(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】中間転写体、画像形成装置及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
G03G 15/16 20060101AFI20240123BHJP
【FI】
G03G15/16
(21)【出願番号】P 2020090731
(22)【出願日】2020-05-25
【審査請求日】2023-02-27
(31)【優先権主張番号】P 2020002082
(32)【優先日】2020-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】久保 秀貴
(72)【発明者】
【氏名】大森 匡洋
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-120742(JP,A)
【文献】特開2012-83626(JP,A)
【文献】特開2016-142791(JP,A)
【文献】特開2019-128585(JP,A)
【文献】特開2013-97353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基層の上に弾性層が積層された中間転写体であって、
前記弾性層の前記基層とは反対側の表面に一部露出した状態で配設された球状粒子を備え、
前記弾性層の表面に前記球状粒子により凸部が形成され、
前記弾性層は、アクリルゴムと、ホスフィン酸金属塩及びホスファゼン化合物の少なくとも一方とを含む中間転写体。
【請求項2】
前記ホスフィン酸金属塩が、トリスジエチルホスフィン酸アルミニウムである請求項1に記載の中間転写体。
【請求項3】
前記ホスファゼン化合物が、環状フェノキシホスファゼン化合物である請求項1に記載の中間転写体。
【請求項4】
前記弾性層は、難燃剤として水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウムを含む請求項1~3の何れか一項に記載の中間転写体。
【請求項5】
前記球状粒子は、粒子状のコア部と、前記コア部の表面を被覆するシェル部とで構成され、
前記コア部が樹脂で形成され、前記シェル部がニッケルを含む請求項1~4の何れか一項に記載の中間転写体。
【請求項6】
前記中間転写体が、シームレスベルトである請求項1~5の何れか一項に記載の中間転写体。
【請求項7】
潜像が形成され、トナー像を担持可能な像担持体と、
前記像担持体の上に形成された潜像をトナーで現像する現像部と、
前記現像部により現像された前記トナー像が一次転写される中間転写ベルトと、
前記中間転写ベルトの上に転写された前記トナー像を記録媒体に転写する二次転写部と、を備え、
前記中間転写ベルトが、請求項1~6の何れか一つの中間転写体である画像形成装置。
【請求項8】
互いに異なる色の前記トナー像を担持する複数の前記像担持体が直列に配設されている請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
潜像が形成され、トナー像を担持可能な像担持体の上に形成された潜像をトナーで現像する現像工程と、
前記現像工程において現像された前記トナー像を中間転写ベルトの上に一次転写する一次転写工程と、
前記中間転写ベルトの上に転写された前記トナー像を記録媒体に転写する二次転写工程と、を含み、
前記中間転写ベルトが、請求項1~6のいずれかの中間転写体である画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間転写体、画像形成装置及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中間転写ベルトを用いた電子写真方式の画像形成装置として、感光体上に形成したトナー像(現像画像)を中間転写ベルトに1次転写した後、その中間転写ベルト上のトナー像を転写紙(記録紙)等の記録媒体に2次転写して定着させる装置が知られている。このような中間転写ベルトを用いた画像形成装置は、複写機、ファクシミリ、プリンタ等のカラー画像形成装置として広く用いられている。
【0003】
中間転写ベルトは、無端状のベルトで構成された中間転写体であり、樹脂製の基材層と、その基材層上に配置されてトナーの離型性及び中間転写ベルトの耐久性を高める表面層とを有するものが用いられる。基材層の材料には、例えば、高弾性率で高耐熱樹脂である、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等が用いられている。
【0004】
中間転写ベルトとして、例えば、ポリイミド樹脂またはポリアミドイミド樹脂を含む基層上に、その表面が、球形樹脂粒子の一部が埋め込まれた単一粒子層からなる凹凸形状が形成された樹脂層を有する中間転写体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の中間転写体では、難燃性については記載されていない。また、表面凹凸がある紙種に対して優れた転写性を有し、より高い耐久性を有する中間転写体が希求されている。
【0006】
本発明の一態様は、優れた転写性を有すると共に、高い耐久性及び難燃性を有することができる中間転写ベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る中間転写体の一態様は、基層の上に弾性層が積層された中間転写体であって、前記弾性層の前記基層とは反対側の表面に一部露出した状態で配設された球状粒子を備え、前記弾性層の表面に前記球状粒子により凸部が形成され、前記弾性層は、アクリルゴムと、ホスフィン酸金属塩及びホスファゼン化合物の少なくとも一方とを含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る中間転写ベルトの一態様は、優れた転写性を有すると共に、高い耐久性及び難燃性を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る中間転写ベルトの層構成の一例を示す模式図である。
【
図7】弾性層への球状粒子の付与方法の一例を示す概略図である。
【
図8】画像形成装置の一例を示す要部模式図である。
【
図9】画像形成装置の他の構成の一例を示す要部模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の符号を付して、重複する説明は省略する。また、図面における各部材の縮尺は実際とは異なる場合がある。本明細書では、3軸方向(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向)の3次元直交座標系を用い、基層の主面における座標をX軸方向及びY軸方向とし、高さ方向(厚さ方向)をZ軸方向とする。基層の下から上に向かう方向(基層の主面から弾性層に向かう方向)を+Z軸方向とし、その反対方向を-Z軸方向とする。以下の説明において、+Z軸方向を上といい、-Z軸方向を下という場合がある。本明細書において数値範囲を示すチルダ「~」は、別段の断わりがない限り、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0011】
<中間転写体>
一実施形態に係る中間転写体について説明する。なお、本実施形態では、中間転写体が画像形成装置に備えられるベルト構成部に用いられる中間転写ベルトである場合について説明する。
【0012】
図1は、一実施形態に係る中間転写ベルトの概略断面図であり、
図2は、
図1の中間転写ベルトの平面図である。
図1及び
図2に示すように、一実施形態に係る中間転写ベルト1は、基層10、弾性層20及び球状粒子30を備えている。中間転写ベルト1では、基層10の上に弾性層20が積層され、弾性層20の、弾性層20の基層10とは反対側の表面に球状粒子30が一部露出するように埋没して設けられている。弾性層20の表面には露出した球状粒子30の形状に対応した凸部31が形成されている。中間転写ベルト1の弾性層20及び球状粒子30の表面には、像担持体上に形成された潜像をトナーにより現像して得られたトナー像が転写される。
【0013】
[基層]
基層10は、樹脂と、電気抵抗調整剤とを含み、樹脂中に電気抵抗調整剤を含有している。基層10は、比較的屈曲性が得られる剛性を有している。
【0014】
(樹脂)
樹脂としては、難燃性の観点から、例えば、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)等のフッ素系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等が挙げられる。これらの中でも、機械強度(高弾性)及び耐熱性の点から、ポリイミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂が好ましい。
【0015】
ポリイミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂としては、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。ポリイミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂としては、例えば、東レ・デュポン株式会社、宇部興産株式会社、新日本理化株式会社、JSR株式会社、ユニチカ株式会社、アイ・エス・ティー株式会社、日立化成工業株式会社、東洋紡株式会社、荒川化学株式会社等からの一般汎用品を使用することができる。
【0016】
(電気抵抗調整剤)
電気抵抗調整剤は、樹脂中の電気抵抗を調整する機能を有する。電気抵抗調整剤としては、目的に応じて適宜選択することができ、金属酸化物、カーボンブラック、イオン導電剤、導電性ポリマー等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素等を用いることができる。また、金属酸化物は、その分散性を良くするため、金属酸化物に表面処理等を施したものを用いてもよい。
【0018】
カーボンブラックとしては、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ガスブラック等を用いることができる。
【0019】
イオン導電剤としては、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルサルフェート、グルセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエステル、アルキルベタイン、過塩素酸リチウム等を用いることができる。
【0020】
導電性ポリマーとしては、ポリパラフェニレン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリパラフェニレンビニレン等を用いることができる。
【0021】
電気抵抗調整剤の含有量は、目的に応じて適宜設計することができる。電気抵抗調整剤がカーボンブラックの場合には、電気抵抗調整剤の含有量は、基層10に対して、10質量%~25質量%が好ましく、15質量%~20質量%がより好ましい。電気抵抗調整剤が金属酸化物の場合には、電気抵抗調整剤の含有量は、基層10に対して、1質量%~50質量%が好ましく、10質量%~30質量%がより好ましい。電気抵抗調整剤の含有量は、上記の好ましい範囲内とすることにより、基層10の抵抗の均一性が改善され、任意の電位に対する抵抗値の変動が小さくなると共に、基層10の機械強度を向上させる。そのため、基層10は、電気抵抗を調整する効果を安定して有することができると共に、中間転写ベルト1は良好な機械強度を有することができる。
【0022】
(その他の成分)
基層10は、その他の成分を含んでもよい。その他の成分は、中間転写ベルト1の製造時に用いられる塗工液に必要に応じて添加される添加剤である。添加剤としては、分散助剤、補強剤、潤滑剤、熱伝導剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0023】
基層10の抵抗値は、表面抵抗で1×108Ω/□~1×1013Ω/□が好ましく、体積抵抗で1×108Ω・cm~1×1011Ω・cmが好ましい。基層10の表面抵抗及び体積抵抗が、それぞれ、上記の好ましい範囲内であれば、基層10は電気特性(表面抵抗及び体積抵抗)を有しつつ割れを抑制することができる。そのため、中間転写ベルト1は、電気特性を有しつつ機械強度を向上させることができる。
【0024】
基層10の抵抗値は、例えば電気抵抗調整剤の含有量を調整することにより調整することができる。電気抵抗調整剤の添加量は、電気特性を悪化させず、かつ基層10が脆く割れやすくならない程度の機械強度が得られる量に設定するのがよい。
【0025】
基層10の厚みは、目的に応じて適宜設計することができ、30μm~150μmが好ましく、40μm~120μmがより好ましく、50μm~80μmさらに好ましい。基層10の厚みが30μm~150μmであると、基層10に亀裂が生じ難くなり、中間転写ベルト1の裂けを抑制することができると共に、中間転写ベルト1に割れが生じるのを抑制できるため、中間転写ベルト1の耐久性を高められる。
【0026】
基層10の厚みムラは、中間転写ベルト1の使用時における走行安定性を高める点から、極力小さいのが好ましい。
【0027】
基層10の厚みの測定方法としては、例えば、接触式や渦電流式の膜厚計で測定する方法、基層10の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で測定する方法が挙げられる。
【0028】
[弾性層]
弾性層20は、基層10の上に形成され、柔軟性を有する。弾性層20の表面には球状粒子30によって凸部31が形成されている。
【0029】
弾性層20は、25℃、50%RH下での硬度が30度~80度であることが好ましく、40度~60度であることがより好ましい。弾性層20は、柔軟性を有することができるので、表面に凹凸がある紙種に対する追従性を良好とすることができる。また、弾性層20に撓みや反りが生じても、破損するのを抑えることができる。なお、硬度は、市販のマイクロゴム硬度計を使用することにより測定することができる。市販のマイクロゴム硬度計として、例えば、高分子計器株式会社製の「マイクロゴム硬度計MD-1capa」を使用することができる。
【0030】
弾性層20は、アクリルゴムと、ホスフィン酸金属塩及びホスファゼン化合物の少なくとも一方とを含んでいる。
【0031】
(アクリルゴム)
アクリルゴムは、弾性層20を形成する母材として用いられ、弾性層20に柔軟性を付与することができる。
【0032】
弾性層20を形成する材料としては、柔軟性を有する、エラストマーやゴムを用いることができる。
【0033】
エラストマーとしては、熱可塑性エラストマー及び熱硬化性エラストマーを用いることができる。
【0034】
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリエーテル系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリスチレン系、ポリアクリル系、ポリジエン系及びシリコーン変性ポリカーボネート系の熱可塑性エラストマー、フッ素系共重合体等が挙げられる。
【0035】
熱硬化性エラストマーとしては、例えば、ポリウレタン系、シリコーン変性エポキシ系及びシリコーン変性アクリル系の熱硬化性エラストマーが挙げられる。
【0036】
ゴムとしては、アクリルゴム、イソプレンゴム、スチレンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、フッ素ゴム、ウレタンゴム、ヒドリンゴム等が挙げられる。
【0037】
上記のエラストマー及びゴムの中から、優れた、耐オゾン性、柔軟性、球状粒子30との接着性、難燃性及び耐環境安定性を有する点から、本実施形態では、弾性層20は、アクリルゴムを用いて形成されている。弾性層20は、アクリルゴムの他に、上記のエラストマー及びゴムの中から、所望の性能が得られる材料を適宜含むことができる。
【0038】
アクリルゴムとして、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、架橋性アクリルゴムを用いることができる。架橋性アクリルゴムとしては、エポキシ基、活性塩素基、カルボキシル基等の架橋系を有するアクリルゴムを用いることができる。架橋系の中では、カルボキシル基を有する架橋性アクリルゴムが、ゴム物性(特に、圧縮永久歪み)及び加工性に優れており、好ましい。
【0039】
カルボキシル基架橋系のアクリルゴムに用いる架橋剤は、アミン化合物が好ましく、多価アミン化合物がより好ましい。アミン化合物として、具体的には、脂肪族多価アミン架橋剤、芳香族多価アミン架橋剤等が挙げられる。
【0040】
脂肪族多価アミン架橋剤としては、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカーバメイト、N,N'-ジシンナミリデン-1,6-ヘキサンジアミン等が挙げられる。
【0041】
芳香族多価アミン架橋剤としては、4,4'-メチレンジアニリン、m-フェニレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、4,4'-(m-フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、4,4'-(p-フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2'-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、4,4'-ジアミノベンズアニリド、4,4'-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、1,3,5-ベンゼントリアミン、1,3,5-ベンゼントリアミノメチル等が挙げられる。
【0042】
架橋剤の含有量は、アクリルゴム100質量部に対して、好ましくは0.05質量部~20.0質量部、より好ましくは0.1質量部~5.0質量部である。架橋剤の配合量が上記の好ましい範囲内であれば、架橋が十分に行われるため、架橋物の形状が維持し易くなる。また、架橋物が硬くなりすぎず、架橋ゴムとしての弾性等を有することができる。
【0043】
弾性層20は、さらに架橋促進剤を含んでもよい。架橋促進剤として、目的に応じて適宜選択することができるが、多価アミン架橋剤と組み合わせて用いることができることが好ましい。このような架橋促進剤としては、例えば、グアニジン化合物、イミダゾール化合物、第四級オニウム塩、多価三級アミン化合物、第三級ホスフィン化合物、弱酸のアルカリ金属塩等が挙げられる。
【0044】
グアニジン化合物としては、1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジオルトトリルグアニジン等が挙げられる。
【0045】
イミダゾール化合物としては、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール等が挙げられる。
【0046】
第四級オニウム塩としては、テトラn-ブチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルトリ―n-ブチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。
【0047】
多価三級アミン化合物としては、トリエチレンジアミン、1,8-ジアザ-ビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)等が挙げられる。
【0048】
第三級ホスフィン化合物としては、トリフェニルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン等が挙げられる。
【0049】
弱酸のアルカリ金属塩としては、ナトリウム又はカリウムの有機弱酸塩が挙げられる。
【0050】
有機弱酸塩として、例えば、無機弱酸塩、ステアリン酸塩又はラウリル酸塩等が挙げられる。無機弱酸塩として、リン酸塩及び炭酸塩等が挙げられる。
【0051】
架橋促進剤の含有量は、アクリルゴム100質量部に対して、0.1質量部~20質量部が好ましく、0.3質量部~10質量部がより好ましい。架橋促進剤の含有量が上記の好ましい範囲内であれば、架橋物の引張強さが向上し、熱負荷後の伸び変化又は引張強さ変化を小さくすることができる。また、架橋時の架橋速度を抑制できるので、架橋物の表面に架橋促進剤のブルームが生じたり、架橋物の高硬度化を抑制することができる。
【0052】
(ホスフィン酸金属塩)
ホスフィン酸金属塩は、難燃性を得るための難燃剤であり、リン含有率が高いため、他の難燃剤よりもゴムの難燃性の発現に優れている。また、ホスフィン酸金属塩は粘着性が高いため、アクリルゴムのタック性を向上させるのに好適であり、球状粒子30との接着に対して高い効果を発揮することができる。
【0053】
ホスフィン酸金属塩としては、ホスフィン酸アルミニウム塩等が挙げられる。ホスフィン酸アルミニウム塩としては、トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスメチルエチルホスフィン酸アルミニウム等が挙げられる。中でも、弾性層20の難燃性及びタック性を向上させる点から、トリスジエチルホスフィン酸アルミニウムが好ましい。
【0054】
ホスフィン酸金属塩としては、クラリアントケミカルズ株式会社製のExliot(登録商標) OPシリーズ等の一般汎用品を使用することができる。
【0055】
ホスフィン酸金属塩の平均粒径は、0.1μm~10.0μmが好ましく、1.0μm~5.0μmがより好ましい。平均粒径が0.1μm~10.0μmであれば、難燃性を維持することができると共に、ホスフィン酸金属塩の凝集を抑制し、アクリルゴムへの分散性を高めることができる。
【0056】
なお、平均粒径は、例えば、動的光散乱法を利用した粒子径分布測定装置(例えば、日機装株式会社製ナノトラック)で10%水溶液を超音波で60秒分散して、体積平均粒径を測定することにより、求めることができる。
【0057】
ホスフィン酸金属塩の含有量は、20質量部~80質量部が好ましく、30質量部~60質量部がより好ましい。ホスフィン酸金属塩の含有量が20質量部~80質量部であれば、難燃性を発現すると共に、ゴム物性を発揮できる。
【0058】
(ホスファゼン化合物)
ホスファゼン化合物は、分子中に、-P=N-結合、及び芳香族基を有する化合物である。ホスファゼン化合物は、縮合リン酸エステルやリン酸エステル等の他のリン系難燃剤に比べて、高いリン含有量、高耐熱性及び高耐加水分解性を有している。そのため、少ない添加量で、難燃性を発現することができ、アクリルゴムのタック性も損なわないので、弾性層20の表面に配置される球状粒子との接着性を高めることができる。
【0059】
ホスファゼン化合物としては、下記一般式(1)で表される環状ホスファゼン化合物、及び下記一般式(2)で表される鎖状ホスファゼン化合物を挙げることができる。ホスファゼン化合物は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。ホスファゼン化合物としては、難燃性を付与する対象となるアクリルゴムの難燃性を効果的に高められることから、環状ホスファゼン化合物が好ましい。
【0060】
【0061】
一般式(1)中、mは3~25の整数を表し、R1及びR2は、同一又は異なっていてもよく、アリール基又はアルキルアリール基を表す。
【0062】
【0063】
一般式(2)中、nは3~10000の整数を表し、R3及びR4は、同一又は異なっていてもよく、アリール基又はアルキルアリール基を表す。R5は、-N=P(OR3)3基、-N=P(OR4)3基、-N=P(O)OR3基、及び-N=P(O)OR4基から選ばれる少なくとも1種を表し、R6は、-P(OR3)4基、-P(OR4)4基、-P(O)(OR3)2基、及び-P(O)(OR4)2基から選ばれる少なくとも1種を表す。
【0064】
前記アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、トリメチルフェニル基、及びナフチル基等の炭素数6~20のアリール基が挙げられる。前記アリール基としては、炭素数6~10のアリール基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
【0065】
前記アルキルアリール基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、及びフェニルプロピル基等の炭素数6~20のアラルキル基が挙げられる。前記アルキルアリール基としては、炭素数7~10のアラルキル基が好ましく、ベンジル基がより好ましい。
【0066】
上記一般式(1)中のR1及びR2は、アリール基であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。
【0067】
一般式(1)で表される環状ホスファゼン化合物としては、アクリルゴムに難燃性を効果的に付与する点及び弾性層20の表面に配置される球状粒子との接着性を高める点から、R1及びR2がいずれもフェニル基である、環状フェノキシホスファゼン化合物がさらに好ましい。環状フェノキシホスファゼン化合物の中でも、一般式(1)中のmが3~8の整数である環状フェノキシホスファゼン化合物が好ましく、より好ましくはmが3~5の整数、さらに好ましくはmが3である環状フェノキシホスファゼン化合物である。環状ホスファゼン化合物は、一般式(1)中のmが異なる化合物の混合物であってもよい。
【0068】
上記一般式(2)中のR3及びR4は、アリール基であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。
【0069】
上記一般式(2)で表される鎖状ホスファゼン化合物としては、R3及びR4がいずれもフェニル基である、鎖状フェノキシホスファゼン化合物がさらに好ましい。鎖状フェノキシホスファゼン化合物の中でも、一般式(2)中のnが3~1000の整数である鎖状フェノキシホスファゼン化合物が好ましく、より好ましくはnが3~100の整数、さらに好ましくはnが3~25の整数である、鎖状フェノキシホスファゼン化合物である。鎖状ホスファゼン化合物は、一般式(2)中のnが異なる化合物の混合物であってもよい。
【0070】
上記一般式(1)で表される環状ホスファゼン化合物として、具体的には、ヘキサフェノキシシクロトリホスファゼン(m=3の化合物)、オクタフェノキシシクロテトラホスファゼン(m=4の化合物)、デカフェノキシシクロペンタホスファゼン(m=5の化合物)、ドデカフェノキシシクロヘキサホスファゼン(m=6の化合物)、テトラデカフェノキシシクロヘプタホスファゼン(m=7の化合物)、ヘキサデカフェノキシシクロオクタホスファゼン(m=8の化合物)等の環状フェノキシホスファゼン化合物;環状プロポキシホスファゼン化合物等が挙げられる。
【0071】
上記一般式(1)で表される鎖状フェノキシホスファゼン化合物としては、例えば、直鎖状ジ(ビスフェノキシ)ホスファゼン、直鎖状トリ(ビスフェノキシ)ホスファゼン、直鎖状テトラ(ビスフェノキシ)ホスファゼン、直鎖状ペンタ(ビスフェノキシ)ホスファーゼン、直鎖状ヘキサ(ビスフェノキシ)ホスファゼン、直鎖状へプタ(ビスフェノキシ)ホスファゼン等が挙げられる。
【0072】
なお、ホスファゼン化合物は、公知の方法を使用して入手することができる。ホスファゼン化合物は、例えば、特第3923497号公報等に開示されているホスファゼン難燃剤を使用してもよいし、商業的に入手可能な汎用品を使用してもよい。汎用品としては、大塚化学社製のSPS-100、SPR-100、株式会社伏見製薬所のラビトルFP-100、FP-110等が挙げられる。
【0073】
ホスファゼン化合物の添加量としては、5質量部~50質量部が好ましく、20質量部~30質量部がより好ましい。添加量が5質量部~50質量部であれば、難燃性が高く、アクリルゴムの柔軟性を維持することができる。
【0074】
弾性層20は、アクリルゴムの難燃性向上を目的として、ホスフィン酸金属塩及びホスファゼン化合物以外の他の難燃剤を含んでもよい。
【0075】
ホスフィン酸金属塩及びホスファゼン化合物以外の難燃剤としては、粘土鉱物、金属水和物、リン系化合物、窒素系化合物等を用いることができる。難燃剤として、リン系化合物と金属水和物と粘土鉱物とを組み合わせて使用することができる。これらを組み合わせることにより、難燃剤としての相乗効果を発揮し、より少ない量で難燃性を発現できるようになり、温湿度が変化しても抵抗変動を抑えることができる。具体的な抵抗変動としては、高温高湿と常温常湿との差が1桁以内であるのが好ましい。
【0076】
粘土鉱物としては、例えば、バーミキュライト、カオリン、雲母、層状ケイ酸塩等が挙げられる。これらの中でも、アクリルゴムへの分散性という観点から、層状ケイ酸塩が好ましい。層状ケイ酸塩とは、層間にナトリウムイオン、マグネシウムイオン等の交換性の金属カチオンを有する層状のケイ酸塩鉱物を意味する。ケイ酸塩鉱物は天然物であってもよく、合成物であってもよい。層状ケイ酸塩としては、モンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイト、スティブンサイト、バイデライト、ノントロナイト等のスメクタイトが挙げられる。中でもモンモリロナイトは難燃性としての効果が高く好適である。これらの層状ケイ酸塩は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。このような材料は、市販品として、例えば、ビック・ケミー社のクロイサイトが挙げられる。
【0077】
粘土鉱物の平均粒径は、1μm~30μmが好ましく、5μm~20μmがさらに好ましい。
【0078】
金属水和物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、ヒドロキシスズ酸亜鉛等が挙げられる。中でも、水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウムは、水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウムの難燃性を向上させることができる。また、水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウムは、ホスフィン酸金属塩、特にホスフィン酸アルミニウム塩のアクリルゴムへの分散性を向上させることにより、アクリルゴムのタック性を向上させることができる。そのため、中間転写ベルト1の難燃性及び粘着性を向上させる相乗効果を得ることができる。特に、水酸化アルミニウムは、ゴムへの分散性に優れ、難燃性や抵抗環境変動の点から有利であるので、特に好ましい。このような材料の市販品としては、例えば、昭和電工社のハイジライトが挙げられる。
【0079】
金属水和物の平均粒径は、0.1μm~10μmが好ましく、1.0μm~3μmがより好ましい。
【0080】
リン系化合物としては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、ジフェニルオクチルホスフェート、トリアリルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート、トリアリルホスフェート、トリ(ヒドロキシフェニル)ホスフェート、ジエチルビス(ヒドロキシエチル)アミノメチルホスホネート、トリス(3-ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキシド、ジブチルヒドロオキシメチルホスフォネート、ジ(ブトキシ)ホスフィニル・プロピルアミド、ジメチルメチルホスフォネート、リン酸グアニジン、トリスジクロロプロピルホスフェート、トリスβ-クロロプロピルホスフェート、ポリブロモスチレン、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸アミド、ポリリン酸メラミン、赤リン等が挙げられる。これらの中でも、高い難燃性を有する点から、赤リンがより好ましい。このような材料の市販品としては、例えば、燐化学工業のノーバエクセルが挙げられる。
【0081】
リン系化合物の平均粒径は、1.0μm~50μmが好ましく、5.0μm~20.0μmがより好ましい。
【0082】
窒素系化合物としては、例えば、メラミンシアヌレート、メラミンシリカ、硫酸メラミン等が挙げられる。これらの中でも、高い難燃性を有する点から、メラミンシアヌレートンがより好ましい。
【0083】
窒素系化合物の平均粒径は、1.0μm~50μmが好ましく、5.0μm~20.0μmがより好ましい。
【0084】
本実施形態では、弾性層が、アクリルゴムと、ホスファゼン化合物として環状フェノキシホスファゼン化合物を含む場合、上記のホスフィン酸金属塩及びホスファゼン化合物以外の難燃剤は、金属水和物として水酸化アルミニウムを用い、窒素系化合物としてメラミンシアヌレートを用いることが好ましい。水酸化アルミニウム及びメラミンシアヌレートは、環状フェノキシホスファゼン化合物との併用効果が大きいため、アクリルゴムの難燃性をより効果的に向上させることができる。
【0085】
難燃剤の配合量としては、粘土鉱物は、アクリルゴム100質量部に対して、1.0質量部~10.0質量部含むのが好ましく、3.0質量部~7.0質量部含むのがより好ましい。金属水和物は、アクリルゴム100質量部に対して、1.0質量部~150.0質量部含むのが好ましく、5.0質量部~20.0質量部含むのがより好ましい。リン系化合物は、アクリルゴム100質量部に対して、1.0質量部~20.0質量部含むのが好ましく、5.0質量部~15.0質量部含むのがより好ましい。窒素系化合物は、アクリルゴム100質量部に対して、1.0質量部~60.0質量部含むのが好ましく、30.0質量部~50.0質量部含むのがより好ましい。難燃剤の配合量を、それぞれの上記の好ましい範囲に調整することにより、アクリルゴムと、ホスフィン酸金属塩又はホスファゼン化合物との併用効果が大きくなるので、高い難燃性が得られ、温湿度変化があっても画像濃度を安定させることができる。また、アクリルゴムの柔軟性が発揮できる。
【0086】
弾性層20は、必要に応じて、電気特性を調整するための電気抵抗調整剤、酸化防止剤、補強剤、充填剤、加硫促進剤等の添加剤を適宜含有させることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0087】
電気抵抗調整剤としては、基層10に含まれる電気抵抗調整剤と同様の材料を用いることができる。弾性層20はアクリルゴムを含むため、アクリルゴム単体では抵抗率が高いため、電気抵抗調整剤が弾性層20に含まれることで、弾性層20の抵抗を制御することができる。電気抵抗調整剤は、中間転写ベルト1のゴム硬度を維持する点から、少量添加で効果があり、かつゴム硬度に影響を与えないイオン導電剤を用いるのが好ましい。イオン導電剤は、例えば、種々の過塩素酸塩やイオン性液体をアクリルゴム添加することで得ることができる。イオン導電剤の含有量は、アクリルゴム100部に対して、0.01質量部~3.0質量部であるのが好ましい。イオン導電剤の添加量が0.01質量部~3.0質量部であれば、抵抗率を下げる効果を得ることができると共に、中間転写ベルト1の表面に導電剤がブルーム又はブリードするのを低減することができる。
【0088】
弾性層20の抵抗値は、表面抵抗で1×108Ω/□~1×1013Ω/□、体積抵抗で1×107Ω・cm~1×1012Ω・cmに調整されることが好ましい。
【0089】
弾性層20は、アクリルゴム組成物を加熱することで形成できる。アクリルゴム組成物の調製には、ロール混合、バンバリー混合、スクリュー混合、溶液混合等の混合方法を用いることができる。配合順序は、特に限定されないが、熱で反応や分解しにくい成分を十分に混合した後、熱で反応し易い成分又は分解し易い成分としては、例えば、架橋剤等を反応や分解が起こらない温度で短時間に混合すればよい。
【0090】
アクリルゴムは、加熱することにより架橋物とすることができる。加熱温度は、130℃~220℃が好ましく、140℃~200℃がより好ましい。架橋時間は30秒~5時間が好ましい。加熱方法としては、プレス加熱、蒸気加熱、オーブン加熱、熱風加熱等のゴムの架橋に用いられる方法を適宜選択すればよい。また、一度架橋した後に、架橋物の内部まで確実に架橋させるために、後架橋を行ってもよい。後架橋は、加熱方法、架橋温度、形状等により異なるが、1時間~48時間行うのが好ましい。後架橋を行う際の加熱方法及び加熱温度は適宜選択すればよい。
【0091】
弾性層20の厚みは、200μm~500μmが好ましく、300μm400μmがより好ましい。弾性層20の層厚が200μm~500μmであれば、表面に凹凸がある紙種に対する画像品質を良好とすることができる。また、弾性層20の重さによって弾性層20に撓みや反りが生じるのを抑えることができる。
【0092】
弾性層20の厚みとは、粒子を除いた、弾性層20の弾性材料の厚みをいい、例えば、粒子が存在していない領域の弾性層20の厚みとすることができる。
【0093】
弾性層20の厚みは、弾性層20の断面をSEMで測定する方法等により測定することができる。弾性層20の厚みは、弾性層20の平均厚みを用いてもよい。平均厚みは、任意に10点の厚みを測定した際の平均値を用いることができる。
【0094】
[球状粒子]
球状粒子30は、弾性層20の表面に一部露出するように埋没して設けられている。球状粒子30は、弾性層20の表面に、球状粒子30同士が弾性層20の厚さ方向に重なることなく、弾性層20の面方向に分散して配置されている。殆どの球状粒子30は、弾性層20の中に完全に埋没することなく配置されている。
【0095】
球状粒子30を形成する材料としては、樹脂及びゴム等を用いることができる。
【0096】
樹脂としては、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート等のアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、シリカ等を挙げられる。これらの中でも、滑性を有し、トナーに対して高い離型性及び耐磨耗性を有する点から、アクリル樹脂、メラミン樹脂及びシリコーン樹脂を用いるのが好ましい。
【0097】
前記ゴムとしては、上述の弾性層20に用いるゴムと同様の材料を用いることができる。
【0098】
球状粒子30としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、メラミン粒子の場合、日本触媒株式会社製の「エポスターS12」、「エポスターS30」等を用いることができる。シリコーン粒子の場合、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ株式会社製の「トスパール(TOSPEARL)120」、「トスパール145」、「トスパール150KA」、「トスパール2000B」)等を用いることができる。アクリル粒子の場合、積水化成品工業株式会社製の「テクポリマーMBX-SS」等を用いることができる。
【0099】
球状粒子30は、上記の樹脂又はゴムを用いて単一の粒子で形成してもよいし、
図3に示すように、粒子状のコア部301と、コア部301の表面の一部又は全部を被覆するシェル部302とで構成されたコアシェル構造としてもよい。コア部301及びシェル部302は、上述の、金属、金属化合物、樹脂及びゴム等を用いることができる。コア部301とシェル部302とは、同一材料で形成されていてもよし、異種材料で形成されていてもよい。球状粒子30は、コア部301とシェル部302とを形成する材料を適宜設計することで球状粒子30の抵抗が調整し易い点から、コアシェル構造とすることが好ましい。球状粒子30が金属等の導電性が高い材料で形成された単一の粒子である場合には、球状粒子30の抵抗が低すぎて、球状粒子30の抵抗が調整し難い。球状粒子30がコアシェル構造である場合、球状粒子30を構成するコア部301が導電性が高い材料で形成されていても、シェル部302を絶縁性の低い樹脂等の導電性が低い材料で形成することで、球状粒子30の抵抗を容易に調整できる。また、コア部301が絶縁性の低い樹脂等の導電性が低い材料で形成されていても、シェル部302を導電性が高い材料で形成することで、球状粒子30の抵抗を容易に調整できる。
【0100】
球状粒子30がコアシェル構造である場合、コア部301とシェル部302とは、同一材料で形成されていてもよし、異種材料で形成されていてもよい。球状粒子30は、コア部301を樹脂で形成し、シェル部302をコア部301とは異なる樹脂で形成してもよい。また、球状粒子30は、コア部301をゴムで形成し、シェル部302を樹脂で形成してもよい。さらに、球状粒子30は、ゴム等の絶縁性材料を用いて形成し、シェル部302を金属や導電性高分子を含む樹脂で形成してもよい。これらの中でも、シェル部302が金属であることが好ましい。シェル部302が金属であれば、コア部301がゴム等の絶縁性材料で形成されていても、シェル部302はコア部301を構成するゴムとの接着に優れているため、コア部301からシェル部302が脱離しにくく、耐久性の点で特に好ましい。
【0101】
球状粒子30は、球状粒子30が単一の粒子である場合又はコアシェル構造である場合でも、公知の方法で製造することができる。球状粒子30がコアシェル構造である場合、コア部301にシェル部302を公知の方法で形成することができる。例えば、シェル部302が樹脂で形成される場合には、樹脂をコーティングして硬化させることで形成できる。また、シェル部302が金属で形成される場合には、金属をメッキ等して形成することができる。球状粒子30の脱落を抑制する点から、球状粒子30がコアシェル構造である場合には、シェル部302が金属で形成された導電性の粒子であることが好ましい。
【0102】
コア部301を形成する材料としては、樹脂及びゴム等を用いることができる。樹脂及びゴムとして、上述の、球状粒子30を形成する材料と同様の樹脂及びゴム等を用いることができる。
【0103】
シェル部302を形成する材料としては、金属、及び金属化合物等を用いることができる。
【0104】
金属としては、金、銀、銅、白金、亜鉛、鉄、パラジウム、ニッケル、錫、クロム、チタン、アルミニウム、コバルト、ゲルマニウム、カドミウム等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし2種以上を混合して合金として用いてもよい。
【0105】
金属化合物としては、上記金属の酸化物、窒化物及び炭化物等の化合物、ITO、はんだ等が挙げられる。
【0106】
樹脂及びゴムとして、コア部301と同様、上述の、球状粒子30を形成する材料と同様の樹脂及びゴム等を用いることができる。
【0107】
これらの中でも、金属が好ましい。金属の中でも、ニッケル、銀及び金がめっきでコア部301の表面に被覆し易いのでより好ましく、ニッケルが最も安価でゴムとの接着性に優れるのでさらに好ましい。
【0108】
なお、コア部301の表面にシェル部302を形成する方法としては、公知の方法を用いることができる。シェル部302が金属である場合には、シェル部302を形成する方法としては、例えば、無電解めっき、置換めっき、電気めっき、スパッタリング等がある。これらの中でも、無電解めっきが、シェル部302の厚みの制御が容易である点から、好ましい。
【0109】
シェル部302の厚みは、適宜設計可能であり、例えば、1nm~100nmが好ましく、5nm~20nmがより好ましい。シェル部302の厚みが1nm~100nmであれば、アクリルゴムとの接着性の向上効果を発揮できる。また、球状粒子30の比重が大きくなり過ぎるのが抑えられるので、アクリルゴムへの埋没率が高くなりすぎて転写性が低下するのを抑えることができる。
【0110】
シェル部302は、単層でもよいし、複数の層で形成されていてもよい。
【0111】
このようなコアシェル構造を有する導電性粒子は、市販品を使用することもでき、例えば、三菱マテリアル株式会社、日本化学工業株式会社、帝国イオン株式会社、東洋アルミニウム株式会社等から入手できる。
【0112】
球状粒子30は、中空でもよいし、多孔質でもよい。
【0113】
球状粒子30の平均粒径は、0.1μm~20.0μmが好ましく、0.5μm~5.0μmであることが好ましく、1.0μm~2.0μmであることがさらに好ましい。球状粒子30の平均粒径が上記の好ましい範囲内であれば、球状粒子30の表面粗さが小さくなり、球状粒子30同士の間の隙間を小さくできるため、トナーの転写性能を向上させることができると共に、球状粒子30のクリーニング性能を向上させることができる。特に、球状粒子30は絶縁性が高いものが多いため、球状粒子30の平均粒径が5.0μm以下であれば、帯電電位が残留し難くなり、連続画像出力時の画像乱れを抑制できる。なお、球状粒子30を弾性層12の表面に塗布するタイミングは、特に限定されず、アクリルゴムの加硫前後の何れでもよい。
【0114】
球状粒子30は、単分散粒子であることが好ましい。単分散粒子とは、粒度分布が極めてシャープであることをいう。具体的には、粒度分布が±(平均粒径×0.5)μm以下の分布幅であることをいう。なお、球状粒子30が市販品の場合、球状粒子30の粒度分布がブロードである場合には、粒子分球装置を用いて分級し、粒度分布をシャープに揃えてもよい。
【0115】
球状粒子30の平均粒径の測定方法は、走査型電子顕微鏡等で観察することにより測定することができる。視野中の任意の数(例えば、10個)の球状粒子30の大きさを測定し、平均した値を平均粒径としてもよい。
【0116】
球状粒子30は、樹脂又はゴムを用いて重合法等により製造できる。
【0117】
弾性層20中の球状粒子30の含有量は、弾性層20のアクリルゴム100質量部に対して、0.1質量部~1.0質量部が好ましく、0.2質量部~0.5質量部がより好ましい。
【0118】
球状粒子30は、球形であればよいが、トナーの転写効率の点から、真球により近い、真球状微粒子であることが好ましい。
【0119】
真球状について説明する。
図4~
図6は、球状粒子30の形状を模式的に示す図である。
図4~
図6において、球状粒子30の互いに直交する2つの方向のうちの一方(X軸方向)の径の長さを径r
1とし、他方の径の長さを径r
2、直交する2つの方向(X軸方向、Y軸方向)により形成される面に直交する面に対して直交する方向(Z軸方向)の径の長さを径r
3とする。それぞれの径r
1、径r
2及び径r
3の長さは、径r
1≧径r
2≧径r
3とする。球状粒子30は、その径r
1と径r
2との比(径r
2/径r
1)が0.9~1.0の範囲であり、径r
3と径r
2との比(径r
3/径r
2)が0.9~1.0の範囲であるとき、真球状粒子とする。径r
2/径r
1及び径r
3/径r
2が0.9以上であることにより、球状粒子30を弾性層20の表面に整列して並べることが容易となり、トナーの転写効率が向上する。
【0120】
径r1、径r2及び径r3は、例えば、球状粒子30を平滑な測定面上に均一に分散付着させ、カラーレーザー顕微鏡等により複数(例えば、100個)の球状粒子30の径r1、径r2及び径r3(単位:μm)を測定し、これらの平均値から求めることができる。
【0121】
球状粒子30は、
図1に示すように、弾性層20中へ一部埋設されており、その埋没率は、50%を超え100%未満であることが好ましく、51%~90%であることがより好ましい。埋没率が50%を超え100%未満であれば、中間転写ベルト1を画像形成装置に長期間使用しても、球状粒子30の脱離が抑制され、耐久性を向上させることができる。また、球状粒子30の存在による転写性能を向上させることができる。
【0122】
埋没率とは、弾性層20の深さ方向に埋没している球状粒子30の割合をいう。本実施形態では、埋没率が50%を超え100%未満であるとは、全ての球状粒子30が50%を超え100%未満でなくともよく、ある所定の領域に存在する球状粒子30の平均埋没率が50%を超え100%未満であればよい。
【0123】
埋没率は、弾性層20の表面の任意の箇所をSEMを用いて断面を観察することにより、弾性層20の厚さ方向に所定の数(例えば、10個)の球状粒子30の粒径のどのくらいの割合が埋没しているかを求め、その平均値を算出することにより測定できる。また、埋没率が50%の場合、弾性層20の断面観察において、弾性層20中に完全に埋没している球状粒子30は殆どない。なお、弾性層20中に完全に埋没している球状粒子30は、球状粒子30全体のうちの5%以下であることが好ましい。
【0124】
球状粒子30は、
図1に示すように、弾性層20の厚み方向に単一層が形成されるように配置され、複数の球状粒子30が、
図2に示すように、平面視において、弾性層20の表面にそれぞれ独立して配列されている。球状粒子30が弾性層20の表面にその厚み方向に単一層を形成するように、それぞれ独立して配列した状態で配置されることで、安定した高品質の画像を維持することができる。球状粒子30を弾性層20の上に直接塗布してならすことにより、球状粒子30を弾性層20の表面にその厚み方向に単一層を形成し、球状粒子30をそれぞれ独立して配列した状態を容易に形成できる。なお、球状粒子30は、弾性層20に球状粒子30同士が重なり合うように配置して、複数の球状粒子30が弾性層20の厚み方向に重なるように配置されてもよい。
【0125】
弾性層20の表面から露出している球状粒子30の断面の径は、均一であるのが好ましく、±(断面の径×0.5)μm以下の分布幅であるのが好ましい。なお、球状粒子30同士の重なり合いがなければ、球状粒子30の粒径は、分布幅を満たさなくてもよい。
【0126】
また、球状粒子30は粒径が揃っていれば、弾性層20の表面から露出している球状粒子30の断面の径の分布幅が±(断面の径×0.5)μm以下とし易いため、好ましい。なお、球状粒子30は粒径が揃ってなくても、ある粒径の球状粒子30が選択的に弾性層20の表面から露出させて、弾性層20の表面から露出している球状粒子30の断面の径の分布幅が、±(断面の径×0.5)μm以下となるようにしてもよい。
【0127】
球状粒子30による弾性層20の表面の占有面積率は、60%以上であるのが好ましく、66%以上であるのがより好ましく、80%以上であるのがさらに好ましい。占有面積率が60%以上であれば、弾性層20の露出面積を低下させ、トナーと弾性層20との接触機会を減少でき、良好な転写性が得られる。
【0128】
球状粒子30の抵抗値は、体積抵抗で、1×104Ω・cm~1×1011Ω・cmが好ましく、1×106Ω・cm~1×1010Ω・cmがより好ましい。なお、球状粒子の抵抗の測定は、例えば、三菱化学アナリテック社のMCP-PD51とロレスタGP(抵抗が高ければ、ハイレスタUP)で測定することができる。
【0129】
球状粒子30の抵抗測定方法としては、23℃、50%RH環境で15mmφの加圧容器に球状粒子を1g入れ、荷重20kNを掛けた後、90V(ハイレスタUPの場合、10V)にて測定した値を読み取ることにより算出することができる。
【0130】
球状粒子30の抵抗は、球状粒子30がコアシェル構造である場合、シェル部302(
図3参照)の厚みが薄いと、シェル部302(
図3参照)の抵抗は高く、シェル部302(
図3参照)の厚いと、シェル部302(
図3参照)の抵抗は下がる。そのため、シェル部302(
図3参照)の厚みを変えることにより、上記の好ましい範囲に調整することができる。
【0131】
中間転写ベルト1は、その抵抗を、基層10及び弾性層20に含まれる電気抵抗調整剤の含有量を変更することにより、適宜設計することができる。
【0132】
中間転写ベルト1は、その抵抗を、表面抵抗で1×108Ω/□~1×1013Ω/□とし、体積抵抗で1×108Ω・cm~1×1011Ω・cmとするのが好ましい。中間転写ベルト1の表面抵抗及び体積抵抗が、それぞれ、上記範囲内であれば、中間転写ベルト1bの導電性を最適にすることができる。なお、中間転写ベルト1の抵抗の測定は、市販の計測器を使用できるが、例えば、ダイアインスツルメンツ株式会社製のハイレスタを用いて測定することができる。
【0133】
中間転写ベルト1は、無端ベルト、即ちシームレスベルトとして用いることができる。中間転写ベルト1が無端ベルトの場合、中間転写ベルト1の周長は、目的に応じて適宜設計することができるが、1000mm~3000mmが好ましく、1100mm~3000mmがより好ましい。
【0134】
[中間転写ベルトの製造方法]
一実施形態に係る中間転写ベルト1の製造方法の一例を説明する。
【0135】
まず、基層10の製造方法について説明する。樹脂成分としてポリイミド樹脂前駆体又はポリアミドイミド樹脂前駆体等を用い、樹脂成分及び電気抵抗調整剤を含む塗工液を作製する。例えば、金属等で形成された、円筒状の金型(円筒型)をゆっくりと回転させながら、作製した塗工液をノズルやディスペンサーのような液供給装置にて円筒型の外面全体に均一になるように塗布・流延して、塗膜を形成する。
【0136】
その後、回転速度を所定速度まで上げ、所定速度に達したら一定速度に維持し、所望の時間回転を継続する。そして、円筒型を回転させつつ徐々に昇温させながら、80℃~150℃の温度で塗膜中の溶媒を蒸発させていく。その際、雰囲気中に存在する、揮発した溶媒等を含む蒸気を効率よく循環して取り除くことが好ましい。
【0137】
自己支持性のある膜が形成された後、円筒型ごと高温処理の可能な加熱炉(焼成炉)に移し、炉内を段階的に昇温し、最終的に250℃~450℃程度の高温で円筒型を加熱処理して、十分にポリイミド樹脂前駆体又はポリアミドイミド樹脂前駆体をイミド化又はポリアミドイミド化させる。これにより、基層10が製造される。
【0138】
基層10を製造した後、円筒型を冷却し、円筒型の表面に形成した基層10の上に弾性層20を形成する。
【0139】
まず、アクリルゴム、架橋剤、架橋促進材等を有機溶剤に溶解させたゴム塗料(アクリルゴム組成物)を準備する。ゴム塗料を基層10の上に塗布して塗膜を形成した後、塗膜に含まれる溶剤を乾燥させると共に、ゴムを加硫させることで、弾性層20を形成することができる。
【0140】
ゴム塗料の塗膜の成形方法としては、基層11の形成方法と同様、螺旋塗工、ダイ塗工、ロール塗工等の塗工法を用いることができる。凹凸転写性を良くするためには、弾性層20の厚みを厚くする必要があり、ゴム塗料の厚膜を形成する塗工法としては、ダイ塗工、及び螺旋塗工が好ましい。例えば、基層11と同様に、円筒型をゆっくりと回転させながら、ゴム塗料をノズルやディスペンサー等のような液供給装置にて基層11の表面全体に均一になるように、塗布して流延して、基層11の表面に塗膜を形成する。続いて、円筒型を所定の回転速度、乾燥温度を維持させることで平滑化(レベリング)されながら乾燥される。これにより、弾性層20が形成される。弾性層20は、その後、十分に冷却される。なお、円筒型の回転中に、必要に応じて、加硫温度に加熱して、ゴム塗膜中のゴムを加硫(架橋)させて、弾性層20を形成してもよい。なお、弾性層20の巾方向への膜厚は、ノズルの吐出量、ノズル金型間の距離を変化させるか、又は金型の回転速度を変えることにより調整することができる。
【0141】
その後、円筒型の回転速度を所定速度まで上げ、所望の所定速度に達したら、一定速度に維持し、回転を継続する。弾性層20を十分に乾燥した後、弾性層20上に球状粒子30を供給し、球状粒子30を弾性層20の上に固着させる。
【0142】
弾性層20への球状粒子30の付与方法の一例を示す概略図を
図7に示す。
図7に示すように、円筒型51の周面に、基層10と弾性層20が積層して形成されたベルトを取り付け、このベルトの表面に、粉体供給装置52と押し当て部材53を設置する。円筒型51を回転させながら粉体供給装置52から球状粒子30を含む流延塗工液を弾性層20の上に球状粒子30を均一にまぶし、弾性層20上にまぶされた球状粒子30を押し当て部材53により一定圧力で押し当てる。この押し当て部材53により、弾性層20へ球状粒子30を埋設させつつ、余剰な球状粒子30を取り除く。本実施形態では、特に、単分散の球状粒子30を用いることにより、このような押し当て部材53を用いた、ならし工程のみの簡単な工程で、弾性層20の厚さ方向に、好ましくは平面方向にも単一の状態で独立して球状粒子30の一部を埋め込むことができ、均一な単一粒子層を形成することができる。これにより、弾性層20の表面に露出した球状粒子30の形状に対応した凸部が形成される。
【0143】
球状粒子30の埋没率は、押し当て部材53の押し当て時間の長さ等により調整することができる。なお、球状粒子30の弾性層20中への埋没率の調整は、他の方法によっても可能である。例えば、押し当て部材53の押圧力を加減することにより、埋没率を調整することができる。例えば、流延塗工液の粘度、固形分、溶剤の使用量、粒子の材料等にもよるが、例えば、流延塗工液の粘度が100mPa・s~100000mPa・sの時、押圧力を1mN/cm~1000mN/cmとすることにより、球状粒子30の埋没率を50%を超え100%未満の範囲に容易に調整することができる。
【0144】
なお、球状粒子30の埋没率を測定する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、最終的に得られる中間転写ベルト1の断面をSEMやレーザー顕微鏡を用いて観察する方法等により測定することができる。
【0145】
弾性層20の上に球状粒子30を均一に並べた後、円筒型51を回転させながら所定温度及び所定時間で加熱することにより、弾性層20を硬化させ、球状粒子30を埋設させた弾性層20を形成する。
【0146】
次に、円筒型51を、弾性層20の表面に球状粒子30を埋没させたベルトが取り付けられている状態で十分に冷却した後、基層10及び弾性層20が形成された円筒型51から、基層10、弾性層20及び球状粒子30を備える中間転写ベルト1を脱離させ、所望の中間転写ベルト(シームレスベルト)1を得る。
【0147】
このように、中間転写ベルト1は、弾性層20の表面に一部露出した状態で配設された球状粒子30を備え、弾性層20の表面に球状粒子30により凸部31を形成している。中間転写ベルト1は、弾性層20の表面に弾性層20から露出した球状粒子30の形状に対応した凸部31を形成しているので、表面凹凸がある紙種に対して追従し易く、長期間使用しても球状粒子30の脱離を抑えることができる。そのため、中間転写ベルト1は、転写性能を高めることができる。これにより、表面凹凸がある紙種に対して通紙しても、球状粒子30の脱離が生じ難くなり、特に用紙のエッジ部で脱離が生じ難くなる。そのため、中間転写ベルト1に球状粒子30の脱離に起因して生じる縦スジの白抜け画像の発生を抑えることができる。また、中間転写ベルト1は、弾性層20を、アクリルゴム及びホスフィン酸金属塩を含んで形成しているので、難燃性を高めることができる。よって、中間転写ベルト1は、優れた転写性を有することができると共に、高い耐久性及び難燃性を有することができる。
【0148】
中間転写ベルト1は、弾性層20に含まれるホスフィン酸金属塩としてトリスジエチルホスフィン酸アルミニウムを用いることができる。これにより、アクリルゴムのタック性を向上させることができるので、球状粒子30と弾性層20との密着性を高め、球状粒子30が弾性層20から脱離するのを抑制できる。また、トリスジエチルホスフィン酸アルミニウムを用いることで、弾性層20の難燃性をより向上させることができる。よって、中間転写ベルト1は、より高い耐久性及び難燃性を有することができる。
【0149】
中間転写ベルト1は、弾性層20に、難燃剤として水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウムを含むことができる。これにより、弾性層20は、難燃性及びタック性をいずれも向上させることができるので、中間転写ベルト1の難燃性及び粘着性をさらに向上させることができる。よって、中間転写ベルト1は、さらに高い難燃性及び耐久性を発揮することができる。
【0150】
中間転写ベルト1は、球状粒子30として、粒子状のコア部301(
図3参照)と、コア部301(
図3参照)の表面を被覆するシェル部302(
図3参照)とで構成され、コア部301(
図3参照)が樹脂で形成され、シェル部302(
図3参照)がニッケルで形成されたコアシェル構造を有する粒子を用いることができる。これにより、球状粒子30は、その抵抗を容易に調整できる。よって、中間転写ベルト1は、転写性能をより安定させることができるので、より安定した画像品質を維持することができる。
【0151】
中間転写ベルト1は、シームレスベルトとして用いることができる。これにより、中間転写ベルト1は、画像形成装置のベルト構成部に用いられる無端ベルトとして有効に用いることができる。
【0152】
中間転写ベルト1は、上述の通り、優れた転写性を有すると共に、高い耐久性及び難燃性を有するので、中間転写ベルト方式の画像形成装置における中間転写ベルトとして好適に用いることができる。中間転写ベルト方式の画像形成装置として、像担持体(例えば、感光体ドラム)上に順次形成される複数のカラートナー現像画像を中間転写ベルト上に順次重ね合わせて一次転写を行い、得られた一次転写画像を記録媒体上に一括して二次転写する方式の装置がある。
【0153】
<画像形成装置>
一実施形態に係る中間転写体を中間転写ベルトとして適用した画像形成装置について説明する。一実施形態に係る画像形成装置は、潜像が形成され、トナー像を担持可能な像担持体と、該像担持体上に形成された潜像をトナーで現像する現像部と、前記現像部により現像されたトナー像が一次転写される中間転写体である中間転写ベルト1と、中間転写ベルト1上に担持されたトナー像を記録媒体に二次転写する転写部とを備えている。また、画像形成装置は、必要に応じて、例えば、除電部、クリーニング部、リサイクル部、制御部を備えることができる。なお、画像形成装置は、フルカラー画像形成装置である場合には、各色の現像部を有する複数の潜像担持体を直列に配置しているのが好ましい。
【0154】
一実施形態に係る画像形成装置を用いた画像形成方法は、以下の工程を含み、中間転写体として一実施形態に係る中間転写体を用いる。画像形成方法は、必要に応じてその他の工程を含んでもよい。
(現像工程)潜像が形成され、トナー像を担持可能な像担持体の上に形成された潜像をトナーで現像する工程:
(一次転写工程):前記現像工程において現像された前記トナー像を中間転写ベルト上に一次転写する工程:及び
(二次転写工程):前記中間転写ベルトの上に転写された前記トナー像を記録媒体に転写する工程
【0155】
(第1の態様)
図8は、画像形成装置の構成の一例を示す要部模式図である。
図8に示すように、画像形成装置100Aは、中間転写ユニット110、二次転写ユニット130、作像ユニット150、ベルト構成部であるベルト搬送装置(転写搬送ベルト)160及び定着装置170を備える。
【0156】
中間転写ユニット110は、複数のローラに張架された中間転写ベルト1、中間転写ベルトクリーニング部であるベルトクリーニングブレード111、潤滑剤塗布部材である潤滑剤塗布ブラシ112、中間転写ベルト1が架け渡されている一次転写電荷付与手段である一次転写バイアスローラ113、ベルト駆動ローラ114、ベルトテンションローラ115、二次転写対向ローラ116、クリーニング対向ローラ117及びフィードバック電流検知ローラ118、光学センサ119、一次転写電源120、トナーシール部材121、除電ローラ122、アースローラ123及び帯電チャージャ124を備えている。
【0157】
二次転写ユニット130は、二次転写電荷付与部である二次転写バイアスローラ131、二次転写電源132、レジストローラ133、クリーニング部であるクリーニングブレード134、転写紙ガイド板135及び除電針からなる転写紙除電チャージャ136を備える。
【0158】
作像ユニット150は、像担持体である感光体ドラム151、帯電チャージャ152、リボルバ現像ユニット153、感光体クリーニング装置154、除電ランプ155、電位センサ156及び画像濃度センサ157を備える。
【0159】
リボルバ現像ユニット153は、4つの現像機1531(黒(BK)現像機1531K、シアン(C)現像機1531C、マゼンタ(M)現像機1531M、イエロー(Y)現像機1531Yを内部に備えている。
【0160】
中間転写ベルト1の周りには、二次転写バイアスローラ131、ベルトクリーニングブレード111、潤滑剤塗布ブラシ112等が、それぞれ、中間転写ベルト1と対向するように配設されている。
【0161】
中間転写ベルト1の外周面又は内周面には、図示しない位置検知用マークが設けられる。ただし、中間転写ベルト1の外周面側については位置検知用マークがベルトクリーニングブレード111の通過域を避けて設ける工夫が必要であり、配置上の困難さを伴うことがある。そのため、位置検知用マークは中間転写ベルト1の内周面側に設けてもよい。
【0162】
光学センサ119は、マーク検知用センサとして機能し、中間転写ベルト1が架け渡されている一次転写バイアスローラ113とベルト駆動ローラ114との間の位置に設けられる。
【0163】
中間転写ベルト1は、一次転写バイアスローラ113、ベルト駆動ローラ114、ベルトテンションローラ115、二次転写対向ローラ116、クリーニング対向ローラ117及びフィードバック電流検知ローラ118に張架されている。各ローラは導電性材料で形成され、一次転写バイアスローラ113以外の各ローラは接地されている。一次転写バイアスローラ113には、定電流又は定電圧制御された一次転写電源120により、トナー像の重ね合わせ数に応じて所定の大きさの電流又は電圧に制御された転写バイアスが印加されている。
【0164】
中間転写ベルト1は、図示しない駆動モータによって矢印方向に回転駆動されるベルト駆動ローラ114により、矢印方向に駆動される。
【0165】
中間転写ベルト1は、感光体ドラム151上に形成されたトナー像を重ね合わせるために、通紙可能最大サイズより大きく設定されている。
【0166】
二次転写バイアスローラ131は、二次転写対向ローラ116に張架された部分の中間転写ベルト1のベルト外周面に対して、後述する接離手段としての接離機構によって、接離可能に構成されている。二次転写バイアスローラ131は、二次転写対向ローラ116に張架された部分の中間転写ベルト1との間に被記録媒体(転写材)である転写紙Pを挟持するように配設されており、定電流制御される二次転写電源132によって所定電流の転写バイアスが印加されている。
【0167】
レジストローラ133は、二次転写バイアスローラ131と二次転写対向ローラ116に張架された中間転写ベルト1との間に、所定のタイミングで転写紙Pを送り込む。また、二次転写バイアスローラ131には、クリーニングブレード134が当接している。
【0168】
クリーニングブレード134は、二次転写バイアスローラ131の表面に付着した付着物を除去してクリーニングする。
【0169】
このような構成を有する画像形成装置100Aにおいて、画像形成サイクルが開始されると、感光体ドラム151は、図示しない駆動モータによって矢印で示す半時計方向に回転され、感光体ドラム151上に、BK(ブラック)トナー像形成、C(シアン)トナー像形成、M(マゼンタ)トナー像形成、Y(イエロー)トナー像形成が行われる。中間転写ベルト1はベルト駆動ローラ114によって矢印で示す時計回りに回転される。この中間転写ベルト1の回転に伴って、一次転写バイアスローラ113に印加される電圧による転写バイアスにより、BKトナー像、Cトナー像、Mトナー像、Yトナー像の一次転写が行われ、最終的にBK、C、M、Yの順に中間転写ベルト1上に各トナー像が重ね合わされて、トナー画像125が形成される。
【0170】
例えば、BKトナー像形成は、次のように行われる。
図8において、帯電チャージャ152は、コロナ放電によって感光体ドラム151の表面を負電荷で所定電位に一様に帯電する。ベルトマーク検知信号に基づき、タイミングを定め、図示しない書き込み光学ユニットにより、BKカラー画像信号に基づいてレーザー光Lによるラスタ露光を行う。このラスタ像が露光されたとき、当初一様帯電された感光体ドラム151の表面の露光された部分は、露光光量に比例する電荷が消失し、BK静電潜像が形成される。このBK静電潜像に、BK現像機1531Kの現像ローラ上の負帯電されたBKトナーが接触することにより、感光体ドラム151の電荷が残っている部分にはトナーが付着せず、電荷の無い部分つまり露光された部分にはトナーが吸着し、静電潜像と相似なBKトナー像が形成される(現像工程)。
【0171】
このようにして感光体ドラム151上に形成されたBKトナー像は、感光体ドラム151と接触状態で等速駆動回転している中間転写ベルト1のベルト外周面に一次転写される。この一次転写後の感光体ドラム151の表面に残留している若干の未転写の残留トナーは、感光体ドラム151の再使用に備えて、感光体クリーニング装置154で清掃される。この感光体ドラム151側では、BK画像形成工程の次にC画像形成工程に進み、所定のタイミングでカラースキャナによるC画像データの読み取りが始まり、そのC画像データによるレーザー光書き込みによって、感光体ドラム151の表面にC静電潜像を形成する。
【0172】
そして、先のBK静電潜像の後端部が通過した後で、且つC静電潜像の先端部が到達する前にリボルバ現像ユニット153の回転動作が行われ、C現像機1531Cが現像位置にセットされ、C静電潜像がCトナーで現像される。以後、C静電潜像領域の現像を続ける。C静電潜像の後端部が通過した時点で、先のBK現像機1531Kの場合と同様にリボルバ現像ユニット153の回転動作を行い、次のM現像機1531Mを現像位置に移動させる。これもやはり次のY静電潜像の先端部が現像位置に到達する前に完了させる。なお、M及びYの画像形成工程については、それぞれの、カラー画像データの読み取り、静電潜像の形成及び現像の動作が、上述のBK、Cの場合と同様であるため、説明は省略する。
【0173】
このようにして感光体ドラム151上に順次形成されたBK、C、M及びYのトナー像は、中間転写ベルト1上の同一面に順次位置合わせされて一次転写される(一次転写工程)。
【0174】
これにより、中間転写ベルト1上に最大で4色が重ね合わされたトナー像が形成される。一方、画像形成動作が開始される時期に、転写紙Pが転写紙カセット又は手差しトレイ等の給紙部から給送され、レジストローラ133のニップで待機している。
【0175】
そして、二次転写対向ローラ116に張架された中間転写ベルト1と二次転写バイアスローラ131によりニップが形成された二次転写部に、中間転写ベルト1上のトナー像の先端がさしかかる時に、転写紙Pの先端がこのトナー像の先端に一致するように、レジストローラ133が駆動されて、転写紙ガイド板135に沿って転写紙Pが搬送され、転写紙Pとトナー像とのレジスト合わせが行われる。
【0176】
このようにして、転写紙Pが二次転写ユニット130を通過すると、二次転写電源132によって二次転写バイアスローラ131に印加された電圧による転写バイアスにより、中間転写ベルト1上の4色重ねトナー像が転写紙P上に一括転写(二次転写)される(二次転写工程)。
【0177】
この転写紙Pは、転写紙ガイド板135に沿って搬送されて、二次転写部の下流側に配置した転写紙除電チャージャ136との対向部を通過することにより除電された後、ベルト搬送装置160により定着装置170に向けて送られる。そして、この転写紙Pは、定着装置170の定着ローラ171、172のニップ部でトナー像が溶融定着された後、図示しない排出ローラで装置本体外に送り出され、図示しないコピートレイに表向きにスタックされる。なお、定着装置170は必要によりベルト構成部を備えた構成とすることもできる。
【0178】
一方、中間転写ベルト1への転写後の感光体ドラム151の表面は、感光体クリーニング装置154でクリーニングされ、除電ランプ155で均一に除電される。また、転写紙Pにトナー像を二次転写した後の中間転写ベルト1のベルト外周面に残留した残留トナーは、ベルトクリーニングブレード111によってクリーニングされる。ベルトクリーニングブレード111は、図示しないクリーニング部材離接機構によって、中間転写ベルト1のベルト外周面に対して所定のタイミングで接離されるように構成されている。
【0179】
ベルトクリーニングブレード111の中間転写ベルト1の移動方向上流側には、中間転写ベルト1のベルト外周面に対して接離するトナーシール部材121が設けられている。このトナーシール部材121は、残留トナーのクリーニング時にベルトクリーニングブレード111から落下した落下トナーを受け止めて、落下トナーが転写紙Pの搬送経路上に飛散するのを防止している。このトナーシール部材121は、クリーニング部材離接機構によって、ベルトクリーニングブレード111とともに、中間転写ベルト1のベルト外周面に対して接離される。
【0180】
このようにして残留トナーが除去された中間転写ベルト1のベルト外周面には、潤滑剤塗布ブラシ112により削り取られた潤滑剤161が塗布される。潤滑剤161は、例えば、ステアリン酸亜鉛等の固形体からなり、潤滑剤塗布ブラシ112に接触するように配設されている。また、中間転写ベルト1のベルト外周面に残留した残留電荷は、中間転写ベルト1のベルト外周面に接触した図示しないベルト除電ブラシにより印加される除電バイアスによって除去される。ここで、潤滑剤塗布ブラシ112及びベルト除電ブラシは、それぞれの図示しない接離機構により、所定のタイミングで、中間転写ベルト1のベルト外周面に対して接離されるようになっている。
【0181】
ここで、リピートコピーの時は、カラースキャナの動作及び感光体ドラム151への画像形成は、1枚目の4色目(Y)の画像形成工程に引き続き、所定のタイミングで2枚目の1色目(BK)の画像形成工程に進む。また、中間転写ベルト1は、1枚目の4色重ねトナー像の転写紙Pへの一括転写工程に引き続き、ベルト外周面のベルトクリーニングブレード111でクリーニングされた領域に、2枚目のBKトナー像が一次転写されるようにする。その後は、1枚目と同様動作になる。
【0182】
これにより、画像形成装置100Aは、4色のフルカラーコピーを得るコピーモードである場合には、フルカラー画像を得ることができる。また、画像形成装置100Aが2色又は3色のコピーモードの場合には、指定された色と回数の分について上記と同様の動作を行う。さらに、画像形成装置100Aが単色のコピーモードの場合には、所定枚数が終了するまでの間、リボルバ現像ユニット153の所定色の現像機のみを現像動作状態にし、ベルトクリーニングブレード111を中間転写ベルト1に接触させたままの状態にしてコピー動作を行う。
【0183】
このように、画像形成装置100Aは、中間転写ユニット110に中間転写ベルト1を備えているので、表面凹凸がある紙種に対して優れた転写性を有し、長期間使用しても粒子脱離がなく高い耐久性を有すると共に優れた難燃性を有することができる。よって、画像形成装置100Aは、優れた画像形成を長期間にわたって安定して実現することができる。
【0184】
(第2の態様)
なお、本実施形態では、画像形成装置100Aは、感光体ドラム151を一つだけ備えているが、複数の感光体ドラム151を中間転写ベルト1に沿って直列に並設することができる。
【0185】
図9は、画像形成装置の他の構成の一例を示す要部模式図である。なお、
図9では、4つの異なる色(ブラック、イエロー、マゼンタ、シアン)のトナー像を形成するための4つの感光体ドラム151BK、151Y、151M及び151Cを備えた4ドラム型のデジタルカラープリンタの一構成例を示す。
図9に示すように、画像形成装置100Bは、4つの異なる色(ブラック、イエロー、マゼンタ、シアン)のトナー像を形成するための4つの感光体ドラム151BK、151Y、151M及び151Cをプリンタ本体210内に備えている。
【0186】
プリンタ本体210は、電子写真方式によるカラー画像形成を行うための、画像書込部211、画像形成部212、給紙部213及び一次転写バイアスローラ214BK、214M、214Y及び214Cを備えている。
【0187】
プリンタ本体210では、送られる画像信号を元に、図示しない画像処理部で画像処理して画像形成用の黒(BK)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、及びシアン(C)の各色信号に変換され、変換された各色信号が画像書込部211に送信される。
【0188】
画像書込部211は、例えば、レーザー光源と、回転多面鏡等の偏向器と、走査結像光学系、及びミラー群、からなるレーザー走査光学系であり、前記の各色信号に対応した4つの書込光路を有し、画像形成部212の各色毎に設けられた感光体ドラム150BK、151M、151Y及び151Cに各色信号に応じた画像書込を行う。
【0189】
画像形成部212は、黒(BK)用、マゼンタ(M)用、イエロー(Y)用、及びシアン(C)用のそれぞれの感光体ドラム151BK、151M、151Y、151Cを備えている。この各色用の感光体ドラム151BK、151M、151Y、151Cとしては、有機感光体(OPC:Organic Photoconductor drum)ドラムが用いられる。各感光体ドラム151BK、151M、151Y及び151Cの周囲には、帯電装置と、画像書込部211から照射されるレーザー光Lの露光部と、黒、マゼンタ、イエロー及びシアンの各色用の現像装置213BK、213M、213Y及び213Cと、一次転写部としての一次転写バイアスローラ214BK、214M、214Y及び214Cと、クリーニング装置(表示略)と、図示しない感光体除電装置等が配設されている。なお、現像装置213BK、213M、213Y及び213Cには、2成分磁気ブラシ現像方式を用いている。中間転写ベルト1は、それぞれの感光体ドラム151BK、151M、151Y及び151Cと、それぞれの一次転写バイアスローラ214BK、214M、214Y及び214Cとの間に介在し、それぞれの感光体ドラム151BK、151M、151Y及び151Cの上に形成された各色のトナー像が順次重ね合わせて転写される。
【0190】
一方、転写紙Pは、給紙部213から給紙された後、レジストローラ215を介して、ベルト搬送装置160に担持される。そして、中間転写ベルト1とベルト搬送装置160とが接触するところで、中間転写ベルト1上に転写されたトナー像が、二次転写バイアスローラ131により二次転写(一括転写)される。これにより、転写紙Pの上にカラー画像が形成される。
【0191】
カラー画像が形成された転写紙Pは、ベルト搬送装置160により定着装置170に搬送され、この定着装置170により転写された画像が定着された後、プリンタ本体外に排出される。
【0192】
なお、二次転写時に転写されずに中間転写ベルト1上に残った残留トナーは、ベルトクリーニング部材220によって中間転写ベルト1から除去される。このベルトクリーニング部材220の下流側には、潤滑剤塗布装置230が配設されている。この潤滑剤塗布装置230は、固形潤滑剤と、中間転写ベルト1に摺擦して固形潤滑剤を塗布する導電性ブラシとで構成されている。前記導電性ブラシは、中間転写ベルト1に常時接触して、中間転写ベルト1に固形潤滑剤を塗布している。固形潤滑剤は、中間転写ベルト1のクリーニング性を高め、フィルミィングの発生を防止し耐久性を向上させる作用がある。
【0193】
このように、画像形成装置100Bにおいても、プリンタ本体210内に中間転写ベルト1を備えているので、表面凹凸がある紙種に対して優れた転写性を有し、長期間使用しても粒子脱離がなく高い耐久性を有すると共に優れた難燃性を有することができる。よって、画像形成装置100Bにおいても、画像形成装置100Aと同様、優れた画像形成を長期間に安定して実現することができる。
【実施例】
【0194】
以下、実施例及び比較例を示して実施形態を更に具体的に説明するが、実施形態はこれらの実施例及び比較例により限定されるものではない。
【0195】
<中間転写ベルトの作製>
[実施例1]
(基層用塗工液の調製)
まず、ポリイミド樹脂前駆体を主成分とするポリイミドワニス(商品名:U-ワニスA、宇部興産株式会社製)に、予め、ビーズミルにてN-メチル-2-ピロリドン中に分散させたカーボンブラック(商品名:SpecialBlack4、エボニックデグサ株式会社製)の分散液を、カーボンブラック含有量がポリアミック酸の固形分に対して17質量%になるように調合し、よく攪拌混合して、基層用塗工液Aを調製した。
【0196】
(ポリイミド基層ベルトの作製)
次に、外径500mm、長さ400mmの外面をブラスト処理にて粗面化した金属製の円筒状支持体を型として用い、該型をロールコート塗工装置に取り付けた。次いで、前記基層用塗工液をパンに流し込み、塗布ローラの回転速度40mm/secで基層用塗工液を汲み上げ、規制ローラと塗布ローラのギャップを0.6mmとして、塗布ローラ上の基層用塗工液の厚みを制御した。その後、円筒状支持体の回転速度を35mm/secに制御して塗布ローラに近づけ、前記塗布ローラとのギャップを0.4mmとして塗布ローラ上の基層用塗工液を均一に円筒状支持体上に転写塗布した後、回転を維持しながら熱風循環乾燥機に投入して、110℃まで徐々に昇温して30分間加熱、更に昇温して200℃で30分間加熱し、回転を停止した。その後、これを高温処理の可能な加熱炉(焼成炉)に導入し、段階的に320℃まで昇温して60分間加熱処理(焼成)した。充分に冷却し、平均厚み60μmのポリイミド基層ベルトを作製した。
【0197】
(弾性層の形成)
表1に示す各成分を同表に示す割合で配合し混練することで、ゴム組成物を作成した。
【0198】
【0199】
表1に示す各成分の製造元、商品名は、以下の通りである。
・アクリルゴム(日本ゼオン株式会社製、NipolAR12)
・ステアリン酸(日油株式会社製、ビーズステアリン酸つばき)
・ホスフィン酸アルミニウム(クラリアントケミカルズ株式会社製 Exolit OP935)
・架橋剤:ヘキサメチレンジアミンカーバメイト(デュポン ダウ エラストマー・ジャパン株式会社製、 Diak.No1)
・架橋促進剤:70%1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7と二塩基酸との塩、30%アモルファスシリカ(Safic alcan株式会社製、VULCOFAC ACT55)
【0200】
次に、このようにして得られたゴム組成物を有機溶剤(MIBK:メチルイソブチルケトン)に溶かして固形分35wt%のゴム溶液Aを作製した。この作製したゴム溶液(ゴム塗料)Aを先に作製したポリイミド基層が形成された円筒型を回転させながらポリイミド基層上に、ノズルよりゴム溶液Aを連続的に吐出しながら円筒型の軸方法に移動させ螺旋状に塗工した。塗布量としては中央部の最終的な層厚が400μmになるような液量の条件とした。その後、ゴム溶液Aが塗工された円筒型をそのまま回転しながら熱風循環乾燥機に投入して、昇温速度4℃/分で90℃まで昇温して30分加熱した。
【0201】
その後、アクリル粒子(積水化成品工業株式会社製、「テクポリマーSSX-102」、平均粒径2.0μm)を、球状粒子として、
図7の方法を用いて、加熱したゴム組成物の上にまんべんなく表面にまぶし、ポリウレタンゴムブレードの押し付け部材を、押圧力100mN/cmで押し当てて弾性層に固定化した。続いて、再び熱風循環乾燥機に投入して、昇温速度4℃/分で170℃まで昇温して60分加熱処理し、中間転写ベルトAを得た。
【0202】
[実施例2]
実施例1において、球状粒子として、アクリル粒子に無電解めっき法にてニッケルを被覆させたニッケルめっき粒子を用いたこと以外は、実施例1と同様にして行い、中間転写ベルトBを得た。なお、ニッケルの厚みはクライオミクロトームで断面カットし、その断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、5.0nmであった。
【0203】
[実施例3]
実施例1において、球状粒子として、アクリル粒子に無電解めっき法にてニッケルを被覆させたニッケルめっき粒子を用い、弾性層の形成する際に用いるゴム組成物に水酸化アルミニウム(「BF013」、日軽金株式会社製)を30質量部入れたこと以外は、実施例1と同様にして行い、中間転写ベルトCを得た。ゴム組成物の組成を表2に示す。
【0204】
【0205】
[実施例4]
実施例1において、球状粒子として、アクリル粒子に無電解めっき法にてニッケルを被覆させたニッケルめっき粒子を用い、弾性層の形成する際に用いるゴム組成物に水酸化マグネシウム(「キスマ5A」、協和化学工業株式会社)を30質量部入れたこと以外は、実施例1と同様にして行い、中間転写ベルトDを得た。ゴム組成物の組成を表3に示す。
【0206】
【0207】
[実施例5]
実施例1において、球状粒子として、アクリル粒子に無電解めっき法にてニッケルを被覆させたニッケルめっき粒子を用い、弾性層の形成する際に用いるゴム組成物にメラミンシアヌレート(「MC-6000」、日産化学株式会社製)を30質量部入れたこと以外は、実施例1と同様にして行い、中間転写ベルトEを得た。ゴム組成物の組成を表4に示す。
【0208】
【0209】
[実施例6]
実施例1において、弾性層の形成する際に用いるゴム組成物に、ホスフィン酸アルミニウムに代えて、環状フェノキシホスファゼン化合物(大塚化学株式会社製、SPS-100)を30質量部添加し、ゴム組成物の上に固定する球状粒子として、アクリル粒子に代えて、メラミン樹脂粒子(「エポスターS12」、日本触媒株式会社、平均粒径1.2μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして行い、中間転写ベルトFを得た。ゴム組成物の組成を表5に示す。
【0210】
【0211】
[実施例7]
実施例6において、環状フェノキシホスファゼン化合物の添加量を50質量部に変更したこと以外は、実施例6と同様にして行い、中間転写ベルトGを得た。ゴム組成物の組成を表6に示す。
【0212】
【0213】
[実施例8]
実施例6において、弾性層の形成する際に用いるゴム組成物にメラミンシアヌレート(「STABIACE MC-5S」、堺化学工業株式会社)を20質量部さらに添加したこと以外は、実施例6と同様にして行い、中間転写ベルトHを得た。ゴム組成物の組成を表7に示す。
【0214】
【0215】
[実施例9]
実施例6において、弾性層の形成する際に用いるゴム組成物に水酸化アルミニウム(「BF-013」、日本軽金属株式会社)を20質量部さらに添加したこと以外は、実施例6と同様にして行い、中間転写ベルトIを得た。ゴム組成物の組成を表8に示す。
【0216】
【0217】
[実施例10]
実施例1において、ホスフィン酸アルミニウムの添加量を15質量部に変更して、環状フェノキシホスファゼン化合物(大塚化学株式会社製、SPS-100)を15質量部さらに添加したこと以外は、実施例1と同様にして行い、中間転写ベルトJを得た。ゴム組成物の組成を表8に示す。
【0218】
【0219】
[比較例1]
実施例1において、球状粒子として、アクリル粒子に無電解めっき法にてニッケルを被覆させたニッケルめっき粒子を用いた。そして、弾性層の形成する際に用いるゴム組成物にホスフィン酸アルミニウムに代えて、赤リン(燐化学工業株式会社製、ノーバエクセル140F)を10質量部及び水酸化マグネシウム(「キスマ5A」、協和化学工業株式会社)を30質量部入れた。それ以外は、実施例1と同様にして行い、中間転写ベルトaを得た。得られた中間転写ベルトaの特性を、実施例1と同様にして評価した。ゴム組成物の組成を表10に示す。
【0220】
【0221】
[比較例2]
表11に示す各成分を同表に示す割合で配合し、5分間スクリュー混合した後、真空乾燥機内で脱泡することで、塗料を作製した。
【0222】
【0223】
表11に示す各成分の製造元、商品名は、以下の通りである。
・プレポリマー(コロネート4095、東ソー株式会社製)
・ホスフィン酸アルミニウム(クラリアントケミカルズ株式会社製、 Exolit OP935)
・水酸化アルミニウム(日軽金株式会社製、BF013)
・触媒(サンアプロ株式会社製、SA-1)
【0224】
次に、前記塗料を、先に作製したポリイミド基層が形成された円筒状支持体を回転させながらポリイミド基層上に、ノズルよりゴム溶液を連続的に吐出しながら円筒状支持体の軸方向に移動させ螺旋状に塗布した。塗布量としては最終的な弾性層の平均厚みが400μmになるようなゴム溶液量の条件とした。その後、ゴム溶液が塗布された円筒状支持体をそのまま回転しながら熱風循環乾燥機に投入し、120℃で100分間加熱した。その後は、実施例1と同様にして行い、中間転写ベルトbを得た。
【0225】
[比較例3]
実施例6において、環状フェノキシホスファゼン化合物に代えて、縮合リン酸エステル(「CR-733S」、大八化学工業株式会社製)を30質量部添加したこと以外は、実施例6と同様にして行い、中間転写ベルトcを得た。ゴム組成物の組成を表12に示す。
【0226】
【0227】
[比較例4]
比較例3において、弾性層の形成する際に用いるゴム組成物にメラミンシアヌレート(「STABIACE MC-5S」、堺化学工業株式会社)を20質量部さらに添加したこと以外は、実施例6と同様にして行い、中間転写ベルトdを得た。ゴム組成物の組成を表13に示す。
【0228】
【0229】
[比較例5]
比較例3において、弾性層の形成する際に用いるゴム組成物に水酸化アルミニウム(BF-013、日本軽金属株式会社製)を20質量部さらに添加したこと以外は、実施例6と同様にして行い、中間転写ベルトeを得た。ゴム組成物の組成を表14に示す。
【0230】
【0231】
<特性の評価>
作製したそれぞれの中間転写ベルトA~Gの特性を評価した。
【0232】
[転写性の評価]
上記各実施例、比較例の中間転写ベルトA~Gを、
図9に示すような画像形成装置(RICOH、MP C6502、株式会社リコー製)に搭載し、各画像形成装置を用いて、用紙エッジで粒子が脱落しやすい厚紙のコート紙をA4サイズで1万枚通紙した。その後、NEW-DV450のA3サイズ紙で通紙し、A4幅の縦スジ白抜け画像の発生の有無を確認し、下記基準で評価した。なお、厚紙のコート紙は、実施例1~5と比較例1及び2では、NEW-DV450(北越コーポーレーション株式会社)を使用し、実施例6~9と比較例3~5では、OKトップコート+(王子製紙株式会社)を使用した。白抜けが無い場合(○印の場合)には、転写性が極めて良好と評価し、うっすら白抜けがあるが、実使用可能レベルの場合(△印の場合)には、転写性が良好と評価し、白抜けがあり、実使用可能レベルではない場合(×印の場合)には、使用不可と評価した。
[評価基準]
○:白抜けが無い
△:うっすら白抜けがあるが、実使用可能レベル
×:白抜けがあり、実使用可能レベルではない
【0233】
[耐久性の評価]
上記の、転写性の評価で使用した中間転写ベルトA~Gのうちの、A4サイズ紙のエッジ部接触箇所(エッジ傷発生部)に該当する部分の表面をレーザ顕微鏡(オリンパス株式会社製、LEXT OLS4100)で観察し、球状粒子の脱落の有無を確認し、耐久性を評価した。
○:球状粒子の脱落がない
△:球状粒子の脱落が一部発生したが、製品としては問題ない
×:球状粒子の脱落が多数発生し、製品として問題がある
【0234】
[難燃性の評価]
上記各実施例、比較例の中間転写ベルトA~Gを、各々難燃性試験用に、長さ200mm、幅50mmの試験片を5片切り出し、UL94-VTM試験(薄手材料垂直燃焼試験)に準拠して難燃性試験を行って評価した。UL94-VTM試験は、中間転写ベルトA~Gを円筒状に巻き、クランプに垂直に取付け、20mm炎による3秒間接炎を2回行い、その燃焼挙動により、VTM-0、VTM-1、NOTの判定を行う。難燃性は、VTM-0(V-0)、VTM-1(V-1)、NOTの順に表され、VTM-1以上(VTM-0又はVTM-1)は非常に良好であるが、NOTは実用不可レベルである。
【0235】
上記各実施例、比較例の中間転写ベルトA~Gの転写性の評価、球状粒子の脱落の有無の確認及び難燃性の評価結果を表15に示す。
【0236】
【0237】
表15より、一方、比較例1~5で得られた中間転写ベルトは、少なくとも表面性の粗い転写媒体への転写の際の異常画像(白抜け)が発生し、球状粒子の脱落も生じたことが確認された。また、比較例2~5で得られた中間転写ベルトでは、難燃性も実用不可レベルであった。
【0238】
これに対し、実施例1~10で得られた中間転写ベルトは、表面性の粗い転写媒体への転写の際の異常画像(白抜け)の発生がなく、球状粒子の脱落もなく、優れた難燃性を有することが確認された。よって、実施例1~10の中間転写ベルトは、転写性及び難燃性が良好であり、粒子脱離を抑制することができることが確認された。これは、球状粒子をニッケルめっき粒子にすることにより、粒子脱離を抑制することができ、アクリルゴムとホスフィン酸アルミニウム又はホスファゼン化合物との組合せにより、さらに球状粒子の脱離を抑制すると共に難燃性を確保することができるといえる。また、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム又はメラミンシアヌレートの併用により、粒子の脱離を抑制して画像に白抜けが生じることを低減しつつ、難燃性を向上させることができるといえる。
【0239】
よって、一実施形態に係る中間転写ベルトは、転写性に優れ、用紙エッジでも粒子が脱離しない高い耐久性を有することができると共に、高い難燃性を有することができ、特にフルカラー画像形成に好適な中間転写方式の画像形成装置を提供することができる。
【0240】
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更等を行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0241】
1 中間転写ベルト
10 基層
20 弾性層
30 球状粒子
100A、100B 画像形成装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0242】