(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】インクジェット印刷用インク
(51)【国際特許分類】
C09D 11/30 20140101AFI20240125BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20240125BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240125BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20240125BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
C09D11/30
B41M5/00 120
B41J2/01 501
G02B5/20 101
G02F1/1335 505
(21)【出願番号】P 2020099236
(22)【出願日】2020-06-08
【審査請求日】2023-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100140578
【氏名又は名称】沖田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】大和田 真央
(72)【発明者】
【氏名】田中 隆太
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 晃一
(72)【発明者】
【氏名】熊木 尚
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/155500(WO,A1)
【文献】特開2008-208340(JP,A)
【文献】特開2001-019708(JP,A)
【文献】特開2014-106458(JP,A)
【文献】特開2009-128857(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0134366(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00-11/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)バインダーポリマーと、
(B)ブロックイソシアネートと、
(C)エポキシ樹脂と、
(D)着色剤と、
(E)シランカップリング剤と、
(F)溶剤と、
を含有し、
前記バインダーポリマーがカルボキシル基を有し、
前記バインダーポリマー、前記ブロックイソシアネート及び前記エポキシ樹脂の合計量が100質量部であるときに、前記バインダーポリマーの含有量が60~80質量部で、前記ブロックイソシアネートの含有量が10~35質量部で、前記エポキシ樹脂の含有量が5~30質量部である、
インクジェット印刷用インク。
【請求項2】
前記ブロックイソシアネートが、ジイソシアネート化合物から誘導されるイソシアヌレート型イソシアネートとブロック剤とから形成されたイソシアヌレート型ブロックイソシアネートを含む、請求項1に記載のインクジェット印刷用インク。
【請求項3】
前記ブロックイソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート型イソシアネートとブロック剤とから形成されたイソシアヌレート型ブロックイソシアネートを含む、請求項1に記載のインクジェット印刷用インク。
【請求項4】
前記ブロックイソシアネートが、メチルエチルケトオキシム、アセトアルデヒドオキシム及びシクロヘキサノンオキシムから選択される少なくとも1種のブロック剤でブロックされたイソシアネート基を有する化合物を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のインクジェット印刷用インク。
【請求項5】
前記エポキシ樹脂が、脂環又は芳香環を有する化合物を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のインクジェット印刷用インク。
【請求項6】
前記エポキシ樹脂が、ジシクロペンタジエン骨格を有する化合物を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のインクジェット印刷用インク。
【請求項7】
前記着色剤が、平均粒径10~300nmの顔料を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のインクジェット印刷用インク。
【請求項8】
前記シランカップリング剤が、エポキシ基を有する化合物を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のインクジェット印刷用インク。
【請求項9】
前記溶剤が、グリコールエーテル、グリコールエステル及び環状エステルからなる群より選択された少なくとも1種を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のインクジェット印刷用インク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷用インクに関する。
【背景技術】
【0002】
カラー表示装置に用いられるカラーフィルタは、一般に赤(R)、緑(G)、青(B)の3色からなる画素を有しており、これら画素がブラックマトリクスと呼ばれる格子状の黒色遮光層で囲まれている。かかるカラーフィルタの製造方法の一つとして、ブラックマトリクスを隔壁として、カラーフィルタの着色層をインクジェット方式で形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1、2)。カラーフィルタに限らず各種表示装置において、各画素間の境界上にブラックマトリクスを設けることによって画像のコントラスト向上を図ることもある。ブラックマトリクスは、例えば、黒色顔料を含有する感光性樹脂組成物を用いたホトリソグラフ法によって形成される。黒色顔料としてはカーボンブラックが一般的に用いられている。
【0003】
近年、ブラックマトリクスには、より高い光学濃度(optical density、以下「OD値」ということがある。)が求められるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開2018/155500号
【文献】特開2004-325736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ブラックマトリクスをインクジェット法により製造することは、製造工程の簡略化、環境負荷の低減、原料使用量の減少などの点で有利である。インクジェット法の原料使用料は、感光性樹脂組成物を用いる場合の原料使用料と比較して90%以下にまで低下できることが見込まれる。しかし、インクジェット法によってガラス基板等の非吸収性材質の基材表面をインクで印刷すると、インクを吸収する紙又は布などへの印刷とは異なり、インクが硬化して形成される硬化膜と基材との密着性が耐久性試験後に不足することがあった。OD値を高くするために顔料等の着色剤を多く含むインクによって形成される硬化膜は、特に低い密着性を示す傾向があった。
【0006】
本発明の一側面の目的は、非吸収性の被着体表面に対する高い密着性を耐久性試験後にも維持する硬化膜を形成することが可能なインクジェット印刷用インクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るインクジェット印刷用インクは、(A)バインダーポリマーと、(B)ブロックイソシアネートと、(C)エポキシ樹脂と、(D)着色剤と、(E)シランカップリング剤と、(F)溶剤と、を含有する。前記バインダーポリマーがカルボキシル基を有する。前記バインダーポリマー、前記ブロックイソシアネート及び前記エポキシ樹脂の合計量が100質量部であるときに、前記バインダーポリマーの含有量が60~80質量部で、前記ブロックイソシアネートの含有量が10~35質量部で、前記エポキシ樹脂の含有量が5~30質量部である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一側面によれば、非吸収性の被着体表面に対する高い密着性を耐久性試験後にも維持する硬化膜を形成することが可能なインクジェット印刷用インクが提供される。本発明の一側面に係るインクによって形成される硬化膜は、非吸収性基材の表面に対する高い密着性を、湯浴試験後に維持することができる。
【0009】
本発明のいくつかの形態に係るインクジェット印刷用インクは、インクジェットのノズルの詰まりを抑制できる、良好な吐出性を有することができる。
【0010】
本発明の一側面に係るインクから形成される硬化膜は、例えば、バックライトなどからの余分な光を遮光するための遮光膜として用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」又は「メタクリル酸」を意味し、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」又は「メタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」又は「メタクリロイル基」を意味する。
【0013】
一実施形態に係るインクジェット印刷用インクは、(A)バインダーポリマーと、(B)ブロックイソシアネートと、(C)エポキシ樹脂と、(D)着色剤と、(E)シランカップリング剤と、(F)溶剤とを含有する。
【0014】
(A)成分:カルボキシル基を有するバインダーポリマー
(A)成分のバインダーポリマーは、カルボキシル基を有するポリマーである。バインダーポリマーの例としては、アクリル重合体、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、アミド系樹脂、アミドエポキシ系樹脂、アルキド系樹脂、フェノール系樹脂、ウレタン系樹脂が挙げられる。これらは単独で、又は二種類以上を組み合わせて用いることができる。被着体への密着力の観点から、バインダーポリマーがアクリル重合体であってもよい。
【0015】
(A)成分としてのアクリル重合体は、(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する単量体単位から主として構成される重合体である。アクリル重合体は、カルボキシル基を有する単量体とその他の単量体との共重合体であってもよい。
【0016】
(メタ)アクリロイル基を有する単量体の例としては、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、β-フリル(メタ)アクリル酸、及びβ-スチリル(メタ)アクリル酸等の(メタ)アクリル酸誘導体;並びにアクリルアミドが挙げられる。アクリル重合体は、これらから選ばれる1種以上の単量体を単量体単位として含んでもよい。これら単量体のうち、(メタ)アクリル酸、β-フリル(メタ)アクリル酸、及びβ-スチリル(メタ)アクリル酸はカルボキシル基を有する単量体であり、これらに由来する単量体単位を含むアクリル重合体は、カルボキシル基を有することができる。カルボキシル基を有する単量体が、(メタ)アクリル酸であってもよい。
【0017】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルへキシル、及びこれらの構造異性体が挙げられる。アクリル重合体が、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、及び(メタ)アクリル酸ブチルから選ばれる少なくとも1種を単量体単位として含んでもよい。
【0018】
その他の単量体の例としては、スチレン;α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、及びp-エチルスチレン等のスチレン誘導体;アクリロニトリル;ビニル-n-ブチルエーテル等のビニルアルコールのエステル;マレイン酸、マレイン酸モノエステル;並びに、フマール酸、ケイ皮酸、α-シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸、プロピオール酸等の重合性不飽和基を有する有機カルボン酸が挙げられる。これらのうち有機カルボン酸に由来する単量体単位を含むアクリル重合体は、カルボキシル基を有することができる。
【0019】
アクリル重合体は、(メタ)アクリル酸、及びヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを単量体単位として有する共重合体であってもよく、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及びヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを単量体単位として有する共重合体であってもよい。
【0020】
ヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリル酸エステルの例としては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシペンチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘプチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル及びこれらの構造異性体が挙げられる。
【0021】
カルボキシル基を有するバインダーポリマーの酸価は、インクの硬化性及び密着性の観点から、20mgKOH/g以上、40mgKOH/g以上、又は60mgKOH/g以上であってもよい。優れた密着性の点から、バインダーポリマーの酸価は、250mgKOH/g以下、240mgKOH/g以下、230mgKOH/g以下、又は220mgKOH/g以下であってもよい。
【0022】
ここで、酸価は、以下の方法により測定することができる。
まず、酸価を測定すべきバインダーポリマーを含むポリマー溶液約1gを精秤する。その後、このポリマー溶液にアセトンを30g添加し、均一に混合する。混合後の溶液に、指示薬であるフェノールフタレインを適量添加する。0.1NのKOH水溶液を用いて滴定を行う。KOH水溶液の滴定量を求め、次式により酸価を算出する。
A=10×Vf×56.1/(Wp×I)
式中、Aは酸価(mgKOH/g)を示し、Vfは0.1NのKOH水溶液の滴定量(mL)を示し、Wpは測定したポリマー溶液の質量(g)を示し、Iは測定したポリマー溶液中の不揮発分(バインダーポリマー)の割合(質量%)を示す。
【0023】
バインダーポリマーの重量平均分子量は、硬化膜の優れた物性の点から、15000以上、又は18000以上であってもよい。インクジェットのノズルからの良好な吐出性の観点から、バインダーポリマーの重量平均分子量は、30000以下、又は22000以下であってもよい。ここでの重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定される、標準ポリスチレンによる換算値を意味する。
【0024】
バインダーポリマーの含有量は、バインダーポリマー、ブロックイソシアネート及びエポキシ樹脂の合計量100質量部に対して、60~80質量部であってよい。密着性及びインクの吐出性の観点から、バインダーポリマーの含有量が、バインダーポリマー、ブロックイソシアネート及びエポキシ樹脂の合計量100質量部に対して60~70質量部であってよい。
【0025】
(B)ブロックイソシアネート
ブロックイソシアネートは、イソシアネート化合物とブロック剤とから形成された化合物であり、ブロック剤によってブロックされた2以上のイソシアネート基を有する。加熱によりブロック剤が解離して、イソシアネート基が再生するため、ブロックイソシアネートはポットライフが長く、これを含むインクは加工性に優れる。本実施形態に係るインクでは、ブロックイソシアネートは硬化剤として用いられる。ブロックイソシアネートは、通常、比較的低温での加熱によりブロック剤を解離(脱保護)してイソシアネート基を再生する。再生したイソシアネート基とバインダーポリマーのカルボキシル基等との反応が、インクの硬化に寄与する。
【0026】
ブロック剤は、当該技術分野において通常用いられているものから、選択することができる。ブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、クロロフェノール及びエチルフェノール等のフェノール系ブロック剤;ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム及びβ-プロピオラクタム等のラクタム系ブロック剤;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル及びアセチルアセトン等の活性メチレン系ブロック剤;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アミルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルアルコール、グリコール酸メチル、グリコール酸ブチル、ジアセトンアルコール、乳酸メチルおよび乳酸エチル等のアルコール系ブロック剤;ホルムアルドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム系ブロック剤;ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t-ブチルメルカプタン、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール等のメルカプタン系ブロック剤;酢酸アミド、ベンズアミド等の酸アミド系ブロック剤;コハク酸イミド及びマレイン酸イミド等のイミド系ブロック剤;イミダゾール、2-エチルイミダゾール等のイミダゾール系ブロック剤;ピラゾール系ブロック剤;及びトリアゾール系ブロック剤が挙げられる。低温硬化のためには、ブロック剤が活性メチレン系ブロック剤、オキシム系ブロック剤が有利である。ブロック剤は、メチルエチルケトオキシム、アセトアルデヒドオキシム及びシクロヘキサノンオキシムから選択される少なくとも1種のオキシム系ブロック剤であってもよい。
【0027】
ブロックイソシアネートを形成するイソシアネート化合物は、ジイソシアネート化合物であってもよく、その例としては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2-ニトロジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2,2’-ジフェニルプロパン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシネ-ト、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、ナフチレン-1,4-ジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシジフェニル-4,4’-ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;キシリレン-1,4-ジイソシアネート、キシリレン-1,3-ジイソシアネート、キシリレン-1,2-ジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート:イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネートが挙げられる。
【0028】
ブロックイソシアネートは、イソシアヌレート基を有するイソシアヌレート型ブロックイソシアネート、又は、ビウレット型ブロックイソシアネートであってもよい。イソシアヌレート型ブロックイソシアネートは、ジイソシアネート化合物から誘導されるイソシアヌレート型イソシアネートとブロック剤とから形成された化合物である。ビウレット型ブロックイソシアネートは、ジイソシアネート化合物から誘導されるビウレット型ブロックイソシアネートとブロック剤とから形成された化合物である。イソシアヌレート型ブロックイソシアネート、又は、ビウレット型ブロックイソシアネートを形成するブロック剤は、メチルエチルケトオキシム、アセトアルデヒドオキシム及びシクロヘキサノンオキシムから選択される少なくとも1種であってもよい。イソシアヌレート型ブロックイソシアネートを誘導するジイソシアネート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネートであってもよい。ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体化(イソシアヌレート化)により誘導されるイソシアヌレート型イソシアネートは、イソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネートと称されることがある。
【0029】
ジイソシアネート化合物からイソシアヌレート型イソシアネートを生成するイソシアヌレート化反応は、例えば、イソシアヌレート化触媒である第3級アミン類、アルキル置換エチレンイミン類、トリアルキルホスフィン類、アセチルアセトン金属塩類、各種有機酸の金属塩類等を単独使用又は併用して行われる。必要に応じて助触媒、例えばフェノール性ヒドロキシル基含有化合物、アルコール性ヒドロキシル基含有化合物が用いられる。反応温度は通常0~90℃である。反応は、溶剤不存在下若しくは溶剤の存在下、又は反応温度で液状のポリオール又はジオクチルフタレート(DOP)等の可塑剤中で行われる。溶剤としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族系、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネート等のグリコールエーテルエステル系の存在下及び場合によっては反応温度で液状のポリオール又はジオクチルフタレート(DOP)等の可塑剤中において行われる。反応後、停止剤(例えばリン酸、パラトルエンスルホン酸エステル、硫黄)を使用することにより、触媒を不活性化し反応停止させることができる。その後、遊離のイソシアネートモノマーを除去することで、臭気を抑制することができる。
【0030】
イソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネートは、1分子中に2個以上のイソシアネート基を含有する化合物である。イソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネートは、例えば、旭化成株式会社製のデュラネートTPA-100、TKA-100、MFA-75B、MHG-80B、TUL-100、TLA-100、TSA-100、TSS-100、又はTSE-100として商業的に入手可能である。
【0031】
ブロックイソシアネートの含有量は、バインダーポリマー、ブロックイソシアネート及びエポキシ樹脂の合計量100質量部に対して、10~35質量部であってよい。
【0032】
(C)エポキシ樹脂
エポキシ樹脂は、通常、2以上のエポキシ基を有する化合物である。その例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、フェノール化合物(フェノール、クレゾール、アルキルフェノール、カテコール、ビスフェノールF、ビスフェノールA、ビスフェノールS等)とアルデヒド化合物(ホルムアルデヒド、サリチルアルデヒド等)との縮合物のグリシジルエーテル化物、二官能フェノールのグリシジルエーテル化物、二官能アルコールのグリシジルエーテル化物、三官能以上のポリフェノールのグリシジルエーテル化物、及びこれらの水素添加物又はハロゲン化物が挙げられる。被着体への密着性の観点から、エポキシ樹脂は、脂環又は芳香環を含む化合物であってもよく、特に、脂環であるジシクロペンタジエン骨格を有する化合物であってもよい。ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂の例としては、ジメチロールトリシクロデカンジグリシジルエーテル、クレゾールとジシクロペンタジエンの重縮合物のポリグリシジルエーテルが挙げられる。
【0033】
エポキシ樹脂の含有量は、バインダーポリマー、ブロックイソシアネート及びエポキシ樹脂の合計量100質量部に対して、5~30質量部であってよい。密着性及びインクの吐出性の観点から、エポキシ樹脂の含有量が、バインダーポリマー、ブロックイソシアネート及びエポキシ樹脂の合計量100質量部に対して10~20質量部であってもよい。
【0034】
(D)着色剤
インクに含まれる着色剤は、目的等に応じて、様々な着色剤から適宜選択すればよい。イエロー、シアン、マゼンダ、ブラック等の様々な色の着色剤を採用することができる。着色剤は、インクに良好に分散し、耐光性の優れた有機顔料又は無機顔料のような顔料であってもよい。
【0035】
有機顔料の具体例としては、染料レーキ顔料、アゾ系、ベンズイミダゾロン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジコ系、ペリレン系、ペリノン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリノン系、ニトロ系、ニトロソ系、アンスラキノン系、フラバンスロン系、キノフタロン系、ピランスロン系、インダンスロン系の顔料が挙げられる。無機顔料の具体例としては、カーボンブラック、酸化チタン、ベンガラ、黒鉛、鉄黒、酸化クロムグリーン、水酸化アルミニウムが挙げられる。
【0036】
顔料は、(F)成分の溶剤中に微粒子状に分散した状態で存在しており、凝集するとノズルの目詰まりの原因となり得る。目詰まり抑制の観点からは、顔料の平均粒径が10~300nm、10~250nm、又は10~200nmであってもよい。
【0037】
ブラックマトリックス等として用いられる遮光性硬化膜に遮光性を付与する顔料(色材)として、カーボンブラックを用いることができる。カーボンブラックの市販品の例としては、三菱化学株式会社製のカーボンブラック#2400、#2350、#2300、#2200、#1000、#980、#970、#960、#950、#900、#850、MCF88、#650、MA600、MA7、MA8、MA11、MA100、MA220、IL30B、IL31B、IL7B、IL11B、IL52B、#4000、#4010、#55、#52、#50、#47、#45、#44、#40、#33、#32、#30、#20、#10、#5、CF9、#3050、#3150、#3250、#3750、#3950、ダイヤブラックA、ダイヤブラックN220M、ダイヤブラックN234、ダイヤブラックI、ダイヤブラックLI、ダイヤブラックII、ダイヤブラック339、ダイヤブラックSH、ダイヤブラックSHA、ダイヤブラックLH、ダイヤブラックH、ダイヤブラックHA、ダイヤブラックSF、ダイヤブラックN550M、ダイヤブラックE、ダイヤブラックG、ダイヤブラックR、ダイヤブラックN760M、ダイヤブラックLR;キャンカーブ社製のカーボンブラックサーマックスN990、N991、N907、N908、N990、N991、N908;旭カーボン株式会社製のカーボンブラック旭#80、旭#70、旭#70L、旭F-200、旭#66、旭#66HN、旭#60H、旭#60U、旭#60、旭#55、旭#50H、旭#51、旭#50U、旭#50、旭#35、旭#15、アサヒサーマル;デグサ社製のカーボンブラックColorBlackFw200、ColorBlack Fw2、ColorBlack Fw2V、ColorBlack Fw1、ColorBlackFw18、ColorBlackS170、ColorBlackS160、SpecialBlack6、SpecialBlack5、SpecialBlack4、SpecialBlack4A、PrintexU、PrintexV、Printex140U、Printex140V;山陽色素株式会社製のSF BLACK AD2065、SF BLACK AD2091、SF BLACK AD2128、SF BLACK AH4203等が挙げられる。
【0038】
遮光材料として、無機顔料に補助顔料としての有機顔料を組み合わせてもよい。有機顔料は無機顔料の補色を呈するものを選択することにより次の様な効果が得られる。例えば、カーボンブラックは、赤みがかった黒色を呈する。したがって、カーボンブラックに補助顔料として赤色の補色である青色を呈する有機顔料を加組み合わせることにより、カーボンブラックの赤みが消え、硬化膜(遮光層)が全体としてより高品質な黒色を呈することができる。
【0039】
これらの顔料は、粒子が凝集した状態となっていることが多いため、使用前に分散処理が必要となることがある。顔料に分散剤及び溶剤を加えてミルベースをつくり、それをボールミル、サンドミル、ビーズミル、3本ロール、ペイントシェーカー、超音波、バブルホモジナイザー等の方法により顔料を分散することができる。これらの処理方法は2つ以上組み合わせることも可能である。分散剤としては樹脂又はその他の公知の分散剤が使用可能である。
【0040】
着色剤(特に顔料)の含有量は、インクの全固形分(溶剤以外の成分)の質量を基準として、25~60質量%であってもよい。着色剤(又は顔料)の含有量が25質量%以上であると、ブラックマトリクス等に求められる高い光学濃度(OD値)を有する硬化膜を形成し易い。光学濃度が大きいと、表示装置における光漏れの低減、及び、コントラスト向上といった効果が得られる。着色剤(又は顔料)の含有量が60質量%以下であると、被着体への密着性がより一層向上する傾向がある。
【0041】
(E)シランカップリング剤
インクジェット印刷用インクが、シランカップリング剤を含有することにより、硬化膜の被着体(基材)との密着性がより一層向上する。シランカップリング剤は、例えば、アルキルシラン、アルコキシシラン、ビニルシラン、エポキシシラン、アミノシラン、アクリロイルシラン、メタクリロイルシラン、メルカプトシラン、スルフィドシラン、イソシアネートシラン、サルファーシラン、スチリルシラン、又はアルキルクロロシランであってもよい。
【0042】
シランカップリング剤の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-ドデシルメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、トリフェニルシラノール、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、n-オクチルジメチルクロロシラン、テトラエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ジアリルジメチルシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノシランが挙げられる。これらを単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0043】
シランカップリング剤は、エポキシ基を有していてもよい。エポキシ基を有するシランカップリング剤は、バインダーポリマーとの相互作用が大きくなり、より効果的に硬化膜の被着体(基材)との密着性が発現する。ここで、シランカップリング剤が有するエポキシ基は、通常1個である。本明細書において、2個以上のエポキシ基を有する化合物は、上述のエポキシ樹脂に分類される。
【0044】
エポキシ基を有するシランカップリング剤の例としては、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランが挙げられる。
【0045】
シランカップリング剤の含有量は、インクの質量を基準として、0~10質量%であってもよい。これにより、インクにより形成される硬化膜の被着体(支持体)への密着性がより一層向上する傾向がある。
【0046】
(レベリング剤)
インクジェット印刷用インクが着色剤として顔料を含有する場合、硬化膜の平滑性向上のためにレベリング剤を含有してもよい。レベリング剤は、インクの分野において通常使用されているものから特に制限なく選択できるが、シロキサン化合物であってもよい。
【0047】
レベリング剤の例としては、ビックケミー・ジャパン株式会社製のBYK-300、302、306、307、310、313、315N、320、322、323、325N、326、327、330、331、333、342、345/346、347、348、349、370、375、377、378、3450、3451、3455、3456、3760、350、354、355/356、358N/361N、381、392、394、3441、399、3440、3550、3560、3565、3566が挙げられる。これらは、単独で使用しても2種以上を併用しても良い。
【0048】
(F)溶剤
本実施形態に係るインクジェット印刷用インクにおいて、(F)成分の溶剤の含有量は、インクの質量を基準として、60~95質量%であってもよい。溶剤の含有量が60質量%以上であると、特に良好なインクジェット吐出性が得られ易い傾向がある。溶剤の含有量が95質量%以下であると、十分に濃い色味を有する硬化膜が形成され易い傾向がある。
【0049】
溶剤の例としては、グリコールエーテル(エチレングリコールモノアルキルエーテル及びプロピレングリコールモノアルキルエーテル等)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-iso-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、メチル-iso-ブチルケトン、メチル-n-ペンチルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジ-iso-ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロペンタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4-ペンタンジオン、アセトニルアセトン、γ-バレロラクトン及びシクロヘキサノン等)、エステル(エチルアセテート、ブチルアセテート、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート及びプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート等)、環状エステル(ガンマブチロラクトン等)、芳香族炭化水素(トルエン、キシレン、メシチレン及びリモネン等)、アルコール(メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ゲラニオール、リナロール及びシトロネロール等)及びエーテル(テトラヒドロフラン及び1,8-シネオール等)が挙げられる。これらは、単独で使用しても2種以上を併用しても良い。
【0050】
溶剤は、酢酸エステル(酢酸エステル系溶剤)、グリコールエーテル(グリコールエーテル系溶剤)及びグリコールエステル(グリコールエステル系溶剤)から選択された少なくとも1種を主成分として含んでいてもよい。ここで主成分とは、通常、溶剤全量のうち50質量%以上を占める成分を意味する。
【0051】
酢酸エステルの例としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸iso-プロピル、酢酸ブチル、酢酸iso-ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸n-ペンチル、酢酸sec-ペンチル、酢酸3-メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2-エチルブチル、酢酸2-エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸ノニル、アセト酢酸メチル及びアセト酢酸エチルが挙げられる。
【0052】
グリコールエーテルの例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールモノアルキルエーテル;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルモノ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールメチルモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルモノ-n-ヘキシルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルモノ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルモノ-n-ヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラジエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルモノ-n-ヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルモノ-n-ヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルモノ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルモノ-n-ヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラプロピレングリコールジエチルエーテル、テトラジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチルモノ-n-ブチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチルモノ-n-ヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールジ-n-ブチルエーテル等のアルキレングリコールジアルキルエーテルが挙げられる。
【0053】
グリコールエステルの例としては、エチレングリコールメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール-n-ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールエチルエーテルアセテート等のアルキレングリコールアルキルエーテルアセテートが挙げられる。
【0054】
遮光膜等として用いられる硬化膜は、例えば、インクを用いたインクジェット印刷により、格子状等のパターンを形成するインクの膜を基材上に形成する工程と、インクの膜を加熱して硬化膜を形成することとを含む方法により形成することができる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例を挙げて本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0056】
1.原材料
(A)バインダーポリマー
アクリル重合体A1
撹拌機、還流冷却機、不活性ガス導入口及び温度計を備えたフラスコに、80質量部のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)を入れた。フラスコ内のPMAを、窒素ガス雰囲気下で145℃に昇温した。そこに17質量部のメタクリル酸、53質量部のメタクリル酸メチル、20質量部のアクリル酸エチル、0.7質量部の2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、及び11質量部のPMAの混合液を、フラスコ内の液の温度を145℃±2℃に保ちながら、2.5時間かけて均一に滴下した。滴下後、145℃±2℃に保ちながら、3.5時間撹拌を続け、カルボキシル基を有するアクリル重合体A1を含む溶液を得た。アクリル重合体A1の濃度は50質量%であった。アクリル重合体A1の重量平均分子量を表1に示す。
【0057】
アクリル重合体A2、A3及びA4
モノマー、ラジカル重合開始剤、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの種類、量及び反応温度を表1に示すように変更したこと以外はアクリル重合体A1の合成と同様にして、カルボキシル基を有するアクリル重合体A2、A3及びA4の溶液を得た。アクリル重合体A2及びA4の溶液の濃度は50質量%で、アクリル重合体A3の溶液の濃度は30質量%であった。
【0058】
【0059】
(B)ブロックイソシアネート
・イソシヌレート型ブロックイソシアネート(BL3175、住化コベストロウレタン株式会社製)
(C)エポキシ樹脂
・ジシクロペンタジエン骨格を含むエポキシ化合物(EP-4088L、株式会社ADEKA製)
(D)顔料
・SF BLACK AH4203:カーボンブラック組成物(カーボンブラック含有量:20~30質量%、山陽色素株式会社製)
(E)シランカップリング剤
・KBM-403:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製)
(レベリング剤)
・BYK-333:ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンとポリエーテルの混合物(ビックケミー・ジャパン株式会社製)
(F)溶剤
・ガンマブチロラクトン(GBL):三菱ケミカル株式会社製
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA):KHネオケム株式会社製
【0060】
2.インク
原材料を表2に示す比(質量部)で混合した。混合物を15分間攪拌して、硬化膜を形成するための実施例及び比較例のインクを得た。それぞれの成分の量は、各材料に含まれていた溶剤を除いた成分(固形分)の量(質量部)である。表中の「原材料由来の溶剤」は、混合前の各成分に含まれていた溶剤の合計量を示す。
【0061】
3.硬化膜の作製
基材として、青板ガラス板(100mm×150mm、厚み2mm)を準備した。基材の表面を、アセトンが染み込んだ布で拭き、その後、空気乾燥させた。基材上に各インクをバーコーダーを用いて均一に塗布した。塗膜を、80℃の熱風対流式乾燥機で15分間の加熱により溶剤を除去することで仮乾燥した。仮乾燥後の塗膜を200℃の熱風対流式乾燥機による60分間の加熱により熱硬化して、硬化膜(硬化した塗膜、厚さ5μm)を有する評価用試験片を得た。
【0062】
4.評価
4-1.インクの粘度
インクの粘度を、粘度計(東機産業株式会社製、RE-80L形粘度計、測定温度25℃、回転数20rpm)を使用して測定した。粘度の測定結果から、以下の基準に従って評価した。インクジェットの吐出性の点から、A、B、C、D、Eの順で粘度が良好であることを意味する。
A:粘度8.5m・Pa以上9.5mPa・s以下
B:粘度8.0m・Pa以上8.5mPa・s未満、又は9.5mPa・s超10.0mPa・s以下
C:粘度7.5mPa・s以上8.0mPa・s未満、又は10.0mPa・s超10.5mPa・s以下
D:粘度7.0mPa・s以上7.5mPa・s未満、又は10.5mPa・s超11.0mPa・s以下
E:粘度7.0mPa・s未満、又は11.0mPa・s超
【0063】
4-2.クロスカット試験(密着性)
(初期)
JIS規格(K5400:塗料一般試験方法[K5600])を参考にして、100マスのクロスカット試験を実施した。評価用試験片の硬化膜に、カッターナイフを用いて1×1mm四方の碁盤目の切り傷を入れた。硬化膜の碁盤目部分にメンディングテープ(CT-18、ニチバン株式会社製)を強く圧着させた。メンディングテープの端をほぼ0°の角度で引っ張ることで、メンディングテープを硬化膜からゆっくりと引き剥がした。その後、基材に密着した状態で残っている部分の面積の、碁盤目部分の全面積に対する面積比率を測定した。以下の基準に従って密着性を評価した。A、B、C、D、E、Fの順で密着性が良好であることを意味する。
A:面積比率100%
B:面積比率95%以上100%未満
C:面積比率85%以上95%未満
D:面積比率65%以上85%未満
E:面積比率35%以上65%未満
F:面積比率0%以上35%未満
【0064】
(湯浴試験)
評価用試験片を85℃の純水中に6時間放置した。純水から評価用試験片を取り出し、分をよくふき取った。その後、上記と同様のクロスカット試験により硬化膜の密着性を評価した。
【0065】
【0066】
表2に評価結果が示される。実施例1~9のインクから形成された硬化膜は、初期及び湯浴試験後に優れた密着性を示した。バインダーポリマー、ブロックイソシアネート及びエポキシ樹脂の合計量100質量部に対して、インダーポリマーの含有量が60~70質量部で、ブロックイソシアネートの含有量が10~35質量部で、エポキシ樹脂の含有量が10~20質量部である実施例1、2、5~9のインクは、湯浴試験後の密着性及び吐出性に適した粘度の点で特に優れる特性を示した。