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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】高周波スイッチ回路
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/687 20060101AFI20240124BHJP
   H03K 17/04 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
H03K17/687 G
H03K17/04 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020025185
(22)【出願日】2020-02-18
(65)【公開番号】P2021132249
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2023-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099818
【弁理士】
【氏名又は名称】安孫子 勉
(72)【発明者】
【氏名】村越 康則
【審査官】吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0305767(US,A1)
【文献】特開平11-150464(JP,A)
【文献】特開2002-353793(JP,A)
【文献】特開2010-219977(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1574631(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K17/00-17/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の高周波入出力端子間に第1の電界効果トランジスタが直列接続されて設けられ、前記第1及び第2の高周波入出力端子のいずれか一方にドレインが接続された第2の電界効果トランジスタが設けられ、当該第2の電界効果トランジスタのソースがキャパシタを介してグランドに接続され、前記第1及び第2の電界効果トランジスタのいずれか一方はデプレッションモードで動作する電界効果トランジスタであって、制御信号入力からバイアス電圧を生成するバイアス回路が設けられ、前記第1及び第2の電界効果トランジスタは、同一の前記制御信号入力と前記バイアス回路出力により各々逆動作可能に構成されてなる高周波スイッチ回路において、
前記キャパシタに前記第1及び第2の電界効果トランジスタと異なる極性の第3の電界効果トランジスタが並列接続されて設けられ、当該第3の電界効果トランジスタは前記制御信号入力により前記キャパシタの電荷放電時に導通状態とされるよう構成されてなることを特徴とする高周波スイッチ回路。
【請求項2】
記第1の電界効果トランジスタのドレイン・ソース間には、第1のドレイン・ソース間抵抗器が、前記第2の電界効果トランジスタのドレイン・ソース間には、第2のドレイン・ソース間抵抗器が、それぞれ設けられ、
前記第1及び第2のドレイン・ソース間抵抗器の合成抵抗値は、前記バイアス回路の合成抵抗値より小さく設定されてなることを特徴とする請求項1記載の高周波スイッチ回路。
【請求項3】
前記バイアス回路は、前記第1及び第2の高周波入出力端子のいずれかとグランドとの間に接続されたローサイド側バイアス抵抗器を用いてなることを特徴とする請求項1記載の高周波スイッチ回路。
【請求項4】
前記第1及び第2のドレイン・ソース間抵抗器の合成抵抗値は、前記ローサイド側バイアス抵抗器の抵抗値よりも小さいことを特徴とする請求項3記載の高周波スイッチ回路。
【請求項5】
前記第1及び第2の高周波入出力端子間に第1の電界効果トランジスタと同一極性の電界効果トランジスタが複数直列接続されて設けられると共に、前記第2の電界効果トランジスタのソースと前記キャパシタとの間に、前記第2の電界効果トランジスタと同一極性の電界効果トランジスタが複数直列接続されて設けられてなることを特徴とする請求項1乃至請求項4いずれか記載の高周波スイッチ回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信機器に用いられる高周波スイッチ回路に係り、特に、スイッチング時間の高速化を図ったものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高周波信号の切り替えを行う半導体高周波スイッチ回路は、GaAs等化合物半導体を用いた電界効果トランジスタであるMESFET(Metal-Semiconductor Field Effect Transistor)、HEMT(High Electron Mobility Transistor)等や、SOI(Silicon on Insulator)基板を用いたMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)により構成されたものがよく知られている。
かかる半導体高周波スイッチ回路は、その使用条件などに応じて、挿入損失、アイソレーション、ハンドリングパワー、歪特性等の電気的特性について、好適な特性、レベルであることが所望される。
【0003】
図10には、従来の高周波スイッチ回路の一例が示されており、以下、同図を参照しつつ、従来回路について説明する。
この従来回路は、1つの制御信号によってSPDT(Single Pole Double Throw)スイッチの経路切り替えを可能に構成されたものである。すなわち、従来回路は、高周波スイッチ用の第1の電界効果トランジスタ(以下「スイッチFET」と称すると共に、図10においては「M1」と表記)と、短絡用の第2の電界効果トランジスタ(以下「短絡FET」と称すると共に、図10においては「M2」と表記)とを主たる構成要素として構成されている。
【0004】
この従来回路において、スイッチFET(M1)にはデプレッションモードのFETが、短絡FET(M2)にはエンハンスメントモードのFETが、それぞれ用いられている。
スイッチFET(M1)は、第1の高周波入出力端子T1と第2の高周波入出力端子T2間に直列に設けられて、第1及び第2の高周波入出力端子T1,T2間の高周波信号の通過、遮断を制御可能としている。
短絡FET(M2)は、スイッチFET(M1)のソースとグランドとを短絡可能に設けられて、スイッチFET(M1)がオフ状態の際のアイソレーション向上を可能としている。
【0005】
かかる従来回路において、制御信号入力端子Tcntに正の電圧VDDが印加されると、スイッチFET(M1)及び短絡EFT(M2)のドレイン、ソースは、バイアス抵抗器R1,R2によって分圧された電圧が印加される。
なお、図11には、制御信号入力端子Tcntに正の電圧VDDが印加された状態の回路図が示されている。
この際、スイッチFET(M1)は、ゲートがグランド電位のため、ゲート・ソース間電圧Vgsとしきい値電圧Vthは、Vgs<Vthの関係となり、スイッチFET(M1)はオフ状態となる。
【0006】
一方、短絡FET(M2)は、ゲートにVDDが印加されることで、Vgs>Vthとなるためオン状態となる。
したがって、第1及び第2の高周波入出力端子T1,T2間は、オフ状態のスイッチFET(M1)と、スイッチFET(M1)とグランドとの間に設けられたオン状態の短絡FET(M2)とにより高周波信号が遮断される。
【0007】
次に、制御信号入力端子Tcntにグランド電位が印加されると、スイッチFET(M1)及び短絡FET(M2)のドレイン、ソースは、バイアス抵抗器R1,R2によってグランド電位となる。なお、図12には、制御信号入力端子Tcntがグランド電位とされた状態の回路図が示されている。
このとき、スイッチFET(M1)は、ゲートがグランド電位となるため、Vgs=0>Vthとなりオン状態となる。
【0008】
一方、短絡FET(M2)は、ゲートにグランド電位が印加されるため、Vgs=0<Vthとなりオフ状態となる。
したがって、第1及び第2の高周波入出力端子T1,T2間は、オン状態のスイッチFET(M1)と、このスイッチFET(M1)とグランドとの間に接続されたオフ状態の短絡FET(M2)により高周波信号の通過状態となる。
【0009】
図13には、高周波信号の遮断状態(図11)から通過状態(図12)への過渡状態におけるDCデカップリングキャパシタC1~C3の充放電経路を示した回路図が示されており、以下、同図を参照しつつ、DCデカップリングキャパシタC1~C3の充放電経路について説明する。
まず、高周波信号の遮断状態においては、先に述べたように制御信号入力端子Tcntに印加された電圧VDDによりバイアス抵抗器R1を介して、DCデカップリングキャパシタC1~C3に電荷が充電される。
【0010】
次いで、高周波信号の通過状態とするために制御信号入力端子Tcntにグランド電位が印加されると、DCデカップリングキャパシタC1~C3の電荷が、スイッチFET(M1)のドレイン・ソース間抵抗器Rdsd及び短絡FET(M2)のドレイン・ソース間抵抗器Rdse、並びに、バイアス抵抗器R1,R2を介して放電されることとなる(図13の点線矢印参照)。放電が促進されてスイッチFET(M1)のゲート・ソース間電圧Vgsがしきい値電圧Vthに対して、Vgs>Vthの関係となると、スイッチFET(M1)がオン状態となり高周波信号の通過状態となる。
この種の従来回路としては、例えば特許文献1等に開示されたものがある。
【0011】
なお、スイッチFET(M1)にJEFT(Junction Field Effect Transistor)を用いた場合、ゲートからドレイン、ソースへ電流が流れるため、バイアス抵抗器R1(図10参照)を省略した構成を採ることが可能となり、図14にはその回路構成例が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2011-259236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述の従来回路において、バイアス抵抗器R1,R2は、高周波信号の漏洩を抑圧する観点からその抵抗値を可能な範囲で大きく設定する必要がある。そのため、場合によってはキャパシタの放電時間が長くなり、経路の切り替えに時間を要するものとなってしまい、所望するスイッチング時間の確保が難しくなるという問題がある。
【0014】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、スイッチング時間の高速化を図ることのできる高周波スイッチ回路を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記本発明の目的を達成するため、本発明に係る高周波スイッチ回路は、
第1及び第2の高周波入出力端子間に第1の電界効果トランジスタが直列接続されて設けられ、前記第1及び第2の高周波入出力端子のいずれか一方にドレインが接続された第2の電界効果トランジスタが設けられ、当該第2の電界効果トランジスタのソースがキャパシタを介してグランドに接続され、前記第1及び第2の電界効果トランジスタのいずれか一方はデプレッションモードで動作する電界効果トランジスタであって、制御信号入力からバイアス電圧を生成するバイアス回路が設けられ、前記第1及び第2の電界効果トランジスタは、同一の前記制御信号入力と前記バイアス回路出力により各々逆動作可能に構成されてなる高周波スイッチ回路において、
前記キャパシタに前記第1及び第2の電界効果トランジスタと異なる極性の第3の電界効果トランジスタが並列接続されて設けられ、当該第3の電界効果トランジスタは前記制御信号入力により前記キャパシタの電荷放電時に導通状態とされるよう構成されてなるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高周波入出力端子とグランドとの間の経路に直列に設けられたDCデカップリングキャパシタを、その放電時に強制的に短絡できるよう構成したので、放電時間が確実に短縮され、スイッチング時間の高速化が図られた高周波スイッチ回路を提供することができるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態における高周波スイッチ回路の第1の回路構成例を示す回路図である。
図2】第1の回路構成例において高周波信号の遮断状態から通過状態へ遷移する際の電荷の流れを説明する回路図である。
図3】本発明の実施の形態における高周波スイッチ回路の第2の回路構成例を示す回路図である。
図4】本発明の実施の形態における高周波スイッチ回路の第3の回路構成例を示す回路図である。
図5】本発明の実施の形態における高周波スイッチ回路の第4の回路構成例を示す回路図である。
図6】第1の回路構成例における状態遷移時の高周波信号の通過特性例を、従来回路の通過特性例と共に示す特性線図であって、図6(a)は従来回路における通過特性を示す特性線図、図6(b)は第1の回路構成例の通過特特性を示す特性線図である。
図7】第1の回路構成例において制御信号の変化に対するデプレッションモードFETのドレイン電圧の変化特性を従来回路における対応するFETのドレイン電圧の変化特性と共に示す特性線図である。
図8】第2の回路構成例における状態遷移時の高周波信号の通過特性を、従来回路の通過特性と共に示す特性線図であって、図8(a)は従来回路における通過特性を示す特性線図、図8(b)は第2の回路構成例の通過特特性を示す特性線図である。
図9】第2の回路構成例において制御信号の変化に対するデプレッションモードFETのドレイン電圧の変化特性を従来回路における対応するFETのドレイン電圧の変化特性と共に示す特性線図である。
図10】従来の高周波スイッチ回路の一例を示す回路図である。
図11図10に示された従来回路が信号遮断時における回路動作を示す回路図である。
図12図10に示された従来回路が信号通過時における回路動作を示す回路図である。
図13図10に示された従来回路が信号遮断状態から信号通過状態へ遷移する際のキャパシタの放電経路を示す回路図である。
図14】従来の高周波スイッチ回路の他の構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図1乃至図9を参照しつつ説明する。
なお、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
最初に、本発明の実施の形態における高周波スイッチ回路の第1の回路構成例について、図1を参照しつつ説明する。
この高周波スイッチ回路は、3つの電界効果トランジスタ(以下、「FET」と称する)、すなわち、第1のFET(図1においては「FET1」と表記)1、第2のFET(図1においては「FET2」と表記)2及び第3のFET(図1においては「FET3」と表記)3を主たる構成要素として、SPST(単極単投)スイッチが構成されたものである。
【0019】
本発明の実施の形態において、高周波スイッチとしての第1のFET1には、デプレッションモードのN型のFETが、短絡スイッチとしての第2のFET2には、エンハンスメントモードのN型のFETが、放電スイッチとしての第3のFET3には、エンハンスメントモードで第1のFET1とは極性の異なるP型のFETが、それぞれ用いられている。
なお、良く知られているように制御信号入力端子33へ印加する電圧のバイアス条件を変えて、N型とP型の関係を反転させても本質的に同様な回路が実現できることは勿論である。
【0020】
以下、具体的な回路構成について説明する。
第1のFET1は、ドレインが第1のDCデカップリングキャパシタ(図1においては「C1」と表記)21を介して第1の高周波入出力端子(図1においては「T1」と表記)31に接続される一方、ソースが第2のDCデカップリングキャパシタ(図1においては「C2」と表記)22を介して第2の高周波入出力端子(図1においては「T2」と表記)32に接続されている。
また、第1のFET1のゲートは、第1のゲート抵抗器(図1においては「Rg1」と表記)12を介してグランドに接続されている。さらに、第1のFET1のドレイン・ソース間には、第1のドレイン・ソース間抵抗器(図1においては「Rds1」と表記)11が接続されている。
【0021】
第2のFET2のドレインは、第1のFET1のソースに接続される一方、第2のFET2のソースは、第3のDCデカップリングキャパシタ(図1においては「C3」と表記)23を介してグランドに接続されている。
第2のFET2のドレイン・ソース間には、第2のドレイン・ソース間抵抗器(図1においては「Rds2」と表記)17が接続されている。
さらに、第2のFET2のゲートは、第2のゲート抵抗器(図1においては「Rg2」と表記)13を介して制御信号入力端子(図1においては「Tcnt」と表記)33に接続されている。
【0022】
第3のFET3は、第3のDCデカップリングキャパシタ23と並列接続されて設けられ、第3のFET3のゲートは、第3のゲート抵抗器(図1においては「Rg3」と表記)16を介して制御信号入力端子33に接続されている。
【0023】
また、制御信号入力端子33とグランドとの間には、制御信号入力端子33側から第1のバイアス抵抗器(図1においては「Rb1」と表記)14と第2のバイアス抵抗器(図1においては「Rb2」と表記)15が直列接続されて設けられている。
【0024】
そして、第1のバイアス抵抗器14と第2のバイアス抵抗器15の相互の接続点は、第1のFET1のソースと第2のDCデカップリングキャパシタ22の相互の接続点に接続されている。
これら第1及び第2のバイアス抵抗器14,15によりバイアス回路100が構成されている。そして、第1及び第2のバイアス抵抗器14,15の分圧電圧が第1及び第2のFET1,2のバイアス電圧として供給されるようになっている。
なお、第1及び第2のドレイン・ソース間抵抗器11,17を直列接続とした合成抵抗値は、バイアス回路100の抵抗値、すなわち、第1のバイアス抵抗器14と第2のバイアス抵抗器15を並列接続とした合成抵抗値より小さく設定するのが好適である。
【0025】
次に、かかる構成における動作について説明する。
まず、制御信号入力端子33に正の電圧VDDが印加されると、第1及び第2のバイアス抵抗器14,15を介して第1及び第2のDCデカップリングキャパシタ21,22が充電され、第1のFET1のソース電圧VS1が上昇する。第1のFET1のゲートは、第1のゲート抵抗器12を介してグランドに接続されているため、第1のFET1のゲート・ソース間電圧Vgsは-VS1となる。
【0026】
第1のFET1のしきい値電圧をVthnとすると、このしきい値電圧Vthnと第1のFET1のゲート・ソース間電圧-VS1が、Vthn≧-VS1の関係となったときに、第1のFET1はオフ状態となり、第1及び第2の高周波入出力端子31,32間は遮断されることとなる。
【0027】
一方、第2及び第3のFET2,3のゲート電圧は共にVDDとなるため、第2のFET2は第1のFET1と逆動作、すなわちオン状態となり、第3のFET3はオフ状態となる。
したがって、高周波入出力端子31,32間は、オフ状態の第1のFET1とオン状態の第2のFET2により高周波信号が確実に遮断されることとなる。
【0028】
次に、制御信号入力端子33にグランド電位が印加されると、第1のFET1がオン状態となる一方、第2のFET2はオフ状態となる。さらに、第3のFET3がオン状態となる。
したがって、DCデカップリングキャパシタ21~23に蓄積された電荷は、従来同様第1及び第2のバイアス抵抗器14,15を介して放電されると共に、さらにオン状態の第3のFET3を介しても放電されることとなる。
【0029】
図2には、DCデカップリングキャパシタ21~23の放電時の電流の方向が示されている。
すなわち、図2において、点線の矢印線は従来同様の放電電流の流れを、二点鎖線の矢印線は本発明による放電電流の流れを、それぞれ表している。
【0030】
本発明の実施の形態においては、第3のFET3によって、従来回路と異なり、より低い抵抗値での放電経路が確保されるため、第1のFET1のスイッチング時間のさらなる高速化が図られるものとなっている。
【0031】
図6には、高周波信号の状態遷移時間特性が従来回路の同特性と共に示されており、以下、同図について説明する。
図6(a)には従来回路(図10参照)の特性例が、図6(b)には第1の回路構成の特性例が、それぞれ示されている。いずれの特性例においても、横軸は経過時間を、紙面右側の縦軸は制御入力端子33の印加電圧を、紙面左側の縦軸は高周波信号入出力端子32における高周波信号の信号レベルを、それぞれ表している。
【0032】
まず、従来回路の場合、時刻t=41μsecにおいて制御信号がVDD(5V)からグランド電位となった後、図6(a)において符号m6で示された時点で高周波入出力端子32における高周波信号の信号レベルが所望のレベルを超えている。
すなわち、時刻t=47.01μsecにおいて、高周波信号レベルV_RF2は270mVとなっている。そして、この特性例の場合、制御信号がVDDからグランド電位となった時刻t=41μsecの時点から上述の時刻t=47.01μsecまでの時間、すなわち、遅延時間は6.01μsecとなっている。
【0033】
これに対して、第1の回路構成例の場合、図6(b)に符号m7で示された時刻t=44.56μsecの時点において高周波信号の信号レベルV_pRF2は270mVに達しており(図6(b)参照)、時刻t=41μsecの時点からの遅延時間は3.56μsecとなっている。すなわち、第1の回路構成例は、従来回路に比して確実に遅延時間が短縮されてスイッチング時間の高速化が図られていることが確認できる。
【0034】
図7には、制御信号の変化に対するデプレッションモードの第1のFET1のドレイン電圧の変化特性例が、従来回路の同様の特性例と共に示されており、以下、同図について説明する。
図7において、横軸は時間経過を、縦軸は電圧を、それぞれ表している。なお、電圧を表す縦軸は、制御信号の電圧cnt1、第1のFET1のドレイン電圧V_ppadp1、及び、従来回路のスイッチFET(M1)のドレイン電圧V_padp1の各々に共通である。
また、図7において、点線の特性線は従来回路のドレイン電圧の変化(図7においては「従来例1」と表記)を、実線の特性線は第1の回路構成例のドレイン電圧の変化(図7においては「実施例1」と表記)を、それぞれ表している。
【0035】
制御信号がVDDからグランド電位になった時点(時刻t=41μsec)からドレイン電圧は時間の経過と共に低下してゆくが、従来回路のドレイン電圧の低下速度(図7の点線の特性線参照)に比して、第1の回路構成例におけるドレイン電圧(図7の実線の特性線参照)の方がより素速く低下しており、従来回路に比して確実にスイッチング時間の高速化が図られていることが確認できる。
【0036】
次に、第2の回路構成例について、図3を参照しつつ説明する。
なお、図1に示された第1の回路構成例における構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第2の回路構成例は、第1のFET1AにデプレッションモードのNチャンネル型JFET(Junction Field Effect Transistor)を、第2のFET2AにエンハンスメントモードのNチャンネル型JFETを、第3のFET3AにエンハンスメントモードのPチャンネル型JFETを、それぞれ用いた点が第1の回路構成例と異なるものである。第2の回路構成例は、上述のトランジスタの種類の違いに伴う回路構成の一部が第1の回路構成例と異なるが、残余の回路構成は基本的に図1に示された第1の回路構成例と同一である。
【0037】
なお、GaAs HEMT(High Electron Mobility Transistor)のようなJFETを用いた場合、ゲートからドレイン、ソースへ電流が流れるため、第1のバイアス抵抗器14(図1参照)を省略することが可能となる。そのため、この第2の回路構成例においては、ローサイド側バイアス抵抗器として第2のバイアス抵抗器15のみを用いた構成が採られている。
なお、第1及び第2のドレイン・ソース間抵抗器11,17を直列接続とした合成抵抗値は、第2のバイアス抵抗器15の抵抗値より小さく設定するのが好適である。
【0038】
例えば、図14に示された従来回路は同様にJFETを用いてバイアス抵抗器を1つ省略した構成であるが、図10に示された従来回路と比較すると、バイアス抵抗器を少なくした分だけ放電経路が少なくなるために放電時間が遅延する傾向となる。
しかしながら、この第2の回路構成例にあっては、第3のFET3Aによって放電時間の短縮がなされるため、従来回路に比して確実にスイッチング時間の高速化が実現できるものとなっている。
【0039】
図8には、高周波信号の状態遷移時間特性が従来回路の同特性と共に示されており、以下、同図について説明する。
図8(a)には従来回路(図14参照)の特性例が、図8(b)には第2の回路構成の特性例が、それぞれ示されている。いずれの特性例においても、横軸は経過時間を、紙面右側の縦軸は制御入力端子33の印加電圧を、紙面左側の縦軸は高周波信号入出力端子32における高周波信号の信号レベルを、それぞれ表している。
【0040】
まず、従来回路の場合、時刻t=41μsecにおいて制御信号がVDD(5V)からグランド電位となった後、図8(a)において、符号m15で示された時点において、高周波入出力端子32における高周波信号の信号レベルが所望のレベルを超えている。
すなわち、時刻t=52.40μsecにおいて、高周波信号レベルV_RF2は270mVとなっている。そして、この特性例の場合、制御信号がVDDからグランド電位となった時刻t=41μsecの時点から上述の時刻t=52.40μsecまでの時間、すなわち、遅延時間は11.4μsecとなっている。
【0041】
これに対して、第2の回路構成例の場合、図8(b)に符号m17で示された時刻t=47.71μsecの時点で高周波信号の信号レベルV_pRF2は270mVに達している(図8(b)参照)。しかして、時刻t=41μsecの時点からの遅延時間は6.71μsecであり、従来回路に比して確実に遅延時間が短縮されてスイッチング時間の高速化が図られていることが確認できる。
【0042】
図9には、制御信号の変化に対するデプレッションモードの第1のFET1Aのドレイン電圧の変化特性例が、従来回路の同様の特性例と共に示されており、以下、同図について説明する。
図9において、横軸は時間経過を、縦軸は電圧を、それぞれ表している。なお、電圧を表す縦軸は、制御信号の電圧cnt1、第1のFET1Aのドレイン電圧V_ppadp1、及び、従来回路のスイッチFET(M1)のドレイン電圧V_padp1の各々に共通である。
【0043】
また、図9において、点線の特性線は従来回路のドレイン電圧の変化(図9においては「従来例2」と表記)を、実線の特性線は第2の回路構成例のドレイン電圧の変化(図9においては「実施例2」と表記)を、それぞれ表している。
【0044】
制御信号がVDDからグランド電位になった時点(時刻t=41μsec)からドレイン電圧は時間の経過と共に低下してゆくが、従来回路のドレイン電圧の低下速度(図9の点線の特性線参照)に比して、第2の回路構成例におけるドレイン電圧(図9の実線の特性線参照い)はより素速く低下しており、従来回路に比して確実にスイッチング時間の高速化が図られていることが確認できる。
【0045】
次に、第3の回路構成例について、図4を参照しつつ説明する。
なお、図1に示された第1の回路構成例における構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第3の回路構成例は、FETの動作モードを第1の回路構成例と逆に設定した点が異なるものである。
すなわち、第1のFET1BにエンハンスメントモードのN型FETが、第2のFET2BにデプレッションモードのN型FETが、第3のFET3にエンハンスメントモードのP型FETがそれぞれ用いられてなるものである。
【0046】
第1のFET1Bと第2のFET2Bに、第1の回路構成例と逆の動作モードのFETを用いたことに対応して回路構成の一部が次述するように第1の回路構成例と異なるものとなっている。
すなわち、第1のFET1Bのゲートは、第1のゲート抵抗器12を介して制御信号入力端子33に接続されている。
また、第2のFET2Bのゲートは、第2のゲート抵抗器13を介してグランドに接続されている。
なお、図1に示された第1のバイアス抵抗器14は省かれており、第2のバイアス抵抗器15のみが図1同様に設けられている。
【0047】
かかる構成において、第1のFET1Bと第2のFET2Bの動作モードが第1の回路構成例と逆であるので、制御信号に対する回路動作も逆となる。
すなわち、制御信号入力端子33に電圧VDDが印加されると、第1及び第2の高周波入出力端子31,32間は導通状態となり高周波信号の通過状態となる。
一方、制御信号入力端子33にグランド電位が印加されると、第1及び第2の高周波入出力端子31,32間は遮断され高周波信号の遮断状態となる。
【0048】
次に、第4の回路構成例について、図5を参照しつつ説明する。
なお、図1に示された第1の回路構成例における構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略し、以下、異なる点を中心に説明する。
この第4の回路構成例は、第1の回路構成例を基本として、高周波スイッチとしてのFET(図1の第1のFET1)と短絡スイッチとしてのFET(図1の第2のFET2)を、それぞれ複数直列接続した構成を有するものである。
【0049】
以下、具体的に説明すれば、高周波スイッチとして第1のFET1と第4のFET(図5においては「FET4」と表記)4が直列接続されて設けられ、また、短絡スイッチとして第2のFET2と第5のFET(図5においては「FET5」と表記)5が直列接続されて設けられている。
第1及び第4のFET1,4は、デプレッションモードのN型のFETであり、第2及び第5のFET2,5は、エンハンスメントモードのN型のFETである。
【0050】
すなわち、第1のFET1のソースには、第4のFET4のドレインが接続され、第4のFET4のソースは第2のDCデカップリングキャパシタ22を介して第2の高周波入出力端子32に接続されている。
第4のFET4のドレイン・ソース間には、第3のドレイン・ソース間抵抗器(図5においては「Rds3」と表記)18が接続される一方、ゲートは第4のゲート抵抗器(図5においては「Rg4」と表記)20を介してグランドに接続されている。
【0051】
第2のFET2のソースには、第5のFET5のドレインが接続され、第5のFET5のソースは、第3のDCデカップリングキャパシタ23を介してグランドに接続されている。
また、第5のFET5のドレイン・ソース間には、第4のドレイン・ソース間抵抗器(図5においては「Rds4」と表記)19が接続される一方、ゲートは第5のゲート抵抗器(図5においては「Rg5」と表記)24を介して制御信号入力端子33に接続されている。
【0052】
この第4の回路構成例においては、高周波スイッチとしてのFETを2つ、短絡スイッチとしてのFETを2つ、それぞれ直列接続した構成としたが、直列接続するFETの数は2つに限定される必要がないことは勿論であり、より多数直列接続した構成としても良い。
このように、FETを複数直列接続することで高周波信号に対する耐電力の向上が図られる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
スイッチング時間の高速化が所望される高周波スイッチ回路に適用できる。
【符号の説明】
【0054】
1…第1のFET
2…第2のFET
3…第3のFET
4…第4のFET
5…第5のFET
31…第1の高周波入出力端子
32…第2の高周波入出力端子
33…制御信号入力端子
図1
図2
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