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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】リミッタ回路
(51)【国際特許分類】
   H03F 1/52 20060101AFI20240124BHJP
   H03G 11/00 20060101ALI20240124BHJP
   H03F 3/20 20060101ALI20240124BHJP
   H03F 3/181 20060101ALI20240124BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
H03F1/52
H03G11/00
H03F3/20
H03F3/181
H04R3/00 101Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020056756
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021158521
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 康之
【審査官】竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-172693(JP,A)
【文献】特開2006-174268(JP,A)
【文献】特開昭61-288606(JP,A)
【文献】特開2013-102283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/00-3/72
H03G 11/00
H04R 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力増幅回路に供給される電圧をアッテネートするアッテネータ回路と、
前記電力増幅回路の出力電流が基準電流値に到達した時の前記出力電流に基づいて第1の基準電圧値を発生し、前記第1の基準電圧値に基づいて前記アッテネータ回路を制御するアッテネータ制御回路と、を備え
前記アッテネータ制御回路は、
前記電力増幅回路の出力電流を電圧に変換し第1の電圧絶対値を出力する第1の絶対値回路と、
前記第1の電圧絶対値と第2の基準電圧値を比較する第1のコンパレータと、
前記電力増幅回路に供給される電圧に基づいて第2の電圧絶対値を出力する第2の絶対値回路と、
前記第1のコンパレータの出力信号に応答して、前記第2の電圧絶対値をラッチして前記第1の基準電圧値を出力する第1の電圧ラッチ回路と、
前記第2の電圧絶対値と、前記第1の電圧ラッチ回路からの前記第1の基準電圧値とを比較する第2のコンパレータを有し、
前記アッテネータ回路は、前記第2のコンパレータの出力信号に応答して、前記電力増幅回路に供給される前記電圧をアッテネートする、
リミッタ回路。
【請求項2】
前記第2のコンパレータは、前記第1の電圧絶対値が前記第2の基準電圧値より小さい場合には、前記第2の電圧絶対値と第3の基準電圧値とを比較し、前記第1の電圧絶対値が前記第2の基準電圧値より大きい場合には、前記第2の電圧絶対値と前記第1の電圧ラッチ回路からの前記第1の基準電圧値とを比較する、
請求項に記載のリミッタ回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書等に開示の実施形態は、リミッタ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、オーディオ向けパワーアンプICは、スピーカ保護のため過大な出力電圧を抑える出力電圧リミッタ、またIC自身を保護するため過大な出力電流を抑える出力電流リミッタを備えることが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3562141号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電流リミッタはアッテネータを使わないため、電流リミッタ動作時のオーディオ信号はクリップした波形となり、オーディオ特性悪化が顕著である。また、電流リミッタ動作時のオーディオ特性を改善するため、アッテネータを有する電圧リミッタを用いる技術がある。しかしながら、従来の電圧リミッタを用いる場合、出力電力が犠牲になる、安定したリミット値を得るのが困難である等の問題がある。
【0005】
本明細書等に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、上記に鑑みてなされたものであって、負荷インピーダンスや出力LCフィルタの時定数によらず、過電流リミッタ動作時においても過度に音質を悪化させることなく再生を可能とするリミッタ回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係るリミッタ回路は、電力増幅回路に供給される電圧をアッテネートするアッテネータ回路と、前記電力増幅回路の出力電流が基準電流値に到達した時の前記出力電流に基づいて第1の基準電圧値を発生し、前記第1の基準電圧値に基づいて前記アッテネータ回路を制御するアッテネータ制御回路と、を備え、前記アッテネータ制御回路は、前記電力増幅回路の出力電流を電圧に変換し第1の電圧絶対値を出力する第1の絶対値回路と、前記第1の電圧絶対値と第2の基準電圧値を比較する第1のコンパレータと、前記電力増幅回路に供給される電圧に基づいて第2の電圧絶対値を出力する第2の絶対値回路と、前記第1のコンパレータの出力信号に応答して、前記第2の電圧絶対値をラッチして前記第1の基準電圧値を出力する第1の電圧ラッチ回路と、前記第2の電圧絶対値と、前記第1の電圧ラッチ回路からの前記第1の基準電圧値とを比較する第2のコンパレータを有し、前記アッテネータ回路は、前記第2のコンパレータの出力信号に応答して、前記電力増幅回路に供給される前記電圧をアッテネートする、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、負荷インピーダンスや出力LCフィルタの時定数によらず、過電流リミッタ動作時においても過度に音質を悪化させることなく再生を可能とするリミッタ回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施形態に係るリミッタ回路を有するパワーアンプ回路の構成を示した図である。
図2図2は、重負荷に接続された場合のリミッタ回路の動作を説明するための図である。
図3図3は、比較例に係るリミッタ回路を有するパワーアンプ回路を説明するための図である。
図4図4は、図3に示したパワーアンプ回路が有する電流リミッタ回路の一例を示した図である。
図5図5は、重負荷を接続した場合の比較例に係るリミッタ回路の動作を説明するための図である。
図6図6は、第2の実施形態に係るリミッタ回路を有するパワーアンプ回路の構成を示した図である。
図7図7は、軽負荷を接続した場合のリミッタ回路7の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、リミッタ回路の実施形態について詳細に説明する。以下の実施形態では、同一の参照符号を付した部分は同様の動作をおこなうものして、重複する説明は適宜省略する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るリミッタ回路1を有するパワーアンプ回路D1の構成を示した図である。図1に示した様に、パワーアンプ回路D1は、入力ノード3を介して入力電圧源2からの入力信号を入力する。パワーアンプ回路D1は、入力した信号を増幅してフィルタ4に出力する。パワーアンプ回路D1から出力された信号は、LCフィルタ等のフィルタ4、出力ノード5を介して負荷としてのスピーカ6に出力される。
【0011】
パワーアンプ回路D1は、リミッタ回路1、第1の電力増幅回路20を有する。リミッタ回路1は、アッテネータ回路10、電流検出回路21、アッテネータ制御回路30を有する。以下、アッテネータ回路10、第1の電力増幅回路20、電流検出回路21、アッテネータ制御回路30の構成について詳しく説明する。
【0012】
アッテネータ回路10は、第1の電力増幅回路20に供給される電圧を減衰(アッテネート)させる。アッテネータ回路10は、第1の抵抗101、第1のノード102、第1の電圧制御回路103を備える。第1の電圧制御回路103は、電圧に基づいて電圧制御抵抗の抵抗値を制御し、入力電圧信号を減衰させる。第1の電圧制御回路103は、減衰させた入力電圧信号を第1のノード102に出力し、第1のノード102が所定の基準電位より大きくならないように動作する。
【0013】
第1の電力増幅回路20は、入力信号を増幅しフィルタ4へ出力するパワーアンプである。
【0014】
電流検出回路21は、第1の電力増幅回路20の出力電流を検出する。電流検出回路21は、例えば、第1の電力増幅回路20の出力電流の一部を入力とするカレントミラー回路である。電流検出回路21は、検出した出力電流をアッテネータ制御回路30へ出力する。
【0015】
アッテネータ制御回路30は、第1の電力増幅回路20の出力電流が基準電流値に到達した時の出力電流に基づいて第1の基準電圧値を発生し、第1の基準電圧値に基づいてアッテネータ回路10を制御する。アッテネータ制御回路30は、第1の絶対値回路301、第1の基準電圧源303、第2のノード305、第1のコンパレータ306、第3のノード307、第2の絶対値回路310、第4のノード311、電圧ラッチ回路313、第2のコンパレータ315、第5のノード317、キャパシタ319、第6のノード320を備える。
【0016】
第1の絶対値回路301は、電流検出回路21によって検出された電流をI-V変換し、第1の電圧絶対値として第2のノード305を介して第1のコンパレータ306の一方の入力端子へ出力する。
【0017】
第1の基準電圧源303は、基準電圧V1(第2の基準電圧値の一例)を第1のコンパレータ306の他方の入力端子へ供給する。
【0018】
第1のコンパレータ306は、第1の絶対値回路301から出力される第1の電圧絶対値が基準電圧V1より大きくなるとハイレベル信号を出力する。第1のコンパレータ306から出力されたハイレベル信号は、第3のノード307を介して電圧ラッチ回路313へ出力される。
【0019】
なお、第1の基準電圧源303から供給される基準電圧V1は、第1の電力増幅回路20の出力電流(すなわち、電流検出回路21によって検出される出力電流)が目標とする出力電流リミット値に達した時に第3のノード307がハイレベルになるように(第1のコンパレータ306からハイレベル信号が出力されるように)設定される。
【0020】
第2の絶対値回路310は、第1の電力増幅回路20に供給される電圧に基づく第2の電圧絶対値を、第4のノード311を介して第2のコンパレータ315の一方の入力端子に供給する。
【0021】
電圧ラッチ回路313は、第1のコンパレータ306の出力信号に応答して、第2の絶対値回路310が出力する第2の電圧絶対値をラッチする。電圧ラッチ回路313は、ラッチした第2の電圧絶対値を、第1の基準電圧値として第5のノード317を介して第2のコンパレータ315の他方の入力端子に供給する。
【0022】
第2のコンパレータ315は、第2の絶対値回路310からの第2の電圧絶対値と、電圧ラッチ回路313からの第1の基準電圧値とを比較する。第2のコンパレータ315は、第2の絶対値回路310からの第2の電圧絶対値が電圧ラッチ回路313からの第1の基準電圧値より大きくなると、ハイレベル信号を出力する。第2のコンパレータ315から出力されたハイレベル信号は、キャパシタ319による位相制御を受け、第6のノード320を介してアッテネータ回路10の第1の電圧制御回路103に出力される。
【0023】
第1の電圧制御回路103は第2のコンパレータ315から出力されたハイレベル信号に応答して、電圧制御抵抗の抵抗値を制御し、入力電圧信号を減衰させる。すなわち、第2の絶対値回路310から出力される第2の電圧絶対値が電圧ラッチ回路313から出力される第1の基準電圧値よりも大きい場合、第2のコンパレータ315からの制御信号により第1の電圧制御回路103を制御する。第1の電圧制御回路103は、入力電圧信号を減衰させて第1のノード102に出力することで、第2の絶対値回路310から出力される第2の電圧絶対値が電圧ラッチ回路313から出力される第1の基準電圧値よりも大きくならないように制御する。
【0024】
電圧ラッチ回路313から出力される第1の基準電圧値は、第1の電力増幅回路20の出力電流が目標とする出力電流リミット値に達したタイミングにおいて、電圧ラッチ回路313によりラッチされた第2の電圧絶対値である。従って、第1の電力増幅回路20の出力電流を基準とする瞬間値であるため時定数の影響を受けにくいものなっている。
【0025】
次に、第1の実施形態に係るリミッタ回路の動作を説明する。
【0026】
図2は、重い負荷6(例えば2Ω等の低抵抗)に接続された場合のリミッタ回路1の動作を説明するための図である。すなわち、図2(a)は、入力ノード3における電圧波形(入力電圧波形)と、出力ノード5における電圧波形(出力電圧波形)とを、それぞれ実線と破線とで示している。図2(b)は、第1の電力増幅回路20の出力電流Ioutの電流波形を示している。図2(c)は、第1の基準電圧源303の基準電圧V1(第2の基準電圧値)と、第2のノード305における電圧波形(第1の電圧絶対値の波形)とを示している。図2(d)は、第5のノード317における電圧波形(第1の基準電圧)と、第4のノード311における電圧波形(第2の電圧絶対値の波形)とを示している。図2(e)は、第6のノード320における電圧波形(第2のコンパレータ315の出力波形)を示している。
【0027】
図2(b)に示した様に、第1の電力増幅回路20の出力電流が時刻t1において出力電流リミット値ILに到達した場合を想定する。係る場合、図2(d)に示した様に、時刻t1において第2のコンパレータ315からの出力信号により第6のノード320の電圧が上昇する。第1の電圧制御回路103は、この第2のコンパレータ315からの出力信号に応答して動作し入力電圧を減衰させる。
【0028】
第1の電圧制御回路103の動作に連動して、図2(a)に示した様に、出力電圧波形は、時刻t1以降において、入力電圧波形に比して減衰された波形となる。出力電圧波形の減衰に連動し、図2(c)に示した様に、第1の絶対値回路301が出力する第1の電圧絶対値は第1の基準電圧源303の基準電圧V1よりも低くなる。また、第1の電圧絶対値の変化に連動して、時刻t1以降において、第2の絶対値回路310が出力する第2の電圧絶対値は、電圧ラッチ回路313によってラッチされた第2の電圧絶対値よりも低くなる。
【0029】
以上の一連の動作は、第1の電力増幅回路20の出力電流が時刻t1において出力電流リミット値ILに到達する都度実行される。
【0030】
図3は、比較例に係るリミッタ回路8を有するパワーアンプ回路D3を説明するための図である。図4は、図3に示したパワーアンプ回路D3が有する電流リミッタ回路9の一例を示した図である。
【0031】
また、図5は、重い負荷6(例えば2Ω等の低抵抗)を接続した場合のリミッタ回路8の動作を説明するための図である。すなわち、図5(a)は、入力ノード3における電圧波形(入力電圧波形)と、出力ノード5における電圧波形(出力電圧波形)とを、それぞれ実線と破線とで示している。図5(b)は、第2の電力増幅回路22の出力電流の電流波形を示している。図5(c)は、第3の基準電圧源803の基準電圧V3と、ノード805における電圧波形とを示している。図5(d)は、ノード811における電圧波形を示している。
【0032】
図3に示す様に、第2の電力増幅回路22に供給される電圧は、第3の絶対値回路801により電圧絶対値としてコンパレータ807の一方の端子に入力される。また、第3の基準電圧源803の基準電圧V3は、コンパレータ807の他方の端子に入力される。コンパレータ807は、第3の絶対値回路801からの第3の電圧絶対値が基準電圧V3よりも大きい場合、図5(d)に示した様に、第1の電圧制御回路103を制御する制御信号をノード811に出力する。第1の電圧制御回路103は、入力電圧信号を減衰させて第1のノード102に出力することで、図5(c)に示した様に、第3の絶対値回路801から出力される電圧絶対値(ノード805の電圧)が基準電圧V3よりも大きくならないように制御する。
【0033】
この様な比較例に係るリミッタ回路8を用いた場合、使用上想定される一番重い負荷(例えば、2Ω等の低抵抗の場合)に流れる電流を基準として、電圧リミッタの閾値としての基準電圧V3を設定する。しかしながら、係る設定をした場合、当該設定の基準とした負荷よりも軽い負荷(例えば、16Ω等の高抵抗の場合)をパワーアンプ回路D3に接続した場合には、必要以上に電圧が制御され出力電力が犠牲になる。
【0034】
また、図4に示した電流リミッタ回路9は、例えば電力増幅回路内に設けられ、入力回路901、出力トランジスタ902、ベース制御トランジスタ903、出力電流センス抵抗904、出力ノード905を有する。入力回路901を介して供給される制御信号に応答して出力トランジスタ902が動作し出力電流が流れる。出力電流が流れることにより、出力電流センス抵抗904にて発生する電圧が例えば0.7V以上に達すると、ベース制御トランジスタ903により出力トランジスタ902のベースエミッタ間電圧が制御され、出力電流が制限される。
【0035】
電流リミッタ回路9はアッテネータ回路10を使わないため、図5(a)、(b)に示した様に電流リミッタ動作時のオーディオ信号はクリップした波形となり、オーディオ特性悪化が顕著である。
【0036】
なお、例えば図3に示したリミッタ回路8において、第3の絶対値回路801においてモニタするノードを、出力電圧ではなく出力電流又は出力電流をI-V変換した信号をモニタする構成(アッテネータを用いた電流リミッタ構成)も想定される。しかしながら、出力電流波形は負荷インピーダンスや出力LCフィルタの時定数の影響を受ける。このため、リミッタの過渡的な応答と出力電流の過渡的な応答の違いにより、安定したリミット値を得られる回路を実現するのは非常に難しい。
【0037】
これに対し、実施形態に係るリミッタ回路は、アッテネータ回路10と、アッテネータ制御回路30とを備える。アッテネータ回路10は、第1の電力増幅回路20に供給される電圧をアッテネートする。アッテネータ制御回路30は、第1の電力増幅回路20の出力電流が基準電流値に到達した時の前記出力電流に基づいて第1の基準電圧値を発生し、第1の基準電圧値に基づいてアッテネータ回路10を制御する。
【0038】
より具体的には、アッテネータ制御回路30は、第1の絶対値回路301、第1のコンパレータ306、第2の絶対値回路310、電圧ラッチ回路313、第2のコンパレータ315を有する。第1の絶対値回路301は、第1の電力増幅回路20の出力電流を電圧に変換し第1の電圧絶対値を出力する。第1のコンパレータ306は、第1の電圧絶対値と第2の基準電圧値を比較する。第2の絶対値回路310は、電力増幅回路に供給される電圧に基づいて第2の電圧絶対値を出力する。電圧ラッチ回路313は、第1のコンパレータ306の出力信号に応答して、第2の電圧絶対値をラッチして第1の基準電圧値を出力する。第2のコンパレータ315は、第2の電圧絶対値と、電圧ラッチ回路313からの第1の基準電圧値とを比較する。アッテネータ回路10は、第2のコンパレータ315の出力信号に応答して、第1の電力増幅回路20に供給される電圧をアッテネートする。
【0039】
従って、第1の電力増幅回路20の出力電流が出力電流リミット値ILに到達したことをトリガとし、電流検出時の第1の電力増幅回路20の出力電流に基づいて第1の基準電圧値を発生し、これに基づいてアッテネータ回路10を制御することができる。より具体的には、アッテネータ制御回路30は、第1の電力増幅回路20の出力電流を電圧に変換して得られる第1の電圧絶対値と第2の基準電圧値を比較し、第1の電圧絶対値が第2の基準電圧値を超えたタイミングでラッチされた電力増幅回路への供給電圧を、第1の基準電圧値とすることができる。
【0040】
アッテネータ回路10は、電流検出時の出力電流が基準値(出力電流リミット値)を超えたタイミングで発生された第1の基準電圧値(出力電圧リミット値)に基づいて、第1の電力増幅回路20へ供給する電圧をアッテネートすることができ、安定して出力電流を制御することができる。言い換えれば、出力電流又は出力電流をI-V変換した信号を直接モニタする必要がないため、複雑な時定数を持つインピーダンスのスピーカやフィルタを接続されても安定して出力電流リミッタが動作する。また、増幅回路の入力から負荷までの経路は電圧リミッタと同じであるため、リミッタ動作時のオーディオ悪化を最小限することができる。
【0041】
その結果、負荷インピーダンスや出力LCフィルタの時定数によらず、過電流リミッタ動作時においても過度に音質を悪化させることなく再生が可能となる。
【0042】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係るリミッタ回路7について説明する。
【0043】
図6は、第2の実施形態に係るリミッタ回路7を有するパワーアンプ回路D2の構成を示した図である。図6に示した様に、パワーアンプ回路D2は、リミッタ回路7、第1の電力増幅回路20を有する。リミッタ回路7は、アッテネータ回路10、電流検出回路21、アッテネータ制御回路30を有する。以下、第1の実施形態において説明したアッテネータ制御回路30と異なる構成について説明する。
【0044】
アッテネータ制御回路30は、第1の絶対値回路301、第1の基準電圧源303、第2のノード305、第1のコンパレータ306、第3のノード307、第4のノード311、第2の絶対値回路310、第2の基準電圧源312、電圧ラッチ回路313、アナログスイッチ314、第2のコンパレータ315、第7のノード318、キャパシタ319、第6のノード320を備える。
【0045】
第1のコンパレータ306は、第1の絶対値回路301から出力される第1の電圧絶対値が基準電圧V1より大きくなると、ハイレベル信号を出力する。第1のコンパレータ306から出力されたハイレベル信号は、第3のノード307を介して電圧ラッチ回路313とアナログスイッチ314に出力される。
【0046】
第2の基準電圧源312は、基準電圧V2(第3の基準電圧値の一例)を、第7のノード318を介して第2のコンパレータ315の他方の入力端子に供給する。
【0047】
電圧ラッチ回路313は、第1のコンパレータ306の出力信号に応答して、第2の絶対値回路310が出力する第2の電圧絶対値をラッチする。電圧ラッチ回路313は、ラッチした第2の電圧絶対値を、第1の基準電圧値として第7のノード318を介して第2のコンパレータ315の他方の入力端子に出力する。
【0048】
アナログスイッチ314は、第1のコンパレータ306の出力信号に応答して、第7のノード318の接続を制御する。具体的には、アナログスイッチ314は、第1のコンパレータ306からのハイレベル信号に応答して、第7のノード318と電圧ラッチ回路313とを接続する。また、アナログスイッチ314は、第1のコンパレータ306からハイレベル信号が出力されない場合には、第7のノード318と第2の基準電圧源312とを接続する。例えば、負荷6が軽く、第1の電力増幅回路20の出力電流が目標とする出力電流リミット値に達しない場合、アナログスイッチ314により、第7のノード318と第2の基準電圧源312とが接続される。
【0049】
ここで、基準電圧V2(第3の基準電圧値)は目標とする出力電圧リミット値に設定することで、通常の電圧リミッタと同等の制御を実現することができる。
【0050】
第2のコンパレータ315は、第2の絶対値回路310からの第2の電圧絶対値と、電圧ラッチ回路313からの第1の基準電圧値とを比較する。第2のコンパレータ315は、第2の絶対値回路310からの第2の電圧絶対値が電圧ラッチ回路313からの第1の基準電圧値より大きくなると、ハイレベル信号を出力する。第2のコンパレータ315から出力されたハイレベル信号は、キャパシタ319による位相制御を受け、第6のノード320を介してアッテネータ回路10の第1の電圧制御回路103に出力される。
【0051】
また、第2のコンパレータ315は、第2の絶対値回路310からの第2の電圧絶対値と、第2の基準電圧源312からの基準電圧V2とを比較する。第2のコンパレータ315は、第2の絶対値回路310からの第2の電圧絶対値が第2の基準電圧源312からの基準電圧V2より大きくなると、ハイレベル信号を出力する。第2のコンパレータ315から出力されたハイレベル信号は、キャパシタ319による位相制御を受け、第6のノード320を介してアッテネータ回路10の第1の電圧制御回路103に出力される。
【0052】
第1の電圧制御回路103は、第2のコンパレータ315から出力されたハイレベル信号に応答して、電圧制御抵抗の抵抗値を制御し、入力電圧信号を減衰させる。
【0053】
すなわち、第1の電圧制御回路103は、第2の絶対値回路310から出力される第2の電圧絶対値が電圧ラッチ回路313から出力される第1の基準電圧値よりも大きい場合、第2のコンパレータ315からの制御信号により第1の電圧制御回路103を制御する。また、第1の電圧制御回路103は、第2の絶対値回路310から出力される第2の電圧絶対値が第2の基準電圧源312からの基準電圧V2よりも大きい場合、第2のコンパレータ315からの制御信号により第1の電圧制御回路103を制御する。
【0054】
図7は、軽い負荷6(例えば16Ω等の高抵抗)を接続した場合のリミッタ回路7の動作を説明するための図である。すなわち、すなわち、図7(a)は、入力ノード3における電圧波形(入力電圧波形)と、出力ノード5における電圧波形(出力電圧波形)とを、それぞれ実線と破線とで示している。図7(b)は、第1の電力増幅回路20の出力電流Ioutの電流波形を示している。図7(c)は、第1の基準電圧源303の基準電圧V1(第2の基準電圧値)と、第2のノード305における電圧波形(第1の電圧絶対値の波形)とを示している。図7(d)は、第7のノード318における電圧波形(ラッチされた第2の電圧絶対値又は基準電圧V2)と、第4のノード311における電圧波形(第2の電圧絶対値の波形)とを示している。図7(e)は、第6のノード320における電圧波形(第2のコンパレータ315の出力波形)を示している。
【0055】
図7(b)に示した様に、第1の電力増幅回路20の出力電流は時刻t1において出力電流リミット値ILに到達していない。従って、図7(c)に示した様に、第2のノード305の電圧は第1の基準電圧源303の基準電圧V1(第2の基準電圧値)に到達しない。
【0056】
一方、図7(d)に示した様に、第4のノード311における電圧が第7のノード318における電圧より大きくなると、図7(e)に示す様に、時刻t1において第2のコンパレータ315からの出力信号により第6のノード320の電圧が上昇する。第1の電圧制御回路103は、第2のコンパレータ315からの出力信号に応答して動作し入力電圧を減衰させる。
【0057】
第1の電圧制御回路103の動作に連動して、図7(a)に示した様に、出力電圧波形は、時刻t1以降において、入力電圧波形に比して減衰された波形となる。
【0058】
以上の一連の動作は、第1の電力増幅回路20に入力される電圧が第2の基準電圧源312による基準電圧V2(第3の基準電圧値)に到達する都度実行される。また、重い負荷6が接続された場合には、リミッタ回路7は、第1の実施形態で説明したリミッタ回路1と同様の動作をすることができる。
【0059】
以上述べた様に、本実施形態に係るリミッタ回路7においては、第2のコンパレータ315は、第1の電圧絶対値が第1の基準電圧値より小さい場合(例えば、軽い負荷6が当該パワーアンプ回路D2に接続された場合)には、第2の電圧絶対値と第3の基準電圧値V3とを比較する。また、第2のコンパレータ315は、第1の電圧絶対値が前記第1の基準電圧値より大きい場合(例えば、重い負荷6が当該パワーアンプ回路D2に接続された場合)には、第2の電圧絶対値と第1の電圧ラッチ回路からの第1の基準電圧値とを比較する。従って、本実施形態に係るリミッタ回路7によれば、負荷インピーダンスや出力LCフィルタの時定数によらず、過電流リミッタ動作時においても過度に音質を悪化させることなく再生が可能となる。
【0060】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上記新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
1、7 リミッタ回路
3 入力ノード
4 フィルタ
5 出力ノード
6 負荷(スピーカ)
10 アッテネータ回路
20 第1の電力増幅回路
30 アッテネータ制御回路
101 第1の抵抗
102 第1のノード
103 第1の電圧制御回路
301 第1の絶対値回路
303 第1の基準電圧源
305 第2のノード
306 第1のコンパレータ
307 第3のノード
310 第2の絶対値回路
311 第4のノード
313 電圧ラッチ回路
315 第2のコンパレータ
317 第5のノード
318 第7のノード
319 キャパシタ
320 第6のノード
D1、D2 パワーアンプ回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7