(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】金属表面上にブロッキング層を堆積させるための方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/318 20060101AFI20240122BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20240122BHJP
C23C 16/04 20060101ALI20240122BHJP
C23C 16/42 20060101ALI20240122BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
H01L21/318 B
H01L21/31 B
C23C16/04
C23C16/42
C23C16/455
(21)【出願番号】P 2022163912
(22)【出願日】2022-10-12
(62)【分割の表示】P 2020502385の分割
【原出願日】2018-07-17
【審査請求日】2022-11-11
(32)【優先日】2017-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ブヤン バスカー ジョティー
(72)【発明者】
【氏名】サリー マーク
(72)【発明者】
【氏名】カルタラジ ラクマル シー
(72)【発明者】
【氏名】ニズリー トーマス
【審査官】船越 亮
(56)【参考文献】
【文献】特許第7159285(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/318
H01L 21/31
C23C 16/04
C23C 16/42
C23C 16/455
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属表面上への誘電体材料の堆積をブロックするためのブロッキング層を選択的に堆積させる方法であって、
シランを用いて基板の金属表面上に選択的にブロッキング層を形成することであって、基板が、金属材料表面および誘電体表面を有し、シランが、一般式SiH
3R(式中、Rは、C4-C20アルキル、パーフルオロアルキル、アルケニルまたはアルキニル基から選択される)を有する少なくとも1種の化合物を含む、ブロッキング層を形成すること、および
ブロッキング層を形成した後に、窒化ケイ素層を誘電体表面上に選択的に堆積させること、
を含み、
金属表面が、銅、コバルト、タングステン、タンタル、窒化タンタル、酸化タンタル、チタン、酸化チタン、窒化チタン、ルテニウム、酸化ルテニウムおよびイリジウムの1つを含む、
方法。
【請求項2】
シランがドデシルシラン(C
12H
25SiH
3)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ブロッキング層が
表面積に基づいて5%を超える架橋を含有しない、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
基板をシランに曝露する前に、金属材料表面を水素プラズマで浄化することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
窒化ケイ素層を堆積させた後に、基板のシランへの曝露と窒化ケイ素層の堆積を、窒化ケイ素層が所定の厚さに達するまで繰り返すことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
所定の厚さが10Å~50Åの範囲である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
所定の厚さが50Å以上である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
金属表面上への誘電体材料の堆積をブロックするためのブロッキング層を選択的に堆積させる方法であって、
基板をアルキンおよび窒素反応体に曝露して、金属材料表面上に選択的にブロッキング層を形成することであって、基板が、金属材料表面および誘電体表面を有し、窒素反応体が、アジドまたはニトリルオキシドを含む、ブロッキング層を形成すること、および
ブロッキング層を形成した後に、窒化ケイ素層を誘電体表面上に選択的に堆積させること、
を含み、
金属表面が、銅、コバルト、タングステン、タンタル、窒化タンタル、酸化タンタル、チタン、酸化チタン、窒化チタン、ルテニウム、酸化ルテニウムおよびイリジウムの1つを含む、
方法。
【請求項9】
金属表面が銅を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
基板をアルキンまたは窒素反応体に曝露する前に、金属材料表面を水素プラズマで浄化することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
アルキンが、2つ以上のアルキン部分を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
アルキンが、一般式SiR
4(式中、各Rは、それぞれ独立にC1-C18アルキル、アリール、またはアルキニル基から選択され、ただし少なくとも1つのRは、アルキニルである)を有する少なくとも1種の化合物を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
アジドが、2つ以上のアジド部分を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
アジドが、一般式SiR
4(式中、各Rは、それぞれ独立にC1-C18アルキル、アリール、またはアジド基から選択され、ただし少なくとも1つのRは、アジドである)を有する少なくとも1種の化合物を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
窒素反応体が、
分子に基づいて5%を超えるニトリルオキシドを含まない、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
アルキンが、1種または複数の以下の化合物:
【化1】
(式中、各Rは、それぞれ独立にC1-C18アルキルまたはアリール基から選択される。)
を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
アジドが、1つまたは複数の以下の化合物:
【化2】
(式中、各Rは、それぞれ独立にC1-C18アルキルまたはアリール基から選択される。)
を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項18】
金属表面上への誘電体材料の堆積をブロックするためのブロッキング層を選択的に堆積させる方法であって、
金属材料表面および誘電体表面を有する基板をエポキシドに曝露して、ブロッキング層を選択的に形成することにより、金属材料表面上にブロッキング層を形成すること、および
ブロッキング層を形成した後に、窒化ケイ素層を誘電体表面上に選択的に堆積させること、
を含み、
金属表面が、銅、コバルト、タングステン、タンタル、窒化タンタル、酸化タンタル、チタン、酸化チタン、窒化チタン、ルテニウム、酸化ルテニウムおよびイリジウムの1つを含む、
方法。
【請求項19】
金属材料表面がコバルトを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
エポキシドが置換されている、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、金属表面上にブロッキング層を堆積させるための方法に関する。より詳細には、本開示の実施形態は、金属表面上にブロッキング層を堆積させて、誘電体表面上のみへの窒化ケイ素の堆積を促進するための方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
半導体産業は、ナノスケール特徴の迅速なスケーリングを含む装置の小型化を追及して多くの課題に直面している。そのような問題には、複数のリソグラフィ工程などの複雑な製造工程の導入および高性能材料の集積化が含まれる。装置の小型化の流れを維持するためには、選択的堆積が、集積化スキームを簡素化することによって高価なリソグラフィ工程を削除する可能性があるため、有望である。
【0003】
材料の選択的堆積は、種々の方法によって達成することができる。化学前駆体は、一つの表面と、もう一方の表面に比して選択的に反応することがある。圧力、基板温度、前駆体分圧、および/またはガス流などのプロセスパラメーターを調節して、特定の表面反応の化学反応速度を調節することがある。別の可能なスキームには、供給される膜堆積前駆体に対して対象表面を活性化または非活性化するために使用できる表面前処理が含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
堆積選択性を改善するための方法が、当該技術分野で継続的に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の1つまたは複数の実施形態は、ブロッキング層を選択的に堆積させる方法に関する。方法は、金属表面および誘電体表面を有する基板をシランに曝露して、金属表面上に選択的にブロッキング層を形成することを含み、シランは、一般式SiH3R(式中、Rは、C4-C20アルキル、パーフルオロアルキル、アルケニルまたはアルキニル基から選択される)を有する少なくとも1種の化合物を含む。
【0006】
本開示の別の実施形態は、ブロッキング層を選択的に堆積させる方法に関する。方法は、金属表面および誘電体表面を有する基板をアルキンおよび窒素反応体に曝露して、金属表面上に選択的にブロッキング層を形成することを含み、窒素反応体は、アジドまたはニトリルオキシドを含む。
【0007】
本開示の他の実施形態は、ブロッキング層を選択的に堆積させる方法に関する。方法は、金属表面および誘電体表面を有する基板をエポキシドに曝露して、金属表面上にブロッキング層を選択的に形成することを含む。
【0008】
本開示の上述の特徴を詳細に理解できるように、上記で簡単に要約した本開示のより具体的な説明が、実施形態を参照することによって得られ、そのいくつかは添付の図面に示される。しかしながら、添付の図面は、本開示の代表的な実施形態のみを示しており、したがって、その範囲を限定すると見なされるべきではなく、本開示は他の等しく有効な実施形態を許容しうることに、留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の1つまたは複数の実施形態による、アジドおよびアルキンブロッキング剤の可能な数または反応基に関する一連の一般的な構造を示す図である。
【
図2】本開示の1つまたは複数の実施形態による、金属表面の存在下でのモノマーおよび金属表面上に選択的にポリマーネットワークを生成するための環化反応の反応図である。
【
図3】本開示の1つまたは複数の実施形態による、金属表面上へのポリマーブロッキング層および誘電体表面上への誘電体膜の選択的堆積を可能にするための一般的なプロセスフローを示す図である。
【
図4】本開示の1つまたは複数の実施形態による、酸素系遠隔プラズマおよび水素系遠隔プラズマの使用によってポリマーブロッキング層を除去するためのプロセスの例を示す図である。
【
図5】本開示の1つまたは複数の実施形態による、選択的堆積プロセスのプロセスフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の実施形態は、金属表面上にブロッキング層を堆積させるための方法を提供する。本開示の実施形態は、別々にまたは一緒に使用できるブロッキング層を堆積させるための方法を明らかにする。
【0011】
本開示の実施形態は、金属表面上に堆積させたブロッキング層により金属表面上への誘電体材料の堆積をブロックすることによって、誘電体表面上に誘電体材料(例えばSiN)を有利に堆積させるための方法を提供する。
【0012】
「基板表面」は、本明細書では、膜処理が行なわれる基板の任意の部分または基板上に形成された材料表面の一部を意味する。例えば、処理を行なうことができる基板表面には、用途に応じて、シリコン、酸化ケイ素、窒化ケイ素、ドープされたシリコン、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、ガラス、サファイアなどの材料、ならびに金属、金属窒化物、金属合金、および他の導電性材料などの任意の他の材料が含まれる。基板には、半導体ウェーハが含まれるが、それだけには限定されない。基板は、基板表面を研磨、エッチング、還元、酸化、水酸化、アニール、UV硬化、電子ビーム硬化および/またはベークするための前処理プロセスに曝露されてもよい。本開示では、基板自体の表面上の直接的な膜処理に加えて、開示された膜処理工程のいずれも、以下でより詳細に開示されるように、基板上に形成された下地層上で行なわれていてもよく、用語「基板表面」は、文脈が示すような下地層を含むものである。したがって、例えば、膜/層または部分的な膜/層が基板表面上に堆積された場合、新たに堆積された膜/層の露出表面が基板表面になる。基板は、200mmまたは300mm直径のウェーハ、ならびに、長方形または正方形ペインなどの種々の寸法を有していてもよい。いくつかの実施形態では、基板は、個別剛性材料を含む。
【0013】
「原子層堆積」または「周期堆積」は、本明細書では、基板表面上に材料の層を堆積するために2つ以上の反応性化合物を順次曝露することを含むプロセスを意味する。本明細書および添付の特許請求の範囲では、用語「反応性化合物」、「反応性ガス」、「反応性化学種」、「前駆体」、「プロセスガス」などは、区別なく用いられて、表面反応(例えば、化学吸着、酸化、還元、付加環化)で基板表面または基板表面上の材料と反応できる化学種を有する物質を表す。基板、または基板の一部は、処理チャンバの反応ゾーンに導入されている、2つ以上の反応性化合物に順次曝露される。
【0014】
本開示の実施形態は、有利には、金属表面(それだけには限らないが、銅、コバルト、タングステン、タンタル、窒化タンタル、酸化タンタル、チタン、酸化チタン、窒化チタン、ルテニウム、酸化ルテニウムおよびイリジウムなどを含む)の選択的なブロッキングなどの表面前処理のための方法を提供する。いくつかの実施形態は、有利には、SiO2、SiN、SiCON、SiCOなどの誘電体表面上で誘電体材料を選択的に成長させるための方法を提供する。いくつかの実施形態は、有利には、エポキシド表面反応を使用して表面堆積を選択的にブロックするための方法を提供する。
【0015】
いくつかの実施形態では、金属ケイ化物は、誘電体表面と比して金属表面上に選択的に形成される。本明細書および添付の特許請求の範囲では、表現「と比して選択的に(selectively over)」などは、対象材料が、指定の表面上に別の表面よりも大きな範囲で堆積することを表す。いくつかの実施形態では、「選択的に」は、対象材料が、選択されていない表面上での形成速度の約10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍または50倍以上の速度で、選択された表面上に形成されることを表す。いくつかの実施形態では、トリヒドリドシラン(RSiH3、式中R=C4-C20)を含有する長いアルキル鎖を、ブロッキング分子として使用し、液相または気相中で金属表面(それだけには限らないが、Cu、Co、W、およびTiNを含む)と反応させる。いくつかの実施形態では、ブロッキング分子と反応させる前に金属表面を浄化する。オルガノシランは、シラン頭部基によって、誘電体(dielectic)表面(例えば、SiO2)と比して金属表面と選択的に反応する。シランの有機部分は、金属上の次の誘電体層(例えば、SiN)の成長をブロックし、誘電体表面上への誘電体の選択的堆積を可能にする疎水性保護層として働く。
【0016】
本開示の1つまたは複数の実施形態は、金属表面および誘電体表面を有する基板の金属表面上にブロッキング層を選択的に堆積させる方法を対象とする。方法は、基板を、一般式SiH3R(式中、Rは、C4-C20アルキル、パーフルオロアルキル、アルケニルまたはアルキニル基から選択される)を有する少なくとも1種の化合物を含むシランに曝露することを含む。この方法で使用する場合、文字「C」とそれに続く数字(例えば、「C4」)は、置換基が、指定された数の炭素原子(例えば、C4は4個の炭素原子を含む)を含むことを表す。いくつかの実施形態では、置換基は、直鎖基(例えばn-ブチル)、分枝基(例えばt-ブチル)または環基((例えば、シクロヘキシル)であってよい。
【0017】
基板の誘電体表面は、任意の適当な誘電体材料を含んでいてよい。適当な誘電体材料には、酸化物(例えば、酸化ケイ素)および高k誘電体が含まれるが、それだけには限定されない。いくつかの実施形態では、誘電体表面は、本質的に酸化ケイ素からなる。この方法で使用する場合、用語「本質的に~からなる」は、表面が、面積に基づいて、指定の材料約95%、98%または99%以上であることを表す。
【0018】
基板の金属表面は、任意の適当な金属材料を含んでいてもよい。適当な金属材料には、金属、金属窒化物、金属合金、および他の導電性材料が含まれるが、それだけには限定されない。いくつかの実施形態では、金属表面は、コバルト、タングステンまたは窒化チタンのうちの1種または複数を含む。いくつかの実施形態では、金属表面は、本質的にコバルトからなる。いくつかの実施形態では、金属表面は、本質的にタングステンからなる。いくつかの実施形態では、金属表面は、本質的に窒化チタンからなる。
【0019】
基板に曝露されるシランは、任意の適当なトリヒドリドシランを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、シランは、一般式SiH3R(式中、Rは、C4-C20アルキル、パーフルオロアルキル、アルケニルまたはアルキニル基から選択される)を有する少なくとも1種の化合物を含む。いくつかの実施形態では、C4-C20アルキル基は、本質的に、Si-C結合1つ、C-C一重結合およびC-H結合からなる。いくつかの実施形態では、C4-C20パーフルオロアルキル基は、本質的に、Si-C結合1つ、C-C一重結合およびC-F結合からなる。いくつかの実施形態では、C4-C20アルケニル基は、本質的に、Si-C結合1つ、C-C一重結合、C-C二重結合少なくとも1つおよびC-H結合からなる。いくつかの実施形態では、C4-C20アルキニル基は、本質的に、Si-C結合1つ、C-C一重結合、C-C三重結合少なくとも1つおよびC-H結合からなる。いくつかの実施形態では、C4-C20基は、1つまたは複数のハロゲン原子および/または疎水性部分を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、シランは、C4-C20アルキル基を含む。いくつかの実施形態では、シランは、ドデシルシラン(C12H25SiH3)を含む。いくつかの実施形態では、シランは、本質的にドデシルシランからなる。
【0021】
いくつかの実施形態では、シラン基は、堆積後に互いに架橋する。いくつかの実施形態では、ブロッキング層は、シラン基間に実質的に架橋を含有しない。この方法で使用する場合、用語「実質的に架橋がない」は、表面積に基づいて約5%、2%または1%以下の架橋があることを表す。
【0022】
いくつかの実施形態では、基板は、基板をシランに曝露する前に浄化する。いくつかの実施形態では、基板をシランに曝露する前に基板の金属表面のみを浄化する。いくつかの実施形態では、基板または基板の金属表面は、水素プラズマで浄化する。いくつかの実施形態では、水素プラズマは、導電結合プラズマ(CCP)である。いくつかの実施形態では、水素プラズマは、誘導結合プラズマ(ICP)である。いくつかの実施形態では、水素プラズマは、H2のプラズマを含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、誘電体層は、ブロッキング層の堆積後に、誘電体表面上に選択的に堆積される。いくつかの実施形態では、誘電体層は、窒化ケイ素を含む。窒化ケイ素の堆積は、任意の適当なプロセスによって行なうことができる。適当なプロセスは、基板をハロゲン化ケイ素およびアンモニアに曝露することを含んでいてもよい。適当なハロゲン化ケイ素には、ジクロロシラン(DCS)、トリクロロシラン(TCS)、テトラクロロシラン(SiCl4)、テトラブロモシラン(SiBr4)、テトラヨードシラン(SiI4)、およびヘキサクロロジシラン(HCDS)が含まれるが、それだけには限定されない。
【0024】
いくつかの実施形態では、誘電体層の堆積後に基板をシランに曝露することを繰り返して、ブロッキング層を再生させる。いくつかの実施形態では、ブロッキング層を再生させた後に誘電体層を再度堆積させる。いくつかの実施形態では、基板のシランへの曝露および窒化ケイ素層の堆積は、窒化ケイ素(silcon)層が所定の厚さに達するまで繰り返される。
【0025】
表面ブロッキング化学作用への曝露、またはブロッキング層の再生は、複数回の堆積サイクル後または膜厚が形成された後、1回行なうか、繰り返すことができる。いくつかの実施形態では、ブロッキング層が再生される前に、窒化ケイ素層を、厚さが約10Å~約50Åの範囲、または約12Å~約35Åの範囲または約15Å~約20Åの範囲で堆積させる。いくつかの実施形態では、窒化ケイ素層の厚さが50Å、75Å、100Åまたは150Å以上になるまで、基板のシランへの曝露および窒化ケイ素の堆積を繰り返す。
【0026】
金属表面は、2~10分、100W、水素プラズマを使用して浄化して、自然酸化物濃度を低減させた。シランを基板温度200℃で堆積させた。金属ケイ化物の形成は、最初に水接触角(WCA)測定により調査した。より高い接触角は、疎水性表面(すなわち、ケイ化物の形成)を示した。WCAは、SiO2がドデシルシラン(DDS、R=C12)によってブロックされておらず、金属表面(すなわちCo、WおよびTiN)がブロックされたことを示した。表面浄化のための水素プラズマ処理が、金属ケイ化物の形成を促進させた。
【0027】
熱および化学安定度試験の結果は、金属上のDDSブロッキングが、WおよびTiNでは200℃まで安定であり、Coでは330℃まで安定であったことを示した。DDS自己組織化単分子膜(SAM)は、ハロゲン化ケイ素(ジクロロシラン(DCS)、トリクロロシラン(TCS)、テトラクロロシラン(SiCl4)、テトラブロモシラン(SiBr4)、テトラヨードシラン(SiI4))およびNH3に耐えることができ、それはSiN ALDに使用される。
【0028】
DDS SAM上に堆積したSiNの異なる厚さのWCAの調査は、15~20ÅのSiN成長後にSAMを再生させた場合、Co、WおよびTiN表面上で約50Åの最小厚さまで選択性を達成できることを示した。選択性は、SiN形成の間に再生サイクルの回数を繰り返すことによって広げることができる。DDSで処理した基板は、SiN(空気曝露により酸化してSiO2になる)がほとんど成長しなかったが、DDS未処理の基板は、約40~50Å SiNが成長したことが観察された。
【0029】
いくつかの実施形態では、置換アジドまたはニトリルオキシドとアルキンを、銅表面の存在下で反応させてブロッキング層を形成させる。この反応は、新たに官能化された銅表面を不活性にする可能性があるか、または供給される膜堆積前駆体に対する反応性を促進する可能性がある表面結合化学種を形成する。例えば、アジドまたはニトリルオキシドは、銅金属の存在下でアルキンと反応して、トリアゾールまたはイソオキサゾール(それぞれアジドまたはニトリルオキシドの場合)を形成する。いくつかの実施形態では、トリメチルシリルアジドおよびトリメチルシリルアセチレンを、銅金属表面の存在下で反応させて、結果として表面結合トリアゾールを形成する。いくつかの実施形態では、置換アジドおよびアルキン前駆体は、気相中で順次基板に導入される。
【0030】
いくつかの実施形態では、置換アジドまたはニトリルオキシドのいずれかと置換アルキンを、金属表面の存在下で反応させる。各分子(アジド、ニトリルオキシドおよびアルキン)、N上の反応性置換基の数は、1~4個の反応基の範囲であってよい。いくつかの実施形態では、反応基の数は、1よりも大きい。
【0031】
図1を参照すると、アジドおよびアルキンの可能な数または反応基に関して、一連の一般的な構造を示している。基を一緒に保持する波線は、反応基を一緒に保持する任意の分子鎖であってよい(C系、Si系、あるいはB、P、N、OおよびSのような他の元素さえも)。
【0032】
理論に束縛されるものではないが、これらのモノマーが金属表面の存在下にある場合、
図2に示すように、部分が環化反応を受けて、金属表面上にポリマーネットワークを形成するが、誘電体表面には形成しないことが考えられる。ポリマーネットワークと金属表面との結合が、ポリマー上の窒素置換基によって、ならびに複素環のπ電子と金属表面との相互作用によって起こることが考えられる。
【0033】
図3は、選択的堆積を可能にするための、本開示のいくつかの実施形態による一般的なプロセスフローを示す。フローは、約20℃~約600℃の範囲の温度で、液相、純粋、または気相法によって、アセチリド系(例えばアルキン)およびアジド系モノマーを基板に導入することから始まる。いくつかの実施形態では、金属表面は、表面に酸化物が少しもない初期状態の金属表面である。モノマー導入後、金属触媒トリアゾール形成によって、ポリマーネットワークが金属表面に形成され始める。金属触媒重合が完了した後、未反応のモノマーは、表面を溶媒(液相で行なった場合)で洗浄することによって、またはリアクタ内で不活性ガスパージを使用して除去することができる。誘電体上でのみ核形成する膜は、その後堆積させることができる。
【0034】
プロセスフローが完了した後、ポリマー層は、選択的エッチングプロセスを用いて除去することができる。酸素系およびフッ素系エッチは、ここで堆積されたブロッキング層に類似した炭素系膜をエッチングすることが知られている。
図4は、酸素系遠隔プラズマによってポリマーを除去する例を示す。この例では、ポリマーを除去するが金属表面も酸化する、酸素系遠隔プラズマエッチによってポリマーが除去されている。元の金属表面を回復させるために、金属酸化物を還元して金属に戻すことができる。いくつかの実施形態では、還元には、H
2およびNH
3プラズマへの曝露、ならびに/またはH
2およびNH
3熱アニールが含まれる。
【0035】
いくつかの実施形態では、膜の堆積の一部がブロッキング層上に起こることがあり、欠陥(
図5でノジュールと表記)をもたらし得る。1つまたは複数の実施形態では、ポリマーを欠陥と一緒に除去し、選択的成長を継続するために、重合反応を再度開始する。
【0036】
本開示の1つまたは複数の実施形態は、金属表面および誘電体表面を有する基板の金属表面上にブロッキング層を選択的に堆積させる方法を対象とする。方法は、基板をアルキンおよび窒素反応体に曝露して、金属表面上に選択的にブロッキング層を形成させることを含み、窒素反応体は、アジドまたはニトリルオキシドを含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、金属表面は、銅を含む。いくつかの実施形態では、金属表面は、本質的に銅からなる。
【0038】
いくつかの実施形態では、アルキンおよび窒素反応体を基板に同時に曝露させる。いくつかの実施形態では、曝露は、基板のアルキンおよび窒素反応体の両方を含む溶液への液相曝露によって行なわれる。いくつかの実施形態では、曝露は、基板のアルキンおよび窒素反応体の両方を含むガスへの気相曝露によって行なわれる。
【0039】
いくつかの実施形態では、アルキンおよび窒素反応体は、順次基板に曝露される。いくつかの実施形態では、アルキンが、最初に基板に曝露される。いくつかの実施形態では、窒素反応体が、最初に基板に曝露される。いくつかの実施形態では、曝露は、基板のアルキンまたは窒素反応体のいずれかを含む溶液への液相曝露によって行なわれる。いくつかの実施形態では、曝露は、基板のアルキンまたは窒素反応体のいずれかを含むガスへの気相曝露によって行なわれる。いくつかの実施形態では、一方の曝露が、液相中であり、もう一方が気相中である。いくつかの実施形態では、基板は、前の反応体のパージ(気相)または洗浄(液相)をしてから他の反応体に曝露する。
【0040】
いくつかの実施形態では、アルキンは、2つ以上のアルキン部分を含む。いくつかの実施形態では、アルキンは、2つまたは3つまたは4つ以上のアルキン部分を含む。いくつかの実施形態では、アルキンは、一般式SiR4(式中、各Rは、それぞれ独立にC1-C18アルキル、アリール、またはアルキニル基から選択され、ただし少なくとも1つのRは、アルキニルである)を有する少なくとも1種の化合物を含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、アルキンは、1種または複数の以下の化合物を含み、
【化1】
式中、各Rは、それぞれ独立にC1-C18アルキルまたはアリール基から選択される。
【0042】
いくつかの実施形態では、窒素反応体は、アジドを含む。いくつかの実施形態では、窒素反応体は、本質的にアジドからなる。この方法で使用する場合、用語「本質的にアジドからなる」は、窒素反応体の反応性成分(例えば、不活性成分を含まない)が、分子に基づいて、約95%、98%または99%以上アジドであることを表す。いくつかの実施形態では、窒素反応体は、ニトリルオキシドを含む。いくつかの実施形態では、窒素反応体は、本質的にニトリルオキシドからなる。この方法で使用する場合、用語「本質的にニトリルオキシドからなる」は、窒素反応体の反応性成分(例えば、不活性成分を含まない)が、分子に基づいて、約95%、98%または99%以上ニトリルオキシドであることを表す。いくつかの実施形態では、窒素反応体は、実質的にニトリルオキシドを含まない。この方法で使用する場合、用語「実質的にニトリルオキシドを含まない」は、窒素反応体が、分子に基づいて、約5%、2%または1%以下でニトリルオキシドを有することを表す。
【0043】
いくつかの実施形態では、アジドは、2つ以上のアジド部分を含む。いくつかの実施形態では、アジドは、2つまたは3つまたは4つ以上のアジド部分を含む。いくつかの実施形態では、アジドは、一般式SiR4(式中、各Rは、それぞれ独立にC1-C18アルキル、アリール、またはアジド基から選択され、ただし少なくとも1つのRは、アジドである)を有する少なくとも1種の化合物を含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、アジドは、1つまたは複数の以下の化合物を含み、
【化2】
式中、各Rは、それぞれ独立にC1-C18アルキルまたはアリール基から選択される。
【0045】
いくつかの実施形態では、基板は、基板をアルキンまたは窒素反応体に曝露する前に浄化する。いくつかの実施形態では、基板をアルキンまたは窒素反応体に曝露する前に基板の金属表面のみを浄化する。いくつかの実施形態では、基板または基板の金属表面は、水素プラズマで浄化する。いくつかの実施形態では、水素プラズマは、導電結合プラズマ(CCP)である。いくつかの実施形態では、水素プラズマは、誘導結合プラズマ(ICP)である。いくつかの実施形態では、水素プラズマは、H2のプラズマを含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、誘電体層は、ブロッキング層の堆積後に誘電体表面上に選択的に堆積される。いくつかの実施形態では、誘電体層は、窒化ケイ素を含む。窒化ケイ素の堆積は、任意の適当なプロセスによって行なうことができる。適当なプロセスは、基板をハロゲン化ケイ素およびアンモニアに曝露することを含んでいてもよい。適当なハロゲン化ケイ素には、ジクロロシラン(DCS)、トリクロロシラン(TCS)、テトラクロロシラン(SiCl4)、テトラブロモシラン(SiBr4)、テトラヨードシラン(SiI4)、およびヘキサクロロジシラン(HCDS)が含まれるが、それだけには限定されない。
【0047】
いくつかの実施形態では、ブロッキング層を基板から除去する。ブロッキング層は、任意の適当な選択的エッチングプロセスによって除去することができる。適当な選択的エッチングプロセスには、酸素プラズマおよびフッ素プラズマの使用が含まれるが、それだけには限定されない。いくつかの実施形態では、ブロッキング層を除去するのに酸素プラズマを使用する場合、金属酸化物層が金属表面上に形成される。いくつかの実施形態では、金属表面上に形成した金属酸化物層は、還元プロセスの使用によって除去される。適当な還元プロセスには、水素またはアンモニアを含むプラズマおよび水素またはアンモニアを含む熱アニールの使用が含まれるが、それだけには限定されない。いくつかの実施形態では、酸素プラズマ、フッ素プラズマ、水素プラズマおよびアンモニアプラズマは、それぞれ独立に遠隔または内部で生成でき、導電結合または誘導結合させることができる。
【0048】
いくつかの実施形態では、窒化ケイ素層を堆積させた後、基板を酸素プラズマおよび水素プラズマに順次曝露することによってブロッキング層を除去し、基板をアルキンおよび窒素反応体に曝露して金属表面を選択的にブロックし、窒化ケイ素膜を誘電体表面上に選択的に堆積させる。ブロッキング層の除去、基板の曝露および窒化ケイ素膜の堆積は、所定の厚さの窒化ケイ素膜が形成されるまで繰り返すことができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、コバルト表面は、表面反応性が高められていることもあるし、または不活性になっていることもある。いくつかの実施形態では、コバルトは、エポキシドの存在下で触媒作用に関与して、新たに官能化された表面を形成することができる。新たに形成した表面は、さらなる処理に使用することができる。
【0050】
本開示の1つまたは複数の実施形態は、金属表面および誘電体表面を有する基板の金属表面上にブロッキング層を選択的に堆積させる方法を対象とする。方法は、基板をエポキシドに曝露して、ブロッキング層を選択的に金属表面上に形成することを含む。いくつかの実施形態では、金属表面は、コバルトを含む。いくつかの実施形態では、金属表面は、本質的にコバルトからなる。
【0051】
いくつかの実施形態では、曝露は、基板のエポキシドを含む溶液への液相曝露によって行なわれる。いくつかの実施形態では、曝露は、基板のエポキシドを含むガスへの気相曝露によって行なわれる。
【0052】
いくつかの実施形態では、エポキシドは、2つ以上のエポキシド部分を含む。いくつかの実施形態では、エポキシドは置換されている。いくつかの実施形態では、エポキシドは、2つまたは3つまたは4つ以上のエポキシド部分を含む。いくつかの実施形態では、エポキシドは、1つまたは複数の以下の化合物を含み、
【0053】
【化3】
式中、Rは、それぞれ独立にC1-C4アルキル基から選択される。
【0054】
いくつかの実施形態では、エポキシドは、それぞれが基板表面と反応する2つ以上のエポキシド部分を含む。いくつかの実施形態では、エポキシドは、その一方のみが基板表面と反応する2つ以上のエポキシド部分を含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、基板をエポキシドに曝露する前に、基板を浄化する。いくつかの実施形態では、基板をエポキシドに曝露する前に、基板の金属表面のみを浄化する。いくつかの実施形態では、基板または基板の金属表面は、水素プラズマで浄化する。いくつかの実施形態では、水素プラズマは、導電結合プラズマ(CCP)である。いくつかの実施形態では、水素プラズマは、誘導結合プラズマ(ICP)である。いくつかの実施形態では、水素プラズマは、H2のプラズマを含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、誘電体層は、ブロッキング層の堆積後に誘電体表面上に選択的に堆積される。いくつかの実施形態では、誘電体層は、窒化ケイ素を含む。窒化ケイ素の堆積は、任意の適当なプロセスによって行なうことができる。適当なプロセスは、基板をハロゲン化ケイ素およびアンモニアに曝露することを含んでいてもよい。適当なハロゲン化ケイ素には、ジクロロシラン(DCS)、トリクロロシラン(TCS)、テトラクロロシラン(SiCl4)、テトラブロモシラン(SiBr4)、テトラヨードシラン(SiI4)、およびヘキサクロロジシラン(HCDS)が含まれるが、それだけには限定されない。
【0057】
いくつかの実施形態では、ブロッキング層を基板から除去する。ブロッキング層は、任意の適当な選択的エッチングプロセスによって除去することができる。適当な選択的エッチングプロセスには、酸素プラズマおよびフッ素プラズマの使用が含まれるが、それだけには限定されない。いくつかの実施形態では、ブロッキング層を除去するのに酸素プラズマを使用する場合、金属酸化物層が金属表面上に形成される。いくつかの実施形態では、金属表面上に形成した金属酸化物層は、還元プロセスの使用によって除去される。適当な還元プロセスには、水素またはアンモニアを含むプラズマおよび水素またはアンモニアを含む熱アニールの使用が含まれるが、それだけには限定されない。いくつかの実施形態では、酸素プラズマ、フッ素プラズマ、水素プラズマおよびアンモニアプラズマは、それぞれ独立に遠隔または内部で生成でき、導電結合または誘導結合させることができる。
【0058】
気相ALD条件下では、表面Si-OH基はSi-Clと反応しないので、ハロゲン化シリル前駆体は、一般に、SiO2表面上で化学吸着しない。例えば、ALD SiO2膜は、通常のALD条件下でSiCl4/H2Oプロセスから形成されない。しかしながら、本発明者らは、チタン前駆体をALDスキーム(SiCl4/H2O/TiCl4/H2O)に加えることにより、TixSiyOz膜の形成を得られることを見出した。
【0059】
理論に束縛されるものではないが、SiよりもTiの電気陰性度が低く、Ti-OHはSi-OHよりもSi-Clに対する反応性が高いので、Si-OHはSi-Clと反応しないが、Ti-OHはSi-Clと反応すると考えられる。いくつかの実施形態では、この反応性の違いは、SiO2ではなく、TiNをブロックするために使用される。
【0060】
TiN表面は、空気に曝露されると酸化し、表面は、Ti-OH基を有することになる。空気に曝露されたTiNおよびSiO2表面にRSiCl3(SAM)をパルスすると、Si-Cl結合は、表面Ti-OHと反応するが、Si-OHとは反応しない。
【0061】
本開示のいくつかの実施形態は、気相および/または液相中で、トリクロロシリル炭化水素化合物によってTiN、W、Cu、またはCoをブロッキングする方法を対象とする。いくつかの実施形態では、一般式SiX3R(式中、Xは、ハロゲンであり、Rは、C1-C18アルキル、アリールおよびアルキルアミンである)を有する化合物は、TiN、W、CuまたはCo表面をブロックするのに使用される。
【0062】
本開示の1つまたは複数の実施形態は、金属表面および誘電体表面を有する基板の金属表面上にブロッキング層を選択的に堆積させる方法を対象とする。方法は、基板をトリハロシリル炭化水素に曝露して、金属表面上にブロッキング層を選択的に形成することを含み、トリハロシリル炭化水素は、一般式SiX3R(式中、Rは、C1-C18アルキル、アリール、またはアルキルアミノである)を有する少なくとも1種の化合物を含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、トリハロシリル炭化水素への曝露は、基板のトリハロシリル炭化水素を含む溶液への液相曝露によって行なわれる。いくつかの実施形態では、トリハロシリル炭化水素への曝露は、基板のトリハロシリル炭化水素を含むガスへの気相曝露によって行なわれる。
【0064】
いくつかの実施形態では、トリハロシリル炭化水素は、1種または複数の以下の化合物を含む。
【化4】
【0065】
いくつかの実施形態では、R1は、任意のC1-C18アルキル、アリール、アルキルアミノまたはベンジルである。
【0066】
いくつかの実施形態では、トリハロシリル炭化水素は、一般式SiX3R(式中、Rは、C1-C18アルキル、アリール、またはアルキルアミノである)を有する少なくとも1種の化合物を含む。この関連で使用する場合、「アルキルアミノ」は、アルキル置換基を有するアミノ基を示す。別の言い方では、アルキルアミノ置換基は、一般式-NR2(式中、各Rは、それぞれ独立にH、C1-C6アルキルまたはアリール)を有する。例えば、-N(CH3)2および-N(CH2CH3)2である。
【0067】
いくつかの実施形態では、基板をトリハロシリル炭化水素に曝露する前に、基板は、空気に曝露される。いくつかの実施形態では、基板をトリハロシリル炭化水素に曝露する前に、基板の金属表面のみが、空気に曝露される。
【実施例】
【0068】
ODTS(オクタデシルトリクロロシラン)によるTiN表面のブロッキング
【0069】
室温で一定期間、ODTSをトルエン中に溶解させ、クーポンを溶液に浸漬した。浸漬後、試料をトルエンで洗浄し、窒素で乾燥させた。水接触角(WCA)を測定することによって、SAM形成をモニターした。1秒の浸漬で、SAM形成は、TiNで飽和するが、SiO2ではしない。浸漬時間が増加すると、TiNのWCAは、一定のままであるが、SiO2のWCAは増大する。
【0070】
低温ALD SiONを、SAM処理基板上に堆積させて、選択的な誘電体堆積を評価した。基板を200℃で保持し、ヘキサクロロジシラン(HCDSO)およびNH3の交互パルスを行なった。楕円偏光法によってSiONの膜厚を測定した。150サイクルの後、約5回選択性を観察した。サイクル数の増加と共に選択性が低下した。
【0071】
OTS(オクチルトリシラン)によるTiN表面のブロッキング
【0072】
室温で一定期間、OTSをトルエン中に溶解させ、クーポンを溶液に浸漬した。浸漬後、試料をトルエンで洗浄し、窒素で乾燥させた。水接触角(WCA)を測定することによって、SAM形成をモニターした。WCAの変化は、ODTS実験と同様の傾向を示した。
【0073】
種々の基板上に堆積したSAMの熱安定性を、WCA測定によって評価した。OTS SAMを液相および気相中に堆積させた。SAMを堆積させたクーポンを、200℃~350℃の温度で1時間アニールし、アニーリングの前後にWCAを測定した。TiNおよびW上のSAMは、250℃まで安定であるが、それより高いと劣化することが分かった。対照的に、SiO2上のSAMは、350℃以上で安定である。気相SAM堆積は、液相中よりもTiNとSiO2の間でより高いWCA変化を達成するためのより高い柔軟性が得られた。
SAMの化学安定性は、SAMを堆積させたクーポンを、SiON堆積で使用した前駆体(HCDSOおよびNH3)下200℃で1時間アニーリングすることによって評価した。SAMは200℃で安定であるが、ALD前駆体下では劣化が若干あった。
【0074】
方法の1つまたは複数の実施形態は、原子層堆積(ALD)プロセスを用いてブロッキング層を提供する。時間領域ALDプロセスでは、各反応性化合物への曝露は、各化合物が基板表面上に付着および/または反応し、次いで処理チャンバからパージされるように、時間遅延によって分離される。反応性ガスは、後続曝露の間に処理チャンバをパージすることにより、混合が防止される。
【0075】
空間ALDプロセスでは、反応性ガスは、処理チャンバ内で異なる処理領域に流れる。異なる処理領域は、反応性ガスが混合しないように、隣接する処理領域から分離されている。基板は、処理領域間を移動して、基板を処理ガスに個別に曝露することができる。基板の移動中、基板表面の異なる部分、または基板表面の材料が、2つ以上の反応性化合物に曝露されるため、基板上の任意の所与の点が、実質的に同時に2つ以上の反応性化合物に曝露されないようにする。処理チャンバ内のガスの拡散により、基板のほんの一部が複数の反応性ガスに同時に曝露される可能性があり、特に指定がない限り、同時曝露は意図されていないこと、当業者におかれては理解されたい。
【0076】
時間領域ALDプロセスの一態様では、第1の反応性ガス(すなわち、第1の前駆体または化合物A)は、反応ゾーンにパルスされ、第1の時間遅延が続く。第2の前駆体または化合物Bは、反応ゾーンにパルスされ、第2の時間遅延が続く。各時間遅延の間、アルゴンなどのパージガスが、処理チャンバに導入されて、反応ゾーンをパージし、そうでなければ別の方法で反応ゾーンから残留反応性化合物または反応生成物または副生成物を除去する。あるいは、パージガスは、反応性化合物のパルス間の時間遅延中はパージガスのみが流れるように、堆積プロセス全体にわたって連続的に流れていてもよい。反応性化合物は、基板表面上に所定の膜または膜厚が形成されるまで、交互にパルスされる。どちらのシナリオでも、化合物A、パージガス、化合物BおよびパージガスをパルスするALDプロセスは、サイクルである。サイクルは、化合物Aまたは化合物Bのいずれかで開始し、所定の厚さの膜が得られるまでサイクルのそれぞれの順番を継続することができる。
【0077】
空間ALDプロセスの一態様では、第1の反応性ガスおよび第2の反応性ガスは、同時に反応ゾーンに送られるが、不活性ガスカーテンおよび/または真空カーテンによって分離される。ガスカーテンは、処理チャンバへの不活性ガス流と処理チャンバからの真空流の組み合わせであってよい。基板は、基板上の任意の所与の点が第1の反応性ガスおよび第2の反応性ガスに曝露されるように、ガス送出装置に対して移動する。
【0078】
「パルス」または「ドーズ(dose)」は、本明細書では、プロセスチャンバに断続的または非連続的に導入される一定量の原料ガスを意味する。各パルス内の個々の化合物の量は、パルスの持続時間に応じて、時間が経つにつれて変化することがある。個々のプロセスガスには、単一化合物または2つ以上の化合物の混合物/組み合わせが含まれていてよい。
【0079】
各パルス/ドーズの持続時間は、可変であり、例えば、処理チャンバの体積容量ならびにそれに結合した真空システムの体積容量に適応するように調整してもよい。さらに、プロセスガスのドーズ時間は、プロセスガスの流量、プロセスガスの温度、制御バルブの種類、使用されるプロセスチャンバの種類、ならびに基板表面に吸着するためのプロセスガスの成分の能力に応じて異なることがある。ドーズ時間も、形成される層のタイプと形成されるデバイスの形状寸法に基づいて異なることがある。ドーズ時間は、基板の実質的に全表面上に吸着/化学吸着し、その上にプロセスガス成分の層を形成するのに十分な量の化合物を供給するのに十分な長さでなければならない。
【0080】
上述の処理方法の実施形態は、反応性ガスの2つのパルスのみを含むが、これは単に例示的なものであって、プロセスガスの追加のパルスを使用してもよいことを理解されたい。パルスは、その全体または一部を繰り返すことができる。サイクルは、所定の厚さのブロッキング層を形成するために繰り返すことができる。いくつかの実施形態では、サイクルは、厚さが約5Å~約40Åの範囲、または約10Å~約30Åの範囲、または約15Å~約20Åの範囲のブロッキング層を形成するために繰り返される。
【0081】
所定の厚さが達成された後、方法は、任意でさらなる処理(例えば、誘電体膜のバルク堆積)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、さらなる処理はALDプロセスであってよい。例えば、いくつかの実施形態では、ALDプロセスは、目的の厚さまでの窒化ケイ素層のバルク堆積のために行なってもよい。
【0082】
本明細書における開示が、特定の実施形態を参照して説明されたが、これらの実施形態は本開示の原理および応用を例示するものにすぎないと理解すべきである。本開示の方法および装置に種々の改変および変更が、本開示の精神および範囲から逸脱することなくなされ得ることは、当業者に明らかである。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲とそれらの同等物の範囲内の改変および変更を含むことを意図する。
【0083】
1.ブロッキング層を選択的に堆積させる方法であって、金属表面および誘電体表面を有する基板をシランに曝露して、金属表面上に選択的にブロッキング層を形成することを含み、シランが、一般式SiH3R(式中、Rは、C4-C20アルキル、パーフルオロアルキル、アルケニルまたはアルキニル基から選択される)を有する少なくとも1種の化合物を含む、方法。
2.シランがドデシルシラン(C12H25SiH3)を含む、1に記載の方法。
3.誘電体表面上に窒化ケイ素層を選択的に堆積させることをさらに含む、1に記載の方法。
4.基板のシランへの曝露と窒化ケイ素層の堆積を、窒化ケイ素層が所定の厚さに達するまで繰り返すことをさらに含む、3に記載の方法。
5.ブロッキング層を選択的に堆積させる方法であって、金属表面および誘電体表面を有する基板をアルキンおよび窒素反応体に曝露して、金属表面上に選択的にブロッキング層を形成することを含み、窒素反応体が、アジドまたはニトリルオキシドを含む、方法。
6.金属表面が銅を含む、5に記載の方法。
7.アルキンが、2つ以上のアルキン部分を含む、5に記載の方法。
8.アルキンが、一般式SiR4(式中、各Rは、それぞれ独立にC1-C18アルキル、アリール、またはアルキニル基から選択され、ただし少なくとも1つのRは、アルキニルである)を有する少なくとも1種の化合物を含む、5に記載の方法。
9.アジドが、一般式SiR4(式中、各Rは、それぞれ独立にC1-C18アルキル、アリール、またはアジド基から選択され、ただし少なくとも1つのRは、アジドである)を有する少なくとも1種の化合物を含む、5に記載の方法。
10.誘電体表面上に窒化ケイ素層を選択的に堆積させることをさらに含む、5に記載の方法。
11.繰り返しブロッキング層を除去し、基板をアルキンおよび窒素反応体に曝露して金属表面を選択的にブロックし、窒化ケイ素膜を誘電体表面上に選択的に堆積させて、所定の厚さの窒化ケイ素膜を形成することをさらに含み、基板を酸素プラズマおよび水素プラズマに順次曝露することによって基板からブロッキング層を除去する、10に記載の方法。
12.ブロッキング層を選択的に堆積させる方法であって、金属表面および誘電体表面を有する基板をエポキシドに曝露して、金属表面上にブロッキング層を選択的に形成することを含む、方法。
13.金属表面がコバルトを含む、12に記載の方法。
14.エポキシドが置換されている、12に記載の方法。
15.エポキシドが1つを超えるエポキシド部分を含有する、12に記載の方法。