(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1337 20060101AFI20240124BHJP
C08K 5/107 20060101ALI20240124BHJP
C08L 79/08 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
G02F1/1337 525
C08K5/107
C08L79/08
(21)【出願番号】P 2020568141
(86)(22)【出願日】2020-01-20
(86)【国際出願番号】 JP2020001766
(87)【国際公開番号】W WO2020153311
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2023-01-16
(31)【優先権主張番号】P 2019008787
(32)【優先日】2019-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】大野 慎躍
(72)【発明者】
【氏名】藤枝 司
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-157346(JP,A)
【文献】国際公開第2014/142168(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/057945(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
C08K 5/107
C08L 79/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド前駆体及びそのイミド化物であるポリイミドから選ばれる少なくとも1種の重合体と、
下記式(S1-x1)~式(S1-x8)及び式(C-1)~式(C-7)から選ばれる少なくとも1種の化合物を有する液晶配向剤。
【化1】
式中、R
1
は炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、または炭素数2~20のアルコキシアルキル基であり、X
p
は、単結合、-(CH
2
)
a
-(aは1~15の整数である)、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH
3
)-、-NH-、-O-、-CH
2
O-、-CH
2
OCO-、-COO-、又は-OCO-を示し、A
1
は、酸素原子又は-COO-*(ただし、「*」を付した結合手が(CH
2
)
a2
と結合する)、A
2
は、酸素原子または*-COO-(ただし、「*」を付した結合手が(CH
2
)
a2
と結合する)であり、a1、a3は、それぞれ独立して、0または1の整数であり、a2は1~10の整数であり、Cyは1,4-シクロへキシレン基または1,4-フェニレン基であり、Zは下記式(Z-1)を表す。
【化2】
式中、Y
1
、Y
2
は独立して水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、又は炭素原子数1~4のアルコキシアルキル基を表し、*は結合手を表す。
【化3】
【請求項2】
前記
式(S1-x1)~式(S1-x8)及び式(C-1)~式(C-7)から選ばれる少なくとも1種の化合物を樹脂固形分に対して1~40重量%含有する請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項3】
前記ポリイミド前駆体は、テトラカルボン酸誘導体と、ジアミンとの反応から得られ、テトカルボン酸誘導体が、下記式(3)で表されることを特徴とする、請求項1または2に記載の液晶配向剤。
【化4】
(X
1は4価の有機基を表す。)
【請求項4】
垂直配向能を示す側鎖構造を有するポリイミド前駆体及びそのイミド化物であるポリイミドから選ばれる重合体を含有する請求項1または請求項2に記載の液晶配向剤。
【請求項5】
垂直配向能を示す側鎖構造を有するポリイミド前駆体及びそのイミド化物であるポリイミドから選ばれる重合体を含有する請求項3に記載の液晶配向剤。
【請求項6】
請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の液晶配向剤から得られる液晶配向膜。
【請求項7】
請求項
6に記載の液晶配向膜を具備する液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、軽量、薄型かつ低消費電力の表示デバイスとして知られている。近年では、急速にシェアを拡大してきた携帯電話やタブレット型端末向けの高精細液晶表示素子においても、高い表示品位が求められるほどの目覚ましい発展を遂げている。
液晶表示素子において、液晶配向膜は液晶を一定方向に配向させる役割を担っている。液晶配向膜は、ポリアミック酸(ポリアミド酸とも言われる)、ポリアミック酸エステルなどのポリイミド前駆体や可溶性ポリイミドに代表される重合体の溶液を主成分とする液晶配向剤を基板に塗布し、焼成して成膜することで作製される。
液晶表示素子の表示特性向上、製造時の生産効率向上を目的として、上述した重合体の構造変更、特性の異なる重合体のブレンド、及び、添加剤の使用等の手法により、液晶配向剤の開発が行われている。
【0003】
液晶配向剤に、添加剤を加える目的は、液晶へのプレチルト角付与(例えば、特許文献1参照)、添加剤の架橋反応により、得られる液晶配向膜の機械的強度を改善する(例えば、特許文献2参照)等、種々存在しており、目的に応じた構造や特性を有する添加剤が用いられている。
一方で添加剤の使用により、液晶配向性の低下、液晶へのコンタミ等、課題も存在しており、それらとのトレードオフを解決可能な新しい添加剤が求められている。
また、液晶表示素子の価格低下が著しい中、合成の容易性及びコスト面での改善も求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2010/035719
【文献】WO2010/074269
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、液晶配向剤を高機能化出来る新規構造の添加剤を用いた液晶配向剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かくして、本発明は、上記の知見に基づくものであり、下記の要旨を有する。
ポリイミド前駆体及びそのイミド化物であるポリイミドから選ばれる少なくとも1種の重合体と、下記式(1)の化合物(以下、特定化合物とも称する)を有する液晶配向剤。
【0007】
【0008】
【0009】
式中、X1及びX2はそれぞれ独立して、単結合、-(CH2)a-(aは1~15の整数である)、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH3)-、-NH-、-O-、-COO-、-OCO-又は-((CH2)a1-A1)m1-を表す。このうち、複数のa1はそれぞれ独立して1~15の整数であり、複数のA1はそれぞれ独立して酸素原子又は-COO-を表し、m1は1~2である。
【0010】
G1及びG2は、それぞれ独立して、炭素数6~12の2価の芳香族基又は炭素数3~8の2価の脂環式基から選ばれる2価の環状基を表す。該環状基上の任意の水素原子は、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、炭素数1~3のフッ素含有アルキル基、炭素数1~3のフッ素含有アルコキシ基又はフッ素原子で置換されていてもよい。m及びnは、それぞれ独立して、0~3の整数であって、m及びnの合計は1~4である。qは1または2の整数である。
【0011】
R1は、炭素数1~20のアルキル、炭素数1~20のアルコキシ又は炭素数2~20のアルコキシアルキルを表す。R1を形成する任意の水素はフッ素で置換されていてもよい。
【0012】
Zは上記式(Z-1)又は(Z-2)を表し、Zが(Z-1)の時、qは1であり、Zが(Z-2)の時、qは2であり、Y1、Y2は独立して水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、又は炭素原子数1~4のアルコキシアルキル基を表し、*はX1との結合を表す。
【発明の効果】
【0013】
本発明の液晶配向剤を用いることで、液晶へのプレチルト角付与及び制御が可能となり、なおかつ、添加剤使用のデメリットである配向性低下を抑えることが可能となり、表示品位の高い液晶表示素子を得ることが可能となる。
【0014】
本発明の液晶配向剤が上記効果を奏するメカニズムは定かではないが、概ね以下のように考えられる。
【0015】
従来の添加剤は、低分子であるため液晶配向膜作製時、添加剤が液晶配向膜の表層に偏在しやすい。また、これら添加剤は液晶配向性やプレチルト付与能を有さないため、表面に存在すると重合体が有する側鎖構造などが液晶を配向させたりプレチルト角を付与することを阻害してしまうことがある。
【0016】
それに対し、本発明の特定化合物は、液晶にプレチルト角を付与する側鎖構造を有している。これにより、液晶配向膜作製時、特定化合物が液晶配向膜の表層に偏在しても、液晶の垂直配向性を阻害せず、むしろ、重合体の側鎖構造のプレチルト角付与能力をサポートする方向に働くと考えられる。液晶配向膜中の重合体に、側鎖構造を有していないものを用いた場合は、この特定化合物自体が、液晶にプレチルト角を付与する。
【0017】
さらに本発明の特定化合物には、架橋性構造も同時に有しているため、膜の硬度が高まり、結果として表示品位の高い液晶表示素子が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の液晶配向剤は、ポリイミド前駆体及びそのイミド化物であるポリイミドから選ばれる少なくとも1種の重合体と、上記式(1)の特定化合物を有する。以下、各構成要件につき詳述する。
<特定化合物>
本発明の特定化合物は、下記式(1)で表される。
【0019】
【0020】
【0021】
式中、X1及びX2はそれぞれ独立して、単結合、-(CH2)a-(aは1~15の整数である)、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH3)-、-NH-、-O-、-COO-、-OCO-又は-((CH2)a1-A1)m1-を表す。このうち、複数のa1はそれぞれ独立して1~15の整数であり、複数のA1はそれぞれ独立して酸素原子又は-COO-を表し、m1は1~2である。原料の入手性や合成の容易さの点からは、X1及びX2は、それぞれ独立して、単結合、-(CH2)a-(aは1~15の整数である)、-O-、-CH2O-又は-COO-が好ましく、単結合、-(CH2)a-(aは1~10の整数である)、-O-、-CH2O-又は-COO-がより好ましい。
【0022】
G1及びG2は、それぞれ独立して、炭素数6~12の2価の芳香族基又は炭素数3~8の2価の脂環式基から選ばれる2価の環状基を表す。該環状基上の任意の水素原子は、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、炭素数1~3のフッ素含有アルキル基、炭素数1~3のフッ素含有アルコキシ基又はフッ素原子で置換されていてもよい。m及びnは、それぞれ独立して、0~3の整数であって、m及びnの合計は1~4である。qは1または2の整数である。
【0023】
R1は、炭素数1~20のアルキル、炭素数1~20のアルコキシ又は炭素数2~20のアルコキシアルキルを表す。R1を形成する任意の水素はフッ素で置換されていてもよい。このうち、炭素数6~12の2価の芳香族基の例としては、フェニレン、ビフェニレン、ナフタレン等が挙げられる。また、炭素数3~8の2価の脂環式基の例としては、シクロプロピレン、シクロヘキシレン等が挙げられる。
Zは上記式(Z-1)又は(Z-2)を表し、Zが(Z-1)の時、qは1であり、Zが(Z-2)の時、qは2であり、Y1、Y2は独立して水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、又は炭素原子数1~4のアルコキシアルキル基を表し、*はX1との結合を表す。
従って、上記式(1)の好ましい具体例として、下記式(S1-x1)~(S1-x8)があげられるが、これらに限定されない。更に好ましくは、Zが(Z-1)の時は、下記式(S1-x1)、(S1-x2)、(S1-x4)、(S1-x5)が挙げられ、Zが(Z-2)の時は(S1-x1)~(S1-x5)が挙げられる。
【0024】
【0025】
式中、R1は炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、または炭素数2~20のアルコキシアルキル基であり、Xpは、単結合、-(CH2)a-(aは1~15の整数である)、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH3)-、-NH-、-O-、-CH2O-、-CH2OCO-、-COO-、又は-OCO-を示し、A1は、酸素原子又は-COO-*(ただし、「*」を付した結合手が(CH2)a2と結合する)、A2は、酸素原子または*-COO-(ただし、「*」を付した結合手が(CH2)a2と結合する)であり、a1、a3は、それぞれ独立して、0または1の整数であり、a2は1~10の整数であり、Cyは1,4-シクロへキシレン基または1,4-フェニレン基である。
【0026】
Zは上記式(Z-1)又は(Z-2)を表し、Zが(Z-1)の時、qは1であり、Zが(Z-2)の時、qは2である。Y1、Y2は独立して水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、又は炭素原子数1~4のアルコキシアルキル基を表す。好ましくは、水素原子又は炭素原子数1~2のアルキル基である。*はX1との結合を表す。
【0027】
ここで、Zが上記式(Z-1)であり、m及びnの合計が3で、且つ[1]Y1、Y2が水素原子である、前記式(1)で表される特定化合物を特定化合物(A)、[2]Y1が炭素原子数1~4のアルキル基、又は炭素原子数1~4のアルコキシアルキル基であり、Y2が水素原子である、前記式(1)で表される特定化合物を特定化合物(D)、[3]Y1、Y2が炭素原子数1~4のアルキル基、又は炭素原子数1~4のアルコキシアルキル基である、前記式(1)で表される特定化合物を特定化合物(F)とする。また、Zが上記式(Z-1)であり、m及びnの合計が2で、且つ[1]Y1、Y2が水素原子である前記式(1)で表される特定化合物を特定化合物(B)、[2]Y1が炭素原子数1~4のアルキル基、又は炭素原子数1~4のアルコキシアルキル基であり、Y2が水素原子である、前記式(1)で表される特定化合物を特定化合物(E)、[3]Y1、Y2が炭素原子数1~4のアルキル基、又は炭素原子数1~4のアルコキシアルキル基である、前記式(1)で表される特定化合物を特定化合物(G)とする。さらに、Zが上記式(Z-2)である、前記式(1)で表される特定化合物を特定化合物(C)とする。特定化合物(A)~(G)の具体的な化合物としては、以下が挙げられる。
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
<特定化合物の合成>
(特定化合物[A]、特定化合物[B]の合成方法)
以下に、前述した特定化合物[A]及び[B]を得る方法について説明する。本発明の特定化合物を合成する方法は特に限定されないが、特定化合物[A]は、塩基存在下、フェノール類[A-I]とホルムアルデヒドを反応させることで得ることができる。同様に特定化合物[B]は塩基存在下、フェノール類[B-I]とホルムアルデヒドを反応させることで得ることができる。
【0036】
【化13】
式中、R
1は上記式(1)と同様である。
【0037】
塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属炭酸塩等を用いることができる。
ホルムアルデヒド源としては、ホルムアルデヒド水溶液(ホルマリン)、パラホルムアルデヒド等が挙げられる。
反応溶媒としては、純水、アルコール溶媒(メタノール、エタノール、2-プロパノール、tert-ブチルアルコール等)、エーテル類(Et2O、i-Pr2O、TBME、CPME、THF、ジオキサンなど)、非プロトン性極性有機溶媒(DMF、DMSO、DMAc、NMPなど)を用いることができる。これらの溶媒は、反応の起こり易さなどを考慮して適宜選択することができ、1種単独で又は2種以上混合して用いることができる。
反応温度は特に限定されないが、-20℃から使用する溶媒の沸点までの範囲、好ましくは、-10~100℃である。
上記反応により得られた特定化合物[A]又は[B]は、再結晶、又はシリカゲルなどのカラムクロマトグラフィーなどで精製することができる。
【0038】
(特定化合物[C]の合成方法)
以下に、前述した特定化合物[C]を得る方法について説明する。本発明の特定化合物を合成する方法は特に限定されないが、例えば、特定化合物[C]は下記式の通りで得ることができる。
【0039】
【0040】
式中、R1、Y1の定義は上記式(1)と同じである。XはCl、BrまたはIを表し、LG-Clは、メタンスルホニルクロリドやエタンスルホニルクロリド、p-トルエンスルホニルクロリドを表す(LGは脱離基を表し、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、p-トルエンスルホニル基を表す)。n1は0~7を表す。
【0041】
(化合物[C-I]の合成方法)
化合物[C-I]は、塩基存在下、化合物[B-I]とヒドロキシ基含有有機ハロゲン化物と反応することで得ることができる。
ヒドロキシ基含有有機ハロゲン化物としては、2-クロロエタノール、2-ブロモエタノール、2-ヨードエタノール、3-クロロ-1-プロパノール、3-ブロモ-1-プロパノール、4-クロロ-1-ブタノール、4-ブロモ-1-ブタノール、5-クロロ-1-ペンタノール、5-ブロモ-1-ペンタノール、6-クロロ-1-ヘキサノール、6-ブロモ-1-ヘキサノール等が挙げられる。
塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属炭酸塩等を用いることができる。
反応溶媒としては、アセトン、アセトニトリル、非プロトン性極性有機溶媒(DMF、DMSO、DMAc、NMPなど)などが好ましい。これらの溶媒は、反応の起こり易さなどを考慮して適宜選択することができ、1種単独で又は2種以上混合して用いることができる。
本反応は触媒を添加して反応を促進させることが可能であり、触媒としてはヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムを用いることができる。
反応温度は特に限定されないが、0℃から使用する溶媒の沸点までの範囲、好ましくは、20~140℃である。
【0042】
上記反応により得られた化合物[C-I]は、再結晶、又はシリカゲルなどのカラムクロマトグラフィーなどで精製することができる。
【0043】
(化合物[C-II]の合成方法)
化合物[C-II]は、塩基存在下、化合物[C-I]とメタンスルホニルクロリドやエタンスルホニルクロリド、p-トルエンスルホニルクロリドを反応させることで得ることができる。
塩基としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウムなどの無機塩基;メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、イミダゾール、キノリン、コリジン、ピロリジン、ピペリジン、モルフォリン、N-メチルモルフォリンなどのアミンなどが使用できる。
反応溶媒としては、当該反応条件下において安定であって、不活性で、反応を妨げないものであればいずれも使用できる。反応溶媒として、非プロトン性極性有機溶媒(DMF(ジメチルホルムアミド), DMSO(ジメチルスルホキシド), DMAc(ジメチルアセトアミド), NMP(N-メチルピロリドン)など)、エーテル類(Et2O、i-Pr2O、 TBME、 CPME、 THF、 ジオキサンなど)、脂肪族炭化水素類(ペンタン、へキサン、ヘプタン、石油エーテルなど)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、テトラリンなど)、ハロゲン系炭化水素類(クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタンなど)、低級脂肪酸エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチルなど)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリルなど)などが使用できる。これらの溶媒は、反応の起こり易さなどを考慮して適宜選択することができ、1種単独で又は2種以上混合して用いることができる。また場合によっては、上記溶媒は、適当な脱水剤や乾燥剤を用いて水を含有しない溶媒として用いることもできる。
【0044】
反応温度は、好ましくは、-20℃以上から使用する反応溶媒の沸点の温度までの温度範囲を選ぶことができるが、好ましくは―10~100℃である。
【0045】
上記反応により得られた化合物[C-II]は、再結晶、又はシリカゲルなどのカラムクロマトグラフィーなどで精製することができる。
【0046】
(化合物[C]の合成方法)
特定化合物[C]は、塩基存在下、化合物[C-II]と化合物[C-III]を反応させることで得ることができる。
化合物[C-III]の具体例としては、[C-III-1]~[C-III-3]等が挙げられる。
【0047】
【0048】
使用する塩基、触媒、溶媒は化合物[C-I]の合成と同じ方法である。
【0049】
(特定化合物[D]、特定化合物[E]の合成方法)
以下に、前述した特定化合物[D]及び[E]を得る方法について説明する。本発明の特定化合物を合成する方法は特に限定されないが、特定化合物[D]は、酸触媒存在下、アルコール溶媒中、特定化合物[A]を反応させることで得ることができる。同様に特定化合物[E]は酸触媒存在下、アルコール溶媒中、特定化合物[B]と反応させることで得ることができる。
【0050】
【化16】
式中、R
1の定義は上記式(1)と同じである。Y
1は炭素原子数1~4のアルキル基、又は炭素原子数1~4のアルコキシアルキル基を表す。
【0051】
ここで用いられる酸触媒は例えば、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ピリジニウムp-トルエンスルホン酸、サリチル酸、5-スルホサリチル酸、4-フェノールスルホン酸、カンファースルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、1-ナフタレンスルホン酸、クエン酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、ナフタレンカルボン酸等の酸性化合物を用いることができる。しかし、反応系に未反応の酸を残存させないために触媒用イオン交換樹脂を用いることができる。触媒用イオン交換樹脂は例えば、スルホン酸型の強酸型イオン交換樹脂を用いることができる。
【0052】
アルコール溶媒は反応剤及び溶媒として働き、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-メチル-1-プロパノール、2-メトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、2-エトキシエタノール等を用いることができる。
【0053】
反応温度は、好ましくは、20℃以上から使用する反応溶媒の沸点の温度までの温度範囲を選ぶことができるが、好ましくは30~150℃である。
【0054】
上記反応により得られた特定化合物[D]及び特定化合物[E]は、再結晶、又はシリカゲルなどのカラムクロマトグラフィーなどで精製することができる。
【0055】
(特定化合物[F]、特定化合物[G]の合成方法)
以下に、前述した特定化合物[F]及び[G]を得る方法について説明する。本発明の特定化合物を合成する方法は特に限定されないが、特定化合物[F]は、塩基存在下、有機ハロゲン化物と特定化合物[D]を反応させることで得ることができる。同様に特定化合物[G]は塩基存在下、有機ハロゲン化物と特定化合物[E]と反応させることで得ることができる。
【0056】
【化17】
式中、R
1の定義は上記式(1)と同じである。Y
1、Y
2は炭素原子数1~4のアルキル基、又は炭素原子数1~4のアルコキシアルキル基を表す。XはCl、Br、Iを表す。
【0057】
有機ハロゲン化物としては、ヨードメタン、ヨードエタン、1-クロロプロパン、1-ブロモプロパン、1-ヨードプロパン、1-クロロブタン、1-ブロモブタン、1-ヨードブタン、2-クロロエチルメチルエーテル、2-クロロエチルエチルエーテル等が挙げられる。
使用する塩基、触媒、溶媒は化合物[C-I]の合成と同じ方法である。
【0058】
<テトラカルボン酸誘導体>
本発明の液晶配向剤に含有されるポリイミド前駆体は、テトラカルボン酸誘導体と、ジアミンとの反応から得られ、ポリイミドは、ポリイミド前駆体をイミド化することにより得られる。以下に、用いられる材料の具体例及び製造方法を詳述する。
【0059】
ポリイミド前駆体の製造に用いられるテトラカルボン酸誘導体としては、テトラカルボン酸二無水物だけでなく、その誘導体である、テトラカルボン酸、テトラカルボン酸ジハライド化合物、テトラカルボン酸ジアルキルエステル、テトラカルボン酸ジアルキルエステルジハライドが挙げられる。
【0060】
テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体としては、なかでも、下記式(3)で表されるものが好ましい。
【0061】
【0062】
式(3)中、X1の構造は4価の有機基であれば特に限定されない。より好ましい具体例として、(X1-1)~(X1-10)、(X1-27)~(X1-43)が挙げられる。
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
式(X1-1)~(X1-4)において、R3~R23は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数2~6のアルキニル基、フッ素原子を含有する炭素数1~6の1価の有機基、又はフェニル基である。液晶配向性の点から、R3~R23は、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、又はエチル基が好ましく、水素原子、又はメチル基が好ましい。
【0070】
式(X1-1)の具体例としては、下記式(X1-1-1)~(X1-1-6)が挙げられる。液晶配向性の点から、(X1-1-1)が特に好ましい。
【0071】
【0072】
<ジアミン>
ポリイミド前駆体の製造に用いられるジアミンは、下記式(2)で表される。
【0073】
【0074】
上記式(2)中、A1及びA2はそれぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1~5のアルキル基、炭素数2~5のアルケニル基、又は炭素数2~5のアルキニル基である。
【0075】
Y1の構造は特に限定されない。好ましい構造としては以下の(Y-1)~(Y-181)が挙げられる。
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
上記式中、Meは、メチル基を表し、R1は水素原子または炭素数1~5の炭化水素基を表す。
【0096】
【0097】
なかでも、Y1の構造としては、(Y-7)、(Y-8)、(Y-16)、(Y-17)、(Y-18)、(Y-20),(Y-21)、(Y-22)、(Y-28)、(Y-35)、(Y-38)、(Y-43)、(Y-48)、(Y-64),(Y-66)、(Y-71)、(Y-72)、(Y-76),(Y-77)、(Y-80)、(Y-81)、(Y-82)、(Y-83)、(Y-155)、(Y-158)、(Y-159)、(Y-160)、(Y-161)、(Y-167)、(Y-168)、(Y-169)、(Y-170)、(Y-172)、(Y-174)が好ましく、特には、(Y-7)、(Y-8)、(Y-16)、(Y-17)、(Y-18)、(Y-21)、(Y-22)、(Y-28)、(Y-38)、(Y-64)、(Y-66)、(Y-72)、(Y-76)、(Y-81)、(Y-155)、(Y-158)、(Y-159)、(Y-160)、(Y-161)(Y-167)、(Y-168)、(Y-169)、(Y-170)、(Y-172)、(Y-174)が好ましい。
【0098】
<ポリアミック酸>
本発明に用いられるポリイミド前駆体であるポリアミック酸は、以下に示す方法で製造できる。具体的には、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを有機溶媒の存在下、-20℃~150℃、好ましくは0℃~50℃で、30分~24時間、好ましくは1~12時間反応させることによって合成できる。
【0099】
上記の反応に用いる有機溶媒は、モノマー及びポリマーの溶解性からN,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、又はγ-ブチロラクトンが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。ポリマーの濃度は、ポリマーの析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという観点から、1~30質量%が好ましく、5~20質量%がより好ましい。
【0100】
上記のようにして得られたポリアミック酸は、反応溶液をよく撹拌させながら貧溶媒に注入することで、ポリマーを析出させて回収することができる。また、析出を数回行い、貧溶媒で洗浄後、常温あるいは加熱乾燥することで精製されたポリアミック酸の粉末を得ることができる。貧溶媒は、特に限定されないが、水、メタノール、エタノール、ヘキサン、ブチルセロソルブ、アセトン、トルエン等が挙げられる。
【0101】
<ポリアミック酸エステル>
本発明に用いられるポリイミド前駆体の一つであるポリアミック酸エステルは、以下に示す(1)、(2)又は(3)の方法で製造できる。
【0102】
(1)ポリアミック酸から製造する場合
ポリアミック酸エステルは、テトラカルボン酸二無水物とジアミンから得られるポリアミック酸をエステル化することによって合成できる。具体的には、ポリアミック酸とエステル化剤を有機溶剤の存在下で-20℃~150℃、好ましくは0℃~50℃において、30分~24時間、好ましくは1~4時間反応させることによって合成できる。
【0103】
エステル化剤としては、精製によって容易に除去できるものが好ましく、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール、N,N-ジメチルホルムアミドジエチルアセタール、N,N-ジメチルホルムアミドジプロピルアセタール、N,N-ジメチルホルムアミドジネオペンチルブチルアセタール、N,N-ジメチルホルムアミドジ-t-ブチルアセタール、1-メチル-3-p-トリルトリアゼン、1-エチル-3-p-トリルトリアゼン、1-プロピル-3-p-トリルトリアゼン、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジンー2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリドなどが挙げられる。エステル化剤の使用量は、ポリアミック酸の繰り返し単位1モルに対し2~6モル当量が好ましい。
【0104】
上記の反応に用いる溶媒は、ポリマーの溶解性からN,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、又はγ-ブチロラクトンが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。反応液中のポリマーの濃度は、ポリマーの析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという観点から、1~30質量%が好ましく、5~20質量%がより好ましい。
【0105】
(2)テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンとの反応により製造する場合
ポリアミック酸エステルは、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンから製造できる。具体的には、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンとを塩基と有機溶剤の存在下で-20℃~150℃、好ましくは0℃~50℃において、30分~24時間、好ましくは1~4時間反応させることによって合成することができる。
【0106】
前記塩基には、ピリジン、トリエチルアミン、4-ジメチルアミノピリジンなどが使用できるが、反応が穏和に進行するためにピリジンが好ましい。塩基の使用量は、除去が容易な量で、かつ高分子量体が得やすいという観点から、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドに対し、2~4倍モルが好ましい。
【0107】
上記の反応に用いる溶媒は、モノマー及びポリマーの溶解性からN-メチル-2-ピロリドン、又はγ-ブチロラクトンが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。反応液中のポリマー濃度は、ポリマーの析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという観点から、1~30質量%が好ましく、5~20質量%がより好ましい。また、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドの加水分解を防ぐため、ポリアミック酸エステルの合成に用いる溶媒はできるだけ脱水されていることが好ましく、窒素雰囲気中で、外気の混入を防ぐのが好ましい。
【0108】
(3)テトラカルボン酸ジエステルとジアミンとの反応により製造する場合
ポリアミック酸エステルは、テトラカルボン酸ジエステルとジアミンを重縮合することにより製造できる。具体的には、テトラカルボン酸ジエステルとジアミンを縮合剤、塩基、及び有機溶剤の存在下で0℃~150℃、好ましくは0℃~100℃において、30分~24時間、好ましくは3~15時間反応させることによって製造できる。
【0109】
前記縮合剤には、トリフェニルホスファイト、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N’-カルボニルジイミダゾール、ジメトキシ-1,3,5-トリアジニルメチルモルホリニウム、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム テトラフルオロボラート、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート、(2,3-ジヒドロ-2-チオキソ-3-ベンゾオキサゾリル)ホスホン酸ジフェニルなどが使用できる。縮合剤の添加量は、テトラカルボン酸ジエステルに対して2~3倍モルが好ましい。
【0110】
前記塩基には、ピリジン、トリエチルアミンなどの3級アミンが使用できる。塩基の使用量は、除去が容易な量で、かつ高分子量体が得やすいという観点から、ジアミン成分に対して2~4倍モルが好ましい。
【0111】
また、上記反応において、ルイス酸を添加剤として加えることで反応が効率的に進行する。ルイス酸としては、塩化リチウム、臭化リチウムなどのハロゲン化リチウムが好ましい。ルイス酸の添加量はジアミン成分に対して0~1.0倍モルが好ましい。
【0112】
上記3つのポリアミック酸エステルの製造方法の中でも、高分子量のポリアミック酸エステルが得られるため、上記(1)又は上記(2)の製造法が特に好ましい。
【0113】
上記のようにして得られるポリアミック酸エステルの溶液は、よく撹拌させながら貧溶媒に注入することで、ポリマーを析出させることができる。析出を数回行い、貧溶媒で洗浄後、常温あるいは加熱乾燥して精製されたポリアミック酸エステルの粉末を得ることができる。貧溶媒は、特に限定されないが、水、メタノール、エタノール、ヘキサン、ブチルセロソルブ、アセトン、トルエン等が挙げられる。
【0114】
<ポリイミド>
本発明に用いられるポリイミドは、前記ポリアミック酸又はポリアミック酸エステルをイミド化することにより製造できる。本発明で用いられるポリイミドイミド化率は100%に限らない。電気特性の観点から20~99%が好ましい。ポリアミック酸エステルからポリイミドを製造する場合、前記ポリアミック酸エステル溶液、又はポリアミック酸エステル樹脂粉末を有機溶媒に溶解させて得られるポリアミック酸溶液に塩基性触媒を添加する化学的イミド化が簡便である。化学的イミド化は、比較的低温でイミド化反応が進行し、イミド化の課程で重合体の分子量低下が起こりにくいので好ましい。
【0115】
化学的イミド化は、イミド化させたいポリアミック酸又はポリアミック酸エステルを、有機溶媒中において塩基性触媒と酸無水物の存在下で攪拌することにより行うことができる。またその際に上記(R-1)~(R-2)に示されるような化合物を反応させることにより、末端に特定構造を導入したポリイミド前駆体を得られる。有機溶媒としては前述した重合反応時に用いる溶媒を使用することができる。塩基性触媒としてはピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン等を挙げることができる。中でもピリジンは反応を進行させるのに適度な塩基性を持つので好ましい。また、酸無水物としては無水酢酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等を挙げることができ、中でも無水酢酸を用いると反応終了後の精製が容易となるので好ましい。通常、従来のポリイミドの場合は無水酢酸を用いると主鎖末端としてアセチル基が生成するのに対して、本発明はアセチル化を抑制することができる。
【0116】
【0117】
R22、R22’は1価の有機基を表し、その具体例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、2,2,2-トリクロロエチル基、2-トリメチルシリルエチル基、1,1-ジメチルプロピニル基、1-メチル-1-フェニルエチル基、1-メチル-1-(4-ビフェニルイル)エチル基、1、1-ジメチル-2-ハロエチル基、1,1-ジメチル-2-シアノエチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基、1-メチルシクロブチル基、1-アダマンチル基、ビニル基、アリル基、シンナミル基、8-キノリル基、N-ヒドロキシピペリジニル基、ベンジル基、p-ニトロベンジル基、3,4-ジメトキシ-6-ニトロベンジル基、2,4-ジクロロベンジル基、9-フルオニルメチル基等が挙げられる。
【0118】
イミド化反応を行うときの温度は、例えば-20℃~120℃であり、好ましくは0℃~100℃であり、反応時間は1~100時間で行うことができる。塩基性触媒の量はアミック酸基の0.5~30モル倍、好ましくは2~20モル倍であり、酸無水物の量はアミック酸基の1~50モル倍、好ましくは3~30モル倍である。得られる重合体のイミド化率は、触媒量、温度、反応時間を調節することで制御することができる。
【0119】
ポリアミック酸エステル又はポリアミック酸のイミド化反応後の溶液には、添加した触媒等が残存しているので、以下に述べる手段により、得られたイミド化重合体を回収し、有機溶媒で再溶解して、本発明の液晶配向剤とすることが好ましい。
【0120】
上記のようにして得られるポリイミドの溶液は、よく撹拌させながら貧溶媒に注入することで、重合体を析出させることができる。析出を数回行い、貧溶媒で洗浄後、常温あるいは加熱乾燥して精製されたポリアミック酸エステルの粉末を得ることができる。
【0121】
前記貧溶媒は、特に限定されないが、メタノール、アセトン、ヘキサン、ブチルセルソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、トルエン、ベンゼン等が挙げられる。
【0122】
<液晶配向剤>
本発明の液晶配向剤は、特定重合体を含む重合体が特定溶媒を含む有機溶媒中に溶解された溶液の形態を有する。本発明に記載のポリイミド前駆体及びポリイミドの分子量は、重量平均分子量で2,000~500,000が好ましく、より好ましくは5,000~300,000であり、さらに好ましくは、10,000~100,000である。また、数平均分子量は、好ましくは、1,000~250,000であり、より好ましくは、2,500~150,000であり、さらに好ましくは、5,000~50,000である。
【0123】
本発明に用いられる液晶配向剤の重合体の濃度は、形成させようとする塗膜の厚みの設定によって適宜変更することができるが、均一で欠陥のない塗膜を形成させるという点から1重量%以上が好ましく、溶液の保存安定性の点からは10重量%以下が好ましい。
【0124】
本発明の液晶配向剤における溶媒は、ポリイミド前駆体及びポリイミドを溶解する溶媒(良溶媒ともいう)や、液晶配向剤を塗布した際の液晶配向膜の塗膜性や表面平滑性を向上させる溶媒(貧溶媒ともいう)が好ましく用いられる。下記に、その他の溶媒の具体例を挙げるが、これらの例に限定されるものではない。
【0125】
良溶媒の具体例としては、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-ブチル-2-ピロリドン、γ‐ブチロラクトン、γ‐バレロラクトン、1,3-ジメチルイミダゾリジノン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、3-メトキシーN,N-ジメチルプロパンアミド又は4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンなどを挙げることができる。
【0126】
貧溶媒の具体例としては、1-ブトキシ-2-プロパノール、2-ブトキシ-1-プロパノール、2-プロポキシエタノール、2-(2-プロポキシエトキシ)エタノール、1-プロポキシ-2-プロパノールエタノール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、イソペンチルアルコール、tert-ペンチルアルコール、3-メチル-2-ブタノール、ネオペンチルアルコール、1-ヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、2-メチル-2-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、1-オクタノール、2-オクタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、シクロヘキサノール、1-メチルシクロヘキサノール、2-メチルシクロヘキサノール、3-メチルシクロヘキサノール、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、1,2-ブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、2-ペンタノン、3-ペンタノン、2-ヘキサノン、2-ヘプタノン、4-ヘプタノン、3-エトキシブチルアセタート、1-メチルペンチルアセタート、2-エチルブチルアセタート、2-エチルヘキシルアセタート、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールジアセタート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、2-(メトキシメトキシ)エタノール、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノイソアミルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、2-(ヘキシルオキシ)エタノール、フルフリルアルコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1-(ブトキシエトキシ)プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールジアセタート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、プロピレングリコールジアセタート、ジイソペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアセタート、ジエチレングリコールアセタート、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸メチルエチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチル、乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸n-プロピルエステル、乳酸n-ブチルエステル、乳酸イソアミルエステル、ジイソブチルケトン、エチルカルビトール等が挙げられる。
【0127】
また、貧溶媒としては、下記式で表される溶媒も好ましく用いられる。
【0128】
【化48】
R
24、R
25はそれぞれ独立して、直鎖又は分岐の、炭素数1~8のアルキル基である。但し、R
24+R
25は3より大きい整数である。
【0129】
また、貧溶媒としては、液晶配向剤に含まれるポリイミド前駆体及びポリイミドの溶媒への溶解性が高い場合は、下記の[D-1]~式[D-3]で示される溶媒が好ましい。
【0130】
【0131】
式[D-1]中、D1は炭素数1~3のアルキル基を示し、式[D-2]中、D2は炭素数1~3のアルキル基を示し、式[D-3]中、D3は炭素数1~4のアルキル基を示す。
【0132】
また、本発明の液晶配向剤は、エポキシ基、イソシアネート基、オキセタン基又はシクロカーボネート基を有する架橋性化合物、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルキル基及び低級アルコキシアルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基を有する架橋性化合物、又は重合性不飽和結合を有する架橋性化合物を含んでいてもよい。
【0133】
そのような架橋性化合物は、その目的に応じ種々の公知の化合物を用いることが出来る。好ましく用いられるのは下記の化合物である。
【0134】
【0135】
架橋性化合物の含有量は、全ての重合体成分100質量部に対して、0.1~150質量部が好ましい。なかでも、架橋反応が進行し目的の効果を発現させるためには、0.1~100質量部が好ましく、より好ましいのは、1~50質量部である。
【0136】
本発明の液晶配向剤は、液晶配向剤を塗布した際の液晶配向膜の膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる化合物を含有することができる。
【0137】
液晶配向膜の膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる化合物としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノ二オン系界面活性剤などが挙げられる。
【0138】
界面活性剤の使用量は、液晶配向剤に含有される全ての重合体成分100質量部に対して、好ましくは0.01~2質量部、より好ましくは0.01~1質量部である。
【0139】
<液晶配向膜・液晶表示素子>
本発明の液晶配向剤は、基板上に塗布、焼成した後、ラビング処理や光照射などで配向処理をして、液晶配向膜として用いることができる。また、垂直配向用途などの場合では配向処理なしでも液晶配向膜として用いることができる。
【0140】
本発明の液晶配向膜は、水平配向型若しくは垂直配向型(VA方式、PSAモード、SC-PVAモード等)の液晶配向膜に用いることができるが、なかでもPSAモード、SC-PVAモード等の垂直配向型の液晶表示素子に好適な液晶配向膜であり、少ない光照射量でプレチルトを制御できる。
【0141】
この際に用いる基板としては、透明性の高い基板であれば特に限定されず、ガラス基板の他、アクリル基板やポリカーボネート基板などのプラスチック基板なども用いることができる。プロセスの簡素化の観点からは、液晶駆動のためのITO電極などが形成された基板を用いることが好ましい。また、反射型の液晶表示素子では、片側の基板のみにならばシリコンウェハなどの不透明な基板も使用でき、この場合の電極としてはアルミニウムなどの光を反射する材料も使用できる。
【0142】
液晶配向剤の塗布方法は、特に限定されないが、工業的には、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷又はインクジェット法などで行う方法が一般的である。その他の塗布方法としては、ディップ法、ロールコータ法、スリットコータ法、スピンナー法又はスプレー法などがあり、目的に応じてこれらを用いてもよい。
【0143】
液晶配向剤を基板上に塗布した後は、ホットプレート、熱循環型オーブン又はIR(赤外線)型オーブンなどの加熱手段により、液晶配向剤に用いる溶媒に応じて、30~300℃、好ましくは30~250℃の温度で溶媒を蒸発させて液晶配向膜とすることができる。焼成後の液晶配向膜の厚みは、厚すぎると液晶表示素子の消費電力の面で不利となり、薄すぎると液晶表示素子の信頼性が低下する場合があるので、好ましくは5~300nm、より好ましくは10~100nmである。液晶を水平配向や傾斜配向させる場合は、焼成後の液晶配向膜をラビング又は偏光紫外線照射などで処理する。
【0144】
本発明の液晶表示素子は、上記した手法により、本発明の液晶配向剤から液晶配向膜付き基板を得た後、公知の方法で液晶セルを作製して液晶表示素子としたものである。
【0145】
液晶セルの作製方法としては、液晶配向膜の形成された一対の基板を用意し、片方の基板の液晶配向膜上にスペーサを散布し、液晶配向膜面が内側になるようにして、もう片方の基板を貼り合わせ、液晶を減圧注入して封止する方法、又は、スペーサを散布した液晶配向膜面に液晶を滴下した後に基板を貼り合わせて封止を行う方法などが例示できる。
【0146】
更に、本発明の液晶配向剤は、電極を備えた一対の基板の間に液晶層を有してなり、一対の基板の間に活性エネルギー線及び熱の少なくとも一方により重合する重合性化合物を含む液晶組成物を配置し、電極間に電圧を印加しつつ、活性エネルギー線の照射及び加熱の少なくとも一方により重合性化合物を重合させる工程を経て製造される液晶表示素子にも好ましく用いられる。ここで、活性エネルギー線としては、紫外線が好適である。紫外線としては、波長が300~400nm、好ましくは310~360nmである。加熱による重合の場合、加熱温度は40~120℃、好ましくは60~80℃である。また、紫外線と加熱を同時に行ってもよい。
【0147】
上記の液晶表示素子は、PSA(Polymer Sustained Alignment)方式により、液晶分子のプレチルトを制御するものである。PSA方式では、液晶材料中に少量の光重合性化合物、例えば光重合性モノマーを混入しておき、液晶セルを組み立てた後、液晶層に所定の電圧を印加した状態で光重合性化合物に紫外線などを照射し、生成した重合体によって液晶分子のプレチルトを制御する。重合体が生成するときの液晶分子の配向状態が電圧を取り去った後においても記憶されるので、液晶層に形成される電界などを制御することにより、液晶分子のプレチルトを調整することができる。また、PSA方式では、ラビング処理を必要としないので、ラビング処理によってプレチルトを制御することが難しい垂直配向型の液晶層の形成に適している。
【0148】
すなわち、本発明の液晶表示素子は、上記した手法により本発明の液晶配向剤から液晶配向膜付き基板を得た後、液晶セルを作製し、紫外線の照射及び加熱の少なくとも一方により重合性化合物を重合することで液晶分子の配向を制御するものとすることができる。
【0149】
PSA方式の液晶セル作製の一例を挙げるならば、液晶配向膜の形成された一対の基板を用意し、片方の基板の液晶配向膜上にスペーサを散布し、液晶配向膜面が内側になるようにして、もう片方の基板を貼り合わせ、液晶を減圧注入して封止する方法、又は、スペーサを散布した液晶配向膜面に液晶を滴下した後に基板を貼り合わせて封止を行う方法などが挙げられる。
【0150】
液晶には、熱や紫外線照射により重合する重合性化合物が混合される。重合性化合物としては、アクリレート基やメタクリレート基等の重合性不飽和基を分子内に1個以上有する化合物が挙げられる。その際、重合性化合物は、液晶成分の100質量部に対して0.01~10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1~5質量部である。重合性化合物が0.01質量部未満であると、重合性化合物が重合せずに液晶の配向制御ができなくなり、10質量部よりも多くなると、未反応の重合性化合物が多くなって液晶表示素子の焼き付き特性が低下する。
【0151】
液晶セルを作製した後は、液晶セルに交流又は直流の電圧を印加しながら、熱や紫外線を照射して重合性化合物を重合する。これにより、液晶分子の配向を制御することができる。
【0152】
加えて、本発明の液晶配向剤は、電極を備えた一対の基板の間に液晶層を有してなり、前記一対の基板の間に活性エネルギー線及び熱の少なくとも一方により重合する重合性基を含む液晶配向膜を配置し、電極間に電圧を印加する工程を経て製造される液晶表示素子、すなわち、SC-PVAモードにも用いることが好ましい。ここで、活性エネルギー線としては、紫外線が好適である。紫外線としては、波長が300~400nm、好ましくは310~360nmである。加熱による重合の場合、加熱温度は40~120℃、好ましくは60~80℃である。また、紫外線と加熱を同時に行ってもよい。
【0153】
活性エネルギー線及び熱の少なくとも一方より重合する重合性基を含む液晶配向膜を得るためには、この重合性基を含む化合物を液晶配向剤中に添加する方法や、重合性基を含む重合体成分を用いる方法が挙げられる。重合性基を含む重合体の具体例としては、前記光反応性基を有する重合体であれば特に限定されず、前記光反応性基を有するジアミンを用いて得られる重合体を挙げることができる。
【0154】
SC-PVAモードの液晶セル作製の一例を挙げるならば、本発明の液晶配向膜の形成された一対の基板を用意し、片方の基板の液晶配向膜上にスペーサを散布し、液晶配向膜面が内側になるようにして、もう片方の基板を貼り合わせ、液晶を減圧注入して封止する方法、又は、スペーサを散布した液晶配向膜面に液晶を滴下した後に基板を貼り合わせて封止を行う方法などが挙げられる。
【0155】
液晶セルを作製した後は、液晶セルに交流又は直流の電圧を印加しながら、熱や紫外線を照射することで、液晶分子の配向を制御することができる。
【実施例】
【0156】
以下に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0157】
本実施例及び比較例で使用した化合物の略号、及び特性評価の方法は、以下のとおりである。
(溶媒)
NMP:N-メチル-2-ピロリドン、BCS:ブチルセロソルブ
(酸二無水物)
DC-1:1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
DC-2:ビシクロ[3,3,0]オクタン-2,4,6,8-テトラカル
ボン酸二無水物、
(ジアミン)
DA-1:1,3-ビス(4-アミノフェネチル)ウレア
DA-2:4-(2-メチルアミノエチル)アニリン
DA-3:1,5-ビス(4-アミノフェノキシ)ペンタン
DA-4:3,5-ジアミノ安息香酸
DA-5:下記式DA-5で表されるジアミン化合物
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
AD-1~AD-5は、文献等未公開の新規化合物であり、以下の合成例1~5でその合成法を詳述する。
【0162】
<1HNMRの測定>
装置:フーリエ変換型超伝導核磁気共鳴装置(FT-NMR)「AVANCE III」(BRUKER製)500MHz。
溶媒:重水素化クロロホルム(CDCl3)又は重水素化ジメチルスルホキシド([D6]-DMSO)。
標準物質:テトラメチルシラン(TMS)。
【0163】
<合成例1:[AD-1]の合成>
【0164】
【0165】
500mL四つ口フラスコに4-[(trans, trans)-4’-ペンチル[1,1’-ビシクロヘキシル]-4-イル]フェノール(25.9g、78.8mmol)、20wt%水酸化カリウム水溶液(79.8g)、tert-ブチルアルコール(77.8g)、テトラヒドロフラン(40.1g)、ホルムアルデヒド水溶液(37%、64.1g)を仕込み、室温条件下で約3日間反応させた。反応終了後、酢酸エチル(390g)及び2.0mol/L 塩酸水溶液(222g)の2相溶液に反応液を注ぎ込み、有機相に目的物を抽出した。続いて、有機相を純水(150g)で3回洗浄した。有機相を硫酸ナトリウム脱水処理後、減圧濃縮することで溶媒を除去した。濃縮物をテトラヒドロフラン(88.0g)に40℃加熱溶解させ、トルエン(153g)を加えて結晶を析出させた。氷冷条件下で撹拌後、ろ過、ヘキサン洗浄、乾燥することで[AD-1]を白色結晶として得た(収量:14.1g、収率:46%)。
1H NMR (500 MHz, [D6]-DMSO):δ8.32 (br,1H), 6.96 (s,2H), 5.17 (br,2H), 4.52(s,4H), 2.29-2.34(m,1H), 1.70-1.79(m,8H), 0.95-1.36(m,22H)
【0166】
<合成例2:[AD-2]の合成>
【0167】
【0168】
500mL四つ口フラスコにp-(trans-4-ヘプチルシクロヘキシル)フェノール(30.2g、110mmol)、20wt%水酸化カリウム水溶液(114g)、tert-ブチルアルコール(90.5g)中、ホルムアルデヒド水溶液(37%、108g)を仕込み、室温条件下で約3日間反応させた。反応終了後、酢酸エチル(450g)及び2.0mol/L 塩酸水溶液(184g)の2相溶液に反応液を注ぎ込み、有機相に目的物を抽出した。続いて、有機相を純水(150g)で3回洗浄した。有機相を硫酸ナトリウム脱水処理後、減圧濃縮することで内部重量を120gとした。濃縮液にヘキサン(360g)を加え、氷冷条件下で結晶を析出させ、ろ過、ヘキサン洗浄、乾燥することで[AD-2]を白色結晶として得た(収量:11.3g、収率:31%)。
1H NMR (500 MHz,CDCl3):δ7.92(br,1H), 6.89 (s,2H), 4.76 (s,4H), 2.70(br,2H), 2.32-2.39 (m,1H), 1.80-1.85(m, 4H), 1.18-1.43(m, 15H), 0.87-1.05(m,5H)
【0169】
<合成例3:[AD-3]の合成>
【0170】
【0171】
([AD-3-1]及び[AD-3-2]の合成)
1L四つ口フラスコにp-(trans-4-ヘプチルシクロヘキシル)フェノール(50.1g、183mmol)、N,N-ジメチルアセトアミド(150g)、炭酸カリウム(30.4g、220mmol)を仕込み、80℃加熱条件下で2-ブロモエタノール(25.4g、203mmol)を滴下した。反応追跡を行い、適宜、炭酸カリウム(追加合計量:91.1g、659mmol)と2-ブロモエタノール(追加合計量:77.3g、619mmol)を追加して原料を消失させた。反応終了後、反応液を酢酸エチル(1000g)で希釈し、有機相を純水(500g)で3回洗浄した。有機相を減圧濃縮することで[AD-3-1]をオイル化合物として得た(粗収量:75.1g)。
【0172】
1L四つ口フラスコに[AD-3-1](75.1g)、テトラヒドロフラン(402g)、4-ジメチルアミノピリジン(2.22g、18.2mmol)、トリエチルアミン(28.1g、278mmol)を仕込み、窒素雰囲気氷冷条件下でp-トルエンスルホニルクロリド(40.4g、237mmol)を少しずつ加えた。添加後、室温条件下で反応させて原料を消失させた。反応終了後、反応液をろ過することで析出物を除去した。続いて、ろ液を減圧濃縮することで溶媒を除去した。濃縮物を酢酸エチルに溶解させ、純水で有機相を洗浄した。有機相を硫酸マグネシウム脱水処理後、減圧濃縮することで粗物を得た。粗物を酢酸エチル(92.0g)及びメタノール(377g)混合溶液に60℃加熱溶解させ、氷冷条件下で結晶を析出させ、ろ過、乾燥することで[AD-3-2]を白色結晶として得た(収量:54.4g、収率:63%)。
【0173】
(AD-3の合成)
500mL四つ口フラスコに3,3’,5,5’-テトラキス(メトキシメチル)-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジオール(9.56g、26.4mmol)、N,N-ジメチルアセトアミド(95.6g)、炭酸カリウム(8.80g、63.7mmol)を仕込み、70℃加熱条件下で[AD-3-2](26.2g、55.4mmol)を加え、同温度で約1日反応させた。反応終了後、反応液を酢酸エチル(500g)で希釈し、有機相を純水(200g)で3回洗浄した。有機相を硫酸マグネシウム脱水処理後、減圧濃縮することで内部重量を109gとした。得られた溶液にメタノール(220g)を加えて、結晶を析出させ、ろ過することで粗結晶を得た。粗結晶を酢酸エチル(122g)に70℃加熱溶解させ、室温条件下で結晶を析出させ、ろ過、乾燥することでAD-3を薄黄色結晶として得た (収量:15.2g、収率:60%)。
1H NMR (500 MHz, CDCl3):δ7.59 (s,4H), 7.14 (d,4H,J=10Hz), 6.91 (d,4H,J=8.6Hz), 4.59 (s,8H), 4.27-4.29(m,8H), 3.41(s,12H), 2.39-2.45(m,2H), 1.85-1.88(m,8H), 0.90-1.45(m, 40H)
【0174】
<合成例4:[AD-4]の合成>
【0175】
【0176】
300mL四つ口フラスコにAD-2(28.6g、85.5mmol)、メタノール(1143g)、炭酸カリウム(8.80g、63.7mmol)、濃硫酸(0.839g、8.55mmol)を仕込み、窒素雰囲気メタノール還流条件下で24時間反応させた。反応終了後、反応液を酢酸エチル(573g)で希釈し、有機相を飽和重曹水溶液(229g)で1回、純水(229g)で2回洗浄した。有機相を回収し、減圧濃縮することで溶媒を除去した。濃縮物をヘキサン(345g)に溶解させ、エタノール/ドライアイスを冷媒として用いて結晶を析出させ、ろ過、乾燥することでAD-4を白色結晶として得た(収量:17.4g、収率:56%)。
1H NMR (500 MHz, CDCl3):δ7.58 (s,1H), 6.95 (s,2H), 4.57(s,4H), 3.43(s,6H), 2.34-2.39(m, 1H), 1.83-1.85(m,4H), 1.20-1.40 (m,15H), 0.87-1.02(m,5H)
【0177】
<合成例5:[AD-5]の合成>
【0178】
【0179】
100mL四つ口フラスコにAD-4(5.00g、13.8mmol)、炭酸カリウム(2.67g、19.3mmol)を仕込み、窒素雰囲気80℃加熱条件下でヨウ化メチル(2.35g、16.6mmol)を滴下した。同温度で22時間反応させて、原料を消失させた。反応終了後、反応溶液を酢酸エチル(75.0g)で希釈し、純水(40.0g)で3回洗浄後、有機相を硫酸マグネシウム脱水処理した。脱水処理後、有機相に活性炭(銘柄:特製白鷺、0.250g)を加え、室温条件下で1時間撹拌した。ろ過により活性炭を除去後、減圧濃縮することでAD-5を薄黄色オイル状化合物として得た(収量:5.00g、収率:95%)
1H NMR (500 MHz, CDCl3):δ7.18(s,2H), 4.48(s,4H), 3.78 (s,3H), 3.42(s,6H), 2.41-2.47(m, 1H), 1.83-1.89(m,4H), 1.20-1.40 (m,15H), 0.87-1.06(m,5H)
【0180】
以下における各特性の測定方法、及びそのための測定サンプルなどの作製方法は、次に記載するとおりである。
【0181】
「粘度」
ポリアミック酸溶液などの粘度は、E型粘度計TVE-22H(東機産業社製)を用い、サンプル量1.1mL(ミリリットル)、コーンロータTE-1(1°34’、R24)、温度25℃において測定した。
【0182】
「ポリアミック酸(PAA-1)の合成」
撹拌装置付き100mL四つ口フラスコに、DA-1を2.63g(8.80mmol)、DA-2を1.32g(8.80mmol)、DA-3を1.26g(4.40mmol)量り取り、NMPを61.5g加えて、撹拌し溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながらDC-1を4.10g(20.9mmol)添加し、さらにNMPを22.3g加え、40℃で15時間撹拌してポリアミック酸の溶液(PAA-1、粘度:140mPa・s)を得た。
このポリアミック酸(PAA-1)の溶液84gを200mL三角フラスコに移し、NMPを21.0g、BCSを35.0g加えて希釈し、ポリアミック酸(PAA-1)が6質量%、NMPが69質量%、BCSが25質量%のポリアミック酸(PAA-1)溶液(液晶配向剤[PAA-0])を調製した。
【0183】
「可溶性ポリイミド(SPI-1)の合成」
撹拌装置付き100mL四つ口フラスコに、DA-4を3.04g(20.0mmol)、DA-5を7.61g(20.0mmol)量り取り、NMPを58.6g加えて、撹拌し溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながらDC-2を7.51g(30.0mmol)添加し、さらにNMPを17.1g加え、60℃で3時間撹拌した。続いてこの溶液を撹拌しながらDC-1を1.80g(9.20mmol)添加し、さらにNMPを4.15g加え、40℃で15時間撹拌して、ポリアミック酸の溶液(粘度:680mPa・s)を得た。
このポリアミック酸溶液(80g)にNMPを加え6.5質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(16.3g)、ピリジン(5.07g)を加え、100℃で3時間反応させた。この反応溶液をメタノール(1.0L)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥しポリイミド粉末(SPI-1)を得た。このポリイミドのイミド化率は57%であった。上記で得たポリイミド粉末(SPI-1)(12.0g)にNMP(108g)を加え、80℃にて20時間撹拌して溶解させた後、BCS(80g)を加え、室温で10時間撹拌してポリイミド(SPI-1)が6質量%、NMPが54質量%、BCSが40質量%の可溶性ポリイミド(SPI-1)溶液(液晶配向剤[SPI-0])を調製した。
【0184】
「液晶配向剤の調製」
<実施例1~13及び比較例1>
上記で作製したポリアミック酸(PAA-1)溶液(10.0g)に、特定化合物として上記で合成した化合物AD―1~5を、それぞれポリアミック酸(PAA-1)溶液の固形分(すなわちポリアミック酸(PAA-1))に対して下記表1に記載する割合となるように加え、均一溶液となるまで、室温で撹拌を行い、液晶配向剤[PAA-1]~[PAA-13]及び[PAA-0]を調製した。
【0185】
【0186】
<実施例14~22及び比較例2~4>
上記で作製した可溶性ポリイミド(SPI-1)溶液(10.0g)に、特定化合物として上記で合成した化合物AD―1~5及び比較化合物AD-6、7を、それぞれ可溶性ポリイミド(SPI-1)溶液の固形分(すなわち可溶性ポリイミド(SPI-1))に対して下記表2に記載する割合となるように加え、均一溶液となるまで、室温で撹拌を行い、[SPI-1]~[SPI-11]及び[SPI-0]を調製した。
【0187】
【0188】
「液晶配向膜及び液晶セルの作製」
上記各実施例で調製した液晶配向剤を用いて、以下のようにして液晶セルを作製した。
【0189】
上記各実施例で調製した液晶配向剤を、画素サイズが100μm×300μmでライン/スペースがそれぞれ5μmのITO電極パターンが形成されているITO電極基板のITO面にスピンコートし、70℃のホットプレートで90秒間乾燥した後、230℃の熱風循環式オーブンで30分間焼成を行い、膜厚100nmの液晶配向膜を形成した。
また、液晶配向剤を電極パターンが形成されていないITO面にスピンコートし、70℃のホットプレートで90秒乾燥させた後、230℃の熱風循環式オーブンで20分間焼成を行い、膜厚100nmの液晶配向膜を形成した。
上記の2枚の基板について一方の基板の液晶配向膜上に4μmのビーズスペーサーを散布した後、その上からシール剤(溶剤型熱硬化タイプのエポキシ樹脂)を印刷した。次いで、もう一方の基板の液晶配向膜が形成された側の面を内側にして、先の基板と貼り合せた後、シール剤を硬化させて空セルを作製した。この空セルにPSA用重合性化合物含有液晶MLC-3023(メルク社製商品名)を減圧注入法によって注入し、液晶セルを作製した。
その後、この液晶セルに15VのDC電圧を印加した状態で、この液晶セルの外側から325nm以下の波長をカットするフィルターを通したUVを10J/cm2照射した。なお、UVの照度は、ORC社製UV-MO3Aを用いて測定した。その後、液晶セル中に残存している未反応の重合性化合物を失活させる目的で、電圧を印加していない状態で東芝ライテック社製UV-FL照射装置を用いてUV(UVランプ:FLR40SUV32/A-1)を30分間照射した。
【0190】
「液晶セルの評価」
作製した各液晶セルの物性の測定、および特性の評価の方法は以下の通りである。
(垂直配向性評価)
液晶セルを偏光板で挟み、後部からバックライトを照射した状態で、液晶セルを回転させて、明暗の変化や輝点の有無で液晶が垂直配向しているかを目視にて観察した。
(プレチルト角の測定)
名菱テクニカ製LCDアナライザーLCA-LUV42Aを使用した。
【0191】
<実施例23~35及び比較例5><垂直配向性評価>
表3に示す各実施例で調製した液晶配向剤を用いて垂直配向性を評価した。その際、下記の基準で評価した。結果を表3に示す。
【0192】
この結果、特定化合物を添加していない比較例5では液晶が垂直配向せず輝点が発生し、配向不良しているのに対して、特定化合物AD―1~5を添加した液晶配向剤を用いた場合には、添加量を調節することで輝点の発生や配向不良がなくなり、垂直配向を示した。
評価基準
◎:液晶の垂直配向が確認でき、輝点の発生がない
○:液晶は垂直配向しているが、輝点が若干観察される
×:液晶が垂直配向せず、輝点が多く観察される
【0193】
【0194】
<実施例36~40及び比較例6~8><過酷焼成耐性の評価>
表4に示す各実施例で調製した液晶配向剤を用いて作製した液晶セルのプレチルト角を測定した。なお、液晶配向膜を形成するために230℃の熱風循環式オーブンで焼成する時間は20分と60分に設定した。その際のチルト角の変化量をΔチルトとした。結果を表4に示す。
【0195】
この結果、特定化合物を添加していない比較例8と比較して、特定化合物AD―1~5を添加した液晶配向剤を用いた場合には、いずれもΔチルトが小さくなり、過酷焼成による垂直配向能低下が起こり難く高い垂直配向性が確認された。
【0196】
【0197】
「液晶配向膜の作製及び膜硬度の評価」
上記各実施例で調製した液晶配向剤を用いて、以下のようにして膜硬度を評価した。なお、膜硬度はラビング布に対する削れ耐性を観察し評価した。
液晶配向剤を電極パターンが形成されていないITO面にスピンコートし、70℃のホットプレートで90秒乾燥させた後、230℃の熱風循環式オーブンで20分間焼成を行い、膜厚100nmの液晶配向膜を形成した。
【0198】
液晶配向膜表面をロール径120mmのラビング装置でレーヨン布を用いて、ラビング条件をロール回転数1000rpm、ロール進行速度20mm/sec、押し込み量を0.5mmに設定してラビングし、ラビング処理した液晶配向膜付き基板を得た。
【0199】
<実施例41~47及び比較例9><膜硬度の評価>
表5に示す各実施例で調製した液晶配向剤を用いて作製した液晶配向膜の表面を、ラビング処理した後、共焦点レーザー顕微鏡(KEYENCE社製、VK-X200)にて観察し、下記の基準で評価を行った。結果を表5に示す。
【0200】
この結果、特定化合物を添加していない比較例9と比較して、特定化合物AD―1~2及びAD-4を添加した液晶配向剤を用いた場合には、膜硬度が向上し、ラビングによる削れが観察されなかった。しかし、特定化合物AD―3はラビング削れ耐性の改善効果を示さなかった。
評価基準
○:削れカスやラビング傷が観察されない。
×:削れカス又はラビング傷が観察される。
【0201】
【産業上の利用可能性】
【0202】
本発明の液晶配向処理剤から得られる液晶配向膜を用いることで、液晶へのプレチルト角付与及び制御が可能となり、なおかつ、添加剤使用のデメリットである配向性低下を抑えることが可能となり、表示品位の高い液晶表示素子が得られる。そのため、スマートフォンや携帯電話などの液晶表示素子に、好適に用いることができる。