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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】発光装置及び発光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/48 20100101AFI20240125BHJP
   H01L 33/22 20100101ALI20240125BHJP
【FI】
H01L33/48
H01L33/22
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022029079
(22)【出願日】2022-02-28
(65)【公開番号】P2023125123
(43)【公開日】2023-09-07
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】細川 泰伸
【審査官】佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-507077(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0334560(US,A1)
【文献】特開2014-203874(JP,A)
【文献】特開2016-163015(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0105950(KR,A)
【文献】特開2015-201488(JP,A)
【文献】特開2016-058551(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0072013(US,A1)
【文献】特開2008-251561(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0025573(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110364604(CN,A)
【文献】特開2014-140014(JP,A)
【文献】特開2014-078578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有し、第1面と、前記第1面の反対側に位置する第2面とを有する第1基板と、
前記第1基板の前記第1面の一部に配置され、前記第1基板の前記第1面に対向する第3面と、前記第3面の反対側に位置する第4面とを有し、活性層を含む半導体構造体と、
前記半導体構造体の前記第4面に配置され、前記半導体構造体と電気的に接続された電極と、
前記第1基板の前記第1面に配置され、前記第1基板の前記第1面に平行な第1方向において前記半導体構造体と離隔して配置された金属部材と、
前記第1基板の前記第1面及び前記半導体構造体の前記第4面に対向する第2基板と、
前記第2基板と前記電極との間に配置され、前記電極と電気的に接続された第1接合部材と、
前記第2基板と前記金属部材との間に配置され、前記金属部材に接合された第2接合部材と、
を備え、
前記第1基板の前記第2面は、複数の凸部を有し、上面視において前記第2面のうち少なくとも前記第3面と重なって配置された第1領域と、前記第1領域と前記第2面の外縁との間に位置し、前記第1領域よりも表面粗さが小さい第2領域とを有し、
前記第1方向において、前記第1領域と前記第2領域との境界は、前記半導体構造体の前記第3面の外縁と、前記金属部材の内縁との間に位置する発光装置。
【請求項2】
前記第1方向において、前記第3面と前記金属部材の前記内縁との間の最短距離は、前記第2面の前記外縁間の最短距離の10%以上20%以下である請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記第2接合部材は、上面視において前記半導体構造体の周りを連続して囲んでいる請求項1または2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記第1方向において、前記第2面の前記外縁と前記境界との間の最短距離は、前記第2面の前記外縁間の最短距離の10%以上20%以下である請求項1~3のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項5】
前記第1方向において、前記境界は、前記第3面の前記外縁からの距離が前記第3面の前記外縁間の最短距離に対して25%以上50%以下の地点に位置する請求項1~4のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項6】
前記活性層は、ピーク波長が400nm以下の光を発する請求項1~5のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項7】
前記半導体構造体の表面と前記第1基板の前記第1面とを覆う保護膜をさらに備え、
上面視において、前記第1基板の前記第1面は、前記第1領域の外縁と、前記金属部材の前記内縁との間で前記保護膜から露出している請求項1~6のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項8】
第1面と、前記第1面の反対側に位置する第2面とを有する第1基板であって、前記第2面は、複数の凸部を有する第1領域と、前記第1領域よりも表面粗さが小さい第2領域とを有する前記第1基板と、前記第1面に配置され、前記第1面に対向する第3面と、前記第3面の反対側に位置する第4面とを有する半導体構造体と、を有するウェーハを準備する工程と、
前記半導体構造体の一部を除去し、前記第1面の一部を前記半導体構造体から露出させる工程と、
前記半導体構造体の前記第4面に電極を形成する工程と、
前記第2面の前記第2領域に重なる前記第1面の一部に、前記第1面に平行な第1方向において前記半導体構造体から離隔して金属部材を形成する工程と、
前記第1基板の前記第2領域にレーザ光を照射して、前記第1基板を割断する工程であって、前記第1方向において前記金属部材は、前記第1基板の割断位置と前記半導体構造体との間に位置する、工程と、
前記第1基板の前記第1面及び前記半導体構造体の前記第4面を第2基板に対向させ、前記電極と前記第2基板との間に前記電極と電気的に接続される第1接合部材を形成し、前記金属部材と前記第2基板との間に第2接合部材を形成することで、前記第1基板と前記第2基板を接合する工程と、
を備える発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置及び発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
実装基板と、実装基板上に実装された活性層を含む半導体構造体と、半導体構造体の上方及び実装基板上における半導体構造体の周囲の空間の上方を覆う透光性部材と、を備えた発光装置において、透光性部材からの光取り出し効率の向上が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-93136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明に係る実施形態は、光取り出し効率を向上させることができる発光装置及び発光装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、発光装置は、透光性を有し、第1面と、前記第1面の反対側に位置する第2面とを有する第1基板と、前記第1基板の前記第1面の一部に配置され、前記第1基板の前記第1面に対向する第3面と、前記第3面の反対側に位置する第4面とを有し、活性層を含む半導体構造体と、前記半導体構造体の前記第4面に配置され、前記半導体構造体と電気的に接続された電極と、前記第1基板の前記第1面に配置され、前記第1基板の前記第1面に平行な第1方向において前記半導体構造体と離隔して配置された金属部材と、前記第1基板の前記第1面及び前記半導体構造体の前記第4面に対向する第2基板と、前記第2基板と前記電極との間に配置され、前記電極と電気的に接続された第1接合部材と、前記第2基板と前記金属部材との間に配置され、前記金属部材に接合された第2接合部材と、を備え、前記第1基板の前記第2面は、複数の凸部を有し、上面視において前記第2面のうち少なくとも前記第3面と重なって配置された第1領域と、前記第1領域と前記第2面の外縁との間に位置し、前記第1領域よりも表面粗さが小さい第2領域とを有し、前記第1方向において、前記第1領域と前記第2領域との境界は、前記半導体構造体の前記第3面の外縁と、前記金属部材の内縁との間に位置する。
本発明の一態様によれば、発光装置の製造方法は、第1面と、前記第1面の反対側に位置する第2面とを有する第1基板であって、前記第2面は、複数の凸部を有する第1領域と、前記第1領域よりも表面粗さが小さい第2領域とを有する前記第1基板と、前記第1面に配置され、前記第1面に対向する第3面と、前記第3面の反対側に位置する第4面とを有する半導体構造体と、を有するウェーハを準備する工程と、前記半導体構造体の一部を除去し、前記第1面の一部を前記半導体構造体から露出させる工程と、前記半導体構造体の前記第4面に電極を形成する工程と、前記第2面の前記第2領域に重なる前記第1面の一部に、前記第1面に平行な第1方向において前記半導体構造体から離隔して金属部材を形成する工程と、前記第1基板の前記第2領域にレーザ光を照射して、前記第1基板を割断する工程であって、前記第1方向において前記金属部材は、前記第1基板の割断位置と前記半導体構造体との間に位置する、工程と、前記第1基板の前記第1面及び前記半導体構造体の前記第4面を第2基板に対向させ、前記電極と前記第2基板との間に前記電極と電気的に接続される第1接合部材を形成し、前記金属部材と前記第2基板との間に第2接合部材を形成することで、前記第1基板と前記第2基板を接合する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る実施形態によれば、光取り出し効率を向上させることができる発光装置及び発光装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態の発光装置の断面図である。
図2】第1実施形態の発光装置の上面図である。
図3A】第1実施形態の発光装置の製造方法の一工程を説明するための断面図である。
図3B】第1実施形態の発光装置の製造方法の一工程を説明するための断面図である。
図3C】第1実施形態の発光装置の製造方法の一工程を説明するための断面図である。
図3D】第1実施形態の発光装置の製造方法の一工程を説明するための断面図である。
図4】第2実施形態の発光装置の断面図である。
図5】第3実施形態の発光装置の断面図である。
図6】第4実施形態の発光装置の断面図である。
図7】第4実施形態の発光装置の上面図である。
図8】第1のシミュレーション結果を示すグラフである。
図9】光透過率の測定結果を示すグラフである。
図10】第2のシミュレーション結果を示すグラフである。
図11】第3のシミュレーション結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照し、実施形態について説明する。各図面中、同じ構成には同じ符号を付している。なお、各図面は、実施形態を模式的に示したものであるため、各部材のスケール、間隔若しくは位置関係などが誇張、又は部材の一部の図示を省略する場合がある。また、断面図として、切断面のみを示す端面図を示す場合がある。
【0009】
以下の説明において、実質的に同じ機能を有する構成要素は共通の参照符号で示し、説明を省略することがある。また、特定の方向又は位置を示す用語(例えば、「上」、「下」及びそれらの用語を含む別の用語)を用いる場合がある。しかしながら、それらの用語は、参照した図面における相対的な方向又は位置を分かり易さのために用いているに過ぎない。参照した図面における「上」、「下」等の用語による相対的な方向又は位置の関係が同一であれば、本開示以外の図面、実際の製品等において、参照した図面と同一の配置でなくてもよい。本明細書において「平行」とは、2つの直線、辺、面等が延長しても交わらない場合だけでなく、2つの直線、辺、面等がなす角度が10°以内の範囲で交わる場合も含む。本明細書において「上」と表現する位置関係は、接している場合と、接していないが上方に位置している場合も含む。
【0010】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の発光装置1の断面図である。図2は、第1実施形態の発光装置1の上面図である。図1は、図2のI-I線における断面図である。
【0011】
発光装置1は、第1基板10と、半導体構造体20と、電極31と、金属部材32と、第2基板50と、第1接合部材41と、第2接合部材42とを備える。
【0012】
半導体構造体20は、例えば、InAlGa1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)なる化学式において組成比x及びyをそれぞれの範囲内で変化させた全ての組成の半導体を含む。半導体構造体20は、n側層と、p側層と、n側層とp側層との間に配置された活性層21とを含む。活性層21は、紫外光を発することができる。活性層21は、例えば、ピーク波長が400nm以下の光を発する。
【0013】
第1基板10は、活性層21からの光に対して透光性を有する。第1基板10として、例えば、サファイア基板を用いることができる。第1基板10は、第1面11を有する。第1基板10の第1面11に平行な方向を第1方向Xとする。第1基板10の第1面11に平行であり、且つ第1方向Xに直交する方向を第2方向Yとする。第2基板50から第1基板10に向かう方向を第3方向Zとする。第3方向Zは、第1方向X及び第2方向Yに直交する。第1基板10は、第3方向Zにおいて第1面11の反対側に位置する第2面12を有する。第1基板10の厚さ(第3方向Zにおいて、第1基板10の第1面11から第1基板10の第2面12の最も高い地点までの最短距離)は、例えば、300μm以上1000μm以下とすることができる。
【0014】
半導体構造体20は、第1基板10の第1面11の一部に配置されている。半導体構造体20は、第1基板10の第1面11に対向する第3面23と、第3方向Zにおいて第3面23の反対側に位置する第4面24とを有する。第3方向Zにおいて、第1基板10の第1面11と、半導体構造体20の第4面24と、の間に、半導体構造体20の第3面23が位置している。また、半導体構造体20は、第3面23と第4面24とを接続する側面25を有する。
【0015】
電極31は、半導体構造体20の第4面24に配置され、半導体構造体20と電気的に接続されている。半導体構造体20のp側層と電気的に接続されアノード電極として機能する電極31と、半導体構造体20のn側層と電気的に接続されカソード電極として機能する電極31とが、第1方向Xにおいて離隔して半導体構造体20の第4面24に配置されている。電極31の材料として、例えば、金、銅を用いることができる。
【0016】
金属部材32は、第1方向Xにおいて半導体構造体20と離隔して、第1基板10の第1面11に配置されている。金属部材32の材料として、例えば、チタン、白金を用いることができる。金属部材32は、例えば、第1基板10の第1面11から順に、白金層とチタン層が積層された積層構造を有していてもよい。
【0017】
第2基板50は、第1基板10の第1面11及び半導体構造体20の第4面24に対向している。第2基板50は、絶縁性の材料からなる。第2基板50の材料として、例えば、窒化アルミニウムを用いることができる。第2基板50の表面には、配線51、52が配置される。ここで、第2基板50の表面とは、第1基板10の第1面11及び半導体構造体20の第4面24と対向する面である。配線51、52は、第1基板10の第1面11及び半導体構造体20の第4面24と対向している。また、配線51、52の材料として、例えば、ニッケル、金、又はこれらの合金を用いることができる。配線51、52は、例えば、第2基板50の表面側から順に、ニッケル層と金層とが積層された積層構造としてよい。配線51、52は、同じ材料を用いて一括で形成してもよい。
【0018】
第1接合部材41は、第3方向Zにおいて、第2基板50と電極31との間に配置され、電極31と電気的に接続されている。また、第1接合部材41は、第2基板50の表面に配置された配線51と電気的に接続されている。半導体構造体20は、電極31及び第1接合部材41を介して、第2基板50の表面に配置された配線51と電気的に接続される。第1接合部材41の材料として、例えば、金、銀、銅、又はこれらの合金を用いることができる。また、第1接合部材41の材料は、例えば、錫(Sn)の含有量が20重量%以上30重量%以下の金錫合金を用いることができる。
【0019】
第2接合部材42は、第3方向Zにおいて、第2基板50と金属部材32との間に配置されている。第2接合部材42によって、金属部材32及び第2基板50は接合されている。第2接合部材42の材料として、例えば、第1接合部材41の材料と同じ材料を用いることができる。
【0020】
第2接合部材42は、第2基板50の表面に配置された配線52と電気的に接続されている。配線51と配線52は、電気的に接続されていない。第2接合部材42は、図2に示すように、上面視において半導体構造体20の周りを連続して囲んでいる。第2接合部材42が接合される金属部材32も、上面視において半導体構造体20の周りを連続して囲んでいる。第2接合部材42が接合される配線52も、上面視において半導体構造体20の周りを連続して囲んでいる。金属部材32は、第2方向Yにおいても半導体構造体20と離隔している。上面視において第2接合部材42及び金属部材32は、半導体構造体20の側面25の周りを連続して囲んでいる。
【0021】
半導体構造体20は、第1基板10、第2基板50、第2接合部材42、及び金属部材32によって画定される空間90に配置されている。空間90は、第1基板10、第2基板50、第2接合部材42、及び金属部材32によって、発光装置1の外部の空間から気密封止された状態になっている。これにより、半導体構造体20の酸化や、電極31の腐食などを低減することができる。
【0022】
なお、第2接合部材42は、上面視において半導体構造体20の周りに非連続で配置することもできる。また、第2接合部材42が接合される金属部材32も、上面視において半導体構造体20の周りに非連続で配置することもできる。例えば、半導体構造体20は、複数の金属部材32及び複数の第2接合部材42によって、囲まれていてもよい。また、例えば、上面視において、金属部材32は連続して配置し、第2接合部材42は、非連続で配置してもよい。この場合、第1基板10と第2基板50との間における半導体構造体20が位置する空間が、発光装置1の外部の空間と通じる。
【0023】
活性層21からの光は、主に第1基板10の第2面12から発光装置1の外部に取り出される。第1基板10の第2面12は、第1領域12-1と第2領域12-2とを有する。上面視において、第1領域12-1は、第2領域12-2と隣り合っている。また、上面視において、第2領域12-2は、第1領域12-1を取り囲むように環状に位置している。上面視において、第1領域12-1は、第1基板10の中央に位置していることが好ましい。第1領域12-1は、複数の凸部12aを有する。上面視において、複数の凸部12aは、第1領域12-1の全面に配置することが好ましい。上面視における第1領域12-1の形状は、例えば、矩形状である。第1領域12-1は、上面視において第2面12のうち少なくとも半導体構造体20の第3面23と重なって配置されている。これにより、活性層21からの光を効率よく第2面12から取り出すことができ、発光装置1の取り出し効率を向上させることができる。また、第2領域12-2は、上面視において、金属部材32と重なって配置されている。
【0024】
半導体構造体20は、第1基板10の第1面11上に、例えば、MOCVD(metal organic chemical vapor deposition)法により形成することができる。半導体構造体20の形成に用いた第1基板10を、空間90の上方(図1の+Z側)を塞ぐ部材としても用いている。そのため、発光装置1は、半導体構造体20の第3面23から、発光装置1の主な光取り出し面である第1基板10の第2面12までの経路に空気層が介在せず、その空気層と他の部材との界面における全反射による光取り出し効率の低下が起こりにくい。第1実施形態によれば、半導体構造体20の第3面23から上方に向かう光を、空気層を介さずに、第1基板10の第2面12から発光装置1の外部に直接取り出すことができる。
【0025】
第2領域12-2は、第1領域12-1と、第2面12の外縁12bとの間に位置し、第1領域12-1よりも表面粗さが小さい。例えば、第1領域12-1の凸部12aの高さは、0.5μm以上2μm以下とすることができる。また、例えば、第2領域12-2の凸部の高さは、0.5μm未満とすることができる。第2領域12-2は、凸部12が配置されていなくてもよい。
【0026】
第1方向Xにおいて、第1領域12-1と第2領域12-2との境界15は、半導体構造体20の第3面23の外縁23aと、金属部材32の内縁32aとの間に位置する。図2において、第1領域12-1と第2領域12-2との境界15を2点鎖線で表す。第2方向Yにおいても、第1領域12-1と第2領域12-2との境界15は、半導体構造体20の第3面23の外縁23aと、金属部材32の内縁32aとの間に位置する。第1領域12-1と第2領域12-2との境界15は、上面視において半導体構造体20の周りを連続して囲む位置にある。半導体構造体20の第3面23の外縁23aと、金属部材32の内縁32aとは、第1方向X及び第2方向Yにおいて離隔している。
【0027】
半導体構造体20の第3面23の外縁23aと、金属部材32の内縁32aとの間の領域において、第1基板10の第1面11の一部11aが空間90に露出している。後述するように、半導体構造体20を第1基板10の第1面11の全面に形成した後、半導体構造体20の一部を除去することで、第1基板10の第1面11の一部11aを半導体構造体20から露出させる。
【0028】
半導体構造体20の第3面23の外縁23aよりも外側に位置する第1面11の一部11aを露出させることで、半導体構造体20の第3面23から第1基板10に入射して第1基板10内を伝播する光が、第1面11の一部11aと、空間90の空気との界面で全反射しやすくなる。これにより、第1基板10内を伝播する光が第1面11の一部11aを透過して第2基板50側に向かう光の量を低減でき、第2面12からの光取り出し効率を向上させることができる。
【0029】
ここで、第1基板10において、第1面11を露出させた場合と、第1面11にAlN(窒化アルミニウム)膜がある場合とで、第1基板10の第1面11での反射率を比較した第1のシミュレーション結果について説明する。一般に、AlNは、サファイア基板上に窒化物半導体層を形成する際の格子不整合を緩和するバッファ層として用いられる。
【0030】
図8は、第1のシミュレーション結果を示すグラフである。横軸は、第1基板10内から第1面11に入射する光の第1面11に対する入射角を表す。縦軸は、第1基板10内から第1面11に入射する光の第1面11における反射率を表す。ここで、第1基板10は、サファイア基板である。また、ここで、光の波長は280nmとした。第1面11にAlN膜がある場合においては、AlN膜の厚さを、50nm、100nm、500nm、1000nmと変えて反射率をシミュレーションした。図8においてAlNなしは、第1面11にAlN膜がなく、第1面11を空気に対して露出させた場合を表す。
【0031】
図8の結果より、第1面11を露出させた場合には、入射角が33°以上で全反射する。そのため、第1面11を露出させた場合は、入射角が33°以上において、第1面11にAlN膜がある場合よりも反射率が高くなる。
【0032】
活性層21が発する光は半導体構造体20の側面25からも出射される。半導体構造体20の側面25から出射した光は、第1面11の一部11aから第1基板10に入射し、第2面12から発光装置1の外部に取り出すことができる。第1面11の一部11aにAlN膜があるとAlN膜における光の吸収が生じる。第1面11の一部11aにAlN膜がない場合、第1面11の一部11aにAlN膜がある場合に比べて、半導体構造体20の側面25から出射した光の第1面11における光透過率を高くでき、第2面12からの光取り出し効率を向上させることができる。
【0033】
図9は、第1基板10において、第1面11にAlN膜がある場合と、第1面11にAlN膜がない場合とで、第1面11における光透過率を比較した実測値の測定結果を示すグラフである。横軸は、光の波長を表す。縦軸は、第1面11における光透過率を表す。第1基板10は、サファイア基板である。なお、図9の結果は、分光光度計を用いて測定した。
図9において、実線は第1面11にAlN膜がない場合の結果を表し、破線は第1面11に厚さ2μmのAlN膜がある場合の結果を表す。
【0034】
図9の結果より、第1面11にAlN膜がない場合は、第1面11に厚さ2μmのAlN膜がある場合よりも、第1面11における光透過率を高くでき、第1面11における光の損失を低減することができる。
【0035】
図10は、第2のシミュレーション結果を示すグラフである。横軸は、第1基板10の第2面12における複数の凸部12aが配置された第1領域12-1の第1方向Xにおける幅を表す。縦軸は、第2面12からの光取り出し効率を表す。光取り出し効率は、半導体構造体20の活性層21から出射する光をどれだけ取り出すことができるかを示す。光の波長は280nmとした。また、第1基板10は、サファイア基板である。
【0036】
第2のシミュレーションにおいて、第1基板10の第1面11及び第2面12の第1方向Xにおける幅は3000μmである。第1領域12-1の第1方向Xにおける中心、及び半導体構造体20の第3面23の第1方向Xにおける中心は、第1面11及び第2面12の第1方向Xにおける中心と一致させている。半導体構造体20の第3面23の第1方向Xにおける幅は、1000μmである。したがって、第1領域12-1の幅が1000μmとは、凸部12aが、上面視において第2面12のうち半導体構造体20と重なっている第2面12のみに配置され、半導体構造体20の第3面23の外縁23aよりも外側の領域の第2面12にはない場合を表す。第1領域12-1の幅が3000μmとは、凸部12aが第2面12の全面にある場合を表す。例えば、図1において、第1領域12-1の幅が1500μmとは、第1方向Xにおいて、半導体構造体20の幅が1000μmであり、半導体構造体20の第3面23の外縁23aと、半導体構造体20の両側に位置する2つの境界15との間の幅がそれぞれ250μmである場合である。
【0037】
図10の結果より、第1領域12-1の幅は、上面視において、少なくとも半導体構造体20の幅よりも大きくすることが好ましい。また、第1領域12-1の幅を1000μmより大きくすることがより好ましい。上面視において、凸部12aを半導体構造体20の第3面23の外縁23aよりも外側の領域の第2面12にも配置することで、凸部12aを第2面12のうち半導体構造体20と重なっている第2面12のみに配置する場合よりも光取り出し効率をさらに向上させることができる。第1領域12-1の幅を1500μm以上とすることがさらに好ましい。これにより、第1方向Xにおいて、半導体構造体20の第3面23の外縁23aから境界15までの距離を長くすることができる。第1基板10の第2面12の第2領域12-2で全反射した光は、第1基板10の第1面11の方向へ戻る。第3面23の外縁23aから境界15までの距離を長くすることで、半導体構造体20によって、第1基板10の第1面11の方向へ戻る光が、吸収されることを低減できる。そのため、発光装置1の光取り出し効率を向上させることができる。
【0038】
また、図10の結果より、第1領域12-1の幅が2000μm以上になると、光取り出し効率に大きな変化がなくなってくる。第1基板10内を、半導体構造体20の第3面23の外縁23aよりも外側の領域に伝播した光は、第2面12で反射して第1面11に入射し得る。第2面12の全面が凸部12aを有する第1領域12-1であると、半導体構造体20の第3面23の外縁23aよりも外側の領域において、第2面12の凸部12aでの拡散反射により、第1面11に対して臨界角よりも小さい入射角で入射する光が生じやすい。すなわち、第2面12の全面が凸部12aを有する第1領域12-1である場合、半導体構造体20の第3面23の外縁23aよりも外側の領域において、光が第1面11で全反射しにくくなり、第1面11から空間90への透過光が増え、この透過光は第2基板50や第2接合部材42で吸収されやすくなる。したがって、第1領域12-1と第2領域12-2との境界15は、金属部材32の内縁32aより内側(半導体構造体20側)にあることが好ましい。幅が1000μmの半導体構造体20の第3面23に対して、第1領域12-1の幅は2000μm以下とすることが好ましい。
第1領域12-1の幅は、少なくとも半導体構造体20の幅よりも大きく、且つ第2面12の幅(第2のシミュレーションにおいては3000μm)よりも小さくすることが好ましい。これにより、光取り出し効率を向上させることができる。また、第1領域12-1の幅は、1500μm以上2000μm以下にすることがより好ましい。これにより、半導体構造体20から出射する光の拡散反射を低減しつつ、光取り出し効率を向上させることができる。
【0039】
第2領域12-2の表面粗さは、第1領域12-1の表面粗さよりも小さくすることが好ましい。第2領域12-2の表面粗さを、第1領域12-1の表面粗さよりも小さくするとは、第2領域12-2に凸部を配置しないことも含む。第2領域12-2の表面粗さを、第1領域12-1の表面粗さよりも小さくすることで、発光装置1は、凸部12aによる半導体構造体20から出射する光の拡散反射を低減し、第1基板10内を伝播する光を第1面11で全反射させやすくなり、第2面12からの光取り出し効率を向上させることができる。
【0040】
例えば、第1方向Xにおいて、第1基板10の第2面12の外縁12bと、第1領域12-1と第2領域12-2との境界15と、の間の最短距離(第2領域12-2の第1方向Xにおける幅)は、第2面12の外縁12b間の最短距離(第2のシミュレーションにおいては3000μm)の10%以上20%以下とすることが好ましい。これにより、凸部12aによる光取り出し効率を向上させつつ、凸部12aによる拡散反射によって金属部材32に入射する光を低減することができる。
【0041】
また、例えば、第1方向Xにおいて、第1領域12-1と第2領域12-2との境界15は、第3面23の外縁23aからの最短距離が半導体構造体20の第3面23の外縁23a間の最短距離(第2のシミュレーションにおいては1000μm)に対して25%以上50%以下の地点に位置することが好ましい。これにより、凸部12aによる光取り出し効率を向上させつつ、凸部12aによる拡散反射によって金属部材32に入射する光を低減することができる。
【0042】
第1方向Xにおいて、半導体構造体20の第3面23の幅が、第1基板10の第2面12の幅に対して小さくなると、相対的に第1領域12-1の幅が半導体構造体20の第3面23の幅に対して大きくすることができる。例えば、第1方向Xにおいて、半導体構造体20の第3面23の外縁23aと、金属部材32の内縁32aとの間の最短距離(第1面11において半導体構造体20が配置されていない領域の距離)は、第1基板10の第2面12の外縁12b間の最短距離の10%以上20%以下とすることが好ましい。これにより、半導体構造体20の側面25から出射した光が第1領域12-1の凸部12aによって発光装置1の外部に取り出されやすくなる。
【0043】
次に、図3A図3Dを参照して、第1実施形態の発光装置1の製造方法の一例について説明する。
図3A図3Dは、第1実施形態の発光装置1の製造方法の一工程を説明するための断面図である。
【0044】
発光装置1の製造方法は、図3Aに示すように、第1基板10と半導体構造体20’とを有するウェーハWを準備する工程を備える。半導体構造体20’は半導体構造体20と同じ構造であり、後述するように半導体構造体20’の一部を除去することで半導体構造体20が得られる。半導体構造体20’は、第1基板10の第1面11上に、例えば、MOCVD法により形成することができる。例えば、半導体構造体20’は、第1基板10の第1面11側から順に、n側層と、活性層21と、p側層と、を順に含む。例えば、厚さが850μmの第1基板10上に、厚さが6μmの半導体構造体20’を形成することができる。厚さが750μm以上の第1基板10を用いることで、第1基板10の反りを低減することができる。
【0045】
半導体構造体20’を形成する前に、第1基板10の第2面12に、複数の凸部12aを有する第1領域12-1を形成しておくことが好ましい。後述する第1基板10を割断する工程の前、第1基板10を研磨する工程の後に、第1基板10の第2面12に複数の凸部12aを形成する工程を行ってもよい。第1基板10の第2面12において第1領域12-1以外の領域は、第1領域12-1よりも表面粗さが小さい第2領域12-2となる。ウェーハWを準備する工程は、半導体構造体20’のn側層の一部が露出するように、活性層21およびp側層の一部を除去する工程を含む。また、ウェーハWを準備する工程において、半導体構造体20’の第4面24に電極31を配置することができる。電極31は、n側層及びp側層のそれぞれに電気的に接続されるように配置することができる。
【0046】
発光装置1の製造方法は、ウェーハWを準備した後、半導体構造体20’の一部を除去する工程を備える。半導体構造体20’の一部を除去することで、図3Bに示すように、第1基板10の第1面11上に半導体構造体20を残すとともに、第1面11の一部11aを半導体構造体20から露出させる。例えば、RIE(Reactive Ion Etching)法により、半導体構造体20の一部を除去することができる。
【0047】
発光装置1の製造方法は、第1基板10の第1面11の一部11aを露出させた後、図3Cに示すように、第1基板10の第2面12の第2領域12-2に重なる第1面11の一部に、第1方向Xにおいて半導体構造体20から離隔して金属部材32を形成する工程を備える。金属部材32は、第1基板10の第2面12の外縁12bから離隔して形成することが好ましい。または、金属部材32の外縁(第1方向Xにおいて金属部材32の内縁32aの反対側の縁)と、第1基板10の第2面12の外縁12bと、の間の最短距離は、第1基板10の第2面12の外縁12b間の最短距離の10%以下としてもよい。これにより、後述する第1基板10を割断する工程において、第1基板10の割断を行いやすい。また、金属部材32の外縁は、第1基板10の第2面12の外縁12bから10μm以上20μm以下離隔して形成することがより好ましい。これにより、後述する第1基板10を割断する工程において、歩留まりをより向上させることができる。なお、第1基板10の第1面11の一部11aを露出させた後、半導体構造体20の第4面24に電極31を配置してもよい。この場合、電極31と金属部材32を同じ材料で同時に形成することができる。これにより、工程を簡略化することができる。なお、金属部材32を形成する工程は、後述する第1基板10を割断する工程の後に行ってもよい。
【0048】
発光装置1の製造方法は、第1基板10の第2領域12-2にレーザ光を照射して、第1基板10を割断する工程を備える。レーザ光は、半導体構造体20が配置された第1面11の反対側に位置する第2面12側から第2領域12-2に照射される。これにより、半導体構造体20は、レーザ光によるダメージを受けにくくなる。
【0049】
第1基板10は、第1方向X及び第2方向Yに沿って割断される。第1基板10を割断した後、図3Dに示すように、第1基板10の割断位置X1に、第1基板10の側面10aが露出する。第1方向Xにおいて、金属部材32は、第1基板10の割断位置X1と半導体構造体20との間に位置する。第2方向Yにおいても、金属部材32は、第1基板10の割断位置と半導体構造体20との間に位置する。
【0050】
レーザ光は、レンズによって集光されて第1基板10の内部に照射される。レーザ光を第2面12側から照射する場合に、レーザ光が凸部12aで散乱され、第1基板10の割断が難しくなったり、割断不良となることがある。例えば、厚さが850μmの第1基板10を用いる場合、第1基板10を割断するために必要なレーザ光の集光領域は、レンズの光軸から467μmである。したがって、例えば、第1方向Xにおいて、第1基板10の第2面12の外縁12bと、第1領域12-1と第2領域12-2との境界15と、の間の距離は、第2面12の外縁12b間の距離の10%以上20%以下とすることが好ましい。これにより、レーザ光によって第1基板10を良好に割断することができる。
【0051】
なお、第1基板10を割断後に金属部材32を形成する工程を行う場合、第1面11の一部11aと半導体構造体20の第3面23の外縁23aとの距離を大きくすることで、レーザ光を、半導体構造体20が配置された第1面11側から第1基板10に照射して、第1基板10を割断することもできる。この場合、第1方向Xにおいて、半導体構造体20の第3面23の外縁23aと、金属部材32の内縁32aと、の間の最短距離を、第1基板10の第2面12の外縁12b間の最短距離の10%以上20%以下にすることで、レーザ光を第1面11側から照射しても、半導体構造体20がレーザ光によるダメージを受けにくくすることができる。また、第1基板10を研磨する工程を行ってもよい。第1基板10を研磨する工程を行う場合、第1基板10の第2面12に複数の凸部12aを形成する工程は、第1基板10の第1面11上に半導体構造体20’を形成後に行うことが好ましい。第1基板10を研磨することで、発光装置1を小型化することができる。
【0052】
発光装置1の製造方法は、第1基板10を割断する工程の後、図1に示すように、第1基板10の第1面11及び半導体構造体20の第4面24を第2基板50に対向させ、第1基板10と第2基板50を接合する工程を備える。電極31と第2基板50との間に電極31と電気的に接続される第1接合部材41を形成し、金属部材32と第2基板50との間に第2接合部材42を形成することで、第1基板10と第2基板50を接合する。
【0053】
例えば、配線51、52を形成した第2基板50を準備する。その後、準備した第2基板50の配線51上に第1接合部材41を配置し、配線52上に第2接合部材42を配置する。第1接合部材41と第2接合部材42の厚さは、例えば、30μm以上150μm以下である。第1接合部材41と第2接合部材42を配置した第2基板50と、第1基板10を対向させ、第1接合部材41上に電極31を載置し、第2接合部材42上に金属部材32を載置する。この後、第1接合部材41及び第2接合部材42を加熱して溶融させて、第1接合部材41と電極31とを接合し、第2接合部材42と金属部材32とを接合する。例えば、第1接合部材41と電極31との接合、及び第2接合部材42と金属部材32との接合には、共晶接合等を用いることができる。
【0054】
[第2実施形態]
図4は、第2実施形態の発光装置2の断面図である。
【0055】
第2実施形態の発光装置2は、第1実施形態の発光装置1の構成に加えて、保護膜60をさらに備える。保護膜60は、半導体構造体20の表面(第4面24及び側面25)を覆う。これにより、半導体構造体20の酸化を低減することができる。保護膜60は、絶縁膜である。保護膜60として、例えば、シリコン酸化膜を用いることができる。
【0056】
また、保護膜60は、第1基板10の第1面11における半導体構造体20の第3面23の外縁23aよりも外側に位置する一部11aを覆う。保護膜60は、第1面11の一部11aの全面を覆うことができる。
【0057】
また、第1方向Xにおいて、第1面11の一部11aは、第1領域12-1の外縁16と金属部材32の内縁32aとの間で保護膜60から露出する領域を有する。第1領域12-1の外縁16は、第1領域12-1と第2領域12-2との境界15に一致する。金属部材32と、第1面11と、の間に保護膜60を配置しないことにより、第1面11と金属部材32との接合強度を高めることができる。
【0058】
また、第1面11の一部11aを保護膜60から露出させることで、半導体構造体20の第3面23から第1基板10に入射して第1基板10内を伝播する光が、第1面11の一部11aと、空間90の空気との界面で全反射しやすくなる。これにより、第1基板10内を伝播する光が第1面11の一部11aを透過して第2基板50側に向かう光の量を低減でき、第2面12からの光取り出し効率を向上させることができる。
【0059】
また、第1面11の一部11aに保護膜60がない領域においては、半導体構造体20の側面25から出射した光透過率を高くでき、第2面12からの光取り出し効率を向上させることができる。
【0060】
図11は、第3のシミュレーション結果を示すグラフである。横軸は、保護膜60の第1方向Xにおける幅を表す。縦軸は、第2面12からの光取り出し効率を表す。光取り出し効率は、半導体構造体20の活性層21から出射する光をどれだけ取り出すことができるかを示す。第1基板10に配置した保護膜60の膜厚は、1300nmとした。光の波長は280nmとした。第1基板10は、サファイア基板である。
【0061】
第3のシミュレーションにおいて、第1基板10の第1面11及び第2面12の第1方向Xにおける幅は3000μmである。第1領域12-1の第1方向Xにおける中心、及び半導体構造体20の第3面23の第1方向Xにおける中心は、第1面11及び第2面12の第1方向Xにおける中心と一致させている。複数の凸部12aを有する第1領域12-1の第1方向Xにおける幅は、2000μmである。半導体構造体20の第3面23の第1方向Xにおける幅は、1000μmである。したがって、保護膜60の幅が1000μmとは、保護膜60が第1面11に配置されていない場合を表す。保護膜60の幅が2000μmとは、保護膜60の外縁が第1領域12-1の外縁16に位置する場合を表す。保護膜60の幅が3000μmとは、保護膜60が、半導体構造体20の表面、及び第1面11の一部11aの全面にある場合を表す。
【0062】
図11の結果より、保護膜60の幅を、2000μm前後とすることが好ましい。これにより、第1方向Xにおいて、第1基板10の第1面11は、第1領域12-1の外縁16と、金属部材32の内縁32aと、の間で保護膜60から露出している。すなわち、保護膜60の幅を、第1領域12-1の幅と同程度にすることで、光取り出し効率を向上させることができる。
【0063】
[第3実施形態]
図5は、第3実施形態の発光装置3の断面図である。
【0064】
第3実施形態の発光装置3は、第1実施形態の発光装置1の構成に加えて、ツェナーダイオード70をさらに備える。また、第3実施形態の発光装置3は、第2実施形態の保護膜60を備えていてもよい。
【0065】
ツェナーダイオード70は、図3Aに示すウェーハWにおける半導体構造体20’の一部から構成することができる。すなわち、半導体構造体20’の一部を除去するときに、半導体構造体20とともにツェナーダイオード70を第1基板10の第1面11上に残すことができる。
【0066】
ツェナーダイオード70は、半導体構造体20の第3面23の外縁23aと、金属部材32の内縁32aとの間の第1面11に配置される。ツェナーダイオード70における第1面11に対向する面の反対側に位置する面に電極71が配置されている。電極71は、ツェナーダイオード70と電気的に接続されている。電極71と第2基板50との間に、電極71と接合された第3接合部材72が配置されている。第3接合部材72は、第2基板50の表面に配置された配線51と電気的に接続されている。ツェナーダイオード70は、電極71及び第3接合部材72を介して、第2基板50の表面に配置された配線51と電気的に接続されている。また、ツェナーダイオード70は、第2基板50の表面に配置された配線51を介して、半導体構造体20と電気的に接続されている。
【0067】
[第4実施形態]
図6は、第4実施形態の発光装置4の断面図である。図7は、第4実施形態の発光装置4の上面図である。図6は、図7のVI-VI線における断面図である。
【0068】
第4実施形態の発光装置4は、第1基板10の第1面11に配置された複数の半導体構造体20を有する。図7に示すように、複数の半導体構造体20は、第1方向X及び第2方向Yにおいて互いに離隔している。第4実施形態の発光装置4は、半導体構造体20の数が異なる以外は、第1実施形態の発光装置1と基本的に同じ構造を有する。第4実施形態の発光装置4において、「第3面23の外縁23a」は、第1方向X(または第2方向Y)において最も外側に位置する半導体構造体20の第3面23の外縁23aを表す。
【0069】
第4実施形態の発光装置4において、第2実施形態の保護膜60や、第3実施形態のツェナーダイオード70を備えることができる。
【0070】
前述した発光装置1~4において、第1基板10の第2面12に、光学膜を配置することができる。これにより、第2面12における反射を低減して、第2面12からの光取り出し効率を向上させることができる。光学膜としては、例えば、SiO膜、MgF膜、HfO膜を用いることができる。また、光学膜として、前述した膜のうち2以上を含む積層膜を用いることができる。
【0071】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。本発明の上述した実施形態を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての形態も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものである。
【符号の説明】
【0072】
1~4…発光装置、10…第1基板、11…第1面、12…第2面、12b…第2面の外縁、12-1…第1領域、12-2…第2領域、12a…凸部、20…半導体構造体、21…活性層、23…第3面、23a…第3面の外縁、24…第4面、31…電極、32…金属部材、32a…金属部材の内縁、41…第1接合部材、42…第2接合部材、50…第2基板、51、52…配線、60…保護膜、70…ツェナーダイオード
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11