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特許7425958厚膜抵抗体用組成物、厚膜抵抗体用ペーストならびに厚膜抵抗体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】厚膜抵抗体用組成物、厚膜抵抗体用ペーストならびに厚膜抵抗体
(51)【国際特許分類】
   H01C 7/00 20060101AFI20240125BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20240125BHJP
   H01B 1/16 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
H01C7/00 322
H01B1/22 C
H01B1/16 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019121655
(22)【出願日】2019-06-28
(65)【公開番号】P2021009878
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-03-28
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123869
【弁理士】
【氏名又は名称】押田 良隆
(72)【発明者】
【氏名】川久保 勝弘
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-133166(JP,A)
【文献】特開昭63-246801(JP,A)
【文献】特開昭60-137847(JP,A)
【文献】国際公開第2018/216510(WO,A1)
【文献】特開平11-251106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 7/00
H01B 1/22
H01B 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貴金属粉末と、鉛を実質的に含まないガラス粉末と、粒径50nm以下の非晶質シリカを含み、
前記貴金属粉末が、Ag粉末を40~80質量%含み、残部Pd粉末からなる混合粉末、またはAgを40~80質量%含み、残部Pdと不可避的不純物とからなる合金粉末であり、
前記ガラス粉末が、軟化点650℃以上、900℃以下で、
前記貴金属粉末100質量部に対し、前記ガラス粉末を1~100質量部、前記非晶質シリカを0.5~20質量部が含まれることを特徴とする厚膜抵抗体用組成物。
【請求項2】
前記ガラス粉末の粒度分布D50が、0.5μm~5μmであることを特徴とする請求項1に記載の厚膜抵抗体用組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の厚膜抵抗体用組成物と、溶剤に樹脂を溶解した有機ビヒクルを含む厚膜抵抗体用ペースト。
【請求項4】
貴金属と、鉛を実質的に含まないガラスと、粒径50nm以下の非晶質シリカを含む厚膜抵抗体であって、
前記厚膜抵抗体が焼成体で、前記貴金属が、Agを40~80質量%含み、残部Pdと不可避的不純物とからなり、
前記ガラスが、軟化点650℃以上、850℃以下で、
前記貴金属100質量部に対し、前記ガラスを1~100質量部、前記非晶質シリカを0.5~20質量部が含まれることを特徴とする厚膜抵抗体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ抵抗器、ハイブリットIC、または、抵抗ネットワーク等の電子部品の製造において用いられる厚膜抵抗体用組成物および厚膜抵抗体用ペーストに関する。さらには、厚膜抵抗体用ペーストを用いて形成した厚膜抵抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にチップ抵抗器、ハイブリットIC、または、抵抗ネットワーク等の厚膜抵抗体は、セラミック基板に抵抗ペーストを印刷、焼成して形成されている。
そのような厚膜抵抗体の内、面積抵抗値が30Ω以下の厚膜抵抗体は、その厚膜抵抗体用組成物に、導電粉末のAg粉末やPd粉末と、ガラス粉末を主な成分としたものが広く用いられている。
【0003】
これらAg粉末やPd粉末と、ガラス粉末が厚膜抵抗体に用いられる理由は、空気中での焼成ができ、抵抗温度係数(TCR)を0に近づける事が可能である事に加え、30Ω以下の抵抗値領域の抵抗体が形成可能である事などが挙げられる。
【0004】
ここで、抵抗温度係数(TCR)は、以下のように求められる。
抵抗温度係数は、厚膜抵抗体を-55℃、25℃、125℃にそれぞれ保持してから抵抗値を測定し、各厚膜抵抗体の各温度での抵抗値をR-55、R25、R125として、下記(1)、(2)式で各種抵抗温度係数を求める。
【0005】
【数1】
【0006】
Ag粉末やPd粉末と、ガラス粉末からなる抵抗体は、AgとPdの配合比によって抵抗温度係数(TCR)が変わり、Agがおよそ44質量%、Pdがおよそ56質量%で抵抗温度係数が最小となり0に最も近くなり、この質量比からずれるにしたがって抵抗温度係数はプラスに大きくなる。特許文献1では、この事を利用し抵抗温度係数が0に近くなる抵抗体組成物を提案している。
【0007】
しかしながら、Ag粉末やPd粉末と、ガラス粉末から形成される抵抗体は、電極間の距離によって抵抗温度係数(TCR)が異なる欠点がある。
このような厚膜抵抗体を備えた抵抗器は、Agを主な成分とする対向する電極を跨ぐようにAg粉末やPd粉末とガラス粉末からなる厚膜抵抗体用組成物をペースト化した厚膜抵抗体用ペーストを印刷して焼成すると、厚膜抵抗体用ペーストの焼成過程において、電極のAgが厚膜抵抗体に拡散して抵抗体の設定したAgとPdの割合が変化してしまう事になる。
このため小さいサイズの抵抗器では電極間が狭くなり電極材料から抵抗体に拡散するAgの量が多くなり、サイズの大きな抵抗器に比べて抵抗温度係数(TCR)が高くなる問題がある。すなわち、ほぼ同じ抵抗値の抵抗器でもサイズの違いで抵抗温度係数(TCR)が変わることは、回路設計の自由度を下げるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第2986539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、電極間距離が変わっても抵抗温度係数(TCR)の変動が少ないAg粉末やPd粉末とガラス粉末からなる厚膜抵抗体用組成物および厚膜抵抗体用ペースト、並びに厚膜抵抗体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の発明は、貴金属粉末と、鉛を実質的に含まないガラス粉末と、粒径50nm以下の非晶質シリカを含み、前記貴金属粉末が、Ag粉末を40~80質量%含み、残部Pd粉末からなる混合粉末、またはAgを40~80質量%含み、残部Pdと不可避的不純物とからなる合金粉末であり、前記ガラス粉末が、軟化点650℃以上、900℃以下で、前記貴金属粉末100質量部に対し、前記ガラス粉末を1~100質量部、前記非晶質シリカを0.5~20質量部が含まれることを特徴とする厚膜抵抗体用組成物である。
【0011】
本発明の第2の発明は、第1の発明におけるガラス粉末の粒度分布D50が、0.5μm~5μmであることを特徴とする厚膜抵抗体用組成物である。
【0012】
本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明の厚膜抵抗体用組成物と、溶剤に樹脂を溶解した有機ビヒクルを含む厚膜抵抗体用ペースト。
【0013】
本発明の第4の発明は、貴金属と、鉛を実質的に含まないガラスと、粒径50nm以下の非晶質シリカを含む厚膜抵抗体であって、前記厚膜抵抗体が焼成体で、前記貴金属が、Agを40~80質量%含み、残部Pdと不可避的不純物とからなり、前記ガラスが、軟化点650℃以上、850℃以下で、前記貴金属100質量部に対し、前記ガラスを1~100質量部、前記非晶質シリカを0.5~20質量部が含まれることを特徴とする厚膜抵抗体である。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、Ag、Pdと鉛を含有しないガラス粉末を主な成分とした厚膜抵抗体用組成物において、粒径50nm以下の非晶質シリカを含む厚膜抵抗体用組成物が、課題を解決する手段となるもので、本発明によれば、Agを主成分とする電極の電極間距離が変わっても抵抗温度係数(TCR)の変動が小さい厚膜抵抗体用組成物および厚膜抵抗体用ペーストを提供する事が可能となり、それらを用いることで、抵抗温度係数の変動が小さい厚膜抵抗体の提供が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、厚膜抵抗体用組成物の焼成過程において、粒径50nm以下の非晶質シリカが電極のAgが抵抗体に拡散するのを阻害することを利用している。本発明によって、従来では困難であった、同じ厚膜抵抗体用組成物を用いて電極間距離が異なる厚膜抵抗体を得ても抵抗温度係数の違いが少ない厚膜抵抗体が提供できる。
より詳細に説明すると、本発明に係る厚膜抵抗体用組成物は、800℃から900℃のピーク温度で焼成して厚膜抵抗体を形成する。この厚膜抵抗体は、アルミナなどのセラミックス基板上にAgを主な成分とする厚膜電極を対向するように設けた基板に、厚膜抵抗体用組成物からなる厚膜抵抗体用ペーストをこれらの電極を跨ぐように印刷し、焼成して形成する。本発明に係る厚膜抵抗体用組成物は、含有する非晶質シリカが電極のAgが抵抗体に拡散するのを阻害することを利用している。
【0016】
本発明の厚膜抵抗体用組成物は、貴金属粉末として、AgとPdを含有している。
両者の含有率(単位が質量%での含有率)の比率はAg:Pd=40:60~80:20である。この比率以外では抵抗体の抵抗温度係数(TCR)が1000を超える場合もありプラス側に大きくなりすぎる。
そこで抵抗温度係数(TCR)を0に近くするには、その比/Ag:Pd=40:60から45:55とすることが望ましい。即ち、40質量%のAg粉末と、残部Pd粉末との混合粉末、またはAgを40質量%含み残部Pdと不可避的不純物から成る合金粉末が望ましい。
【0017】
本発明によれば、Ag:Pd=44:56で、抵抗温度係数(TCR)を100ppm/℃以内とすることができる。また、Ag:Pd=70:30の割合で混合すると、得られる抵抗温度係数(TCR)は、400ppm/℃程度で、500ppm/℃以内とすることができる。
なお、本発明におけるAgとPdの存在形態は、Ag粉末とPd粉末の混合粉末でも良いし、合金粉末でも良く、その粒径は0.1μm~5.0μmが望ましい。
【0018】
本発明に含有されるガラス粉末は鉛を含有せず、軟化点が650℃以上、900℃以下、粒度分布はD50で0.5μm~5.0μmが望ましい。より望ましくは、軟化点が650℃以上、850℃以下である。
このガラス粉末の軟化点が650℃より低いと、本発明の厚膜抵抗体用組成物の焼成過程においてPdの酸化により生じるPdOが残留し、貴金属のAgとPd割合が変化して抵抗値の抵抗温度係数が高くなってしまう。ガラス粉末の軟化点が650℃以上であれば、焼成過程において生成したPdOが還元しAgと共にAg-Pd合金となり抵抗体の抵抗温度係数が高くなりすぎることはない。一方、軟化点は、900℃以下が望ましく、900℃を超えると、厚膜抵抗体用組成物をピーク温度800℃から900℃で焼成することが困難となる。
【0019】
また、ガラス粉末の粒径が0.5μmより小さいとガラス粉末が過度に低温で軟化し、焼成過程で生成したPdOが還元し難くなる。逆にガラス粉末の粒径が5.0μmより大きいと厚膜抵抗体の抵抗値のバラツキが大きくなってしまう。
【0020】
ところで、ガラス粉末の組成は限定されないが、アルカリ土類金属の酸化物を含むアルミノホウケイ酸系の組成が適している。また、ガラス粉末の組成に、Znやアルカリ金属元素等を適宜加えることができる。
なお、ここで、ガラス粉末の軟化点は、ガラス粉末を示差熱分析法(TG-DTA)にて得られた示差熱曲線の最も低温側の示差熱曲線の減少が発現する温度よりも高温側の次の示差熱曲線が減少するピークの温度である。
ガラス粉末の粒度D50は、レーザ回折散乱型の粒度分布計の体積分布径のメジアン値である。
【0021】
本発明の厚膜抵抗体用組成物には、粒径50nm以下の非晶質シリカが必須である。
この粒径50nm以下の非晶質シリカは貴金属粉末、およびガラス粉末の周囲を覆い、焼成過程において電極からのAgの拡散を抑制し、ガラス粉末の軟化を遅らせるが、ピーク温度に近づくと軟化したガラス中に溶け混んでしまう。これによって電極間の距離が小さくても電極からのAgの拡散が少なく、厚膜抵抗体のAgとPdの比率が設計した値に近くなり、厚膜抵抗体の抵抗温度係数を0に近づける事ができる。
非晶質シリカの粒径が50nmより大きいと貴金属粉末、ガラス粉末の周囲を覆う事ができなくなり、電極からのAgの拡散を抑制できない。
【0022】
本発明では、貴金属粉末100質量部に対し、ガラス粉末が1~100質量部、非晶質シリカが0.5~20質量部であることが必要である。ガラス粉末が1質量部より少ないと、厚膜抵抗体の密着強度が著しく弱くなる。また、ガラス粉末が100質量部より多いと、抵抗体の抵抗値のバラツキが大きくなりすぎる。非晶質シリカが0.5質量部より少ないと、電極からのAgの拡散を抑制する事が出来なくなり、電極間が小さい厚膜抵抗体の抵抗温度係数(TCR)が高くなってしまう。また、非晶質シリカが20質量部より多いと、シリカがガラスに溶け込みきれず、厚膜抵抗体の抵抗値のバラツキが大きくなりすぎる。
【0023】
本発明の厚膜抵抗体用組成物には、厚膜抵抗体の抵抗値や抵抗温度係数や負荷特性、トリミング性の改善、調整を目的として一般に使用される添加剤を加えても良い。代表的な添加剤としてはNb、Ta、TiO、CuO、MnO、ZrO、Al、ZrSiO等があげられる。添加する量は目的によって調整されるが、貴金属粉末とガラス粉末の合計100質量部に対して通常20質量部以下である。
【0024】
本発明の厚膜抵抗体用組成物は、必要に応じて添加剤と共に印刷用の厚膜抵抗体用ペーストとするために有機ビヒクル中に混合、分散される。有機ビヒクルは特に制限はなく、ターピネオール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート等の溶剤にエチルセルロース、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、ロジン、マレイン酸エステル等の樹脂を溶解した溶液が用いられる。また、必要に応じて、分散剤や可塑剤など加える事ができる。分散方法も特に制限されないが、微細な粒子を分散させる3本ロールミルやビーズミル、遊星ミル等を用いるのが一般的である。有機ビヒクルの配合比率は印刷や塗布方法によって適宣調整されるが、貴金属粉末、ガラス粉末、非晶質シリカの合計100質量部に対して20~200質量部である。
【0025】
厚膜抵抗体は、アルミナなどのセラミックス基板上にAgを主な成分とする厚膜電極を対向するように設けた基板に、厚膜抵抗体用組成物からなる厚膜抵抗体用ペーストをこれらの電極を跨ぐように印刷し、焼成して製造することができる。厚膜抵抗体の表面にガラスペーストなどを塗布し、厚膜抵抗体を焼成した温度よりも低い600℃程度の温度で焼成し、ガラスのコート膜等を形成することができる。
【実施例
【0026】
本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
本発明の実施例と比較例では、粒径1.0μmのAg粉末、粒径0.5μmのPd粉末、粒度D501.3μmで軟化点650℃のガラス粉末A、粒度D501.4μmで軟化点560℃のガラス粉末Bと、粒径45nmの非晶質シリカを用い、表2に示すペースト配合に従い、有機ビヒクル中に3本ロールミルで分散させて抵抗ペーストを作製した。
ガラス粉末Aとガラス粉末Bの詳細を表1に示す。
また、有機ビヒクルは、エチルセルロースとターピネオールを、質量比15:85で混合して作製した。
【0027】
【表1】
【0028】
次に、予めアルミナ基板に焼成して形成された1質量%Pd、99質量%Agの電極上に、作製した抵抗ペーストを印刷し、150℃×5分で乾燥した後、ピーク温度850℃×9分、トータル30分で焼成して厚膜抵抗体を形成した。
その厚膜抵抗体のサイズは、抵抗体幅を0.5mm、抵抗体長さ(電極間)を50mmとなるようにしたものと抵抗体幅を1mm、抵抗体長さ(電極間)を1mmとなるようにした2通りとした。
【0029】
形成された厚膜抵抗体は、厚膜抵抗体の膜厚、面積抵抗値、および25℃から-55℃までの抵抗温度係数(COLD-TCR)、25℃から125℃までの抵抗温度係数(HOT-TCR)、を測定した。
膜厚は触針の厚さ粗さ計で5個の厚膜抵抗体の膜厚を測定した値を平均した。
抵抗値は、抵抗体幅を1mm、抵抗体長さ(電極間)を1mmの抵抗体サイズの25個の厚膜抵抗体の抵抗値をデジタルマルチメータで測定した値を平均した。
【0030】
抵抗温度係数(TCR)は、厚膜抵抗体を-55℃、25℃、125℃にそれぞれ15分保持してから抵抗値を測定し、それぞれの抵抗値をR-55、R25、R125として以下の式(3)、(4)によって計算し、5個の厚膜抵抗体の平均をとった。抵抗温度係数は0に近いことが望ましい。
【0031】
【数2】
【実施例1】
【0032】
実施例1では、Ag粉末とPd粉末が、質量比で70:30の割合で混合された混合貴金属粉末を用い、表2に記載のペースト配合でペーストを作製して焼成を行ない、厚膜抵抗体を作製した。
作製した厚膜抵抗体の上記測定結果を表3に示す。
【0033】
(比較例1)
ペーストにシリカ粉末を含有しなかった以外は、実施例1と同条件で厚膜抵抗体を作製した。表2にペースト配合を、表3に測定結果を示す。
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【実施例2】
【0036】
実施例2では、Ag粉末とPd粉末が、質量比で44:56の割合で混合された混合貴金属粉末を用い、表4に記載のペースト配合でペーストを作製して焼成を行ない、厚膜抵抗体を作製した。
作製した厚膜抵抗体の上記測定結果を表5に示す。
【実施例3】
【0037】
実施例3でも、Ag粉末とPd粉末が、質量比で44:56の割合で混合された混合貴金属粉末を用い、表4のペースト配合でペーストを作製した焼成を行ない、厚膜抵抗体を作製した。
その厚膜抵抗体の測定結果を表5に示す。
【0038】
(比較例2)
ペーストにシリカ粉末を含有しなかった以外は、実施例2と同条件で厚膜抵抗体を作製した。表4にペースト配合を、表5に測定結果を示す。
【0039】
(比較例3)
ガラス粉末Aの代わりにガラス粉末Bを用いた以外は、実施例2と同条件で厚膜抵抗体を作製した。表4にペースト配合を、表5に測定結果を示す。
【0040】
【表4】
【0041】
【表5】
【0042】
表2、3から、実施例1と比較例1は、Ag粉末とPd粉末を質量比で、70:30の割合とした例で、実施例1では抵抗体幅0.5mm×抵抗体幅50mmの抵抗体と、抵抗体幅1mm×抵抗体幅1mmの抵抗体の抵抗温度係数(TCR)の差が小さく、抵抗体幅1mm×抵抗体幅1mmの抵抗体でも抵抗温度係数(TCR)≦±500[ppm/℃]となっている。
これに対してシリカを含有していない比較例1では、抵抗体幅0.5mm×抵抗体幅50mmの抵抗体と抵抗体幅1mm×抵抗体幅1mmの抵抗体の抵抗温度係数(TCR)の差が大きく、抵抗体幅1mm×抵抗体幅1mmの抵抗体では抵抗温度係数(TCR)が500[ppm/℃]を超えている。
【0043】
表4、5から、実施例2では抵抗体幅0.5mm×抵抗体幅50mmの抵抗体と抵抗体幅1mm×抵抗体幅1mmの抵抗体の抵抗温度係数(TCR)の差が小さく、抵抗体幅1mm×抵抗体幅1mmの抵抗体でも抵抗温度係数(TCR)≦±100[ppm/℃]となっている。
これに対してシリカを含有していない比較例2では、抵抗体幅0.5mm×抵抗体幅50mmの抵抗体と抵抗体幅1mm×抵抗体幅1mmの抵抗体の抵抗温度係数(TCR)の差が大きく、抵抗体幅1mm×抵抗体幅1mmの抵抗体では抵抗温度係数(TCR)が100[ppm/℃]を超えている。
【0044】
また、実施例3は、Ag粉末とPd粉末を質量比で、44:56としてガラス粉末、シリカ粉末を実施例2より多くした例である。ガラス粉末、シリカ粉末の増量によって面積抵抗値が増加しておよそ10Ωとなっているが、抵抗体幅0.5mm×抵抗体幅50mmの抵抗体と抵抗体幅1mm×抵抗体幅1mmの抵抗体の抵抗温度係数(TCR)の差が小さく、抵抗体幅1mm×抵抗体幅1mmの抵抗体でも抵抗温度係数(TCR)≦±100[ppm/℃]となっている。
【0045】
さらに、実施例2のガラス粉末Aを軟化点560℃のガラス粉末Bに置き換えた比較例3では、シリカ粉末を含有していても、抵抗温度係数(TCR)が100[ppm/℃]を超えてしまう。
【0046】
上記実施例、比較例から判るように、本発明によれば、従来困難であった形状が小さく電極間距離が小さい抵抗体においても、抵抗温度係数(TCR)を0[ppm/℃]に調整する事ができる。