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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】吸水性培土
(51)【国際特許分類】
   A01G 24/15 20180101AFI20240123BHJP
   A01G 24/30 20180101ALI20240123BHJP
【FI】
A01G24/15
A01G24/30
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020530261
(86)(22)【出願日】2019-07-11
(86)【国際出願番号】 JP2019027542
(87)【国際公開番号】W WO2020013286
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】P 2018132297
(32)【優先日】2018-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100224591
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 征志
(72)【発明者】
【氏名】稲田 真也
(72)【発明者】
【氏名】大西 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】大森 圭
(72)【発明者】
【氏名】有原 亮一
(72)【発明者】
【氏名】藤井 一徳
(72)【発明者】
【氏名】芳形 茉美
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-169127(JP,A)
【文献】特許第4865196(JP,B2)
【文献】特開2001-346438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 24/00 - 24/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撥水性有機資材、粘土鉱物、及びポリビニルアルコールを含む吸水性培土であって、該粘土鉱物の少なくとも一部が、ポリビニルアルコールを介して撥水性有機資材に付着し、該ポリビニルアルコールが40℃以下で水に溶解する水溶性ポリビニルアルコールであり、該粘土鉱物の粒径が0.01~5mmであり、かつ潅水後の脱落率が10質量%以下である、吸水性培土。
【請求項2】
前記ポリビニルアルコールの含有量が、撥水性有機資材100質量部に対して、0.7~20質量部である、請求項1に記載の吸水性培土。
【請求項3】
前記粘土鉱物の含有量が、撥水性有機資材100質量部に対して、10~100質量部である、請求項1又は2に記載の吸収性培土。
【請求項4】
所定形状に賦形した賦形体である、請求項1~3のいずれかに記載の吸水性培土。
【請求項5】
撥水性有機資材、粘土鉱物、及び平均繊維径が100μm以下で、かつアスペクト比が30~1500であるポリビニルアルコール繊維を含み、該ポリビニルアルコール繊維が40℃以下で水に溶解するポリビニルアルコール繊維であり、該ポリビニルアルコール繊維の含有量が、撥水性有機資材100質量部に対して、0.7~20質量部であ、該粘土鉱物の粒径が0.01~5mmである、吸水性培土用組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の吸水性培土用組成物に水を混合した後、乾燥する工程を含む、吸水性培土の製造方法。
【請求項7】
請求項5に記載の吸水性培土用組成物を所定形状の容器に充填し、さらに水を混合した後、乾燥する工程を含む、吸水性培土の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用や園芸用の育苗培土等として使用できる吸水性培土及びその製造方法、並びに吸水性培土用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
農業用や園芸用の育苗培土として、ピートモス等の撥水性有機資材、粘土鉱物及び界面活性剤を含む吸水性培土が知られている。このような吸水性培土は、界面活性剤の影響で、乾燥時の撥水性有機資材の撥水性を抑制できるものの、保存による界面活性剤の撥水防止能の低下により吸水性が顕著に低下するという問題があった。
また、界面活性剤に代えて、水溶性高分子材料からなるバインダーを含む吸水性培土が検討されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-341898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では水によるバインダー成分の溶解が不十分となることがあり、その結果、バインダーが撥水性有機資材全体に均一に付着することができず、その後の潅水により粘土鉱物が撥水性有機資材から脱離し、性能が低下してしまう場合があった。その結果、長期的には十分な吸水性を維持できない場合があることがわかった。
【0005】
従って、本発明の目的は、潅水を繰り返し行っても、優れた吸水性を維持できる吸水性培土及びその製造方法、並びに吸水性培土用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、粘土鉱物の少なくとも一部が、ポリビニルアルコールを介して撥水性有機資材に付着した吸水性培土において、潅水後の脱落率が10質量%以下であれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明には、以下の態様が含まれる。
【0007】
[1]撥水性有機資材、粘土鉱物、及びポリビニルアルコールを含む吸水性培土であって、該粘土鉱物の少なくとも一部が、ポリビニルアルコールを介して撥水性有機資材に付着し、かつ潅水後の脱落率が10質量%以下である、吸水性培土。
[2]前記ポリビニルアルコールの含有量が、撥水性有機資材100質量部に対して、0.7~20質量部である、[1]に記載の吸水性培土。
[3]前記粘土鉱物の含有量が、撥水性有機資材100質量部に対して、10~100質量部である、[1]又は[2]に記載の吸収性培土。
[4]所定形状に賦形した賦形体である、[1]~[3]のいずれかに記載の吸水性培土。
[5]撥水性有機資材、粘土鉱物、及び平均繊維径が100μm以下で、かつアスペクト比が30~1500であるポリビニルアルコール繊維を含み、該ポリビニルアルコール繊維の含有量が、撥水性有機資材100質量部に対して、0.7~20質量部である、吸水性培土用組成物。
[6][5]に記載の吸水性培土用組成物に水を混合した後、乾燥する工程を含む、吸水性培土の製造方法。
[7][5]に記載の吸水性培土用組成物を所定形状の容器に充填し、さらに水を混合した後、乾燥する工程を含む、吸水性培土の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の吸水性培土は、潅水を繰り返し行っても、優れた吸水性を維持できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[吸水性培土]
本発明の吸水性培土は、撥水性有機資材、粘土鉱物、及びポリビニルアルコールを含み、粘土鉱物の少なくとも一部が、ポリビニルアルコールを介して撥水性有機資材に付着し、かつ潅水後の脱落率が10質量%以下である。
【0010】
潅水後の脱落率は、以下のように測定及び算出できる。
外径90mm程度の500ccビーカーの上に、120mm×120mmの大きさに切り出された10メッシュの金網[線径:0.6mm、目開き1.9mm、空間率58%(メッシュの金網部と空間部との総面積に対する空間部の面積の割合)]を設置し、吸水性培土5gをビーカーの開口部内に収まるように金網上に均一に広げ、該吸水性培土全体に浸透するように200ccの水をゆっくり注ぎ、ビーカーで濾液を受ける。次いで、該濾液中の浮遊物(撥水性有機資材)を除去後、該濾液中の沈降物(粘土鉱物)を濾過により回収し、回収した沈降物を105℃に設定された乾燥機内で1時間乾燥して精秤することで、沈降物(脱落沈降物と称する場合がある)の量を測定する。次いで、下記式(1)
脱落率(質量%)=脱落沈降物の量/5g×100 (1)
により、潅水後の脱落率を算出する。
【0011】
吸水性培土に含まれる粘土鉱物のうち、吸水性培土に水を注いだ後であっても、撥水性有機資材に付着している粘土鉱物は金網上に残り、撥水性有機資材から脱離した粘土鉱物は濾液中の脱落沈降物として回収される。そのため、脱落率が低いほど、潅水後に、撥水性有機資材に付着している粘土鉱物の量が多いことを示す。
【0012】
本発明の吸水性培土は、前記潅水後の脱落率が10質量%以下であるため、潅水しても、多くの粘土鉱物が撥水性有機資材に付着した状態を保つことができる。そのため、潅水を繰り返し行っても、優れた吸水性を維持できる。また、潅水後の脱落率が低いほど、吸水性をより有効に維持でき、潅水後の脱落率は、好ましくは8質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下、特に好ましくは2質量%以下である。なお、潅水後の脱落率の下限は、通常0質量%以上である。なお、吸水性は、例えば吸水速度や吸水量により評価することができ、本発明の吸水性培土は、潅水を繰り返し行っても、吸水速度及び吸水量を維持できる。
【0013】
本発明の吸水性培土が優れた吸水性維持能を有するのは、吸水性培土に含まれるポリビニルアルコールが、吸水性培土全体にわたり均一に撥水性有機資材を被覆し、該撥水性有機資材にポリビニルアルコールを介して粘土鉱物を均一かつ安定に付着(又は被覆)できるからであると推定される。そのため、本発明の吸水性培土は、バインダーとして機能するポリビニルアルコールが比較的少量であっても、優れた吸水性を長期間維持可能である。このような本発明の吸水性培土を使用すれば、植物の成長を阻害することなく、長期にわたり、培土全体に水が浸透し得るため、植物に効果的に水を提供することができ、コストの削減及び作業性向上をも実現できる。
【0014】
本発明の吸水性培土は、該培土中に粘土鉱物が均一分散されているため、優れた吸水速度を有する。本発明の吸水速度は、好ましくは10秒以下、より好ましくは5秒以下、さらに好ましくは3秒以下、特に好ましくは1秒以下である。吸水速度の下限は0秒以上である。なお、吸水速度は、温度20℃、湿度65%の条件下、乾燥状態の吸水性培土5gに3ccの水を滴下し、水滴が吸収されるまでの時間を意味する。具体的には、吸水速度は、水を滴下した時点から、滴下した水滴が水玉状から玉が崩れて広がった時点までの時間とすることができる。
【0015】
本発明の吸水性培土の形態は、特に限定されないが、所定形状に賦形した賦形体の形態であってもよい。賦形体(固化培土と称する場合がある)の形状は、使用用途に応じて適宜選択すればよい。通常、後述のように固化培土は所定形状の容器内で製造される。容器内の固化培土に、野菜、草花、果樹、樹木等の植物の種子を播いて所定期間育苗した後、根鉢ごと容器から抜き取って、公園等の緑地エリアや、田畑等に手動又は機械的に植え付けることが可能である。
【0016】
<撥水性有機資材>
本発明の吸水性培土に含まれる撥水性有機資材は、育成する植物の種類等に応じて適宜選択でき、その例としては、ピートモス、パーク堆肥、亜炭、モミガラ、薫炭、炭粉、ココナッツダスト(ハスクダスト、コイヤーダスト、ココチップス等)、おが屑などが挙げられる。これらの撥水性有機資材は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの中でも、吸水性、通気性及び取扱い性等が良好であるという観点から、少なくともピートモスを使用することが好ましい。なお、撥水性有機資材は市販品を適宜使用できる。
【0017】
<粘土鉱物>
本発明の吸水性培土に含まれる粘土鉱物としては、育成する植物の種類等に応じて適宜選択でき、例えば、重粘土、植土、植壌土、壌土、赤玉土、鹿沼土、火山灰等のいわゆる土(天然土);パーライト、バーミキュライト、ロックウール、ゼオライト、ベントナイト、カオリナイト等の無機資材等が挙げられる。これらの中でも、吸水性を向上しやすい観点から、少なくとも火山灰を使用することが好ましい。粘土鉱物は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、粘土鉱物は市販品を適宜使用できる。
【0018】
粘土鉱物は、例えば粒状物又は粉状物であってもよい。粘土鉱物の粒径は、好ましくは0.01~5mm、より好ましくは0.1~4mmである。粘土鉱物の粒径が上記範囲であると、撥水性有機資材にバインダーを介して粘土鉱物が付着(又は被覆)しやすく、粘土鉱物の吸水速度や吸水性維持能を向上し得る。なお、本明細書において、吸水性維持能とは、潅水を繰り返し行っても、吸水性を維持できる特性を示す。
【0019】
粘土鉱物の含有量は、撥水性有機資材100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上、さらに好ましくは20質量部以上であり、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下、さらに好ましくは60質量部以下、特に好ましくは50質量部未満、最も好ましくは48質量部以下であり、これらの上限と下限の任意の組合せであってもよい。粘土鉱物の含有量が上記の下限以上であれば、吸水性培土の吸水性や吸水性維持能を向上しやすく、上記の上限以下であれば、有機資材の特徴である吸水性を損なうことがないため好ましい。
【0020】
<ポリビニルアルコール>
本発明の吸水性培土に含まれるポリビニルアルコールは、撥水性有機資材に粘土鉱物を付着(又は接着)させるためのバインダーとしての機能を有する。
【0021】
ポリビニルアルコールは、主にビニルアルコール由来の構成単位とビニルエステル(好ましくは酢酸ビニル)由来の構成単位を有するポリマーである。ポリビニルアルコールは、本発明の効果を損なわない範囲で、これらの構成単位以外の単量体由来の構成単位を含んでいてもよい。単量体由来の構成単位を形成するための単量体(他の単量体という場合がある)としては、例えばエチレン、アリルアルコール、イタコン酸、アクリル酸、無水マレイン酸及びその開環物、ビニルピロリドン、アリールスルホン酸及びその全体又は部分的中和物などが挙げられる。これらの他の単量体は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。他の単量体由来の構成単位の含有量は、ポリビニルアルコールを構成する構成単位の総モル数に対して、通常20モル%以下であり、10モル%以下が好ましく、5モル%以下がより好ましい。
【0022】
ポリビニルアルコールは、ビニルエステル(好ましくは酢酸ビニル)及び必要に応じて前記他の単量体とを重合した樹脂を、公知の方法、例えばアルコール等の溶媒に溶解した状態でけん化する方法により製造できる。この方法で使用される溶媒としては、例えばメタノール、エタノール等の低級アルコールが挙げられる。けん化反応に使用されるアルコールは、その量が40質量%以下であれば、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、ベンゼンなどの溶媒を含有していてもよい。けん化反応に用いられる触媒は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、ナトリウムメトキシドなどのアルカリ触媒、又は鉱酸などの酸触媒が使用される。けん化反応の温度について特に制限はないが、20~60℃の範囲が好ましい。けん化反応によって得られるポリビニルアルコールは、洗浄後、乾燥に付される。
【0023】
ポリビニルアルコールのけん化度は、好ましくは60モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは85モル%以上であり、好ましくは99モル%以下、より好ましくは98モル%以下、さらに好ましくは96モル%以下であり、これらの上限と下限の任意の組み合わせであってもよい。けん化度が上記範囲であると、製造工程において、ポリビニルアルコールが水に溶解しやすいため、得られる吸水性培土の吸水性維持能を向上しやすい。なお、ポリビニルアルコールのけん化度は、JIS-K6726に従って測定することができる。
【0024】
ポリビニルアルコールの平均重合度(粘度平均重合度)は、好ましくは300~4000、より好ましくは500~3000、さらに好ましくは800~2400である。ポリビニルアルコールの平均重合度が、上記の下限以上であると、強度を向上しやすく、上記の上限以下であると、水に溶解しやすい。なお、ポリビニルアルコールの平均重合度は、JIS-K6726に従って測定することができる。
【0025】
ポリビニルアルコールの形態は、繊維状であることが好ましい。繊維状のポリビニルアルコール(ポリビニルアルコール繊維と称する場合がある)は、例えばポリビニルアルコール樹脂を慣用の方法により、紡糸することで得ることができる。ポリビニルアルコールが繊維形態であると、培土中に偏在されることなく、均一に分散し得るため、吸水性培土全体にわたって均一に撥水性有機資材に粘土鉱物を付着(又は被覆)させることができる。なお、ポリビニルアルコールとして、ポリビニルアルコール繊維を使用し、該ポリビニルアルコール繊維の含有量や平均繊維径、平均繊維長又はアスペクト比等を調整することで、潅水後の脱落率を10質量%以下に調整できる。ポリビニルアルコール繊維の含有量が大きいほど、潅水後の脱落率が低くなる傾向がある。
【0026】
ポリビニルアルコール繊維の平均繊維径は、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは30μm以下、特に好ましくは20μm以下である。該平均繊維径の下限は好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上である。ポリビニルアルコール繊維の平均繊維径が上記の下限以上であると、製造面で有利であり、上記の上限以下であると、吸水性培土中に均一に分散されやすいため、潅水後の脱落率をより低減でき、吸水性維持能を向上しやすい。なお、平均繊維径は、繊維20本の側面を顕微鏡で観察して個々の繊維径を計測し、それら個々の繊維径を平均することにより算出できる。
【0027】
ポリビニルアルコール繊維の平均繊維長は、好ましくは0.1~30mm、より好ましくは0.5~10mm、さらに好ましくは1~5mmである。また、ポリビニルアルコール繊維の平均繊維径に対する平均繊維長の割合(アスペクト比)は、好ましくは30~1500、より好ましくは40~1000、さらに好ましくは50~800、特に好ましくは60~300である。ポリビニルアルコール繊維の平均繊維長又はアスペクト比が上記の下限以上であると、製造面で有利であり、上記の上限以下であると、吸水性培土中に均一に分散されやすいため、潅水後の脱落率をより低減でき、吸水性維持能を向上しやすい。なお、平均繊維長はJIS L1015に準拠して測定できる。
【0028】
ポリビニルアルコール繊維は、後述の製造工程で水に溶解しやすいことが有利であるため、水溶性ポリビニルアルコール繊維であることが好ましい。ここで、水溶性ポリビニルアルコール繊維とは、100℃以下、好ましくは60℃以下、より好ましくは40℃以下で水に溶解するポリビニルアルコール繊維を意味する。
なお、ポリビニルアルコール繊維の構成成分、けん化度及び重合度はポリビニルアルコールと同様のもの又は同様の範囲から選択できる。
【0029】
ポリビニルアルコール繊維は、ポリビニルアルコール樹脂を慣用の方法により紡糸したものであり、例えば、前記ポリビニルアルコールを溶媒に溶解して得た紡糸原液を、該原液に対して固化能を有する固化液に吐出すればよい。特に多ホールから紡糸原液を吐出する場合には、吐出時の繊維同士の膠着を防止する点から乾湿式紡糸法よりも湿式紡糸法の方が好ましい。なお、湿式紡糸法とは紡糸口金から直接固化浴に紡糸原液を吐出する方法のことであり、一方乾湿式紡糸法とは、紡糸口金から一旦空気中や不活性ガス中に紡糸原液を吐出し、それから固化浴に導入する方法のことである。
【0030】
原液溶媒としては、ジメチルスルホキシド(以下DMSOと略記)、グリセリン、エチレングリコール、水、塩化亜鉛或いはロダン塩の濃度水溶液及びこれらの混合溶媒等を用いることができるが、好ましくはDMSO、グリセリン、エチレングリコール、水であり、さらに好ましくはDMSO及び水である。ポリビニルアルコールは、慣用の方法により、溶媒に溶解させればよいが、酸化、分解、架橋反応の防止及び発泡抑制の観点から、窒素雰囲気或いは減圧下で撹拌して溶媒に溶解させることが好ましい。
【0031】
得られた紡糸原液を、該原液に対して固化能を有する固化浴中で繊維を形成する。本発明において用いる固化浴は、原液溶媒が有機溶媒の場合と水溶液の場合では異なる。有機溶媒を用いた原液の場合は、得られる繊維強度等の点から固化溶媒と原液溶媒からなる混合液が好ましく、固化溶媒としてはメタノール、エタノール等のアルコール類やアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等のポリビニルアルコールに対して固化能を有する有機溶媒、特にメタノールとDMSOからなる有機溶媒が好ましく、かつ固化浴中での固化溶媒/ 原液溶媒の質量比が25/75~95/5、55/45~80/20である混合液が工程性および溶剤回収の点で好ましい。また固化浴の温度は30℃以下が好ましく、特に均一な冷却ゲル化のためには20℃以下、より好ましくは15℃以下である。
一方、紡糸原液が水溶液の場合には、固化液を構成する固化溶媒としては、芒硝、塩化ナトリウム、炭酸ソーダ等のポリビニルアルコールに対して固化能を有する無機塩類の水溶液が好適に挙げられる。固化浴は当然酸性であってもアルカリ性であってもかまわない。
【0032】
得られた固化糸篠は固化浴中で2~6倍湿延伸する。この湿延伸浴には原液溶媒を含有させてよい。糸篠の硬着抑制のため毛羽のでない範囲で湿延伸倍率を大きくすることが重要である。このため、湿延伸浴の温度を沸点近くまで昇温することも有効である。次いで、湿延伸後の糸篠を固化溶媒と接触させて原液溶媒を糸篠から抽出除去する。抽出は、通常は複数の抽出浴を通過させることにより行われる。抽出浴としては、固化溶媒単独あるいは固化溶媒と原液溶媒の混合液が用いられ、また抽出浴の温度は0~50℃の範囲が採用される。
【0033】
次いで、原液溶媒抽出後の糸篠を乾燥するが、乾燥温度は210℃以下とするのが好ましく、特に乾燥初期は160℃以下の低温で乾燥し、乾燥後半は高温で乾燥する多段乾燥が好ましい。また硬着抑制の観点から、乾燥前に油剤を付着させたり、乾燥時の収縮応力を緩和するため収縮をさせてもよい。
【0034】
また必要に応じて、乾燥後原糸を乾熱延伸及び/又は乾熱処理(乾熱収縮を含む)を行なうことができる。乾熱延伸及び/又は乾熱処理の温度は150~250℃程度が好ましい。なお、ポリビニルアルコール繊維の製造は、例えば特開平7-42019号公報を参照してよい。また、ポリビニルアルコール繊維は、市販品を用いてもよい。
【0035】
本発明に用いられるポリビニルアルコールは、吸水性培土中に均一に分散し得るため、含有量が少量であっても、吸水性維持能を発現できる。吸水性培土に含まれるポリビニルアルコールの含有量は、撥水性有機資材100質量部に対して、好ましくは0.7質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは3質量部以上、特に好ましくは5質量部以上であり、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下であり、これらの上限と下限の任意の組み合わせであってよい。ポリビニルアルコールの含有量が上記の下限以上であると、吸水性培土の吸水性維持能をより向上しやすく、上記の上限以下であると、繊維の分散性が良好である。
【0036】
本発明の吸水性培土は、必要に応じて、ポリエチレングリコール系湿潤剤等の湿潤剤、無機質肥料、有機質肥料、化学堆肥等の肥料などの他の成分をさらに含んでよい。吸水性培土が他の成分を含む場合、吸水性培土の質量に対して、好ましくは0.01~5質量%、より好ましくは0.1~2質量%程度である。
【0037】
[吸水性培土用組成物及び吸水性培土の製造方法]
本発明は、前記撥水性有機資材、前記粘土鉱物、及び平均繊維径が100μm以下で、かつアスペクト比が30~1500である前記ポリビニルアルコール繊維を含み、該ポリビニルアルコール繊維の含有量が、撥水性有機資材100質量部に対して、0.7~20質量部である、吸水性培土用組成物を包含する。
また本発明は、前記吸水性培土用組成物に水を混合した後、乾燥する工程を含む、吸水性培土の製造方法を包含する。
【0038】
本発明の吸水性培土用組成物は、水と混合する際、ポリビニルアルコール繊維が該組成物中に偏在されることなく、均一分散されるため、乾燥して得られる吸水性培土全体にわたって、ポリビニルアルコール繊維が均一に撥水性有機資材を被覆し、該撥水性有機資材にポリビニルアルコールを介して粘土鉱物を均一かつ安定に付着(又は被覆)できると推定される。そのため、本発明の吸水性培土用組成物は、ポリビニルアルコール繊維の含有量が比較的少なくても、優れた吸水性を長期間維持することができる。
【0039】
また、繊維形態のポリビニルアルコール繊維は、例えば粒状のポリビニルアルコール樹脂と比べ非常に細いため、水に溶解しやすく、溶解のための水の量を低減でき、取扱い性に優れるとともに、乾燥時のエネルギーを削減できる。さらに、繊維形態のポリビニルアルコール繊維は、例えば粒状のポリビニルアルコール樹脂と比べ、水に溶解した状態での分散性が高く、例えばミキサー中で玉にならずに拡散しやすく、該組成物中に、より均一分散される。そのため、得られる吸水性培土は、粒状のポリビニルアルコール樹脂を使用した場合と比較し、優れた吸水性維持能を発現できる。
【0040】
本発明の吸水性培土用組成物に含まれる撥水性有機資材、粘土鉱物、及びポリビニルアルコール繊維は、[吸水性培土]の項に記載の撥水性有機資材、粘土鉱物、及びポリビニルアルコール繊維と同様であり、各成分の含有量も同じである。
【0041】
本発明の吸水性培土用組成物は、必要に応じて、ポリエチレングリコール系湿潤剤等の湿潤剤、無機質肥料、有機質肥料、化学堆肥等の肥料等の他の成分をさらに含んでいてよい。
【0042】
本発明の吸水性培土用組成物は、前記撥水性有機資材、前記粘土鉱物、及び平均繊維径が100μm以下で、かつアスペクト比が30~1500である前記ポリビニルアルコール繊維を、ポリビニルアルコール繊維の含有量を、撥水性有機資材100質量部に対して0.7~20質量部に調整して、慣用の方法、例えばミキサー等で混合撹拌することで得られる。撥水性有機資材、粘土鉱物、及びポリビニルアルコール繊維を混合する順序は特に限定されず、いずれか2成分を混合後、残りの1成分を添加して撹拌してもよく、3成分を一度に混合してもよい。混合時間は、特に限定されず、例えば10秒~1時間、好ましくは30秒~10分程度であってよく、混合温度は、特に限定されず、例えば5~50℃、好ましくは20~30℃、より好ましくは室温(25℃)であってよい。
【0043】
吸水性培土の製造は、吸水性培土用組成物を混合した後に水を加えて更に混合してもよく、最初に混合材料に水を加えた後に混合してもよい。加える水の量は、ポリビニルアルコール繊維が均一に混合可能で、かつポリビニルアルコール繊維が溶解可能となる量であれば、特に限定されず、例えば、撥水性有機資材100質量部に対して、好ましくは10~1000質量部、より好ましくは50~500質量部、さらに好ましくは50~200質量部であってよい。混合は、慣用の方法、例えばミキサー等で混合撹拌する方法等であってよい。混合時間及び混合温度は、ポリビニルアルコール繊維を組成物中に均一分散可能な時間及び温度であれば特に限定されない。混合時間は、例えば10秒~1時間、好ましくは30秒~10分程度であってよく、混合温度は、例えば5~50℃、好ましくは20~30℃、より好ましくは室温(25℃)であってよい。
【0044】
乾燥時間及び乾燥温度は、特に限定されないが、得られる吸水性培土の水分含有量が、該吸水性培土の質量に対して、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下となるように乾燥することが好適である。乾燥時間は、例えば1分~24時間、好ましくは10分~15時間、より好ましくは30分~10時間であってよく、乾燥温度は、例えば20~100℃、好ましくは40~80℃であってよい。
【0045】
前記他の成分は、吸水性培土の製造工程において、吸水性組成物中に配合してもよく、乾燥前又は乾燥後に配合してもよいが、他の成分を吸水性培土中に均一分散させる観点から、少なくとも乾燥前に配合することが好ましい。
【0046】
本発明の吸水性培土が固化培土である場合、固化培土は、前記吸水性培土用組成物を所定形状の容器に充填し、さらに水を混合した後、乾燥する工程を含む方法により製造できる。所定形状の容器に充填する以外は、本発明の上記吸水性培土の製造方法と同様である。容器の形状は使用用途に応じて適宜選択すればよい。
【0047】
本発明の吸水性培土の製造方法を用いると、ポリビニルアルコールの含有量が少なくても、優れた吸水性を維持可能な吸水性培土を簡便に製造できる。
【実施例
【0048】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。例中の「%」及び「部」は、特記しない限り、質量%及び質量部である。
実施例及び比較例における測定及び評価方法は、以下の通りである。
【0049】
<潅水後の脱落率の測定>
外径90mm程度の500ccビーカーの上に、120mm×120mmの大きさに切り出された10メッシュの金網[線径:0.6mm、目開き1.9mm、空間率58%(メッシュの金網部と空間部との総面積に対する空間部の面積の割合)]を設置し、吸水性培土5gをビーカーの開口部内に収まるように金網上に均一に広げ、該吸水性培土全体に浸透するように200ccの水をゆっくり注ぎ、ビーカーで濾液を受けた。次いで、該濾液中の浮遊物(撥水性有機資材)を除去後、該濾液中の沈降物(粘土鉱物)を濾過により回収し、回収した沈降物を105℃に設定された乾燥機内で1時間乾燥して精秤することで、沈降物(脱落沈降物と称する場合がある)の量を測定した。次いで、下記式(1)により、潅水後の脱落率を算出した。
脱落率(質量%)=脱落沈降物の量(g)/5(g)×100 (1)
【0050】
<吸水速度>
外径90mm程度の500ccビーカーの上に、120mm×120mmの大きさに切り出された10メッシュの金網[線径:0.6mm、目開き1.9mm、空間率58%(メッシュの金網部と空間部との総面積に対する空間部の面積の割合)]を設置し、吸水性培土5gをビーカーの開口部内に収まるように金網上に均一に広げ、温度20℃、湿度65%の条件下、吸水性培土の中央付近を目掛けて3cc(3g)の水を滴下し、水滴が吸収されるまでの時間を測定した。具体的には、吸水速度は、水を滴下した時点から、滴下した水滴が水玉状から玉が崩れて広がった時点までの時間とした。玉を形成せず直ぐに吸水された場合は、0秒と判定した。
【0051】
<吸水量>
上記吸水速度を測定した後、吸水性培土の載った金網ごと取り出し、電子天秤に載せた後に重量をゼロ点に合わせ、再びビーカーの上に金網を戻した。その後、上記吸水速度測定の際に吸水された部分を目掛け、更にスポイドで吸水性培土に水を一様に滴下して吸水させ、余剰水がビーカーに落ちるまで滴下した。その後、吸水性培土の載った金網ごと取り出し、ゼロ点を合わせた電子天秤に載せ、重量(A)を測定した。吸水量は下記式で算出した。
吸水量(g)=3+A
【0052】
<繰り返し吸水試験>
上記吸水速度、吸水量の評価が終了した後、吸水性培土の載った金網ごと20℃の乾燥機に入れ、1日乾燥させた。その後、再度吸水速度、吸水量を測定し、そのサイクルで計20日(20回)繰り返し試験を行った。
【0053】
<ポリビニルアルコール繊維の平均重合度>
JIS K6726に準拠し、ポリビニルアルコール繊維の平均重合度を測定及び算出した。
【0054】
<ポリビニルアルコール繊維のけん化度>
JIS K6726に準拠し、ポリビニルアルコール繊維のけん化度を測定及び算出した。
【0055】
<ポリビニルアルコール繊維の平均繊維径>
繊維20本を任意に取り出し、その側面を光学顕微鏡で観察して個々の繊維径を計測した。その後、それら個々の繊維径を平均することにより、ポリビニルアルコール繊維の平均繊維径を算出した。
【0056】
<ポリビニルアルコール繊維の平均繊維長及びアスペクト比>
JIS L1015に準拠し、ポリビニルアルコール繊維の平均繊維長を測定及び算出した。また、平均繊維径(Dとする)に対する平均繊維長(Lとする)の割合をアスペクト比(L/D比)として算出した。
【0057】
[実施例1]
火山灰(平均粒径1.5mm)45質量部と、バインダーとしてポリビニルアルコール繊維A-1(平均繊維径:14μm、アスペクト比(L/D比):71、平均重合度:1750、けん化度88モル%)10質量部とを、(株)マルイ製モルタルミキサー(5L)を用いて1分間混合した。次いで、ピートモス(カナダ産)100質量部を添加し、さらに1分間混合して吸水性培土用組成物を得た。得られた吸水性培土用組成物に、水を100質量部(ピートモス100質量部を基準)添加し、さらに1分間混合した。得られた混合物をバットにとり、40℃に設定した乾燥機中で1時間乾燥し、その後20℃で1日放置して吸水性培土を得た。得られた吸水性培土の潅水後の脱落率は0.6質量%であった。また、吸水速度は0秒、吸水量は8.2gであった。
【0058】
[実施例2]
ポリビニルアルコール繊維として、ポリビニルアルコール(PVA)繊維A-1のL/D比を214に変えたポリビニルアルコール繊維A-2を使用したこと以外は、実施例1と同様にして吸水性培土を得た。得られた吸水性培土の潅水後の脱落率は1.2質量%であった。また、吸水速度は0秒、吸水量は8.1gであった。更に、20日繰り返し吸水試験を実施した。20日後の吸水速度は1秒、吸水量は8.0gであった。
【0059】
[実施例3]
ポリビニルアルコール繊維として、ポリビニルアルコール繊維A-1のL/D比を214に変えたポリビニルアルコール繊維A-2を使用し、ポリビニルアルコール繊維A-2を2.5質量部使用したこと以外は、実施例1と同様にして吸水性培土を得た。得られた吸水性培土の潅水後の脱落率は3.2質量%であった。また、吸水速度は0秒、吸水量は8.2gであった。
【0060】
[実施例4]
ポリビニルアルコール繊維として、ポリビニルアルコール繊維A-1のL/D比を714に変えたポリビニルアルコール繊維A-3を使用したこと以外は、実施例1と同様にして吸水性培土を得た。得られた吸水性培土の潅水後の脱落率は4.6質量%であった。また、吸水速度は0秒、吸水量は8.1gであった。
【0061】
[実施例5]
ポリビニルアルコール繊維として、ポリビニルアルコール繊維A-1の繊維径を45μmに変え、L/D比を180に変えたポリビニルアルコール繊維A-4を使用したこと以外は、実施例1と同様にして吸水性培土を得た。得られた吸水性培土の潅水後の脱落率は4.8質量%であった。また、吸水速度は0秒、吸水量は7.9gであった。
【0062】
[実施例6]
ポリビニルアルコール繊維として、ポリビニルアルコール繊維B(平均繊維径:14μm、アスペクト比(L/D比):214、平均重合度:1750、けん化度96モル%)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして吸水性培土を得た。得られた吸水性培土の脱落率は1.9質量%であった。また、吸水速度は0秒、吸水量は8.3gであった。更に、20日繰り返し吸水試験を実施した。20日後の吸水速度は1秒、吸水量は8.2gであった。
【0063】
[比較例1]
ピートモス(カナダ産)100質量部に水100質量部を添加し1分間混合した。得られた混合物をバットにとり、40℃に設定した乾燥機中で1時間乾燥した後、20℃で1日放置して吸水性培土を得た。得られた吸水性培土の吸水速度は325秒、吸水量は5.5gであった。更に、20日繰り返し吸水試験を実施した。20日後の吸水速度は281秒、吸水量は5.4gであった。
【0064】
[比較例2]
火山灰(平均粒径1.5mm)45質量部と、ピートモス(カナダ産)100質量部とを1分間混合した。次いで、100質量部の水を添加し、さらに1分間混合した。得られた混合物をバットにとり、40℃に設定した乾燥機中で1時間乾燥した後、20℃で1日放置して吸水性培土を得た。得られた吸水性培土の脱落率は15.4質量%、吸水速度は22秒、吸水量は8.0gであった。更に、20日繰り返し吸水試験を実施した。20日後の吸水速度は95秒、吸水量は8.3gであった。
【0065】
[比較例3]
ポリビニルアルコール繊維A-1に代えて、ポリビニルアルコール樹脂((株)クラレ製「PVA-217」、粒状物)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして吸水性培土を得た。得られた吸水性培土の脱落率は12.2質量%であった。吸水速度は3秒、吸水量は8.1gであった。更に、20日繰り返し吸水試験を実施した。20日後の吸水速度は6秒、吸水量は6.9gであった。
【0066】
[比較例4]
ポリビニルアルコール繊維A-1の含有量を0.5質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして吸水性培土を得た。得られた吸水性培土の脱落率は10.5質量%であった。吸水速度は2秒、吸水量は8.1gであった。
【0067】
[比較例5]
ピートモス(カナダ産)100質量部と、ポリビニルアルコール繊維A-1 0.5質量部とを1分間混合した。次いで、100質量部の水を添加し、さらに1分間混合した。得られた混合物をバットにとり、40℃に設定した乾燥機中で1時間乾燥した後、20℃で1日放置して吸水性培土を得た。吸水速度は132秒、吸水量は6.8gであった。
【0068】
[比較例6]
ポリビニルアルコール繊維として、ポリビニルアルコール繊維A-1の繊維径を110μm及びL/D比を72に変えたポリビニルアルコール繊維A-5を使用したこと以外は、実施例1と同様にして吸水性培土を得た。得られた吸水性培土の潅水後の脱落率は11.8質量%であった。また、吸水速度は3秒、吸水量は8.0gであった。
【0069】
[比較例7]
ポリビニルアルコール繊維として、ポリビニルアルコール繊維A-1のL/D比を25に変えたポリビニルアルコール繊維A-6を使用したこと以外は、実施例1と同様にして吸水性培土を得た。得られた吸水性培土の潅水後の脱落率は10.3質量%であった。また、吸水速度は2秒、吸水量は8.1gであった。
【0070】
[比較例8]
ポリビニルアルコール繊維として、ポリビニルアルコール繊維A-1のL/D比を1800に変えたポリビニルアルコール繊維A-7を使用したこと以外は、実施例1と同様にして吸水性培土を得た。得られた吸水性培土の潅水後の脱落率は13.2質量%であった。また、吸水速度は4秒、吸水量は8.0gであった。
なお、ポリビニルアルコール繊維(A-1)~(A-7)、ポリビニルアルコール繊維(B)、及びポリビニルアルコール樹脂は、水溶性である。
【0071】
実施例1~6及び比較例1~8で使用した撥水性有機資材、粘土鉱物及びポリビニルアルコール(バインダー)の種類及び量、得られた吸水性培土の潅水後の脱落率(質量%)、並びに吸水性評価の結果を表1に示した。表1中、粘土鉱物とポリビニルアルコール(バインダー)の添加量は、撥水性有機資材100質量部に対する割合(質量部)を示す。
【0072】
【表1】
【0073】
表1に示されるように、実施例1~6で得られた吸水性培土は、潅水後の脱落率が10質量%以下であり、吸水性評価の結果が良好であることがわかった。さらに、実施例1~6で得られた吸水性培土は、潅水を20日繰り返し行っても、優れた吸水性を維持できることがわかった。これに対して、比較例1~8で得られた吸水性培土は、吸水性評価の結果が悪く、特に比較例2及び3より、粘土鉱物のみの場合及びポリビニルアルコール樹脂(粒状物)を用いた場合は、潅水を繰り返し行うと、吸水性が低下することがわかった。