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特許7424733ホットメルト性を有する硬化性シリコーンシートの製造方法
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  • 特許-ホットメルト性を有する硬化性シリコーンシートの製造方法 図1
  • 特許-ホットメルト性を有する硬化性シリコーンシートの製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】ホットメルト性を有する硬化性シリコーンシートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 55/18 20060101AFI20240123BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20240123BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20240123BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240123BHJP
   B32B 37/15 20060101ALI20240123BHJP
   B29C 48/20 20190101ALI20240123BHJP
   B29C 48/305 20190101ALI20240123BHJP
   B29C 48/06 20190101ALI20240123BHJP
   B29K 101/10 20060101ALN20240123BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20240123BHJP
【FI】
B29C55/18
C08L83/04
C09D183/04
B32B27/00 101
B32B37/15
B29C48/20
B29C48/305
B29C48/06
B29K101:10
B29L9:00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019237828
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021045953
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2019167833
(32)【優先日】2019-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】719000328
【氏名又は名称】ダウ・東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】今泉 徹
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 弘一
(72)【発明者】
【氏名】山崎 亮介
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-519369(JP,A)
【文献】特開2006-274007(JP,A)
【文献】特表2016-504461(JP,A)
【文献】国際公開第2018/030286(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00
B29C 55/00
B29C 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を備えることを特徴とする、ホットメルト性を有する硬化性シリコーンシートの製造方法。
工程1:有機溶剤中に、室温で固体状のオルガノポリシロキサン樹脂、および、任意で鎖状のジオルガノポリシロキサンを分散乃至溶解させた溶液から、150℃以上の温度で有機溶剤の除去を行い、ホットメルト性の固形分を得る工程
工程2:工程1で得たホットメルト性の固形分に、すべての硬化剤を加えた後、120℃以下の温度で加熱溶融しながら混練する工程であって、当該工程2により得られる混合物が、混合物全体における機能性フィラーの含有量が5.0質量%未満である工程
工程3:工程2で得た加熱溶融後の混合物を、少なくとも1の剥離面を備えたフィルム間に積層する工程
工程4:工程3で得た積層体をロール間で延伸し、特定の膜厚を有する硬化性シリコーンシートを成型する工程
【請求項2】
工程2で得た加熱溶融後の混合物の150℃での高化式フローテスターにより測定される溶融粘度が1~1,000Pasの範囲であり、
工程3において、当該加熱溶融後の混合物を少なくとも1の剥離面を備えたフィルム間に積層する工程が、当該加熱溶融後の混合物をダイ及びノズルを用いてフィルム状または紐状に成型しながら吐出して、少なくとも1の剥離面を備えたフィルム間に積層する工程であり、
さらに、工程4の前工程としてまたは工程4において、工程3で得た積層体全体を冷却または80~120℃の間で温度調整する工程を含む、
請求項1に記載のホットメルト性を有する硬化性シリコーンシートの製造方法。
【請求項3】
工程2で得た混合物全体の軟化点が200℃以下であり、
工程2が、工程1で得た混合物を当該混合物の軟化点以上の温度に加熱する工程であり、
工程3において、当該加熱溶融後の混合物を少なくとも1の剥離面を備えたフィルム間に積層する工程が、当該加熱溶融後の混合物を固体状のまま吐出し、少なくとも1の剥離面を備えたフィルム間に積層する工程である、
請求項1に記載のホットメルト性を有する硬化性シリコーンシートの製造方法。
【請求項4】
工程2~4が連続した工程であり、工程2の開始から工程4の終了までの時間が30分以内であることを特徴とする請求項1に記載のホットメルト性を有する硬化性シリコーンシートの製造方法。
【請求項5】
さらに、工程4で得た硬化性シリコーンシートを含む積層体を裁断する工程を含む、
請求項1~4のいずれか1項に記載のホットメルト性を有する硬化性シリコーンシートの製造方法。
【請求項6】
工程3において、工程2で得た加熱溶融後の混合物を、少なくとも1の剥離面を備えたフィルム間に積層する工程が、当該加熱溶融後の混合物をT型ダイおよびストランドダイから選ばれるダイ、及びシングルノズルおよびマルチノズルから選ばれるノズルを用いてフィルム状または紐状に成型しながら吐出して、少なくとも1の剥離面を備えたフィルム間に積層する工程である、請求項1~5のいずれか1項に記載のホットメルト性を有する硬化性シリコーンシートの製造方法。
【請求項7】
工程1におけるオルガノポリシロキサン樹脂が、RSiO3/2またはSiO4/2で表されるシロキサン単位(Rはアリール基)を全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有するオルガノポリシロキサン樹脂であり、鎖状のジオルガノポリシロキサンがRRSiO2/2で表されるシロキサン単位(Rはメチル基)を全シロキサン単位の少なくとも90モル%以上含有するジオルガノポリシロキサンである、
請求項1~6のいずれか1項に記載のホットメルト性を有する硬化性シリコーンシートの製造方法。
【請求項8】
工程2により得られる混合物が、硬化により、
25℃における貯蔵弾性率(G')の値が2000MPa以下であり、
150℃における貯蔵弾性率(G')の値が100MPa以下であり、
周波数1.0Hzにおける貯蔵弾性率/損失弾性率(G’/G’’)で表される損失正接(tanδ)のピーク値が0.40以上である硬化物を与えることを特徴とする、
請求項1~7のいずれか1項に記載のホットメルト性を有する硬化性シリコーンシートの製造方法。
【請求項9】
工程2により得られる混合物が、硬化により、
室温から200℃までの成型温度におけるMDR(Moving Die Rheom eter)により測定される(1)最大トルク値が50dN・m未満であり、(2)最大トルク値に到達したときに、貯蔵トルク値/損失トルク値の比で表される損失正接(tanδ)の値が0.2未満である硬化物を与えることを特徴とする、
請求項1~8のいずれか1項に記載のホットメルト性を有する硬化性シリコーンシートの製造方法。
【請求項10】
硬化性シリコーンシートが、コンプレッション成型用、プレス成型用、または真空ラミネーション用の硬化性シリコーンシートである、請求項1~のいずれか1項に記載のホットメルト性を有する硬化性シリコーンシートの製造方法。
【請求項11】
硬化性シリコーンシートが、ホットメルト性フィルム接着剤である、請求項1~のいずれか1項に記載のホットメルト性を有する硬化性シリコーンシートの製造方法。
【請求項12】
硬化性シリコーンシートが、実質的に平坦な、厚さ10~2000μmの硬化性シリコーンシートである、請求項1~のいずれか1項に記載のホットメルト性を有する硬化性シリコーンシートの製造方法。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか1項に記載のホットメルト性を有する硬化性シリコーンシートの製造方法を含む、実質的に平坦な、厚さ10~2000μmのホットメルト性を有し、機能性フィラーの含有量が5.0質量%未満である硬化性シリコーンシートが、少なくとも1の剥離面を備えたフィルム間に積層された構造を備える、積層体の製造方法
【請求項14】
剥離面が、1分子中にケイ素原子に結合した含フッ素置換基を有する1種類以上のオルガノポリシロキサンを含む硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化することにより得られる剥離コーティング層であり、当該剥離面を備えたフィルムの少なくとも一方の厚みが50μm以上である、請求項13に記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡便であり、平坦性と均一性に優れるホットメルト性を有する硬化性シリコーンシートを得ることができる製造方法、および、当該製造方法によって得ることができる、ホットメルト性を有する硬化性シリコーンシートが少なくとも1の剥離面を備えたフィルム間に積層された構造を備えた積層体に関連する。
【背景技術】
【0002】
硬化性シリコーン組成物は、硬化して、優れた耐熱性、耐寒性、電気絶縁性、耐候性、撥水性、透明性を有する硬化物を形成することから、幅広い産業分野で利用されている。こうした硬化性シリコーン組成物の硬化物は、一般に、他の有機材料と比較し変色しにくく、また、物理的物性の低下が小さいため、光学材料および半導体装置の封止剤としても適している。
【0003】
本出願人は、特許文献1および特許文献2において、成型用のホットメルト性の硬化性粒状シリコーン組成物および反応性シリコーン組成物を提案している。これらのシリコーン組成物はいわゆるフェニルシリコーン樹脂からなり、メチルシリコーン樹脂と比較するとホットメルト性に優れ、かつ、硬化物の硬さや強度に優れるという利点を有するものである。
【0004】
さらに、本件出願人らは、特許文献3~5において、粗大粒子を含まない無機フィラーを硬化性粒状シリコーン組成物に使用することで、特に高温における強靭性や耐久性、溶融時のギャップフィル性、光反射率等を改善できることを提案している。
【0005】
一方、これらの硬化性粒状シリコーン組成物は、パワー半導体を含む様々な半導体用途への適用が求められるにあたり、これらの硬化性粒状シリコーン組成物を均一なホットメルト性の硬化性シリコーンシートとして利用することが求められる場合がある。しかしながら、硬化性粒状シリコーン組成物を通常の方法でシート状に成型しようとした場合、硬化性シリコーンシートの破損や欠陥を生じやすく、簡便な方法で、平坦性と均一性に優れるホットメルト性を有する硬化性シリコーンシートを得る手段が求められていた。
【0006】
一方、特許文献6にはシリコーン樹脂、オルガノポリシロキサン、シラン架橋剤、触媒および溶媒を含む成分を組み合わせること、揮発物を取り除くためにこの組合せを押出し装置に供給して縮合硬化型のホットメルトシリコーン接着剤組成物を得る方法および当該組成物を剥離ライナー間で成型する方法が記載されているが、特に熱硬化型のホットメルトシリコーン組成物については何ら記載されておらず、当該方法で熱硬化性シリコーン組成物等をシート状に成型しようとした場合、硬化性シリコーンシートの破損や欠陥を生じる場合がある。さらに、高温で当該製造方法を適用した場合、特に熱硬化型のホットメルトシリコーン組成物は硬化反応が進行してしまい、ホットメルト性を有するシート材料を得ることができない場合がある。
【0007】
これに加えて、上記の硬化性シリコーン組成物はその性質上、高濃度の無機フィラーを含有するものであるが、ホットメルト性の硬化性シリコーン組成物の用途は年々多様化しており、無機フィラー量が少ない、あるいは、無機フィラーを実質的に含まない、透明かつ均一な硬化性シリコーンシートについても、半導体を含む用途に適用される可能性がある。このため、無機フィラーあるいは硬化性粒状シリコーンを用いる必要がなく、硬化性シリコーンシートの膜厚を精密に制御し、かつボイドや欠陥を含まない透明なホットメルト性の硬化性シリコーンシートを簡便に生産する手段が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2016/136243号パンフレット
【文献】特開2014-009322号公報
【文献】国際公開第2018/030286号パンフレット
【文献】国際公開第2018/030287号パンフレット
【文献】国際公開第2018/030288号パンフレット
【文献】特表2011-525444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、ホットメルト性を有し、取扱い作業性および硬化特性に優れ、かつ、平坦性と均一性に優れ、必要に応じて機能性フィラーを含むことなく、透明性に優れる硬化性シリコーンシートを効率よく製造する方法を提供することにある。さらに、本発明は、当該硬化性シリコーンシートを含む積層体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
鋭意検討の結果、本発明者らは、以下の工程を備えることを特徴とする、ホットメルト性を有する硬化性シリコーンシートの製造方法により上記課題を解決できる事を見出し、本発明に到達した。
工程1:有機溶剤中に、室温で固体状のオルガノポリシロキサン樹脂、および、任意で鎖状のジオルガノポリシロキサンを分散乃至溶解させた溶液から、150℃以上の温度で有機溶剤の除去を行い、ホットメルト性の固形分を得る工程
工程2:工程1で得たホットメルト性の固形分に、すべての硬化剤を加えた後、120℃以下の温度で加熱溶融しながら混練する工程
工程3:工程2で得た加熱溶融後の混合物を、少なくとも1の剥離面を備えたフィルム間に積層する工程
工程4:工程3で得た積層体をロール間で延伸し、特定の膜厚を有する硬化性シリコーンシートを成型する工程
【0011】
上記の硬化性シリコーンシートの製造方法において、
工程2で得た加熱溶融後の混合物の150℃での高化式フローテスターにより測定される溶融粘度が1~1,000Pasの範囲であり、
工程3において、当該加熱溶融後の混合物を少なくとも1の剥離面を備えたフィルム間に積層する工程が、当該加熱溶融後の混合物をダイ及びノズルを用いてフィルム状または紐状に成型しながら吐出して、少なくとも1の剥離面を備えたフィルム間に積層する工程であり、
さらに、工程4の前工程としてまたは工程4において、工程3で得た積層体全体を冷却または80~120℃の間で温度調整する工程を含む製造方法が好ましい。特に、当該製造方法は、加熱溶融後の混合物の溶融粘度が低い場合、ダイにより当該混合物を仮成型できる点で有用である。
【0012】
上記の硬化性シリコーンシートの製造方法において、
工程2で得た混合物全体の軟化点が200℃以下であり、
工程2が、工程1で得た混合物を当該混合物の軟化点以上の温度に加熱する工程であり、
工程3において、当該加熱溶融後の混合物を少なくとも1の剥離面を備えたフィルム間に積層する工程が、当該加熱溶融後の混合物を固体状のまま吐出し、少なくとも1の剥離面を備えたフィルム間に積層する工程である製造方法が好ましい。
なお、固体状のまま吐出した混合物を含む積層体について、工程4で膜厚調整を行う場合、膜厚調整ロールは、さらに、温度調節機能を備えることが好ましく、当該温度調節機能を備えたロール延伸により、得られる硬化性シリコーンシートの膜厚を安定させる製造方法が好ましい。特に、当該製造方法は、加熱溶融後の混合物の溶融粘度が高い場合、仮成型を行うことなくシート状に成型できる点で有用である。
【0013】
上記の硬化性シリコーンシートの製造方法において、工程2~4が連続した工程であり、工程2の開始から工程4の終了までの時間が30分以内であってよい。特に、工程3および工程4は連続的かつ一体化した工程であってよく、例えば、工程2で得た加熱溶融後の混合物は、ロール間の直下において、少なくとも1の剥離面を備えた二つのフィルム間に吐出乃至塗布されることで積層され、それと同時にロール間の間隙調整により、特定の膜厚に延伸成型されていてもよい。 このように、工程3および工程4が実質的に統合された工程を有する製造方法は、上記の製造方法の範囲内に含まれる。
【0014】
上記の硬化性シリコーンシートの製造方法において、さらに、工程4で得た硬化性シリコーンシートを含む積層体を裁断する工程を含んでもよい。
【0015】
上記の硬化性シリコーンシートの製造方法において、工程3において、工程2で得た加熱溶融後の混合物を、少なくとも1の剥離面を備えたフィルム間に積層する工程が、当該加熱溶融後の混合物をT型ダイおよびストランドダイから選ばれるダイ、及びシングルノズルおよびマルチノズルから選ばれるノズルを用いてフィルム状または紐状に成型しながら吐出して、少なくとも1の剥離面を備えたフィルム間に積層する工程であってよい。
【0016】
上記の硬化性シリコーンシートの製造方法において、工程1におけるオルガノポリシロキサン樹脂が、RSiO3/2またはSiO4/2で表されるシロキサン単位(Rはアリール基)を全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有するオルガノポリシロキサン樹脂であり、鎖状のジオルガノポリシロキサンがRRSiO2/2で表されるシロキサン単位(Rはメチル基)を全シロキサン単位の少なくとも90モル%以上含有するジオルガノポリシロキサンであってよい。
【0017】
上記の硬化性シリコーンシートの製造方法において、工程2により得られる混合物が、硬化により、
25℃における貯蔵弾性率(G')の値が2000MPa以下であり、
150℃における貯蔵弾性率(G')の値が100MPa以下であり、
周波数1.0Hzにおける貯蔵弾性率/損失弾性率(G'/G'')で表される損失正接(tanδ)のピーク値が0.40以上である硬化物を与えることが好ましい。
【0018】
上記の硬化性シリコーンシートの製造方法において、
工程2により得られる混合物が、硬化により、
室温から200℃までの成型温度におけるMDR(Moving Die Rheom eter)により測定される(1)最大トルク値が50dN・m未満であり、(2)最大トルク値に到達したときに、貯蔵トルク値/損失トルク値の比で表される損失正接(tanδ)の値が0.2未満である硬化物を与えることが好ましい。
【0019】
上記の硬化性シリコーンシートの製造方法において、工程2により得られる混合物が、混合物全体における機能性フィラーの含有量が5.0質量%未満であってよい。特に、本発明の製造方法は、機能性フィラーを実質的に含まず、透明性に優れ、ボイドや欠陥を含まない硬化性シリコーンシートの製造方法として好適である。
【0020】
上記の硬化性シリコーンシートの製造方法において、硬化性シリコーンシートは、コンプレッション成型用、または真空ラミネーション用、プレス成型用の硬化性シリコーンシートであってよく、特に、コンプレッション成型用または真空ラミネーション用の硬化性シリコーンシートであることが好ましい。
【0021】
上記の硬化性シリコーンシートの製造方法において、硬化性シリコーンシートは、ホットメルト性フィルム接着剤であってよい。
【0022】
上記の硬化性シリコーンシートの製造方法において、硬化性シリコーンシートは、実質的に平坦な、厚さ10~2000μmの硬化性シリコーンシートであってよい。
【0023】
また、本発明の課題は、オルガノポリシロキサン樹脂、硬化剤、および任意で鎖状のジオルガノポリシロキサンを含有してなり、実質的に平坦な、厚さ10~2000μmのホットメルト性を有し、機能性フィラーの含有量が5.0質量%未満である硬化性シリコーンシートが、少なくとも1の剥離面を備えたフィルム間に積層された構造を備える、積層体によって、解決される。当該フィルムは、共に剥離面を備えてもよく、かつ、好ましい。
【0024】
上記積層体は、その剥離面が、1分子中にケイ素原子に結合した含フッ素置換基を有する1種類以上のオルガノポリシロキサンを含む硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化することにより得られる剥離コーティング層であり、当該剥離面を備えたフィルムの少なくとも一方の厚みが50μm以上であることが好ましい。当該フッ素置換基は、フルオロアルキル基およびパーフルオロポリエーテル基から選ばれる1種類以上の含フッ素置換基であることが好ましい。また、硬化性オルガノポリシロキサンは、1分子中にケイ素原子に結合した含フッ素置換基および硬化反応性の官能基を含む1種類以上のオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0025】
上記積層体の製造方法は、その工程において、上記の硬化性シリコーンシートの製造方法を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、平坦性と均一性に優れる硬化性シリコーンシートを効率よく製造する方法を提供することができる。当該、硬化性シリコーンシートは、硬化性シリコーン組成物からなり、ホットメルト性を有し、取扱い作業性および硬化特性に優れると共に、好ましくは、溶融時のギャップフィル性に優れ、応力緩和に優れた柔軟な硬化物を形成することができる。さらに、本発明の硬化性シリコーンシートは、硬化性シリコーン組成物中の機能性無機フィラーの種類を変更することにより、硬化物に低線膨張率化、熱伝導率の付与、光反射性などを付与することができる一方、機能性フィラーを実質的に含有しない組成物を設計し、かつ、当該組成物に優れた透明性を付与することも可能である。さらに、本発明により、ホットメルト性フィルム接着剤を含む剥離性積層体等の、当該硬化性シリコーンシートを含む積層体およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施例1の硬化性シリコーンシートの製造装置の部分的な構成(押し出し機の部分まで)を表す図である。
図2】実施例1の硬化性シリコーンシートの製造装置の全体構成(シート化を含む部全体)を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[硬化性シリコーンシートの製造方法]
本発明にかかる硬化性シリコーンシートは、ホットメルト性を有するものであり、オルガノポリシロキサン樹脂、および硬化剤を含むことを必須とし、必要に応じて鎖状のオルガノポリシロキサンを含んでもよいことを特徴とし、本発明の製造方法は、以下の工程1~4を含むものである。
工程1:有機溶剤中に、室温で固体状のオルガノポリシロキサン樹脂、および、任意で鎖状のジオルガノポリシロキサンを分散乃至溶解させた溶液から、150℃以上の温度で有機溶剤の除去を行い、ホットメルト性の固形分を得る工程
工程2:工程1で得たホットメルト性の固形分に、すべての硬化剤を加えた後、120℃以下の温度で加熱溶融しながら混練する工程
工程3:工程2で得た加熱溶融後の混合物を、少なくとも1の剥離面を備えたフィルム間に積層する工程
工程4:工程3で得た積層体をロール間で延伸し、特定の膜厚を有する硬化性シリコーンシートを成型する工程
【0029】
ここで、「ホットメルト性を有する」とは軟化点が50℃~200℃の範囲内であり、加熱により軟化ないし流動する性質を有することをいう。また、本発明にかかる硬化性シリコーンシートは、その構成成分であるオルガノポリシロキサン樹脂のホットメルト性に関わらず、混合物としてホットメルト性を有すればよい。なお、本発明に係る硬化性シリコーンシートは、機能性フィラーを含んでもよいが、実質的に機能性フィラーを含まない構成であってもよく、かつ好ましい。
【0030】
以下の説明において、「室温」とは25℃を意味する。
【0031】
[工程1]
上記の工程1は硬化剤を除くホットメルト性のシリコーン成分、すなわち、オルガノポリシロキサン樹脂、および任意で鎖状のオルガノポリシロキサンの混合工程であり、有機溶剤中にこれらの成分を分散乃至溶解させた溶液から、150℃以上の高温で有機溶媒を除去する工程である。これら各成分については、後述する。なお、本工程は、機能性フィラーの含有量が少ない、あるいは機能性フィラーを実質的に含有せず、透明性と均一性に優れる硬化性シリコーンシートの製造に特に適するものである。
【0032】
工程1により与えられる混合物は、室温で固体のオルガノポリシロキサン樹脂、および、任意で鎖状のジオルガノポリシロキサンを含有してなり、混合物全体として、ホットメルト性を有するが、この段階で硬化剤を含まないので、熱硬化性を有しないため、工程1において、有機溶剤を除去するために150℃以上の高温で取り扱っても、最終的に得られる硬化性シリコーンシートのホットメルト性および硬化性は損なわれない。当該混合物は、25℃において非流動性である。ここで、非流動性とは、無負荷の状態で変形・流動しないことを意味し、好適には、シート状に成型した場合に、25℃かつ無負荷の状態で変形・流動しないものである。このような非流動性は、例えば、25℃のホットプレート上に成型した本組成物を置き、無負荷または一定の加重をかけても、実質的に変形・流動しないことにより評価可能である。25℃において非流動性であると、該温度での形状保持性が良好で、固体として取り扱うことができる。
【0033】
工程1により与えられる混合物の軟化点は200℃以下であり、150℃以下であることが好ましい。このような軟化点は、ホットプレート上で、100グラム重の荷重で上から10秒間押し続け、荷重を取り除いた後、組成物の変形量を測定した場合、高さ方向の変形量が1mm以上となる温度を意味する。
【0034】
工程1により与えられる混合物の軟化点が200℃以下であり、後述する工程2において混合物全体を当該混合物の軟化点以上の温度に加熱することにより、混合物を加熱溶融して一定の流動性を与えることができる。当該軟化物または溶融物を成型することで、ホットメルト性を有する硬化性シリコーンシートを得ることができる。
【0035】
工程1において、室温で固体状のオルガノポリシロキサン樹脂、および、任意で鎖状のジオルガノポリシロキサンは、有機溶剤中に分散乃至溶解させた溶液の状態で使用される。室温で固体状のオルガノポリシロキサン樹脂はそれ自体では室温下で非流動性であり、任意成分である鎖状のジオルガノポリシロキサンは室温で液状ないし可塑度を有する半固体状であるが、有機溶剤中に分散乃至溶解させた状態であると、これらの成分を均一な溶液系で取り扱うことができ、有機溶剤を除去することで、オルガノポリシロキサン樹脂、および、任意で鎖状のジオルガノポリシロキサンを含む、ホットメルト性の固体成分を容易に得ることができる。なお、当該工程1では、有機溶剤の除去に悪影響を及ぼさず、かつ、高温における硬化反応が進行しない範囲で、硬化剤以外の任意成分(機能性フィラーを含んでもよいが、実質的に含まないことが特に好ましい)を含んでもよい。また、硬化剤を除いた、工程1で得られるホットメルト性の固体成分である混合物は、実際の製造工程において「コンパウンド」と呼ばれることがある。
【0036】
室温で固体状のオルガノポリシロキサン樹脂、および、任意で鎖状のジオルガノポリシロキサン、その他任意の成分(ただし、硬化剤を除く)を、有機溶剤中に分散乃至溶解する工程は、代表的には、機械力を用いる混合乃至攪拌装置を使用する工程である。本発明で使用されるオルガノポリシロキサン樹脂および鎖状のジオルガノポリシロキサンは有機溶剤に可溶である。さらに、オルガノポリシロキサン樹脂は、工業的には有機溶剤に溶解した状態で合成されることが一般的である。従って、オルガノポリシロキサン樹脂を有機溶媒中に溶解させた溶液を、前記の鎖状のオルガノポリシロキサンと、溶液系で物理的に均一に混合することは比較的容易である。機械力を用いる混合乃至攪拌装置としては特に制限されるものではないが、加熱・冷却機能を備えたニーダー、バンバリーミキサー、ロスミキサー、ホバートミキサー、デンタルミキサー、プラネタリミキサー、ニーダーミキサー、ホモミキサー、パドルミキサー、ラインミキサー、ホモディスパー、プロペラ攪拌機、真空式練合機、高速ディスパーザー、ラボプラストミルおよびヘンシェルミキサー等の回分(バッチ)式装置が挙げられる。
【0037】
有機溶剤を含む上記の混合物を150℃以上、好適には200℃以上の温度で加熱処理しながら有機溶剤の除去を行うことで、ホットメルト性の固形分を得ることができる。ここで、有機溶剤の除去は、均一な混合を行いながら行うことが好ましく、加熱処理手段を備えた、上記の機械力を用いる混合乃至攪拌装置において行うことができるが、本発明の工程1は特に、加熱機能を備えた単軸押出機、2軸押出機、連続ニーダー等の連続式の加熱混練装置を用いることが特に好ましい。好適には、有機溶剤を含む上記の混合物を200℃以上に加熱した押出機等の連続式の加熱混練装置で処理することで、有機溶剤を除去し、ホットメルト性の固体として連続的に回収することが可能である。
【0038】
なお、単に有機溶剤を除去することを目的とする場合、上記の混合物を150~200℃程度で処理することで十分であるが、本発明においては、特に、200℃以上の温度で処理することで本混合物から後述するオルガノポリシロキサン樹脂等に由来する揮発成分を可能な限り除去することが可能である。従って、工程1は、200℃以上の温度で、有機溶剤およびその他のオルガノポリシロキサン樹脂等に由来する揮発成分の除去を行う工程であることが好ましい。特に、工程1においてこれらの揮発成分の除去を行うことで、得られるホットメルト性を有する硬化性シリコーンシートを硬化させてなる硬化物の物理的性質を、さらに改善できる場合がある。
【0039】
工程1において、有機溶剤およびその他のオルガノポリシロキサン樹脂等に由来する揮発成分の除去を行う処理は、1atm以下の減圧条件下(好適には真空減圧下)であってもよく、1atmの常圧下であってもよい。特に、工程1において、押出機等の連続式の加熱混練装置を使用し、その内部を1atm以下に減圧してもよく、常圧で使用してもよい。
【0040】
[工程2]
工程2は工程1で得た25℃において非流動のオルガノポリシロキサン樹脂と鎖状のオルガノポリシロキサンとの混合物に、すべての硬化剤を加えた後、一定以下の温度で加熱しながら、混錬する工程であり、硬化剤の存在下、硬化反応を進行させることなく各原料を混錬し、最終的にホットメルト性を有する硬化性シリコーンシートを得るために、当該工程における温度管理が重要な要素となる。また、当該工程2開始後の熱履歴、特に、高温に暴露する時間を短時間に抑えることが、最終的に得られる硬化性シリコーンシートの硬化性を維持乃至改善することができる。なお、工程2は、後述する気泡を組成物中から除去するため、真空ポンプ等の脱気機構により、脱気条件下で行うことが好ましい。
【0041】
工程2は、工程1で説明した回分(バッチ)式装置であって温度調節機構、好ましくはさらに脱気機構を備える混合乃至攪拌装置においても実施可能であるが、連続的に添加物を何点かに分けて投入できるという観点から単軸押出機、2軸押出機、連続ニーダー等の連続式の加熱混練装置を使用することが好ましい。特に、温度調節機構及び脱気機構を備える2軸押出機の使用が好適である。
【0042】
工程2の前段階である工程1において、150℃以上に加熱されたホットメルト性の混合物(コンパウンド)が得られる。当該混合物はホットメルト性の固形分であり、室温では流動性を有さず、有機溶剤およびその他の揮発成分を含まない。さらに、当該混合物は、150℃以上の温度において流動性を有することから、工程1の後に特段の冷却操作等を行わない限り、そのまま工程2における混練装置、好適には、2軸押出機等の連続式の加熱混練装置に供給(フィード)することが可能である。一方、工程1と工程2を切り離す場合、得られたホットメルト性の混合物(コンパウンド)を再加熱して溶融させながら、工程2で使用する混錬機に供給するが、この方法としては後述のバルクメルターの使用が挙げられる。
【0043】
工程2において、ホットメルト性の固形分を加熱混練装置に供給(フィード)する手段は特に制限されないが、温度調節手段(具体的には、加熱・冷却機構を有するタンクおよび温度の維持管理を目的とするジャケットが挙げられる)を有する定量ポンプを用いることで、2軸押出機等の連続式の加熱混練装置に単位時間当たり一定量のホットメルト性の固形分を供給(フィード)することができる。定量ポンプにおいて当該固形分がその軟化点以上、好適には150℃以上に温度管理されていれば、当該ホットメルト性の固形分は加熱溶融した流動性のある状態で、加熱混練装置に供給(フィード)される。
【0044】
本発明の工程2においては、特に、Nordson社製のバルクメルターを用いることにより、簡便に、2軸押出機等の連続式の加熱混練装置に単位時間当たり一定量のホットメルト性の固形分を供給することができる。
【0045】
本発明の工程2は、上記のホットメルト性の固形分に対し、硬化剤を添加する工程を含む。好適には、2軸押出機等の連続式の加熱混練装置において、工程1で得たホットメルト性の固形分(室温で固体状のオルガノポリシロキサン樹脂および任意で鎖状のオルガノポリシロキサンを含む混合物)は、その流動性を維持した状態で混錬装置内を押し出されていくが、その際に、別のラインから硬化剤が単位時間当たり一定量ずつ装置内にフィードされることで、工程1で得たホットメルト性の固形分と硬化剤が一定の質量比で混錬される。
【0046】
次いで、オルガノポリシロキサン樹脂および任意で鎖状のオルガノポリシロキサンとの混合物を押し出し機内で流動させながら押し出していき、別ラインから定量ポンプを用いて、硬化剤を定量フィードし、溶融混錬を開始する。なお、硬化剤を投入する定量ポンプは硬化剤の量および粘度により、ギアポンプ、プランジャーポンプ、プレスポンプ等を適宜選択して利用すればよく、定量供給性を有するポンプであれば特に制限されるものではない。
【0047】
工程2における硬化剤の供給ラインは1つでも、2つ以上の供給ラインに分けてもよい。例えば、本発明に係るホットメルト性を有する硬化性シリコーンシートが、ヒドロシリル化反応硬化性のシリコーン組成物であり、工程1において得られるオルガノポリシロキサン樹脂および任意で直鎖状のオルガノポリシロキサンとの混合物が、アルケニル基等の炭素―炭素二重結合を含有するオルガノポリシロキサン混合物である場合、硬化剤は、分子内にケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンおよびヒドロシリル化反応触媒の組み合わせが挙げられる。この場合、工程1において得られたホットメルト性の固形分は加熱溶融された状態で供給ラインを経由して工程2の混錬装置に供給され、工程2の混錬装置においては硬化剤の供給ライン1によりオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含む成分を供給し、その後、硬化剤の供給ライン2によりヒドロシリル化反応触媒を含む成分を供給することができる。特に連続式の加熱混練装置を使用する場合、工程2における硬化剤の供給ラインを2以上とり、定量ポンプを使用することで、事前の硬化剤の均一混合等の操作が不要となるだけでなく、後述する温度管理が行いやすくなることから、特に大規模な工業生産上、ホットメルト性を有する硬化性シリコーンシートの品質管理の見地からも極めて有利である。
【0048】
上記の例において、硬化剤の供給ライン1からオルガノハイドロジェンポリシロキサン等がホットメルト性の固形分に対して供給されるポイント(「供給ポイント1」という)では、当該混合物がヒドロシリル化反応触媒を欠くために、例え高温下であっても、熱硬化反応は進行しない。従って、供給ポイント1からその他の硬化剤の共有が完了するまでのポイントまでは、オルガノハイドロジェンポリシロキサン等とホットメルト性の固形分を120℃を超える温度(例えば、150℃等)で混錬することができる。一方、さらに、硬化剤の供給ライン2からヒドロシリル化反応触媒が供給されるポイント(「供給ポイント2」という)から先の組成物は、高温において熱硬化反応が進行するようになる。このことから、2軸押出機等の連続式の加熱混練装置で工程2の操作を行う場合、ホットメルト性の固形分に対する硬化剤の供給ポイント2以降において、熱硬化反応が進行しないように温度管理を行う必要があり、具体的には、供給ポイント2以降の連続式の加熱混練装置内の温度は120℃以下、より好ましくは100℃以下で制御することが好ましい。
【0049】
1または2以上の硬化剤の供給が完了したポイント以降の混練装置内の温度は、120℃以下、より好ましくは100℃以下である必要がある。硬化剤投入後の組成物は高温で熱硬化性を有するため、回分(バッチ)式であっても連続式であっても、当該組成物はその軟化点以上120℃以下、好適には100℃以下の温度に保たないと、熱硬化反応が進行して全体が完全に硬化してしまい、本発明の目的である硬化性シリコーンシートを得ることが困難になる。当該温度範囲は、好適には、80℃~120℃の温度範囲であり、80℃~100℃の範囲が特に好ましい。
【0050】
工程2を特に連続式の加熱混練装置で実施する場合、工程1で得たホットメルト性の固形分は、高温下で流動性を有する状態で装置内に供給され、装置内を押し出されるが、1または2以上の供給ラインからの硬化剤の供給が完了し、組成物が熱硬化性を獲得するポイント以降は、混練装置内の温度が前記下限以下であることが必要である。工程1のホットメルト性の固形分は150℃以上に加熱されているため、上記のポイントまでに装置内が120℃以下、好適には100℃以下、特に好適には80℃~100℃の範囲となるように温度管理を行うことが、本発明の製造方法における特徴の一つである。
【0051】
工程2において、後述する硬化遅延剤は、オルガノハイドロジェンポリシロキサンと共に供給してもよく、ヒドロシリル化反応触媒と共に供給してもよい。特に、本発明の硬化性シリコーンシートの透明性および硬化性の改善の見地から、ヒドロシリル化反応触媒の供給前に、分子内にケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと共に、オルガノポリシロキサン樹脂および任意で直鎖状のオルガノポリシロキサンの混合物に添加し、混錬することが好ましい。具体的には、前記の供給ポイント1において、オルガノハイドロジェンポリシロキサンと硬化遅延剤を、硬化剤の供給ライン1から供給することが特に好ましい。かかる工程を経ることで、コンパウンドとオルガノハイドロジェンポリシロキサン、硬化遅延剤を高温で均一に混錬することができ、ヒドロシリル化反応触媒添加後の意図しない硬化反応を抑制することができる場合があるほか、ヒドロシリル化反応触媒と硬化遅延剤の意図しない反応や着色、失活を抑制できる場合がある。
【0052】
好適には、工程2は、工程1のホットメルト性の固形分および硬化剤を、前記の温度条件下で加熱溶融しながら脱気混練する工程を含む。本工程2においては、各成分の混合時に空気を巻き込んでしまい、工程3以降で生産するシートに泡となって表れ、ホットメルト性を有する硬化性シリコーンシートの品質および加熱溶融特性に悪影響を及ぼす可能性が高いため、脱気しながら混錬することが、透明性に優れる硬化性シリコーンシートを得る上では特に好ましい。脱気の程度は混錬時の空気の巻き込み(すなわち、気泡の量)により適宜調整可能であるが、1気圧未満に減圧脱気することが好ましい。なお、この程度の減圧脱気は、工程2で使用する混練装置に真空ポンプ等の公知の脱気/減圧ポンプを接続することで容易に実現することができ、脱泡の程度に応じて適宜その内圧を調整してよい。
【0053】
[混合物の流動性と仮成型工程]
工程1で得た混合物の加熱溶融粘度が低く、流動性に富む場合、後述する工程3において事前に仮成型を行った後に剥離フィルム上に積層することができ、かつ好ましい、具体的には、工程2で得た加熱溶融後の混合物の150℃での高化式フローテスターにより測定される溶融粘度が1~1,000Pasの範囲であれば、工程3において、仮成型を行うことができる。
【0054】
一方、工程1で得た混合物の加熱溶融粘度が高く、流動性に乏しい場合、工程2において、工程1で得た混合物を、その軟化点以上の温度で溶融混練して、均一な組成物の形態を得た後、仮成型を行うことなく、工程3において剥離フィルム上に積層してよい。
【0055】
[工程3]
工程3は、工程2で得た加熱溶融後の混合物を、少なくとも1の剥離面を備えたフィルム間に積層する工程であり、工程4において加圧成型するための予備工程である。このため、工程3およびその後工程である工程4は統合することが可能であり、必要に応じ、実質的に工程3および工程4を同時に行うこともできる。工程2で得た混合物をフィルム間に挟み込んだ積層体を形成することで当該フィルム上からロール延伸による加圧成型を行って、シート状の成型物を得ることができ、かつ、成型後には剥離面を利用して当該シート状の成型物からフィルムのみを除去することができる。
【0056】
工程2で得た加熱溶融後の混合物は2枚のフィルム間に積層する。得られる硬化性シリコーンシートの使用形態によるが、2枚のフィルムは共に剥離面を有することが好ましく、工程3において、工程2で得た混合物は各々のフィルムの剥離面の間に積層されることが特に好ましい。このような積層形態をとる事で、工程4における加圧成型、その後の任意の裁断を経て、薄層状の硬化性シリコーンシートが剥離性フィルム間に挟持された、両面から剥離可能な積層シートを得ることができ、使用時には、形成した硬化性シリコーンシートを破損する懸念なく、両面のフィルムを引き剥がして硬化性シリコーンシートのみを露出させることができる。
【0057】
工程3で使用するフィルムの基材は特には限定されるものではなく、板紙,ダンボール紙,クレーコート紙,ポリオレフィンラミネート紙,特にはポリエチレンラミネート紙,合成樹脂フィルム・シート,天然繊維布,合成繊維布,人工皮革布,金属箔が例示される。特に、合成樹脂フィルム・シートが好ましく、合成樹脂として、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンが例示される。特に耐熱性が要求される場合には、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルフォン等の耐熱性合成樹脂のフィルムが好適である。一方、表示デバイス等視認性が求められる用途においては、透明基材、具体的にはポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、PEN等の透明材料が好適である。また、2種類以上のフィルムが積層された複層フィルムであっても良い。この場合、得られる硬化性シリコーンシートと接する側が光学特性等に優れる機能性フィルムであることが好ましい。
【0058】
フィルムの厚さは特に制限されないが、得られる溶融混錬物の溶融粘度が高い場合、工程4でのロールによる延伸工程において、フィルムは高温状態で相当に圧力にさらされるため、高い耐熱性を持つフィルムを用いていない場合、フィルムが薄すぎると延伸時に皺等が発生することがあるため、フィルム厚は50μm以上、好ましくは75μm以上であり、好適には75~300μm、より好ましくは75~200μmであることが好ましい。
【0059】
フィルムは少なくとも1つの剥離層を備えており、当該剥離層が工程2で得た混合物と接触していることが好ましい。これにより、工程3および工程4を経て、加圧成型されたホットメルト性の硬化性シリコーンシートをフィルムから容易に剥離することができる。剥離層は剥離ライナー、セパレーター、離型層或いは剥離コーティング層と呼ばれることもあり、好適には、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、アルキド系剥離剤、又は、フルオロシリコーン系剥離剤等の剥離コーティング能を有する剥離層、基材表面に物理的に微細な凹凸を形成させたり、本発明にかかるホットメルト性の硬化性シリコーンシートと付着しにくい基材それ自体であってもよい。
【0060】
後述の通り、本発明に係る、ホットメルト性を有する硬化性シリコーンシートは2枚のフィルム間に積層される。シリコーンシートを使用する時に、通常は2枚のフィルムともに剥がして使用するが、1枚のフィルムのみを剥がして、片側のフィルムを残したまま、シリコーンシートを硬化させても良い。この場合、フィルムはシリコーンシートが硬化した後でも容易に剥がせるものを選択することが好ましい。
【0061】
フィルム上の剥離面は、硬化性シリコーンシートに対する剥離性の見地からフルオロシリコーン系の剥離剤により得られる剥離コーティング層であることが好ましい。ここで、フルオロシリコーン系の剥離剤とは、1分子中にケイ素原子に結合した含フッ素置換基を有する1種類以上のオルガノポリシロキサンを含む硬化性オルガノポリシロキサン組成物
であり、特に、分子内にフルオロアルキル基およびパーフルオロポリエーテル基から選ばれる1種類以上の含フッ素置換基を含むオルガノポリシロキサンを含む硬化性オルガノポリシロキサン組成物の使用が好ましい。なお、含フッ素置換基を含むオルガノポリシロキサンは、さらに、同一分子内にアルケニル基等の硬化反応性基を有してもよく、二種類以上の異なる含フッ素置換基を含むオルガノポリシロキサンを組み合わせて、特定の混合比で使用してもよい。
【0062】
例えば、本発明で使用できるフルオロシリコーン系の剥離剤により得られる剥離コーティング層は、以下の(i)~(iv)の組成物を硬化させてなる剥離コーティング層であってよい。
(i)互いに異なるフルオロアルキル基を有し、かつ、分子内に硬化反応性基を有する、2種類以上のオルガノポリシロキサンを含む硬化性オルガノポリシロキサン組成物
(ii)互いに異なるパーフルオロポリエーテル基を有し、かつ、分子内に硬化反応性基を有する、2種類以上のオルガノポリシロキサンを含む硬化性オルガノポリシロキサン組成物
(iii)分子内にフルオロアルキル基および硬化反応性基を有するオルガノポリシロキサン、および、分子内にパーフルオロポリエーテル基および硬化反応性基を有するオルガノポリシロキサンを含む硬化性オルガノポリシロキサン組成物
(iv)分子内にフルオロアルキル基およびパーフルオロポリエーテル基から選ばれる1種類以上の含フッ素置換基を含み、硬化反応性基を有さず、他の硬化反応性の成分と混和する性質を有するオルガノポリシロキサンを含む硬化性オルガノポリシロキサン組成物
【0063】
本発明において、実用上、フィルム上の剥離面はフルオロシリコーン系の剥離剤により得られる剥離コーティング層であり、具体的にはパーフルオロブチルエチル基を含有するフルオロシリコーン系のコーティングが好ましい。この様な剥離コーティング処理が施されたフィルム製品としては例えば、タカラインコーポレーションのFL1-01、FL1-02、FL1-03、FL2-01、ニッパ株式会社のFSA6、FSB6、FSC6、アイム株式会社のFB、FEなどが例示される。なお、パーフルオロブチルエチル基等の含フッ素置換基を側鎖または末端に有するオルガノポリシロキサンを含む硬化性オルガノポリシロキサン組成物を用いるフルオロシリコーン系のコーティングは、架橋構造・架橋密度の選択および剥離層の厚みにより、所望の剥離特性を設計することができ、本発明の実施においては、上記の市販品から適切な剥離力を有する剥離コーティングフィルムを選択してもよく、所望の剥離特性を与えるようなフィルムを適宜設計して用いてもよい。
【0064】
前述の2層以上の複層フィルムを用いる場合、最外装となる両面は上記の剥離性フィルムを用いることで、硬化性シリコーンシートと機能性フィルムとの多層積層体を生産することが可能である。機能性フィルムの種類を選択することで、光学特性やバリヤ特性等様々な付加的機能を併せ持ったホットメルトシリコーンシートを提供することが可能である。多層構造のシートを生産する場合でも、全く同じ生産プロセスを使用することができる。
【0065】
前記のフィルムの少なくとも一方は、さらに、機能層を有していてもよい。機能層は、上述したホットメルト性を有する硬化性シリコーンシートの一つの面に接して設けられる層であって、硬化性シリコーン組成物層とともに複層積層体を形成してもよい。機能層は、ホットメルト性を有する硬化性シリコーンシートが硬化して形成される層にはない機能、あるいは硬化性ホットメルトシリコーン組成物層又は硬化性ホットメルトシリコーン組成物が硬化して形成される層が有する特性よりも好ましい特性を示す材料からなり、複層積層体の一つの表面に所望する機能を付与するための層であってよい。機能層が有する機能は特定の機能に限定されないが、例えば、硬化性ホットメルトシリコーン組成物層又は当該組成物が硬化して形成される硬化物層よりも、低タック、高い弾性率、低汚染性、並びに高い撥水性及び/又は撥油性から選択される機能が挙げられる。機能層として、硬化性ホットメルトシリコーン組成物層又はそれが硬化して形成される層よりも低いタック又は高い弾性率を有する機能層を用いることによって、本発明の複層積層体を封止シートとして用いて、硬化性ホットメルトシリコーン組成物層を基材、例えば、半導体前駆体基板に密着させてシリコーンで封止された基板を作製する場合に、封止層表面のべたつきを低減することができ、それによって取り扱いやすさが向上し、表面の対汚染性も向上できる。機能層は、硬化性ホットメルトシリコーン組成物よりも低タックの材料からなる層、硬化性ホットメルトシリコーン組成物が硬化して形成される硬化物よりも弾性率が高い材料からなる層、硬化性ホットメルトシリコーン組成物とともに硬化させたときに硬化性ホットメルトシリコーン組成物が硬化して形成される硬化物よりも弾性率が高くなる硬化性材料からなる層、撥水性及び/又は撥油性を有する材料からなる層並びに光学的機能層、例えば、光散乱層、光拡散層、高屈折率層、低屈折率層、及び特定の波長の光を選択的に透過する層などらなる群から選択される層からなる群から選択される層であることが好ましい。
【0066】
機能層に用いる材料は、上述した硬化性ホットメルトシリコーン組成物とは異なるシリコーン系の材料であるか、非シリコーン系材料であってよい。また、機能層に用いる材料は、非硬化性の材料でも、硬化性の材料であってもよい。機能層に用いる材料として、上述した特性を有する任意の材料を用いることができる。機能層に用いる材料が硬化性の材料である場合には、複層積層体の硬化性ホットメルトシリコーン組成物を硬化させる条件下で硬化するものが特に好ましい。機能層に用いる材料としては、例えば、プラスチックフィルム、シリコーンレジン、及びシリコーンエラストマーを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0067】
機能層(例えば、低タック又は高弾性率などの特性を有する、プラスチックフィルム、シリコーンレジン、及びシリコーンエラストマーなどからなる層)と硬化性ホットメルトシリコーン組成物層との密着性を向上させるため、所望により、かつ、本発明の技術的効果を損なわない範囲において、上記の機能層の表面に、酸化法または凸凹化法などによる表面処理、あるいはプライマー処理を施した後に、上記の硬化性ホットメルトシリコーン組成物層を積層してもよい。ここで、酸化法としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸化処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン処理、および紫外線照射処理などが挙げられ、また、凸凹化法としては、例えば、サンドブラスト法、及び溶射処理法などが挙げられる。これらの表面処理法は、機能層の種類および求められる密着性に応じて適した方法を選択することができるが、表面処理によって得られる効果、特に密着性の改善効果が高いこと及び操作が簡便であることから、コロナ放電処理法が好ましい方法としてあげられる。当該表面処理により、積層後の接触界面密着力、特に硬化性ホットメルトシリコーン組成物層の硬化反応前における密着性を改善できる場合がある。例えば、機能層としてプラスティックフィルム、シリコーンエラストマー(硬化物)やシリコーンレジンを選択し、その表面に上記の表面処理、プライマー処理等を施したうえで、加熱溶融により硬化性ホットメルトシリコーン組成物層を形成することにより複層積層体を形成することは、本発明の好適な態様に包含される。
【0068】
任意選択により、工程3において使用される機能層は既に説明した通り、プラスチックフィルム、シリコーンレジン、及びシリコーンエラストマーを好適に挙げることができ、特に、任意で表面に剥離層を有してもよいプラスティックフィルム基材等の表面に、シリコーンレジン硬化物またはシリコーンエラストマー硬化物からなる機能層を形成させたものが好適に例示できる。これらの機能層は、例えば、任意で表面に剥離層を有してもよいプラスティックフィルム基材上に、硬化性のシリコーンレジン組成物または硬化性のシリコーンエラストマー組成物を塗布して硬化させることで、容易に調製可能である。なお、適用可能な硬化方法は硬化システムに依存するため特に限定されず、溶媒除去による乾固、加熱乾燥、室温による湿気硬化、紫外線等の高エネルギー線の照射等が例示できる。
【0069】
工程3において、工程2で得た混合物を、任意で仮成型した後に、2枚のフィルム間に積層される。その工程は特に制限されるものではないが、工程3において、加熱溶融後の混合物をフィルム間に積層する工程は特に制限されず、(i) 剥離面を備えた第一の剥離フィルム上に工程2からの加熱溶融後の混合物を吐出乃至塗布した後、同混合物の第一の剥離フィルムと接する面とは反対側の面に対して第二の剥離フィルムを接触させて第一の剥離フィルムと第二の剥離フィルム間に加熱溶融後の混合物を介装する、すなわち挟む工程であってもよく、あるいは(ii) 剥離面を備えた第一の剥離フィルムおよび第二の剥離フィルム間に工程2からの加熱溶融後の混合物を吐出乃至塗布することで、両剥離フィルム間に加熱溶融後の混合物を介装する工程であってもよい。(ii)は、第一及び第二の剥離フィルムを適切な手段、たとえば2ロールなどにより接近させ、2つの剥離フィルムが接近した箇所に工程2からの混合物を吐出乃至塗工して、混合物を同時乃至ほぼ同時に2枚の剥離フィルム間の間隙に挟む方法が例示できる。
【0070】
工程2で得た混合物は、一方のフィルムの剥離層上に吐出乃至塗布されることで供給され、当該混合物上から、他方のフィルムの剥離層を貼り合わせることで積層体が形成されてもよく、当該混合物を二つのフィルム間に連続的に吐出乃至塗布されることで供給することで積層体が形成されてもよい。この際、連続的な硬化性シリコーンシートの製造工程において、各フィルムは回転式のロールを介して工程2の混合物の供給位置に運搬され、フィルム間への積層操作が行われる。回転式のロール径および幅は、特に制限されないが、幅方向に均一に加圧できる構造であることが望ましい。加圧方法は特に制限されないが、エアーシリンダーまたは油圧式が好ましい。
【0071】
工程3における工程2で得た混合物のフィルム間への供給量は、その製造速度、スケールに応じて設計することができる。一例として、1~10kg/時間の供給量で、工程2で得た混合物のフィルム間に供給することができるが、いうまでもなく、これに限定されるものではない。ただし、工程3において、工程2で得た混合物をフィルム間に積層する量は、工程4において設計している硬化性シリコーンシートの平均厚みに応じて決定する必要があり、かつ、工程4において圧延加工が可能な厚みであることが必要である。
【0072】
工程1で得た混合物の加熱溶融粘度が低く、流動性に富む場合、工程3において、工程2で得た加熱溶融後の混合物は、ダイおよびノズルを用いてフィルム状または紐状(細口径の孔部から吐出される棒状成型物を含む)に成型しながら吐出され、フィルム間に積層されることが好ましい。ここで、ダイは当該混合物を仮成型するために使用され、その種類や仮成型時の厚みは特に制限されるものではないが、加熱できる構造を備えたT型ダイまたはストランドダイを用いて、100~2000μm(=2mm)の範囲の厚みを有する略シート状となるように仮成型することができ、かつ、好ましい。さらに、必要に応じて、これらのT型ダイまたはストランドダイの吐出口を吐出面(水平方向)について扁平状に変形させたダイを用いてもよい。
【0073】
工程2で得た混合物の加熱溶融粘度が低く、流動性に富む場合、上記の仮成型後に、工程4の前工程としてまたは工程4において、工程3で得た積層体全体を冷却または温度調節する工程を含むことが好ましい。これは、加熱溶融物を冷却して固体状にすることで、工程4における加圧成型を効果的に行うためである。当該冷却工程は特に制限されるものではないが、冷却ロール、冷風等によりフィルム上に供給乃至積層された混合物を空冷あるいは冷却溶媒等の冷却手段を用いて-50℃~室温の範囲内で冷却することで行うことができる。
【0074】
一方で、工程2で得た混合物の加熱溶融粘度が高く、流動性が低い場合、工程3にて積層体全体を冷却してしまうと、混合物の粘度が高くなりすぎて膜厚の制御が困難となるため、工程4の前工程または工程4として、前記の積層体全体を80~120℃の間で温度調節する工程を含むことが好ましい。なお、温度調節の詳細については、工程4において説明する。
【0075】
[工程4]
工程4は、上記の工程3で得た積層体をロール間で延伸し、特定の膜厚を有する硬化性シリコーンシートを成型する工程であり、フィルム上から工程2で得た混合物を加圧延伸し、均一な硬化性シリコーンシートの形態に成型する工程である。圧延ロールの組数は単一であっても複数であっても良い。
【0076】
工程4における圧延加工は、工程3で得た積層体に対して、ロール圧延等の公知の圧延方法を用いて行うことができる。特に、ロール圧延の場合、ロール間の隙間を調整することで、所望の厚さの硬化性シリコーンシートを設計することができる利点があり、例えば、平均厚みが10~2000μmの範囲でロール間の隙間を一定に調整して圧延することで、平坦性に優れ、かつ、上記のシート表面およびシート内部における欠陥の極めて少ない硬化性シリコーンシートを得ることができる。より詳細には、ロール圧延の場合、目的とするオルガノポリシロキサン硬化物フィルムの平均厚みに対して1.5~4.0倍の範囲でロール間の隙間が調整されていることが特に好ましい。
【0077】
工程4により延伸を行うことにより、実質的に平坦な、厚さ10~2000μmの硬化性シリコーンシートを得ることができる。工程2における加熱溶融後の混合物を、工程3により剥離性フィルム間に積層した形態でロール延伸することにより、低欠陥かつ剥離による取扱作業性に優れる、ホットメルト性を有する硬化性シリコーンシートを含む剥離性積層体を得ることができる。また膜厚計を取り付けることで、工程3で得た積層体に対して膜厚測定が可能となり、膜厚調整が容易となり、また膜厚の管理が管理できる。
【0078】
[工程4における温度調節]
工程4において、工程3で得た積層体をロール間で延伸する場合、当該ロールがさらに、温度調節機能を備え、ロール圧延時に積層体全体の温度調節、必要に応じて加熱または冷却を行うことが好ましい。当該温度調節により、ロール間の間隙を安定して保ち、得られるホットメルト性の硬化性シリコーンシートの平坦性および均一性(膜厚の均一性)を改善できる実益がある。具体的な温度調節の範囲は、フィルムの耐熱性や硬化性シリコーンシートの厚さ(設計厚み)、その反応性等に応じて適宜設計可能であるが、概ね、5~120℃の範囲内である。
【0079】
工程2で得た加熱溶融後の混合物の溶融粘度が高い場合、ロールにより積層する時点で混合物の温度が著しく下がってしまっていると混合物の粘度が高くなりすぎて、膜厚の制御が難しくなることがある。これを避けるために、混合物の加熱溶融粘度が高い場合は、混合物の温度を落とすことなく、回転式のロールに供給する必要がある。ロール自体を80~120℃の温度範囲に加熱しておくことや2軸押出機等の連続式の加熱混練装置の出口であるダイとロールとの距離を可能な限り狭める等の処置を施すことにより、加熱混練装置の出口温度とほぼ同じ温度で混合物を回転式ロールへと供給することができ、粘度が上昇することを防ぐことが可能である。
【0080】
他方、混合物の温度やロール自体の温度が120℃を著しく超えてしまうと、加熱硬化性の混合物の反応が進んでしまう懸念や使用するフィルムの耐熱性が低い場合、延伸中にフィルムに皺が入ってしまう等の懸念があるため、このステップでは精密な温度制御が必要となる。
【0081】
[工程2開始から工程4終了までの時間の制御]
前記工程2から工程4まで工業的に量産するという観点から連続工程であることが好ましいが、ホットメルト性の組成物として熱硬化性のものを取り扱う場合、前記の通り、工程2のあるポイント(供給ポイント2)から高温に長時間晒されると、組成物の硬化反応が進行しうる状態となり、最終的に得られるホットメルト性の硬化性シリコーンシートの硬化性に悪影響が及ぶ場合がある。これを防ぐために前述の混錬中の温度管理が重要となるが、さらに、工程2から工程4が終了し、得られたシリコーンシートの冷却が始まるまでの時間は短時間、具体的には、30分以内であることが好ましく、好ましくは15分以内、さらに好ましくは5分以内である。製造工程において、高温にさらされる時間が前記範囲内であると、熱硬化性の組成物からなるシリコーンシートを生産しても、反応が進むことなく、ホットメルト性に優れたシートを製造することが可能である。
【0082】
[工程3および工程4の一体化乃至統合]
工程3および工程4は連続的かつ一体化した工程であってよく、例えば、工程2で得た加熱溶融後の混合物は、ロール間の直下において、少なくとも1の剥離面を備えたフィルム間に吐出乃至塗布されることで積層され、それと同時にロール間の間隙調整により、特定の膜厚に延伸成型されていてもよい。 このように、工程3および工程4が実質的に統合された工程を有する製造方法も、上記の製造方法の範囲内に含まれる。
すなわち、工程3及び工程4は、工程2で得た混合物を2枚の剥離フィルムの間へ吐出乃至塗布して2枚の剥離フィルム間、例えば2枚の長尺の剥離フィルム間に前記の混合物を挟む工程と、それによって得られる2枚の剥離フィルム及びそれらの間に介装された前記の混合物からなる積層体を続けてロール間に通して剥離フィルム間の混合物を延伸成型し、所定の膜厚に調節して、目的とする積層体を得る工程とを連続して一体的に行ってもよい。このような工程3と工程4を一体的に行う方法も上述した製造方法に含まれる。
【0083】
[裁断工程]
工程4により、剥離性フィルム間にホットメルト性の硬化性シリコーンシートが介装された剥離性積層体を得ることができるが、任意により、当該硬化性シリコーンシートを含む積層体を裁断する工程を有してよい。これにより、所望のサイズのホットメルト性の硬化性シリコーンシートを含む剥離性積層体を得ることができる。裁断する装置は限定されないが、幅方向、および長さ方向を連続的に裁断できる装置が好ましく、ラインスピードが調整できる事が望ましい。ソルテック工業株式会社製のシートカッターを用いると連続で裁断できる。裁断する装置には、異物検査機を有すると裁断する前に異物を検知しマーキングし除去できる。
【0084】
[回転式ロール以降のパスライン]
また、工程4により、剥離性フィルム間にホットメルト性の硬化性シリコーンシートが介装された剥離性積層体の状態となるが、剥離性フィルムにフルオロシリコーン系のコーティング処理が施されたものを使用すると、シリコーンシートとの密着力が非常に弱くなる傾向があり、工程4以降のパスラインによってはフィルムがシリコーンシートから剥がれてしまう可能性がある。極端なU字のパスラインが存在するとそこでフィルムがシリコーンシートから剥がれやすいので、パスラインとしては延伸する回転式のロール以降は直線的であることが好ましい。この理由から裁断工程の前に巻き取り装置などで巻き取るのは避けた方が良く、連続的に裁断工程にて所望のサイズにカットしていくことが好ましい。
【0085】
[品質管理等を目的とする任意の工程]
工程4により、剥離性フィルム間にホットメルト性の硬化性シリコーンシートが介装された剥離性積層体の状態となるが、その後、実用上、品質管理を目的とする工程(例えば、特性値の計測や異物の有無を管理する工程)を含んでもよく、かつ、好ましい。当該工程は、カメラやビデオ等の光学的測定手段を備えた異物検知装置によって行われることが好ましい。
【0086】
[積層体]
以上の工程により得られる積層体は、オルガノポリシロキサン樹脂、任意で鎖状のオルガノポリシロキサンおよび硬化剤を少なくとも含む、実質的に平坦な、厚さ10~2000μmのホットメルト性を有する硬化性シリコーンシートが、少なくとも1の剥離面を備えたフィルム間に積層された構造を備える、積層体である。なお、当該フィルムは、共に剥離面を備えてもよく、かつ、好ましい。
【0087】
[硬化性シリコーンシート]
本発明の製造方法により得られる硬化性シリコーンシートは、オルガノポリシロキサン樹脂、任意で鎖状のオルガノポリシロキサンおよび硬化剤を少なくとも含み、さらに、機能性フィラーその他の成分を含有してもよい硬化性シリコーン組成物であり、ホットメルト性を有し、加熱溶融性の粘着材として使用することができ、硬化により、耐熱性や応力緩和に優れるシリコーン硬化物を形成する。特に、当該硬化性シリコーンシートは、成形性、ギャップフィル性及び接着力/粘着力に優れ、ダイアタッチフィルムや、フィルム接着剤として使用することができる。また、コンプレッション成型、プレス成型、または真空ラミネーションにより封止層を形成する硬化性シリコーンシートとしても好適に使用することができる。どの用途に使用するにしても、当該硬化性シリコーンシートは、ホットメルト性を有するシート状製品であるので、大面積の接着や封止に好適に適用できる。
【0088】
具体的には、本発明の製造法により得られた硬化性シリコーンシートは、剥離性フィルムから引き剥がした後に、半導体等の所望の部位に配置し、凹凸や間隙に対するギャップフィル性を生かしたフィルム接着層を被着体に形成して、被着体間の仮固定、配置、及び、貼り合わせを行い、さらに、当該硬化性シリコーンシートを150℃以上に加熱して、被着体間に当該硬化性シリコーンシートの硬化物により接着させてもよい。なお、剥離性フィルムは、硬化性シリコーンシートを加熱して硬化物を形成させてから剥離してもよく、半導体等の基盤を封止する層として使用する場合にはこの様な使用が好ましい。当該硬化性シリコーンシートの用途および使用方法に応じて剥離のタイミングを選択してよい。
【0089】
当該硬化性シリコーンシートはホットメルト性のため、最終硬化前に、当該シートを加熱することで、柔軟化乃至流動化し、例えば、被着体の被着面に凹凸があっても、隙間なく凹凸や間隙を充填して、接着面を形成することができる。当該硬化性シリコーンシートの加熱手段としては、例えば各種の恒温槽や、ホットプレート、電磁加熱装置、加熱ロール等を用いることができる。より効率的に貼合と加熱を行うためには、例えば電熱プレス機や、ダイアフラム方式のラミネータ、ロールラミネータなどが好ましく用いられる。
【0090】
本発明にかかる硬化性シリコーンシートは、上記のとおり、溶融時のギャップフィル性、硬化物の室温~高温における柔軟性に優れることから、硬化物により、光半導体を含む半導体素子のオーバーモールド及びアンダーフィルを一度に行う被覆工程(いわゆる、モールドアンダーフィル法)を含む成型方法に極めて好適に用いることができる。さらに、本組成物は、上記の特性により、単独又は複数の半導体素子を搭載した半導体ウエハ基板の表面を覆い、かつ、半導体素子の間隙が当該硬化物により充填されるようにオーバーモールド成型する被覆工程(いわゆる、ウェハモールディング)を含む成型方法に好適に用いることができる。
【0091】
上記工程において、コンプレッション成型機、インジェクション成型機、補助ラム式成型機、スライド式成型器、二重ラム式成型機、または低圧封入用成型機、熱プレス、真空ラミネーター等を用いることができる。特に、本発明にかかる硬化性シリコーンシートは、プレス成型、コンプレッション成型、および真空ラミネーションにより硬化物を得る目的で好適に利用できる。
【0092】
硬化性シリコーンシートを熱硬化させる条件としてはその硬化系に応じて最適な温度を選択できる。ヒドロシリル化反応の場合は150℃以上が好ましく、有機過酸化物硬化の場合は170℃以上であることが好ましい。
【0093】
半導体等の保護部材として好適であることから、本発明にかかる硬化性シリコーンシートを硬化して得られる硬化物の25℃におけるタイプDデュロメータ硬さが20以上であることが好ましい。なお、このタイプDデュロメータ硬さは、JIS K 6253-1997「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴムの硬さ試験方法」に準じてタイプDデュロメータによって求められる。
【0094】
さらに、柔軟性を要求されるフレキシブル用途の半導体の封止材として好適であることから、JIS K 6911-1995「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に規定の方法により測定した硬化物の曲げ伸び率は2%以上、あるいは4%以上であることが好ましい。
【0095】
[本発明にかかる硬化性シリコーンシートの用途]
本発明にかかる硬化性シリコーンシートは、ホットメルト性を有し、溶融(ホットメルト)時のギャップフィル性、取扱い作業性および硬化性が優れているので、半導体用の封止剤やアンダーフィル剤;SiC、GaN等のパワー半導体用の封止剤やアンダーフィル剤;発光ダイオード、フォトダイオード、フォトトランジスタ、レーザーダイオード等の光半導体用の封止剤や光反射材;電気・電子用の接着剤、ポッティング剤、保護剤、コーティング剤として好適である。また、本組成物は、ホットメルト性を有するので、プレス成型、コンプレッション成型、あるいは真空ラミネーションによる成形用の材料としても好適である。特に、成型時にモールドアンダーフィル法やウェハモールディング法を用いる半導体用の封止剤として用いることが好適である。
【0096】
特に、本発明にかかる硬化性シリコーンシートは、半導体基板(ウェハや光半導体基板含む)の大面積封止に利用できる。さらに、本発明の硬化性シリコーン組成物をシート状に成型してなるシートは、ダイアタッチフィルム、フレキシブルデバイスの封止、二つの違う基材、例えば大面積の基板とパネルやパネル同士を接着する応力緩和層等に使用することができる。
【0097】
[本発明にかかる硬化性シリコーンシートの硬化物の用途]
本発明の硬化物の用途は特に制限されるものではないが、本発明組成物がホットメルト性を有し、成形性、ギャップフィル特性に優れ、かつ、硬化物は上記の室温における柔軟性、高い応力緩和特性、曲げ伸び率等を有する。このため、本組成物を硬化してなる硬化物は、半導体装置用部材として好適に利用することができ、光半導体を含む半導体素子やICチップ等の封止材、光半導体装置の光反射材、半導体装置の接着剤・結合部材、ディスプレイのパネル用接着剤・結合部材として好適に用いることができる。
【0098】
上記硬化物からな部材を備えた半導体装置は特に制限されるものではないが、特に、パワー半導体装置、光半導体装置およびフレキシブル回路基盤に搭載された半導体装置であることが好ましい。
【0099】
[硬化性シリコーン組成物]
本発明の硬化性シリコーンシートは、(A1)室温で固体状のオルガノポリシロキサン樹脂、任意で(A2)鎖状のジオルガノポリシロキサンおよび(B)硬化剤を含有する硬化性シリコーン組成物からなって良い。以下、当該組成物の各成分および任意成分について説明する。
【0100】
(A1)成分は、本組成物の主剤であり、(C)硬化剤により硬化する、室温で固体状のオルガノポリシロキサン樹脂である。ここで、(A1)成分の少なくとも一部は、硬化反応性の官能基を有することが好ましく、縮合反応性基、ヒドロシリル化反応性基、ラジカル反応性基および過酸化物硬化性基から選ばれる1種類以上の官能基であるが、ヒドロシリル化反応性基およびラジカル反応性基が好ましく、特に、炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基であることが好ましい。
【0101】
(A1)成分中のヒドロシリル化反応性基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等の炭素数2~20のアルケニル基、およびケイ素原子結合水素原子が例示される。このヒドロシリル化反応性基としては、アルケニル基が好ましい。このアルケニル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、好ましくは、ビニル基、ヘキセニル基である。(A1)成分は、一分子中に少なくとも2個のヒドロシリル化反応性基を有することが好ましい。
【0102】
(A1)成分中のヒドロシリル化反応性基以外のケイ素原子に結合する基としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のハロゲン置換アルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のハロゲン置換アリール基、炭素数7~20のアラルキル基、アルコキシ基、および水酸基が例示される。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基等のアリール基;フェネチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;およびこれらの基に結合している水素原子の一部または全部を塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基が例示される。特に、フェニル基、水酸基が好ましい。
【0103】
また、(A1)成分中のラジカル反応性基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数1~20のアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等の炭素数2~20のアルケニル基;3-アクリロキシプロピル基、4-アクリロキシブチル基等のアクリル含有基;3-メタクリロキシプロピル基、4-メタクリロキシブチル基等のメタクリル含有基;およびケイ素原子結合水素原子が例示される。このラジカル反応性基としては、アルケニル基が好ましい。このアルケニル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、好ましくは、ビニル基、ヘキセニル基である。(A1)成分は、一分子中に少なくとも2個のラジカル反応性基を有することが好ましい。
【0104】
(A1)成分中のラジカル反応性基以外のケイ素原子に結合する基としては、炭素数1~20のハロゲン置換アルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のハロゲン置換アリール基、炭素数7~20のアラルキル基、アルコキシ基、および水酸基が例示され、前記と同様の基が例示される。特に、フェニル基、水酸基が好ましい。特に、(A1)成分は、分子中の全有機基の10モル%以上がアリール基、特に、フェニル基であることが好ましい。
【0105】
本発明において、(A1)成分は、好適には、硬化反応性の官能基を有するオルガノポリシロキサン樹脂を含むものであるが、当該オルガノポリシロキサン樹脂は、分子全体としてホットメルト性であってもよく、分子全体としてホットメルト性を有しないオルガノポリシロキサン樹脂であってもよい。ただし、当該オルガノポリシロキサン樹脂がホットメルト性を有しない場合、(A2)成分である鎖状(直鎖状または分岐鎖状)のオルガノポリシロキサンとの混合物であることが好ましい。さらに、硬化反応性の官能基を有さず、分子全体としてホットメルト性を有しないオルガノポリシロキサン樹脂を併用してもよく、かつ、好ましい。
【0106】
すなわち、(A1)成分の少なくとも一部または全部が、
(A1-1)軟化点が30℃以上であり、分子内に少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有するホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂
であってもよい。
【0107】
一方、(A1)成分であるオルガノポリシロキサン樹脂はそれ自体ホットメルト性を有しないオルガノポリシロキサン樹脂であってよく、
(A1-2-1)分子全体としてホットメルト性を有さず、分子内に炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有さず、かつ、SiO4/2で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有するオルガノポリシロキサン樹脂、および
(A1-2-2)分子全体としてホットメルト性を有さず、分子内に少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有し、かつ、SiO4/2で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有するオルガノポリシロキサン樹脂
から選ばれる1種類以上、またはこれらの混合物であることが特に好ましい。ただし、これらのオルガノポリシロキサン樹脂はそれ自体ではホットメルト性を有しないので、
(A2)25℃において液状または可塑度を有する半固体状の直鎖状または分岐鎖状のオルガノポリシロキサンであって、分子内に少なくとも2個の炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有するもの
の混合物である必要がある。
【0108】
特に好適には、(A1-2-1)成分、(A1-2-2)成分および(A2)成分の混合物からなり、混合物全体がホットメルト性を有する固形分である。
以下、これらの成分について説明する。
【0109】
[(A1-1)成分]
(A1-1)成分は、それ自体がホットメルト性を有し、分子内に少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有するため、後述する(B)硬化剤により硬化する。このような(A1-1)成分は、
(A)樹脂状オルガノポリシロキサン、
(A)少なくとも1種のオルガノポリシロキサンを架橋してなるオルガノポリシロキサン架橋物、
(A)樹脂状オルガノシロキサンブロックと鎖状オルガノシロキサンブロックからなるブロックコポリマー、
またはこれらの少なくとも2種の混合物
からなるオルガノポリシロキサン樹脂が好ましい。これらは有機溶媒に可溶であり、工業的には有機溶媒中で合成される。
【0110】
(A)成分はヒドロシリル化反応性基および/またはラジカル反応性基を有する樹脂状オルガノポリシロキサンであり、T単位又はQ単位を多く有し、アリール基を有するホットメルト性の樹脂状オルガノポリシロキサンであることが好ましい。このような(A)成分としては、トリオルガノシロキシ単位(M単位)(オルガノ基はメチル基のみ、メチル基とビニル基またはフェニル基である。)、ジオルガノシロキシ単位(D単位)(オルガノ基はメチル基のみ、メチル基とビニル基またはフェニル基である。)、モノオルガノシロキシ単位(T単位)(オルガノ基はメチル基、ビニル基、またはフェニル基である。)及びシロキシ単位(Q単位)の任意の組み合わせからなるMQ樹脂、MDQ樹脂、MTQ樹脂、MDTQ樹脂、TD樹脂、TQ樹脂、TDQ樹脂が例示される。なお、(A)成分は、分子中に少なくとも2個のヒドロシリル化反応性基および/またはラジカル反応性基を有し、分子中の全有機基の10モル%以上がアリール基、特に、フェニル基であることが好ましい。
【0111】
(A)成分は、少なくとも1種のオルガノポリシロキサンを架橋してなるので、(C)硬化剤により硬化する際にクラックが発生しにくく、硬化収縮を小さくすることができる。ここで、「架橋」とは、原料であるオルガノポリシロキサンをヒドロシリル化反応、縮合反応、ラジカル反応、高エネルギー線反応等により、前記オルガノポリシロキサンを連結することである。このヒドロシリル化反応性基やラジカル反応性基(高エネルギー線反応性基を含む)としては、前記と同様の基が例示され、縮合反応性基としては、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アシルオキシ基が例示される。
【0112】
(A)成分を構成する単位は限定されず、シロキサン単位、シルアルキレン基含有シロキサン単位が例示され、また、得られる硬化物に十分な硬度と機械的強度を付与することから、同一分子内に樹脂状ポリシロキサン単位と鎖状ポリシロキサン単位を有することが好ましい。すなわち、(A)成分は、樹脂状(レジン状)オルガノポリシロキサンと鎖状(直鎖状または分岐鎖状を含む)オルガノポリシロキサンとの架橋物であることが好ましい。(A)成分中に、樹脂状オルガノポリシロキサン構造-鎖状オルガノポリシロキサン構造を導入することで、(A)成分は良好なホットメルト性を示すと共に、(C)硬化剤により、良好な硬化性を示す。
【0113】
(A)成分は、
(1)一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと一分子中にケイ素原子結合水素原子を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンのヒドロシリル化反応を経て、分子中に樹脂状オルガノポリシロキサン構造-鎖状オルガノポリシロキサン構造をアルキレン結合により連結したもの
(2)一分子中に少なくとも2個のラジカル反応性基を有する少なくとも2種のオルガノポリシロキサンの有機過酸化物によるラジカル反応を経て、分子中に樹脂状オルガノポリシロキサン構造-鎖状オルガノポリシロキサン構造をシロキサン結合またはアルキレン結合により連結したもの
(3)少なくとも2種のオルガノポリシロキサンの縮合反応を経て、分子中に樹脂状オルガノポリシロキサン構造-鎖状オルガノポリシロキサン構造をシロキサン(-Si-O-Si-)結合により連結したもの
のいずれかである。このような(A)成分は、樹脂構造-鎖状構造のオルガノポリシロキサン部分がアルキレン基または新たなシロキサン結合により連結された構造を有するので、ホットメルト性が著しく改善される。
【0114】
上記(1)および(2)において、(A)成分中に含まれるアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基等の炭素数2~20のアルケニル基が例示され、これらは直鎖状でも分岐鎖状でもよく、好ましくは、エチレン基、ヘキシレン基である。
【0115】
樹脂状オルガノポリシロキサンと鎖状(直鎖状または分岐鎖状を含む)オルガノポリシロキサンの架橋物は、例えば、以下のシロキサン単位およびシルアルキレン基含有シロキサン単位により構成される。
M単位:R SiO1/2で表されるシロキサン単位、
D単位:RSiO2/2で表されるシロキサン単位、
M/RD単位:R 1/2 SiO1/2で表されるシルアルキレン基含有シロキサン単位およびR 1/2SiO2/2で表されるシルアルキレン基含有シロキサン単位から選ばれる少なくとも1種のシロキサン単位、ならびに
T/Q単位:RSiO3/2で表されるシロキサン単位およびSiO4/2で表されるシロキサン単位から選ばれる少なくとも1種のシロキサン単位
【0116】
式中、Rは、各々独立に、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のハロゲン置換アルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のハロゲン置換アリール基、または炭素数7~20のアラルキル基であり、前記と同様の基が例示される。Rは、メチル基、ビニル基、フェニル基が好ましい。ただし、全シロキサン単位のうち、少なくとも2個のRはアルケニル基であることが好ましい。
【0117】
また、式中、Rは、各々独立に、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のハロゲン置換アルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のハロゲン置換アリール基、または炭素数7~20のアラルキル基であり、前記Rと同様の基が例示される。Rは、メチル基、フェニル基が好ましい。
【0118】
また、式中、Rは他のシロキサン単位中のケイ素原子に結合した、直鎖状または分岐鎖状の炭素数2~20のアルキレン基である。アルキレン基としては、前記と同様の基が例示され、エチレン基、ヘキシレン基が好ましい。
【0119】
M単位は(A)成分の末端を構成するシロキサン単位であり、D単位は直鎖状のポリシロキサン構造を構成するシロキサン単位である。なお、これらのM単位またはD単位、特に、M単位上にアルケニル基があることが好ましい。一方、RM単位およびRD単位はシルアルキレン結合を介して他のシロキサン単位中のケイ素原子に結合し、かつ、酸素原子を介して他のシロキサン単位中のケイ素原子に結合するシロキサン単位である。T/Q単位はポリシロキサンに樹脂状の構造を与える分岐のシロキサン単位であり、(A)成分がRSiO3/2で表されるシロキサン単位および/またはSiO4/2で表されるシロキサン単位を含むことが好ましい。特に、(A)成分のホットメルト性を向上させ、(A)成分中のアリール基の含有量を調整することから、(A)成分はRSiO3/2で表されるシロキサン単位を含むことが好ましく、特に、Rがフェニル基であるシロキサン単位を含むことが好ましい。
【0120】
M/RD単位は、(A)成分の特徴的な構造の1つであり、Rのアルキレン基を介して、ケイ素原子間が架橋された構造を表す。具体的には、R 1/2 SiO1/2で表されるアルキレン基含有シロキサン単位およびR 1/2SiO2/2で表されるアルキレン基含有シロキサン単位から選ばれる少なくとも1種のシロキサン単位であり、(A)成分を構成する全シロキサン単位の少なくとも二つはこれらのアルキレン基含有シロキサン単位であることが好ましい。Rのアルキレン基を有するシロキサン単位間の好適な結合形態は前記の通りであり、二つのアルキレン基含有シロキサン単位間のRの数は、M単位における酸素等と同様に結合価「1/2」として表現している。仮にRの数を1とすれば、[O1/2 SiRSiR 1/2]、[O1/2 SiRSiR2/2]および[O2/2SiRSiR2/2]で表されるシロキサンの構造単位から選ばれる少なくとも1以上が(A)成分中に含まれ、各酸素原子(O)は、前記のM,D,T/Q単位に含まれるケイ素原子に結合する。かかる構造を有することで、(A)成分は、D単位からなる鎖状ポリシロキサン構造、T/Q単位を含む樹脂状ポリシロキサン構造を分子内に有する構造を比較的容易に設計可能であり、その物理的物性において著しく優れたものである。
【0121】
上記(1)において、一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと一分子中にケイ素原子結合水素原子を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンとを、[アルケニル基のモル数]/[ケイ素原子結合水素原子のモル数]>1となる反応比でヒドロシリル化反応させることにより得ることができる。
【0122】
上記(2)において、一分子中に少なくとも2個のラジカル反応性基を有する少なくとも2種のオルガノポリシロキサンを、系中の全てのラジカル反応性基が反応するには足りない量の有機過酸化物によるラジカル反応させることにより得ることができる。
【0123】
上記(1)および(2)において、(A)成分は、樹脂状シロキサン構造を有するオルガノポリシロキサンと、鎖状シロキサン構造を有するオルガノポリシロキサンをヒドロシリル化反応またはラジカル反応したものである。
【0124】
例えば、(A)成分は、
(A)分子中にRSiO3/2(式中、Rは、前記と同様の基である。)で表されるシロキサン単位および/またはSiO4/2で表されるシロキサン単位を含有し、かつ、炭素数2~20のアルケニル基またはケイ素原子結合水素原子あるいはラジカル反応性の基を有する、少なくとも1種の樹脂状オルガノポリシロキサン、および
(A)分子中にR SiO2/2で表されるシロキサン単位(式中、Rは、前記と同様の基である。)を含有し、かつ、前記の(A)成分とヒドロシリル化反応またはラジカル反応可能な基であって、炭素数2~20のアルケニル基またはケイ素原子結合水素原子を有する少なくとも1種の鎖状オルガノポリシロキサンを、
(A)成分または(A)成分中のヒドロシリル化反応性基および/またはラジカル反応性基が反応後に残存するように設計された比率で反応させて得たオルガノポリシロキサンである。
【0125】
上記(1)において、(A)成分の少なくとも一部が、炭素数2~20のアルケニル基を有する樹脂状オルガノポリシロキサンである場合、(A)成分の少なくとも一部はケイ素原子結合水素原子を有する鎖状オルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0126】
同様に、(A)成分の少なくとも一部が、ケイ素原子結合水素原子を有する樹脂状オルガノポリシロキサンである場合、(A)成分の少なくとも一部は炭素数2~20のアルケニル基を有する鎖状オルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0127】
このような(A)成分は、
(a)成分:下記(a1-1)成分および/または下記(a1-2)成分からなる分子中に炭素数2~20のアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンを有機過酸化物でラジカル反応させたもの、または
(a)成分と、
(a)オルガノハイドロジェンポリシロキサンを、
ヒドロシリル化反応用触媒の存在下において、上記(a)成分に含まれる炭素原子数2~20のアルケニル基に対して、上記(a)成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.2~0.7モルとなる量でヒドロシリル化反応させたものが好ましい。
【0128】
(a1-1)成分は、分岐単位の量が比較的多いポリシロキサンであり、平均単位式:
(R SiO1/2)(R SiO2/2)(RSiO3/2)(SiO4/2)(R1/2)
で表される一分子中にアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンである。式中、Rは、各々独立に、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のハロゲン置換アルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のハロゲン置換アリール基、または炭素数7~20のアラルキル基であり、前記Rと同様の基が例示される。Rは、メチル基、ビニル基、またはフェニル基であることが好ましい。ただし、Rの少なくとも2個はアルケニル基である。また、ホットメルト性が良好であることから、全Rの10モル%以上、あるいは20モル%以上がフェニル基であることが好ましい。また、式中、Rは水素原子または炭素数1~6のアルキル基であり、前記と同様のアルキル基が例示される。
【0129】
また、式中、aは0~0.7の範囲内の数、bは0~0.7の範囲内の数、cは0~0.9の範囲内の数、dは0~0.7の範囲内の数、eは0~0.1の範囲内の数、かつ、c+dは0.3~0.9の範囲内の数、a+b+c+dは1であり、好ましくは、aは0~0.6の範囲内の数、bは0~0.6の範囲内の数、cは0~0.9の範囲内の数、dは0~0.5の範囲内の数、eは0~0.05の範囲内の数、かつ、c+dは0.4~0.9の範囲内の数、a+b+c+dは1である。これは、a、b、およびc+dがそれぞれ上記範囲内の数であると、得られる硬化物の硬度や機械的強度が優れたものとなるからである。
【0130】
このような(a1-1)成分としては、次のオルガノポリシロキサンが例示される。式中、Me、Ph、Viはそれぞれメチル基、フェニル基、ビニル基を表す。
(ViMeSiO1/2)0.25(PhSiO3/2)0.75(HO1/2)0.02
(ViMeSiO1/2)0.25(PhSiO3/2)0.75
(ViMeSiO1/2)0.20(PhSiO3/2)0.80
(ViMeSiO1/2)0.15(MeSiO1/2)0.38(SiO4/2)0.47(HO1/2)0.01
(ViMeSiO1/2)0.13(MeSiO1/2)0.45(SiO4/2)0.42(HO1/2)0.01
(ViMeSiO1/2)0.15(PhSiO3/2)0.85(HO1/2)0.01
(MeSiO2/2)0.15(MeViSiO2/2)0.10(PhSiO3/2)0.75(HO1/2)0.04
(MeViPhSiO1/2)0.20(PhSiO3/2)0.80(HO1/2)0.05
(ViMeSiO1/2)0.15(PhSiO3/2)0.75(SiO4/2)0.10(HO1/2)0.02
(PhSiO2/2)0.25(MeViSiO2/2)0.30(PhSiO3/2)0.45(HO1/2)0.04
(MeSiO1/2)0.20(ViMePhSiO1/2)0.40(SiO4/2)0.40(HO1/2)0.08
【0131】
(a1-2)成分は、鎖状シロキサン単位の量が比較的多いポリシロキサンであり、平均単位式:
(R SiO1/2)a'(R SiO2/2)b'(RSiO3/2)c'(SiO4/2)d'(R1/2)e'
で表される、一分子中に炭素数2~20のアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンである。式中、RおよびRは前記と同様の基である。
【0132】
また、式中、a'は0.01~0.3の範囲内の数、b'は0.4~0.99の範囲内の数、c'は0~0.2の範囲内の数、d'は0~0.2の範囲内の数、e'は0~0.1の範囲内の数、かつ、c'+d'は0~0.2の範囲内の数、a'+b'+c'+d'は1であり、好ましくは、a'は0.02~0.20の範囲内の数、b'は0.6~0.99の範囲内の数、c'は0~0.1の範囲内の数、d'は0~0.1の範囲内の数、j'は0~0.05の範囲内の数、かつ、c'+d'は0~0.1の範囲内の数、a'+b'+c'+d'は1である。これは、a'、b'、c'、d'がそれぞれ上記範囲内の数であると、得られる硬化物に強靭性を付与できるからである。
【0133】
このような(a1-2)成分としては、次のオルガノポリシロキサンが例示される。式中、Me、Ph、Viはそれぞれメチル基、フェニル基、ビニル基を表す。
ViMeSiO(MePhSiO)18SiMeVi、すなわち、(ViMeSiO1/2)0.10(MePhSiO2/2)0.90
ViMeSiO(MePhSiO)30SiMeVi、すなわち、(ViMeSiO1/2)0.063(MePhSiO2/2)0.937
ViMeSiO(MePhSiO)150SiMeVi、すなわち、(ViMeSiO1/2)0.013(MePhSiO2/2)0.987
ViMeSiO(MeSiO)18SiMeVi、すなわち、(ViMeSiO1/2)0.10(MeSiO2/2)0.90
ViMeSiO(MeSiO)30SiMeVi、すなわち、(ViMeSiO1/2)0.063(MeSiO2/2)0.937
ViMeSiO(MeSiO)35(MePhSiO)13SiMeVi、すなわち、(ViMeSiO1/2)0.04(MeSiO2/2)0.70(MePhSiO2/2)0.26
ViMeSiO(MeSiO)10SiMeVi、すなわち、(ViMeSiO1/2)0.17(MeSiO2/2)0.83
(ViMeSiO1/2)0.10(MePhSiO2/2)0.80(PhSiO3/2)0.10(HO1/2)0.02
(ViMeSiO1/2)0.20(MePhSiO2/2)0.70(SiO4/2)0.10(HO1/2)0.01
HOMeSiO(MeViSiO)20SiMeOH
MeViSiO(MePhSiO)30SiMeVi
MeViSiO(MeSiO)150SiMeVi
【0134】
(a1-1)成分は得られる硬化物に硬度と機械的強度を付与するという観点から好ましく用いられる。(a1-2)成分は得られる硬化物に強靭性を付与できるという観点から任意成分として添加できるが、以下の(a)成分で鎖状シロキサン単位を多く有する架橋剤を用いる場合はそちらで代用してもよい。いずれの場合においても、分岐状シロキサン単位を多く有する成分と鎖状シロキサン単位を多く有する成分の質量比が50:50~100:0の範囲内、あるいは60:40~100:0の範囲内であることが好ましい。これは、分岐状シロキサン単位を多く有する成分と鎖状シロキサン単位を多く有する成分との質量比が上記範囲内の値であると、得られる硬化物の硬度ならびに機械的強度が良好となるからである。
【0135】
なお、(a)成分を、有機過酸化物によるラジカル反応する場合、(a1-1)成分と(a1-2)成分を10:90~90:10の範囲内で反応させ、(a)成分を用いなくてもよい。
【0136】
(a)成分は、ヒドロシリル化反応において、(a1-1)成分および/または(a1-2)成分を架橋するための成分であり、一分子中にケイ素原子結合水素原子を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサンである。(a)成分中の水素原子以外のケイ素原子に結合する基としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のハロゲン置換アルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のハロゲン置換アリール基、炭素数7~20のアラルキル基、アルコキシ基、エポキシ基含有基、または水酸基が例示され、前記と同様の基が例示される。
【0137】
このような(a)成分は限定されないが、好ましくは、平均組成式:
SiO(4-k-m)/2
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。式中、Rは、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のハロゲン置換アルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のハロゲン置換アリール基、または炭素数7~20のアラルキル基であり、前記Rと同様の基が例示され、好ましくは、メチル基、またはフェニル基である。
【0138】
また、式中、kは1.0~2.5の範囲の数、好ましくは、1.2~2.3の範囲の数であり、mは0.01~0.9の範囲の数、好ましくは、0.05~0.8の範囲の数であり、かつ、k+mは1.5~3.0の範囲の数、好ましくは、2.0~2.7の範囲の数である。
【0139】
(a)成分は、分岐状シロキサン単位を多く有する樹脂状オルガノハイドロジェンポリシロキサンであってもよく、鎖状シロキサン単位を多く有する鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンであってもよい。具体的には、(a)成分は、下記(a2-1)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、下記(a2-2)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、またはこれらの混合物が例示される。
【0140】
(a2-1)成分は、平均単位式:
[R SiO1/2][R SiO2/2][RSiO3/2][SiO4/2](R1/2)
で表されるケイ素原子結合水素原子を有する樹脂状オルガノハイドロジェンポリシロキサンである。式中、Rは、各々独立に、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のハロゲン置換アルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のハロゲン置換アリール基、炭素数7~20のアラルキル基、または水素原子であり、前記Rと同様の基が例示される。また、式中、Rは水素原子または炭素数1~6のアルキル基であり、前記と同様の基が例示される。
【0141】
また、式中、fは0~0.7の範囲内の数、gは0~0.7の範囲内の数、hは0~0.9の範囲内の数、iは0~0.7の範囲内の数、jは0~0.1の範囲内の数、かつ、h+iは0.3~0.9の範囲内の数、f+g+h+iは1であり、好ましくは、fは0~0.6の範囲内の数、gは0~0.6の範囲内の数、hは0~0.9の範囲内の数、iは0~0.5の範囲内の数、jは0~0.05の範囲内の数、かつ、h+iは0.4~0.9の範囲内の数、f+g+h+iは1である。
【0142】
(a2-2)成分は、平均単位式:
(R SiO1/2)f'(R SiO2/2)g'(RSiO3/2)h'(SiO4/2)i'(R1/2)j'
で表される、一分子中にケイ素原子結合水素原子を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンである。式中、RおよびRは前記と同様の基である。
【0143】
また、式中、f'は0.01~0.3の範囲内の数、g'は0.4~0.99の範囲内の数、h'は0~0.2の範囲内の数、i'は0~0.2の範囲内の数、j'は0~0.1の範囲内の数、かつ、h'+i'は0~0.2の範囲内の数、f'+g'+h'+i'は1であり、好ましくは、f'は0.02~0.20の範囲内の数、g'は0.6~0.99の範囲内の数、h'は0~0.1の範囲内の数、i'は0~0.1の範囲内の数、j'は0~0.05の範囲内の数、かつ、h'+i'は0~0.1の範囲内の数、f'+g'+h'+i'は1である。
【0144】
上記のとおり、(a)成分において、分岐状シロキサン単位を多く有するレジン状のオルガノポリシロキサンは、硬化物に硬度と機械的強度を付与し、鎖状シロキサン単位を多く有する得られるオルガノポリシロキサンは、硬化物に強靭性を付与するものであるので、(a)成分として(a2-1)成分と(a2-2)成分を適宜用いることが好ましい。具体的には、(a)成分中に分岐状シロキサン単位が少ない場合には、(a)成分として(a2-1)成分を主に用いることが好ましく、(a)成分中に鎖状シロキサン単位が少ない場合には、(a2-2)成分を主に用いることが好ましい。(a)成分は、(a2-1)成分と(a2-2)成分の質量比が50:50~100:0の範囲内、あるいは60:40~100:0の範囲内であることが好ましい。
【0145】
このような(a)成分としては、次のオルガノポリシロキサンが例示される。式中、Me、Phはそれぞれメチル基、フェニル基を表す。
PhSi(OSiMeH)、すなわち、Ph0.67Me1.330.67SiO0.67
HMeSiO(MeSiO)20SiMeH、すなわち、Me2.000.09SiO0.95
HMeSiO(MeSiO)55SiMeH、すなわち、Me2.000.04SiO0.98
PhSi(OSiMeH)、すなわち、Ph0.25Me1.500.75SiO0.75
(HMeSiO1/2)0.6(PhSiO3/2)0.4、すなわち、Ph0.40Me1.200.60SiO0.90
【0146】
(a)成分の添加量は、(a)成分中のアルケニル基に対して、(a)成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.2~0.7となる量であり、好ましくは、0.3~0.6となる量である。これは、(a)成分の添加量が上記範囲内であると、得られる硬化物の初期の硬度および機械的強度が良好となるためである。
【0147】
(a)成分をラジカル反応するために用いる有機過酸化物は限定されず、下記(C)成分で例示する有機過酸化物を用いることができる。ラジカル反応する際、(a)成分は、(a1-1)成分と(a1-2)成分の質量比が10:90~90:10の範囲内の混合物であることが好ましい。なお、有機過酸化物の添加量は限定されないが、(a)成分100質量部に対して、0.1~5質量部の範囲内、0.2~3質量部の範囲内、あるいは0.2~1.5質量部の範囲内であることが好ましい。
【0148】
また、(a)成分と(a)成分とをヒドロシリル化反応するために用いるヒドロシリル化反応用触媒は限定されず、下記(C)成分で例示するヒドロシリル化反応用触媒を用いることができる。なお、ヒドロシリル化反応用触媒の添加量は、(a)成分と(a)成分の合計量に対して、ヒドロシリル化反応用触媒中の白金系金属原子が質量単位で、0.01~500ppmの範囲内、0.01~100ppmの範囲内、あるいは0.01~50ppmの範囲内となる量であることが好ましい。
【0149】
上記(A)は、下記(a)成分および下記(a)成分を、縮合反応用触媒により縮合反応させたものである。
【0150】
(a)成分は、平均単位式:
(R SiO1/2)(R SiO2/2)(RSiO3/2)(SiO4/2)(R1/2)
で表される縮合反応性のオルガノポリシロキサンである。式中、Rは、各々独立に、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のハロゲン置換アルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のハロゲン置換アリール基、または炭素数7~20のアラルキル基であり、前記と同様の基が例示される。また、式中のRは水素原子、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数2~5のアシル基であり、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;アシルオキシ基が例示される。(a)成分は、一分子中に少なくとも1個のケイ素原子結合水酸基、ケイ素原子結合アルコキシ基、またはケイ素原子結合アシロキシ基を有する。また、一分子中、少なくとも2個のRはアルケニル基であり、全Rの10モル%以上、または20モル%以上がフェニル基であることが好ましい。
【0151】
式中、pは0~0.7の範囲内の数、qは0~0.7の範囲内の数、rは0~0.9の範囲内の数、sは0~0.7の範囲内の数、tは0.01~0.10の範囲内の数、かつ、r+sは0.3~0.9の範囲内の数、p+q+r+sは1であり、好ましくは、pは0~0.6の範囲内の数、qは0~0.6の範囲内の数、rは0~0.9の範囲内の数、sは0~0.5の範囲内の数、tは0.01~0.05の範囲内の数、かつ、r+sは0.4~0.9の範囲内の数である。これは、p、q、およびr+sがそれぞれ上記範囲内の数であると、25℃において柔軟性を持ちつつも、非流動性で、表面粘着性が低く、高温での溶融粘度が十分に低いホットメルト性のシリコーンが得られるからである。
【0152】
(a)成分は、平均単位式:
(R SiO1/2)p'(R SiO2/2)q'(RSiO3/2)r'(SiO4/2)s'(R1/2)t'
で表される縮合反応性のオルガノポリシロキサンである。式中、RおよびRは前記と同様の基である。(a)成分は、一分子中に少なくとも1個のケイ素原子結合水酸基、ケイ素原子結合アルコキシ基、またはケイ素原子結合アシロキシ基を有する。また、式中、p'は0.01~0.3の範囲内の数、q'は0.4~0.99の範囲内の数、r'は0~0.2の範囲内の数、s'は0~0.2の範囲内の数、t'は0~0.1の範囲内の数、かつ、r'+s'は0~0.2の範囲内の数、p'+q'+r'+s'は1であり、好ましくは、p'は0.02~0.20の範囲内の数、q'は0.6~0.99の範囲内の数、r'は0~0.1の範囲内の数、s'は0~0.1の範囲内の数、t'は0~0.05の範囲内の数、かつ、r'+s'は0~0.1の範囲内の数である。これは、p'、q'、r'、s'がそれぞれ上記範囲内の数であると、25℃において柔軟性を持ちつつも、非流動性で、表面粘着性が低く、高温での溶融粘度が十分に低いホットメルト性のシリコーンが得られるからである。
【0153】
(a)成分と(a)成分を縮合反応するための縮合反応用触媒は限定されず、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、オクテン酸錫、ジブチル錫ジオクテート、ラウリン酸錫等の有機錫化合物;テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート、ジブトキシビス(エチルアセトアセテート)等の有機チタン化合物;その他、塩酸、硫酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等の酸性化合物;アンモニア、水酸化ナトリウム等のアルカリ性化合物;1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン(DBU)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)等のアミン系化合物が例示され、好ましくは、有機錫化合物、有機チタン化合物である。
【0154】
また、(A)成分は、樹脂状オルガノシロキサンブロックと鎖状オルガノシロキサンブロックからなるブロックコポリマーである。このような(A)成分は、好ましくは、40~90モル%の式[R SiO2/2]のジシロキシ単位、10~60モル%の式[RSiO3/2]のトリシロキシ単位からなり、0.5~35モル%のシラノール基[≡SiOH]を含むことが好ましい。ここで、Rは、各々独立に、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のハロゲン置換アルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のハロゲン置換アリール基、または炭素数7~20のアラルキル基であり、前記と同様の基が例示される。一分子中、少なくとも2個のRはアルケニル基である。また、前記ジシロキシ単位[R SiO2/2]は、1つの直鎖ブロック当たりに平均して100~300個のジシロキシ単位を有する直鎖ブロックを形成し、前記トリシロキシ単位[RSiO3/2]は、少なくとも500g/モルの分子量を有する非直鎖ブロックを形成し、少なくとも30%の非直鎖ブロックが互いに結合しており、各直鎖ブロックは、少なくとも1つの非直鎖ブロックと-Si-O-Si-結合を介して結合しており、少なくとも20000g/モルの質量平均分子量を有し、0.5~4.5モル%の少なくとも1つのアルケニル基を含む、樹脂状オルガノシロキサンブロック共重合体である。
【0155】
(A)成分は、(a)樹脂状オルガノシロキサンまたは樹脂状オルガノシロキサンブロック共重合体と、(a)鎖状オルガノシロキサン、さらに必要に応じて(a)シロキサン化合物を縮合反応して調製される。
【0156】
(a)成分は、平均単位式:
[R SiO1/2][RSiO2/2]ii[RSiO3/2]iii[RSiO3/2]iv[SiO4/2]
で表される樹脂状オルガノシロキサンである。式中、Rは、各々独立に、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のハロゲン置換アルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のハロゲン置換アリール基、または炭素数7~20のアラルキル基であり、前記と同様の基が例示される。また、式中、Rは、各々独立に、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のハロゲン置換アルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のハロゲン置換アリール基、または炭素数7~20のアラルキル基であり、前記Rと同様の基が例示される。
【0157】
また、式中、i、ii、iii、iv、およびvは、各シロキシ単位のモル分率を表し、iは0~0.6の数であり、iiは0~0.6の数であり、iiiは0~1の数であり、ivは0~1の数であり、vは0~0.6の数であり、ただし、ii+iii+iv+v>0であり、かつ、i+ii+iii+iv+v≦1である。また、(a)成分は、一分子中に0~35モル%のシラノール基[≡SiOH]を含むことが好ましい。
【0158】
(a)成分は、一般式:
3-α(X)αSiO(R SiO)βSi(X)α 3-α
で表される直鎖状のオルガノシロキサンである。式中、Rは前記と同じであり、前記と同様の基が例示される。また、式中、Xは、-OR、F、Cl、Br、I、-OC(O)R、-N(R、または-ON=CR (ここで、Rは水素原子または炭素数1~6のアルキル基である。)から選択される加水分解性基である。また、式中、αは、各々独立して、1、2、または3であり、βは50~300の整数である。
【0159】
(a)成分は、一般式:
SiX
で表されるシロキサン化合物である。式中、R、R、およびXは前記と同様の基である。
【0160】
(a)成分と(a)成分および/または(a)成分を縮合反応するための縮合反応用触媒は限定されず、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、オクテン酸錫、ジブチル錫ジオクテート、ラウリン酸錫等の有機錫化合物;テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート、ジブトキシビス(エチルアセトアセテート)等の有機チタン化合物;その他、塩酸、硫酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等の酸性化合物;アンモニア、水酸化ナトリウム等のアルカリ性化合物;1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン(DBU)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)等のアミン系化合物が例示される。
【0161】
(A1-1)成分は、ホットメルト性を示し、具体的には、25℃において固体(非流動性)であり、100℃の溶融粘度が8000Pa・s以下であることが好ましい。非流動性とは、無負荷の状態で流動しないことを意味し、例えば、JIS K 6863-1994「ホットメルト接着剤の軟化点試験方法」で規定されるホットメルト接着剤の環球法による軟化点試験方法で測定される軟化点未満での状態を示す。すなわち、25℃において非流動性であるためには、軟化点が25℃よりも高い必要がある。
【0162】
(A1-1)成分は、100℃の溶融粘度が8000Pa・s以下、5000Pa・s以下、あるいは10~3000Pa・sの範囲内であることが好ましい。100℃の溶融粘度が上記の範囲内であると、ホットメルト後、25℃に冷却した後の密着性が良好である。
【0163】
[有機溶剤]
工程1および(A1-1)成分等の合成および溶解に使用される有機溶剤は限定されないが、n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン、ジプロピルエーテル等のエーテル類;ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン等のシリコーン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類が例示される。
【0164】
[(A1-2-1)成分]
本発明の、(A1-2-1)成分は、分子内に炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有しない非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂である。当該成分は有機溶媒に可溶であり、工業的には有機溶媒中で合成される。
【0165】
(A1-2-1)成分は分子全体としてホットメルト性を有さず、分子内に炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有さず、かつ、SiO4/2で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有するオルガノポリシロキサン樹脂微粒子であり、本成分を、(A1)成分の一部として、(A2)成分である直鎖状または分岐鎖状のオルガノポリシロキサンと所定の量的範囲で併用することで、組成物全体としてのホットメルト性を実現する成分である。
【0166】
(A1-2-1)成分は、分子全体としてホットメルト性を有さず、無溶媒の状態で固体状のオルガノポリシロキサン樹脂である。ここで、ホットメルト性を有しないとは、(A1-2-1)成分である樹脂がそれ単独では加熱溶融挙動を示さないことであり、具体的には、軟化点および溶融粘度を有さないことを意味する。
【0167】
好適には、(A1-2-1)成分中のケイ素原子に結合した官能基は、メチル基であり、全てのケイ素原子に結合した官能基の70モル%以上がメチル基であることが好ましく、80モル%以上がメチル基あることがより好ましく、88モル%以上がメチル基であることが特に好ましい。かかる範囲において、(A1-2-1)成分はホットメルト性ではなく、その硬化物の高温下における耐着色性等に特に優れる成分として設計可能である。なお、当該(A)成分中には、少量の水酸基またはアルコキシ基を含んでもよい。
【0168】
(A1-2-1)成分は、分子内に炭素-炭素二重結合を有する硬化反応性基を有しないので、それ自体では、硬化物を形成しないが、組成物全体としてのホットメルト性の改善や硬化物に対する補強効果を有する。
【0169】
(A1-2-1)成分は、無溶媒の状態で固体状のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子であり、分子内に分岐シロキサン単位であるSiO4/2で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有することを特徴とする。好適には、当該シロキサン単位は、全シロキサン単位の少なくとも40モル%以上であり、50モル%以上、特に、50~65モル%の範囲であることが特に好ましい。
【0170】
好適には、(A1-2-1)成分は、下記平均単位式:
(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(R1/2)e
(式中、各Rは独立して1~10個の炭素原子を有し、炭素-炭素二重結合を含まない一価炭化水素基;各Rは水素原子又は1~10個の炭素原子を有するアルキル基であり;a、b、c、d及びeは、以下を満たす数である:0.10≦a≦0.60、0≦b≦0.70、0≦c≦0.80、0.20≦d≦0.65、0≦e≦0.05、かつa+b+c+d=1)
で表される非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂である。
【0171】
上記の平均単位式において、各Rは独立して1~10個の炭素原子を有し、炭素-炭素二重結合を含まない一価炭化水素基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、又は類似のアルキル基;フェニル、トリル、キシリル、又は類似のアリール基;ベンジル、フェネチル、又は類似のアラルキル基;及びクロロメチル、3-クロロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、又は類似のハロゲン化アルキル基等である。ここで、1分子中の全Rの70モル%以上がメチル基等の炭素原子数1~10のアルキル基であることが好ましく、88モル%以上がメチル基であることが、工業生産上および発明の技術的効果の見地から、特に好ましい。一方、Rはフェニル基等のアリール基を実質的に含まないことが好ましい。フェニル基等のアリール基を大量に含む場合、(A1-2-1)成分自体がホットメルト性となって、硬化物の高温下での耐着色性が悪化する場合がある。
【0172】
式中、Rは水素原子又は1~10個の炭素原子を有するアルキル基である。Rのアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル又はヘキシルで例示される。当該Rを含む官能基R1/2は、(A2-1-1)成分中の水酸基又はアルコキシ基に該当する。
【0173】
式中、aは、一般式:R SiO1/2のシロキサン単位の割合を示す数である。この数は、0.1≦a≦0.60、好ましくは0.15≦a≦0.55を満たす。aが前記範囲の下限以上であれば、本成分を含む組成物が、組成物全体として良好なホットメルト性能を実現できる。他方、aが前記範囲の上限以下であれば、得られる硬化物の機械的強度(硬度等)が低くなりすぎない。
【0174】
式中、bは、一般式:R SiO2/2のシロキサン単位の割合を示す数である。この数は、0≦b≦0.70、好ましくは0≦b≦0.60を満たす。bが範囲の上限以下であれば、本成分を含む組成物が、組成物全体として良好なホットメルト性能を実現でき、かつ室温にてべたつきの少ない粒状組成物を得ることができる。本発明において、bは0であってよく、かつ好ましい。
【0175】
式中、cは、一般式:RSiO3/2のシロキサン単位の割合を示す数である。この数は、0≦c≦0.70、好ましくは0≦c≦0.60を満たす。cが範囲の上限以下であれば、本成分を含む組成物が、組成物全体として良好なホットメルト性能を実現でき、かつ室温にてべたつきの少ない粒状組成物を得ることができる。本発明において、cは0であってよく、かつ好ましい。
【0176】
式中、dは、SiO4/2のシロキサン単位の割合を示す数であり、0.20≦d≦0.65であることが必要であり、0.40≦d≦0.65であることが好ましく、0.50≦d≦0.65であることが特に好ましい。当該数値範囲内において、本成分を含む組成物が、組成物全体として良好なホットメルト性能でき、得られる硬化物の機械的強度に優れ、かつ、組成物全体としてべたつきのない、取扱作業性の良好な組成物が実現できる。
【0177】
式中、eは一般式:R1/2の単位の割合を示す数であり、同単位はオルガノポリシロキサン樹脂中に含まれうるケイ素原子に結合した水酸基またはアルコキシ基を意味する。この数は、0≦e≦0.05、好ましくは0≦e≦0.03を満たす。eが範囲の上限以下であれば、組成物全体として良好なホットメルト性能を実現する材料を得ることができる。なお、最終的には、各シロキサン単位の総和であるa、b、c及びdの合計は1に等しい。
【0178】
[(A1-2-2)成分]
本発明の(A1-2-2)成分は、無溶媒の状態で固体状のオルガノポリシロキサン樹脂であり、分子全体としてホットメルト性を有さず、分子内に少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有し、かつ、SiO4/2で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有するオルガノポリシロキサン樹脂である。当該成分は有機溶媒に可溶であり、工業的には有機溶媒中で合成される。
【0179】
ここで、ホットメルト性を有しないとは、(A1-2-2)成分であるオルガノポリシロキサン樹脂がそれ単独では加熱溶融挙動を示さないことであり、具体的には、軟化点および溶融粘度を有さないことを意味する。このような物性は特に構造的に制限されるものではないが、オルガノポリシロキサン樹脂中の官能基が炭素原子数1~10の一価炭化水素基、特にメチル基等の炭素原子数1~10のアルキル基から選ばれる官能基であり、フェニル基等のアリール基を実質的に含まないことが好ましい。フェニル基等を大量に含む場合、当該成分はホットメルト性となる場合があり、かつ、SiO4/2基特有の硬化物を補強する効果が低下する場合がある。
【0180】
(A1-2-1)成分と異なり、(A1-2-2)成分は、分子内に少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有し、それ自体が、硬化剤と共に硬化反応に関与し、硬化物を形成する。このような硬化反応性基は、ヒドロシリル化反応性または有機過酸化物硬化性の官能基であり、他の成分との架橋反応によって、硬化物を形成する。このような硬化反応性基は、アルケニル基またはアクリル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基などの炭素数2~10のアルケニル基;3-メタクリロキシプロピル基、3-アクリロキシプロピル基等のアクリル基含有一価有機基が挙げられ、特にビニル基またはヘキセニル基であることが好ましい。
【0181】
好適には、(A1-2-2)成分中のケイ素原子に結合した官能基は、メチル基およびビニル基等のアルケニル基から選ばれる基であり、全てのケイ素原子に結合した官能基の70モル~99モル%がメチル基であることが好ましく、80~99モル%がメチル基であることがより好ましく、88~99モル%がメチル基あり、その他のケイ素原子に結合した官能基がビニル基等のアルケニル基であることが特に好ましい。かかる範囲において、(A1)成分はホットメルト性ではなく、その硬化物の高温下における耐着色性等に特に優れる成分として設計可能である。なお、当該(A1-2-2)成分中には、少量の水酸基またはアルコキシ基を含んでもよい。
【0182】
(A1-2-2)成分は、無溶媒の状態で固体状のオルガノポリシロキサン樹脂であり、分子内に分岐シロキサン単位であるSiO4/2で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有することを特徴とする。好適には、当該シロキサン単位は、全シロキサン単位の少なくとも40モル%以上であり、50モル%以上、特に、50~65モル%の範囲であることが特に好ましい。
【0183】
好適には、(A1-2-2)成分が、下記平均単位式:
(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(R1/2)e
(式中、各Rは独立して1~10個の炭素原子を有する一価炭化水素基であり、但し1分子中の全Rの1~12モル%がアルケニル基であり;各Rは水素原子又は1~10個の炭素原子を有するアルキル基であり;a、b、c、d及びeは、以下を満たす数である:0.10≦a≦0.60、0≦b≦0.70、0≦c≦0.80、0≦d≦0.65、0≦e≦0.05、但し、c+d>0.20、かつa+b+c+d=1)
で表される非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂である。
【0184】
上記の平均単位式において、各Rは独立して1~10個の炭素原子を有する一価炭化水素基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、又は類似のアルキル基;ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、又は類似のアルケニル基;フェニル、トリル、キシリル、又は類似のアリール基;ベンジル、フェネチル、又は類似のアラルキル基;及びクロロメチル、3-クロロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、又は類似のハロゲン化アルキル基等である。更に、1分子中の全Rの1~12モル%がアルケニル基で、好ましくは1分子中の全Rの2~10モル%がアルケニル基である。アルケニル基の含有量が前記範囲の下限未満では、得られる硬化物の機械的強度(硬度等)が不十分となる場合がある。他方、アルケニル基の含有量が前記範囲の上限以下であれば、本成分を含む組成物が、組成物全体として良好なホットメルト性能を実現できる。なお、各Rはメチル基等の炭素原子数1~10のアルキル基およびビニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基から選ばれる官能基であることが好ましく、発明の技術的効果の見地から、Rはフェニル基等のアリール基を実質的に含まないことが好ましい。フェニル基等のアリール基を大量に含む場合、当該成分自体がホットメルト性となって、本発明の技術的効果を達成できなくなる場合があるほか、硬化物において、SiO4/2基特有の硬化物を補強する効果が低下する場合がある。
【0185】
式中、Rは水素原子又は1~10個の炭素原子を有するアルキル基である。Rのアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル又はヘキシルで例示される。当該Rを含む官能基R1/2は、当該成分中の水酸基又はアルコキシ基に該当する。
【0186】
式中、aは一般式:R SiO1/2のシロキサン単位の割合を示す数である。この数は、0.1≦a≦0.60、好ましくは0.15≦a≦0.55を満たす。aが前記範囲の下限以上であれば、本成分を含む組成物が、組成物全体として良好なホットメルト性能を実現できる。他方、aが前記範囲の上限以下であれば、得られる硬化物の機械的強度(硬度、伸び率等)が低くなりすぎない。
【0187】
式中、bは一般式:R SiO2/2のシロキサン単位の割合を示す数である。この数は、0≦b≦0.70、好ましくは0≦b≦0.60を満たす。bが範囲の上限以下であれば、本成分を含む組成物が、組成物全体として良好なホットメルト性能を実現でき、かつ室温にてべたつきの少ない組成物を得ることができる。
【0188】
式中、cは、一般式:RSiO3/2のシロキサン単位の割合を示す数である。この数は、0≦c≦0.80、好ましくは0≦c≦0.75を満たす。cが範囲の上限以下であれば、本成分を含む組成物が、組成物全体として良好なホットメルト性能を実現でき、かつ室温にてべたつきの少ない、タックフリーの組成物を得ることができる。本発明において、cは0であってよく、かつ好ましい。
【0189】
式中、dは、SiO4/2のシロキサン単位の割合を示す数であり、0.00≦d≦0.65であることが必要であり、0.20≦d≦0.65であることが好ましく、0.25≦d≦0.65であることが特に好ましい。当該数値範囲内において、本成分を含む組成物が、組成物全体として良好なホットメルト性能が実現でき、得られる硬化物は十分な柔軟性を有するためである。
【0190】
本発明において、cまたはdは0であってよいが、c+d>0.20であることが必要である。c+dの値が前記下限未満では、組成物全体として良好なホットメルト性能が実現できず、本発明の技術的効果が十分に達成できない場合がある。
【0191】
式中、eは一般式:R1/2の単位の割合を示す数であり、同単位はオルガノポリシロキサン樹脂中に含まれうるケイ素原子に結合した水酸基またはアルコキシ基を意味する。この数は、0≦e≦0.05、好ましくは0≦e≦0.03を満たす。eが範囲の上限以下であれば、組成物全体として良好なホットメルト性能を実現する材料を得ることができる。なお、最終的には、各シロキサン単位の総和であるa、b、c及びdの合計は1に等しい。
【0192】
好適には、本発明の(A1)成分は、
(A1-2-1)分子全体としてホットメルト性を有さず、分子内に炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有さず、かつ、SiO4/2で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有するオルガノポリシロキサン樹脂 100質量部、および
(A2-2-2)分子全体としてホットメルト性を有さず、分子内に少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有し、かつ、SiO4/2で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有するオルガノポリシロキサン樹脂 0~600質量部
の混合物であることが特に好ましい。
【0193】
[(A2)成分]
(A2)成分は、(A1)成分と共に使用される本組成物の主剤の一つであり、25℃において液状または可塑度を有する半固体状の直鎖状または分岐鎖状のオルガノポリシロキサンであって、分子内に少なくとも2個の炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有するものである。このような硬化反応性の鎖状オルガノポリシロキサンは、特に、前述の固体状オルガノポリシロキサン樹脂であって、(A1-2-1)成分または(A1-2-2)成分と混合することで、混合物全体としてホットメルト特性を発現する。
【0194】
(A2)成分は、(A1)成分と同様に有機溶媒に可溶であり、溶液系において、(A1)成分と共に均一に混合することが可能である。
【0195】
(A2)成分は、分子内に炭素-炭素二重結合を有する硬化反応性基を有することが好ましく、このような硬化反応性基は、ヒドロシリル化反応性、ラジカル反応性または有機過酸化物硬化性の官能基であり、他の成分との架橋反応によって、硬化物を形成する。このような硬化反応性基は、アルケニル基またはアクリル基であり、前記同様の基が例示され、特にビニル基またはヘキセニル基であることが好ましい。
【0196】
(A2)成分は、25℃(室温)において液状または可塑度を有する半固体状の直鎖状または分岐鎖状のオルガノポリシロキサンであり、室温で固体状の(A1)成分と混合することで、組成物全体としてホットメルト特性を発現する。その構造は、少数の分岐のシロキサン単位(例えば、一般式:RSiO3/2で表されるT単位(Rは独立して1~10個の炭素原子を有する一価炭化水素基)またはSiO4/2で表されるQ単位)を有する分岐鎖状のオルガノポリシロキサンであってもよいが、好適には、
(A2-1)下記構造式:
SiO(SiR O)SiR
(式中、各Rは独立して1~10個の炭素原子を有する一価炭化水素基であり、但し1分子中のRの少なくとも2個はアルケニル基であり、kは20~10,000の数である)
で表される直鎖状ジオルガノポリシロキサンである。好適には、分子鎖両末端に各々1個ずつアルケニル基を有する直鎖状ジオルガノポリシロキサンが好ましい。
【0197】
式中、各Rは独立して1~10個の炭素原子を有する一価炭化水素基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、又は類似のアルキル基;ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、又は類似のアルケニル基;フェニル、トリル、キシリル、又は類似のアリール基;ベンジル、フェネチル、又は類似のアラルキル基;及びクロロメチル、3-クロロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、又は類似のハロゲン化アルキル基等である。更に、1分子中のRの少なくとも2個がアルケニル基、好ましくはビニル基である。また、各Rはメチル基等の炭素原子数1~10のアルキル基およびビニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基から選ばれる官能基であることが好ましく、全てのRのうち、少なくとも2個がアルケニル基であり、残りのRがメチル基であることが好ましい。なお、発明の技術的効果の見地から、Rはフェニル基等のアリール基を実質的に含まないことが好ましい。フェニル基等のアリール基を大量に含む場合、硬化物の高温下での耐着色性が悪化する場合がある。特に好適には、分子鎖両末端に一つずつビニル基等のアルケニル基を有し、他のRがメチル基であるものが好ましい。
【0198】
式中、kは、20~10,000、好ましくは30~9,000、特に好ましくは45~8,000の数である。kが前記の範囲の下限以上であれば、室温でべたつきの少ない粒状組成物を得ることができる。他方、kが前記の範囲の上限以下であれば、組成物全体として良好なホットメルト性能を実現できる。
【0199】
[非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂を含む混合物]
上記の非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂である、(A1-2-1)成分または(A1-2-2)成分を本発明の(A1)成分として使用する場合、(A1-2-1)成分および(A1-2-2)成分の和 100質量部に対して、(A2)成分の使用量が3~100質量部の範囲内であり、4~75質量部の範囲が好ましく、5~50質量部の範囲が特に好ましい。
【0200】
[揮発性の低分子量成分の除去]
上記の通り、(A)成分として、特定の分岐シロキサン単位(SiO4/2)の含有量が高いオルガノポリシロキサン樹脂(具体的には、A1-2-1,2)成分等)を使用する場合、その生産工程において、揮発性の低分子量成分が生成し、樹脂中に混入する。当該揮発性の低分子量成分は、具体的にはMQの構造体を主とする成分であり、Mユニット(R SiO1/2)とQユニット(SiO4/2)からなるオルガノポリシロキサン樹脂を重合するときに副生成物として現れる。本構造体は本発明の組成物からなる硬化物の硬度を著しく下げる効果がある。当該のオルガノポリシロキサン樹脂は相溶性の高い有機溶剤の存在下重合され、かかる有機溶剤を減圧乾燥等により取り除くことで個体状のオルガノポリシロキサン樹脂を得るが、MQの構造体は当該のオルガノポリシロキサン樹脂と相互溶解性が高く、有機溶剤を取り除くような乾燥条件では除去することはできない。本構造体は200℃以上の温度に短時間暴露すると除去できる事は知られていたが、半導体等の基材と一体成型した後に、高温に暴露して除去すると硬化物の体積減少並びに顕著な硬度上昇が起こり、成型物の寸法が変化し、反りなどが発生してしまう。また、シリコーン硬化物のネットワークの中にSiO4/2で表されるシロキサン単位を多量に含む場合、硬化物の硬度が高いものは極端に脆くなるという傾向にあるため、結果的に脆化も発生する。このため、本発明の用途に適用するためには基材との成型工程の前、つまり、原料の時点でMQの構造体等を除去しておく必要がある。
【0201】
このため、上記の工程2に入る前の任意の段階で、これらのオルガノポリシロキサン樹脂成分から、当該低分子量成分を可能な限り除去しておくことが好ましい。具体的にはこれらのオルガノポリシロキサン樹脂成分を200℃下で1時間暴露した時の質量減少率が2.0質量%以下であることが必要であり、1.5質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0202】
揮発性の低分子量成分の種類は特に制限されるものではないが、本発明のオルガノポリシロキサン樹脂は、SiO4/2表される分岐シロキサン単位(Q単位)を多数含むことから、RSiO1/2表されるシロキサン単位(M単位)との反応により、MQとして表現される揮発性のシロキサン成分が副生しやすく、本発明において当該揮発性のシロキサン成分を主たる成分とする揮発性の低分子量成分をオルガノポリシロキサン樹脂から除去することで、上記の質量減少率が実現されていることが特に好ましい。
【0203】
なお、上記の工程1における(A1)成分は有機溶剤に溶解乃至分散された溶液なので、
一方で、これらのオルガノポリシロキサン樹脂を溶剤存在下で混合後、押し出し機等で加熱して溶剤を除去するが、この時に200℃以上の温度で処理することで、オルガノポリシロキサン樹脂中に含まれる低分子量成分を同時に除去することが可能である。
【0204】
[(B)成分]
(B)成分は、(A)成分を硬化するための硬化剤であり、(A)成分を硬化できるものであれば限定されない。(A)成分がアルケニル基を有する場合には、(B)成分は、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとヒドロシリル化反応用触媒であり、(A)成分がアルケニル基を含有し、ヒドロシリル化反応用触媒を含有する場合には、(B)成分は、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンのみでよいが、ヒドロシリル化反応用触媒を併用してもよい。また、(A)成分がアルケニル基を有する場合には、(B)成分は有機過酸化物でもよく、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンを併用してもよい。一方、(A)成分がケイ素原子結合水素原子を有する場合には、(B)成分は、一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンとヒドロシリル化反応用触媒であり、(A)成分がケイ素原子結合水素原子を有し、ヒドロシリル化反応用触媒を含有する場合には、(B)成分は、一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンのみでよいが、ヒドロシリル化反応用触媒を併用してもよい
【0205】
(B)成分中のオルガノポリシロキサンとしては、前記(a)および/または前記(a)で表されるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン、あるいは前記(a)および/または前記(a)で表されるケイ素原子結合水素原子含有オルガノポリシロキサンが例示される。
【0206】
(B)成分としてオルガノポリシロキサンを使用する場合、その含有量は限定されないが、本組成物が硬化するためには、本組成物中のアルケニル基1モルに対してケイ素原子結合水素原子が0.5~20モルとなる範囲内の量、あるいは1.0~10モルとなる範囲内の量であることが好ましい。
【0207】
ヒドロシリル化反応用触媒としては、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒が例示され、本組成物の硬化を著しく促進できることから白金系触媒が好ましい。この白金系触媒としては、白金微粉末、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金-アルケニルシロキサン錯体、白金-オレフィン錯体、白金-カルボニル錯体、およびこれらの白金系触媒を、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂で分散あるいはカプセル化した触媒が例示され、特に、白金-アルケニルシロキサン錯体が好ましい。このアルケニルシロキサンとしては、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのメチル基の一部をエチル基、フェニル基等で置換したアルケニルシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのビニル基をアリル基、ヘキセニル基等で置換したアルケニルシロキサンが例示される。特に、この白金-アルケニルシロキサン錯体の安定性が良好であることから、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンであることが好ましい。加えて、取扱作業性および組成物のポットライフの改善の見地から、熱可塑性樹脂で分散あるいはカプセル化した微粒子状の白金含有ヒドロシリル化反応触媒を用いてもよい。なお、ヒドロシリル化反応を促進する触媒としては、鉄、ルテニウム、鉄/コバルトなどの非白金系金属触媒を用いてもよい。
なお、本発明の製造方法では短時間とは言え、混錬工程中にある程度の温度が組成物に掛かってしまうので、組成物の保存安定性の観点から熱可塑性樹脂で分散あるいはカプセル化した微粒子状の白金含有ヒドロシリル化反応触媒を用いてもよく、かつ、好ましい。
【0208】
ヒドロシリル化反応用触媒の添加量は、(A)成分に対して、金属原子が質量単位で0.01~500ppmの範囲内となる量、0.01~100ppmの範囲内となる量、あるいは、0.01~50ppmの範囲内となる量であることが好ましい。
【0209】
有機過酸化物としては、過酸化アルキル類、過酸化ジアシル類、過酸化エステル類、および過酸化カーボネート類が例示される。
【0210】
過酸化アルキル類としては、ジクミルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、tert-ブチルクミル、1,3-ビス(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、3,6,9-トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリパーオキソナンが例示される。
【0211】
過酸化ジアシル類としては、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイドが例示される。
【0212】
過酸化エステル類としては、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、α-クミルパーオキシネオデカノエート、tert-ブチルパーオキシネオデカノエート、tert-ブチルパーオキシネオヘプタノエート、tert-ブチルパーオキシピバレート、tert-ヘキシルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-アミルパーオキシル-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシイソブチレート、ジ-tert-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、tert-アミルパーオキシ-3,5,5―トリメチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシ-3,5,5―トリメチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシアセテート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-ブチルパーオキシトリメチルアディペートが例示される。
【0213】
過酸化カーボネート類としては、ジ-3-メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、tert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ(4-tert-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジセチルパーオキシジカーボネート、ジミリスチルパーオキシジカーボネートが例示される。
【0214】
この有機過酸化物は、その半減期が10時間である温度が90℃以上、あるいは95℃以上であるものが好ましい。このような有機過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3-ビス(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ-(2-t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、3,6,9-トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリパーオキソナンが例示される。
【0215】
有機過酸化物の含有量は限定されないが、(A)成分100質量部に対して、0.05~10質量部の範囲内、あるいは0.10~5.0質量部の範囲内であることが好ましい。
【0216】
また、本組成物には、本発明の目的を損なわない限り、その他任意の成分として、(A)成分以外のホットメルト性の微粒子、硬化遅延剤や接着付与剤を含有してもよい。ただし、本発明の硬化性シリコーンシートが透明である場合、(A)成分以外のホットメルト性の微粒子を実質的に含まないことが好ましい。
【0217】
硬化遅延剤としては、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、2-フェニル-3-ブチン-2-オール、1-エチニル-1-シクロヘキサノール等のアルキンアルコール;3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン等のエンイン化合物;テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラヘキセニルシクロテトラシロキサン等のアルケニル基含有低分子量シロキサン;メチル-トリス(1,1-ジメチルプロピニルオキシ)シラン、ビニル-トリス(1,1-ジメチルプロピニルオキシ)シラン等のアルキニルオキシシランが例示される。この硬化遅延剤の含有量は限定されないが、本組成物に対して、質量単位で、10~10000ppmの範囲内であることが好ましい。なお、前記の通り、硬化遅延剤を本発明の硬化性シリコーンシートの原料混合物に添加する場合、工程2において、ヒドロシリル化反応触媒の添加を行う前の供給ポイント1において、硬化剤の一部であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの混合物として添加することが好ましい。
【0218】
接着付与剤としては、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を一分子中に少なくとも1個有する有機ケイ素化合物が好ましい。このアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基が例示され、特に、メトキシ基が好ましい。また、有機ケイ素化合物中のアルコキシ基以外のケイ素原子に結合する基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アルキル基等のハロゲン置換もしくは非置換の一価炭化水素基;3-グリシドキシプロピル基、4-グリシドキシブチル基等のグリシドキシアルキル基;2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピル基等のエポキシシクロヘキシルアルキル基;3,4-エポキシブチル基、7,8-エポキシオクチル基等のエポキシアルキル基;3-メタクリロキシプロピル基等のアクリル基含有一価有機基;水素原子が例示される。この有機ケイ素化合物は本組成物中のアルケニル基またはケイ素原子結合水素原子と反応し得る基を有することが好ましく、具体的には、ケイ素原子結合水素原子またはアルケニル基を有することが好ましい。また、各種の基材に対して良好な接着性を付与できることから、この有機ケイ素化合物は一分子中に少なくとも1個のエポキシ基含有一価有機基を有するものであることが好ましい。こうした有機ケイ素化合物としては、オルガノシラン化合物、オルガノシロキサンオリゴマー、アルキルシリケートが例示される。このオルガノシロキサンオリゴマーあるいはアルキルシリケートの分子構造としては、直鎖状、一部分枝を有する直鎖状、分枝鎖状、環状、網状が例示され、特に、直鎖状、分枝鎖状、網状であることが好ましい。有機ケイ素化合物としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン化合物;一分子中にケイ素原子結合アルケニル基もしくはケイ素原子結合水素原子、およびケイ素原子結合アルコキシ基をそれぞれ少なくとも1個ずつ有するシロキサン化合物、ケイ素原子結合アルコキシ基を少なくとも1個有するシラン化合物またはシロキサン化合物と一分子中にケイ素原子結合ヒドロキシ基とケイ素原子結合アルケニル基をそれぞれ少なくとも1個ずつ有するシロキサン化合物との混合物、アミノ基含有オルガノアルコキシシランとエポキシ基含有オルガノアルコキシシランとの反応混合物、一分子中に少なくとも二つのアルコキシシリル基を有し,かつそれらのシリル基の間にケイ素-酸素結合以外の結合が含まれている有機化合物、一般式: R Si(OR)4-n
(式中、Rは一価のエポキシ基含有有機基であり、Rは炭素原子数1~6のアルキル基または水素原子である。nは1~3の範囲の数である)
で表されるエポキシ基含有シランまたはその部分加水分解縮合物、ビニル基含有シロキサンオリゴマー(鎖状または環状構造のものを含む)とエポキシ基含有トリアルコキシシランとの反応混合物、メチルポリシリケート、エチルポリシリケート、エポキシ基含有エチルポリシリケートが例示される。この接着付与剤は低粘度液状であることが好ましく、その粘度は限定されないが、25℃において1~500mPa・sの範囲内であることが好ましい。また、この接着付与剤の含有量は限定されないが、本組成物の合計100質量部に対して0.01~10質量部の範囲内であることが好ましい。
【0219】
本発明において、特に好適な接着付与剤として、アミノ基含有オルガノアルコキシシランとエポキシ基含有オルガノアルコキシシランとの反応混合物が例示される。このような成分は、硬化途上で接触している各種基材に対する初期接着性、特に未洗浄被着体に対しても低温接着性を改善する成分である。また、本接着促進剤を配合した硬化性シリコーン組成物の硬化系によっては、架橋剤としても作用する場合もある。このような反応混合物は、特公昭52-8854号公報や特開平10-195085号公報に開示されている。
【0220】
このような成分を構成するアミノ基含有有機基を有するアルコキシシランとしては、アミノメチルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)アミノメチルトリブトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アニリノプロピルトリエトキシシランが例示される。
【0221】
また、エポキシ基含有オルガノアルコキシシランとしては、3-グリシドキシプロリルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシランが例示される。
【0222】
これらアミノ基含有有機基を有するアルコキシシランとエポキシ基含有有機基を有するアルコキシシランとの比率はモル比で、(1:1.5)~(1:5)の範囲内にあることが好ましく、(1:2)~(1:4)の範囲内にあることが特に好ましい。この成分(e1)は、上記のようなアミノ基含有有機基を有するアルコキシシランとエポキシ基含有有機基を有するアルコキシシランとを混合して、室温下あるいは加熱下で反応させることによって容易に合成することができる。
【0223】
特に、本発明においては、特開平10-195085号公報に記載の方法により、アミノ基含有有機基を有するアルコキシシランとエポキシ基含有有機基を有するアルコキシシランとを反応させる際、特に、アルコール交換反応により環化させてなる、一般式:
【化1】
{式中、R1はアルキル基、アルケニル基またはアルコキシ基であり、R2は同じかまたは異なる一般式:
【化2】
(式中、R4はアルキレン基またはアルキレンオキシアルキレン基であり、R5は一価炭化水素基であり、R6はアルキル基であり、R7はアルキレン基であり、R8はアルキル基、アルケニル基、またはアシル基であり、aは0、1、または2である。)
で表される基からなる群から選択される基であり、R3は同じかまたは異なる水素原子もしくはアルキル基である。}
で表されるカルバシラトラン誘導体を含有することが特に好ましい。このようなカルバシラトラン誘導体として、以下の構造で表される1分子中にケイ素原子結合アルコキシ基またはケイ素原子結合アルケニル基を有するカルバシラトラン誘導体が例示される。
【化3】
(式中、Rcはメトキシ基、エトキシ基、ビニル基、アリル基およびヘキセニル基から選ばれる基)
【0224】
また、本発明においては、下記構造式で表される、シラトラン誘導体を接着付与剤として利用してもよい。
【化4】
式中のR1は同じかまたは異なる水素原子もしくはアルキル基であり、特に、R1としては、水素原子、またはメチル基が好ましい。また、上式中のR2は水素原子、アルキル基、および一般式:-R4-Si(OR5)x6 (3-x)で表されるアルコキシシリル基含有有機基からなる群から選択される同じかまたは異なる基であり、但し、R2の少なくとも1個はこのアルコキシシリル基含有有機基である。R2のアルキル基としては、メチル基等が例示される。また、R2のアルコキシシリル基含有有機基において、式中のR4は二価有機基であり、アルキレン基またはアルキレンオキシアルキレン基が例示され、特に、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、メチレンオキシプロピレン基、メチレンオキシペンチレン基であることが好ましい。また、式中のR5は炭素原子数1~10のアルキル基であり、好ましくは、メチル基、エチル基である。また、式中のR6は置換もしくは非置換の一価炭化水素基であり、好ましくは、メチル基である。また、式中のxは1、2、または3であり、好ましくは、3である。
【0225】
このようなR2のアルコキシシリル基含有有機基としては、次のような基が例示される。
-(CH2)2Si(OCH3)3-(CH2)2Si(OCH3)2CH3
-(CH2)3Si(OC2H5)3-(CH2)3Si(OC2H5)(CH3)2
-CH2O(CH2)3Si(OCH3)3
-CH2O(CH2)3Si(OC2H5)3
-CH2O(CH2)3Si(OCH3)2CH3
-CH2O(CH2)3Si(OC2H5)2CH3
-CH2OCH2Si(OCH3)3-CH2OCH2Si(OCH3)(CH3)2
【0226】
上式中のR3は置換もしくは非置換の一価炭化水素基、炭素原子数1~10のアルコキシ基、グリシドキシアルキル基、オキシラニルアルキル基、およびアシロキシアルキル基からなる群から選択される少なくとも一種の基であり、R3の一価炭化水素基としては、メチル基等のアルキル基が例示され、R3のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基が例示され、R3のグリシドキシアルキル基としては、3-グリシドキシプロピル基が例示され、R3のオキシラニルアルキル基としては、4-オキシラニルブチル基、8-オキシラニルオクチル基が例示され、R3のアシロキシアルキル基としては、アセトキシプロピル基、3-メタクリロキシプロピル基が例示される。特に、R3としては、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基であることが好ましく、さらには、アルキル基またはアルケニル基であることが好ましく、メチル基、ビニル基、アリル基およびヘキセニル基から選ばれる基が特に好適に例示される。
【0227】
さらに、本組成物には、本発明の目的を損なわない限り、その他任意の成分として、酸化鉄(ベンガラ)、酸化セリウム、セリウムジメチルシラノレート、脂肪酸セリウム塩、水酸化セリウム、ジルコニウム化合物等の耐熱剤;その他、染料、白色以外の顔料、難燃性付与剤等を含有してもよい。
【0228】
上記の組成物は、白色顔料、熱伝導性フィラー、導電性フィラー、蛍光体等の無機フィラーを、(A)成分であるオルガノポリシロキサン樹脂微粒子又はそれを含む混合物と併用することにより、光反射率や熱伝導性の向上の機能性を付与した、溶融(ホットメルト)時のギャップフィル性に優れ、硬化物が室温から高温、具体的には、25℃~150℃において柔軟であり、応力緩和特性に優れ、かつ、室温で折り曲げ等の変形が生じても破損しにくいという優れた特性を有する。
【0229】
[機能性フィラーの含有量について]
本発明の製造方法は、機能性フィラーの含有量が少ないか、実質的に含有しない硬化性シリコーン組成物からなる硬化性シリコーンシートであって、透明性及び均一性に優れるものの製造に特に好適である。機能性フィラーとしては、無機フィラー、有機フィラー、およびこれらの混合物が例示されるが、硬化性シリコーンシート全体の5質量%未満、より好適には1質量%未満の使用量であっても、透明性及び均一性に優れ、ホットメルト性を有する硬化性シリコーンシートを得ることができる。
【0230】
[多成分型の硬化性シリコーン組成物の使用]
本発明の製造方法は、上記の通り、工程1および工程2においてオルガノポリシロキサン樹脂(および任意で鎖状ジオルガノポリシロキサン)と硬化剤を別々に投入するプロセスを含む。従って、少なくとも、オルガノポリシロキサン樹脂を含む成分と硬化剤を含む成分を別々に保管して使用する、2成分型以上の組成物を原料に用いることが好ましい。さらに、本発明の硬化性シリコーンシートが、熱硬化反応性、特に、ヒドロシリル化反応硬化性の場合、I)オルガノポリシロキサン樹脂(および任意で鎖状ジオルガノポリシロキサン)を含む成分パート、II)架橋剤であるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、好ましくは更に硬化遅延剤を含む成分パート、およびIII)ヒドロシリル化反応触媒を含む成分パートを少なくとも含む3成分型以上の多成分型の硬化性シリコーン組成物を原料に用いることが好ましい。なお、オルガノポリシロキサン樹脂(および任意で鎖状ジオルガノポリシロキサン)を含む成分パートは、有機溶剤を含む溶液系であってよく、かつ好ましい。また、III)ヒドロシリル化反応触媒を含む成分パートは、ヒドロシリル化反応触媒をシロキサン系溶媒に分散させた溶液系であってよく、かつ好ましい。
【0231】
[硬化物の貯蔵弾性率]
具体的には、上記組成物を硬化してなる硬化物は、25℃における貯蔵弾性率(G')の値が2000MPa以下であり、かつ、150℃における貯蔵弾性率(G')の値が100MPa以下である。かかる硬化物は室温(25℃)および高温(150℃)のいずれにおいても柔軟であり、半導体基盤等の基材への密着性と追従性に優れ、かつ、近年導入が進んでいるフレキシブル半導体基盤のように変形を前提とした半導体素子の封止用途であっても、封止した半導体素子の破損あるいは剥離、ボイド等の欠陥の発生が抑制される。なお、特に高い伸びおよび変形に対する追従性が求められる用途にあっては、25℃における貯蔵弾性率(G')の値が1500MPa以下、1000MPa以下にしてもよく、かつ、150℃における貯蔵弾性率(G')の値が50MPa以下または40MPa以下にしてもよい。
【0232】
[硬化物の損失正接(tanδ)のピーク値およびピーク温度]
さらに、本発明の組成物を硬化してなる硬化物は、周波数1.0Hzにおける損失弾性率(G'')に対する貯蔵弾性率(G')の比、すなわち、G’/G''により定義される損失正接(tanδ)のピーク値が0.40以上であることが必要であり、0.50以上であることが好ましく、0.50~0.80の範囲にあることが特に好ましい。当該tanδのピーク値が0.40未満では、特に薄膜状、あるいは、アルミリードフレーム等と一体成型した場合に、成型物の反りまたは破損が発生する場合がある。なお、tanδのピーク値を与えるピーク温度は特に制限されるものではないが、30~200℃の範囲にあることが好ましく、40~150℃の範囲にピーク温度があることが特に好ましい。
【0233】
本発明の組成物においては、上記のtanδのピーク値を0.4以上とすることで応力緩和能力に優れた硬化物を形成するものであるが、特に、好適には上記の成分を選択することによって、無機フィラーの含有量が比較的多い組成でも高いtanδを実現することができる。この様な硬化物は近年導入が進んでいる半導体の大面積一括封止プロセスにおいて優れた低反り能力を実現するものである。
【0234】
また、本発明の組成物においては、オルガノポリシロキサン樹脂微粒子、硬化剤および機能性フィラーの混合物が、硬化により、
室温から200℃までの成型温度におけるMDR(Moving Die Rheom eter)により測定される(1)最大トルク値が50dN・m未満であり、(2)最大トルク値に到達したときに、貯蔵トルク値/損失トルク値の比で表される損失正接(tanδ)の値が0.2未満である硬化物を与えることが特に好ましい。
【0235】
特に、一般的な成型温度である150℃に設定したMDRにより測定される(1)最大トルク値が50dN・m未満であり、(2)最大トルク値に到達したときに、貯蔵トルク値/損失トルク値の比で表される損失正接(tanδ)の値が0.2未満であることが特に好ましい。なお、上記の硬化挙動を充足し、特定の温度(例えば、150℃)におけるMDRの物性値を充足する限り、本発明のトランスファー成型用の硬化性シリコーン組成物は、室温から200℃までの所望の成型温度(例えば、150℃以外の成型温度)を所望により選択することができ、使用することができることは言うまでもない。
【0236】
上記の最大トルク値について説明する。本発明において、トルク値とは本組成物を硬化(=加硫)してなる硬化物につて、JIS K 6300-2「未加硫ゴム-物理特性-第2部:振動式加硫試験機による加硫特性の求め方」に準拠したMDRによる測定で得られるトルク値であり、最大トルク値とは、成型温度、好適には150℃における加硫後の600秒間に測定されるトルク値の最大値である。ここで、硬化物の成型温度における最大トルク値が50dN・m未満であるとは、成型後の硬化物が高温でも柔らかいこと、すなわち、硬化物が低モジュラスかつ柔軟であって、弾性率が低く、応力緩和特性に優れることを意味するものであり、本発明において、硬化物の成型温度における最大トルク値は、40dN・m未満であってよく、35dN・m未満であることが好ましく、5~30dN・mの範囲であることが特に好ましい。当該範囲であると、硬化物の十分な応力緩和特性が実現でき、かつ、後述する損失正接(tanδ)と両立させることが可能であるためである。一方、硬化物の成型温度における最大トルク値が上記上限を超えると、硬化物が過度に硬質で、応力緩和性が実現できないため、特に基材との一体成型時に成型物の反りや欠陥を生じる場合がある。
【0237】
次に、本発明における組成物の損失正接(tanδ)の条件について説明する。損失正接(tanδ)は、上記のMDRを用いる測定により、最大トルク値に到達した際に、貯蔵トルク値/損失トルク値の比で表される損失正接(tanδ)の値を読み取ることで、測定される値である。ここで、組成物の損失正接(tanδ)が、0.2未満であるとは、組成物を硬化してなる硬化物のゴム弾性が低く、その表面が適度に硬質であることを意味するものであり、当該硬化物は成型工程における離型時に金型に硬化物が付着/吸着しにくく、脱型性に優れる。脱型性の見地から、最大トルク値に到達した際の、硬化物の損失正接(tanδ)が0.01~0.19の範囲であることが好ましく、0.03~0.18の範囲であることが特に好ましい。一方、組成物の損失正接(tanδ)が0.2を超えると、得られる硬化物のゴム弾性が高くなり、その表面が粘着性を帯びてくるので、離型時に金型に硬化物が付着/吸着しやすくなり、スムーズに金型から分離しにくく、脱型性が不十分となる場合がある。
【0238】
硬化物につて、上記の(1)最大トルク値の条件および(2)最大トルク値に到達したときに、貯蔵トルク値/損失トルク値の比で表される損失正接(tanδ)の値の条件を共に充足することで、硬化性シリコーンシートは、その硬化物の応力緩和特性に優れ、硬化物の反りや欠陥を生じにくく、かつ、良好な脱型性を実現するものである。
【実施例
【0239】
本発明のホットメルト性の硬化性シリコーンシートの製造方法を実施例と比較例により詳細に説明する。なお、式中、Me、Ph、Viは、それぞれメチル基、フェニル基、ビニル基を表す。また、硬化性シリコーンシートを構成する硬化性粒状シリコーン組成物の軟化点は以下の方法で測定した。
【0240】
[硬化性シリコーン組成物の軟化点]
硬化性シリコーン組成物をφ14mm×22mmの円柱状のペレットに成型した。このペレットを25℃~100℃に設定したホットプレート上に置き、100グラム重の荷重で上から10秒間押し続け、荷重を取り除いた後、該ペレットの変形量を測定した。高さ方向の変形量が1mm以上となった温度を軟化点とした。
【0241】
以下、参考例に示す方法で、ヒドロシリル化反応触媒を含むオルガノポリシロキサン樹脂を調製し、そのホットメルト性の有無を軟化点/溶融粘度の有無により評価し、さらに当該オルガノポリシロキサン樹脂微粒子を調製した。なお、参考例において、ヒドロシリル化反応触媒である白金錯体に用いる1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジビニルジシロキサンは、「1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン」と記述する。
【0242】
[参考例1:ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂と直鎖状のオルガノポリシロキサンの混合物の調整]
25℃において白色固体状で、平均単位式:
(MeViSiO1/2)0.05(MeSiO1/2)0.39(SiO4/2)0.56(HO1/2)0.02
で表されるオルガノポリシロキサン樹脂(ビニル基の含有量=1.9質量%) 3.25kg
25℃において白色固体状で、平均単位式:
(MeSiO1/2)0.44(SiO4/2)0.56(HO1/2)0.02
で表されるオルガノポリシロキサン樹脂(ビニル基の含有量=0質量%) 3.05kg
及び式:
ViMeSiO(MeSiO)800SiViMe
で表される、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基の含有量=0.09質量%) 2.85kg、
をペール缶内でスリーワンモーターを用いて4.00kgのキシレンに溶解した。得られた溶液を最高到達温度を230℃に設定した二軸押し出し機にフィードし、真空度-0.08MPaの条件でキシレン及び低分子量のオルガノポリシロキサン成分の除去を行ったところ、ホットメルト性の透明な混合物1が得られ、ずん胴ペールに受けそのまま冷却し固体化させた。この混合物を揮発成分量を200℃×1時間の条件で測定したところ0.7wt%であった。
【0243】
[参考例2:非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子]
1Lのフラスコに、25℃において白色固体状で、平均単位式:
(MeSiO1/2)0.44(SiO4/2)0.56(HO1/2)0.02
で表されるオルガノポリシロキサン樹脂の55質量%-キシレン溶液 270.5g、および白金の1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液(白金金属の含有量=約4000ppm) 0.375gを投入し、室温(25℃)で均一に攪拌して、白金金属として質量単位で10ppm含有するオルガノポリシロキサン樹脂のキシレン溶液を調製した。また、このオルガノポリシロキサン樹脂は200℃まで加熱しても軟化/溶融せず、ホットメルト性を有していなかった。
【0244】
上記で調製したオルガノポリシロキサン樹脂のキシレン溶液を50℃においてスプレードライヤーを用いたスプレー法によりキシレンを除去しながら粒子化し、真球状の非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子を調製した。この微粒子を光学顕微鏡で観測したところ、粒子径が5~10μmであり、平均粒子径は7.4μmであった。
【0245】
[実施例1]
参考例1で得られたホットメルト性の混合物1をずん胴ペール用のバルクメルター(ノードソン社製のVersaPailメルター)により170℃にて二軸押し出し機に図1に示すライン1からから9.30kg/hrの量をフィードした。
次に、
式:
MeSiO(MeHSiO)(MeSiO)6.5SiMe
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン 0.20kg/hr、
式:
HMeSiO(MeSiO)17SiMe
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン 0.50kg/hr、
1-エチニル-1-シクロヘキサノール(本組成物に対して質量単位1000ppmとなる量)、
からなる混合物を図1に示すライン2からフィードした。投入部の設定温度は150℃であった。
続いて、
ViMeSiO(MeSiO)800SiViMe
で表される、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基の含有量=0.09質量%) 1.5kg/hr、
白金の1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液(本組成物に対して白金金属として質量単位で4.0ppmとなる量)、
からなる混合物を図1のライン3からフィードし(投入部の設定温度は80℃)、押し出し機内の真空度は―0.08MPaで、脱気溶融混錬を行った。二軸押出機の出口温度は80℃とし、混合物は半固体状の軟化物の形態で、125μm厚の剥離性フィルム(株式会社タカラインコーポレーション社製、FL2-01)上に供給量5kg/hrとなるように供給し、2枚の剥離性フィルム間に積層した。続いて、当該積層体を、90℃に温度制御されたロール間で延伸することで、厚さ300μmのホットメルト性の硬化性シリコーンシートが2枚の剥離性フィルム間に積層された積層体を形成させ、空冷により全体を冷却した。ライン2からロールで延伸するまでに掛かった時間は約2分であった。当該製造装置の全体の構成を、図2に示す。
【0246】
得られた積層体から剥離性フィルムを分離したところ、泡がなく平坦で均質なタックフリーの透明なホットメルト性の硬化性シリコーンシートを得ることができ、その軟化温度は80℃であった。
【0247】
[比較例1]
参考例2で得た非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子(ビニル基含有量=0質量%) 6.98kg、
式:
ViMeSiO(MeSiO)800SiViMe
で表される、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基の含有量=0.09質量%) 2.99kg、
式:
MeSiO(MeHSiO)(MeSiO)6.5SiMe
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン 0.20kg、
{分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン中のビニル基1モルに対して、上記オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子が1.4モルとなる量}、
1-エチニル-1-シクロヘキサノール(本組成物に対して質量単位1000ppmとなる量を中型粉砕機に一括投入し、室温(25℃)で1分間攪拌を行ったところ、ところどころべたついた塊となり、均一な混合物を得られなかった。
【0248】
得られた塊をずん胴ペールに移し替え、実施例1と同じバルクメルター(ノードソン社製のVersaPailメルター)により100℃にて二軸押し出し機にフィードしようとしたが、溶融せずに押し出し機にフィードできなかった。
【0249】
[比較例2]
参考例2で得た非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子(ビニル基含有量=0質量%) 6.98kg、
式:
ViMeSiO(MeSiO)800SiViMe
で表される、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基の含有量=0.09質量%) 2.99kg、
式:
MeSiO(MeHSiO)(MeSiO)6.5SiMe
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン 0.20kg、
{分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン中のビニル基1モルに対して、上記オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子が1.4モルとなる量}、
1-エチニル-1-シクロヘキサノール(本組成物に対して質量単位1000ppmとなる量を中型粉砕機に一括投入し、室温(25℃)で1分間攪拌を行ったところ、ところどころべたついた塊となり、均一な混合物を得られなかった。
【0250】
得られた塊をずん胴ペール用移し替え、実施例1と同じホットメルター(ノードソン社製のVersaPailメルター)により170℃にて二軸押し出し機にフィードしたところ、途中で硬化が始まってしまいフィードできなかった。
【0251】
[総括]
参考例1により、硬化剤を含まないホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂を含むコンパウンドを得て、当該混合物を温度管理を行った2軸押し出し機で硬化剤と混合し、脱気溶融混錬を経て剥離性フィルム間に積層することで、ホットメルト性の硬化性シリコーンシートを工業的に短時間で、連続的に製造することができた。なお、当該製造方法においては、機能性フィラーを実質的に含まず、透明性と均一性に優れ、表面タック(粘着)のない硬化性シリコーンシートを得ることができる。
【0252】
一方、類似原料を用いて非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子を得た後に、硬化剤等の他の成分を混合しようとしても、原料を均一に混合することができず、溶融不良あるいは硬化反応の進行によって2軸押し出し機による連続生産が困難であった。
【符号の説明】
【0253】
図1
1:バルクメルター
2:T型ダイを備える二軸押出機
3-a:ポンプ
3-b:ポンプ
3-c:真空ポンプ
4-a:ライン1
4-b:ライン2
4-c:ライン3

図2
1:バルクメルター
2:T型ダイを備える二軸押出機
3-a:ポンプ
3-b:ポンプ
3-c:真空ポンプ
4-a:剥離シート
4-b:剥離シート
5-a:延伸ロール(任意で温度調節機能をさらに備えてもよい)
5-b:延伸ロール(任意で温度調節機能をさらに備えてもよい)
6:膜厚計
7-a:引張ロール
7-b:引張ロール
8:異物検査機
9:シートカッター
図1
図2