(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】キャリア測定装置、キャリア測定方法、及びキャリア管理方法
(51)【国際特許分類】
B24B 37/28 20120101AFI20240124BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20240124BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20240124BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
B24B37/28
B24B41/06 L
B24B49/12
H01L21/304 621A
H01L21/304 622G
(21)【出願番号】P 2020171944
(22)【出願日】2020-10-12
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼井 宏
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 武司
(72)【発明者】
【氏名】木戸 亮介
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-509465(JP,A)
【文献】特開2015-174168(JP,A)
【文献】特開2012-145439(JP,A)
【文献】特開2020-49612(JP,A)
【文献】特開2019-186490(JP,A)
【文献】特開2017-159382(JP,A)
【文献】米国特許第6544103(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/28
B24B 41/06
B24B 49/12
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤状の半導体ウェーハを保持するホールが偏心して形成されたキャリアの厚みを測定するキャリア測定装置であって、
前記キャリアを水平に収容するキャリア収容部を有する回転テーブルと、
前記回転テーブルをその中心軸を回転軸として回転させるテーブル駆動モータと、
前記キャリアの上方及び下方に配置され、前記キャリアの厚みを非接触で測定する上部厚みセンサ及び下部厚みセンサと、
前記回転テーブル又は前記上部厚みセンサ及び前記下部厚みセンサのいずれか一方又は両方を、水平方向に摺動させる摺動部と、を備え、
前記キャリア収容部は、前記キャリアの前記ホールの中心と前記回転テーブルの中心が一致するように前記キャリアを収容可能に形成されているキャリア測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のキャリア測定装置において、
前記上部厚みセンサ及び前記下部厚みセンサが取り付けられ、前記上部厚みセンサと前記下部厚みセンサとの間を前記回転テーブルが水平方向に通過可能に構成されたセンサフレームをさらに備えるキャリア測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載のキャリア測定装置において、
前記上部厚みセンサ及び前記下部厚みセンサは、前記回転テーブルの中心と前記キャリア収容部の中心を通る直線の上方及び下方に位置するように前記センサフレームに取り付けられ、
前記摺動部は、前記回転テーブル又は前記センサフレームのいずれか一方又は両方を、前記直線と平行な水平方向に摺動させるキャリア測定装置。
【請求項4】
円盤状の半導体ウェーハを保持するホールが偏心して形成された円盤状のキャリアを、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のキャリア測定装置を用いて前記キャリアの厚みを測定するキャリア測定方法であって、
前記キャリアが収容された前記回転テーブル又は前記上部厚みセンサ及び前記下部厚みセンサのいずれか一方又は両方を、水平方向に摺動させつつ、前記キャリアの所定ポイントにおける厚みを測定する第1の測定ステップと、
前記キャリアが収容された前記回転テーブルを回転させつつ、前記キャリアの前記ホールのホール周縁部の厚みを測定する第2の測定ステップと、
を有するキャリア測定方法。
【請求項5】
円盤状の半導体ウェーハを保持するホールが偏心して形成された円盤状のキャリアを、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のキャリア測定装置を用いて測定した測定結果に基づいて前記キャリアを管理するキャリア管理方法であって、
前記キャリアが収容された前記回転テーブル又は前記上部厚みセンサ及び前記下部厚みセンサのいずれか一方又は両方を、水平方向に摺動させつつ、複数の前記キャリアの所定ポイントにおける厚みを測定する第1の測定ステップと、
前記第1の測定ステップの測定結果に基づいて、前記複数の前記キャリアについて所定の前記厚みの範囲内にあるものを同一のクラスとするクラス分けを行うクラス分けステップと、
前記同一のクラスに属する前記複数の前記キャリアの中から、所定数の前記キャリアを選択し、複数の前記半導体ウェーハを同一バッチで両面研磨する際に使用するキャリアセットを構成するセット構成ステップと、
前記キャリアセットを構成する前記各キャリアが収容された前記回転テーブルを回転させつつ、当該キャリアの前記ホールのホール周縁部の厚みを測定する第2の測定ステップと、
前記第1及び第2の測定ステップの測定結果に基づいて、前記キャリアセットを前記半導体ウェーハに要求されるスペックに応じたランクに分けるランク分けステップと、
を有するキャリア管理方法。
【請求項6】
請求項5に記載のキャリア管理方法において、
前記ランク分けステップは、前記第2の測定ステップの測定結果に基づいて前記各キャリアの前記ホール周縁部のダレ量を算出し、前記第1の測定ステップの前記測定結果及び前記ホール周縁部の前記ダレ量に基づいて前記キャリアセットをランク分けするキャリア管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円盤状の半導体ウェーハをホールにより保持するキャリアの厚みや形状を測定するキャリア測定装置、キャリア測定方法、及びキャリアの厚みや形状を測定した測定結果に基づいて当該キャリアを管理するキャリア管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの基板に用いられる半導体ウェーハの製造工程では、半導体ウェーハの高い平坦度や表面粗さを実現するために、半導体ウェーハの両面を同時に研磨する両面研磨が行われる。円盤状のキャリアに形成された円形状のホールに半導体ウェーハが保持され、このキャリアが複数両面研磨装置に装着され、研磨パッドが貼り付けられた一対の定盤に挟まれつつ、各半導体ウェーハの両面が同時に研磨される。
【0003】
近年、半導体デバイス形成領域は半導体ウェーハの中心部から外周部へ年々拡大しており、半導体ウェーハの中心部だけでなく外周部にも高い平坦度が要求されて来ている。半導体ウェーハの外周部(以下「ウェーハ外周部」と略す。)を高い平坦度で研磨するためには、半導体ウェーハを保持するキャリアに形成されたホールの周縁部(以下「ホール周縁部」と略す。)の平坦度が重要である。
【0004】
何故なら、キャリアのホール周縁部はウェーハ外周部に接しているため、ホール周縁部の平坦度が悪く、ホール周縁部の一部に厚みが薄い部位(「ダレ」ともいう。)があると、両面研磨する際、研磨パッドがその薄い部位に入り込み、半導体ウェーハのウェーハ外周部がより多く研磨される結果、ウェーハ外周部の厚みが薄くなる(この現象も「ダレ」という。)からである。
【0005】
半導体ウェーハを保持したキャリアは、両面研磨装置に複数装着されて研磨されるため、個々のキャリアの平坦度だけでなく、1バッチの両面研磨で両面研磨装置に共に装着される複数のキャリアの間で厚みや形状のバラツキがないことが要求される。
【0006】
1バッチで使用されるキャリア間で厚みや形状のバラツキがあれば、ホール周縁部のダレが生じたキャリアに研磨パッドが集中して押し当てられることになり、バッチ内の半導体ウェーハの形状にバラツキが生じ、バッチ内で研磨される半導体ウェーハの品質バラツキが生じる。
【0007】
以上のことから、半導体ウェーハを両面研磨する際には、各キャリア(特に、ホール周縁部)の厚みや形状を精度良く測定し、1バッチで使用する複数のキャリアについて厚みや形状のバラツキが少ないものを選択することが重要である。
【0008】
従来、キャリアの厚みを測定する測定装置には、例えば、特許文献1に記載されているように、キャリアが搭載されるテーブルと、基準棒と、接触センサと、制御部とを備えたものがある。
【0009】
制御部は、キャリアがテーブルに搭載されていない状態で、基準棒及び接触センサをテーブルに接触させて、接触センサとテーブルとの接触位置を基準値とする。次に、制御部は、キャリアがテーブルに搭載された状態で、基準棒をキャリアの上面に接触させるとともに、接触センサをテーブルに接触させて、接触センサとテーブルとの接触位置を測定値とし、基準値と測定値との差分からキャリアの厚みを求める。
【0010】
また、従来、キャリアの厚み測定装置には、例えば、特許文献2に記載されているように、第1及び第2テーブルと、上部及び下部センサと、センサ駆動手段とを含むものがある。
【0011】
第1テーブルは、円盤状に構成され、回転可能に設置され、キャリアの中心部を支持する。第2テーブルは、リング板状に構成され、第1テーブル外側に位置して回転可能に設置され、キャリアの外周部を支持する。
【0012】
上部及び下部センサは、コ字状の支持部材を構成する上部腕部及び下部腕部の先端にそれぞれ取り付けられ、キャリアの厚みを算出する。センサ駆動手段は、支持部材を回動することにより上部及び下部センサをキャリアの上側及び下側に移動させる。
【0013】
キャリアの外周部を第2テーブルにより支持した状態で第2テーブルを回転させ、上部及び下部センサがキャリアの内周部の厚みを測定する。また、キャリアの内周部を第1テーブルにより支持した状態で第1テーブルを回転させ、上部及び下部センサがキャリアの外周部の厚みを測定する。
【0014】
また、特許文献3には、レーザ変位計を使用してキャリアに形成されたホールの周縁部の平面度分布を測定したという記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】特許第5732858号公報(請求項1)
【文献】特許第6578442号公報(段落0033~段落0039,段落0045~段落0049,段落0063~段落0072、
図7,
図8,
図9a~
図9i)
【文献】特許第6056793号公報(段落0052)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特許文献1に記載された従来技術では、測定箇所を1箇所ずつ選択してキャリアの厚みを求めているので、キャリアのホール周縁部全体の厚みを測定するためには多くの手間暇が必要であり、ホール周縁部のダレが生じたキャリアを簡便かつ迅速に検出できないという問題がある。
【0017】
キャリアには、ウェーハをキャリアに対して偏心して保持するように、ホールの中心がキャリアの中心からずれて形成されているものがある。しかし、特許文献2に記載された従来技術では、キャリアをその中心軸回りに回転させるとともに、センサ駆動手段により上部及び下部センサを回動させて上部及び下部センサをキャリアの上側及び下側に移動させている。したがって、特許文献2に記載された従来技術では、偏心したホール周縁部全体の厚みを測定できないため、ホール周縁部のダレが生じたキャリアを検出できないという問題がある。
【0018】
この点、特許文献3の段落0052には、レーザ変位計を使用してキャリアに形成されたホールの周縁部の平面度分布を測定したという記載があるが、測定装置の具体的な構成について特許文献3には記載されていない。
【0019】
このことから、各キャリア(特に、偏心したホール周縁部)の厚みや形状を精度良く測定し、1バッチで使用する複数のキャリアについて厚みや形状のバラツキが少ない複数のキャリアを選択できる構成が望まれている。
【0020】
本発明は、各キャリア(特に、偏心したホール周縁部)の厚みや形状を精度良く測定し、1バッチで使用する複数のキャリアについて厚みや形状のバラツキが少ない複数のキャリアを選択できるキャリア測定装置、キャリア測定方法及びキャリア管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、円盤状の半導体ウェーハを保持するホールが偏心して形成されたキャリアの厚みを測定するキャリア測定装置に係り、前記キャリアを水平に収容するキャリア収容部を有する回転テーブルと、前記回転テーブルをその中心軸を回転軸として回転させるテーブル駆動モータと、前記キャリアの上方及び下方に配置され、前記キャリアの厚みを非接触で測定する上部厚みセンサ及び下部厚みセンサと、前記回転テーブル又は前記上部厚みセンサ及び前記下部厚みセンサのいずれか一方又は両方を、水平方向に摺動させる摺動部と、を備え、前記キャリア収容部は、前記キャリアの前記ホールの中心と前記回転テーブルの中心が一致するように前記キャリアを収容可能に形成されている。
【0022】
本発明に係るキャリア測定装置において、前記上部厚みセンサ及び前記下部厚みセンサが取り付けられ、前記上部厚みセンサと前記下部厚みセンサとの間を前記回転テーブルが水平方向に通過可能に構成されたセンサフレームをさらに備える。
【0023】
本発明に係るキャリア測定装置において、前記上部厚みセンサ及び前記下部厚みセンサは、前記回転テーブルの中心と前記キャリア収容部の中心を通る直線の上方及び下方に位置するように前記センサフレームに取り付けられ、前記摺動部は、前記回転テーブル又は前記センサフレームのいずれか一方又は両方を、前記直線と平行な水平方向に摺動させる。
【0024】
本発明は、円盤状の半導体ウェーハを保持するホールが偏心して形成された円盤状のキャリアを、前記キャリア測定装置を用いて前記キャリアの厚みを測定するキャリア測定方法に係り、前記キャリアが収容された前記回転テーブル又は前記上部厚みセンサ及び前記下部厚みセンサのいずれか一方又は両方を、水平方向に摺動させつつ、前記キャリアの所定ポイントにおける厚みを測定する第1の測定ステップと、前記キャリアが収容された前記回転テーブルを回転させつつ、前記キャリアの前記ホールのホール周縁部の厚みを測定する第2の測定ステップと、を有する。
【0025】
本発明は、円盤状の半導体ウェーハを保持するホールが偏心して形成された円盤状のキャリアを、前記キャリア測定装置を用いて測定した測定結果に基づいて前記キャリアを管理するキャリア管理方法に係り、前記キャリアが収容された前記回転テーブル又は前記上部厚みセンサ及び前記下部厚みセンサのいずれか一方又は両方を、水平方向に摺動させつつ、複数の前記キャリアの所定ポイントにおける厚みを測定する第1の測定ステップと、前記第1の測定ステップの測定結果に基づいて、前記複数の前記キャリアについて所定の前記厚みの範囲内にあるものを同一のクラスとするクラス分けを行うクラス分けステップと、前記同一のクラスに属する前記複数の前記キャリアの中から、所定数の前記キャリアを選択し、複数の前記半導体ウェーハを同一バッチで両面研磨する際に使用するキャリアセットを構成するセット構成ステップと、前記キャリアセットを構成する前記各キャリアが収容された前記回転テーブルを回転させつつ、当該キャリアの前記ホールのホール周縁部の厚みを測定する第2の測定ステップと、前記第1及び第2の測定ステップの測定結果に基づいて、前記キャリアセットを前記半導体ウェーハに要求されるスペックに応じたランクに分けるランク分けステップと、を有する。
【0026】
前記キャリア管理方法において、前記ランク分けステップは、前記第2の測定ステップの測定結果に基づいて前記各キャリアの前記ホール周縁部のダレ量を算出し、前記第1の測定ステップの前記測定結果及び前記ホール周縁部の前記ダレ量に基づいて前記キャリアセットをランク分けする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、各キャリア(特に、偏心したホール周縁部)の厚みや形状を精度良く測定し、1バッチで使用する複数のキャリアについて厚みや形状のバラツキが少ない複数のキャリアを選択できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の一実施形態に係るキャリア測定装置の概略構成の一例を示す上面図である。
【
図2】
図1に示すキャリア測定装置の右側面図である。
【
図3】
図1に示すキャリア測定装置における制御系統の概略構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】キャリアの外観構成の一例を示す上面図、キャリアのホール周縁部の一部の拡大図及びホールエッジからの距離とキャリアの厚みとの関係の一例を示すグラフである。
【
図5】本発明の一実施形態に係る標準品の半導体ウェーハ用のキャリア管理方法の一例を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の一実施形態に係る高精度品の半導体ウェーハ用のキャリア管理方法の一例を示すフローチャートである。
【
図7】キャリアに形成されたホール周縁部のダレ量の最大値とウェーハ外周部のダレ量との関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
[キャリア測定装置の構成]
図1及び
図2は本発明の一実施形態に係るキャリア測定装置1の概略構成の一例を示す上面図及び右側面図である。また、
図3は、キャリア測定装置1における制御系統の概略構成の一例を示すブロック図である。
【0030】
キャリア測定装置1は、全体が矩形状を呈する枠構造で構成された架台11を備え、この架台11上には長方形板状のベース31が固定されている。
【0031】
ベース31の上面において、その長手方向両側には、ガイドレール32がそれぞれ固定され、このガイドレール32上には、方形板状のステージ12が摺動自在に載置されている。
【0032】
ベース31の幅方向(
図1に示すX軸方向)の中央には、ボールねじ33が配置されている。
【0033】
図2に示すように、ボールねじ33の一端、Y軸方向後端にはY軸モータ34が取り付けられている。一方、ボールねじ33の他端側、Y軸方向前端側の途中には、ステージ12の下方部12Aが取り付けられている。
【0034】
これにより、Y軸モータ34を回転駆動すると、ボールねじ33を介してステージ12がガイドレール32上をY軸の前後(+、-)方向に摺動するように構成されている。ここにおいて、ベース31、一対のガイドレール32、ボールねじ33、Y軸モータ34により、摺動部13が構成されている。
【0035】
以下、ベース31の長手方向であって、キャリア測定装置1の正面側に向かう方向をY軸+方向とし、ベース31の長手方向であって、キャリア測定装置1の背面側に向かう方向をY軸-方向とする。
【0036】
ステージ12の上面には、テーブル収容部22Aが形成されている。
テーブル収容部22A内には、円盤状の回転テーブル23が回転自在に収納されている。
【0037】
回転テーブル23の上面は、円形の凹部からなり、後述するキャリア21よりやや大径のキャリア収容部23Aが形成されている。キャリア収容部23A内には、円盤状のキャリア21が水平に収納される。
【0038】
キャリア21は、外周部に所定ピッチで外周歯21Bが形成されている。キャリア21は、ステンレスやチタン等の金属材料からなる本体と、半導体ウェーハを保持するホール21Aの内壁に沿って配置された環状の樹脂インサータとからなるものや、全体が樹脂からなるものがある。キャリア21が樹脂製の場合、エポキシ樹脂にガラス繊維を複合したものを用いることが好ましい。
【0039】
回転テーブル23は、テーブル駆動モータ24により回転駆動されるように構成されている。
【0040】
架台11の上面中央部には、架台11の幅方向全体にわたって、扁平O字状(正面視ロ字状)のセンサフレーム14が固定され、このセンサフレーム14の開口部14Aには、ステージ12がY軸方向に通過可能になっている。
【0041】
センサフレーム14の長手方向中央には、正面側に上部厚みセンサ41及び下部厚みセンサ42が上下方向に所定の距離隔てて取り付けられている。上部厚みセンサ41及び下部厚みセンサ42は、例えば、分光干渉式レーザ変位計である。上部厚みセンサ41及び下部厚みセンサ42は、キャリア21に形成されたホール21Aのホール周縁部21C全周について、測定者によって指定されたホール21Aの任意の中心角に対して1点ずつ厚みを測定可能である。また、ホール周縁部21Cの測定可能な範囲の最も内側の点から外に向けて徐々に放射状に外に向かい測定円を大きくすることができる。
【0042】
ホール周縁部21Cの厚み測定時には、テーブル駆動モータ24は、回転テーブル23の中心C1を鉛直方向に通る中心軸を回転軸として回転テーブル23を、測定者によって指定された中心角に合わせて水平方向に回転させる。この回転テーブル23の回転に応じて、上部厚みセンサ41及び下部厚みセンサ42は、キャリア21に形成されたホール21Aのホール周縁部21C全周について、測定者によって指定されたホール21Aの任意の中心角につき1点ずつその厚みを測定する。上部厚みセンサ41及び下部厚みセンサ42は、例えば、ホール21Aの中心角1度につき1点ずつ計360点の厚みを測定可能である。
【0043】
架台11には、装置各部を制御するコンピュータ43が搭載されている。コンピュータ43は、CPU(Central Processing Unit)等により構成された制御部51と、メモリー又はハードディスク等の記録回路により構成された記憶部52とを備える(
図3参照)。
【0044】
制御部51は、記憶部52に記憶されたキャリア測定プログラム、キャリア管理プログラム等の各種プログラムを読み込み実行する。記憶部52は、前記キャリア測定プログラム、前記キャリア管理プログラム等の各種プログラムが記憶されているとともに、前記各種プログラムが実行される際に使用される各種データが記憶される。
【0045】
図1に示すように、キャリア収容部23Aの中心C2は、回転テーブル23の中心C1に対して、キャリア測定装置1の背面側(Y-方向)に偏心している。本実施形態では、キャリア収容部23Aの中心C2から回転テーブル23の中心C1までの径方向の距離を、キャリア収容部23Aの回転テーブル23に対する偏心量と呼ぶ。
【0046】
また、本実施形態では、
図1に示すように、キャリア収容部23Aの中心C2と回転テーブル23の中心C1を通る直線LがY方向と平行な状態において、キャリア収容部23Aの中心C2が回転テーブル23の中心C1との関係において回転テーブル23の外周のどちら側に位置しているかを示す方向をキャリア収容部23Aの偏心方向と呼ぶ。
図1の例では、キャリア収容部23Aの中心C2は回転テーブル23の中心C1よりもキャリア測定装置1の背面側に位置しているので、キャリア収容部23Aの偏心方向は、Y-方向である。
【0047】
図1に示す例では、キャリア収容部23Aには、キャリア21に形成されているホール21Aの中心C4がキャリア21の中心C3に対してキャリア測定装置1の正面側(Y+方向)に偏心している状態で収容する。すなわち、ホール21Aの偏心方向は、Y+方向である。なお、キャリア21の中心C3はキャリア収容部23Aの中心C2と一致している。
【0048】
図1に示すようにキャリア収容部23Aを形成し、
図1に示す方向でキャリア21をキャリア収容部23Aに収容するのは、以下に示す理由による。
従来、複数の半導体ウェーハの両面を同時に研磨する装置として、遊星歯車機構を用いた両面研磨装置が知られている。この両面研磨装置は、上定盤及び下定盤を有する回転定盤と、この回転定盤の中心に設けられたサンギアと、前記回転定盤の外周部に設けられたインターナルギアと、前記上定盤と前記下定盤との間に設けられ、外周に所定ピッチで外周歯が形成された複数のキャリアとを備える。
【0049】
この両面研磨装置では、各キャリアの外周歯がサンギアとインターナルギアとかみ合って上定盤と下定盤の間で回転することにより、各キャリアが自転しながら公転する遊星運動をする。この遊星運動の際、キャリアの中心とキャリアに形成されたホールの中心が一致しているとホールに収容された半導体ウェーハの両面が常に研磨パッドの同一の部分で研磨され、研磨効率が低いだけでなく、所望の平坦度が得られない。
そこで、半導体ウェーハの研磨効率及び研磨の均一性を高めるために、キャリアの中心とホールの中心とを異ならせる、すなわち、ホールをキャリアに対して偏心させるのである。
【0050】
このような理由により偏心したホール21Aが形成されたキャリア21を、回転テーブル23の中心C1と中心が一致したキャリア収容部23Aに収容して回転テーブル23を単に回転させただけでは偏心したホール21Aのホール周縁部21Cの厚みを全周に亘って測定することはできない。
【0051】
そこで、本実施形態では、
図1に示すように、ホール21Aのキャリア21に対する偏心量と、キャリア収容部23Aの回転テーブル23に対する偏心量を同一とし、ホール21Aの偏心方向(Y+方向)と、キャリア収容部23Aの偏心方向(Y-方向)とを180度逆方向とする。これにより、回転テーブル23のキャリア収容部23Aにキャリア21が収容された状態では、ホール21Aのキャリア21に対する偏心は、キャリア収容部23Aの回転テーブル23に対する偏心によって相殺される。したがって、ホール21Aの中心C4が回転テーブル23の中心C1と一致するので、前記上部厚みセンサ41及び下部厚みセンサ42(
図1及び
図2参照)を一箇所に固定したまま回転テーブル23をその中心軸を回転軸として回転させれば、キャリア21のホール21Aのホール周縁部21Cの厚みを全周に亘って測定することができる。
【0052】
[キャリア測定方法]
次に、前記構成を有するキャリア測定装置1を用いたキャリア測定方法の一例について説明する。本実施形態では、上部厚みセンサ41及び下部厚みセンサ42は、センサフレーム14の長手方向中央に固定したままである。
(1)キャリア21のY方向の測定
図1に示すように、キャリア収容部23Aの中心C2と回転テーブル23の中心C1を通る直線LがY方向と平行な状態において、キャリア21が設置されたステージ12をY+方向に摺動させつつ、上部厚みセンサ41及び下部厚みセンサ42によりキャリア21の厚みを測定する。
【0053】
この場合の測定ピッチは任意に設定できるが、例えば、0.2mm、すなわち、1mm区間で5点を測定する。具体的な測定位置は、
図1に示すキャリア収容部23Aの中心C2と回転テーブル23の中心C1を通る直線L上において、ホール21Aのエッジ(ホールエッジ)21DのポイントP
1からY-方向に、例えば、5~7mm程度隔てた位置から50mmの範囲とする。
【0054】
(2)ホール周縁部21Cの測定
上部厚みセンサ41と下部厚みセンサ42との間にキャリア21に形成されたホール21Aのホール周縁部21Cが位置するように、ステージ12をY-方向に摺動させた後、ステージ12を停止した状態において、回転テーブル23を回転させつつ、上部厚みセンサ41及び下部厚みセンサ42によりホール周縁部21Cの厚みを測定する。ここで回転方向の測定ピッチは任意に設定できるが、例えば、ホール周縁部21C全周について、ホール21Aの中心角1度につき1点ずつ計360点を測定する。
【0055】
ダレ量は、ダレ量を測定するための基準とすべき基準面におけるキャリア21の厚みの平均値から、ホール21Aのホールエッジ21Dからキャリア21の外周に向かって、例えば2mmまでの領域におけるキャリア21の厚みの最小値を減算した値とする。ここで、基準面とは、ホールエッジ21Dからキャリア21の外周に向かって所定の距離隔てたキャリア21の上面であって、ホール周縁部21Cの厚みの変化の影響を受けにくい領域をいう。
【0056】
図4(A)はキャリア21の上面図、
図4(B)はホール周縁部21Cの一部21Eの拡大図及びホールエッジ21Dからの1ライン上の距離とキャリア21の厚みとの関係の一例を示すグラフである。
【0057】
図4(B)に示すグラフから分かるように、ホールエッジ21Dからキャリア21の外周に向かって2mmを超えるまで領域では、ホール周縁部21Cの厚み変化の影響があるが、ホールエッジ21Dからキャリア21の外周に向かって2mmを超えた領域以降はホール周縁部21Cの厚み変化の影響を受けていない。そこで、ホールエッジ21Dからキャリア21の外周に向かって3mmから5mm程度隔てた領域を前記基準面とすることができる。
図4(A)において、2本の破線で囲まれた円環状の領域が基準面である。ホールエッジ21Dからキャリア21の外周に向かってのホール周縁部21Cの厚みの測定ピッチは任意に設定できるが、例えば、0.2mm、すなわち、1mm区間で5点を測定するものとする。
【0058】
一方、ホールエッジ21Dからキャリア21の外周に向かって2mmまでの領域は、ホール周縁部21Cの厚みの減少が大きい領域であるので、この領域におけるキャリア21の厚みの最小値の前記基準面におけるキャリア21の厚みの平均値からの差分を1ライン上の前記ダレ量と定義する。
【0059】
[キャリア管理方法]
次に、前記キャリア測定装置1及び前記キャリア測定方法を利用したキャリア管理方法の一例について説明する。
【0060】
(A)標準品の半導体ウェーハ用のキャリア管理方法
まず、標準的なスペック(例えば、平坦度や表面粗さなど)が要求される標準品の半導体ウェーハを両面研磨する際に使用されるキャリア21の管理方法について説明する。このキャリア管理方法では、新品のキャリア21について前記キャリア測定方法(1)だけを利用する。
【0061】
図5は、コンピュータ43の制御部51が実行する標準品の半導体ウェーハ用のキャリア管理方法の一例を示すフローチャートである。
まず、前記キャリア測定装置1の初期状態では、ステージ12は架台11の背面側端部に位置している。この初期状態において、作業者又は図示しない搬送機構は、キャリア21をステージ12に設置する。キャリア21をステージ12に設置する向きは、
図1に示すように、キャリア21に形成されているホール21Aの中心C4が、回転テーブル23の中心C1に一致する向きである。
【0062】
コンピュータ43の制御部51は、キャリア21が所定位置に設置されたか否かを判断する(ステップS1)。この処理は、例えば、ステージ12の位置を検出するセンサからの検出信号や、ステージ12に形成されたキャリア収容部23Aにおけるキャリア21の収容状態を検出するセンサからの検出信号などが正しく入力されたか否かを判断して行う。
【0063】
ステップS1の判断結果が「NO」の場合には、制御部51は、同判断を繰り返す。そして、前記各検出信号を正しく入力された場合には、ステップS1の判断結果が「YES」となり、制御部51は、ステップS2へ進む。
【0064】
ステップS2では、制御部51は、前記キャリア測定方法(1)において説明したキャリア21のY方向の測定処理を実行した後、ステップS3へ進む。
【0065】
このステップS2では、制御部51は、Y軸モータ34を制御して、ステージ12をY+方向に摺動させ、
図1に示すホール21AのポイントP
1からY-方向に、例えば、5~7mm程度隔てた位置から50mmの範囲において、上部厚みセンサ41及び下部厚みセンサ42を制御して、キャリア21の厚みを測定させ、その検出信号を取得する。
【0066】
そして、制御部51は、当該キャリア21の前記ポイントP1近傍における前記測定結果を記憶部52の所定の記憶領域に当該キャリア21に付与されている識別番号とともに記憶する。
【0067】
ステップS3では、制御部51は、すべてのキャリア21についてY方向の厚みを測定したか否かを判断する。ステップS3の判断結果が「NO」の場合には、制御部51は、ステップS1へ戻り、前記したステップS1及びS2の処理を繰り返す。
【0068】
一方、ステップS3の判断結果が「YES」の場合、すなわち、すべてのキャリア21についてY方向の厚みを測定した場合には、制御部51は、ステップS4へ進む。
【0069】
ステップS4では、制御部51は、記憶部52に記憶されている各キャリア21の測定結果の平均値を算出し、その測定結果の平均値に基づいて、所定の厚みの範囲内(例えば、0.3μm毎の幅)にあるものを同一のクラスとするクラス分けを行う。具体的には、キャリア21の厚みの平均値が、例えば、778.6mm以下のクラス、778.7μm~778.9μmのクラス、・・・、783.5μm~783.7μmのクラスなどにクラス分けする。
【0070】
次に、制御部51は、同一のクラスに属する複数のキャリア21の中から、所定数(例えば、5枚)のキャリア21をそれぞれ選択し、複数の半導体ウェーハを同一バッチで両面研磨する際に共に使用するセット(キャリアセット)に構成し、記憶部52の所定の記憶領域に当該キャリアセットに識別番号を付与して記憶する。その後、制御部51は、一連の処理を終了する。
【0071】
(B)高精度品の半導体ウェーハ用のキャリア管理方法
次に、高精度なスペック(例えば、平坦度や表面粗さなど)が要求される高精度品の半導体ウェーハを両面研磨する際に使用されるキャリア21の管理方法について説明する。このキャリア管理方法では、前記キャリア測定方法(1)及び(2)の両方を利用する。
【0072】
まず、複数のキャリア21をその厚みの平均値に基づいてクラス分けした後、キャリアセットを構成する処理については、段落0060~段落0070において説明した前記キャリア管理方法(A)(
図5参照)と同様であるので、以下要約して説明する。
【0073】
ステージ12にキャリア21が所定位置に所定の向きで設置されると、制御部51は、Y軸モータ34、上部厚みセンサ41及び下部厚みセンサ42を制御して、キャリア21のホール21AのポイントP1近傍における厚みを測定させた後、それぞれの測定結果を記憶部52の所定の記憶領域に当該キャリア21の識別番号とともに記憶する。
【0074】
制御部51は、以上説明した処理をすべてのキャリア21について実行した後、記憶部52に記憶されている測定結果に基づいて各キャリア21をクラス分けし、同一のクラスに属する複数のキャリア21の中からキャリアセットを構成して、記憶部52の所定の記憶領域に当該キャリアセットに識別番号を付与して記憶する。
【0075】
図6は、コンピュータ43の制御部51が実行する高精度品の半導体ウェーハ用のキャリア管理方法の一例を示すフローチャートである。ステップS11及びS12の処理は、段落0060~段落0066において説明した
図5に示すステップS1及びS2の処理とほぼ同様であるので、以下要約して説明する。
【0076】
ステージ12にキャリア21が所定位置に所定の向きで設置される(ステップS11)と、制御部51は、Y軸モータ34、上部厚みセンサ41及び下部厚みセンサ42を制御して、キャリア21のホール21AのポイントP1近傍における厚みを測定させた後、それぞれの測定結果を記憶部52の所定の記憶領域に当該キャリア21の識別番号及び当該キャリア21が属するキャリアセットの識別番号とともに記憶する(ステップS12)。
【0077】
ステップS13では、制御部51は、前記キャリア測定方法(2)において説明したホール周縁部21Cの測定処理を実行した後、ステップS14へ進む。
【0078】
このステップS13では、制御部51は、Y軸モータ34を制御して、ステージ12をY-方向に摺動させ、ホール周縁部21Cを上部厚みセンサ41と下部厚みセンサ42との間に位置させる。次に、制御部51は、ステージ12を停止した状態において、テーブル駆動モータ24を制御して、回転テーブル23を回転させつつ、上部厚みセンサ41及び下部厚みセンサ42を制御して、ホール周縁部21Cのダレ量(単位:μm)を測定させ、その検出信号を取得する。この場合、制御部51は、Y軸モータ34、上部厚みセンサ41及び下部厚みセンサ42を制御して、例えば、ホール周縁部21C全周について、ホール21Aの中心角1度につき1ラインずつ計360ラインにおけるホール周縁部21Cのダレ量(単位:μm)を測定させ、その検出信号を取得する。
【0079】
そして、制御部51は、当該キャリア21のホール周縁部21C全周におけるダレ量の測定結果を記憶部52の所定の記憶領域に当該キャリア21の識別番号及び当該キャリア21が属するキャリアセットの識別番号とともに記憶する。
【0080】
ステップS14では、制御部51は、前記キャリアセットに属するすべてのキャリア21についてY方向の厚み及びホール周縁部21Cのダレ量を測定したか否かを判断する。ステップS14の判断結果が「NO」の場合には、制御部51は、ステップS11へ戻り、前記したステップS11~S13の処理を繰り返す。
【0081】
一方、ステップS14の判断結果が「YES」の場合、すなわち、前記キャリアセットに属するすべてのキャリア21についてY方向の厚み及びホール周縁部21Cのダレ量を測定した場合には、制御部51は、ステップS15へ進む。
【0082】
ステップS15では、制御部51は、前記キャリアセットを分類した後、一連の処理を終了する。
【0083】
次に、複数のキャリア21で構成されるキャリアセットのランク分けについて説明する。表1は、キャリアセットをランク分けするためのランク表の一例である。
【0084】
【0085】
表1の項目の欄において、「ホールダレ量最大値」は、前記キャリア測定方法(2)により測定されたキャリアセット内における各キャリア21のホール21Aの360点ラインのダレ量のうちの最大値を表している。
【0086】
この「ホールダレ量最大値」を用いてキャリアセットのランク分けを行う。ランク分けは「ホールダレ量最大値」に応じて任意に設定すればよい。例えば、表1に示すように、「ホールダレ量最大値」を「小」、「中」、及び「大」に3つに分類し、この分類に応じてキャリアセットを「A」、「B」及び「C」にランク分けする。キャリアセットのランクがAからB、Cとなるにつれて半導体ウェーハに要求されるスペック(主に平坦度)が低くなっている。
【0087】
次に、前記キャリア管理方法によって管理されたキャリアセットを用いて半導体ウェーハを両面研磨した場合のホールダレ量最大値と、ウェーハ外周部のダレ量との関係について説明する。条件は以下の通りである。
【0088】
(i)それぞれ1枚の半導体ウェーハを保持可能な5枚のキャリア21からなるキャリアセットを両面研磨装置に装着して5枚の半導体ウェーハを両面研磨する。
(ii)両面研磨装置は、一般的な遊星歯車機構を有する。
(iii)異なるキャリアセットを用いて計50バッチの両面研磨処理を実行する。
(iv)ウェーハ外周部のダレ量等を測定する測定装置は、KLA-Tencor社製、WaferSight2を用いる。
【0089】
図7は、前記条件に基づいて半導体ウェーハを両面研磨した際に用いたキャリアセットのキャリア21のホール周縁部21Cのダレ量最大値と、それぞれの両面研磨処理バッチの処理の結果得られた各バッチ内の半導体ウェーハのウェーハ外周部のダレ量の最大値との関係の一例を示す図である。横軸のホールダレ量最大値によるランク分けの方法は、表1に言及した際に説明した方法と同じである。縦軸のウェーハ外周部ダレ量は、半導体ウェーハのウェーハ外周部の平坦度の指標の1つであるESFQD(Edge Site flatness Front reference least sQuare Deviation)である。
【0090】
ESFQDとは、半導体ウェーハのウェーハ外周部に扇形のセクターを作成し、当該セクター内での高さデータを最小二乗法にて算出したサイト内平面を基準面とし、この平面からの符号を含まない最大変位量を意味しており、ESFQDは各サイトに1つの値を持つ。
【0091】
図7から分かるように、キャリア21のホールダレ量最大値が大きければ大きいほど、ウェーハ外周部のダレ量が大きくなる。
図7に示すA、B及びCは、表1に示すキャリアセットのランクのA、B及びCに対応している。
【0092】
以上説明したように、本実施形態では、前記キャリア測定方法(2)を用いて各キャリア21のホール周縁部21Cの厚みをホール周縁部21C全周に亘って測定できるので、従来検出できなかったホール周縁部21Cの局所ダレを検出できる。
【0093】
また、本実施形態では、上部厚みセンサ41及び下部厚みセンサ42は、センサフレーム14の長手方向中央に固定したままであるので、キャリア21の厚みや形状を高い精度で測定することができるとともに、厚みセンサを回動させる従来技術と比較して、上部厚みセンサ41及び下部厚みセンサ42の位置決め制御が不要となる。
【0094】
また、本実施形態では、キャリアセットを構成する複数のキャリア21の厚みや形状について、前記キャリア測定方法(1)及び(2)を用いて測定し、その測定結果に基づいて、表1に示すランク表に従って各キャリアセットを予めランク分けしている。そして、半導体ウェーハに要求されるスペックに対応したランクのキャリアセットを用いて半導体ウェーハを両面研磨している。これにより、当該スペックにあった半導体ウェーハを得ることができる。
【0095】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は前記実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【0096】
例えば、前記実施形態では、ホール周縁部21Cのダレ量は、基準面におけるキャリア21の厚みの平均値から、ホール21Aのホールエッジ21Dからキャリア21の外周に向かって2mmまでの領域におけるキャリア21の厚みの最小値を減算した値としたがこれに限定されない。例えば、高精度品用のキャリア21については、基準面におけるキャリア21の厚みの平均値から、ホール21Aのホールエッジ21Dからキャリア21の外周に向かって1mmまでの領域におけるキャリア21の厚みの最小値を減算した値をホール周縁部21Cのダレ量としても良い。
【0097】
前記実施形態では、ステージ12をY方向に摺動する摺動部13をガイドレール32、ボールねじ33、Y軸モータ34等で構成する例を示したが、これに限定されず、摺動部13はリニアモータ等によって構成しても良い。
【0098】
前記実施形態では、上部厚みセンサ41及び下部厚みセンサ42は、レーザ変位計である例を示したが、これに限定されず、静電容量センサ等の他の非接触センサであっても良い。
【0099】
前記実施形態では、上部厚みセンサ41及び下部厚みセンサ42がセンサフレーム14に固定され、ステージ12が摺動部13によりY方向に摺動する例を示したが、これに限定されず、ステージ12を固定し、上部厚みセンサ41及び下部厚みセンサ42が固定されたセンサフレーム14をY方向に摺動するように構成しても良い。センサフレーム14を摺動する摺動部は前記摺動部13と同様の構成で良い。さらに、ステージ12及びセンサフレーム14の両方をY方向に摺動するように構成しても良い。
【符号の説明】
【0100】
1…キャリア測定装置、11…架台、12…ステージ、12A…下方部、13…摺動部、14…センサフレーム、14A…開口部、21…キャリア、21A…ホール、21B…外周歯、21C…ホール周縁部、21D…ホールエッジ、21E…一部、22A…テーブル収容部、23…回転テーブル、23A…キャリア収容部、24…テーブル駆動モータ、31…ベース、32…ガイドレール、33…ボールねじ、34…Y軸モータ、41…上部厚みセンサ、42…下部厚みセンサ、43…コンピュータ、51…制御部、52…記憶部、C1,C2,C3,C…中心、L…直線、P1…ポイント。