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特許7425977湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物、接着体、及び衣類
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  • 特許-湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物、接着体、及び衣類 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物、接着体、及び衣類
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/04 20060101AFI20240125BHJP
   C08G 18/28 20060101ALI20240125BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20240125BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20240125BHJP
   C09J 175/06 20060101ALI20240125BHJP
   D06M 17/10 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
C09J175/04
C08G18/28 015
C08G18/42
C08G18/48
C09J175/06
D06M17/10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021515773
(86)(22)【出願日】2019-11-21
(86)【国際出願番号】 JP2019045681
(87)【国際公開番号】W WO2020217574
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2019086079
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】曲 淑杰
(72)【発明者】
【氏名】小宮 聡一郎
(72)【発明者】
【氏名】今井 卓也
(72)【発明者】
【氏名】馬籠 和幸
(72)【発明者】
【氏名】亀井 淳一
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-216723(JP,A)
【文献】特開2016-160344(JP,A)
【文献】特開2016-074996(JP,A)
【文献】特開2016-121351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
C08G 18/00- 18/87,71/00-71/04
D06M 17/00- 17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールに由来する構造単位及びポリイソシアネートに由来する構造単位を含む重合鎖を含み、イソシアネート基を2個以上有するウレタンプレポリマーと、
ポリオールに由来する構造単位及びポリイソシアネートに由来する構造単位を含む重合鎖を含み、ひまし油モノオールで変性されているイソシアネート基を1個以上有するウレタンプレポリマーの変性体と、
を含有する、湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物(ただし、分子中に1個以上のオキサゾリジン環を有する化合物をさらに含有する場合を除く。)
【請求項2】
前記ウレタンプレポリマーにおけるポリオール及び前記ウレタンプレポリマーの変性体におけるポリオールが、非晶性ポリエステルポリオール及び結晶性ポリエステルポリオールを含む、請求項1に記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物。
【請求項3】
布及び紙から選択される複数の被着体を互いに貼り合わせるために用いられる、請求項1又は2に記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物。
【請求項4】
第1の被着体と、
第2の被着体と、
前記第1の被着体及び前記第2の被着体を互いに接着する接着剤層と、
を備え、
前記接着剤層が、請求項1又は2に記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物の硬化物を含有する、接着体。
【請求項5】
請求項4に記載の接着体を備え、
前記第1の被着体及び前記第2の被着体が布である、衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物、接着体、及び衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
ホットメルト接着剤は、無溶剤型の接着剤であるため、環境及び人体への負荷が少なく、短時間接着が可能であるため、生産性向上に適した接着剤である。ホットメルト接着剤は、熱可塑性樹脂を主成分としたもの及び反応性樹脂を主成分としたものの2つに大別できる。反応性樹脂を主成分としたものでは、主にイソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマーが利用されている。ウレタンプレポリマーを主成分とする反応性ホットメルト接着剤は、塗布後、接着剤自体の冷却固化により、短時間で、ある程度の接着強度を発現する。その後、ウレタンプレポリマーの末端イソシアネート基が湿気(空気中の水分又は被着体表面の水分)と反応することにより高分子量化し、架橋を生じることにより硬化物を形成して耐熱性を発現する。このような性質を有する反応性ホットメルト接着剤は、湿気硬化型ホットメルト接着剤と呼ばれる。そのため、ウレタンプレポリマーを主成分とする湿気硬化型ホットメルト接着剤は、加熱時でも良好な接着強度を示す傾向にある。
【0003】
近年、湿気硬化型ホットメルト接着剤は、衣類、おむつ等の素材である布、紙等にも使用されつつある。また、ウェアラブル製品が次々と開発されており、接着性に加えて、高い伸縮性を有する接着剤に対する需要が高まっている。このような用途に用いられる湿気硬化型ホットメルト接着剤としては、例えば、特許文献1、2に記載の接着剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-088097号公報
【文献】特開2017-020037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、伸縮性の点で充分でなく、未だ改善の余地がある。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、優れた伸縮性を有する硬化物を形成可能な湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面は、ポリオールに由来する構造単位及びポリイソシアネートに由来する構造単位を含む重合鎖を含み、イソシアネート基を2個以上有するウレタンプレポリマーと、ポリオールに由来する構造単位及びポリイソシアネートに由来する構造単位を含む重合鎖を含み、ひまし油モノオールで変性されているイソシアネート基を1個以上有するウレタンプレポリマーの変性体とを含有する、湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物を提供する。このような湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物によれば、優れた伸縮性を有する硬化物を形成することが可能となる。この理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは、ウレタンプレポリマーの変性体の分子末端であるひまし油モノオール由来する部分(残基)が可撓性及び潤滑性を有しており、分子末端が自由に運動できることが優れた伸縮性の発現に寄与していると考えている。
【0008】
ウレタンプレポリマーにおけるポリオール及びウレタンプレポリマーの変性体におけるポリオールは、非晶性ポリエステルポリオール及び結晶性ポリエステルポリオールを含んでいてもよい。
【0009】
湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物は、布及び紙から選択される複数の被着体を互いに貼り合わせるために用いられるものであってよい。ここで、被着体の組み合わせは、布及び布、紙及び紙、又は布及び紙であってよい。
【0010】
本発明は、さらに上述のウレタンプレポリマーと上述のウレタンプレポリマーの変性体とを含有する組成物の、布及び紙から選択される複数の被着体を互いに貼り合わせるために用いられる湿気硬化型ホットメルト接着剤としての応用又は布及び紙から選択される複数の被着体を互いに貼り合わせるために用いられる湿気硬化型ホットメルト接着剤の製造のための応用に関してもよい。
【0011】
本発明の他の一側面は、第1の被着体と、第2の被着体と、第1の被着体及び第2の被着体を互いに接着する接着剤層とを備え、接着剤層が、上述の湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物の硬化物を含有する、接着体を提供する。
【0012】
本発明の他の一側面は、上述の接着体を備え、第1の被着体及び第2の被着体が布である、衣類を提供する。衣類は、無縫製衣類であってよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、優れた伸縮性を有する硬化物を形成可能な湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物が提供される。また、本発明によれば、このような湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物を用いた接着体が提供される。さらに、本発明によれば、このような接着体を備える衣類が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、一実施形態の接着体を作製する工程を示す模式図であり、図1(a)、(b)、(c)、及び(d)は、各工程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0016】
本明細書において、「ポリオール」は、分子内に2個以上の水酸基を有する化合物を意味する。
【0017】
本明細書において、「ポリイソシアネート」は、分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物を意味する。
【0018】
[湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物]
一実施形態の湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物は、ポリオールに由来する構造単位及びポリイソシアネートに由来する構造単位を含む重合鎖を含み、イソシアネート基を2個以上有するウレタンプレポリマーと、ポリオールに由来する構造単位及びポリイソシアネートに由来する構造単位を含む重合鎖を含み、ひまし油モノオールで変性されているイソシアネート基を1個以上有するウレタンプレポリマーの変性体とを含有する。一般に、湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物は、化学反応によって高分子量化し、接着性等を発現し得るものである。ウレタンプレポリマーは、湿気と反応することによって高分子量化して硬化する(硬化物を形成する)ことから、湿気硬化型ホットメルト接着剤の主成分として作用し得る。一方で、ウレタンプレポリマーの変性体は、主に伸縮性の向上に作用していることが推測される。
【0019】
<ウレタンプレポリマー>
ウレタンプレポリマーは、ポリオール((a)成分)に由来する構造単位及びポリイソシアネート((b)成分)に由来する構造単位を含む重合鎖を含み、2個以上のイソシアネート基を有する。すなわち、ウレタンプレポリマーは、ポリオールと、ポリイソシアネートとの反応物であって、重合鎖の主鎖の末端基又は側鎖基として、2個以上のイソシアネート基を有している。なお、ウレタンプレポリマーは、後述のひまし油モノオールで変性されているイソシアネート基を有していない化合物を意味し、ウレタンプレポリマーは、後述のウレタンプレポリマーの変性体を包含しない概念である。本実施形態の接着剤組成物は、このようなウレタンプレポリマーを含有することによって、湿気硬化後に優れた接着強度を発現することができる。
【0020】
(a)成分:ポリオール
(a)成分は、水酸基を2個以上有する化合物であれば、特に制限なく用いることができる。(a)成分は、水酸基を2個有する化合物(ジオール)であってよい。ポリオールは、接着強度をより向上させる観点から、ポリエステルポリオールを含んでいてもよい。(a)成分は、ポリエーテルポリオールをさらに含んでいてもよい。このようなウレタンプレポリマーは、ポリエステルポリオールに由来する構造単位と、ポリエーテルポリオールに由来する構造単位と、ポリイソシアネートに由来する構造単位とを含む重合鎖を含み得る。
【0021】
重合鎖がポリエステルポリオールに由来する構造単位を含むことによって、接着剤組成物の固化時間及び粘度を調整することができる。ポリエステルポリオールは、多価アルコールとポリカルボン酸との重縮合反応によって生成する化合物を用いることができる。ポリエステルポリオールは、例えば、2~15個の炭素原子を有し、2又は3個の水酸基を有する多価アルコールと、2~14個の炭素原子(カルボキシル基中の炭素原子を含む)を有し、2~6個のカルボキシル基を有するポリカルボン酸との重縮合物であってもよい。
【0022】
ポリエステルポリオールは、ジオールとジカルボン酸とから生成する直鎖ポリエステルジオールであってもよく、トリオールとジカルボン酸とから生成する分岐ポリエステルトリオールであってもよい。また、分岐ポリエステルトリオールは、ジオールとトリカルボン酸との反応によって得ることもできる。
【0023】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ブタンジオールの各異性体、ペンタンジオールの各異性体、ヘキサンジオールの各異性体、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-メチルプロパンジオール、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族又は脂環族ジオール;4,4’-ジヒドロキシジフェニルプロパン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ピロカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン等の芳香族ジオールなどが挙げられる。多価アルコールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、好ましくは脂肪族ジオール、より好ましくは2~6個の炭素原子を有する脂肪族ジオールである。
【0024】
ポリカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸等の芳香族ポリカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、アコニット酸、1,2,3-プロパントリカルボン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジエン-1,2-ジカルボン酸等の脂肪族又は脂環族ポリカルボン酸などが挙げられる。ポリカルボン酸は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
上述したポリカルボン酸に代えて、カルボン酸無水物、カルボキシル基の一部がエステル化された化合物等のポリカルボン酸誘導体を用いることもできる。ポリカルボン酸誘導体としては、例えば、ドデシルマレイン酸、オクタデセニルマレイン酸等が挙げられる。
【0026】
ポリエステルポリオールは、非晶性ポリエステルポリオール((a-1)成分)であってもよく、結晶性ポリエステルポリオール((a-2)成分)であってもよい。ここで、非晶性及び結晶性の判断は25℃での状態で判断することができる。本明細書において、非晶性ポリエステルポリオールは、25℃で非結晶であるポリエステルポリオールを意味し、結晶性ポリエステルポリオールは、25℃で結晶であるポリエステルポリオールを意味する。ウレタンプレポリマーにおけるポリオール及び後述のウレタンプレポリマーの変性体におけるポリオールは、好ましくは(a-1)成分及び(a-2)成分の両方を含む。
【0027】
(a-1)成分の数平均分子量は、粘度及び接着力のバランスの観点から、1000~4000又は1500~2500であってよい。なお、本明細書において、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定され、標準ポリスチレン換算した値である。GPCの測定は、以下の条件で行うことができる。
【0028】
カラム:「Gelpack GLA130-S」、「Gelpack GLA150-S」及び「Gelpack GLA160-S」(日立化成株式会社製、HPLC用充填カラム)
溶離液:テトラヒドロフラン
流量:1.0mL/分
カラム温度:40℃
検出器:RI
【0029】
(a-1)成分は、市販品をそのまま用いることができる。(a-1)成分の市販品としては、例えば、アジピン酸及びイソフタル酸と、エチレングリコール及びネオペンチルグリコールとを主成分とする非晶性ポリエステルポリオール(水酸基数:2、数平均分子量:2000)、アゼライン酸及びイソフタル酸と、エチレングリコール及びネオペンチルグリコールとを主成分とする非晶性ポリエステルポリオール(水酸基数:2、数平均分子量:2000)等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
(a-1)成分の含有量は、(a)成分全量を基準として、5~90質量%、10~80質量%、又は30~70質量%であってよい。
【0031】
(a-2)成分の数平均分子量は、粘度及び接着力のバランスの観点から、3000~8000又は3000~6000であってよい。
【0032】
(a-2)成分は、市販品をそのまま用いることができる。(a-2)成分の市販品としては、例えば、アジピン酸と1,6ヘキサンジオールとを主成分とする結晶性ポリエステルポリオール(水酸基数:2、数平均分子量:5000)、アジピン酸とエチレングリコール及び1,4-ブタンジオールとを主成分とする結晶性ポリエステルポリオール(水酸基数:2、数平均分子量:2000)等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
(a-2)成分の含有量は、(a)成分全量を基準として、10~70質量%、20~60質量%、又は35~60質量%であってよい。
【0034】
(a)成分は、(a-1)成分及び(a-2)成分に加えて、ポリエーテルポリオール((a-3)成分)をさらに含んでいてもよい。(a-3)成分の数平均分子量は、粘度及び接着力のバランスの観点から、1000~4000又は1000~2000であってよい。
【0035】
(a-3)成分は、市販品をそのまま用いることができる。(a-3)成分の市販品としては、例えば、PEG4000S(三洋化成工業株式会社製)、EXCENOL2020(旭硝子株式会社製)等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
(a-3)成分の含有量は、(a)成分全量を基準として、1~40質量%、3~20質量%、又は3~10質量%であってよい。
【0037】
(a)成分は、(a-1)成分~(a-3)成分に加えて、(a-1)成分~(a-3)成分以外のその他のポリオールをさらに含んでいてもよい。その他のポリオールとしては、例えば、ポリアクリレートポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリシロキサンポリオール、ポリイソプレンポリオール、ポリオレフィンポリオール等が挙げられる。その他のポリオールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
(b)成分:ポリイソシアネート
(b)成分は、イソシアネート基を2個以上有する化合物であれば、特に制限なく用いることができる。(b)成分は、イソシアネート基を2個有する化合物(ジイソシアネート)であってよい。(b)成分としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネートなどが挙げられる。(b)成分は、反応性及び接着性の観点から、好ましくは芳香族ジイソシアネートを含み、より好ましくはジフェニルメタンジイソシアネートを含む。(b)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
ウレタンプレポリマーは、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させることで合成することができる。ウレタンプレポリマーは、ポリオールに由来する構造単位及びポリイソシアネートに由来する構造単位を含む重合鎖を含み、2個以上のイソシアネート基を有する。このようなウレタンプレポリマーを合成する場合、ポリオールの水酸基(OH)に対するポリイソシアネートのイソシアネート基(NCO)の当量比(ポリイソシアネートのイソシアネート基(NCO)当量/ポリオールの水酸基(OH)当量、NCO/OH)は、1.1以上であってよく、1.1~2.1であってよい。NCO/OHが1.1以上であると、ウレタンプレポリマーが2個以上のイソシアネート基を有するとともに、ウレタンプレポリマーの粘度の上昇を抑えることができ、作業性がより向上する傾向にある。NCO/OHが2.1以下であると、接着剤組成物の湿気硬化反応の際に発泡が生じ難くなり、接着強度の低下を抑制し易くなる傾向にある。
【0040】
ウレタンプレポリマーを合成する場合のポリオールとポリイソシアネートとを反応させる温度及び時間は、特に制限されないが、例えば、85~120℃、0.1分間~48時間であってよい。
【0041】
<ウレタンプレポリマーの変性体>
ウレタンプレポリマーの変性体は、ポリオールに由来する構造単位及びポリイソシアネートに由来する構造単位を含む重合鎖を含み、ひまし油モノオールで変性されているイソシアネート基を1個以上有する。すなわち、ウレタンプレポリマーの変性体は、ウレタンプレポリマーとひまし油モノオールとの反応物であって、重合鎖の主鎖の末端基又は側鎖基として、1個以上のひまし油モノオールで変性されているイソシアネート基を有している。本実施形態の接着剤組成物は、このようなウレタンプレポリマーの変性体を含有することによって、湿気硬化後に優れた伸縮性が発現し得る。例えば、ウレタンプレポリマーがジオールとジイソシアネートとの反応物である場合、重合鎖の主鎖の末端基として存在するイソシアネート基の数は2個である。このウレタンプレポリマーがひまし油モノオールで変性されると、少なくとも一方のイソシアネート基が変性されていることになるため、ウレタンプレポリマーの変性体は、湿気との反応点が少なくなり、ウレタンプレポリマーに比べて、高分子量化が抑制されることが推測される。
【0042】
ウレタンプレポリマーの変性体において、変性される前のウレタンプレポリマーを構成するポリオール及びポリイソシアネートの種類、含有量等は、上述のウレタンプレポリマーで例示したものと同様であってよい。ポリオールは、非晶性ポリエステルポリオール及び結晶性ポリエステルポリオールを含んでいてもよい。ウレタンプレポリマーの変性体における変性される前のウレタンプレポリマーは、本実施形態の湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物に含有されるウレタンプレポリマーと同一であっても異なっていてもよいが、合成の観点から、同一であってもよい。
【0043】
(c)成分:ひまし油モノオール
(c)成分は、ひまし油を加水分解して得られるひまし油脂肪酸(リシノール酸)に由来する基と1個の水酸基とを有するモノオールである。(c)成分は、例えば、リシノール酸のジグリセリドであってよい。(c)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
(c)成分は市販品をそのまま用いることができる。(c)成分の市販品としては、例えば、URIC H-31(伊藤製油株式会社製)等が挙げられる。
【0045】
ウレタンプレポリマーの変性体は、ウレタンプレポリマーと(c)成分とを反応させることで合成することができる。すなわち、ウレタンプレポリマーの変性体は、ウレタンプレポリマーと(c)成分との反応物であって、ウレタンプレポリマーにおける少なくとも1個のイソシアネート基が(c)成分の水酸基で変性されている化合物である。ウレタンプレポリマーの変性体を合成する場合のウレタンプレポリマーと(c)成分とを反応させる温度及び時間は、特に制限されないが、例えば、85~120℃、0.1分間~48時間であってよい。なお、当該反応においては、減圧脱泡を行ってもよい。
【0046】
湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物は、ウレタンプレポリマーの硬化を促進し、より高い接着強度を発現させる観点から、触媒をさらに含有していてもよい。触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチルチオンオクテート、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリオクチルアミン等が挙げられる。触媒の含有量は、湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物の全量を基準として、0.001~0.5質量%であってよい。
【0047】
湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物は、形成される接着剤層のゴム弾性を高め、耐衝撃性をより向上させる観点から、熱可塑性ポリマーをさらに含有していてもよい。熱可塑性ポリマーとしては、例えば、ポリウレタン、エチレン系共重合体、プロピレン系共重合体、塩化ビニル系共重合体、アクリル共重合体、スチレン-共役ジエンブロック共重合体等が挙げられる。熱可塑性ポリマーの含有量は、湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物の全量を基準として、0.1~50質量%であってよい。
【0048】
湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物は、形成される接着剤層により強固な接着性を付与する観点から、粘着付与樹脂をさらに含有していてもよい。粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン樹脂、ロジンエステル樹脂、水添ロジンエステル樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、水添テルペン樹脂、石油樹脂、水添石油樹脂、クマロン樹脂、ケトン樹脂、スチレン樹脂、変性スチレン樹脂、キシレン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。粘着付与樹脂の含有量は、湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物の全量を基準として、0.1~50質量%であってよい。
【0049】
湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物は、必要に応じて、その他の成分をさらに含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、酸化防止剤、顔料、紫外線吸収剤、界面活性剤、難燃剤、充填剤、光発色剤、熱発色防止剤、香料、イメージング剤、熱架橋剤等が挙げられる。その他の成分の含有量は、湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物の全量を基準として、0.001~10質量%であってよい。
【0050】
湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物は、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させ、ポリオールに由来する構造単位及びポリイソシアネートに由来する構造単位を含む重合鎖を含み、2個以上のイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得る工程と、得られたウレタンプレポリマーの一部とひまし油モノオールとを反応させ(得られたウレタンプレポリマーにひまし油モノオールを添加して、ウレタンプレポリマーの一部を変性させ)、ウレタンプレポリマー及びウレタンプレポリマーの変性体を含む混合物を得る工程とを備える方法によって製造することができる。このような製造方法の場合、ウレタンプレポリマーとウレタンプレポリマーの変性体の変性される前のウレタンプレポリマーとは同一であり得る。(c)成分の添加量は、ウレタンプレポリマーにおける(a)成分全量を基準として、0.5~5質量%であってよい。
【0051】
ウレタンプレポリマーの一部とひまし油モノオールとを反応させる(得られたウレタンプレポリマーにひまし油モノオールを添加して、ウレタンプレポリマーの一部を変性させる)場合、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基(NCO)に対する(c)成分の水酸基(OH)の当量比((c)成分の水酸基(OH)当量/ウレタンプレポリマーのイソシアネート基(NCO)当量、OH/NCO)は、例えば、0.5以下、0.3以下、又は0.15以下であってよく、例えば、0.01以上であってよい。OH/NCOが0.5以下であると、充分な接着強度が得られる傾向にある。
【0052】
湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物は、例えば、ウレタンプレポリマー及びウレタンプレポリマーの変性体をそれぞれ別々に合成する工程と、合成したウレタンプレポリマーと合成したウレタンプレポリマーとを混合する工程とを備える方法によっても製造することができる。このような製造方法の場合、ウレタンプレポリマーとウレタンプレポリマーの変性体の変性される前のウレタンプレポリマーとは同一である場合と異なる場合があり得る。
【0053】
湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物(硬化前の湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物)の120℃における粘度は、0.01Pa・s以上、0.05Pa・s以上、0.1Pa・s以上、0.5Pa・s以上、1Pa・s以上、又は2Pa・s以上であってよく、100Pa・s以下、80Pa・s以下、60Pa・s以下、50Pa・s以下、30Pa・s以下、又は20Pa・s以下であってよい。120℃における粘度が上述の範囲内にあることで、ディスペンサー等で塗布する際の作業性が良好になる。本明細書において、湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物(硬化前の湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物)の120℃における粘度は、実施例に記載の方法によって測定される値を意味する。
【0054】
湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物は、接着剤組成物に含有されるウレタンプレポリマーのイソシアネート基が空気中の水分又は被着体表面の水分と反応することから、例えば、温度23℃、50%RH(相対湿度)で24時間放置(養生)することによって高分子量化し、架橋を生じることにより接着剤組成物の硬化物が形成される。被着体同士は、形成される接着剤組成物の硬化物を介して接着される。
【0055】
湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物を用いて被着体同士を圧着し、接着剤組成物を硬化させて得られる接着体で測定される接着強度(湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物の硬化後の接着強度)は、1N/4mm以上、3N/4mm以上、又は5N/4mm以上であってよい。硬化後の接着強度の上限は、特に制限されないが、30N/4mm以下であってよい。なお、本明細書において、硬化後の接着強度は、実施例に記載の方法によって測定される値を意味する。すなわち、硬化後の接着強度は、湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物を用いて被着体同士を120℃で圧着することによって得られる積層体を、23℃、50%RH(相対湿度)で24時間放置(養生)し、得られる接着体における湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物の硬化後の接着強度を意味する。
【0056】
湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物の硬化後の引張弾性率(湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物の硬化物の引張弾性率)は、柔軟性の観点から、0.01MPa以上、0.05MPa以上、0.1MPa以上、0.5MPa以上、1MPa以上、5MPa以上、10MPa以上、又は15MPa以上であってよく、45MPa以下、40MPa以下、35MPa以下、又は30MPa以下であってよい。衣服又はウェアラブル製品に使用する場合、引張弾性率が上述の範囲内にあることで、装着した際の違和感をより少なくすることができる。なお、本明細書において、硬化後の引張弾性率は、実施例に記載の方法によって測定される値を意味する。すなわち、硬化後の引張弾性率は、湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物を、23℃、50%RH(相対湿度)で24時間放置(養生)することによって硬化させ、得られる硬化物の引張弾性率を意味する。
【0057】
湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物の硬化後の伸び率は、900%以上、1000%以上、又は1100%以上であってよい。なお、本明細書において、硬化後の伸び率は、実施例に記載の方法によって測定される値を意味する。すなわち、硬化後の引張弾性率は、湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物を、23℃、50%RH(相対湿度)で24時間放置(養生)することによって硬化させ、得られる硬化物の伸び率を意味する。
【0058】
湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物は、例えば、60~130℃で溶融してから、被着体に塗布することによって使用することができる。塗布方法は、特に制限されないが、例えば、バーコーター、ダイコーター、ロールコーター、スプレー等の塗布装置を用いる方法が挙げられる。小型部品等の狭小な部位へ塗布する場合には、ディスペンサーが適している。湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物の塗布パターンは、適宜設定することができるが、例えば、ドット状、直線状、ジグザグ状、面状、曲線状等の塗布パターンが挙げられる。
【0059】
被着体は、特に制限されないが、例えば、布又は紙であってよい。湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物は、布及び紙から選択される複数の被着体を互いに貼り合わせるために好適に用いることができる。ここで、被着体の組み合わせは、布及び布、紙及び紙、又は布及び紙であってよい。
【0060】
湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物は、フィルム状に形成して用いてもよい。このような接着剤フィルムは、例えば、湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物をPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等の支持フィルム上に塗布することによって形成することができる。湿気硬化型ホットメルト接着剤フィルムの厚さは、10μm以上、20μm以上、又は30μm以上であってよく、300μm以下、250μm以下、又は200μm以下であってよい。湿気硬化型ホットメルト接着剤フィルムが厚くなると、接着性を担保することができ、湿気硬化型ホットメルト接着剤フィルムが薄くなると、伸縮性をより確保し易い傾向にある。
【0061】
湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物は、衣服等の衣類(アパレル商品)、サポーター、カバン、財布、インテリア、各種カバー、ケース、ウェアラブル機器などに好適に用いることができる。
【0062】
[接着体]
一実施形態の接着体は、第1の被着体と、第2の被着体と、第1の被着体及び第2の被着体を互いに接着する接着剤層とを備え、接着剤層が、上述の湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物の硬化物を含有する。接着体を備える物品としては、例えば、衣類(特に、無縫製衣類)が挙げられる。
【0063】
第1の被着体及び第2の被着体は、上述の被着体で例示したものと同様のものを例示することができ。すなわち、第1の被着体及び第2の被着体は、布又は紙であってよい。第1の被着体及び第2の被着体の組み合わせは、布及び布、紙及び紙、又は布及び紙であってよい。接着体を備える物品が衣類である場合、第1の被着体及び第2の被着体は布であってよい。
【0064】
接着体は、例えば、上述の湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物を溶融させ、第1の被着体に塗布することによって接着剤層を形成する工程と、接着剤層上に第2の被着体を配置し、第2の被着体を圧着することによって積層体を得る工程と、得られた積層体における接着剤層を硬化させることによって接着体を得る工程とを備える方法によって製造することができる。接着剤層を硬化させる方法としては、例えば、空気中で放置(養生)(例えば、23℃で24時間)する方法等が挙げられる。接着体における接着剤層は、湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物の硬化物を含有し得る。
【0065】
第2の被着体を圧着する方法としては、例えば、加圧ロール等を用いて圧着する方法が挙げられる。
【0066】
図1は、一実施形態の接着体を作製する工程を示す模式図であり、図1(a)、(b)、(c)、及び(d)は、各工程を示す模式図である。以下では、図1を参照して、第1の被着体及び第2の被着体として、布である伸縮性生地を用いた接着体の作製工程について説明する。
【0067】
まず、伸縮性生地1を治具10に沿わせるように設置する(図1の(a)参照)。次いで、本実施形態の湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物を伸縮性生地1の所定部分に塗布して、接着剤層4を形成する(図1の(b)参照)。治具10の材質及び形状は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。接着剤組成物の塗布は、例えば、ディスペンサーを用いて行ってもよい。次に、伸縮性生地2を接着剤層4上に配置して、伸縮性生地2の上からロール等により圧力をかけながら、伸縮性生地1と伸縮性生地2とを接着剤層4を介して貼り合わせて、積層体20を得る(図1の(c)及び(d)参照)。その後、積層体20を放置(養生)することによって積層体20における接着剤層4を湿気硬化させ、伸縮性生地の接着体(伸縮性生地の衣類、より詳細には、伸縮性生地の無縫製衣類)を得ることができる。接着体における接着剤層4は、湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物の硬化物を含有する。
【0068】
図1の(b)において、離型性基材上に予め形成しておいた湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物接着剤フィルムを伸縮性生地1上に転写して、接着剤層4を形成してもよい。また、接着剤層を伸縮性生地2側に設けて、伸縮性生地1と貼り合わせてもよい。
【0069】
[衣類]
一実施形態の衣類は、上述の接着体を備える。この場合、第1の被着体及び第2の被着体は布である。衣類は、無縫製衣類であってよい。
【実施例
【0070】
以下、本発明について実施例を挙げてより具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0071】
(実施例1~4及び比較例1)
<湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物の調製>
表1に示す種類及び質量部のポリオール、ポリイソシアネート、及びひまし油モノオールを用いた。予め真空乾燥機によって脱水処理したポリオールに対して、ポリイソシアネートを、ポリオールの水酸基に対するポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比が((NCO)当量/(OH)当量)が表1で示す数値となるように加えて、均一になるまで混合した。これを110℃で1時間反応させることによって、ウレタンプレポリマーを得た。表1に示すとおり、(NCO)当量/(OH)当量が1より大きいことから、得られたウレタンプレポリマーは、ポリオールに由来する構造単位及びポリイソシアネートに由来する構造単位を含む重合鎖とその重合鎖に結合した2個以上のイソシアネート基とを有することが推測される。次いで、得られたウレタンプレポリマーに対して、表1で示す質量部のひまし油モノオールを加えて、さらに110℃で1時間減圧脱泡撹拌することによって、湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物を得た。湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物は、ひまし油モノオールの添加量から見て、イソシアネート基を2個以上有するウレタンプレポリマーとひまし油モノオールで変性されているイソシアネート基を1個以上有するウレタンプレポリマーの変性体とを含む混合物であることが推測される。
【0072】
表1に示す各成分の詳細は以下のとおりである。
・ポリオール(a)
(a-1-1)非晶性ポリエステルポリオール:アジピン酸及びイソフタル酸と、エチレングリコール及びネオペンチルグリコールとを主成分とする非晶性ポリエステルポリオール、水酸基数:2、数平均分子量:2000
(a-2-1)結晶性ポリエステルポリオール:アジピン酸とエチレングリコール及び1,4-ブタンジオールとを主成分とする結晶性ポリエステルポリオール、水酸基数:2、数平均分子量:2000
(a-2-2)結晶性ポリエステルポリオール:アジピン酸と1,6ヘキサンジオールとを主成分とする結晶性ポリエステルポリオール、水酸基数:2、数平均分子量:5000
(a-3-1)ポリエーテルポリオール:旭硝子株式会社製、商品名:EXCENOL2020、数平均分子量:2000、水酸基数:2
・ポリイソシアネート(b)
(b-1)ジフェニルメタンジイソシアネート:日本ポリウレタン工業株式会社製、商品名:ミリオネートMT、イソシアネート基数:2
・ひまし油モノオール(c)
(c-1)ひまし油モノオール:伊藤製油株式会社製、商品名:URIC H-31、水酸基数:1
【0073】
<硬化前の粘度>
実施例1~4及び比較例1の硬化前の湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物の粘度を、BH-HH型少量回転粘度計(東機産業株式会社製)を用い、ロータ4号、試料量15g、120℃の条件で測定した。結果を表1に示す。
【0074】
<硬化後の接着強度>
実施例1~4及び比較例1の湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物を120℃で溶融し、ディスペンサーによって伸縮性布地(ウレタンをナイロンで囲むようにして形成された糸を用いて編み込まれた布地、厚み:520μm)上に塗布した。その後、塗布した接着剤組成物上に、同じ伸縮性布地を配置し、60℃で接着剤組成物からなる層の厚みを100μmまで圧着することによって積層体を得た。上述の積層体を23℃、50%RHで24時間放置し、接着剤組成物からなる層を硬化させることによって接着体を作製した。接着体の接着強度を、引張試験機(株式会社島津製作所製、商品名:オートグラフAGS-X)を用いて、測定温度25℃、引張速度100mm/分の条件でT型剥離強度試験によって測定し、湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物の硬化後の接着強度を求めた。結果を表1に示す。
【0075】
<硬化後の引張弾性率及び硬化後の伸び率>
セパレータフィルムを2枚用意した。実施例1~4及び比較例1の湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物を120℃で溶融させてから、1枚のセパレータフィルム上に塗布し、もう1枚のセパレータフィルムで湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物を挟み込み、低圧プレス試験機(有限会社稲岡鋳造所製)を用いて、プレス温度100℃、プレス圧力400kPaの条件で100μmの厚さにプレスすることによって湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物からなる接着剤フィルムを得た。得られた接着剤フィルムを23℃、50%RHで24時間放置することによって硬化させ、接着剤フィルムの硬化物を得た。得られた接着剤フィルムの硬化物を、ダンベルカッター(株式会社ダンベル製)を用い、ダンベル1号形に打ち抜き、セパレータフィルムを剥離して、測定試料とした。引張弾性率及び伸び率は、オートグラフAGS-X(株式会社島津製作所製)を用いて、測定温度が23℃、引張速度が10mm/分、チャック間距離が40mmの条件で測定した。引張弾性率は、引張初期段階の応力-歪み曲線の傾きから求めた。伸び率は、以下の方法によって求めた。測定試料を引張速度100mm/分で破断まで伸長させた。測定前のサンプル長さ及び破断まで伸長させたときの長さを測定し、それぞれL1及びL2とした。測定したL1及びL2を以下の式に代入することによって算出した。それぞれの結果を表1に示す。
伸び率(%)=L2/L1×100
【0076】
【表1】
【0077】
ウレタンプレポリマーの変性体を含有する実施例1~4の湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物は、それを含有しない比較例1の湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物に比べて、引張弾性率が低く、伸び率が大きかった。以上の結果より、本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤組成物が、優れた伸縮性を有する硬化物を形成可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0078】
1,2…伸縮性生地、4…接着剤層、10…治具、20…積層体。
図1