(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-19
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/04 20060101AFI20240122BHJP
【FI】
G01N35/04 G
(21)【出願番号】P 2022557311
(86)(22)【出願日】2021-09-22
(86)【国際出願番号】 JP2021034719
(87)【国際公開番号】W WO2022085353
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】P 2020175746
(32)【優先日】2020-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】横山 洸幾
(72)【発明者】
【氏名】大草 武徳
(72)【発明者】
【氏名】岡部 修吾
【審査官】瓦井 秀憲
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-224048(JP,A)
【文献】特開2008-309686(JP,A)
【文献】特開2008-026051(JP,A)
【文献】特開2014-233765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済の容器を収容する収容部と、
前記容器を前記収容部まで鉛直方向に案内する中空の廃棄筒と、
複数の把持片を水平方向に近接させることで前記容器を把持し、複数の把持片を水平方向に離間させることで前記容器を落下させる容器把持機構と、
前記容器把持機構を制御する制御部と、を備え、
前記廃棄筒の上端の廃棄口は、前記容器を案内する容器案内部と、複数の前記把持片が離間する空間を形成する把持片離間部と、で形成され、
複数の把持片を鉛直方向に移動させる上下移動機構を有し、
前記制御部は、前記上下移動機構により複数の前記把持片が下降中であって、前記容器の下端が前記把持片離間部の下端よりも低く、複数の前記把持片のうち最下端が前記把持片離間部の上端より高い位置にあるときに、複数の前記把持片を離間して前記容器を落下させた後、前記上下移動機構により複数の前記把持片をさらに下降させて、前記把持片離間部の内径側を塞ぐ、自動分析装置。
【請求項2】
使用済の容器を収容する収容部と、
前記容器を前記収容部まで鉛直方向に案内する中空の廃棄筒と、
複数の把持片を水平方向に近接させることで前記容器を把持し、複数の把持片を水平方向に離間させることで前記容器を落下させる容器把持機構と、
前記容器把持機構を制御する制御部と、を備え、
前記廃棄筒の上端の廃棄口は、前記容器を案内する容器案内部と、複数の前記把持片が離間する空間を形成する把持片離間部と、で形成され、
前記制御部は、前記容器の上端が前記廃棄口より低い位置にあるときに、複数の前記把持片を離間して前記容器を落下させる、自動分析装置。
【請求項3】
使用済の容器を収容する収容部と、
前記容器を前記収容部まで鉛直方向に案内する中空の廃棄筒と、
複数の把持片を水平方向に近接させることで前記容器を把持し、複数の把持片を水平方向に離間させることで前記容器を落下させる容器把持機構と、
前記容器把持機構を制御する制御部と、を備え、
前記廃棄筒の上端の廃棄口は、前記容器を案内する容器案内部と、複数の前記把持片が離間する空間を形成する把持片離間部と、で形成され、
前記把持片離間部は、前記廃棄筒の上端に形成された切欠きである、自動分析装置。
【請求項4】
使用済の容器を収容する収容部と、
前記容器を前記収容部まで鉛直方向に案内する中空の廃棄筒と、
複数の把持片を水平方向に近接させることで前記容器を把持し、複数の把持片を水平方向に離間させることで前記容器を落下させる容器把持機構と、
前記容器把持機構を制御する制御部と、を備え、
前記廃棄筒の上端の廃棄口は、前記容器を案内する容器案内部と、複数の前記把持片が離間する空間を形成する把持片離間部と、で形成され、
前記容器が落下するとき、複数の前記把持片が前記把持片離間部の内径側を塞ぎ、複数の前記把持片が前記容器を案内する、自動分析装置。
【請求項5】
請求項4に記載の自動分析装置において、
前記容器が落下するとき、複数の前記把持片の内径側端は、前記容器案内部より内径側にある、自動分析装置。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の自動分析装置において、
複数の把持片を鉛直方向に移動させる上下移動機構を有し、
前記制御部は、複数の前記把持片を離間させた後、前記容器の上端が複数の前記把持片のうち最下端よりも低いときに、前記上下移動機構を駆動させて複数の前記把持片を上昇させる、自動分析装置。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の自動分析装置において、
複数の把持片を鉛直方向に移動させる上下移動機構を有し、
前記制御部は、複数の前記把持片を離間させた後、前記上下移動機構を所定時間停止させてから、前記上下移動機構を駆動させて複数の前記把持片を上昇させる、自動分析装置。
【請求項8】
(削除)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、血液や尿などの検体(サンプル)を、生化学的あるいは免疫学的に分析する自動分析装置が知られている。分析は一般的に検体と試薬を反応させて行い、試薬と検体の間で生じた反応を光学的、電気的に検出する。
【0003】
ここで、試薬と検体との反応は、他の試薬や検体とのコンタミネーションを防止するために、一般にディスポーザブル式の反応容器を用いて実施される。そして、分析完了後の使用済みとなった反応容器は、反応容器搬送機構により搬送され、所定の廃棄口から廃棄される。例えば、特許文献1には、サンプル分注チップをサンプル分注チップ/反応容器廃棄孔内に廃棄する旨が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
分析完了後、特許文献1のように、反応容器廃棄孔へ投入された反応容器は、廃棄筒を通って、廃棄ボックスなどの収容部に蓄積される。しかし、廃棄筒の上端の開口端である廃棄孔に投下される際、反応容器が傾き、反応容器の底面が廃棄筒の側面と接触したり、反応容器の段部(鍔部)が廃棄筒の上端と接触したりすると、反応容器を正常に廃棄できない可能性がある。仮に、廃棄筒の内径を広げれば、反応容器はスムーズに廃棄されるが、自動分析装置内のスペースの制約を受けることになる。
【0006】
本発明の目的は、スペース上の制約を抑制しつつ、使用済みの反応容器をスムーズに廃棄させる自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の自動分析装置は、使用済の容器を収容する収容部と、前記容器を前記収容部まで鉛直方向に案内する中空の廃棄筒と、複数の把持片を水平方向に近接させることで前記容器を把持し、複数の把持片を水平方向に離間させることで前記容器を落下させる容器把持機構と、前記容器把持機構を制御する制御部と、を備え、前記廃棄筒の上端の廃棄口は、前記容器を案内する容器案内部と、複数の前記把持片が離間する空間を形成する把持片離間部と、で形成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スペース上の制約を抑制しつつ、使用済みの反応容器をスムーズに廃棄させる自動分析装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1に係る自動分析装置の全体構成を示す平面図。
【
図4】実施例1に係る反応容器廃棄口と第1把持片,第2把持片の構造を示す図。
【
図5】比較例として、反応容器廃棄口に突起や切欠きがない場合における、反応容器の動きを示す図。
【
図6】実施例1における、反応容器の動きを示す図。
【
図7】実施例1における反応容器の廃棄動作を示すフローチャート。
【
図8】実施例1における反応容器搬送機構と反応容器の状態の推移を示す図。
【
図9】実施例2における反応容器の廃棄動作を示すフローチャート。
【
図10】実施例2における、反応容器の動きを示す図。
【
図11】実施例3における反応容器の廃棄動作を示すフローチャート。
【
図12】実施例3における反応容器搬送機構と反応容器の状態の推移を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
<実施例1>
まず、
図1を用いて、本実施例の自動分析装置の全体構成の概略について説明する。
図1は、本実施例の自動分析装置の全体構成を示す平面図である。
【0012】
図1に示すように、本実施例における自動分析装置100は、検体と試薬を反応させ、この反応させた反応液を測定する装置である。自動分析装置100は、試薬保冷庫1と、試薬容器3と、検体分注ノズル303と、反応テーブル305と、反応容器搬送機構306と、検体分注チップ・反応容器保持部材307と、試薬ディスク2と、試薬分注ノズル314と、処理部315と、検出部316と、ラック搬送ライン317と、制御装置319と、を備えている。
【0013】
ここで、ラック搬送ライン317は、検体を収容した検体容器302を複数載置可能なラック301を検体分注位置等へ搬送するためのラインである。検体分注ノズル303は、検体容器302に収容された検体を吸引し、反応容器304に対して吐出するためのノズルである。反応テーブル305は、検体と試薬の反応を恒温で行うためのディスクであり、その温度がヒータ(図示省略)によって所定の温度に保たれており、検体と試薬との反応を促進させている。反応容器304は、反応テーブル305に複数保持されており、検体と試薬を混合して反応させる場となる。反応容器搬送機構306は、反応容器304を搬送する。検体分注チップ・反応容器保持部材307は、検体分注に用いる使い捨ての検体分注チップや反応容器304を保管する。試薬ディスク2は、試薬容器3を保管するディスクであり、試薬を安定して保管するために試薬保冷庫1により保冷されている。試薬容器3は蓋4に配置されている開閉蓋5を開けることでユーザもしくは試薬容器搬送機構(図示なし)などによりアクセス可能となる。また、蓋4の一部には、試薬吸引用の貫通孔である試薬吸引用孔6が設けられている。試薬分注ノズル314は、試薬ディスク2内の試薬容器3に保管された試薬を、試薬吸引用孔6を通して吸引し、反応容器304に対して吐出するためのノズルである。なお、この試薬ディスク2内の各試薬容器3には、検体の分析に用いる種々のアッセイ試薬(第1の試薬)が収容されている。処理部315は、検出部316による検体の分析前の処理を行う。検出部316は、反応容器304内で反応が完了した液体を用いて検出を行う。制御装置319は、上記の各部材の様々な動作を制御するとともに、検出部316で行われた検出結果から、検体中の所定成分の濃度を求める演算処理を行う。この制御装置319には、反応容器搬送機構306の制御を実行する制御部318が設けられている。
【0014】
次に、本実施例の自動分析装置における全体的な分析の流れについて概略を説明する。なお、分析に先立ち、ユーザは分析に必要な試薬容器3、検体分注チップや反応容器304などの消耗品を分析装置内の試薬ディスク2や検体分注チップ・反応容器保持部材307にそれぞれ設置しておく。
【0015】
まず、ユーザは分析対象の血液や尿等の検体を検体容器302に入れた状態で、ラック301を自動分析装置に投入する。ここで、分析装置の第一の搬送機構308により、未使用の反応容器304や検体分注チップが反応テーブル305および検体分注チップ装着位置321に搬送される。
【0016】
その後、試薬分注ノズル314は回転と上下移動が可能なように取り付けられており、試薬保冷庫1の蓋4に設けられた試薬吸引用孔6の上方に回転移動した後に下降し、試薬吸引用孔6を通過する。その後、試薬吸引用孔6を通った試薬分注ノズル314の先端を所定の試薬容器3内の試薬に挿入して、所定量の試薬を吸引する。その後、試薬分注ノズル314は上昇した後に、反応テーブル305の所定位置の上方に回転移動して、反応テーブル305に設置された反応容器304内に試薬を吐出する。
【0017】
続いて、ラック301がラック搬送ライン317を通過して検体分注位置に到達すると、検体分注ノズル303が検体分注チップを装着し、検体容器302より検体を反応容器304へ分注し、検体とアッセイ試薬の反応が開始する。ここでいう反応とは、例えば、検体の特定抗原のみと反応する発光標識化抗体をアッセイ試薬として、抗原抗体反応により検体と発光標識物質を結合することをいう。この際、検体とアッセイ試薬の混合物を検体分注チップ内で吸引吐出することにより、検体とアッセイ試薬の撹拌が行われる。この動作が完了した後、使用済みの検体分注チップは検体分注チップ廃棄口320に廃棄される。
【0018】
撹拌により検体とアッセイ試薬の反応が開始した後に、更に特定のタイミングで別の試薬を加えて反応を行う場合がある。例えば、抗体を表面に結合させた磁性ビーズを前記の抗原にさらに結合するプロセスがある。そのために、所定時間だけ反応テーブル305に置かれた反応容器304が、反応容器搬送機構306によって、処理部315に搬送される。処理部315において検体の検出前処理として検体の磁気分離および攪拌が行われる。
【0019】
前処理プロセス終了後、反応容器搬送機構306により、反応容器304が再び反応テーブル305に搬送される。
【0020】
磁気分離の有無にかかわらず、反応テーブル305に置かれた状態で所定時間経過した反応容器304は、第二の搬送機構309により検出部316に導かれる。検出部316において反応液からの信号の検出が行われ、分析結果はユーザに通知されるとともに、記憶装置に記録される。
【0021】
検出動作が完了した後、反応容器304は、第二の搬送機構309および反応容器搬送機構306により反応容器廃棄口322に搬送され、廃棄される。反応容器廃棄口322および検体分注チップ廃棄口320の下部には、廃棄された反応容器304および検体分注チップを蓄積する収容部323が設けられている。
【0022】
次に、反応容器搬送機構306の構造について、
図2および
図3を用いて説明する。
図2は、自動分析装置の要部正面図であり、
図3は、
図2のA方向矢視図である。反応容器搬送機構306は、ペルチェ素子などを用いた温調装置(図示せず)によって温調された温調室332内に配置され、反応容器304を把持するための容器把持機構と、容器把持機構を鉛直方向に移動させる上下移動機構と、で構成される。また、反応容器搬送機構306の本体ケースは、図示しないベルトに連結されており、図示しないモータによりベルトが回動されることで、温調室332の壁面に固定された水平レール324に沿って水平方向に移動できるようになっている。
【0023】
ここで、容器把持機構は、反応容器304の側面に当接する第1把持片325aおよび第2把持片325bと、第1把持片325aおよび第2把持片325bを近接させたり離間させたりするソレノイド326と、を備えている。この容器把持機構は、第1把持片325aおよび第2把持片325bを水平方向に近接させることで反応容器304を把持し、第1把持片325aおよび第2把持片325bを水平方向に離間させることで反応容器304を落下させる。なお、容器把持機構は、ソレノイド326ではなく、モータやエアシリンダによって駆動されるものであっても良い。
【0024】
上下移動機構は、モータ327と、モータ327のシャフトに連結されたピニオンギア328と、ピニオンギア328との噛み合いにより回転運動を直線運動に変換するラック部329と、ラック部329に固定されソレノイド326を支持する支持部330と、支持部330の上下移動を案内する鉛直レール331と、を備えている。また、モータ327および鉛直レール331は、反応容器搬送機構306の本体ケースに対して固定され、ラック部329および支持部330が、本体ケースに対して相対的に上下移動する。なお、上下移動機構は、モータ327ではなく、ソレノイドやエアシリンダによって駆動されるものであっても良い。
【0025】
制御部318は、モータ327の回転を制御することにより、容器把持機構とともに第1把持片325aおよび第2把持片325bを上昇させたり下降させたりする。また、制御部318は、ソレノイド326に通電することで第1把持片325aと第2把持片325bを開いたり、ソレノイド326への通電をOFFすることでバネ力により第1把持片325aと第2把持片325bを閉じたりする。
【0026】
また、
図2に示すように、温調室332の底面には、鉛直方向に延びて反応容器304を収容部323へ案内する、中空の廃棄筒333が接続されている。このため、廃棄筒333の上端の開口端(反応容器廃棄口322)から投入された反応容器304は、廃棄筒333の内面で案内されながら、重力で落下して行き、使用済の反応容器304として収容部323に収容される。
【0027】
次に、反応容器廃棄口322の構造について、
図4を用いて説明する。
図4は、反応容器廃棄口322と第1把持片325a,第2把持片325bの構造を示す図であり、(a)は正面図、(b)は(a)のB-B’を上方から見た平面図である。
図4(a)に示すように、廃棄筒333の上側の開口端は、温調室332の底面から上方へ突出しており、複数の突起333cを有している。また、
図4(b)に示すように、廃棄筒333の上側の開口端のうち、第1把持片325aおよび第2把持片325bが離間する軌跡(
図4(b)の矢印参照)に対応する位置には、それぞれ切欠き333a,333bが形成されている。すなわち、本実施例における複数の突起333cは、これら切欠き333a,333bが廃棄筒333の上端に形成されることで、残りの部分として必然的に生じるものであり、下方に延びる廃棄筒333の本体と一体的に成形でき、製作し易い利点がある。ただし、突起333cを廃棄筒333の本体とは別体で構成することを妨げるものではない。
【0028】
なお、
図4(a)に示すように、反応容器304の上側には、下側よりも外径の大きい鍔部が形成されており、この鍔部の下端には段差が存在する。このため、第1把持片325aの下端には爪が設けられており、この爪が反応容器304の鍔部を係止できるようになっている。第2把持片325bは、爪が設けられていないが、曲面状の当接面を有しており、この当接面を反応容器304の鍔部の側面に押し付けることにより、第1把持片325aと連動して、反応容器304を把持する。このように、第1把持片325aのみに爪を設けることで、第1把持片325aと第2把持片325bが離間したときに反応容器304が落下し易くなっている。ここで、第1把持片325aおよび第2把持片325bは、ソレノイド326からの動力がリンク機構(図示せず)を介して伝達されるので、離間の軌跡が
図4(b)に示すように円弧状となる。
【0029】
図5は、比較例として、反応容器廃棄口322に突起や切欠きがない場合における、反応容器304の動きを示す図であり、(a)が正面図、(b)が(a)のB-B’を上方から見た平面図、(c)が左側面図、(d)が(c)のB-B’を上方から見た平面図である。
図5(a)に示すように、第1把持片325aと第2把持片325bが離間するとき、第1把持片325aの下端は、廃棄筒333の上端より高い位置にあるため、反応容器304の鍔部も、廃棄筒333の上端よりも高い位置にある。このため、容器把持機構の離間時に反応容器304のバランスが崩れ、例えば
図5(c)に示すように反応容器304が後方へ倒れた状態で傾いた場合、反応容器304の鍔部などの側面が廃棄筒333の上端に突き当たり、反応容器304の底面が廃棄筒333の側面に突き当たることがある。このような場合、反応容器304が収容部323までスムーズに落下せず、オペレータによる作業が必要となる可能性もある。
【0030】
図6は、本実施例における、反応容器304の動きを示す図であり、(a)が正面図、(b)が(a)のB-B’を上方から見た平面図、(c)が左側面図、(d)が(c)のB-B’を上方から見た平面図である。本実施例では、前記の通り、第1把持片325aおよび第2把持片325bの離間軌跡上にそれぞれ切欠き333aおよび切欠き333bが形成されている。このため、制御部318は、
図6(a)に示すように、第1把持片325aや第2把持片325bの下端を、突起333cの上端より低い位置まで下降させてから、容器把持機構を離間できる。したがって、容器把持機構の離間時に反応容器304のバランスが崩れ、例えば
図6(c)に示すように反応容器304が後方へ倒れた状態で傾いた場合でも、反応容器304の鍔部は、突起333cの上端に突き当たることがない。さらに、制御部318は、反応容器304の上端が突起333cの上端より低い位置で容器把持機構を離間させれば、反応容器304が傾いた場合でも、反応容器304の上端側面が突起333cの側面に接触するだけなので、反応容器304がよりスムーズに落下するようになる。
【0031】
このように、本実施例の突起333cは、反応容器304の側面と接触し、反応容器304の動きを規制しながら反応容器304を下方へ案内する容器案内部として機能する。ここで、突起333cが上方ほど内径の広がる傾斜を有していると、反応容器304が投入し易くなる利点はある。しかし、突起333cの上端を広げ過ぎると、反応容器304が傾斜に引っ掛かったり、温調室332内の空気が漏れ出して温調効果を低下させたりする可能性もある。したがって、突起333cの上端の内径は、突起333cの下端の内径に対して100~110%とするのが望ましい。
【0032】
一方、切欠き333a,333bは、第1把持片325aおよび第2把持片325bが反応容器304を落下させるために離間する空間を形成する把持片離間部として機能する。ここで、切欠き333a,333bが周方向に長過ぎて突起333cが周方向に短過ぎると、反応容器304が切欠き333a,333bに嵌り込んで、反応容器304が大きく傾き、反応容器304がスムーズに落下しない可能性がある。このため、第1把持片325aおよび第2把持片325bの離間軌跡と、突起333cの周方向端部と、の隙間は、反応容器304の外径よりも小さくすることが望ましい。
【0033】
以下、本実施例の反応容器搬送機構306による、反応容器304の廃棄動作の流れについて説明する。
図7は、本実施例における反応容器304の廃棄動作を示すフローチャートであり、
図8は、反応容器搬送機構306と反応容器304の状態の推移を示す図である。まず、制御部318は、図示しないモータの回転を制御し、反応容器搬送機構306を水平移動させることで、反応容器304を反応容器廃棄口322の鉛直投影内へ搬送し(ステップS101)、
図8の状態1とする。次に、制御部318は、上下移動機構を構成するモータ327の回転を制御し、容器把持機構を下降させ(ステップS102)、
図8の状態2に移行する。このとき、制御部318は、前記した通り、反応容器304の上端が突起333cの上端より低い位置にくるまで、第1把持片325aおよび第2把持片325bを下降させるのが望ましい。
【0034】
その後、制御部318は、容器把持機構のソレノイド326に通電することで、第1把持片325aおよび第2把持片325bを離間し(ステップS103)、
図8の状態3のように反応容器304が落下する。容器把持機構の離間と同時に、制御部318は、モータ327の回転を制御し、容器把持機構を上昇させ(ステップS104)、
図8の状態4に移行して次の反応容器304の搬送に備える。
【0035】
前記の通り、本実施例では、廃棄筒333の上端の廃棄口が、容器案内部と、把持片離間部と、で形成されており、反応容器304が最も傾いた状態でも、反応容器304の上端側面または底面のみが廃棄筒333の側面と接触する。このため、使用済みの反応容器304が廃棄口に投入された際、廃棄筒333内をスムーズに落下する。また、本実施例では、温調室332の底面から廃棄筒333の一部(突起333c)が上方で出張ることになるが、廃棄筒333の内径を一律に大きくする場合と比べて、自動分析装置内のスペース上の制約は少なく、廃棄筒333を介した温調室332内への熱侵入量も抑えられる。
【0036】
<実施例2>
実施例2では、反応容器304を廃棄するときの反応容器搬送機構306の動作が、実施例1と異なる。
図9は、本実施例における反応容器304の廃棄動作を示すフローチャートである。
【0037】
図9に示すように、本実施例においても、実施例1と同様に、制御部318は、まず、図示しないモータの回転を制御し、反応容器搬送機構306を水平移動させることで、反応容器304を反応容器廃棄口322の鉛直投影内へ搬送する(ステップS201)。次に、制御部318は、上下移動機構を構成するモータ327の回転を制御し、容器把持機構を下降させる(ステップS202)。
【0038】
その後、制御部318は、容器把持機構のソレノイド326に通電することで、第1把持片325aおよび第2把持片325bを離間する(ステップS203)。このとき、本実施例では、離間した第1把持片325aおよび第2把持片325bが、把持片離間部(切欠き333a,333b)の内径側を塞ぐ。具体的には、離間したときの第1把持片325aおよび第2把持片325bの内径側端の位置が、容器案内部(突起333c)より内径側となるようにする。すると、反応容器304が、突起333cの存在しない左方または右方へ倒れるように傾いた場合でも、第1把持片325aや第2把持片325bが反応容器304を案内し、反応容器304をスムーズに落下させることが可能となる。
【0039】
また、実施例1では、容器把持機構の離間と同時に容器把持機構を上昇させたが、本実施例では、容器把持機構を離間させた後、所定時間が経過してから容器把持機構を上昇させる。すなわち、制御部318は、第1把持片325aおよび第2把持片325bを離間させた後、上下移動機構を所定時間停止させてから、上下移動機構を駆動させて第1把持片325aおよび第2把持片325bを上昇させる(ステップS204)。
【0040】
ここで、前記の所定時間は、容器把持機構の離間により反応容器304が落下した後、反応容器304の上端の高さが第1把持片325aの下端よりも低くなるまでの時間として予め算出されたものが用いられる。制御部318が容器把持機構を上昇させるタイミングとしては、所定時間の経過をトリガとする代わりに、反応容器304が所定の高さを通過したことが別途設けたセンサで検知されたことをトリガとしても良い。
【0041】
図10は、本実施例における、反応容器304の動きを示す図であり、(a)が正面図、(b)が(a)のB-B’を上方から見た平面図、(c)が左側面図、(d)が(c)のB-B’を上方から見た平面図である。本実施例では、容器把持機構の離間後も、しばらくは第1把持片325aが反応容器304の落下を案内する。このため、
図10(a)に示すように、仮に反応容器304が左方へ倒れるように傾いた場合でも、反応容器304がスムーズに落下可能となる。
【0042】
<実施例3>
実施例3では、反応容器304を廃棄するときの反応容器搬送機構306の動作が、実施例1,2と異なる。
図11は、本実施例における反応容器304の廃棄動作を示すフローチャートであり、
図12は、反応容器搬送機構306と反応容器304の状態の推移を示す図である。
【0043】
図11に示すように、本実施例においても、実施例1,2と同様に、制御部318は、まず、反応容器搬送機構306を水平移動させることで、反応容器304を反応容器廃棄口322の鉛直投影内へ搬送し(ステップS301)、
図12の状態1とする。次に、制御部318は、上下移動機構を構成するモータ327を制御し、容器把持機構を下降させる(ステップS302)。
【0044】
そして、本実施例では、
図12の状態2に示す通り、反応容器304の下端が把持片離間部(切欠き333a,333b)の下端よりも低く、第1把持片325aの下端が把持片離間部の上端より高い位置にあるときに、第1把持片325aおよび第2把持片325bが互いに離間する(ステップS303)。第1把持片325aおよび第2把持片325bの離間により反応容器304が落下を開始した後も、制御部318は、容器把持機構の下降をさらに継続する(ステップS304)。そして、第1把持片325aおよび第2把持片325bが、
図12の状態3のように、把持片離間部の内径側を塞ぐ位置に達すると、制御部318は、モータ327の回転を停止させて、容器把持機構の下降を停止する(ステップS305)。続いて、制御部318は、容器把持機構の停止後すぐに、容器把持機構を上昇に転じて、次の反応容器304の搬送に備える(ステップS306)。
【0045】
本実施例では、容器把持機構の下降中に、反応容器304の落下が開始するため、実施例1,2と比べて、反応容器304を廃棄するまでに要する時間を短くすることができる。また、下降の途中で離間した第1把持片325aおよび第2把持片325bは、反応容器304の落下と並行して下降するので、反応容器304が左方または右方へ傾斜しても、第1把持片325aまたは第2把持片325bが反応容器304の更なる傾斜を抑制する。なお、容器把持機構の下降速度は、反応容器304の落下速度以上であることが望ましい。
【0046】
なお、本発明は、前記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、把持片離間部として、前記の実施例では切欠き333a,333bを形成したが、この部分だけ径方向に拡大することで把持片の離間軌跡以上の寸法に構成しても良い。また、前記の実施例では、第1把持片325aと第2把持片325bが非対称の形状であったが、第2把持片325bについても、爪を設け、第1把持片325aと対称の形状としても構わない。さらに、把持片の数を2つではなく、3つ以上とする構成であっても良い。あるいは、廃棄筒333の内周面に緩衝材を取り付け、反応容器304が反応容器廃棄口322に投下されたときの衝撃力を緩和することで、跳ね返りによる反応容器304の傾きを抑制し、反応容器304をスムーズに落下させることも可能である。この緩衝材は、前記した実施例の突起333cの代わりに、温調室332の上方へ突出していても良い。
【0047】
さらに、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0048】
1…試薬保冷庫、2…試薬ディスク、3…試薬容器、4…蓋、5…開閉蓋、6…試薬吸引用孔、100…自動分析装置、301…ラック、302…検体容器、303…検体分注ノズル、304…反応容器、305…反応テーブル、306…反応容器搬送機構、307…検体分注チップ・反応容器保持部材、308…第一の搬送機構、309…第二の搬送機構、314…試薬分注ノズル、315…処理部、316…検出部、317…ラック搬送ライン、318…制御部、319…制御装置、320…検体分注チップ廃棄口、321…検体分注チップ装着位置、322…反応容器廃棄口、323…収容部、324…水平レール、325a…第1把持片、325b…第2把持片、326…ソレノイド、327…モータ、328…ピニオンギア、329…ラック部、330…支持部、331…鉛直レール、332…温調室、333…廃棄筒、333a…切欠き、333b…切欠き、333c…突起