(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】立体造形物製造装置、立体造形物の製造方法、および立体造形物製造用プログラム
(51)【国際特許分類】
B29C 64/393 20170101AFI20240123BHJP
B29C 64/112 20170101ALI20240123BHJP
B29C 64/188 20170101ALI20240123BHJP
B29C 64/218 20170101ALI20240123BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20240123BHJP
【FI】
B29C64/393
B29C64/112
B29C64/188
B29C64/218
B33Y50/02
(21)【出願番号】P 2019208177
(22)【出願日】2019-11-18
【審査請求日】2022-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 巴樹
(72)【発明者】
【氏名】太田 佳秀
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-67121(JP,A)
【文献】特開2018-24156(JP,A)
【文献】特開2019-93682(JP,A)
【文献】特開2019-123232(JP,A)
【文献】特表2003-535712(JP,A)
【文献】国際公開第2019/130308(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形材料を吐出する吐出手段と、
吐出された前記造形材料の表面を平坦化する平坦化手段と、
平坦化された前記造形材料を硬化する硬化手段と、
平坦化後の前記造形材料の高さが狙いの高さより高くなる高さ増加領域が生じることが
、前記造形材料の表面張力に基づいて事前に予測される領域に対して、高さを調整する制御を行う制御手段と、
を有することを特徴とする立体造形物製造装置。
【請求項2】
平坦化後の前記造形材料の高さが狙いの高さより高くなる高さ増加領域が生じる場合には、前記高さ増加領域に吐出する前記造形材料の吐出量を削減する請求項1に記載の立体造形物製造装置。
【請求項3】
平坦化後の前記造形材料の高さが狙いの高さより高くなる高さ増加領域が生じる場合には、前記高さ増加領域を平坦化する平坦化手段による前記造形材料の掻取り量を増加する請求項1に記載の立体造形物製造装置。
【請求項4】
前記平坦化手段が平坦化ローラであり、
平坦化後の前記造形材料の高さが狙いの高さより高くなる高さ増加領域が生じる場合には、前記高さ増加領域における前記平坦化ローラの回転数を増加
させることによって前記造形材料の掻取り量を増加する、請求項3に記載の立体造形物製造装置。
【請求項5】
前記高さ増加領域が、平坦化後の前記造形材料の主走査方向の両端部である請求項1から4のいずれかに記載の立体造形物製造装置。
【請求項6】
主走査方向の厚みが3mm以下である造形材料からなる造形層の造形に用いられる請求項1から5のいずれかに記載の立体造形物製造装置。
【請求項7】
前記吐出手段が主走査方向に往復動し、
前記制御手段が、前記吐出手段の往動時および復動時のそれぞれにおいて前記制御を行う請求項1から6のいずれかに記載の立体造形物製造装置。
【請求項8】
平坦化後の造形材料の高さが狙いの高さより高くなる高さ増加領域が生じることが
、前記造形材料の表面張力に基づいて事前に予測される領域に対して、高さを調整する処理をコンピュータに行わせることを特徴とする立体造形物製造用プログラム。
【請求項9】
請求項8に記載の立体造形物製造用プログラムを搭載したことを特徴とする立体造形物製造装置。
【請求項10】
造形材料を吐出する吐出工程と、
吐出された前記造形材料の表面を平坦化する平坦化工程と、
平坦化された前記造形材料を硬化する硬化工程と、を含む立体造形物の製造方法であって、
前記吐出工程及び/又は前記平坦化工程において、平坦化後の前記造形材料の高さが狙いの高さより高くなる高さ増加領域が生じることが
、前記造形材料の表面張力に基づいて事前に予測される領域に対して、高さを調整する高さ調整制御
を行うことを特徴とする立体造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体造形物製造装置、立体造形物の製造方法、および立体造形物製造用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
三次元の立体造形物を造形する技術として、付加製造(AM;Additive Manufacturing)と呼ばれる技術が知られている。この技術は、積層方向について薄く切った断面形状を計算し、その形状に従って各層を形成して積層することにより立体造形物を造形する技術である。
【0003】
近年、前記付加製造の技術の中でも、硬化性樹脂を積層することにより立体造形物を造形するマテリアルジェッティング(MJ)方式が注目されている。このマテリアルジェッティング方式によると、立体造形物の本体であるモデル部を造形する場合に前記モデル部を支持するサポート部を造形することにより、原理的に造形が困難な形状(例えば、オーバーハング部を有する形状等)を造形することができる。
これまでのマテリアルジェッティング方式としては、例えば、一部のレイヤーにおいて造形材料の吐出を間引くことにより、間引いた層よりも上の層において平坦化手段の当接を回避し、結果として平坦化手段の当接に起因する造形面の荒れを防止する三次元造形方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、造形材料を層状に付与し、それを積層して立体造形物を造形する方式、好ましくはマテリアルジェッティング方式による造形方法において、硬化後の造形材料からなる造形層に平坦化手段が衝突することによる衝突音の発生、平坦化手段の故障、および造形物の破損を防止でき、高さ方向の寸法精度に優れた立体造形物が得られる立体造形物製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を達成するための手段としての本発明の立体造形物製造装置は、造形材料を吐出する吐出手段と、吐出された前記造形材料の表面を平坦化する平坦化手段と、平坦化された前記造形材料を硬化する硬化手段と、平坦化後の前記造形材料の高さが狙いの高さより高くなる高さ増加領域が生じることが予測される領域に対して、高さを調整する制御を行う制御手段と、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、造形材料を層状に付与し、それを積層して立体造形物を造形する方式、好ましくはマテリアルジェッティング方式による造形方法において、硬化後の造形材料からなる造形層に平坦化手段が衝突することによる衝突音の発生、平坦化手段の故障、および造形物の破損を防止でき、高さ方向の寸法精度に優れた立体造形物が得られる立体造形物製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本発明の立体造形物製造装置の一例を示す概略図である。
【
図2】
図2は、立体造形物製造装置の制御手段の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、比較例1の立体造形物の製造方法に用いる立体造形物製造装置の一例を示す概略図である。
【
図4】
図4は、比較例1の平坦化後の造形材料を示し、
図4(A)は平坦化直後の状態の造形材料、
図4(B)は平坦化後硬化前に高さ増加領域が生じた状態の造形材料を示す模式図である。
【
図5】
図5は、比較例1の平坦化後の造形材料におけるX方向厚みと高さ増分との関係を示すグラフである。
【
図6】
図6は、比較例1の立体造形物製造装置の制御手段における立体造形物製造用プログラムの処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、実施例1及び2の平坦化後の造形材料を示し、
図7(A)は平坦化直後の状態の造形材料、
図7(B)は平坦化後硬化前に高さ増加領域が生じない状態の造形材料を示す模式図である。
【
図8】
図8は、実施例1及び2の平坦化後の造形材料におけるX方向厚みと高さ増分との関係を示すグラフである。
【
図9】
図9は、実施例1の立体造形物製造装置の制御手段における立体造形物製造用プログラムの処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、実施例2の立体造形物製造装置の制御手段における立体造形物製造用プログラムの処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(立体造形物製造装置および立体造形物の製造方法)
本発明の立体造形物製造装置は、造形材料を吐出する吐出手段と、吐出された前記造形材料の表面を平坦化する平坦化手段と、平坦化された前記造形材料を硬化する硬化手段と、平坦化後の前記造形材料の高さが狙いの高さより高くなる高さ増加領域が生じることが予測される領域に対して、高さを調整する制御を行う制御手段と、を有し、さらに必要に応じてその他の手段を有する。
本発明において「高さ増加領域」とは、平坦化手段で平坦化した場合に、平坦化平面よりもZ軸方向に意図しない増分が生じる領域を意味する。この増分は、例えば表面張力などによって生じると考えられる。かかる増分は一般的に、造形材料が吐出される造形領域の幅(主走査方向の幅及び/又は副走査領域の幅)が大きければ無視できるほど小さくなるが、前記幅が小さくなるにつれ、無視できないほど大きくなってしまう。本発明の高さ増加領域は、特に前記意図しない増分が無視できないほど大きくなる領域をいう。
【0009】
本発明の立体造形物の製造方法は、造形材料を吐出する吐出工程と、吐出された前記造形材料の表面を平坦化する平坦化工程と、平坦化された前記造形材料を硬化する硬化工程と、を含み、ここで前記吐出工程及び/又は平坦化工程において、平坦化後の前記造形材料の高さが狙いの高さより高くなる高さ増加領域が生じることが予測される領域に対して、高さを調整する高さ調整制御を行う方法であり、さらに必要に応じてその他の工程を含んでよい。
【0010】
本発明の立体造形物の製造方法は、本発明の立体造形物製造装置により好適に実施することができ、吐出工程は吐出手段により行うことができ、平坦化工程は平坦化手段により行うことができ、硬化工程は硬化手段により行うことができ、高さ調整制御は制御手段により行うことができ、その他の工程はその他の手段により行うことができる。
【0011】
従来技術では、特定レイヤーでの造形材料の吐出を行わないことで、平坦化手段の当接に起因する造形面の荒れを防止するが、線幅によって衝突量が異なるので、レイヤーごとの調整では線幅に起因する平坦化ローラの高さ調整を図ることができず、平坦化ローラが造形物表面へ衝突することによる表面粗さの悪化や、表面精度の悪化が生じたり、平坦化ローラが破損してしまうという問題がある。
【0012】
本発明においては、液体である造形材料の表面張力などによって意図しない平坦化後の造形材料の高さが狙いの高さより高くなる高さ増加領域が生じたとしても、硬化後の前記造形材料からなる造形層と平坦化手段との衝突を回避する制御を行うことによって、硬化後の造形材料からなる造形層に平坦化手段が衝突することによる衝突音の発生、平坦化手段の故障、および造形物の破損を防止でき、高さ方向の寸法精度に優れた立体造形物が得られる。
ここで、「狙いの高さ」とは、「狙いの厚み」、「目標高さ」、「目標厚み」と称することもあり、造形データによって予め設計された高さ(厚み)を意味する。
高さ増分及び高さ増加領域が生じ得る前記所定の幅は、所定の組成の造形材料の有する表面張力から計算で求めてもよいし、実際に造形材料を吐出し平坦化ローラを用いて平坦化してみて高さ増分を計測することによって算出してもよい。
【0013】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、平坦化後の造形材料の高さが狙いの高さより高くなる高さ増加領域は、液体である造形材料の表面張力によって生じることを知見した。即ち、
図4(A)は平坦化直後の造形材料(モデル材)、
図4(B)は平坦化後硬化前に高さ増加領域が生じた状態のモデル材を示す模式図である。
図5は、平坦化後の造形材(モデル材)におけるX方向幅tと高さ増分Δhとの関係を示すグラフである。
図5に示すように、平坦化後の造形材料のX方向の厚みtが0.8mmにピークを持ち、0.5mm~1.2mmの範囲で0.5%以上2.2%以下の高さ増分Δhを有することがわかった。
ここで、hは平坦化後のモデル材の1層の高さ(厚み)を表し、モデル材の液滴の粒径は50μmであり、このモデル材の液滴が着弾して広がった層の高さ(厚み)である。Δhは平坦化後のモデル材の高さ増分であり、平坦化後のモデル材の1層の厚みを100%としたときの割合である。
【0014】
さらに本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、X方向の幅が所定の幅よりも小さい平坦化後の造形材料において、狙いの高さよりも無視できないほど高くなる高さ増加領域が生じることを知見した。例えば、X方向(ローラ稼働方向)の厚みが3mm以下の薄い平坦化後の造形材料の場合には、液体である造形材料が表面張力の影響を受けやすく、狙いの高さに対して数%高くなり盛り上がりやすい性質を持つ。平坦化後の造形材料の両端部のエッジ同士が近接すると、両端部のエッジ同士が合算され、高い盛り上がりが発生する。さらにX方向(平坦化ローラ稼働方向)に平坦化ローラで均していく最後の部分で造形材料が巻き上げられることによって、特に出口側の端部で高い盛り上がりが生じる。前記所定の幅は、造形材料の種類、粘度などによって異なり得るが、例えば3mm以下などであってよく、当業者であれば計算又は実験によって適宜算出することが可能である。
【0015】
本発明においては、平坦化後の造形材料の高さが狙いの高さより高くなる高さ増加領域が生じることによって起こる、硬化後の前記造形材料からなる造形層と前記平坦化手段との衝突を回避する制御を行う。この高さ調整の具体的な方法としては、(1)高さ増加領域に吐出する造形材料の吐出量を削減する方法、(2)高さ増加領域を平坦化する平坦化手段による造形材料の掻取り量を増加する方法、によって行うことができる。
【0016】
本発明において「造形材料」は、造形物の製造において吐出手段から吐出される材料を意味し、典型的には立体造形物そのものを形成するためのモデル材、オーバーハング部やディテール部などを造形する際に用いられるサポート材などが挙げられる。本発明においては、モデル材により形成された造形層を特に「モデル層」、サポート材により形成された造形層を特に「サポート層」という場合がある。
【0017】
本発明の一態様において、平坦化後の前記造形材料の高さが狙いの高さより高くなる高さ増加領域が生じる場合には、前記高さ増加領域に吐出する前記造形材料の吐出量を削減する。高さ増加領域に吐出する造形材料の吐出量を削減する制御を行うことにより、高さ増加領域への造形材料の吐出量が少なくなるので、造形材料の表面張力によって高さ方向の増分が生じることを防止できる。
ここで、造形材料の吐出量を削減する制御としては、(1)1回の吐出液滴の量を削減する(例えば造形材料1滴の粒径を大径から中径に変えて吐出量を削減する)方法、(2)造形材料の吐出を行わない領域を設けて(吐出を間引く、間引き量の調整)、吐出領域全体の吐出量を削減する方法などが挙げられる。
【0018】
本発明の一態様において、平坦化後の前記造形材料の高さが狙いの高さより高くなる高さ増加領域が生じる場合には、前記高さ増加領域を平坦化する平坦化手段による前記造形材料の掻取り量を増加する。前記高さ増加領域を平坦化する平坦化手段による造形材料の掻取り量を増加する制御を行うことにより、高さ増加領域の造形材料が多めに除去されるので、造形材料の表面張力によって高さ方向の増分が生じることを防止できる。
【0019】
かかる態様において造形材料の掻き取り量を増加する手法としては、例えば平坦化手段が平坦化ローラである場合に、前記平坦化ローラの回転数を増加することなどが挙げられる。平坦化手段である平坦化ローラの回転数を増加することにより、平坦化ローラによる造形材料のかき取り量を増加させることができ、表面張力の高さへの影響を低減できる。また同様に、高さ増加領域が生じ得る領域の平坦化にのみ用いる平坦化ローラを備え、該平坦化ローラの表面粗さを粗くすることによって、該平坦化ローラによる造形材料の掻き取り量を通常のローラよりも増加させることができ、これにより高さ増分を低減できる。
【0020】
本発明の一態様において、高さ増加領域が、平坦化後の前記造形材料の主走査方向の両端部である。造形材料の表面張力によって、立体造形物の主走査方向(X方向)の端部(エッジ)は盛り上がりやすい性質を持つ。
【0021】
本発明の一態様において、主走査方向の幅が所定の幅、例えば3mm以下である造形領域を有する造形層の造形に用いられる。主走査方向の幅が所定の幅、例えば3mm以下である主走査方向(X方向)に薄い平坦化後の造形領域では、液体である造形材料の表面張力の影響を受け盛り上がりやすい性質をもつ両端部のエッジ同士が近接し、両端部のエッジの盛り上がり同士が合算され、さらに高い盛り上がりが生じるため、高さ増加領域が生じやすいので、本発明の製造方法はこのような薄い造形領域を有する造形層の造形に好適に用いられる。
【0022】
本発明の一態様において、吐出手段が主走査方向に往復動し、制御手段が、前記吐出手段の往動時および復動時のそれぞれにおいて前記制御を行う。前記制御を、吐出手段の往動時および復動時の少なくともいずれかで行うことで、生産効率が向上する。
【0023】
<吐出工程および吐出手段>
吐出工程は、造形材料を吐出する工程であり、吐出手段により実施される。
吐出手段としては、造形材料を吐出することができるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、吐出ヘッドなどが挙げられる。
吐出ヘッドとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、圧電素子(ピエゾ素子)型ヘッド、熱膨張(サーマル)型ヘッドなどが挙げられる。これらの中でも、圧電素子(ピエゾ素子)型ヘッドが好ましい。
【0024】
<<造形材料>>
造形材料としては、特に制限はなく、立体造形物(モデル部)を造形する本体を構成する上で求められる性能に基づいて、適宜選択することができ、例えば、モデル材などが挙げられる。なお、立体造形物を造形する際に、必要に応じて形状支持用にサポート部を使用する場合には、前記サポート部を造形するためのサポート材も造形材料に含まれる。
モデル材は、モデル部を構成する部分を造形する材料である。
本発明において、モデル部とは、立体造形物を造形する本体を構成する部を意味し、モデル層の積層により造形される。
【0025】
本発明において、サポート部とは、モデル部が固化するまで、立体造形物を所定の位置に保持する部分を意味し、サポート層の積層により造形される。サポート部は、例えば、モデル部の重力方向に対し支持する部分に配置され、モデル部と接し、モデル部を下方向から支持する部を意味する。立体造形物の製造においては、通常サポート部はモデル部から最終的に剥離され、モデル部のみで立体造形物となる。
好ましい一態様において、サポート材は、モデル材とは異なる材質(組成、濃度等)であり、サポート材の硬化物は、より好ましくは、水溶性、潮解性、崩壊性などモデル部から剥離しやすい性質を有している。
【0026】
造形材料としては、光や熱等のエネルギーを付与することにより硬化する液体材料であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、重合性モノマー、および重合性オリゴマーを含み、さらに必要に応じてその他の成分を含む。これらの中でも、造形材料ジェット用プリンター等に用いられる造形材料吐出ヘッドで吐出できる粘度や表面張力等の液物性を有する材料が好ましい。
【0027】
-重合性モノマー-
重合性モノマーとしては、例えば、単官能モノマー、多官能モノマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
--単官能モノマー--
単官能モノマーとしては、例えば、アクリルアミド、N-置換アクリルアミド誘導体、N,N-ジ置換アクリルアミド誘導体、N-置換メタクリルアミド誘導体、N,N-ジ置換メタクリルアミド誘導体、アクリル酸などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、ヒドロキシエチルアクリルアミド、イソボルニル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0029】
単官能モノマーの含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、造形材料の全量に対して、0.5質量%以上90質量%以下が好ましい。
【0030】
上記以外の単官能モノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、エトキシ化ノニルフェノール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
--多官能モノマー--
多官能モノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、二官能モノマー、三官能以上のモノマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
二官能モノマーとしては、例えば、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化オペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール200ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール400ジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
三官能以上のモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート,プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート,プロポキシ化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレートエステルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
-重合性オリゴマー-
重合性オリゴマーとしては、上記単官能モノマーの低重合体や末端に反応性不飽和結合基を有するものを1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
-その他の成分-
その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、界面活性剤、重合禁止剤、重合開始剤、着色剤、粘度調整剤、接着性付与剤、酸化防止剤、老化防止剤、架橋促進剤、紫外線吸収剤、可塑剤、防腐剤、分散剤などが挙げられる。
【0036】
--界面活性剤--
界面活性剤としては、例えば、分子量200以上かつ5,000以下、具体的には、PEG型非イオン界面活性剤[ノニルフェノールのエチレンオキサイド(以下、「EO」と略記)1~40モル付加物、ステアリン酸EO 1~40モル付加物等]、多価アルコール型非イオン界面活性剤(例えば、ソルビタンパルミチン酸モノエステル、ソルビタンステアリン酸モノエステル、ソルビタンステアリン酸トリエステル等)、フッ素含有界面活性剤(例えば、パーフルオロアルキルEO 1~50モル付加物、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルベタイン等)、変性シリコーンオイル[例えば、ポリエーテル変性シリコーンオイル、(メタ)アクリレート変性シリコーンオイル等]などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、造形材料の全量に対して、3質量%以下が好ましく、0.1質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0037】
--重合禁止剤--
重合禁止剤としては、例えば、フェノール化合物[ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、2,2-メチレン-ビス-(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス-(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン等]、硫黄化合物[ジラウリルチオジプロピオネート等]、リン化合物[トリフェニルフォスファイト等]、アミン化合物[フェノチアジン等]などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
重合禁止剤の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、造形材料の全量に対して、5質量%以下が好ましく、0.1質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0038】
--重合開始剤--
重合開始剤としては、例えば、熱重合開始剤、光重合開始剤などが挙げられる。これらの中でも、保存安定性の点から、光重合開始剤が好ましい。
光重合開始剤としては、光(特に波長220nm~400nmの紫外線)の照射によりラジカルを生成する任意の物質を用いることができる。
光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェノン、ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、p,p’-ジクロロベンゾフェノン、p,p-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-プロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンジルメチルケタール、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、メチルベンゾイルフォーメート、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
熱重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アゾ系開始剤、過酸化物開始剤、過硫酸塩開始剤、レドックス(酸化還元)開始剤などが挙げられる。
【0040】
アゾ系開始剤としては、例えば、VA-044、VA-46B、V-50、VA-057、VA-061、VA-067、VA-086、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)(VAZO 33)、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(VAZO 50)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(VAZO 52)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(VAZO 64)、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル(VAZO 67)、1,1-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)(VAZO 88)(以上、DuPont Chemical社製)、2,2’-アゾビス(2-シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(メチルイソブチレ-ト)(V-601)(以上、和光純薬工業株式会社製)などが挙げられる。
【0041】
過酸化物開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル、過酸化デカノイル、ジセチルパーオキシジカーボネート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(商品名:Perkadox 16S、Akzo Nobel社製)、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシピバレート(商品名:Lupersol 11、Elf Atochem社製)、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(商品名:Trigonox 21-C50、Akzo Nobel社製)、過酸化ジクミルなどが挙げられる。
【0042】
過硫酸塩開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0043】
レドックス(酸化還元)開始剤としては、例えば、過硫酸塩開始剤とメタ亜硫酸水素ナトリウムおよび亜硫酸水素ナトリウムのような還元剤との組合せ、有機過酸化物と第3級アミンとに基づく系(例えば、過酸化ベンゾイルとジメチルアニリンとに基づく系)、有機ヒドロパーオキシドと遷移金属とに基づく系(例えば、クメンヒドロパーオキシドとコバルトナフテートとに基づく系)などが挙げられる。
【0044】
重合開始剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、造形材料の全量に対して、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0045】
--着色剤--
着色剤としては、造形材料中に溶解または安定に分散し、さらに熱安定性に優れた染料および顔料が好適である。これらの中でも、溶解性染料(Solvent Dye)が好ましい。また色の調整等で2種以上の着色剤を適時混合することが可能である。
【0046】
<硬化工程および硬化手段>
硬化工程は、前記吐出工程において吐出された前記造形材料を硬化させるための活性エネルギー線を照射する工程であり、硬化手段により実施される。
活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線、α線、β線、γ線、X線などが挙げられる。これらの中でも、紫外線が好ましい。
硬化手段としては、吐出された造形材料を硬化することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、紫外線照射装置などが挙げられる。
【0047】
紫外線照射装置としては、例えば、発光ダイオード(LED)、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドなどが挙げられる。これらの中でも、LEDが照射強度を変更可能である点で特に好ましい。
高圧水銀灯は点光源であるが、光学系と組み合わせて光利用効率を高くしたDeepUVタイプは、短波長領域の照射が可能である。
メタルハライドは、波長領域が広いため着色物に有効であり、Pb、Sn、Fe等の金属のハロゲン化物が用いられ、重合開始剤の吸収スペクトルに合わせて選択できる。硬化に用いられるランプとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Fusion System社製のHランプ、Dランプ、またはVランプ等のような市販されているものも使用することができる。
【0048】
<高さ調整制御および制御手段>
本発明において「制御手段」は、吐出手段及び硬化手段、並びに他の手段(例えば、平坦化手段など)の動作を制御するための手段を意味する。制御手段の機能ブロック図を
図2に示し、制御手段の詳細については、特定態様の例に基づいて後述する。制御手段にはROMやRAMなどの記憶手段及びCPU、FPGAなどの計算手段を含んでよい。記憶手段には、吐出手段や硬化手段等の各手段に特定の動作を行わせるためのプログラムが記憶されていてよく、かかるプログラムに基づいて各手段の動作を制御する。
本発明において、制御手段により吐出手段や硬化手段などの各手段を動作させる際に、前記各手段が所定の方向に運動する場合、かかる運動は、造形台(又は立体造形物)に対する相対的な移動を意味する。したがって、例えば「吐出手段が主走査方向に運動する」という場合、吐出手段自体が主走査方向に移動してもよいし、造形台(又は立体造形物)が主走査方向に移動することにより、吐出手段が相対的に主走査方向に運動するように制御してもよい。
高さ調整制御は、前記吐出工程及び/又は前記平坦化工程において、平坦化後の前記造形材料の高さが狙いの高さより高くなる高さ増加領域が生じることが予測される領域に対して、高さを調整する制御であり、制御手段が各手段の動作を制御することにより実施される。
制御手段の働きによって、前記造形材料の高さ方向の増分を削減することができるので、硬化後の造形材料に対して平坦化手段が衝突することによる平坦化手段の故障および造形物の破損を防止でき、高さ方向の寸法精度に優れた立体造形物が得られる。
【0049】
制御手段に含まれ得る記憶手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などの主記憶装置の他、HDD(Hard Disk Drive)、SDD(Solid State Drive)などの補助記憶装置なども挙げられる。
制御手段に含まれ得る計算手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、CPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などが挙げられる。
【0050】
<その他の工程およびその他の手段>
その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、平坦化工程、乾燥工程などが挙げられる。
その他の手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、平坦化手段、乾燥手段、ステージなどが挙げられる。
【0051】
-平坦化工程および平坦化手段-
平坦化工程は、前記吐出工程により形成された造形層を平坦化する工程であり、平坦化手段により実施される。
平坦化手段としては、例えば、ローラ、ブラシ、ブレードなどが挙げられる。
平坦化手段が造形材料を平坦化することにより、造形層の平均厚みの精度や平坦性を確保することができる。
【0052】
-ステージ-
ステージとは、造形層が積層されて立体造形物が造形される基台を意味する。
ステージは、モータなどにより移動可能であってもよく、上下動可能であってもよい。なお、「ステージ」を「造形ステージ」または「造形台」と称することがある。
ステージの形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、平面状であることが好ましい。
【0053】
ここで、本発明の立体造形物製造装置について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。また、下記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好ましい数、位置、形状等にすることができる。
【0054】
図1は、本発明の立体造形物製造装置の一例を示す概略図である。この
図1の立体造形物製造装置10は、層状造形物である造形層30が積層されて立体造形物が造形される造形ステージであるステージ14と、ステージ14上に造形層30を順次積層しながら造形する造形ユニット20とを備えている。
【0055】
造形ユニット20は、ユニットホルダ21に、造形材料を吐出する吐出手段である第1ヘッド11と、活性エネルギー線としての紫外線を照射するUV照射ユニット13と、造形層30を平坦化する平坦化手段である平坦化ローラ16を備えている。なお、立体造形物を造形するモデル材としての造形材料だけでなく、立体造形物の造形を支持するサポート材を吐出させるための第2ヘッド12を備えることができる。
【0056】
ここでは、X方向において、第1ヘッド11を挟んで2つの第2ヘッド12を配置し、2つの第2ヘッド12の外側にそれぞれUV照射ユニット13を配置し、さらに、UV照射ユニット13の外側にそれぞれ平坦化部材として、平坦化ローラ16を配置している。
【0057】
第1ヘッド11には、カートリッジ装着部に交換可能に装着されるカートリッジによって造形材料が供給チューブなどを介して供給される。なお、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローなどのカラーの造形材料を使用する場合には、第1ヘッド11に各色の液滴を吐出する複数のノズル列を配置することができる。
【0058】
UV照射ユニット13は、第1ヘッド11から吐出された造形材料を硬化する。また、UV照射ユニット13は、サポート材を含む場合は、第2ヘッド12から吐出されたサポート材からなる造形層30を硬化する。
UV照射ユニット13としては、発光ダイオード(LED)、紫外線照射ランプなどが挙げられる。紫外線照射ランプを使用する場合、紫外線照射により発生するオゾンを除去する機構を備えることが好ましい。
紫外線照射ランプの種類としては、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドなどが挙げられる。超高圧水銀灯は点光源であるが、光学系と組み合わせて光利用効率を高くした紫外線照射ランプは、短波長領域の照射が可能である。メタルハライドは、波長領域が広いため着色物の硬化に効果的である。Pb、Sn、Feなどの金属のハロゲン化物が用いられ、光重合開始剤の吸収スペクトルに合わせて選択できる。
【0059】
平坦化ローラ16は、回転されながら、ステージ14との相対移動により、ステージ14上で硬化された造形層30の表面を平坦化する。
なお、「ステージ14上」とは、特に限定しない限り、ステージ14およびステージ14上で積層させる造形層30上を含むことを意味する。
【0060】
造形ユニット20のユニットホルダ21は、X方向に配置されたガイド部材に移動可能に保持されている。
また、造形ユニット20のX方向の一方側には、第1ヘッド11の維持回復を行うメンテナンス機構が配置されている。
【0061】
また、造形ユニット20のユニットホルダ21を保持しているガイド部材は、両側の側板に保持されている。側板はベース部材上に配置されたガイド部材に移動可能に保持されたスライダ部を有し、造形ユニット20はX方向と直交するY方向に往復移動可能である。
ステージ14は、昇降手段15によってZ方向に昇降される。昇降手段15は、ベース部材上にX方向に配置されたガイド部材上に移動可能に配置される。
【0062】
次に、この立体造形物製造装置10による造形動作の概要について、
図1を参照して説明する。
まず、造形ユニット20をY方向に移動させてステージ14上に位置させる。次に、ステージ14を停止している造形ユニット20に対して移動させながら、第1ヘッド11からモデル材301を造形領域(立体造形物を構成する領域)に吐出させる。サポート材を用いる場合は、第2ヘッド12からサポート材302を造形領域以外のサポート領域(造形後除去する領域)に吐出させる。
【0063】
次に、UV照射ユニット13によって、モデル材301およびサポート材302上に紫外線を照射して硬化させ、造形材料による造形物17とサポート材による造形物18を含む1層分の造形層30を形成する。
【0064】
この造形層30を繰り返し造形して順次積層し、モデル材301をサポート材302で支持しながらモデル材301からなる目的とする立体造形物を造形する。例えば、
図1の例では、造形層30A~30Eの5層を積層した状態を示している。
【0065】
ここで、造形層30を複数層(固定値である必要はない。)積層する毎に、例えば、10層積層する毎に、平坦化ローラ16を最表面の造形層30に押し付けて平坦化することにより、造形層30の厚み精度や平坦性を確保する。
平坦化手段として、平坦化ローラ16のようなローラ形状の部材を使用する場合、X方向における移動方向に対して、平坦化ローラ16を逆転させる方向で回転させることにより、平坦化効果を向上させることができる。
【0066】
また、造形ユニット20と最表面の造形層30とのギャップを一定に保つために、ここでは、1層の造形層30を形成する毎にステージ14を昇降手段15によって下降させている。なお、造形ユニット20を昇降させる構成でもよい。
【0067】
立体造形物製造装置は、モデル材301やサポート材302の回収部材、リサイクル機構などを備えてもよい。また、第1ヘッド11、第2ヘッド12の不吐出ノズルを検知する吐出状態検出手段を備えてもよい。さらに、造形時の装置内の環境温度を制御してもよい。
【0068】
(立体造形物製造用プログラム)
本発明の立体造形物製造用プログラムは、平坦化後の造形材料の高さが狙いの高さより高くなる高さ増加領域が生じることによって起こる、硬化後の前記造形材料からなる造形層と平坦化手段との衝突を回避する処理をコンピュータに行わせる。
【0069】
平坦化後の造形材料の高さが狙いの高さより高くなる高さ増加領域が生じる場合には、前記高さ増加領域に吐出する前記造形材料の吐出量を削減する処理をコンピュータに行わせることが好ましい。
【0070】
平坦化後の造形材料の高さが狙いの高さより高くなる高さ増加領域が生じる場合には、前記高さ増加領域を平坦化する平坦化手段による前記造形材料の掻取り量を増加する処理をコンピュータに行わせることが好ましい。
この場合、前記平坦化手段が平坦化ローラであり、前記平坦化ローラの回転数を増加することが好ましい。
【0071】
本発明の立体造形物製造用プログラムによると、硬化後の造形材料からなる造形層に平坦化手段が衝突することによる衝突音の発生、平坦化手段の故障、および造形物の破損を防止でき、高さ方向の寸法精度に優れた立体造形物が得られる。
【0072】
立体造形物製造用プログラムは、上記処理以外にも、その他の処理をコンピュータに行わせることができる。
その他の処理としては、例えば、吐出された造形材料の層を平坦化する処理、吐出された造形材料を硬化させるために活性エネルギー線照射する処理、造形された造形物を洗浄する処理、造形された造形物を乾燥する処理などが挙げられる。
【0073】
本発明の立体造形物製造用プログラムは、ハードウェア資源としてのコンピュータ等を用いることにより、本発明の立体造形物製造装置として実現させることから、本発明の立体造形物製造用プログラムにおける好適な態様は、例えば、本発明の立体造形物製造装置における好適な態様と同様とすることができる。
【0074】
本発明の立体造形物製造用プログラムは、使用するコンピュータシステムの構成およびオペレーティングシステムの種類・バージョンなどに応じて、公知の各種のプログラム言語を用いて作成することができる。
【0075】
本発明の立体造形物製造用プログラムは、内蔵ハードディスク、外付けハードディスクなどの記録媒体に記録しておいてもよいし、CD-ROM、DVD-ROM、MOディスク、USBメモリなどの記録媒体に記録しておいてもよい。これらの記録媒体は、制御手段に含まれる記憶手段であってよい。
さらに、本発明の立体造形物製造用プログラムを、上記の記録媒体に記録する場合には、必要に応じて、コンピュータシステムが有する記録媒体読取装置を通じて、これを直接またはハードディスクにインストールして使用することができる。また、コンピュータシステムから情報通信ネットワークを通じてアクセス可能な外部記憶領域(他のコンピュータなど)に本発明の立体造形物製造用プログラムを記録しておいてもよい。この場合、外部記憶領域に記録された本発明の立体造形物製造用プログラムは、必要に応じて、外部記憶領域から情報通信ネットワークを通じてこれを直接、またはハードディスクにインストールして使用することができる。
なお、本発明の立体造形物製造用プログラムは、複数の記録媒体に、任意の処理毎に分割されて記録されていてもよい。
【0076】
<立体造形物製造装置>
本発明の立体造形物製造装置は、本発明の立体造形物製造用プログラムを搭載する。
本発明の立体造形物製造装置は、本発明の立体造形物製造用プログラムを搭載している以外は特に制限はなく、その他のプログラムなどを搭載することができる。
【0077】
<コンピュータが読み取り可能な記録媒体>
本発明におけるコンピュータが読み取り可能な記録媒体は、本発明の立体造形物製造用プログラムを記録してなる。
本発明におけるコンピュータが読み取り可能な記録媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、内蔵ハードディスク、外付けハードディスク、CD-ROM、DVD-ROM、MOディスク、USBメモリなどが挙げられる。
また、本発明におけるコンピュータが読み取り可能な記録媒体は、本発明の立体造形物製造用活性エネルギー線照射プログラムが任意の処理毎に分割されて記録された複数の記録媒体であってもよい。
【0078】
本発明の立体造形物製造用プログラムによる処理は、本発明の立体造形物製造装置を構成する制御手段を有するコンピュータを用いて実行することができる。
コンピュータとしては、記憶、演算、制御などの装置を備えた機器であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、パーソナルコンピュータなどが挙げられる。
【0079】
ここで、立体造形物製造装置の制御手段の概要について、
図2を参照して説明する。
図2は立体造形物製造装置の制御手段のブロック図である。
【0080】
制御手段500は、立体造形物製造装置全体の制御を司るCPU501と、CPU501に本発明の立体造形物製造用プログラム、その他の固定データを格納するROM502と、造形データ等を一時格納するRAM503とを含む主制御部500Aを備えている。
また、制御手段500は、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための不揮発性メモリ(NVRAM)504を備えている。また、制御手段500は、画像データに対する各種信号処理等を行う画像処理やその他の装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC505を備えている。
さらに、制御手段500は、外部の造形データ作成装置600から造形データを受信するときに使用するデータおよび信号の送受を行うためのI/F506を備えている。
なお、造形データ作成装置600は、最終形態の造形物(立体造形物)を造形層ごとにスライスしたスライスデータである造形データ(断面データ)を作成する装置であり、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置で構成されている。
【0081】
制御手段500は、各種センサの検知信号を取り込むためのI/O507を備える。
また、制御手段500は、造形ユニット20の第1ヘッド11を駆動制御するヘッド駆動制御部508と、第2ヘッド12を駆動制御するヘッド駆動制御部509を備えている。
さらに、制御手段500は、造形ユニット20をX方向に移動させるユニットX方向移動機構550を構成するモータを駆動するモータ駆動部510と、造形ユニット20をY方向(副走査方向)に移動させるY方向走査機構552を構成するモータを駆動するモータ駆動部511を備える。
【0082】
制御手段500は、ステージ14を昇降手段15とともにX方向に移動させるステージX方向走査機構553を構成するモータを駆動するモータ駆動部513と、ステージ14をZ方向に昇降させる昇降手段15を構成するモータを駆動するモータ駆動部514を備える。なお、Z方向への昇降は、前述したように造形ユニット20を昇降させる構成とすることもできる。
【0083】
制御手段500は、平坦化ローラ16を回転駆動するモータ26を駆動するモータ駆動部516、第1ヘッド11、第2ヘッド12のメンテナンス機構61を駆動するメンテナンス駆動部518を備える。
【0084】
制御手段500は、UV照射ユニット13による紫外線照射を制御する硬化制御部519を備える。
制御手段500のI/O507には、装置の環境条件としての温度および湿度を検出する温湿度センサ560などの検知信号やその他のセンサ類の検知信号が入力される。
制御手段500には、この装置に必要な情報の入力および表示を行うための操作パネル522が接続されている。
制御手段500は、上述したように、造形データ作成装置600から造形データを受領する。造形データは、目的とする立体造形物の形状をスライスしたスライスデータとしての各造形層30の内の造形物17を形成するデータ(造形領域のデータ)である。
【0085】
主制御部500Aは、造形データ(造形領域データ)にサポート材を付与するサポート領域のデータを付加したデータを作成し、ヘッド駆動制御部508、509に与える。ヘッド駆動制御部508、509は、それぞれ、第1ヘッド11からモデル材301の液滴を造形領域に吐出させ、第2ヘッド12から液状のサポート材302の液滴をサポート領域に吐出させる。
なお、造形データ作成装置600と立体造形物製造装置10によって製造装置が構成される。
【実施例】
【0086】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0087】
(比較例1)
図3に示す比較例1で用いる立体造形物製造装置200は、立体造形物110が載置される造形ステージ111と、造形ステージ111上に造形物110を順次積層しながら造形する造形ユニット120とを備えている。
【0088】
造形ステージ111は、X方向、Y方向、およびZ方向に移動可能に構成されている。なお、造形ユニット120をX方向に移動させる構成とすることもできる。これによって、往路および復路の造形動作を実現できる。
【0089】
造形ユニット120は、吐出手段として、モデル材201を吐出する吐出手段である第1ヘッド121と、サポート材202を吐出する吐出手段である第2ヘッド122とを備えている。
【0090】
造形ユニット120は、吐出されたモデル材201およびサポート材202をそれぞれ平坦化する平坦化手段である平坦化ローラ123と、活性エネルギー線としての紫外線を照射してモデル材201およびサポート材202をそれぞれ硬化させる2つのUV照射ユニット124A,124Bとを備えている。
【0091】
ここでは、X方向において、造形ステージ111が往路方向に移動するとき、第1ヘッド121の上流側に平坦化ローラ123を、平坦化ローラ123の上流側にUV照射ユニット124Aをそれぞれ配置している。また、同じく、第1ヘッド121の下流側に第2ヘッド122を、第2ヘッド122の下流側にUV照射ユニット124Bを並べて配置している。
【0092】
ここで、
図6は、比較例1の立体造形物製造装置の制御手段における立体造形物製造用吐出プログラムの処理の流れの一例を示すフローチャートである。以下、
図3、
図4および
図5を参照して、比較例1の立体造形物の製造方法の処理の流れについて説明する。
【0093】
ステップS1では、立体造形物製造装置200の制御手段が、
図4(A)に示す、目的とする形状のモデル層の造形データ(スライスデータ)を受け付けると、処理をS2に移行する。ここで、比較例1の
図4(A)に示すモデル層は長方形状である。
【0094】
ステップS2では、
図4(A)に示すモデル層のスライスデータに基づき、往路にてモデルスキャン1によりステージ111上に第1ヘッド121からモデル材201を吐出し、UV照射ユニット124Aから紫外線を照射し硬化させてモデル層1を形成する。引き続き、立体造形物製造装置200の制御手段が、
図4(A)に示すモデル層のスライスデータに基づき、復路にてモデルスキャン2によりモデル層1上に第1ヘッド121からモデル材201を吐出し、平坦化ローラ123により平坦化を行い、UV照射ユニット124Bから紫外線を照射し硬化させてモデル層2を形成すると、処理をS3に移行する。
【0095】
ステップS3では、立体造形物製造装置200の制御手段が、サポート層の有無を判断し、サポート層を有すると処理をS4に移行し、サポート層を有しないと処理をS5に移行する。
【0096】
ステップS4では、立体造形物製造装置200の制御手段が、往路においてサポートスキャン1によりステージ111上に第2ヘッド122からサポート材202を吐出し、UV照射ユニット124Aから紫外線を照射し硬化させてサポート層1を形成する。引き続き、立体造形物製造装置200の制御手段が、復路においてサポートスキャン2によりサポート層1上に第2ヘッド122からサポート材202を吐出し、平坦化ローラ123により平坦化を行い、UV照射ユニット124Bから紫外線を照射し硬化させてサポート層2を形成すると、処理をS5に移行する。
【0097】
ステップS5では、立体造形物製造装置200の制御手段が、Z方向に造形ユニット120を所定量上昇させると、本処理を終了する。これ以降、必要に応じてステップS1からステップS5の一連の処理を所定回数繰り返すことにより、比較例1の立体造形物が得られる。
【0098】
比較例1においては、
図4(A)は平坦化直後のモデル材102を示し、
図4(B)は平坦化後硬化前のモデル材102の両端部が盛り上がって高さ増加領域102aが生じた状態を示す。
図4(B)中101は平坦化手段としての平坦化ローラである。
図5は、比較例1の平坦化後のモデル材におけるX方向厚みtと高さ増分Δhとの関係を示すグラフであり、モデル層のX方向の厚みtが0.8mmに高さ増分のピークを持ち、X方向厚みtが0.5mm~1.2mmの範囲で0.5%以上2.2%以下の高さ増分が生じることがわかった。
【0099】
(実施例1)
実施例1では、比較例1と同様に
図3に示す立体造形物製造装置200を用い、
図7に示す形状のモデル層を造形した。
【0100】
ここで、
図9は、実施例1の立体造形物製造装置の制御手段における立体造形物製造用プログラムの処理の流れの一例を示すフローチャートである。以下、
図3、
図7および
図8を参照して、実施例1の立体造形物の製造方法の処理の流れについて説明する。
【0101】
ステップS11では、立体造形物製造装置200の制御手段が、
図7(A)に示す、目的とする形状のモデル層の造形データ(スライスデータ)を受け付けると、処理をS12に移行する。ここで、実施例1の
図7(A)に示すモデル層は長方形状である。
【0102】
ステップS12では、立体造形物製造装置200の制御手段が、高さ増加領域の有無を判断し、高さ増加領域を有していると処理をS13に移行し、高さ増加領域を有していないと処理をS14に移行する。ここで、高さ増加領域は、事前に、所定の組成(表面張力)の造形材料と吐出ヘッドの吐出特性に起因する高さ増分と、実際に造形材料を吐出し平坦化ローラを用いて平坦化することに起因する高さ増分と、を考慮して求めることができる。
【0103】
ステップS13では、立体造形物製造装置200の制御手段が、
図7(A)に示すモデル層のスライスデータに基づき、かつ高さ増加領域に吐出するモデル材の吐出量を削減し、往路にてモデルスキャン1によりステージ111上に第1ヘッド121からモデル材201を吐出し、UV照射ユニット124Aから紫外線を照射し硬化させてモデル層1を形成する。引き続き、立体造形物製造装置200の制御手段が、
図7(A)に示すモデル層のスライスデータに基づき、かつ高さ増加領域に吐出するモデル材の吐出量を削減し、復路にてモデルスキャン2によりモデル層1上に第1ヘッド121からモデル材201を吐出し、平坦化ローラ123により平坦化を行い、UV照射ユニット124Bから紫外線を照射し硬化させてモデル層2を形成すると、処理をS15に移行する。
高さ増加領域に吐出するモデル材の吐出量の削減は、モデル材の吐出液滴量を減らす、またはモデル材の吐出を所定の間引き量で間引くことにより行うことができる。
【0104】
ステップS14では、立体造形物製造装置200の制御手段が、
図7(A)に示すモデル層のスライスデータに基づき、往路にてモデルスキャン3によりステージ111上に第1ヘッド121からモデル材201を吐出し、UV照射ユニット124Aから紫外線を照射し硬化させてモデル層3を形成する。引き続き、立体造形物製造装置200の制御手段が、
図7(A)に示すモデル層のスライスデータに基づき、復路にてモデルスキャン4によりモデル層3上に第1ヘッド121からモデル材201を吐出し、平坦化ローラ123により平坦化を行い、UV照射ユニット124Bから紫外線を照射し硬化させてモデル層4を形成すると、処理をS15に移行する。
【0105】
ステップS15では、立体造形物製造装置200の制御手段が、サポート層の有無を判断し、サポート層を有すると処理をS16に移行し、サポート層を有しないと処理をS17に移行する。
【0106】
ステップS16では、立体造形物製造装置200の制御手段が、往路においてサポートスキャン1によりステージ111上に第2ヘッド122からサポート材202を吐出し、UV照射ユニット124Aから紫外線を照射し硬化させてサポート層1を形成する。引き続き、立体造形物製造装置200の制御手段が、復路においてサポートスキャン2によりサポート層1上に第2ヘッド122からサポート材202を吐出し、平坦化ローラ123により平坦化を行い、UV照射ユニット124Bから紫外線を照射し硬化させてサポート層2を形成すると、処理をS17に移行する。
【0107】
ステップS17では、立体造形物製造装置200の制御手段が、Z方向に造形ユニット120を所定量上昇させると、本処理を終了する。これ以降、必要に応じて、ステップS11からステップS17の一連の処理を所定回数繰り返すことにより、実施例1の立体造形物が得られる。
【0108】
実施例1において、
図7(A)は平坦化直後の状態のモデル材102、
図7(B)は平坦化後硬化前に高さ増加領域が生じない状態のモデル材102を示す模式図であり、実施例1の平坦化後のモデル材では高さ増加領域は生じていない。
図7(B)中101は平坦化手段としての平坦化ローラである。
図8は、実施例1の平坦化後のモデル材におけるX方向厚みhと高さ増分Δhとの関係を示し、点線は比較例1、実線は実施例1である。実施例1では、平坦化後のモデル材の高さ増加領域が生じないので、比較例1のような高さ増分のピークが生じない。
実施例1では、高さ増加領域に吐出するモデル材の吐出量を削減する制御を行うことによって、モデル材の表面張力によって高さ増加領域が生じることを防止でき、硬化後のモデル材からなるモデル層に平坦化手段が衝突することによる衝突音の発生、平坦化手段の故障、および造形物の破損を防止でき、高さ方向の寸法精度に優れた立体造形物が得られる。
【0109】
(実施例2)
実施例2では、比較例1と同様に
図3に示す立体造形物製造装置200を用い、
図7に示す形状のモデル層を造形した。
【0110】
ここで、
図10は、実施例2の立体造形物製造装置の制御手段における立体造形物製造用プログラムの処理の流れの一例を示すフローチャートである。以下、
図3、
図7および
図8を参照して、実施例2の立体造形物の製造方法の処理の流れについて説明する。
【0111】
ステップS21では、立体造形物製造装置200の制御手段が、
図7(A)に示す、目的とする形状のモデル層の造形データ(スライスデータ)を受け付けると、処理をS22に移行する。ここで、実施例2の
図7(A)に示す立体造形物は長方形状である。
【0112】
ステップS22では、立体造形物製造装置200の制御手段が、高さ増加領域の有無を判断し、高さ増加領域を有していると処理をS23に移行し、高さ増加領域を有していないと処理をS24に移行する。ここで、高さ増加領域は、事前に、所定の組成(表面張力)の造形材料と吐出ヘッドの吐出特性に起因する高さ増分と、実際に造形材料を吐出し平坦化ローラを用いて平坦化することに起因する高さ増分と、を考慮して求めることができる。
【0113】
ステップS23では、立体造形物製造装置200の制御手段が、
図7(A)に示すモデル層のスライスデータに基づき、往路にてモデルスキャン1によりステージ111上に第1ヘッド121からモデル材201を吐出し、UV照射ユニット124Aから紫外線を照射し硬化させてモデル層1を形成する。引き続き、立体造形物製造装置200の制御手段が、
図7(A)に示すモデル層のスライスデータに基づき、かつ高さ増加領域における平坦化ローラの回転数を増加させて、モデル材の掻き取り量を増加させ、復路にてモデルスキャン2によりモデル層1上に第1ヘッド121からモデル材201を吐出し、平坦化ローラ123により平坦化を行い、UV照射ユニット124Bから紫外線を照射し硬化させてモデル層2を形成すると、処理をS25に移行する。
【0114】
ステップS24では、立体造形物製造装置200の制御手段が、
図7(A)に示すモデル層のスライスデータに基づき、往路にてモデルスキャン3によりステージ111上に第1ヘッド121からモデル材201を吐出し、UV照射ユニット124Aから紫外線を照射し硬化させてモデル層3を形成する。引き続き、立体造形物製造装置200の制御手段が、
図7(A)に示すモデル層のスライスデータに基づき、復路にてモデルスキャン4によりモデル層3上に第1ヘッド121からモデル材201を吐出し、平坦化ローラ123により平坦化を行い、UV照射ユニット124Bから紫外線を照射し硬化させてモデル層4を形成すると、処理をS25に移行する。
【0115】
ステップS25では、立体造形物製造装置200の制御手段が、サポート層の有無を判断し、サポート層を有すると処理をS26に移行し、サポート層を有しないと処理をS27に移行する。
【0116】
ステップS26では、立体造形物製造装置200の制御手段が、往路においてサポートスキャン1によりステージ111上に第2ヘッド122からサポート材202を吐出し、UV照射ユニット124Aから紫外線を照射し硬化させてサポート層1を形成する。引き続き、立体造形物製造装置200の制御手段が、復路においてサポートスキャン2によりサポート層1上に第2ヘッド122からサポート材202を吐出し、平坦化ローラ123により平坦化を行い、UV照射ユニット124Bから紫外線を照射し硬化させてサポート層2を形成すると、処理をS27に移行する。
【0117】
ステップS27では、立体造形物製造装置200の制御手段が、Z方向に造形ユニット120を所定量上昇させると、本処理を終了する。これ以降、必要に応じてステップS21からステップS27の一連の処理を所定回数繰り返すことにより、実施例2の立体造形物が得られる。
【0118】
実施例2において、
図7(A)は平坦化直後の状態のモデル材102、
図7(B)は平坦化後硬化前に高さ増加領域が生じない状態のモデル材102を示す模式図であり、実施例2の平坦化後のモデ材では高さ増加領域は生じていない。
図7(B)中101は平坦化手段としての平坦化ローラである。
図8は、実施例2の平坦化後のモデル材におけるX方向厚みhと高さ増分Δhとの関係を示し、点線は比較例1、実線は実施例2である。実施例2では、平坦化後のモデル材の高さ増加領域が生じないので、比較例1のような高さ増分のピークが生じない。
実施例2では、高さ増加領域における平坦化ローラによる掻取り量を増加する制御を行うことによって、モデル材の表面張力によって高さ増加領域が生じることを防止でき、硬化後のモデル材からなるモデル層に平坦化手段が衝突することによる衝突音の発生、平坦化手段の故障、および造形物の破損を防止でき、高さ方向の寸法精度に優れた立体造形物が得られる。
【0119】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 造形材料を吐出する吐出手段と、
吐出された前記造形材料の表面を平坦化する平坦化手段と、
平坦化された前記造形材料を硬化する硬化手段と、
平坦化後の前記造形材料の高さが狙いの高さより高くなる高さ増加領域が生じることが予測される領域に対して、高さを調整する制御を行う制御手段と、
を有することを特徴とする立体造形物製造装置である。
<2> 平坦化後の前記造形材料の高さが狙いの高さより高くなる高さ増加領域が生じる場合には、前記高さ増加領域に吐出する前記造形材料の吐出量を削減する前記<1>に記載の立体造形物製造装置である。
<3> 平坦化後の前記造形材料の高さが狙いの高さより高くなる高さ増加領域が生じる場合には、前記高さ増加領域を平坦化する平坦化手段による前記造形材料の掻取り量を増加する前記<1>に記載の立体造形物製造装置である。
<4> 前記平坦化手段が平坦化ローラであり、前記平坦化ローラの回転数を増加する前記<3>に記載の立体造形物製造装置である。
<5> 前記高さ増加領域が、平坦化後の前記造形材料の主走査方向の両端部である前記<1>から<4>のいずれかに記載の立体造形物製造装置である。
<6> 主走査方向の厚みが3mm以下である造形材料からなる造形層の造形に用いられる前記<1>から<5>のいずれかに記載の立体造形物製造装置である。
<7> 前記吐出手段が主走査方向に往復動し、
前記制御手段が、前記吐出手段の往動時および復動時のそれぞれにおいて前記制御を行う前記<1>から<6>のいずれかに記載の立体造形物製造装置である。
<8> 平坦化後の造形材料の高さが狙いの高さより高くなる高さ増加領域が生じることが予測される領域に対して、高さを調整する処理をコンピュータに行わせることを特徴とする立体造形物製造用プログラムである。
<9> 前記<8>に記載の立体造形物製造用プログラムを搭載したことを特徴とする立体造形物製造装置である。
<10> 造形材料を吐出する吐出工程と、
吐出された前記造形材料の表面を平坦化する平坦化工程と、
平坦化された前記造形材料を硬化する硬化工程と、を含む立体造形物の製造方法であって、
前記吐出工程及び/又は前記平坦化工程において、平坦化後の前記造形材料の高さが狙いの高さより高くなる高さ増加領域が生じることが予測される領域に対して、高さを調整する高さ調整制御
を行うことを特徴とする立体造形物の製造方法である。
【0120】
前記<1>から<7>および<9>のいずれかに記載の立体造形物製造装置、前記<8>に記載の立体造形物製造用プログラム、ならびに前記<10>に記載の立体造形物の製造方法によると、従来における諸問題を解決し、本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0121】
121 第1ヘッド
122 第2ヘッド
124A、124B UV照射ユニット
111 ステージ
123 平坦化ローラ
120 造形ユニット
200 立体造形物製造装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0122】