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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-22
(45)【発行日】2024-01-30
(54)【発明の名称】試料片移設装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/28 20060101AFI20240123BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20240123BHJP
   G01N 1/32 20060101ALN20240123BHJP
【FI】
G01N1/28 F
H01L21/66 N
G01N1/32 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022578053
(86)(22)【出願日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 JP2021039006
(87)【国際公開番号】W WO2022163042
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-03-14
(31)【優先権主張番号】P 2021012693
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503460323
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクサイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】麻畑 達也
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-141620(JP,A)
【文献】特開2010-10146(JP,A)
【文献】特開2009-14734(JP,A)
【文献】特開2006-84484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00-1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料片が形成された試料から前記試料片を試料片ホルダに搬送する試料片搬送機構と、
荷電粒子ビーム装置によって荷電粒子ビームを前記試料に照射することによって前記試料片を作製する加工に関する情報に基づき、前記試料片搬送機構を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置によって制御される前記試料片搬送機構は、前記試料片を前記試料から分離及び摘出して、前記試料片を保持して前記試料片ホルダに搬送する、ことを特徴とする試料片移設装置。
【請求項2】
前記試料片が形成された前記試料及び前記試料片ホルダの各々を保持するステージと、
前記ステージを移動させるステージ駆動機構と、
光源から発する所定光を分割して観察対象及び参照面に照射するとともに、前記観察対象からの反射光と前記参照面からの反射光とを合成して、2つの前記反射光の干渉状態を示す合成光を結像させる光学系と、
前記光学系によって結像された像を撮像して得られる画像の信号を出力する撮像装置と、
前記光学系と前記ステージとの間の距離を変化させるように前記光学系を前記ステージに対して移動させる光学系駆動機構と、
を備え、
前記制御装置は、前記加工に関する情報と、前記撮像装置が出力する前記画像にて検出する前記干渉状態とに基づき、前記試料片搬送機構、前記ステージ駆動機構及び前記光学系駆動機構を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の試料片移設装置。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記光学系駆動機構によって前記光学系を移動させながら前記画像にて検出される干渉縞の強度又はコントラストが最大となる場合の前記光学系の実空間での位置を示す座標データに応じて前記観察対象の位置を検知する、
ことを特徴とする請求項2に記載の試料片移設装置。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記干渉縞の分布に応じて前記観察対象の位置を検知する、ことを特徴とする請求項3に記載の試料片移設装置。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記試料片搬送機構の駆動時に前記撮像装置が出力する前記画像にて検出される前記干渉縞に歪みが生じた場合に、前記試料片搬送機構の試料片保持部又は前記試料片保持部によって保持される前記試料片と前記観察対象とが接触したと判定する、ことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の試料片移設装置。
【請求項6】
前記光学系によって結像された像を撮像する前記撮像装置である第1撮像装置と、
前記観察対象を撮像して得られる画像の信号を出力する第2撮像装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記第2撮像装置が出力する前記画像にて検出される基準マークの位置情報に応じて前記観察対象の位置を検知する、
ことを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の試料片移設装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料片移設装置に関する。
本願は、2021年1月29日に、日本に出願された特願2021-012693号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウェハ状の試料に電子又はイオンの荷電粒子ビームを照射することによって透過型電子顕微鏡による観察用の試料片を作製し、マニピュレータに装着されたプローブによって試料から試料片を摘出するとともに試料片をメッシュ上に載置する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-141620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術に係る装置では、微細な試料片を試料からメッシュ上に移設する際に、試料片の破損を防ぎつつ精度よく所定の移設動作を実行することが望まれている。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、試料片の破損を防ぎつつ精度よく所定の移設動作を実行することが可能な試料片移設装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明に係る試料片移設装置は、試料片が形成された試料から前記試料片を試料片ホルダに搬送する試料片搬送機構と、荷電粒子ビーム装置によって荷電粒子ビームを前記試料に照射することによって前記試料片を作製する加工に関する情報に基づき、前記試料片搬送機構を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置によって制御される前記試料片搬送機構は、前記試料片を前記試料から分離及び摘出して、前記試料片を保持して前記試料片ホルダに搬送する。
【0007】
上記構成は、前記試料片が形成された前記試料及び前記試料片ホルダの各々を保持するステージと、前記ステージを移動させるステージ駆動機構と、光源から発する所定光を分割して観察対象及び参照面に照射するとともに、前記観察対象からの反射光と前記参照面からの反射光とを合成して、2つの前記反射光の干渉状態を示す合成光を結像させる光学系と、前記光学系によって結像された像を撮像して得られる画像の信号を出力する撮像装置と、前記光学系と前記ステージとの間の距離を変化させるように前記光学系を前記ステージに対して移動させる光学系駆動機構と、を備え、前記制御装置は、前記加工に関する情報と、前記撮像装置が出力する前記画像にて検出する前記干渉状態とに基づき、前記試料片搬送機構、前記ステージ駆動機構及び前記光学系駆動機構を制御してもよい。
【0008】
上記構成では、前記制御装置は、前記光学系駆動機構によって前記光学系を移動させながら前記画像にて検出される干渉縞の強度又はコントラストが最大となる場合の前記光学系の実空間での位置を示す座標データに応じて前記観察対象の位置を検知してもよい。
【0009】
上記構成では、前記制御装置は、前記干渉縞の分布に応じて前記観察対象の位置を検知してもよい。
【0010】
上記構成では、前記制御装置は、前記試料片搬送機構の駆動時に前記撮像装置が出力する前記画像にて検出される前記干渉縞に歪みが生じた場合に、前記試料片搬送機構の試料片保持部又は前記試料片保持部によって保持される前記試料片と前記観察対象とが接触したと判定してもよい。
【0011】
上記構成は、前記光学系によって結像された像を撮像する前記撮像装置である第1撮像装置と、前記観察対象を撮像して得られる画像の信号を出力する第2撮像装置と、を備え、前記制御装置は、前記第2撮像装置が出力する前記画像にて検出される基準マークの位置情報に応じて前記観察対象の位置を検知してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、試料片を作製する加工に関する情報に基づき、試料片搬送機構を制御する制御装置を備えることによって、試料片の破損を防ぎつつ精度よく所定の移設動作を実行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る試料片移設装置を備える薄片試料観察システムの構成図。
図2】本発明の実施形態に係る試料片移設装置での試料及び試料片を示す平面図。
図3】本発明の実施形態に係る試料片移設装置での試料片ホルダを示す平面図。
図4】本発明の実施形態に係る試料片移設装置の構成図。
図5】本発明の実施形態に係る光干渉計測装置の構成を模式的に示す図。
図6】本発明の実施形態に係る試料片移設装置の動作を示すフローチャート。
図7】本発明の実施形態に係る試料片移設装置の試料及び試料片の顕微鏡像でのフォーカスの状態及び干渉縞の例を示す図。
図8】本発明の実施形態に係る試料片移設装置でのピンセットのアームの顕微鏡像でのフォーカスの状態及び干渉縞の例を示す図。
図9】本発明の実施形態に係る試料片移設装置でのピンセットのアーム及び試料片の顕微鏡像でのフォーカスの状態及び干渉縞の例を示す図であって、ピンセットのアームが試料片に接近する状態の図。
図10】本発明の実施形態に係る試料片移設装置でのピンセットのアーム及び試料片の顕微鏡像でのフォーカスの状態及び干渉縞の例を示す図であって、ピンセットのアームが試料片を保持する状態の図。
図11】本発明の実施形態に係る試料片移設装置でのピンセットのアーム及び試料片の顕微鏡像でのフォーカスの状態及び干渉縞の例を示す図であって、試料片を保持するピンセットのアームが試料から退避する状態の図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係る自動で試料片Qを移設する試料片移設装置10について添付図面を参照しながら説明する。
図1は、実施形態に係る試料片移設装置10を備える薄片試料観察システム1の構成図である。
図1に示すように、実施形態に係る試料片移設装置10は、例えば、薄片試料観察システム1に備えられる。薄片試料観察システム1は、複数の荷電粒子ビーム装置3と、複数の透過電子顕微鏡5と、レシピ情報生成装置7と、複数の試料片移設装置10とを備える。
【0015】
荷電粒子ビーム装置3は、例えばシリコン等の半導体によるウェハ状の試料(試料基板等)Sから透過電子顕微鏡5による透過観察に適した所望の厚さの試料片Qを形成する加工を行う。荷電粒子ビーム装置3は、例えば、照射対象に集束イオンビームを照射する集束イオンビーム照射光学系、照射対象に電子ビームを照射する電子ビーム照射光学系及び照射対象にエッチング用ガス又はデポジション用ガスを供給するガス供給部等を備える。荷電粒子ビーム装置3は、照射対象の表面に集束イオンビームを走査しながら照射することによって、被照射部の画像化及びスパッタリングによる各種の加工(例えば、掘削加工及びトリミング加工等)と、デポジション膜の形成となどを実行する。
【0016】
荷電粒子ビーム装置3は、照射対象の表面に集束イオンビーム又は電子ビームを走査しながら照射することによって、照射対象表面の観察用の画像を取得する。照射対象の画像は、例えば、SIM画像若しくはSEM画像又は吸収電流画像等である。SIM画像又はSEM画像は、集束イオンビーム又は電子ビームの照射によって照射対象から発生する二次荷電粒子(例えば、二次電子又は二次イオン)に基づく画像である。吸収電流画像は、照射対象に流入する荷電粒子ビームの流入電流(又は照射対象に吸収される荷電粒子ビームの吸収電流)に基づく画像である。
【0017】
エッチング用ガスは、集束イオンビームによる照射対象のエッチングを照射対象の材質に応じて選択的に促進する。デポジション用ガスは、照射対象の表面に金属又は絶縁体等の堆積物によるデポジション膜を形成する。デポジション膜は、荷電粒子ビームの照射とともにガス供給部から供給されるデポジション用ガスから分解される固体成分が照射対象の表面に堆積することによって形成される。
【0018】
図2は、実施形態に係る試料片移設装置10での試料S及び試料片Qを示す平面図である。
図2に示すように、荷電粒子ビーム装置3は、試料Sの表面(斜線部)に集束イオンビームを照射することによって試料片Q(試料Sから摘出される前の試料片Q)を形成する。荷電粒子ビーム装置3は、集束イオンビームの走査範囲を示す加工枠Fの内側の加工領域H(白色部)を、集束イオンビームの照射によるスパッタ加工によって掘削する。荷電粒子ビーム装置3は、試料片Qを形成する位置(つまり、掘削せずに残す位置)を指示するレファレンスマーク(基準点)Refに基づいて試料片Qを形成する。レファレンスマークRefは、例えば、集束イオンビームの照射によって微細穴が形成された所定形状のデポジション膜等である。例えば、荷電粒子ビーム装置3は、レファレンスマークRefのデポジション膜によって試料片Qの概略の位置を把握し、レファレンスマークRefの微細穴によって試料片Qの精密な位置合わせを行う。
【0019】
試料片Qは、例えば、試料Sに接続される支持部Qaを残して側部側及び底部側の周辺部が削り込まれて除去されるようにエッチング加工されている。試料片Qは、支持部Qaによって試料Sに片持ち支持されている。支持部Qaには適宜の深さの切り込みが形成されていることによって、試料片Qが試料Sから分離され易くなっている。
試料片Qが形成された試料Sは、例えば、正面開口式の一体型ポッド等の搬送及び保管用の容器に収容されて荷電粒子ビーム装置3から試料片移設装置10に移送される。
【0020】
透過電子顕微鏡5は、試料片移設装置10から試料片ホルダPとともに移送される試料片Qの透過観察を行う。
図3は、実施形態に係る試料片移設装置10での試料片ホルダPを示す平面図である。
図3に示すように、試料片ホルダPは、例えば、円環板状のグリッド枠P1と、グリッド枠P1の内側に設けられるメッシュP2とを備える。試料片ホルダPは、例えば、メッシュP2上に設けられる支持膜(図示略)を備えてもよい。試料片ホルダPには、例えば適宜の形状の貫通孔等による基準マークPa(第1基準マークPa1及び第2基準マークPa2等)が形成されている。
試料片Qを保持する試料片ホルダPは、例えば、適宜の容器に収容されて試料片移設装置10から透過電子顕微鏡5に移送される。
【0021】
レシピ情報生成装置7は、例えば、荷電粒子ビーム装置3による試料片Qの作製に関する情報(加工用レシピ)、透過電子顕微鏡5による試料片Qの透過観察に関する情報(観察用レシピ)及び試料片移設装置10による試料片Qの移設に関する情報(移設用レシピ)等を含むレシピ情報を生成及び記憶する。
加工用レシピは、試料Sから試料片Qを作製する工程及び条件等の情報を備える。例えば、加工用レシピは、試料SでのレファレンスマークRefと試料片Qとの相対位置等の荷電粒子ビーム装置3の各種加工位置の座標に基づく試料片Qの位置の情報及び試料片Qが形成される加工領域Hの深さ等の試料片Qの寸法の情報を備える。
移設用レシピは、試料片Qを試料Sから試料片ホルダPに移設する工程及び条件等の情報を備える。例えば、移設用レシピは、試料Sを収容する容器の識別情報、試料Sの識別情報、試料片Qの作製の成否情報、荷電粒子ビーム装置3及び試料片移設装置10の各ステージ座標の相対関係の情報、後述する試料台31のステージ31aと試料片搬送装置13のピンセット81の一対のアーム81aとの各座標の相対関係の情報、加工用レシピでの試料片Qの位置及び寸法の情報、試料片ホルダPの識別情報並びに試料片ホルダPでの試料片Qの取り付け位置の情報を備える。
観察用レシピは、試料片Qの透過観察の工程及び条件等の情報を備える。例えば、観察用レシピは、試料片ホルダPを収容する容器の識別情報、試料片ホルダPの識別情報、試料片ホルダPでの試料片Qの取り付け位置及び表裏など姿勢の情報並びに透過電子顕微鏡5及び試料片移設装置10の各ステージ座標の相対関係の情報を備える。
【0022】
レシピ情報生成装置7は、例えば、荷電粒子ビーム装置3及び試料片移設装置10の各々から得られる画像データをレシピ情報とともに記憶する。
荷電粒子ビーム装置3からの画像データは、例えば、試料Sでの試料片Qの作製が完了した後に試料Sを含む適宜の領域に集束イオンビーム又は電子ビームを走査しながら照射することによって取得される観察用の画像(つまり、SIM画像又はSEM画像)である。試料片移設装置10からの画像データは、例えば、試料片ホルダPに取り付けられた試料片Qの顕微鏡像等である。
【0023】
図4は、実施形態に係る試料片移設装置10の構成図である。図5は、実施形態に係る光干渉計測装置11の構成を模式的に示す図である。
図4に示すように、試料片移設装置10は、例えば、光干渉計測装置11と、試料片搬送装置13と、ロードポート15と、試料搬送装置17と、試料片ホルダ搬送装置19とを備える。試料片移設装置10は、試料片移設装置10の動作を統合的に制御する制御装置21と、制御装置21に接続される入力装置23及び表示装置25とを備える。
【0024】
なお、以下において、3次元空間で互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸の各軸方向は各軸に平行な方向である。例えば、Z軸方向は試料片移設装置10の上下方向(例えば、鉛直方向など)に平行である。X軸方向及びY軸方向は、試料片移設装置10の上下方向に直交する基準面(例えば、水平面など)に平行である。
【0025】
光干渉計測装置11は、例えばリニーク型の白色干渉顕微鏡である。光干渉計測装置11は、例えば、試料台31と、鏡筒33と、鏡筒駆動機構35とを備える。
試料台31は、試料Sを支持するステージ31aと、ステージ31aを2次元的に並進及び回転させるステージ駆動機構31bとを備える。
ステージ駆動機構31bは、例えば、X軸及びY軸の各軸方向に沿ってステージ31aを並進させる。また、ステージ駆動機構31bは、Z軸の軸方向に沿ってステージ31aを並進させる機構を備えてもよい。ステージ駆動機構31bは、例えば、所定の回転軸及び傾斜軸の各軸周りに適宜の角度でステージ31aを回転させる。回転軸は、ステージ31aに対して相対的に設定され、ステージ31aが傾斜軸の軸周りの所定基準位置である場合に、試料片移設装置10の上下方向に平行である。傾斜軸は、試料片移設装置10の上下方向に直交する方向に平行である。ステージ駆動機構31bは、試料片移設装置10の動作モードなどに応じて制御装置21から出力される制御信号によって制御される。
【0026】
図4及び図5に示すように、鏡筒33は、例えば、相互に直交して一体的に接続される光源鏡筒41及び観察鏡筒43を備える。例えば、光源鏡筒41はX軸方向に沿って延び、観察鏡筒43はZ軸方向に沿って延びる。
光源鏡筒41は、例えば、光源51と、フィルタ53とを備える。光源51は、例えば白色光源である。フィルタ53は、例えば、バンドパスフィルタ等の波長フィルタ及び偏光フィルタ等である。
観察鏡筒43は、例えば、第1ビームスプリッタ61及び第2ビームスプリッタ63と、第1対物レンズ65及び第2対物レンズ67と、反射鏡69と、結像レンズ71と、観察用カメラ73と、位置調整用カメラ75とを備える。
【0027】
第1ビームスプリッタ61は、例えば光源鏡筒41及び観察鏡筒43の相互の中心軸が交差する位置等の光源鏡筒41及び観察鏡筒43の接続部に配置される。第1ビームスプリッタ61は、光源51からフィルタ53を通過して進行する照射光L0を、観察鏡筒43の両端のうち観察対象側の第1端部43aに向かって(つまり、後述する第1対物レンズ65に向かって)反射する。
第1ビームスプリッタ61は、後述する第2ビームスプリッタ63からの反射光L1,L2(合成光)を、観察鏡筒43の両端のうち観察用カメラ73側の第2端部43bに向かって進行させる。
【0028】
第2ビームスプリッタ63は、第1ビームスプリッタ61と第1対物レンズ65との間に配置される。第2ビームスプリッタ63は、第1ビームスプリッタ61からの照射光L0を観察鏡筒43の中心軸に沿った第1方向と、観察鏡筒43の中心軸に直交する第2方向とに分離する。第1方向は、例えばZ軸方向であって、後述する第1対物レンズ65に向かう方向である。第2方向は、例えばX軸方向であって、後述する第2対物レンズ67に向かう方向である。
第2ビームスプリッタ63は、後述する観察対象からの反射光L1と反射鏡69からの反射光L2とを重ね合わせて得られる合成光を、観察鏡筒43の第2端部43bに向かって進行させる。合成光の干渉状態は、観察対象からの反射光L1と反射鏡69からの反射光L2との光路差に応じて変化する。
【0029】
第1対物レンズ65は、観察鏡筒43の第1端部43aに配置される。第1対物レンズ65は、第2ビームスプリッタ63から第1方向に沿って進行(透過)する照射光L0を観察対象(例えば、試料S、試料片Q及び後述するピンセット81の一対のアーム81a等)に集束させる。
第2対物レンズ67は、第2ビームスプリッタ63から第2方向に沿って適宜に離れて配置される。第2対物レンズ67は、第2ビームスプリッタ63から第2方向に沿って進行(反射)する照射光L0を反射鏡69に集束させる。
反射鏡69は、第2対物レンズ67から第2方向に沿って適宜に離れて配置される。反射鏡69は、所定精度で滑らかに形成された表面の参照面69Aを備える。反射鏡69は、第2対物レンズ67からの照射光L0を参照面69Aによって第2ビームスプリッタ63に向かって反射する。
【0030】
結像レンズ71は、第1ビームスプリッタ61と観察用カメラ73との間に配置される。結像レンズ71は、第1ビームスプリッタ61からの合成光を結像することによって干渉縞の画像を形成する。
観察用カメラ73は、観察鏡筒43の第2端部43bに配置される。観察用カメラ73は、結像レンズ71によって形成された合成光の干渉縞を撮像して、撮像により得られる画像(顕微鏡像)の信号を出力する。
位置調整用カメラ75は、例えばステージ31a上に配置される試料S及び試料片ホルダP等を撮像して、撮像により得られる画像の信号を出力する。
【0031】
鏡筒駆動機構35は、例えば、Z軸の軸方向に沿って鏡筒33を並進させることによって、試料台31と鏡筒33との間のZ軸方向の距離(つまり観察対象に対する第1対物レンズ65のZ軸方向の相対位置)を変化させる。鏡筒駆動機構35は、例えば、粗調整用のモータ35a及び微調整用のピエゾアクチュエータ35b等を備える。
【0032】
光干渉計測装置11は、白色光による二光束干渉によって観察対象の実空間での位置及び三次元形状の情報を取得する。第2ビームスプリッタ63にて合成される観察対象からの反射光L1と反射鏡69からの反射光L2との光路差は、2つの反射光L1,L2の合成により得られる合成光の干渉状態を変化させる。合成光は、観察対象からの反射光L1と反射鏡69からの反射光L2との位相が一致する場合に強め合い(明るくなり)、位相が一致しない場合に弱め合う(暗くなる)明暗像の干渉縞を生じさせる。反射鏡69の参照面69Aは滑らかに形成されているので、干渉縞は観察対象の表面の凹凸等の三次元形状の情報を示す。干渉縞の間隔は光源51からの照射光L0の波長に依存して一定の光路差を示すことから、干渉縞の分布(例えば、干渉縞の数など)は観察対象の表面の高低差に対応する。
光干渉計測装置11では、第2対物レンズ67と反射鏡69との相対位置が固定されていることに対して、第1対物レンズ65と観察対象との相対位置は鏡筒駆動機構35の駆動によって変化する。鏡筒駆動機構35の駆動によって第1対物レンズ65がZ軸方向に変位することによって、観察対象でのフォーカス位置(つまり、顕微鏡像にて観測される干渉縞の強度又はコントラストが最大となる位置)が調整される。観察対象のフォーカス位置のZ軸方向での位置(Z位置)は、第1対物レンズ65(又は鏡筒33)の実空間での位置を示す座標データ(Z軸座標)に対応付けられる。
【0033】
試料片搬送装置13は、例えば、試料片保持部であるピンセット81と、ピンセット駆動機構83とを備える。ピンセット81は一対のアーム81aによって試料片Qを厚さ方向の両側から挟み込んで把持する。ピンセット81の一対のアーム81aは、試料Sから試料片Qを摘出するとともに、試料片Qを試料片ホルダPに移設する。なお、試料片保持部は、ピンセット81に限らず、例えばガラス又は金属のプローブ等であってもよい。例えば、プローブは静電気力等によって試料片Qを吸着する。
ピンセット駆動機構83は、光干渉計測装置11のステージ31aに対してピンセット81を3次元的に変位させるとともに、一対のアーム81aを開閉させる。ピンセット駆動機構83は、例えば、ピンセット81の一対のアーム81aをステージ31aの表面に対して所定角度範囲で傾斜させた状態でX軸、Y軸及びZ軸の各軸方向に並進させる。ピンセット駆動機構83は、適宜の回転軸の軸周りにピンセット81の一対のアーム81aを回転させてもよい。
【0034】
ロードポート15は、例えば正面開口式の一体型ポッド等の試料Sを収容する容器を支持するとともに、容器の蓋を開放することによって内部の試料Sを露出させる。
試料搬送装置17は、例えば試料Sの搬送用ロボット等である。試料搬送装置17は、試料Sをロードポート15に支持された容器とステージ31aの所定位置(例えば、観察鏡筒43の中心軸の軸線と交差する中心位置等)との間で搬送する。試料搬送装置17は、ロードポート15に支持された容器から試料Sを取り出して、試料Sをステージ31aの所定位置に設置する。
試料片ホルダ搬送装置19は、例えば試料片ホルダPの搬送用ロボット等である。試料片ホルダ搬送装置19は、試料片ホルダPを支持部(図示略)に配置された搬送用の容器とステージ31aの所定の位置との間で搬送する。試料片ホルダ搬送装置19は、支持部に配置された搬送用の容器から試料片ホルダPを取り出して、試料片ホルダPをステージ31aの所定の位置に設置する。
【0035】
制御装置21は、例えば、入力装置23から出力される信号又は予め設定された自動運転制御処理によって生成される信号等によって、試料片移設装置10の動作を統合的に制御する。
制御装置21は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサによって所定のプログラムが実行されることにより機能するソフトウェア機能部である。ソフトウェア機能部は、CPUなどのプロセッサ、プログラムを格納するROM(Read Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)及びタイマーなどの電子回路を備えるECU(Electronic Control Unit)である。制御装置21の少なくとも一部は、LSI(Large Scale Integration)などの集積回路であってもよい。
【0036】
制御装置21は、レシピ情報生成装置7から取得するレシピ情報(例えば、加工用レシピに基づく移設用レシピ等)に応じて試料片Qを試料Sから試料片ホルダPに移設する。制御装置21は、例えば試料片ホルダPでの試料片Qの取り付け位置及び姿勢等の情報を新たにレシピ情報に追加するようにレシピ情報生成装置7に送信する。
【0037】
入力装置23は、例えば、操作者の入力操作に応じた信号を出力するマウス及びキーボード等である。
表示装置25は、試料片移設装置10の各種情報と、各カメラ73,75から出力される信号によって生成された画像データと、画像データの拡大、縮小、移動及び回転等の操作を実行するための画面等を表示する。
【0038】
本発明の実施形態による試料片移設装置10は上記構成を備えており、次に、この試料片移設装置10の動作、つまり荷電粒子ビーム装置3の荷電粒子ビーム(集束イオンビーム)による試料Sの加工によって形成された試料片Qを自動的に試料片ホルダPに移設する動作について説明する。
【0039】
図6は、実施形態に係る試料片移設装置10の動作を示すフローチャートである。
図6に示すように、先ず、制御装置21は、ロードポート15に支持される容器の識別情報及び容器に収容されている少なくとも1つの試料Sの各々の位置に基づいて所望の試料Sを認識する(ステップS01)。
次に、制御装置21は、認識した試料Sに対応するレシピ情報をレシピ情報生成装置7から取得する(ステップS02)。
次に、制御装置21は、試料搬送装置17によって試料Sをロードポート15の容器から取り出してステージ31aの所定位置に設置する(ステップS03)。
【0040】
次に、制御装置21は、試料片ホルダ搬送装置19の支持部に配置される容器及び容器に収容されている試料片ホルダPの各々の識別情報を読み取り、試料片ホルダPの形状及び基準マークPa等の情報を取得する(ステップS04)。
次に、制御装置21は、試料片ホルダ搬送装置19によって試料片ホルダPを支持部の容器から取り出してステージ31aの所定の位置に設置する(ステップS05)。
【0041】
次に、制御装置21は、ステージ31aに設置された試料Sを撮像して得られる画像の信号を位置調整用カメラ75から取得する。制御装置21は、試料Sの撮像画像から試料Sに形成されている結晶方位に関する位置決め用のノッチ(図示略)の位置を検出するとともに、ノッチの位置に基づいて試料Sの所定姿勢に対するオフセット量及び回転角を検出する。制御装置21は、検出した試料Sのオフセット量及び回転角を補正して試料Sを所定姿勢に設定するように、ステージ駆動機構31bによってステージ31aを駆動する(ステップS06)。ここで、位置調整用カメラ75を用いて試料Sのアライメントマークを検出し、検出結果に基づいて試料Sを所定姿勢に設定してもよい。
【0042】
次に、制御装置21は、ステージ31aに設置された試料片ホルダPを撮像して得られる画像の信号を位置調整用カメラ75から取得する。制御装置21は、試料片ホルダPの撮像画像から試料片ホルダPに形成されている基準マークPaの位置を検出するとともに、試料片ホルダPの所定姿勢に対する回転角を検出する。制御装置21は、検出した基準マークPaの位置に基づいて、試料片ホルダPでの試料片Qの取り付け位置とステージ31aの座標情報とを対応付ける(ステップS07)。
【0043】
次に、制御装置21は、加工用レシピでの荷電粒子ビーム装置3の各種加工位置の座標に基づいて、対象とする試料片Qの位置を観察用カメラ73の視野に入れて所定のリフトアウト位置に一致させるように、ステージ駆動機構31bによってステージ31aを駆動する(ステップS08)。例えば、制御装置21は、加工用レシピに基づいて所望の試料片Qの作製に用いられた荷電粒子ビーム装置3を特定して、特定した荷電粒子ビーム装置3と試料片移設装置10との互いのステージ座標の対応関係を補正するパラメータを設定してもよい。
【0044】
次に、制御装置21は、荷電粒子ビーム装置3によって試料Sに形成された加工痕の顕微鏡像の信号を観察用カメラ73から取得する。試料Sの加工痕は、例えば、試料Sでの加工枠Fの内側及びレファレンスマークRefを含む領域等である(図2参照)。制御装置21は、レシピ情報生成装置7から取得する試料Sの加工痕の画像データ(例えば、SIM画像又はSEM画像)と、観察用カメラ73から取得した顕微鏡像とに基づいて、試料Sの加工痕が観察用カメラ73の視野領域の視野中心に一致するように、ステージ駆動機構31bによってステージ31aを駆動する(ステップS09)。例えば、制御装置21は、レシピ情報生成装置7から取得する画像データをテンプレート(レファレンス画像データ)として用いて、観察用カメラ73から取得した顕微鏡像にテンプレートマッチング(テンプレートと顕微鏡像との重ね合わせ等)を実行することによって、試料Sの加工痕を視野中心に一致させる。
【0045】
次に、制御装置21は、試料Sでの加工痕の顕微鏡像に基づいて、レシピ情報によって既知であるレファレンスマークRefと試料片Qとの相対位置関係から試料片Qの位置を認識する。制御装置21は、認識した試料片Qの位置に応じて、ピンセット81の一対のアーム81aのアプローチ位置を設定する(ステップS10)。一対のアーム81aのアプローチ位置は、例えば、X軸座標及びY軸座標によって指定される一対のアーム81aの先端部の目標位置であって、一対のアーム81aの先端部が試料片Qに向かってZ軸方向に接近を開始する位置である。
【0046】
次に、制御装置21は、鏡筒駆動機構35によって鏡筒33をZ軸方向に移動させながら、観察用カメラ73から出力される顕微鏡像の信号に基づき、試料片QのZ軸方向の位置(Z位置)を測定する(ステップS11)。例えば、制御装置21は、試料片Qの表面での合焦時(つまり、顕微鏡像にて観測される干渉縞の強度又はコントラストが最大となる時等)の鏡筒33のZ軸座標によって試料片QのZ位置を把握する。
図7は、実施形態に係る試料片移設装置10の試料S及び試料片Qの顕微鏡像でのフォーカスの状態及び干渉縞Faの例を示す図である。
図7に示すように、制御装置21は、鏡筒33のZ軸方向の移動によって、試料S及び試料片Qの表面に焦点が合っていない状態から試料S及び試料片Qの表面に焦点が合っている状態へと遷移させる。例えば、制御装置21は、鏡筒33のZ軸座標が所定値Zaよりも大きいことによって干渉縞Faが観測されない又は干渉縞Faが明瞭ではない状態から、干渉縞Faがより明瞭に観測される状態に遷移した場合のZ軸座標(=所定値Za)に基づいて、試料片QのZ位置を把握する。さらに、制御装置21は、干渉縞Faの間隔が光源51からの照射光の波長に依存し、干渉縞Faの分布(例えば、干渉縞Faの数など)が観察対象の表面の高低差に対応することに基づいて、試料S及び試料片Qの表面に観察される干渉縞Faの数から試料片QのZ位置をより詳細に把握してもよい。
【0047】
次に、制御装置21は、上述したステップS10によって設定したアプローチ位置に応じて、ピンセット駆動機構83によってピンセット81の一対のアーム81aの先端部を試料片QのZ軸方向上方に移動させる(ステップS12)。
次に、制御装置21は、観察用カメラ73から出力される顕微鏡像の信号に基づき、ピンセット81の一対のアーム81aの先端部の位置を把握する(ステップS13)。一対のアーム81aの先端部の位置は、例えば、X軸座標及びY軸座標によって指定される位置である。制御装置21は、例えば、鏡筒駆動機構35によって鏡筒33をZ軸方向に移動させて、一対のアーム81aの先端部での合焦時(つまり、顕微鏡像にて観測される干渉縞の強度又はコントラストが最大となる時等)の視野中心との相対位置関係をX軸座標及びY軸座標によって把握する。
【0048】
次に、制御装置21は、鏡筒駆動機構35によって鏡筒33をZ軸方向に移動させながら、観察用カメラ73から出力される顕微鏡像の信号に基づき、ピンセット81の一対のアーム81aの先端のZ軸方向での位置(Z位置)を測定する(ステップS14)。制御装置21は、例えば、顕微鏡像にて一対のアーム81aに観測される干渉縞に基づいて、一対のアーム81aの先端のZ位置を把握する。
図8は、実施形態に係る試料片移設装置10のピンセット81の一対のアーム81aの顕微鏡像でのフォーカスの状態及び干渉縞Fbの例を示す図である。
図8に示すように、制御装置21は、鏡筒33のZ軸方向の移動によって、一対のアーム81aの先端部表面に焦点が合っていない状態から一対のアーム81aの先端部表面に焦点が合っている状態へと遷移させる。例えば、制御装置21は、Z軸座標が所定値Zbよりも大きいことによって干渉縞Fbが観測されない若しくは干渉縞Fbが明瞭ではない状態又はZ軸座標が所定値Zbよりも小さいことによって一対のアーム81aの先端部以外(中央部等)に干渉縞Fbが観測される状態から、一対のアーム81aの先端部で干渉縞Fbがより明瞭に観測される状態に遷移した場合のZ軸座標(=所定値Zb)に基づいて、一対のアーム81aの先端のZ位置を把握する。さらに、制御装置21は、干渉縞Fbの間隔が光源51からの照射光の波長に依存し、干渉縞Fbの分布(例えば、干渉縞Fbの数など)が観察対象の表面の高低差に対応することに基づいて、一対のアーム81aの先端部の表面に観察される干渉縞Fbの数に応じて一対のアーム81aの先端のZ位置をより詳細に把握してもよい。
また、制御装置21は、既知である一対のアーム81aの先端部の形状及び寸法に基づいて、一対のアーム81aの先端のZ位置をより詳細に把握してもよい。
【0049】
次に、制御装置21は、上述したステップS10によって設定したアプローチ位置と、上述したステップS13によって把握したピンセット81の一対のアーム81aの先端部の位置との差異に基づいて、一対のアーム81aの先端部の位置とアプローチ位置とを一致させるように(つまり、位置の差異を解消するように)、ピンセット駆動機構83によって一対のアーム81aを移動させる(ステップS15)。
【0050】
次に、制御装置21は、上述したステップS11によって把握した試料片QのZ位置と、上述したステップS14によって把握したピンセット81の一対のアーム81aの先端のZ位置と、レシピ情報によって既知である試料片Qの形状及び寸法の情報と、予めの測定等によって既知である一対のアーム81aの先端部の形状及び寸法の情報とに基づき、ピンセット駆動機構83によって一対のアーム81aをZ軸方向の保持位置に移動させる(ステップS16)。保持位置は、例えば、一対のアーム81aの先端が試料片Qに接触して、一対のアーム81aの開から閉への動作によって試料片Qを保持することができる位置である。
図9は、実施形態に係る試料片移設装置10のピンセット81の一対のアーム81aの顕微鏡像でのフォーカスの状態及び干渉縞Fc1,Fc2の例を示す図であって、一対のアーム81aが試料片Qに接近する状態の図である。
図9に示すように、制御装置21は、試料S及び試料片Qの表面での合焦によって干渉縞Fc1が観測される状態で開状態であるピンセット81の一対のアーム81aをZ軸方向に徐々に移動させることによって、一対のアーム81aの先端部に干渉縞Fc2が観測されて、一対のアーム81aの先端によって試料片Qを保持することができる状態へと移行する。
なお、制御装置21は、例えば、観察用カメラ73から出力される顕微鏡像にて検出される試料片Qの表面の干渉縞に歪みが生じた場合に、一対のアーム81aの先端が試料片Qに接触したと判定してもよい。
【0051】
次に、制御装置21は、ピンセット81の一対のアーム81aの先端によって試料片Qを保持し、試料片Qを試料Sから分離する(ステップS17)。制御装置21は、例えば、観察用カメラ73から出力される顕微鏡像に対する所定の画像認識処理等によって、一対のアーム81aの先端による試料片Qの保持有無を確認する。
図10は、実施形態に係る試料片移設装置10のピンセット81の一対のアーム81aの顕微鏡像でのフォーカスの状態及び干渉縞Fc1,Fc2の例を示す図であって、一対のアーム81aが試料片Qを保持する状態の図である。
図10に示すように、制御装置21は、試料S及び試料片Qの表面並びにピンセット81の一対のアーム81aの先端部での合焦によって干渉縞Fc1,Fc2が観測される状態にて、一対のアーム81aの先端によって試料片Qを厚さ方向の両側から挟み込んで把持する。制御装置21は、試料片Qを保持する一対のアーム81aを適宜の方向(例えば、試料片Qの厚さ方向等)に変位させることによって、試料Sの支持部Qa(図2参照)による試料片Qの支持を解除し、試料Sから試料片Qを分離する。
【0052】
次に、制御装置21は、ピンセット駆動機構83によってピンセット81の一対のアーム81aをZ軸方向上方に上昇させることによって、一対のアーム81aを試料Sから退避させる(ステップS18)。
図11は、実施形態に係る試料片移設装置10のピンセット81の一対のアーム81aの顕微鏡像でのフォーカスの状態及び干渉縞Fc2の例を示す図であって、試料片Qを保持する一対のアーム81aが試料Sから退避する状態の図である。
図11に示すように、制御装置21は、例えば、ピンセット81の一対のアーム81aの先端部での合焦を維持して干渉縞Fc2が観測される状態にて、試料片Qを保持する一対のアーム81aを試料Sから退避させる。
【0053】
次に、制御装置21は、試料片ホルダPでの試料片Qの取り付け位置が観察用カメラ73の視野領域の視野中心に一致するように、ステージ駆動機構31bによってステージ31aを駆動する(ステップS19)。先ず、制御装置21は、上述したステップ07によって対応付けられた試料片ホルダPでの試料片Qの取り付け位置とステージ31aの座標情報とに基づいてステージ31aを移動させる。次に、制御装置21は、試料片ホルダPでの試料片Qの取り付け位置を示す所定のレファレンス画像データ(例えば、所定のテンプレート)と、観察用カメラ73から取得する試料片ホルダPの顕微鏡像とに基づいて、ステージ31aを移動させる。制御装置21は、例えば、所定のテンプレートと顕微鏡像とのテンプレートマッチングによって、試料片ホルダPでの試料片Qの取り付け位置を観察用カメラ73の視野領域の視野中心に一致させる。ここで、テンプレートマッチングではなく、試料片Qの取り付け位置からオフセットした位置でエッジを検出し、抽出したエッジ位置に基づいて取り付け位置を導出してもよい。テンプレートマッチングに必要な視野が得られない場合に有効である。
【0054】
次に、制御装置21は、上述したステップS13によって把握したピンセット81の一対のアーム81aの先端部の位置に基づき、一対のアーム81aの先端部の位置を観察用カメラ73の視野領域の視野中心に一致させるように、ピンセット駆動機構83によって一対のアーム81aを移動させる(ステップS20)。
【0055】
次に、制御装置21は、鏡筒駆動機構35によって鏡筒33をZ軸方向に移動させながら、観察用カメラ73から出力される顕微鏡像の信号に基づき、ピンセット81の一対のアーム81aの先端又は一対のアーム81aの先端に保持された試料片Qと、試料片ホルダPでの試料片Qの取り付け位置との接触有無を測定する(ステップS21)。例えば、制御装置21は、観察用カメラ73から出力される顕微鏡像にて検出される試料片ホルダPの干渉縞に歪みが生じた場合に、一対のアーム81aの先端又は一対のアーム81aの先端に保持された試料片Qが試料片ホルダPに接触したと判定する。
【0056】
次に、制御装置21は、ピンセット81の一対のアーム81aの先端又は試料片Qと試料片ホルダPでの試料片Qの取り付け位置との接触後に、一対のアーム81aの閉から開の動作によって試料片Qの保持を解消して、試料片Qを試料片ホルダPに取り付ける(ステップS22)。
次に、制御装置21は、試料片Qの取り付け後の試料片ホルダPの顕微鏡像、試料片ホルダPでの試料片Qの取り付け位置及び取り付け姿勢等の情報を、レシピ情報生成装置7のレシピ情報に追加する(ステップS23)。
【0057】
次に、制御装置21は、試料Sから次の試料片Qの取り出しが有るか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合、制御装置21は、処理を上述したステップS08に戻す。一方、この判定結果が「NO」の場合、制御装置21は、処理をステップS25に進める。
【0058】
次に、制御装置21は、ピンセット駆動機構83によってピンセット81の一対のアーム81aを所定の基準位置に移動させる(ステップS25)。そして、制御装置21は、処理をエンドに進める。
以上により、一連の自動的な試料片Qの移設動作が終了する。
なお、上述したスタートからエンドまでのフローは一例にすぎず、全体の流れに支障が出なければ、適宜のステップの入れ替え及びスキップを行なってもよい。制御装置21は、上述したスタートからエンドまでを連続動作させることで、無人で移設動作を実行することができる。
【0059】
上述したように、実施形態の試料片移設装置10は、荷電粒子ビーム装置3によって試料片Qを作製する加工に関する情報(加工用レシピ)に基づき、試料片搬送装置13を制御する制御装置21を備えることによって、試料片Qの破損を防ぎつつ精度よく所定の移設動作を実行することができる。
いわゆる二光束干渉の光学系である鏡筒33に備えられる観察用カメラ73から出力される画像にて検出される干渉縞に基づいて、ステージ駆動機構31b、鏡筒駆動機構35及びピンセット駆動機構83を制御する制御装置21を備えることによって、ピンセット81の一対のアーム81aによる試料Sからの試料片Qの摘出及び試料片Qの試料片ホルダPへの搬送を精度良く実行することができる。
【0060】
観察用カメラ73から出力される観察対象(例えば、試料S、試料片Q、試料片ホルダP及びピンセット81の一対のアーム81a等)の画像にて検出される干渉縞の強度若しくはコントラスト又は分布に応じて観察対象のZ位置を検知する制御装置21を備えることによって、例えば合焦の有無を確認することが難しい形状、構造又は大きさ(面積など)等を有する観察対象に対しても、Z位置を精度良く検知することができる。
【0061】
位置調整用カメラ75から出力される観察対象の画像にて検出される基準マーク(例えば、試料Sのノッチ及び試料片ホルダPの基準マークPa等)に基づいて、観察対象の位置(例えば、X軸座標及びY軸座標)を検知する制御装置21を備えることによって、例えば顕微鏡像による位置検知が難しい場合であっても、観察対象の位置を精度良く検知することができる。
【0062】
ピンセット81の一対のアーム81aによる試料Sからの試料片Qの摘出及び一対のアーム81aによる試料片ホルダPへの試料片Qの設置等にて、観察用カメラ73から出力される観察対象の画像にて検出される干渉縞に歪みが生じた場合に、一対のアーム81a又は一対のアーム81aに保持された試料片Qと観察対象とが接触したと判定する制御装置21を備えることによって、接触有無を精度良く検知することができる。
【0063】
(変形例)
以下、実施形態の変形例について説明する。なお、上述した実施形態と同一部分については、同一符号を付して説明を省略又は簡略化する。
【0064】
上述の実施形態では、光干渉計測装置11は、リニーク干渉型の対物レンズ(第1対物レンズ65及び第2対物レンズ67)を備えるとしたが、これに限定されず、例えば、マイケルソン干渉型又はミラウ干渉型等の他の干渉対物レンズを備えてもよい。
【0065】
上述の実施形態では、制御装置21は、試料Sの加工痕を視野中心に一致させる際及び試料片ホルダPでの試料片Qの取り付け位置を視野中心に一致させる際にて、テンプレートマッチングを実行するとしたが、これに限定されず、他の画像認識処理を実行してもよい。
【0066】
上述の実施形態では、荷電粒子ビーム装置3は、電子ビーム鏡筒及び集束イオンビーム鏡筒を備えるとしたが、これに限定されない。例えば、荷電粒子ビーム装置3は、電子ビーム鏡筒を備えずに集束イオンビーム鏡筒のみを備えてもよい。
【0067】
上述の実施形態では、試料片ホルダPの外形は円板状であるとしたが、これに限定されず、他の形状であってもよい。例えば、試料片ホルダPの外形は、円板の一部が省略された形状又は半円形板状等であってもよい。例えば、試料片ホルダPは、櫛歯形状の複数の柱状部を備えてもよい。
【0068】
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0069】
1…薄片試料観察システム、3…荷電粒子ビーム装置、5…透過電子顕微鏡、7…レシピ情報生成装置、10…試料片移設装置、11…光干渉計測装置、13…試料片搬送装置(試料片搬送機構)、15…ロードポート、17…試料搬送装置、19…試料片ホルダ搬送装置、21…制御装置、23…入力装置、25…表示装置、31…試料台、31a…ステージ、31b…ステージ駆動機構、33…鏡筒(光学系)、35…鏡筒駆動機構(光学系駆動機構)、69A…参照面、73…観察用カメラ(撮像装置、第1撮像装置)、75…位置調整用カメラ(第2撮像装置)、81…ピンセット(試料片保持部)、Fa,Fb,Fc1,Fc2…干渉縞、S…試料(観察対象)、Q…試料片(観察対象)、P…試料片ホルダ(観察対象)、Pa…基準マーク、Ref…レファレンスマーク。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11