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  • 特許-歯肉組織破壊抑制剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】歯肉組織破壊抑制剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/35 20060101AFI20240123BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 31/122 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
A61K8/35
A61Q11/00
A61K31/122
A61P1/02
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019149853
(22)【出願日】2019-08-19
(65)【公開番号】P2021031406
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-07-06
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 友美
(72)【発明者】
【氏名】岡本 浩明
(72)【発明者】
【氏名】中村 牧
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/066341(WO,A1)
【文献】特開2002-047162(JP,A)
【文献】特開昭63-188619(JP,A)
【文献】特開2009-298724(JP,A)
【文献】特開2013-121954(JP,A)
【文献】庄司 茂ほか,ヒノキチオールによる細胞賦活化に関する研究 -VEGFとIL-8の発現-,歯科薬物療法,2006年12月01日,25巻3号,96-110頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 6/00- 6/90
A61P 1/00-43/00
A61K 31/00-31/327
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒノキチオールを有効成分として含有することを特徴とする、歯周組織におけるコラーゲン分解酵素MMP-1の産生抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コラーゲン分解酵素MMP-1による歯肉組織の破壊を抑制するために使用される口腔組成物に関する。また本発明は、歯肉組織の破壊を抑制し、歯肉の退縮を抑制または改善するために使用される口腔組成物に関する。さらに本発明は、歯周組織におけるMMP-1の発現及び産生を抑制するために使用される口腔組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
歯周病は、歯周組織の炎症性疾患であり、細菌の組織内侵入及び感染に対する宿主応答がその原因となっている。特にポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)は、歯周病の中で最も多いとされる成人性歯周病の病原菌として有力視されている細菌である。
【0003】
歯肉(歯茎)組織は、歯牙を支持する歯周組織であり、歯肉細胞(歯肉上皮細胞や歯肉線維芽細胞等)及び当該歯肉細胞が産生するコラーゲン等の細胞外マトリックスによって構成されている。特に歯周組織の構成成分の約60%はコラーゲンであると言われている。細菌感染や炎症等によって歯肉細胞が損傷を受けると、歯肉線維芽細胞や免疫担当細胞が感染防御反応のためにコラーゲン分解酵素(コラゲナーゼ)を過剰に産生し、その結果、コラーゲンが分解されて、歯肉組織の破壊や歯肉の退縮(縮小、後退)が引き起こされる。また免疫応答などの感染防御反応から免れた細菌そのものもコラーゲン分解酵素やトリプシン様酵素を産生することが知られており、その結果、組織破壊とさらなる組織内侵入を可能にしている(非特許文献1)。こうしたコラーゲン分解酵素による歯肉組織の破壊や退縮は、歯周病の進行を招き、歯の喪失要因にもなる。
【0004】
コラーゲン等の細胞外マトリックスに作用してその分解を促す金属酵素群は、一般に、マトリックスメタロプロテアーゼ(本明細書において、単に「MMP」とも称する)と呼ばれている。このうち、コラーゲンの分解を促すコラーゲン分解酵素(コラゲナーゼ:MMP-1やMMP-8)は、歯周組織の付着上皮及び歯周ポケット上皮周辺に発現していることが報告されている(非特許文献2)。このことからも、MMPの発現及び産生量の増大や活性の上昇が、前述する歯肉組織の破壊や歯肉の退縮、及び歯周病の病態の進行に密接に関係していることがわかる。実際のところ、歯周病患者の口腔洗浄液、歯肉溝滲出液及び唾液内に含まれるMMP量は、歯周病患者の病態を反映しており、歯周病の治療処置を施すことにより、MMP量が減少したことも報告されている(非特許文献3)。また歯肉炎患者と健常者のMMPの量を測定したところ、歯肉炎患者が保有するMMP量は非常に多く、しかも歯周病患者に至っては著量であったことも報告されている(非特許文献4)。このことから、歯周組織におけるMMPの産生を抑制する物質またはMMPの酵素活性を阻害する物質は、局所的炎症やその増悪に伴う歯周組織の病態の進行を抑制するうえで有用であると考えられる。
【0005】
ところで、ヒノキチオールは従来より、抗菌作用、抗炎症作用、及び組織の収斂作用などが知られており、歯肉炎や歯槽膿漏の予防や治療を目的として口腔組成物に配合されている。また、毛包機能賦活作用を有すること(特許文献1)、またサイコサポニンが有する皮膚細胞増殖作用を増強する作用を有すること(特許文献2)などが知られている。しかし、ヒノキチオールに、マトリックスメタロプロテアーゼの一種であるコラゲナーゼ分解酵素(線維芽細胞コラゲナーゼ:MMP-1)の産生を抑制する作用があること、特に成人性歯周病の病原菌として有力視されているポルフィロモナス・ジンジバリス(P. gingivalis)の感染に起因するMMP-1の産生増加を抑制する作用があることについては、知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-47145号公報
【文献】特開平5-262635号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】菊池毅ら「歯周病における組織破壊に関する免疫学的考察」、日歯周誌、59(4):185-190、2017
【文献】M. Kylmaniemi et al., J. Dent Res., 75, pp.919-926 (1996)
【文献】M. Makela et al., J. Dent Res., 73, pp.1397-1406 (1994)
【文献】A. Haerian et al., J. Clin Periodontol., 22, pp.505-509 (1995)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ヒノキチオールについて見出した新たな作用に基づいて、新たな用途を提供手することを目的とする。具体的には、ヒノキチオールが有する作用に基づいて、歯肉組織破壊抑制剤、歯肉退縮抑制または改善剤、及び歯周組織におけるMMP-1の産生抑制剤としての用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、日々の研究の中で、歯周組織において歯周病菌の感染等に起因して生じるMMP-1の産生量の増大が、ヒノキチオールで処理することで抑制されて低減することを新たに見出した。ヒノキチオールのこうした作用によれば、歯肉組織をMMP-1による破壊から守り、また歯肉の退縮(縮小や後退)を予防または改善することができると考えられる。また、歯肉組織をMMP-1による破壊から守ることで、歯周炎や歯周病の増悪を予防することも可能である。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものであり、下記の実施形態を含有するものである。
【0010】
項1.ヒノキチオールを有効成分として含有することを特徴とする、歯肉組織破壊抑制剤。
項2.ヒノキチオールを有効成分として含有することを特徴とする、歯肉退縮抑制または改善剤。
項3.ヒノキチオールを有効成分として含有することを特徴とする、歯周組織におけるコラーゲン分解酵素MMP-1の産生抑制剤。
項4.ヒノキチオールを口腔組成物に配合することにより、当該口腔組成物に対して、歯肉組織破壊抑制作用、歯肉退縮抑制または改善作用、及び歯周組織におけるコラゲナーゼ分解酵素MMP-1の産生抑制作用よりなる群から選択される少なくとも1つの作用を付与することを特徴とする、ヒノキチオールの使用方法。なお、当該使用方法は、歯肉組織破壊抑制剤、歯肉退縮抑制または改善剤、及び歯周組織におけるMMP-1の産生抑制剤よりなる群から選択される少なくとも1つの口腔組成物を製造するための、ヒノキチオールの使用と言い換えることもできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の歯肉組織破壊抑制剤で口腔内を処理することで、歯周組織におけるMMP-1の産生増大を抑制することができ、その結果、歯肉組織の破壊を抑制することができる。また本発明の歯肉退縮抑制または改善剤で口腔内を処理することで、MMP-1による歯肉組織の破壊を抑制することができ、その結果、歯肉の縮小や後退を抑制し、または改善することができる。さらに本発明のMMP-1産生抑制剤で口腔内を処理することで、歯周病菌の感染等に起因する歯周組織におけるMMP-1の産生増大を抑制することができ、その結果、歯肉組織の破壊を抑制することができる。また、歯肉の縮小や後退を抑制し、または改善することができる。このように、本発明の各種用途の口腔組成物によれば、MMP-1に起因する歯肉組織の炎症(歯肉炎を含む)や、その増悪に伴う歯周組織の病態(歯周病を含む)の進行を抑制し、改善するうえで有用である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ヒト歯肉線維芽細胞(HGF-1)を、ポルフィロモナス・ジンジバリス由来のリポポリサッカライド(LPS-PG)の存在下、ヒノキチオールの非存在(比較例)または存在(実施例1:1ppm、実施例2:5ppm)の条件で培養して、24時間及び48時間後に1型ヒト線維芽細胞コラゲナーゼ(MMP-1)の産生量(pg/mL)を測定し、その結果を、生細胞数あたりに換算した結果を示す図である。図はn=6の平均値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の歯肉組織破壊抑制剤、歯肉退縮抑制または改善剤、及び歯周組織におけるMMP-1の産生抑制剤は、いずれもヒノキチオールを有効成分として含有することを特徴とする。
【0014】
ヒノキチオールは、下式で示される化合物である。
【化1】
【0015】
ヒノキチオール(2-ヒドロキシ-4-イソプロピルシクロヘプタ-2,4,6-トリエン-1-オン、別名として「β-ツヤプリシン(Thujaplicin)」とも称される)は、タイワンヒノキや青森ヒバ等の精油中に含まれる天然物であり、低毒性であるものの、広い抗菌スペクトルを有し、優れた抗菌作用を有する結晶性物質である。金属イオンと接触すると塩を形成するが、本発明ではその塩も含めてヒノキチオールと総称する。ヒノキチオールは前述するタイワンヒノキやヒバから抽出された精油から単離することもできるが、最近では、化学合成によっても製造されて提供されてもいる。本発明で使用されるヒノキチオールは、天然由来および合成品の別を問わない。また、本発明の効果を損なわないことを限度として、精製品に拘らず、精油または精油の粗精製物であってもよい。
【0016】
本発明の歯肉組織破壊抑制剤、歯肉退縮抑制または改善剤、または歯周組織におけるMMP-1の産生抑制剤(以下、これらを総称して「本剤」とも称する。)におけるヒノキチオールの配合量は、各剤を口腔組成物として口腔内に適用した場合に、各々の効果を奏するヒノキチオール量であればよく、その限りにおいて特に制限されるものではない。例えば、本剤がそのまま口腔内に適用される口腔用組成物である場合は、0.005~0.5質量%の範囲から適宜選択設定することができる。好ましくは0.01~0.3質量%であり、より好ましくは0.02~0.2質量%である。また本剤が、用時に水で希釈して口腔内に適用される口腔用組成物である場合は、希釈後の濃度が前記範囲になるようにヒノキチオールを含有するものであればよい。例えば、制限されないものの、一例を挙げると、用時に水で10倍に希釈して使用する場合、例えばヒノキチオールを0.05~5質量%の濃度で含むように口腔用組成物を調製することができる。さらに本剤が、前述する口腔用組成物(そのまま使用、用時希釈使用のものを含む)に歯肉組織破壊抑制作用、歯肉退縮抑制若しくは改善作用、または歯周組織におけるMMP-1の産生抑制作用を付与するための添加剤として使用されるものである場合、前記口腔用組成物が調製できることを限度としてヒノキチオールの含有量は特に制限されることなく、例えば0.1~100質量%の範囲から適宜設定することができる。ちなみに、歯肉組織破壊抑制が有する歯肉組織の破壊抑制効果は、歯周病菌感染による歯周組織におけるMMP-1産生増大を低減し抑制するヒノキチオールの作用に起因するものであり、後述する実験例1に示すように、対象とするヒト歯肉線維芽細胞をP.gingivalisまたはそのリポポリサッカライド(LPS)の存在下、歯肉上皮細胞活性化剤で処理することで評価することができる。ヒト歯肉線維芽細胞において発現産生されるMMP-1の量が、歯肉組織破壊抑制で処理することで、歯肉組織破壊抑制で処理しない場合と比較して低減している場合は、歯肉組織破壊抑制により歯周病菌感染による歯周組織におけるMMP-1産生増大が低減抑制されたとして、当該歯肉組織破壊抑制は、MMP-1による歯肉組織の破壊を抑制することができる、つまり、歯肉組織破壊抑制効果を奏するとして判断することができる。また歯肉退縮抑制または改善剤が有する歯肉退縮抑制または改善効果も同様な方法で判断することができる。なお、改善効果は、歯肉退縮が抑制されることで、経時的に歯肉組織が健常な状態に戻る(回復)ことにより得られる効果である。歯肉の退縮には、歯肉の縮小または/及び後退が含まれる。また、本発明の歯周組織におけるMMP-1の産生抑制剤が有するMMP-1の産生抑制効果も同様な方法で判断することができる。
【0017】
本発明の歯肉組織破壊抑制剤、歯肉退縮抑制または改善剤、または歯周組織におけるMMP-1の産生抑制剤は、おのおの歯肉組織破壊抑制用口腔組成物、歯肉退縮抑制または改善用口腔組成物、または歯周組織におけるMMP-1の産生抑制用口腔組成物として、口腔内に適用されることで、各々の効果を発揮することができる。前述するように、本剤はそのまままたは水で希釈して口腔内に適用される口腔用組成物として使用されるものであってもよいし、またこれらの口腔用組成物に添加して歯肉組織破壊抑制作用、歯肉退縮抑制若しくは改善作用、または歯周組織におけるMMP-1の産生抑制作用を有する口腔用組成物を調製するための添加剤として使用されるものであってもよい。つまり、本剤は最終的には口腔組成物の形態で使用されるものであればよく、それに適した形態に調製されて提供することができる。
【0018】
なお、ヒノキチオールは水に微溶性の結晶であるため、例えば本剤を口腔用組成物への添加剤として使用する場合は、ヒノキチオールをエタノールまたはプロピレングリコール等の可溶性溶媒に溶解した液剤の状態に調製されることが好ましい。
【0019】
口腔組成物の形態としては、錠剤、丸剤、顆粒剤、液剤、懸濁剤、乳液剤、シート剤、ゲル剤、フォーム剤及びペースト剤等のいずれの形態をも挙げることができる。これらの形態には、具体的には、歯磨き剤(粉末状、液体状、クリーム状、ペースト状の製剤を含む)、洗口剤(液体状、フォーム状の製剤を含む)、軟膏剤、パスタ剤、歯肉クリーム、歯肉ゲル、義歯安定剤、トローチ剤、咀嚼剤(チューインガム、グミ等を含む)、貼付剤(フィルム、パック)、アメ類(キャンディ、錠菓[清涼菓子、ミントタブレット、サプリメントを含む]等を含む)等が含まれる。こうした形態に調製して口腔内で適用することで、効果的にMMP-1産生増大を抑止し、その結果MMP-1による歯肉組織の破壊が抑制され、歯肉の退縮抑制または改善することができる。これらの作用により、歯肉の炎症や歯周疾患の増悪を阻止し、健常化することで、歯周炎、歯肉炎、歯根膜炎、智歯周囲炎、インプラント周囲炎、等の歯周組織に関する口腔内疾患の予防または治療に有効に対処することが可能になる。
【0020】
これらの口腔組成物は、各形態に応じて、当該分野で使用される各種の成分を配合することができ、本発明の効果を妨げない限り、それを制限するものではない。例えば、歯磨き剤の場合、本発明の効果を妨げない範囲で、研磨剤、湿潤剤、粘結剤、発泡剤、粘稠剤、界面活性剤、甘味剤、香料、着色料、防腐剤、その他の薬用成分(例えば、抗炎症剤など)を配合することができる。
【0021】
[研磨剤]沈降性シリカ、シリカゲル、アルミノシリケート、ジルコノシリケート等のシリカ系研磨剤、歯磨用リン酸水素カルシウム、第二リン酸カルシウム2水和物、第二リン酸カルシウム無水和物、ピロリン酸カルシウム等のリン酸系研磨剤、水酸化アルミニウム、アルミナ、二酸化チタン、結晶性ジルコニウムシリケート、ポリメチルメタアクリレート、不溶性メタリン酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マ
グネシウム、第三リン酸マグネシウム、ゼオライト、ケイ酸ジルコニウム、ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、カルシウム欠損アパタイト、第三リン酸カルシウム、第四リン酸カルシウム、第八リン酸カルシウム、合成樹脂系研磨剤。
【0022】
[湿潤剤]グリセリン、濃グリセリン、ジグリセリン、ソルビット、マルチトール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、キシリトール等の多価アルコール等。
【0023】
[粘結剤]カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルエチルセルロース、メチルセルロースなどのセルロース系粘結剤、キサンタンガム、カラギーナン、グアガム、アルギン酸ナトリウム、カチオン化セルロース、モンモリロナイト、ゼラチン、ポリアクリル酸ナトリウム等。
【0024】
[発泡剤]ラウリル硫酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、アルキルスルホコハク酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸モノグリセリンスルホン酸ナトリウム、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム、N-アシルグルタメート等のN-アシルアミノ酸塩、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、マルチトール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、アルキルグリコシド等。
【0025】
[粘稠剤]グリセリン、ソルビット、プロピレングリコール、分子量200~6000のポリエチレングリコール、エチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、還元でんぷん糖化物等。
【0026】
[界面活性剤]アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤等を配合できる。アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸ナトリウム、N-ラウロイルサルコシンナトリウム、N-ミリストイルサルコシンナトリウム等のN-アシルサルコシンナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、水素添加ココナッツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、N-パルミトイルグルタミン酸ナトリウム等のN-アシルグルタミン酸塩、N-メチル-N-アシルタウリンナトリウム、N-メチル-N-アシルアラニンナトリウム、α-オレフィンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。ノニオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ショ糖脂肪酸エステル、アルキロールアマイド、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、アルキルグルコシド、ラウリン酸デカグリセリル等が用いられる。両性界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインや、N-ヤシ油脂肪酸アシル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等。
【0027】
[甘味剤]サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ステビオサイド、ステビアエキス、パラメトキシシンナミックアルデヒド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ペリラルチン、スクラロース、キシリトール、還元パラチノース、エリスリトール、マルチトール等。
【0028】
[香料]ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー
油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー等の天然香料、及び、これら天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料や、メントール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N-置換-パラメンタン-3-カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、プロピルアルコール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、メチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料、更に、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料等。
【0029】
[着色料]青色1号、黄色4号、緑色3号等。
【0030】
[防腐剤]メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン等のパラベン類、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン等。
【0031】
[薬用成分]フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化スズなどのフッ素化合物、正リン酸のカリウム塩、ナトリウム塩等の水溶性リン酸化合物、ポリリン酸ナトリウム、トラネキサム酸、イプシロン-アミノカプロン酸、アラントイン、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アスコルビン酸、酢酸dl-α-トコフェロール、ニコチン酸dl-α-トコフェロール、塩酸ピリドキシン、ジヒドロコレステロール、α-ビサボロール、クロルヘキシジン塩類、アズレンスルホン酸ナトリウム、グァイアズレンスルホン酸、グリチルレチン、グリチルレチン酸、グルコン酸銅等の銅化合物、乳酸アルミニウム、塩化ストロンチウム、硝酸カリウム、ベルベリン、ヒドロキサム酸及びその誘導体、ゼオライト、メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、エピジヒドロコレステリン、塩化セチルピリジウム、塩化ベンゼトニウム、イソプロピルメチルフェノール、ラウロイルサルコシンナトリウム、ジヒドロコレステロール、トリクロロカルバニリド、クエン酸亜鉛、トウキ軟エキス、オウバクエキス、カミツレ、チョウジ、ローズマリー、オウゴン、ベニバナ等の抽出物、塩化リゾチーム、塩化ナトリウム等。
【0032】
なお、これら任意成分の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で、当業界で使用される通常の量とすることができる。
【0033】
斯くして口腔組成物の形態に調製される本剤は、その形態に応じて通常の使用をすることで、対象とする被験者の口腔内を処理することができる。例えば、歯磨き剤の形態を有する場合、本剤を用いて被験者の歯を磨くことで本剤の各々の効果を発揮することができる。また、洗口剤の形態を有する場合、本剤を用いて被験者の口腔を洗浄(リンス)することで本剤の各々の効果を発揮することができる。本剤が前述するその他の形態を有する場合も同様である。なお、制限されないが、本発明の効果をより発揮するうえでは、口腔内に適用される際に、唾液を含む口腔内でのヒノキチオールの濃度が1nM~20mMの範囲、好ましくは10nM~10mM、より好ましくは10nM~5mMになるように、調製されることが好ましい。
【0034】
本剤を口腔内に適用する回数は特に制限されず、1日に1回乃至複数回、好ましくは食後、または/及び就寝前後に実施することができる。
【0035】
以上、本明細書において、「含む」及び「含有する」の用語には、「からなる」及び「から実質的になる」という意味が含まれる。
【実施例
【0036】
以下、本発明の構成及び効果について、その理解を助けるために、実験例を用いて本発明を説明する。但し、本発明はこれらの実験例によって何ら制限を受けるものではない。以下の実験は、特に言及しない限り、室温(約25℃)、及び大気圧条件下で実施した。
【0037】
実験例1 ヒノキチオールの歯肉上皮細胞の増殖に対する作用
ヒト歯肉線維芽細胞(HGF-1)を、ポルフィロモナス・ジンジバリス由来のリポポリサッカライド(LPS-PG)の存在下、ヒノキチオールの存在または非存在の条件で培養して、経時的に1型ヒト線維芽細胞コラゲナーゼ(MMP-1)の産生量を測定し、歯肉細胞におけるコラーゲン分解酵素の発現及び産生に対するヒノキチオールの作用を評価した。
【0038】
1.材料
細胞:正常ヒト歯肉線維芽細胞(HGF-1細胞)(ATCC CRL-2014)
培地:D-MEM High Glucose(富士フイルム和光純薬株式会社製)
生細胞測定用試薬:
(1)MMP-1 ELISAキット(Human Total MMP-1 DuoSet ELISA、R&Dシステムズ社製)
(2)Cel Counting Kit-8Cel(株式会社同仁化学研究所製)
LPS-PG:ポルフィロモナス・ジンジバリス[Pg]由来のリポポリサッカライド(ナカライテスク株式会社製)
ヒノキチオール:東京化成工業株式会社
ヒノキチオール用溶媒:ジメチルスルホキシド50ppm、POE硬化ヒマシ油50ppm
【0039】
2.実験方法
(1)MMP-1量の測定
正常ヒト歯肉線維芽細胞(HGF-1細胞)を、培地を入れた96ウェルプレートに、1×10個/ウェルの割合で播種し、インキュベーター(37℃、5% CO)内で、24時間培養(初期培養)した。初期培養(24時間)後に、培地を除去し、表1に記載する被験試料液(比較例、実施例1及び2)、及びLPS-PG(終濃度10μg/mL)を添加して、さらにインキュベーター(37℃、5% CO)で24時間、または48時間培養した(曝露培養)。培養から24時間及び48時間後に、それぞれ検体液(培養液)を回収して、MMP-1 ELISAキットのマニュアルに従って、ELISA法により培養液中のMMP-1量(pg/mL)を測定した。
【0040】
【表1】
【0041】
(2)生細胞数の測定
前記培養24時間及び48時間後に回収した検体液(培養液)中の生細胞数は、前記CCKキットを用いて測定した。具体的には、まず前記初期培養により得られたサンプル(初期サンプル)について、ウェルから培地を除去し、歯肉線維芽細胞をPBSで洗浄し、CCKキット付属のCCK希釈溶液(CCK溶液:培地=1:10)を100μL添加して、インキュベーター(37℃、5% CO)内にて1時間静置した後、波長450nm及び650nmにおける吸光度を測定した。また、前記曝露培養により得られたサンプル(曝露サンプル)については、ウェルから回収した検体液から培地と被験試料液を除去して、歯肉線維芽細胞をPBSで洗浄し、CCK希釈溶液(同上)を100μL添加して、インキュベーター(37℃、5% CO)内にて1時間静置した後、波長450nm及び650nmにおける吸光度を測定した。曝露サンプル(検体液)中の生細胞数は、測定した波長450nmの吸光度と650nmの吸光度の差(吸光度450nm-吸光度650nm)を、初期サンプルについて測定した当該差(吸光度450nm-吸光度650nm)と比較して、算出した。
【0042】
3.結果
比較例、並びに実施例1及び2について、検体液(培養液)中のMMP-1量(pg/mL)を表2及び図1に示す。なお、表2及び図1に示す値は、いずれも比較例のサンプルを24時間または48時間培養した後のサンプルに含まれる生細胞数を1として、生細胞数(相対値)あたりのMMP-1量(pg/mL)に換算したものである。また、結果は試験数(n=6)の平均値である。
【0043】
【表2】
【0044】
表2及び図1に示すように、ヒト歯肉線維芽細胞にポルフィロモナス・ジンジバリス由来のリポポリサッカライド(LPS-PG)を添加し培養したところ、ヒノキチオール非存在下では、ヒト歯肉線維芽細胞中のコラーゲン分解酵素MMP-1の発現産生量が経時的に増加することが確認された(比較例)。これに対して、ヒト歯肉線維芽細胞をヒノキチオール存在下で培養することで(実施例1及び2)、ヒノキチオール不存在下で培養したMMP-1量(比較例)と比較して、MMP-1産生量は顕著に減少することが確認された。このことから、ヒノキチオールには、歯肉組織において細菌感染によって産生が増大するMMP-1の量を抑制し低減する作用があることが判明した。このことから、ヒノキチオールによれば、細菌感染によるコラーゲン分解酵素の過剰産生を抑制することで、コラーゲン分解酵素による歯周組織の破壊や歯肉退縮を予防ないし改善することができると考えられる。
【0045】
[処方例]
下記の処方に従って、歯磨剤(表3)、洗口液(表4)、及びゲル剤(表5)の形態を有する本発明の製剤を調製することができる。
【0046】
【表3】
【0047】
【表4】
【0048】
【表5】
図1