(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】オレフィン系重合体
(51)【国際特許分類】
C08F 210/16 20060101AFI20240122BHJP
C08F 4/6592 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
C08F210/16
C08F4/6592
(21)【出願番号】P 2022521473
(86)(22)【出願日】2021-07-02
(86)【国際出願番号】 KR2021008450
(87)【国際公開番号】W WO2022005257
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2022-04-08
(31)【優先権主張番号】10-2020-0082135
(32)【優先日】2020-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】イン・スン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ユン・ウ
(72)【発明者】
【氏名】サン・ウン・パク
(72)【発明者】
【氏名】キ・ウン・キム
(72)【発明者】
【氏名】サン・ウク・ハン
【審査官】谷合 正光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/132475(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/125050(WO,A1)
【文献】特表2010-514836(JP,A)
【文献】特表2008-527050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 210/16
C08F 4/6592
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)~(5)の要件を満たし、エチレンと1-ブテンとの共重合体である、オレフィン系重合体。
(1)溶融指数(MI、190℃、2.16kgの荷重条件):0.1~10.0g/10分;
(2)密度(d):0.875~0.895g/cc;
(3)示差走査熱量計精密測定法(SSA)で測定時に、0.5J/g≦dH(100)≦3.0J/gであり、1.0J/g≦dH(90)≦6.0J/g;
(4)示差走査熱量計精密測定法(SSA)で測定時に、15≦T(90)-T(50)≦30であり、50℃≦T(50)≦75℃;
(5)示差走査熱量計(DSC)で測定した溶融点(Tm)が55℃≦Tm≦80℃;
ここで、T(50)およびT(90)は、それぞれ、前記示差走査熱量計精密測定法(SSA)の測定結果で温度-熱容量曲線を各区間別に積分して全体の熱容量に対して各区間の熱容量を分画化した時に、全体の熱容量に対して、それぞれ、50%および90%が溶融する温度であり、dH(90)は、90℃以上での融解エンタルピーの総和であり、dH(100)は、100℃以上での融解エンタルピーの総和を示す。
【請求項2】
さらに、(6)示差走査熱量計(DSC)で測定したガラス転移温度(Tg)が-70℃≦Tg≦-43℃である要件を満たす、請求項1に記載のオレフィン系重合体。
【請求項3】
さらに、(7)重量平均分子量(Mw)が10,000g/mol~500,000g/molである要件を満たす、請求項1に記載のオレフィン系重合体。
【請求項4】
さらに、(8)分子量分布(MWD、molecular weight distribution)が0.1~6.0である要件を満たす、請求項1に記載のオレフィン系重合体。
【請求項5】
さらに、(9)溶融流動率比(MFRR)が5~10である要件を満たす、請求項1に記載のオレフィン系重合体。
【請求項6】
前記溶融指数(MI)が0.3g/10分~9g/10分である、請求項1に記載のオレフィン系重合体。
【請求項7】
前記T(90)-T(50)が16≦T(90)-T(50)≦25であり、52℃≦T(50)≦74℃である要件を満たす、請求項1に記載のオレフィン系重合体。
【請求項8】
前記dH(100)およびdH(90)が0.9≦dH(100)≦2.0であり、1.5≦dH(90)≦5.0である要件を満たす、請求項1に記載のオレフィン系重合体。
【請求項9】
前記溶融点(Tm)が60℃≦Tm≦80℃である要件を満たす、請求項1に記載のオレフィン系重合体。
【請求項10】
下記化学式1の遷移金属化合物を含むオレフィン重合用触媒組成物の存在下で、水素気体を投入してオレフィン系単量体を重合するステップを含む、請求項1に記載のオレフィン系重合体の製造方法。
【化1】
前記化学式1中、
R
1は、互いに同一であるか異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素、炭素数1~20のアルキル、炭素数2~20のアルケニル、アリール、シリル、アルキルアリール、アリールアルキル、またはヒドロカルビルで置換された第4族金属のメタロイド基であり、前記二つのR
1は、炭素数1~20のアルキルまたは炭素数6~20のアリール基を含むアルキリジン基により互いに連結されて環を形成してもよく;
R
2は、互いに同一であるか異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1~20のアルキル;アリール;アルコキシ;アリールオキシ;アミド基であり、前記R
2のうち2個以上は、互いに連結されて脂肪族環または芳香族環を形成してもよく;
R
3は、互いに同一であるか異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1~20のアルキル;またはアリール基で置換または非置換の窒素を含む脂肪族または芳香族環であ
り;
Mは、第4族遷移金属であり;
Q
1およびQ
2は、それぞれ独立して、ハロゲン;炭素数1~20のアルキル;アルケニル;アリール;アルキルアリール;アリールアルキル;炭素数1~20のアルキルアミド;またはアリールアミドである。
【請求項11】
前記水素気体の投入量は、20~40sccmである、請求項10に記載のオレフィン系重合体の製造方法。
【請求項12】
前記オレフィン重合用触媒組成物の存在下で水素を投入し、連続撹拌槽型反応器(Continuous Stirred Tank Reactor)を用いた連続溶液重合反応により製造される、請求項10に記載のオレフィン系重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年7月3日付けの韓国特許出願第10-2020-0082135号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、オレフィン系重合体に関し、具体的には、高結晶性領域が導入されて高い機械的剛性を示す低密度オレフィン系重合体に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリオレフィンは、成形性、耐熱性、機械的特性、衛生品質、耐水蒸気透過性および成形品の外観特性に優れ、押出成形品、ブロー成形品および射出成形品用として広く使用されている。しかし、ポリオレフィン、特に、ポリエチレンは、分子内に極性基がないため、ナイロンなどの極性樹脂との相溶性が低く、極性樹脂および金属との接着性が低い問題がある。結果、ポリオレフィンを極性樹脂または金属とブレンドするか、またはこれらの材料と積層して使用することが困難であった。また、ポリオレフィンの成形品は、表面親水性および帯電防止性が低い問題がある。
【0004】
このような問題を解決し、極性材料に対する親和性を高めるために、ラジカル重合によりポリオレフィン上に極性基含有単量体をグラフティングする方法が広く使用されていた。しかし、この方法は、グラフト反応の途中にポリオレフィンの分子内架橋および分子鎖の切断が生じ、グラフト重合体と極性樹脂の粘度バランスが良好でなく、混和性が低い問題があった。また、分子内の架橋によって生成されたゲル成分または分子鎖の切断によって生成された異物によって成形品の外観特性が低い問題があった。
【0005】
また、エチレン単独重合体、エチレン/α-オレフィン共重合体、プロピレン単独重合体またはプロピレン/α-オレフィン共重合体などのオレフィン重合体を製造する方法として、チタン触媒またはバナジウム触媒などの金属触媒の下で極性の単量体を共重合する方法が用いられていた。しかし、前記のような金属触媒を使用して極性単量体を共重合する場合、分子量分布または組成物分布が広く、重合活性が低い問題がある。
【0006】
また、他の方法として、二塩化ジルコノセン(zircononocene dichloride)などの遷移金属化合物と有機アルミニウムオキシ化合物(アルミノキサン)からなるメタロセン触媒の存在下で重合する方法が知られている。メタロセン触媒を使用する場合、高分子量のオレフィン重合体が高活性で得られ、また、生成されるオレフィン重合体は、分子量分布が狭く組成分布が狭い。
【0007】
また、非架橋シクロペンタジエニル基、架橋または非架橋ビスインデニル基、またはエチレン架橋非置換インデニル基/フルオレニル基のリガンドを有するメタロセン化合物を触媒として使用して、極性基を含有するポリオレフィンを製造する方法としては、メタロセン触媒を使用する方法も知られている。しかし、これらの方法は、重合活性が非常に低い欠点がある。そのため、保護基により極性基を保護する方法が実施されているが、保護基を導入する場合、反応後にこの保護基をまた除去する必要があるため、工程が複雑になる問題がある。
【0008】
アンサ-メタロセン(ansa-metallocene)化合物は、架橋基によって互いに連結された二つのリガンドを含む有機金属化合物であり、前記架橋基(bridge group)により、リガンドの回転が防止され、メタルセンターの活性および構造が決定される。
【0009】
このようなアンサ-メタロセン化合物は、オレフィン系ホモポリマーまたはコポリマーの製造に触媒として使用されている。特に、シクロペンタジエニル(cyclopentadienyl)-フルオレニル(fluorenyl)リガンドを含むアンサ-メタロセン化合物は、高分子量のポリエチレンを製造することができ、これにより、ポリプロピレンの微細構造を制御することができると知られている。
【0010】
また、インデニル(indenyl)リガンドを含むアンサ-メタロセン化合物は、活性に優れ、立体規則性が向上したポリオレフィンを製造することができると知られている。
【0011】
このように、より高い活性を有し、且つオレフィン系高分子の微細構造を制御することができるアンサ-メタロセン化合物に関する様々な研究が行われているが、その程度がまだ十分でない状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、遷移金属化合物触媒を用いて水素気体を投入し、オレフィン系単量体を重合して得られた、高結晶性領域が導入されて高い機械的剛性を示す低密度オレフィン系重合体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明は、下記(1)~(5)の要件を満たすオレフィン系重合体を提供する。
(1)溶融指数(MI、190℃、2.16kgの荷重条件):0.1~10.0g/10分;
(2)密度(d):0.875~0.895g/cc;
(3)示差走査熱量計精密測定法(SSA)で測定時に、0.5J/g≦dH(100)≦3.0J/gであり、1.0J/g≦dH(90)≦6.0J/g;
(4)示差走査熱量計精密測定法(SSA)で測定時に、15≦T(90)-T(50)≦30であり、50℃≦T(50)≦75℃;
(5)示差走査熱量計(DSC)で測定した溶融点(Tm)が55℃≦Tm≦80℃;
ここで、T(50)およびT(90)は、それぞれ、前記示差走査熱量計精密測定法(SSA)の測定結果で温度-熱容量曲線を分画化した時に、それぞれ、50%および90%が溶融する温度であり、dH(90)は、90℃以上での融解エンタルピーであり、dH(100)は、100℃以上での融解エンタルピーを示す。
【発明の効果】
【0014】
本発明によるオレフィン系重合体は、低密度オレフィン系重合体であり、高結晶性領域が導入されて高い機械的剛性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例1~6の重合体および比較例1および2の重合体の密度に対するT(50)のグラフである。
【
図2】実施例5および比較例2の重合体に対して示差走査熱量計精密測定法(SSA)で測定した結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に関する理解に資するため、本発明をより詳細に説明する。
【0017】
本明細書および特許請求の範囲にて使用されている用語や単語は、通常的または辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0018】
本明細書において、用語「重合体」とは、同一であるか相違する類型の単量体の重合により製造される重合体化合物を意味する。「重合体」という総称は、「単独重合体」、「共重合体」、「三元共重合体」だけでなく、「混成重合体」という用語を含む。また、前記「混成重合体」とは、二つ以上の相違する類型の単量体の重合により製造された重合体を意味する。「混成重合体」という総称は、(二つの相違する単量体から製造された重合体を指すために通常使用される)「共重合体」という用語だけでなく、(3種類の相違する類型の単量体から製造された重合体を指すために通常使用される)「三元共重合体」という用語を含む。これは、4種類以上の類型の単量体の重合により製造された重合体を含む。
【0019】
本発明によるオレフィン系重合体は、下記(1)~(5)の要件を満たすものである。
【0020】
(1)溶融指数(MI、190℃、2.16kgの荷重条件):0.1~10.0g/10分;(2)密度(d):0.875~0.895g/cc;(3)示差走査熱量計精密測定法(SSA)で測定時に、0.5J/g≦dH(100)≦3.0J/gであり、1.0J/g≦dH(90)≦6.0J/g;(4)示差走査熱量計精密測定法(SSA)で測定時に、15≦T(90)-T(50)≦30であり、50℃≦T(50)≦75℃;(5)示差走査熱量計(DSC)で測定した溶融点(Tm)が55℃≦Tm≦80℃。
【0021】
前記T(50)およびT(90)は、それぞれ、前記示差走査熱量計精密測定法(SSA)の測定結果で、温度-熱容量曲線を分画化した時に、それぞれ、50%および90%が溶融する温度であり、dH(90)は、90℃以上での融解エンタルピーであり、dH(100)は、100℃以上での融解エンタルピーを示す。
【0022】
本発明によるオレフィン系重合体は、低密度であるとともに、通常の従来のオレフィン系重合体と比較して、高結晶性領域が導入されて、同一水準の密度および溶融指数(Melt Index、MI、190℃、2.16kgの荷重条件)を有する時に、より高い引張強度、曲げ弾性率および硬度を示す。本発明によるオレフィン系重合体は、オレフィン重合用触媒組成物の存在下で、水素気体を投入し、オレフィン系単量体を重合するステップを含む製造方法により製造されたものであり、重合時に水素気体の投入によって高結晶性領域が導入されて優れた機械的剛性を示す。
【0023】
前記溶融指数(MI)は、オレフィン系重合体を重合する過程で使用される触媒の共単量体に対する使用量を調節することで調節されることができ、オレフィン系重合体の機械的物性および衝撃強度、また、成形性に影響を及ぼす。本明細書において、前記溶融指数は、0.875g/cc~0.895g/ccの低密度条件で、ASTM D1238に準じて、190℃、2.16kgの荷重条件で測定したものであり、0.1g/10分~10g/10分を示し、具体的には0.3g/10分~9g/10分、より具体的には0.4g/10分~7g/10分であることができる。
【0024】
一方、前記密度は、0.875g/cc~0.895g/ccであり、具体的には0.876g/cc~0.892g/ccであることができ、より具体的には0.878g/cc~0.891g/ccであることができる。
【0025】
通常、オレフィン系重合体の密度は、重合時に使用される単量体の種類と含量、重合度などの影響を受け、共重合体の場合、共単量体の含量による影響が大きい。本発明のオレフィン系重合体は、特徴的構造を有する遷移金属化合物を含む触媒組成物を使用して重合されたものであり、多量の共単量体の導入が可能であり、本発明のオレフィン系重合体は、上記のような範囲の低密度を有することができる。
【0026】
また、前記オレフィン系重合体は、(3)示差走査熱量計精密測定法(SSA)で測定時に、0.5J/g≦dH(100)≦3.0J/gであり、1.0J/g≦dH(90)≦6.0J/gである要件を満たし、具体的には0.9J/g≦dH(100)≦2.0J/gであり、1.5J/g≦dH(90)≦5.0J/gである要件を満たすことができ、より具体的には0.95J/g≦dH(100)≦1.9J/gであり、1.6J/g≦dH(90)≦4.5J/gである要件を満たすことができる。
【0027】
また、前記オレフィン系重合体は、(4)示差走査熱量計精密測定法(SSA)で測定時に、15≦T(90)-T(50)≦30であり、50℃≦T(50)≦75℃である要件を満たし、具体的には16≦T(90)-T(50)≦25であり、52℃≦T(50)≦74℃である要件を満たすことができ、より具体的には17≦T(90)-T(50)≦25であり、54℃≦T(50)≦73℃である要件を満たすことができる。
【0028】
また、前記オレフィン系重合体は、(5)示差走査熱量計(DSC)で測定した溶融点(Tm)が55℃≦Tm≦80℃である要件を満たし、具体的には60℃≦Tm≦80℃である要件を満たすことができ、より具体的には65℃≦Tm≦75℃である要件を満たすことができる。
【0029】
また、前記オレフィン系重合体は、さらに、(6)示差走査熱量計(DSC)で測定したガラス転移温度(Tg)が-70℃≦Tg≦-43℃である要件を満たすことができ、具体的には、前記ガラス転移温度(Tg)は、-60℃≦Tg≦-43℃、より具体的には-51℃≦Tg≦-43℃であることができる。
【0030】
一般的に、示差走査熱量計(DSC)を用いた溶融温度(Tm)の測定は、溶融温度(Tm)より略30℃ほど高い温度まで一定の速度で加熱した後、ガラス転移温度(Tg)より略30℃ほど低い温度まで一定の速度で冷却する1回目のサイクルの後、二回目のサイクルで標準的な溶融温度(Tm)のピークを得る。前記示差走査熱量計精密測定法(SSA)による測定は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、1回目のサイクルの後に溶融温度(Tm)のピーク直前の温度まで加熱し冷却する過程を経て、5℃程度温度を下げた温度まで加熱し冷却する過程を繰り返して施行することで、より精密な結晶情報を得る方法である(Eur.Polym.J.2015,65,132)。
【0031】
オレフィン系重合体に高結晶性領域が少量導入される場合、一般的な示差走査熱量計(DSC)を用いた溶融温度の測定時には示されず、前記示差走査熱量計精密測定法(SSA)により高温溶融ピークを測定することができる。
【0032】
また、本発明の一例によるオレフィン系重合体は、さらに、(7)重量平均分子量(Mw)が10,000g/mol~500,000g/molである要件を満たすことができ、具体的には、前記重量平均分子量(Mw)は、30,000g/mol~300,000g/mol、より具体的には50,000g/mol~200,000g/molであることができる。本発明において、重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography)により分析されるポリスチレン換算分子量である。
【0033】
また、本発明の一例によるオレフィン系重合体は、さらに、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)である(8)分子量分布(MWD;Molecular Weight Distribution)が0.1~6.0である要件を満たすことができ、前記分子量分布(MWD)は、具体的には1.0~4.0、より具体的には2.0~3.0であることができる。
【0034】
また、本発明の一例によるオレフィン系重合体は、さらに、(9)溶融流動率比(MFRR)が5~10である要件を満たすことができ、前記溶融流動率比は、具体的には6~9であることができ、より具体的には6~8であることができる。
【0035】
前記溶融流動率比(MFRR)は、MI10(荷重10kgおよび190℃下での溶融指数)をMI2.16(荷重2.16kgおよび190℃下での溶融指数)で除した比率を意味し、重合体の長側鎖(LCB)の個数の減少に伴い、前記MFRRが低い値を示すことができ、重合体の機械的物性が向上することができる。
【0036】
前記オレフィン系重合体は、オレフィン系単量体、具体的にはアルファ-オレフィン系単量体、環状オレフィン系単量体、ジエンオレフィン系単量体、トリエンオレフィン系単量体およびスチレン系単量体から選択されるいずれか一つの単独重合体であるかまたは2種以上の共重合体であることができる。より具体的には、前記オレフィン系重合体は、エチレンと、炭素数3~12のアルファ-オレフィンの共重合体または炭素数3~10のアルファ-オレフィンの共重合体であることができる。
【0037】
前記アルファ-オレフィン共単量体は、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-アイトセン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、エチリデンノルボルネン、フェニルノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4-ブタジエン、1,5-ペンタジエン、1,6-ヘキサジエン、スチレン、アルファ-メチルスチレン、ジビニルベンゼンおよび3-クロロメチルスチレンからなる群から選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合物を含むことができる。
【0038】
より具体的には、本発明の一例によるオレフィン共重合体は、エチレンとプロピレン、エチレンと1-ブテン、エチレンと1-ヘキセン、エチレンと4-メチル-1-ペンテンまたはエチレンと1-オクテンの共重合体であることができ、さらに具体的には、本発明の一例によるオレフィン共重合体は、エチレンと1-ブテンの共重合体であることができる。
【0039】
前記オレフィン系重合体がエチレンとアルファ-オレフィンの共重合体である場合、前記アルファ-オレフィンの量は、共重合体の全重量に対して90重量%以下、具体的には70重量%以下、より具体的には5重量%~60重量%であることができ、さらに具体的には10重量%~50重量%であることができる。前記アルファ-オレフィンが前記範囲で含まれる時に、上述の物性的特性が適切に実現されることができる。
【0040】
前記のような物性および構成的特徴を有する本発明の一実施形態によるオレフィン系重合体は、単一反応器で1種以上の遷移金属化合物を含むメタロセン触媒組成物の存在下で水素気体を投入し、オレフィン系単量体を重合する連続溶液重合反応により製造されることができる。これにより、本発明の一実施形態によるオレフィン系重合体は、重合体内の重合体を構成する単量体のいずれか一つの単量体由来の繰り返し単位が2個以上線状に連結されて構成されたブロックが形成されない。すなわち、本発明によるオレフィン系重合体は、ブロック共重合体(block copolymer)を含まず、ランダム共重合体(random copolymer)、交互共重合体(alternating copolymer)およびグラフト共重合体(graft copolymer)からなる群から選択されるものであることができ、より具体的には、ランダム共重合体であることができる。
【0041】
具体的には、本発明のオレフィン系共重合体は、下記化学式1の遷移金属化合物を含むオレフィン重合用触媒組成物の存在下で、水素気体を投入し、オレフィン系単量体を重合するステップを含む製造方法、例えば、下記化学式1の遷移金属化合物を含むオレフィン重合用触媒組成物の存在下で水素を投入して連続撹拌槽型反応器(Continuous Stirred Tank Reactor)を用いた連続溶液重合反応により製造されることができる。
【0042】
ただし、本発明の一実施形態によるオレフィン系重合体の製造において、下記化学式1の遷移金属化合物の構造の範囲を特定の開示形態に限定せず、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物もしくは代替物を含むものと理解すべきである。
【0043】
【0044】
前記化学式1中、
R1は、互いに同一であるか異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素、炭素数1~20のアルキル、炭素数2~20のアルケニル、アリール、シリル、アルキルアリール、アリールアルキル、またはヒドロカルビルで置換された第4族金属のメタロイド基であり、前記二つのR1は、炭素数1~20のアルキルまたは炭素数6~20のアリール基を含むアルキリジン基により互いに連結されて環を形成してもよく;
R2は、互いに同一であるか異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1~20のアルキル;アリール;アルコキシ;アリールオキシ;アミド基であり、前記R2のうち2個以上は、互いに連結されて脂肪族環または芳香族環を形成してもよく;
R3は、互いに同一であるか異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1~20のアルキル;またはアリール基で置換または非置換の窒素を含む脂肪族または芳香族環であり、前記置換基が複数個である場合には、前記置換基のうち2個以上の置換基が互いに連結されて脂肪族または芳香族環を形成してもよく;
Mは、第4族遷移金属であり;
Q1およびQ2は、それぞれ独立して、ハロゲン;炭素数1~20のアルキル;アルケニル;アリール;アルキルアリール;アリールアルキル;炭素数1~20のアルキルアミド;またはアリールアミドである。
【0045】
また、本発明の他の一例において、前記化学式1中、前記R1およびR2は、互いに同一であるか異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素;炭素数1~20のアルキル;アリール;またはシリルであってもよく、
R3は、互いに同一であるか異なっていてもよく、炭素数1~20のアルキル;炭素数2~20のアルケニル;アリール;アルキルアリール;アリールアルキル;炭素数1~20のアルコキシ;アリールオキシ;またはアミドであってもよく;前記R6のうち2個以上のR6は、互いに連結されて脂肪族または芳香族環を形成してもよく;
前記Q1およびQ2は、互いに同一であるか異なっていてもよく、それぞれ独立して、ハロゲン;炭素数1~20のアルキル;炭素数1~20のアルキルアミド;アリールアミドであってもよく、
Mは、第4族遷移金属であってもよい。
【0046】
前記化学式1で表される遷移金属化合物は、テトラヒドロキノリンが導入されたシクロペンタジエニリガンドによって金属サイトが連結されており、構造的にCp-M-N角度は狭く、モノマーが接近するQ1-M-Q2(Q3-M-Q4)角度は広く維持する特徴を有する。また、環状の結合により、Cp、テトラヒドロキノリン、窒素および金属サイトが順に連結されてより、より安定的かつ強固な五角形の環構造をなす。したがって、このような化合物をメチルアルミノキサンまたはB(C6F5)3のような助触媒と反応させて活性化してからオレフィン重合に適用する時に、高い重合温度でも高活性、高分子量および高空重合性などの特徴を有するオレフィン系重合体を重合することが可能である。
【0047】
本発明の一例において、前記水素気体の投入量は、反応系に投入されるオレフィン系単量体1重量部に対して、0.00005~0.001重量部であることができ、具体的には0.00008~0.0008重量部であることができ、より具体的には0.0001~0.0005重量部であることができる。また、本発明の一例において、前記オレフィン系重合体が連続溶液重合により重合される場合、前記水素気体は、反応系に投入されるオレフィン系単量体1kg/hに対して、16~35cc/min、具体的には18~31cc/min、より具体的には18~29cc/minの量で投入されることができる。
【0048】
また、本発明の他の一例において、前記オレフィン系重合体がエチレンとアルファ-オレフィンの共重合体である場合、前記水素気体は、エチレン1重量部に対して、0.00007~0.0008重量部、具体的には0.00008~0.0007重量部、より具体的には0.0001~0.0004重量部の量で投入されることができる。また、本発明の一例において、前記オレフィン系重合体がエチレンとアルファ-オレフィンの共重合体であり、連続溶液重合により重合される場合、前記水素気体は、反応系に投入されるエチレン1kg/hに対して、22~46cc/min、具体的には25~44cc/min、より具体的には25~40cc/minの量で投入されることができる。
【0049】
また、前記オレフィン系単量体を重合するステップで投入される水素気体の投入量は、20~40sccmであることができ、具体的には22~38sccmであることができ、より具体的には22~35sccmであることができる。前記水素気体の投入量は、エチレンが0.87kg/hの量で反応系に投入された時を基準としたときの量である。前記水素気体の投入量が化学式1の遷移金属化合物を含むオレフィン重合用触媒組成物の存在下で前記範囲を満たす場合、本発明の一例によるオレフィン系重合体の物性範囲の要件を満たすオレフィン系重合体が製造されることができる。
【0050】
本明細書で定義された各置換基について詳細に説明すると、以下のとおりである。
【0051】
本明細書に使用される用語「ヒドロカルビル(hydrocarbyl group)」は、他の言及がなければ、アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アルキルアリールまたはアリールアルキルなど、その構造に関係なく、炭素および水素のみからなる炭素数1~20の1価の炭化水素基を意味する。
【0052】
本明細書に使用される用語「ハロゲン」は、他の言及がなければ、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味する。
【0053】
本明細書に使用される用語「アルキル」は、他の言及がなければ、直鎖または分岐鎖の炭化水素基を意味する。
【0054】
本明細書に使用される用語「シクロアルキル」は、他の言及がなければシクロプロピルなどを含む環状アルキルを示す。
【0055】
本明細書に使用される用語「アルケニル」は、他の言及がなければ、直鎖または分岐鎖のアルケニル基を意味する。
【0056】
前記分岐鎖は、炭素数1~20のアルキル;炭素数2~20のアルケニル;炭素数6~20のアリール;炭素数7~20のアルキルアリール;または炭素数7~20のアリールアルキルであることができる。
【0057】
本明細書に使用される用語「アリール」は、他の言及がなければ、炭素数6~20の芳香族基を示し、具体的には、フェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、クリセニル、ピレニル、アントラセニル、ピリジル、ジメチルアニリニル、アニソリルなどがあるが、これらの例のみに限定されるものではない。
【0058】
前記アルキルアリール基は、前記アルキル基によって置換されたアリール基を意味する。
【0059】
前記アリールアルキル基は、前記アリール基によって置換されたアルキル基を意味する。
【0060】
前記環(またはヘテロ環基)は、炭素数5~20個の環原子を有し、1個以上のヘテロ原子を含む1価の脂肪族または芳香族の炭化水素基を意味し、単環または2以上の環の縮合環であることができる。また、前記ヘテロ環基は、アルキル基で置換されてもよく、非置換であってもよい。これらの例としては、インドリン、テトラヒドロキノリンなどが挙げられるが、本発明がこれらのみに限定されるものではない。
【0061】
前記アルキルアミノ基は、前記アルキル基によって置換されたアミノ基を意味し、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基などがあるが、これらの例のみに限定されるものではない。
【0062】
本発明の一実施形態によると、前記アリール基は、炭素数6~20であることが好ましく、具体的には、フェニル、ナフチル、アントラセニル、ピリジル、ジメチルアニリニル、アニソリルなどがあるが、これらの例のみに限定されるものではない。
【0063】
本明細書において、シリルは、炭素数1~20のアルキルで置換または非置換のシリルであってもよく、例えば、シリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリプロピルシリル、トリブチルシリル、トリヘキシルシリル、トリイソプロピルシリル、トリイソブチルシリル、トリエトキシシリル、トリフェニルシリル、トリス(トリメチルシリル)シリルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0064】
前記化学式1の化合物は、下記化学式1-1であることができ、これに限定されない。
【0065】
【0066】
その他にも、前記化学式1に定義された範囲で様々な構造を有する化合物であることができる。
【0067】
前記化学式1の遷移金属化合物は、触媒の構造的な特徴上、低密度のポリエチレンだけでなく、多量のアルファ-オレフィンが導入可能であることから、0.850g/cc~0.890g/cc水準の低密度ポリオレフィン共重合体の製造が可能である。
【0068】
前記化学式1の遷移金属化合物は、一例として、以下のような方法により製造されることができる。
【0069】
【0070】
前記反応式1中、R1~R3、M、Q1およびQ2は、前記化学式1で定義したとおりである。
【0071】
前記化学式1は、韓国特許公開第2007-0003071号に記載の方法にしたがって製造されることができ、前記特許文献の内容は、その全てが本明細書に組み込まれる。
【0072】
前記化学式1の遷移金属化合物は、その他に、下記化学式2、化学式3、および化学式4で表される助触媒化合物のうち1種以上をさらに含む組成物の形態であり、重合反応の触媒として使用されることができる。
【0073】
[化学式2]
-[Al(R4)-O]a-
【0074】
[化学式3]
A(R4)3
【0075】
[化学式4]
[L-H]+[W(D)4]-または[L]+[W(D)4]-
【0076】
前記化学式2~4中、
R4は、互いに同一であるか異なっていてもよく、それぞれ独立して、ハロゲン、炭素数1~20のヒドロカルビル、およびハロゲンで置換された炭素数1~20のヒドロカルビルからなる群から選択され、
Aは、アルミニウムまたはホウ素であり、
Dは、それぞれ独立して、1以上の水素原子が置換基で置換され得る炭素数6~20のアリールまたは炭素数1~20のアルキルであり、この際、前記置換基は、ハロゲン、炭素数1~20のヒドロカルビル、炭素数1~20のアルコキシおよび炭素数6~20のアリールオキシからなる群から選択される少なくともいずれか一つであり、
Hは、水素原子であり、
Lは、中性またはカチオン性ルイス塩基であり、
Wは、第13族元素であり、
aは、2以上の整数である。
【0077】
前記化学式2で表される化合物の例としては、メチルアルミノキサン(MAO)、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、ブチルアルミノキサンなどのアルキルアルミノキサンが挙げられ、また、前記アルキルアルミノキサンが2種以上混合された修飾されたアルキルアルミノキサンが挙げられ、具体的には、メチルアルミノキサン、修飾メチルアルミノキサン(MMAO)であることができる。
【0078】
前記化学式3で表される化合物の例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、ジメチルクロロアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-s-ブチルアルミニウム、トリシクロペンチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリイソペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、エチルジメチルアルミニウム、メチルジエチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ-p-トリルアルミニウム、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、トリメチルホウ素、トリエチルホウ素、トリイソブチルホウ素、トリプロピルホウ素、トリブチルホウ素などが含まれ、具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムから選択されることができる。
【0079】
前記化学式4で表される化合物の例としては、トリエチルアンモニウムテトラフェニルホウ素、トリブチルアンモニウムテトラフェニルホウ素、トリメチルアンモニウムテトラフェニルホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ホウ素、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルホウ素、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルホウ素、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルホウ素、ジエチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルホウ素、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルホウ素、トリメチルホスホニウムテトラフェニルホウ素、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリエチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、ジエチルアンモニウムテトラペンタテントラフェニルアルミニウム、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)ホウ素、トリエチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ホウ素、トリフェニルカルボニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ホウ素またはトリフェニルカルボニウムテトラペンタフルオロフェニルホウ素などが挙げられる。
【0080】
前記触媒組成物は、第一の方法として、1)前記化学式1で表される遷移金属化合物に前記化学式2または化学式3で表される化合物を接触させて混合物を得るステップと、2)前記混合物に前記化学式4で表される化合物を添加するステップとを含む方法で製造されることができる。
【0081】
また、前記触媒組成物は、第二の方法として、前記化学式1で表される遷移金属化合物に前記化学式4で表される化合物を接触させる方法で製造されることができる。
【0082】
前記触媒組成物の製造方法のうち、第一の方法の場合に、前記化学式1で表される遷移金属化合物および前記化学式2で表される遷移金属化合物/前記化学式2または化学式3で表される化合物のモル比は、1/5,000~1/2であることができ、具体的には1/1,000~1/10であることができ、より具体的には1/500~1/20であることができる。前記化学式1で表される遷移金属化合物/前記化学式2または化学式3で表される化合物のモル比が1/2を超える場合には、アルキル化剤の量が非常に少なくて、金属化合物のアルキル化が完全に行われない問題があり、モル比が1/5,000未満の場合には、金属化合物のアルキル化は行われるが、残っている過量のアルキル化剤と前記化学式4の化合物である活性化剤との副反応によってアルキル化した金属化合物の活性化が完全に行われない問題がある。また、前記化学式1で表される遷移金属化合物/前記化学式4で表される化合物のモル比は、1/25~1であることができ、具体的には1/10~1であることができ、より具体的には1/5~1であることができる。前記化学式1で表される遷移金属化合物/前記化学式4で表される化合物のモル比が1を超える場合には、活性化剤の量が相対的に少なくて、金属化合物の活性化が完全に行われず、生成される触媒組成物の活性度が低下し得、モル比が1/25未満の場合には、金属化合物の活性化が完全に行われるが、残っている過量の活性化剤によって触媒組成物の単価が経済的でないか、生成される高分子の純度が低下し得る。
【0083】
前記触媒組成物の製造方法のうち、第二の方法の場合に、前記化学式1で表される遷移金属化合物/化学式4で表される化合物のモル比は、1/10,000~1/10であることができ、具体的には1/5,000~1/100であることができ、より具体的には1/3,000~1/500であることができる。前記モル比が1/10を超える場合には、活性化剤の量が相対的に少なくて、金属化合物の活性化が完全に行われず、生成される触媒組成物の活性度が低下し得、1/10,000未満の場合には、金属化合物の活性化が完全に行われるが、残っている過量の活性化剤によって触媒組成物の単価が経済的でないか、生成される高分子の純度が低下し得る。
【0084】
前記触媒組成物の製造時に、反応溶媒として、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素系溶媒、またはベンゼン、トルエンなどの芳香族系溶媒が使用されることができる。
【0085】
また、前記触媒組成物は、前記遷移金属化合物と助触媒化合物を担体に担持した形態で含むことができる。
【0086】
前記担体は、メタロセン系触媒において担体として使用されるものであれば、特に制限されず使用可能である。具体的には、前記担体は、シリカ、シリカ-アルミナまたはシリカ-マグネシアなどであることができ、これらのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用されることができる。
【0087】
中でも、前記担体がシリカである場合、シリカ担体と前記化学式1のメタロセン化合物の官能基が化学的に結合を形成することから、オレフィン重合過程で表面から遊離される触媒がほとんどない。結果、オレフィン系重合体の製造工程中に反応器の壁面や重合体粒子同士が絡み合うファウリングの発生を防止することができる。また、前記シリカ担体を含む触媒の存在下で製造されるオレフィン系重合体は、重合体の粒子形態および見掛け密度に優れる。
【0088】
より具体的には、前記担体は、高温乾燥などの方法により表面に反応性が大きいシロキサン基を含む、高温乾燥したシリカまたはシリカ-アルミナなどであることができる。
【0089】
前記担体は、Na2O、K2CO3、BaSO4またはMg(NO3)2などの酸化物、炭酸塩、硫酸塩または硝酸塩の成分をさらに含むことができる。
【0090】
前記オレフィン系単量体を重合する重合反応は、連続式溶液重合、バルク重合、懸濁重合、スラリー重合、または乳化重合などオレフィン単量体の重合に適用される通常の工程により行われることができる。
【0091】
前記オレフィン単量体の重合反応は、不活性溶媒の下で行われることができ、前記不活性溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロペンタン、n-ヘキサン、1-ヘキセン、1-オクテンが挙げられ、これに制限されない。
【0092】
前記オレフィン系重合体の重合は、約25℃~約500℃の温度で行われることができ、具体的には80℃~250℃、より好ましくは100℃~200℃の温度で行われることができる。また、重合時の反応圧力は、1Kgf/cm2~150Kgf/cm2、好ましくは1Kgf/cm2~120Kgf/cm2、より好ましくは5Kgf/cm2~100Kgf/cm2であることができる。
【0093】
本発明のオレフィン系重合体は、向上した物性を有することから、自動車用、電線用、玩具用、繊維用、医療用などの材料のような各種の包装用、建築用、生活用品などの様々な分野および用途での中空成形用、押出成形用または射出成形用として有用であり、特に、優れた衝撃強度が望まれる自動車用として有用に使用されることができる。
【0094】
また、本発明のオレフィン系重合体は、成形体の製造に有用に使用されることができる。
【0095】
前記成形体は、具体的には、ブローモールディング成形体、インフレーション成形体、キャスト成形体、押出ラミネート成形体、押出成形体、発泡成形体、射出成形体、シート(sheet)、フィルム(film)、繊維、モノフィラメント、または不織布などであることができる。
【0096】
実施例
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施するように、本発明の実施例について詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な相違する形態に実現されることができ、ここで説明する実施例に限定されない。
【0097】
製造例1:遷移金属化合物の製造
【化4】
(1)2-メチル-7-(2,3,4,5-テトラメチル-1,3-シクロペンタジエニル)インドリンの製造
(i)リチウムカルバメートの製造
2-メチルインドリン(13.08g、98.24mmol)とジエチルエーテル(150mL)をシュレンク(shlenk)フラスコに入れた。ドライアイスとアセトンで製造した-78℃の低温槽に前記シュレンクフラスコを浸漬して30分間撹拌した。次いで、n-BuLi(39.3ml、2.5M、98.24mmol)を窒素雰囲気の下で注射器で投入し、淡黄色のスラリーが形成された。次いで、フラスコを2時間撹拌した後、生成されたブタンガスを除去しながら常温にフラスコの温度を上げた。フラスコを再度-78℃の低温槽に浸漬して温度を下げた後、CO
2ガスを投入した。二酸化炭素ガスを投入することによってスラリーが無くなり透明な溶液になった。フラスコをバブラ-(bubbler)に連結して二酸化炭素ガスを除去しながら温度を常温に上げた。その後、真空下で残りのCO
2ガスと溶媒を除去した。ドライボックスにフラスコを移した後、ペンタンを加えてはげしく撹拌した後、濾過し、白色の固体化合物であるリチウムカルバメートを得た。前記白色の固体化合物は、ジエチルエーテルが配位結合している。この際、収率は100%である。
【0098】
(ii)2-メチル-7-(2,3,4,5-テトラメチル-1,3-シクロペンタジエニル)インドリンの製造
前記ステップ(i)で製造されたリチウムカルバメート化合物(8.47g、42.60mmol)をシュレンクフラスコに入れた。次いで、テトラヒドロフラン(4.6g、63.9mmol)とジエチルエーテル45mLを順に入れた。アセトンと少量のドライアイスで製造した-20℃の低温槽に前記シュレンクフラスコを浸漬して30分間撹拌した後、t-BuLi(25.1ml、1.7M、42.60mmol)を入れた。この際、反応混合物の色が赤色に変わった。-20℃を維持し続けながら6時間撹拌した。テトラヒドロフランに溶けているCeCl3・2LiCl溶液(129ml、0.33M、42.60mmol)とテトラメチルシクロペンテノン(5.89g、42.60mmol)を注射器の中で混合した後、窒素雰囲気下でフラスコに投入した。フラスコの温度を常温に徐々に上げてから1時間後に恒温槽を除去し、温度を常温に維持した。次いで、前記フラスコに水(15mL)を添加した後、エチルアセテートを入れて濾過し、濾液を得た。その濾液を分液漏斗に移した後、塩酸(2N、80mL)を入れて12分間振盪した。また、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(160mL)を入れて中和した後、有機層を抽出した。この有機層に無水硫酸マグネシウムを入れて水分を除去し、濾過した後、その濾液を取り、溶媒を除去した。得られた濾液をヘキサンとエチルアセテート(v/v、10:1)溶媒を使用してカラムクロマトグラフィー方法で精製し、オイル相を得た。収率は19%であった。
【0099】
1H NMR(C6D6) : δ 6.97(d, J=7.2Hz, 1H, CH), δ 6.78(d, J=8Hz, 1H, CH), δ 6.67(t, J=7.4Hz, 1H, CH), δ 3.94(m, 1H, quinoline-CH), δ 3.51(br s, 1H, NH), δ 3.24-3.08(m, 2H, quinoline-CH2, Cp-CH), δ 2.65(m, 1H, quinoline-CH2), δ 1.89(s, 3H, Cp-CH3), δ 1.84(s, 3H, Cp-CH3), δ 1.82(s, 3H, Cp-CH3), δ 1.13(d, J=6Hz, 3H, quinoline-CH3), δ 0.93(3H, Cp-CH3) ppm.
【0100】
(2)[(2-メチルインドリン-7-イル)テトラメチルシクロペンタジエニル-エタ5,カッパ-N]チタンジメチル([(2-Methylindolin-7-yl)tetramethylcyclopentadienyl-eta5、kapa-N]titanium dimethyl)の製造
(i)[(2-メチルインドリン-7-イル)テトラメチルシクロペンタジエニル-η5、κ-N]ジリチウム化合物の製造
ドライボックスの中で前記ステップ(1)により製造された2-メチル-7-(2,3,4,5-テトラメチル-1,3-シクロペンタジエニル)-インドリン(2.25g、8.88mmol)とジエチルエーテル50mLを丸底フラスコに入れた後、-30℃に温度を下げ、n-BuLi(4.9g、2.5M、17.8mmol)を撹拌しながら徐々に入れた。温度を常温に上げながら6時間反応させた。その後、ジエチルエーテルで数回洗浄しながら濾過し、固体を得た。真空をかけて残っている溶媒を除去し、0.58当量のジエチルエーテルが配位されたジリチウム塩化合物を得た(1.37g、50%)。
【0101】
1H NMR(Pyridine-d8): δ 7.22(br s, 1H, CH), δ 7.18(d, J=6Hz, 1H, CH), δ 6.32(t, 1H, CH), δ 4.61(brs, 1H, CH), δ 3.54(m, 1H, CH), δ 3.00(m, 1H, CH), δ 2.35-2.12(m ,13H, CH, Cp-CH3), δ 1.39(d, indoline-CH3) ppm.
【0102】
(ii)(2-メチルインドリン-7-イル)テトラメチルシクロペンタジエニル-η5、κ-N]チタンジメチルの製造
ドライボックスの中でTiCl4・DME(1.24g、4.44mmol)とジエチルエーテル(50mL)を丸底フラスコに入れ、-30℃で撹拌しながら、MeLi(6.1ml、8.88mmol、1.4M)を徐々に入れた。15分間撹拌した後、前記ステップ(i)で製造された[(2-メチルインドリン-7-イル)テトラメチルシクロペンタジエニル-η5、κ-N]ジリチウム化合物(1.37g、4.44mmol)をフラスコに入れた。温度を常温に上げながら3時間撹拌した。反応が完了した後、真空をかけて溶媒を除去し、ペンタンに溶かした後、濾過し、濾液を取った。真空をかけてペンタンを除去し、表題化合物を製造した。
【0103】
1H NMR(C6D6): δ 7.01-6.96(m, 2H, CH), δ 6.82(t, J=7.4Hz, 1H, CH), δ 4.96(m, 1H, CH), δ 2.88(m, 1H, CH), δ 2.40(m, 1H, CH), δ 2.02(s, 3H, Cp-CH3), δ 2.01(s, 3H, Cp-CH3), δ 1.70(s, 3H, Cp-CH3), δ 1.69(s, 3H, Cp-CH3), δ 1.65(d, J=6.4Hz, 3H, indoline-CH3), δ 0.71(d, J=10Hz, 6H, TiMe2-CH3) ppm.
【0104】
実施例1
1.5L連続工程反応器にヘキサン溶媒(6kg/h)と1-ブテン(0.35kg/h)を満たした後、反応器上端の温度を143.5℃に予熱した。トリイソブチルアルミニウム化合物(0.03mmol/min)、前記製造例で得られた遷移金属化合物(0.40μmol/min)、およびジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート助触媒(1.20μmol/min)を同時に反応器に投入した。次いで、前記反応器の中に水素気体(25cc/min)およびエチレン(0.87kg/h)を投入し、89barの圧力で連続工程で143.5℃を30分以上維持して共重合反応を行い、共重合体を得た。次に、真空オーブンで12時間以上乾燥した後、物性を測定した。
【0105】
実施例2~6
実施例1と同様に共重合反応を行い、遷移金属化合物の使用量、触媒と助触媒の使用量、また、反応温度、水素投入量および共単量体の量を下記表1のようにそれぞれ変更して共重合反応を行い、共重合体を得た。
【0106】
比較例1
三井化学社製のDF840を購入して使用した。
【0107】
比較例2
三井化学社製のDF810を購入して使用した。
【0108】
【0109】
実験例
前記実施例1~6、および比較例1および2の共重合体に対して、下記方法にしたがって物性を評価し、下記表2に示した。
【0110】
1)重合体の密度(Density)
ASTM D-792に準じて測定した。
【0111】
2)高分子の溶融指数(Melt Index、MI)
ASTM D-1238(条件E、190℃、2.16kgの荷重)に準じて測定した。
【0112】
3)溶融流動率比(MFRR)
ASTM D-1238[条件E、MI10(190℃、10kgの荷重)、MI2.16(190℃、2.16kgの荷重)]に準じてMI10およびMI2.16を測定した後、MI10をMI2.16で除して溶融流動率比(MFRR)を計算した。
【0113】
4)重量平均分子量(Mw、g/mol)および分子量分布(MWD)
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography)を用いて、数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)をそれぞれ測定し、また、重量平均分子量を数平均分子量で除して分子量分布を計算した。
【0114】
-カラム:PL Olexis
-溶媒:TCB(トリクロロベンゼン、Trichlorobenzene)
-流速:1.0ml/min
-試料濃度:1.0mg/ml
-注入量:200μl
-カラム温度:160℃
-検出器(Detector):Agilent High Temperature RI detector
-標準(Standard):ポリスチレン(Polystyrene)(三次関数で補正)
【0115】
5)溶融点(Tm)およびガラス転移温度(Tg)
TA instrument社製の示差走査熱量計(DSC:Differential Scanning Calorimeter 250)を用いて得た。すなわち、温度を150℃まで増加させた後、1分間その温度を維持し、その後、-100℃まで下げ、また温度を増加させてDSC曲線を観察した。
【0116】
6)T(90)、T(50)dH(100)、およびdH(90)
TA instrument社製の示差走査熱量計(DSC:Differential Scanning Calorimeter 250)を用いて、SSA(Successive self-nucleation/annealing)測定法で得た。
【0117】
具体的には、1回目のサイクルで温度を150℃まで増加させた後、1分間その温度を維持し、その後、-100℃まで冷却した。二回目のサイクルで温度を120℃まで増加させた後、30分間その温度を維持し、その後、-100℃まで冷却した。三回目のサイクルで温度を110℃まで増加させた後、30分間その温度を維持し、その後、-100℃まで冷却した。このように10℃間隔で温度を上げ、-100℃まで冷却する過程を-60℃まで繰り返して、各温度区間別に結晶化が行われるようにした。この際、温度の上昇速度と下降速度は、それぞれ、10℃/minに調節した。
【0118】
最後のサイクルで温度を150℃まで増加させながら熱容量を特定した。
【0119】
このようにして得られた温度-熱容量曲線を各区間別に積分し、全体の熱容量に対する各区間の熱容量を分画化した。ここで、全体の熱容量に対して50%が溶融する温度をT(50)、全体の熱容量に対して90%が溶融する温度をT(90)と定義した。
【0120】
また、SSA測定時に、90℃以上での融解エンタルピー(△H)を合算してその総和をdH(90)と、100℃以上での融解エンタルピー(△H)を合算してその総和をdH(100)と定義した。
【0121】
図1に実施例1~6の重合体および比較例1および2の重合体の密度に対するT(50)のグラフを示し、
図2に実施例5および比較例2の重合体に対して示差走査熱量計精密測定法(SSA)で測定した結果のグラフを示した。
【0122】
7)重合体の引張強度および伸び率
前記実施例5および比較例2のオレフィン系共重合体をそれぞれ押出してペレット状に製造した後、ASTM D638(50mm/min)に準じて、破断時の引張強度および伸び率を測定した。
【0123】
8)曲げ弾性率
INSTRON 3365装置を用いて、ASTM D790に準じて測定した。
【0124】
9)硬度(shore A)
TECLOCK社製のGC610 STAND for DurometerとMitutoyo社製のショア硬度計Type Aを用いて、ASTM D2240に準じて硬度を測定した。
【0125】
【0126】
【0127】
表2で同等な水準の密度とMIを有する実施例と比較例を比較した時に、実施例2および5は、比較例1および2に比べて小さなT(90)-T(50)値を示した。特に、実施例2および5のオレフィン系重合体は、0.5J/g≦dH(100)≦3.0J/gであり、1.0J/g≦dH(90)≦6.0J/gである要件を満たすが、比較例2のオレフィン系重合体は、dH(100)およびdH(90)がすべて0の値を示し、これを満たすことができなかった。表3により、同等な水準の密度、MIを有する実施例5と比較例2の機械的強度を比較することができる。実施例2および5は、高温で溶融する重合体結晶領域が導入されて機械的剛性が増加し、比較例2に比べて、引張強度、曲げ弾性率および硬度が増加したことを確認することができる。
【0128】
一方、
図1には、実施例1~6のオレフィン系重合体および比較例1および2のオレフィン系重合体の密度に対するT(50)のグラフが図示されており、
図2には、実施例5および比較例2の重合体に対する示差走査熱量計精密測定法(SSA)で測定した結果のグラフが図示されている。
【0129】
図1を参照すると、実施例1~6のオレフィン系重合体は、密度の増加によってT(50)が増加し、密度とT(50)が線形の相関関係を示すことを確認することができる。一方、比較例1および2のオレフィン系重合体は、密度とT(50)が特別な相関関係を示さなかった。一方、
図2を参照すると、実施例5のオレフィン系重合体は、比較例5のオレフィン系重合体に比べて、全般的に高い温度で溶出が行われていることを確認することができる。これにより、実施例5のオレフィン系重合体は、高結晶性領域が導入されていることを確認することができ、このような高結晶性領域の導入により、実施例の重合体は、高い引張強度と硬度を示すことができる。
【0130】
このように、実施例1~6のオレフィン系重合体は、水素気体を投入し、オレフィン系単量体を重合して得られた重合体であり、示差走査熱量計精密測定法(SSA)で測定時に、0.5J/g≦dH(100)≦3.0J/gであり、1.0J/g≦dH(90)≦6.0J/gを満たし、高い機械的剛性を示す。