(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】ポリマー、ポリマーを含んでなる半導体組成物、および半導体組成物を用いた膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/11 20060101AFI20240122BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20240122BHJP
C08F 220/34 20060101ALI20240122BHJP
C08F 220/26 20060101ALI20240122BHJP
C08F 220/10 20060101ALI20240122BHJP
C08L 33/14 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
G03F7/11 503
G03F7/11 502
H01L21/30 574
C08F220/34
C08F220/26
C08F220/10
C08L33/14
(21)【出願番号】P 2021529346
(86)(22)【出願日】2020-02-17
(86)【国際出願番号】 EP2020054001
(87)【国際公開番号】W WO2020169493
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】P 2019027296
(32)【優先日】2019-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100206265
【氏名又は名称】遠藤 逸子
(72)【発明者】
【氏名】仁川 裕
(72)【発明者】
【氏名】片山 朋英
(72)【発明者】
【氏名】矢野 友嗣
(72)【発明者】
【氏名】張 鋭
(72)【発明者】
【氏名】菱田 有高
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 理人
(72)【発明者】
【氏名】小崎 力生
(72)【発明者】
【氏名】岡村 聡也
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-224282(JP,A)
【文献】国際公開第2017/170828(WO,A1)
【文献】特開2008-257166(JP,A)
【文献】特開2018-025649(JP,A)
【文献】特表2011-520148(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 220/00-220/70
G03F 7/11
H01L 21/027
C08L 33/00-33/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(a)で表されるユニット(a):
【化1】
(式中、
R
a1およびR
a2は、それぞれ独立に、H、C
1-5アルキル、C
1-5アルコキシまたは-COOHであり、
L
aは、単結合、C
1-5アルキレン、-O-、またはC
1-5アルコキシレンであり、
maは、0~1であり、
X
a1は、H、またはC
1-5炭化水素基(C
1-5炭化水素基中の1以上の-CH
2-は、それぞれ独立に、-NH-、-C(=O)-および/または-O-に置き換えられていてもよく、かつC
1-5炭化水素基中の1以上の-CH
3は、それぞれ独立に、-NH
2および/または-COOHに置き換えられていてもよい)であり、
Y
aは、NまたはOであり、ここで、Y
aがNのときpaは1または2の整数であり、Y
aがOのときpaは1であり、
X
a2は、H、またはC
1-5炭化水素基(C
1-5炭化水素基中の1以上の-CH
2-は、それぞれ独立に、-NH-、-C(=O)-および/または-O-に置き換えられていてもよく、かつC
1-5炭化水素基中の1以上の-CH
3は、それぞれ独立に、-NH
2および/または-COOHに置き換えられていてもよい)であり、paが2のとき、2つのX
a2は同一であっても異なっていてもよく、
ここで、X
a1とX
a2とが結合して、および/またはpaが2のとき2つのX
a2が結合して、飽和環または不飽和環を形成していてもよい);
式(b)で表されるユニット(b):
【化2】
(式中、
R
b1およびR
b2は、それぞれ独立に、H、C
1-5アルキル、C
1-5アルコキシ、C
1-5アルコキシアルキル、または-COOHであり、
mbは、0~1であり、
L
bは、単結合、C
1-5アルキレン、C
6-20アリーレン、-O-、またはC
1-5アルコキシレンであり、
Z
bは、C
6-20芳香族炭化水素またはC
7-20芳香族置換脂肪族炭化水素であり、
pbは、0~4であり、
qbは、1~3であり、
R
b3は、H、C
1-5アルキル、C
1-5アルコキシ、C
1-5アルコキシアルキル、または-COOHであり、pb>1であるとき、それぞれのR
b3は同一であっても異なっていてもよく、
R
b4は、Hまたはメチルであり、qb>1であるとき、それぞれのR
b4は同一であっても異なっていてもよく、
ここで、ユニット(b)は、少なくとも1つの縮合構造を有するアリールを有する);
式(c)で表されるユニット(c):
【化3】
(式中、
R
c1およびR
c2は、それぞれ独立に、H、C
1-5アルキル、C
1-5アルコキシ、または-COOHであり、
mcは、0~1であり、
L
cは、単結合、C
1-5アルキレン、-O-、またはC
1-5アルコキシレンであり、
V
cは、縮合芳香族炭化水素または縮合複素環であり、V
cは3~6つの環が縮合されており、
pcは、0~5であり、
R
c3は、C
1-5アルキル、C
1-5アルコキシ、または-COOHであり、pc>1であるとき、それぞれのR
c3は同一であっても異なっていてもよい);および
式(d)で表されるユニット(d):
【化4】
(式中、
R
d1およびR
d2は、それぞれ独立に、H、C
1-5アルキル、C
1-5アルコキシまたは-COOHであり、
mdは、0~1であり、
L
dは、単結合、C
1-5アルキレン(C
1-5アルキレン中の1以上の-CH
2-は、-NH-、-C(=O)-および/または-O-に置き換えられていてもよく、かつC
1-5アルキレン中の1以上の-CH
3は、-OH、-NH
2および/または-COOHに置き換えられていてもよい)、-O-、またはC
1-5アルコキシレンである)からなる群から選択される構成単位の少なくとも1つを含んでなる(A)ポリマーであって、
ユニット(a)、(b)、(c)、および(d)の繰り返し数である、それぞれ、n
a、n
b、n
c、およびn
dが、以下の式:
n
a+n
b>0、n
c≧0、およびn
d≧0を満たすものであ
り、
以下の式:
5%≦n
a
/(n
a
+n
b
+n
c
+n
d
)≦50%、30%≦n
b
/(n
a
+n
b
+n
c
+n
d
)≦80%、5%≦n
c
/(n
a
+n
b
+n
c
+n
d
)≦40%、および/または0%≦n
d
/(n
a
+n
b
+n
c
+n
d
)≦40%を満たすものである、(A)ポリマー
と、
(B)溶媒と
を含んでなる、レジスト下層膜組成物。
【請求項2】
(A)ポリマーに含まれる全ての繰り返し単位の総数n
totalが、以下の式:80%≦(n
a+n
b+n
c+n
d)/n
total≦100%を満たすものである、請求項
1に記載の
組成物。
【請求項3】
(B)溶媒が、水、炭化水素溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒、アルコール溶媒、またはケトン溶媒を含んでなる、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
(C)架橋剤をさらに含んでな
る、請求項
1~3の少なくともいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
(D)酸発生剤をさらに含んでなり
、(E)界面活性剤をさらに含んで
も含まなくてもよい、請求項
1~4の少なくともいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
その他の(F)添加剤をさらに含んでなり
、(F)添加剤が、塩基発生剤、平滑剤、モノマー性染料、低級アルコール(C
1-6アルコール)、表面レベリング剤、基板密着剤、消泡剤、および防腐剤からなる群から少なくとも1つ選択され
てもよい、請求項
1~5の少なくともいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物の総質量を基準として、(A)ポリマーの含有量が1~30質量%である
;
前記組成物の総質量を基準として、(B)溶媒の含有量が50~99質量%である
;
(C)架橋剤の含有量が、前記組成物中の(A)ポリマーの総質量を基準として、0~5質量%である;
(D)酸発生剤の含有量が、前記組成物中の(A)ポリマーの総質量を基準として、0.01~10質量%である;
(E)界面活性剤の含有量が、前記組成物中の(A)ポリマーの総質量を基準として、0.001~5質量%である;または
(F)添加剤の含有量が、前記組成物中の(A)ポリマーの総質量を基準として、0~10質量%である、請求項1~6の少なくともいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
(A)ポリマーの質量平均分子量が1,000~50,000である、請求項
1~7の少なくともいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1~8の少なくともいずれか一項に記載の組成物からなる下層反射防止膜組成物。
【請求項10】
下記工程:
(1)基板の上方に請求項
1~9の少なくとも一項に記載
の組成物を適用すること;および
(2)前
記組成物を加熱し、膜を形成すること
を含んでなる膜の製造方法であって、
任意に、前記(2)の加熱は100~250℃および/または30~300秒間行われ、
任意に、前記(2)の加熱は、大気または窒素ガス雰囲気にて行われ、
任意に、形成された膜の厚さが10~1,000nmである、方法。
【請求項11】
下記工程:
請求項
10に記載の方法により膜を製造すること;
(3)請求項
10に記載の膜の上方にレジスト組成物を適用すること;および
(4)前記レジスト組成物を加熱し、レジスト膜を形成すること
を含んでなるレジスト膜の製造方法であって、
任意に、前記(4)の加熱は80~250℃および/または30~600秒間行われ、
任意に、前記(4)の加熱は、大気または窒素ガス雰囲気にて行われ、
任意に、形成されたレジスト膜の厚さが100~50,000nmである、方法。
【請求項12】
下記工程:
請求項
11に記載の方法により、レジスト膜を製造すること;
(5)前記レジスト膜を露光すること;および
(6)前記レジスト膜を現像すること
を含んでなるレジストパターンの製造方法であって、
任意に、前記(5)の露光は、248nm±1%または193nm±1%の光源を用いる、方法。
【請求項13】
前記レジスト組成物は、化学増幅型のレジスト組成物である;
前記レジスト組成物は、ポジ型レジスト組成物またはネガ型レジスト組成物である;または、
前記レジスト組成物は、酸発生剤または塩基発生剤を含んでなる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
下記工程:
請求項
12または13に記載の方法により、レジストパターンを製造すること;および
(7)レジストパターンをマスクとしてエッチングすること
を含んでなる加工基板の製造方法であって、
任意に、前記(7)は前記(2)の膜または基板をエッチングする、方法。
【請求項15】
請求項11~14のいずれか一項に記載の方法を含んでなる、デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構成単位を含んでなるポリマー、およびそのポリマーを含んでなる半導体組成物に関するものである。また本発明は、半導体組成物を用いた膜、およびデバイスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体等のデバイスの製造過程において、フォトレジストを用いたリソグラフィー技術による微細加工が一般的に行われている。微細加工の工程は、シリコンウェハ等の半導体基板上に薄いフォトレジスト層を形成し、その層を目的とするデバイスのパターンに対応するマスクパターンで覆い、その層をマスクパターンを介して紫外線等の活性光線で露光し、露光された層を現像することでフォトレジストパターンを得て、得られたフォトレジストパターンを保護膜として基板をエッチング処理することを含み、それにより上述のパターンに対応する微細凹凸を形成する。
【0003】
これらのフォトリソグラフィー工程では基板からの光の反射による定在波の影響や、基板の段差による露光光の乱反射の影響によりフォトレジストパターンの寸法精度が低下するという問題が生ずる。そこで、この問題を解決すべく、下層反射防止膜を設ける方法が広く検討されている。このような下層反射防止膜に要求される特性として、フォトレジストの露光に用いられる放射線に対して大きな吸光度を有すること、露光および現像後のフォトレジストの断面が基板表面に対して垂直になるように乱反射等を防ぐこと、およびフォトレジスト組成物に含まれる溶媒に対して難溶性であること(インターミキシングが起こりにくいこと)等が挙げられる。
【0004】
特許文献1には、架橋剤を含む反射防止コーティング組成物が開示されている。特許文献2には、特定のポリマーを有する微細レジストパターン形成用組成物が開示されているが、下層反射防止膜が形成できるか、下層反射防止膜としての要求特性を有しているか否かについては、記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開2011/101737
【文献】特開2014-71424号公報
【文献】国際公開2007/111147
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、いまだ改良が求められる1以上の課題が存在すると考えた。それらは例えば以下が挙げられる;昇華物の低減;適切なエッチング耐性;塗布性;複雑で微細な基板(例えば段差基板)への埋め込み性;低温で膜形成が可能;大きな吸光度;好適な屈折率;定在波の低減;他の組成物(例えばレジスト組成物)や膜とのインターミキシングの低減;形成された膜の上面が平坦である;溶質の溶解性が高い;保存安定性;形成されるレジストパターンの形状が良く、歩留まりが高い:LWRが低い。
本発明は、上述のような技術背景に基づいてなされたものであり、新規なポリマーおよびそれを含んでなる組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による(A)ポリマーは、
式(a)で表されるユニット(a):
【化1】
(式中、
R
a1およびR
a2は、それぞれ独立に、H、C
1-5アルキル、C
1-5アルコキシまたは-COOHであり、
L
aは、単結合、C
1-5アルキレン、-O-、またはC
1-5アルコキシレンであり、
maは、0~1であり、
X
a1は、H、またはC
1-5炭化水素基(C
1-5炭化水素基中の1以上の-CH
2-は、それぞれ独立に、-NH-、-C(=O)-および/または-O-に置き換えられていてもよく、かつC
1-5炭化水素基中の1以上の-CH
3は、それぞれ独立に、-NH
2および/または-COOHに置き換えられていてもよい)であり、
Y
aは、NまたはOであり、ここで、Y
aがNのときpaは1または2の整数であり、Y
aがOのときpaは1であり、
X
a2は、H、またはC
1-5炭化水素基(C
1-5炭化水素基中の1以上の-CH
2-は、それぞれ独立に、-NH-、-C(=O)-および/または-O-に置き換えられていてもよく、かつC
1-5炭化水素基中の1以上の-CH
3は、それぞれ独立に、-NH
2および/または-COOHに置き換えられていてもよい)であり、paが2のとき、2つのX
a2は同一であっても異なっていてもよく、
ここで、X
a1とX
a2とが結合して、および/またはpaが2のとき2つのX
a2が結合して、飽和環または不飽和環を形成していてもよい);
式(b)で表されるユニット(b):
【化2】
(式中、
R
b1およびR
b2は、それぞれ独立に、H、C
1-5アルキル、C
1-5アルコキシ、C
1-5アルコキシアルキル、または-COOHであり、
mbは、0~1であり、
L
bは、単結合、C
1-5アルキレン、C
6-20アリーレン、-O-、またはC
1-5アルコキシレンであり、
Z
bは、C
6-20芳香族炭化水素またはC
7-20芳香族置換脂肪族炭化水素であり、
pbは、0~4であり、
qbは、1~3であり、
R
b3は、H、C
1-5アルキル、C
1-5アルコキシ、C
1-5アルコキシアルキル、または-COOHであり、pb>1であるとき、それぞれのR
b3は同一であっても異なっていてもよく、
R
b4は、Hまたはメチルであり、qb>1であるとき、それぞれのR
b4は同一であっても異なっていてもよく、
ここで、ユニット(b)は、少なくとも1つの縮合構造を有するアリールを有する);
式(c)で表されるユニット(c):
【化3】
(式中、
R
c1およびR
c2は、それぞれ独立に、H、C
1-5アルキル、C
1-5アルコキシ、または-COOHであり、
mcは、0~1であり、
L
cは、単結合、C
1-5アルキレン、-O-、またはC
1-5アルコキシレンであり、
V
cは、縮合芳香族炭化水素または縮合複素環であり、V
cは3~6つの環が縮合されており、
pcは、0~5であり、
R
c3は、C
1-5アルキル、C
1-5アルコキシ、または-COOHであり、pc>1であるとき、それぞれのR
c3は同一であっても異なっていてもよい);および
下記式(d)で表されるユニット(d):
【化4】
(式中、
R
d1およびR
d2は、それぞれ独立に、H、C
1-5アルキル、C
1-5アルコキシまたは-COOHであり、
mdは、0~1であり、
L
dは、単結合、C
1-5アルキレン(C
1-5アルキレン中の1以上の-CH
2-は、-NH-、-C(=O)-および/または-O-に置き換えられていてもよく、かつC
1-5アルキレン中の1以上の-CH
3は、-OH、-NH
2および/または-COOHに置き換えられていてもよい)、-O-、またはC
1-5アルコキシレンである)からなる群から選択される構成単位の少なくとも1つを含んでなる(A)ポリマーであって、
ユニット(a)、(b)、(c)、および(d)の繰り返し数である、それぞれ、n
a、n
b、n
c、およびn
dが、以下の式:
n
a+n
b>0、n
c≧0、およびn
d≧0を満たすものである。
【0008】
本発明による半導体組成物は、上記の(A)ポリマー、および(B)溶媒を含んでなる。
【0009】
本発明による膜の製造方法は、下記工程:
(1)基板の上方に本発明による半導体組成物を適用すること;および
(2)前記半導体組成物を加熱し、膜を形成すること
を含んでなる。
【0010】
本発明によるデバイスの製造方法は、上記に記載の方法を含んでなる。
【発明の効果】
【0011】
昇華物を低減することが可能である。エッチング耐性を制御することが可能である。良好な塗布性を有する組成物を得ることが可能である。複雑で微細な基板(例えば段差基板)に組成物を良好に埋め込むことが可能である。低温で膜形成が可能である。大きな吸光度を有する膜を得ることが可能である。好適な屈折率を有する膜を得ることが可能である。定在波を低減することが可能である。他の組成物(例えばレジスト組成物)や膜とのインターミキシングを低減することが可能である。形成された膜の上面の平坦性を高めることが可能である。溶質の溶解性が高い組成物を得ることが可能である。高い保存安定性を有する組成物を得ることが可能である。形状が良いレジストパターンを、高い歩留まりで形成することが可能である。LWRが低いパターン形成が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、特に限定されて言及されない限り、単数形は複数形を含み、「1つの」や「その」は「少なくとも1つ」を意味する。本明細書において、特に言及されない限り、ある概念の要素は複数種によって発現されることが可能であり、その量(例えば質量%やモル%)が記載された場合、その量はそれら複数種の和を意味する。
「および/または」は、要素の全ての組み合わせを含み、また単体での使用も含む。
本明細書において、「~」または「-」を用いて数値範囲を示した場合、特に限定されて言及されない限り、これらは両方の端点を含み、単位は共通する。例えば、5~25モル%は、5モル%以上25モル%以下を意味する。
本明細書において、「Cx~y」、「Cx~Cy」および「Cx」などの記載は、分子または置換基中の炭素の数を意味する。例えば、C1~6アルキルは、1以上6以下の炭素を有するアルキル鎖(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル等)を意味する。
本明細書において、ポリマーが複数種類の繰り返し単位を有する場合、これらの繰り返し単位は共重合する。特に限定されて言及されない限り、これら共重合は、交互共重合、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合、またはこれらの混在のいずれであってもよい。ポリマーや樹脂を構造式で示す際、括弧に併記されるnやm等は繰り返し数を示す。
本明細書において、特に限定されて言及されない限り、温度の単位は摂氏(Celsius)を使用する。例えば、20度とは摂氏20度を意味する。
【0013】
(A)ポリマー
本発明による(A)ポリマーは、下記に説明する、ユニット(a)、ユニット(b)、ユニット(c)、およびユニット(d)からなる群から選択される構成単位の少なくとも1つを含んでなり、ユニット(a)、(b)、(c)、および(d)の繰り返し数である、それぞれ、na、nb、nc、およびndが、以下の式:
na+nb>0、nc≧0、およびnd≧0、好ましくはna>0を満たすものである。
【0014】
ユニット(a)は式(a)で表される。
【化5】
式中、
R
a1およびR
a2は、それぞれ独立に、H、C
1-5アルキル、C
1-5アルコキシまたは-COOHであり、
L
aは、単結合、C
1-5アルキレン、-O-、またはC
1-5アルコキシレンであり、
maは、0~1であり、
X
a1は、H、またはC
1-5炭化水素基(C
1-5炭化水素基中の1以上の-CH
2-は、それぞれ独立に、-NH-、-C(=O)-および/または-O-に置き換えられていてもよく、かつC
1-5炭化水素基中の1以上の-CH
3は、それぞれ独立に、-NH
2および/または-COOHに置き換えられていてもよい)であり、
Y
aは、NまたはOであり、ここで、Y
aがNのときpaは1または2の整数であり、Y
aがOのときpaは1であり、
X
a2は、H、またはC
1-5炭化水素基(C
1-5炭化水素基中の1以上の-CH
2-は、それぞれ独立に、-NH-、-C(=O)-および/または-O-に置き換えられていてもよく、かつC
1-5炭化水素基中の1以上の-CH
3は、それぞれ独立に、-NH
2および/または-COOHに置き換えられていてもよい)であり、paが2のとき、2つのX
a2は同一であっても異なっていてもよく、
ここで、X
a1とX
a2とが結合して、および/またはpaが2のとき2つのX
a2が結合して、飽和環または不飽和環を形成していてもよい。
【0015】
ペンダントとして導入されるユニット(a)はそれ自体が架橋可能と考えられる。これにより、(A)ポリマーを含んだ組成物を用いて成膜する場合に、架橋剤を含まなくても、架橋されたポリマーを形成することができる。
【0016】
Ra1は、好ましくはH、メチル、エチル、t-ブチルまたはメトキシであり、より好ましくはHまたはメチルであり、さらに好ましくはHである。
Ra2は、好ましくはH、メチル、エチル、t-ブチルまたはメトキシであり、より好ましくはHまたはメチルであり、さらに好ましくはメチルである。
Laは、好ましくは単結合、メチレン、エチレン、プロピレン、-O-またはメトキシレンであり、より好ましくはメチレンまたはエチレンであり、さらに好ましくはメチレンである。
maは、好ましくは0または1であり、より好ましくは1である。(A)ポリマーが複数種類のユニット(a)を有することが可能であるが、このような場合にma=0.5のような整数ではない数を取り得る。以降、ポリマーに関する式中の数について、整数であることを明記しない限り、同様である。
Yaは、好ましくはNであり、paは好ましくは2である。別の一態様として、YaがN、かつpaが1が挙げられるが、この際、NとXa2は二重結合する(-N=Xa2)。
Xa1のC1-5炭化水素基は、直鎖であっても分岐であってもよい。Xa1は、好ましくはH、メチル、エチルまたはプロピルであり、より好ましくはHである。
Xa2のC1-5炭化水素基は、それぞれ独立に直鎖であっても分岐であってもよい。それぞれ独立にXa2は、好ましくはC1-5炭化水素基(C1-5炭化水素基中の1以上の-CH2-は、それぞれ独立に、-NH-に置き換えられていてもよく、かつC1-5炭化水素基中の1以上の-CH3は、それぞれ独立に、-NH2に置き換えられていてもよい)である。
【0017】
好ましくは、式(a)は以下の式(a-1)で表される。
【化6】
式中、
R
a1、R
a2、L
a、ma、およびX
a1は、上記に記載のとおりであり、
X
a3およびX
a4は、それぞれ独立に、H、またはC
1-5炭化水素基(C
1-5炭化水素基中の1以上の-CH
2-は、それぞれ独立に、-NH-、-C(=O)-および/または-O-に置き換えられていてもよく、かつC
1-5炭化水素基中の1以上の-CH
3は、それぞれ独立に、-NH
2および/または-COOHに置き換えられていてもよい)であり、
ここで、X
a1と、X
a3またはX
a4とが結合して、および/またはX
a3とX
a4とが結合して、飽和環または不飽和環を形成していてもよい。
X
a3およびX
a4のC
1-5炭化水素基は、それぞれ独立に直鎖であっても分岐であってもよい。X
a3およびX
a4は、それぞれ独立に、好ましくはC
1-5炭化水素基(C
1-5炭化水素基中の1以上の-CH
2-は、それぞれ独立に、-NH-に置き換えられていてもよく、かつC
1-5炭化水素基中の1以上の-CH
3は、それぞれ独立に、-NH
2に置き換えられていてもよい)である。
【0018】
Xa1と、Xa3またはXa4とは、環形成しないことが好ましい。
Xa3と、Xa4とが、環形成する場合に、好ましくは、5~7員環であり、環を構成する原子のうちの1または2つの原子が、窒素原子であり、残りの原子は、炭素原子である。
Xa3と、Xa4とが、環形成しない場合に、Xa3とXa4は、それぞれ独立に、H、メチルまたはエチルであり、より好ましくはHまたはメチルである。好ましい一形態は、Xa3とXa4のいずれか1つがメチルである。
【0019】
式(a-1)の具体例は、例えば、以下である。
【化7】
【0020】
また、式(a)は、式(a-2)で表される場合であってもよい。
【化8】
式中、R
a1、R
a2、L
a、ma、およびX
a1は、上記に記載のとおりであり、
X
a5は、C
1-5炭化水素基(C
1-5炭化水素基中の1以上の-CH
2-は、それぞれ独立に、-NH-、-C(=O)-および/または-O-に置き換えられていてもよく、かつC
1-5炭化水素基中の1以上の-CH
3は、それぞれ独立に、-NH
2および/または-COOHに置き換えられていてもよい)であり、
ここで、X
a1と、X
a5とが結合して、飽和環または不飽和環を形成していてもよい。好適にはX
a1と、X
a5とが、環形成しない。
X
a5のC
1-5炭化水素基は、直鎖であっても分岐であってもよく、好適には分岐である。好適にはX
a5は、C
1-4炭化水素基であり、C
1-4炭化水素基中の-CH
2-は、-NH-、-C(=O)-および-O-に置き換えられず、かつC
1-4炭化水素基中の-CH
3は、-NH
2および-COOHに置き換えられない。
【0021】
式(a-2)の具体例は、例えば、以下である。
【化9】
【0022】
また、式(a)は、式(a-3)で表される場合であってもよい。
【化10】
式中、R
a1、R
a2、L
a、ma、およびX
a1は、上記に記載のとおりであり、
X
a6は、C
1-5炭化水素基(C
1-5炭化水素基中の1以上の-CH
2-は、それぞれ独立に、-NH-、-C(=O)-および/または-O-に置き換えられていてもよく、かつC
1-5炭化水素基中の1以上の-CH
3は、それぞれ独立に、-NH
2および/または-COOHに置き換えられていてもよい)であり、
ここで、X
a1と、X
a6とが結合して、飽和環または不飽和環を形成していてもよい。
【0023】
Xa6は、好ましくは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピルおよびt-ブチルが挙げられ、より好ましくはメチル、n-プロピルである。
【0024】
式(a-3)の具体例は、例えば、以下である。
【化11】
【0025】
ユニット(b)は式(b)で表される。
【化12】
式中、
R
b1およびR
b2は、それぞれ独立に、H、C
1-5アルキル、C
1-5アルコキシ、C
1-5アルコキシアルキル、または-COOHであり、
mbは、0~1であり、
L
bは、単結合、C
1-5アルキレン、C
6-20アリーレン、-O-、またはC
1-5アルコキシレンであり、
Z
bは、C
6-20芳香族炭化水素またはC
7-20芳香族置換脂肪族炭化水素であり、
pbは、0~4であり、
qbは、1~3であり、
R
b3は、H、C
1-5アルキル、C
1-5アルコキシ、C
1-5アルコキシアルキル、または-COOHであり、pb>1であるとき、それぞれのR
b3は同一であっても異なっていてもよく、
R
b4は、Hまたはメチルであり、qb>1であるとき、それぞれのR
b4は同一であっても異なっていてもよく、
ここで、ユニット(b)は、少なくとも1つの縮合構造を有するアリールを有する。ユニット(b)は、少なくとも1つの縮合環式炭化水素を含んでなる、とも言うことができる。このような縮合環式炭化水素は、好適にはナフチルまたはアントラセンである。
【0026】
Rb1としては、好ましくはH、メチル、エチル、またはt-ブチルであり、より好ましくはHである。
Rb2としては、好ましくはH、メチル、エチル、またはt-ブチルであり、より好ましくはHまたはメチルであり、さらに好ましくはメチルである。
mbは、好ましくは0または1であり、より好ましくは1である。
Lbは、好ましくは単結合、メチレン、エチレン、プロピレン、ナフチレン、アントラセニレン、-O-、メトキシレンまたはエトキシレンであり、より好ましくは単結合、メチレンまたはナフチレンであり、さらに好ましくは単結合またはナフチレンであり、よりさらに好ましくは単結合である。
Rb3は、好ましくはH、メチル、エチル、プロピル、メトキシ、メトキシメチルであり、より好ましくはH、メチル、メトキシメチルであり、さらに好ましくはHまたはメトキシメチルであり、よりさらに好ましくはHである。pbは好ましくは0~3であり、より好ましくは0~2であり、さらに好ましくは0または1であり、よりさらに好ましくは0である。pb=0であるとき、実体的にRb3はHであるとも言える。明確性を担保するために、pb=0であるとき、Rb3≠Hとしても良い。
Rb4は好ましくはHである。qbは好ましくは1~2であり、より好ましくは1または2であり、さらに好ましくは1である。
【0027】
ユニット(b)を有することで、ポリマー(A)から形成された膜は好適な屈折率(n)を有すると考えられる。このため、ユニット(b)を有するポリマー(A)はレジスト下層膜形成組成物に有用であり、下層反射防止膜形成組成物にさらに有用である。また上層反射防止膜形成組成物にも有用である。
【0028】
なお、下記構造は、ユニット(b)の一例であるが、これは上記の式(b)において、
R
b1およびR
b2は、Hであり、mbは、1であり、
L
bおよびZ
bが、それぞれ下記の構造であり、
pbは4であり、qbは2であり、
R
b3は、全て-CH
2-O-CH
3であり、
R
b4は、全てHであるケースである。
【化13】
【0029】
Z
bは、好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ジフェニルメチル、ジフェニルエチル、またはフェニルナフチルメチルであり、より好ましくは、Z
bはナフタレン環である。
ユニット(b)は以下の式(b-1)で表されてもよい。
【化14】
式中、
R
b1、R
b2、mb、L
b、pb、qb、R
b3およびR
b4は、それぞれ独立に上記に記載のとおりである。
【0030】
式(b-1)の具体例は、例えば、以下である。
【化15】
【0031】
式(b-1)として、より好ましくは以下である。
【化16】
【0032】
ユニット(c)は式(c)で表される。
【化17】
式中、
R
c1およびR
c2は、それぞれ独立に、H、C
1-5アルキル、C
1-5アルコキシ、または-COOHであり、
mcは、0~1であり、
L
cは、単結合、C
1-5アルキレン、-O-、またはC
1-5アルコキシレンであり、
V
cは、縮合芳香族炭化水素または縮合複素環であり、V
cは3~6つの環が縮合されており、
pcは、0~5であり、
R
c3は、C
1-5アルキル、C
1-5アルコキシ、または-COOHであり、pc>1であるとき、それぞれのR
c3は同一であっても異なっていてもよい。
【0033】
Rc1としては、好ましくはH、メチル、またはエチルであり、より好ましくはHである。
Rc2としては、好ましくはH、メチル、またはエチルであり、より好ましくはHまたはメチルであり、さらに好ましくはメチルである。
Lcとしては、好ましくは単結合、メチレン、エチレン、プロピレン、-O-、またはメトキシレンであり、より好ましくは単結合またはメチレンであり、さらに好ましくはメチレンである。
mcは、好ましくは0または1であり、より好ましくは1である。
Rc3は、好ましくはH、メチル、またはエチルであり、より好ましくはHまたはメチルであり、さらに好ましくはHである。
pcは、好ましくは、0、1、2、3、4、または5であり、より好ましくは0、1または2であり、さらに好ましくは0または1であり、よりさらに好ましくは0である。pc=0であるとき、実体的にRc3はHであるとも言える。明確性を担保するために、pc=0であるとき、Rc3≠Hとしても良い。
【0034】
ユニット(c)を有することでポリマー(A)から形成された膜は、好適な吸収パラメータ(k)およびまたは屈折率(n)を示すことができると考えられる。例えば(k)値およびまたは(n)値を上げることができると考えられる。このため、ユニット(c)を有するポリマー(A)はレジスト下層膜形成組成物に有用であり、下層反射防止膜形成組成物にさらに有用である。また上層反射防止膜形成組成物にも有用である。
【0035】
Vcは好ましくは、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体またはキサンテン誘導体であり、より好ましくはアントラセン誘導体またはフェナントレン誘導体であり、さらに好ましくはアントラセン誘導体である。
【0036】
好ましくは、式(c)は、以下の式(c-1)または(c-2)で表される。
【化18】
式中、R
c1、R
c2、R
c3、L
cおよびmcは、それぞれ独立に上記に記載のとおりである。
V
cに該当するアントラセン中の1つの炭素が酸素に置き換えられていてもよく、置き換えられていない態様がより好ましい。
【化19】
式中、R
c1、R
c2、R
c3、L
cおよびmcは、それぞれ独立に上記に記載のとおりである。
フェナントレン中の1つの炭素が酸素に置き換えられていてもよく、置き換えられていない態様がより好ましい。
R
c3は、C
1-5アルキル、C
1-5アルコキシ、または-COOHであり、pc’’が、2、3、4、または5であるとき、それぞれのR
c3は同一であっても異なっていてもよく、2つのR
c3が飽和環または不飽和環を形成していてもよい。
【0037】
式(c-1)の具体例は、例えば、以下である。
【化20】
【0038】
式(c-2)の具体例は、例えば、以下である。
【化21】
【0039】
上記具体例以外の式(c)の具体例は、例えば、以下である。
【化22】
【0040】
ユニット(d)は式(d)で表される。
【化23】
式中、
R
d1およびR
d2は、それぞれ独立に、H、C
1-5アルキル、C
1-5アルコキシまたは-COOHであり、
mdは、0~1であり、
L
dは、単結合、C
1-5アルキレン(C
1-5アルキレン中の1以上の-CH
2-は、-NH-、-C(=O)-および/または-O-に置き換えられていてもよく、かつC
1-5アルキレン中の1以上の-CH
3は、-OH、-NH
2および/または-COOHに置き換えられていてもよい)、-O-、またはC
1-5アルコキシレンである。
【0041】
Rd1としては、好ましくはH、メチル、エチル、t-ブチルまたはメトキシであり、より好ましくはHまたはメチルであり、さらに好ましくはHである。
Rd2としては、好ましくはH、メチル、エチル、t-ブチルまたはメトキシであり、より好ましくはHまたはメチルであり、さらに好ましくはメチルである。
mdは、好ましくは0または1であり、より好ましくは1である。
Ldは、好ましくは、C1-5アルキレン(C1-5アルキレン中の1以上の-CH2-は、-C(=O)-に置き換えられていてもよく、かつC1-5アルキレン中の1以上の-CH3は、-OHおよび/または-COOHに置き換えられていてもよい)であり、より好ましくはC1-4アルキレン(C1-4アルキレン中の1以上の-CH2-は、-C(=O)-に置き換えられていてもよく、かつC1-4アルキレン中の1以上の-CH3は、-OHおよび/または-COOHに置き換えられていてもよい)であり、さらに好ましくはC1-4アルキレン(C1-4アルキレン中の1つの-CH2-は、-C(=O)-に置き換えられていてもよく、かつC1-4アルキレン中の1つの-CH3は、-OHおよび/または-COOHに置き換えられていてもよい)である。
【0042】
ユニット(d)を有することでポリマー(A)から形成された膜は、好適な吸収パラメータ(k)、屈折率(n)およびまたは早いエッチレートを示すことができると考えられる。また、ユニット(d)は膜形成時に架橋サイトとして機能することもでき、膜形成や架橋性に寄与することができる。このため、ユニット(d)を有するポリマー(A)はレジスト下層膜形成組成物に有用であり、下層反射防止膜形成組成物にさらに有用である。また上層反射防止膜形成組成物にも有用である。
【0043】
式(d)の具体例は、例えば、以下である。
【化24】
【0044】
(A)ポリマーにおいて、ユニット(a)、(b)、(c)、および(d)の繰り返し数である、それぞれ、na、nb、nc、およびndは、以下の式:na+nb>0、nc≧0、およびnd≧0を満たすものである。
【0045】
na/(na+nb+nc+nd)は、好ましくは2~80%であり、より好ましくは5~50%であり、さらに好ましくは10~50%であり、よりさらに好ましくは20~40%である。
nb/(na+nb+nc+nd)は、好ましくは10~90%であり、より好ましくは20~80%であり、さらに好ましくは30~80%であり、よりさらに好ましくは25~60%である。
nc/(na+nb+nc+nd)は、好ましくは3~80%であり、より好ましくは5~40%であり、さらに好ましくは5~50%であり、よりさらに好ましくは8~20%である。
nd/(na+nb+nc+nd)は、好ましくは0~80%であり、より好ましくは0~40%であり、さらに好ましくは5~30%であり、よりさらに好ましくは10~30%である。
【0046】
好ましくは、これらは以下の式:
5%≦na/(na+nb+nc+nd)≦50%、30%≦nb/(na+nb+nc+nd)≦80%、5%≦nc/(na+nb+nc+nd)≦40%、および/または0%≦nd/(na+nb+nc+nd)≦40%を満たす。
【0047】
好ましくは、(A)ポリマーに含まれる全ての繰り返し単位の総数ntotalが、以下の式:
80%≦(na+nb+nc+nd)/ntotal≦100%を満たす。
より好ましくは、以下の式:
90%≦(na+nb+nc+nd)/ntotal≦100%を満たす。
さらに好ましくは、以下の式:
95%≦(na+nb+nc+nd)/ntotal≦100%を満たす。
(na+nb+nc+nd)/ntotal=100%であること、つまり、na、nb、nc、nd以外の繰り返し単位を含まないことも、本発明の好ましい一態様である。
【0048】
(A)ポリマーの質量平均分子量(以下、Mwということがある)は、好ましくは1,000~50,000、より好ましくは3,000~40,000であり、さらに好ましくは5,000~20,000である。
(A)ポリマーの数平均分子量(以下、Mnということがある)は、好ましくは1,000~50,000であり、より好ましくは5,000~10,000である。
本発明において、MwおよびMnはゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography、GPC)にて測定することが可能である。同測定では、GPCカラムを摂氏40度、溶出溶媒テトラヒドロフランを0.6mL/分、単分散ポリスチレンを標準として用いることが好適な1例である。
【0049】
本発明による(A)ポリマーの合成方法は特に限定されないが、具体例は後述の合成例に記載される。合成例に公知の合成方法を組み合わせることも可能である。
【0050】
<半導体組成物>
本発明による半導体組成物(以下、組成物ということがある)は、(A)ポリマーおよび(B)溶媒を含んでなるものである。
ここで、本発明において、半導体組成物とは、半導体製造工程において使用される組成物を意味し、より好ましくはリソグラフィー工程で使用される。本発明による半導体組成物は、好ましくは半導体製造用組成物である。本発明による半導体組成物は、半導体製造工程で除去され、最終的に半導体に残らないものであってもよい。半導体組成物は、好ましくはレジスト下層膜組成物であり、より好ましくは下層反射防止膜組成物である。ここでレジスト下層膜や下層反射防止膜は、基板の上方かつレジスト膜の下方に形成される。レジスト下層膜や下層反射防止膜は基板やレジスト膜に接して形成されても、中間層を介して形成されても良い。
【0051】
(A)ポリマーの含有量は、組成物の総質量を基準として、好ましくは1~30質量%であり、より好ましくは1~15質量%である。
【0052】
(B)溶媒
本発明による組成物に用いられる溶媒は、好ましくは、水、炭化水素溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒、アルコール溶媒、またはケトン溶媒を含んでなる。
溶媒の具体例としては、例えば、水、n-ペンタン、i-ペンタン、n-ヘキサン、i-ヘキサン、n-ヘプタン、i-ヘプタン、2,2,4-トリメチルペンタン、n-オクタン、i-オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n-プロピルベンセン、i-プロピルベンセン、ジエチルベンゼン、i-ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ-i-プロピルベンセン、n-アミルナフタレン、トリメチルベンゼン、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、sec-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、i-ペンタノール、2-メチルブタノール、sec-ペンタノール、t-ペンタノール、3-メトキシブタノール、n-ヘキサノール、2-メチルペンタノール、sec-ヘキサノール、2-エチルブタノール、sec-ヘプタノール、ヘプタノール-3、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、sec-オクタノール、n-ノニルアルコール、2,6-ジメチルヘプタノール-4、n-デカノール、sec-ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec-テトラデシルアルコール、sec-ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フェニルメチルカルビノール、ジアセトンアルコール、クレゾール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ペンタンジオール-2,4、2-メチルペンタンジオール-2,4、ヘキサンジオール-2,5、ヘプタンジオール-2,4、2-エチルヘキサンジオール-1,3、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル-i-ブチルケトン、メチル-n-ペンチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、ジ-i-ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4-ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン、フェンチョン、エチルエーテル、i-プロピルエーテル、n-ブチルエーテル、n-ヘキシルエーテル、2-エチルヘキシルエーテル、エチレンオキシド、1,2-プロピレンオキシド、ジオキソラン、4-メチルジオキソラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジエチルカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、酢酸n-プロピル、酢酸i-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸i-ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸n-ペンチル、酢酸sec-ペンチル、酢酸3-メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2-エチルブチル、酢酸2-エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n-ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-ブチル、プロピオン酸i-アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ-n-ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、γ-ブチロラクトン、乳酸n-ブチル、乳酸n-アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等のエステル系溶媒;N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド、N-メチルピロリドン、硫化ジメチル、硫化ジエチル、チオフェン、テトラヒドロチオフェン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、および1,3-プロパンスルトンが挙げられる。これらの溶媒は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
(B)溶媒として、さらに好ましくは、PGMEA、PGME、またはこれらの混合物である。
【0053】
他の層や膜との関係で、(B)溶媒が水を含まないことも一態様である。例えば、(B)溶媒全体に占める水の量が、好ましくは0.1質量%以下であり、より好ましくは0.01質量%以下であり、さらに好ましくは0.001質量%以下である。
【0054】
(B)溶媒の含有量は、組成物の総質量を基準として、好ましくは50~99質量%であり、より好ましくは70~98質量%、さらに好ましくは80~95質量%である。組成物全体に占める溶媒の量を増減させることで、成膜後の膜厚を制御できる。
【0055】
(C)架橋剤
本発明による組成物は、さらに架橋剤を含んでもよい。なお、本発明において、架橋剤とは、架橋機能を有する化合物そのものをいう。架橋機能を有する化合物が溶媒に溶解または分散されて、組成物に含有される場合もあるが、このような溶媒は(B)溶媒またはその他の成分として半導体組成物に含有されることが好ましい。
架橋剤は、組成物を成膜する際の、成膜性を上げ、その上層に形成される膜(例えばレジスト膜)とのインターミキシングをなくし上層膜ヘの低分子成分の拡散をなくすために、有用である。後述の実施例に記載されるように、本発明による(A)ポリマーには架橋剤を含有しなくても、膜形成、埋め込み性や架橋性に優れるものがある。また、膜形成時に昇華物(アウトガス)を抑制することが可能であり、装置汚染の避けるために有用である。そのため、本発明の一態様として、添加する架橋剤の含有量は少ない方が好ましい。 よって、架橋剤の含有量は、(A)ポリマーの総質量を基準として、0~5質量%であることが好ましく、より好ましくは0~1質量%であり、さらに好ましくは0質量%である。架橋剤の含有量は(A)ポリマーの構造中に架橋できる構造を導入することで低減することができる。
【0056】
架橋剤としては、メチロール基、アルコキシメチル基、アシロキシメチル基から選ばれる少なくとも一つの基で置換されたメラミン化合物、グアナミン化合物、グリコールウリル化合物またはウレア化合物、エポキシ化合物、チオエポキシ化合物、イソシアネート化合物、アジド化合物、アルケニルエーテル基などの二重結合を含む化合物を挙げることができる。また、ヒドロキシ基を含む化合物も架橋剤として用いられる。
エポキシ化合物としては、トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリメチロールメタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリエチロールエタントリグリシジルエーテルなどが挙げられる。メラミン化合物としては、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミンの1~6個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物およびその混合物、ヘキサメトキシエチルメラミン、ヘキサアシロキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミンのメチロール基の1~6個がアシロキシメチル化した化合物またはその混合物が挙げられる。グアナミン化合物としては、テトラメチロールグアナミン、テトラメトキシメチルグアナミン、テトラメチロールグアナミンの1~4個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物およびその混合物、テトラメトキシエチルグアナミン、テトラアシロキシグアナミン、テトラメチロールグアナミンの1~4個のメチロール基がアシロキシメチル化した化合物およびその混合物が挙げられる。グリコールウリル化合物としては、テトラメチロールグリコールウリル、テトラメトキシグリコールウリル、テトラメトキシメチルグリコールウリル、テトラメチロールグリコールウリルのメチロール基の1~4個がメトキシメチル基化した化合物、またはその混合物、テトラメチロールグリコールウリルのメチロール基の1~4個がアシロキシメチル化した化合物またはその混合物が挙げられる。ウレア化合物としてはテトラメチロールウレア、テトラメトキシメチルウレア、テトラメチロールウレアの1~4個のメチロール基がメトキシメチル基化した化合物またはその混合物、テトラメトキシエチルウレアなどが挙げられる。アルケニルエーテル基を含む化合物としては、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,2-プロパンジオールジビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、ソルビトールペンタビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテルなどが挙げられる。
【0057】
その他の架橋剤として、下記式で表されるものが挙げられる。
【化25】
式中、L
3は直接結合、置換もしくは無置換のC
1~3のアルキルであり、R
20は水素、またはメチルである。L
3は直接結合またはメチルであることが好ましく、直接結合であることがさらに好ましい。同置換基は、水素、メチル、C
6~10のアリール、下記2つの式のいずれかであることが好ましく、さらに好ましくはメチルまたは下記2つの式のいずれかである。
【化26】
【0058】
上記式で表される架橋剤の具体例は以下であるが、本発明の範囲はこれらに限定されない。
【化27】
【0059】
本組成物を膜形成する際の架橋温度は、好ましくは50~230℃であり、さらに好ましくは80~220℃であり、よりさらに好ましくは80~190℃である。
【0060】
(D)酸発生剤
本発明による組成物は、さらに酸発生剤を含んでもよい。なお、本発明において、酸発生剤とは、酸発生機能を有する化合物そのものをいう。酸発生機能を有する化合物が溶媒に溶解または分散されて、組成物に含有される場合もあるが、このような溶媒は(B)溶媒またはその他の成分として半導体組成物に含有されることが好ましい。
(D)酸発生剤の含有量は、(A)ポリマーの総質量を基準として、0.01~10質量%であることが好ましく、1~7質量%であることがさらに好ましい。
【0061】
酸発生剤としては、加熱によって強酸を発生させることができる熱酸発生剤(TAG)を用いることができる。本発明に用いられる酸発生剤は、本発明による(A)ポリマーと反応しかつポリマーの架橋を伝搬することができる酸を加熱によって発生させる化合物であることが好ましい。好ましい一形態において、発生させる酸は、スルホン酸などの強酸である。
好ましくは、酸発生剤は、80℃を超える温度で活性化する。熱酸発生剤の例は、金属不含のスルホニウム塩およびヨードニウム塩、例えば、強非求核酸のトリアリールスルホニウム、ジアルキルアリールスルホニウム、およびジアリールアルキルスルホニウム塩、強非求核酸のアルキルアリールヨードニウム、ジアリールヨードニウム塩;および強非求核酸のアンモニウム、アルキルアンモニウム、ジアルキルアンモニウム、トリアルキルアンモニウム、テトラアルキルアンモニウム塩である。また、共有結合型(covalent)熱酸発生剤も、有用な添加剤として考えられ、例えばアルキルまたはアリールスルホン酸の2-ニトロベンジルエステル、および熱分解して遊離スルホン酸をもたらすスルホン酸のその他のエステルがある。その例は、ジアリールヨードニウムパーフルオロアルキルスルホネート、ジアリールヨードニウムトリス(フルオロアルキルスルホニル)メチド、ジアリールヨードニウムビス(フルオロアルキルスルホニル)メチド、ジアリールヨードニウムビス(フルオロアルキルスルホニル)イミド、ジアリールヨードニウム第4級アンモニウムパーフルオロアルキルスルホネートである。不安定なエステルの例は、トシル酸2-ニトロベンジル、トシル酸2,4-ジニトロベンジル、トシル酸2,6-ジニトロベンジル、トシル酸4-ニトロベンジル;2-トリフルオロメチル-6-ニトロベンジル4-クロロベンゼンスルホネート、2-トリフルオロメチル-6-ニトロベンジル4-ニトロベンゼンスルホネートなどのベンゼンスルホネート;フェニル4-メトキシベンゼンスルホネートなどのフェノール系スルホネートエステル;第4級アンモニウムトリス(フルオロアルキルスルホニル)メチド、および第4級アルキルアンモニウムビス(フルオロアルキルスルホニル)イミド、有機酸のアルキルアンモニウム塩、例えば10-カンファースルホン酸のトリエチルアンモニウム塩である。様々な芳香族(アントラセン、ナフタレン、またはベンゼン誘導体)スルホン酸アミン塩が、米国特許第3,474,054号、第4,200,729号、第4,251,665号、および第5,187,019号に開示されたものも、TAGとして用いることができる。本発明に用いられる酸発生剤は、2種以上の化合物であってもよい。
【0062】
(E)界面活性剤
本発明による組成物は、塗布性を向上させるために、さらに界面活性剤を含んでいてもよい。ここで、本発明において、界面活性剤とは、界面活性作用を有する化合物そのものをいう。界面活性作用を有する化合物が溶媒に溶解または分散されて、組成物に含有される場合もあるが、このような溶媒は(B)溶媒またはその他の成分として半導体組成物に含有されることが好ましい。
この(E)界面活性剤の含有量は、(A)ポリマーの総質量を基準として、好ましくは0.001~5質量%であり、より好ましくは0.01~0.5質量%である。
【0063】
本発明に用いることができる(E)界面活性剤としては、(I)陰イオン界面活性剤、(II)陽イオン界面活性剤、または(III)非イオン界面活性剤を挙げることができ、より具体的には(I)アルキルスルホネート、アルキルベンゼンスルホン酸、およびアルキルベンゼンスルホネート、(II)ラウリルピリジニウムクロライド、およびラウリルメチルアンモニウムクロライド、ならびに(III)ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、およびポリオキシエチレンアセチレニックグリコールエーテルが好ましい。
【0064】
(F)添加剤
本発明による組成物は、(A)~(E)以外の、その他の(F)添加剤を含んでいてもよい。
(F)添加剤は、特に限定されないが好ましくは、添加剤が、塩基発生剤、平滑剤、モノマー性染料、低級アルコール(C1-6アルコール)、表面レベリング剤、基板密着剤、消泡剤、および防腐剤からなる群から選択される。添加剤は、例えば、塩基発生剤の場合に、塩基を発生させる化合物そのものをいうように、その機能を有する化合物そのものをいう。その化合物が、溶媒に溶解または分散されて、組成物に含有される場合もあるが、このような溶媒は(B)溶媒またはその他の成分として半導体組成物に含有されることが好ましい。
(F)添加剤の含有量は、(A)ポリマーの総質量を基準として、好ましくは0~10質量%であり、より好ましくは0~5質量%である。(F)添加剤を含まない(0質量%)ことも、本発明による組成物の好適な一例である。
【0065】
<膜の製造方法>
本発明による膜の製造方法は、
(1)基板の上方に本発明による半導体組成物を適用すること;および
(2)前記半導体組成物を加熱し、膜を形成すること
を含んでなる。
ここで、本発明による膜とは、本発明による半導体組成物に由来する膜のことを意味するものとし、以降、(2)の膜ということがある。(2)の膜は、好ましくはレジスト下層膜であり、より好ましくは下層反射防止膜である
【0066】
以下、本発明による製造方法の一態様について説明する。
基板(例えば、シリコン/二酸化シリコン被覆基板、シリコンナイトライド基板、シリコンウェハ基板、ガラス基板およびITO基板等)の上方に、適当な方法により本発明による半導体組成物を適用する。ここで、本発明において、上方とは、直上に形成される場合および他の層を介して形成される場合を含む。例えば、基板の直上に、平坦化膜を形成し、その平坦化膜の直上に本発明による組成物が適用されていてもよい。適用方法は特に限定されないが、例えばスピナー、コーターによる塗布による方法が挙げられる。塗布後、加熱することにより本発明による膜が形成される。(2)の加熱は、例えばホットプレートによって行われる。加熱温度は、好ましくは100~250℃、より好ましくは125~225℃、さらに好ましくは150~200℃である。ここでの温度は加熱雰囲気、例えばホットプレートの加熱面温度である。加熱時間は、好ましくは30~300秒間、より好ましくは45~180秒間である。加熱は、好ましくは大気または窒素ガス雰囲気にて行われる。この加熱によって、組成物中で、架橋反応が進行する。よって、(2)の膜は、この後の工程で、容易に溶解しない。
(2)の膜の膜厚は、好ましくは10~1,000nmであり、より好ましくは30~500nmであり、さらに好ましくは50~100nmである。
【0067】
(2)の膜の吸収パラメータ(k)は、偏光解析測定から測定され、露光波長により0.01~1.0の数値となる。屈折率(n)も最適化され、露光波長により、1.3~2.0、好ましくは1.5~1.9の数値となることができる。nおよびkの値は、J.A.Woollam WVASE VU-32(商標)楕円偏光計などの楕円偏光計を使用して計算することができる。kおよびnに関する最適な範囲の正確な値は、(2)の膜上にコーティングされたレジスト膜を露光するのに使用される露光波長、および適用法に依存する。
【0068】
さらに、
(3)(2)の膜の上方にレジスト組成物を適用すること;および
(4)レジスト組成物を加熱し、レジスト膜を形成すること
を含んでなる方法により、レジスト膜を製造することができる。明確性のために記載すると、(3)工程の前に、(1)および(2)の工程が行われる。工程を示す()の中の数字は、順番を意味する。以降において同様である。
レジスト組成物を(2)の膜の上方に、適当な方法により適用する。適用方法は、特に限定されないが、上記の適用と同じであってもよい。
レジスト組成物としては、特に限定されず、パターン形成のための露光光に感度がある限り、任意の、ポジ型レジスト組成物、ネガ型レジスト組成物、またはネガティブトーン現像(NTD)レジスト組成物を使用できる。本発明に用いられるレジスト組成物は、好ましくは、ポジ型レジスト組成物またはネガ型レジスト組成物であり、より好ましくは化学増幅型ポジ型レジスト組成物または化学増幅型ネガ型レジスト組成物である。また、レジスト組成物は、酸発生剤または塩基発生剤を含んでなることが好ましい。
塗布後、加熱することによりレジスト膜が形成される。(4)の加熱温度は、好ましくは80~250℃、より好ましくは80~200℃、さらに好ましくは90~180℃である。加熱時間は、好ましくは30~600秒間、より好ましくは30~300秒間、さらに好ましくは60~180秒間である。加熱は、好ましくは大気または窒素ガス雰囲気にて行われる。
レジスト膜の膜厚は、露光波長によって異なるが、好ましくは100~50,000nmである。露光がKrFエキシマレーザーを用いる場合、レジスト膜の膜厚は、好ましくは100~5,000nmであり、より好ましくは100~1,000nmであり、さらに好ましくは400~600nmである。
【0069】
さらに、
(5)レジスト膜を露光すること、および
(6)レジスト膜を現像すること
を含んでなる方法により、レジストパターンを製造することができる。
レジスト膜に、所定のマスクを通して露光が行なわれる。露光に用いられる光の波長は特に限定されないが、波長が13.5~248nmの光で露光することが好ましい。具体的には、KrFエキシマレーザー(波長248nm)、ArFエキシマレーザー(波長193nm)、および極紫外線(波長13.5nm)等を使用することができ、好ましくはKrFエキシマレーザーである。これらの波長は±1%の範囲を許容する。露光後、必要に応じて露光後加熱(post exposure bake)を行なうこともできる。露光後加熱の温度は好ましくは80~150℃、より好ましくは100~140℃であり、加熱時間は0.3~5分間、好ましくは0.5~2分間である。
露光されたレジスト膜に、現像液を用いて現像が行なわれる。用いられる現像液として、好ましくは2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液である。現像液の温度は好ましくは5~50℃、より好ましくは25~40℃、現像時間は好ましくは10~300秒、より好ましくは30~60秒である。
このような現像液を用いることで、レジスト膜および/または(2)の膜を室温で容易に溶解除去することができる。さらに、これらの現像液に例えば界面活性剤を加えることもできる。
ポジ型レジスト組成物を利用した場合、露光された部分のポジ型フォトレジスト層が現像によって除去され、レジストパターンが形成される。このレジストパターンに、例えばシュリンク材料を用いることでさらに微細化することも可能である。
【0070】
さらに、
(7)レジストパターンをマスクとしてエッチングすること
を含んでなる方法により、加工基板を製造することができる。
レジストパターンをマスクとして、好ましくは(2)の膜または基板をエッチングする。このとき、(2)の膜および基板を、一度にエッチングすることにより、基板を加工してもよいし、(2)の膜をエッチングした後に、それをマスクとして、基板をエッチングするというように、段階的に加工することも可能である。エッチングは、ドライエッチングやウェットエッチングのいずれであってもよい。これにより、基板または基板の上の層にギャップを形成することができる。ギャップの形成後に、水、水に可溶性の有機溶剤と水との混合液、またはアルカリ水溶液と接触させることによって、レジストパターンを除去することができる。また、形成されたギャップを利用して配線を形成することもできる。なお、エッチング以外の方法で、基板を加工することも可能である。
【0071】
その後、必要に応じて、基板にさらに加工がされ、デバイスが形成される。これらのさらなる加工は、公知の方法を適用することができる。デバイス形成後、必要に応じて、基板をチップに切断し、リードフレームに接続され、樹脂でパッケージングされる。本発明では、このパッケージングされたものをデバイスという。
【0072】
実施例
本発明を諸例により説明すると以下の通りである。なお、本発明の態様はこれらの例のみに限定されるものではない。
【0073】
ポリマー1の合成
三口フラスコにPGMEAを350g入れ、さらに下記MOI-BP(カレンズMOI-BP、昭和電工)32.79g、McHN(川崎化成工業)20g、DYE-M9A(大阪新薬)6.422gおよびHPMA(ライトエステルHOP、共栄社化学)8.16gを入れる。それぞれユニット(a)、ユニット(b)、ユニット(c)、およびユニット(d)に該当する。
【化28】
さらに、V-601/油溶性アゾ重合開始剤(富士フイルム和光純薬)を入れる。三口フラスコに窒素を封入し蓋をして、攪拌子で攪拌しながら加熱し、液を80℃で4時間反応させる。さらにPGMEを3g入れて攪拌し、重合を終了させる。反応液を室温に戻す。ヘキサン1,500gに反応液を滴下し、ポリマーを析出させる。これを濾過、減圧乾燥し、ポリマー1を得る。
【化29】
ポリマー1(モル比、n
a:n
b:n
c:n
d=26:49:14:11)
GPC(溶出溶媒テトラヒドロフラン)で測定すると、ポリマー1のMnは9,900、Mwは22,200である。
【0074】
ポリマー2~11ならびに比較ポリマー1および2の合成
ユニット(a)、ユニット(b)、ユニット(c)、およびユニット(d)のモル比を表1に記載のように変更した以外は、上記したポリマー1の合成例と同様に、合成を行い、ポリマー2~11ならびに比較ポリマー1および2を得る。
比較ポリマー1および2はゲル化していることが目視で確認できる。微細な加工に不適と判断し、比較ポリマー1および2はこの後の評価に供しない。
GPC(溶出溶媒テトラヒドロフラン)で各ポリマーのMnとMwを測定すると、表1に記載の通りである。
【表1】
【0075】
組成物1の調製
界面活性剤(MEGAFACE R-40、DIC)を5質量%となるようにPGMEAに溶解する。これを5質量%界面活性剤溶液とする。
溶媒としてPGMEAを68.4g、PGMEを29.4g混合する。これにカンファスルホン酸(富士フィルム和光純薬)0.04gおよびトリエチルアミン(関東化学)0.018gを添加する。これらは熱酸発生剤として機能する。
【化30】
これにポリマー1を2g、5質量%界面活性剤溶液を0.048g添加し、室温で1時間攪拌混合する。これによって、組成物1を得る。
組成物1を目視で確認すると、溶質が溶解していることが確認できる。
【0076】
組成物2~11の調製
使用したポリマーを表2に記載のように変更した以外は、上記した組成物1の調製と同様に調製し、組成物2~11を得る。
各組成物を目視で確認すると、溶質が溶解していることが確認できる。
【0077】
組成物12の調製
界面活性剤(MEGAFACE R-40)を5質量%となるようにPGMEAに溶解する。これを5質量%界面活性剤溶液とする。
溶媒としてPGMEAを68.4g、PGMEを29.4g混合する。これにカンファスルホン酸0.04gおよびトリエチルアミン0.018gを添加する。これらは熱酸発生剤として機能する。
これにポリマー1を2g、下記架橋剤ニカラックMX-270(三和ケミカル)を0.6g、5質量%界面活性剤溶液を0.048g添加し、室温で1時間攪拌混合する。これによって、組成物12を得る。
【化31】
組成物12を目視で確認すると、溶質が溶解していることが確認できる。
【0078】
組成物13および14の調製
使用したポリマーを表2に記載のように変更した以外は、上記した組成物12の調製と同様にして、組成物13および14を得る。
各組成物を目視で確認すると、溶質が溶解していることが確認できる。
【0079】
比較組成物1の調製
下記P090Dポリマーを、17質量%となるようにPGMEAに溶解する。これを、P090Dポリマー溶液とする。
界面活性剤(MEGAFACE R-40)を5質量%となるようにPGMEAに溶解する。これを5質量%界面活性剤溶液とする。
溶媒としてPGMEAを68.4g、PGMEを29.4g混合する。これにカンファスルホン酸0.04gおよびトリエチルアミン0.018gを添加する。これらは熱酸発生剤として機能する。これに下記VPS-2515(ポリ(ヒドロキシスチレン/スチレン)コポリマー)を3.2g、P090Dポリマー溶液4.6g、架橋剤(TMOM-BP)を0.6g、5質量%界面活性剤溶液0.048gを添加し、室温で1時間攪拌混合する。これによって、比較組成物1を得る。以降において、簡略のためにVPS-2515およびP090Dがポリマー成分である場合、VPS+P090Dと記載する。
比較組成物1を目視で確認すると、溶質が溶解していることが確認できる。
【化32】
(P090Dポリマー、東邦化学、a:b:c:d=35.7:35.7:17.9:10.7。分子量4000~8000)
【化33】
(VPS-2515、日本曹達、分子量3300~4300)
【化34】
(TMOM-BP、本州化学工業)
【0080】
比較組成物2の調製
P090Dポリマーを、17質量%となるようにPGMEAに溶解する。これを、P090Dポリマー溶液とする。
界面活性剤(MEGAFACE R-40)を5質量%となるようにPGMEAに溶解する。これを5質量%界面活性剤溶液とする。
溶媒としてPGMEAを68.4g、PGMEを29.4g混合する。これにカンファスルホン酸0.04gおよびトリエチルアミン0.018gを添加する。これらは熱酸発生剤として機能する。
これにポリ(ヒドロキシスチレン/スチレン)コポリマー(VPS-2515)を3.2g、P090Dポリマー溶液4.6g、5質量%界面活性剤溶液0.048gを添加し、室温で1時間攪拌混合する。これによって、比較組成物2を得る。
比較組成物2を目視で確認すると、溶質が溶解していることが確認できる。
【0081】
膜形成の評価
コータ/デベロッパ Mark8(東京エレクトロン)を用いて、各組成物をSiベアウェハにスピンコートする。ウェハを空気中で180℃で60秒間ベークし、膜を形成する。
この工程により、組成物から膜が形成されていれば膜形成をAと評価し、膜が形成されていなければ膜形成をBと評価する。評価結果は表2に記載する。
ラムダエースVM-1210(SCREEN)で測定すると、この膜の膜厚は45nmである。
【0082】
均一性の評価
上記の膜形成で形成された膜の均一性を評価する。評価基準は以下である。評価結果は表2に記載する。
A:目視で確認し、均一に塗布できている。
B:目視で確認し、斑の存在が確認される。
なお、組成物1を用いて形成された膜は、直線上の21か所の地点の膜厚を測定すると、その最大値と最小値の差が2nm以下である。
【表2】
【0083】
光学定数の評価
上記の膜形成で形成された膜の光学定数を評価する。Ellipsometer M2000-D(J.A.Woolam)、波長248nmで反射光を測定する。これにより光学定数n値およびk値を得る。評価結果を表3に記載する。
組成物1から形成された膜は反射防止膜として充分な特性を有することが確認できる。
【0084】
埋め込み特性の評価
各組成物をシリコン段差基盤(ラインスペース比1:2、ピッチ幅48nm(L16nm/S32nm)、深さ100nm)上にスピンコートし、基盤の切片をSEMで確認し、埋め込み特性を評価する。評価基準は以下である。評価結果を表3に記載する。
A:SEM写真中、組成物が埋め込まれた段差に空隙が確認されない。
B:SEM写真中、組成物が埋め込まれた段差の一部に空隙が存在する。
【0085】
架橋性の評価
上記の膜形成で形成された膜の膜厚を初期膜厚とする。ウェハをPGMEA/PGME溶液(AZ EBR7030、Merck Performance Materials、以下MPMとする)に60秒間浸し、その後スピンドライし、再度膜厚を測定する。 初期膜厚と比較して、膜厚の減少幅が2nm未満である場合、架橋が充分と評価する。架橋が充分の場合、膜の形成のベーク温度を170度、160度、150度と順次下降させ、膜厚の減少幅が2nm以上(架橋が不充分)となる時点まで、同じ実験と評価を行う。これにより架橋性の確認を行う。架橋が不充分になる直前のベーク温度条件(架橋が充分であるもの)を、表に記載する。
PGMEA/PGME溶液によって、10nm以上溶けている場合、Bと評価する。
評価結果を表3に記載する。
【0086】
レジストパターンの形成
上記の膜形成で形成された膜の上に、レジスト組成物(AZ DX3200P、MPM)をスピンコートし、90℃で60秒間ベークする。これにより、膜厚580nmのレジスト膜を形成する。
このウェハをPFA-3000 EX-5(キヤノン)で波長248nm、mask size=200nm、line:space=1:1で露光する。この露光されたウェハを120℃で90秒間露光後ベーク処理し、TMAH2.38質量%水溶液を用いて60秒間現像する。これを水でリンスし、スピンドライする。これにより、レジストパターンが形成される。
【0087】
定在波の評価
上記で形成されたレジストパターンを、走査電子顕微鏡で観察し、定在波の状態を評価する。評価基準は以下である。評価結果を表3に記載する。
A:定在波の低減が見られ、レジスト壁面がほとんど波打っていない状態である。
B:定在波の低減が見られるが、レジスト壁面がわずかに波打っている状態である。
C:定在波の低減を示さない。
【表3】
【0088】
昇華物の評価
国際公開2007/111147(特許文献3)に記載の、QCMセンサーを用いる熱硬化膜中の昇華物の測定方法に準ずる試験および評価を行う。
直径4インチのシリコンウェハ基板に、スピンコーターにて、組成物1を2500rpm、60秒間で塗布する。膜厚を測定すると78nmである。
上記ウェハを、205℃に調整されたホットプレートを一体化した昇華物測定装置にセットし、60秒間ベークおよび昇華物をQCMセンサー(TH-Q100およびセンサーSEN-9E-H10、多摩デバイス)を用いて捕集し定量する。
測定はホットプレートを180℃に昇温し、ポンプ流量を1m
3/sに設定し、最初の60秒間はエージングのために放置する。その後直ちに、スライド口から速やかに膜が被覆されたウェーハーをホットプレートに乗せ(測定物をインストール)、60秒の時点から120秒の時点(60秒間)の昇華物の捕集を行う。
またQCMセンサーと捕集ロート部分の接続となるフローアタッチメント(検出部分)には口径2mmのノズルをつけ、センサーとノズルの距離は0.5mmを保つ。また、QCMセンサーはシリコンとアルミニウムを含有する化合物による材質の電極を用い、水晶振動子の直径(センサー直径)が14mm、水晶振動子表面の電極直径が5mm、共振周波数が9MHzのものを用いる。
評価基準は以下である。
A:昇華量<0.1ng
B:昇華量≧0.1ng、≦0.5ng
C:昇華量>0.5ng
表4に記載の各組成についても、上記と同様の試験および評価を行う。結果を表4に記載する。
【表4】
【0089】
ポリマー1~9からなる組成物1~9から膜を形成すると、昇華物の発生が少ないことが確認される。これらの組成物を用いることで、装置の汚染を防止することができ、製造プロセスにおいて有利であると考えられる。