(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】化合物、液晶組成物及び高周波移相器
(51)【国際特許分類】
C07D 495/04 20060101AFI20240123BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20240123BHJP
C09K 19/34 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
C07D495/04 101
C07D495/04 CSP
G02F1/13 500
C09K19/34
(21)【出願番号】P 2019224547
(22)【出願日】2019-12-12
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】堀口 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】林 正直
【審査官】吉森 晃
(56)【参考文献】
【文献】特表2022-552279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 495/04
G02F 1/13
C09K 19/34
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(I)
【化1】
(式中、
R
1は水素原子、炭素原子数1から20の直鎖状又は分岐状アルキル基を表し、
当該アルキル基中の任意の水素原子がハロゲン原子に置換されていても良く、
当該アルキル基中の1個又は2個以上の-CH
2-が各々独立して-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-に置き換えられても良いが、
酸素原子同士が結合することはなく、
A
1は、下記の式(A-3)、(A-4)、(A-5)、(A-6)及び(A-7)
【化2】
(式中、
破線は結合位置を表し、
L
1が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良い。)
で表される基からなる群から選ばれる基を表し、
A
2は、下記の式(A-1)、(A-3)、(A-4)、(A-5)、(A-6)及び(A-7)
【化3】
(式中、
破線は結合位置を表し、
L
1が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良い。)
で表される基からなる群から選ばれる基を表し、
L
1は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ペンタフルオロスルファニル基、ニトロ基、シアノ基、イソシアノ基、アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、トリメチルシリル基、ジメチルシリル基、チオイソシアノ基、又は、1個の-CH
2-又は2個以上の-CH
2-が各々独立して-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-、-CF=CF-若しくは-C≡C-によって置換されていても良い炭素原子数1から20の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から20の分岐状若しくは環状アルキル基を表すが、
酸素原子同士が直接結合することはなく、
当該アルキル基中の任意の水素原子はフッ素原子に置換されていても良く、
A
1が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
A
2が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
Z
1、Z
2及びZ
3は各々独立して、単結合、-CH=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、-CH
2O-、-OCH
2-、-CF
2O-、-OCF
2-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH=C(CH
3)COO-、-OCOC(CH
3)=CH-、-CH
2-CH(CH
3)COO-、-OCOCH(CH
3)―CH
2-、-OCH
2CH
2O-、-N=N-、-C=N-N=C-、-CH=N-、-N=CH-又は炭素原子数2から20のアルキレン基を表し、
このアルキレン基中の1個又は2個以上の-CH
2-は-O-、-COO-又は-OCO-で置換されてもよいが、
酸素原子同士が直接結合することはなく、
Z
1が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
Z
2が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
m1は1又は2の整数を表し、
m2は0又は1の整数を表すが、
m1+m2は1から3の整数を表し、
A
xは下記の式(Ax-1)及び式(Ax-2)
【化4】
(式中、破線は結合位置を表し、
X
1及びX
2は各々独立して水素原子又は炭素原子数1から8のアルキル基を表し、
Y
1、Y
3、Y
4及びY
6は各々独立して水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表す。)
から選ばれる基を表す。)
で表される化合物。
【請求項2】
前記A
xが、式(Ax-1-i)
【化5】
(式中、
破線は結合位置を表し、
X
11は水素原子又は炭素原子数1から8のアルキル基を表し、
Y
11及びY
31は各々独立して水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表す。)
で表される基である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記R
1が、炭素原子数1から12の直鎖状アルキル基である請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
前記A
1が、前記式(A-4)又は(A-6)で表される基である請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
前記L
1が、フッ素原子又は炭素原子数1から10の直鎖状アルキル基である請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
前記m1が1である請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物を含有する組成物。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物を含有する液晶組成物。
【請求項9】
屈折率異方性が0.15以上である、請求項8に記載の液晶組成物。
【請求項10】
誘電率異方性
(Δε(1kHz))が2以上である、請求項8に記載の液晶組成物。
【請求項11】
誘電率異方性
(Δε(1kHz))が2以下である、請求項8に記載の液晶組成物。
【請求項12】
請求項8から11
のいずれか一項に記載の液晶組成物を使用した高周波移相器、フェーズドアレイアンテナ、画像認識装置、測距装置、液晶表示素子、液晶レンズ又は立体画像表示用複屈折レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化合物、当該化合物を含有する液晶組成物及び当該液晶組成物を使用した素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶組成物は、スマートフォンやタブレットデバイスなどのモバイル端末、TVやウィンドウディスプレイなどのディスプレイ用途に用いられている。この液晶組成物の新規用途として、車等の移動体と通信衛星間で、電波の送受信を行うアンテナが注目されている。
【0003】
従来、衛星通信は、パラボラアンテナを用いているが、移動体で用いる場合、随時パラボラアンテナを衛星方向へ向けなければならず、大きな可動部が必要であった。しかし液晶組成物を用いたアンテナは、液晶が動作することにより、電波の送受信方向を変える事が出来るため、アンテナ自体を動かす必要が無く、アンテナの形状も平面にすることが出来る。
【0004】
これらの用途に求められる液晶組成物の屈折率異方性Δnは、例えば0.4程度であり、ディスプレイ用途に求められるΔnと比較して非常に大きい。そのため、液晶組成物に添加し使用される化合物には、大きなΔnを有し、液晶組成物への高い相溶性が求められる。従来、Δnが大きな化合物として、チエノチオフェン構造を有する化合物が報告されていた。しかしながら、それらの化合物は、アンテナ用途の液晶組成物へ添加した場合に相溶性が低く、長期間の保存によって析出してしまう問題があった(非特許文献1、特許文献1)。また、チエノチオフェン構造とチオイソシアノ基とを有する化合物が報告されているが、それらの化合物は、高周波数領域における誘電率異方性が低く、位相変調特性が不十分であった。そのため、大きなΔnを有し、液晶組成物への相溶性が高く、高周波数領域において大きな誘電率異方性を示す化合物の開発が求められていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Chemistry of Materials誌、2009年、21巻、13号、2727-2732頁
【特許文献】
【0006】
【文献】CN103472116A号公報
【文献】CN106518890A号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、大きな屈折率異方性(Δn)を有し、液晶組成物への相溶性が高く、高周波数領域において大きな誘電率異方性(Δε)を示す化合物、当該化合物を含有する液晶組成物及び当該液晶組成物を使用した素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、特定の化合物の開発に至った。すなわち、本発明は下記の一般式(I)
【0009】
【0010】
(式中、R1は水素原子、炭素原子数1から20の直鎖状又は分岐状アルキル基を表し、当該アルキル基中の任意の水素原子がハロゲン原子に置換されていても良く、当該アルキル基中の1個又は2個以上の-CH2-が各々独立して-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-に置き換えられても良いが、酸素原子同士が結合することはなく、
A1及びA2は各々独立して置換されていてもよい炭素原子数3から16の炭化水素環又は複素環を表すが、A1が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、A2が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
Z1、Z2及びZ3は各々独立して二価の連結基又は単結合を表すが、Z1が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、Z2が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
m1及びm2は各々独立して0から3の整数を表すが、m1+m2は1から3の整数を表し、
Axは下記の式(Ax-1)及び式(Ax-2)
【0011】
【0012】
(式中、破線は結合位置を表し、X1及びX2は各々独立して水素原子又は炭素原子数1から8のアルキル基を表し、Y1、Y3、Y4及びY6は各々独立して水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表す。)
から選ばれる基を表す。)で表される化合物を提供し、当該化合物を含有する液晶組成物及び当該液晶組成物を使用した素子を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の化合物は、大きな屈折率異方性Δnを有し、液晶組成物への相溶性が高く、高周波数領域において大きな誘電率異方性を示すことから、高周波移相器、フェーズドアレイアンテナ、画像認識装置、測距装置、液晶表示素子、液晶レンズ又は立体画像表示用複屈折レンズ等の素子用の材料として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、一般式(I)で表される化合物、当該化合物を含有する液晶組成物及び当該液晶組成物を使用した素子を提供する。
【0015】
一般式(I)において、R1は水素原子、炭素原子数1から20の直鎖状又は分岐状アルキル基を表し、当該アルキル基中の任意の水素原子がハロゲン原子に置換されていても良く、当該アルキル基中の1個又は2個以上の-CH2-が各々独立して-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-に置き換えられても良いが、酸素原子同士が結合することはない。液晶組成物への相溶性、屈折率異方性、電圧保持率、合成の容易さ及び原料の入手性の観点から、R1は水素原子、基中の任意の水素原子がハロゲン原子に置換されていても良く、基中の1個又は2個以上の-CH2-が各々独立して-O-、-S-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-に置き換えられても良い炭素原子数1から20の直鎖状又は分岐状アルキル基を表すことが好ましく、R1は基中の任意の水素原子がフッ素原子に置換されていても良く、基中の1個又は2個以上の-CH2-が各々独立して-O-、-CH=CH-又は-C≡C-に置き換えられても良い炭素原子数1から12の直鎖状又は分岐状アルキル基を表すことがより好ましく、R1は炭素原子数1から8のアルキル基、炭素原子数1から7のアルコキシ基、炭素原子数2から8のアルケニル基、炭素原子数2から7のアルケニルオキシ基又は炭素原子数2から8のアルキニル基を表すことがさらに好ましく、R1は炭素原子数2から5のアルキル基、炭素原子数1から4のアルコキシ基、炭素原子数2から5のアルケニル基又は炭素原子数3から7のアルキニル基を表すことが特に好ましい。
【0016】
一般式(I)において、A1及びA2は各々独立して置換されていてもよい炭素原子数3から16の炭化水素環又は複素環を表すが、A1が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、A2が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良い。液晶組成物への相溶性、屈折率異方性、誘電率異方性、電圧保持率、合成の容易さ及び原料の入手性の観点から、A1及びA2が各々独立して、無置換であるか又は1つ以上の置換基L1によって置換されていても良い、
(a)1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-は-O-又は-S-に置き換えられても良い。)
(b)1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられても良い。)
(c)1,4-シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,4-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、アントラセン-2,6-ジイル基、アントラセン-1,4-ジイル基、アントラセン-9,10-ジイル基、フェナントレン-2,7-ジイル基(これらの基中に存在する水素原子はフッ素原子又は塩素原子に置換されても良く、また、ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,4-ジイル基、アントラセン-2,6-ジイル基、アントラセン-1,4-ジイル基、アントラセン-9,10-ジイル基又はフェナントレン-2,7-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は2個以上の-CH=は-N=に置き換えられても良い。)
(d)チオフェン-2,5-ジイル基、ベンゾチオフェン-2,5-ジイル基、ベンゾチオフェン-2,6-ジイル基、ジベンゾチオフェン-3,7-ジイル基、ジベンゾチオフェン-2,6-ジイル基、チエノ[3,2-b]チオフェン-2,5-ジイル基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられても良い。)からなる群より選ばれる基を表すことが好ましく、A1及びA2は複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、各々独立して無置換であるか又は1つ以上の置換基L1によって置換されていても良い、1,4-フェニレン基、ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,4-ジイル基、フェナントレン-2,7-ジイル基、ベンゾチオフェン-2,5-ジイル基、ベンゾチオフェン-2,6-ジイル基、ベンゾチアゾール-2,5-ジイル基、ベンゾチアゾール-2,6-ジイル基、ジベンゾチオフェン-3,7-ジイル基、ジベンゾチオフェン-2,6-ジイル基又はチエノ[3,2-b]チオフェン-2,5-ジイル基から選ばれる基を表すことがより好ましく、A1及びA2は複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、各々独立して下記の式(A-1)から式(A-17)
【0017】
【0018】
(式中、破線は結合位置を表し、L1が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良い。)から選ばれる基を表すことがさらに好ましく、A1及びA2は複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、各々独立して式(A-1)から式(A-7)、式(A-12)、式(A-15)及び式(A-17)から選ばれる基を表すことがさらにより好ましく、A1及びA2は複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、各々独立して式(A-1)、式(A-3)から式(A-7)から選ばれる基を表すことが特に好ましい。
【0019】
L1はフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ペンタフルオロスルファニル基、ニトロ基、シアノ基、イソシアノ基、アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、トリメチルシリル基、ジメチルシリル基、チオイソシアノ基、又は、1個の-CH2-又は2個以上の-CH2-が各々独立して-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-、-CF=CF-若しくは-C≡C-によって置換されていても良い炭素原子数1から20の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から20の分岐状若しくは環状アルキル基を表すが、酸素原子同士が直接結合することはなく、当該アルキル基中の任意の水素原子はフッ素原子に置換されていても良い基を表す。液晶組成物への相溶性、屈折率異方性、誘電率異方性、電圧保持率、合成の容易さ及び原料の入手性の観点から、L1はフッ素原子、塩素原子又は基中の任意の水素原子がフッ素原子に置換されていても良く、基中の1個の-CH2-又は2個以上の-CH2-が各々独立して-O-、-S-、-CH=CH-、-CF=CF-若しくは-C≡C-によって置換されていても良い炭素原子数1から20の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から20の分岐状若しくは環状アルキル基を表すことが好ましく、L1はフッ素原子又は基中の任意の水素原子がフッ素原子に置換されていても良く、基中の-CH2-が-O-によって置換されていても良い炭素原子数1から10の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から10の分岐状若しくは環状アルキル基を表すことがより好ましく、L1はフッ素原子又は炭素原子数1から10の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から10の分岐状若しくは環状アルキル基を表すことがさらに好ましく、L1はフッ素原子又は炭素原子数1から8の直鎖状アルキル基を表すことが特に好ましい。
【0020】
一般式(I)において、Z1、Z2及びZ3は各々独立して二価の連結基又は単結合を表すが、Z1が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、Z2が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良い。液晶組成物への相溶性、屈折率異方性、誘電率異方性、電圧保持率、合成の容易さ及び原料の入手性の観点から、Z1、Z2及びZ3は各々独立して単結合、-CH=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、-CH2O-、-OCH2-、-CF2O-、-OCF2-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH=C(CH3)COO-、-OCOC(CH3)=CH-、-CH2-CH(CH3)COO-、-OCOCH(CH3)―CH2-、-OCH2CH2O-、-N=N-、-C=N-N=C-、-CH=N-、-N=CH-又は炭素原子数2から20のアルキレン基を表し、このアルキレン基中の1個又は2個以上の-CH2-は-O-、-COO-又は-OCO-で置換されてもよい基を表すことが好ましく、Z1、Z2及びZ3は複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、各々独立して-OCH2-、-CH2O-、-CH2CH2-、-CF2O-、-OCF2-、-CH=CH-、-N=N-、-CH=N-、-N=CH-、-CH=N-N=CH-、-CF=CF-、-C≡C-又は単結合を表すことがより好ましく、Z1、Z2及びZ3は複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、各々独立して-CF2O-、-OCF2-、-CH=CH-、-CF=CF-、-N=N-、-C≡C-又は単結合を表すことがさらに好ましく、Z1、Z2及びZ3は複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、各々独立して-CF2O-、-OCF2-、-N=N-、-C≡C-又は単結合を表すことがさらにより好ましく、Z1、Z2及びZ3は複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、各々独立して-C≡C-又は単結合を表すことが特に好ましい。
【0021】
一般式(I)において、m1及びm2は各々独立して0から3の整数を表すが、m1+m2は1から3の整数を表す。液晶組成物への相溶性、屈折率異方性、誘電率異方性、電圧保持率、合成の容易さ及び原料の入手性の観点から、m1及びm2は各々独立して0、1又は2を表し、m1+m2は1から3の整数を表すことが好ましく、m1及びm2は各々独立して0、1又は2を表し、m1+m2は1又は2を表すことがより好ましく、m1及びm2は各々独立して0又は1を表し、m1+m2は1又は2を表すことがさらに好ましく、m1及びm2は各々独立して0又は1を表し、m1+m2は1を表すことが特に好ましい。
【0022】
上述の通り、m1+m2は1から3の整数を表すことから、一般式(I)で表される化合物は構造中に環構造(単環又は縮合環)を3個以上含む。特に、環構造同士が連結し化合物全体で棒状の分子構造を形成する場合、液晶性が向上しTniが高くなることから、液晶組成物に添加した際には高い相溶性を維持しつつ液晶相温度範囲を効果的に広げることができる。さらに、環構造中のπ電子が、環同士の直接又は連結基を介して化合物全体に共役し広がることでΔnを効果的に高める共に、高周波数領域において大きな誘電率異方性を示すという優れた効果を示す。
【0023】
一般式(I)において、Axは下記の式(Ax-1)及び式(Ax-2)
【0024】
【0025】
(式中、破線は結合位置を表し、X1及びX2は各々独立して水素原子又は炭素原子数1から8のアルキル基を表し、Y1、Y3、Y4及びY6は各々独立して水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表す。)から選ばれる基を表す。液晶組成物への相溶性、屈折率異方性、誘電率異方性、電圧保持率、合成の容易さ及び原料の入手性の観点から、Axは下記の式(Ax-1-i)及び式(Ax-2-i)
【0026】
【0027】
(式中、破線は結合位置を表し、X11は水素原子又は炭素原子数1から8のアルキル基を表し、Y11、Y31、Y41及びY61は各々独立して水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表す。)から選ばれる基を表すことが好ましく、Axは下記の式(Ax-1-ii)
【0028】
【0029】
(式中、破線は結合位置を表し、X12は水素原子又は炭素原子数1から5のアルキル基を表し、
Y12及びY32は各々独立して水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表す。)から選ばれる基を表すことがより好ましく、Axは下記の式(Ax-1-iii)
【0030】
【0031】
(式中、破線は結合位置を表し、X13は水素原子、メチル基又はエチル基を表し、
Y13及びY33は各々独立して水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表す。)から選ばれる基を表すことがさらに好ましく、Axは下記の式(Ax-1-iv)
【0032】
【0033】
(式中、破線は結合位置を表し、Y14及びY34は各々独立して水素原子又はフッ素原子を表す。)から選ばれる基を表すことが特に好ましい。
【0034】
一般式(I)で表される化合物は、液晶相を示す温度範囲の広さ、誘電率異方性、液晶組成物への相溶性、屈折率異方性、誘電率異方性、電圧保持率、合成の容易さ及び原料の入手性の観点から、下記の一般式(I-i)
【0035】
【0036】
(式中、R11は水素原子、基中の任意の水素原子がハロゲン原子に置換されていても良く、基中の1個又は2個以上の-CH2-が各々独立して-O-、-S-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-に置き換えられても良い炭素原子数1から20の直鎖状又は分岐状アルキル基を表し、
A11及びA21は各々独立して1,4-フェニレン基、ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,4-ジイル基、フェナントレン-2,7-ジイル基、ベンゾチオフェン-2,5-ジイル基、ベンゾチオフェン-2,6-ジイル基、ベンゾチアゾール-2,5-ジイル基、ベンゾチアゾール-2,6-ジイル基、ジベンゾチオフェン-3,7-ジイル基、ジベンゾチオフェン-2,6-ジイル基又はチエノ[3,2-b]チオフェン-2,5-ジイル基を表すが、A11が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、A21が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、これらの基は無置換であるか又は1つ以上の置換基L11によって置換されていても良く、
L11はフッ素原子、塩素原子又は基中の任意の水素原子がフッ素原子に置換されていても良く、基中の1個の-CH2-又は2個以上の-CH2-が各々独立して-O-、-S-、-CH=CH-、-CF=CF-若しくは-C≡C-によって置換されていても良い炭素原子数1から20の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から20の分岐状若しくは環状アルキル基を表すが、L11が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
Z11、Z21及びZ31は各々独立して-OCH2-、-CH2O-、-CH2CH2-、-CF2O-、-OCF2-、-CH=CH-、-N=N-、-CH=N-、-N=CH-、-CH=N-N=CH-、-CF=CF-、-C≡C-又は単結合を表すが、Z11が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、Z21が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
m11及びm21は各々独立して0、1又は2を表すが、m1+m2は1から3の整数を表し、
Ax1は下記の式(Ax-1-i)及び式(Ax-2-i)
【0037】
【0038】
(式中、破線は結合位置を表し、X11は水素原子又は炭素原子数1から8のアルキル基を表し、Y11、Y31、Y41及びY61は各々独立して水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表す。)から選ばれる基を表す。)で表される化合物であることが好ましく、下記の一般式(I-ii)
【0039】
【0040】
(式中、R12は基中の任意の水素原子がフッ素原子に置換されていても良く、基中の1個又は2個以上の-CH2-が各々独立して-O-、-CH=CH-又は-C≡C-に置き換えられても良い炭素原子数1から12の直鎖状又は分岐状アルキル基を表し、
A12及びA22は各々独立して下記の式(A-ii-1)から式(A-ii-17)
【0041】
【0042】
(式中、破線は結合位置を表し、L12が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良い。)から選ばれる基を表すが、A12が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、A22が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
L12はフッ素原子又は基中の任意の水素原子がフッ素原子に置換されていても良く、基中の-CH2-が-O-によって置換されていても良い炭素原子数1から10の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から10の分岐状若しくは環状アルキル基を表し、
Z12、Z22及びZ32は各々独立して-OCH2-、-CH2O-、-CH2CH2-、-CF2O-、-OCF2-、-CH=CH-、-N=N-、-CH=N-、-N=CH-、-CH=N-N=CH-、-CF=CF-、-C≡C-又は単結合を表すが、Z12が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、Z22が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
m12及びm22は各々独立して0、1又は2を表し、m12+m22は1又は2を表し、
X12は水素原子又は炭素原子数1から5のアルキル基を表し、
Y12及びY32は各々独立して水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表す。)で表される化合物であることがより好ましく、下記の一般式(I-iii)
【0043】
【0044】
(式中、R13は炭素原子数1から8のアルキル基、炭素原子数1から7のアルコキシ基、炭素原子数2から8のアルケニル基、炭素原子数2から7のアルケニルオキシ基又は炭素原子数2から8のアルキニル基を表し、
A13及びA23は各々独立して下記の式(A-iii-1)から式(A-iii-7)、式(A-iii-12)、式(A-iii-15)及び式(A-iii-17)
【0045】
【0046】
(式中、破線は結合位置を表し、L13が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良い。)から選ばれる基を表し、
L13はフッ素原子又は炭素原子数1から10の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から10の分岐状若しくは環状アルキル基を表し、
Z13、Z23及びZ33は各々独立して-CF2O-、-OCF2-、-CH=CH-、-CF=CF-、-N=N-、-C≡C-又は単結合を表し、
m13及びm23は各々独立して0又は1を表し、m13+m23は1又は2を表し、
X13は水素原子、メチル基又はエチル基を表し、
Y13及びY33は各々独立して水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表す。)で表される化合物であることがさらに好ましく、下記の一般式(I-iv-1)又は一般式(I-iv-2)
【0047】
【0048】
(式中、R14は炭素原子数2から5のアルキル基、炭素原子数1から4のアルコキシ基、炭素原子数2から5のアルケニル基又は炭素原子数3から7のアルキニル基を表し、
A14及びA24は下記の式(A-iv-1)、式(A-iv-3)から式(A-iv-7)
【0049】
【0050】
(式中、破線は結合位置を表し、L14が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良い。)から選ばれる基を表し、
L14はフッ素原子又は炭素原子数1から8の直鎖状アルキル基を表し、
Z14、Z24及びZ34は各々独立して-C≡C-又は単結合を表し、
Y14及びY34は各々独立して水素原子又はフッ素原子を表す。)で表される化合物であることが特に好ましい。
【0051】
一般式(I)で表される化合物として具体的には、下記の式(I-1)から式(I-29)
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
で表される化合物が挙げられる。
【0059】
本発明の化合物は以下の製法で製造することができる。
(製法1)下記式(s-10)で表される化合物の製造
【0060】
【0061】
(式中、R1s、A1s、X1s、X2s、Y1s及びY3sは前記一般式(I)におけるR1、A1、X1、X2、Y1及びY3と同じ意味を表す。)
式(s-1)で表される化合物を例えばN-ブロモスクシンイミドと反応させることにより式(s-2)で表される化合物を得ることができる。
【0062】
式(s-2)で表される化合物を例えばN-ヨードスクシンイミドと反応させることにより式(s-3)で表される化合物を得ることができる。
【0063】
式(s-3)で表される化合物を一般式(s-4)で表される化合物と反応させることにより一般式(s-5)で表される化合物を得ることができる。反応方法としては例えば金属触媒及び塩基存在下、クロスカップリングさせる方法が挙げられる。金属触媒の具体例としては[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド、酢酸パラジウム(II)、ジクロロビス[ジ-tert-ブチル(p-ジメチルアミノフェニル)ホスフィノ]パラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)等が挙げられる。金属触媒として酢酸パラジウム(II)を使用する場合、トリフェニルホスフィン、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル等の配位子を添加してもよい。塩基の具体例としては炭酸カリウム、リン酸カリウム、炭酸セシウム等が挙げられる。
【0064】
一般式(s-5)で表される化合物を一般式(s-6)で表される化合物と反応させることにより一般式(s-7)で表される化合物を得ることができる。反応方法としては例えばパラジウム触媒、銅触媒及び塩基を用いた薗頭カップリング反応が挙げられる。パラジウム触媒の具体例としては上記のものが挙げられる。銅触媒の具体例としてはヨウ化銅(I)が挙げられる。塩基の具体例としてはトリエチルアミン等が挙げられる。
【0065】
一般式(s-7)で表される化合物を例えばヒドロキシルアミンと反応させることにより一般式(s-8)で表される化合物を得ることができる。
【0066】
一般式(s-8)で表される化合物を例えばN-クロロスクシンイミドと反応させることにより一般式(s-9)で表される化合物を得ることができる。
【0067】
一般式(s-9)で表される化合物を例えばチオ尿素と反応させることにより一般式(s-10)で表される化合物を得ることができる。
【0068】
なお、上記製法1には前記一般式(I)においてAxが前記式(Ax-1)で表される化合物の製法を記しているが、前記一般式(I)においてAxが前記式(Ax-2)で表される化合物についても、一般式(s-10)で表される化合物と同様の方法で合成することができる。
(製法2)下記式(s-20)で表される化合物の製造
【0069】
【0070】
(式中、R1s、A2s、Z3s、X1s、X2s、Y1s及びY3sは前記一般式(I)におけるR1、A1、Z3、X1、X2、Y1及びY3と同じ意味を表し、Alkylは前記一般式(I)と同様に置換されていても良い炭素原子数1から19の直鎖状又は分岐状アルキル基を表す。)
式(s-11)で表される化合物をルイス酸存在下、式(s-12)で表される化合物と反応させることにより式(s-13)で表される化合物を得ることができる。ルイス酸の具体例としては塩化アルミニウム(III)等が挙げられる。
【0071】
式(s-13)で表される化合物のカルボニル基を還元することにより式(s-14)で表される化合物を得ることができる。反応方法としては例えば塩化アルミニウム(III)及び水素化リチウムアルミニウムを用いる方法が挙げられる。
【0072】
式(s-14)で表される化合物を例えばN-ブロモスクシンイミドと反応させることにより式(s-15)で表される化合物を得ることができる。
【0073】
式(s-15)で表される化合物を一般式(s-16)で表される化合物と反応させることにより一般式(s-17)で表される化合物を得ることができる。反応方法としては例えばパラジウム触媒、銅触媒及び塩基を用いた薗頭カップリング反応が挙げられる。パラジウム触媒、銅触媒及び塩基の具体例としては上記のものが挙げられる。
【0074】
一般式(s-17)で表される化合物を例えばヒドロキシルアミンと反応させることにより一般式(s-18)で表される化合物を得ることができる。
【0075】
一般式(s-18)で表される化合物を例えばN-クロロスクシンイミドと反応させることにより一般式(s-19)で表される化合物を得ることができる。
【0076】
一般式(s-19)で表される化合物を例えばチオ尿素と反応させることにより一般式(s-20)で表される化合物を得ることができる。
【0077】
なお、上記製法2には前記一般式(I)においてAxが前記式(Ax-1)で表される化合物の製法を記しているが、前記一般式(I)においてAxが前記式(Ax-2)で表される化合物についても、一般式(s-20)で表される化合物と同様の方法で合成することができる。
【0078】
各工程において記載した以外の反応条件として、例えば実験化学講座(日本化学会編、丸善株式会社発行)、Organic Syntheses(A John Wiley & Sons,Inc.,Publication)、Beilstein Handbook of Organic Chemistry(Beilstein-Institut fuer Literatur der Organischen Chemie、Springer-Verlag Berlin and Heidelberg GmbH & Co.K)、Fiesers’ Reagents for Organic Synthesis(John Wiley & Sons,Inc.)等の文献に記載のもの又はSciFinder(Chemical Abstracts Service,American Chemical Society)、Reaxys(Elsevier Ltd.)等のデータベースに収載のものが挙げられる。
【0079】
各工程において必要に応じて官能基を保護することができる。保護基としては、例えば、GREENE’S PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS((Fourth Edition)、PETER G.M.WUTS、THEODORA W.GREENE共著、A John Wiley & Sons,Inc.,Publication)等に記載の保護基が挙げられる。
【0080】
また、各工程において必要に応じて精製を行うことができる。精製方法としてはクロマトグラフィー、再結晶、蒸留、昇華、再沈殿、吸着、分液処理等が挙げられる。精製剤の具体例としてはシリカゲル、アルミナ、活性炭等が挙げられる。
【0081】
一般式(I)で表される化合物は、液晶組成物へ添加し使用されることが好ましい。液晶組成物が一般式(I)で表される化合物を含有する場合、一般式(I)で表される1つの化合物を含有しても良く、一般式(I)で表される複数の化合物を含有しても良い。本発明の液晶組成物が一般式(I)で表される化合物を含有する場合、液晶組成物における一般式(I)で表される化合物の含有量の合計が、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であり95質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上であり90質量%以下であることがさらに好ましく、20質量%以上であり85質量%以下であることが特に好ましい。ここで、「一般式(I)で表される化合物の含有量の合計」とは、液晶組成物が一般式(I)で表される1つの化合物を含有する場合、一般式(I)で表される化合物の含有量を意味し、液晶組成物が一般式(I)で表される複数の化合物を含有する場合、一般式(I)で表される複数の化合物の含有量の合計を意味する。
【0082】
一般式(I)で表される化合物を含有する液晶組成物は、屈折率異方性(Δn)が0.15以上であり1.00以下であることが好ましい。液晶組成物の液晶相温度範囲、駆動電圧、回転粘度及び弾性率の観点から、屈折率異方性(Δn)は0.20以上であり0.95以下であることが好ましく、0.25以上であり0.90以下であることがより好ましく、0.30以上であり0.85以下であることがさらに好ましく、0.35以上であり0.80以下であることが特に好ましい。
【0083】
一般式(I)で表される化合物を含有する液晶組成物を、高周波移相器、フェーズドアレイアンテナ、画像認識装置、測距装置、液晶表示素子、液晶レンズ又は立体画像表示用複屈折レンズに使用する場合、一般式(I)で表される化合物を含有する液晶組成物は、1kHzにおける誘電率異方性(Δε(1kHz))が2以上であり60以下であることが好ましい。液晶組成物の液晶相温度範囲、保存安定性、耐候性、駆動電圧、回転粘度及び弾性率の観点から、1kHzにおける誘電率異方性(Δε(1kHz))は2.5以上であり50以下であることが好ましく、3以上であり40以下であることがより好ましく、3.5以上であり30以下であることが特に好ましい。
【0084】
一般式(I)で表される化合物を含有する液晶組成物は、高周波数素子に使用することが好ましい。周波数範囲としては、1MHz以上であり1THz以下であることが好ましく、1GHz以上であり500GHz以下であることがより好ましく、2GHz以上であり300GHz以下であることがさらに好ましく、5GHz以上であり150GHz以下であることが特に好ましい。
【0085】
一般式(I)で表される化合物を含有する液晶組成物は、下記の一般式(IV)
【0086】
【0087】
(式中、R2は炭素原子数1から8のアルキル基、炭素原子数1から7のアルコキシ基、炭素原子数2から8のアルケニル基又は炭素原子数2から7のアルケニルオキシ基を表し、
A3は下記の式(A6-1)から式(A6-8)
【0088】
【0089】
(式中、破線は結合位置を表す。)から選ばれる基を表すが、A3が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
Z4は-O-、-S-、-OCH2-、-CH2O-、-CH2CH2-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-OCO-NH-、-NH-COO-、-NH-CO-NH-、-NH-O-、-O-NH-、-SCH2-、-CH2S-、-CF2O-、-OCF2-、-CF2S-、-SCF2-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-COO-CH2CH2-、-OCO-CH2CH2-、-CH2CH2-COO-、-CH2CH2-OCO-、-COO-CH2-、-OCO-CH2-、-CH2-COO-、-CH2-OCO-、-CH=CH-、-N=N-、-CH=N-、-N=CH-、-CH=N-N=CH-、-CF=CF-、-C≡C-又は単結合を表すが、Z4が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
m3は1から4の整数を表し、
Ayは下記の式(Ay-1)及び式(Ay-2)
【0090】
【0091】
(式中、破線は結合位置を表し、Y7、Y9、Y10及びY12は各々独立して水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表し、Y8及びY11は各々独立してフッ素原子、塩素原子、シアノ基、チオイソシアノ基、ニトロ基、ペンタフルオロスルファニル基、任意の水素原子がフッ素原子に置換された炭素原子数1から8のアルキル基、任意の水素原子がフッ素原子に置換された炭素原子数1から7のアルコキシ基、任意の水素原子がフッ素原子に置換された炭素原子数2から8のアルケニル基又は任意の水素原子がフッ素原子に置換された炭素原子数2から7のアルケニルオキシ基を表すが、ここで1個の-CH2-又は2個以上の-CH2-が各々独立して-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-、-CF=CF-若しくは-C≡C-によって置換されていても良い。)から選ばれる基を表す。)で表される化合物を含有することが好ましい。液晶組成物の液晶相温度範囲、屈折率異方性、誘電率異方性、回転粘度及び弾性率の観点から、一般式(VI)で表される化合物は下記の一般式(VI-i)
【0092】
【0093】
(式中、R21は炭素原子数1から5のアルキル基、炭素原子数1から4のアルコキシ基、炭素原子数2から5のアルケニル基又は炭素原子数2から4のアルケニルオキシ基を表し、
A31は上記の式(A6-1)から式(A6-6)から選ばれる基を表すが、A31が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
Z41は-OCH2-、-CH2O-、-CH2CH2-、-COO-、-OCO-、-CF2O-、-OCF2-、-CH=CH-COO-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-、-CH=N-N=CH-、-CF=CF-、-N=N-、-C≡C-又は単結合を表すが、Z41が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
m31は1から3の整数を表し、
Ay1は下記の式(Ay-1-i)及び式(Ay-2-i)
【0094】
【0095】
(式中、破線は結合位置を表し、Y71、Y91、Y101及びY121は各々独立して水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表し、Y81及びY111は各々独立してフッ素原子、塩素原子、シアノ基、チオイソシアノ基、ニトロ基、ペンタフルオロスルファニル基、任意の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい炭素原子数1から8のアルキル基、任意の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい炭素原子数1から7のアルコキシ基、任意の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい炭素原子数2から8のアルケニル基又は任意の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい炭素原子数2から7のアルケニルオキシ基を表す。)から選ばれる基を表す。)で表される化合物であることが好ましく、一般式(VI)で表される化合物は下記の一般式(VI-ii)
【0096】
【0097】
(式中、R22は炭素原子数1から5のアルキル基、炭素原子数1から4のアルコキシ基、炭素原子数2から5のアルケニル基又は炭素原子数2から4のアルケニルオキシ基を表し、
A32は上記の式(A6-1)から式(A6-5)から選ばれる基を表すが、A32が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
Z42は-CF2O-、-OCF2-、-CH=CH-、-CF=CF-、-N=N-、-C≡C-又は単結合を表すが、Z42が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
m32は1、2又は3を表し、
Y72及びY92は各々独立して水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表し、Y82はフッ素原子、塩素原子、シアノ基、チオイソシアノ基、ニトロ基、ペンタフルオロスルファニル基、任意の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい炭素原子数1から8のアルキル基、任意の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい炭素原子数1から7のアルコキシ基、任意の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい炭素原子数2から8のアルケニル基又は任意の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい炭素原子数2から7のアルケニルオキシ基を表す。)で表される化合物であることがより好ましく、一般式(VI)で表される化合物は下記の一般式(VI-iii)
【0098】
【0099】
(式中、R23は炭素原子数1から5のアルキル基、炭素原子数1から4のアルコキシ基又は炭素原子数2から5のアルケニル基を表し、
A33は上記の式(A6-1)から式(A6-5)から選ばれる基を表すが、A33が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
Z43は-CF2O-、-OCF2-、-N=N-、-C≡C-又は単結合を表すが、Z43が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
m33は1、2又は3を表し、
Y73及びY93は各々独立して水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表し、Y83はフッ素原子、塩素原子、シアノ基又はチオイソシアノ基を表す。)で表される化合物であることがさらに好ましく、一般式(VI)で表される化合物は下記の一般式(VI-iv-1)から一般式(VI-iv-21)
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
(式中、R614は炭素原子数1から5のアルキル基、炭素原子数1から4のアルコキシ基又は炭素原子数2から5のアルケニル基を表す。)で表される化合物であることが特に好ましい。
【0106】
一般式(I)で表される化合物を含有する液晶組成物は、下記の一般式(III)
【0107】
【0108】
(式中、R31及びR32は各々独立して炭素原子数1から8のアルキル基、炭素原子数1から7のアルコキシ基、炭素原子数2から8のアルケニル基又は炭素原子数2から7のアルケニルオキシ基を表し、
A31及びA32は各々独立して下記の式(A3-1)から式(A3-8)
【0109】
【0110】
(式中、破線は結合位置を表す。)から選ばれる基を表すが、A32が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
m31は1から4の整数を表す。)で表される化合物を含有してもよい。液晶組成物の液晶相温度範囲、屈折率異方性、誘電率異方性、回転粘度及び弾性率の観点から、一般式(III)で表される化合物は下記の一般式(III-i)
【0111】
【0112】
(式中、R311及びR321は各々独立して炭素原子数1から5のアルキル基、炭素原子数1から4のアルコキシ基、炭素原子数2から5のアルケニル基又は炭素原子数2から4のアルケニルオキシ基を表し、
A311及びA321は各々独立して下記の式(A31-1)から式(A31-6)
【0113】
【0114】
(式中、破線は結合位置を表す。)から選ばれる基を表すが、A321が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
m311は1から3の整数を表す。)で表される化合物であることが好ましく、一般式(III)で表される化合物は下記の一般式(III-ii)
【0115】
【0116】
(式中、R312及びR322は各々独立して炭素原子数1から5のアルキル基、炭素原子数1から4のアルコキシ基、炭素原子数2から5のアルケニル基又は炭素原子数2から4のアルケニルオキシ基を表し、
A312及びA322は各々独立して下記の式(A32-1)から式(A32-4)
【0117】
【0118】
(式中、破線は結合位置を表す。)から選ばれる基を表すが、A
322が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
m312は1又は2を表す。)で表される化合物であることがより好ましく、一般式(III)で表される化合物は下記の一般式(III-iii)
【0119】
(式中、R313及びR323は各々独立して炭素原子数1から5のアルキル基、炭素原子数1から4のアルコキシ基又は炭素原子数2から5のアルケニル基を表し、
A313及びA323は各々独立して下記の式(A33-1)及び式(A33-2)
【0120】
【0121】
(式中、破線は結合位置を表す。)から選ばれる基を表すが、A323が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
m313は1又は2を表す。)で表される化合物であることがさらに好ましく、一般式(III)で表される化合物は下記の一般式(III-iv-1)から一般式(III-iv-10)
【0122】
【0123】
【0124】
(式中、R314及びR324は各々独立して炭素原子数1から5のアルキル基、炭素原子数1から4のアルコキシ基又は炭素原子数2から5のアルケニル基を表す。)で表される化合物であることが特に好ましい。
【0125】
また、一般式(I)で表される化合物は、誘電率異方性(Δε)が中性又は負である液晶組成物へ添加して使用しても良い。その場合、一般式(I)で表される化合物を含有する液晶組成物は、誘電率異方性(Δε)が-20以上であり2以下であることが好ましい。液晶組成物の液晶相温度範囲、保存安定性、耐候性、駆動電圧、回転粘度及び弾性率の観点から、誘電率異方性(Δε)は-15以上であり1.5以下であることが好ましく、-10以上であり1以下であることがより好ましく、-5以上であり0.5以下であることが特に好ましい。
【0126】
一般式(I)で表される化合物を含有する液晶組成物の誘電率異方性(Δε)が中性又は負である場合、液晶組成物は下記の一般式(IV)
【0127】
【0128】
(式中、R41及びR42は各々独立して炭素原子数1から8のアルキル基、炭素原子数1から7のアルコキシ基、炭素原子数2から8のアルケニル基又は炭素原子数2から7のアルケニルオキシ基を表し、
A41及びA42は各々独立して下記の式(A4-1)から式(A4-11)
【0129】
【0130】
(式中、破線は結合位置を表す。)から選ばれる基を表すが、A41が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、A42が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
Z41及びZ42は各々独立して-O-、-S-、-OCH2-、-CH2O-、-CH2CH2-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-OCO-NH-、-NH-COO-、-NH-CO-NH-、-NH-O-、-O-NH-、-SCH2-、-CH2S-、-CF2O-、-OCF2-、-CF2S-、-SCF2-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-COO-CH2CH2-、-OCO-CH2CH2-、-CH2CH2-COO-、-CH2CH2-OCO-、-COO-CH2-、-OCO-CH2-、-CH2-COO-、-CH2-OCO-、-CH=CH-、-N=N-、-CH=N-、-N=CH-、-CH=N-N=CH-、-CF=CF-、-C≡C-又は単結合を表すが、Z41が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、Z42が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
m41及びm42は各々独立して0から3の整数を表すが、m41+m42は1から3の整数を表す。)で表される化合物を含有しても良い。液晶組成物の液晶相温度範囲、屈折率異方性、誘電率異方性、回転粘度及び弾性率の観点から、一般式(IV)で表される化合物は下記の一般式(IV-i)
【0131】
【0132】
(式中、R411及びR421は各々独立して炭素原子数1から5のアルキル基、炭素原子数1から4のアルコキシ基、炭素原子数2から5のアルケニル基又は炭素原子数2から4のアルケニルオキシ基を表し、
A411及びA421は各々独立して上記の式(A4-1)から式(A4-9)から選ばれる基を表すが、A411が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、A421が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
Z411及びZ421は各々独立して-OCH2-、-CH2O-、-CH2CH2-、-COO-、-OCO-、-CF2O-、-OCF2-、-CH=CH-COO-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-、-CH=N-N=CH-、-CF=CF-、-C≡C-又は単結合を表すが、Z411が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、Z421が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
m411及びm421は各々独立して0から3の整数を表すが、m411+m421は1から3の整数を表す。)で表される化合物であることが好ましく、一般式(IV)で表される化合物は下記の一般式(IV-ii)
【0133】
【0134】
(式中、R412及びR422は各々独立して炭素原子数1から5のアルキル基、炭素原子数1から4のアルコキシ基、炭素原子数2から5のアルケニル基又は炭素原子数2から4のアルケニルオキシ基を表し、
A412及びA422は各々独立して上記の式(A4-1)から式(A4-7)から選ばれる基を表すが、A412が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、A422が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
Z412及びZ422は各々独立して-OCH2-、-CH2O-、-CH2CH2-、-COO-、-OCO-、-CF2O-、-OCF2-又は単結合を表すが、Z412が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、Z422が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
m412及びm422は各々独立して0、1又は2を表すが、m412+m422は1又は2を表す。)で表される化合物であることがより好ましく、一般式(IV)で表される化合物は下記の一般式(IV-iii)
【0135】
【0136】
(式中、R413及びR423は各々独立して炭素原子数1から5のアルキル基、炭素原子数1から4のアルコキシ基又は炭素原子数2から5のアルケニル基を表し、
A413及びA423は各々独立して上記の式(A4-1)から式(A4-5)から選ばれる基を表すが、A413が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、A423が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
Z413及びZ423は各々独立して-OCH2-、-CH2O-、-CH2CH2-又は単結合を表すが、Z413が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、Z423が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
m413及びm423は各々独立して0、1又は2を表すが、m413+m423は1又は2を表す。)で表される化合物であることがさらに好ましく、一般式(IV)で表される化合物は下記の一般式(IV-iv-1)から一般式(IV-iv-8)
【0137】
【0138】
【0139】
(式中、R414及びR424は各々独立して炭素原子数1から5のアルキル基、炭素原子数1から4のアルコキシ基又は炭素原子数2から5のアルケニル基を表す。)で表される化合物であることが特に好ましい。
【0140】
一般式(I)で表される化合物を含有する液晶組成物は、その保存安定性を向上させるために、安定剤を添加することもできる。使用できる安定剤としては、例えば、ヒドロキノン類、ヒドロキノンモノアルキルエーテル類、第三ブチルカテコール類、ピロガロール類、チオフェノール類、ニトロ化合物類、β-ナフチルアミン類、β-ナフトール類、ニトロソ化合物等が挙げられる。安定剤を使用する場合の添加量は、組成物に対して0.005質量%から1質量%の範囲が好ましく、0.02質量%から0.8質量%がより好ましく、0.03質量%から0.5質量%がさらに好ましい。また、1種類の安定剤を用いても良く、2種類以上の安定剤を併用して用いても良い。安定剤としては下記の一般式(X1)
【0141】
【0142】
(式中、Spx1は1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-が各々独立して-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-によって置換されても良い炭素原子数1から20のアルキレン基又は単結合を表し、Ax1は下記の式(Ax1-1)から式(Ax1-8)
【0143】
【0144】
(式中、破線は結合位置を表す。)から選ばれる基を表すが、Ax1が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
Zx1は-O-、-S-、-OCH2-、-CH2O-、-CH2CH2-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-OCO-NH-、-NH-COO-、-NH-CO-NH-、-NH-O-、-O-NH-、-SCH2-、-CH2S-、-CF2O-、-OCF2-、-CF2S-、-SCF2-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-COO-CH2CH2-、-OCO-CH2CH2-、-CH2CH2-COO-、-CH2CH2-OCO-、-COO-CH2-、-OCO-CH2-、-CH2-COO-、-CH2-OCO-、-CH=CH-、-N=N-、-CH=N-、-N=CH-、-CH=N-N=CH-、-CF=CF-、-C≡C-又は単結合を表すが、Zx1が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
mx1は0又は1を表し、
mx2は0から4の整数を表す。)で表される化合物が挙げられる。電圧保持率、液晶組成物への相溶性の観点から、一般式(X1)で表される化合物は下記の一般式(X1-i)
【0145】
【0146】
(式中、Spx11は1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-が各々独立して-O-、-COO-又は-OCO-によって置換されても良い炭素原子数1から20のアルキレン基又は単結合を表し、Ax11は下記の式(Ax11-1)及び式(Ax11-2)
【0147】
【0148】
(式中、破線は結合位置を表す。)から選ばれる基を表すが、Ax11が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
Zx11は-COO-、-OCO-、-OCO-CH2CH2-、-CH2CH2-COO-又は単結合を表すが、Zx11が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
mx11は0又は1を表し、
mx21は0又は1を表す。)で表される化合物であることが好ましく、一般式(X1)で表される化合物は下記の一般式(X1-ii-1)から一般式(X1-ii-4)
【0149】
【0150】
(式中、Spx12は炭素原子数1から20のアルキレン基又は単結合を表す。)で表される化合物であることが特に好ましい。
【0151】
また、一般式(I)で表される化合物を含有する液晶組成物は、下記の一般式(X2)
【0152】
【0153】
(式中、Rx21、Rx22、Rx23及びRx24は各々独立して水素原子、酸素原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1から20のアルキル基又は炭素原子数1から20のアルコキシ基を表し、
Spx21、Spx22、Spx23及びSpx22は各々独立してスペーサー基又は単結合を表し、
mx21は0又は1を表し、
mx22は0又は1を表し、
mx23は0又は1を表す。)で表される化合物が挙げられる。電圧保持率、液晶組成物への相溶性の観点から、一般式(X2)で表される化合物は下記の一般式(X2-i)
【0154】
【0155】
(式中、Rx211、Rx221、Rx231及びRx241は各々独立して水素原子、酸素原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1から10のアルキル基又は炭素原子数1から10のアルコキシ基を表し、
Spx211、Spx221、Spx231及びSpx221は各々独立して、基中の任意の水素原子がフッ素原子に置換されても良く、1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-が各々独立して-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-に置き換えられても良い炭素原子数1から20の直鎖状又は分岐状アルキレン基又は単結合を表し、
mx211は0又は1を表し、
mx221は0又は1を表し、
mx231は0又は1を表す。)で表される化合物であることが好ましく、一般式(X2)で表される化合物は下記の一般式(X2-ii)
【0156】
【0157】
(式中、Rx212及びRx222は各々独立して水素原子、炭素原子数1から10のアルキル基又は炭素原子数1から10のアルコキシ基を表し、
Spx212及びSpx222は各々独立して、1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-が各々独立して-O-、-COO-又は-OCO-に置き換えられても良い炭素原子数1から10の直鎖状アルキレン基又は単結合を表し、
mx212は0又は1を表す。)で表される化合物であることがより好ましく、一般式(X2)で表される化合物は下記の一般式(X2-iii)
【0158】
【0159】
(式中、Rx213及びRx223は各々独立して水素原子、炭素原子数1から10のアルキル基又は炭素原子数1から10のアルコキシ基を表し、
Spx213は1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-が各々独立して-COO-又は-OCO-に置き換えられても良い炭素原子数1から10の直鎖状アルキレン基を表す。)で表される化合物であることが特に好ましい。
【0160】
本願発明において、1,4-シクロヘキシレン基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基及び1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基に含まれる環構造は、各々トランス体及びシス体のいずれであっても良いが、液晶性の観点から、各々トランス体の含有率がシス体の含有率よりも多いことが好ましく、環構造におけるトランス体の含有率が80%以上であることがより好ましく、環構造におけるトランス体の含有率が90%以上であることがさらに好ましく、環構造におけるトランス体の含有率が95%以上であることがさらにより好ましく、環構造におけるトランス体の含有率が98%以上であることが特に好ましい。また、本願発明において下記の表記(CY-1)
【0161】
【0162】
(式中、破線は結合位置を表す。)は1,4-シクロヘキシレン基のトランス体及び/又はシス体を意味する。
【0163】
また、本願発明において、各元素は同じ元素の同位体に置き換えられていても良い。
【実施例】
【0164】
以下、実施例を挙げて本発明を更に記述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は『質量%』を意味する。各工程において酸素及び/又は水分に不安定な物質を取り扱う際は、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス中で作業を行うことが好ましい。各化合物の純度はUPLC(Waters ACQUITY UPLC、BEH C18(100×2.1mm×1.7μm)、アセトニトリル/水又は0.1%ギ酸含有アセトニトリル/水、PDA、カラム温度40℃)、GPC(島津製作所 HPLC Prominence、Shodex KF-801(300mm×8mm×6μm)+KF-802(300mm×8mm×6μm)、テトラヒドロフラン、RI、UV(254nm)、カラム温度40℃)、GC(Agilent 6890A、J&W DB-1、30m×0.25mm×0.25μm、キャリアガス He、FID、100℃(1分)→昇温10℃/分→300℃(12分))又は1H NMR(JEOL、400MHz)によって決定した。
(実施例1)式(I-1)で表される化合物の製造
【0165】
【0166】
【0167】
反応容器に式(I-1-1)で表される化合物7.0g、ジクロロメタン70mLを加えた。氷冷しながら、N-ブロモスクシンイミド9.3gを少量ずつ加え、室温で5時間撹拌した。反応液を水に注ぎ、分液処理した。有機層を食塩水で洗浄し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン/ヘキサン)により精製を行うことによって、式(I-1-2)で表される化合物8.8gを得た。
【0168】
窒素雰囲気下、反応容器に式(I-1-2)で表される化合物8.8g、炭酸カリウム8.3g、式(I-1-3)で表される化合物8.6g、トルエン88mL、エタノール44mL、水44mL、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド ジクロロメタン付加物0.3gを加え、6時間加熱還流させた。反応液を水に注ぎ、トルエンで抽出した。有機層を水及び食塩水で順次洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン/ヘキサン)及び再結晶(トルエン/エタノール)により精製を行うことによって、式(I-1-4)で表される化合物9.9gを得た。
【0169】
反応容器に式(I-1-4)で表される化合物9.9g、ジクロロメタン99mLを加えた。氷冷しながら、N-ブロモスクシンイミド6.9gを少量ずつ加え、室温で5時間撹拌した。反応液を水に注ぎ、分液処理した。有機層を食塩水で洗浄し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン/ヘキサン)により精製を行うことによって、式(I-1-5)で表される化合物10.6gを得た。
【0170】
窒素雰囲気下、反応容器に式(I-1-5)で表される化合物10.6g、ヨウ化銅(I)0.2g、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル[XPhos]0.3g、酢酸パラジウム(II)0.1g、ジイソプロピルアミン53mL、N,N-ジメチルホルムアミド106mLを加えた。90℃で加熱しながら、トリメチルシリルアセチレン4.0gを滴下し、90℃で5時間加熱撹拌した。反応液を水に注ぎ、トルエンで抽出した。有機層を水及び食塩水で順次洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン/ヘキサン)及び活性炭処理により精製を行うことによって、式(I-1-6)で表される化合物8.8gを得た。
【0171】
反応容器に式(I-1-6)で表される化合物8.6g、メタノール129mL、炭酸カリウム4.5gを加え、室温で8時間撹拌した。反応液に水を加え、トルエンで抽出した。有機層を水及び食塩水で順次洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン/ヘキサン)により精製を行うことによって、式(I-1-7)で表される化合物6.5gを得た。
【0172】
窒素雰囲気下、反応容器に式(I-1-8)で表される化合物4.3g、ヨウ化銅(I)0.1g、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル[XPhos]0.1g、酢酸パラジウム(II)0.1g、ジイソプロピルアミン43mL、N,N-ジメチルホルムアミド86mLを加えた。90℃で加熱しながら、式(I-1-7)で表される化合物6.5gをN,N-ジメチルホルムアミド20mLに溶解させた溶液を滴下し、90℃で5時間加熱撹拌した。反応液を水に注ぎ、トルエンで抽出した。有機層を水及び食塩水で順次洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン/ヘキサン)及び活性炭処理により精製を行うことによって、式(I-1-9)で表される化合物7.4gを得た。
【0173】
反応容器に式(I-1-9)で表される化合物7.4g、酢酸ナトリウム2.6g、メタノール74mLを加えた。室温で塩酸ヒドロキシルアミン2.2gを加え、10時間撹拌した。反応液を水に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機層を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び食塩水で順次洗浄した後、溶媒を留去し乾燥させることによって、式(I-1-10)で表される化合物6.9gを得た。
【0174】
反応容器に式(I-1-10)で表される化合物6.9g、N,N-ジメチルホルムアミド69mLを加えた。氷冷しながらN-クロロスクシンイミド2.3gを加え、40℃で2時間加熱撹拌した。反応液を冷却し水に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機層を水及び食塩水で順次洗浄した後、溶媒を留去し乾燥させることによって、式(I-1-11)で表される化合物6.7gを得た。
【0175】
反応容器に式(I-1-11)で表される化合物6.7g、チオ尿素1.5g、テトラヒドロフラン67mLを加えた。氷冷しながらトリエチルアミン3.9gを滴下し、40℃で5時間加熱撹拌した。反応液を冷却し水に注ぎ、トルエンで抽出した。有機層を水及び食塩水で順次洗浄した後、有機層を水及び食塩水で順次洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン/ヘキサン)、活性炭処理及び再結晶(トルエン/エタノール)により精製を行うことによって、式(I-1)で表される化合物4.5gを得た。
MS(EI):m/z=501
屈折率異方性の外挿値Δn=0.47
(実施例2)式(I-2)で表される化合物の製造
【0176】
【0177】
反応容器に式(I-2-1)で表される化合物7.0g、ジクロロメタン70mLを加えた。氷冷しながら、N-ヨードスクシンイミド7.9gを少量ずつ加え、室温で5時間撹拌した。反応液を水に注ぎ、分液処理した。有機層を食塩水で洗浄し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン/ヘキサン)により精製を行うことによって、式(I-2-2)で表される化合物8.8gを得た。
【0178】
窒素雰囲気下、反応容器に式(I-2-2)で表される化合物8.8g、ヨウ化銅(I)0.2g、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル[XPhos]0.2g、酢酸パラジウム(II)0.2g、ジイソプロピルアミン88mL、N,N-ジメチルホルムアミド176mLを加えた。90℃で加熱しながら、式(I-2-3)で表される化合物5.4gをN,N-ジメチルホルムアミド11mLに溶解させた溶液を滴下し、90℃で5時間加熱撹拌した。反応液を水に注ぎ、トルエンで抽出した。有機層を5%塩酸、食塩水で順次洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン/ヘキサン)、活性炭処理及び再結晶(アセトン/メタノール)により精製を行うことによって、式(I-2-4)で表される化合物7.3gを得た。
【0179】
窒素雰囲気下、反応容器に式(I-2-4)で表される化合物7.3g、酢酸カリウム2.8g、ビス(ピナコラト)ジボロン4.0g、ジメチルスルホキシド56mL、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド ジクロロメタン付加物0.1gを加え、80℃で6時間加熱撹拌した。反応液を水に注ぎ、トルエンで抽出した。有機層を水及び食塩水で順次洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(アルミナ、ジクロロメタン)により精製を行うことによって、式(I-2-5)で表される化合物6.5gを得た。
【0180】
窒素雰囲気下、反応容器に式(I-2-5)で表される化合物6.5g、炭酸カリウム3.0g、式(I-2-6)で表される化合物3.2g、トルエン65mL、エタノール33mL、水33mL、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド0.2gを加え、6時間加熱還流させた。反応液を水に注ぎ、トルエンで抽出した。有機層を水及び食塩水で順次洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン/ヘキサン)及び再結晶(トルエン/ヘキサン)により精製を行うことによって、式(I-2-7)で表される化合物5.4gを得た。
【0181】
実施例1において式(I-1-9)で表される化合物を式(I-2-7)で表される化合物に置き換えた以外は同様の方法によって、式(I-2)で表される化合物を製造した。
MS(EI):m/z=501
屈折率異方性の外挿値Δn=0.49
(実施例3)式(I-3)で表される化合物の製造
【0182】
【0183】
【0184】
窒素雰囲気下、反応容器に式(I-3-1)で表される化合物7.0g、ピリジン4.3g、ジクロロメタン70mLを加えた。氷冷しながら、トリフルオロメタンスルホン酸無水物11.3gを滴下し、室温で4時間撹拌した。反応液を5%炭酸水素ナトリウム水溶液に注ぎ、分液処理した。有機層を5%塩酸、水及び食塩水で順次洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン/ヘキサン)により精製を行うことによって、式(I-3-2)で表される化合物10.6gを得た。
【0185】
窒素雰囲気下、反応容器に式(I-3-2)で表される化合物10.6g、酢酸カリウム9.6g、ビス(ピナコラト)ジボロン10.0g、ジメチルスルホキシド106mL、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド ジクロロメタン付加物0.4gを加え、80℃で6時間加熱撹拌した。反応液を水に注ぎ、トルエンで抽出した。有機層を水及び食塩水で順次洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(アルミナ、ジクロロメタン)により精製を行うことによって、式(I-3-3)で表される化合物7.9gを得た。
【0186】
窒素雰囲気下、反応容器に式(I-3-3)で表される化合物7.9g、炭酸カリウム5.4g、式(I-3-4)で表される化合物9.0g、トルエン90mL、エタノール45mL、水45mL、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド0.4gを加え、6時間加熱還流させた。反応液を水に注ぎ、トルエンで抽出した。有機層を水及び食塩水で順次洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン/ヘキサン)及び再結晶(ジクロロメタン/メタノール)により精製を行うことによって、式(I-3-5)で表される化合物8.2gを得た。
【0187】
窒素雰囲気下、反応容器に水素化リチウムアルミニウム5.4g、テトラヒドロフラン54mLを加えた。氷冷しながら、塩化アルミニウム(III)5.6gを少量ずつ加えた。氷冷しながら、式(I-3-5)で表される化合物8.2gをテトラヒドロフラン16mLに溶解させた溶液を滴下し、室温で5時間撹拌した。氷冷しながら、10%塩酸を滴下し、析出物を濾過により除去した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン/ヘキサン)及び再結晶(ジクロロメタン/メタノール)により精製を行うことによって、式(I-3-6)で表される化合物6.4gを得た。
【0188】
実施例1において式(I-1-5)で表される化合物を式(I-3-6)で表される化合物に置き換えた以外は同様の方法によって、式(I-3)で表される化合物を製造した。
MS(EI):m/z=493
屈折率異方性の外挿値Δn=0.45
(実施例4)式(I-4)で表される化合物の製造
【0189】
【0190】
実施例2において式(I-2-3)で表される化合物を式(I-4-2)で表される化合物に置き換えた以外は同様の方法によって、式(I-4)で表される化合物を製造した。
MS(EI):m/z=493
屈折率異方性の外挿値Δn=0.47
(実施例5)式(I-5)で表される化合物の製造
【0191】
【0192】
Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters誌、2015年、25巻、21号、4824-4827頁に記載の方法によって、式(I-5-1)で表される化合物を製造した。窒素雰囲気下、反応容器に式(I-5-1)で表される化合物8.0g、メタノール160mL、炭酸カリウム8.1gを加えた。氷冷しながら(1-ジアゾ-2-オキソプロピル)ホスホン酸ジメチル7.4gを滴下し、室温で5時間撹拌した。反応液を水に注ぎ、トルエンで抽出した。有機層を水及び食塩水で順次洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン/ヘキサン)により精製を行うことによって、式(I-5-2)で表される化合物6.3gを得た。
【0193】
反応容器に式(I-5-3)で表される化合物7.0g、ジクロロメタン70mLを加えた。氷冷しながら、N-ヨードスクシンイミド12.4gを少量ずつ加え、室温で5時間撹拌した。反応液を水に注ぎ、分液処理した。有機層を食塩水で洗浄し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン/ヘキサン)により精製を行うことによって、式(I-5-4)で表される化合物10.6gを得た。
【0194】
窒素雰囲気下、反応容器に式(I-5-4)で表される化合物6.3g、ヨウ化銅(I)0.2g、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル[XPhos]0.2g、酢酸パラジウム(II)0.2g、ジイソプロピルアミン32mL、N,N-ジメチルホルムアミド64mLを加えた。90℃で加熱しながら、式(I-5-2)で表される化合物6.3gをN,N-ジメチルホルムアミド12mLに溶解させた溶液を滴下し、90℃で5時間加熱撹拌した。反応液を水に注ぎ、トルエンで抽出した。有機層を5%塩酸、食塩水で順次洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン/ヘキサン)、活性炭処理及び再結晶(アセトン/メタノール)により精製を行うことによって、式(I-5-5)で表される化合物7.6gを得た。
【0195】
窒素雰囲気下、反応容器に式(I-5-5)で表される化合物7.6g、トリt-ブチルホスフィン0.2g、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)0.5g、トルエン76mLを加えた。室温でリチウムビス(トリメチルシリル)アミド(26%テトラヒドロフラン溶液)16mLを滴下し、70℃で15時間加熱撹拌した。室温に冷却し、10%塩酸10mLを滴下した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水及び食塩水で順次洗浄し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン/酢酸エチル)により精製を行うことによって、式(I-5-6)で表される化合物5.2gを得た。
【0196】
反応容器に式(I-5-6)で表される化合物5.2g、ジクロロメタン52mLを加えた。氷冷しながら、N-ブロモスクシンイミド3.2gを少量ずつ加え、室温で5時間撹拌した。反応液を水に注ぎ、分液処理した。有機層を食塩水で洗浄し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン/酢酸エチル)により精製を行うことによって、式(I-5-7)で表される化合物5.1gを得た。
【0197】
窒素雰囲気下、反応容器に式(I-5-7)で表される化合物5.1g、ヨウ化銅(I)0.2g、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル[XPhos]0.2g、酢酸パラジウム(II)0.2g、ジイソプロピルアミン25mL、N,N-ジメチルホルムアミド50mLを加えた。90℃で加熱しながら、式(I-5-8)で表される化合物2.1gをN,N-ジメチルホルムアミド4mLに溶解させた溶液を滴下し、90℃で5時間加熱撹拌した。反応液を水に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機層を水及び食塩水で順次洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン/酢酸エチル)及び活性炭処理により精製を行うことによって、式(I-5-9)で表される化合物4.2gを得た。
【0198】
窒素雰囲気下、反応容器に式(I-5-9)で表される化合物4.2g、ジクロロメタン42mLを加えた。室温で1,1’-チオカルボニルジイミダゾール1.8gを加え、5時間撹拌した。反応液を水に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機層を水及び食塩水で順次洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン/ヘキサン)及び再結晶(ジクロロメタン/メタノール)により精製を行うことによって、式(I-5)で表される化合物3.6gを得た。
MS(EI):m/z=539
屈折率異方性の外挿値Δn=0.58
(実施例6)式(I-6)で表される化合物の製造
【0199】
【0200】
実施例2において式(I-2-3)で表される化合物を式(I-6-2)で表される化合物に、式(I-2-6)で表される化合物を式(I-6-5)で表される化合物に置き換えた以外は同様の方法によって、式(I-6-6)で表される化合物を製造した。
【0201】
窒素雰囲気下、反応容器に水素化リチウムアルミニウム4.5g、テトラヒドロフラン45mLを加えた。氷冷しながら、塩化アルミニウム(III)3.9gを少量ずつ加えた。氷冷しながら、式(I-6-6)で表される化合物7.0gをテトラヒドロフラン21mLに溶解させた溶液を滴下し、室温で10時間撹拌した。氷冷しながら、10%塩酸を滴下し、析出物を濾過により除去した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン/ヘキサン)及び再結晶(ジクロロメタン/メタノール)により精製を行うことによって、式(I-6-7)で表される化合物5.4gを得た。
【0202】
窒素雰囲気下、反応容器に式(I-6-7)で表される化合物5.4g、テトラヒドロフラン54mLを加えた。-70℃でブチルリチウム/ヘキサン溶液(1.6M)7.4mLを滴下し、1時間撹拌した。-70℃でN,N-ジメチルホルムアミド1.3mLを滴下し、1時間撹拌した。0℃で10%塩酸50mLを滴下し、室温で30分撹拌した。反応液にトルエンを加え分液処理した。有機層を水及び食塩水で順次洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン)により精製を行うことによって、式(I-6-8)で表される化合物4.6gを得た。
【0203】
実施例1において式(I-1-9)で表される化合物を式(I-6-8)で表される化合物に置き換えた以外は同様の方法によって、式(I-6)で表される化合物を製造した。
MS(EI):m/z=515
屈折率異方性の外挿値Δn=0.44
(実施例7)式(I-7)で表される化合物の製造
【0204】
【0205】
実施例1において式(I-1-5)で表される化合物を式(I-7-1)で表される化合物に置き換えた以外は同様の方法によって、式(I-7)で表される化合物を製造した。
MS(EI):m/z=511
屈折率異方性の外挿値Δn=0.56
(実施例8)式(I-8)で表される化合物の製造
【0206】
【0207】
窒素雰囲気下、反応容器に式(I-8-1)で表される化合物7.0g、炭酸カリウム4.2g、式(I-8-2)で表される化合物4.1g、トルエン56mL、エタノール28mL、水28mL、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド0.4gを加え、6時間加熱還流させた。反応液を水に注ぎ、トルエンで抽出した。有機層を水及び食塩水で順次洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン/ヘキサン)及び再結晶(ジクロロメタン/メタノール)により精製を行うことによって、式(I-8-3)で表される化合物5.0gを得た。
【0208】
窒素雰囲気下、反応容器に式(I-8-3)で表される化合物5.0g、炭酸カリウム2.9g、式(I-8-4)で表される化合物2.7g、トルエン40mL、エタノール20mL、水20mL、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド0.3gを加え、6時間加熱還流させた。反応液を水に注ぎ、トルエンで抽出した。有機層を水及び食塩水で順次洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン/ヘキサン)及び再結晶(トルエン/ヘキサン)により精製を行うことによって、式(I-8-5)で表される化合物4.7gを得た。
【0209】
実施例1において式(I-1-9)で表される化合物を式(I-8-5)で表される化合物に置き換えた以外は同様の方法によって、式(I-8)で表される化合物を製造した。
MS(EI):m/z=445
屈折率異方性の外挿値Δn=0.43
(実施例9)式(I-9)で表される化合物の製造
【0210】
【0211】
【0212】
窒素雰囲気下、反応容器に塩化アルミニウム(III)12.6g、ジクロロメタン38mLを加えた。氷冷しながらブチリルクロリド10.0gをジクロロメタン10mLに溶解させた溶液を滴下し、室温で2時間撹拌した。氷冷しながら式(I-9-1)で表される化合物12.0gをジクロロメタン48mLに溶解させた溶液を滴下し、室温で2時間撹拌した。反応液を氷水に注ぎ、分液処理した。有機層を食塩水で洗浄し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン/ヘキサン)により精製を行うことによって、式(I-9-2)で表される化合物10.0gを得た。
【0213】
窒素雰囲気下、反応容器に水素化リチウムアルミニウム7.2g、テトラヒドロフラン58mLを加えた。氷冷しながら、塩化アルミニウム(III)12.7gを少量ずつ加えた。氷冷しながら、式(I-9-2)で表される化合物10.0gをテトラヒドロフラン30mLに溶解させた溶液を滴下し、室温で5時間撹拌した。氷冷しながら、10%塩酸を滴下し、析出物を濾過により除去した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン/ヘキサン)により精製を行うことによって、式(I-9-3)で表される化合物7.0gを得た。
【0214】
反応容器に式(I-9-3)で表される化合物7.0g、ジクロロメタン70mLを加えた。氷冷しながら、N-ブロモスクシンイミド7.6gを少量ずつ加え、室温で5時間撹拌した。反応液を水に注ぎ、分液処理した。有機層を食塩水で洗浄し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン/ヘキサン)により精製を行うことによって、式(I-9-4)で表される化合物10.0gを得た。
【0215】
窒素雰囲気下、反応容器に式(I-9-4)で表される化合物7.0g、ヨウ化銅(I)0.2g、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル[XPhos]0.2g、酢酸パラジウム(II)0.2g、ジイソプロピルアミン70mL、N,N-ジメチルホルムアミド140mLを加えた。90℃で加熱しながら、式(I-9-5)で表される化合物3.4gをN,N-ジメチルホルムアミド7mLに溶解させた溶液を滴下し、90℃で5時間加熱撹拌した。反応液を水に注ぎ、トルエンで抽出した。有機層を5%塩酸、水及び食塩水で順次洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン/ヘキサン)、活性炭処理及び再結晶(アセトン/エタノール)により精製を行うことによって、式(I-9-6)で表される化合物5.6gを得た。
【0216】
窒素雰囲気下、反応容器に式(I-9-6)で表される化合物5.6g、テトラヒドロフラン56mLを加えた。-60℃でsec-ブチルリチウム/シクロヘキサン、ヘキサン溶液(1.0mol/L)20mLを滴下し、-60℃で1時間撹拌した。-60℃でほう酸トリイソプロピル4.0gを滴下し、0℃まで昇温した。氷冷しながら、10%塩酸20mLを滴下し、室温で1時間撹拌した。水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を水及び食塩水で順次洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(アルミナ、酢酸エチル)により精製を行うことによって、式(I-9-7)で表される化合物5.1gを得た。
【0217】
窒素雰囲気下、反応容器に式(I-9-7)で表される化合物5.1g、式(I-9-8)で表される化合物3.1g、炭酸カリウム3.0g、ジクロロビス[ジ-t-ブチル(p-ジメチルアミノフェニル)ホスフィノ]パラジウム(II)0.2g、トルエン40mL、エタノール20mL、水20mLを加え、6時間加熱還流させた。反応液を水に注ぎ、トルエンで抽出した。有機層を水及び食塩水で順次洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン/ヘキサン)及び再結晶(トルエン/エタノール)により精製を行うことによって、式(I-9-9)で表される化合物5.2gを得た。
【0218】
実施例1において式(I-1-9)で表される化合物を式(I-9-9)で表される化合物に置き換えた以外は同様の方法によって、式(I-9)で表される化合物を製造した。
MS(EI):m/z=483
屈折率異方性の外挿値Δn=0.47
(実施例10)式(I-10)で表される化合物の製造
【0219】
【0220】
【0221】
実施例9においてブチリルクロリドをバレリルクロリドに置き換えた以外は同様の方法によって、式(I-10-4)で表される化合物を製造した。
【0222】
実施例1において式(I-1-5)で表される化合物を式(I-10-4)で表される化合物に置き換えた以外は同様の方法によって、式(I-10-6)で表される化合物を製造した。
【0223】
窒素雰囲気下、反応容器に水素化リチウムアルミニウム10.3g、テトラヒドロフラン50mLを加えた。氷冷しながら、塩化アルミニウム(III)9.1gを少量ずつ加えた。氷冷しながら、式(I-10-7)で表される化合物8.0gをテトラヒドロフラン24mLに溶解させた溶液を滴下し、室温で5時間撹拌した。氷冷しながら、10%塩酸を滴下し、析出物を濾過により除去した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン/ヘキサン)及び減圧蒸留により精製を行うことによって、式(I-10-8)で表される化合物6.0gを得た。
【0224】
窒素雰囲気下、反応容器に式(I-10-8)で表される化合物6.0g、酢酸カリウム8.0g、ビス(ピナコラト)ジボロン10.4g、ジメチルスルホキシド90mL、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド ジクロロメタン付加物0.4gを加え、80℃で6時間加熱撹拌した。反応液を水に注ぎ、トルエンで抽出した。有機層を水及び食塩水で順次洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(アルミナ、ジクロロメタン)により精製を行うことによって、式(I-10-9)で表される化合物5.8gを得た。
【0225】
窒素雰囲気下、反応容器に式(I-10-9)で表される化合物5.8g、式(I-10-10)で表される化合物6.2g、炭酸カリウム4.5g、ジクロロビス[ジ-t-ブチル(p-ジメチルアミノフェニル)ホスフィノ]パラジウム(II)0.2g、トルエン58mL、エタノール29mL、水29mLを加え、6時間加熱還流させた。反応液を水に注ぎ、トルエンで抽出した。有機層を水及び食塩水で順次洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン/ヘキサン)により精製を行うことによって、式(I-10-11)で表される化合物5.2gを得た。
【0226】
窒素雰囲気下、反応容器に式(I-10-11)で表される化合物5.2g、テトラヒドロフラン52mLを加えた。-70℃でブチルリチウム/ヘキサン溶液(1.6M)16.3mLを滴下し、1時間撹拌した。-70℃でN,N-ジメチルホルムアミド2.0mLを滴下し、1時間撹拌した。0℃で10%塩酸50mLを滴下し、室温で30分撹拌した。反応液にトルエンを加え分液処理した。有機層を水及び食塩水で順次洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン/ヘキサン)により精製を行うことによって、式(I-10-12)で表される化合物4.5gを得た。
【0227】
窒素雰囲気下、反応容器に式(I-10-12)で表される化合物4.5g、ヨウ化銅(I)0.2g、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル[XPhos]0.2g、酢酸パラジウム(II)0.2g、ジイソプロピルアミン25mL、N,N-ジメチルホルムアミド50mLを加えた。90℃で加熱しながら、式(I-10-6)で表される化合物3.3gをN,N-ジメチルホルムアミド10mLに溶解させた溶液を滴下し、90℃で5時間加熱撹拌した。反応液を水に注ぎ、トルエンで抽出した。有機層を5%塩酸、水及び食塩水で順次洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン/ヘキサン)及び活性炭処理により精製を行うことによって、式(I-10-13)で表される化合物5.3gを得た。
【0228】
実施例1において式(I-1-9)で表される化合物を式(I-10-13)で表される化合物に置き換えた以外は同様の方法によって、式(I-10)で表される化合物を製造した。
MS(EI):m/z=507
屈折率異方性の外挿値Δn=0.44
(実施例11)式(I-11)で表される化合物の製造
【0229】
【0230】
窒素雰囲気下、反応容器に式(I-11-1)で表される化合物7.0g、ピリジン6.2g、ジクロロメタン70mLを加えた。氷冷しながら、トリフルオロメタンスルホン酸無水物12.2gを滴下し、室温で4時間撹拌した。反応液を5%炭酸水素ナトリウム水溶液に注ぎ、分液処理した。有機層を5%塩酸、水及び食塩水で順次洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン/ヘキサン)により精製を行うことによって、式(I-11-2)で表される化合物11.0gを得た。
【0231】
窒素雰囲気下、反応容器に式(I-11-2)で表される化合物11.0g、酢酸カリウム10.4g、ビス(ピナコラト)ジボロン10.8g、ジメチルスルホキシド110mL、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド ジクロロメタン付加物0.4gを加え、80℃で6時間加熱撹拌した。反応液を水に注ぎ、トルエンで抽出した。有機層を水及び食塩水で順次洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(アルミナ、トルエン)により精製を行うことによって、式(I-11-3)で表される化合物9.2gを得た。
【0232】
窒素雰囲気下、反応容器に式(I-11-3)で表される化合物9.2g、炭酸カリウム6.6g、式(I-11-4)で表される化合物11.0g、トルエン110mL、エタノール55mL、水55mL、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド0.4gを加え、6時間加熱還流させた。反応液を水に注ぎ、トルエンで抽出した。有機層を水及び食塩水で順次洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン/ヘキサン)により精製を行うことによって、式(I-11-5)で表される化合物9.6gを得た。
【0233】
窒素雰囲気下、反応容器に式(I-11-5)で表される化合物9.6g、ヨウ化銅(I)0.2g、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル[XPhos]0.2g、酢酸パラジウム(II)0.2g、ジイソプロピルアミン70mL、N,N-ジメチルホルムアミド140mLを加えた。90℃で加熱しながら、式(I-11-6)で表される化合物3.8gをN,N-ジメチルホルムアミド8mLに溶解させた溶液を滴下し、90℃で5時間加熱撹拌した。反応液を水に注ぎ、トルエンで抽出した。有機層を5%塩酸、水及び食塩水で順次洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン/ヘキサン)、活性炭処理及び再結晶(アセトン/エタノール)により精製を行うことによって、式(I-11-7)で表される化合物9.1gを得た。
【0234】
実施例1において式(I-1-9)で表される化合物を式(I-11-7)で表される化合物に置き換えた以外は同様の方法によって、式(I-11)で表される化合物を製造した。
MS(EI):m/z=475
屈折率異方性の外挿値Δn=0.42
(実施例12)式(I-12)で表される化合物の製造
【0235】
【0236】
WO2010/115279A1号公報に記載の方法によって、式(I-12-2)で表される化合物を製造した。窒素雰囲気下、反応容器に式(I-12-1)で表される化合物7.0g、式(I-12-2)で表される化合物6.2g、炭酸カリウム3.6g、ジクロロビス[ジ-t-ブチル(p-ジメチルアミノフェニル)ホスフィノ]パラジウム(II)0.4g、トルエン70mL、エタノール35mL、水35mLを加え、6時間加熱還流させた。反応液を水に注ぎ、トルエンで抽出した。有機層を水及び食塩水で順次洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン/ヘキサン)及び再結晶(トルエン/エタノール)により精製を行うことによって、式(I-12-3)で表される化合物6.8gを得た。
【0237】
実施例1において式(I-1-9)で表される化合物を式(I-12-3)で表される化合物に置き換えた以外は同様の方法によって、式(I-12)で表される化合物を製造した。
MS(EI):m/z=513
屈折率異方性の外挿値Δn=0.52
(実施例13)式(I-13)で表される化合物の製造
【0238】
【0239】
窒素雰囲気下、反応容器に式(I-13-1)で表される化合物7.0g、式(I-13-2)で表される化合物4.2g、炭酸カリウム5.1g、N,N-ジメチルアセトアミド70mL、酢酸パラジウム(II)0.1gを加え120℃で5時間加熱撹拌した。反応液を水に注ぎ、トルエンで抽出した。有機層を水及び食塩水で順次洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン/ヘキサン)により精製を行うことによって、式(I-13-3)で表される化合物6.1gを得た。
【0240】
窒素雰囲気下、反応容器に式(I-13-3)で表される化合物6.1g、炭酸カリウム4.2g、式(I-13-4)で表される化合物6.8g、トルエン68mL、エタノール34mL、水34mL、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド0.4gを加え、6時間加熱還流させた。反応液を水に注ぎ、トルエンで抽出した。有機層を水及び食塩水で順次洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン/ヘプタン)及び再結晶(トルエン/エタノール)により精製を行うことによって、式(I-13-5)で表される化合物6.3gを得た。
【0241】
実施例6において式(I-6-7)で表される化合物を式(I-13-7)で表される化合物に置き換えた以外は同様の方法によって、式(I-13)で表される化合物を製造した。
MS(EI):m/z=513
屈折率異方性の外挿値Δn=0.53
(実施例14)式(I-14)で表される化合物の製造
【0242】
【0243】
【0244】
窒素雰囲気下、反応容器に式(I-14-1)で表される化合物7.0g、炭酸カリウム4.2g、式(I-14-2)で表される化合物5.2g、トルエン56mL、エタノール28mL、水28mL、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド0.2gを加え、6時間加熱還流させた。反応液を水に注ぎ、トルエンで抽出した。有機層を水及び食塩水で順次洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン/ヘキサン)及び再結晶(トルエン/エタノール)により精製を行うことによって、式(I-14-3)で表される化合物7.0gを得た。
【0245】
窒素雰囲気下、反応容器に式(I-14-3)で表される化合物7.0g、ヨウ化銅(I)0.1g、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル[XPhos]0.1g、酢酸パラジウム(II)0.1g、ジイソプロピルアミン37mL、N,N-ジメチルホルムアミド74mLを加えた。90℃で加熱しながら、トリメチルシリルアセチレン2.4gをN,N-ジメチルホルムアミド7mLに溶解させた溶液を滴下し、90℃で5時間加熱撹拌した。反応液を水に注ぎ、トルエンで抽出した。有機層を水及び食塩水で順次洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン/ヘキサン)及び活性炭処理により精製を行うことによって、式(I-14-4)で表される化合物5.8gを得た。
【0246】
反応容器に式(I-14-4)で表される化合物5.8g、メタノール106mL、炭酸カリウム5.8gを加え、室温で8時間撹拌した。反応液に水を加え、トルエンで抽出した。有機層を水及び食塩水で順次洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン/ヘキサン)により精製を行うことによって、式(I-14-5)で表される化合物4.4gを得た。
【0247】
窒素雰囲気下、反応容器に式(I-14-5)で表される化合物4.4g、ヨウ化銅(I)0.2g、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル[XPhos]0.2g、酢酸パラジウム(II)0.2g、ジイソプロピルアミン25mL、N,N-ジメチルホルムアミド50mLを加えた。90℃で加熱しながら、式(I-14-6)で表される化合物2.6gをN,N-ジメチルホルムアミド10mLに溶解させた溶液を滴下し、90℃で5時間加熱撹拌した。反応液を水に注ぎ、トルエンで抽出した。有機層を5%塩酸、水及び食塩水で順次洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン/ヘキサン)、活性炭処理及び再結晶(トルエン/エタノール)により精製を行うことによって、式(I-14-7)で表される化合物4.8gを得た。
【0248】
実施例6において式(I-6-7)で表される化合物を式(I-14-7)で表される化合物に置き換えた以外は同様の方法によって、式(I-14)で表される化合物を製造した。
MS(EI):m/z=573
屈折率異方性の外挿値Δn=0.46
(実施例15)式(I-15)で表される化合物の製造
【0249】
【0250】
【0251】
特開2016-185913号公報に記載の方法によって式(I-15-1)で表される化合物を製造した。反応容器に式(I-15-1)で表される化合物10.0g、式(I-15-2)で表される化合物4.0g、炭酸カリウム6.4g、テトラブチルアンモニウムブロミド0.5g、N,N-ジメチルホルムアミド150mLを加え、110℃で1時間加熱撹拌した。室温に冷却し、反応液に水を加え、トルエンで抽出した。有機層を水及び食塩水で順次洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン/ヘキサン)により精製を行うことによって、式(I-15-3)で表される化合物9.2gを得た。
【0252】
窒素雰囲気下、反応容器に式(I-15-3)で表される化合物9.2g、テトラヒドロフラン92mLを加えた。-70℃でブチルリチウム/ヘキサン溶液(1.6M)20.2mLを滴下し、1時間撹拌した。-70℃でN,N-ジメチルホルムアミド3.5mLを滴下し、1時間撹拌した。0℃で10%塩酸50mLを滴下し、室温で30分撹拌した。反応液にトルエンを加え分液処理した。有機層を水及び食塩水で順次洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン/ヘキサン)により精製を行うことによって、式(I-15-4)で表される化合物7.9gを得た。
【0253】
窒素雰囲気下、反応容器に式(I-15-4)で表される化合物7.9g、酢酸カリウム5.8g、ビス(ピナコラト)ジボロン7.5g、ジメチルスルホキシド160mL、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド ジクロロメタン付加物0.3gを加え、80℃で6時間加熱撹拌した。反応液を水に注ぎ、トルエンで抽出した。有機層を水及び食塩水で順次洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(アルミナ、トルエン)により精製を行うことによって、式(I-15-5)で表される化合物7.1gを得た。
【0254】
窒素雰囲気下、反応容器に式(I-15-6)で表される化合物5.6g、炭酸カリウム3.3g、式(I-15-5)で表される化合物7.1g、トルエン112mL、エタノール56mL、水56mL、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド0.3gを加え、6時間加熱還流させた。反応液を水に注ぎ、トルエンで抽出した。有機層を水及び食塩水で順次洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン/ヘキサン)及び再結晶(トルエン/ヘキサン)により精製を行うことによって、式(I-15-7)で表される化合物7.6gを得た。
【0255】
実施例1において式(I-1-9)で表される化合物を式(I-15-7)で表される化合物に置き換えた以外は同様の方法によって、式(I-15)で表される化合物を製造した。
MS(EI):m/z=623
屈折率異方性の外挿値Δn=0.38
(実施例16から実施例45及び比較例1から8)
実施例において液晶化合物の記載について以下の略号を用いる。
(環構造)
【0256】
【0257】
(側鎖構造)
2- CH3CH2-
3- CH3(CH2)2-
4- CH3(CH2)3-
5- CH3(CH2)4-
-2 -CH2CH3
-3 -(CH2)2CH3
-4 -(CH2)3CH3
-5 -(CH2)4CH3
-Cl -Cl
(連結基)
- 単結合
-T- -C≡C-
下記化合物によって構成される母体液晶Nを調製した。
(母体液晶N)
2-Ph3-T-PhPh-3 20.0%
4-Ph3-T-PhPh-3 36.0%
3-Ph1Ph1Ph-Cl 10.0%
5-Ph1Ph1Ph-Cl 20.0%
5-CyPhPh1Ph-2 7.0%
5-CyPhPh1Ph-3 7.0%
母体液晶Nに対し、実施例1から実施例15に記載の式(I-1)から式(I-15)で表される化合物を添加し、評価対象の液晶組成物(M-1)から液晶組成物(M-15)を調製した。また、非特許文献1に記載の式(R-1)で表される化合物、特許文献1に記載の式(R-2)で表される化合物、特許文献2に記載の式(R-3)及び式(R-4)で表される化合物を添加し、比較対象の液晶組成物(RM-1)から液晶組成物(RM-4)を調製した。
【0258】
【0259】
(液晶組成物(M-1))
母体液晶N 90.0%
式(I-1)で表される化合物 10.0%
(液晶組成物(M-2))
母体液晶N 90.0%
式(I-2)で表される化合物 10.0%
(液晶組成物(M-3))
母体液晶N 90.0%
式(I-3)で表される化合物 10.0%
(液晶組成物(M-4))
母体液晶N 90.0%
式(I-4)で表される化合物 10.0%
(液晶組成物(M-5))
母体液晶N 90.0%
式(I-5)で表される化合物 10.0%
(液晶組成物(M-6))
母体液晶N 90.0%
式(I-6)で表される化合物 10.0%
(液晶組成物(M-7))
母体液晶N 90.0%
式(I-7)で表される化合物 10.0%
(液晶組成物(M-8))
母体液晶N 90.0%
式(I-8)で表される化合物 10.0%
(液晶組成物(M-9))
母体液晶N 90.0%
式(I-9)で表される化合物 10.0%
(液晶組成物(M-10))
母体液晶N 90.0%
式(I-10)で表される化合物 10.0%
(液晶組成物(M-11))
母体液晶N 90.0%
式(I-11)で表される化合物 10.0%
(液晶組成物(M-12))
母体液晶N 90.0%
式(I-12)で表される化合物 10.0%
(液晶組成物(M-13))
母体液晶N 90.0%
式(I-13)で表される化合物 10.0%
(液晶組成物(M-14))
母体液晶N 90.0%
式(I-14)で表される化合物 10.0%
(液晶組成物(M-15))
母体液晶N 90.0%
式(I-15)で表される化合物 10.0%
(液晶組成物(RM-1))
母体液晶N 90.0%
式(R-1)で表される化合物 10.0%
(液晶組成物(RM-2))
母体液晶N 90.0%
式(R-2)で表される化合物 10.0%
(液晶組成物(RM-3))
母体液晶N 90.0%
式(R-3)で表される化合物 10.0%
(液晶組成物(RM-4))
母体液晶N 90.0%
式(R-4)で表される化合物 10.0%
評価対象の各化合物について、保存安定性の評価を行った。保存安定性は、調製した各液晶組成物2mLをアルゴン雰囲気下、ガラス製バイアルに密閉し、10℃で4週間保管した後の状態を目視により評価した。評価結果を下表に示す。
【0260】
【0261】
【0262】
上記の結果から、本発明の化合物は液晶組成物へ添加した場合に析出が起こりにくく、液晶組成物への相溶性が高いことがわかる。
【0263】
次に、評価対象の各化合物の高周波数領域での特性を評価した。測定には、伝送遅延方式Cut backタイプストリップライン法 比誘電率・誘電正接測定器(KEYCOM社製)を使用した。調製した各液晶組成物について、13.17GHz、20℃における誘電率異方性を測定し、評価対象の各化合物の誘電率異方性Δε(13.17GHz)を外挿により算出した。評価結果を下表に示す。
【0264】
【0265】
【0266】
上記の結果から、本発明の化合物はいずれも高周波数領域において大きな誘電率異方性を示すことがわかる。本発明の化合物は、環構造及び連結基を介して広い共役系を形成しているため、高周波数領域において大きな誘電率異方性を示すと考えられる。
【0267】
また、本発明の化合物を含有する液晶組成物(M-1)から(M-15)について、材料特性(ηε)がいずれも20以上を示すことがわかった。材料特性(ηε)は下記のように定義される。
【0268】
ε⊥ =(3εaverage-ε∥)/2
tanδ⊥ =(3εaveragetanδaverage-ε∥tanδ∥)/2ε⊥
変調能(τ) =(ε∥-ε⊥)/ε∥
材料特性(ηε)=τ/(max(tanδ∥,tanδ⊥))
以上の結果から、本発明の化合物は、大きな屈折率異方性Δnを有し、液晶組成物への相溶性が高く、高周波数領域において大きな誘電率異方性を示すことから、高周波移相器、フェーズドアレイアンテナ、画像認識装置、測距装置、液晶表示素子、液晶レンズ又は立体画像表示用複屈折レンズ等の素子用の材料として有用である。