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特許7424500光硬化型ライニング材用樹脂組成物、光硬化型ライニング材、及びその硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】光硬化型ライニング材用樹脂組成物、光硬化型ライニング材、及びその硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/44 20060101AFI20240123BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20240123BHJP
   C08G 59/17 20060101ALI20240123BHJP
   C09D 163/10 20060101ALI20240123BHJP
   B29C 63/26 20060101ALI20240123BHJP
   F16L 55/164 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
C08F2/44 A
C08F290/06
C08G59/17
C09D163/10
B29C63/26
F16L55/164
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022545386
(86)(22)【出願日】2021-09-09
(86)【国際出願番号】 JP2021033080
(87)【国際公開番号】W WO2022070816
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2022-07-26
(31)【優先権主張番号】P 2020163205
(32)【優先日】2020-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】野口 徹平
(72)【発明者】
【氏名】大角 重明
(72)【発明者】
【氏名】友國 英彦
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-116889(JP,A)
【文献】特開2004-010771(JP,A)
【文献】特開2007-291179(JP,A)
【文献】特開平09-031184(JP,A)
【文献】特開2002-317021(JP,A)
【文献】特開2003-268056(JP,A)
【文献】特開2003-206306(JP,A)
【文献】特開2005-248131(JP,A)
【文献】特開2006-045404(JP,A)
【文献】特開2007-077217(JP,A)
【文献】特開2020-029477(JP,A)
【文献】特開2002-138220(JP,A)
【文献】特開平10-087764(JP,A)
【文献】特開2005-097523(JP,A)
【文献】特許第5540165(JP,B2)
【文献】特開2003-192747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F、C09D、C09J、C08G59
B29C63、F16L55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基を有するエポキシ(メタ)アクリレート(a1)及び不飽和単量体(a2)を必須成分とする樹脂成分(A)と、増粘剤(B)と、光重合開始剤(C)とを含有する光硬化型ライニング材用樹脂組成物の製造方法であって、前記光硬化型ライニング材用樹脂組成物が、光硬化型プリプレグ用樹脂組成物であり、前記カルボキシル基を有するエポキシ(メタ)アクリレート(a1)が、エポキシ樹脂及び(メタ)アクリル酸を反応させて得られたエポキシ(メタ)アクリレートと二塩基酸とを反応させて得られたものであり、前記不飽和単量体(a2)が、多官能(メタ)アクリレートを含むものであり、前記増粘剤(B)が、酸化マグネシウムを含むものであり、前記増粘剤(B)の使用量が、前記樹脂成分(A)100質量部に対して、0.1~15質量部の範囲であり、25℃で24時間静置した後に、ブルックフィールド粘度計を用いて測定した25℃における粘度が、1000~20000dPa・sであることを特徴とする光硬化型ライニング材用樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記カルボキシル基を有するエポキシ(メタ)アクリレート(a1)と前記不飽和単量体(a2)との質量比(a1/a2)が、25/75~75/25の範囲である請求項1記載の光硬化型ライニング材用樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記カルボキシル基を有するエポキシ(メタ)アクリレート(a1)が、エポキシ(メタ)アクリレートと二塩基酸との反応物である請求項1又は2記載の光硬化型ライニング材用樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記不飽和単量体(a2)が、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートアルキルエーテル、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートアルキルエーテル、2-エチルヘキシルメタクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソトリデシル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ジアリルフタレート、及びジビニルベンゼンからなる群より選ばれる1以上の単量体を含むものである請求項1~3いずれか1項記載の光硬化型ライニング材用樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項記載の製造方法で得られた光硬化型ライニング材用樹脂組成物、及びガラス繊維強化材を含有することを特徴とする光硬化型ライニング材の製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の製造方法で得られた光硬化型ライニング材の硬化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化型ライニング材用樹脂組成物、光硬化型ライニング材、及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
下水道等の老朽化管の補修法として、スチレン系不飽和ポリエステル樹脂組成物及びビニルエステル樹脂組成物を用いたライニング材による熱硬化型の更生工法が多用されているが、これらの材料には、施工時間の短縮が求められている。
【0003】
このような状況下、数平均分子量が500~4000の範囲にある不飽和ポリエステル、及びアルコール残基として環内に炭素間二重結合又は窒素原子を1個有する環状炭化水素基を含む基を有する単官能性(メタ)アクリレート系モノマーを含む硬化性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、この硬化性樹脂組成物を用いたライニング材では、靭性と耐熱性の両立が困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-77218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、適正な増粘挙動を示し、硬化性に優れ、曲げ強度、引張伸度、及び耐熱性に優れるライニング材硬化物が得られる光硬化型ライニング材用樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、特定の樹脂成分と増粘剤と光重合開始剤とを含有する光硬化型ライニング材用樹脂組成物が、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、カルボキシル基を有するエポキシ(メタ)アクリレート(a1)及び不飽和単量体(a2)を必須成分とする樹脂成分(A)と、増粘剤(B)と、光重合開始剤(C)とを含有することを特徴とする光硬化型ライニング材用樹脂組成物に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の光硬化型ライニング材用樹脂組成物から得られる光硬化型ライニング材は、硬化性に優れ、曲げ強度、引張伸度、及び耐熱性に優れるライニング材硬化物が得られることから、下水道管等の管更生に好適に用いることができる。また、上水道管をはじめとしたガス管、電力管等のインフラ補修用途、及び浴室の防水床等の補修用プリプレグにも用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の光硬化型ライニング材用樹脂組成物は、カルボキシル基を有するエポキシ(メタ)アクリレート(a1)及び不飽和単量体(a2)を必須成分とする樹脂成分(A)と、増粘剤(B)と、光重合開始剤(C)とを含有するものである。
【0010】
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタアクリレートの一方又は両方をいい、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸とメタクリル酸の一方又は両方をいう。
【0011】
前記カルボキシル基を有するエポキシ(メタ)アクリレート(a1)は、例えば、エポキシ(メタ)アクリレートと二塩基酸とのエステル反応により得られるが、硬化性がより向上することから、二塩基酸としては、不飽和二塩基酸が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。
【0012】
前記二塩基酸としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸等の不飽和二塩基酸;フタル酸、無水フタル酸、ハロゲン化無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、コハク酸、無水コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,12-ドデカン二酸,2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸無水物、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ナジック酸無水物、メチルナジック酸無水物等の飽和二塩基酸などが挙げられる。
【0013】
前記エポキシ(メタ)アクリレートは、例えば、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とを反応させることで得られる。
【0014】
前記エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、ビスクレゾールフルオレン型等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、オキゾドリドン変性エポキシ樹脂、これらの樹脂の臭素化エポキシ樹脂等のフェノールのグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテル等の多価アルコールのグリシジルエーテル、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、1-エポシエチル-3,4-エポキシシクロヘキサン等の脂環式エポキシ樹脂、フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ジグリシジル-p-オキシ安息香酸、ダイマー酸グリシジルエステルなどのグリシジルエステル、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、トリグリシジル-p一アミノフェノール、N,N-ジグリシジルアニリンなどのグリシジルアミン、1,3-ジグリシジル-5,5-ジメチルヒダントイン、トリグリシジルイソシアヌレートなどの複素環式エポキシ樹脂などが挙げられるが、これらの中でも、前記樹脂成分(A)の屈折率を一定の範囲に調整しやすく、硬化性をより向上できることから、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。なお、これらのエポキシ樹脂は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0015】
前記したエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応は、エステル化触媒を用い、60~140℃において行われることが好ましい。また、重合禁止剤等を使用することもできる。
【0016】
前記カルボキシル基を有するエポキシ(メタ)アクリレート(a1)中の、水酸基とカルボキシル基とのモル比(OH/COOH)は、より適正な増粘挙動を示すことから、95/5~50/50が好ましく、90/10~60/40がより好ましい。
【0017】
前記カルボキシル基を有するエポキシ(メタ)アクリレート(a1)の酸価は、より適正な増粘挙動が得られることから、10~50が好ましく、15~40がより好ましい。
【0018】
前記不飽和単量体(a2)としては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートアルキルエーテル、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートアルキルエーテル、2-エチルヘキシルメタクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソトリデシル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、メタクリル(メタ)アクリレート、等の単官能(メタ)アクリレート化合物;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート化合物;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート化合物、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ジアリルフタレート、ジビニルベンゼンなどが挙げられるが、これらの中でも、前記樹脂成分(A)と共重合性に優れ、硬化性及び曲げ強度、引張伸度、耐熱性をより向上できることから、多官能(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。なお、これらの不飽和単量体は単独で用いることも、2種以上併用することもできる。
【0019】
前記ラジカル硬化性樹脂(a1)と前記不飽和単量体(a2)との質量比(a1/a2)は、繊維への樹脂含浸性、及び硬化性のバランスがより向上することから、25/75~75/25の範囲が好ましく、30/70~70/30の範囲がより好ましい。
【0020】
前記樹脂成分(A)の屈折率は、硬化性がより向上することから、1.530~1.550の範囲が好ましい。
【0021】
前記樹脂成分(A)は、前記エポキシ(メタ)アクリレート(a1)及び前記不飽和単量体(a2)を必須成分として含有するものであるが、その他の樹脂成分を含有してもよい。
【0022】
前記増粘剤(B)としては、例えば、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム等の金属酸化物や金属水酸化物、イソシアネート化合物、熱可塑性粉末樹脂などが挙げられるが、より適正な粘度挙動が得られることから、酸化マグネシウムが好ましい。これらの増粘剤は、単独あるいは2種類以上を併用することもできる。また、増粘挙動を改善するために、増粘剤である酸化マグネシウムの他に、第4級アンモニウム塩等の増粘助剤を併用してもよい。
【0023】
前記増粘剤(B)の使用量は、より適正な粘度挙動が得られることから、前記樹脂成分(A)100質量部に対して、0.1~15質量部の範囲が好ましく、0.5~10質量部の範囲がより好ましい。
【0024】
前記光重合開始剤(C)としては、例えば、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、2-メチル-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン等のアセトフェノン化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物;チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン化合物;4,4’-ジメチルアミノチオキサントン(別名=ミネラーズケトン)、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、α-アシロキシムエステル、ベンジル、メチルベンゾイルホルメート(「バイアキュア55」)、2-エチルアンスラキノン等のアンスラキノン化合物;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド化合物;3,3’,4,4’-テトラ(tert-ブチルオパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン等を用いることができる。なお、これらの光重合開始剤(C)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0025】
前記光重合開始剤(C)の使用量は、硬化性に優れることから、前記樹脂成分(A)100質量部に対して、0.1~3質量部の範囲が好ましく、0.1~2質量部の範囲がより好ましい。
【0026】
本発明の光硬化型ライニング材用樹脂組成物は、樹脂成分(A)、増粘剤(B)、及び光重合開始剤(C)を含有するものであるが、必要に応じてその他の添加剤を含有してもよい。
【0027】
前記その他の添加剤としては、例えば、重合禁止剤、酸化防止剤、光安定剤、溶媒、消泡剤、チキソ付与剤、レベリング剤、粘着付与剤、帯電防止剤、難燃剤、硬化促進剤、顔料、充填剤、補強材、骨材等が挙げられる。
【0028】
本発明の光硬化型ライニング材は、前記光硬化型ライニング材用樹脂組成物及びガラス繊維強化材を含有するものである。
【0029】
前記ガラス繊維強化材の形態としては、例えば、ロービングを平織にしたロービンククロス、2インチにカットしたチョップドストランドをランダムに配向させバインダーで固着し、不織布としたチョップドストランドマット、ロービングを同方向に引き揃え、補助よこ糸やバインダーで一体化させた一方向シート、上記、一方向に引き揃えたシートを多方向に積層し、ステッチ糸で一体化した多軸ステッチ基材、一方向に引き揃えたシート材とランダムに配向させたチョップドストランドをステッチで一体化させたステッチマット等の筒状、マット状にしたものが用いられる。また、これらのガラス繊維強化材は、単独で用いることも2種類以上併用することもできる。
【0030】
前記ガラス繊維としては、例えば、含アルカリガラス(Cガラス)、低アルカリガラス、無アルカリガラス(Eガラス)等を原料にして得られたものを使用することもできるが、インフラ補修用途における機械的特性と耐蝕性に優れる耐酸ガラス(ECRガラス)を使用することが好ましい。
【0031】
本発明の光硬化型ライニング材中の前記ガラス繊維強化材の含有率は、機械的物性がより向上することから、30~60質量%の範囲が好ましい。
【0032】
本発明のライニング材の施工、適用方法としては、コンクリート等の補修面に直接本発明の光硬化型ライニング樹脂組成物とガラス繊維強化材を積層、含浸しライニング材層を形成する方法や、予め、工場等で本発明の光硬化型ライニング樹脂組成物とガラス繊維強化材を積層、含浸し、両面をフィルムで覆ったプリプレグとして作成、補修現場にて必要により被着面のフィルムを剥離した後、補修箇所の形状に合わせローラー等で加圧圧着、光の照射により硬化させるものである。
【0033】
本発明の光硬化型ライニング材を硬化させる方法としては、例えば、紫外線、電子線、α線、β線、γ線のような電離放射線を照射する方法が挙げられるが、具体的なエネルギー源または硬化装置としては、例えば、殺菌灯、紫外線用蛍光灯、カーボンアーク、キセノンランプ、複写用高圧水銀灯、中圧または高圧水銀灯、超高圧水銀灯、無電極ランプ、メタルハライドランプ、蛍光ケミカルランプ、LEDランプ、自然光等を光源とする紫外線、または走査型、カーテン型電子線加速器による電子線等が挙げられる。
【0034】
本発明の光硬化型ライニング材は、速硬化性及び厚膜硬化性に優れることから、下水道管等の管更生に好適に用いることができる。また、上水道管をはじめとしたガス管、電力管等のインフラ補修用途、及び浴室の防水床等の補修用プリプレグにも用いることができる。
【実施例
【0035】
以下に本発明を具体的な実施例を挙げてより詳細に説明する。なお、樹脂成分の屈折率は、ユニバーサルアッベ屈折率計(エルマ販売株式会社製「ER-7MW」)を用いて測定し、酸価はJIS-K-6901、エポキシ当量はJIS-K-7236に準拠してそれぞれ測定した。
【0036】
(合成例1:カルボキシル基を有するエポキシ(メタ)アクリレート(a1-1)の合成)
温度計、窒素導入管、撹拌機を設けた2Lフラスコに、窒素と空気とを1対1で混合したガス流通雰囲気下、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「エピクロン850」、エポキシ当量188)488.8質量部、メタクリル酸215.7質量部、及びt-ブチルハイドロキノン0.25質量部を仕込み、90℃に昇温して1時間反応させた後、2-メチルイミダゾール0.7質量部を添加して、反応温度を110℃まで昇温して2時間反応させた。その後さらに2-メチルイミダゾール 0.7質量部を添加して酸価、エポキシ当量を測定した。酸価が7.0以下、エポキシ当量が5000以上になったことを確認後、反応を終了した。40℃付近まで冷却した後、t-ブチルハイドロキノン0.05質量部、フェノキシエチルメタクリレート300質量部加えて溶解させた。10分間撹拌させた後、無水マレイン酸を75.4質量部添加して90℃に昇温して5時間反応させた。その後酸価が50以下になったことを確認して、反応を終了した。50℃付近まで冷却した後、反応容器より取り出し、マレイン酸変性エポキシ(メタ)アクリレートとして、水酸基とカルボキシル基とのモル比(OH/COOH)が70/30であるカルボキシル基を有するエポキシ(メタ)アクリレート(a1-1)を得た。酸価は50.0であった。
【0037】
(合成例2:エポキシ(メタ)アクリレート(a1-2)の合成)
温度計、窒素導入管、撹拌機を設けた2Lフラスコに窒素流通下、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「エピクロン850」、エポキシ当量188)368.3質量部を加えて60℃に加温した後、ビスフェノールA 83.4質量部を加えて、110℃まで昇温させた。その後、2-メチルイミダゾール0.55質量部を添加して、エポキシ当量が375±10の範囲内になることを確認して、100℃まで冷却した。真空ポンプを用いて窒素除去後、空気置換した。続いて、窒素と空気とを1対1で混合したガス流通雰囲気下、100℃でメタクリル酸102.2質量部、t-ブチルハイドロキノン0.20質量部を仕込み、2時間反応させた後、2-メチルイミダゾール0.277質量部を添加して酸価、エポキシ当量を測定、酸価が7.0以下、エポキシ当量が5000以上になったことを確認後、t-ブチルハイドロキノン0.05質量部、フェノキシエチルメタクリレート277質量部加えて溶解させた。10分間撹拌させた後、無水マレイン酸を39.6質量部添加して90℃に昇温して5時間反応させた。酸価が30以下になったことを確認後、反応を終了した。50℃付近まで冷却した後、反応容器より取り出し、マレイン酸変性エポキシ(メタ)アクリレートとして、水酸基とカルボキシル基とのモル比(OH/COOH)が80/20であるカルボキシル基を有するエポキシ(メタ)アクリレート(a1-2)を得た。酸価は27.0であった。
【0038】
(合成例3:不飽和ポリエステル樹脂(1)の合成)
温度計、窒素導入管、撹拌機を設けた2Lフラスコにネオペンチルグリコール416質量部、プロピレングリコール76質量部、イソフタル酸332質量部、無水マレイン酸294質量部を加えて、常法に従い二段反応で分割投入し、200℃まで昇温させた。酸価が25以下になったことを確認して反応を終了した。得られた不飽和ポリエステルを130℃に冷却した後、得られた不飽和ポリエステル100質量部に対してハイドロキノン0.015質量部添加、さらに60℃まで冷却した後、反応容器より取り出し、不飽和ポリエステル樹脂(1)を得た。酸価は24.0であった。
【0039】
(合成例4:エポキシ(メタ)アクリレート(Ra1-1)の合成)
温度計、窒素導入管、撹拌機を設けた2Lフラスコに、窒素と空気とを1対1で混合したガス流通雰囲気下、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「エピクロン850」、エポキシ当量188)488.8質量部、メタクリル酸215.7質量部、及びt-ブチルハイドロキノン0.25質量部を仕込み、90℃に昇温して1時間反応させた後、2-メチルイミダゾール0.7質量部を添加して、反応温度を110℃まで昇温して2時間反応させた。その後さらに2-メチルイミダゾール 0.7質量部を添加して酸価、エポキシ当量を測定した。酸価が7.0以下、エポキシ当量が5000以上になったことを確認後、反応を終了した。50℃付近まで冷却した後、t-ブチルハイドロキノン0.05質量部を加えて、反応容器より取り出し、エポキシ(メタ)アクリレート(Ra1-1)を得た。酸価は3.0であった。
【0040】
(実施例1:光硬化型ライニング材用樹脂組成物(1)の製造)
合成例1で得たカルボキシル基を有するエポキシ(メタ)クリレート(a1-1)60質量部、フェノキシエチルメタクリレート25質量部、、ジエチレングリコールジメタクリレート15質量部、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(以下、「光重合開始剤(C-1)」と略記する。)1.5質量部、増粘剤(御国色素株式会社製「マグミクロンMD504-2」;以下、「増粘剤(B-1)」と略記する。)3.0質量部を混合し、光硬化型ライニング材用樹脂組成物(1)を得た。
ここで、エポキシ(メタ)クリレート(a1-1)、フェノキシエチルメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレートからなる樹脂成分(A-1)の屈折率は1.530であった。
【0041】
(実施例2:光硬化型ライニング材用樹脂組成物(2)の製造及び評価)
合成例2で得たカルボキシル基を有するエポキシ(メタ)クリレート(a1-2)40質量部、フェノキシエチルメタクリレート40質量部、、トリメチロールプロパントリメタクリレート20質量部、光重合開始剤(C-1)1.5質量部、増粘剤(B-1)2.0質量部を混合し、光硬化型ライニング材用樹脂組成物(2)を得た。
ここで、エポキシ(メタ)クリレート(a1-1)、フェノキシエチルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートからなる樹脂成分(A-2)の屈折率は1.530であった。
【0042】
(比較例1:光硬化型ライニング材用樹脂組成物(R1)の調製及び評価)
合成例3で得た不飽和ポリエステル樹脂(1)40質量部、フェノキシエチルメタクリレート40質量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート20質量部、光重合開始剤(C-1)1.5質量部、増粘剤(B-1)2.0質量部を混合し、光硬化型ライニング材用樹脂組成物(R1)を得た。
ここで、不飽和ポリエステル樹脂(1)、フェノキシエチルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートからなる樹脂成分(RA-1)の屈折率は1.510であった。
【0043】
(比較例2:光硬化型ライニング材用樹脂組成物(R2)の調製及び評価)
合成例4で得たエポキシ(メタ)アクリレート(Ra1-1)60質量部、フェノキシエチルメタクリレート25質量部、ジエチレングリコールジメタクリレート15質量部、光重合開始剤(C-1)1.5質量部、増粘剤(B-1)3.0質量部を混合し、光硬化型ライニング材用樹脂組成物(R2)を得た。
ここで、エポキシ(メタ)アクリレート(Ra1-1)、フェノキシエチルメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレートからなる樹脂成分(RA-2)の屈折率は1.530であった。
【0044】
[増粘挙動]
上記得た光硬化型ライニング材用樹脂組成物について、ブルックフィールド(Brookfield)粘度計(BF回転型粘度計、東機産業株式会社製)を用いて、液温25℃にて粘度を測定した。さらに、25℃で24時間静置した後の粘度を測定し、下記の基準により増粘挙動を評価した。
〇:24時間後の粘度が1000dPa・s以上、かつ20000dPa・s未満
×:24時間後の粘度が1000dPa・s未満、又は20000dPa・s以上
【0045】
[硬化物の物性評価]
上記で得た光硬化型ライニング材用樹脂組成物の表面に、高さ20cmからコールドミラーを備えたアイグラフィック株式会社製メタルハライドランプM045-31L(発光長:375mm、4.5kW)を300秒照射し、硬化物を得、各種物性を評価した。
【0046】
[曲げ強度]
上記で得られた硬化物について、JIS K7171-1に準拠し、曲げ強度を測定し、下記の基準により評価した。
○:100MPa以上
×:100MPa未満
[引張伸び率]
上記で得られた硬化物について、JIS K7161-1及び2に準拠し、1B試験片の引張試験を行い、引張伸び率を測定し、下記の基準により評価した。
○:2%以上
×:2%未満
[耐熱性]
上記で得られた硬化物について、JIS K7191-1に準拠し、荷重たわみ温度を測定し、下記の基準により耐熱性を評価した。
○:85℃以上
○:85℃未満
【0047】
上記で得た光硬化型ライニング材用樹脂組成物(1)~(2)、及び(R1)~(R2)の評価結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
実施例1~2の本発明の光硬化型ライニング材用樹脂組成から得られる光硬化型ライニング材は、増粘挙動に優れ、その硬化物は曲げ強度、引張伸度、耐熱性に優れることが確認された。
【0050】
一方、比較例1は、カルボキシル基を有するエポキシ(メタ)アクリレート(a1)の代わりに不飽和ポリエステル樹脂を用いた例であるが、曲げ強度及び耐熱性が不十分であることが確認された。
【0051】
比較例2は、カルボキシル基を有するエポキシ(メタ)アクリレート(a1)の代わりにカルボキシル基を有さないエポキシ(メタ)アクリレート(a1)を用いた例であるが、増粘性が不十分であることが確認された。