IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 小林製薬株式会社の特許一覧

特許7425111吸湿性成分を含有する錠剤及びその製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】吸湿性成分を含有する錠剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/198 20060101AFI20240123BHJP
   A61K 36/15 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 5/00 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 13/00 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
A61K31/198
A61K36/15
A61K47/36
A61K9/20
A61P5/00
A61P9/10 101
A61P13/00
A61P15/00
A61P17/00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022082433
(22)【出願日】2022-05-19
(62)【分割の表示】P 2017143664の分割
【原出願日】2017-07-25
(65)【公開番号】P2022103387
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2022-06-17
(31)【優先権主張番号】P 2017111720
(32)【優先日】2017-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】成谷 和政
【審査官】新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-176496(JP,A)
【文献】特開2014-047183(JP,A)
【文献】特開2012-001473(JP,A)
【文献】特開2014-150782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 36/00-36/9068
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 5/00
A61P 9/00
A61P 13/00
A61P 15/00
A61P 17/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の(A)及び(B)を含有する錠剤:
(A)次の成分(A-1)または(A-2)
(A-1松樹皮抽出物からなる吸湿性成分、
(A-2)アルギニン及びアスパラギン酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種ならびに松樹皮抽出物からなる吸湿性成分
(B)水分量が11~16質量%であるデンプン
ここで、該錠剤中、成分(A)1質量部に対して、成分(B)が0.2~2質量部である
(但し、コメデンプンならびに/またはエステル化デンプン、エーテル化デンプン、酸化デンプン、酸処理デンプン、漂白処理デンプン及び物理処理デンプンからなる群より選択される少なくとも1種のコメデンプン誘導体を含む錠剤を除く)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸湿性成分を含有する錠剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の成分を打錠して錠剤としたサプリメントや薬剤が広く知られており、その中の1つとして、アミノ酸や抽出物等を有効成分として含有するサプリメントや薬剤等が知られている。しかし、アミノ酸や抽出物等は一般的に吸湿性を有することが多く、このような吸湿性成分を打錠して錠剤を製造しようとしても、吸湿性成分が臼や杵に付着してうまく錠剤が成形されない現象(スティッキング)が生じるという問題があった。
【0003】
このような問題の解決方法として、例えば、打錠前に、吸湿性成分に水を添加する方法が知られている。しかし、該方法では、水を添加することによりダマが生じ、そのまま打錠しようとしてもうまく打錠できないという問題がある。また、例えば、吸湿性成分に水を添加し、次いで湿式造粒等により造粒物を製造し、得られた造粒物を打錠する方法が知られている(特許文献1)。しかし、該方法では、一旦、造粒物を製造する手順が必須となるため、コストや手間がかかる、生産速度が遅くなるといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-254580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、吸湿性成分を含有しながらもより簡便に製造できる錠剤及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者が前記課題に鑑み鋭意検討を行ったところ、アミノ酸や抽出物といった吸湿性成分と水分量が10質量%以上のデンプンとを混合して打錠することにより、造粒工程を経なくとも、打錠時のスティッキングを抑制できることを見出した。本発明は該知見に基づき更に検討を重ねることにより完成されたものであり、次に掲げるものである。
項1.次の(A)及び(B)を含有する錠剤:
(A)アミノ酸、その塩、これらの誘導体及び動植物抽出物からなる群より選択される少なくとも1種の吸湿性成分、
(B)水分量が10質量%以上であるデンプン。
項2.前記成分(A)が、アルギニン、アスパラギン酸ナトリウム、松樹皮抽出物及びオーク抽出物からなる群より選択される少なくとも1種である、項1に記載の錠剤。
項3.錠剤中、前記成分(A)1質量部に対して、前記成分(B)が0.15~3質量部である、項1または2に記載の錠剤。
項4.1錠剤あたり、前記成分(A)の含有量が1~300mgである、項1~3のいずれかに記載の錠剤。
項5.錠剤中、前記成分(A)の含有量が0.2~60質量%である、項1~4のいずれかに記載の錠剤。
項6.錠剤中、前記成分(B)の含有量が10~60質量%である、項1~5のいずれかに記載の錠剤。
項7.前記成分(B)の水分活性が0.6未満である、項1~6のいずれかに記載の錠剤。
項8.前記成分(B)が吸油量2.5ml/3gを超えるものである、項1~7のいずれかに記載の錠剤。
項9.更に、結晶セルロースを含有する、項1~8のいずれかに記載の錠剤。
項10.前記錠剤が造粒工程を経ることなく製造されるものである、項1~9のいずれかに記載の錠剤。
項11.前記錠剤が直打法により製造されるものである、項1~10のいずれかに記載の錠剤。
項12.錠剤の製造方法であって、
該錠剤は、(A)アミノ酸、その塩、これらの誘導体及び動植物抽出物からなる群より選択される少なくとも1種の吸湿性成分と、(B)水分量が10質量%以上であるデンプンとを含有し、
該成分(A)と該成分(B)とを造粒工程を経ることなく打錠することを特徴する、該錠剤の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、前記成分(A)と前記成分(B)とを組み合わせて用いることにより、打錠時のスティッキングの問題を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について説明する。
【0009】
本発明は、次の(A)及び(B)を含有する錠剤に関する。
(A)アミノ酸、その塩、これらの誘導体及び動植物抽出物からなる群より選択される少なくとも1種の吸湿性成分。
(B)水分量が10質量%以上であるデンプン。
【0010】
本発明において成分(A)は、アミノ酸、その塩、これらの誘導体及び動植物抽出物からなる群より選択される少なくとも1種の吸湿性成分である。
【0011】
成分(A)はこの限りにおいて制限されないが、アミノ酸としてアルギニン、アスパラギン酸、オルニチン、システイン、グルタミン酸、プロリン、リジン、ヒスチジン、メチオニン等が例示される。アミノ酸の塩として、アスパラギン酸ナトリウム、アスパラギン酸カリウム、グルタミン酸ナトリウムをはじめとするナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩やカルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、塩酸塩や硫酸塩等の無機酸塩、有機酸塩等が例示される。アミノ酸誘導体として、アセチルヒドロキシプロリン等が例示される。動植物抽出物は、動植物抽出物の原料となる動植物から、水、エタノール等の任意の溶媒を用いて得られる抽出物であり、該抽出物は、任意の溶媒を用いて得られた抽出液を濃縮、乾燥または粉末化等させた抽出物であってもよい。動植物抽出物として、コンドロイチン硫酸やその塩、フランス海岸松樹皮抽出物といった松樹皮抽出物、フランスオーク抽出物といったオーク抽出物等が例示される。
【0012】
成分(A)として市販品を用いてもよく、例えば、フランス海岸松樹皮抽出物の市販品としてピクノジェノール(ホーファーリサーチ社製)、フランスオーク抽出物の市販品としてロブビット(ホーファーリサーチ社製)が挙げられる。
【0013】
成分(A)として、好ましくは、アルギニン、アスパラギン酸ナトリウム、松樹皮抽出物、オーク抽出物が例示される。
【0014】
これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0015】
また、本発明において成分(A)は、大気中の水分を吸収しやすい性質を有するものといえ、好ましくは25℃、相対湿度75%の条件で7日間保存したときの重さの変化(増加)が水分の影響で実質的に増加するものが例示され、より好ましくは3質量%を超えるものが例示される。
【0016】
本発明において成分(A)の形態は制限されず、固形形態、半固形形態、液状形態のいずれであってもよいが、後述の通り、吸湿性を備えているにもかかわらず、造粒工程を経ることなく直打法により錠剤を製造可能である観点から、好ましくは粉末状が例示される。
【0017】
本発明の錠剤において成分(A)の含有量は制限されないが、錠剤中、その合計量として、好ましくは0.2~60質量%、より好ましくは20~60質量%、更に好ましくは40~60質量%が例示される。
【0018】
本発明の錠剤は、更に、(B)水分量が10質量%以上であるデンプンを含有する。ここで、水分量とは、成分(物質)中に含まれる水分量である。水分量は、第十六改正日本薬局方に準拠して、乾燥減量試験(105℃、10分)にて測定、算出される。
【0019】
成分(B)の水分量の上限は本発明の効果が得られる限り制限されないが、成分(B)として、好ましくは水分量が10~30質量%であるデンプン、より好ましくは水分量が10~25質量%であるデンプン、更に好ましくは水分量が10~20質量%であるデンプンが例示される。
【0020】
成分(B)はこの限りにおいて制限されないが、好ましくは水分活性0.6未満のものが例示される。水分活性は、成分中の自由水の割合を表す値であり、公知の指標である。水分活性は、第十七改正日本薬局方に準拠して、露点測定法(露点/冷却鏡法)を用いて25℃で測定される。
【0021】
成分(B)は、好ましくは多孔質であることが例示され、その目安として好ましくは吸油量が2.5ml/3gよりも大きいものが例示される。吸油量は、吸油量測定法(JIS K5101-13-1:2004)に準じて測定される吸油量であり、粉末状の成分
(B)3gに白絞油を滴下し、全体がパテ状になる白絞油の滴下量(ml)である。
【0022】
成分(B)として市販品を用いてもよく、例えば、市販品としてロンフードOWP(日澱化学工業社製)が挙げられる。
【0023】
本発明において成分(B)の形態は制限されず、固形形態、半固形形態、液状形態のいずれであってもよいが、後述の通り、吸湿性を備えているにもかかわらず、造粒工程を経ることなく直打法により錠剤を製造可能である観点から、好ましくは粉末状が例示される。
【0024】
本発明の錠剤において成分(B)の含有量は制限されないが、錠剤中、好ましくは10~60質量%、より好ましくは13~55質量%、更に好ましくは15~50質量%が例示される。
【0025】
また、本発明の錠剤中、成分(B)の含有量は制限されないが、成分(A)1質量部に対して成分(B)が、好ましくは0.15~3質量部、より好ましくは0.2~3質量部、更に好ましくは0.2~1.5質量部が例示される。
【0026】
本発明の錠剤には、必要に応じて薬学的または可食性の任意の他の成分を更に配合して
もよい。他の成分としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、保湿剤、吸着剤、滑沢剤、界面活性剤、吸収促進剤、充填剤、防腐剤、安定化剤、乳化剤、可溶化剤、任意の有用成分等が例示される。錠剤は、剤皮(コーティング)を施さない錠剤(素錠)であってもよく、必要に応じて剤皮を施した錠剤、例えば糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコーティング錠、二重錠、多層錠等であってもよい。他の成分は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよく、その含有量も目的等に応じて適宜決定すればよい。
【0027】
本発明においては、このように任意の他の成分を必要に応じて用いることができるが、錠剤の硬度を一層向上させる観点から、他の成分として結晶セルロールを更に含有することが好ましく例示される。錠剤に結晶セルロールを用いる場合、結晶セルロールの含有量は制限されないが、錠剤中、前記成分(B)1質量部に対して結晶セルロールが、好ましくは0.5~3質量部、より好ましくは1~2質量部が例示される。また、本発明の錠剤において、錠剤に結晶セルロールを用いる場合、結晶セルロールの含有量は制限されないが、錠剤中、好ましくは10~50質量%、より好ましくは20~40質量%が例示される。
【0028】
本発明の錠剤は、成分(A)と(B)とを、また、必要に応じて他の成分を混合し、得られた混合物を打錠することにより製造することができる。このことから本発明は、錠剤の製造方法であって、該錠剤は、(A)アミノ酸、その塩、これらの誘導体及び動植物抽出物からなる群より選択される少なくとも1種の吸湿性成分と、(B)水分量が10質量%以上であるデンプンとを含有し、該成分(A)と該成分(B)とを混合し、得られた混合物を打錠することを特徴とする、該錠剤の製造方法を提供するともいえる。
【0029】
本発明によれば、成分(B)を用いることにより、水の添加を必須としなくとも、また、造粒工程を経なくとも、成分(A)を含有する錠剤を容易に製造することができる。
【0030】
このことから、本発明は、特に、成分(A)と(B)とを含有し、水を添加する工程を経ることなく製造可能な錠剤を提供するともいえる。また、本発明は、成分(A)と(B)とを含有し、造粒工程を経ることなく製造可能な錠剤を提供するともいえる。すなわち、本発明は、成分(A)と(B)とを含有し、得られた混合物に対する直打法(直接粉末圧縮法)により製造可能な錠剤を提供するといえる。
【0031】
この観点から、本発明は、錠剤の製造方法であって、該錠剤は、(A)アミノ酸、その塩、これらの誘導体及び動植物抽出物からなる群より選択される少なくとも1種の吸湿性成分と、(B)水分量が10質量%以上であるデンプンとを含有し、該成分(A)と該成分(B)とを、水を添加することなく打錠することを特徴する、該錠剤の製造方法を提供するともいえる。また、本発明は、錠剤の製造方法であって、該錠剤は、(A)アミノ酸、その塩、これらの誘導体及び動植物抽出物からなる群より選択される少なくとも1種の吸湿性成分と、(B)水分量が10質量%以上であるデンプンとを含有し、該成分(A)と該成分(B)とを造粒工程を経ることなく打錠することを特徴する、該錠剤の製造方法を提供するともいえる。また、本発明は、錠剤の製造方法であって、該錠剤は、(A)アミノ酸、その塩、これらの誘導体及び動植物抽出物からなる群より選択される少なくとも1種の吸湿性成分と、(B)水分量が10質量%以上であるデンプンとを含有し、該成分(A)と該成分(B)とを混合し、得られた混合物を直接打錠することを特徴する、該錠剤の製造方法を提供するともいえる。
【0032】
本発明の錠剤は、その形状、大きさ等について制限されず、使用目的等に応じて適宜決定される。
【0033】
例えば、形状として丸型、楕円型、三角型、四角型等のあらゆる形状が挙げられる。錠剤1錠あたりの大きさの目安として、丸型の場合、直径20mm以下、好ましくは7~15mm程度が例示され、厚み20mm以下、好ましくは5~15mm程度が例示される。形状が丸型でない場合も、例えば楕円型の場合は、その長径と短径との合計値を2で除した値が前記直径程度の値であるなど、前記値を目安とした大きさが例示される。
【0034】
また、錠剤1錠あたりの重さとして、300~700mgが例示される。
【0035】
また、錠剤の硬度も制限されず、流通に耐え得る硬度を有していればよい。硬度として70N以上、好ましくは100N以上、より好ましくは100~300Nが例示される。錠剤の硬度は、ロードセル式錠剤硬度計(岡田精工社製)を用いて測定される。
【0036】
本発明の錠剤の摂取量も、含有成分の種類、その含有量、適用対象者の症状、年齢、性別、求める効果等に応じて適宜決定すればよく、通常1日1~3回に分けて経口摂取することが例示される。また、1錠剤中に含まれる前記成分(A)の含有量も制限されず、その含有量、適用の対象者の症状、年齢、性別、求める効果、摂取回数等に応じて適宜決定すればよく、1錠剤あたり、前記成分(A)が1~300mgが例示される。
【0037】
本発明によれば、成分(A)と(B)とを組み合わせて用いることにより、打錠時のスティッキングの問題を抑制できる。特に、成分(A)と(B)との混合物に水を添加しなくても、また、造粒工程を経なくとも、打錠時のスティッキングの問題を抑制できる。従って、本発明によれば、成分(A)と(B)とを混合し、得られた混合物をそのまま直打法により打錠して錠剤を得ることが可能であり、前記吸湿性成分を含有する所望の錠剤を簡便且つ効率良く得ることができる。
【0038】
本発明の錠剤は、該錠剤に含まれる成分に由来する各種有用作用を備えている。各成分に由来する有用作用は従来公知である。本発明を制限するものではないが、本発明の錠剤の有用作用として、各成分に由来する次の作用、例えば息切れ、動悸、頻脈、疲労感、だるさ、めまい、肩こり、耳鳴り、立ちくらみ、胸の痛み、倦怠感、太る、やせ、むくみ、かゆみ、しびれ、頭痛、頭が重い、目の疲れ、冷え、尿トラブル(頻尿、尿もれ、尿のキレ、残尿感等)、体の痛み(背部痛、肢痛、腰痛、関節痛、骨盤痛等)、胃もたれ、抜け毛、薄毛、ストレス、イライラ、不安、短気、恐怖、うつ、のぼせ、多汗、寝汗、意欲低下、記憶力低下、集中力低下、魅力低下、吐き気、食欲不振、喉の渇き、活力低下、免疫力低下、血管運動性症状、脂肪量増加、筋肉量低下、骨量低下、骨粗鬆症、代謝低下、メタボリックシンドローム、血管内皮機能低下、動脈硬化、血圧上昇、糖尿病、睡眠障害(寝つきの悪さ、目覚めの悪さ、寝不足感、中途覚醒、早朝覚醒、熟眠障害、不眠等)、性的障害(性的欲求低下、性的興奮低下、性的関心低下、勃起障害、潤滑低下、オルガスム低下、満足感低下、性嫌悪、疼痛、セクシャルウェルネス低下等)、物忘れ、体の不調、自律神経失調症、男性更年期症状、女性更年期症状、閉経期症状、婦人科系疾患、月経痛、子宮内膜症、アレルギー疾患、加齢男性性腺機能低下症候群をはじめとする加齢に伴う不調、肌あれやシワ等の肌機能低下、注意欠陥、多動性障害、喫煙者の酸化ストレス、風邪症状等の予防または抑制等、また、成長ホルモン合成、筋肉成長、骨成長、受精能等の促進等が挙げられる。
【0039】
このことから、本発明の錠剤は、これらの予防、抑制または促進等を目的として使用することができる。また、本発明の錠剤は、これらの症状等が気になる対象者に好ましく適用することができる。
【0040】
本発明を制限するものではないが、例えば前記(A)成分としてアルギニンを含有する場合、性的障害(性的欲求低下、性的興奮低下、性的関心低下、勃起障害、潤滑低下、オ
ルガスム低下、満足感低下、性嫌悪、疼痛、セクシャルウェルネス低下等)、活力低下、免疫力低下、疲労感、脂肪量増加、肌あれやシワ等の肌機能低下、糖尿病、血圧上昇、動脈硬化等の予防または抑制等、また、成長ホルモン合成促進、骨や筋肉の成長促進等の効果が例示される。このため、本発明の錠剤がアルギニンを含有する場合、該錠剤は、性的障害、活力低下、免疫力低下、疲労感、脂肪量増加、肌あれやシワ等の肌機能低下、糖尿病、血圧上昇、動脈硬化等の予防または抑制用錠剤、また、成長ホルモン合成、骨成長、筋肉成長等の促進用錠剤等と称することができる。また、このため、該錠剤は、その予防、抑制または促進等を求める対象者に対して、例えば性機能改善効果、全体的な活力向上、元気になる効果、更年期症状の改善、加齢男性性腺機能低下症候群をはじめとする加齢に伴う不調の改善等を求める対象者に対して、好ましく適用される。
【0041】
本発明を制限するものではないが、例えば前記(A)成分としてアスパラギン酸やその塩を含有する場合、活力低下、免疫力低下、疲労感、脂肪量増加、肌あれやシワ等の肌機能低下、糖尿病、血圧上昇、動脈硬化等の予防または抑制等、また、体調を整える、老廃物排出等の効果が例示される。このため、本発明の錠剤がアスパラギン酸及び/またはその塩を含有する場合、該錠剤は、活力低下、免疫力低下、疲労感、脂肪量増加、肌あれやシワ等の肌機能低下、糖尿病、血圧上昇、動脈硬化等の予防または抑制用錠剤等と称することができる。また、このため、該錠剤は、その予防や抑制等を求める対象者に対して、例えば性機能改善効果、全体的な活力向上、元気になる効果、更年期症状の改善、加齢男性性腺機能低下症候群をはじめとする加齢に伴う不調の改善等を求める対象者に対して、好ましく適用される。
【0042】
本発明を制限するものではないが、例えば前記(A)成分として松樹皮抽出物を含有する場合、性的障害(性的欲求低下、性的興奮低下、性的関心低下、勃起障害、潤滑低下、オルガスム低下、満足感低下、性嫌悪、疼痛、セクシャルウェルネス低下等)、活力低下、婦人科系疾患、血管内皮機能低下、動脈硬化、肌あれやシワ等の肌機能低下、疲労感、体の痛み(背部痛、肢痛、腰痛、関節痛、骨盤痛等)、尿トラブル(頻尿、尿もれ、尿のキレ、残尿感等)、喫煙者の酸化ストレス、風邪症状等の予防または抑制等の効果が例示される。このため、本発明の錠剤が松樹皮抽出物を含有する場合、該錠剤は、性的障害、活力低下、婦人科系疾患、動脈硬化、肌あれやシワ等の肌機能低下、疲労感、血管内皮機能低下、体の痛み、尿トラブル、喫煙者の酸化ストレス、風邪症状等の予防または抑制用錠剤等と称することができる。また、このため、該錠剤は、その予防や抑制等を求める対象者に対して、例えば性機能改善効果、全体的な活力向上、元気になる効果、更年期症状の改善、加齢男性性腺機能低下症候群をはじめとする加齢に伴う不調の改善等を求める対象者に対して、好ましく適用される。
【0043】
本発明を制限するものではないが、例えば前記(A)成分としてオーク抽出物を含有する場合、活力低下、肌あれやシワ等の肌機能低下、息切れ、動悸、頻脈、疲労感、だるさ、めまい、肩こり、耳鳴り、立ちくらみ、胸の痛み、倦怠感、太る、やせ、むくみ、かゆみ、しびれ、頭痛、頭が重い、目の疲れ、冷え、ストレス、イライラ、不安、短気、恐怖、うつ、のぼせ、多汗、寝汗、意欲低下、記憶力低下、集中力低下、魅力低下等の予防または抑制等の効果が例示される。このため、本発明の錠剤がオーク抽出物を含有する場合、該錠剤は、活力低下、肌あれやシワ等の肌機能低下、息切れ、動悸、頻脈、疲労感、だるさ、めまい、肩こり、耳鳴り、立ちくらみ、胸の痛み、倦怠感、太る、やせ、むくみ、かゆみ、しびれ、頭痛、頭が重い、目の疲れ、冷え、ストレス、イライラ、不安、短気、恐怖、うつ、のぼせ、多汗、寝汗、意欲低下、記憶力低下、集中力低下、魅力低下等の予防または抑制用錠剤等と称することができる。また、このため、該錠剤は、その予防や抑制等を求める対象者に対して、好ましく適用される。
【実施例
【0044】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0045】
試験例1
次の表1に従って各成分(粉末)を所定量で混合し、得られた混合物600mgを打錠機(静圧プレス機、臼杵の形状:15φ、糖衣R、圧力:1300kg、圧をかける時間:6秒)を用いて直打法(直接粉末圧縮法)にて打錠した(実施例1及び比較例1~8)。
【0046】
打錠時、混合物が臼や杵へ付着してスティッキングが生じるか否かを観察した。表1中、スティッキングが認められなかった場合を「○」、スティッキングが認められた場合を「×」で示す。結果を表1に示す。
【0047】
なお、表1中、デンプン3は多孔質構造を有し、吸油量は3ml/3gであった。吸油量は、吸油量測定法(JIS K5101-13-1:2004)に準じて、デンプン3
(粉末状)3gに白絞油を滴下し、全体がパテ状になる白絞油の滴下量(ml)を測定した。
【0048】
【表1】
【0049】
表1から明らかなように、アルギニン、アスパラギン酸ナトリウム、フランス海岸松樹皮抽出物及びフランスオーク抽出物(吸湿性成分、表中、成分(A))と共にデンプン3を用いた場合(実施例1)は、打錠時にスティッキングが認められなかった。これに対して、これらの成分と共に、デンプン3に代えて、還元麦芽糖水飴、還元パラチノース、結晶セルロース、デキストリン1~3、デンプン1またはデンプン2を用いた場合(比較例1~8)は、打錠時にスティッキングが認められた。
【0050】
実施例1で用いたデンプン3と、比較例1~8において使用した還元麦芽糖水飴、還元パラチノース、結晶セルロース、デキストリン1~3、デンプン1、デンプン2とは、これらの成分に含まれる水分量の点で主に異なっており、表1に示す通り、比較例1~8で使用したこれらの成分の水分量は7質量%以下であったが、実施例1で用いたデンプン3の水分量はこれらの成分の水分量を上回っており11~16質量%であった。
【0051】
このように、吸湿性成分と共に、デンプン3のような水分量が高いデンプンを用いることにより、吸湿性成分を含んでいるにもかかわらず、造粒工程を経ることなく、直打法によってスティッキングを抑制できるようになり、これにより吸湿性成分を含む錠剤を一層効率良く製造できることが確認された。
【0052】
なお、表1に示す錠剤はフランス海岸末樹皮抽出物、アルギニン、アスパラギン酸ナトリウム及びフランスオーク抽出物を含み、これらの成分に起因する有用作用を有する。該有用作用として、性的障害、活力低下、婦人科系疾患、動脈硬化、肌機能低下、疲労感、ストレス、睡眠障害、風邪症状、尿トラブル、更年期障害等の予防または抑制等が例示される。従って、該錠剤は、例えば、性的障害、活力低下、婦人科系疾患、動脈硬化、肌機能低下、疲労感、ストレス、睡眠障害、風邪症状、尿トラブル、更年期障害等の予防または抑制用錠剤等と称することができる。該錠剤は、その予防や抑制等を求める対象者に対して、例えば性機能改善効果、全体的な活力向上、元気になる効果、更年期症状の改善、加齢男性性腺機能低下症候群をはじめとする加齢に伴う不調の改善等を求める対象者に対して、好ましく適用される。
【0053】
試験例2
前記試験例の通り、水分量の相違によりスティッキングの有無が異なったことから、前記比較例7及び8(それぞれデンプン1、2を使用)で得られた混合物に、前記実施例1のデンプン3を用いた混合物の水分量(水分値)と計算上同値になるように、水を添加して、スティッキングが抑制されるかどうかについて確認した。
【0054】
実施例1で得られた混合物と水分値を同値にするためには、比較例7及び8の混合物にその5質量%程度の水を添加する必要があった。そこで、前記比較例7及び8の混合物に5質量%の水を添加したところ、水が混合物全体に均一に行き届かずダマが発生し、また、吸湿性の高いアルギニンの水への溶解が生じ、均一な混合物を得ることすらできず、打錠には不向きな混合物となった。
【0055】
このように、水を添加して混合物中の水分量を調整すればスティッキングが抑制される訳ではなく、前記実施例1のように水分量が高いデンプンを用いることが重要であることが確認された。
【0056】
試験例3
次の表2に従って各成分(粉末)を所定量で混合し、得られた混合物を打錠機(静圧プレス機、臼杵の形状:15×8mmまたは13×7mm、圧力:1300kg、圧をかける時間:6秒)を用いて直打法にて打錠した(実施例1~5)。表中の各成分は、試験例
1で用いた各成分と同じである。
【0057】
スティッキングの有無は、試験例1と同様にして観察、評価した。錠剤の硬度は、ロードセル式錠剤硬度計(岡田精工社製)を用いて測定した。錠剤の大きさは、使用した臼杵の通り、15×8mmまたは13×7mm(長径×短径)である。結果を表2に示す。
【0058】
なお、表2中、実施例2は、デンプン3、微粒酸化ケイ素及びステアリン酸カルシウム(以下、賦形剤ともいう)の合計量を実施例1よりも低減させた錠剤(3/4に低減)である。実施例3は、実施例1においてデンプン3の一部を結晶セルロールに置き換えた錠剤である。実施例4及び5は、賦形剤の合計量を実施例1よりも低減させ(3/4または1/2に低減)、且つ、デンプン3の一部を結晶セルロールに置き換えた錠剤である。
【0059】
【表2】
【0060】
表2から明らかなように、実施例2~5においても、実施例1と同様に、スティッキングが認められなかった。また、実施例2から明らかなように、実施例1において賦形剤の量を低減させた場合であっても、スティッキングが抑制された良好な錠剤を容易に得ることができた。また、実施例1においてデンプン3の一部を結晶セルロールに置き換えた実施例3でもスティッキングが抑制され、また、実施例1と比較して錠剤の硬度を高めることができた。同様に、実施例2においてデンプン3の一部を結晶セルロールに置き換えた実施例4でもスティッキングが抑制され、また、実施例2と比較して錠剤の硬度を高めることができた。また、実施例1において賦形剤の量を一層低減させ、更にその一部を結晶セルロールに置き代えた実施例5でも、スティッキングが抑制された良好な錠剤を容易に得ることができた。
【0061】
このことからも、吸湿性成分と共に、デンプン3のように水分量が高いデンプンを用いることにより、吸湿性成分を含んでいるにもかかわらず造粒工程を経ることなく、直打法によって、スティッキングを抑制して、一層効率良く錠剤を製造できることが確認された。
【0062】
また、実施例1と3の結果や実施例2と4の結果から理解できる通り、水分量が高いデンプンと結晶セルロースとの組み合わせによれば、錠剤の硬度を効率良く高めることができた。また、実施例1~5から明らかなように、水分量が高いデンプンによれば、また、水分量が高いデンプンと結晶セルロースとの併用によれば、錠剤の大きさも適宜変更できることが分かった。
【0063】
このことから、水分量が高いデンプンを用いることにより、また、水分量が高いデンプンと結晶セルロールとを併用することにより、吸湿性成分を含んでいるにもかかわらず、スティッキングの問題を抑制して、所望の錠剤を簡便に製造できることが確認された。また、必要以上に賦形剤の含有量を増加させることなく、所望の錠剤を簡便に製造できることが確認された。