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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】ウエーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20240123BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20240123BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20240123BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20240123BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20240123BHJP
   B23K 26/53 20140101ALI20240123BHJP
【FI】
H01L21/78 Q
H01L21/78 B
H01L21/78 L
H01L21/02 C
B24B7/04 A
B24B41/06 L
B24B27/06 M
B23K26/53
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020071607
(22)【出願日】2020-04-13
(65)【公開番号】P2021168358
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】張 秉得
【審査官】井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-187608(JP,A)
【文献】国際公開第2004/001819(WO,A1)
【文献】特開2017-069269(JP,A)
【文献】特開2010-050416(JP,A)
【文献】国際公開第2019/208359(WO,A1)
【文献】特開2017-195244(JP,A)
【文献】特開2012-054273(JP,A)
【文献】特開2009-044008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/02
B24B 7/04
B24B 41/06
B24B 27/06
B23K 26/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されたデバイス領域と、該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とが表面に形成されたウエーハを個々のデバイスチップに分割するウエーハの加工方法であって、
ウエーハの表面に保護部材を配設する保護部材配設工程と、
該保護部材側を保持し該デバイス領域に対応するウエーハの裏面を研削して該外周余剰領域に対応するウエーハの裏面に環状凸部を有する環状補強部を形成する裏面研削工程と、
該環状補強部を有するウエーハを搬送しウエーハに処理を施す処理工程と、
該環状補強部を除去する環状補強部除去工程と、
ウエーハの裏面にダイシングテープを配設しウエーハの表面から該保護部材を剥離する剥離工程と、
ウエーハの分割予定ラインに沿って個々のデバイスチップに分割する分割工程と、を含み、
該環状補強部除去工程において、ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を該環状補強部の内部に位置づけてレーザー光線をウエーハに照射し、該デバイス領域に対応するウエーハの裏面と同一面になる位置に改質層を形成し、該改質層から該環状凸部を除去するウエーハの加工方法。
【請求項2】
該処理工程において、該デバイス領域に対応するウエーハの裏面に金属膜を被覆する請求項1記載のウエーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されたデバイス領域と、デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とが表面に形成されたウエーハを個々のデバイスチップに分割するウエーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されたデバイス領域と、デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とが表面に形成されたウエーハは、研削装置によって裏面が研削されて所定の厚みに形成された後、ダイシング装置、レーザー加工装置によって個々のデバイスチップに分割され、分割された各デバイスチップは携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
また、デバイス領域に対応するウエーハの裏面を研削して外周余剰領域に対応するウエーハの裏面に環状補強部を形成し、その後、ウエーハに加工を施し外周余剰領域に形成された環状補強部を除去して、または除去しないでウエーハを個々のデバイスチップに分割する技術を本出願人は提案している(たとえば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-19461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、環状補強部を除去する際にウエーハの外周に位置するデバイスが破損するおそれがあることからデバイス領域が制限され生産性が悪いという問題がある。
【0006】
また、ウエーハの外周に位置する環状補強部を除去しない場合は、ウエーハを保持するチャックテーブルの上面形状を、環状補強部を有するウエーハの裏面形状に対応させなければならず煩に耐えないという問題がある。
【0007】
上記事実に鑑みてなされた本発明の課題は、デバイス領域を制限しなくてもウエーハの外周に位置するデバイスが破損することがないと共に、環状補強部を有するウエーハの裏面形状にチャックテーブルの上面形状を対応させる必要がないウエーハの加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決するために以下のウエーハの加工方法を提供する。すなわち、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されたデバイス領域と、該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とが表面に形成されたウエーハを個々のデバイスチップに分割するウエーハの加工方法であって、ウエーハの表面に保護部材を配設する保護部材配設工程と、該保護部材側を保持し該デバイス領域に対応するウエーハの裏面を研削して該外周余剰領域に対応するウエーハの裏面に環状凸部を有する環状補強部を形成する裏面研削工程と、該環状補強部を有するウエーハを搬送しウエーハに処理を施す処理工程と、該環状補強部を除去する環状補強部除去工程と、ウエーハの裏面にダイシングテープを配設しウエーハの表面から該保護部材を剥離する剥離工程と、ウエーハの分割予定ラインに沿って個々のデバイスチップに分割する分割工程と、を含み、該環状補強部除去工程において、ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を該環状補強部の内部に位置づけてレーザー光線をウエーハに照射し、該デバイス領域に対応するウエーハの裏面と同一面になる位置に改質層を形成し、該改質層から該環状凸部を除去するウエーハの加工方法を本発明は提供する。
【0009】
好ましくは、該処理工程において、該デバイス領域に対応するウエーハの裏面に金属膜を被覆する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のウエーハの加工方法は、ウエーハの表面に保護部材を配設する保護部材配設工程と、該保護部材側を保持し該デバイス領域に対応するウエーハの裏面を研削して該外周余剰領域に対応するウエーハの裏面に環状凸部を有する環状補強部を形成する裏面研削工程と、該環状補強部を有するウエーハを搬送しウエーハに処理を施す処理工程と、該環状補強部を除去する環状補強部除去工程と、ウエーハの裏面にダイシングテープを配設しウエーハの表面から該保護部材を剥離する剥離工程と、ウエーハの分割予定ラインに沿って個々のデバイスチップに分割する分割工程と、を含み、該環状補強部除去工程において、ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を該環状補強部の内部に位置づけてレーザー光線をウエーハに照射し、該デバイス領域に対応するウエーハの裏面と同一面になる位置に改質層を形成し、該改質層から該環状凸部を除去するので、デバイス領域を制限しなくてもウエーハの外周に位置するデバイスが破損することがないと共に、環状補強部を有するウエーハの裏面形状にチャックテーブルの上面形状を対応させる必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(a)保護部材配設工程を実施している状態を示す斜視図、(b)保護部材が配設されたウエーハの裏面側斜視図。
図2】(a)裏面研削工程を実施している状態を示す斜視図、(b)外周余剰領域に対応する裏面に環状補強部が形成されたウエーハの断面図。
図3】(a)処理工程が実施されたウエーハの斜視図、(b)(a)に示すウエーハの一部断面図。
図4】(a)環状補強部除去工程においてレーザー光線をウエーハに照射している状態を示す斜視図、(b)デバイス領域に対応する裏面と同一面になる位置に改質層が形成されたウエーハの一部断面図、(c)環状補強部除去工程において環状凸部が除去されたウエーハの裏面側斜視図。
図5】(a)剥離工程においてウエーハの裏面にダイシングテープを配設する状態を示す斜視図、(b)剥離工程においてウエーハの表面から保護部材を剥離した状態を示す斜視図。
図6】ダイシング装置を用いて分割工程を実施している状態を示す斜視図。
図7】レーザー加工装置を用いて分割工程を実施している状態を示す斜視図。
図8】ピックアップ工程を実施している状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のウエーハの加工方法の好適実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0013】
図1には、本発明のウエーハの加工方法によって加工が施されるウエーハ2が示されている。厚みが700μm程度である円板状のウエーハ2は、たとえばシリコン等から形成され得る。ウエーハ2の表面2aは、IC、LSI等の複数のデバイス4が格子状の分割予定ライン6によって区画されたデバイス領域8と、デバイス領域8を囲繞する外周余剰領域10とが形成されている。図1では、便宜的にデバイス領域8と外周余剰領域10との境界12を二点鎖線で示しているが、実際には境界12を示す線は存在しない。
【0014】
図示の実施形態のウエーハの加工方法では、図1に示すとおり、まず、ウエーハ2の表面2aに保護部材14を配設する保護部材配設工程を実施する。保護部材14としては、たとえば、ウエーハ2の直径と同一の直径を有する円形の粘着テープを用いることができる。
【0015】
保護部材配設工程を実施した後、保護部材14側を保持しデバイス領域8に対応するウエーハ2の裏面2bを研削して外周余剰領域10に対応するウエーハ2の裏面2bに環状凸部を有する環状補強部を形成する裏面研削工程を実施する。
【0016】
裏面研削工程は、たとえば図2(a)に一部を示す研削装置16を用いて実施することができる。研削装置16は、ウエーハ2を吸引保持する円形のチャックテーブル18と、チャックテーブル18に吸引保持されたウエーハ2を研削する研削手段20とを備える。
【0017】
チャックテーブル18は、チャックテーブル18の径方向中心を通って上下方向に延びる軸線を回転中心としてチャックテーブル用モータ(図示していない。)によって回転される。チャックテーブル18の上端部分は、吸引手段(図示していない。)に接続された多孔質部材から形成されている。チャックテーブル18は、吸引手段で上面に吸引力を生成することにより、上面に載せられたウエーハ2を吸引保持する。
【0018】
研削手段20は、スピンドルハウジング22と、上下方向に延びる軸線を中心として回転自在にスピンドルハウジング22に支持されたスピンドル24と、スピンドル24を回転させるスピンドル用モータ(図示していない。)と、スピンドル24の下端に固定された円板状のホイールマウント26とを含む。ホイールマウント26の下面にはボルト28によって環状の研削ホイール30が固定されている。研削ホイール30の直径は、ウエーハ2の半径と略同じである。また、研削ホイール30の下面の外周縁部には、周方向に間隔をおいて環状に配設された複数の研削砥石32が固定されている。
【0019】
図2(a)を参照して説明を続けると、裏面研削工程では、まず、保護部材14側を下に向けて、チャックテーブル18の上面でウエーハ2を吸引保持する。この際は、ウエーハの2の中心とチャックテーブル18の回転中心とを整合させる。次いで、研削砥石32がウエーハ2の回転中心(チャックテーブル18の回転中心)を通過すると共に、ウエーハ2の外周よりも径方向内側に研削砥石32の外側が位置するように、研削砥石32に対するウエーハ2の位置を調整する。次いで、上方からみて時計回りに所定の回転速度(たとえば6000rpm)でスピンドル24を回転させる。また、上方からみて反時計回りに所定の回転速度(たとえば300rpm)でチャックテーブル18を回転させる。
【0020】
次いで、研削装置16の昇降手段(図示していない。)でスピンドル24を下降させ、ウエーハ2の裏面2bに研削砥石32を接触させる。その後、所定の研削送り速度(たとえば1μm/s)でスピンドル24を下降させる。これによって、図2(b)に示すとおり、デバイス領域8に対応するウエーハ2の裏面2bを研削して薄化部34を形成すると共に、外周余剰領域10に対応するウエーハ2の裏面2bに環状凸部36aを有する環状補強部36を形成することができる。環状補強部36の幅(径方向寸法)は2~3mm程度でよく、薄化部34の厚みは30μm程度でよい。なお、環状補強部36は研削砥石32によって研削されないので、環状補強部36の厚みは研削前のウエーハ2の厚みと同一(図示の実施形態では700μm程度)である。
【0021】
裏面研削工程を実施した後、環状補強部36を有するウエーハ2を搬送しウエーハ2に処理を施す処理工程を実施する。図示の実施形態の処理工程では、図3に示すとおり、デバイス領域8に対応するウエーハ2の裏面2bに電極をなす金属膜38を被覆する。なお、ウエーハ2には環状補強部36が形成されているため、ウエーハ2を搬送する際にウエーハ2が弛むことなく、ウエーハ2の形態が実質上水平に保たれるので、ウエーハ2を搬送が容易であると共にウエーハ2に処理を施すのが容易である。
【0022】
処理工程を実施した後、環状補強部36を除去する環状補強部除去工程を実施する。環状補強部除去工程は、たとえば図4(a)に一部を示すレーザー加工装置40を用いて実施することができる。レーザー加工装置40は、ウエーハ2を吸引保持する円形のチャックテーブル42と、チャックテーブル42に吸引保持されたウエーハ2にパルスレーザー光線LBを照射する集光器44とを備える。
【0023】
上面においてウエーハ2を吸引保持するチャックテーブル42は、チャックテーブル42の径方向中心を通って上下方向に延びる軸線を回転中心として回転自在に構成されていると共に、図4(a)に矢印Xで示すX軸方向と、X軸方向に直交するY軸方向(図4(a)に矢印Yで示す方向)とのそれぞれに進退自在に構成されている。なお、X軸方向およびY軸方向が規定するXY平面は実質上水平である。
【0024】
図4(a)を参照して説明を続けると、環状補強部除去工程では、まず、保護部材14側を下に向けて、チャックテーブル42の上面でウエーハ2を吸引保持する。この際は、ウエーハ2の中心とチャックテーブル42の回転中心とを整合させる。次いで、ウエーハ2に対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線LBの集光点を環状補強部36の内部であって、デバイス領域8に対応するウエーハ2の裏面2b(図示の実施形態では金属膜38)と同一面になる位置に位置づける。
【0025】
次いで、所定の回転速度でチャックテーブル42を回転させることにより、環状補強部36に沿ってパルスレーザー光線LBの集光点とウエーハ2とを相対的に移動させながら、パルスレーザー光線LBを集光器44からウエーハ2に照射する。これによって、環状補強部36に対応するウエーハ2の内部であって、デバイス領域8に対応するウエーハ2の裏面2b(図示の実施形態では金属膜38)と同一面になる位置に強度が小さいリング状の改質層46を形成することができる。
【0026】
次いで、パルスレーザー光線LBの集光点をウエーハ2の径方向に相対的に移動させる。次いで、上記同様に、チャックテーブル42を回転させながらパルスレーザー光線LBをウエーハ2に照射してリング状の改質層46を形成する。そして、パルスレーザー光線LBの集光点の移動と、パルスレーザー光線LBの照射とを繰り返すことによって、図4(b)に示すとおり、環状補強部36の内周縁から外周縁までの間において所定間隔をおいて複数のリング状の改質層46を形成する。なお、環状補強部除去工程において環状補強部36に形成する改質層はリング状に限定されず、たとえば螺旋状であってもよい。また、環状補強部除去工程におけるパルスレーザー光線LBの照射は、たとえば以下の条件で行うことができる。
パルスレーザー光線の波長 :1342nm
繰り返し周波数 :90kHz
平均出力 :0.6W
チャックテーブルの回転速度 :0.5周/秒
【0027】
次いで、図4(c)に示すとおり、ウエーハ2に外力を付与することにより、改質層46から環状凸部36aを除去する。図4(b)を参照することによって理解されるとおり、環状凸部36aは、環状補強部36において改質層46よりも上方の部分であり、デバイス領域8に対応するウエーハ2の裏面2b(図示の実施形態では金属膜38)よりも突出している部分である。環状凸部36aを除去することにより、ウエーハ2の裏面2bは、ほぼ平坦な面となる。なお、環状補強部36を除去する際には、ウエーハ2に超音波振動を付与してもよい。
【0028】
このように環状補強部除去工程においては、環状補強部36の全部を除去するのではなく、環状補強部36の環状凸部36aのみを除去するので、環状補強部除去工程においてウエーハ2の外周に位置するデバイス4が破損することがないと共に、図3(b)および図4(b)を参照することによって理解されるとおり、ウエーハ2の外周に位置するデバイス4の一部分が環状補強部36に突出する(デバイス領域8を超えて外周余剰領域10に突出する)のが許容される。したがって、図示の実施形態によれば、環状補強部36よりも内側にデバイス領域8が厳密に制限されていなくてもウエーハ2の外周に位置するデバイス4が破損することがない。なお、最外側のデバイス4の裏面には、金属膜38が全面に被覆されていないが、一部に被覆されているので問題はない。
【0029】
環状補強部除去工程を実施した後、ウエーハ2の裏面2bにダイシングテープを配設しウエーハ2の表面2aから保護部材14を剥離する剥離工程を実施する。
【0030】
図5を参照して説明すると、図示の実施形態のダイシングテープ48は円形であり、ダイシングテープ48の直径はウエーハ2の直径よりも大きい。ダイシングテープ48の周縁は、ウエーハ2を収容する開口部50aを有する環状フレーム50に固定されている。図5(a)に示すとおり、剥離工程では、まず、環状フレーム50に固定されたダイシングテープ48をウエーハ2の裏面2bに貼り付ける。次いで、図5(b)に示すとおり、ウエーハ2の表面2aから保護部材14を剥離する。
【0031】
剥離工程を実施した後、ウエーハ2の分割予定ライン6に沿って個々のデバイスチップに分割する分割工程を実施する。分割工程は、たとえば図6に一部を示すダイシング装置52を用いて実施することができる。ダイシング装置52は、ウエーハ2を吸引保持するチャックテーブル(図示していない。)と、チャックテーブルに吸引保持されたウエーハ2を切削する切削手段54とを備える。
【0032】
チャックテーブルは、回転自在に構成されていると共に、X軸方向に移動自在に構成されている。切削手段54は、Y軸方向を軸心として回転自在に構成されたスピンドル56と、スピンドル56の先端に固定された環状の切削ブレード58と、スピンドル56を回転させるスピンドル用モータ(図示していない。)とを含む。なお、環状補強部除去工程において環状凸部36aを除去し、ウエーハ2の裏面2bはほぼ平坦面となっているため、ダイシング装置52のチャックテーブルの上面形状は平坦でよく、環状補強部36を有するウエーハ2の裏面2bの形状にチャックテーブルの上面形状を対応させる必要がない。
【0033】
図6を参照して説明を続けると、分割工程では、まず、ウエーハ2の表面2aを上に向けて、ダイシング装置52のチャックテーブルの上面でウエーハ2を吸引保持する。次いで、分割予定ライン6をX軸方向に整合させると共に分割予定ライン6と切削ブレード58との位置合わせを行う。次いで、X軸方向に整合させた分割予定ライン6に、高速回転させた切削ブレード58の刃先を表面2aから切り込ませると共に、切削手段54に対してチャックテーブルを相対的にX軸方向に加工送りすることによって、分割予定ライン6に沿って分割溝60を形成する分割溝形成加工を施す。
【0034】
そして、分割予定ライン6のY軸方向の間隔の分だけ、チャックテーブルに対して切削ブレード58を相対的にY軸方向に割り出し送りと分割溝形成加工とを繰り返し、X軸方向に整合させた分割予定ライン6のすべてに沿って分割溝60を形成する。また、チャックテーブルを90度回転させた上で、割り出し送りしながら分割溝形成加工を繰り返し、先に分割溝60を形成した分割予定ライン6と直交する分割予定ライン6のすべてに沿って分割溝60を形成する。このようにして分割工程を実施し、分割予定ライン6に沿ってウエーハ2を個々のデバイス4ごとのデバイスチップに分割する。
【0035】
分割工程においては、上述のレーザー加工装置40を用いて、分割予定ライン6に沿ってパルスレーザー光線LBを照射し、ウエーハ2を個々のデバイスチップに分割してもよい。レーザー加工装置40を用いる場合は、図7に示すとおり、ウエーハ2に対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線LBの集光点を分割予定ライン6の内部に位置づけてパルスレーザー光線LBをウエーハ2に照射し、分割予定ライン6に沿ってウエーハ2の内部に格子状に改質層62を形成した後、ダイシングテープ48を拡張することによりウエーハ2に外力を付与して、ウエーハ2を個々のデバイスチップに分割することができる。
【0036】
分割工程を実施するためのレーザー加工装置は、上述のレーザー加工装置40に限定されず、ウエーハ2に対して吸収性を有する波長のレーザー光線の集光点をウエーハ2の表面2aに位置づけてレーザー光線をウエーハ2に照射し、アブレーション加工によって分割予定ライン6に沿って格子状に加工溝を形成するタイプのレーザー加工装置であってもよい。あるいは、ウエーハ2に対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を分割予定ライン6に位置づけてレーザー光線をウエーハ2に照射し、ウエーハ2の厚み方向に延びる細孔と細孔を囲繞する非晶質とを有するシールドトンネルを分割予定ライン6に沿って格子状に形成するタイプのレーザー加工装置を分割工程に用いることもできる。
【0037】
分割工程を実施した後、ダイシングテープ48からデバイスチップをピックアップするピックアップ工程を実施する。ピックアップ工程は、たとえば図8に一部を示すピックアップ装置64を用いて実施することができる。ピックアップ装置64は、ダイシングテープ48を拡張して、隣接するデバイスチップ同士の間隔を拡張する拡張手段66と、デバイスチップを吸着して搬送するピックアップコレット68とを備える。
【0038】
図8に示すとおり、拡張手段66は、円筒状の拡張ドラム70と、拡張ドラム70の周囲に配置された複数のエアシリンダ72と、エアシリンダ72のそれぞれの上端に連結された環状の保持部材74と、保持部材74の外周縁部に周方向に間隔をおいて配置された複数のクランプ76とを含む。拡張ドラム70の内径はウエーハ2の外径よりも大きく、拡張ドラム70の外径は環状フレーム50の内径よりも小さい。また、保持部材74の外径および内径は環状フレーム50の外径および内径に対応しており、保持部材74の平坦な上面に環状フレーム50が載せられるようになっている。
【0039】
各エアシリンダ72は、保持部材74の上面が拡張ドラム70の上端とほぼ同じ高さの基準位置と、保持部材74の上面が拡張ドラム70の上端よりも下方に位置する拡張位置との間で、拡張ドラム70に対して相対的に保持部材74を昇降させる。なお、図8には、保持部材74が基準位置に位置する場合における拡張ドラム70を実線で示し、保持部材74が拡張位置に位置する場合の拡張ドラム70を二点鎖線で示している。
【0040】
ピックアップコレット68は、水平方向および上下方向に移動自在に構成されている。ピックアップコレット68には吸引手段が接続されており、ピックアップコレット68の先端下面でデバイスチップを吸着する。
【0041】
図8を参照して説明を続けると、ピックアップ工程では、まず、個々のデバイスチップ78に分割されたウエーハ2を上に向けて、基準位置に位置する保持部材74の上面に環状フレーム50を載せる。次いで、複数のクランプ76で環状フレーム50を固定する。次いで、保持部材74を拡張位置に下降させることにより、ダイシングテープ48に放射状張力を作用させる。そうすると、図8に二点鎖線で示すとおり、ダイシングテープ48に貼着されているデバイスチップ78同士の間隔が拡張する。
【0042】
次いで、ピックアップ対象のデバイスチップ78の上方にピックアップコレット68を位置づける。次いで、ピックアップコレット68を下降させ、ピックアップコレット68の先端下面でデバイスチップ78の上面を吸着する。次いで、ピックアップコレット68を上昇させ、デバイスチップ78をダイシングテープ48から剥離しピックアップする。次いで、ピックアップしたデバイスチップ78をトレー等の所定の搬送位置に搬送する。そして、このようなピックアップ作業を全てのデバイスチップ78に対して順次行う。
【0043】
以上のとおりであり、図示の実施形態のウエーハの加工方法においては、環状補強部除去工程において、デバイス領域8に対応するウエーハ2の裏面2bと同一面になる位置に改質層46を形成し、改質層46から環状凸部36aを除去するので、環状補強部36よりも内側にデバイス領域8が厳密に制限されていなくてもウエーハ2の外周に位置するデバイス4が破損することがないと共に、環状補強部36を有するウエーハ2の裏面2bの形状に、分割工程で用いるチャックテーブルの上面形状を対応させる必要がない。
【符号の説明】
【0044】
2:ウエーハ
2a:ウエーハの表面
2b:ウエーハの裏面
4:デバイス
6:分割予定ライン
8:デバイス領域
10:外周余剰領域
14:保護部材
36:環状補強部
36a:環状凸部
38:金属膜
46:改質層
48:ダイシングテープ
78:デバイスチップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8