(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】硬化性粒状シリコーン組成物、その硬化物、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 83/07 20060101AFI20240123BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20240123BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20240123BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20240123BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C08K5/14
H01L23/30 F
(21)【出願番号】P 2019549258
(86)(22)【出願日】2018-10-15
(86)【国際出願番号】 JP2018038258
(87)【国際公開番号】W WO2019078140
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2017203186
(32)【優先日】2017-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】719000328
【氏名又は名称】ダウ・東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山崎 亮介
(72)【発明者】
【氏名】今泉 徹
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 弘一
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-124967(JP,A)
【文献】特表2017-512224(JP,A)
【文献】国際公開第2015/194158(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/103654(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/136243(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/030286(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/030287(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/030288(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00-83/16
C08K 3/00-13/08
H01L 23/29、23/31
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)分子全体としてホットメルト性を有さず、分子内に少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有し、かつ、RSiO
3/2(Rは一価有機基)またはSiO
4/2で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有するオルガノポリシロキサン樹脂微粒子であって、(A1)下記平均単位式:
(R
1
3SiO
1/2)
a(R
1
2SiO
2/2)
b(R
1SiO
3/2)
c(SiO
4/2)
d(R
2O
1/2)
e
(式中、各R
1は独立して1~10個の炭素原子を有する一価炭化水素基であり、但し1分子中の全R
1の1~12モル%がアルケニル基であり;R
2は水素原子又は1~10個の炭素原子を有するアルキル基であり;a、b、c、d及びeは、以下を満たす数である:0.1≦a≦0.60、0≦b≦0.7、0≦c≦0.8、0≦d≦0.6
5、0≦e≦0.05、但しc+d>0.2、かつa+b+c+d=1)
で表される非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂粒子、
(B)25℃において液状の直鎖
状のオルガノポリシロキサンであって、分子内に少なくとも2個の炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有し、(B1)下記構造式:
R
3
3SiO(SiR
3
2O)
kSiR
3
3
(式中、各R
3は独立して1~10個の炭素原子を有する一価炭化水素基であり、但し1分子中のR
3の少なくとも2個はアルケニル基であり、kは20~5,000の数である)
で表される直鎖
状のオルガノポリシロキサン、
(C)以下の(c1)または(c2)から選ばれる1種類以上の硬化剤
(c1)有機過酸化物
(c2)分子内に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンおよびヒドロシリル化反応触媒
(D)補強性フィラー、白色顔料、熱伝導性フィラー又は導電性フィラーから選ばれる1種類以上のフィラー
を含有してなり、(A)成分および(B)成分の質量比が90:10~50:50の範囲であり、(D)成分の量が(A)~(C)成分の和100質量部に対して10~1000質量部の範囲であり、かつ、組成物全体としてホットメルト性を有することを特徴とする、硬化性粒状シリコーン組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の硬化性粒状シリコーン組成物であって、(A)成分が、平均一次粒子径が1~20μmの真球状のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子であるもの。
【請求項3】
さらに、(A´)下記平均単位式:
(R
5
3SiO
1/2)
a'(R
5
2SiO
2/2)
b'(R
5SiO
3/2)
c'(SiO
4/2)
d'(R
2O
1/2)e'
(式中、各R
5は、独立して、脂肪族不飽和炭素結合を有さない炭素原子数1~10の一価炭化水素基であり、R
2は水素原子又は1~10個の炭素原子を有するアルキル基であり;a'、b'、c'、d'及びe'は、以下を満たす数である:0.35≦a'≦0.55、0≦b'≦0.2、0≦c'≦0.2、0.45≦d'≦0.65、0≦e'≦0.05、及び
a'+b'+c'+d'=1)
で表される非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂粒子を含む、請求項1または請求項2に記載の硬化性粒状シリコーン組成物
。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の硬化性粒状シリコーン組成物であって、(C)成分が、
(c2-1)下記平均単位式:
(R
4
3SiO
1/2)
f(R
5
2SiO
2/2)
g(R
5SiO
3/2)
h(SiO
4/2)
i(R
2O
1/2)
j
(式中、各R
4は同じか又は異なる、脂肪族不飽和炭素結合を有さない炭素原子数1~10の一価炭化水素基もしくは水素原子であり、但し、一分子中、少なくとも2個のR
4は水素原子であり、R
5は脂肪族不飽和結合を有さない炭素原子数1~10の一価炭化水素基であり、R
2は水素原子又は1~10個の炭素原子を有するアルキル基であり、;f、g、h及びiは、以下を満たす数である:0.1≦f≦0.80、0≦g≦0.5、0≦h≦0.8、0≦i≦0.6、0≦j≦0.05、但し、h+i>0.1、かつf+g+h+i+j=1)
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂およびヒドロシリル化反応触媒を少なくとも含み、
上記の(c2-1)のオルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂の含有量が、(A)成分と(B)成分中の炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基に対する当該オルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂中の珪素原子結合水素原子のモル比が0.5~20の範囲となる量であるもの。
【請求項5】
(D)成分が、少なくとも白色顔料を含む機能性フィラーである、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の硬化性粒状シリコーン組成物。
【請求項6】
(E)滴点が50℃以上であり、150℃での高化式フローテスターCFT-500EX(株式会社島津製作所製)により、100kgfの加圧下、直径0.5mmのノズルにより測定される溶融粘度が10Pas以下であるホットメルト性の粒子
をさらに含む、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の硬化性粒状シリコーン組成物。
【請求項7】
(E)成分が脂肪酸金属塩からなるホットメルト性の粒子である、請求項6に記載の硬化性粒状シリコーン組成物。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の硬化性粒状シリコーン組成物を硬化させてなる、硬化物。
【請求項9】
請求項8に記載の硬化物の半導体装置用部材としての使用。
【請求項10】
請求項8に記載の硬化物の光反射材としての使用。
【請求項11】
請求項8に記載の硬化物を有する光半導体装置。
【請求項12】
硬化性粒状シリコーン組成物を構成する各成分のみを、50℃を超えない温度条件下で混合することにより粒状化することを特徴とする、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の硬化性粒状シリコーン組成物の製造方法。
【請求項13】
下記工程(I)~(III)から少なくともなる硬化物の成型方法。
(I)請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の硬化性粒状シリコーン組成物を50℃以上に加熱して、溶融する工程;
(II)前記工程(I)で得られた液状の硬化性シリコーン組成物を金型に注入する工程 又は 型締めにより金型に前記工程(I)で得られた硬化性シリコーン組成物を行き渡らせる工程;および
(III)前記工程(II)で注入した硬化性シリコーン組成物を硬化する工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡便な製造方法で得ることができ、ホットメルト性/成型性とその硬化物の高温下における耐着色性に優れた硬化性粒状シリコーン組成物とその成型物(ペレット、シート等)およびその硬化物に関する。また、本発明は、当該組成物の硬化物およびその用途(特に、反射材等の半導体用部材および当該硬化物を有する光半導体を含む)、当該組成物の製造方法および硬化物の成型方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
硬化性シリコーン組成物は、硬化して、優れた耐熱性、耐寒性、電気絶縁性、耐候性、撥水性、透明性を有する硬化物を形成することから、幅広い産業分野で利用されている。こうした硬化性シリコーン組成物の硬化物は、一般に、他の有機材料と比較し変色しにくく、また、物理的物性の低下が小さいため、光学材料および半導体装置の封止剤としても適している。
【0003】
本出願人は、特許文献1および特許文献2において、成型用のホットメルト性の硬化性粒状シリコーン組成物および反応性シリコーン組成物を提案している。これらのシリコーン組成物はいわゆるフェニルシリコーン樹脂からなり、メチルシリコーン樹脂と比較するとホットメルト性に優れ、かつ、硬化物の硬さや強度に優れるという利点を有するものである。
【0004】
一方、近年では光半導体装置等の小型化および高出力化が進んでおり、これらのホットメルト性の硬化性粒状シリコーン組成物等を適用した場合、特に、200℃以上の高温下においてフェニルシリコーン樹脂に由来する着色が生じる場合があり、特に反射材の分野において光反射率が低下する場合がある。このため、ホットメルト性および成型後の硬化物の機械的強度を実現しつつ、より高い耐熱性および耐着色性の要求を満たすシリコーン組成物が強く求められている。
【0005】
ここで、特許文献3において、メチルシリコーン樹脂を用いたホットメルト性の硬化性シリコーンシートが開示されているが、本発明において粒状組成物は記載も示唆もされていない。さらに、当該組成物の混錬工程において、有機溶媒が不可欠であり、かつ、成型材料に適した機能性フィラー類(特に白色顔料)を大量に含む組成物や粒状組成物はなんら記載も示唆もされていない。さらに、当該組成物はシート作成の工程において、有機溶媒を除去する必要があり、溶媒の残存を避けるためには薄膜のシートしか作成できないため、成型用の組成物としての使用が困難である。また、溶媒を除去する工程において熱が掛かるため成型工程において必要とされる速い硬化性/即硬化性を達成するのが困難である。このため、特許文献3に開示された組成物は、上記課題の解決に適用することは困難であった。
【0006】
さらに、特許文献4には、メチルシリコーン樹脂を用いた成型用の硬化性シリコーンペレットが開示されているが、本組成物の生産には高温での溶融混錬が必要となるため、組成物の硬化性の制御が難しく、低温での短時間成型が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2016/136243号パンフレット
【文献】特開2014-009322号公報
【文献】特表2017-512224号公報
【文献】特開2009-155415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ホットメルト性を有し、オーバーモールド成型等の取扱い作業性および硬化特性に優れると共に、生産工程において溶媒の除去や溶融混錬などで用いられる熱や作業工程を必要とすることなく簡便な混合工程のみで生産することができ、かつ、その硬化物等の高温時の耐着色性に優れる硬化性粒状シリコーン組成物を提供することにある。また、本発明の他の目的は、このような硬化性粒状シリコーン組成物を効率よく製造する方法を提供することにある。さらに、本発明は、こうした硬化性粒状シリコーン組成物およびペレット等の硬化物からなる半導体装置用部材、当該硬化物を有する半導体装置、および、硬化物の成型方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
鋭意検討の結果、本発明者らは、
(A)分子全体としてホットメルト性を有さず、分子内に少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有し、かつ、RSiO3/2(Rは一価有機基)またはSiO4/2で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有するオルガノポリシロキサン樹脂微粒子、
(B)25℃において液状の直鎖状または分岐鎖状のオルガノポリシロキサンであって、分子内に少なくとも2個の炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有するもの、
(C)以下の(c1)または(c2)から選ばれる1種類以上の硬化剤
(c1)有機過酸化物
(c2)分子内に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンおよびヒドロシリル化反応触媒
(D)機能性フィラー
を含有してなり、(A)成分および(B)成分の質量比が90:10~50:50の範囲であり、(D)成分の量が(A)~(C)成分の和100質量部に対して10~1000質量部の範囲であり、かつ、組成物全体としてホットメルト性を有することを特徴とする硬化性粒状シリコーン組成物により上記課題を解決できる事を見出し、本発明に到達した。好適には、本発明の硬化性粒状シリコーン組成物は、さらに、(A´)所定の平均単位式で表され、分子内に炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有しない非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子を含むことが好ましい。同様に、本発明の硬化性粒状シリコーン組成物は、(E)滴点が50℃以上であり、150℃での回転粘度計により測定される溶融粘度が10Pas以下であるホットメルト性の粒子を含有するものであってよく、粒状組成物がペレット状またはシート状に成型されていてもよく、かつ、好ましい。
【0010】
さらに、本発明者らは、上記の硬化性粒状シリコーン組成物の硬化物、特に、当該硬化物の半導体装置用部材(光反射材を含む)としての使用、および当該硬化物を有する光半導体装置により上記課題を解決できる事を見出し、本発明に到達した。
【0011】
同様に、本発明者らは、上記の硬化性粒状シリコーン組成物を構成する各成分のみを、50℃を超えない温度条件下で混合することにより粒状化することを特徴とする製造方法および、上記の硬化性粒状シリコーン組成物を用いた硬化物の成型方法により上記課題を解決できる事を見出し、本発明に到達した。
【0012】
なお、上記の成型方法は、トランスファー成型、コンプレッション成型、あるいはインジェクション成型を含み、本発明の硬化性粒状シリコーン組成物はこれらの成型用材料として好適に用いられる。さらに、本発明の硬化性粒状シリコーン組成物は、硬化物により、半導体素子または半導体回路基盤がオーバーモールド成型により被覆する工程である、いわゆるオーバーモールド方式の成型用材料として、好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の硬化性粒状シリコーン組成物(ペレット状を含む)は、ホットメルト性を有し、オーバーモールド成型等の取扱い作業性および硬化特性に優れると共に、簡便な混合工程のみで生産することができ、かつ、高温時の耐着色性に優れた硬化物を与える。また、本発明の硬化物は、半導体装置の部材、特に反射材として有用であり、当該硬化物を有する半導体装置を得ることができる。また、本発明の成型方法、特にオーバーモールド成型を用いることで、これらの硬化物を用途に合わせて効率よく製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[硬化性粒状シリコーン組成物]
本発明の硬化性粒状シリコーン組成物は、以下の(A)~(D)成分を含有し、かつ、(A)成分および(B)成分の質量比が90:10~50:50の範囲であり、(D)成分の量が(A)~(C)成分の和100質量部に対して10~1000質量部の範囲であり、かつ、組成物全体としてホットメルト性を有することを特徴とする。
(A)分子全体としてホットメルト性を有さず、分子内に少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有し、かつ、RSiO3/2(Rは一価有機基)またはSiO4/2で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有するオルガノポリシロキサン樹脂微粒子、
(B)25℃において液状の直鎖状または分岐鎖状のオルガノポリシロキサンであって、分子内に少なくとも2個の炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有するもの、
(C)以下の(c1)または(c2)から選ばれる1種類以上の硬化剤
(c1)有機過酸化物
(c2)分子内に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンおよびヒドロシリル化反応触媒
(D)機能性フィラー
【0015】
本発明の硬化性粒状シリコーン組成物は、さらに、任意で(E)滴点が50℃以上であり、150℃での回転粘度計により測定される溶融粘度が10Pas以下であるホットメルト性の粒子またはその他の添加剤等を含んでもよく、かつ、好ましい。また、本発明の硬化性粒状シリコーン組成物は、粒状組成物が、その用途に応じて、ペレット状またはシート状に成型された形態であってもよく、かつ、好ましい。以下、組成物の各成分および任意成分について説明する。なお、本発明において、「平均粒子径」とは別に定義しない限り、粒子の一次平均粒子径を意味するものとする。
【0016】
[(A)成分]
(A)成分は、本組成物の主剤の一つであり、単独ではホットメルト性を有しない硬化反応性の官能基を含有するオルガノポリシロキサン樹脂微粒子であるが、(B)成分と所定の量的範囲で併用することで、組成物全体としてのホットメルト性および硬化物の耐着色性を実現する成分である。このような(A)成分は、単独又は他の成分(例えば、硬化剤である(C)成分)とともに微粒子の形態であることが必要であり、平均一次粒子径が1~20μmの真球状のシリコーン微粒子であることが特に好ましい。
【0017】
(A)成分は、分子内に炭素-炭素二重結合を有する硬化反応性基を有することが必要である、このような硬化反応性基は、ヒドロシリル化反応性または有機過酸化物硬化性の官能基であり、他の成分との架橋反応によって、硬化物を形成する。このような硬化反応性基は、アルケニル基またはアクリル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基などの炭素数2~10のアルケニル基;3-メタクリロキシプロピル基、3-アクリロキシプロピル基等のアクリル基含有一価有機基が挙げられ、特にビニル基またはヘキセニル基であることが好ましい。一方、硬化反応性基を有しないオルガノポリシロキサンレジンについては、それ自体では、硬化物を形成しないが、組成物全体としてのホットメルト性の改善や補強効果の観点から、後述する(A´)成分として配合することができ、かつ好ましい。
【0018】
(A)成分は、分子全体としてホットメルト性を有さず、無溶媒の状態で固体状のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子である。ここで、ホットメルト性を有しないとは、(A)成分である樹脂粒子がそれ単独では加熱溶融挙動を示さないことであり、具体的には、軟化点および溶融粘度を有さないことを意味する。(A)成分において、このような物性は特に構造的に制限されるものではないが、オルガノポリシロキサン樹脂中の官能基が炭素原子数1~10の一価炭化水素基、特にメチル基等の炭素原子数1~10のアルキル基およびアルケニル基から選ばれる官能基であり、フェニル基等のアリール基を実質的に含まないことが好ましい。フェニル基等を大量に含む場合、当該成分はホットメルト性となる場合があり、かつ、後述する硬化物の加熱エージング(高温)下における耐着色性が低下する場合がある。好適には、(A)成分中のケイ素原子に結合した官能基は、メチル基およびビニル基等のアルケニル基から選ばれる基であり、全てのケイ素原子に結合した官能基の70モル~99モル%がメチル基であることが好ましく、80~99モル%がメチル基あることがより好ましく、88~99モル%がメチル基あり、その余(他?)のケイ素原子に結合した官能基がビニル基等のアルケニル基であることが特に好ましい。かかる範囲において、(A)成分はホットメルト性ではなく、その硬化物の高温下における耐着色性に特に優れる成分として設計可能である。
【0019】
(A)成分は、無溶媒の状態で固体状のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子であり、分子内に分岐シロキサン単位であるRSiO3/2(Rは一価有機基)またはSiO4/2で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有することを特徴とする。好適には、これらの分岐シロキサン単位は、全シロキサン単位の少なくとも40モル%以上であり、50モル%以上、特に、50~90モル%の範囲であることが特に好ましい。また、Rは一価有機基であり、好適には炭素原子数1~10の一価炭化水素基、特にメチル基等の炭素原子数1~10のアルキル基およびアルケニル基から選ばれる官能基であり、技術的効果の見地から、Rにはフェニル基等のアリール基を実質的に含まないことが好ましい。
【0020】
好適には、(A)成分が、(A1)下記平均単位式:
(R1
3SiO1/2)a(R1
2SiO2/2)b(R1SiO3/2)c(SiO4/2)d(R2O1/2)e
(式中、各R1は独立して1~10個の炭素原子を有する一価炭化水素基であり、但し1分子中の全R1の1~12モル%がアルケニル基であり;R2は水素原子又は1~10
個の炭素原子を有するアルキル基であり;a、b、c、d及びeは、以下を満たす数であ
る:0.1≦a≦0.60、0≦b≦0.7、0≦c≦0.8、0≦d≦0.6
5、0≦e≦0.05、但しc+d>0.2、かつa+b+c+d=1)
で表される非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂粒子である。
【0021】
上記の平均単位式において、各R1は独立して1~10個の炭素原子を有する一価炭化水素基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、又は類似のアルキル基;ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、又は類似のアルケニル基;フェニル、トリル、キシリル、又は類似のアリール基;ベンジル、フェネチル、又は類似のアラルキル基;及びクロロメチル、3-クロロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、又は類似のハロゲン化アルキル基等である。更に、1分子中の全R1の1~12モル%がアルケニル基で、好ましくは1分子中の全R1の2~10モル%がアルケニル基である。アルケニル基の含有量が前記範囲の下限未満では、得られる硬化物の機械的強度(硬度等)が不十分となる場合がある。他方、アルケニル基の含有量が前記範囲の上限以下であれば、本成分を含む組成物が、組成物全体として良好なホットメルト性能を実現できる。なお、各R1はメチル基等の炭素原子数1~10のアルキル基およびビニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基から選ばれる官能基であることが好ましく、発明の技術的効果の見地から、R1はフェニル基等のアリール基を実質的に含まないことが好ましい。フェニル基等のアリール基を大量に含む場合、硬化物の高温下での耐着色性が悪化する場合がある。
【0022】
式中、R2は水素原子又は1~10個の炭素原子を有するアルキル基である。R2のアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル又はヘキシルで例示される。
【0023】
式中、aは一般式:R1
3SiO1/2のシロキサン単位の割合を示す数である。この数は、0.1≦a≦0.60、好ましくは0.15≦a≦0.55を満たす。aが前記範囲の下限以上であれば、本成分を含む組成物が、組成物全体として良好なホットメルト性能を実現できる。他方、aが前記範囲の上限以下であれば、得られる硬化物の機械的強度(硬度等)が低くなりすぎない。
【0024】
式中、bは一般式:R1
2SiO2/2のシロキサン単位の割合を示す数である。この数は、0≦b≦0.7、好ましくは0≦b≦0.6を満たす。bが範囲の上限以下であれば、本成分を含む組成物が、組成物全体として良好なホットメルト性能を実現でき、かつ室温にてべたつきの少ない粒状組成物を得ることができる。
【0025】
分岐シロキサン単位の総和を示すc+dの値は、0.2<c+d≦0.90の範囲が好ましく、0.30≦c+d≦0.90の範囲、0.40≦c+d≦0.90の範囲がより好ましく、当該数値範囲内において、本成分を含む組成物が、組成物全体として良好なホットメルト性能でき、得られる硬化物の機械的強度に優れ、かつ、粒状組成物全体としてべたつきのない、取扱作業性の良好な組成物が実現できる。
【0026】
式中、cは一般式:R1SiO3/2のシロキサン単位の割合を示す数である。この数は、0≦c≦0.8、好ましくは0≦c≦0.75を満たす。cが前記範囲の上限以下であれば、本成分を含む組成物が、組成物全体として良好なホットメルト性能を実現でき、かつ室温でホットタックフリーのホットメルト材料を得ることができる。式中、dは一般式:SiO4/2のシロキサン単位の割合を示す数である。この数は、0.20≦d≦0.65、好ましくは0.25≦d≦0.60を満たす。dが前記範囲の下限以上であれば、室温にてべたつきの少ない粒状組成物を得ることができる。他方、dが範囲の上限以下であれば、組成物全体として良好なホットメルト性能を実現する材料を得ることができる。
【0027】
式中、eは一般式:R2O1/2の単位の割合を示す数であり、同単位はオルガノポリシロキサン樹脂中に含まれうるケイ素原子に結合した水酸基またはアルコキシ基を意味する。この数は、0≦e≦0.05、好ましくは0≦e≦0.03を満たす。eが範囲の上限以下であれば、組成物全体として良好なホットメルト性能を実現する材料を得ることができる。なお、最終的には、各シロキサン単位の総和であるa、b、c及びdの合計は1に等しい。
【0028】
(A)成分は、それ自体ではホットメルト性を有しない室温で固体のオルガノポリシロキサン樹脂であるが、後述の(B)成分と所定量を混合することにより、組成物全体としてホットメルト特性を発現することを特徴とする。具体的には、(A)成分および(B)成分の質量比が90:10~50:50の範囲である場合、好適には、85:15~55:45の範囲である場合、組成物全体としてホットメルト特性を発現する。ここで、(A)成分の量が前記の下限以上であれば、得られる粒状組成物の室温でのべたつきを低減し、取扱作業性に優れる。また、(A)成分の量が前記の上限以下であれば、組成物全体として良好なホットメルト特性を発現することができる。
【0029】
(A)成分は、上記の特徴を有する微粒子状のオルガノポリシロキサン樹脂であり、好適には、レーザー回折・散乱法等を用いて測定される平均一次粒子径が1~20μmの真球状のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子である。かかる微粒子成分を用いることで、本組成物を取り扱い作業性およびホットメルト性に優れた硬化性粒状組成物として調製ないし生産することができる。ここで、(A)成分を製造する方法は限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0030】
微粒子状の(A)成分を製造する方法は、例えば、上記のオルガノポリシロキサン樹脂を、粉砕機を用いて粉砕する方法や、溶剤存在下において直接微粒子化する方法が挙げられる。粉砕機は限定されないが、例えば、ロールミル、ボールミル、ジェットミル、ターボミル、遊星ミルが挙げられる。また、前記オルガノポリシロキサン樹脂を溶剤存在下において直接微粒子化する方法としては、例えば、スプレードライヤーによるスプレー、あるいは2軸混練機やベルトドライヤーによる微粒子化が挙げられる。なお、微粒子状の(A)成分を得る際に、後述する(C)成分、例えば、ヒドロシリル化反応触媒等を(A)成分と共に微粒子化してもよく、かつ、好ましい。
【0031】
特に、スプレードライヤー等の使用により、真球状で、かつ、平均一次粒子径が1~500μm、好適には1~20μmである(A)成分を製造することができる。なお、スプレードライヤーの加熱・乾燥温度は、オルガノポリシロキサン樹脂微粒子の耐熱性等に基づいて適宜設定する必要がある。なお、得られた微粒子の二次凝集を防止するため、オルガノポリシロキサン樹脂微粒子の温度をそのガラス転移温度以下に制御することが好ましい。このようにして得られたオルガノポリシロキサン樹脂微粒子は、サイクロン、バッグフィルター等で回収できる。
【0032】
上記の微粒子化には、硬化反応を阻害しない範囲内で溶剤を用いてもよい。溶剤は限定されないが、n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン、ジプロピルエーテル等のエーテル類;ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン等のシリコーン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類が例示される。
【0033】
[(A´)成分]
本発明の(A)成分と別に、単独ではホットメルト性を有さず、硬化反応性の官能基を含有しないオルガノポリシロキサン樹脂微粒子をさらに含むことが好ましい。このような成分は、(A)成分とは異なり、硬化反応性の官能基を含有せず、具体的には、
下記平均単位式:
(R5
3SiO1/2)a'(R5
2SiO2/2)b'(R5SiO3/2)c'(SiO4/2)d'(R2O1/2)e'
で表される。
【0034】
式中、各R5は、独立して、脂肪族不飽和炭素結合を有さない1~10個の炭素原子を有する一価炭化水素基であり、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、又は類似のアルキル基;フェニル、トリル、キシリル、又は類似のアリール基;ベンジル、フェネチル、又は類似のアラルキル基;及びクロロメチル、3-クロロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、又は類似のハロゲン化アルキル基等である。各R5はメチル基等の炭素原子数1~10のアルキル基であることが好ましく、発明の技術的効果の見地から、R5はフェニル基等のアリール基を実質的に含まないことが好ましい。フェニル基等のアリール基を大量に含む場合、硬化物の高温下での耐着色性が悪化する場合がある。R2は上記(A)成分における水素原子又は1~10個の炭素原子を有するアルキル基として例示した基と同様である。
【0035】
a'、b'、c'、d'及びe'は、以下を満たす数である:0.35≦a'≦0.55、0≦b'≦0.2、0≦c'≦0.2、0.45≦d'≦0.65、0≦e'≦0.05、及び a'+b'+c'+d'=1。すなわち、(A´)成分は、R5
3SiO1/2のシロキサン単位(=M単位)およびSiO4/2のシロキサン単位(=Q単位)を主たる構成要素とするオルガノポリシロキサン樹脂微粒子であり、実質的に、これらの構成単位からなるMQ型のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子であることが好ましい。かかるオルガノポリシロキサン樹脂微粒子を前記の(A)成分および後述する(B)成分と併用することで、組成物全体としての良好なホットメルト性を実現し、かつ、べたつき等の取扱作業性の問題を生じない粒状組成物を与えることができる。また、かかる(A´)成分は硬化には直接関与しないが、補強効果を出すため、得られる硬化物の強度を改善できるという利点もある。
【0036】
(A´)成分の配合量は任意であるが、(A)成分100質量部に対して0~300質量部の範囲であってよく、(A)成分100質量部に対して75~250質量部の範囲で配合することが特に好ましい。特に好適には、(A)成分、(A´)成分および(B)成分の和に対して、20~45質量%の範囲であってよい。
【0037】
[(B)成分]
(B)成分は、本組成物の主剤の一つであり、25℃において液状の直鎖状または分岐鎖状のオルガノポリシロキサンであって、分子内に少なくとも2個の炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有するものである。このような硬化反応性の鎖状オルガノポリシロキサンは、前述の固体状オルガノポリシロキサン樹脂粒子と前記の質量比で混合することで、組成物全体としてホットメルト特性を発現する。
【0038】
(A)成分同様に、(B)成分は、分子内に炭素-炭素二重結合を有する硬化反応性基を有することが必要である、このような硬化反応性基は、ヒドロシリル化反応性または有機過酸化物硬化性の官能基であり、他の成分との架橋反応によって、硬化物を形成する。このような硬化反応性基は、アルケニル基またはアクリル基であり、前記同様の基が例示され、特にビニル基またはヘキセニル基であることが好ましい。
【0039】
(B)成分は、25℃(室温)において液状の直鎖状または分岐鎖状のオルガノポリシロキサンであり、室温で固体状の(A)成分と前記の質量比で混合することで、組成物全体としてホットメルト特性を発現する。その構造は、少数の分岐のシロキサン単位(例えば、
一般式:R3SiO3/2で表されるT単位(R3は独立して1~10個の炭素原子を有する一価炭化水素基)またはSiO4/2で表されるQ単位)を有する分岐鎖状のオルガノポリシロキサンであってもよいが、好適には、
(B1)下記構造式:
R3
3SiO(SiR3
2O)kSiR3
3
(式中、各R3は独立して1~10個の炭素原子を有する一価炭化水素基であり、但し1分子中のR3の少なくとも2個はアルケニル基であり、kは20~5,000の数である)
で表される直鎖状ジオルガノポリシロキサンである。好適には、分子鎖両末端に各々1個ずつアルケニル基を有する直鎖状ジオルガノポリシロキサンが好ましい。
【0040】
式中、各R3は独立して1~10個の炭素原子を有する一価炭化水素基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、又は類似のアルキル基;ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、又は類似のアルケニル基;フェニル、トリル、キシリル、又は類似のアリール基;ベンジル、フェネチル、又は類似のアラルキル基;及びクロロメチル、3-クロロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、又は類似のハロゲン化アルキル基等である。更に、1分子中のR3の少なくとも2個がアルケニル基、好ましくはビニル基である。また、各R3はメチル基等の炭素原子数1~10のアルキル基およびビニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基から選ばれる官能基であることが好ましく、全てのR3のうち、少なくとも2個がアルケニル基であり、残りのR3がメチル基であることが好ましい。なお、発明の技術的効果の見地から、R3はフェニル基等のアリール基を実質的に含まないことが好ましい。フェニル基等のアリール基を大量に含む場合、硬化物の高温下での耐着色性が悪化する場合がある。特に好適には、分子鎖両末端に一つずつビニル基等のアルケニル基を有し、他のR3がメチル基であるものが好ましい。
【0041】
式中、kは、20~5,000、好ましくは30~3,000、特に好ましくは45~800の数である。kが前記の範囲の下限以上であれば、室温でべたつきの少ない粒状組成物を得ることができる。他方、kが前記の範囲の上限以下であれば、組成物全体として良好なホットメルト性能を実現できる。
【0042】
上記の(A)成分と(B)成分の組み合わせについて限定されるものではないが、好適には、比較的分子量の小さい(A)成分と比較的分子量の大きい(B)成分の組み合わせ;または比較的分子量の大きい(A)成分と比較的分子量の小さい(B)成分の組み合わせが、粒子化の見地から好ましい。一方、分子量が比較的小さい(A)成分および(B)成分を組み合わせると、両者が相溶して粒子化できない場合がある。なお、特許文献3に開示された高分子量のMQ樹脂と分子量の大きい(長鎖)ビニルポリシロキサンの組み合わせにおいては、溶媒を用いることなく両者を混合することができず、粒状組成物の形態にすることができない。このため、成型性および取扱作業性に劣る結果となる。
【0043】
ここで、組成物全体としてホットメルト性を実現するために、(A)成分および(B)成分の質量比が90:10~50:50の範囲であることが必要であり、好適には、(A)成分および(B)成分の質量比が85:15~55:45の範囲である。(B)成分の量が前記範囲の下限以上であれば、良好なホットメルト性を実現し、かつ、得られる硬化物の機械的強度を増大することができる。他方、(B)成分の量が前記範囲の上限以下であれば、得られる粒状組成物の室温でのべたつきを低減することができ、その取扱作業性が改善される。
【0044】
(C)成分は、上記の(A)成分および(B)成分を硬化させるための硬化剤であり、具体的には、以下の(c1)または(c2)から選ばれる1種類以上の硬化剤である。なお、これらの硬化剤は2種類以上を併用してもよく、たとえば、(c1)成分と(c2)成分を共に含む硬化系であってもよい。
(c1)有機過酸化物
(c2)分子内に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンおよびヒドロシリル化反応触媒
【0045】
(c1)有機過酸化物は加熱により、上記の(A)成分および(B)成分を硬化させる成分であり、過酸化アルキル類、過酸化ジアシル類、過酸化エステル類、および過酸化カーボネート類が例示される。
【0046】
過酸化アルキル類としては、ジクミルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、tert-ブチルクミル、1,3-ビス(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、3,6,9-トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリパーオキソナンが例示される。
【0047】
過酸化ジアシル類としては、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイドが例示される。
【0048】
過酸化エステル類としては、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、α-クミルパーオキシネオデカノエート、tert-ブチルパーオキシネオデカノエート、tert-ブチルパーオキシネオヘプタノエート、tert-ブチルパーオキシピバレート、tert-ヘキシルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-アミルパーオキシル-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシイソブチレート、ジ-tert-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、tert-アミルパーオキシ-3,5,5―トリメチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシ-3,5,5―トリメチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシアセテート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-ブチルパーオキシトリメチルアディペートが例示される。
【0049】
過酸化カーボネート類としては、ジ-3-メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、tert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ(4-tert-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジセチルパーオキシジカーボネート、ジミリスチルパーオキシジカーボネートが例示される。
【0050】
この有機過酸化物は、その半減期が10時間である温度が90℃以上、あるいは95℃以上であるものが好ましい。このような有機過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3-ビス(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ-(2-t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、3,6,9-トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリパーオキソナンが例示される。
【0051】
(c1)有機過酸化物の含有量は限定されないが、(A)成分および(B)成分の和(100質量部)に対して、0.05~10質量部の範囲内、あるいは0.10~5.0質量部の範囲内であることが好ましい。
【0052】
(c2)分子内に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンおよびヒドロシリル化反応触媒は、架橋剤であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンがヒドロシリル化反応反応触媒の存在下、(A)成分および(B)成分中の炭素-炭素二重結合と付加反応(ヒドロシリル化反応)することにより、組成物を硬化させる成分である。
【0053】
硬化性粒状シリコーン組成物における成形性および硬化性の見地から、オルガノハイドロジェンポリシロキサンはRSiO3/2で表されるモノオルガノシロキシ単位(T単位、Rは一価有機基又はケイ素原子結合水素原子)またはSiO4/2で表されるシロキシ単位(Q単位)である分岐単位を含み、かつ、分子内に少なくとも2個のHR2SiO1/2で表されるハイドロジェンジオルガノシロキシ単位(MH単位、Rは独立に一価有機基)を有する、分子末端にMH単位を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂が好ましい。また、上記の技術的効果の見地から、(C)成分として、上記のDH単位を多く含む直鎖状のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを実質的に含まないことが好ましい。
【0054】
特に好適なオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、下記平均単位式:
(R4
3SiO1/2)f(R5
2SiO2/2)g(R5SiO3/2)h(SiO4/2)i(R2O1/2)j
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂である。
【0055】
式中、各R4は同じか又は異なる、脂肪族不飽和炭素結合を有さない炭素原子数1~10の一価炭化水素基もしくは水素原子であり、但し、一分子中、少なくとも2個のR4は水素原子である。水素原子以外のR4である一価炭化水素基は、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、又は類似のアルキル基;フェニル、トリル、キシリル、又は類似のアリール基;ベンジル、フェネチル、又は類似のアラルキル基;及びクロロメチル、3-クロロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、又は類似のハロゲン化アルキル基等である。工業的見地からは、メチル基またはフェニル基が好ましい。
【0056】
式中、R5は脂肪族不飽和炭素結合を有さない炭素原子数1~10の一価炭化水素基であり、上記の一価炭化水素基と同様の基が例示される。一方、R2は水素原子又は1~10個の炭素原子を有するアルキル基であり、上記の(A)成分におけるR2と同様な基が例示される。
【0057】
式中、f、g、h及びiは、以下を満たす数である:0.1≦f≦0.80、0≦g≦0.5、0≦h≦0.8、0≦i≦0.6、0≦j≦0.05、但し、h+i>0.1、かつf+g+h+i+j=1。ここで、(c2)成分の一部であるオルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂は具体的には、MHMT樹脂、MHMTTH樹脂、MHMTQ樹脂、MHMQ樹脂、MHMTTHQ樹脂等のDH単位を有しないオルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂が例示される。
【0058】
(c2)成分の一部であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンの含有量は、本発明の硬化性粒状シリコーン組成物を硬化させるのに十分な量であり、(A)成分と(B)成分中の炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基(例えば、ビニル基等のアルケニル基)に対し、オルガノハイドロジェンポリシロキサン中の珪素原子結合水素原子のモル比が0.5以上となる量であり、0.5~20の範囲となる量が好ましい。特に(c2)成分が上記のオルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂を含む場合、(A)成分と(B)成分中の炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基に対する、当該オルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂中の珪素原子結合水素原子のモル比が0.5~20の範囲となる量、あるいは1.0~10の範囲となる量であることが好ましい。
【0059】
(c2)成分の一部であるヒドロシリル化反応用触媒としては、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒が例示され、本組成物の硬化を著しく促進できることから白金系触媒が好ましい。この白金系触媒としては、白金微粉末、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金-アルケニルシロキサン錯体、白金-オレフィン錯体、白金-カルボニル錯体、およびこれらの白金系触媒を、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂で分散あるいはカプセル化した触媒が例示され、特に、白金-アルケニルシロキサン錯体が好ましい。このアルケニルシロキサンとしては、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのメチル基の一部をエチル基、フェニル基等で置換したアルケニルシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのビニル基をアリル基、ヘキセニル基等で置換したアルケニルシロキサンが例示される。特に、この白金-アルケニルシロキサン錯体の安定性が良好であることから、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンであることが好ましく、当該錯体のアルケニルシロキサン溶液の形態で添加することが好ましい。加えて、取扱作業性および組成物のポットライフの改善の見地から、熱可塑性樹脂で分散あるいはカプセル化した微粒子状の白金含有ヒドロシリル化反応触媒を用いてもよい。なお、ヒドロシリル化反応を促進する触媒としては、鉄、ルテニウム、鉄/コバルトなどの非白金系金属触媒を用いてもよい。
【0060】
(c2)成分の一部であるヒドロシリル化反応用触媒の添加量は、組成物全体に対して、金属原子が質量単位で0.01~500ppmの範囲内となる量、0.01~100ppmの範囲内となる量、あるいは、0.01~50ppmの範囲内となる量であることが好ましい。
【0061】
特に好適な(c2)成分は、(c2-1)前記平均単位式でで表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂およびヒドロシリル化反応触媒を少なくとも含むものである。
【0062】
本発明の硬化性粒状シリコーン組成物は上記の(A)~(C)成分に加えて、加熱溶融(ホットメルト)後の高温下において硬化した場合、硬化物に所望の機能を有し、室温から高温で硬質性および強靭性に優れた硬化物を与える見地から、さらに(D)機能性フィラーを含有することが好ましい。特に、本発明の硬化性粒状シリコーン組成物はホットメルト性/成型性とその硬化物の高温下における耐着色性に優れることから、白色顔料を含む硬化物について高温下での着色を抑制し、当該硬化物について高い光反射率を維持することができる。
【0063】
(D)成分である機能性フィラーは、硬化物の機械的特性やその他の特性を付与する成分であり、無機フィラー、有機フィラー、およびこれらの混合物が例示される。この無機フィラーとしては、補強性フィラー、白色顔料、熱伝導性フィラー、導電性フィラー、蛍光体、およびこれらの少なくとも2種の混合物が例示され、有機フィラーとしては、シリコーン樹脂系フィラー、フッ素樹脂系フィラー、ポリブタジエン樹脂系フィラーが例示される。なお、これらのフィラーの形状は特に制限されるものではなく、球状、紡錘状、扁平状、針状、不定形等であってよい。
【0064】
上記の(A)~(C)成分の選択に基づく特性である、硬化物の高温下における耐着色性を活用し、本組成物を硬化させてなる硬化物を発光/光学デバイス用の光反射材として利用する見地から、(D)成分は、少なくとも白色顔料を含む機能性フィラーであることが好ましい。さらに、本組成物を封止剤、保護剤、接着剤等の用途で使用する場合には、硬化物の機械的強度、保護性および接着性の改善の見地から、(D)成分は、さらに、補強性フィラーを含むことが好ましい。
【0065】
白色顔料は硬化物に白色度を付与し、光反射性を向上させること成分であり、当該成分の配合により本組成物を硬化させてなる硬化物を発光/光学デバイス用の光反射材として利用することができる。この白色顔料としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等の金属酸化物;ガラスバルーン、ガラスビーズ等の中空フィラー;その他、硫酸バリウム、硫酸亜鉛、チタン酸バリウム、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド、酸化アンチモンが例示される。光反射率と隠蔽性が高いことから、酸化チタンが好ましい。また、UV領域の光反射率が高いことから、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、チタン酸バリウムが好ましい。この白色顔料の平均粒径や形状は限定されないが、平均粒径は0.05~10.0μmの範囲内、あるいは0.1~5.0μmの範囲内であることが好ましい。また、この白色顔料をシランカップリング剤、シリカ、酸化アルミニウム等で表面処理してもよい。
【0066】
補強性フィラーは硬化物の機械的強度を向上させ、保護性および接着性を改善させるほか、硬化前の硬化性粒状シリコーン組成物のバインダーフィラーとして固体粒子状を維持する目的で添加しても良い。このような補強性フィラーとしては、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、溶融シリカ、焼成シリカ、ヒュームド二酸化チタン、石英、炭酸カルシウム、ケイ藻土、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸亜鉛が例示される。また、これらの補強性フィラーを、メチルトリメトキシシラン等のオルガノアルコキシシラン;トリメチルクロロシラン等のオルガノハロシラン;ヘキサメチルジシラザン等のオルガノシラザン;α,ω-シラノール基封鎖ジメチルシロキサンオリゴマー、α,ω-シラノール基封鎖メチルフェニルシロキサンオリゴマー、α,ω-シラノール基封鎖メチルビニルシロキサンオリゴマー等のシロキサンオリゴマー等により表面処理してもよい。この補強性フィラーの粒子径は限定されないが、レーザー回折散乱式粒度分布測定によるメジアン径が1nm~500μmの範囲内であることが好ましい。さらに、補強性フィラーとして、メタケイ酸カルシウム、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、セピオライト、ゾノライト、ホウ酸アルミニウム、ロックウール、ガラスファイバー等の繊維状フィラーを用いてもよい。
【0067】
さらに、本組成物を用いて得る硬化物に他の機能を付与する目的で、熱伝導性フィラー、導電性フィラー、または蛍光体を配合しても良い。また、硬化物の応力緩和特性の改善等の目的でシリコーンエラストマー微粒子等の有機フィラーを配合しても良い。
【0068】
熱伝導性フィラーまたは導電性フィラーは、硬化物に熱伝導性/導電性(電気伝導性)を付与する目的で添加され、具体的には、金、銀、ニッケル、銅、アルミニウム等の金属微粉末;セラミック、ガラス、石英、有機樹脂等の微粉末表面に金、銀、ニッケル、銅等の金属を蒸着またはメッキした微粉末;酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛等の金属化合物;グラファイト、およびこれらの2種以上の混合物が例示される。本組成物に電気絶縁性が求められる場合には、金属酸化物系粉末、または金属窒化物系粉末が好ましく、特に、酸化アルミニウム粉末、酸化亜鉛粉末、または窒化アルミニウム粉末が好ましく、これらを熱伝導性/導電性の要求に応じて種類、粒子径、粒子形状等を組み合わせて用いても良い。
【0069】
蛍光体は、硬化物を波長変換材料に用いる場合に、光源(光半導体素子)からの発光波長を変換するために配合される成分である。この蛍光体としては、特に制限はなく、発光ダイオード(LED)に広く利用されている、酸化物系蛍光体、酸窒化物系蛍光体、窒化物系蛍光体、硫化物系蛍光体、酸硫化物系蛍光体等からなる黄色、赤色、緑色、および青色発光蛍光体が例示される。
【0070】
シリコーン微粒子は、非反応性のシリコーンレジン微粒子およびシリコーンエラストマー微粒子が挙げられるが、硬化物の柔軟性または応力緩和特性の改善の見地から、シリコーンエラストマー微粒子が好適に例示される。
【0071】
シリコーンエラストマー微粒子は、主としてジオルガノシロキシ単位(D単位)からなる直鎖状ジオルガノポリシロキサンの架橋物である。シリコーンエラストマー微粒子は、ヒドロシリル化反応やシラノール基の縮合反応等によるジオルガノポリシロキサンの架橋反応により調製することができ、中でも、側鎖又は末端に珪素結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと側鎖又は末端にアルケニル基等の不飽和炭化水素基を有するジオルガノポリシロキサンを、ヒドロシリル化反応触媒下で架橋反応させることによって好適に得ることができる。シリコーンエラストマー微粒子は、球状、扁平状、及び不定形状等種々の形状を取りうるが、分散性の点から球状であることが好ましく、中でも真球状であることがより好ましい。こうした(B)シリコーンエラストマー微粒子の市販品としては、例えば、東レ・ダウコーニング社製の「トレフィルEシリーズ」、「EPパウダーシリーズ」、信越化学工業社製の「KMPシリーズ」等を挙げることができる。
【0072】
以上のような機能性フィラーを粒状組成物中に安定的に配合する目的等で、特定の表面処理剤を(D)成分全体の質量に対して、0.1~2.0質量%、0.1~1.0質量%、0.2~0.8質量%の範囲で用いて、フィラー表面処理がなされていても良い。これらの表面処理剤の例としては、例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサン、シリコーンレジン、金属石鹸、シランカップリング剤、パーフルオロアルキルシラン、及びパーフルオロアルキルリン酸エステル塩等のフッ素化合物等であってよい。
【0073】
(D)成分の含有量は限定されないが、得られる硬化物の硬さや機械的強度が優れることから、(A)成分と(B)成分の和(100質量部)に対して10~4000質量部の範囲内、10~3500質量部の範囲内、あるいは10~3000質量部の範囲内であることが好ましい。
【0074】
本発明の硬化性粒状シリコーン組成物は上記の(A)~(D)成分を含有してなるものであるが、その溶融特性をさらに改善する見地から、(E)滴点が50℃以上であり、150℃での回転粘度計により測定される溶融粘度が10Pas以下であるホットメルト性の粒子を添加してもよく、かつ、好ましい。
【0075】
上記の滴点の条件及び150℃における溶融時の動粘度の条件を満たす限り、(E)成分の種類は特に制限されるものではなく、各種のホットメルト性の合成樹脂、ワックス類、脂肪酸金属塩等から選ばれる1種類以上が使用できる。当該(E)成分は、高温(150℃)において低い動粘度を呈し、流動性に優れた溶融物を形成する。さらに上記の(A)、(B)成分を併用することにより、本組成物からなる溶融物内の(E)成分は、高温下で組成物全体に速やかに広がることにより、溶融した組成物が適用された基材面と組成物全体の粘度を低下させると共に、基材および溶融組成物の表面摩擦を急激に低下させ、組成物全体の流動性を大幅に上昇させる効果を呈する。このため、他の成分の総量に対して、ごく少量添加するだけで、溶融組成物の粘度および流動性を大きく改善することができる。
【0076】
(E)成分は、上記の滴点及び溶融時の動粘度の条件を満たす限り、パラフィン等の石油系ワックス類であってもよいが、本発明の技術的効果の見地から、脂肪酸金属塩からなるホットメルト成分であることが好ましく、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、イソノナン酸等の高級脂肪酸の金属塩が特に好ましい。ここで、上記の脂肪酸金属塩の種類も特に制限されるものではないが、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;マグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属塩;または亜鉛塩が好適に例示される。
【0077】
(E)成分として、特に好適には、(E0)遊離脂肪酸量が5.0%以下の脂肪酸金属塩であり、4.0%以下であり、0.05~3.5%の脂肪酸金属塩がより好ましい。このような(E0)成分として、例えば、少なくとも1種以上のステアリン酸金属塩が例示される。本発明の技術的効果の見地から、(E0)成分は、実質的に1種以上のステアリン酸金属塩のみからなることが好ましく、ステアリン酸カルシウム(融点150℃)、ステアリン酸亜鉛(融点120℃)、およびステアリン酸マグネシウム(融点130℃)から選ばれる、融点が150℃以下のホットメルト成分の使用が最も好ましい。
【0078】
(E)成分の使用量は、組成物全体を100質量部とした場合、(E0)成分の含有量が0.01~5.0質量部の範囲であり、0.01~3.5質量部、0.01~3.0質量部であってよい。(E)成分の使用量が前記の上限を超えると、本発明の粒状硬化性シリコーン組成物から得られる硬化物の接着性および機械的強度が不十分となる場合がある。また、(E)成分の使用量が前記の下限未満では、加熱溶融時の十分な流動性が実現できない場合がある。
【0079】
また、本組成物には、本発明の目的を損なわない限り、その他任意の成分として、硬化遅延剤や接着付与剤を含有してもよい。
【0080】
硬化遅延剤としては、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、2-フェニル-3-ブチン-2-オール、1-エチニル-1-シクロヘキサノール等のアルキンアルコール;3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン等のエンイン化合物;テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラヘキセニルシクロテトラシロキサン等のアルケニル基含有低分子量シロキサン;メチル-トリス(1,1-ジメチルプロピニルオキシ)シラン、ビニル-トリス(1,1-ジメチルプロピニルオキシ)シラン等のアルキニルオキシシランが例示される。この硬化遅延剤の含有量は限定されないが、本組成物に対して、質量単位で、10~10000ppmの範囲内であることが好ましい。
【0081】
接着付与剤としては、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を一分子中に少なくとも1個有する有機ケイ素化合物が好ましい。このアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基が例示され、特に、メトキシ基が好ましい。また、有機ケイ素化合物中のアルコキシ基以外のケイ素原子に結合する基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アルキル基等のハロゲン置換もしくは非置換の一価炭化水素基;3-グリシドキシプロピル基、4-グリシドキシブチル基等のグリシドキシアルキル基;2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピル基等のエポキシシクロヘキシルアルキル基;3,4-エポキシブチル基、7,8-エポキシオクチル基等のエポキシアルキル基;3-メタクリロキシプロピル基等のアクリル基含有一価有機基;水素原子が例示される。この有機ケイ素化合物は本組成物中のアルケニル基またはケイ素原子結合水素原子と反応し得る基を有することが好ましく、具体的には、ケイ素原子結合水素原子またはアルケニル基を有することが好ましい。また、各種の基材に対して良好な接着性を付与できることから、この有機ケイ素化合物は一分子中に少なくとも1個のエポキシ基含有一価有機基を有するものであることが好ましい。こうした有機ケイ素化合物としては、オルガノシラン化合物、オルガノシロキサンオリゴマー、アルキルシリケートが例示される。このオルガノシロキサンオリゴマーあるいはアルキルシリケートの分子構造としては、直鎖状、一部分枝を有する直鎖状、分枝鎖状、環状、網状が例示され、特に、直鎖状、分枝鎖状、網状であることが好ましい。有機ケイ素化合物としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン化合物;一分子中にケイ素原子結合アルケニル基もしくはケイ素原子結合水素原子、およびケイ素原子結合アルコキシ基をそれぞれ少なくとも1個ずつ有するシロキサン化合物、ケイ素原子結合アルコキシ基を少なくとも1個有するシラン化合物またはシロキサン化合物と一分子中にケイ素原子結合ヒドロキシ基とケイ素原子結合アルケニル基をそれぞれ少なくとも1個ずつ有するシロキサン化合物との混合物、アミノ基含有オルガノアルコキシシランとエポキシ基含有オルガノアルコキシシランとの反応混合物、一分子中に少なくとも二つのアルコキシシリル基を有し,かつそれらのシリル基の間にケイ素-酸素結合以外の結合が含まれている有機化合物、一般式: Ra
nSi(ORb)4-n
(式中、Raは一価のエポキシ基含有有機基であり、Rbは炭素原子数1~6のアルキル基または水素原子である。nは1~3の範囲の数である)
で表されるエポキシ基含有シランまたはその部分加水分解縮合物、ビニル基含有シロキサンオリゴマー(鎖状または環状構造のものを含む)とエポキシ基含有トリアルコキシシランとの反応混合物、メチルポリシリケート、エチルポリシリケート、エポキシ基含有エチルポリシリケートが例示される。この接着付与剤は低粘度液状であることが好ましく、その粘度は限定されないが、25℃において1~500mPa・sの範囲内であることが好ましい。また、この接着付与剤の含有量は限定されないが、本組成物の合計100質量部に対して0.01~10質量部の範囲内であることが好ましい。
【0082】
さらに、本組成物には、本発明の目的を損なわない限り、その他任意の成分として、酸化鉄(ベンガラ)、酸化セリウム、セリウムジメチルシラノレート、脂肪酸セリウム塩、水酸化セリウム、ジルコニウム化合物等の耐熱剤;その他、染料、白色以外の顔料、難燃性付与剤等を含有してもよい。
【0083】
本組成物は、ペレット状又はシート状に成型して使用してよい。ペレット状とは、本組成物を打錠成型して得られるものであり、取扱い作業性および硬化性が優れる。なお、「ペレット」は、「タブレット」とも言うことがある。ペレットの形状は限定されないが、通常、球状、楕円球状あるいは円柱状である。また、ペレットの大きさは限定されないが、例えば、500μm以上の平均粒子径または円相当径を有する。
【0084】
本組成物はシート状に成型して使用しても良い。例えば、平均厚みが500μm以上、好適には数mmの硬化性粒状シリコーン組成物からなるシートは、ホットメルト性を有し、高温下で加熱硬化性を有するので、特にコンプレッション成型等に用いる場合、取扱作業性および溶融特性に優れる点で有利である。
【0085】
本組成物は、室温においてペレット又はシートの形態で取り扱うため、25℃において非流動性の固体である。ここで、非流動性とは、無負荷の状態で変形・流動しないことを意味し、好適には、ペレットまたはタブレット等に成型した場合に、25℃かつ無負荷の状態で変形・流動しないものである。このような非流動性は、例えば、25℃のホットプレート上に成型した本組成物を置き、無負荷または一定の加重をかけても、実質的に変形・流動しないことにより評価可能である。25℃において非流動性であると、該温度での形状保持性が良好で、表面粘着性が低いからである。
【0086】
本組成物の軟化点は100℃以下であることが好ましい。このような軟化点は、ホットプレート上で、100グラム重の荷重で上から10秒間押し続け、荷重を取り除いた後、組成物の変形量を測定した場合、高さ方向の変形量が1mm以上となる温度を意味する。
【0087】
本組成物は高温・高圧下で(すなわち成型工程において)急激に粘度が低下する傾向があり、有用な溶融粘度の値としては同様の高温・高圧下で測定した値を用いることが好ましい。従って、本組成物の溶融粘度はレオメーターなどの回転粘度計で測定するよりも高化式フローテスター(島津製作所(株)製)を用いて高圧下測定することが好ましい。具体的には本組成物は、150℃の溶融粘度が200Pa・s以下、より好ましくは150以下であることが好ましい。これは、本組成物をホットメルト後、25℃に冷却した後の基材への密着性が良好であるからである。
【0088】
[硬化性粒状シリコーン組成物の製造方法]
本組成物は、(A)成分~(D)成分、さらにその他任意の成分((A´)成分および(E)成分を含むことが好ましい)を、50℃未満の温度で粉体混合することにより製造することができる。本製造方法で用いる粉体混合機は限定されず、一軸または二軸の連続混合機、二本ロール、ロスミキサー、ホバートミキサー、デンタルミキサー、プラネタリミキサー、ニーダーミキサー、ラボミルサー、小型粉砕機、ヘンシェルミキサーが例示され、好ましくは、ラボミルサー、ヘンシェルミキサーである。
【0089】
[硬化物の成型方法]
本組成物は、次の工程(I)~(III)から少なくともなる方法により硬化することができる。
(I)本組成物を100℃以上に加熱して、溶融する工程;
(II)前記工程(I)で得られた硬化性シリコーン組成物を金型に注入する工程、又は型締めにより金型に前記工程(I)で得られた硬化性シリコーン組成物を行き渡らせる工程;および
(III)前記工程(II)で注入した硬化性シリコーン組成物を硬化する工程
【0090】
上記工程において、トランスファー成型機、コンプレッション成型機、インジェクション成型機、補助ラム式成型機、スライド式成型器、二重ラム式成型機、または低圧封入用成型機等を用いることができる。特に、本発明組成物は、トランスファー成型およびコンプレッション成型により硬化物を得る目的で好適に利用できる。
【0091】
最後に、工程(III)において、工程(II)で注入(適用)した硬化性シリコーン組成物を硬化する。なお、(C)成分として(c1)有機過酸化物を用いる場合には、加熱温度は150℃以上、あるいは170℃以上であることが好ましく、(c2)分子内に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンおよびヒドロシリル化反応触媒を用いる場合、100℃以上、あるいは130℃以上の加熱温度であることが好ましい。
【0092】
発光/光学デバイス用の光反射材あるいは半導体等の保護部材として好適であることから、本組成物を硬化して得られる硬化物の25℃におけるタイプDデュロメータ硬さが40以上、あるいは50以上であることが好ましい。なお、このタイプDデュロメータ硬さは、JIS K 6253-1997「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴムの硬さ試験方法」に準じてタイプDデュロメータによって求められる。
【0093】
[組成物の用途]
本組成物は、ホットメルト性を有し、溶融(ホットメルト)時の取扱い作業性および硬化性に優れ、かつ、得られる硬化物の高温下での耐着色性に優れることから、発光/光学デバイス用の光反射材等の半導体用部材および当該硬化物を有する光半導体に有用に用いられる。さらに、当該硬化物は機械的特性に優れているので、半導体用の封止剤;SiC、GaN等のパワー半導体用の封止剤;電気・電子用の接着剤、ポッティング剤、保護剤、コーティング剤として好適である。また、本組成物は、ホットメルト性を有するので、トランスファー成型、コンプレッション成型、あるいはインジェクション成型用の材料としても好適である。特に、成型時にオーバーモールド成型法を用いる半導体用の封止剤として用いることが好適である。
【0094】
[硬化物の用途]
本発明の硬化物の用途は特に制限されるものではないが、本発明組成物がホットメルト性を有し、成形性、機械的物性に優れ、かつ、硬化物は上記の室温~高温における特徴的な平均線膨張係数および貯蔵弾性率の挙動を示すものである。このため、本組成物を硬化してなる硬化物は、半導体装置用部材として好適に利用することができ、半導体素子やICチップ等の封止材、導体装置の接着剤・結合部材として好適に用いることができる。
【0095】
本発明の硬化物からな部材を備えた半導体装置は特に制限されるものではないが、特に、発光/光学デバイスである発光半導体装置であることが好ましい。本発明の硬化物は高温においての耐着色性が優れるため、白色度が重要となる光半導体装置に使用される光反射材としてより好適に利用できる。
【実施例】
【0096】
本発明の硬化性粒状シリコーン組成物、その製造方法、および無機フィラーの処理方法を実施例と比較例により詳細に説明する。なお、式中、Me、Ph、Viは、それぞれメチル基、フェニル基、ビニル基を表す。また、各実施例、比較例の硬化性シリコーン組成物について、タブレット打錠性、溶融粘度、成型性、分光反射率を以下の方法で測定した。また、硬化性粒状シリコーン組成物を150℃で2時間加熱して硬化物を作製し、硬化直後/耐熱試験後の分光反射率、硬さおよび曲げ強度を、以下の方法で測定した。結果を表1に示した。
【0097】
[タブレット打錠性]
硬化性粒状シリコーン組成物を圧縮により14mm×22mmの円柱状のペレットに成型し、タブレットの打錠性を確認した。
【0098】
[溶融粘度]
硬化性粒状シリコーンの150℃での溶融粘度を、高化式フローテスターCFT-500EX(株式会社島津製作所製)により、100kgfの加圧下、直径0.5mmのノズルを用いて測定した。なお、軟化せず、150℃における溶融粘度が測定できない場合は「N/A」と評価した。これは組成物が加熱しても溶融しない、すなわち、ホットメルト性を有しないことを意味する。
【0099】
[成型性]
硬化性粒状シリコーン組成物を、トランスファー成形機を用いて銅製のリードフレームと一体成型し、縦35mm×横25mm×高さ1mmの成形物を作製した。成型条件は、金型温度を150℃、型締め時間を120秒とした。金型から成形物を取り出した後、25℃まで冷ましてから、クラックの有無やリードフレームからの剥離等の成型不良の有無を目視で確認し、特に問題ないものは「良好」と評価した。一方、材料のホットメルト性が悪く、成型時に金型空間全体まで行き渡らなかった場合は「不良(溶融せず)」とし、金型から成形物を取り出した際に未硬化であれば、「不良(脱型時未硬化)」、金型から成形物を取り出した際に材料が金型全体に行き渡っていない場合は「不良(金型未充填)」と評価した。結果を表1に示す。
【0100】
[硬化物の分光反射率]
硬化性粒状シリコーン組成物を150℃で2時間加熱して厚さ100μmの硬化物を作製した。この硬化物の分光反射率を、UV-VIS分光光度計UV3100PC(島津製作所製)を用いて測定し、波長450nmにおける分光反射率を読み取った。反射率測定後の硬化物を300℃の空気循環式オーブンにて10分放置後、再度分光反射率を測定し、波長450nmにおける分光反射率を読み取った。結果を表1に示す。
【0101】
以下、参考例1~4に示す方法で、ヒドロシリル化反応触媒を含むオルガノポリシロキサン樹脂またはオルガノポリシロキサン架橋物を調製し、そのホットメルト性の有無を軟化点/溶融粘度の有無により評価した。また、参考例5~8に示す方法で当該オルガノポリシロキサン樹脂微粒子を調製した。なお、参考例において、ヒドロシリル化反応触媒である白金錯体に用いる1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジビニルジシロキサンは、「1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン」と記述する。
【0102】
[参考例1]
1Lのフラスコに、25℃において白色固体状で、平均単位式:
(Me2ViSiO1/2)0.09(Me3SiO1/2)0.43(SiO4/2)0.48(HO1/2)0.03
で表されるオルガノポリシロキサン樹脂の55質量%-キシレン溶液 270.5g、および白金の1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液(白金金属の含有量=約4000ppm) 0.034gを投入し、室温(25℃)で均一に攪拌して、白金金属として質量単位で10ppm含有するオルガノポリシロキサン樹脂(1)のキシレン溶液を調製した。また、このオルガノポリシロキサン樹脂(1)は加熱しても軟化/溶融せず、ホットメルト性を有していなかった。
【0103】
[参考例2]
1Lのフラスコに、25℃において白色固体状で、平均単位式:
(Me2ViSiO1/2)0.05(Me3SiO1/2)0.39(SiO4/2)0.56(HO1/2)0.02
で表されるオルガノポリシロキサン樹脂の55質量%-キシレン溶液 270.5g、および白金の1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液(白金金属の含有量=約4000ppm) 0.034gを投入し、室温(25℃)で均一に攪拌して、白金金属として質量単位で10ppm含有するオルガノポリシロキサン樹脂(2)のキシレン溶液を調製した。また、このオルガノポリシロキサン樹脂(2)は加熱しても軟化/溶融せず、ホットメルト性を有していなかった。
【0104】
[参考例3]
1Lのフラスコに、25℃において白色固体状で、平均単位式:
(Me3SiO1/2)0.44(SiO4/2)0.56(HO1/2)0.02
で表されるオルガノポリシロキサン樹脂の55質量%-キシレン溶液 270.5g、および白金の1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液(白金金属の含有量=約4000ppm) 0.034gを投入し、室温(25℃)で均一に攪拌して、白金金属として質量単位で10ppm含有するオルガノポリシロキサン樹脂(3)のキシレン溶液を調製した。また、このオルガノポリシロキサン樹脂(3)は加熱しても軟化/溶融せず、ホットメルト性を有していなかった。
【0105】
[参考例4]
1Lのフラスコに、25℃において白色固体状で、平均単位式:
(PhSiO3/2)0.80(Me2ViSiO1/2)0.20
で表される樹脂状オルガノポリシロキサンの55質量%-トルエン溶液 270.5g、式:
HMe2SiO(Ph2SiO)SiMe2H
で表される、粘度5mPa・sの分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジフェニルシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.6質量%) 21.3g(前記樹脂状オルガノポリシロキサン中のビニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.5モルとなる量)、および白金の1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液(白金金属の含有量=約4000ppm) 0.034g(本液状混合物に対して白金金属が質量単位で10ppmとなる量)を投入し、室温で均一に攪拌した。その後、オイルバスにてフラスコ内の温度を100℃まで上げて、トルエン還流下、2時間攪拌して、分子内に上記樹脂状オルガノポリシロキサンに由来する樹脂状オルガノシロキサン部分と上記ジフェニルシロキサンに由来する鎖状オルガノシロキサン部分からなるレジン-リニア構造を有し、かつ、上記反応に関与しなかったビニル基を有するオルガノポリシロキサン架橋物(1)のトルエン溶液を調製した。なお、このオルガノポリシロキサン架橋物(1)を、FT-IRにて分析したところ、ケイ素原子結合水素原子のピークは観測されなかった。また、このオルガノポリシロキサン架橋物(1)の軟化点は75℃であり、その150℃での溶融粘度は100Pa・sであり、ホットメルト性を有していた。
【0106】
[参考例5:非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子(1)]
参考例1で調製したオルガノポリシロキサン樹脂(1)のキシレン溶液を50℃においてスプレードライヤーを用いたスプレー法によりキシレンを除去しながら微粒子化して、真球状の非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子(1)を調製した。この微粒子を光学顕微鏡で観測したところ、粒子径が5~10μmであり、平均粒子径は6.5μmであった。
【0107】
[参考例6:非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子(2)]
参考例2で調製したオルガノポリシロキサン樹脂(2)のキシレン溶液を50℃においてスプレードライヤーを用いたスプレー法によりキシレンを除去しながら粒子化し、真球状の非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子(2)を調製した。この微粒子を光学顕微鏡で観測したところ、粒子径が5~10μmであり、平均粒子径は6.9μmであった。
【0108】
[参考例7:非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子(3)]
参考例3で調製したオルガノポリシロキサン樹脂(3)のキシレン溶液を50℃においてスプレードライヤーを用いたスプレー法によりキシレンを除去しながら粒子化し、真球状の非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子(3)を調製した。この微粒子を光学顕微鏡で観測したところ、粒子径が5~10μmであり、平均粒子径は7.4μmであった。
【0109】
[参考例8:ホットメルト性シリコーン微粒子(1)]
参考例4で調製したオルガノポリシロキサン架橋物(1)のトルエン溶液を40℃においてスプレードライヤーを用いたスプレー法によりトルエンを除去しながら微粒子化して、真球状のホットメルト性シリコーン微粒子(1)を調製した。この微粒子を光学顕微鏡で観測したところ、粒子径が5~10μmであり、平均粒子径は7.5μmであった。
【0110】
以下、実施例1~3、および比較例1~4の硬化性組成物を調製し、上記の方法でその特性を評価した結果を表1等に示す。
【0111】
[実施例1]
(a1+c2(pt)) 非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子(1) 42.5g、
(a2+c2(pt)) 非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子(2) 21.2g、
(b1)式:
ViMe2SiO(Me2SiO)800SiViMe2
で表される、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基の含有量=0.09質量%) 32.0g、
(c2(SiH))式:
(HMe2SiO1/2)0.67(SiO4/2)0.33
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンレジン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.95質量%) 6.2g、
{オルガノポリシロキサン樹脂微粒子粒子(1)、(2)、及び分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン中のビニル基1モルに対して、上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンレジン中のケイ素原子結合水素原子が1.0モルとなる量}、
(d1)平均粒子径0.5μmの酸化チタン(堺化学工業製のSX-3103)299.0g、
(d2)平均粒子径0.04μmのフュームドシリカ(日本アエロジル社のAEROSIL50)4.0g、
(e1) 平均粒子径7.5μmのステアリン酸カルシウム(川村化成社製、150℃での溶融粘度は5Pa・s)0.8g、および
1-エチニル-1-シクロヘキサノール(本組成物に対して質量単位1000ppmとなる量
を小型粉砕機に一括投入し、室温(25℃)で1分間攪拌を行い、均一な白色の硬化性粒状シリコーン組成物を調製した。次に、この組成物を打錠機により、打錠して、直径14mm、高さ22mmの円柱状のペレットを作製することができた。その成形性等の測定結果を表1に示す。
【0112】
[実施例2]
(a1+ c2(pt)) 非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子(1) 41.8g、
(a’+ c2(pt)) 非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子(3)20.9g、
(b1)式:
ViMe2SiO(Me2SiO)800SiViMe2
で表される分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基の含有量=0.09質量%) 32.0g、
(c2(SiH))式:
(HMe2SiO1/2)0.67(SiO4/2)0.33
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンレジン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.95質量%) 4.7g
{オルガノポリシロキサン樹脂微粒子粒子(1)及び分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン中のビニル基1モルに対して、上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンレジン中のケイ素原子結合水素原子が1.0モルとなる量}、
(d3)平均粒子径0.28μmの酸化チタン(石原産業社製のCR-93)295.0g、
(d2)平均粒子径0.04μmのフュームドシリカ(日本アエロジル社のAEROSIL50)4.0g、
(e1) 平均粒子径7.5μmのステアリン酸カルシウム(川村化成社製、150℃での溶融粘度は5Pa・s)0.8g、および
1-エチニル-1-シクロヘキサノール(本組成物に対して質量単位1000ppmとなる量)を小型粉砕機に一括投入し、室温(25℃)で1分間攪拌を行い、均一な白色の硬化性粒状シリコーン組成物を調製した。次に、この組成物を打錠機により、打錠して、直径14mm、高さ22mmの円柱状のペレットを作製することができた。その成形性等の測定結果を表1に示す。
【0113】
[実施例3]
(a2+ c2(pt)) 非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子(2) 28.4g、
(a’+ c2(pt)) 非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子(3) 42.6g
(b2)式:
ViMe2SiO(Me2SiO)45SiViMe2
で表される、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基の含有量=1.53質量%) 32.0g、
(c2(SiH))式:
(HMe2SiO1/2)0.67(SiO4/2)0.33
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンレジン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.95質量%) 3.8g
{オルガノポリシロキサン樹脂微粒子粒子(2)及び分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン中のビニル基1モルに対して、上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンレジン中のケイ素原子結合水素原子が1.0モルとなる量}、
(d1)平均粒子径0.5μmの酸化チタン(堺化学工業製のSX-3103))299.0g、(d2)平均粒子径0.04μmのフュームドシリカ(日本アエロジル社のAEROSIL50)4.0g、
(e1) 平均粒子径7.5μmのステアリン酸カルシウム(川村化成社製、150℃での溶融粘度は5Pa・s)0.8g、および
1-エチニル-1-シクロヘキサノール(本組成物に対して質量単位1000ppmとなる量)を小型粉砕機に一括投入し、室温(25℃)で1分間攪拌を行い、均一な白色の硬化性粒状シリコーン組成物を調製した。次に、この組成物を打錠機により、打錠して、直径14mm、高さ22mmの円柱状のペレットを作製することができた。その成形性等の測定結果を表1に示す。
【0114】
[比較例1]
(a1+ c2(pt)) 非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子(1) 42.5g、
(a2+ c2(pt)) 非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子(2) 21.2g
(c2(SiH))式:
(HMe2SiO1/2)0.67(SiO4/2)0.33
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンレジン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.95質量%) 6.2g
{オルガノポリシロキサン樹脂微粒子粒子(1)および(2)中のビニル基1モルに対して、上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンレジン中のケイ素原子結合水素原子が1.03モルとなる量}、
(d1)平均粒子径0.5μmの酸化チタン(堺化学工業製のSX-3103))299.0g、(d2)平均粒子径0.04μmのフュームドシリカ(日本アエロジル社のAEROSIL50)4.0g、
(e1) 平均粒子径7.5μmのステアリン酸カルシウム(川村化成社製、150℃での溶融粘度は5Pa・s)0.8g、および
1-エチニル-1-シクロヘキサノール(本組成物に対して質量単位1000ppmとなる量)を小型粉砕機に一括投入し、室温(25℃)で1分間攪拌を行い、均一な白色の硬化性粒状シリコーン組成物を調製した。次に、この組成物を打錠機により、打錠して、直径14mm、高さ22mmの円柱状のペレットを作製することができた。その成形性等の測定結果を表1に示す。
【0115】
[比較例2]
ホットメルト性シリコーン微粒子(1) 89.3g、
(c3(SiH))式:
HMe2SiO(Ph2SiO)SiMe2H
で表される、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジフェニルシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.6質量%) 10.7g、{シリコーン微粒子(1)中のビニル基1モルに対して、上記ジフェニルシロキサン中のケイ素原子結合水素原子が1.0モルとなる量}、
(d3)平均粒子径0.28μmの酸化チタン(石原産業社製のCR-93))302.2g、
(d2)平均粒子径0.04μmのフュームドシリカ(日本アエロジル社のAEROSIL50)1.3g、
(e1) 平均粒子径7.5μmのステアリン酸カルシウム(川村化成社製、150℃での溶融粘度は5Pa・s)0.8g、および
1-エチニル-1-シクロヘキサノール(本組成物に対して質量単位で300ppmとなる量)を小型粉砕機に一括投入し、室温(25℃)で1分間攪拌を行い、均一な白色の硬化性粒状シリコーン組成物を調製した。次に、この組成物を打錠機により、打錠して、直径14mm、高さ22mmの円柱状のペレットを作製することができた。その成形性等の測定結果を表1に示す。
【0116】
[比較例3]
式:
(ViMe2SiO1/2)0.11(Me3SiO1/2)0.33(SiO4/2)0.56(HO1/2)0.02
で表されるオルガノポリシロキサン樹脂の55質量%-キシレン溶液 59.1g、
式:
(Me3SiO1/2)0.44(SiO4/2)0.56(HO1/2)0.02
で表されるオルガノポリシロキサン樹脂の55質量%-キシレン溶液 59.1g、
(b3)式:
Me3SiO(Me2SiO)789(MeViSiO)11SiMe3
で表されるジオルガノポリシロキサン 28.0g、
(c3(SiH))式:
HMe2SiO(Me2SiO)17SiMe2H
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン 5.0g、
(c4(SiH))式:
Me3SiO(MeHSiO)7(Me2SiO)6.5SiMe3
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン 2.0g、
(c2(pt))白金-1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジビニルジシロキサン錯体の1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジビニルジシロキサン溶液(白金含量が4.5質量%である)0.01g、および
1-エチニルシクロヘキサン-1-オール 0.05g
を溶液としてホバートミキサーにて30分間攪拌して均一な硬化性シリコーン組成物を調整した。混合物をPETフィルム上に100μmの厚さに塗布し、続いて120℃で30分間加熱することで25℃でタックフリーのフィルムを得ることができた。一方、直径14mm、高さ22mmの円柱状の25℃で固体のペレットを形成することはできなかったが、得られたフィルムを丸めて塊として成型性等の確認を行った。結果を表1に示す。
【0117】
[比較例4]
式:
(ViMe2SiO1/2)0.11(Me3SiO1/2)0.33(SiO4/2)0.56(HO1/2)0.02
で表されるオルガノポリシロキサン樹脂の55質量%-キシレン溶液 59.1g、
式:
(Me3SiO1/2)0.44(SiO4/2)0.56(HO1/2)0.02
で表されるオルガノポリシロキサン樹脂の55質量%-キシレン溶液 59.1g、
(b3)式:
Me3SiO(Me2SiO)789(MeViSiO)11SiMe3
で表されるジオルガノポリシロキサン 28.0g、
(c3(SiH))式:
HMe2SiO(Me2SiO)17SiMe2H
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン 5.0g、
(c4(SiH))式:
Me3SiO(MeHSiO)7(Me2SiO)6.5SiMe3
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン 2.0g、
(c2(pt)) 白金-1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジビニルジシロキサン錯体の1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジビニルジシロキサン溶液(白金金属含有量:4.5質量%)0.01g、
(d3)平均粒子径0.28μmの酸化チタン(石原産業社製のCR-93)295.0g、
(d2)平均粒子径0.04μmのフュームドシリカ(日本アエロジル社のAEROSIL50)4.0g、
(e1)平均粒子径7.5μmのステアリン酸カルシウム(川村化成社製、150℃での溶融粘度は5Pa・s)0.8g、および
1-エチニルシクロヘキサン-1-オール 0.05g、をホバートミキサーにて30分間攪拌して均一な硬化性シリコーンペーストを調整した。混合物をPETフィルム上に100μmの厚さに塗布し、続いて120℃で30分間加熱することで25℃でタックフリーのフィルムを得ることができたが、直径14mm、高さ22mmの円柱状の25℃で固体のペレットを形成することはできなかったが、得られたフィルムを丸めて塊として成形性等の確認を行った。結果を表1に示す。
【0118】
【表1】
*成型不良のため、分光反射率等を測定可能なトランスファー成型による硬化物を得られない。
【0119】
本発明にかかる実施例1~3の硬化性粒状シリコーン組成物は打錠性に優れペレットを得ることができ、ホットメルト性および良好なトランスファー成型性を有する。さらに、得られた硬化物は初期/300℃×10分後において分光反射率が大きく変化せず、耐着色性に優れるものであった。
【0120】
一方、本発明の(B)成分を欠いた比較例1においてはホットメルト性が実現できず、成型性に劣った。また、(A)成分であるオルガノポリシロキサン樹脂微粒子を欠いた比較例3、4においては、打錠性がなく、組成物の硬化が不十分であり、良好なトランスファー成型性を実現することができなかった。一方、ホットメルト性シリコーン微粒子を用いた比較例2は、ホットメルト性および良好なトランスファー成型性を有するが、得られた硬化物は初期/300℃×10分後において分光反射率が大きく変化し、硬化物の対着色性に劣るものであった。