(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】フロス泡色計測装置およびフロス泡色計測方法、並びにこれらを用いた浮遊選鉱装置および浮遊選鉱方法
(51)【国際特許分類】
G06T 7/90 20170101AFI20240123BHJP
B03D 1/22 20060101ALI20240123BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240123BHJP
【FI】
G06T7/90 A
B03D1/22
G06T7/00 610
(21)【出願番号】P 2020052462
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2022-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】杉原 淳
(72)【発明者】
【氏名】森川 桂一
【審査官】千葉 久博
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-111077(JP,A)
【文献】特開2016-49475(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0013821(US,A1)
【文献】Yongfang Xie, 外4名,"Reagent Addition Control for Stibium Rougher Flotation Based on Sensitive Froth Image Features",IEEE Transactions on Industrial Electronics,IEEE,2016年09月26日,第64巻, 第5号,p.4199-4206
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/90
B03D 1/22
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮選槽に収容されたスラリーの上面に光を照射する光源と、
前記スラリーの上面の少なくとも一部をカラー撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された画像に基づき、フロス泡の色情報としてHSVモデルにおける色相情報、彩度情報および明度情報のうちの少なくとも一つを取得する演算手段と、
を有するフロス泡色計測装置
であって、
前記演算手段は、さらに、
前記撮像手段により撮像された画像に含まれる、前記スラリー中に存在するフロス泡の、前記光の照射によりフロス泡の頂上付近から上方に反射した反射光の領域である白く光る部分、の大きさを計測し、
予め実測して求めたフロス泡の白く光る部分の大きさとフロス泡の大きさとの相関関係を示す近似回帰式を用いて、計測された白く光る部分の大きさからフロス泡径を算出する、
フロス泡色計測装置。
【請求項2】
前記撮像手段は、所定の撮像時間差を設けて連続静止画を撮像可能であり、
前記演算手段は、さらに、
前記撮像手段が撮像した連続静止画の各画像において検出したフロス泡の重なり度合いから移動したフロス泡を特定し、フロス泡の移動距離と連続静止画の撮像時間差とからフロス泡の移動速度を算出する、
請求項1に記載のフロス泡色計測装置。
【請求項3】
前記演算手段は、フロス泡の色情報としてHSVモデルにおける色相情報を取得する、請求項1
または2に記載のフロス泡色計測装置。
【請求項4】
前記演算手段は、複数枚の前記画像について時間的に平均化された色情報を取得する処理、および、前記画像の面内で空間的に平均化された色情報を取得する処理、の少なくとも一方を行う、請求項1
~3のいずれか1項に記載のフロス泡色計測装置。
【請求項5】
前記演算手段は、
前記撮像手段で撮像された第1の画像に基づき、フロス泡の第1の色情報を取得し、
前記撮像手段で撮像された第2の画像に基づき、フロス泡の第2の色情報を取得し、
前記第1の色情報と前記第2の色情報との差を取得する、請求項1~
4のいずれか1項に記載のフロス泡色計測装置。
【請求項6】
浮選槽と、
前記浮選槽内に設けられた撹拌翼と、
前記浮選槽内に設けられたエア供給手段と、
前記浮選槽に設けられた請求項1~
5のいずれか1項に記載のフロス泡色計測装置と、を有する浮遊選鉱装置。
【請求項7】
浮選槽に収容されたスラリーの上面に光を照射する工程と、
前記スラリーの上面の少なくとも一部をカラー撮像する撮像工程と、
前記撮像工程により撮像された画像に基づき、フロス泡の色情報としてHSVモデルにおける色相情報、彩度情報および明度情報のうちの少なくとも一つを取得する取得工程と、
を有するフロス泡色計測方法
であって、
さらに、
前記撮像工程により撮像された画像に含まれる、前記スラリー中に存在するフロス泡の、前記光の照射によりフロス泡の頂上付近から上方に反射した反射光の領域である白く光る部分、の大きさを計測し、
予め実測して求めたフロス泡の白く光る部分の大きさとフロス泡の大きさとの相関関係を示す近似回帰式を用いて、計測された白く光る部分の大きさからフロス泡径を算出する工程、
を有するフロス泡色計測方法。
【請求項8】
前記撮像工程では、所定の撮像時間差を設けて連続静止画を撮像し、
さらに、
前記連続静止画の各画像において検出したフロス泡の重なり度合いから移動したフロス泡を特定し、フロス泡の移動距離と連続静止画の撮像時間差とからフロス泡の移動速度を算出する工程、
を有する、請求項7に記載のフロス泡色計測方法。
【請求項9】
前記取得工程では、フロス泡の色情報としてHSVモデルにおける色相情報を取得する、請求項
7または8に記載のフロス泡色計測方法。
【請求項10】
前記取得工程では、複数枚の前記画像について時間的に平均化された色情報を取得する処理、および、前記画像の面内で空間的に平均化された色情報を取得する処理、の少なくとも一方を行う、請求項
7~9のいずれか1項に記載のフロス泡色計測方法。
【請求項11】
前記撮像工程では、
前記スラリーの上面の少なくとも一部を、相異なる時刻にカラー撮像して第1の画像と第2の画像とを取得し、
前記取得工程では、
前記第1の画像に基づき、フロス泡の第1の色情報を取得し、
前記第2の画像に基づき、フロス泡の第2の色情報を取得し、
前記第1の色情報と前記第2の色情報との差を取得する、請求項
7~10のいずれか1項に記載のフロス泡色計測方法。
【請求項12】
請求項
7~11のいずれか1項に記載のフロス泡色計測方法と、
前記取得工程で取得されたフロス泡の色情報に基づいて、フロス泡の生成条件を調整する工程と、を有する浮遊選鉱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロス泡色計測装置およびフロス泡色計測方法、並びにこれらを用いた浮遊選鉱装置および浮遊選鉱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鉱物に含まれる有価成分を回収する際に、鉱物中の有価成分をそれ以外の成分から分離する方法として、浮遊選鉱が知られている(例えば、特許文献1参照)。この浮遊選鉱では、鉱物を粉砕した粉砕物を水などの液体に混合してスラリーを形成し、このスラリーに空気を吹き込む。すると、粉砕物のうち、空気との親和性に富んだものが、フロス泡に付着して浮き上がるので、浮き上がる粉砕物とそれ以外の粉砕物に分離することができる。そして、浮遊選鉱では、粉砕物を空気とともに浮き上がらせるために、スラリー中に起泡剤や捕集剤など複数の試薬が添加されており、添加する試薬を調整することによって、所望の有価成分を含む粉砕物を空気とともに浮き上がらせている。
【0003】
この浮遊選鉱では、スラリーに吹き込む空気の量によって、粉砕物を、浮き上がるものとそれ以外のもの(つまり沈降する粉砕物)に分離する分離性能が変化する。例えば、スラリーに吹き込む空気の量が多くなると、所望の有価成分を含む粉砕物が浮上しやすくなり回収性が向上するものの、それ以外の粉砕物も浮上しやすくなる。このため、スラリーに吹き込む空気の量が多くなると、回収した粉砕物に含まれる不純物が多くなってしまう。したがって、所望の有価成分を含む粉砕物の回収性を向上させつつ、回収した粉砕物の品位を高くする上では、スラリーに吹き込む空気の量を適切に制御する必要がある。
【0004】
浮遊選鉱におけるフロス泡の状態は、所望の有価成分を含む粉砕物の回収性に影響する。フロス泡の状態を評価するための指標として、例えば、フロス泡の径、移動方向および移動速度が用いられている。フロス泡の状態を、きめ細かく評価するために、種々の指標を用いることができることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一目的は、フロス泡の状態を評価する指標として色を利用するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、
浮選槽に収容されたスラリーの上面に光を照射する光源と、
前記スラリーの上面の少なくとも一部をカラー撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された画像に基づき、フロス泡の色情報としてHSVモデルにおける色相情報、彩度情報および明度情報のうちの少なくとも一つを取得する演算手段と、
を有するフロス泡色計測装置
が提供される。
【発明の効果】
【0008】
フロス泡の状態を評価する指標として色を利用するための技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係るフロス泡色計測装置および浮遊選鉱装置の構成を示す概略図である。
【
図2】フロス泡の頂上が周辺部に比較して白く光る理由を説明するための図である。
【
図3】フロス泡を上方からエリアスキャンカメラで撮像した画像の一例を示した図である。
【
図4】フロス泡の反射光サイズとフロス泡の実際のサイズとの相関関係を示した図である。
【
図5】ある時点(t=n、tは時刻、nは自然数)のフロス泡画像のイメージである。
【
図6】連続的に撮像する
図5の次の時点(t=n+1)のフロス泡画像のイメージである。
【
図8】フロス泡の移動方向を円形の浮選槽の形状に適合させた移動方向に換算する方法を説明するための図である。
【
図9】フロス泡の色相、彩度および明度の時間変化の一例を示すグラフである。
【
図10】本発明の実施形態に係るフロス泡色計測方法および浮遊選鉱方法の処理フローの一例を示したフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係るフロス泡色計測装置100および浮遊選鉱装置150の構成を示す概略図である。本発明の実施形態に係るフロス泡色計測装置100は、光源60と、エリアスキャンカメラ70と、接続ケーブル80と、コンピューター90とを備える。コンピューター90は、例えば、画像処理部91と、演算処理部92とを備える。
【0012】
また、本実施形態に係る浮遊選鉱装置150は、フロス泡色計測装置100に加えて、浮選機50を有する。浮選機50は、浮選槽10と、撹拌翼20と、エア供給シャフト30とを備える。また、浮遊選鉱装置150の関連構成要素として、浮選槽10内に鉱石スラリー40が貯留されている。
【0013】
すなわち、浮遊選鉱装置150は、浮選機50と、フロス泡色計測装置100とが組み合わされて構成されている。
【0014】
本実施形態に係る浮選機50としては、一般的に用いられている種々の浮遊選鉱機を用いることができる。本実施形態に係る浮遊選鉱装置150は、フロス泡色計測装置100の方に特徴があるが、まず、一通り浮選機50について説明する。
【0015】
浮選槽10は、選鉱の対象となる粉砕物を含む液状の鉱石スラリー40を貯留するためのスラリー貯留手段である。粉砕物は、選鉱または精鉱の対象となる有用金属であるから、鉱石スラリー40を浮選槽10内に貯留した状態で浮遊選鉱を行う。よって、
図1には示されていないが、浮選槽10は、有用金属を抽出する抽出口を浮選槽10の上部に有し、有用金属の対象とならない尾鉱を排出する排出口とを備えてもよい。
【0016】
撹拌翼20は、エア供給シャフト30の下端から供給されたエアにより発生したフロス泡41を細かくするためのフロス泡微細化手段である。エア供給シャフト30の下端、すなわち、撹拌翼20よりも下方で発生したフロス泡41は、上昇する際、撹拌翼20の回転により撹拌翼20と衝突し、これによりフロス泡径が小さくなる。フロス泡径を小さくすると、鉱石スラリー40中の鉱石粒子との衝突効率を高めることができる。
【0017】
金属面が表面に出ている粉砕物(鉱石粒子)は、フロス泡41に付着して鉱石スラリー40中を浮上し、それ以外の粉砕物はフロス泡41に付着せず浮選槽10内の底面に沈降する。
【0018】
フロス泡41の径、移動方向および移動速度は、それぞれ、所望の有価成分を含む粉砕物の回収性に影響する。選鉱対象となる粉砕物のサイズとフロス泡41の浮力とのバランスなどを考慮し、粉砕物が付着し易い適切な径、移動方向および移動速度(のうちの少なくとも一つ)を有するフロス泡41を発生させることが好ましい。
【0019】
本願発明者は、フロス泡41の径、移動方向および移動速度のそれぞれの調整に用いることができる技術として、これまでに、フロス泡径計測技術(特願2018-223762)、フロス泡移動速度計測技術(特願2019-097860)、および、フロス泡移動方向計測技術(特願2019-110617)を提案している。
【0020】
本願発明者の知見によれば、フロス泡41の径、移動方向および移動速度の他に、フロス泡41の色も、フロス泡41の生成条件により変化する。例えば、試薬の添加量、粉砕物のフロス泡41への付着状態、等により、フロス泡41の色は変化する。このため、フロス泡41の色を計測することは、当該計測結果を用いてフロス泡41の生成条件を調整すること等を可能にし、有用である。なお、どのような生成条件において、フロス泡41がどのような色を呈するかという対応関係は、例えば、予備的な試験によって求めることができる。
【0021】
しかしながら、フロス泡41の色は、肉眼による観察で定量的に評価することは困難である。本実施形態では、フロス泡色計測装置100を用いてフロス泡41の色情報を取得する技術を提案する。
【0022】
なお、本実施形態によるフロス泡色計測装置100は、フロス泡径計測装置、フロス泡移動速度計測装置、および、フロス泡移動方向計測装置(のうちの少なくとも一つ)を兼ねるものであってよい。
【0023】
上述のように、フロス泡色計測装置100は、光源60と、エリアスキャンカメラ70と、接続ケーブル80と、コンピューター90とを備える。少なくとも光源60およびエリアスキャンカメラ70は、浮選槽10の上方に配置される。
【0024】
光源60は、鉱石スラリー40の上面を上方から照らすための発光手段または照明手段である。鉱石スラリー40の上面を上方から照らすことができれば、光源60には種々の発光手段または照明手段を用いることができる。ただし、本実施形態では、フロス泡41の色情報を取得するため、色情報の取得がしやすい光源60を用いることが好ましい。光源60として、単色光を出射する光源(例えば単色LED)を用いてもよいが、単色光を用いる場合、色相の違いを取得しにくい(取得できないわけではない)。このため、単色LEDに比べて広い範囲のスペクトル分布を有する光源60(例えば白色LED)を用いることが好ましい。また、0°以上360°以下の任意の範囲の色相情報を取得可能とする光源60を用いることが、より好ましい。
【0025】
エリアスキャンカメラ70は、鉱石スラリー40の上面を上方から撮像し、フロス泡41を含む画像を取得するための撮像手段である。本実施形態においては、エリアスキャンカメラ70を用いた例を挙げているが、鉱石スラリー40の一部領域または全体領域を撮像できれば、種々の撮像手段を用いることができる。ただし、本実施形態では、フロス泡41の色情報を取得するため、エリアスキャンカメラ70としては、カラー撮像が可能であるものを用いることが好ましい。なお、本実施形態においては、エリアスキャンカメラ70は、光源60が光を照射した領域を撮像することができれば十分であり、必ずしも浮選槽10の全面を撮像できる必要はない。
【0026】
エリアスキャンカメラ70は、所定の撮像時間差で連像的にフロス泡41の撮像が可能に構成されている。すなわち、所定の撮像間隔で連続撮影が可能に構成されている。これにより、所定の撮像時間差で複数枚の画像を撮像することができ、所定の撮像時間差におけるフロス泡41の状態変化を画像として記録することができる。
【0027】
エリアスキャンカメラ70はネットワーク経由でコンピューター90に接続され、エリアスキャンカメラ70から得た画像はコンピューター90に取り込まれる。なお、エリアスキャンカメラ70からの画像は、接続ケーブル80を介して有線通信で送信されてもよいし、無線通信で送信されてもよい。
【0028】
コンピューター90は、CPU(Central Processing Unit、中央処理装置)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備え、プログラムを読み込んで動作する構造を有する。コンピューター90は、演算処理部92を備え、エリアスキャンカメラ70から取得した画像に基づいて、フロス泡41の色情報を算出し、好ましくはさらに、フロス泡41の径、移動方向および移動速度(のうちの少なくとも一つ)を算出する演算処理を行う演算処理手段として機能する。また、コンピューター90は、画像処理部91を備え、エリアスキャンカメラ70から取得した画像を画像処理する機能および構造を備えている。
【0029】
図1においては、光源60およびエリアスキャンカメラ70の位置は模式的に示されているが、用途に応じて固定手段を設け、適切な位置に固定することができる。
【0030】
また、浮選機50においては、浮選槽10、撹拌翼20、エア供給シャフト30以外の構成要素が示されていないが、浮遊選鉱装置150を構成するのに必要な種々の構成要素を備えてよいことは言うまでもない。
【0031】
以下、フロス泡色計測装置100が、フロス泡径計測装置、フロス泡移動速度計測装置、および、フロス泡移動方向計測装置を兼ねる態様について例示し、フロス泡41の径の算出、フロス泡41の移動方向および移動速度の算出、ならびに、フロス泡41の色情報の算出について説明する。
【0032】
まず、フロス泡41の径の算出について説明する。鉱石スラリー40の上面に上方から光を照射することにより、鉱石スラリー40中に存在するフロス泡41の頂上付近が、フロス泡41の周辺部に比較して白く光り、頂上部の方が周辺部よりも高い輝度で光る。すなわち、フロス泡41に対して光源60から光を照射してエリアスキャンカメラ70で得られた画像はフロス泡頂上付近がフロス泡の裾野に比べて白く光る。
【0033】
図2は、フロス泡41の頂上が周辺部に比較して白く光る理由を説明するための図である。
図2に示されるように、光源60から照射された光がフロス泡41に当たり反射したときに、フロス泡41の頂上付近はエリアスキャンカメラ70が配置された上方に反射するのに対してフロス泡41の裾野に当たった光は斜め上方や横方向に反射するためである。
【0034】
図3は、そのようなフロス泡41を上方からエリアスキャンカメラ70で撮像した画像の一例を示した図である。
図3に示されるように、フロス泡41の中心部分に白く光る部分(反射光領域)42が存在する画像となる。
【0035】
白く光る部分の大きさはフロス泡41の大きさとフロス泡の曲率で決まるため、フロス泡41の曲率は鉱石スラリー40の組成によって多少違いがあるとも考えられる。しかしながら、
図2にも示したように、フロス泡41の輝度の位置による差は、フロス泡41が略球形に近い形状であることに起因しているものであるから、鉱石スラリー40の組成による相違は微差に過ぎず、概ね一定であると仮定できる。そうすると、フロス泡41の大きさは、白く光る部分の大きさと相関があると言える。白く光る部分42の大きさが決まる要因としては、上述のフロス泡41の大きさと泡の曲率以外に光源60の発光面の大きさ、浮選槽10の上面から光源60までの距離、浮選槽10の上面からエリアスキャンカメラ70までの距離があるが、いずれも条件を変えなければ要因から除外できる。
【0036】
図4は、フロス泡の反射光サイズとフロス泡の実際のサイズとの相関関係を示した図である。
図4は、予め実験によりフロス泡41に光を照射したときの反射光のサイズと、実測したフロス泡41のサイズとの相関関係を関係式として求めておき、これをフロス泡41のサイズ測定に用いる。つまり、
図4において、横軸がフロス泡41の反射光サイズを示しており、縦軸がフロス泡41のサイズを示している。これらの測定値をプロットしてゆくと、白く光る部分の大きさと泡の大きさをプロットしたグラフである程度の相関性が確認できる。そして、この関係から回帰式が近似できる。
【0037】
図4において、プロット点の相間関係を示した曲線が近似回帰式である。
図4に示される近似回帰式は、直線ではなく、多項式となっていることが分かる。かかる近似回帰式は、一度作成してしまえば、鉱石スラリー40の組成によらず、概ね一般化して適用可能である。
【0038】
次に、フロス泡41の移動方向および移動速度の算出について説明する。
図5はある時点(t=n、tは時刻、nは自然数)のフロス泡画像のイメージであり、
図6は連続的に撮像する
図5の次の時点(t=n+1)のフロス泡画像のイメージである。また、
図7は
図5と
図6とを重ね合せたフロス泡の画像である。
【0039】
例えば、撮像周期をTとしたときに、t=T、2T、3T・・・nT、(n+1)T・・・の各時点で、エリアスキャンカメラ70は撮像領域を連続的(時間の流れでは断続的)に撮像し、各撮像周期における画像を取得する。
【0040】
図5は、t=nTにおける撮像(取得)画像であり、
図5において、6個の各フロス泡411a~416aは、撮像画像内で各位置に存在する。
【0041】
図6はt=(n+1)Tにおける撮像(取得)画像である。
図6において、6個の各フロス泡411b~416bは、撮像画像内で各位置に存在する。
図5および
図6を単独で見比べても、その相違はあまり明確ではない。
【0042】
図7は、
図5と
図6とを重ね合せた画像であり、
図5におけるフロス泡411a~416aと
図6におけるフロス泡411b~416bとの間の位置のズレが把握できる。
【0043】
この、
図5と
図6との間の位置ズレの方向が、時間差Tにおけるフロス泡411~416の移動方向である。ここで、移動方向は、時間差Tで移動したフロス泡の位置の始点と終点を結んだベクトルで表すことができる。ベクトルの向きはフロス泡411~416の始点から終点に向かう方向であり、フロス泡411~416の移動方向を示す。すなわち、始点がフロス泡411a~416aの位置であり、終点がフロス泡411b~416bの位置である。そして、ベクトルの大きさが移動距離を表す。かかるベクトルを、移動ベクトルと呼ぶこととする。
【0044】
ここで、演算処理部92は、時刻t=nTにおけるフロス泡411a~416aと時刻t=(n+1)Tとが重なった場合に、同じフロス泡411~416が移動したとみなす。このように、画像間のフロス泡の重なり具合で同じフロス泡の移動とみなすので、撮像レートは十分に早いレートで撮像することが望ましい。具体的には、撮像時間差Tは、フロス泡411~416の移動距離がフロス泡411~416の直径以内に収まる時間差であることが好ましい。
【0045】
なお、光源60から照射される光は、撮像領域をカバーする指向角の狭いできるだけ均一な面発光であることが望ましい。これは、指向角が狭い方が白く光る部分のコントラストが出やすい為である。
【0046】
なお、フロス泡411~416同士の重なりは、フロス泡411~416の径を求めて演算処理してもよいし、白く光った部分同士で比較してもよい。いずれの場合であっても、白い光の中心付近同士の比較になる場合が多く、演算処理に差が出る訳ではない。
【0047】
また、必ずしも白く光った部分の中心同士の比較でなくてもよく、フロス泡411~416のエッジ同士の比較であってもよい。フロス泡411~416は、中心もエッジも平行移動しているので、フロス泡411~416のエッジの同一の位置同士の始点と終点との移動ベクトルを取得すれば、移動方向を取得することができる。すなわち、移動前と移動後のフロス泡411~416内における位置が同じであれば、フロス泡411~416の任意の点を測定点とすることができる。
【0048】
このように、撮像周期Tにおいて取得した2枚の画像から、各フロス泡411~416の時間差Tにおける2次元平面(鉱石スラリー40の上面)における移動方向を把握することができる。
【0049】
なお、フロス泡41の撮像は、鉱石スラリー40内のフロス泡41、411~416については困難であり、実質的には、鉱石スラリー40の上面におけるフロス泡41、411~416の面内における移動を撮像することになる。
【0050】
ここで、フロス泡411~416の挙動においては、浮選槽10の中心から外側に向かってフロス泡が移動しオーバーフローするのが効率的な移動方向である。浮選槽10の中心から外側に向かってフロス泡411~416が移動しているかどうかを数値化するためには、画像内の移動方向を求めた上で、円形の浮選槽の形状に合わせた移動方向に換算する必要がある。
【0051】
図8は、フロス泡の移動方向を円形の浮選槽の形状に適合させた移動方向に換算する方法を説明するための図である。
【0052】
図8に示されるように、フロス泡417、418の移動の始点と終点を直線Aで結び、フロス泡417、418の移動ベクトルP、Qを取得する。そして、移動ベクトルP、Qを示す直線Aの中点と浮選機の中心Cとを直線Bで結ぶ。そして、直線Aと直線B間の開き角度を浮選機におけるフロス泡移動方向とする。このようにすれば、移動ベクトルP、Qの方向を浮選槽10の中心Cとの関係を把握することができる。
【0053】
ここで、フロス泡417の移動ベクトルPにおいて、中点と浮選槽の中心Cとの角度は90度に近い。そして、浮選槽10の中心から外側に向かう方向ではなく、浮選槽10の周方向に沿った移動であり、フロス泡の挙動としては、あまり好ましくない移動方向である。
【0054】
一方、フロス泡418の移動ベクトルQは、中心から外側に向かう移動方向であり、好ましいフロス泡の挙動を示している。この場合、フロス泡418の移動ベクトルQと浮選槽10の中心Cとを結ぶ直線Bとの角度は、180度に近似した角度である。よって、移動ベクトルと浮選槽10の中心Cとの好ましい開き角は、180度に近い角度であると言える。
【0055】
一方、移動ベクトルPに示されるように、移動ベクトルPの中点と浮選槽10の中心Cとを結んだ直線の開き角が90度に近ければ、フロス泡の挙動は好ましくない挙動であると言える。
【0056】
フロス泡の移動速度は、所定の時間間隔Tでフロス泡を連続撮像して取得した移動ベクトルの大きさが移動距離を表すので、移動距離を時間Tで除すれば、容易に算出することができる。
【0057】
つまり、フロス泡411~416の移動速度は、単純に二次元平面内のフロス泡の中心の移動距離を撮像時間差(撮像周期)Tで除することにより算出される。
【0058】
例えば、フロス泡411の時刻t=nTと時刻t=(n+1)Tとの間における移動距離(移動ベクトルの大きさ)をdとすれば、d/Tで移動速度が求められる。これは、各フロス泡412~416において同様であり、各フロス泡411~416について適用すれば、各フロス泡411~416について移動速度を算出することができる。
【0059】
なお、浮選機50は円柱状で上部中心に供給エアを裁断して細かい泡を出すための撹拌翼20の駆動部が配置されることが一般的である為、浮選機50の上部から全面を撮像することは物理的に困難である。ただし、フロス泡41、411~418の状態は場所による依存性はないため、一部分を撮像することで代表とすることができる。そのため浮選機50の上面の一部を撮像できる視野で十分であり、浮選機50の上面からのカメラの高さやレンズの高さは、それに応じて決めれば良い。例えば、
図8においては、浮選槽10の半分よりもやや少ない領域が画像エリアとなっている例が示されている。上で説明したように、フロス泡の方向を測定するには何ら問題の無い視野である。
【0060】
また、画像処理部91においては、画像の雑音を除去し、コントラストを高めて演算処理を容易にするような種々の画像処理を行う。例えば、所定の閾値を定めて取得した画像から二値化画像を取得すれば、フロス泡41、411~418のサイズを求めやすくなる。このような処理を画像処理部91において行う。なお、画像処理部91は、コンピューター90の内部に設けられてもよいし、コンピューター90の外部に別体として設けられてもよい。
【0061】
次に、フロス泡41の色情報の算出について説明する。光源60は、浮選槽10に収容された鉱石スラリー40の上面に光を照射する。エリアスキャンカメラ70は、鉱石スラリー40の上面の少なくとも一部を(
図5、
図6に例示されるような、複数のフロス泡41が含まれる領域を)、カラー撮像する。演算処理部92は、エリアスキャンカメラ70によりカラー撮像された画像に基づき、フロス泡41の色情報を取得する。演算処理部92は、具体的には例えば、以下のような処理を行う。
【0062】
演算処理部92は、フロス泡41の色情報として、HSVモデルにおける色相情報(H)、彩度情報(S)および明度情報(V)の少なくともいずれかを取得し、特に好ましくは、色相情報を取得する。
【0063】
フロス泡41の色情報は、例えば、複数枚の画像について時間的に平均化された色情報として取得されてもよく、また例えば、画像の面内で空間的に平均化された色情報として取得されてもよい。このような、画像の時間的、空間的な平均化は、どちらか一方が行われてもよいし、両方が行われてもよい。
【0064】
フロス泡41の撮像は、数分間隔(例えば5分間隔)で数秒間(例えば5秒間)行われ、この撮像が行われる数秒間の期間(これを以下、1回の撮像期間ともいう)に複数枚(例えば80枚)の画像が取得される。5秒間に80枚の撮像を行う場合、約60ms間隔で撮像が行われる。なお、この撮像間隔(撮像時間差T)は、上述のように、フロス泡411~416の移動距離がフロス泡411~416の直径以内に収まる時間差であることが好ましい。
【0065】
1回の撮像期間に含まれるある時刻(例えば、当該撮像期間の開始時刻)を、代表的に、当該撮像期間を表す時刻と捉えてもよい。そして、当該撮像期間に撮像された複数枚の画像について時間的に平均化された画像を、当該時刻に取得された画像と捉えてもよい。また、当該撮像期間に撮像された複数枚の画像について時間的に平均化された画像から取得される色情報を、当該時刻に取得された色情報と捉えてもよい。
【0066】
複数枚の画像について時間的に平均化された色情報を取得することで、(1回の撮像期間内での)画像間の時間的な色のばらつき(色相、彩度および明度のそれぞれのばらつき)の影響を低減させて、フロス泡41の色の安定した評価を行うことができる。
【0067】
画像の面内で空間的に平均化された色情報(つまり、当該画像内に含まれる複数のフロス泡41について平均化された色情報)を、当該画像の色情報(つまり、当該画像に含まれるフロス泡41の色情報)と捉えてもよい。
【0068】
画像の面内で空間的に平均化された色情報を取得することで、画像内の空間的な(位置ごとの)色のばらつき(色相、彩度および明度のそれぞれのばらつき)の影響を低減させて、フロス泡41の色の安定した評価を行うことができる。なお、上述のように、フロス泡41の頂部(白く光る部分42)は特に明るいため、必要に応じ、フロス泡41の頂部の領域と、それ以外の領域とに区分して、色情報を取得してもよい。
【0069】
演算処理部92は、各時刻に撮像された画像に基づき、各時刻における色情報を取得する。各時刻における色情報は、コンピューター90に記憶される。演算処理部92は、また、ある時刻における色情報と、他の時刻における色情報との差を取得する処理を行ってもよい。これにより、色情報の時間変化を検出することが可能となる。
【0070】
色情報の時間変化を検出することで、例えば、操業条件が一定であるのに許容範囲を超えて色情報が変化した場合に、コンピューター90によりフロス泡41の生成条件を調整させたり、警告を発生させたりできる。また例えば、操業条件を変化させたのに予期される色情報の変化が生じない場合に、コンピューター90によりフロス泡41の生成条件を再調整させたり、警告を発生させたりできる。
【0071】
色情報の時間変化の検出を行わない場合であっても、例えば、測定された色情報が、予期される色情報から許容範囲を超えて乖離している場合に、コンピューター90によりフロス泡41の生成条件を調整させたり、警告を発生させたりできる。
【0072】
フロス泡41の生成条件の調整としては、例えば、スラリーに吹き込む空気の量の調整、試薬の調整、浮選機のインペラ(回転翼)の回転数の調整、等が行われる。
【0073】
図9は、フロス泡の色相、彩度および明度の時間変化の一例を示すグラフである。約1日間(約24時間)の測定期間における色相、彩度および明度の時間変化を示す。測定期間の途中の時刻に、試薬量を2倍にすることで、操業条件を変化させている。
【0074】
測定期間のうち、試薬量を変化させた時刻以前の期間を前半期間と称し、試薬量を変化させた時刻以後の期間を後半期間と称する。試薬量を変化させた時刻を挟んで、色相、彩度および明度のそれぞれに、変化が生じている。前半期間中および後半期間中は、それぞれ、操業条件が一定であり、色相、彩度および明度も概ね一定となっている。
【0075】
色相および明度は、前半期間に対し後半期間で減少し、彩度は、前半期間に対し後半期間で増加している。本例において、前半期間の色相は、95°程度(例えば、7月10日の9時における色相が95°)であり、後半期間の色相は、92°程度(例えば、7月11日の0時における色相が92°)である。このように、HSVモデルにおける色相、彩度および明度のうちの少なくとも一つを、フロス泡の状態の評価の指標として用いることができるという知見が得られた。
【0076】
他の例として、約1か月間における色相の時間変化についても調べたところ、フロス泡の状態の違いを、色相の顕著な差として評価することができた。具体的には、2月13日の22時における色相が50°であったのに対し、3月13日の17時30分における色相が70°となっており、20°の色相の差が生じていた。このように、フロス泡画像の見た目の違いを、特に色相を用いて、定量的に把握できることが見出された。
【0077】
以上説明したように、本実施形態に係るフロス泡色計測装置100を用いることで、フロス泡の色情報を取得することができる。フロス泡の色情報は、インラインで計測し、リアルタイムに数値化して、取得することができる。取得された色情報を用いることにより、フロス泡の状態を評価することができ、また、当該色情報に基づいて、フロス泡の生成条件の調整等を行うことができる。なお、フロス泡の色情報と、フロス泡の径、移動方向および移動速度のうちの少なくとも一つと、を適宜組み合わせて、フロス泡の生成条件の調整等を行ってもよい。
【0078】
また、本実施形態に係る浮遊選鉱装置150は、フロス泡色計測装置100を種々の浮選機50に組み込むことにより、フロス泡の調整を容易かつ高精度に行うことができる浮遊選鉱装置150として構成することができる。
【0079】
次に、本発明の実施形態に係るフロス泡移動色計測方法および浮遊選鉱方法の処理フローについて説明する。
【0080】
図10は、本発明の実施形態に係るフロス泡色計測方法および浮遊選鉱方法の処理フローの一例を示したフロー図である。なお、今まで説明した構成要素については、同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0081】
ステップS100では、光源60が浮選槽10に貯留された鉱石スラリー40の上面に光を照射する。
【0082】
ステップS110では、エリアスキャンカメラ70が、鉱石スラリー40の上面をカラー撮像し、鉱石スラリー40の上面の第1の画像を取得する。取得された第1の画像には、複数のフロス泡41が含まれている。取得された画像データは、有線または無線通信でコンピューター90に送信される。
【0083】
ステップS120では、コンピューター90の演算処理部92が演算処理を行うことで、第1の画像に基づき、フロス泡41の色情報を取得する。当該色情報として、HSVモデルにおける色相情報、彩度情報および明度情報のうちの少なくとも一つが取得され、特に好ましくは、色相情報が取得される。
【0084】
ステップS130では、エリアスキャンカメラ70が、第1の画像が撮像された時刻とは異なる時刻に、鉱石スラリー40の上面をカラー撮像し、鉱石スラリー40の上面の第2の画像を取得する。取得された第2の画像には、複数のフロス泡41が含まれている。取得された画像データは、有線または無線通信でコンピューター90に送信される。
【0085】
なお、照射光の変動に起因する色情報の誤差を抑制するために、第1の画像を撮像する際と、第2の画像を撮像する際とで、同一の光源60から出射された光によって鉱石スラリー40の上面を照射することが好ましい。
【0086】
ステップS140では、コンピューター90の演算処理部92が演算処理を行うことで、第2の画像に基づき、フロス泡41の色情報を取得する。具体的には、当該色情報として、HSVモデルにおける色相情報、彩度情報および明度情報のうちの少なくとも一つが取得され、特に好ましくは、色相情報が取得される。
【0087】
また、ステップS140では、演算処理部92が、第1の画像に基づき取得された色情報と、第2の画像に基づき取得された色情報と、の差を取得してもよい。具体的には、当該差として、色相情報の差、彩度情報の差、および、明度情報の差のうちの少なくとも一つが取得され、特に好ましくは、色相情報の差が取得される。なお、色情報同士の差も、色情報と捉えることができる。
【0088】
ステップS150に示されるように、取得されたフロス泡の色情報に基づいて、例えば、第1の画像に基づき取得された色情報、および、第2の画像に基づき取得された色情報のそれぞれに(少なくとも一方に)基づいて、また例えば、第1の画像に基づき取得された色情報と第2の画像に基づき取得された色情報との差に基づいて、フロス泡の生成条件の調整処理を行うようにしてもよい。
【0089】
当該調整処理として、例えば、スラリーに吹き込む空気の量の調整、試薬の調整、浮選機のインペラ(回転翼)の回転数の調整、等の種々の調整が行われてよい。このような調整は、人間がフロス泡の計測結果を見て調整してもよく、コンピューター90が自動制御で調整してもよい。人間が調整を行う場合には、コンピューター90は、計測結果をディスプレイ等に出力する。また、コンピューター90が自動調整を行う場合には、計測結果に基づいてコンピューター90がエア供給シャフト30の出力や、撹拌翼20の駆動速度等を調整する。その際、測定結果を併せて出力してもよいことは言うまでもない。かかる観点から、ステップS150は必須ではなく、必要に応じて実行すればよい。
【0090】
なお、ステップS150では、上述のような調整処理に限らず、計測されたフロス泡の色情報に基づいて行われる各種の処理が行われてもよい。例えば、取得された色情報が許容範囲を超えている場合に、コンピューター90が警告を発生させる処理が行われてもよい。
【0091】
なお、画像取得を行うステップS110およびS130のそれぞれを、撮像工程と捉えてもよいし、ステップS110およびS130をまとめて、撮像工程と捉えてもよい。また、演算処理を行うステップS120およびS140のそれぞれを、色情報を取得する取得工程と捉えてもよいし、ステップS120およびS140をまとめて、色情報を取得する取得工程と捉えてもよい。
【0092】
なお、第1の画像に基づく色情報の取得を、第2の画像に基づく色情報の取得の前に行う態様を例示したが、第1の画像および第2の画像を取得した後に、第1の画像に基づく色情報および第2の画像に基づく色情報の両方を取得するようにしてもよい。
【0093】
なお、画像の取得および取得された画像に基づく色情報の取得を行う処理を、2回行う場合を例示したが、このような処理は、必要に応じ、1回行われてもよく、3回以上行われてもよい。
【0094】
このように、本実施形態に係るフロス泡色計測方法および浮遊選鉱方法によれば、浮遊選鉱においてフロス泡の色情報を利用することが可能となる。
【0095】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説したが、本発明は、上述した実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
【0096】
<本発明の好ましい態様>
以下、本発明の好ましい態様について付記する。
【0097】
(付記1)
浮選槽に収容されたスラリーの上面に光を照射する光源と、
前記スラリーの上面の少なくとも一部をカラー撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された画像に基づき、フロス泡の色情報としてHSVモデルにおける色相情報、彩度情報および明度情報のうちの少なくとも一つを取得する演算手段と、
を有するフロス泡色計測装置。
【0098】
(付記2)
前記演算手段は、フロス泡の色情報としてHSVモデルにおける色相情報を取得する、付記1に記載のフロス泡色計測装置。
【0099】
(付記3)
前記演算手段は、複数枚の前記画像について時間的に平均化された色情報を取得する処理、および、前記画像の面内で空間的に平均化された色情報を取得する処理、の少なくとも一方を行う、付記1または2に記載のフロス泡色計測装置。
【0100】
(付記4)
前記演算手段は、
前記撮像手段で撮像された第1の画像に基づき、フロス泡の第1の色情報を取得し、
前記撮像手段で撮像された第2の画像に基づき、フロス泡の第2の色情報を取得し、
前記第1の色情報と前記第2の色情報との差を取得する、付記1~3のいずれか1つに記載のフロス泡色計測装置。
【0101】
(付記5)
浮選槽と、
前記浮選槽内に設けられた撹拌翼と、
前記浮選槽内に設けられたエア供給手段と、
前記浮選槽に設けられた付記1~4のいずれか1つに記載のフロス泡色計測装置と、を有する浮遊選鉱装置。
【0102】
(付記6)
浮選槽に収容されたスラリーの上面に光を照射する工程と、
前記スラリーの上面の少なくとも一部をカラー撮像する撮像工程と、
前記撮像工程により撮像された画像に基づき、フロス泡の色情報としてHSVモデルにおける色相情報、彩度情報および明度情報のうちの少なくとも一つを取得する取得工程と、
を有するフロス泡色計測方法。
【0103】
(付記7)
前記取得工程では、フロス泡の色情報としてHSVモデルにおける色相情報を取得する、付記6に記載のフロス泡色計測方法。
【0104】
(付記8)
前記取得工程では、複数枚の前記画像について時間的に平均化された色情報を取得する処理、および、前記画像の面内で空間的に平均化された色情報を取得する処理、の少なくとも一方を行う、付記6または7に記載のフロス泡色計測方法。
【0105】
(付記9)
前記撮像工程では、
前記スラリーの上面の少なくとも一部を、相異なる時刻にカラー撮像して第1の画像と第2の画像とを取得し、
前記取得工程では、
前記第1の画像に基づき、フロス泡の第1の色情報を取得し、
前記第2の画像に基づき、フロス泡の第2の色情報を取得し、
前記第1の色情報と前記第2の色情報との差を取得する、付記6~8のいずれか1つに記載のフロス泡色計測方法。
【0106】
(付記10)
付記6~9のいずれか1つに記載のフロス泡色計測方法と、
前記取得工程で取得されたフロス泡の色情報に基づいて、フロス泡の生成条件を調整する工程と、を有する浮遊選鉱方法。
【符号の説明】
【0107】
10…浮選槽、20…撹拌翼、30…エア供給シャフト、40…鉱石スラリー、41…フロス泡、411~418…フロス泡、411a~416a…フロス泡、411b~416b…フロス泡、42 白く光る部分(反射光領域)、50…浮選機、60…光源、70…エリアスキャンカメラ、80…接続ケーブル、90…コンピューター、91…画像処理部、92…演算処理部、100…フロス泡色計測装置、150…浮遊選鉱装置