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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】樹脂組成物、樹脂膜及び液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20240123BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20240123BHJP
   C08F 20/10 20060101ALI20240123BHJP
   C08F 12/32 20060101ALI20240123BHJP
   G02F 1/1334 20060101ALN20240123BHJP
【FI】
G02F1/1337 525
C08G73/10
C08F20/10
C08F12/32
G02F1/1334
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021502322
(86)(22)【出願日】2020-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2020007782
(87)【国際公開番号】W WO2020175560
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2019034306
(32)【優先日】2019-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000095
【氏名又は名称】弁理士法人T.S.パートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100082887
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 利春
(74)【代理人】
【識別番号】100181331
【弁理士】
【氏名又は名称】金 鎭文
(74)【代理人】
【識別番号】100183597
【弁理士】
【氏名又は名称】比企野 健
(74)【代理人】
【識別番号】100161997
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 大一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100090918
【弁理士】
【氏名又は名称】泉名 謙治
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 加名子
(72)【発明者】
【氏名】片山 雅章
(72)【発明者】
【氏名】高橋 真文
(72)【発明者】
【氏名】保坂 和義
【審査官】廣田 かおり
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-144237(JP,A)
【文献】米国特許第3597440(US,A)
【文献】特開2000-298266(JP,A)
【文献】特開2002-103519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
C08G 73/10
C08F 20/10
C08F 12/32
G02F 1/1334
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極を備えた一対の基板の間に配置した液晶及び重合性化合物を含む液晶組成物に対し、活性エネルギー線及び熱の少なくとも一方を与えて硬化させた液晶層を有し、且つ、基板の少なくとも一方に樹脂膜を備え、更に、電圧無印加時に散乱状態となり、電圧印加時に透明状態となる透過散乱型のノーマル型液晶表示素子であって、前記樹脂膜が、下記式[1]の基を有する化合物を含む樹脂組成物を用いて得られることを特徴とする液晶表示素子。
【化1】
*は、他の構造との結合部位を表す。
【請求項2】
前記式[1]の基を有する化合物が、下記式[1a]である請求項1に記載の液晶表示素子。
【化2】
は、下記式[1-a]~式[1-h]から選ばれる少なくとも1種の構造を示す。Tは、単結合又は炭素数1~18の有機基を示す。Tは、前記式[1]の構造を示す。
【化3】

は、炭素数1~3のアルキル基を示す。
【請求項3】
前記樹脂組成物が、下記式[2-a]~式[2-i]から選ばれる少なくとも1種の構造を有する重合体を含む請求項1又は2に記載の液晶表示素子。
【化4】
は、水素原子又はベンゼン環を示す。
【請求項4】
前記重合体が、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ポリイミド前駆体、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、セルロース及びポリシロキサンから選ばれる少なくとも1種である請求項3に記載の液晶表示素子。
【請求項5】
前記重合体が、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分との反応で得られるポリイミド前駆体又は該ポリイミド前駆体をイミド化したポリイミドである請求項4に記載の液晶表示素子。
【請求項6】
前記ジアミン成分が、前記式[2-a]~式[2-i]から選ばれる少なくとも1種の構造を有するジアミンを含む請求項5に記載の液晶表示素子。
【請求項7】
前記ジアミンが、下記式[2]の構造を有する請求項6に記載の液晶表示素子。
【化5】
は、単結合、-O-、-NH-、-N(CH)-、-CHO-、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH)-、-N(CH)CO-、-COO-及び-OCO-から選ばれる少なくとも1種を示す。Xは、単結合、炭素数1~18のアルキレン基、又はベンゼン環、シクロヘキサン環及び複素環から選ばれる環状基を有する炭素数6~24の有機基を示し、これら環状基上の任意の水素原子は、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシル基、炭素数1~3のフッ素含有アルキル基、炭素数1~3のフッ素含有アルコキシル基又はフッ素原子で置換されていても良い。Xは、単結合、-O-、-NH-、-N(CH)-、-CHO-、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH)-、-N(CH)CO-、-COO-及び-OCO-から選ばれる少なくとも1種を示す。Xは、前記式[2-a]~式[2-i]から選ばれる少なくとも1種を示す。Xnは、1~4の整数を示す。
【請求項8】
前記ジアミンが、下記式[2a]である請求項7に記載の液晶表示素子。
【化6】
Xは、前記式[2]の構造を示す。Xmは、1~4の整数を示す。
【請求項9】
前記テトラカルボン酸成分が、下記式[3]のテトラカルボン酸二無水物を含む請求項5~請求項8のいずれか一項に記載の液晶表示素子。
【化7】
Zは、下記式[3a]~式[3l]から選ばれる少なくとも1種の構造を示す。
【化8】
~Zはそれぞれ、水素原子、メチル基、塩素原子又はベンゼン環を示す。Z及びZはそれぞれ、水素原子又はメチル基を示す。
【請求項10】
前記ジアミン成分とテトラカルボン酸成分との反応において、ジアミン成分の合計モル数を1.0にした際のテトラカルボン酸成分の合計モル数が1.05~1.20である請求項5~請求項9のいずれか一項に記載の液晶表示素子。
【請求項11】
前記液晶組成物が、下記式[4a]の化合物を含む請求項1~請求項10のいずれか一項に記載の液晶表示素子。
【化9】
は、下記式[4-a]~式[4-j]から選ばれる少なくとも1種の構造を示す。Sは、単結合、-O-、-NH-、-N(CH)-、-CHO-、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH)-、-N(CH)CO-、-COO-及び-OCO-から選ばれる少なくとも1種を示す。Sは、単結合又は-(CH-(aは1~15の整数である)を示す。Sは、単結合、-O-、-OCH-、-COO-及び-OCO-から選ばれる少なくとも1種を示す。Sは、ベンゼン環、シクロヘキサン環及び複素環から選ばれる2価の環状基、又はステロイド骨格を有する炭素数17~51の2価の有機基を示し、前記環状基上の任意の水素原子は、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、炭素数1~3のフッ素含有アルキル基、炭素数1~3のフッ素含有アルコキシ基又はフッ素原子で置換されていても良い。Sは、単結合、-O-、-CH-、-OCH-、-CHO-、-COO-及び-OCO-から選ばれる少なくとも1種を示す。Sは、ベンゼン環、シクロヘキサン環及び複素環から選ばれる環状基を示し、これらの環状基上の任意の水素原子が、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、炭素数1~3のフッ素含有アルキル基、炭素数1~3のフッ素含有アルコキシ基又はフッ素原子で置換されていても良い。Sは、炭素数1~18のアルキル基、炭素数2~18のアルケニル基、炭素数1~18のフッ素含有アルキル基、炭素数1~18のアルコキシ基及び炭素数1~18のフッ素含有アルコキシ基から選ばれる少なくとも1種を示す。Smは、0~4の整数を示す。
【化10】
は、水素原子又はベンゼン環を示す。
【請求項12】
前記式[4a]の化合物が、下記式[4a-1]~式[4a-11]から選ばれる少なくとも1種である請求項11に記載の液晶表示素子。
【化11】
はそれぞれ、-O-又は-COO-を示す。Sはそれぞれ、炭素数1~12のアルキル基を示す。p1はそれぞれ、1~10の整数を示す。p2はそれぞれ、1又は2の整数を示す。
【化12】
はそれぞれ、単結合、-COO-又は-OCO-を示す。Sはそれぞれ、炭素数1~12のアルキル基又はアルコキシ基を示す。p3はそれぞれ、1~10の整数を示す。p4はそれぞれ、1又は2の整数を示す。
【化13】
はそれぞれ、-O-又は-COO-を示す。Sはそれぞれ、ステロイド骨格を有する炭素数17~51の2価の有機基を示す。Sはそれぞれ、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数2~18のアルケニル基を示す。p5はそれぞれ、1~10の整数を示す。
【請求項13】
前記樹脂組成物が、エポキシ基、イソシアネート基、オキセタン基、シクロカーボネート基、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基及び低級アルコキシアルキル基から選ばれる少なくとも1種を有する架橋性化合物をさらに含む、請求項1~請求項12のいずれか一項に記載の液晶表示素子。
【請求項14】
前記液晶表示素子の基板が、ガラス基板又はプラスチック基板である請求項1~請求項13のいずれか一項に記載の液晶表示素子。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の液晶表示素子に用いる樹脂膜であり、前記式[1]の基を有する化合物を含む樹脂組成物から形成される樹脂膜。
【請求項16】
前記式[1]の基を有する化合物を含む、請求項15に記載の樹脂膜を形成するための樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧無印加時に散乱状態となり、電圧印加時に透過状態となる透過散乱型のノーマル型液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子としては、TN(Twisted Nematic)モードが実用化されている。このモードでは、液晶の旋光特性を利用して、光のスイッチングを行うために、偏光板を用いる必要がある。偏光板を用いると光の利用効率が低くなる。
【0003】
偏光板を用いない液晶表示素子として、液晶の透過状態(透明状態ともいう。)と散乱状態との間でスイッチングを行う素子がある。一般的には、高分子分散型液晶(PDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)ともいう。)や高分子ネットワーク型液晶(PNLC(Polymer Network Liquid Crystal)ともいう。)を用いたものが知られている。これらの液晶表示素子では、電極を備えた一対の基板の間に、紫外線により重合する重合性化合物を含む液晶組成物を配置し、紫外線の照射により液晶組成物の硬化を行い、液晶と重合性化合物の硬化物(例えば、ポリマーネットワーク)との複合体を形成する。そして、この液晶表示素子では、電圧の印加により、液晶の散乱状態と透過状態が制御される。
PDLCやPNLCを用いた液晶表示素子には、電圧無印加時に、液晶がランダムな方向を向いているため、白濁(散乱)状態となり、電圧印加時には、液晶が電界方向に配列し、光を透過して透過状態となるノーマル型液晶表示素子がある(ノーマル型素子ともいう。)。この場合、電圧無印加時の液晶はランダムであるため、液晶を一方方向に配向させる液晶配向膜や配向処理の必要がない。そのため、この液晶表示素子では、電極と液晶層(前記液晶と重合性化合物の硬化物との複合体)とが直に接した状態となる(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本特許3552328号公報
【文献】日本特許4630954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液晶組成物中の重合性化合物は、ポリマーネットワークを形成させ、所望とする光学特性を得る役割と、液晶層と電極との密着性を高める役割がある。しかしながら、本素子にはITO(Indium Tin Oxide)などの無機系の電極が用いられるため、有機物の重合性化合物との相性、即ち、密着性が低くなる傾向にある。密着性が低くなると、長期間の使用、特に高温高湿や光の照射に曝された環境といった過酷な環境により、素子の剥がれや気泡の発生、更には、散乱状態と透明状態の光学特性の低下を引き起こしやすくなる。
【0006】
そこで本発明は、長時間、高温高湿や光の照射に曝される過酷な環境においても、素子の剥がれや気泡の発生、及び光学特性の低下を抑制できるノーマル型液晶表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記目的を達成するため鋭意研究を進めた結果、以下の要旨を有する本発明を完成するに至った。
即ち、電極を備えた一対の基板の間に配置した液晶及び重合性化合物を含む液晶組成物に対し、活性エネルギー線及び熱の少なくとも一方を与えて硬化させた液晶層を有し、且つ、基板の少なくとも一方に樹脂膜を備え、更に、電圧無印加時に散乱状態となり、電圧印加時に透明状態となる透過散乱型のノーマル型液晶表示素子であって、
前記樹脂膜が、下記式[1]の基を有する化合物(特定化合物ともいう。)を含む樹脂組成物を用いて得られることを特徴とする液晶表示素子である。
【0008】
【化1】
【0009】
*は、他の構造との結合部位を表す。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、長時間、高温高湿や光の照射に曝される過酷な環境においても、素子の剥がれや気泡の発生、及び光学特性の低下を抑制できるノーマル型液晶表示素子が得られる。
本発明により、何故に上記の優れた特性を有する液晶表示素子が得られるメカニズムは、必ずしも明らかではないが、ほぼ次のように推定される。
【0011】
液晶表示素子の樹脂膜を作製するための樹脂組成物に含まれる特定化合物は、ジスルフィド結合(S-S)とチオケトン(C=S)基を有することから、樹脂膜と金属電極との密着性が高くなる。また、特性化合物中のアミノ基(N)は、弱塩基性を示すことから、液晶組成物中の重合性化合物の反応が促進され、より強固なポリマーネットワークを形成させることができると考えられる。
かくして、特定化合物を含む樹脂組成物を用いた液晶表示素子は、前記特性を有する液晶表示素子となる。そのため、本発明の液晶表示素子は、表示を目的とする液晶ディスプレイや、光の遮断と透過とを制御する調光窓や光シャッター素子などに用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<特定化合物>
特定化合物は、前記式[1]の化合物である。
特定化合物の具体的な例としては、下記式[1a]が挙げられる。
【0013】
【化2】
は、下記式[1-a]~式[1-h]から選ばれる少なくとも1種の構造を示す。
【0014】
【化3】
【0015】
は、炭素数1~3のアルキル基を示す。
【0016】
なかでも、式[1-b]、式[1-c]又は式[1-d]が好ましい。
は単結合又は炭素数1~18の有機基を示す。なかでも、単結合又は炭素数1~6の有機基が好ましい。
は前記式[1]の構造を示す。
【0017】
特定化合物のより具体的な例としては、下記式[1-1a]が挙げられ、これを用いることが好ましい。
【0018】
【化4】
【0019】
特定化合物の使用割合は、樹脂膜と金属電極との密着性の点から、樹脂組成物に含有されるすべての重合体100質量部に対して、0.1~30質量部が好ましい。より好ましいのは、0.5~20質量部である。最も好ましいのは、1~15質量部である。また、特定化合物は、各特性に応じて、1種類又は2種類以上を混合して使用することもできる。
【0020】
<重合体>
本発明の特定化合物を含む樹脂組成物は、好ましくは、下記式[2-a]~式[2-i]から選ばれる少なくとも1種の構造(特定構造ともいう。)を有する重合体を含む。
特定構造は、重合体を構成する繰り返し単位に含まれる形態が好ましい。特定構造を含む繰り返し単位は、重合体を構成する繰り返し単位全体に対して、10~70モル%含むことが好ましく、より好ましいのは20~60モル%含むことである。
また、特定構造を有する重合体は、各特性に応じて、1種類又は2種類以上を混合して使用することもできる。
【0021】
【化5】
【0022】
は、水素原子又はベンゼン環を示す。
なかでも、式[2-a]~式[2-f]が好ましい。より好ましいのは、式[2-a]~式[2-e]である。特に好ましいのは、液晶層と樹脂膜との密着性の点から、式[2-a]、式[2-b]、式[2-d]又は式[2-e]である。
特定構造を用いることで、液晶表示素子を作製する際の紫外線の照射や加熱の工程において、液晶組成物中の重合性化合物の反応基と光反応し、液晶層と樹脂膜との密着性が、強固なものとなると考えられる。
重合体としては、特に限定されないが、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ポリイミド前駆体、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、セルロース及びポリシロキサンから選ばれる少なくとも1種の重合体が好ましい。より好ましいのは、ポリイミド前駆体又はポリイミドである。
重合体にポリイミド前駆体又はポリイミド(総称してポリイミド系重合体ともいう。)を用いる場合、それらは、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを反応させて得られるポリイミド前駆体又はポリイミドが好ましい。
【0023】
ポリイミド前駆体は、例えば、下記式[A]の構造を有する。
【0024】
【化6】
【0025】
は、4価の有機基を示す。Rは、2価の有機基を示す。A及びAはそれぞれ、水素原子又は炭素数1~8のアルキル基を示す。A及びAはそれぞれ、水素原子、炭素数1~5のアルキル基又はアセチル基を示す。nは、正の整数を示す。
【0026】
ジアミン成分としては、分子内に1級又は2級のアミノ基を2個有するジアミンであり、テトラカルボン酸成分としては、テトラカルボン酸化合物、テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジハライド化合物、テトラカルボン酸ジアルキルエステル化合物又はテトラカルボン酸ジアルキルエステルジハライド化合物が挙げられる。
【0027】
ポリイミド系重合体は、下記式[B]のテトラカルボン酸二無水物と下記式[C]のジアミンとを原料とすることで、比較的簡便に得られるという理由から、下記式[D]の繰り返し単位の構造式から成るポリアミド酸又は該ポリアミド酸をイミド化させたポリイミドが好ましい。
【0028】
【化7】
【0029】
及びRは、式[A]で定義したものと同じである。
【0030】
【化8】
【0031】
及びRは、式[A]で定義したものと同じである。
【0032】
また、通常の合成手法で、前記で得られた式[D]の重合体に、式[A]中のA及びAの炭素数1~8のアルキル基、及び式[A]中のA及びAの炭素数1~5のアルキル基又はアセチル基を導入することもできる。
特定構造をポリイミド系重合体に導入する方法としては、特定構造を有するジアミンを原料の一部に用いることが好ましい。特に、下記式[2]の構造を有するジアミン(特定ジアミンともいう。)を用いることが好ましい。
【0033】
【化9】
【0034】
は、単結合、-O-、-NH-、-N(CH)-、-CHO-、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH)-、-N(CH)CO-、-COO-及び-OCO-から選ばれる少なくとも1種を示す。なかでも、単結合、-O-、-CHO-、-CONH-、-COO-又は-OCO-が好ましい。より好ましいのは、原料の入手性や合成の容易さから、単結合、-O-、-CHO-又は-COO-である。
は、単結合、炭素数1~18のアルキレン基、又はベンゼン環、シクロヘキサン環及び複素環から選ばれる環状基を有する炭素数6~24の有機基を示し、これら環状基上の任意の水素原子は、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシル基、炭素数1~3のフッ素含有アルキル基、炭素数1~3のフッ素含有アルコキシル基又はフッ素原子で置換されていても良い。なかでも、単結合、炭素数1~12のアルキレン基、ベンゼン環又はシクロヘキサン環が好ましい。より好ましいのは、液晶層と樹脂膜との密着性の点から、単結合又は炭素数1~12のアルキレン基である。
は、単結合、-O-、-NH-、-N(CH)-、-CHO-、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH)-、-N(CH)CO-、-COO-及び-OCO-から選ばれる少なくとも1種を示す。なかでも、単結合、-O-、-COO-又は-OCO-が好ましい。より好ましいのは、単結合又は-OCO-である。
は、前記式[2-a]~式[2-i]から選ばれる少なくとも1種の構造を示す。なかでも、式[2-a]~式[2-f]が好ましい。より好ましいのは、式[2-a]~式[2-e]である。特に好ましいのは、液晶層と樹脂膜との密着性の点から、式[2-a]、式[2-b]、式[2-d]又は式[2-e]である。
Xnは、1~4の整数を示す。なかでも、1又は2が好ましい。
【0035】
特定ジアミンには、下記式[2a]のジアミンを用いることが好ましい。
【0036】
【化10】
【0037】
Xは、前記式[2]の構造を示す。また、式[2]におけるX~X及びXnの詳細、及び好ましい組み合わせは、前記式[2]の通りである。
Xmは1~4の整数を示す。なかでも、1が好ましい。
【0038】
より具体的な特定ジアミンとしては、下記式[2a-1]~式[2a-12]が挙げられ、これらを用いることが好ましい。
【0039】
【化11】
【0040】
n1は2~12の整数を示す。
【0041】
【化12】
【0042】
n2は、0~12の整数を示す。n3は、2~12の整数を示す。
【0043】
なかでも、式[2a-1]、式[2a-2]、式[2a-5]~式[2a-7]、式[2a-11]又は式[2a-12]が好ましい。より好ましいのは、式[2a-5]~式[2a-7]、式[2a-11]又は式[2a-12]である。
特定ジアミンの使用割合は、液晶表示素子の光学特性及び液晶層と樹脂膜との密着性の点から、ジアミン成分全体に対して、10~70モル%が好ましい。より好ましいのは、20~60モル%である。また、特定ジアミンは、各特性に応じて、1種類又は2種類以上を混合して使用できる。
ポリイミド系重合体を作製するためジアミン成分としては、特定ジアミン以外のジアミン(その他のジアミンともいう。)を用いることもできる。
【0044】
具体的には、国際公開公報WO2015/012368(2015.1.29公開)の27頁~30頁に記載されるその他のジアミン化合物、及び同公報の30頁~32頁に記載される式[DA1]~式[DA14]のジアミン化合物が挙げられる。また、その他ジアミンは、各特性に応じて、1種又は2種以上を混合して使用できる。
ポリイミド系重合体を作製するためのテトラカルボン酸成分としては、下記式[3]のテトラカルボン酸二無水物や、そのテトラカルボン酸誘導体であるテトラカルボン酸、テトラカルボン酸ジハライド、テトラカルボン酸ジアルキルエステル又はテトラカルボン酸ジアルキルエステルジハライド(すべてを総称して特定テトラカルボン酸成分ともいう。)を用いることが好ましい。
【0045】
【化13】
【0046】
Zは、下記式[3a]~式[3l]から選ばれる少なくとも1種の構造を示す。
【0047】
【化14】
【0048】
~Zはそれぞれ、水素原子、メチル基、塩素原子又はベンゼン環を示す。Z及びZはそれぞれ、水素原子又はメチル基を示す。
【0049】
なかでも、式[3]中のZは、合成の容易さやポリマーを製造する際の重合反応性のし易さの点から、式[3a]、式[3c]、式[3d]、式[3e]、式[3f]、式[3g]、式[3k]又は式[3l]が好ましい。より好ましいのは、式[3a]、式[3e]、式[3f]、式[3g]、式[3k]又は式[3l]である。特に好ましいのは、液晶表示素子の光学特性の点から、式[3a]、式[3e]、式[3f]、式[3g]又は式[3l]である。
特定テトラカルボン酸成分の使用割合は、全テトラカルボン酸成分に対して、1モル%以上が好ましい。より好ましいのは、5モル%以上であり、特に好ましいのは、10モル%以上である。最も好ましいのは、液晶表示素子の光学特性の点から、10~90モル%である。
【0050】
ポリイミド系重合体には、特定テトラカルボン酸成分以外のその他のテトラカルボン酸成分を用いることができる。その他のテトラカルボン酸成分としては、以下に示すテトラカルボン酸化合物、テトラカルボン酸二無水物、ジカルボン酸ジハライド化合物、ジカルボン酸ジアルキルエステル化合物又はジアルキルエステルジハライド化合物が挙げられる。
具体的には、国際公開公報WO2015/012368(2015.1.29公開)の34頁~35頁に記載されるその他のテトラカルボン酸成分が挙げられる。
特定テトラカルボン酸成分及びその他のテトラカルボン酸成分は、各特性に応じて、1種又は2種以上を混合して使用できる。
ポリイミド系重合体を合成する方法は特に限定されない。通常、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを反応させて得られる。具体的には、国際公開公報WO2015/012368(2015.1.29公開)の35頁~36頁に記載される方法が挙げられる。
【0051】
ジアミン成分とテトラカルボン酸成分との反応は、通常、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを含む溶媒中で行う。その際に用いる溶媒としては、生成したポリイミド前駆体が溶解するものであれば特に限定されない。
【0052】
具体的には、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド又は1,3-ジメチル-イミダゾリジノンなどが挙げられる。また、ポリイミド前駆体の溶媒溶解性が高い場合は、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン又は下記式[D1]~式[D3]の溶媒を用いることができる。
【0053】
【化15】
【0054】
及びDは、炭素数1~3のアルキル基を示す。Dは、炭素数1~4のアルキル基を示す。
また、これらは単独で使用しても、混合して使用してもよい。更に、ポリイミド前駆体を溶解させない溶媒であっても、生成したポリイミド前駆体が析出しない範囲で、前記溶媒に混合して使用してもよい。また、有機溶媒中の水分は重合反応を阻害し、更には生成したポリイミド前駆体を加水分解させる原因となるので、有機溶媒は脱水乾燥させたものを用いることが好ましい。
ポリイミド前駆体の重合反応においては、ジアミン成分の合計モル数を1.0にした際のテトラカルボン酸成分の合計モル数は、0.8~1.2であることが好ましい。テトラカルボン酸成分の合計モル数が1.0より小さい場合、即ち、テトラカルボン酸成分の合計モル数がジアミン成分のモル数よりも小さい場合は、ポリマーの末端がアミノ基の構造となり、1.0より大きい場合、即ち、テトラカルボン酸成分の合計モル数がジアミン成分のモル数よりも大きい場合は、ポリマーの末端がカルボン酸無水物或いはジカルボン酸の構造となる。本発明においては、前記特定化合物による効果が、より高くなることから、テトラカルボン酸成分の合計モル数は1.0より大きい、即ち、テトラカルボン酸成分の合計モル数がジアミン成分のモル数よりも大きいことが好ましい。具体的には、ジアミン成分の合計モル数を1.0にした際、テトラカルボン酸成分の合計モル数が1.05~1.20であることが好ましい。
【0055】
ポリイミドはポリイミド前駆体を閉環させて得られるポリイミドであり、このポリイミドにおいては、アミド酸基の閉環率(イミド化率ともいう。)は必ずしも100%である必要はなく、用途や目的に応じて任意に調整できる。なかでも、ポリイミド系重合体の溶媒への溶解性の点から、30~80%が好ましい。より好ましいのは、40~70%である。
【0056】
ポリイミド系重合体の分子量は、そこから得られる樹脂膜の強度、及び樹脂膜形成時の作業性及び塗膜性を考慮した場合、GPC(Gel Permeation Chromatography)法で測定したMw(重量平均分子量)で5,000~1,000,000とするのが好ましい。より好ましいのは、10,000~150,000である。
<樹脂組成物>
樹脂組成物は、特定化合物を含むものであり、好ましくは、樹脂膜を形成するための溶液であり、特定化合物、重合体及び溶媒を含有する溶液である。その際、特定化合物及び重合体は、2種類以上のものを用いることができる。
【0057】
本発明の樹脂組成物における重合体成分の含有量は、形成させようとする樹脂膜の厚みの設定によって適宜変更することができるが、均一で欠陥のない樹脂膜を形成させるという点から1重量%以上が好ましく、溶液の保存安定性の点からは10重量%以下が好ましい。なかでも、2~8重量%が好ましく、3~7重量%が特に好ましい。
樹脂組成物における重合体成分は、すべてが特定構造を有する重合体であっても良く、特定構造を持たない重合体が混合されていても良い。その際、特定構造を持たない重合体の使用割合は、特定構造を有する重合体100質量部に対して、10~400質量部であることが好ましい。より好ましいのは、10~300質量部である。特に好ましいのは、10~200質量部である。
【0058】
樹脂組成物中の溶媒の含有量は、樹脂組成物の塗布方法や目的とする膜厚を得るという観点から、適宜選択できる。なかでも、塗布により均一な樹脂膜を形成するとい観点から、樹脂組成物中の溶媒の含有量は50~99.9質量%が好ましい。より好ましいのは、60~99質量%である。特に好ましいのは、65~99質量%である。
【0059】
樹脂組成物に用いる溶媒は、重合体を溶解させる溶媒であれば特に限定されない。なかでも、重合体がポリイミド前駆体、ポリイミド、ポリアミド又はポリエステルの場合、或いは、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、セルロース又はポリシロキサンの溶媒への溶解性が低い場合は、下記の溶媒(溶媒A類ともいう。)を用いることが好ましい。
【0060】
例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンなどである。なかでも、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン又はγ-ブチロラクトンを用いることが好ましい。また、これらは単独で使用しても、混合して使用してもよい。
【0061】
重合体が、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、セルロース又はポリシロキサンである場合、更には、重合体がポリイミド前駆体、ポリイミド、ポリアミド又はポリエステルであり、これら重合体の溶媒への溶解性が高い場合は、下記の溶媒(溶媒B類ともいう。)を用いることができる。
【0062】
溶媒B類の具体例は、国際公開公報WO2014/171493(2014.10.23公開)の58頁~60頁に記載される溶媒B類が挙げられる。なかでも、1-ヘキサノール、シクロヘキサノール、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、シクロヘキサノン、シクロペンタノン又は前記式[D1]~式[D3]を用いることが好ましい。
また、これら溶媒B類を用いる際、樹脂組成物の塗布性を改善する目的に、前記溶媒A類のN-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン又はγ-ブチロラクトンを併用して用いることが好ましい。より好ましいのは、γ-ブチロラクトンを併用することである。
【0063】
これら溶媒B類は、樹脂組成物を塗布する際の樹脂膜の塗膜性や表面平滑性を高めることができるため、重合体にポリイミド前駆体、ポリイミド、ポリアミド又はポリエステルを用いた場合、前記溶媒A類と併用して用いることが好ましい。その際、溶媒B類は、樹脂組成物に含まれる溶媒全体の1~99質量%が好ましい。なかでも、10~99質量%が好ましい。より好ましいのは、20~95質量%である。
樹脂組成物には、樹脂膜の膜強度を高めるために、エポキシ基、イソシアネート基、オキセタン基、シクロカーボネート基、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基及び低級アルコキシアルキル基から選ばれる少なくとも1種を有する化合物(総称して特定架橋性化合物ともいう。)を導入することが好ましい。その際、これらの基は、化合物中に2個以上有する必要がある。
エポキシ基又はイソシアネート基を有する架橋性化合物の具体例は、国際公開公報WO2014/171493(2014.10.23公開)の63頁~64頁に記載されるエポキシ基又はイソシアネート基を有する架橋性化合物が挙げられる。
【0064】
オキセタン基を有する架橋性化合物の具体例は、国際公開公報WO2011/132751(2011.10.27公開)の58頁~59頁に掲載される式[4a]~式[4k]の架橋性化合物が挙げられる。
【0065】
シクロカーボネート基を有する架橋性化合物の具体例は、国際公開公報WO2012/014898(2012.2.2公開)の76頁~82頁に掲載される式[5-1]~式[5-42]の架橋性化合物が挙げられる。
【0066】
ヒドロキシル基、ヒドロキシアルキル基及び低級アルコキシアルキル基を有する架橋性化合物の具体例は、国際公開公報2014/171493(2014.10.23公開)の65頁~66頁に記載されるメラミン誘導体又はベンゾグアナミン誘導体、及び国際公開公報WO2011/132751(2011.10.27公開)の62頁~66頁に掲載される、式[6-1]~式[6-48]の架橋性化合物が挙げられる。
【0067】
樹脂組成物における特定架橋性化合物の使用割合は、すべての重合体成分100質量部に対して、0.1~100質量部が好ましい。より好ましいのは、架橋反応が進行し、目的の効果を発現させるため、0.1~50質量部である。特に好ましいのは、1~30質量部である。
樹脂組成物には、光ラジカル発生剤、光酸発生剤及び光塩基発生剤から選ばれる少なくとも1種の発生剤(特定発生剤ともいう。)を導入することが好ましい。
【0068】
特定発生剤の具体例は、国際公開公報2014/171493(2014.10.23公開)の54頁~56頁に記載される特定発生剤が挙げられる。なかでも、特定発生剤には、液晶層と樹脂膜との密着性の点から、光ラジカル発生剤を用いることが好ましい。
樹脂組成物には、樹脂組成物を塗布した際の樹脂膜の膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる化合物を用いることができる。更に、樹脂膜と基板との密着性を向上させる化合物などを用いることもできる。
樹脂膜の膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる化合物としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、又はノ二オン系界面活性剤などが挙げられる。具体的には、国際公開公報WO2014/171493(2014.10.23公開)の67頁に記載される界面活性剤が挙げられる。また、その使用割合は、すべての重合体成分100質量部に対して、0.01~2質量部が好ましい。より好ましいのは、0.01~1質量部である。
【0069】
樹脂膜と基板との密着性を向上させる化合物の具体例は、国際公開公報WO2014/171493(2014.10.23公開)の67頁~69頁に記載される化合物が挙げられる。また、その使用割合は、すべての重合体成分100質量部に対して、0.1~30質量部が好ましい。より好ましいのは、1~20質量部である。
【0070】
樹脂組成物には、前記以外の化合物の他に、樹脂膜の誘電率や導電性などの電気特性を変化させる目的の誘電体や導電物質を添加してもよい。
<液晶組成物>
液晶組成物は、液晶及び重合性化合物を有する。
液晶には、ネマチック液晶、スメクチック液晶又はコレステリック液晶を用いることができる。なかでも、本発明における液晶表示素子には、正の誘電異方性を有する液晶を用いることが好ましい。その際、低電圧駆動及び散乱特性の点からは、誘電率の異方性が大きく、屈折率の異方性が大きいものが好ましい。また、液晶には、前記相転移温度、誘電率異方性及び屈折率異方性の各物性値に応じて、2種類以上の液晶を混合して用いることができる。
液晶表示素子をTFT(Thin Film Transistor)などの能動素子として駆動させるためには、液晶の電気抵抗が高くて電圧保持率(VHRともいう。)が高いことが求められる。そのため、液晶には、電気抵抗が高くて紫外線などの活性エネルギー線によりVHRが低下しないフッ素系や塩素系の液晶を用いることが好ましい。
【0071】
更に、液晶表示素子は、液晶組成物中に二色性染料を溶解させてゲストホスト型の素子とすることもできる。その際、電圧無印加時は吸収(散乱)で、電圧印加時に透明となる素子が得られる。また、この素子では、液晶のダイレクターの方向(配向の方向)は、電圧印加の有無により90度変化する。そのため、この素子は、二色性染料の吸光特性の違いを利用することで、ランダム配向と垂直配向でスイッチングを行う従来のゲストホスト型の素子に比べて、高いコントラストが得られる。また、二色性染料を溶解させたゲストホスト型の素子では、液晶が水平方向に配向した場合に有色になり、散乱状態においてのみ不透明となる。そのため、電圧を印加するにつれ、電圧無印加時の有色不透明から有色透明、無色透明の状態に切り替わる素子を得ることもできる。
【0072】
液晶組成物中の重合性化合物は、液晶表示素子作製時の活性エネルギー線や熱により、重合反応してポリマーネットワーク(硬化性樹脂ともいう。)を形成するためのものである。本発明における重合反応は、紫外線を照射して進行するものが好ましい。
重合性化合物は、予め、重合性化合物を重合反応させたポリマーを液晶組成物に導入しても良いが、液晶組成物の取り扱い、即ち、液晶組成物の高粘度化の抑制や液晶への溶解性の点から、重合性化合物を含む液晶組成物を用いることが好ましい。
重合性化合物は、液晶に溶解すれば、特に限定されないが、重合性化合物を液晶に溶解した際に、液晶組成物の一部又は全体が液晶相を示す温度が存在することが必要となる。液晶組成物の一部が液晶相を示す場合であっても、液晶表示素子を肉眼で確認して、素子内全体が、ほぼ一様な透明性と散乱特性が得られていれば良い。
【0073】
重合性化合物は、紫外線や熱により重合する化合物であれば良く、その際、どのような反応形式で重合が進み、硬化性樹脂を形成させても良い。具体的な反応形式としては、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合又は重付加反応が挙げられる。
【0074】
なかでも、重合性化合物の反応形式は、液晶表示素子の光学特性の点から、ラジカル重合が好ましい。その際、重合性化合物としては、下記のラジカル型の重合性化合物、又はそのオリゴマーを用いることができる。また、前記の通り、これらの重合性化合物を重合反応させたポリマーを用いることもできる。
【0075】
ラジカル型の重合性化合物又はそのオリゴマーの具体例は、国際公開公報2015/146987(2015.10.1公開)の69頁~71頁に記載されるラジカル型の重合性化合物が挙げられる。
ラジカル型の重合性化合物又はそのオリゴマーの使用割合は、液晶層と樹脂膜との密着性の点から、液晶組成物中の液晶100質量部に対して、70~150質量部が好ましい。より好ましいのは、80~110質量部である。また、ラジカル型の重合性化合物は、各特性に応じて、1種類又は2種類以上を混合して使用することもできる。
液晶組成物中には、重合性化合物のラジカル重合を促進させる目的で、紫外線によりラジカルを発生するラジカル開始剤(重合開始剤ともいう。)を導入することが好ましい。
具体的には、国際公開公報2015/146987(2015.10.1公開)の71頁~72頁に記載されるラジカル開始剤が挙げられる。
ラジカル開始剤の使用割合は、液晶層と樹脂膜との密着性の点から、液晶組成物中の液晶100質量部に対して、0.01~20質量部が好ましい。より好ましいのは、0.05~10質量部である。また、ラジカル開始剤は、各特性に応じて、1種類又は2種類以上を混合して使用することもできる。
【0076】
液晶組成物中には、下記式[4a]の化合物(特定液晶添加化合物ともいう。)を導入することが好ましい。
【0077】
【化16】
【0078】
は、下記式[4-a]~式[4-j]から選ばれる少なくとも1種の構造を示す。なかでも、式[4-a]、式[4-b]、式[4-c]、式[4-d]、式[4-e]又は式[4-f]が好ましい。より好ましいのは、式[4-a]、式[4-b]、式[4-c]又は式[4-e]である。特に好ましいのは、式[4-a]又は式[4-b]である。
【0079】
【化17】
【0080】
は、水素原子又はベンゼン環を示す。
は、単結合、-O-、-NH-、-N(CH)-、-CHO-、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH)-、-N(CH)CO-、-COO-及び-OCO-から選ばれる少なくとも1種を示す。なかでも、単結合、-O-、-CHO-、-CONH-、-COO-又は-OCO-が好ましい。より好ましいのは、単結合、-O-、-COO-又は-OCO-である。
は、単結合又は-(CH-(aは1~15の整数である)を示す。なかでも、単結合又は-(CH-(aは1~10の整数である)が好ましい。より好ましいのは、-(CH-(aは1~10の整数である)である。
は、単結合、-O-、-OCH-、-COO-及び-OCO-から選ばれる少なくとも1種を示す。なかでも、単結合、-O-又は-COO-が好ましい。より好ましいのは、-O-である。
は、ベンゼン環、シクロヘキサン環及び複素環から選ばれる2価の環状基、又はステロイド骨格を有する炭素数17~51の2価の有機基を示し、前記環状基上の任意の水素原子は、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、炭素数1~3のフッ素含有アルキル基、炭素数1~3のフッ素含有アルコキシ基又はフッ素原子で置換されていても良い。なかでも、ベンゼン環又はシクロヘキサン環、又はステロイド骨格を有する炭素数17~51の2価の有機基が好ましい。より好ましいのは、ベンゼン環又はステロイド骨格を有する炭素数17~51の2価の有機基である。
は、単結合、-O-、-CH-、-OCH-、-CHO-、-COO-及び-OCO-から選ばれる少なくとも1種を示す。なかでも、単結合、-O-、-COO-又は-OCO-が好ましい。より好ましいのは、単結合、-COO-又は-OCO-である。
は、ベンゼン環、シクロヘキサン環及び複素環から選ばれる環状基を示し、これらの環状基上の任意の水素原子が、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、炭素数1~3のフッ素含有アルキル基、炭素数1~3のフッ素含有アルコキシ基又はフッ素原子で置換されていても良い。なかでも、ベンゼン環又はシクロヘキサン環が好ましい。
は、炭素数1~18のアルキル基、炭素数2~18のアルケニル基、炭素数1~18のフッ素含有アルキル基、炭素数1~18のアルコキシ基及び炭素数1~18のフッ素含有アルコキシ基から選ばれる少なくとも1種を示す。なかでも、炭素数1~18のアルキル基若しくはアルコキシ基、又は炭素数2~18のアルケニル基が好ましい。より好ましいのは、炭素数1~12のアルキル基又はアルコキシ基である。
Smは、0~4の整数を示す。なかでも、0~2が好ましい。
特定液晶添加化合物は、ベンゼン環やシクロヘキサン環といった剛直構造の部位と、式[4a]中のSで示される紫外線や熱により重合反応する部位とを有する。そのため、特定液晶添加化合物を液晶組成物中に含めると、特定液晶添加化合物の剛直構造の部位が、液晶の垂直配向性を高め、電圧印加に伴う液晶の駆動を促進させ、液晶表示素子の駆動電圧を低くできる。また、式[4a]中のSの部位が重合性化合物と反応することで、ポリマーネットワークを密な状態に保つことができる。
より具体的な特定液晶添加化合物としては、下記式[4a-1]~式[4a-11]の化合物が挙げられ、これらを用いることが好ましい。
【0081】
【化18】
【0082】
はそれぞれ、-O-又は-COO-を示す。Sはそれぞれ、炭素数1~12のアルキル基を示す。p1はそれぞれ、1~10の整数を示す。p2はそれぞれ、1又は2の整数を示す。
【0083】
【化19】
【0084】
はそれぞれ、単結合、-COO-又は-OCO-を示す。Sはそれぞれ、炭素数1~12のアルキル基又はアルコキシ基を示す。p3はそれぞれ、1~10の整数を示す。p4はそれぞれ、1又は2の整数を示す。
【0085】
【化20】
【0086】
はそれぞれ、-O-又は-COO-を示す。Sはそれぞれ、ステロイド骨格を有する炭素数17~51の2価の有機基を示す。Sはそれぞれ、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数2~18のアルケニル基を示す。p5はそれぞれ、1~10の整数を示す。
特定液晶添加化合物の使用割合は、液晶層と樹脂膜との密着性の点から、液晶組成物中の液晶100質量部に対して、0.1~30質量部が好ましい。より好ましいのは、0.5~20質量部である。特に好ましいのは、1~10質量部である。また、特定液晶添加化合物は、各特性に応じて、1種類又は2種類以上を混合して使用することもできる。
液晶組成物の調製方法としては、液晶、重合性化合物、及び特定液晶添加化合物を一緒に混合する方法や、予め、重合性化合物と、特定液晶添加化合物とを混合したものを、液晶と混合する方法が挙げられる。
なかでも、本発明においては、予め、重合性化合物と特定液晶添加化合物とを混合したものを液晶と混合する方法が好ましい。
前記の通りに液晶組成物を調製する場合、重合性化合物、及び特定液晶添加化合物の溶解性に応じて、加熱することもできる。その際の温度は100℃未満が好ましい。
<液晶表示素子の作製方法>
液晶表示素子に用いる基板としては、透明性の高い基板であれば特に限定されず、ガラス基板の他、アクリル基板、ポリカーボネート基板、PET(ポリエチレンテレフタレート)基板などのプラスチック基板、更には、それらのフィルムを用いることができる。特に、調光窓などに用いる場合には、プラスチック基板やフィルムが好ましい。また、プロセスの簡素化の観点からは、液晶駆動のためのITO電極、IZO(Indium Zinc Oxide)電極、IGZO(Indium Gallium Zinc Oxide)電極、有機導電膜などが形成された基板を用いることが好ましい。また、反射型の液晶表示素子とする場合には、片側の基板のみにならば、シリコンウエハやアルミニウムなどの金属や誘電体多層膜が形成された基板を使用できる。
液晶表示素子は、基板の少なくとも一方に、特定化合物を含む樹脂組成物から得られる樹脂膜を有する。特に、両方の基板に樹脂膜があることが好ましい。
【0087】
樹脂組成物の塗布方法は、特に限定されないが、工業的には、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェット法、ディップ法、ロールコータ法、スリットコータ法、スピンナー法、スプレー法などがあり、基板の種類や目的とする樹脂膜の膜厚に応じて、適宜選択できる。
【0088】
樹脂組成物を基板上に塗布した後は、ホットプレート、熱循環型オーブン、IR(赤外線)型オーブンなどの加熱手段により、基板の種類や樹脂組成物に用いる溶媒に応じて30~300℃、好ましくは、30~250℃の温度で溶媒を蒸発させて樹脂膜とすることができる。特に、基板にプラスチック基板を用いる場合には、30~150℃の温度で処理することが好ましい。
【0089】
焼成後の樹脂膜の厚みは、厚すぎると液晶表示素子の消費電力の面で不利となり、薄すぎると素子の信頼性が低下する場合があるので、好ましいのは、5~500nmである。より好ましいのは、10~300nmである。特に好ましいのは、10~250nmである。
【0090】
液晶表示素子に用いる液晶組成物は、前記の通りの液晶組成物であるが、そのなかに、液晶表示素子の電極間隙(ギャップともいう。)を制御するためのスペーサーを導入することもできる。
【0091】
液晶組成物の注入方法は、特に限定されないが、例えば、次の方法が挙げられる。即ち、基板にガラス基板を用いる場合、樹脂膜が形成された一対の基板を用意し、片側の基板の4片を、一部分を除いてシール剤を塗布し、その後、樹脂膜の面が内側になるようにして、もう片側の基板を貼り合わせた空セルを作製する。そして、シール剤が塗布されていない場所から、液晶組成物を減圧注入して、液晶組成物注入セルを得る方法が挙げられる。更に、基板にプラスチック基板やフィルムを用いる場合には、樹脂膜が形成された一対の基板を用意し、片側の基板の上にODF(One Drop Filling)法やインクジェット法などで、液晶組成物を滴下し、その後、もう片側の基板を貼り合わせて、液晶組成物注入セルを得る方法が挙げられる。
【0092】
液晶表示素子のギャップは、前記スペーサーなどで制御できる。その方法は、前記の通りに、液晶組成物中に目的とする大きさのスペーサーを導入する方法や、目的とする大きさのカラムスペーサーを有する基板を用いる方法などが挙げられる。また、基板にプラスチックやフィルム基板を用いて、基板の貼り合わせをラミネートで行う場合は、スペーサーを導入せずに、ギャップを制御できる。
【0093】
液晶表示素子のギャップの大きさは、1~100μmが好ましい。より好ましいのは、1~50μmである。特に好ましいのは、2~30μmである。ギャップが小さすぎると、液晶表示素子のコントラストが低下し、大きすぎると、素子の駆動電圧が高くなる。
【0094】
液晶表示素子は、液晶組成物の一部又は全体が液晶性を示す状態で、液晶組成物の硬化を行い、液晶層を形成させて得られる。この液晶組成物の硬化は、前記液晶組成物注入セルに、紫外線の照射や加熱をして行う。本発明においては、前記の通り、紫外線の照射が好ましい。
【0095】
紫外線の照射に用いる紫外線照射装置の光源としては、例えば、メタルハライドランプ又は高圧水銀ランプが挙げられる。また、紫外線の波長は、250~400nmが好ましい。なかでも、310~370nmが好ましい。また、紫外線を照射した後に、加熱処理を行っても良い。その際の温度としては、40~120℃が好ましい。より好ましいのは、40~80℃である。
加熱に用いる装置は、前記樹脂組成物を基板上に塗布した後に用いる加熱手段が挙げられる。また、その際の温度は、重合性化合物の反応が進行する温度や基板の種類に応じて、適宜、選択される。具体的には、80℃~200℃が好ましい。
【実施例
【0096】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明するが、これらに限定されるものではない。
以下で用いる略語は下記の通りである。
「特定化合物」
【0097】
【化21】
【0098】
「ポリイミド系重合体に用いる化合物類」
<特定ジアミン>
【0099】
【化22】
【0100】
<その他ジアミン>
【0101】
【化23】
【0102】
<特定テトラカルボン酸成分>
【0103】
【化24】
【0104】
「架橋性化合物」
【0105】
【化25】
【0106】
「溶媒」
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
γ-BL:γ-ブチロラクトン
BCS:エチレングリコールモノブチルエーテル
PB:プロピレングリコールモノブチルエーテル
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
「液晶組成物に用いる化合物類」
<特定液晶添加化合物>
【0107】
【化26】
【0108】
<重合性化合物>
R1:IBXA(大阪有機化学工業社製)
R2:2-ヒドロキシエチルメタクリレート(東京化成工業社製)
R3:KAYARAD FM-400(日本化薬社製)
R4:EBECRYL 230(ダイセル・オルネクス社製)
R5:カレンズMT PE1(昭和電工社製)
<光ラジカル開始剤>
P1:IRGACURE 184(BASF社製)
<液晶>
L1:MLC-3018(メルク社製)
「ポリイミド系重合体の分子量測定」
常温ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置(GPC-101)(昭和電工社製)、カラム(KD-803,KD-805)(Shodex社製)を用いて、以下のようにして測定した。
【0109】
カラム温度:50℃
溶離液:N,N-ジメチルホルムアミド(添加剤として、臭化リチウム一水和物(LiBr・HO)が30mmol/L(リットル)、リン酸・無水結晶(o-リン酸)が30mmol/L、テトラヒドロフラン(THF)が10ml/L)
流速:1.0ml/分
検量線作成用標準サンプル:TSK 標準ポリエチレンオキサイド(分子量;約900,000、150,000、100,000及び30,000)(東ソー社製)及びポリエチレングリコール(分子量;約12,000、4,000及び1,000)(ポリマーラボラトリー社製)。
「ポリイミド系重合体のイミド化率の測定」
ポリイミド粉末20mgをNMR(核磁気共鳴)サンプル管(NMRサンプリングチューブスタンダード,φ5(草野科学社製))に入れ、重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO-d6,0.05質量%TMS(テトラメチルシラン)混合品)(0.53ml)を添加し、超音波をかけて完全に溶解させた。この溶液をNMR測定機(JNW-ECA500)(日本電子データム社製)にて500MHzのプロトンNMRを測定した。イミド化率は、イミド化前後で変化しない構造に由来するプロトンを基準プロトンとして決め、このプロトンのピーク積算値と、9.5ppm~10.0ppm付近に現れるアミド酸のNH基に由来するプロトンピーク積算値とを用い以下の式によって求めた。
【0110】
イミド化率(%)=(1-α・x/y)×100
(xはアミド酸のNH基由来のプロトンピーク積算値、yは基準プロトンのピーク積算値、αはポリアミド酸(イミド化率が0%)の場合におけるアミド酸のNH基プロトン1個に対する基準プロトンの個数割合である。)
「ポリイミド系重合体の合成」
<合成例1>
C1(2.70g,13.8mmol)、B1(1.09g,10.1mmol)及びB2(1.24g,4.33mmol)をNMP(15.1g)中で混合し、25℃で8時間反応させ、樹脂固形分濃度25質量%のポリアミド酸溶液(1)を得た。このポリアミド酸の数平均分子量(Mnともいう。)は27,200、重量平均分子量(Mwともいう。)は81,800であった。
<合成例2>
C1(2.90g,14.8mmol)、B1(1.06g,9.80mmol)及びB2(1.21g,4.23mmol)をNMP(15.5g)中で混合し、25℃で8時間反応させ、樹脂固形分濃度25質量%のポリアミド酸溶液(2)を得た。このポリアミド酸のMnは28,900、Mwは82,800であった。
<合成例3>
C1(2.70g,13.8mmol)、A1(1.73g,6.55mmol)及びB1(0.71g,6.57mmol)をNMP(15.4g)中で混合し、25℃で8時間反応させ、樹脂固形分濃度25質量%のポリアミド酸溶液(3)を得た。このポリアミド酸のMnは26,300、Mwは78,300であった。
<合成例4>
C2(1.64g,6.55mmol)、A1(3.84g,14.5mmol)及びB2(1.78g,6.22mmol)をNMP(20.5g)中で混合し、60℃で4時間反応させた後、C1(3.00g,15.3mmol)とNMP(10.3g)を加え、40℃で6時間反応させ、樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液(4)を得た。このポリアミド酸のMnは24,100、Mwは74,800であった。
<合成例5>
合成例4で得られたポリアミド酸溶液(4)(20.0g)にNMPを加え6質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(2.30g)及びピリジン(1.80g)を加え、60℃で4時間反応させた。この反応溶液をメタノール(500ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥してポリイミド粉末(5)を得た。このポリイミドのイミド化率は58%であり、Mnは22,100、Mwは62,700であった。
<合成例6>
C2(0.64g,2.56mmol)、A1(1.92g,7.27mmol)及びB1(0.52g,4.81mmol)をγ-BL(10.2g)中で混合し、60℃で4時間反応させた後、C1(2.00g,10.2mmol)とγ-BL(5.08g)を加え、40℃で6時間反応させ、樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液(6)を得た。このポリアミド酸のMnは19,500、Mwは63,200であった。
<合成例7>
C2(0.64g,2.56mmol)、A1(0.96g,3.63mmol)、A2(0.49g,2.41mmol)、B1(0.39g,3.61mmol)及びB2(0.69g,2.41mmol)をγ-BL(10.4g)中で混合し、60℃で4時間反応させた後、C1(2.00g,10.2mmol)とγ-BL(5.18g)を加え、40℃で6時間反応させ、樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液(7)を得た。このポリアミド酸のMnは16,900、Mwは59,400であった。
<合成例8>
C3(5.00g,22.3mmol)、A1(3.36g,12.7mmol)、B1(0.46g,4.25mmol)及びB2(1.21g,4.23mmol)をNMP(30.1g)中で混合し、40℃で6時間反応させ、樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液(8)を得た。このポリアミド酸のMnは21,700、Mwは63,900であった。
<合成例9>
合成例8で得られたポリアミド酸溶液(8)(20.0g)にNMPを加え6質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(2.20g)及びピリジン(1.70g)を加え、60℃で3時間反応させた。この反応溶液をメタノール(500ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥してポリイミド粉末(9)を得た。このポリイミドのイミド化率は51%であり、Mnは19,300、Mwは58,900であった。
<合成例10>
窒素雰囲気下、A1(0.73g,2.76mmol)、A2(0.37g,1.82mmol)、B2(1.32g,4.61mmol)、ピリジン(1.81g)及びNMP(15.4g)を加え、撹拌して溶解させ、C4(2.70g,9.09mmol)を加え、15℃で15時間反応させた。その後、アクリロイルクロリド(0.04g)を加え、15℃で4時間反応させた。この反応溶液を水(500g)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をイソプロピルアルコールで洗浄し、100℃で減圧乾燥してポリアミド酸アルキルエステル粉末(10)を得た。このポリアミド酸アルキルエステルのMnは17,200、Mwは38,500であった。
【0111】
合成例で得られたポリイミド系重合体を、表1に示す。
【0112】
【表1】
【0113】
*1:ポリアミド酸。
*2:ポリアミド酸アルキルエステル。
「樹脂組成物の製造」
<実施例1>
合成例1の手法で得られたポリアミド酸溶液(1)(10.0g)に、T1(0.20g)及びNMP(16.0g)を加え、25℃で4時間撹拌した。その後、BCS(15.7g)を加え、25℃で6時間撹拌して、樹脂組成物(1)を得た。この樹脂組成物には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であった。
<実施例2>
合成例2の手法で得られたポリアミド酸溶液(2)(10.0g)に、T1(0.20g)及びNMP(16.0g)を加え、25℃で4時間撹拌した。その後、BCS(15.7g)を加え、25℃で6時間撹拌して、樹脂組成物(2)を得た。この樹脂組成物には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であった。
<実施例3>
合成例3の手法で得られたポリアミド酸溶液(3)(10.0g)に、T1(0.20g)及びNMP(16.0g)を加え、25℃で4時間撹拌した。その後、BCS(15.7g)を加え、25℃で6時間撹拌して、樹脂組成物(3)を得た。この樹脂組成物には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であった。
<実施例4>
合成例4の手法で得られたポリアミド酸溶液(4)(10.0g)に、T1(0.13g)及びNMP(16.0g)を加え、25℃で4時間撹拌した。その後、BCS(7.83g)及びPB(7.83g)を加え、25℃で6時間撹拌して、樹脂組成物(4)を得た。この樹脂組成物には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であった。
<実施例5>
合成例4の手法で得られたポリアミド酸溶液(4)(10.0g)に、T1(0.13g)及びNMP(16.0g)を加え、25℃で4時間撹拌した。その後、K1(0.18g)、BCS(7.83g)及びPB(7.83g)を加え、25℃で6時間撹拌して、樹脂組成物(5)を得た。この樹脂組成物には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であった。
<実施例6>
合成例5の手法で得られたポリイミド粉末(5)(2.50g)に、NMP(27.4g)を加え、70℃で24時間撹拌して溶解させた。その後、T1(0.25g)及びBCS(11.8g)を加え、25℃で6時間撹拌して、樹脂組成物(6)を得た。この樹脂組成物には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であった。
<実施例7>
合成例5の手法で得られたポリイミド粉末(5)(2.50g)に、γ-BL(7.83g)を加え、70℃で24時間撹拌して溶解させた。その後、T1(0.18g)、K2(0.08g)及びPGME(31.3g)を加え、25℃で6時間撹拌して、樹脂組成物(7)を得た。この樹脂組成物には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であった。
<実施例8>
合成例6の手法で得られたポリアミド酸溶液(6)(10.0g)に、T1(0.13g)及びγ-BL(0.33g)を加え、25℃で4時間撹拌した。その後、PGME(31.3g)を加え、25℃で6時間撹拌して、樹脂組成物(8)を得た。この樹脂組成物には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であった。
<実施例9>
合成例6の手法で得られたポリアミド酸溶液(6)(10.0g)に、T1(0.20g)及びγ-BL(0.33g)を加え、25℃で4時間撹拌した。その後、K2(0.18g)及びPGME(31.3g)を加え、25℃で6時間撹拌して、樹脂組成物(9)を得た。この樹脂組成物には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であった。
<実施例10>
合成例7の手法で得られたポリアミド酸溶液(7)(10.0g)に、T1(0.08g)及びγ-BL(0.33g)を加え、25℃で4時間撹拌した。その後、K2(0.13g)及びPGME(31.3g)を加え、25℃で6時間撹拌して、樹脂組成物(10)を得た。この樹脂組成物には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であった。
<実施例11>
合成例8の手法で得られたポリアミド酸溶液(8)(10.0g)に、T1(0.25g)及びNMP(19.9g)を加え、25℃で4時間撹拌した。その後、PB(11.8g)を加え、25℃で6時間撹拌して、樹脂組成物(11)を得た。この樹脂組成物には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であった。
<実施例12>
合成例9の手法で得られたポリイミド粉末(9)(2.50g)に、NMP(27.4g)を加え、70℃で24時間撹拌して溶解させた。その後、T1(0.25g)、K1(0.08g)、BCS(7.83g)及びPB(3.92g)を加え、25℃で6時間撹拌して、樹脂組成物(12)を得た。この樹脂組成物には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であった。
<実施例13>
合成例10で得られたポリアミド酸アルキルエステル粉末(10)(2.50g)に、NMP(31.3g)を加え、40℃で24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、T1(0.13g)及びBCS(7.83g)を加え、25℃で15時間撹拌して、樹脂組成物(13)を得た。この樹脂組成物に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
<比較例1>
合成例1の手法で得られたポリアミド酸溶液(1)(10.0g)に、NMP(16.0g)及びBCS(15.7g)を加え、25℃で6時間撹拌して、樹脂組成物(14)を得た。この樹脂組成物には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であった。
<比較例2>
合成例5の手法で得られたポリイミド粉末(5)(2.50g)に、NMP(27.4g)を加え、70℃で24時間撹拌して溶解させた。その後、BCS(11.8g)を加え、25℃で6時間撹拌して、樹脂組成物(15)を得た。この樹脂組成物には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であった。
<比較例3>
合成例6の手法で得られたポリアミド酸溶液(6)(10.0g)に、γ-BL(0.33g)及びPGME(31.3g)を加え、25℃で6時間撹拌して、樹脂組成物(16)を得た。この樹脂組成物には、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であった。
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物を、表2~表4に示す。
【0114】
【表2】
【0115】
【表3】
【0116】
【表4】
【0117】
*3:括弧内の数値は重合体100質量部に対する特定化合物の導入量(質量部)を示す。
*4:括弧内の数値は重合体100質量部に対する架橋性化合物の導入量(質量部)を示す。
「液晶組成物の作製」
<液晶組成物(A)の作製>
R1(1.20g)、R2(0.30g)、R3(1.20g)、R4(0.90g)及びR5(0.30g)を混合し、60℃で2時間撹拌して、重合性化合物の溶液を作製した。その後、作製した重合性化合物の溶液、L1(6.00g)及びP1(0.10g)を混合し、25℃で6時間撹拌して、液晶組成物(A)を得た。
<液晶組成物(B)の作製>
R1(1.20g)、R2(0.30g)、R3(1.20g)、R4(0.90g)及びR5(0.30g)を混合し、60℃で2時間撹拌して、重合性化合物の溶液を作製した。その一方で、S1(0.20g)及びL1(5.80g)を混合し、25℃で2時間撹拌して特定液晶添加化合物を含む液晶を作製した。その後、作製した重合性化合物の溶液、特定液晶添加化合物を含む液晶、及びP1(0.10g)を混合し、25℃で6時間撹拌して、液晶組成物(B)を得た。
<液晶組成物(C)の作製>
R1(1.20g)、R2(0.30g)、R3(1.20g)、R4(0.90g)及びR5(0.30g)を混合し、60℃で2時間撹拌して、重合性化合物の溶液を作製した。その一方で、S2(0.40g)及びL1(5.60g)を混合し、25℃で2時間撹拌して特定液晶添加化合物を含む液晶を作製した。その後、作製した重合性化合物の溶液、特定液晶添加化合物を含む液晶、及びP1(0.10g)を混合し、25℃で6時間撹拌して、液晶組成物(C)を得た。
「液晶表示素子の作製(ガラス基板)」
前記実施例及び比較例の手法で得られた樹脂組成物を、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過した。得られた溶液を純水及びIPA(イソプロピルアルコール)で洗浄した100×100mmのITO電極付きガラス基板(縦:100mm、横:100mm、厚さ:0.7mm)のITO面上にスピンコートし、ホットプレート上にて100℃で5分間、熱循環型クリーンオーブンにて210℃で30分間加熱処理をして、膜厚が100nmの樹脂膜付きのITO基板を得た。この樹脂膜付きのITO基板を2枚用意し、その一方の基板の樹脂膜面に、20μmのスペーサーを塗布した。その後、その基板のスペーサーを塗布した樹脂膜面に、ODF(One Drop Filling)法にて前記液晶組成物(A)~(C)を滴下し、次いで、他方の基板の樹脂膜面が向き合うように貼り合わせを行い、処理前の液晶表示素子を得た。
【0118】
この処理前の液晶表示素子に、照度20mW/cmのメタルハライドランプを用いて、350nm以下の波長をカットし、照射時間60秒で紫外線照射を行った。これにより、液晶表示素子(ガラス基板)を得た。
「液晶表示素子の作製(プラスチック基板)」
前記実施例及び比較例の手法で得られた樹脂組成物を、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過した。得られた溶液を純水で洗浄した150×150mmのITO電極付きPET基板(縦:150mm、横:150mm、厚さ:0.1mm)のITO面上にバーコーターにて塗布をし、熱循環型オーブンにて120℃で2分間加熱処理をして、膜厚が100nmの樹脂膜付きのITO基板を得た。この樹脂膜付きのITO基板を2枚用意し、その一方の基板の樹脂膜面に、20μmのスペーサーを塗布した。その後、その基板のスペーサーを塗布した樹脂膜面に、ODF(One Drop Filling)法にて前記液晶組成物(A)~(C)を滴下し、次いで、他方の基板の樹脂膜面が向き合うように貼り合わせを行い、処理前の液晶表示素子を得た。なお、ODF法にて、液晶組成物の滴下及び貼り合わせを行う際には、ITO電極付きPET基板の支持基板としてガラス基板を用いた。その後、紫外線を照射する前に、その支持基板を外した。
【0119】
この処理前の液晶表示素子に、前記「液晶表示素子の作製(ガラス基板)」と同様の手法で紫外線を照射し、液晶表示素子(プラスチック基板)を得た。
「光学特性(散乱特性と透明性)の評価」
本評価は、液晶表示素子(ガラス基板及びプラスチック基板)の電圧無印加状態(0V)及び電圧印加状態(交流駆動:10V~60V)のHaze(曇り度)を測定することで行った。その際、Hazeは、JIS K 7136に準拠し、ヘーズメータ(HZ-V3,スガ試験機社製)で測定した。なお、本評価では、電圧無印加状態のHazeが高いほど散乱特性に優れ、電圧印加状態でのHazeが低いほど透明性に優れるとした。
【0120】
また、液晶表示素子の高温高湿環境下の安定性試験として、温度80℃、湿度90%RHの恒温恒湿槽内に24時間保管した後の測定も行った。具体的には、初期のHazeに対して、恒温恒湿槽保管後のHazeの変化が小さいものほど、本評価に優れるとした。
【0121】
更に、液晶表示素子の光の照射に対する安定性試験として、卓上型UV硬化装置(HCT3B28HEX-1)(センライト社製)を用いて、365nm換算で5J/cmの紫外線を照射した後の観察も行った。具体的には、初期のHazeに対して、紫外線照射後のHazeの変化が小さいものほど、本評価に優れるとした。
【0122】
初期、恒温恒湿槽保管後(恒温恒湿)及び紫外線照射後(紫外線)のHazeの測定結果を、表5~表7にまとめて示す。
「液晶層と樹脂膜(樹脂膜と電極)との密着性の評価」
本評価は、液晶表示素子(ガラス基板及びプラスチック基板)を、温度80℃、湿度90%RHの恒温恒湿槽内に24時間保管し、液晶表示素子の剥離と気泡の有無を確認することで行った(液晶表示素子の高温高湿環境下の安定性試験として)。具体的には、素子の剥離(液晶層と樹脂膜、或いは樹脂膜と電極とが剥がれている状態)が起こっていないもの、及び素子内に気泡が発生していないものを、本評価に優れるとした(表中の良好表示)。その際、実施例14~実施例18においては、前記標準試験に加え、強調試験として、温度80℃、湿度90%RHの恒温恒湿槽内に120時間保管した後の確認も行った。なお、評価方法は前記と同様である。
【0123】
また、液晶表示素子に、卓上型UV硬化装置(HCT3B28HEX-1)(センライト社製)を用いて、365nm換算で5J/cmの紫外線を照射した後の確認も行った(液晶表示素子の光の照射に対する安定性試験として)。具体的には、素子の剥離が起こっていないもの、及び素子内に気泡が発生していないものを、本評価に優れるとした(表中の良好表示)。
【0124】
初期、恒温恒湿槽保管後(恒温恒湿)及び紫外線照射後(紫外線)の液晶層と樹脂膜(樹脂膜と電極)との密着性の結果(密着性)を、表8~表10にまとめて示す。
<実施例14~実施例28及び比較例4~比較例6>
前記実施例及び比較例の手法で得られた樹脂組成物(1)~(16)のいずれかと、前記液晶組成物(A)~(C)を用いて、前記手法で液晶表示素子の作製、光学特性(散乱特性と透明性)の評価、及び液晶層と樹脂膜(樹脂膜と電極)との密着性の評価を行った。その際、実施例14~実施例20、実施例26~実施例28、比較例4及び比較例5は、ガラス基板を用いて液晶表示素子の作製と各評価を行い、実施例21~実施例25及び比較例6は、プラスチック基板を用いた。
【0125】
更に、実施例14~実施例18における液晶層と樹脂膜(樹脂膜と電極)との密着性の評価では、前記標準試験とともに、強調試験として、温度80℃、湿度90%RHの恒温恒湿槽内に120時間保管した際の評価も行った(その他の条件は、前記条件と同様)。
【0126】
【表5】
【0127】
【表6】
【0128】
【表7】
【0129】
【表8】
【0130】
【表9】
【0131】
【表10】
【0132】
*5:素子内に極少量の気泡が見られた。
*6:素子内に少量の気泡が見られた(*5よりも多い)。
*7:素子内に気泡が見られた(*6よりも多い)。
*8:素子内に多くの気泡が見られた(*7よりも多い)。
【0133】
前記の通り、特定化合物を含む樹脂組成物を用いた実施例の液晶表示素子は、それを用いてない比較例に比べて、恒温恒湿槽保管後、及び紫外線照射後のHazeの変化が小さくなった。また、実施例では、恒温恒湿槽保管後及び紫外線照射後でも、液晶表示素子の剥離や気泡の発生は見られなかった。これらの結果は、液晶表示素子の基板にプラスチック基板を用いても、同様であった。具体的には、実施例14と比較例4との比較、実施例19と比較例5との比較、及び実施例22と比較例6との比較である。
また、重合体にポリイミド系重合体を用いた場合において、そのポリマー末端がカルボン酸或いはジカルボン酸の構造であるもの、即ち、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分の重合反応の際、テトラカルボン酸成分の合計モル数が、ジアミン成分のモル数よりも大きいものは、ポリマー末端がアミノ基の構造のもの(前記重合体反応の際、テトラカルボン酸成分の合計モル数がジアミン成分のモル数よりも小さいもの)に比べて、強調試験における液晶表示素子内の気泡の発生が抑制された。具体的には、同一の条件での比較において、実施例14と実施例15との比較である。
更に、重合体に、特定構造を有する特定ジアミンを用いた場合、強調試験における液晶表示素子内の気泡の発生が抑制された。具体的には、同一の条件での比較において、実施例15と実施例16との比較である。
【0134】
加えて、樹脂組成物に特定架橋性化合物を導入した場合、強調試験における液晶表示素子内の気泡の発生が抑制された。具体的には、同一の条件での比較において、実施例17と実施例18との比較である。
【0135】
特定液晶添加化合物を含む液晶組成物を用いた場合、それを用いない場合に比べて、液晶表示素子の駆動電圧が低くなった。具体的には、同一の条件での比較において、実施例19と実施例20との比較、及び実施例22と実施例23との比較である。
【産業上の利用可能性】
【0136】
特定の構造を有する化合物を含む樹脂組成物から得られた樹脂膜を用いることで、長時間、高温高湿や光の照射に曝される過酷な環境においても、素子の剥がれや気泡の発生、及び光学特性の低下を抑制できる液晶表示素子が得られる。
【0137】
また、本発明の液晶表示素子は、電圧無印加時に散乱状態となり、電圧印加時には透明状態になるノーマル型素子に、好適に用いることができる。そして、本素子は、表示を目的とする液晶ディスプレイ、更には、光の遮断と透過とを制御する調光窓や光シャッター素子などに用いることができ、このノーマル型素子の基板には、プラスチック基板を用いることができる。
【0138】
なお、2019年2月27日に出願された日本特許出願2019-034306号の明細書、特許請求の範囲及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。