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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】軽量樹脂充填材及び軽量樹脂硬化物
(51)【国際特許分類】
   C04B 26/14 20060101AFI20240124BHJP
   C04B 14/02 20060101ALI20240124BHJP
   C04B 20/00 20060101ALI20240124BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240124BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240124BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240124BHJP
   C08K 7/24 20060101ALI20240124BHJP
   E04G 23/02 20060101ALN20240124BHJP
【FI】
C04B26/14
C04B14/02 B
C04B20/00 B
C08L101/00
C08L63/00 C
C08K3/013
C08K7/24
E04G23/02 A
E04G23/02 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020011421
(22)【出願日】2020-01-28
(65)【公開番号】P2021116207
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(73)【特許権者】
【識別番号】506353585
【氏名又は名称】学校法人ものつくり大学
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】中島 裕
(72)【発明者】
【氏名】石田 学
(72)【発明者】
【氏名】山下 直樹
(72)【発明者】
【氏名】藤田 直博
(72)【発明者】
【氏名】井出 光紀
(72)【発明者】
【氏名】大垣 賀津雄
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-219806(JP,A)
【文献】特開平02-049064(JP,A)
【文献】特開平02-239139(JP,A)
【文献】特開2005-179134(JP,A)
【文献】特開平10-194811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/00-28/36
C08L 101/00-101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂組成物及び軽量骨材を含み、
前記軽量骨材が、5mmのふるいを通過し、0.5mmのふるいに残留する粒径を有し、且つ単位容積質量0.05~0.4kg/Lである軽量骨材Aと、0.5mmのふるいを通過する粒径を有し、且つ単位容積質量0.4~0.8kg/Lである軽量骨材Bとを含み、
前記軽量骨材の含有量が、前記熱硬化性樹脂組成物100質量部に対し、30~95質量部である、軽量樹脂充填材。
【請求項2】
前記軽量骨材A及び前記軽量骨材Bの質量比([軽量骨材Aの質量]/[軽量骨材Bの質量])が、0.5~4である、請求項1に記載の軽量樹脂充填材。
【請求項3】
前記熱硬化性樹脂組成物に含まれる熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂である、請求項1又は2に記載の軽量樹脂充填材。
【請求項4】
前記熱硬化性樹脂組成物が、エポキシ樹脂希釈剤を更に含む、請求項3に記載の軽量樹脂充填剤。
【請求項5】
硬化剤を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の軽量樹脂充填材。
【請求項6】
無機微粉末を更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の軽量樹脂充填材。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の軽量樹脂充填材を硬化させた軽量樹脂硬化物。
【請求項8】
密度が0.45~1kg/Lである、請求項7に記載の軽量樹脂硬化物。
【請求項9】
圧縮強度が10N/mm以上である、請求項7又は8に記載の軽量樹脂硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量樹脂充填材及び軽量樹脂硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、床材やコンクリート欠損部の補修等の用途に、エポキシ樹脂等を用いた樹脂モルタルが用いられてきた。人工軽量骨材や天然軽量骨材を用いて樹脂モルタルを軽量化することで、構造体への負荷を軽減する技術も開発されてきている(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-219806号公報
【文献】特開平10-194811号公報
【文献】特開2005-179134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、構造体への負荷を軽減するため、軽量骨材の配合量を増やす等の方法により軽量化(低密度化)を図る場合、圧縮強度が低下し、構造部材としての適用箇所が制限されるといった問題や、流動性が低下して現場での施工性が低下する問題があった。
【0005】
したがって、本発明は、良好な流動性を持ち、且つ、軽量でありながら良好な強度発現性を備えた軽量樹脂充填材及び軽量樹脂硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、軽量骨材の種類及び含有量を調整することで、流動性がよく、軽量性及び強度発現性を両立できることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[9]である。
[1]熱硬化性樹脂組成物及び軽量骨材を含み、軽量骨材が、粒径0.5mm超5mm以下であり、且つ単位容積質量0.05~0.4kg/Lである軽量骨材Aと、粒径0.5mm以下であり、且つ単位容積質量0.4~0.8kg/Lである軽量骨材Bとを含み、軽量骨材の含有量が、熱硬化性樹脂組成物100質量部に対し、30~95質量部である、軽量樹脂充填材。
[2]軽量骨材A及び軽量骨材Bの質量比([軽量骨材Aの質量]/[軽量骨材Bの質量])が、0.5~4である、[1]に記載の軽量樹脂充填材。
[3]熱硬化性樹脂組成物に含まれる熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂である、[1]又は[2]に記載の軽量樹脂充填材。
[4]熱硬化性樹脂組成物が、エポキシ樹脂希釈剤を更に含む、[3]に記載の軽量樹脂充填材。
[5]硬化剤を更に含む、[1]~[4]のいずれかに記載の軽量樹脂充填材。
[6]無機微粉末を更に含む、[1]~[5]のいずれかに記載の軽量樹脂充填材。
[7][1]~[6]のいずれかに記載の軽量樹脂充填材を硬化させた軽量樹脂硬化物。
[8]密度が0.45~1kg/Lである、[7]に記載の軽量樹脂硬化物。
[9]圧縮強度が10N/mm以上である、[7]又は[8]に記載の軽量樹脂硬化物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、良好な流動性を持ち、且つ、軽量でありながら良好な強度発現性を備えた軽量樹脂充填材及び軽量樹脂硬化物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0010】
本実施形態の軽量樹脂充填材は、熱硬化性樹脂組成物及び軽量骨材を含む。
【0011】
熱硬化性樹脂組成物は、特に限定されるものではなく、一般的な熱硬化性樹脂を含むものを用いることができる。熱硬化性樹脂の具体例としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ジアリルテレフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は一種を単独で用いてもよく、または二種以上を併せて用いてもよい。強度発現性に優れやすいという観点から、熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂が好ましく、エポキシ樹脂がより好ましい。
【0012】
エポキシ樹脂としては、具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、カテコール型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、オキサゾリドン環型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等の芳香族構造を有し且つエポキシ基を3個以上有するエポキシ化合物、固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
エポキシ樹脂の中でも、価格・強度のバランスが良い傾向にあるという観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。
上記エポキシ樹脂の市販品としては、株式会社ADEKA製アデカレジンEP-4100シリーズ;三菱ケミカル製jER828、jER834、jER1001、DIC株式会社製EPICLON840、EPICLON850、EPICLON850-LC、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製エポトートYD-127、YD-128等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0013】
また、より優れた流動性を持たせやすいという観点から、熱硬化性樹脂組成物は、低粘度化材料を含むこともできる。低粘度化材料としては、エポキシ樹脂希釈剤等の反応性希釈剤;ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ベンジルアルコール、コールタール等の非反応性希釈剤(可塑剤)等が挙げられる。
低粘度化材料の中でも強度発現性に優れやすいという観点から、エポキシ樹脂希釈剤が好ましい。
エポキシ樹脂希釈剤に含まれるエポキシ基の数は、1つでも2つ以上でもよく、特に限定されるものではない。1つのエポキシ基を有する反応性希釈剤としては、例えば、n-ブチルグリシジルエーテル、C12-C14のアルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、スチレンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、p-sec-ブチルフェニルグリシジルエーテル、t-ブチルフェニルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、3級カルボン酸グリシジルエステルが挙げられる。2つのエポキシ基を有する反応性希釈剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルが挙げられる。3つのエポキシ基を有する反応性希釈剤としては、例えば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテルが挙げられる。
低粘度化材料としては、流動性の確保と軽量樹脂硬化物の強度を両立しやすいという観点から、2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂希釈剤が好ましい。低粘度化材料の含有量は、熱硬化性樹脂100質量部に対し、0.1~200質量部であることが好ましく、10~100質量部であることがより好ましい。低粘度化材料の含有量が上記範囲内であれば、流動性の確保と軽量樹脂硬化物の強度を両立しやすい。
【0014】
軽量樹脂充填材は、硬化が促進され、常温での作業性が一層優れるという観点から、硬化剤を含んでもよい。硬化剤は、熱硬化性樹脂に応じて適宜選択することができる。エポキシ樹脂用の硬化剤としては、例えば、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤が挙げられる。硬化剤としては、強度発現、常温における反応性、可使時間のバランスがより一層良いことから、アミン系硬化剤が好ましく、特にアミド基を有するアミン系硬化剤(以下、アミド系硬化剤という)が好ましい。
【0015】
アミド系硬化剤は分子内にアミド構造を有する硬化剤であり、例えば、アミン化合物とカルボン酸化合物、その塩化物又はエステルと反応して得られるものである。
アミド系硬化剤を提供しうるアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノブタン、1,4-ジアミノブタン、ヘキサメチレンジアミン等のアルキレンジアミン類;ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン等のポリアルキルポリアミン類;1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ジアミノメチルシクロヘキサン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-3,6-ジエチルシクロヘキサン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルプロパン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)スルホン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルエーテル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミン、ノルボルネンジアミン等の脂環式ポリアミン類;m-キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジアミン、1-メチル-3,5-ジエチル-2,4-ジアミンベンゼン、1-メチル-3,5-ジエチル-2,6-ジアミノベンゼン、1,3,5-トリエチル-2,6-ジアミノベンゼン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,5,3’、5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ポリアミン類が挙げられる。
アミド系硬化剤を提供しうるカルボン酸化合物としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、グルタル酸、スベリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、トリマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸等の脂肪族、芳香族又は脂環族多塩基酸が挙げられる。
アミド系硬化剤の市販品としては、例えば、株式会社ADEKA製、アデカハードナーEH-2300、EH-4602、EH-3427A、EH-4024W等、三菱ケミカル株式会社製jERキュアシリーズ等、DIC株式会社製LUCKAMIDEシリーズ等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
アミド系硬化剤の含有量は、熱硬化性樹脂組成物100質量部に対し、0.1~200質量部であることが好ましく、10~150質量部であることがより好ましい。アミド系硬化剤の含有量が上記範囲内であれば、強度発現、常温における反応性、可使時間のバランスがより一層良いものとなる。
【0016】
軽量骨材は、後述する粒径及び単位容積質量の条件を満たすものであれば特に限定されるものではなく、例えば、黒曜石、真珠岩等を焼成発泡させた無機系発泡性骨材であるパーライト、火力発電所で発生するフライアッシュバルーン、発泡ガラス粒(ガラスバルーン)、樹脂組成物から形成され気泡を有する発泡樹脂等が挙げられる。軽量骨材は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0017】
軽量骨材は、粒径0.5mm超5mm以下であり、且つ単位容積質量0.05~0.4kg/Lである軽量骨材Aと、粒径0.5mm以下であり、且つ単位容積質量0.4~0.8kg/Lである軽量骨材Bとを含む。このような軽量骨材を併用することで、軽量化並びに良好な強度発現性及び流動性を兼ね備えることができる。本明細書において、粒径0.5mm超5mm以下の軽量骨材とは、5mmのふるいを通過し、0.5mmのふるいに残留するものを指し、粒径0.5mm以下の軽量骨材とは、0.5mmのふるいを通過するものを指す。
【0018】
軽量骨材Aの平均粒径は、0.5~3mmであることが好ましく、0.6~2mmであることがより好ましく、0.7~1.5mmであることが更に好ましい。軽量骨材Bの平均粒径は、0.1~0.45mmであることが好ましく、0.15~0.4mmであることがより好ましく、0.2~0.35mmであることが更に好ましい。軽量骨材A及びBの平均粒径が上記範囲内であれば、流動性を確保しつつ、軽量化と良好な強度発現性を両立しやすい。本明細書において、平均粒径とは、頻度の累計が50質量%となる粒子径(d50、メディアン径)を指す。
【0019】
軽量骨材Aの単位容積質量は、0.1~0.35kg/Lであることが好ましく、0.15~0.3kg/Lであることがより好ましい。軽量骨材Bの単位容積質量は、0.45~0.75kg/Lであることが好ましく、0.5~0.7kg/Lであることがより好ましい。軽量骨材A及びBの単位容積質量が上記範囲内であれば、軽量性と強度発現性を両立しやすい。
【0020】
軽量骨材A及び軽量骨材Bの質量比([軽量骨材Aの質量]/[軽量骨材Bの質量])は、0.5~4であることが好ましく、0.7~3.5であることがより好ましく、0.9~3.2であることが更に好ましい。軽量骨材A及び軽量骨材Bの質量比が上記範囲内であれば、軽量化並びに良好な強度発現性及び流動性を確保しやすい。
【0021】
軽量骨材の含有量は、熱硬化性樹脂組成物100質量部に対し、30~90質量部である。軽量骨材の含有量が上記範囲外であると、軽量化の効果が十分に得られない場合や、圧縮強度10N/mm以上を確保できない可能性がある。軽量骨材の含有量は、軽量化並びに良好な強度発現性及び流動性を確保しやすいという観点から、熱硬化性樹脂組成物100質量部に対し、45~85質量部であることが好ましく、50~80質量部であることがより好ましく、55~75質量部であることが更に好ましい。
【0022】
本実施形態の軽量樹脂充填材は、無機微粉末を含んでもよい。無機微粉末としては、例えば、ヒュームドシリカ、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸ケイ素、ケイ酸カルシウム、チタン酸カリウム、べリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニアが挙げられる。無機微粉末としては、材料分離をより一層抑制できるという観点から、ヒュームドシリカが好ましい。無機微粉末の含有量は、熱硬化性樹脂組成物100質量部に対し、0.1~10質量部であることが好ましく、0.2~7質量部であることがより好ましく、0.3~5質量部であることが更に好ましい。無機微粉末の含有量が上記範囲内であれば、材料分離を起こしにくい。
【0023】
本実施形態の軽量樹脂充填材は、本発明の効果を損なわないものであれば、上記以外の成分を含有することができる。このような成分として、例えば、ポゾラン反応性物質、高炉スラグ微粉末、珪石粉、石灰石微粉末等の無機微粉末、各種骨材(砕砂、川砂、海砂等)、繊維、顔料が挙げられる。
【0024】
本実施形態の軽量樹脂充填材を製造する方法は、特に限定されず、例えば、ハンドミキサー、パン型ミキサー、二軸ミキサー、ラインミキサー、ジクロスミキサー、その他市販されている汎用モルタルミキサー等のミキサーにより混合することで製造することができる。
【0025】
本実施形態の軽量樹脂充填材は、硬化させることで軽量樹脂硬化物とすることができる。軽量樹脂硬化物の密度は、0.45~1kg/Lであることが好ましく、0.5~0.8kg/Lであることがより好ましく、0.52~0.7kg/Lであることが更に好ましい。軽量樹脂硬化物の密度が上記範囲内であれば、より十分な軽量化の効果が得られ、構造物への負荷を軽減しやすい。
また、軽量樹脂硬化物の圧縮強度は、10N/mm以上であることが好ましく、12N/mm以上であることがより好ましく、15N/mm以上であることが更に好ましい。
【0026】
軽量樹脂硬化物は、軽量樹脂充填材に対し、加熱又は硬化剤の添加等の処理を行うことにより硬化させることができる。
【0027】
本実施形態の軽量樹脂充填材は流動性に優れ、その硬化物は軽量でありながら強度発現性にも優れたものとなる。そのため、本実施形態の軽量樹脂充填材及び軽量樹脂硬化物は、構造体等の補修・修復、補強等に好適に用いることができる。
【実施例
【0028】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0029】
[材料]
熱硬化性樹脂:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(製品名アデカレジンEP-4100E)
エポキシ樹脂希釈剤:1,6-ヘキサンジオール型エポキシ樹脂(製品名アデカグリシロールED-503)
硬化剤:ポリアミド系硬化剤(PMX-5165、活性水素当量80、粘度3,000mPa・s/25℃)
軽量骨材A:パーライト(平均粒径1.0mm(粒径0.5mm超5mm以下)、単位容積質量0.2kg/L)
軽量骨材B:パーライト(平均粒径0.3mm(粒径0.5mm以下)、単位容積質量0.6kg/L)
無機微粉末:ヒュームドシリカ
【0030】
[軽量樹脂充填材の作製]
各材料を表1に示す割合として配合し、20℃恒温度試験室内にてハンドミキサ(回転速度1000rpm)で10分間混合し、軽量樹脂充填材を作製した。
【0031】
[評価方法]
流動性試験は軽量樹脂充填材を用いて評価を行った。密度及び圧縮強度試験は軽量樹脂充填材を硬化させて軽量樹脂硬化物を作製し、得られた軽量樹脂硬化物を用いて各種評価を行った。各結果を表1に示す。
・密度(単位容積質量)
軽量樹脂硬化物から10×10×4mmサイズの試験片を切り出し、その体積と密度を測定することにより密度(kg/L)を測定した。
・圧縮強度
軽量樹脂硬化物から10×10×4mmサイズの試験片を切り出し、20℃恒温度試験室内にて7日間養生した後、JIS K 7181:2011に準拠して圧縮強度を測定した。
・流動性
練混ぜが終了した軽量樹脂充填材を用い、JASS15 M-103に準拠してフロー値を測定した。
【0032】
【表1】
【0033】
表1の結果から、実施例の軽量樹脂充填材は流動性に優れ、その硬化物は軽量でありながら十分な圧縮強度を備えていることが示された。