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特許7424315液晶配向処理剤、液晶配向膜及び液晶表示素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】液晶配向処理剤、液晶配向膜及び液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20240123BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
G02F1/1337 525
C08G73/10
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020563324
(86)(22)【出願日】2019-12-24
(86)【国際出願番号】 JP2019050692
(87)【国際公開番号】W WO2020138112
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2018246262
(32)【優先日】2018-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000095
【氏名又は名称】弁理士法人T.S.パートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100082887
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 利春
(74)【代理人】
【識別番号】100181331
【弁理士】
【氏名又は名称】金 鎭文
(74)【代理人】
【識別番号】100183597
【弁理士】
【氏名又は名称】比企野 健
(74)【代理人】
【識別番号】100161997
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 大一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100090918
【弁理士】
【氏名又は名称】泉名 謙治
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 加名子
(72)【発明者】
【氏名】片山 雅章
(72)【発明者】
【氏名】高橋 真文
(72)【発明者】
【氏名】保坂 和義
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-186301(JP,A)
【文献】特開2014-112192(JP,A)
【文献】特開2016-118573(JP,A)
【文献】特表2014-527555(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
C08G 73/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)成分及び(B)成分を含有する液晶配向処理剤。
(A)成分:分子内にチオール基を3個以上有する化合物(但し、チオール基を有するポリオルガノシロキサンを除く)
(B)成分:下記式[1]で表される構造を有するジアミンを含有するジアミン成分とテトラカルボン酸成分との反応で得られるポリイミド前駆体、及び該ポリイミド前駆体をイミド化したポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体。
【化1】
(X、Xは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-NH-、-N(CH)-、-CHO-、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH)-、-N(CH)CO-、-COO-、及び-OCO-からなる群から選ばれる少なくとも1種を示す。Xは炭素数1~18のアルキレン基、又はベンゼン環、シクロヘキサン環及び複素環から選ばれる少なくとも1種の環状基を有する炭素数6~24の有機基を示し、これら環状基上の任意の水素原子は、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシル基、炭素数1~3のフッ素含有アルキル基、炭素数1~3のフッ素含有アルコキシル基又はフッ素原子で置換されていてもよい。Xは下記式[1-a]~式[1-g]からなる群から選ばれる少
なくとも1種を示す。)
【化2】
(Xは、水素原子又はベンゼン環を示す。Xは単結合、ベンゼン環、シクロへキサン環、及び複素環からなる群から選ばれる少なくとも1種を示す。Xは炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のフッ素含有アルキル基、炭素数1~18のアルコキシル基、又は炭素数1~18のフッ素含有アルコキシル基を示す。)
【請求項2】
前記(A)成分が、1,2,3-プロパントリチオール、1,2,4-ブタントリチオール、ペンタエリスリトールトリス(3-メルカプトプロピオネート)、1,3,5-ベンゼントリチオール、2,4,6-メシチレントリチオール、ネオペンタンテトラチオール、2,4,6-トルエントリチオール、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリストールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H.3H.5H)-トリオン、ネオペンタンテトラチオール、2,2’-ビス(メルカプトメチル)-1,3-プロパンジチオール、ペンタエリトリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、又はジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の液晶配向処理剤。
【請求項3】
前記(A)成分が、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリストールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H.3H.5H)-トリオン又はネオペンタンテトラチオール、ペンタエリトリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、又はジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)である請求項1に記載の液晶配向処理剤。
【請求項4】
前記(A)成分を、前記重合体100質量部に対して、0.1~30質量部含有する請求項1~3のいずれか一項に記載の液晶配向処理剤。
【請求項5】
前記式[1]で表される構造を有するジアミンが、下記式[1a]で表されるジアミンである請求項1~4のいずれか一項に記載の液晶配向処理剤。
【化3】
(Xは前記式[1]で表される構造を示す。nは1~4の整数を示す。)
【請求項6】
前記式[1a]で表されるジアミンが、下記式[1a-1]~式[1a-9]のいずれかのジアミンである請求項5に記載の液晶配向処理剤。
【化4】
【化5】
(nは、2~12の整数を示す。)
【請求項7】
前記式[1a]で表されるジアミンが、下記式B1又は式B2のジアミンである請求項5に記載の液晶配向処理剤。
【化6】
【請求項8】
記式[1]で表される構造を有するジアミンを、前記ジアミン成分全体に対して1~50モル%含有する請求項1~7のいずれか一項に記載の液晶配向処理剤。
【請求項9】
エポキシ基、イソシアネート基、オキセタン基及びシクロカーボネート基から選ばれる架橋性化合物、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルキル基及び炭素数1~3のアルコキシアルキル基から選ばれる架橋性化合物、又は重合性不飽和結合基を有する架橋性化合物から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1~8のいずれか一項に記載の液晶配向処理剤。
【請求項10】
前記架橋性化合物が、下式K1又はK2で表される化合物である請求項9に記載の液晶配向処理剤。
【化7】
【請求項11】
前記架橋性化合物を、前記重合体100質量部に対して、0.1~100質量部含有する請求項9又は10に記載の液晶配向処理剤。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の液晶配向処理剤から得られる液晶配向膜。
【請求項13】
請求項12に記載の液晶配向膜を有する液晶表示素子。
【請求項14】
モバイル機器である請求項13に記載の液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子の製造に用いられる液晶配向処理剤、該液晶配向処理剤から得られる液晶配向膜、及び該液晶配向膜を使用した液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子材料など有機材料からなる膜は、形成の容易さや絶縁性能などが着目され、電子デバイス中の層間絶縁膜や保護膜等として広く用いられている。なかでも、表示デバイスとして良く知られた液晶表示素子では、ポリイミドからなる有機膜が液晶配向膜として使用されている。
液晶配向膜は、液晶の配向状態を制御する目的で使用されるものである。しかしながら、液晶表示素子の高精細化に伴い、液晶表示素子のコントラスト低下や長期使用に伴う表示不良の抑制が求められている。
【0003】
これらに対して、ポリイミドを用いた液晶配向膜において、液晶配向性を高め、液晶表示画面周辺部に表示不良が生じにくくする手法として、アルコキシシラン化合物を添加した液晶配向処理剤を用いた液晶配向膜が提案されている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本特開昭61-171762号公報
【文献】日本特開平11-119226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、スマートフォンや携帯電話などのモバイル用途向けに、液晶表示素子が用いられている。これら用途では、できるだけ広い表示面を確保するため、液晶表示素子の基板間を接着させるために用いるシール剤の幅を、従来に比べて狭くする必要がある。更に前記理由により、シール剤の描画位置を、シール剤との接着性が弱い液晶配向膜の端部に接した位置、或いは液晶配向膜の上部にすることも求められている。
そのため、近年では、従来に比べて、液晶表示素子の基板間の接着が弱い状況となっている。更に、このような場合、高温高湿条件下での使用により、シール剤と液晶配向膜との間から水が混入しやすくなり、液晶表示素子の額縁付近での表示ムラや素子内での気泡の発生、更には、素子の剥がれが起こってしまう。
【0006】
この問題に対して、液晶配向膜とシール剤との密着性を高める手法として、液晶配向処理剤にアルコキシラン化合物を添加する手法がある。しかし、アルコキシシラン化合物を液晶配向処理剤中に添加した場合、シール剤と液晶配向膜との接着性を高めることができるが、液晶配向処理剤の保存中にアルコキシ化合物中のアルコキシ基の縮合反応が進行し、液晶配向処理剤の粘度上昇やゲル化物の発生など、液晶配向処理剤の保存安定性が悪くなる問題がある。
【0007】
本発明は、基板間の接着性(密着性ともいう。)が高く、更には、長時間、高温高湿に曝される環境においても、液晶表示素子内の気泡の発生や素子の剥がれを抑制できる液晶配向膜が得られる液晶配向処理剤を提供することを目的とする。加えて、上記の液晶配向処理剤から得られる液晶配向膜、及び該液晶配向膜を有する液晶表示素子を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記の目的を達成するため鋭意研究を進めた結果、以下の要旨を有する本発明を完成するに至った。
即ち、下記(A)成分及び(B)成分を含有する液晶配向処理剤である。
(A)成分:分子内にチオール基を3個以上有する化合物(特定化合物ともいう。)。
(B)成分:下記式[1]の構造(特定構造ともいう。)を有するジアミンを含有するジアミン成分とテトラカルボン酸成分との反応で得られるポリイミド前駆体、及び該ポリイミド前駆体をイミド化したポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体(特定重合体ともいう。)。
【化1】
(X、Xは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-NH-、-N(CH)-、-CHO-、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH)-、-N(CH)CO-、-COO-又は-OCO-を示す。Xは炭素数1~18のアルキレン基、又はベンゼン環、シクロシクロヘキサン環及び複素環から選ばれる少なくとも1種の環状基を有する炭素数6~24の有機基を示し、これら環状基上の任意の水素原子は、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシル基、炭素数1~3のフッ素含有アルキル基、炭素数1~3のフッ素含有アルコキシル基又はフッ素原子で置換されていてもよい。Xは下記式[1-a]~式[1-g]から選ばれる構造を示す。)
【化2】
(Xは,水素原子又はベンゼン環を示す。Xは単結合、ベンゼン環、シクロへキサン環又は複素環を示す。Xは炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のフッ素含有アルキル基、炭素数1~18のアルコキシル基又は炭素数1~18のフッ素含有アルコキシル基を示す。)
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、液晶表示素子の基板間の接着性が高く、更には、長時間、高温高湿に曝される環境においても、液晶表示素子内の気泡の発生や素子の剥がれを抑制できる液晶表示素子が得られる。そのため、本発明の素子は、スマートフォンや携帯電話などの液晶表示素子に用いられる。
本発明により何故に上記の優れた特性を有する液晶表示素子が得られるメカニズムは、必ずしも明らかではないが、ほぼ次のように推定される。
【0010】
特定化合物は、チオール基を有することから、それを含む液晶配向処理剤から得られる液晶配向膜は金属電極との密着性が高くなる。また、このチオール基は、紫外線や熱により、特定重合体の特定構造中のXと反応することができる。そのため、金属電極との密着性が高くなる特定化合物を、液晶配向膜のベースとなる特定重合体に化学結合させることができる。それにより、より強い密着性が得られる。
【0011】
更に、特定化合物中のチオール基と特定構造中のXは、紫外線により光反応することから、液晶表示素子作製時のシール剤の硬化処理、具体的には紫外線の照射により、シール剤中の重合性化合物の反応基と反応し、液晶配向膜とシール剤との密着性が強固なものとなる。
これらのことより、液晶配向膜を形成後、液晶配向膜と金属電極、及び液晶配向膜とシール剤との密着性が高くなり、長時間、高温高湿に曝される環境においても、液晶表示素子内の気泡の発生や素子の剥がれを抑制することができる液晶表示素子となると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
<特定化合物>
特定化合物は、分子内にチオール基を3個以上有する化合物である。
具体的には、1,2,3-プロパントリチオール、1,2,4-ブタントリチオール、ペンタエリスリトールトリス(3-メルカプトプロピオネート)、1,3,5-ベンゼントリチオール、2,4,6-メシチレントリチオール、ネオペンタンテトラチオール、2,4,6-トルエントリチオール、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリストールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H.3H.5H)-トリオン、ネオペンタンテトラチオール、2,2’-ビス(メルカプトメチル)-1,3-プロパンジチオール、ペンタエリトリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)又はジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)が挙げられる。
【0013】
なかでも、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリストールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H.3H.5H)-トリオン又はネオペンタンテトラチオール、ペンタエリトリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)又はジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)が好ましい。
【0014】
特定化合物の使用割合は、液晶表示素子の液晶配向膜と金属電極との密着性の点から、特定重合体100質量部に対して、0.1~30質量部が好ましい。より好ましいのは、0.5~20質量部である。最も好ましいのは、1~15質量部である。また、特定化合物は、各特性に応じて、1種類又は2種類以上を混合して使用することもできる。
【0015】
<特定構造>
特定構造は、前記式[1]で表される。式[1]中、X、X、X、Xは、上記に定義した通りである。なかでも、それぞれ、以下のものが好ましい。
は、単結合、-O-、-CHO-、-CONH-、-CON(CH)-又は-COO-が好ましく、より好ましくは、合成のし易さの点から、単結合、-O-、-CHO-又は-COO-である。
【0016】
は、炭素数2~12のアルキレン基、又はベンゼン環及びシクロシクロヘキサン環から選ばれる少なくとも1種の環状基を有する炭素数6~24の有機基が好ましい。より好ましいのは、合成のし易さ及び液晶表示素子の液晶配向膜とシール剤との密着性の点から、炭素数2~12のアルキレン基である。
は、単結合、-O-、-NHCO-、-N(CH)CO-又は-OCO-が好ましい。より好ましいのは、合成のし易さの点から、単結合、-O-、-NHCO-又は-OCO-である。
【0017】
は、前記式[1-a]、式[1-b]、式[1-d]又は式[1-e]が好ましい。合成のし易さ及び液晶表示素子の液晶配向膜とシール剤との密着性の点から、式[1-a]、式[1-b]又は式[1-e]がより好ましい。
【0018】
式[1]における好ましいX~Xの組み合せは、下記の表1~表3に示される。
【表1】
【0019】
【表2】
【0020】
【表3】
【0021】
~Xの組み合せは、なかでも、(1-2a)~(1-4a)、(1-6a)~(1-8a)、(1-10a)~(1-12a)、(1-14a)~(1-16a)、(1-18a)~(1-20a)、(1-22a)~(1-24a)、(1-26a)~(1-28a)、(1-30a)~(1-32a)、(1-34a)~(1-36a)、(1-38a)~(1-40a)、(1-42a)~(1-44a)又は(1-46a)~(1-48a)の組み合わせが好ましい。
【0022】
より好ましくは、(1-3a)、(1-4a)、(1-7a)、(1-8a)、(1-11a)、(1-12a)、(1-15a)、(1-16a)、(1-19a)~(1-21a)、(1-23a)、(1-24a)、(1-27a)、(1-28a)、(1-31a)~(1-33a)、(1-35a)、(1-36a)、(1-39a)、(1-40a)、(1-43a)~(1-45a)、(1-47a)又は(1-48a)の組み合わせである。
最も好ましいのは、合成のし易さ及び液晶表示素子の液晶配向膜とシール剤との密着性の点から、(1-20a)、(1-21a)、(1-28a)、(1-32a)、(1-33a)、(1-40a)、(1-44a)又は(1-45a)の組み合わせである。
【0023】
<特定重合体>
特定重合体は、特定ジアミンを含有するジアミン成分とテトラカルボン酸成分との反応で得られるポリイミド前駆体又は該ポリイミド前駆体をイミド化したポリイミドである。
ポリイミド前駆体とは、下記式[A]の構造を有する。
【化3】
【0024】
式[A]中、Rは4価の有機基を示す。Rは2価の有機基を示す。A及びAはそれぞれ、水素原子又は炭素数1~8のアルキル基を示す。A及びAはそれぞれ、水素原子、炭素数1~5のアルキル基又はアセチル基を示す。nは正の整数を示す。
ジアミン成分としては、分子内に1級又は2級のアミノ基を2個有するジアミンであり、テトラカルボン酸成分としては、テトラカルボン酸化合物、テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジハライド化合物、テトラカルボン酸ジアルキルエステル化合物又はテトラカルボン酸ジアルキルエステルジハライド化合物が挙げられる。
【0025】
ポリイミド系重合体は、下記式[B]のテトラカルボン酸二無水物と下記式[C]のジアミンとを原料とすることで、比較的簡便に得られるという理由から、下記式[D]の繰り返し単位の構造式から成るポリアミド酸又は該ポリアミド酸をイミド化させたポリイミドが好ましい。
【化4】
(R及びRは、式[A]で定義したものと同じである。)
【0026】
【化5】
(R及びRは、式[A]で定義したものと同じである。)
【0027】
また、通常の合成手法で、前記で得られた式[D]の重合体に、式[A]中のA及びAの炭素数1~8のアルキル基、及び式[A]中のA及びAの炭素数1~5のアルキル基又はアセチル基を導入することもできる。
特定構造をポリイミド系重合体に導入する方法としては、特定構造を有するジアミンを原料の一部に用いることが好ましい。特に下記式[1a]のジアミン(特定ジアミンともいう。)を用いることが好ましい。
【化6】
【0028】
Yは前記式[1]を示し、X~Xの定義及び好ましい組み合わせは、前記式[1]の通りである。
nは1~4の整数を示す。なかでも、1の整数が好ましい。
【0029】
特定ジアミンの好ましい具体例としては、下記式[1a-1]~式[1a-9]のジアミンが挙げられる。
【化7】
【0030】
【化8】
(nは、それぞれ独立して、2~12の整数を示す。)
【0031】
なかでも、液晶表示素子の液晶配向膜とシール剤との密着性の点から、式[1a-1]、式[1a-2]、式[1a-5]、式[1a-6]又は式[1a-9]のジアミンが好ましい。その際、式中のnは、それぞれ独立して、2~10の整数であることが好ましい。
【0032】
特定ジアミンの使用割合は、液晶表示素子の液晶配向膜とシール剤との密着性の点から、ジアミン成分全体に対して1~50モル%が好ましい。より好ましいのは、1~40モル%である。特に好ましいのは、5~40モル%である。また、特定ジアミンは、各特性に応じて、1種類又は2種類以上を混合して使用することもできる。
【0033】
特定重合体を作製するためのジアミン成分としては、特定ジアミン以外のジアミン(その他ジアミンともいう。)を含むこともできる。具体的には、国際公開公報WO2016/076412の34頁~38頁に記載される式[3a-1]~式[3a-5]のジアミン化合物、同公報の39頁~42頁に記載されるその他ジアミン化合物、及び同公報の42頁~44頁に記載される式[DA1]~[DA15]のジアミン化合物が挙げられる。これらジアミン成分は、各特性に応じて、1種又は2種以上を混合して使用できる。
【0034】
特定重合体を作製するためのテトラカルボン酸成分としては、特に限定されないが、具体的には、国際公開公報WO2016/076412の44頁~45頁に記載される式[4]のテトラカルボン酸二無水物、及び45頁~46頁に記載されるその他のテトラカルボン酸成分が挙げられる。これらテトラカルボン酸成分は、各特性に応じて、1種又は2種以上を混合して使用できる。
【0035】
特定重合体を合成する方法は、特に限定されない。通常、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを反応させて得られる。具体的には、国際公開公報WO2016/076412の46頁~50頁に記載される方法が挙げられる。
ジアミン成分とテトラカルボン酸成分との反応は、通常、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを含む溶媒中で行う。その際に用いる溶媒としては、生成したポリイミド前駆体が溶解するものであれば特に限定されない。
【0036】
具体的には、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド又は1,3-ジメチル-イミダゾリジノンなどが挙げられる。また、ポリイミド前駆体の溶媒溶解性が高い場合は、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン又は下記式[D1]~式[D3]の溶媒を用いることができる。
【0037】
【化9】
(D及びDは炭素数1~3のアルキル基を示す。Dは炭素数1~4のアルキル基を示す。)
【0038】
また、これらは単独で使用しても、混合して使用してもよい。更に、ポリイミド前駆体を溶解させない溶媒であっても、生成したポリイミド前駆体が析出しない範囲で、前記の溶媒に混合して使用してもよい。また、有機溶媒中の水分は重合反応を阻害し、更には、生成したポリイミド前駆体を加水分解させる原因となるので、有機溶媒は脱水乾燥させたものを用いることが好ましい。
ポリイミド前駆体の重合反応においては、ジアミン成分の合計モル数を1.0にした際のテトラカルボン酸成分の合計モル数は、0.8~1.2が好ましい。
【0039】
ポリイミドはポリイミド前駆体を閉環させて得られる。ポリイミドは、アミド酸基の閉環率(イミド化率ともいう。)は必ずしも100%である必要はなく、用途や目的に応じて任意に調製できる。なかでも、ポリイミド系重合体の溶媒への溶解性の点から、30~80%が好ましい。より好ましいのは、40~70%である。
特定重合体の分子量は、そこから得られる液晶配向膜の強度、液晶配向膜形成時の作業性及び塗膜性を考慮した場合、GPC(Gel Permeation Chromatography)法で測定した重量平均分子量で5,000~1,000,000とするのが好ましく、より好ましいのは、10,000~150,000である。
【0040】
<液晶配向処理剤>
液晶配向処理剤は、液晶配向膜を形成するための溶液であり、特定化合物、特定重合体及び溶媒を含有する溶液である。その際、特定化合物及び特定重合体には、それぞれ、2種類以上のものを用いることができる。
液晶配向処理剤中の溶媒の含有量は、液晶配向処理剤の塗布方法や目的とする膜厚を得るという観点から、適宜選択できる。なかでも、塗布により均一な液晶配向膜を形成するとい観点から、液晶配向処理剤中の溶媒の含有量は50~99.9質量%が好ましい。なかでも、60~99質量%が好ましい。より好ましいのは、65~99質量%である。
【0041】
液晶配向処理剤に用いる溶媒は、特定化合物及び特定重合体を溶解させる溶媒であれば特に限定されない。なかでも、下記の溶媒(溶媒A類ともいう。)を用いることが好ましい。
例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンなどである。なかでも、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン又はγ-ブチロラクトンが好ましい。また、これらは単独で使用しても、混合して使用してもよい。
【0042】
特定重合体の溶媒への溶解性が高い場合は、下記の溶媒(溶媒B類ともいう。)を用いることができる。
溶媒B類の具体例は、国際公開公報WO2014/171493の58頁~60頁に記載される溶媒B類が挙げられる。なかでも、1-ヘキサノール、シクロヘキサノール、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、シクロヘキサノン、シクロペンタノン又は前記式[D1]~式[D3]が好ましい。
【0043】
また、これら溶媒B類を用いる際、液晶配向処理剤の塗布性を改善する目的に、前記溶媒A類のN-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン又はγ-ブチロラクトンを併用して用いることが好ましい。
これら溶媒B類は、液晶配向処理剤を塗布する際の液晶配向膜の塗膜性や表面平滑性を高めることができるため、重合体にポリイミド前駆体、ポリイミド、ポリアミド又はポリエステルを用いた場合、前記溶媒A類と併用して用いることが好ましい。その際、溶媒B類は、液晶配向処理剤に含まれる溶媒全体の1~99質量%が好ましい。なかでも、10~99質量%が好ましく、より好ましくは、20~95質量%である。
【0044】
液晶配向処理剤には、液晶配向膜の膜強度を高めるために、エポキシ基、イソシアネート基、オキセタン基、シクロカーボネート基、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基又は低級アルコキシアルキル基を有する化合物(総称して架橋性化合物ともいう。)を導入することが好ましい。その際、上記の基は、化合物中に2個以上有する必要がある。
すなわち、液晶配向処理剤は、エポキシ基、イソシアネート基、オキセタン基、シクロカーボネート基、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルキル基、炭素数1~3のアルコキシアルキル基、又は重合性不飽和結合基から選ばれる基を2つ以上有する化合物からなる少なくとも1種の架橋性化合物を含むことが好ましい。
エポキシ基又はイソシアネート基を有する架橋性化合物の具体例は、国際公開公報WO2014/171493の63頁~64頁に記載されるエポキシ基又はイソシアネート基を有する架橋性化合物が挙げられる。
【0045】
オキセタン基を有する架橋性化合物の具体例は、国際公開公報WO2011/132751の58頁~59頁に掲載される式[4a]~式[4k]の架橋性化合物が挙げられる。
シクロカーボネート基を有する架橋性化合物の具体例は、国際公開公報WO2012/014898の76頁~82頁に掲載される式[5-1]~式[5-42]の架橋性化合物が挙げられる。
【0046】
ヒドロキシル基、ヒドロキシアルキル基及び低級アルコキシアルキル基を有する架橋性化合物の具体例は、国際公開公報2014/171493の65頁~66頁に記載されるメラミン誘導体又はベンゾグアナミン誘導体、及び国際公開公報WO2011/132751の62頁~66頁に掲載される、式[6-1]~式[6-48]の架橋性化合物が挙げられる。
【0047】
液晶配向処理剤における架橋性化合物の含有量は、すべての重合体成分100質量部に対して、0.1~100質量部が好ましい。架橋反応が進行し、目的の効果を発現させるためには、すべての重合体成分100質量部に対して0.1~50質量部がより好ましく、最も好ましいのは、1~30質量部である。
液晶配向処理剤には、液晶配向処理剤を塗布した際の液晶配向膜の膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる化合物を用いることができる。更に、液晶配向膜と電極基板との密着性を向上させる化合物などを用いることもできる。
【0048】
液晶配向膜の膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる化合物としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、又はノ二オン系界面活性剤などが挙げられる。具体的には、国際公開公報WO2014/171493の67頁に記載される界面活性剤が挙げられる。また、その使用割合は、液晶配向処理剤に含有されるすべての重合体成分100質量部に対して、0.01~2質量部が好ましい。より好ましいのは、0.01~1質量部である。
【0049】
液晶配向膜と電極基板との密着性を向上させる化合物の具体例は、国際公開公報WO2014/171493の67頁~69頁に記載される化合物が挙げられる。また、その使用割合は、液晶配向処理剤に含有されるすべての重合体成分100質量部に対して、0.1~30質量部が好ましい。より好ましいのは、1~20質量部である。
液晶配向処理剤には、前記以外の化合物の他に、液晶配向膜の誘電率や導電性などの電気特性を変化させる目的の誘電体や導電物質を添加してもよい。
【0050】
<液晶配向膜・液晶表示素子>
液晶配向処理剤は、基板上に塗布、焼成した後、ラビング処理や光照射などで配向処理をして、液晶配向膜として用いることができる。また、垂直配向用途などの場合では配向処理なしでも液晶配向膜として用いることができる。
この際に用いる基板としては、透明性の高い基板であれば特に限定されず、ガラス基板の他、アクリル基板、ポリカーボネート基板、PET(ポリエチレンテレフタレート)基板などのプラスチック基板、更には、それらのフィルムを用いることができる。また、プロセスの簡素化の観点からは、液晶駆動のためのITO電極、IZO(Indium Zinc Oxide)電極及びIGZO(Indium Gallium Zinc Oxide)電極などの金属電極、及び有機導電膜などが形成された基板を用いることが好ましい。また、反射型の液晶表示素子とする場合には、片側の基板のみにならば、シリコンウエハやアルミニウムなどの金属や誘電体多層膜が形成された基板を使用できる。
【0051】
液晶配向処理剤の塗布方法は、特に限定されないが、工業的には、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷又はインクジェット法などで行う方法が一般的である。その他の塗布方法としては、ディップ法、ロールコータ法、スリットコータ法、スピンナー法又はスプレー法などがあり、目的に応じてこれらを用いてもよい。
液晶配向処理剤を基板上に塗布した後は、ホットプレート、熱循環型オーブン又はIR(赤外線)型オーブンなどの加熱手段により、液晶配向処理剤に用いる溶媒に応じて、30~300℃、好ましくは30~250℃の温度で溶媒を蒸発させて液晶配向膜とすることができる。
【0052】
焼成後の液晶配向膜の厚みは、厚すぎると液晶表示素子の消費電力の面で不利となり、薄すぎると液晶表示素子の信頼性が低下する場合があるので、好ましくは5~300nm、より好ましくは10~200nmである。
液晶を水平配向や傾斜配向させる場合は、焼成後の液晶配向膜をラビング又は偏光紫外線照射などで処理する。
液晶表示素子に用いる液晶は、特に限定されないが、例えば、ネマチック液晶、スメクチック液晶又はコレステリック液晶を用いることができる。その際、液晶表示素子の方式に応じて、正又は負の誘電異方性を有する液晶を選択できる。また、液晶中に二色性染料を溶解させてゲストホスト型の液晶表示素子とすることもできる。
【0053】
液晶の注入方法は、特に限定されないが、例えば、次の方法が挙げられる。即ち、液晶配向膜が形成された一対の基板を用意し、片側の基板の4片を、一部分を除いてシール剤を塗布し、その後、液晶配向膜面が内側になるようにして、もう片側の基板を貼り合わせた空セルを作製する。そして、シール剤が塗布されていない場所から液晶を減圧注入して、液晶注入セルを得る方法が挙げられる。更に、液晶配向膜が形成された一対の基板を用意し、片側の基板の上にODF(One Drop Filling)法やインクジェット法などで、液晶を滴下し、その後、もう片側の基板を貼り合わせて、液晶注入セルを得る方法も挙げられる。
【0054】
液晶表示素子のギャップ制御の方法は、特に限定されないが、例えば、液晶中に目的とする大きさのスペーサーを導入する方法、目的とする大きさのカラムスペーサーを有する基板上に塗布する方法、目的とする大きさのカラムスペーサーを含む液晶を用いる方法などが挙げられる。
液晶表示素子のギャップの大きさは、1~100μmが好ましい。より好ましいのは、1~50μmである。特に好ましいのは、2~30μmである。ギャップが小さすぎると、液晶表示素子のコントラストが低下し、大きすぎると、素子の駆動電圧が高くなる。
【実施例
【0055】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明するが、これらに限定されるものではない。以下で用いる略語は下記の通りである。
「特定化合物」
A1:カレンズMTPE1(昭和電工社製)/ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)
A2:DPMP(SC有機化学社製)/ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)
【0056】
「チオール基含有化合物」
a1:カレンズMTBD1(昭和電工社製)/1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン
【0057】
<特定ジアミン>
【化10】
【0058】
<その他ジアミン>
【化11】
【0059】
<テトラカルボン酸成分>
【化12】
【0060】
「架橋性化合物」
【化13】
【0061】
「溶媒」
NMP:N-メチル-2-ピロリドン、 NEP:N-エチル-2-ピロリドン
BCS:エチレングリコールモノブチルエーテル
PB:プロピレングリコールモノブチルエーテル
【0062】
「ポリイミド系重合体の分子量測定」
常温ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置(GPC-101)(昭和電工社製)、カラム(KD-803,KD-805)(Shodex社製)を用いて、以下のようにして測定した。
カラム温度:50℃
溶離液:N,N’-ジメチルホルムアミド(添加剤として、臭化リチウム-水和物(LiBr・HO)が30mmol/L(リットル)、リン酸・無水結晶(o-リン酸)が30mmol/L、テトラヒドロフラン(THF)が10ml/L)
流速:1.0ml/分
検量線作成用標準サンプル:TSK 標準ポリエチレンオキサイド(分子量;約900,000、150,000、100,000及び30,000)(東ソー社製)及びポリエチレングリコール(分子量;約12,000、4,000及び1,000)(ポリマーラボラトリー社製)。
【0063】
「イミド化率の測定」
ポリイミド粉末20mgをNMR(核磁気共鳴)サンプル管(NMRサンプリングチューブスタンダード,φ5(草野科学社製))に入れ、重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO-d6,0.05質量%TMS(テトラメチルシラン)混合品)(0.53ml)を添加し、超音波をかけて完全に溶解させた。この溶液をNMR測定機(JNW-ECA500)(日本電子データム社製)にて500MHzのプロトンNMRを測定した。イミド化率は、イミド化前後で変化しない構造に由来するプロトンを基準プロトンとして決め、このプロトンのピーク積算値と、9.5ppm~10.0ppm付近に現れるアミド酸のNH基に由来するプロトンピーク積算値とを用い以下の式によって求めた。
イミド化率(%)=(1-α・x/y)×100
(xはアミド酸のNH基由来のプロトンピーク積算値、yは基準プロトンのピーク積算値、αはポリアミド酸(イミド化率が0%)の場合におけるアミド酸のNH基プロトン1個に対する基準プロトンの個数割合である。)
【0064】
「ポリイミド系重合体の合成」
<合成例1>
D1(2.20g,11.2mmol)、B1(0.61g,2.31mmol)、C1(0.25g,2.31mmol)及びC2(1.99g,6.95mmol)をNMP(15.1g)中で混合し、25℃で8時間反応させ、樹脂固形分濃度25質量%のポリアミド酸溶液(1)を得た。このポリアミド酸の数平均分子量(Mnともいう。)は26,300、重量平均分子量(Mwともいう。)は80,800であった。
【0065】
<合成例2>
D2(1.05g,4.20mmol)、B1(0.57g,2.16mmol)、C1(0.23g,2.13mmol)及びC2(4.96g,17.3mmol)をNMP(20.3g)中で混合し、60℃で4時間反応させた後、D1(3.30g,16.8mmol)とNMP(10.1g)を加え、40℃で6時間反応させ、樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液(2)を得た。このポリアミド酸のMnは25,900、Mwは79,300であった。
【0066】
<合成例3>
合成例2で得られたポリアミド酸溶液(2)(20.0g)にNMPを加え6質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(2.40g)及びピリジン(1.85g)を加え、60℃で4時間反応させた。この反応溶液をメタノール(500ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥してポリイミド粉末(3)を得た。このポリイミドのイミド化率は58%であり、Mnは24,100、Mwは62,100であった。
【0067】
<合成例4>
D2(0.30g,1.20mmol)、B2(0.43g,1.21mmol)、C1(0.53g,4.90mmol)及びC2(1.75g,6.11mmol)をNMP(10.2g)中で混合し、60℃で4時間反応させた後、D1(2.10g,10.7mmol)とNMP(5.12g)を加え、40℃で6時間反応させ、樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液(4)を得た。このポリアミド酸のMnは23,200、Mwは73,700であった。
【0068】
<合成例5>
D2(1.96g,7.83mmol)、B1(1.60g,6.05mmol)、C1(0.44g,4.07mmol)及びC3(3.83g,10.1mmol)をNMP(20.2g)中で混合し、80℃で4時間反応させた後、D1(2.30g,11.7mmol)とNMP(10.1g)を加え、40℃で6時間反応させ、樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液(5)を得た。このポリアミド酸のMnは21,800、Mwは66,400であった。
【0069】
<合成例6>
合成例5で得られたポリアミド酸溶液(5)(20.0g)にNMPを加え6質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(2.50g)及びピリジン(1.90g)を加え、80℃で4時間反応させた。この反応溶液をメタノール(500ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥してポリイミド粉末(6)を得た。このポリイミドのイミド化率は55%であり、Mnは19,100、Mwは46,300であった。
【0070】
<合成例7>
D2(1.11g,4.44mmol)、B2(1.61g,4.54mmol)、C1(0.62g,5.73mmol)及びC4(0.56g,1.14mmol)をNMP(10.4g)中で混合し、80℃で6時間反応させた後、D1(1.30g,6.63mmol)とNMP(5.20g)を加え、40℃で6時間反応させ、樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液(7)を得た。このポリアミド酸のMnは20,900、Mwは64,800であった。
【0071】
<合成例8>
D3(2.10g,9.37mmol)、B1(0.77g,2.91mmol)、B2(0.34g,0.96mmol)、C1(0.10g,0.92mmol)及びC3(1.84g,4.83mmol)をNMP(15.4g)中で混合し、40℃で6時間反応させ、樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液(8)を得た。このポリアミド酸のMnは19,100、Mwは61,900であった。
【0072】
<合成例9>
D3(2.50g,11.2mmol)、B1(0.91g,3.44mmol)、C1(0.62g,5.73mmol)及びC4(1.13g,2.29mmol)をNMP(15.5g)中で混合し、40℃で6時間反応させ、樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液(9)を得た。このポリアミド酸のMnは19,800、Mwは63,900であった。
【0073】
<合成例10>
窒素雰囲気下、B1(0.51g,1.93mmol)、C1(0.31g,2.87mmol)、C2(1.39g,4.85mmol)、ピリジン(1.88g)及びNMP(15.1g)を加え、撹拌して溶解させ、D4(2.80g,9.43mmol)を加え、15℃で15時間反応させた。その後、アクリロイルクロリド(0.04g)を加え、15℃で4時間反応させた。この反応溶液を水(500g)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をイソプロピルアルコールで洗浄し、100℃で減圧乾燥してポリアミド酸アルキルエステル粉末(10)を得た。このポリアミド酸アルキルエステルのMnは18,500、Mwは40,100であった。
【0074】
<合成例11>
D1(2.40g,12.2mmol)、C1(0.55g,5.09mmol)及びC2(2.17g,7.58mmol)をNMP(15.3g)中で混合し、25℃で8時間反応させ、樹脂固形分濃度25質量%のポリアミド酸溶液(11)を得た。このポリアミド酸のMnは28,200、Mwは84,200であった。
【0075】
<合成例12>
D2(2.13g,8.51mmol)、C1(1.18g,10.9mmol)及びC3(4.16g,10.9mmol)をNMP(20.0g)中で混合し、80℃で4時間反応させた後、D1(2.50g,12.7mmol)とNMP(9.97g)を加え、40℃で6時間反応させ、樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液(12)を得た。このポリアミド酸のMnは23,100、Mwは70,100であった。
【0076】
合成例1~11で得られたポリイミド系重合体を表4に示す。
【表4】
*1:ポリアミド酸。 *2:ポリアミド酸アルキルエステル。
【0077】
「液晶配向処理剤の製造」
下記する実施例1~14及び比較例1~8では、液晶配向処理剤の製造例を記載する。また、この液晶配向処理剤は、評価のためにも使用される。
得られた液晶配向処理剤を表5~表7に示す。
【0078】
「液晶配向処理剤の保存安定性試験」
実施例及び比較例で得られた液晶配向処理剤を用いて、保存安定性試験を行った。具体的には、液晶配向処理剤を細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、-15℃で72時間保管した。その後、目視観察にて、液晶配向処理剤中の濁りや析出物の発生を確認した。その結果、実施例及び比較例のすべての液晶配向処理剤は、濁りや析出物が見られず、均一な溶液であった。
【0079】
「密着性の評価」
実施例及び比較例で得られた液晶配向処理剤を、純水で洗浄した100mm×100mmのITO電極付きPET基板(縦:100mm、横:100mm、厚さ:0.1mm)のITO面上にスピンコートにて塗布をし、ホットプレート上にて120℃で2分間加熱処理をして、膜厚が100nmの液晶配向膜付きのITO基板を得た。この液晶配向膜付きのITO基板を2枚用意し、それぞれ、100×20mm(縦×横)の大きさに切り取った。
【0080】
次に、一方の基板の液晶配向膜面に6μmのスペーサを塗布し、もう一方の基板の液晶配向膜面上には、シール剤(723K1)(協立化学産業社製)を塗布し、これらの基板の液晶配向膜面が向き合うように貼り合わせを行った。その際、シール剤の塗布量は、貼り合わせ後のシール剤の面積が5×50mm(縦×横)になるように調整した。その後、貼り合わせ後の基板に、照度20mW/cmのメタルハライドランプを用いて、365nmの波長換算で3J/cmの紫外線を照射し、その後、熱循環型クリーンオーブンにて120℃で60分間加熱処理をして、密着性の評価用のセルを作製した。
【0081】
密着性の評価は、卓上型精密万能試験機(AGS-X 500N)(島津製作所社製)を用いて行った。具体的には、得られたセルの上下の端の部分を固定した後、上下方向に引っ張った際の破断強度(N)を測定した。評価は、破断強度の値が大きいものほど密着性に優れる、即ち、本評価に優れるとした。
表8~表10中に、結果を示す。
【0082】
「液晶表示素子の作製及び恒温恒湿耐性の評価」
実施例及び比較例で得られた液晶配向処理剤を、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、純水及びIPAにて洗浄を行ったITO電極付き基板(縦40mm×横30mm、厚さ0.7mm)のITO面にスピンコートし、ホットプレート上にて120℃で2分間、熱循環型クリーンオーブンにて230℃で30分間加熱処理をして、膜厚が100nmの液晶配向膜付きのITO基板を得た。次に、この基板の液晶配向膜面をロール径が120mmのラビング装置で、レーヨン布を用いて、ロール回転数が500rpm、ロール進行速度が30mm/sec、押し込み量が0.3mmの条件でラビング処理した。
【0083】
その後、ラビング処理後の基板を2枚用意し、一方の基板の液晶配向膜面に4μmのスペーサを塗布し、もう一方の基板の4辺の液晶配向膜面上には、シール剤(XN-1500T)(協立化学産業社製)を塗布し、これらの基板の液晶配向膜面が向き合うように貼り合わせを行った。その際、それぞれの基板のラビング方向が逆方向になるように貼り合わせた。次に、熱循環型クリーンオーブンにて120℃で90分間加熱処理をして、空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって液晶を注入し、注入口を封止して液晶セルを得た。なお、実施例1~5、13、14、比較例1、3、5、7では、液晶にポジ型液晶(MLC-2003)(メルク社製)を用い、実施例6~12、比較例2、4、6、8では、液晶にネガ型液晶(MLC-6608)(メルク社製)を用いた。
【0084】
偏光顕微鏡(ECLIPSE E600WPOL)(ニコン社製)による観察より、実施例及び比較例で得られたすべての液晶セルとも、均一な液晶配向性を示していることを確認した。
その後、液晶セルを温度80℃、湿度90%RHの恒温恒湿槽内に48時間保管し、液晶セルの剥離と気泡の有無を確認した。具体的には、液晶セルの剥離(液晶配向膜とシール剤との間、及び液晶配向膜とITO電極との間で剥がれている状態)が起こっていないもの、及び液晶セル内に気泡が発生していないものを、本評価に優れるとした(表中の良好表示)。その際、実施例2、3、7、8、11、12においては、前記の標準試験に加え、強調試験として、温度80℃、湿度90%RHの恒温恒湿槽内に144時間保管した後の確認も行った。なお、評価方法は前記と同様である。
表8~表10中に、結果を示す。
【0085】
<実施例1>
合成例1で得られたポリアミド酸溶液(1)(10.0g)に、A1(0.20g)、NMP(23.8g)及びBCS(7.83g)を加え、25℃で15時間撹拌して、液晶配向処理剤(1)を得た。
<実施例2>
合成例2で得られたポリアミド酸溶液(2)(10.0g)に、A1(0.30g)、NMP(23.8g)及びBCS(7.83g)を加え、25℃で15時間撹拌して、液晶配向処理剤(2)を得た。
【0086】
<実施例3>
合成例2で得られたポリアミド酸溶液(2)(10.0g)に、A1(0.30g)、K1(0.18g)、NMP(23.8g)及びBCS(7.83g)を加え、25℃で15時間撹拌して、液晶配向処理剤(3)を得た。
<実施例4>
合成例3で得られたポリイミド粉末(3)(2.50g)に、NEP(31.3g)を加え、60℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、A2(0.15g)及びBCS(7.83g)を加え、25℃で15時間撹拌して、液晶配向処理剤(4)を得た。
【0087】
<実施例5>
合成例4で得られたポリアミド酸溶液(4)(10.0g)に、A1(0.13g)、A2(0.075g)、NMP(19.9g)、BCS(7.83g)及びPB(3.92g)を加え、25℃で15時間撹拌して、液晶配向処理剤(5)を得た。
<実施例6>
合成例5で得られたポリアミド酸溶液(5)(10.0g)に、A1(0.15g)、NMP(16.0g)及びBCS(15.7g)を加え、25℃で15時間撹拌して、液晶配向処理剤(6)を得た。
【0088】
<実施例7>
合成例6で得られたポリイミド粉末(6)(2.50g)に、NEP(23.5g)を加え、60℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、A2(0.20g)及びPB(15.7g)を加え、25℃で15時間撹拌して、液晶配向処理剤(7)を得た。
<実施例8>
合成例6で得られたポリイミド粉末(6)(2.50g)に、NEP(23.5g)を加え、60℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、A2(0.20g)、K1(0.18g)及びPB(15.7g)を加え、25℃で15時間撹拌して、液晶配向処理剤(8)を得た。
【0089】
<実施例9>
合成例7で得られたポリアミド酸溶液(7)(10.0g)に、A1(0.10g)、K2(0.08g)、NMP(19.9g)、BCS(7.83g)及びPB(3.92g)を加え、25℃で15時間撹拌して、液晶配向処理剤(9)を得た。
<実施例10>
合成例8で得られたポリアミド酸溶液(8)(10.0g)に、A2(0.15g)、K2(0.18g)、NMP(19.9g)及びBCS(11.8g)を加え、25℃で15時間撹拌して、液晶配向処理剤(10)を得た。
【0090】
<実施例11>
合成例9で得られたポリアミド酸溶液(9)(10.0g)に、A1(0.23g)、NMP(19.9g)及びBCS(11.8g)を加え、25℃で15時間撹拌して、液晶配向処理剤(11)を得た。
<実施例12>
合成例9で得られたポリアミド酸溶液(9)(10.0g)に、A1(0.23g)、K1(0.13g)、NMP(19.9g)及びBCS(11.8g)を加え、25℃で15時間撹拌して、液晶配向処理剤(12)を得た。
【0091】
<実施例13>
合成例10で得られたポリアミド酸アルキルエステル粉末(10)(2.50g)に、NMP(31.3g)を加え、40℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、A1(0.30g)及びBCS(7.83g)を加え、25℃で15時間撹拌して、液晶配向処理剤(13)を得た。
<実施例14>
合成例10で得られたポリアミド酸アルキルエステル粉末(10)(2.50g)に、NEP(31.3g)を加え、40℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、A2(0.20g)、K2(0.13g)及びBCS(7.83g)を加え、25℃で15時間撹拌して、液晶配向処理剤(14)を得た。
【0092】
<比較例1>
合成例11で得られたポリアミド酸溶液(11)(10.0g)に、NMP(23.8g)及びBCS(7.83g)を加え、25℃で15時間撹拌して、液晶配向処理剤(15)を得た。
<比較例2>
合成例12で得られたポリアミド酸溶液(12)(10.0g)に、NMP(16.0g)及びBCS(15.7g)を加え、25℃で15時間撹拌して、液晶配向処理剤(16)を得た。
【0093】
<比較例3>
合成例11で得られたポリアミド酸溶液(11)(10.0g)に、A1(0.20g)、NMP(23.8g)及びBCS(7.83g)を加え、25℃で15時間撹拌して、液晶配向処理剤(17)を得た。
<比較例4>
合成例12で得られたポリアミド酸溶液(12)(10.0g)に、A1(0.15g)、NMP(16.0g)及びBCS(15.7g)を加え、25℃で15時間撹拌して、液晶配向処理剤(18)を得た。
【0094】
<比較例5>
合成例1で得られたポリアミド酸溶液(1)(10.0g)に、NMP(23.8g)及びBCS(7.83g)を加え、25℃で15時間撹拌して、液晶配向処理剤(19)を得た。
<比較例6>
合成例5で得られたポリアミド酸溶液(5)(10.0g)に、NMP(16.0g)及びBCS(15.7g)を加え、25℃で15時間撹拌して、液晶配向処理剤(20)を得た。
【0095】
<比較例7>
合成例1で得られたポリアミド酸溶液(1)(10.0g)に、a1(0.20g)、NMP(23.8g)及びBCS(7.83g)を加え、25℃で15時間撹拌して、液晶配向処理剤(21)を得た。
<比較例8>
合成例5で得られたポリアミド酸溶液(5)(10.0g)に、a1(0.15g)、NMP(16.0g)及びBCS(15.7g)を加え、25℃で15時間撹拌して、液晶配向処理剤(22)を得た。
【0096】
<実施例1~14及び比較例1~8>
上記で得られた液晶配向処理剤(1)~(22)を用いて、上述の条件で、「密着性の評価」及び「液晶表示素子の作製及び恒温恒湿耐性の評価」を行った。
なお、これらの液晶配向処理剤(1)~(22)のいずれにも、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
【0097】
【表5】
【0098】
【表6】
【0099】
【表7】
*3:重合体100質量部に対する特定化合物の含有量(質量部)を示す。
*4:重合体100質量部に対する架橋性化合物の含有量(質量部)を示す。
【0100】
【表8】
【0101】
【表9】
【0102】
【表10】
*5:素子内に極少量の気泡が見られた。
*6:素子内に少量の気泡が見られた(*5よりも多い)。
*7:素子内に気泡が見られた(*6よりも多い)。
*8:素子内に多くの気泡が見られた(*7よりも多い)。
【0103】
上記の結果からわかるように、特定化合物及び特定重合体を含む液晶配向処理剤を用いた実施例は、それらを含まない、或いはどちらか一方のみを含む液晶配向処理剤の比較例に比べて、密着性に優れ、かつ、液晶セルを、高温高湿下で長期間保管しても、液晶セルの剥離が起こらなかった。具体的には、同一の条件での比較において、実施例1と比較例1、比較例3及び比較例5との比較、及び実施例6と比較例2、比較例4及び比較例6との比較である。
【0104】
また、分子内にチオール基を3個以上有する特定化合物を含む液晶配向処理剤を用いた実施例は、チオール基が2個の化合物を含む液晶配向処理剤の比較例に比べて、前記特性に優れていた。具体的には、同一の条件での比較において、実施例1と比較例7との比較、及び実施例6と比較例8との比較である。
加えて、液晶配向処理剤中に架橋性化合物を導入した場合、強調試験において、液晶セル内に気泡は発生しなかった。具体的には、同一の条件での比較において、実施例2と実施例3との比較、実施例7と実施例8との比較、及び実施例11と実施例12との比較である。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の液晶配向処理剤は、ら得られる液晶配向膜を用いることで、液晶表示素子の基板間の接着性が高く、更には、長時間、高温高湿に曝される過酷な環境においても、液晶表示素子内の気泡の発生や素子の剥がれを抑制することができる液晶表示素子が得られる。そのため、スマートフォンや携帯電話などの液晶表示素子に、好適に用いることができる。
なお、2018年12月27日に出願された日本特許出願2018-246262号の明細書、特許請求の範囲、図面、及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。