
項8. 溶媒としてテトラヒドロフランを用いる、項1~7のいずれか1つに記載の製造方法。
項9. R
1がメチル基である、項1~8のいずれか1つに記載の製造方法。
項10. B
aがアセチル基で置換されたシトシン基、又は無置換のウラシル基である、項1~9のいずれか1つに記載の製造方法。
項11. 一般式(I)で表されるアミダイト化合物を製造する方法であって、
【化2】
(式中、B
a及びnは前記と同じであり、
G
1及びG
2は同一又は相異なって水酸基の保護基を示し、そして、
G
3は同一又は相異なってアルキル基を示す。)
工程A:項1~10のいずれか1つに記載の製造方法によって、一般式(1)で表される配糖体化合物と式(2)で表されるエーテル化合物とを反応させて一般式(3)で表される配糖体化合物を製造する工程を含む、該方法。
【化3】
(式中、B
a、R
1及びnは前記と同じである。)
項12. 工程B:工程Aで得られた一般式(3)で表される配糖体化合物の3’位と5’位の水酸基を脱保護して一般式(4)で表される配糖体化合物を製造する工程
【化4】
(式中、B
a及びnは前記と同じである。)
を更に含む、項11に記載の方法。
項13. 脱保護剤としてトリエチルアミン3フッ化水素酸塩又はピリジンフッ化水素酸塩を用いる、項12に記載の方法。
項14. 工程C:工程Bで得られた一般式(4)で表される配糖体化合物の5’位の水酸基に保護基G
1を導入し、3’位の水酸基をホスホロアミダイト化して一般式(I)で表されるアミダイト化合物を製造する工程
【化5】
(式中、B
a、n、G
1、G
2及びG
3は前記と同じである。)
を更に含む、項12又は13に記載の方法。
項15. 5’位水酸基の保護基導入試薬として4,4’-ジメトキシトリチルクロリドを用いる、項14に記載の方法。
項16. 3’位水酸基のホスホロアミダイト化試薬として2-シアノエチル-N,N,N’,N’-テトライソプロピルホスホロジアミダイトを用いる、項14又は15に記載の方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法によれば、アミダイト化合物の合成反応において中間体化合物の不純物の生成を抑制することができ、結果的に目的化合物(アミダイト化合物)を高い純度で製造することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0013】
なお、本明細書において「含む(comprise)」とは、「本質的にからなる(essentially consist of)」という意味と、「のみからなる(consist of)」という意味をも包含する。
【0014】
本発明は、一般式(I)で表されるアミダイト化合物を製造する方法であって、以下の工程A、工程A及びB、又は工程A~Cを含むことを特徴とする。
【化6】
(式中、
B
aはアシル基により置換されていてもよいシトシン基、又はウラシル基を表し、
nは0又は1を表し、
G
1及びG
2は同一又は相異なって水酸基の保護基を示し、そして、
G
3は同一又は相異なってアルキル基を示す。)
【0015】
工程A:酸化剤及び酸の存在下で、一般式(1)で表される配糖体化合物と式(2)で表されるエーテル化合物とを反応させて一般式(3)で表される配糖体化合物を製造する工程であって、反応系内に酸化剤を添加し、次いで酸を添加する、工程
【化7】
(式中、B
a、及びnは前記と同じであり、そして、R
1はC1~C6アルキル基、又はフェニル基を表す。)
【0016】
工程B:工程Aで得られた一般式(3)で表される配糖体化合物の3’位と5’位の水酸基を脱保護して一般式(4)で表される配糖体化合物を製造する工程
【化8】
(式中、B
a及びnは前記と同じである。)
【0017】
工程C:工程Bで得られた一般式(4)で表される配糖体化合物の5’位の水酸基に保護基G
1を導入し、3’位の水酸基をホスホロアミダイト化して一般式(I)で表されるアミダイト化合物を製造する工程
【化9】
(式中、B
a、n、G
1、G
2及びG
3は前記と同じである。)
【0018】
R1として、好ましくはメチル基である。
【0019】
B
aにおける核酸塩基は、以下に示されるシトシン基、又はウラシル基である。
【化10】
(式中、R
2は水素原子、アセチル基、イソブチリル基又はベンゾイル基を表す。)
【0020】
G1としては、保護基として機能し得るものであれば特に制限なく使用することができ、アミダイト化合物で使用される公知の保護基を広く使用することができる。
【0021】
G
1としては、好ましくは、以下の基である。
【化11】
(式中、R
3、R
4及びR
5は同一又は相異なって水素又はアルコキシ基を表す。)
【0022】
R3、R4及びR5は、1つが水素であり、残りの2つがアルコキシ基であることが好ましく、アルコキシ基としてはメトキシ基が特に好ましい。
【0023】
G2としては、保護基として機能し得るものであれば特に制限なく使用することができ、アミダイト化合物で使用される公知の保護基を広く使用することができる。G2としては、例えば、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、前記アルキル基等以外の炭化水素基、ハロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキルアルキル基、シクリルアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、アルコキシアルキル基、ヘテロシクリルアルケニル基、ヘテロシクリルアルキル基、ヘテロアリールアルキル基、シリル基、シリルオキシアルキル基、モノ、ジ又はトリアルキルシリル基、モノ、ジ又はトリアルキルシリルオキシアルキル基などが挙げられ、これらは電子求引基で置換されていてもよい。
【0024】
G2としては、好ましくは、電子求引基で置換されたアルキル基である。当該電子求引基としては、例えば、シアノ基、ニトロ基、アルキルスルホニル基、ハロゲン、アリールスルホニル基、トリハロメチル基、トリアルキルアミノ基などが挙げられ、好ましくはシアノ基である。
【0025】
G
2としては、特に好ましくは、以下の基である。
【化12】
【0026】
G3は、同一又は相異なってアルキル基であり、2つのG3が互いに結合して環状構造を形成していてもよい。G3としては、両方がイソプロピル基であることが好ましい。
【0027】
アルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状のいずれでもよく、好ましくは炭素数1~12のアルキル基、より好ましくは炭素数1~6のアルキル基である。アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、及びヘキシルが挙げられる。ここでのアルキル基には、アルコキシ基などのアルキル部分も含まれる。
【0028】
アシル基は、直鎖状もしくは分岐鎖状の脂肪族アシル基、または、芳香族アシル基を表し、カルボニルの炭素も含めた合計の炭素数が2~12であり、好ましくは炭素数が2~7であり、アシル基の例としては、脂肪族アシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基(ブチリル基)、イソブタノイル基(イソブチリル基)、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基など)、および芳香族アシル基(例えば、ベンゾイル基、1-ナフトイル基および2-ナフトイル基)が挙げられ、好ましくはアセチル基、イソブチリル基又はベンゾイル基が挙げられる。
【0029】
また、本発明のアミダイト化合物には、フリーの状態及び塩の状態が含まれる。本発明のアミダイト化合物の塩としては、特に制限されず、塩基付加塩であってもよく、例えば、ナトリウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩等の無機塩基との塩;メチルアミン塩、エチルアミン塩、エタノールアミン塩等の有機塩基との塩;リジン塩、オルニチン塩、アルギニン塩等の塩基性アミノ酸との塩、及びアンモニウム塩等の塩基付加塩が挙げられる。また、当該塩は、酸付加塩であってもよく、かかる塩としては、具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、コハク酸、乳酸、マレイン酸、クエン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、エタンスルホン酸等の有機酸;アスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸との酸付加塩が挙げられる。
【0030】
工程A:
本反応では、酸化剤及び酸の存在下で、一般式(1)で表される配糖体化合物と式(2)で表されるエーテル化合物とを反応(カップリング反応)させることで一般式(3)で表される配糖体化合物を得ることができ、特に、反応系内に酸化剤を添加し、次いで酸を添加することを特徴とする。
【0031】
酸化剤としては、例えば、N-クロロスクシンイミド、N-ブロモスクシンイミド、N-ヨードスクシンイミド等のN-ハロゲン化スクシンイミド、1,3-ジヨード-5,5-ジメチルヒダントイン等のN-ハロゲン化ヒダントインが挙げられる。本発明においては、N-ハロゲン化スクシンイミドが好ましく用いられ、N-ヨードスクシンイミドが更に好ましく用いられる。
【0032】
酸としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸及びその塩、アルキルスルホン酸及びその塩、アリールスルホン酸及びその塩、パーフルオロアルキルスルホン酸及びその塩、並びにこれらの2種類以上の組み合わせが挙げられる。塩としては、例えば、金属塩(例えば、銅塩及び銀塩)が挙げられる。酸としては、具体的には、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、およびトリフルオロメタンスルホン酸銀など、並びにこれらの2種類以上の組み合わせが挙げられる。本発明においては、トリフルオロメタンスルホン酸が好ましく用いられる。
【0033】
本反応の溶媒としては、特に限定されず、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、シクロペンチルメチルエーテル、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジオキサン等のエーテル、トルエン等の炭化水素、アセトニトリル等のニトリル、およびクロロベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素などが挙げられる。
【0034】
式(2)で表されるエーテル化合物の量は、一般式(1)で表される配糖体化合物1モルに対して、通常1~5モル、好ましくは1~3モル、より好ましくは1~1.5モルである。酸化剤の量は、一般式(1)で表される配糖体化合物1モルに対して、通常1~3モル、好ましくは1~2モル、より好ましくは1~1.5モルである。酸の量は、一般式(1)で表されるエーテル化合物1モルに対して、通常0.1~5モル、好ましくは0.5~3モル、より好ましくは0.5~1.5モルである。
【0035】
本反応の反応温度は、通常-80~0℃、好ましくは-60~-10℃、より好ましくは-50~-40℃である。本反応の反応時間は、通常1~12時間、好ましくは1~8時間、より好ましくは1~4時間である。
【0036】
一般式(1)で表される配糖体化合物は、公知の方法により製造することができるし、市販品を入手することもできる。式(2)で表されるエーテル化合物は、公知の方法(前記特許文献1、2及び3参照)により製造することができる。
【0037】
工程Aの反応は、典型的には、一般式(1)で表される配糖体化合物と式(2)で表されるエーテル化合物の混合物に酸化剤を添加し、次いで、生成する混合物に酸を添加して実施され得る。例えば、一般式(1)で表される配糖体化合物、式(2)のエーテル化合物、N-ヨードスクシンイミド、トリフルオロメタンスルホン酸を順に滴下して、実施され得る。
【0038】
工程B:
本反応では、工程Aで得られた一般式(3)で表される配糖体化合物の3’位と5’位の水酸基を脱保護することで一般式(4)で表される配糖体化合物を得ることができる。
【0039】
脱保護反応は、保護基に応じて、使用する保護剤を適宜変え得ることができ、例えば、公知の脱保護剤を用いることにより行うことができる。脱保護剤としては、特に限定されず、例えば、フッ化水素ピリジン、トリエチルアミン3フッ化水素酸塩、ピリジンフッ化水素酸塩、フッ化アンモニウム、フッ化水素酸、テトラブチルアンモニウムフロリドなどが挙げられる。
【0040】
脱保護剤の量は、一般式(3)で表される配糖体化合物1モルに対し、通常0.1~20モル、好ましくは0.2~10モル、より好ましくは1~5モルである。
【0041】
本反応の溶媒としては、特に限定されず、例えば、アセトン等のケトン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル、トルエン等の炭化水素、メタノール、エタノール等のアルコール、アセトニトリル等のニトリルなどが挙げられる。
【0042】
本反応の反応温度は、通常0~100℃、好ましくは10~60℃、より好ましくは10~30℃である。本反応の反応時間は、通常30分~72時間、好ましくは2~24時間である。
【0043】
工程C:
本反応では、工程Bで得られた一般式(4)で表される配糖体化合物の5’位の水酸基に保護基G1を導入し、3’位の水酸基をホスホロアミダイト化することで一般式(I)で表されるアミダイト化合物を得ることができる。
【0044】
本反応においては、保護基G1の導入とホスホロアミダイト化は、同時に(一工程で)行うこともできるし、保護基G1を導入した後にホスホロアミダイト化を行うこともでき、あるいはホスホロアミダイト化を行った後に保護基G1を導入することもできる。中でも、保護基G1を導入した後にホスホロアミダイト化を行うことが好ましい。
【0045】
保護基G1の導入反応において、保護基導入剤は、G1に応じて適宜選択することができ、例えば、4,4’-ジメトキシトリチルクロライドなどが挙げられる。溶媒としては、特に限定されず、例えば、トルエン、ピリジン等の芳香族溶媒、アセトニトリル等のニトリル、テトラヒドロフラン等のエーテルなどが挙げられる。反応温度は、通常0~100℃、好ましくは10~60℃、より好ましくは20~30℃である。反応時間は、通常30分~24時間、好ましくは1~8時間である。保護基導入剤の量は、一般式(4)で表される配糖体化合物1モルに対し、通常1~100モル、好ましくは1~20モル、より好ましくは1~5モルである。
【0046】
ホスホロアミダイト化反応において、ホスホロアミダイト化試薬は、G2及びG3に応じて適宜選択することができ、例えば、2-シアノエチル-N,N,N’,N’-テトライソプロピルホスホロジアミダイトなどが挙げられる。溶媒としては、特に限定されず、例えば、アセトニトリル等のニトリル、テトラヒドロフラン等のエーテル、ジクロロメタン等のハロゲン化溶媒等が挙げられる。反応温度は、通常0~40℃、好ましくは20~40℃である。反応時間は、通常30分~24時間、好ましくは1~6時間である。ホスホロアミダイト化試薬は、一般式(4)で表される配糖体化合物1モルに対し、通常1~20モル、好ましくは1~5モル、より好ましくは1~1.5モルである。
【0047】
工程AからCのいずれの工程により得られた反応生成物は、公知の方法により精製、洗浄、濃縮等の処理を行い得る。
【0048】
本発明の製造方法により、一般式(3)で表される配糖体化合物を製造する工程において、同一分子量の不純物の生成を抑制することができる。結果として、目的化合物である一般式(I)で表されるアミダイト化合物を高い純度で製造することが可能となる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を更に詳しく説明するため実施例を挙げる。しかし、本発明はこれら実施例等になんら限定されるものではない。
【0050】
実施例1
【化13】
N
4-アセチル-3’、5’-O-(テトライソプロピルジシロキサン-1、3-ジイル)シチジン(TIPS-C)(10.0g、19.0mmol)、トルエン(50ml)をフラスコに加え、溶液を30mlまで濃縮した。テトラヒドロフラン(22ml)を加えた後、反応液を-50℃まで冷却し、そこに2-シアノエトキシメチルメチルチオメチルエーテル(以下、EMM化剤と記す。)(4.58g、28.4mmol)、N-ヨードスクシンイミド(5.76g、25.6mmol)のテトラヒドロフラン(13ml)溶液、トリフルオロメタンスルホン酸(4.27g、28.5mmol)の順に滴下した。-50℃で2時間撹拌後、反応液を炭酸水素ナトリウム(3.5g)、チオ硫酸ナトリウム5水和物(10.0g)及び水(65ml)からなる氷冷した水溶液へ加え、混合液を室温にて分液した。有機層を更に炭酸水素ナトリウム(1.75g)、チオ硫酸ナトリウム5水和物(5.0g)及び水(32.5ml)からなる溶液で洗浄した。有機層を濃縮し、目的化合物を含む粗生成物を得た。
【0051】
LC-MS分析を行い、ネガティブモードにおける目的物のm/zである639.3でスキャン測定したところ、目的物ピーク99.1%に対し、クリティカル不純物である目的物と同一m/zのピークは0.9%であった。
【0052】
実施例2
【化14】
3’、5’-O-(テトライソプロピルジシロキサン-1、3-ジイル)ウリジン(TIPS-U)(5.0g、10.0mmol)、トルエン(25ml)をフラスコに加え、15mlまで濃縮した。テトラヒドロフラン(3.5ml)を加えた後、溶液を-50℃まで冷却し、そこにEMM化剤(2.48g、15.4mmol)、N-ヨードスクシンイミド(3.18g、14.1mmol)のテトラヒドロフラン(6.5ml)溶液、トリフルオロメタンスルホン酸(2.31g、15.4mmol)の順に滴下した。-50℃で2時間撹拌後、反応液を炭酸水素ナトリウム(1.75g)、チオ硫酸ナトリウム5水和物(5.0g)及び水(32.5ml)からなる氷冷した水溶液へ加え、混合液を室温にて分液した。有機層を更に炭酸水素ナトリウム(0.85g)、チオ硫酸ナトリウム5水和物(2.5g)及び水(16ml)からなる溶液で洗浄した。有機層を濃縮し、目的化合物を含む粗生成物を得た。
【0053】
【化15】
前記の粗EMM U-1をテトラヒドロフラン(15ml)、アセトン(15ml)に溶解させ、3フッ化水素/トリエチルアミン(1.82g、11.3mmol)を加え、混合液を20℃で17時間撹拌した。反応液をtert-ブチルメチルエーテル(50ml)に注加し、混合液を1時間撹拌した。反応液を濾過し、得られた固体をtert-ブチルメチルエーテル(10ml)で洗い、その固体を減圧乾燥し、目的化合物(3.01g、収率84%)を得た。
【0054】
LC-MS分析を行い、ネガティブモードにおける目的物のm/zである392.1(装置・ガラス器具等由来の塩化物イオン付加体)でスキャン測定したところ、目的物ピーク99.6%に対し、クリティカル不純物である目的物と同一m/zのピークは0.4%であった。
【0055】
実施例3
【化16】
前記の粗EMM C-1をテトラヒドロフラン(40ml)に溶解させ、3フッ化水素/トリエチルアミン(3.36g、20.8mmol)を加え、混合液を20℃で16時間撹拌した。反応液を0℃に冷却し、tert-ブチルメチルエーテル(60ml)を滴下した。生じた固体をろ過で回収、乾燥し、目的化合物(7.95g)を得た。
【0056】
実施例4
【化17】
前記の粗EMM C-2(7.0g、17.6mmol)をピリジン(35ml)、アセトニトリル(14ml)、トルエン(35ml)に溶解し、0℃に冷却した。4,4’-ジメトキシトリチルクロリド(7.14g、21.1mmol)をそこに加え、混合液を20℃で4時間攪拌した。メタノール(3.5ml)を加えて5分間攪拌し、反応液を炭酸水素ナトリウム(1.75g)及び水(35ml)からなる溶液にトルエン(7ml)で洗いこみ、混合液を室温にて分液した。次に有機層を炭酸水素ナトリウム(1.75g)及び水(35ml)からなる溶液で洗浄した。さらに有機層を塩化ナトリウム(3.5g)及び水(35ml)からなる溶液で洗浄し、有機層を21mlまで濃縮した。トルエン(28ml)を加えて21mlまで濃縮する操作を3回行い、目的化合物を含む粗生成物を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製(ヘプタン/酢酸エチル-アセトンの1:1溶液=40/60~10/90)を行い、目的化合物(6.42g、TIPS-Cからの収率61%)を得た。
【0057】
実施例5
【化18】
前記のEMM C-3(6.0g、8.6mmol)にアセトニトリル(18ml)を加え、そこに25℃でジイソプロピルアミンテトラゾリド(1.68g、9.8mmol)、2-シアノエチルN,N,N’,N’-テトライソプロピルホスホロジアミダイト(3.09g、10.3mmol)を加え、混合液を35℃で2時間攪拌した。反応液をトルエン(60ml)、水(30ml)及び炭酸水素ナトリウム(1.5g)からなる溶液へ注ぎ、混合液を室温で分液した。有機層をDMF(30ml)及び水(30ml)からなる溶液で4回、水(30ml)で2回、塩化ナトリウム(3.0g)及び水(30ml)からなる溶液で1回それぞれ洗浄した。有機層に硫酸ナトリウム(3.0g)を加えて濾過し、18mlまで濃縮して目的化合物を含む粗生成物を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製(ヘプタン/アセトン=60/40~30/70)を行い、目的化合物(6.45g、EMM C-3からの収率84%)を得た。
【0058】
実施例6
【化19】
N
4-アセチル-3’、5’-O-(テトライソプロピルジシロキサン-1、3-ジイル)シチジン(TIPS-C)(1.0g、1.9mmol)をテトラヒドロフラン(10ml)に溶解し、そこにメチルチオメチル2-シアノエチルエーテル(以下、CEM化剤と記す。)(0.37g、2.8mmol)、モレキュラーシーブス4A(0.8g)を加え、混合液を窒素雰囲気下、-45℃で30分間攪拌した。そこにN-ヨードスクシンイミド(0.64g、2.8mmol)を加えた後、トリフルオロメタンスルホン酸(0.42g、2.8mmol)を滴下し、混合液を-45℃で30分間攪拌した。反応液にトリエチルアミン(1.6ml)を加え、ろ過後、酢酸エチルを加え、有機層を水(10ml)、チオ硫酸ナトリウム5水和物(1.0g)、炭酸水素ナトリウム(0.35g)の混合溶液で2回洗浄した。溶媒を留去し、目的化合物を含む粗生成物を得た。
【0059】
LC-MS分析を行い、ネガティブモードにおける目的物のm/zである609.3でスキャン測定したところ、目的物ピーク99.93%に対し、クリティカル不純物である目的物と同一m/zのピークは0.07%であった。
【0060】
【化20】
前記の粗CMM C-1をテトラヒドロフラン(6ml)に溶解し、そこに25℃で3フッ化水素/トリエチルアミン(0.37g、2.2mmol)を加え、混合液を45℃で2時間攪拌した。生じた析出物を吸引ろ過にて回収し、テトラヒドロフランで洗浄、乾燥し目的化合物(0.68g、収率97%)を得た。
【0061】
実施例7
【化21】
N4-アセチル-3’、5’-O-(テトライソプロピルジシロキサン-1、3-ジイル)シチジン(TIPS-C)(3.0g、5.7mmol)をトルエン(15ml)で3回共沸し、真空ポンプで溶媒留去した。窒素雰囲気下、残渣をテトラヒドロフラン(30ml)に溶解させ、溶液を-45℃に冷却した。この溶液にEMM化剤(2.8g、18mmol)、N-ヨードスクシンイミド(2.0g、9.0mmol)、トリフルオロメタンスルホン酸(1.3g、8.8mmol)をこの順に滴下した。-45℃で5時間撹拌後、反応液にトリエチルアミンを加えてクエンチした。反応液を酢酸エチル(30ml)、炭酸水素ナトリウム(1.5g)、チオ硫酸ナトリウム5水和物(3.0g)及び水(30ml)からなる氷冷した溶液へ加え、混合液を室温にて分液した。有機層を濃縮し、目的化合物を含む粗生成物を得た。
【0062】
LC-MS分析を行い、ネガティブモードにおける目的物のm/zである639.3でスキャン測定したところ、目的物ピーク99.87%に対し、クリティカル不純物である目的物と同一m/zのピークは0.13%であった。
【0063】
実施例8
【化22】
3’、5’-O-(テトライソプロピルジシロキサン-1、3-ジイル)ウリジン(TIPS-U)(3.0g、6.0mmol)を窒素雰囲気下、テトラヒドロフラン(30ml)に溶解させ、溶液を-45℃に冷却した。この溶液にEMM化剤(1.56g、9.7mmol)、N-ヨードスクシンイミド(2.16g、9.7mmol)及びトリフルオロメタンスルホン酸(1.44g、9.7mmol)をこの順に滴下した。-45℃で5時間撹拌後、反応液にトリエチルアミンを加え、クエンチした。反応液を炭酸水素ナトリウム(1.5g)、チオ硫酸ナトリウム5水和物(3.0g)、水(30ml)及び酢酸エチル(15ml)からなる氷冷した水溶液へ加え、、混合液を室温にて分液した。有機層を更に炭酸水素ナトリウム(1.5g)、チオ硫酸ナトリウム5水和物(3.0g)及び水(30ml)からなる溶液で洗浄した。有機層を濃縮し、目的化合物を含む粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘプタン=1:1)で精製し、目的化合物(3.0g、収率83%)を得た。
【0064】
【化23】
前記のEMM U-1(2.0g、3.3mmol)をテトラヒドロフラン(8ml)に溶解させ、そこにフッ化水素ピリジン(65.5%、0.81g)を加え、混合物を25℃で17時間撹拌した。得られた沈殿物をろ取し、目的化合物(1.10g、収率92%)を得た。
【0065】
LC-MS分析を行い、ネガティブモードにおける目的物のm/zである356.1でスキャン測定したところ、クリティカル不純物である目的物と同一m/zのピークは検出されなかった。
【0066】
比較例1
【化24】
N4-アセチル-3’、5’-O-(テトライソプロピルジシロキサン-1、3-ジイル)シチジン(TIPS-C)(10.0g、19.0mmol)、トルエン(50ml)をフラスコに加え、溶液を30mlまで濃縮した。テトラヒドロフラン(22ml)を加え、反応液を-50℃まで冷却した後、そこにEMM化剤(4.58g、28.4mmol)、トリフルオロメタンスルホン酸(4.27g、28.5mmol)、N-ヨードスクシンイミド(5.76g、25.6mmol)のテトラヒドロフラン(13ml)溶液の順に滴下した。-50℃で1時間撹拌後、反応液を炭酸水素ナトリウム(3.5g)、チオ硫酸ナトリウム5水和物(10.0g)及び水(65ml)からなる氷冷した水溶液へ加え、混合液を室温にて分液した。有機層を更に炭酸水素ナトリウム(1.75g)、チオ硫酸ナトリウム5水和物(5.0g)及び水(32.5ml)からなる溶液で洗浄した。有機層を濃縮し、目的化合物を含む粗生成物を得た。
【0067】
LC-MS分析を行い、ネガティブモードにおける目的物のm/zである639.3でスキャン測定したところ、目的物ピーク96.4%に対し、クリティカル不純物である目的物と同一m/zのピークは3.6%であった。
【0068】
比較例2
【化25】
3’、5’-O-(テトライソプロピルジシロキサン-1、3-ジイル)ウリジン(TIPS-U)(5.0g、10.0mmol)、トルエン(25ml)をフラスコに加え、溶液を15mlまで濃縮した。そこにテトラヒドロフラン(3.5ml)を加えた後、溶液を-50℃まで冷却し、そこにEMM化剤(2.48g、15.4mmol)、トリフルオロメタンスルホン酸(2.31g、15.4mmol)、及びN-ヨードスクシンイミド(3.18g、14.1mmol)のテトラヒドロフラン(6.5ml)溶液の順に滴下した。-50℃で2時間撹拌後、反応液を炭酸水素ナトリウム(1.75g)、チオ硫酸ナトリウム5水和物(5.0g)及び水(32.5ml)からなる氷冷した水溶液へ加え、混合液を室温にて分液した。有機層を更に炭酸水素ナトリウム(0.85g)、チオ硫酸ナトリウム5水和物(2.5g)及び水(16ml)からなる溶液で洗浄した。有機層を濃縮し、目的化合物を含む粗生成物を得た。
【0069】
【化26】
前記の粗EMM U-1をテトラヒドロフラン(15ml)、アセトン(15ml)に溶解させ、そこに3フッ化水素/トリエチルアミン(1.82g、11.3mmol)を加え、反応液を20℃で17時間撹拌した。反応液をtert-ブチルメチルエーテル(50ml)に注加し、混合液を1時間撹拌した。反応液を濾過し、得られた固体をtert-ブチルメチルエーテル(10ml)で洗い、その固体を減圧乾燥し、目的化合物(3.05g、収率85%)を得た。
【0070】
LC-MS分析を行い、ネガティブモードにおける目的物のm/zである392.1(装置・ガラス器具等由来の塩化物イオン付加体)でスキャン測定したところ、目的物ピーク92.6%に対し、クリティカル不純物である目的物と同一m/zのピークは7.4%であった。
【0071】
比較例3
【化27】
N4-アセチル-3’、5’-O-(テトライソプロピルジシロキサン-1、3-ジイル)シチジン(TIPS-C)(1.0g、1.9mmol)をテトラヒドロフラン(10ml)に溶解し、そこにCEM化剤(0.37g、2.8mmol)、モレキュラーシーブス4A(0.8g)を加え、混合液を窒素雰囲気下、-45℃で30分間攪拌した。そこにトリフルオロメタンスルホン酸(0.42g、2.8mmol)を滴下した後、N-ヨードスクシンイミド(0.64g、2.8mmol)を加え、混合液を-45℃で30分間攪拌した。反応液にトリエチルアミン(1.6ml)を加え、ろ過後、ろ液に酢酸エチルを加え、有機層を水(10ml)、チオ硫酸ナトリウム5水和物(1.0g)、炭酸水素ナトリウム(0.35g)の混合溶液で2回洗浄した。溶媒を留去し、目的化合物を含む粗生成物を得た。
【0072】
LC-MS分析を行い、ネガティブモードにおける目的物のm/zである609.3でスキャン測定したところ、目的物ピーク97.3%に対し、クリティカル不純物である目的物と同一m/zのピークは2.7%であった。
【0073】
【化28】
前記の粗CMM C-1をテトラヒドロフラン(6ml)に溶解し、そこに25℃で3フッ化水素/トリエチルアミン(0.37g、2.2mmol)を加え、混合液を45℃で2時間攪拌した。生じた析出物を吸引ろ過にて回収し、テトラヒドロフランで洗浄、乾燥し目的化合物(0.63g、収率90%)を得た。
【0074】
比較例4
【化29】
N4-アセチル-3’、5’-O-(テトライソプロピルジシロキサン-1、3-ジイル)シチジン(TIPS-C)(3.0g、5.7mmol)をトルエン(15ml)で3回共沸し、真空ポンプで溶媒留去した。窒素雰囲気下、テトラヒドロフラン(30ml)に溶解させ、溶液を-45℃に冷却した。この溶液にEMM化剤(2.8g、18mmol)、トリフルオロメタンスルホン酸(1.3g、8.8mmol)、N-ヨードスクシンイミド(2.0g、9.0mmol)をこの順に滴下した。-45℃で5時間撹拌後、そこにトリエチルアミンを加えてクエンチした。反応液を酢酸エチル(30ml)、炭酸水素ナトリウム(1.5g)、チオ硫酸ナトリウム5水和物(3.0g)及び水(30ml)からなる氷冷した溶液へ加え、混合液を室温にて分液した。有機層を濃縮し、目的化合物を含む粗生成物を得た。
【0075】
LC-MS分析を行い、ネガティブモードにおける目的物のm/zである639.3でスキャン測定したところ、目的物ピーク97.7%に対し、クリティカル不純物である目的物と同一m/zのピークは2.3%であった。
【0076】
比較例5
【化30】
3’、5’-O-(テトライソプロピルジシロキサン-1、3-ジイル)ウリジン(TIPS-U)(3.0g、6.0mmol)を窒素雰囲気下、テトラヒドロフラン(30ml)に溶解させ、溶液を-45℃に冷却した。この溶液にEMM化剤(1.56g、9.7mmol)、トリフルオロメタンスルホン酸(1.44g、9.7mmol)及びN-ヨードスクシンイミド(2.16g、9.7mmol)をこの順に滴下した。-45℃で5時間撹拌後、そこにトリエチルアミンを加え、クエンチした。反応液を炭酸水素ナトリウム(1.5g)、チオ硫酸ナトリウム5水和物(3.0g)、水(30ml)及び酢酸エチル(15ml)からなる氷冷した水溶液へ加え、混合液を室温にて分液した。有機層を更に炭酸水素ナトリウム(1.5g)、チオ硫酸ナトリウム5水和物(3.0g)及び水(30ml)からなる溶液で洗浄した。有機層を濃縮し、目的化合物を含む粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘプタン=1:1)で精製し、目的化合物(2.82g、収率78%)を得た。
【0077】
【化31】
前記のEMM U-1(2.0g、3.3mmol)をTHF(8ml)に溶解させ、そこにフッ化水素ピリジン(65.5%、0.81g)を加え、混合液を25℃で17時間撹拌した。得られた沈殿物をろ取し、目的化合物(1.08g、収率90%)を得た。
【0078】
LC-MS分析を行い、ネガティブモードにおける目的物のm/zである356.1でスキャン測定したところ、目的物ピーク98.9%に対し、クリティカル不純物である目的物と同一m/zのピークは1.1%であった。
【0079】
【表1】
試薬添加順序1:
EMM化剤又はCEM化剤、N-ヨードスクシンイミド、トリフルオロメタンスルホン酸の順
試薬添加順序2:
EMM化剤又はCEM化剤、トリフルオロメタンスルホン酸、N-ヨードスクシンイミドの順
以上の表1に示すように、N-ヨードスクシンイミドの後にトリフルオロメタンスルホン酸を添加することで不純物の生成を抑制し、より高純度で目的物を得ることができた。