(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】ハロゲノギ酸ハロゲン化アルキルエステルの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 68/02 20060101AFI20240124BHJP
C07C 69/96 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
C07C68/02 A
C07C69/96 A
(21)【出願番号】P 2020556159
(86)(22)【出願日】2019-11-14
(86)【国際出願番号】 JP2019044664
(87)【国際公開番号】W WO2020100970
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】P 2018214990
(32)【優先日】2018-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業「含フッ素カーボネートを鍵中間体とする安全な製造プロセスによる高機能・高付加価値ポリウレタン・ポリカーボネート材料の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津田 明彦
(72)【発明者】
【氏名】岡添 隆
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-067030(JP,A)
【文献】特開2013-181028(JP,A)
【文献】国際公開第15/156245(WO,A1)
【文献】入江喜一,ホスゲンの製造と利用,燃料協会誌,1960年,Vol.39,No.400,pp.575-583
【文献】HAUTECLOQUE,S.,On the photooxidation of gaseous HCCl3 and ClO radical formation,Journal of Photochemisty,1980年,Vol.14,pp.157-165
【文献】ALAPI, T. et al.,Direct VUV photolysis of chlorinated methanes and their mixtures in an oxygen stream using an ozone,Chemosphere,2007年,Vol.67,pp.693-701
【文献】河合聰,クロロホルムの分解に関する考察,薬学雑誌,1966年,Vol.86,No.12,pp.1125-1132
【文献】W. Sean McGivern, et al.,Investigation of the Atmospheric Oxidation Pathways of Bromoform and Dibromomethane:Initiation via U,J. Phys. Chem. A,2004年,Vol.108,pp.7247-7252
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン化メタンに、酸素存在下、15℃以下の温度で高エネルギー光を照射する工程、および、
更にハロゲン化アルコール
と、複素環式芳香族アミンおよび非求核性強塩基から選択される1以上の塩基を添加し、上記高エネルギー光を照射せずに反応させる工程を含むことを特徴とするハロゲノギ酸ハロゲン化アルキルエステルの製造方法。
【請求項2】
上記温度が5℃以下である請求項1に記載のハロゲノギ酸ハロゲン化アルキルエステルの製造方法。
【請求項3】
上記複素環式芳香族アミンが、ピリジン、ピコリンまたはルチジンである請求項
1に記載のハロゲノギ酸ハロゲン化アルキルエステルの製造方法。
【請求項4】
上記非求核性強塩基が、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エンまたは1,1,3,3-テトラメチルグアニジンである請求項
1に記載のハロゲノギ酸ハロゲン化アルキルエステルの製造方法。
【請求項5】
上記高エネルギー光が180nm以上、280nm以下の波長の光を含むものである請求項1~
4のいずれかに記載のハロゲノギ酸ハロゲン化アルキルエステルの製造方法。
【請求項6】
上記ハロゲン化メタンにおけるハロゲノ基が、クロロ、ブロモおよびヨードから選択される1以上である請求項1~
5のいずれかに記載のハロゲノギ酸ハロゲン化アルキルエステルの製造方法。
【請求項7】
上記ハロゲン化メタンがクロロホルムである請求項1~
6のいずれかに記載のハロゲノギ酸ハロゲン化アルキルエステルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルバメートやイソシアネート化合物の合成中間体にもなるハロゲノギ酸ハロゲン化アルキルエステルを安全かつ効率的に製造できる方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
イソシアネート基(-N=C=O)を有するイソシアネート化合物は反応性が極めて高く、ポリウレタンなどの原料として非常に有用である。イソシアネート化合物は、一般的に、アミン化合物とホスゲンを反応させて合成される(特許文献1等)。一方、ハロゲノギ酸ハロゲン化アルキルエステルとアミン化合物とを反応させてカルバメートを得、カルバメートを熱分解することにより製造する方法もある。ハロゲノギ酸ハロゲン化アルキルエステルは、一般的にはハロゲン化アルコールとホスゲン等のハロゲン化カルボニルとを反応させて製造される。
【0003】
しかしホスゲンは水と容易に反応して塩化水素を発生させたり、毒ガスとして利用された歴史があるなど、非常に有毒なものである。ホスゲンは主として、活性炭触媒の存在下、無水塩素ガスと高純度一酸化炭素との高発熱気相反応によって製造される。ここで用いる塩素ガスや一酸化炭素も非常に有毒である。ホスゲンの基本的な製造プロセスは、1920年代から大きく変わっていない。そのようなプロセスによるホスゲンの製造には、高価で巨大な設備が必要である。しかし、ホスゲンの高い毒性のために、幅広い安全性の確保はプラント設計に不可欠であり、それが製造コストの増大につながる。また、ホスゲンの大規模製造プロセスは、多くの環境問題を引き起こす。その他、ホスゲンはトリホスゲンをトリエチルアミン等の塩基により分解して製造される。しかし、トリホスゲンは高価な試薬であるし、何らかの物理刺激もしくは化学刺激でホスゲンに分解する潜在的危険性を持ち、また自身も非常に高い毒性を有することが知られている。
【0004】
本発明者は、ハロゲン化炭化水素に酸素存在下で光照射してホスゲン等の化合物を得る方法を開発している(特許文献2)。特許文献2には、発生した化合物を別の反応容器に導入する方法が記載されているが、ハロゲン化炭化水素と原料化合物を共存させておき、生成した化合物と原料化合物を1つの反応容器内で反応させる方法も記載されている。
また、本発明者は、ハロゲン化炭化水素とアルコールとを含む混合物に、酸素存在下で光照射することを特徴とするハロゲン化カルボン酸エステルの製造方法を開発している(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2017/104709号パンフレット
【文献】特開2013-181028号公報
【文献】国際公開第2015/156245号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、本発明者は、より安全にホスゲンを利用する方法を開発している。しかし特許文献2に記載の方法では、例えば原料化合物としてアルコール化合物を用いると炭酸ジエステルまで反応が進行してしまう。
また、特許文献3に記載の方法では、ハロゲン化炭化水素に対して比較的少量のアルコールを用いることにより、カーボネートの生成を抑制してハロゲン化ギ酸エステルを得ている。しかし特許文献3に記載の方法では、脱離し易く求核性が低いハロゲン化アルコキシル基を有するハロゲノギ酸ハロゲン化アルキルエステルを得ることができない。
そこで本発明は、カルバメートやイソシアネート化合物の合成中間体にもなるハロゲノギ酸ハロゲン化アルキルエステルを安全かつ効率的に製造できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、従来、ハロゲン化メタンを分解してホスゲンを得るには光と共に熱も必要であるので、低温ではホスゲンは生成せず、また、ホスゲンは多量の酸素の存在下で光照射すると容易に分解して、一酸化炭素、二酸化炭素、塩素などを与えると考えられていた。しかし本発明者の実験的知見によれば、意外にも比較的低温でもホスゲンは発生し、且つ生成したホスゲンは容易には分解しない。また、比較的低温であれば、ホスゲンの常圧での沸点は8.3℃であるので、系外に漏出する懸念も低い。よって本発明者は、先ず比較的低温でハロゲン化カルボニル化合物を生成させておき、そこへハロゲン化アルコールを添加することにより、ハロゲノギ酸ハロゲン化アルキルエステルを安全かつ効率的に製造できることを見出して、本発明を完成した。
以下、本発明を示す。
【0008】
[1] ハロゲン化メタンに、酸素存在下、15℃以下の温度で高エネルギー光を照射する工程、および、
更にハロゲン化アルコールを添加し、上記高エネルギー光を照射せずに反応させる工程を含むことを特徴とするハロゲノギ酸ハロゲン化アルキルエステルの製造方法。
[2] 上記温度が5℃以下である上記[1]に記載のハロゲノギ酸ハロゲン化アルキルエステルの製造方法。
[3] 上記ハロゲン化アルコールに加えて、塩基を添加する上記[1]または[2]に記載のハロゲノギ酸ハロゲン化アルキルエステルの製造方法。
[4] 上記塩基が複素環式芳香族アミンおよび非求核性強塩基から選択される1以上である上記[3]に記載のハロゲノギ酸ハロゲン化アルキルエステルの製造方法。
[5] 上記複素環式芳香族アミンが、ピリジン、ピコリンまたはルチジンである上記[4]に記載のハロゲノギ酸ハロゲン化アルキルエステルの製造方法。
[6] 上記非求核性強塩基が、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エンまたは1,1,3,3-テトラメチルグアニジンである上記[4]に記載のハロゲノギ酸ハロゲン化アルキルエステルの製造方法。
[7] 上記高エネルギー光が180nm以上、280nm以下の波長の光を含むものである上記[1]~[6]のいずれかに記載のハロゲノギ酸ハロゲン化アルキルエステルの製造方法。
[8] 上記ハロゲン化メタンにおけるハロゲノ基が、クロロ、ブロモおよびヨードから選択される1以上である上記[1]~[7]のいずれかに記載のハロゲノギ酸ハロゲン化アルキルエステルの製造方法。
[9] 上記ハロゲン化メタンがクロロホルムである上記[1]~[8]のいずれかに記載のハロゲノギ酸ハロゲン化アルキルエステルの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明方法では、ホスゲンや一酸化炭素といった毒性が極めて高い化合物や、高価な触媒を原料化合物として使う必要が無い。また、ホスゲンが系外に漏出する可能性も比較的低く、また、カルバメートやイソシアネート化合物の合成中間体にもなる有用なハロゲノギ酸ハロゲン化アルキルエステルが高収率で得られる。よって本発明方法は、有用なハロゲノギ酸ハロゲン化アルキルエステルを安全且つ効率的に製造できる技術として、産業上極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明方法で用いられる反応装置の構成の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.ハロゲン化メタンの分解工程
本工程では、ハロゲン化メタンに、酸素存在下、15℃以下の温度で高エネルギー光を照射することにより、ハロゲン化メタンを分解してハロゲン化カルボニルまたはハロゲン化カルボニル様化合物を得る。
【0012】
本発明に係る反応においてハロゲン化メタンは、おそらく高エネルギー光と酸素により分解され、ホスゲン等のハロゲン化カルボニルまたはハロゲン化カルボニル様の化合物に変換されると考えられる。なお、例えばハロゲン化カルボニルであるホスゲンは非常に毒性が高く、その運搬などには厳しい規制が課せられているが、ハロゲン化メタンは勿論それほど危険ではない。
【0013】
特に常温常圧で液体であるハロゲン化メタンは有機溶媒などとして大量に消費される一方で、大気に放出されると大気汚染やオゾン層の破壊といった環境汚染の原因となる。本発明は、かかるハロゲン化メタンを光分解することで有用な化合物を製造する技術であり、工業的にもまた環境科学的にも寄与するところは大きい。
【0014】
ハロゲン化メタンは、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードから選択される1種以上のハロゲノ基で置換されたメタンであり、クロロ、ブロモおよびヨードから選択される1種以上のハロゲノ基で置換されたメタンが好ましい。上述した通り、本発明においてハロゲン化メタンの一部は高エネルギー光と酸素により分解され、ハロゲン化カルボニルと同等の働きをすると考えられる。
【0015】
具体的なハロゲン化メタンとしては、例えば、トリフルオロメタン等のフルオロメタン;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のクロロメタン;ジブロモメタン、ブロモホルム等のブロモメタン;ヨードメタン、ジヨードメタン等のヨードメタン;クロロジフルオロメタン、ジクロロフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ブロモフルオロメタン等を挙げることができる。
【0016】
ハロゲン化メタンは目的とする化学反応や所期の生成物に応じて適宜選択すればよく、また、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。好適には、製造目的化合物に応じて、ハロゲン化メタンは1種のみ用いる。ハロゲン化メタンの中でもクロロを有する化合物が好ましく、クロロホルムがより好ましい。
【0017】
本発明方法で用いるハロゲン化メタンは、例えば溶媒として一旦使用したハロゲン化メタンを回収したものであってもよい。その際、多量の不純物や水が含まれていると反応が阻害されるおそれがあり得るので、ある程度は精製することが好ましい。例えば、水洗により水や水溶性不純物を除去した後、無水硫酸ナトリウムや無水硫酸マグネシウムなどで脱水することが好ましい。但し、水が含まれていても、少なくともハロゲン化メタンの分解反応は進行するため、生産性を低下させるような過剰な精製は必要ない。かかる水含量としては、0質量%以上が好ましく、0.0001質量%以上がより好ましく、また、0.5質量%以下が好ましく、0.2質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下がより更に好ましい。また、上記再利用ハロゲン化メタンには、ハロゲン化メタンの分解物などが含まれていてもよい。
【0018】
本発明において「酸素存在下」とは、ハロゲン化メタンが酸素と接している状態か、ハロゲン化メタン中に酸素が存在する状態のいずれであってもよい。従って、本工程の反応は、酸素を含む気体の気流下で行ってもよいが、ハロゲン化メタンの分解効率を高める観点からは、酸素を含む気体はバブリングによりハロゲン化メタン中へ供給することが好ましい。
【0019】
酸素源としては、酸素を含む気体であればよく、例えば、空気や、精製された酸素を用いることができる。精製された酸素は、窒素やアルゴン等の不活性ガスと混合して使用してもよい。コストや容易さの点からは空気を用いることが好ましい。高エネルギー光の照射によるハロゲン化メタンの分解効率を高める観点からは、酸素源として用いられる気体中の酸素含有率は約15体積%以上100体積%以下であることが好ましい。酸素含有率は上記ハロゲン化メタンなどの種類によって適宜決定すればよい。例えば、上記ハロゲン化メタンとしてジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化メタンを用いる場合は、酸素含有率15体積%以上100体積%以下が好ましく、ジブロモメタンやブロモホルムなどのブロモメタンを用いる場合は、酸素含有率90体積%以上100体積%以下が好ましい。なお、酸素(酸素含有率100体積%)を用いる場合であっても、反応系内への酸素流量の調節により酸素含有率を上記範囲内に制御することができる。酸素を含む気体の供給方法は特に限定されず、流量調整器を取り付けた酸素ボンベから反応系内に供給してもよく、また、酸素発生装置から反応系内に供給してもよい。
【0020】
酸素を含む気体の量は、ハロゲン化メタンの量や、反応容器の形状などに応じて適宜決定すればよい。例えば、反応容器中に存在するハロゲン化メタンに対する、反応容器へ供給する1分あたりの気体の量を、5容量倍以上とすることが好ましい。当該割合としては、10容量倍以上がより好ましく、25容量倍以上がよりさらに好ましい。当該割合の上限は特に制限されないが、500容量倍以下が好ましく、250容量倍以下がより好ましく、150容量倍以下がよりさらに好ましい。また、反応容器中に存在するハロゲン化メタンに対する、反応容器へ供給する1分あたりの酸素の量としては、1容量倍以上25容量倍以下とすることができる。気体の流量が多過ぎる場合には、ハロゲン化メタンが揮発してしまう虞があり得る一方で、少な過ぎると反応が進行し難くなる虞があり得る。酸素の供給速度としては、例えば、ハロゲン化メタン4mLに対して0.01L/分以上、10L/分以下とすることができる。
【0021】
本発明では、15℃以下でハロゲン化メタンと酸素を接触させる。例えば、ハロゲン化カルボニルであるホスゲンの常圧での沸点は8.3℃であるので、たとえホスゲンが生成しても、15℃以下であればハロゲン化メタンから漏出し難いといえる。ハロゲン化カルボニルおよびハロゲン化カルボニル様化合物の漏出のし難さの観点からは、当該温度としては10℃以下が好ましく、5℃以下または2℃以下がより好ましい。当該温度の下限は特に制限されないが、例えば、当該温度としては-80℃以上が好ましく、-40℃以上がより好ましく、-20℃以上または-10℃以上がより更に好ましい。
【0022】
ハロゲン化メタンに照射する高エネルギー光は、ハロゲン化メタンを分解するに十分なエネルギーを有する光をいう。例えば、波長280nm以上315nm以下のUV-Bおよび/または波長180nm以上280nm以下のUV-Cを含む光を用いることができ、波長180nm以上280nm以下のUV-Cを含む光を用いることが好ましく、ピーク波長が180nm以上315nm以下の範囲に含まれる光がより好ましく、ピーク波長が180nm以上280nm以下の範囲に含まれる光がより更に好ましい。高エネルギーの波長またはピーク波長は上記ハロゲン化メタンの種類に応じて適宜決定すればよいが、400nm以下がより好ましく、300nm以下がよりさらに好ましい。照射光に上記波長範囲の光が含まれている場合には、上記ハロゲン化メタンを効率良く酸化的光分解できる。例えば、波長280nm以上315nm以下のUV-Bおよび/または波長180nm以上280nm以下のUV-Cを含む光またはピーク波長がこの範囲に含まれる光を用いることができ、波長180nm以上280nm以下のUV-Cを含む光またはピーク波長がこの範囲に含まれる光を用いることが好ましい。なお、太陽光にも数%の紫外線が含まれ、蛍光灯の光にも極僅かの紫外線が含まれるが、蛍光灯の光や地表に到達する太陽光にはUV-Cは含まれず、ハロゲン化メタンを十分に分解する程度のエネルギーを有さないため、これらは本発明でいう高エネルギー光には含まれない。
【0023】
光照射の手段は、上記波長の光を照射できるものである限り特に限定されないが、上記の波長範囲の光を波長域に十分量含む光源としては、例えば、太陽光、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、メタルハライドランプ、LEDランプ等が挙げられる。反応効率やコストの点から、低圧水銀ランプが好ましく用いられる。
【0024】
照射光の強度などの条件は、出発原料の種類や使用量によって適宜設定すればよいが、例えば、光源から上記組成物の最短距離位置における所望の光の強度としては、1mW/cm2以上、50mW/cm2以下が好ましい。また、光源とハロゲン化メタンとの最短距離としては、1m以下が好ましく、50cm以下がより好ましく、10cm以下または5cm以下がより更に好ましい。当該最短距離の下限は特に制限されないが、0cm、即ち、光源をハロゲン化メタン中に浸漬してもよい。
【0025】
本発明方法に使用できる反応装置としては、反応容器に高エネルギー光照射手段を備えたものが挙げられる。反応装置には、攪拌装置や温度制御手段が備えられていてもよい。
図1に、本発明方法に使用できる反応装置の一態様を示す。
図1に示す反応装置は、筒状反応容器6内に高エネルギー光照射手段1を有するものである。筒状反応容器6内に、ハロゲン化メタンを添加し、当該反応容器6内に酸素を含有する気体を供給またはハロゲン化メタンに酸素を含有する気体をバブリングしながら(図示せず)、高エネルギー光照射手段1より高エネルギー光を照射して反応を行う。高エネルギー光照射手段1をジャケット2等で覆う場合、該ジャケットは、高エネルギー光を透過する素材であることが好ましい。また、反応容器の外側から高エネルギー光照射を行ってもよく、この場合、反応容器は、高エネルギー光を透過する素材であることが好ましい。高エネルギー光を透過する素材としては、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、石英ガラス等が好ましく挙げられる。
【0026】
高エネルギー光の照射時間は、ハロゲン化メタンが十分に分解される範囲で適宜調整すればよいが、例えば0.5時間以上10時間以下が好ましく、1時間以上6時間以下がより好ましく、2時間以上4時間以下がよりさらに好ましい。高エネルギー光照射の態様も特に限定されず、本工程の開始から終了まで連続して高エネルギー光を照射する態様、高エネルギー光照射と非照射とを交互に繰り返す態様、反応開始から所定の時間のみ高エネルギー光を照射する態様など、いずれの態様も採用できるが、本工程の開始から終了まで連続して高エネルギー光を照射する態様が好ましい。
【0027】
2.ハロゲノギ酸ハロゲン化アルキルエステルの生成工程
本発明の別の態様では、高エネルギー光を照射したハロゲン化メタンに、更にハロゲン化アルコールを添加し、高エネルギー光を照射せずに反応させることにより、ハロゲノギ酸ハロゲン化アルキルエステルを得る。ハロゲン化アルコールが式R1-(OH)nで表される化合物である場合の反応式を以下に示す。
【0028】
【化1】
[式中、R
1は1以上のハロゲノ基に置換されたn価有機基を示し、Halはハロゲノ基を示し、nは1以上、100以下の整数を示す。]
【0029】
本工程では、電気陰性度が高いハロゲノ基を置換基として有し、酸性度が比較的高いハロゲン化アルコールを用いることで、ハロゲノギ酸ハロゲン化アルキルエステルが得られる。
【0030】
ハロゲン化アルコールは、1以上のハロゲノ基と水酸基を有する化合物であれば特に制限されない。例えば、ハロゲン化アルコールは、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、環状構造や、炭素原子間にエーテル結合基(-O-)を有していてもよい。ハロゲン化アルコールが有するハロゲノ基は特に制限されないが、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードから選択される1以上のハロゲン基を挙げることができ、化合物の機能性の観点からフルオロが好ましい。ハロゲン化アルコールの炭素数も特に制限されないが、例えば、1以上、1,000以下とすることができる。水酸基の数は1以上であり、50以下が好ましく、20以下または10以下が好ましく、5以下または3以下がより好ましく、2が最も好ましい。ハロゲン化アルコールにおける置換基としてのハロゲノ基の数は、置換可能であれば特に制限されないが、例えば1以上、15以下とすることができる。また、ハロゲノ基の置換基数が多くなるほどハロゲノギ酸ハロゲン化アルキルエステルの反応性は高くなるため、当該置換基数は大きいほど好ましい。
【0031】
ハロゲン化アルコールが式R1-(OH)nで表される化合物である場合、R1としては、例えば炭化水素基、単環ヘテロアリール基、多環ヘテロアリール基を挙げることができる。炭化水素基としては、例えば、C1-30アルキル基、C2-30アルケニル基、C2-30アルキニル基、C6-32芳香族炭化水素基、およびこれら2以上5以下の基が結合した基を挙げることができる。
【0032】
また、ハロゲン化アルコールとしては、以下のハロゲン化ポリエーテルジオール、ハロゲン化ポリエステルジオール、およびハロゲン化ポリカーボネートジオールを用いることもできる。また、ハロゲン化アルコールとしてハロゲン化アクリルポリオールも用いることができる。
【0033】
【化2】
[式中、R
2~R
6は、独立して1以上のハロゲノ基に置換されたC
1-30アルキレン基を表し、m、pおよびqは、独立して1以上、50以下の整数を表す。]
【0034】
「C1-30アルキル基」は、炭素数1以上、30以下の直鎖状、分枝鎖状、または環状の飽和脂肪族炭化水素基をいう。例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、シクロブチル、n-ペンチル、シクロペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、シクロヘプチル、オクチル、シクロオクチル、n-ノニル、n-デシル、n-イコシル、n-トリアコンチル等である。好ましくはC1-20アルキル基またはC1-10アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基またはC1-4アルキル基であり、より更に好ましくはC1-2アルキル基またはメチルである。
【0035】
「C2-30アルケニル基」は、炭素数が2以上、30以下であり、少なくとも一つの炭素-炭素二重結合を有する直鎖状、分枝鎖状、または環状の不飽和脂肪族炭化水素基をいう。例えば、エテニル(ビニル)、1-プロペニル、2-プロペニル(アリル)、イソプロペニル、2-ブテニル、3-ブテニル、イソブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、オクテニル、デセニル、イコセニル、トリアコンテニル等である。好ましくはC2-20アルケニル基またはC2-10アルケニル基であり、より好ましくはC2-6アルケニル基またはC2-4アルケニル基であり、より更に好ましくはエテニル(ビニル)または2-プロペニル(アリル)である。
【0036】
「C2-30アルキニル基」は、炭素数が2以上、30以下であり、少なくとも一つの炭素-炭素三重結合を有する直鎖状、分枝鎖状、または環状の不飽和脂肪族炭化水素基をいう。例えば、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、2-ブチニル、3-ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、オクチニル、デシニル、イコシニル、トリアコンチニル基等である。好ましくはC2-20アルキニル基またはC2-10アルキニル基であり、より好ましくはC2-6アルキニル基またはC2-4アルキニル基である。
【0037】
「C6-32芳香族炭化水素基」とは、炭素数が6以上、32以下の芳香族炭化水素基をいう。例えば、フェニル、インデニル、ナフチル、ビフェニル、フェナレニル、フェナントレニル、アンドレセニル、トリフェニレニル、ピレニル、ナフタセニル、ペリレニル、ペンタセニル、ヘキサセニル、コロネニル、トリナフチレニル、ヘプタセニル、オヴァレニル等であり、好ましくはC6-20芳香族炭化水素基であり、より好ましくはC6-12芳香族炭化水素基であり、より更に好ましくはフェニルである。
【0038】
「単環ヘテロアリール基」とは、窒素原子、酸素原子または硫黄原子などのヘテロ原子を少なくとも1個有する5員単環芳香族ヘテロシクリル基または6員単環芳香族ヘテロシクリル基をいう。但し、求核性基である>NHを有するものを除く。例えば、チエニル、フリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾール等の5員単環ヘテロアリール基;ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル等の6員単環ヘテロアリール基を挙げることができる。
【0039】
「多環ヘテロアリール基」とは、窒素原子、酸素原子または硫黄原子などのヘテロ原子を少なくとも1個有する多環芳香族ヘテロシクリル基をいい、上記単環ヘテロアリール基同士や、上記単環ヘテロアリール基と芳香族炭化水素基が、単結合で結合していたり縮合したものをいう。例えば、インドリル、イソインドリル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、クロメニル等を挙げることができる。
【0040】
上記有機基は、生成したハロゲノギ酸ハロゲン化アルキルエステルと反応する反応性基以外の置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、例えば、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシル基、ニトロ基から選択される1以上の置換基を挙げることができる。
【0041】
ハロゲン化アルコールR1-(OH)nのnが2以上の整数であり、R1が2価以上の有機基である場合は、上記1価有機基の具体例は、2以上のn価に読み替えることができる。例えば、nが2である場合、上記C1-30アルキル基はC1-30アルキレン基に、nが3である場合、上記C1-30アルキル基はC1-30アルキリジン基に読み替えることができる。
【0042】
ハロゲン化ポリエーテルジオール、ハロゲン化ポリエステルジオール、およびハロゲン化ポリカーボネートジオールにおいて、R2~R4、R6の両端部はメチレン基(-CH2-)であり、ハロゲノ基は両端部以外の炭素上に置換していることが好ましい。
【0043】
例えば、1個の水酸基を有するフルオロアルコールとしては、ジフルオロエタノール、トリフルオロエタノール、モノフルオロプロパノール、ジフルオロプロパノール、トリフルオロプロパノール、テトラフルオロプロパノール、ペンタフルオロプロパノール、ヘキサフルオロプロパノール、モノフルオロブタノール、ジフルオロブタノール、トリフルオロブタノール、テトラフルオロブタノール、ペンタフルオロブタノール、ヘキサフルオロブタノール、ヘプタフルオロブタノール、モノフルオロペンタノール、ジフルオロペンタノール、トリフルオロペンタノール、テトラフルオロペンタノール、ペンタフルオロペンタノール、ヘキサフルオロペンタノール、ヘプタフルオロペンタノール、オクタフルオロペンタノール、ノナフルオロペンタノール、モノフルオロヘキサノール、ジフルオロヘキサノール、トリフルオロヘキサノール、テトラフルオロヘキサノール、ペンタフルオロヘキサノール、ヘキサフルオロヘキサノール、ヘプタフルオロヘキサノール、オクタフルオロヘキサノール、ノナフルオロヘキサノール、デカフルオロヘキサノール、ウンデカフルオロヘキサノール、モノフルオロヘプタノール、ジフルオロヘプタノール、トリフルオロヘプタノール、テトラフルオロヘプタノール、ペンタフルオロヘプタノール、ヘキサフルオロヘプタノール、ヘプタフルオロヘプタノール、オクタフルオロヘプタノール、ノナフルオロヘプタノール、デカフルオロヘプタノール、ウンデカフルオロヘプタノール、ドデカフルオロヘプタノール、トリデカフルオロヘプタノール、モノフルオロオクタノール、ジフルオロオクタノール、トリフルオロオクタノール、テトラフルオロオクタノール、ペンタフルオロオクタノール、ヘキサフルオロオクタノール、ヘプタフルオロオクタノール、オクタフルオロオクタノール、ノナフルオロオクタノール、デカフルオロオクタノール、ウンデカフルオロオクタノール、ドデカフルオロオクタノール、トリデカフルオロオクタノール、テトラデカフルオロオクタノール、ペンタデカフルオロオクタノール、モノフルオロノナノール、ジフルオロノナノール、トリフルオロノナノール、テトラフルオロノナノール、ペンタフルオロノナノール、ヘキサフルオロノナノール、ヘプタフルオロノナノール、オクタフルオロノナノール、ノナフルオロノナノール、デカフルオロノナノール、ウンデカフルオロノナノール、ドデカフルオロノナノール、トリデカフルオロノナノール、テトラデカフルオロノナノール、ペンタデカフルオロノナノール、ヘキサデカフルオロノナノール、ヘプタデカフルオロノナノール、モノフルオロデカノール、ジフルオロデカノール、トリフルオロデカノール、テトラフルオロデカノール、ペンタフルオロデカノール、ヘキサフルオロデカノール、ヘプタフルオロデカノール、オクタフルオロデカノール、ノナフルオロデカノール、デカフルオロデカノール、ウンデカフルオロデカノール、ドデカフルオロデカノール、トリデカフルオロデカノール、テトラデカフルオロデカノール、ペンタデカフルオロデカノール、ヘキサデカフルオロデカノール、ヘプタデカフルオロデカノール、オクタデカフルオロデカノール、ノナデカフルオロデカノール等が挙げられる。
【0044】
芳香族炭化水素基を有し1個の水酸基を有するフルオロアルコールとしては、モノフルオロフェノール、ジフルオロフェノール、トリフルオロフェノール、テトラフルオロフェノール、ペンタフルオロフェノール、トリフルオロメチルフェノール、モノフルオロベンジルアルコール、ジフルオロベンジルアルコール、トリフルオロベンジルアルコール、テトラフルオロベンジルアルコール、ペンタフルオロベンジルアルコール、トリフルオロメチルベンジルアルコール、モノフルオロフェノキシエタノール、ジフルオロフェノキシエタノール、トリフルオロフェノキシエタノール、テトラフルオロフェノキシエタノール、ペンタフルオロフェノキシエタノール等が挙げられる。
【0045】
2個の水酸基を有するフルオロアルコールとしては、モノフルオロプロピレングリコール、ジフルオロプロピレングリコール、モノフルオロブタンジオール、ジフルオロブタンジオール、トリフルオロブタンジオール、テトラフルオロブタンジオール、モノフルオロペンタンジオール、ジフルオロペンタンジオール、トリフルオロペンタンジオール、テトラフルオロペンタンジオール、ペンタフルオロペンタンジオール、ヘキサフルオロペンタンジオール、モノフルオロヘキサンジオール、ジフルオロヘキサンジオール、トリフルオロヘキサンジオール、テトラフルオロヘキサンジオール、ペンタフルオロヘキサンジオール、ヘキサフルオロヘキサンジオール、ヘプタフルオロヘキサンジオール、オクタフルオロヘキサンジオール、モノフルオロヘプタンジオール、ジフルオロヘプタンジオール、トリフルオロヘプタンジオール、テトラフルオロヘプタンジオール、ペンタフルオロヘプタンジオール、ヘキサフルオロヘプタンジオール、ヘプタフルオロヘプタンジオール、オクタフルオロヘプタンジオール、ノナフルオロヘプタンジオール、デカフルオロヘプタンジオール、モノフルオロオクタンジオール、ジフルオロオクタンジオール、トリフルオロオクタンジオール、テトラフルオロオクタンジオール、ペンタフルオロオクタンジオール、ヘキサフルオロオクタンジオール、ヘプタフルオロオクタンジオール、オクタフルオロオクタンジオール、ノナフルオロオクタンジオール、デカフルオロオクタンジオール、ウンデカフルオロオクタンジオール、ドデカフルオロオクタンジオール、モノフルオロノナンジオール、ジフルオロノナンジオール、トリフルオロノナンジオール、テトラフルオロノナンジオール、ペンタフルオロノナンジオール、ヘキサフルオロノナンジオール、ヘプタフルオロノナンジオール、オクタフルオロノナンジオール、ノナフルオロノナンジオール、デカフルオロノナンジオール、ウンデカフルオロノナンジオール、ドデカフルオロノナンジオール、トリデカフルオロノナンジオール、テトラデカフルオロノナンジオール、モノフルオロデカンジオール、ジフルオロデカンジオール、トリフルオロデカンジオール、テトラフルオロデカンジオール、ペンタフルオロデカンジオール、ヘキサフルオロデカンジオール、ヘプタフルオロデカンジオール、オクタフルオロデカンジオール、ノナフルオロデカンジオール、デカフルオロデカンジオール、ウンデカフルオロデカンジオール、ドデカフルオロデカンジオール、トリデカフルオロデカンジオール、テトラデカフルオロデカンジオール、ペンタデカフルオロデカンジオール、ヘキサデカフルオロデカンジオール等が挙げられる。
【0046】
芳香族炭化水素基を有し2個の水酸基を有するフルオロアルコールとしては、モノフルオロベンゼンジオール、ジフルオロベンゼンジオール、トリフルオロベンゼンジオール、テトラフルオロベンゼンジオール、モノフルオロベンゼンジメタノール、ジフルオロベンゼンジメタノール、トリフルオロベンゼンジメタノール、テトラフルオロベンゼンジメタノール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。
【0047】
3個の水酸基を有するフルオロアルコールとしては、モノフルオロペンタントリオール、ジフルオロペンタントリオール、モノフルオロヘキサントリオール、ジフルオロヘキサントリオール、トリフルオロヘキサントリオール、テトラフルオロヘキサントリオール、モノフルオロヘプタントリオール、ジフルオロヘプタントリオール、トリフルオロヘプタントリオール、テトラフルオロヘプタントリオール、ペンタフルオロヘプタントリオール、ヘキサフルオロヘプタントリオール、モノフルオロオクタントリオール、ジフルオロオクタントリオール、トリフルオロオクタントリオール、テトラフルオロオクタントリオール、ペンタフルオロオクタントリオール、ヘキサフルオロオクタントリオール、ヘプタフルオロオクタントリオール、オクタフルオロオクタントリオール、モノフルオロノナントリオール、ジフルオロノナントリオール、トリフルオロノナントリオール、テトラフルオロノナントリオール、ペンタフルオロノナントリオール、ヘキサフルオロノナントリオール、ヘプタフルオロノナントリオール、オクタフルオロノナントリオール、ノナフルオロノナントリオール、デカフルオロノナントリオール、モノフルオロデカントリオール、ジフルオロデカントリオール、トリフルオロデカントリオール、テトラフルオロデカントリオール、ペンタフルオロデカントリオール、ヘキサフルオロデカントリオール、ヘプタフルオロデカントリオール、オクタフルオロデカントリオール、ノナフルオロデカントリオール、デカフルオロデカントリオール、ウンデカフルオロデカントリオール、ドデカフルオロデカントリオール等が挙げられる。
【0048】
4個以上の水酸基を有するフルオロアルコールとしては、モノフルオロヘプタンテトラオール、ジフルオロヘプタンテトラオール、モノフルオロオクタンテトラオール、ジフルオロオクタンテトラオール、トリフルオロオクタンテトラオール、テトラフルオロオクタンテトラオール、モノフルオロノナンテトラオール、ジフルオロノナンテトラオール、トリフルオロノナンテトラオール、テトラフルオロノナンテトラオール、ペンタフルオロノナンテトラオール、ヘキサフルオロノナンテトラオール、モノフルオロデカンテトラオール、ジフルオロデカンテトラオール、トリフルオロデカンテトラオール、テトラフルオロデカンテトラオール、ペンタフルオロデカンテトラオール、ヘキサフルオロデカンテトラオール、ヘプタフルオロデカンテトラオール、オクタフルオロデカンテトラオール等が挙げられる。
【0049】
ハロゲン化アルコールの添加量は適宜調整すればよいが、例えば、ハロゲン化メタンの当初量に対して0.05mmol/mL以上、50mmol/mL以下とすることができる。当該割合が0.05mmol/mL以上であれば、反応がより効率的に進行すると考えられ、当該割合が50mmol/mL以下であれば、生成したハロゲノギ酸ハロゲン化アルキルエステルにハロゲン化アルコールが反応して炭酸ジエステルが生成する可能性がより低減されると考えられる。
【0050】
高エネルギー光の照射は、ハロゲン化アルコールの添加後に停止してもよいが、反応により生成したハロゲノギ酸ハロゲン化アルキルエステルが高エネルギー光の照射により分解する可能性があるため、ハロゲン化アルコールの添加前に停止することが好ましい。
【0051】
ハロゲン化アルコールの反応温度は、ハロゲン化メタンの分解反応の温度と同様にすることができる。即ち、15℃以下とすることができ、10℃以下または5℃以下が好ましく、2℃以下がより好ましい。当該温度の下限は特に制限されないが、例えば、当該温度としては-80℃以上が好ましく、-20℃以上または-15℃以上がより好ましい。当該反応工程を比較的低く設定することで、ハロゲン化カルボニルおよびハロゲン化カルボニル様化合物の漏出や、生成したハロゲノギ酸ハロゲン化アルキルエステルの反応や分解をより確実に抑制することができる。
【0052】
本反応工程では、ハロゲン化アルコールに加えて塩基を添加することが好ましい。塩基がハロゲン化アルコールと相互作用してハロゲン化アルコールの求核性が高まることによって、反応がより一層良好に進行すると考えられる。塩基としては、特に制限されないが、-NH2を有する塩基は生成したハロゲノギ酸ハロゲン化アルキルエステルと反応するおそれがあるため、複素環式芳香族アミンおよび非求核性強塩基から選択される1種以上の塩基が好ましい。
【0053】
複素環式芳香族アミンは、少なくとも一つの複素環を含み且つ-NH2以外のアミン官能基を少なくとも一つ有している化合物をいう。複素環式芳香族アミンとしては、例えば、ピリジン、α-ピコリン、β-ピコリン、γ-ピコリン、2,3-ルチジン、2,4-ルチジン、2,6-ルチジン、3,5-ルチジン、2-クロロピリジン、3-クロロピリジン、4-クロロピリジンなどの、ピリジンおよびその誘導体などを挙げることができる。
【0054】
非求核性強塩基とは、立体的な障害により窒素原子上の孤立電子対の求核性が弱い強塩基をいう。例えば、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリデシルアミン、トリドデシルアミン、トリフェニルアミン、トリベンジルアミン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(MTBD)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)、および1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(TMG)を挙げることができる。また、塩基性度が比較的高い塩基を用いてもよい。例えば、アセトニトリル中における塩基性度(pKBH+)が20以上の塩基として、TBD(pKBH+:25.98)、MTBD(pKBH+:25.44)、DBU(pKBH+:24.33)、DBN(pKBH+:23.89)、およびTMG(pKBH+:23.30)を用いることができる。
その他、トリメチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジエチルメチルアミン、N-エチル-N-メチルブチルアミン、1-メチルピロリジン等の汎用有機アミンも用い得る。
【0055】
塩基の使用量は、反応が良好に進行する範囲で適宜調整すればよいが、例えば、ハロゲン化アルコール1モルに対して1倍モル以上、20倍モル以下とすることができる。当該割合としては、10倍モル以下が好ましい。
【0056】
反応時間は特に制限されず、予備実験により決定したり、或いは原料化合物であるハロゲン化アルコールが消費されるまでとすればよいが、例えば、30分間以上、10時間以下とすることができる。
【0057】
塩基を用いない場合や、塩基を用いても反応が完全に完結しない場合には、反応温度を上げてもよい。この場合の反応温度としては、例えば、20℃以上、80℃以下とすることができる。また、加熱還流条件で反応を行ってもよい。
【0058】
ハロゲノギ酸ハロゲン化アルキルエステルは、以下の反応の通りカルバメートやイソシアネート化合物の合成中間体となる。具体的には、上記本発明方法により得られるハロゲノギ酸ハロゲン化アルキルエステルとアミン化合物とを反応させることによりカルバメートを製造できる。更に、上記カルバメートを熱分解することによりイソシアネート化合物を製造できる。上記カルバメートの製造方法およびイソシアネート化合物の製造方法は、いずれもハロゲノギ酸ハロゲン化アルキルエステルの製造から同一系内で行うことが可能である。上記反応の式を以下に示す。
【0059】
【化3】
[式中、R
1は前記と同義であり、R
7はR
1と同義である。但し、R
1とR
7は同一であっても異なっていてもよい。]
【0060】
ハロゲノギ酸ハロゲン化アルキルエステルからカルバメートを得るためのアミン化合物は、上記反応を阻害しない化合物であれば特に制限されない。例えば、上記反応式において、アミン化合物R7-NH2のR7として、ハロゲノ基で置換されていても置換されていなくてもよいこと以外、上記ハロゲン化アルコールR1-OHのR1と同様の基を挙げることができる。勿論、R1とR7は同一であっても異なっていてもよい。
【0061】
また、ハロゲノギ酸ハロゲン化アルキルエステルとアミン化合物との反応の進行に伴って、副生するハロゲン化水素によりアミン化合物の反応性が低下するおそれがあるが、塩基によりアミン化合物の反応性を維持することが可能になる。塩基としては、上記複素環式芳香族アミンおよび非求核性強塩基を挙げることができる。
【0062】
カルバメートを熱分解すると、アルコール化合物と共にイソシアネート化合物が得られる。熱分解温度は適宜調整すればよいが、例えば100℃以上、350℃以下とすることができ、200℃以上、300℃以下が好ましい。
【0063】
その他、ハロゲノギ酸ハロゲン化アルキルエステルは、非対称カーボネート、ポリカーボネート、ポリウレタンなどの原料化合物として有用である。
【0064】
本願は、2018年11月15日に出願された日本国特許出願第2018-214990号に基づく優先権の利益を主張するものである。2018年11月15日に出願された日本国特許出願第2018-214990号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【実施例】
【0065】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0066】
実施例1: クロロギ酸ヘキサフルオロイソプロピルエステルの合成
【化4】
直径42mm、容量100mLの筒状反応容器内に、直径30mmの石英ガラスジャケットを装入し、更に石英ガラスジャケット内に低圧水銀ランプ(「UVL20PH-6」SEN Light社製,20W,φ24×120mm)を装入した反応システムを構築した。当該反応システムの模式図を
図1に示す。なお、当該低圧水銀ランプからの照射光には波長254nmのUV-Cが含まれ、管壁から5mmの位置における波長254nmの光の照度は6.23~9.07mW/cm
2であった。反応容器内に精製したクロロホルム(20mL)を入れ、0℃で攪拌しつつ1.0L/minの酸素ガスをバブリングで吹き込み、上記低圧水銀ランプを使ってUV-Cを含む光を照射した。
3時間後、低圧水銀ランプの電源を切り、通常の室内灯下、ヘキサフルオロ-2-プロパノール(0.52mL,5mmol)とピリジン(1.2mL,15mmol)を0℃で添加し、30℃で1時間攪拌した。
反応液を
1H NMRで分析したところ、目的化合物であるクロロギ酸ヘキサフルオロイソプロピルエステルが収率92%で生成していることが確認された。その他、炭酸ジ(ヘキサフルオロイソプロピル)が収率4%で生成しており、4%のヘキサフルオロ-2-プロパノールが残留していた。
【0067】
実施例2: クロロギ酸ペンタフルオロフェノールエステルの合成
【化5】
実施例1で用いた反応システムの反応容器内に精製したクロロホルム(50mL)を入れ、0℃で攪拌しつつ1.0L/minの酸素ガスをバブリングで吹き込み、UV-Cを含む光を照射した。
3時間後、低圧水銀ランプの電源を切り、通常の室内灯下、ペンタフルオロフェノール(1.84g,10mmol)のクロロホルム溶液(4mL)とピリジン(3.18mL,30mmol)を添加し、0℃で1時間攪拌した。
反応液を
1H NMRで分析したところ、目的化合物であるクロロギ酸ペンタフルオロフェノールエステルが収率77%で生成していることが確認された。その他、炭酸ジ(ペンタフルオロフェノール)が収率20%で生成していた。
【0068】
実施例3: クロロギ酸2,2,2-トリフルオロエチルエステルの合成
【化6】
実施例1で用いた反応システムの反応容器内に精製したクロロホルム(50mL)を入れ、0℃で攪拌しつつ1.0L/minの酸素ガスをバブリングで吹き込み、UV-Cを含む光を照射した。
3時間後、低圧水銀ランプの電源を切り、通常の室内灯下、2,2,2-トリフルオロエタノール(0.71mL,10mmol)とピリジン(3.18mL,30mmol)を添加し、-30℃で2時間攪拌した。
反応液を
1H NMRで分析したところ、目的化合物であるクロロギ酸2,2,2-トリフルオロエチルエステルが収率71%で生成していることが確認された。その他、炭酸ジ(2,2,2-トリフルオロエチル)が収率2%で生成していた。
【0069】
実施例4: パーフルオロフェニル シクロヘキシルカルバメートの合成
【化7】
実施例1で用いた反応システムの反応容器内に精製したクロロホルム(50mL)を入れ、0℃で攪拌しつつ1.0L/minの酸素ガスをバブリングで吹き込み、UV-Cを含む光を照射した。
3時間後、低圧水銀ランプの電源を切り、通常の室内灯下、ペンタフルオロフェノール(1.84g,10mmol)とピリジン(3.18mL,30mmol)を添加し、0℃で1時間攪拌した。
更に、シクロヘキシルアミン(1.15mL,10mmol)とピリジン(1.06mL,10mmol)を添加し、室温で1時間攪拌した。
反応液に1M塩酸を加えて分液し、目的化合物であるパーフルオロフェニル シクロヘキシルカルバメートを有機相から蒸留した(収量:0.57g,収率:18%)。
【0070】
実施例5: 2,2,2-トリフルオロエチル シクロヘキシルカルバメートの合成
【化8】
実施例1で用いた反応システムの反応容器内に精製したクロロホルム(50mL)を入れ、0℃で攪拌しつつ1.0L/minの酸素ガスをバブリングで吹き込み、UV-Cを含む光を照射した。
3時間後、低圧水銀ランプの電源を切り、通常の室内灯下、2,2,2-トリフルオロエタノール(0.71mL,10mmol)とピリジン(3.18mL,30mmol)を添加し、0℃で2時間攪拌した。
更に、シクロヘキシルアミン(2.30mL,20mmol)を添加し、室温で1時間攪拌した。
反応液に1M塩酸を加えて分液し、有機相を減圧濃縮することにより、目的化合物である2,2,2-トリフルオロエチル シクロヘキシルカルバメートを得た(収量:0.37g,収率:16%)。
【0071】
実施例6: ジシクロヘキシル (2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロヘキサメチレン) 1,6-ビス(カーボネート)の合成
【化9】
実施例1で用いた反応システムの反応容器内に精製したクロロホルム(50mL)を入れ、0℃で攪拌しつつ0.5L/minの酸素ガスをバブリングで吹き込み、UV-Cを含む光を照射した。
3時間後、低圧水銀ランプの電源を切り、通常の室内灯下、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロ-1,6-ヘキサンジオール(1.31g,5mmol)とピリジン(3.18mL,30mmol)を混合した溶液添加し、-30℃で2時間攪拌した。反応液を
1H NMRで分析したところ、クロロギ酸エステル(2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロヘキサメチレン 1,6-ビス(カーボネート))が収率68%で生成していることが確認された。その他、ポリカーボネートが収率29%で生成していた。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ(ppm):4.77(t,J=12Hz,4H,-CH
2-)
19F NMR(376MHz,CDCl
3)δ(ppm):-119.68(m,4F),-123.43(m,4F)
更に、50℃で2時間攪拌した後、シクロヘキサノール(1.04mL,10mmol)を添加し、室温で終夜攪拌した。
反応液に1M塩酸を加えて分液し、クーゲルロールで蒸留することによって、目的化合物であるジシクロヘキシル (2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロヘキサメチレン) 1,6-ビス(カーボネート)を単離した(収量:1.58g,収率:62%)。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ(ppm):1.21-1.58(m,12H,cyclohexyl),1.77(m,4H,cyclohexyl),1.94(m,4H,cyclohexyl),4.61(t,J=14Hz,4H,-CH
2-),4.66(m,2H,-CH-)
19F NMR(376MHz,CDCl
3)δ(ppm):-120.18(m,4F),-123.73(m,4F)
FAB-MS m/z calcd:514.41,found:514.68 [M]
+
IR(ATR)cm
-1:2941,2864,1754,1453,1405,1275,1256,1173,1123,1035,1009,944,893,871,786
【0072】
実施例7: ジシクロヘキシル (2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9-ヘキサデカフルオロデカメチレン) 1,10-ビス(カーボネート)の合成
【化10】
実施例1で用いた反応システムの反応容器内に精製したクロロホルム(50mL)を入れ、0℃で攪拌しつつ0.5L/minの酸素ガスをバブリングで吹き込み、UV-Cを含む光を照射した。
3時間後、低圧水銀ランプの電源を切り、通常の室内灯下、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9-ヘキサデカフルオロ-1,10-デカンジオール(2.31g,5mmol)とピリジン(3.18mL,30mmol)を混合した溶液添加し、-30℃で2時間攪拌した。反応液を
1H NMRで分析したところ、クロロギ酸エステル(2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9-ヘキサデカフルオロデカメチレン 1,10-ビス(カーボネート))が収率89%で生成していることが確認された。その他、ポリカーボネートが収率11%で生成していた。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ(ppm):4.77(t,J=13Hz,4H,-CH
2-)
19F NMR(376MHz,CDCl
3)δ(ppm):-119.55(m,4F),-121.80(m,8F),-123.17(m,4F)
更に、50℃で2時間攪拌した後、シクロヘキサノール(1.04mL,10mmol)を添加し、室温で終夜攪拌した。
反応液に1M塩酸を加えて分液し、クーゲルロールで蒸留することによって、目的化合物であるジシクロヘキシル (2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9-ヘキサデカフルオロデカメチレン) 1,10-ビス(カーボネート)を単離した(収量:1.17g,収率:33%)。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ(ppm):1.21-1.58(m,12H,cyclohexyl),1.77(m,4H,cyclohexyl),1.93(m,4H,cyclohexyl),4.62(t,J=13Hz,4H,-CH
2-),4.68(m,2H,-CH-)
19F NMR(376MHz,CDCl
3)δ(ppm):-119.97(m,4F),-121.86(m,8F),-123.38(m,4F)
FAB-MS m/z calcd:714.15,found:714.29 [M]
+
IR(ATR)cm
-1:2941,2865,1757,1455,1405,1276,1258,1205,1146,1036,1010,938,786
【0073】
実施例8: 含フッ素クロロギ酸エステルとカルバメートの合成
【化11】
実施例1で用いた反応システムの反応容器内に精製したクロロホルム(50mL)を入れ、0℃で攪拌しつつ1.0L/minの酸素ガスをバブリングで吹き込み、UV-Cを含む光を照射した。
3時間後、低圧水銀ランプの電源を切り、通常の室内灯下、クロロホルム(3mL)に溶解させたヘキサフルオロ-2-プロパノール(1.04mL,10mmol)を添加し、続いてクロロホルム(3mL)に溶解させたピリジン(3.18mL,30mmol)を添加し、-30℃で2時間攪拌した。反応液を
1H NMRで分析したところ、クロロギ酸ヘキサフルオロイソプロピルエステルが収率78%で生成していることが確認された。その他、炭酸ジ(ヘキサフルオロイソプロピル)が収率20%で生成していた。
続いて、反応液にベンジルアミン(1.09mL,10mmol)とピリジン(1.06mL,10mmol)を添加し、室温で1日攪拌した。反応液に1M塩酸を加えて分液し、有機相を減圧濃縮することにより、目的化合物であるヘキサフルオロイソプロピル ベンジルカルバメートを得た(収量:1.06g,収率:35%)。
【0074】
実施例9: 2,2,3,3-テトラフルオロ-1-プロパノールからのクロロギ酸エステルの合成
【化12】
実施例1で用いた反応システムの反応容器内に精製したクロロホルム(50mL)を入れ、0℃で攪拌しつつ1.0L/minの酸素ガスをバブリングで吹き込み、UV-Cを含む光を照射した。
3時間後、低圧水銀ランプの電源を切り、通常の室内灯下、クロロホルム(3mL)に溶解させた2,2,3,3-テトラフルオロ-1-プロパノール(1.32g,10mmol)を添加し、続いてクロロホルム(3mL)に溶解させたピリジン(3.18mL,30mmol)を添加し、-30℃で2時間攪拌した。
反応液を
1H NMRで分析したところ、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルクロロギ酸エステルが収率99%以上で生成していることが確認された。
【0075】
実施例10: 2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロパノールからのクロロギ酸エステルの合成
【化13】
実施例1で用いた反応システムの反応容器内に精製したクロロホルム(50mL)を入れ、0℃で攪拌しつつ1.0L/minの酸素ガスをバブリングで吹き込み、UV-Cを含む光を照射した。
3時間後、低圧水銀ランプの電源を切り、通常の室内灯下、クロロホルム(3mL)に溶解させた2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロパノール(1.50g,10mmol)を添加し、続いてクロロホルム(3mL)に溶解させたピリジン(3.18mL,30mmol)を添加し、-30℃で2時間攪拌した。
反応液を
1H NMRで分析したところ、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルクロロギ酸エステルが収率80%で生成していることが確認された。
【符号の説明】
【0076】
1: 光照射手段, 2: ジャケット, 3: ウォーターバス
4: 撹拌子, 5: 熱媒または冷媒, 6: 筒状反応容器