(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-23
(45)【発行日】2024-01-31
(54)【発明の名称】試験測定装置及び入力信号のジッタを求める方法
(51)【国際特許分類】
G01R 29/02 20060101AFI20240124BHJP
G01R 23/16 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
G01R29/02 L
G01R23/16 D
(21)【出願番号】P 2020540486
(86)(22)【出願日】2019-01-23
(86)【国際出願番号】 US2019014819
(87)【国際公開番号】W WO2019147720
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2022-01-07
(32)【優先日】2018-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391002340
【氏名又は名称】テクトロニクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TEKTRONIX,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マーク・エル・ギュンター
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-247887(JP,A)
【文献】特開2005-70041(JP,A)
【文献】特開2006-292749(JP,A)
【文献】特開2016-133407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 29/02
H04L 25/02
G01R 23/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力波形を受ける入力部と、
該入力部に結合され、受けた上記入力波形からジッタ・トレンドと、対応する複合ジッタ・スペクトルと、対応するジッタ・スペクトル・パワー信号とを生成するように構成されたコンバータと、
デターミニスティック・ジッタを特定するための第1しきい値を超える上記ジッタ・スペクトル・パワー信号の第1範囲を特定するよう構成される第1しきい値検出部と、
上記第1しきい値を超える上記ジッタ・スペクトル・パワー信号の上記
第1範囲を除外し、非デターミニスティック・ジッタに関する複合ジッタ・スペクトルと、非デターミニスティック・ジッタに関する対応するジッタ・スペクトル・パワー信号とを生成するように構成された第1フィルタと、
非デターミニスティック・ジッタに関する上記
ジッタ・スペクトル・パワー信号の第2しきい値を超える第2範囲を特定するように構成された第2しきい値検出部と、
上記非デターミニスティック・ジッタの特定された第2範囲のみを確保するように構成された第2フィルタと、
非デターミニスティック・ジッタの確保された第2範囲が主にガウス分布ジッタを含んでいるのか又はガウス分布ジッタ及び非ガウス分布ジッタの混成なのかを判断するように構成されたガウス分布検出部と、
上記非デターミニスティック・ジッタの確保された上記第2範囲中のジッタが非ガウス分布ジッタを含んでいるとガウス分布検出部が判断した場合にのみ、更なる信号分析を実行するように構成されたQスケール・アナライザと
を具え、
上記第1しきい値及び上記第2しきい値は、周波数順応型しきい値であり、上記第2しきい値は、上記第1しきい値よりも周波数に対してゆっくりと変化する試験測定装置。
【請求項2】
上記Qスケール・アナライザによって実行される上記更なる信号分析が、
非デターミニスティック・ジッタの確保された上記第2範囲に関する1つ以上のQスケール・パラメータを求める処理と、
1つ以上の上記Qスケール・パラメータに基づいて上記ガウス分布ジッタの標準偏差を求める処理と
を具える請求項1による試験測定装置。
【請求項3】
1つ以上の上記Qスケール・パラメータに基づいて上記ガウス分布ジッタの上記標準偏差を求める処理が、
Qスケール・パラメータに基づいて左側の標準偏差を求める処理と、
Qスケール・パラメータに基づいて右側の標準偏差を求める処理と、
非デターミニスティック・ジッタの確保された上記第2範囲中のガウス分布ジッタの標準偏差を求める処理と、
上記第2フィルタと相補的なフィルタを生成し、上記非デターミニスティック・ジッタの上記第2範囲を除外して、上記第2範囲内にない上記ガウス分布ジッタの推定値を求める処理と、
上記第2範囲内にないガウス分布ジッタの標準偏差を求める処理と、
上記非デターミニスティック・ジッタの上記第2範囲内外
の上記ガウス分布ジッタの標準偏差に基づいて上記ガウス分布ジッタ全体の標準偏差を求める処理と
を有する請求項2による試験測定装置。
【請求項4】
上記ガウス分布検出部は、確保された上記第2範囲の尖度を求めることによって、上記非デターミニスティック・ジッタの確保された上記第2範囲が、主にガウス分布ジッタを含むのか又はガウス分布ジッタ及び非ガウス分布ジッタの混成なのかを判断するように構成され、上記尖度が、尖度しきい値以下である場合、上記ガウス分布検出部は、確保された上記第2範囲が非ガウス分布ジッタを含むと判断する請求項1による試験測定装置。
【請求項5】
入力信号を受ける処理と、
受けた上記入力信号からスペクトル・パワー信号を生成する処理と、
上記スペクトル・パワー信号の
第1しきい値を超える第1範囲を特定する処理と、
特定されたジッタから成る上記第1範囲を第1フィルタによって除外し、非デターミニスティック・ジッタを抽出する処理と、
上記非デターミニスティック・ジッタのスペクトルの大きさを調べて上記非デターミニスティック・ジッタに関する上記スペクトル・パワー信号を特定する処理と、
上記非デターミニスティック・ジッタに関する上記スペクトル・パワー信号の第2しきい値を超える第2範囲を特定する処理と、
第2フィルタによって上記非デターミニスティック・ジッタの特定された上記第2範囲のみを確保する処理と、
上記非デターミニスティック・ジッタの上記スペクトル・パワー信号の確保された上記第2範囲が主にガウス分布ジッタを含むのか又はガウス分布ジッタに加えて非ガウス分布ジッタを含むのかを判断する処理と、
上記非デターミニスティック・ジッタの確保された上記第2範囲中のジッタが非ガウス分布ジッタを含んでいるとガウス分布検出部が判断した場合にのみ更なる信号分析を実行する処理と
を具え、
上記第2しきい値は、上記第1しきい値よりも周波数に対してゆっくりと順応する周波数順応型しきい値である入力信号のジッタを求める方法。
【請求項6】
上記更なる信号分析が、
上記非デターミニスティック・ジッタの確保された上記第2範囲に関する1つ以上のQスケール・パラメータを求める処理と、
1つ以上の上記Qスケール・パラメータに基づいて上記ガウス分布ジッタの標準偏差を求める処理と
を有する請求項5による入力信号のジッタを求める方法。
【請求項7】
上記Qスケール・パラメータに基づいて上記ガウス分布ジッタの上記標準偏差を求める処理が、
Qスケール・パラメータに基づいて左側の標準偏差を求める処理と、
Qスケール・パラメータに基づいて右側の標準偏差を求める処理と、
非デターミニスティック・ジッタの確保された上記第2範囲中の上記ガウス分布ジッタの標準偏差を求める処理と、
上記第2フィルタと相補的なフィルタを生成し、上記第2範囲を除外して、上記第2範囲内にないガウス分布ジッタの推定値を求める処理と、
上記第2範囲内にない上記ガウス分布ジッタの標準偏差を求める処理と、
上記第2範囲内外の非デターミニスティック・ガウス分布ジッタの標準偏差に基づいてガウス分布ジッタ全体の標準偏差を求める処理と
を有する請求項6による入力信号のジッタを求める方法。
【請求項8】
上記非デターミニスティック・ジッタの確保された上記第2範囲が主にガウス分布ジッタを含むのか又はガウス分布ジッタに加えて非ガウス分布ジッタを含むのかを判断する処理が、確保された上記
第2範囲の尖度を求める処理を有し、上記尖度が尖度しきい値以下である場合、上記ガウス分布検出部が、確保された上記第2範囲が非ガウス分布ジッタを含むと判断する請求項5による入力信号のジッタを求める方法。
【請求項9】
試験測定装置の1つ以上のプロセッサによって実行されると、上記試験測定装置に請求項5から8のいずれかの方法を実行させる命令を含むコンピュータ・プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示技術は、試験測定システムに関連する試験測定装置及び方法に関し、特にガウス分布及び有界(Bounded)成分が混合しているランダム・タイミング・ジッタをより正確に定量化できる試験測定装置及び入力信号のジッタを求める方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の多くの電子デバイス及び通信システムは、デジタル・ビットのシリアル化したストリームを使用して、トランスミッタからレシーバにデジタル情報を転送する。送信又は受信した信号の品質を測定してエラー・レートを予測することは、ユーザにとって大きな関心事となり得る。特に、ジッタ分析は、電子回路のビット・エラー・レートを予測したり、電子回路の開発やデバッグをする目的で、立ち上がり又は立ち下がり波形エッジ夫々の理想的な位置からの時間的な変位(ジッタ)を測定し、ジッタを分析して特異な副次的成分(subcomponent)を特定するプロセスに関係する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許公開第2016/0036568号明細書
【文献】米国特許公開第2013/0142242号明細書
【文献】米国特許公開第2009/0326845号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
いくつかの良く知られたジッタ分析方法は、様々な試験測定装置によって実行されるが、ランダム・ジッタから複数の形式のデターミニスティック・ジッタを分離するのに、スペクトル分析に依存している。しかし、これらの手法を使用すると、ランダム・ジッタがガウス(非有界)成分と非ガウスの有界成分の両方を含んでいる場合に、問題があることがわかっている。これが難しい課題となり得るのは、これらの成分の両方が、同じようなスペクトラム密度で、同じスペクトラム・レンジを占めることがあり、また、これらは、周波数に関して「フラット」、つまり、周波数による変化がゆるやかなことがあるためである。ガウス分布ジッタは、ビット・エラー・レートに対して、有界ジッタとは大きく異なる影響を与えるため、これらのジッタ成分を誤って特定した結果は、重大である。
【0005】
本開示技術の実施形態は、これら及び他の従来技術の欠点を解決しようとするものである。
【0006】
本開示技術の実施形態の態様、特徴及び効果は、添付図面を参照した以下の実施形態の説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、線形周波数スケールで示されるシリアル・データ波形のジッタの例示的なスペクトル・パワープロットである。
【
図2】
図2は、デターミニスティック・ジッタを特定して分離するのに有用な順応型しきい値と共に、対数水平スケールで示された
図1の例示的なスペクトル・パワープロットである。
【
図3】
図3は、ガウス分布ジッタと非ガウス分布ジッタとを区別しない順応型しきい値を有する線形水平スケールを有する例示的なスペクトル・パワープロットである。
【
図4】
図4は、純粋なガウス分布に関するQスケール・プロットの例である。
【
図5】
図5は、ガウス分布に加えて有界成分を有するQスケール・プロットの例である。
【
図6】
図6は、有界成分の振幅を小さくしたQスケール・プロットの例である。
【
図7】
図7は、有界成分の振幅に見合うようにガウス分布ジッタの標準偏差を小さくしたQスケール・プロットの例である。
【
図8】
図8は、水平方向に再スケールした
図7のQスケール・プロットの例である。
【
図9】
図9は、いくつかの実施形態による試験測定装置の例示的なブロック図である。
【
図11】
図11は、いくつかの実施形態による
図9の試験測定装置のより詳細な動作例である。
【
図12】
図12は、1ヘルツの周波数変化に対する振幅の変化率が低い周波数順応型しきい値を有するパワー・スペクトル密度プロットの例である。
【
図13】
図13は、開示技術のいくつかの実施形態に従って設計されたフィルタを適用した後のパワー・スペクトル・プロットの例である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
上述のように、従来のジッタ分析法は、複数の形式のデターミニスティック・ジッタをランダム・ジッタから分離するのに、スペクトル分析に依存している。通常、これらの方法では、ジッタをデジタル・フーリエ変換(DFT)したものを、大きさ固定のしきい値又は周波数に応じた(周波数順応型の)大きさのしきい値と比較し、デターミニスティックのピークを特定する。
【0009】
ガウス分布ランダム・ノイズは、「ホワイト(帯域幅の1ヘルツ当たりのパワー(電力)が等しい)」であるのが最も普通ではあるが、1/f又は1/f
2のプロファイル(fは周波数)に従うこともあるし、また、チャンネル損失を補償するイコライザ(等化回路)の極(pole)とゼロによって整形されることもあるので、大きさ順応型のしきい値が望ましい。大きさ順応型しきい値は、周波数に応じてノイズ・フロアの変動に充分に追従するようにダイナミックに変化すると良いが、この順応型しきい値は、あまりにも速く順応し過ぎずに、真に検出すべき信号には追従するのが好ましい。
図1は、線形周波数時間スケールにおけるジッタを有する信号の代表的なスペクトル・パワー・プロット100である。
図2は、
図1と同じジッタを有する信号の代表的なスペクトル・プロット200であるが、水平軸が対数(log)スケールである。順応型しきい値202も示されている。順応型しきい値202を超えるスペクトルのピークは、デターミニスティック・ジッタであると考えられ、よって、これらをジッタ全体からフィルタ処理して、完全にランダム・ジッタと推定されるものを残すことができる。
【0010】
従来の試験測定装置を使用した場合の更に困難な問題は、ガウス分布成分と非ガウス分布成分(本願では、有界成分とも呼ぶ)の両方を含むランダム・ジッタの分布を分析することである。これが難しい課題となるのは、上述のように、これらの成分の両方が、同じようなスペクトラム密度で、同じスペクトラム・レンジを占めることがあり、また、これらは、周波数に関して「フラット」、つまり、周波数による変化がゆるやかなことがあるためである。有界ランダム・ジッタは、パワー・スペクトル中の、通常、比較的低い周波数において、幅の広い円丘(hump:こぶ)又はふくらみとして現れることが多い。
【0011】
図3は、有界ランダム・ジッタを有するスペクトル・パワー・プロット300を示しており、有界ランダム・ジッタは、パワー・スペクトルにおいて、幅広の円丘302又はふくらみとして現れている。周囲のホワイト・ガウス分布ノイズ・フロアから、スペクトルの円丘302が立ち上がるのに伴う傾斜によっては、有界ジッタ302が、多くの場合、1/f又は1/f
2プロファイルに従ったガウス分布ジッタの増加のように見える。デターミニスティック・ジッタを検出するように設計された典型的な順応型しきい値304では、
図3に示すように、円丘302に順応して何も検出しないことがある。
【0012】
上述の例よりも更に困難な場合としてあり得るのは、非ガウス分布ジッタが、ホワイト・ガウス分布ノイズのスペクトル密度よりも低いか又は同等のスペクトル密度で存在する場合である。このような場合、スペクトルのふくらみが、わずかであるか又は全くないために、順応型しきい値では検出できないことがある。
【0013】
デターミニスティック成分を特定してフィルタ処理で除去する前か又は除去した後に、テール・フィット(tail-fit)又はQスケールを使用してジッタ・スペクトル全体を分析する方法がいくつか開発されて良く知られている。しかし、これらの方法は、少量の有界ジッタが、はるかに多量のガウス分布ジッタに圧倒されるために、有界ジッタの大きさを検出して特性を測定するのが困難になるということが多いので、問題が生じることがある。これは、
図4~6に示されている。
【0014】
図4に示すQスケール・プロット400では、標準偏差σを持つガウス分布は、直線として表され、傾斜は1/σに等しい。小さな大きさの独立した有界分布がガウス分布に追加されると、2つの分布の確率密度関数(probability density function:PDF)が畳み込み積分(convolve)される。
図5のQスケール・プロット500では、有界分布が導入されると、同じ漸近傾斜(asymptotic slope)を保ちつつ、直線の両端は外方向にシフトする。値B
ddは、有界分布のデュアル・ディラック振幅であり、有界分布の強度の有用な尺度である。当業者であればわかるように、実際の統計データの場合、Qスケール・プロット400と500の線は、これらプロットが示唆するほどまっすぐではなく、注意して選択した場合でも、漸近線の傾斜に何らかの変動があることがある。
【0015】
図6のQスケール・プロット600は、ガウス分布のσとの関係で、有界分布の振幅が小さい場合を示す。振幅B
ddが漸近線の調整によるばらつきと同等程度となり、振幅B
ddの推定値の大きなばらつきにつながるリスクがある。
図7のQスケール・プロット700は、ガウス分布ジッタの標準偏差が、何らかの形で元の値σからずっと小さい値σ
2に減少した場合を示している。
図8のQスケール・プロット800は、そのサンプル・プロットを示しているが、水平方向を再スケールした場合である。有界ジッタがガウス分布ジッタと同等なスケールにある場合、Qスケールの手法は、有界ジッタの大きさを、はるかに簡単に決定できることが分かる。
【0016】
尖度(kurtosis)として知られる高度な統計数学的な分析が、統計的なサンプルにガウス分布があるかどうかを評価するのに有益である。ガウス分布しているランダムな変数の場合、サンプルのサイズが大きくなるにつれて、尖度が値3.0となる傾向にある。有界分布の場合には、尖度が3.0未満の数値となる傾向がある。このため、「尖度-3.0」で定義される用語「過剰尖度(excess kurtosis)」が時として使用され、このため、有界分布は、過剰尖度が0未満となる傾向がある。
【0017】
図9は、本願に開示される開示技術の実施形態の実施するためのオシロスコープのような例示的な試験測定装置900のブロック図である。装置900には、複数のポート902があり、これは、任意の電気的信号伝達媒体であっても良く、また、ネットワーク・インタフェースとして機能しても良い。ポート902には、レシーバ、トランスミッタ、トランシーバが含まれていても良い。ポート902は、被試験デバイスからのデータを受けるためにネットワークに接続されている。ポート902は、1つ以上のプロセッサ916と結合される。1つ以上のプロセッサ916には、ジッタ・アナライザ904があり、これは、ポート902から1つ以上の入力信号を受けることがある。図示しやすいように、
図9では、1つのプロセッサ916だけが示されているが、当業者であればわかるように、単一プロセッサ916ではなくて、様々なタイプの複数のプロセッサを組み合わせて使用しても良い。
【0018】
ポート902は、試験装置900中の測定ユニット(図示せず)に接続することもできる。このような測定ユニットには、ポート902を介して受けた信号を複数の観点(例えば、電圧、アンペア数、振幅等)から測定できる任意のコンポーネントが含まれていても良い。ポート902からプロセッサやジッタ・アナライザ904を通って描かれるルートには、信号調整回路、アナログ・デジタル・コンバータやその他の回路があっても良い。
【0019】
ジッタ・アナライザ904は、特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)等の任意の処理回路として実装されても良い。いくつかの実施形態では、ジッタ・アナライザ904は、メモリ910からの命令を実行するように構成され、こうした命令によって示される任意の方法や関連するステップを実行しても良い。他の実施形態では、ジッタ・アナライザ904には、各種フィルタ又は信号コンバータなど、1つ以上のプロセッサ916とは別個の複数のコンポーネントが含まれていても良い。
【0020】
ジッタ・アナライザ904には、例えば、コンバータ905、しきい値検出部906、フィルタ907、Qスケール・アナライザ908、及びガウス分布検出部909があっても良い。以下で更に詳細に説明するように、コンバータ905は、ポート902を介して入力信号を受けて、入力信号をスペクトル・パワー信号に変換しても良い。しきい値検出部906は、次いで、しきい値を超えるスペクトル・パワー信号の範囲(レンジ)を特定できる。フィルタ907は、スペクトル・パワー信号の特定された範囲をフィルタするように構成されており、例えば、デジタル・バンドパス・フィルタ又はデジタル・ローパス・フィルタであっても良い。ガウス分布検出部909は、尖度分析を用いて、フィルタ処理された範囲が主にガウス分布ジッタを含むのか、又は非ガウス分布ジッタを含むのかを判断する。フィルタ処理された範囲が非ガウス分布ジッタを含むと判断されると、Qスケール・アナライザ908は、フィルタ処理された範囲に対して更なる分析を行って、フィルタ処理された範囲内のガウス分布ジッタ及び非ガウス分布ジッタを求める。次いで、分析結果は、表示部912上でユーザに表示されても良い。
【0021】
メモリ910は、プロセッサ・キャッシュ、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、ソリッド・ステート・メモリ、ハード・ディスク・ドライブ、又はその他のメモリ形式で実装されても良い。メモリ910は、データ、コンピュータ・プログラム・プロダクト及びその他の命令を格納するための媒体として機能し、必要に応じて演算のために、そのようなデータ/プロダクト/命令をデータ・レコード生成部904に提供する。また、メモリ910は、測定された信号応答(例えば、波形)、タイム・スタンプ、以下の
図10及び11で説明する動作に関する命令、その他のデータを、ジッタ・アナライザ904で使用するために保存する。
【0022】
ジッタ・アナライザ904には、ユーザ入力部914が結合される。ユーザ入力部914には、キーボード、マウス、トラックボール、タッチスクリーンや、ユーザが表示部912上のGUIを介してジッタ・アナライザ904をインタラクティブに操作するのに利用できる他の任意の操作手段があっても良い。表示部912は、デジタル画面、陰極線管ベースのディスプレイ、又は、試験結果、タイム・スタンプ、パケット・タイムライン若しくはその他の結果を、本願で説明するようにユーザに表示する、その他のモニタであっても良い。試験装置900のコンポーネントは、試験装置900と一体化されて描かれているが、当業者であればわかるように、これらのコンポーネントのいずれもが試験装置900の外部にあっても良く、また、任意の従来の方法(例えば、有線又は無線の通信媒体やメカニズム)で試験装置900と結合されても良い。
【0023】
開示技術のいくつかの実施形態において、試験測定装置900には、ジッタ・アナライザ904に接続された別個のプロセッサ(図示せず)があっても良い。いくつかの実施形態では、当業者であればわかるように、ジッタ・アナライザ904が、別個のプロセッサを介して、メモリ910、表示部912及びユーザ入力部914に接続されても良い。
【0024】
図10は、本開示技術のいくつかの実施形態による、試験測定装置900の動作例、より具体的には、ジッタ・アナライザ904の動作例を示す。プロセッサ916は、工程1002において、入力波形を、波形の非デターミニスティック・ジッタを表すスペクトル・パワー信号に加工しても良い。工程1004では、ジッタ・アナライザ904は、しきい値を用いて、スペクトル・パワー信号中の値の高い範囲を検出する。次いで、工程1006において、バンドパス・フィルタを用いるなどにより、スペクトル・パワー信号をフィルタ処理し、スペクトル・パワー信号から値の高い範囲を分離しても良い。工程1008において、ジッタ・アナライザ904は、フィルタ処理された分布が有界成分を含むように見えるかどうかを判断することができる。もし「はい(Yes)」なら、工程1010では、Qスケール試験を適用しても良い。次いで、入力信号中の様々な形式のジッタがユーザに表示される。
【0025】
図11は、
図10に関して説明した動作を更に詳細に示している。工程1102において、プロセッサ916又はジッタ・アナライザ904は、受けた入力信号に関する時間インターバル・エラー(time interval error:TIE)値の配列を形成することができる。これは、例えば、自動検出された入力信号の中央しきい値やユーザから受けた入力に基づくような選択された検出電圧と、波形とが交差した実際の時刻を検出することによって行うことができる。ユーザが設定しても良い何らかのクロック・リカバリ手法による「完璧な」クロック、つまり、ジッタ・フリー・クロックを表す理想的な時刻からなる対応する配列を形成する。次いで、形成された2つの配列を互いに減算して、TIE値の配列を得る。
【0026】
工程1104において、プロセッサ916又はジッタ・アナライザは、TIE配列と、ブラックマン窓(Blackman window)のような適切な処理ウィンドウとを乗算し、フーリエ変換を行うことによって、ジッタの複合的なスペクトル(complex spectrum)を得ても良い。結果として得られる複合的な配列(complex array)の大きさを測ることによって、ジッタ全体のパワー・スペクトル密度の推定値が得られる。
【0027】
工程1106では、周波数順応型しきい値を、パワー・スペクトル密度の推定値に適用しても良い。この周波数順応型しきい値は、スペクトル内の全ての周波数ポイントについて定められる。つまり、この周波数順応型しきい値は、スペクトル内の各ポイントによって変化する。スペクトル・パワーが周波数順応型しきい値を超える点は、
図1に関して上述したようなデターミニスティック・ジッタとして特定される。複合ジッタ・スペクトルの中の対応するポイントは、スペクトルからデターミニスティック・ジッタを除去するために、大きさゼロに設定される。これにより、非デターミニスティック・ジッタからなる複合スペクトルが生成され、この複合スペクトルの大きさは、非デターミニスティック・ジッタのパワー・スペクトル密度の推定値になる。
【0028】
工程1102、1104及び1106は、限定するものではないが、米国特許第6,832,172号及び米国特許第6,853,933号に記載された方法のような方法を用いて行っても良い。
【0029】
工程1108では、第2周波数順応型しきい値を、非デターミニスティック・ジッタのパワー・スペクトル密度推定値に適用しても良い。この第2周波数順応型しきい値1202は、工程1106における周波数順応型しきい値よりも順応速度が遅く、そのため、
図12のプロット1200に示すように、スペクトル内の幅広の円丘1204でさえ検出される。第2周波数順応型しきい値は、工程1106で上述し、また、米国特許第6,853,933号で例示するように各周波数ポイントに関して周波数順応型しきい値を決めるのではなくて、第1周波数順応型しきい値の複数のポイントを、複数の周波数ポイント(例えば、数百の周波数ポイント)に渡って平均化することによって決定しても良い。
【0030】
工程1110において、プロセッサ916又はジッタ・アナライザ904は、デジタル・フィルタを生成するが、このとき、このフィルタのバンドパス領域が、スペクトルの第2周波数順応型検出しきい値を超える領域に対応するようにする。工程1112では、デジタル・フィルタが、時間領域の畳み込み積分を使うか、又は、複合ジッタ・スペクトルと周波数領域で乗算し、続いて逆変換するという等価的なやり方のいずれかによって、ジッタのトレンド(傾向)に適用される。
図13は、得られたプロット1300の周波数領域での例を示す。
【0031】
工程1114では、フィルタ処理されたジッタの尖度が、プロセッサ916又はジッタ・アナライザ904によって計算され、工程1112の結果が主にガウス分布であるか否かが判断される。尖度が、ある尖度のしきい値よりも大きい場合には、有界成分は、その後のエラーのモデル化処理に重要な影響を及ぼさないので、フィルタ処理されたジッタは、完全にガウス分布とみなされる。この尖度しきい値は、ユーザ入力部114を通してユーザが入力するか、又はプロセッサ916若しくはジッタ・アナライザ904によって決定されて、メモリ910に予め設定されていても良い。尖度のしきい値は、約2.8に設定されても良く、これは、上述したように、ガウス分布ランダム・ジッタのサンプル・サイズが大きくなるにつれて、尖度が3.0の値に近くなる傾向にあるところ、3.0の値を意図的にいくらか下回っている。この用語「約(approximately:およそ)」は、指定値又は推測値の±15%の変動が可能なことを示すために使用される。
【0032】
工程1116において、尖度が、尖度しきい値以下の場合、フィルタ処理したジッタは、Qスケールを用いて更なる分析をするに値する有界成分を有すると見なされる。Qスケール分析の目的は、フィルタ処理されたジッタを、有界カテゴリと非有界(ガウス分布)カテゴリの間で、割合に応じて分けることである。ジッタのサンプルは、大きさによって分類され、次いで、当業者であればわかるように、逆エラー関数(inverse error function)を使用してQスケールに変換されても良い。上述したようなジッタの全周波数帯域に由来するジッタ分布がQスケール上でグラフ化される状況とは異なり、この場合では、スペクトルの大きさに基づくと共に、余分なジッタの可能性をスクリーニングして、帯域を限定したスペクトルの一部のみがグラフ化される。
【0033】
工程1118では、線形漸近線を、左下に伸びるQスケール・プロットの部分にフィット(fit:適合)させる。この線の傾きの逆数は、分布の左側に対応するガウス分布のシグマσLとして記録されても良い。
【0034】
同様に、工程1120では、線形漸近線を、右上に伸びるQスケール・プロットの部分にフィットさせる。この線の傾きの逆数は、分布の右側に対応するガウス分布のシグマσRとして記録されても良い。
【0035】
スペクトル円丘内のガウス分布ジッタの標準偏差σHは、工程1122において、(σL+σR)/2として計算され、また、2つの漸近線の水平軸との切片(intercept)は、有界ランダム・ジッタのデュアル・ディラックの大きさとして記録される。
【0036】
工程1124では、工程1110で生成されたフィルタと相補的なフィルタが生成される。この相補的なフィルタは、スペクトルの検出しきい値を超える領域を除去するフィルタである。このフィルタは、ジッタのトレンドに適用され、このフィルタ処理されたジッタの2乗平均平方根(root mean square:rms)値は、スペクトルの「ホワイト」部分のガウス分布ランダム・ジッタの推定値σWとみなされる。
【0037】
工程1126では、こうして、ガウス分布ランダム・ジッタ全体の標準偏差を、SQRT(σW
2+σH
2)として求めても良い。これによって、試験測定装置900は、デターミニスティック成分、ランダム・ジッタ及びガウス分布ジッタを含め、入力信号に存在するジッタの種類を、より正確にユーザに表示することができる。
【0038】
本開示技術の態様は、特別に作成されたハードウェア、ファームウェア、デジタル・シグナル・プロセッサ又はプログラムされた命令に従って動作するプロセッサを含む特別にプログラムされた汎用コンピュータ上で動作できる。本願における「コントローラ」又は「プロセッサ」という用語は、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、ASIC及び専用ハードウェア・コントローラ等を意図する。本開示技術の態様は、1つ又は複数のコンピュータ(モニタリング・モジュールを含む)その他のデバイスによって実行される、1つ又は複数のプログラム・モジュールなどのコンピュータ利用可能なデータ及びコンピュータ実行可能な命令で実現できる。概して、プログラム・モジュールとしては、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含み、これらは、コンピュータその他のデバイス内のプロセッサによって実行されると、特定のタスクを実行するか、又は、特定の抽象データ形式を実現する。コンピュータ実行可能命令は、ハードディスク、光ディスク、リムーバブル記憶媒体、ソリッド・ステート・メモリ、RAMなどのコンピュータ可読記憶媒体に記憶しても良い。当業者には理解されるように、プログラム・モジュールの機能は、様々な実施例において必要に応じて組み合わせられるか又は分散されても良い。更に、こうした機能は、集積回路、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などのようなファームウェア又はハードウェア同等物において全体又は一部を具体化できる。特定のデータ構造を使用して、本開示技術の1つ以上の態様をより効果的に実施することができ、そのようなデータ構造は、本願に記載されたコンピュータ実行可能命令及びコンピュータ使用可能データの範囲内と考えられる。
【0039】
開示された態様は、場合によっては、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア又はこれらの任意の組み合わせで実現されても良い。開示された態様は、1つ以上のプロセッサによって読み取られ、実行され得る1つ又は複数のコンピュータ可読媒体によって運搬されるか又は記憶される命令として実現されても良い。そのような命令は、コンピュータ・プログラム・プロダクトと呼ぶことができる。本願で説明するコンピュータ可読媒体は、コンピューティング装置によってアクセス可能な任意の媒体を意味する。限定するものではないが、一例としては、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体及び通信媒体を含むことができる。
【0040】
コンピュータ記憶媒体とは、コンピュータ読み取り可能な情報を記憶するために使用することができる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、コンピュータ記憶媒体としては、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、電気消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリやその他のメモリ技術、コンパクト・ディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、DVD(Digital Video Disc)やその他の光ディスク記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置やその他の磁気記憶装置、及び任意の技術で実装された任意の他の揮発性又は不揮発性の取り外し可能又は取り外し不能の媒体を含んでいても良い。コンピュータ記憶媒体としては、信号そのもの及び信号伝送の一時的な形態は排除される。
【0041】
通信媒体とは、コンピュータ可読情報の通信に利用できる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、通信媒体には、電気、光、無線周波数(RF)、赤外線、音又はその他の形式の信号の通信に適した同軸ケーブル、光ファイバ・ケーブル、空気又は任意の他の媒体を含むことができる。
実施例
【0042】
以下では、本願で開示される技術の理解に有益な実施例が提示される。この技術の実施形態は、以下で記述する実施例の1つ以上及び任意の組み合わせを含んでいても良い。
【0043】
実施例1は、試験測定装置であって、入力波形を受ける入力部と、該入力部に結合され、受けた上記入力波形からジッタ・トレンドと、対応する複合ジッタ・スペクトルと、対応するジッタ・スペクトル・パワー信号とを生成するように構成されたコンバータと、デターミニスティック・ジッタを特定するための第1しきい値を超える上記ジッタ・スペクトル・パワー信号の第1範囲(range:レンジ)を特定するよう構成される第1しきい値検出部と、上記第1しきい値を超える上記ジッタ・スペクトル・パワー信号の上記範囲を除外し、非デターミニスティック・ジッタに関する複合ジッタ・スペクトルと、非デターミニスティック・ジッタに関する対応するジッタ・スペクトル・パワー信号とを生成するように構成された第1フィルタと、非デターミニスティック・ジッタに関する上記スペクトル・パワー信号の第2しきい値を超える第2範囲を特定するように構成された第2しきい値検出部と、上記非デターミニスティック・ジッタの特定された第2範囲のみを確保するように構成された第2フィルタと、非デターミニスティック・ジッタの確保された第2範囲が主にガウス分布ジッタを含んでいるのか又はガウス分布ジッタ及び非ガウス分布ジッタの混成なのかを判断するように構成されたガウス分布検出部と、上記非デターミニスティック・ジッタの確保された上記第2範囲中のジッタが非ガウス分布ジッタを含んでいるとガウス分布検出部が判断した場合にのみ、更なる信号分析を実行するように構成されたQスケール・アナライザとを具えている。
【0044】
実施例2は、実施例1による試験測定装置であって、Qスケール・アナライザによって実行される更なる信号分析は、非デターミニスティック・ジッタの確保された上記第2範囲に関する1つ以上のQスケール・パラメータを求める処理と、1つ以上のQスケール・パラメータに基づいて上記ガウス分布ジッタの標準偏差を求める処理とを具えている。
【0045】
実施例3は、実施例2による試験測定装置であって、1つ以上のQスケール・パラメータに基づいてガウス分布ジッタの標準偏差を求める処理は、Qスケール・パラメータに基づいて左側の標準偏差を求める処理と、Qスケール・パラメータに基づいて右側の標準偏差を求める処理と、非デターミニスティック・ジッタの確保された上記第2範囲中のガウス分布ジッタの標準偏差を求める処理と、上記第2フィルタと相補的なフィルタを生成し、非デターミニスティック・ジッタの上記第2範囲を除外して、上記第2範囲内にないガウス分布ジッタの推定値を求める処理と、上記第2範囲内にないガウス分布ジッタの標準偏差を求める処理と、上記第2範囲内外の非デターミニスティック・ガウス分布ジッタの標準偏差に基づいてガウス分布ジッタ全体の標準偏差を求める処理とを有している。
【0046】
実施例4は、実施例1~3のいずれかによる試験測定装置であって、上記第1しきい値及び上記第2しきい値は、周波数順応型しきい値であり、上記第2しきい値は、上記第1しきい値よりも周波数に対してゆっくりと変化する。
【0047】
実施例5は、実施例1~4のいずれか1つによる試験測定装置であって、上記ガウス分布検出部は、確保された上記第2範囲の尖度を求めることによって、非デターミニスティック・ジッタの確保された上記第2範囲が主にガウス分布ジッタを含むのか又はガウス分布ジッタ及び非ガウス分布ジッタの混成なのかを判断するように構成され、もし上記尖度が、尖度しきい値以下である場合、上記ガウス分布検出部は、確保された上記第2範囲が非ガウス分布ジッタを含むと判断する。
【0048】
実施例6は、実施例5による試験測定装置であって、このとき、上記尖度しきい値は、約2.8である。
【0049】
実施例7は、実施例6による試験測定装置であって、上記尖度しきい値を受けるように構成されたユーザ入力部を更に具えている。
【0050】
実施例8は、請求項1による試験測定装置であって、このとき、上記第2フィルタは、1つ以上の通過帯域を有するデジタル・バンドパス・フィルタである。
【0051】
実施例9は、入力信号のジッタを求める方法であって、入力信号を受ける処理と、受けた上記入力信号からスペクトル・パワー信号を生成する処理と、上記スペクトル・パワー信号のしきい値を超える第1範囲を特定する処理と、特定されたジッタから成る上記第1範囲を第1フィルタによって除外し、非デターミニスティック・ジッタを抽出する処理と、上記非デターミニスティック・ジッタのスペクトルの大きさを調べて上記非デターミニスティック・ジッタに関する上記スペクトル・パワー信号を特定する処理と、上記非デターミニスティック・ジッタに関する上記スペクトル・パワー信号の第2しきい値を超える第2範囲を特定する処理と、第2フィルタによって上記非デターミニスティック・ジッタの特定された上記第2範囲のみを確保する処理と、上記非デターミニスティック・ジッタの上記スペクトル・パワー信号の確保された上記第2範囲が主にガウス分布ジッタを含んでいるのか又はガウス分布ジッタに加えて非ガウス分布ジッタを含んでいるのかを判断する処理と、上記非デターミニスティック・ジッタの確保された上記第2範囲中のジッタが非ガウス分布ジッタを含んでいるとガウス分布検出部が判断した場合にのみ更なる信号分析を実行する処理とを具えている。
【0052】
実施例10は、実施例9による方法であって、上記更なる信号分析が、非デターミニスティック・ジッタの確保された上記第2範囲に関する1つ以上のQスケール・パラメータを求める処理と、1つ以上のQスケール・パラメータに基づいて上記ガウス分布ジッタの標準偏差を求める処理とを有している。
【0053】
実施例11は、実施例10による方法であって、上記Qスケール・パラメータに基づいて上記ガウス分布ジッタの上記標準偏差を求める処理は、Qスケール・パラメータに基づいて左側の標準偏差を求める処理と、Qスケール・パラメータに基づいて右側の標準偏差を求める処理と、非デターミニスティック・ジッタの確保された上記第2範囲中の上記ガウス分布ジッタの標準偏差を求める処理と、上記第2フィルタと相補的なフィルタを生成して上記第2範囲を除外し、上記第2範囲内にないガウス分布ジッタの推定値を求める処理と、上記第2範囲内にないガウス分布ジッタの標準偏差を求める処理と、上記第2範囲内外の非デターミニスティック・ガウス分布ジッタの標準偏差に基づいてガウス分布ジッタ全体の標準偏差を求める処理とを有している。
【0054】
実施例12は、実施例9~11のいずれかによる方法であって、上記第2しきい値は、上記第1しきい値よりも周波数に対してゆっくりと順応する周波数順応型しきい値である。
【0055】
実施例13は、実施例9~12による方法であって、上記非デターミニスティック・ジッタの確保された上記第2範囲が主にガウス分布ジッタを含むのか又はガウス分布ジッタに加えて非ガウス分布ジッタを含むのかを判断する処理が、確保された上記範囲の尖度を求める処理を有し、上記尖度が尖度しきい値以下である場合、上記ガウス分布検出部が、確保された上記第2範囲が非ガウス分布ジッタを含むと判断する。
【0056】
実施例14は、実施例13による方法であって、上記尖度しきい値は、約2.8である。
【0057】
実施例15は、実施例9~14のいずれかによる方法であって、上記第2フィルタは、1つ以上の通過帯域を有するデジタル・バンドパス・フィルタである。
【0058】
実施例16は、1つ以上のコンピュータ可読記憶媒体であって、試験測定装置の1つ以上のプロセッサによって実行されると、上記試験測定装置に、入力信号を受けさせ、受けた上記入力信号から非デターミニスティック・ジッタに関するジッタ・スペクトル及び対応するスペクトル・パワー信号を生成させ、上記スペクトル・パワー信号のしきい値を超える範囲を特定させ、フィルタを使って上記非デターミニスティック・ジッタの特定された範囲を確保させ、上記非デターミニスティック・ジッタの確保された上記範囲が主にガウス分布ジッタを含んでいるのか又はガウス分布ジッタに加えて非ガウス分布ジッタを含んでいるのかを判断させ、上記スペクトル・パワー信号のフィルタ処理された範囲中のジッタが非ガウス分布ジッタを含んでいるとガウス分布検出部が判断した場合にのみ更なる信号分析を実行させる命令を含んでいる。
【0059】
実施例17は、実施例16による1つ以上のコンピュータ可読記憶媒体であって、上記非デターミニスティック・ジッタの一部分に関する1つ以上のQスケール・パラメータを求める処理と、1つ以上の上記Qスケール・パラメータに基づいて上記ガウス分布ジッタの標準偏差を求める処理とによって、上記試験測定装置に更なる信号分析を実行させる命令を更に有している。
【0060】
実施例18は、実施例17による1つ以上のコンピュータ可読記憶媒体であって、Qスケール・パラメータに基づいて左側の標準偏差を求める処理と、Qスケール・パラメータに基づいて右側の標準偏差を求める処理と、非デターミニスティック・ジッタの確保された上記第2範囲中の上記ガウス分布ジッタの標準偏差を求める処理と、上記第2フィルタと相補的なフィルタを生成することによって上記範囲を除外して、上記第2範囲内にないガウス分布ジッタの推定値を求める処理と、上記範囲内にない上記ガウス分布ジッタの標準偏差を求める処理と、上記範囲内外の非デターミニスティック・ガウス分布ジッタの標準偏差に基づいてガウス分布ジッタの標準偏差を求める処理とによって、上記試験測定装置に、上記Qスケール・パラメータに基づいて上記ガウス分布ジッタの上記標準偏差を求めさせる命令を更に有している。
【0061】
実施例19は、実施例16~18のいずれかによる1つ以上のコンピュータ可読記憶媒体であって、最初のしきい値が、周波数に対してゆっくりと変化する周波数順応型しきい値である。
【0062】
実施例20は、実施例16~19のいずれかによる1つ以上のコンピュータ可読記憶媒体であって、確保された上記範囲の尖度を求め、上記尖度が尖度しきい値以下である場合、上記ガウス分布検出部が、確保された上記第2範囲が非ガウス分布ジッタを含むと判断することによって、上記非デターミニスティック・ジッタの確保された上記第2範囲が主にガウス分布ジッタを含むのか又はガウス分布ジッタに加えて非ガウス分布ジッタを含むのかを判断する命令を更に含んでいる。
【0063】
開示された主題の上述のバージョンは、記述したか又は当業者には明らかであろう多くの効果を有する。それでも、開示された装置、システム又は方法のすべてのバージョンにおいて、これらの効果又は特徴のすべてが要求されるわけではない。
【0064】
加えて、本願の記述は、特定の特徴に言及している。本明細書における開示には、これらの特定の特徴の全ての可能な組み合わせが含まれると理解すべきである。ある特定の特徴が特定の態様又は実施例の状況において開示される場合、その特徴は、可能である限り、他の態様及び実施例の状況においても利用できる。
【0065】
また、本願において、2つ以上の定義されたステップ又は工程を有する方法に言及する場合、これら定義されたステップ又は工程は、状況的にそれらの可能性を排除しない限り、任意の順序で又は同時に実行しても良い。
【0066】
説明の都合上、本発明の具体的な実施例を図示し、説明してきたが、本発明の要旨と範囲から離れることなく、種々の変更が可能なことが理解できよう。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲を除いて限定されるべきではない。