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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/06 20060101AFI20240125BHJP
   G03G 21/16 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
B65H5/06 H
G03G21/16 147
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020004418
(22)【出願日】2020-01-15
(65)【公開番号】P2021075391
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2019201475
(32)【優先日】2019-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】志賀 雄基
(72)【発明者】
【氏名】若林 勇
(72)【発明者】
【氏名】山本 和也
(72)【発明者】
【氏名】福島 安秀
(72)【発明者】
【氏名】大谷 遼平
(72)【発明者】
【氏名】堀田 浩史
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-182571(JP,A)
【文献】特開2008-064891(JP,A)
【文献】特開2005-112509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/06
B65H 11/00
B65H 3/44
G03G 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ート搬送装置によって搬送されるシートに画像を形成する画像形成装置であって、
前記シート搬送装置は、
ローラ同士が離間不能に構成され、かつ、複数の搬送路のうちの第一搬送路中を搬送されるシートを挟持するローラ対と、
前記ローラ対を構成する一方のローラを他方のローラに向けて付勢する付勢手段と、
前記ローラ対にシートが挟持される前に、該シートの種類に応じて前記付勢手段による付勢力を切り替える付勢力切替手段とを有し、
前記付勢力切替手段は、前記複数の搬送路のうちの第二搬送路中をシートが搬送されるにあたって動作する可動部材の動作に連動して、前記付勢手段による付勢力を切り替えることを特徴とする画像形成装置
【請求項2】
項1に記載の画像形成装置において、
前記可動部材を動作させることにより、シート載置部に載置されたシートを前記第二搬送路へシート給送することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像形成装置において、
前記シート給送は、前記可動部材を上昇させ又は下降させ、シートを給送ローラに当接して行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1至3のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
前記可動部材は回転軸を回転させることにより動作し、
前記付勢力切替手段は、前記回転軸の回転に連動して前記付勢手段を支持する付勢支持部を移動させることにより、前記付勢手段による付勢力を切り替えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像形成装置において、
前記付勢力切替手段は、前記回転軸の回転により、該回転軸上のカムが前記付勢支持部を押圧する押圧状態を変化させることにより、該付勢支持部を第一移動位置及び第二移動位置へ移動させ、
前記付勢支持部は、前記第一移動位置及び前記第二移動位置のうちのいずれか一方の移動位置に位置するとき、前記カムとは別の部材によって移動が規制されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像形成装置において、
前記別の部材は、前記付勢支持部に対して面接触することにより該付勢支持部の移動を規制することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項5は6に記載の画像形成装置において、
前記別の部材は、前記付勢支持部を移動可能に支持する支持部材に取り付けられる取付部材であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項4至7のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
前記付勢力切替手段は、前記回転軸の回転により前記回転軸上の押圧部が、前記付勢支持部における前記付勢手段の支持位置からずれた位置で該付勢支持部を押圧して、該付勢支持部を移動させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項8に記載の画像形成装置において、
前記押圧部はカムであり、
前記シートの種類に応じた付勢力を得るときの前記回転軸の回転角度を含む所定の角度幅内で、前記カムの径が一定であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項4至9のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
前記回転軸の回転により前記回転軸上の押圧部が前記付勢支持部を押圧して該付勢支持部を移動させるときに該回転軸が受ける反力で該回転軸が撓むのを抑制する撓み抑制手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項1至10のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
前記第二搬送路は、手差し給送の搬送路であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
請求項1至11のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
前記第一搬送路中を搬送されるシートに搬送不良が発生したときに前記可動部材を動作させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
請求項1至12のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
前記第二搬送路中をシートが搬送されるにあたって動作する前記可動部材のシート搬送用動作中に最大負荷が生じる該可動部材の最大負荷動作位置と、前記付勢力切替手段により前記付勢手段による付勢力を切り替えるときの前記可動部材の付勢力切替動作中に最大負荷が生じる該可動部材の最大負荷動作位置とが、互いにずれていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項14】
請求項13に記載の画像形成装置において、
前記シート搬送用動作中に生じる負荷、及び、前記付勢力切替動作中に生じる負荷は、前記シート搬送用動作中に生じる前記最大負荷と、前記付勢力切替動作中に生じる前記最大負荷とのうちのいずれか大きい方よりも、常に小さいことを特徴とする画像形成装置。
【請求項15】
請求項14に記載の画像形成装置において、
前記シート搬送用動作中に生じる負荷、及び、前記付勢力切替動作中に生じる負荷は、前記シート搬送用動作中に生じる前記最大負荷と、前記付勢力切替動作中に生じる前記最大負荷とのうちのいずれか小さい方よりも、常に小さいことを特徴とする画像形成装置。
【請求項16】
請求項1至12のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
前記可動部材は、前記第二搬送路中をシートが搬送されるときに、回転軸を回転させて該回転軸上の第一カムによる押圧状態を変化させることにより動作し、
前記付勢力切替手段は、前記回転軸の回転により、該回転軸上の第二カムが前記付勢手段を支持する付勢支持部を押圧する押圧状態を変化させることにより、該付勢支持部を移動させて前記付勢手段による付勢力を切り替え、
前記第二搬送路中をシートが搬送されるときの前記可動部材のシート搬送用動作中に前記第一カムの最大押圧力が生じる該可動部材の最大押圧力回転位置と、前記付勢力切替手段により前記付勢手段による付勢力を切り替えるときの前記可動部材の付勢力切替動作中に前記第二カムの最大押圧力が生じる該可動部材の最大押圧力回転位置とが、互いにずれていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項17】
請求項16に記載の画像形成装置において、
前記シート搬送用動作中における前記可動部材の最大押圧力回転位置と、前記付勢力切替動作中における前記可動部材の最大押圧力回転位置とのずれ角が180°であることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート搬送装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送されるシートを挟持するローラ対と、前記ローラ対を構成する一方のローラを他方のローラに向けて付勢する付勢手段とを備えたシート搬送装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、搬送ローラに搬送コロが圧接されてニップを形成するローラ対を備えたシート搬送装置が開示されている。この装置では、ジャムが検知されると、ニップ解除機構のソレノイドによりアーム部材が動作して、搬送コロの軸が搬送ローラから離間する方向へ移動する。これにより、搬送ローラと搬送コロとの間のニップ圧が解除され、搬送ローラと搬送コロとの間に働くニップ圧(当接圧)が低い状態となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、ジャムが発生してローラ対に挟持されているシートを引き抜こうとする場合、ローラ対の当接圧が低い状態であれば、シートを破ることなく引き抜くことが可能である。ところが、従来のように、ジャム検知センサの検知結果に基づきローラ対のニップ解除手段であるソレノイドを動作させてローラ対を離間させる機構では、ジャム検知センサの誤検知や故障、またはソレノイドの故障により、ジャムが発生している状態であるにもかかわらずローラ対の当接圧を解除することが不可能になる場合が発生する。つまり、従来のようにジャムを検知してからローラ対の当接圧を解除する構成であると、シートを引き抜く際にシートが破れることがあった。
また、上記のようにソレノイドの作動によりローラ対を離間させる機構だと、ジャムが発生したと同時にソレノイドを動作不能(以下「即断」という。)するような構成を画像形成装置が備えている場合は、上記と同様にローラ対の当接圧を解除できないことによる問題が生じる。
更に、ソレノイドを使用しているためにローラ対を離間させる機構が複雑になり、装置の大型化やコストアップといった問題も生じる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、シート搬送装置によって搬送されるシートに画像を形成する画像形成装置であって、前記シート搬送装置は、ローラ同士が離間不能に構成され、かつ、複数の搬送路のうちの第一搬送路中を搬送されるシートを挟持するローラ対と、前記ローラ対を構成する一方のローラを他方のローラに向けて付勢する付勢手段と、前記ローラ対にシートが挟持される前に、該シートの種類に応じて前記付勢手段による付勢力を切り替える付勢力切替手段を有し、前記付勢力切替手段は、前記複数の搬送路のうちの第二搬送路中をシートが搬送されるにあたって動作する可動部材の動作に連動して、前記付勢手段による付勢力を切り替えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ジャム検知センサの誤検知や故障、離間機構の故障、画像形成装置の即断によりローラ対の当接圧を解除するできない場合であっても、ジャム発生後にローラ対の当接圧を弱めるという動作を必要としないので、当該ローラ対からシートを引き抜く際のシート破れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係るプリンタを示す概略模式図。
図2】同プリンタにおける感光体とその周囲の構成を拡大して示す拡大模式図。
図3】同プリンタにおける給紙カセットから記録シートの給紙を行う本体給紙部と、手差しトレイから記録シートの給紙を行う手差し給紙部との主要構成を示す斜視図。
図4】同本体給紙部及び同手差し給紙部における駆動系の構成を示す斜視図。
図5】同本体給紙部及び同手差し給紙部における給紙経路を説明するための説明図。
図6】同本体給紙部からの給紙搬送を行う場合の制御動作を示すフローチャート。
図7】同手差し給紙部から手差しトレイを取り外した状態の外観斜視図。
図8】同手差し給紙部の主要部を示す斜視図。
図9】同手差し給紙部からの給紙搬送を行う場合の制御動作を示すフローチャート。
図10】手差し底板が手差し給紙ローラから離間した状態を示す斜視図。
図11】(a)及び(b)は、手差しトレイが取り付けられる開閉ドアをプリンタ本体から開いた状態を示す斜視図。
図12】(a)及び(b)は、手差しトレイが取り付けられる開閉ドアをプリンタ本体に閉じた状態を示す斜視図。
図13】(a)及び(b)は、開閉ドアをプリンタ本体に閉じた状態で、手差しトレイを開いた状態を示す斜視図。
図14】(a)及び(b)は、中継従動ローラの軸受部を中継駆動ローラ側へ付勢する加圧スプリングの付勢力を切り替える付勢力切替手段を示す説明図。
図15】(a)及び(b)は、同付勢力切替手段の主要構成を示す斜視図。
図16】(a)は、中継従動ローラを支持する機構を示す正面図。(b)は、同機構の斜視図。
図17】(a)~(c)は、手差し底板カム軸上の押圧部が加圧板を押圧する箇所を示す説明図。
図18】(a)及び(b)は、手差し底板カム軸上の押圧部の形状を示す説明図。
図19】加圧板を押圧する押圧部を備えた手差し底板カム軸の撓みを抑制する撓み抑制手段を示す説明図。
図20】実施形態に係るプリンタにおける異常停止時の処理の流れを示すフローチャート。
図21】手差しトレイから記録シートの給紙を行うときの手差し底板カム軸の最大負荷動作位置と、中継ローラ対のニップ圧を切り替えるときの手差し底板カム軸の最大負荷動作位置とが一致している例を示すグラフ。
図22】手差しトレイから記録シートの給紙を行うときの手差し底板カム軸の最大負荷動作位置と、中継ローラ対のニップ圧を切り替えるときの手差し底板カム軸の最大負荷動作位置とがずれている一例を示すグラフ。
図23】手差しトレイから記録シートの給紙を行うときの手差し底板カム軸の最大負荷動作位置と、中継ローラ対のニップ圧を切り替えるときの手差し底板カム軸の最大負荷動作位置とがずれている他の例を示すグラフ。
図24】更にずれ量を大きくした他の例を示すグラフ。
図25】(a)及び(b)は、付勢力切替手段の主要構成を示す斜視図。
図26】手差し給紙部の支持フレームに取り付けられる取付部材に加圧板が当接する箇所を示す拡大図。
図27】中継ローラ対を斜め下方から見たときの外観斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式で画像を形成する電子写真プリンタ(以下、単にプリンタという)を例に挙げて説明する。
【0009】
まず、実施形態に係るプリンタの基本的な構成について説明する。
図1は、実施形態に係るプリンタを示す概略模式図である。
同図において、本プリンタは、潜像担持体としての感光体1や、本体筐体50に対して着脱可能に構成されたシート収容手段としての給紙カセット100などを備えている。給紙カセット100の内部には、複数の記録シートSをシート束の状態で収容している。
【0010】
給紙カセット100内の記録シートSは、本体給紙ローラ41の回転駆動によってカセット内から送り出され、本体給紙ローラ41と分離パッド48との分離ニップにおいて、最上位シートのみが分離されて送り出され、第一搬送路である本体給紙路R1内に至る。その後、記録シートSは上方の搬送ローラ対である中継ローラ対42の搬送ニップに挟み込まれて(挟持されて)、本体給紙路R1内を搬送方向の上流側から下流側へと搬送される。なお搬送ローラ対は少なくともどちらか一方がベルトの搬送体対であってもよい。
【0011】
本体給紙路R1の下流端は、共通搬送路R3に連通しており、共通搬送路R3には、レジストローラ対43が配設されている。共通搬送路R3には、レジストローラ対43の搬送方向上流側に、記録シートSを検知するレジストセンサ49が配置されている。記録シートSは、停止中のレジストローラ対43のニップに先端を突き当てた状態で搬送が一時中止される。その突き当ての際、記録シートSのスキューが補正される。なお、レジストセンサ49は、イニシャル動作や装置異常停止解除時の残シートの確認動作(ジャム検知動作)などにも利用される。
【0012】
レジストローラ対43は、記録シートSを転写ニップで感光体1の表面のトナー像に重ね合わせ得るタイミングで回転駆動を開始し、記録シートSを転写ニップに向けて送り出す。この際、中継ローラ対42が同時に回転駆動を開始して、一時中止していた記録シートSの搬送を再開する。
【0013】
本プリンタの本体筐体50には、手差しトレイ31、手差し給紙ローラ32、分離パッド33、手差し底板34、手差し底板カム35などを備えた手差し給送部としての手差し給紙部30が設けられている。手差し給紙部30の詳細は後述する。この手差し給紙部30の手差しトレイ31に手差しされた記録シートSは、手差し給紙ローラ32の回転駆動によって手差しトレイ31から第二搬送路である手差し給紙路R2へ送り出される。手差し給紙路R2の下流端は、本体給紙路R1の下流端とともに共通搬送路R3に合流している。手差し給紙ローラ32によって送り出された記録シートSは、手差し給紙路R2内において、手差し給紙ローラ32と分離パッド33との当接による分離ニップを経た後に、共通搬送路R3へ送り込まれ、レジストローラ対43へと搬送される。その後、給紙カセット100から送り出される記録シートSと同様に、レジストローラ対43を経た後に転写ニップに送られる。
【0014】
図2は、本プリンタにおける感光体1とその周囲の構成を拡大して示す拡大模式図である。
図中時計回り方向に回転駆動せしめられるドラム状の感光体1の周囲には、クリーニングブレード2、回収スクリュウ3、帯電ローラ4、帯電クリーニングローラ5、スクレーパ6、潜像書込装置7、現像装置8、転写ローラ10などが配設されている。導電性ゴムローラ部を具備する帯電ローラ4は、感光体1に接触しながら回転して帯電ニップを形成している。この帯電ローラ4には、帯電用電源から電圧が印加されている。これにより、帯電ニップにおいて、感光体1の表面と帯電ローラ4の表面との間に生じる帯電バイアスによって、感光体1の表面が一様に帯電せしめられる。
【0015】
潜像書込装置7は、LEDアレイを具備しており、感光体1の一様帯電した表面に対してLED光による光書き込みを行う。感光体1の一様帯電された表面部分のうち、書き込み光が照射された領域の電位が減衰し、感光体1の表面に静電潜像が形成される。
【0016】
静電潜像は、感光体1の回転に伴って、現像装置8に対向する現像領域を通過する。現像装置8は、循環搬送部や現像部を有しており、循環搬送部には、トナーと磁性キャリアとを含有する現像剤を収容している。循環搬送部は、現像ローラ8aに供給するための現像剤を搬送する第一スクリュウ8bや、第一スクリュウ8bの直下に位置する独立した空間で現像剤を搬送する第二スクリュウ8cを有している。更には、第二スクリュウ8cから第一スクリュウ8bへの現像剤の受け渡しを行うための傾斜スクリュウ8dも有している。現像ローラ8a、第一スクリュウ8b及び第二スクリュウ8cは、互いに平行な姿勢で配設されている。これに対し、傾斜スクリュウ8dは、それらから傾いた姿勢で配設されている。
【0017】
第一スクリュウ8bは、自らの回転駆動に伴って現像剤を同図の紙面に直交する方向における奥側から手前側に向けて搬送する。この際、自らに対向配設された現像ローラ8aに一部の現像剤を供給する。第一スクリュウ8bによって同図の紙面に直交する方向における手前側の端部付近まで搬送された現像剤は、第二スクリュウ8cの上に落とし込まれる。
【0018】
第二スクリュウ8cは、現像ローラ8aから使用済みの現像剤を受け取りながら、受け取った現像剤を自らの回転駆動に伴って同図の紙面に直交する方向における奥側から手前側に向けて搬送する。第二スクリュウ8cによって同図の紙面に直交する方向における手前側の端部付近まで搬送された現像剤は、傾斜スクリュウ8dに受け渡される。そして、傾斜スクリュウ8dの回転駆動に伴って、同図の紙面に直交する方向における手前側から奥側に向けて搬送された後、同方向における奥側の端部付近で、第一スクリュウ8bに受け渡される。
【0019】
現像ローラ8aは、筒状の非磁性部材からなる回転可能な現像スリーブと、現像スリーブに連れ回らないようにスリーブ内に固定されたマグネットローラとを具備している。そして、第一スクリュウ8bによって搬送されている現像剤の一部をマグネットローラの磁力によって現像スリーブの表面で汲み上げる。現像スリーブの表面に担持された現像剤は、現像スリーブの回転に伴って搬送され、現像スリーブとドクターブレードとの対向位置を通過する際に、その層厚が規制される。その後、感光体1に対向する現像領域で、感光体1の表面に摺擦しながら搬送される。
【0020】
現像スリーブには、トナーや感光体1の一様帯電電位(地肌部電位)と同極性の現像バイアスが印加されている。この現像バイアスの絶対値は、潜像電位の絶対値よりも大きく、かつ、地肌部電位の絶対値よりも小さくなっている。このため、現像領域においては、感光体1の静電潜像と現像スリーブとの間にトナーを現像スリーブ側から感光体1側へ静電移動させる現像ポテンシャルが作用する。この一方で、感光体1の地肌部と現像スリーブとの間には、トナーを感光体1側から現像スリーブ側へ静電移動させる地肌ポテンシャルが作用する。これにより、現像領域では、感光体1の静電潜像にトナーが選択的に付着して静電潜像が現像される。
【0021】
現像領域を通過した現像剤は、現像スリーブの回転に伴って、現像スリーブと第二スクリュウ8cとの対向領域に進入する。この対向領域では、マグネットローラに具備される複数の磁極のうち、互いに同極性である2つの磁極によって反発磁界が形成されている。対向領域に進入した現像剤は、反発磁界の作用によって現像スリーブ表面から離脱して、第二スクリュウ8cに回収される。
【0022】
傾斜スクリュウ8dによって搬送される現像剤は、現像ローラ8aから回収された現像剤を含有しており、その現像剤は現像領域で現像に寄与していることからトナー濃度が低下している。現像装置8は、傾斜スクリュウ8dによって搬送される現像剤のトナー濃度を検知するトナー濃度センサを具備している。CPU等の半導体回路からなる制御部51は、トナー濃度センサによる検知結果に基づいて、必要に応じて、傾斜スクリュウ8dによって搬送される現像剤にトナーを補給するための補給動作信号を出力する。
【0023】
現像装置8の上方には、トナーカートリッジ9が配設されている。このトナーカートリッジ9は、内部に収容しているトナーを、回転軸部材9aに固定されたアジテータ9bによって撹拌している。そして、トナー補給部材9cが制御部51から出力される補給動作信号に応じて回転駆動されることで、回転駆動量に応じた量のトナーを現像装置8の傾斜スクリュウ8dに補給する。
【0024】
現像によって感光体1上に形成されたトナー像は、感光体1の回転に伴って、感光体1と転写ローラ10とが当接する転写ニップに進入する。転写ローラ10には、感光体1の潜像電位とは逆極性の電圧が印加されており、これにより、転写ニップ内には転写バイアスが形成されている。
【0025】
上述したように、レジストローラ対43は、記録シートSを転写ニップ内で感光体1上のトナー像に重ね合わせうるタイミングで転写ニップに向けて送り出す。転写ニップでトナー像に密着せしめられた記録シートには、転写バイアスやニップ圧の作用により、感光体1上のトナー像が転写される。
【0026】
転写ニップを通過した後の感光体1の表面には、記録シートSに転写されなかった転写残トナーが付着している。転写残トナーは、感光体1に当接しているクリーニングブレード2によって感光体1の表面から掻き落とされた後、回収スクリュウ3により搬送され、廃トナーボトルへと送られる。
【0027】
クリーニングブレード2によってクリーニングされた感光体1の表面は、除電手段によって除電された後、帯電ローラ4によって再び一様に帯電せしめられる。感光体1の表面に当接している帯電ローラ4には、トナー添加剤や、クリーニングブレード2で除去し切れなかったトナーなどの異物が付着する。この異物は、帯電ローラ4に当接している帯電クリーニングローラ5に転移した後、帯電クリーニングローラ5に当接しているスクレーパ6によって帯電クリーニングローラ5の表面から掻き落とされる。掻き落とされた異物は、上述した回収スクリュウ3の上に落下する。
【0028】
図1において、感光体1と転写ローラ10とが当接する転写ニップを通過した記録シートSは、定着装置44に送られる。定着装置44は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ44aと、これに向けて押圧される加圧ローラ44bとの当接によって定着ニップを形成している。定着ニップに挟み込まれた記録シートSの表面には、加熱や加圧の作用によってトナー像が定着せしめられる。その後、定着装置44を通過した記録シートSは、排紙路R4を経た後、排紙ローラ対46の排紙ニップに挟み込まれる。
【0029】
本プリンタは、記録シートSの片面だけに画像を形成する片面モードと、記録シートSの両面に画像を形成する両面モードとを切り替えて実行することができる。片面モードの場合や、両面モードであって既に記録シートの両面に画像を形成している場合には、排紙ローラ対46が正転駆動を続けることで、排紙路R4内の記録シートSを機外に排出する。排出された記録シートSは、本体筐体50の上面に設けられたスタック部にスタックされる。
【0030】
一方、両面モードであって、かつ記録シートSの片面だけにしか画像を形成していない場合には、排紙ローラ対46の排紙ニップに記録シートSの後端部が進入したタイミングで、排紙ローラ対46が逆転駆動される。このとき、排紙路R4の下流端付近に配設された切換爪47が作動して、排紙路R4を塞ぐとともに、反転再送路R5の入口を開く。排紙ローラ対46の逆転駆動によって逆戻りを開始した記録シートSは、反転再送路R5内に送り込まれる。反転再送路R5の下流端は、共通搬送路R3のレジストローラ対43の上流側に合流しており、反転再送路R5内を搬送された後、共通搬送路R3のレジストローラ対43へと再送される。その後、転写ニップでもう一方の面にもトナー像が転写された後、定着装置44と排紙路R4と排紙ローラ対46とを経て機外に排出される。
【0031】
次に、記録シートSの給紙に関する構成及び動作について説明する。
図3は、給紙カセット100から記録シートSの給紙を行う本体給紙部と、手差しトレイ31から記録シートSの給紙を行う手差し給紙部30との主要構成を示す斜視図である。
図4は、本体給紙部及び手差し給紙部30における駆動系の構成を示す斜視図である。
【0032】
本体給紙部及び手差し給紙部30における駆動系は、図3および図4に示すように、単一のメインモータ61からの駆動力を、本体給紙ローラ41、中継ローラ対42、手差し給紙ローラ32及び手差し底板カム35に分配して駆動する構成となっている。具体的には、メインモータ61のモータ軸61aから出力される駆動力が、各アイドラギヤ等を介して、本体給紙ローラ41が設けられる給紙ローラ軸62、中継ローラ対42が設けられる中継ローラ軸63、手差し給紙ローラ32が設けられる手差し給紙ローラ軸64、及び、手差し底板カム35が設けられる手差し底板カム軸65に伝達されるように構成されている。
【0033】
給紙ローラ軸62、中継ローラ軸63、手差し給紙ローラ軸64及び手差し底板カム軸65は、それぞれ、駆動力の伝達をオン/オフするためのクラッチ62a,63a,64a,65aが設けられている。各クラッチへの通電をオンにすると、駆動力が伝達されて各軸62,63,64,65が回転駆動し、各クラッチへの通電をオフにすると、駆動力の伝達が遮断され、各軸62,63,64,65は回転駆動しない。なお、メインモータ61からの駆動力は、クラッチを介して、レジストローラ対43にも伝達されている。本実施形態では、メインモータ61の駆動力を用い、制御部51によって各クラッチのオン/オフ制御することにより、記録シートSの給紙搬送を実現している。
【0034】
図5は、本体給紙部及び手差し給紙部30における給紙経路を説明するための説明図である。
まず、本体給紙部からの給紙搬送を行う場合について、図6に示すフローチャートを参照して説明する。
本体給紙底板101は、本体給紙ローラ41に向けて上方へ付勢されているため、本体給紙ローラ41は本体給紙底板101上のシート束の状態で載置されている複数の記録シートSのうちの最上位の記録シートSに当接している。本体給紙部からの給紙搬送を開始する場合、制御部51は、まず、イニシャル動作が完了しているかどうかを確認し(S1)、イニシャル動作が完了していないとき(S1のNo)は、イニシャル動作を開始する(S2)。ここで、「イニシャル動作」とは、手差し底板34を最下位置の状態(図10図14(a)、図15(a)参照)にする動作である。そして、このイニシャル動作を完了した後、中継ローラ対42のニップ圧は低い状態に設定される。
【0035】
イニシャル動作の完了後(S1のYes)、制御部51は、メインモータ61をONにし(S3)、給紙される記録シートSが薄紙又は普通紙であるか否かを判断する(S4)。本実施形態では、本プリンタの操作パネルをユーザーが操作して、給紙カセット100に収容した記録シートSが、例えば、普通紙(強度の低いシート)、薄紙(強度の低いシート)、厚紙(強度の高いシート)等のように、プリンタでプリント可能なシートの種類の中からいずれかのシートの種類が選択され、その選択結果が制御部51の記憶部に記憶されている。本実施形態の処理ステップS4では、制御部51は、この記憶部の内容を参照して、給紙される記録シートSが薄紙又は普通紙であるか否かを判断する。
【0036】
なお、薄紙又は普通紙であるか否かの判断方法は、これに限らず、例えば、給紙カセット100に収容されている記録シートSや給紙カセット100から給紙された記録シートSの厚みを厚み検知センサによって検知し、その検知結果から判断するようにしてもよい。
【0037】
また、本実施形態では、判断対象である記録シートSの種類が、記録シートSの厚みの違いによるものであるが、例えば、記録シートSの材質の違いや大きさの違いなど、記録シートSの強度や記録シートSの搬送負荷の違いに影響を及ぼす特性の違いによるものであってもよい。
【0038】
本実施形態では、薄紙又は普通紙であると判断した場合(S4のYes)、制御部51は、上述のイニシャル動作により中継ローラ対42のニップ圧は既に低い状態となっているため、このニップ圧が低い状態を維持する。
【0039】
一方、薄紙又は普通紙でないと判断した場合(厚紙であると判断した場合)には(S4のNo)、制御部51は、中継ローラ対42のニップ圧を高める処理動作を実行する。具体的には、イニシャル動作時には、中継ローラ対42のニップ圧は低い状態となっているので、制御部51は、手差し底板カムクラッチ65aをオンにして(S5)、手差し底板カム軸65を図5において時計回りに回転駆動させ、フィラーセンサ65cがオフになったら(S6のYes)(図8図14(b)、図15(b)参照)、手差し底板カムクラッチ65aをオフにして(S7)、手差し底板カム軸65の回転を停止させる。
【0040】
中継ローラ対42を構成する他方の中継従動ローラ42bは、図5に示すように、そのローラ軸66を軸受けする軸受部37aが、圧縮バネである加圧スプリング37bによって付勢され、その付勢力により中継駆動ローラ42aに当接している。上述した回転位置で手差し底板カム軸65が停止した状態では、加圧スプリング37bの縮み量が多くなり、中継ローラ対42のローラのニップ圧は高い状態に切り替えられる。なお、中継ローラ対42のニップ圧を切り替える構成については、後述する。
【0041】
その後、制御部51は、本体給紙クラッチ62a及び中継クラッチ63aをオンにする(S8)。これにより、本体給紙ローラ41が回転駆動し、給紙カセット100内の最上位の記録シートSが分離パッド48側へ送り出される。このとき、最上位の記録シートSと一緒に上から2番目以降の記録シートが送り出されても、2番目以降の記録シートは分離パッド48との摩擦力によって搬送が阻害され、最上位の記録シートSのみが分離パッド48を通過し得る。なお、本体給紙部からの給紙搬送中は、手差し給紙部30からの給紙搬送は行われないので、手差し給紙クラッチ64aや手差し底板カムクラッチ65aはオフの状態のままである。
【0042】
その後、送り出された記録シートSは、図5中符号R1で示す本体給紙路に沿って搬送される。このとき、中継ローラ対42を構成する一方の中継駆動ローラ42aがメインモータ61からの駆動力によって回転駆動している。また、中継ローラ対42を構成する他方の中継従動ローラ42bは、薄紙又は普通紙時には低い付勢力で、厚紙時には高い付勢力で、そのローラ軸66を軸受けする軸受部37aが加圧スプリング37bによって付勢され、その付勢力により中継駆動ローラ42aに当接している。これにより、中継従動ローラ42bは、中継駆動ローラ42aに連れまわり回転する。本体給紙路R1を搬送される記録シートSは、中継駆動ローラ42aと中継従動ローラ42bとのニップに挟まれた状態(挟持された状態)で、搬送される。
【0043】
レジストセンサ49に記録シートSの先端が到達してレジストセンサ49がオンになると(S9のYes)、所定時間経過後(記録シートSの先端がレジストローラ対43に到達する前)(例えばレジストセンサ49がオンになってから100ms後)、本体給紙クラッチ62a及び中継クラッチ63aをオフにして(S10)、記録シートSの搬送を一時中止する。これにより、記録シートSの先端が停止中のレジストローラ対43のニップに突き当たった状態となって、記録シートSのスキューが補正される。
【0044】
制御部51は、記録シートSを転写ニップで感光体1の表面のトナー像に重ね合わせ得るタイミングで(例えば本体給紙クラッチ62a及び中継クラッチ63aをオフにしてから200ms後)、中継クラッチ63a及びレジストクラッチをオンにする(S11)。これにより、レジストローラ対43及び中継ローラ対42が回転駆動を開始し、記録シートSが転写ニップに向けて搬送される。このとき、本体給紙クラッチ62aはオフのままなので、本体給紙ローラ41は回転駆動しない。記録シートSの後端側がまだ本体給紙ローラ41と分離パッド48に挟持されている状態でも、本体給紙ローラ41はレジストローラ対43及び中継ローラ対42の搬送力によって搬送される記録シートSに連れまわる形で回転し、搬送を阻害することはない。そして、レジストセンサ49に記録シートSの後端が到達してレジストセンサ49がオフになると(S12のYes)、中継クラッチ63aをオフにして(S13)、中継ローラ対42の回転駆動を停止する。
【0045】
次に、手差し給紙部30からの給紙搬送を行う場合について、図7図9を参照して説明する。
図7は、手差し給紙部30から手差しトレイ31を取り外した状態の外観斜視図である。
図8は、手差し給紙部30の主要部を示す斜視図である。
図9は、手差し給紙部30からの給紙搬送を行う場合の制御動作を示すフローチャートである。
【0046】
手差し底板34は、底板スプリング36によって手差し給紙ローラ32に向けて上方へ付勢されている。また、手差し底板34には、図8に示すように、手差し底板カム35に対応する箇所に底板ガイド部34aが設けられている。手差し底板カム軸65が回転して手差し底板カム35が底板ガイド部34aに当接してこれを押し下げると(図10参照)、手差し底板34は、底板スプリング36の付勢力に抗して下降し、手差し給紙ローラ32から離れる。
【0047】
手差し給紙部30からの給紙搬送を開始する場合、制御部51は、まず、イニシャル動作が完了しているかどうかを確認し(S21)、イニシャル動作が完了していないとき(S21のNo)は、イニシャル動作を開始する(S22)。イニシャル動作の完了後(S21のYes)、制御部51は、メインモータ61をONにした後(S23)、まず、手差し底板カムクラッチ65aをオンにする(S24)。これにより、手差し底板カム軸65が回転駆動し、手差し底板カム35が底板ガイド部34aに当接している状態(手差し底板34が手差し給紙ローラ32から離間している状態)から(図10参照)、手差し底板カム35が底板ガイド部34aに当接しない状態(図5図8参照)へと遷移する。
【0048】
具体的には、手差し底板カム軸65が回転駆動すると、手差し底板カム35と一体形成されている突起板35aが、カム検知フィラー65bを押し下げる押し下げレバー65dに当接して押し下げる位置から(図10参照)、押し下げレバー65dに当接しない位置へと回転する。これにより、カム検知フィラー65bは、所定の付勢力によって上昇し、フィラーセンサ65cを遮る状態(図8参照)に遷移する。なお、カム検知フィラー65bがフィラーセンサ65cを遮る状態(図8参照)は、フィラーセンサ65cがオフの状態であり、カム検知フィラー65bがフィラーセンサ65cを遮らない状態(図10参照)は、フィラーセンサ65cがオフの状態である。
【0049】
そして、制御部51は、フィラーセンサ65cがオフになると(S25のYes)、手差し底板カムクラッチ65aをオフにする(S26)。これにより、手差し底板カム35が底板ガイド部34aに当接しない状態で手差し底板カム軸65の回転が停止し、手差し底板34が底板スプリング36の付勢力により手差し給紙ローラ32に向けて付勢された状態になる。その結果、手差し給紙ローラ32は、手差しトレイ31及び手差し底板34上のシート束の状態で載置されている複数の記録シートSのうちの最上位の記録シートSに当接した状態になる。
【0050】
続いて、制御部51は、手差し給紙クラッチ64aをオンにする(S27)。これにより、手差し給紙ローラ32が回転駆動し、手差し底板34上の最上位の記録シートSが分離パッド33側へ送り出される。このとき、最上位の記録シートSと一緒に上から2番目以降の記録シートが送り出されても、2番目以降の記録シートは分離パッド33との摩擦力によって搬送が阻害され、最上位の記録シートSのみが分離パッド33を通過し得る。
【0051】
なお、手差し給紙部30からの給紙搬送中は、本体給紙部からの給紙搬送は行われないので、本体給紙クラッチ62a及び中継クラッチ63aはオフの状態のままである。
【0052】
その後、送り出された記録シートSは、図5中符号R2で示す手差し給紙経路に沿って搬送される。そして、レジストセンサ49に記録シートSの先端が到達してレジストセンサ49がオンになると(S28のYes)、所定時間経過後(記録シートSの先端がレジストローラ対43に到達する前)、手差し給紙クラッチ64aをオフにして(S29)、記録シートSの搬送を一時中止する。これにより、記録シートSの先端が停止中のレジストローラ対43のニップに突き当たった状態となって、記録シートSのスキューが補正される。
【0053】
制御部51は、記録シートSを転写ニップで感光体1の表面のトナー像に重ね合わせ得るタイミングで、レジストクラッチをオンにする(S30)。これにより、レジストローラ対43が回転駆動を開始し、記録シートSが転写ニップに向けて搬送される。
【0054】
本実施形態における手差し給紙部30は、図7に示すように、中継ローラ対42を構成する一方のローラである中継従動ローラ42bを手差し給紙機構と一体で支持したユニット構造であり、当該ユニットが本体筐体50にネジ止めされて固定される。一方、中継ローラ対42を構成する他方のローラである中継駆動ローラ42aは、本体筐体50の支持されている。そのため、本実施形態において、当該ユニットに設けられる中継従動ローラ42bと、本体筐体50に設けられる中継駆動ローラ42aとが、互いに離間不能に構成されている。
【0055】
この点について、より詳しく説明する。
図11(a)及び(b)は、手差しトレイ31が取り付けられる開閉ドア39をプリンタ本体から開いた状態を示す斜視図である。
図12(a)及び(b)は、手差しトレイ31が取り付けられる開閉ドア39をプリンタ本体に閉じた状態を示す斜視図である。
図13(a)及び(b)は、開閉ドア39をプリンタ本体に閉じた状態で、手差しトレイ31を開いた状態を示す斜視図である。
【0056】
上述したように、中継従動ローラ42bを支持する手差し給紙機構は本体筐体50にネジ止めされて固定されている。開閉ドア39はヒンジ機構を介して手差し給紙機構に対して開閉可能に取り付けられている。また、手差しトレイ31は、ヒンジ機構を介して開閉ドア39に対して開閉可能に取り付けられている。本実施形態においては、開閉ドア39を開くことで、感光体1を含むプロセスカートリッジを着脱したり、ジャムした記録シートSを取り出したりすることができる。
【0057】
ただし、中継従動ローラ42bは、この開閉ドア39ではなく、本体筐体50にネジ止めされた手差し給紙機構に支持されているため、中継従動ローラ42bと本体筐体50に設けられる中継駆動ローラ42aとが互いに離間不能に構成されている。
【0058】
ここで、本プリンタにおいてジャムが発生した場合など、記録シートSの搬送を停止させるべき装置異常(以下、ジャム発生による装置異常の例で説明する。)が発生した場合、装置内に残った記録シートSを除去しなければならない。具体的には、本実施形態では、給紙カセット100を記録シートSの給紙方向または給紙方向と交差する方向に装置から取り外し、残った記録シートを本体給紙部から取り出す(引き出す)。このとき、強度の低い薄紙や普通紙等の記録シートSを引き出す時に破れてしまうのを抑制するためには、記録シートSを挟持している箇所(中継ローラ対42の搬送ニップや、手差し給紙ローラ32と手差し底板34との挟持箇所など)開放する(離間させる)ことが好ましい。
【0059】
中継ローラ対42のローラ間を互いに離間させる構成としては、例えば、プリンタの本体筐体50に開閉可能に取り付けられる開閉ドアに中継従動ローラ42bを支持させる構成がある。この構成であれば、当該開閉ドアを開けることで、中継ローラ対42を離間させることができる。しかしながら、上述したように、中継ローラ対42を構成する中継駆動ローラ42aと中継従動ローラ42bとが互いに離間不能に構成されているため、中継ローラ対42を開放する(離間させる)ことできない。
【0060】
そこで、本実施形態においては、本体給紙の際にジャムが発生した時に、中継ローラ対42に挟持されている記録シートの取り出す(引き出す)際、強度の低い記録シートSが破れてしまうのを抑制するために、破れやすい強度の低い種類(薄紙又は普通紙)の記録シートSの搬送時には、中継ローラ対42のニップ圧(当接圧)を低いニップ圧に切り替えている。これにより、薄紙又は普通紙の記録シートSの搬送時にジャムが発生した場合でも、中継ローラ対42のニップ圧が低いため、そのままの状態で当該中継ローラ対42から記録シートSを引き抜いても、シートが破れることを抑制できる。
【0061】
このとき、中継ローラ対42のニップ圧が低いため、記録シートSの搬送負荷(搬送ガイドとの摺擦、ローラ対へのシート先端進入時の搬送抵抗など)が大きいと、中継ローラ対42の搬送ニップで記録シートSがスリップするなどして、適切な搬送ができない搬送不良を引き起こすおそれがある。しかしながら、薄紙又は普通紙の記録シートSは、通常、厚みが比較的薄く、コシも比較的弱いので、搬送負荷が小さく、中継ローラ対42のニップ圧が低い状態であっても搬送不良は発生しにくい。したがって、薄紙又は普通紙の記録シートSであれば、中継ローラ対42のニップ圧が低い状態でも、安定した搬送が実現される。
【0062】
一方、破れにくい強度の高い種類(厚紙)の記録シートSの搬送時には、中継ローラ対42のニップ圧(当接圧)として、高いニップ圧を用いる。厚紙の記録シートSの場合、中継ローラ対42のニップ圧が低いと搬送不良を引き起こしやすいが、本実施形態においては、中継ローラ対42を高いニップ圧の状態にして、厚紙の記録シートSを搬送するため、搬送不良が発生しにくく、安定した搬送が実現される。また、ジャムが発生した場合でも、厚紙の記録シートSであれば、中継ローラ対42のニップ圧が高い状態のままでも、当該中継ローラ対42から記録シートSを引き抜く際に記録シートSが破れる事態も生じにくい。
【0063】
なお、従来のように、ジャムが発生した後に中継ローラ対42のニップ圧(当接圧)を弱めるという動作を採用した場合、その動作がジャム発生後に適切に実行されるのであれば、シート引き抜き時に強度の低い記録シートSが破れてしまうことを抑制することができる。しかしながら、ジャムの発生タイミングやジャム処理動作を実現する構成内容等によっては、ジャム発生後に中継ローラ対42のニップ圧を弱める動作を実行できない場合がある。例えば、上述したジャム検知センサ(レジストセンサ49)の誤検知や故障、または画像形成装置の即断が発生した場合は、メインモータ61やクラッチ62a,63a,64a,65aの駆動源を正常に駆動させることができず、シート引き抜き時の中継ローラ対42のニップ圧を低くすることができない。
【0064】
これに対し、本実施形態では、薄紙又は普通紙の記録シートSの場合、ジャムが発生する前から、詳しくは、中継ローラ対42に記録シートSが挟持される前から、中継従動ローラ42bを中継駆動ローラ42aに向けて付勢する加圧スプリング37bの付勢力を弱い付勢力へ切り替えて中継ローラ対42のニップ圧を弱めておく(図6のS1-4参照)。そのため、ジャム発生後には中継ローラ対42のニップ圧を弱める動作を実行する必要がないので、ジャムの発生タイミングやジャム処理動作を実現する構成内容等に依存せずに、ジャム発生時に中継ローラ対42のニップ圧が弱い状態で薄紙又は普通紙の記録シートSを引き抜くことができる。
【0065】
次に、中継ローラ対42のニップ圧を切り替える構成について説明する。
本実施形態においては、本体給紙路R1における中継ローラ対42のニップ圧を切り替える動作が、手差し給紙路R2のシート搬送に用いられる可動部材の動作に連動して行われる。本実施形態においては、本体給紙路R1を用いて記録シートSを搬送するときには、手差し給紙路R2がシート搬送に用いられることはない。したがって、本体給紙路R1を用いて記録シートSを搬送する際、手差し給紙路R2のシート搬送に用いられる可動部材を動作させても、支障が出ることはない。
【0066】
本実施形態における手差し給紙時のシート給送手段は、手差し底板34上の記録シートSを手差し給紙ローラ32に押し当てて送り出すものである。したがって、本実施形態では、手差し底板34を可動部材とし、この手差し底板34の動作に連動して中継ローラ対42のニップ圧を切り替えるようにしている。
【0067】
詳しくは、手差し底板34を動作させる動作手段は、上述したように、メインモータ61の駆動力によって手差し底板カム軸65を回転させる。そして、手差し底板カム35が底板スプリング36の付勢力に抗して底板ガイド部34aを押し下げる回転位置に手差し底板カム軸65が位置するときは、手差し底板34が下降して手差し給紙ローラ32から離れる(図10図15(a)参照)。一方、手差し底板カム35が底板ガイド部34aから離れる回転位置に手差し底板カム軸65が位置するときは、手差し底板34が底板スプリング36の付勢力によって上昇して手差し給紙ローラ32に接触する(図8図15(b)参照)。
【0068】
本実施形態の付勢力切替手段は、中継ローラ対42の一方のローラである中継従動ローラ42bの軸受部37aを中継駆動ローラ42a側へ付勢する加圧スプリング37bを支持している付勢支持部としての加圧板37dを手差し底板カム軸65の回転に伴って移動させることによって、加圧スプリング37bの付勢力を切り替え、中継ローラ対42のニップ圧を変更する。尚、加圧板37dにはスライダが締結されており、スライダが手差し給紙部30の支持フレーム38に設けられるガイド部に沿って移動するように構成され、これにより、中継駆動ローラ42aに対して接離する方向に沿って直動する構成となっている。
【0069】
図14(a)及び(b)は、本実施形態において、中継従動ローラ42bの軸受部37aを中継駆動ローラ42a側へ付勢する加圧スプリング37bの付勢力を切り替える付勢力切替手段を示す説明図である。
図15(a)及び(b)は、同付勢力切替手段の主要構成を示す斜視図である。
図16(a)及び(b)は、中継従動ローラ42bを支持する機構を示す説明図である。
【0070】
中継従動ローラ42bのローラ軸66は、図16(a)及び(b)に示すように、手差し給紙部30の支持フレーム38に設けられた突起38aに中継従動ローラ42bの軸受部37aに設けられたガイド溝37a1が嵌合することで、中継従動ローラ42bが中継駆動ローラ42aに対して接離する方向へスライド可能に保持されている。また、中継従動ローラ42bの軸受部37aは、上述したように、加圧スプリング37bによって、中継従動ローラ42bが中継駆動ローラ42a側へ付勢されている。
【0071】
加圧スプリング37bは、その一端が中継従動ローラ42bの軸受部37aに接触し、他端が加圧板37dに接触するように配置される圧縮ばねである。加圧板37dに支持された状態の加圧スプリング37bの付勢力によって、中継従動ローラ42bの軸受部37aが中継駆動ローラ42a側へ付勢される。加圧スプリング37bが接触する加圧板37dのスプリング接触面とは反対側の裏面には、加圧板37dを中継駆動ローラ42a側へ押圧可能な押圧部65eが形成されている。この押圧部65eは、手差し底板カム軸65の回転に伴って回転する。
【0072】
手差し底板カム軸65の回転位置が手差し底板34を下降させる位置(手差し底板34が手差し給紙ローラ32から離間する位置)にあるとき、手差し底板カム軸65上の押圧部65eは、図14(a)及び図15(a)に示すように非押圧位置に位置する。このとき、加圧板37dは加圧スプリング37bの付勢力によって中継駆動ローラ42aから離れる方向へ移動する。これにより、加圧スプリング37bが伸びて、その縮み量が少なくなり、加圧スプリング37bの付勢力が低くなる。その結果、中継従動ローラ42bを中継駆動ローラ42a側へ付勢する付勢力が低くなるので、中継ローラ対42のニップ圧が弱まる。なお、手差し底板34は手差し給紙ローラ32から離間したままの状態となるため、手差し給紙はできないが、本体給紙時には手差し給紙がされることはないので、何ら支障はない。
【0073】
一方、手差し底板カム軸65の回転位置が手差し底板34を上昇させる位置(手差し底板34が手差し給紙ローラ32に接触する位置)にあるとき、手差し底板カム軸65上の押圧部65eは、図14(b)及び図15(b)に示すように押圧位置に位置する。このとき、加圧板37dは加圧スプリング37bの付勢力に抗して中継駆動ローラ42aへ近づく方向へ移動する。これにより、加圧スプリング37bが縮み、その縮み量が多くなるので、加圧スプリング37bの付勢力が高くなる。その結果、中継従動ローラ42bを中継駆動ローラ42a側へ付勢する付勢力が高くなるので、中継ローラ対42のニップ圧が強まる。なお、手差し底板34は手差し給紙ローラ32に接触したままの状態となるため、手差し給紙はできないが、本体給紙時には手差し給紙がされることはないので、何ら支障はない。
【0074】
本実施形態によれば、手差し給紙路R2のシート搬送に用いられる可動部材としての手差し底板34の動作を利用して本体給紙路R1の中継ローラ対42のニップ圧(加圧スプリング37bの付勢力)を切り替えることができる。これにより、中継ローラ対42のニップ圧を切り替えるための専用の動作手段を設けない簡易な構成によって、当該切り替えを実現することができる。
【0075】
図17(a)~(c)は、手差し底板カム軸65上の押圧部65eが加圧板37dを押圧する箇所を示す説明図である。
手差し底板カム軸65上の押圧部65eは、図17(a)に示すように、加圧板37dにおける加圧スプリング37bの支持位置Aと同じ位置B’で、加圧スプリング37bの付勢方向に沿って加圧板37dを押圧してもよい。この場合、押圧部65eによる加圧板37dの押し込み量と加圧スプリング37bの縮み量とが略一致するため、付勢力の設定が容易となる。
【0076】
しかしながら、本実施形態においては、図17(a)に示すような配置が装置レイアウトの制約によって困難であるため、加圧板37dにおける加圧スプリング37bの支持位置Aからずれた位置Bで、加圧板37dを加圧スプリング37bの付勢方向に沿って押圧する。この場合、図17(b)に示すように加圧板37dが傾いてしまい、押圧部65eによる加圧板37dの押し込み量よりも加圧スプリング37bの縮み量が少なくなり、実際の付勢力が所望の付勢力よりも不足してしまう。
【0077】
そのため、本実施形態では、図17(c)に示すように、押圧部65eによる加圧板37dの押し込み量が加圧スプリング37bの目標縮み量よりも多くなるように設定している。これにより、加圧板37dにおける加圧スプリング37bの支持位置Aからずれた位置Bで加圧板37dを押圧する場合でも、加圧スプリング37bを目標の縮み量まで縮ませることができ、所望の付勢力を得ることができる。
【0078】
図18(a)及び(b)は、手差し底板カム軸65上の押圧部65eの形状を示す説明図である。
本実施形態において、押圧部65eはカムである。本実施形態では、部品の公差や制御上の停止時間の誤差により、手差し底板カム軸65の押圧部65eの回転位置(位相)がずれた場合でも、押圧位置の目標回転角度を含む所定の角度幅α内で、カムの外径が一定となるように、押圧部65eが構成されている。これにより、例えば、図18(a)に示す回転位置で停止した場合と、図18(b)に示す回転位置で停止した場合とで、押圧部65eによる加圧板37dの押し込み量は同じになる。その結果、部品の公差や制御上の停止時間の誤差により押圧位置における回転位置がずれた場合でも、目標の付勢力(中継ローラ対のニップ圧)を得ることができる。
【0079】
図19は、加圧板37dを押圧する押圧部65eを備えた手差し底板カム軸65の撓みを抑制する撓み抑制手段を示す説明図である。
加圧板37dには、中継従動ローラ42bを中継駆動ローラ42a側へ付勢する加圧スプリング37bの付勢力の反力が作用するため、その反力が加圧板37dに当接する押圧部65eを介して手差し底板カム軸65に伝わる。これにより、手差し底板カム軸65が撓んでしまうと、押圧部65eによる加圧板37dの押し込み量が少なくなってしまい、目標の付勢力(中継ローラ対のニップ圧)を得ることができない。
【0080】
そこで、本実施形態では、手差し底板カム軸65の撓みを抑制する撓み抑制手段として、手差し底板カム軸65に当接して撓みを抑制するための接触部37eが設けられている。この接触部37eは、手差し給紙部30の支持フレーム38の一部であり、本実施形態では2つの接触部37eが設けられているが、1つでも、3つ以上でもよい。
【0081】
次に、本プリンタにおける異常停止(ジャム発生)時の処理フローについて説明する。
図20は、本プリンタにおける異常停止時の処理の流れを示すフローチャートである。
本プリンタにおいて、搬送不良(ジャム)など、記録シートSの搬送を停止させるべき装置異常が検知されると(S41)、制御部51は、まず、本体給紙クラッチ62a及び中継クラッチ63a並びに手差し給紙クラッチ64aをオフにする(S42)。その後、手差し給紙中であるかどうかを制御部51が制御情報から判断する(S43)。
【0082】
手差し給紙中である場合(S43のYes)、本実施形態では、記録シートSが手差し給紙ローラ32と手差し底板34との間に挟持されている状態、つまり手差し底板34が手差し給紙ローラ32に当接した状態(図8図14(b)参照)であるので、手差し給紙ローラ32と手差し底板34との間を互いに離間させる。
【0083】
つまり、手差し底板34が手差し給紙ローラ32に当接した状態は、フィラーセンサ65cがオフ状態であるので、制御部51は、まず手差し底板カムクラッチ65aをオンにし(S44)、手差し底板カム軸65を回転駆動させる。その後、フィラーセンサ65cがオンとなるまで手差し底板カム軸65の回転を継続し、フィラーセンサ65cがオンになったら(S45)、手差し底板カムクラッチ65aをオフにして(S46)、手差し底板カム軸65の回転を停止させる。その後、制御部51は、メインモータ61をオフにし(S51)、装置を停止させ(S52)、ユーザーによる記録シートSの除去作業が可能な状態にする。
【0084】
以上のような制御によって、手差し給紙中に記録シートSの搬送を停止させるべき装置異常が発生したとき、手差し底板34が手差し給紙ローラ32から離間した状態になって、手差し給紙路R2中に残存する記録シートS(手差し給紙ローラ32と手差し底板34との間に挟持されている記録シートS)の除去作業が容易になる。
【0085】
また、本体給紙中であった場合(S43のNo)、記録シートSが中継ローラ対42のローラ間に挟持されている可能性がある。このとき、記録シートSの種類が厚紙であると判断されてシート搬送が行われている場合には、中継ローラ対42のニップ圧は高い状態である。
【0086】
ここで、実際に搬送されている記録シートSが厚紙(強度の強いシート)である場合には、上述したように、中継ローラ対42のニップ圧は高い状態でも、シートを破らずに引き出して取り除くことができる。しかしながら、ユーザーの操作ミスや設定ミスなどによって、実際に搬送されている記録シートSが薄紙や普通紙(強度の低いシート)であった場合には、中継ローラ対42のニップ圧は高い状態では、シートを引き出すときに記録シートSが破れてしまう。そのため、中継ローラ対42のニップ圧を低くすることが望ましい。また、実際に搬送されている記録シートSが厚紙(強度の強いシート)である場合でも、中継ローラ対42のニップ圧は高い状態では、シートを引き出すのに大きな力を要し、ジャム処理の作業性を向上させるうえでは、中継ローラ対42のニップ圧を低くすることが望ましい。
【0087】
そこで、本実施形態では、本体給紙の場合(S43のNo)、記録シートSの種類が厚紙であると判断されてシート搬送が行われている場合、つまり手差し底板34が手差し給紙ローラ32に当接(フィラーセンサはオフ状態)することで中継ローラ対42のニップ圧が高い状態の場合には(S47のNo)、手差し底板カムクラッチ65aをオンにして(S48)、手差し底板カム軸65を回転駆動させる。そして、フィラーセンサ65cがオン状態、つまり手差し底板34が最下位置になることで中継ローラ対42のニップ圧が低い状態になるまで手差し底板カム軸65の回転を継続し、フィラーセンサ65cがオンになったら(S49のYes)、手差し底板カムクラッチ65aをオフにして(S50)、手差し底板カム軸65の回転を停止させる。その後、制御部51は、メインモータ61をオフにし(S51)、装置を停止させ(S52)、ユーザーによる記録シートSの除去作業が可能な状態にする。
【0088】
これにより、中継ローラ対42のニップ圧が高い状態から低い状態に切り替えられるので、実際に搬送されている記録シートSが薄紙や普通紙(強度の低いシート)であった場合でも、シートを破らずに引き出すことができる。また、実際に搬送されている記録シートSが厚紙(強度の高いシート)であった場合には、シートを引き出すのに大きな力を必要とせずに容易に引き出すことができ、ジャム処理の作業性が向上する。
【0089】
また、本実施形態では、手差しトレイ31から記録シートSの給紙を行う場合、手差し底板カム35が底板スプリング36の付勢力に抗して底板ガイド部34aを押し下げる回転位置に手差し底板カム軸65が位置するときに、手差し底板カム軸65に対して最大の駆動負荷L1が生じることになる。したがって、手差しトレイ31から記録シートSの給紙を行うとき、手差し底板カム35が底板スプリング36の付勢力に抗して底板ガイド部34aを押し下げる回転位置が、手差し底板カム軸65に最大の駆動負荷L1が生じる最大負荷動作位置P1となる。
【0090】
また、中継ローラ対42のニップ圧を切り替える場合、押圧部65eが加圧スプリング37bの付勢力に抗して加圧板37dを中継駆動ローラ42aへ近づく方向へ移動させる回転位置に手差し底板カム軸65が位置するときに、手差し底板カム軸65に対して最大の駆動負荷L2が生じることになる。したがって、中継ローラ対42のニップ圧を切り替えるとき、押圧部65eが加圧スプリング37bの付勢力に抗して加圧板37dを中継駆動ローラ42aへ近づく方向へ移動させる回転位置が、手差し底板カム軸65に最大の駆動負荷L2が生じる最大負荷動作位置P2となる。
【0091】
そして、本実施形態においては、上述したとおり、手差し底板カム軸65の回転位置が手差し底板34を上昇させる位置(手差しトレイ31から記録シートSの給紙を行うときの最小の駆動負荷が生じる位置)にあるときに、手差し底板カム軸65上の押圧部65eが、加圧スプリング37bの付勢力に抗して加圧板37dを中継駆動ローラ42aへ近づく方向へ移動させる位置(中継ローラ対42のニップ圧を切り替えるときの最大の駆動負荷L2が生じる位置P2)をとる。すなわち、本実施形態では、手差しトレイ31から記録シートSの給紙を行うときの手差し底板カム軸65の最大負荷動作位置P1と、中継ローラ対42のニップ圧を切り替えるときの手差し底板カム軸65の最大負荷動作位置P2とが、互いにずれている。
【0092】
図21は、手差しトレイ31から記録シートSの給紙を行うときの手差し底板カム軸65の最大負荷動作位置P1と、中継ローラ対42のニップ圧を切り替えるときの手差し底板カム軸65の最大負荷動作位置P2とが一致している例を示すグラフある。
このグラフは、縦軸に手差し底板カム軸65の負荷トルクをとり、横軸に手差し底板カム軸65の回転角度をとったものである。(後述の図22図24についても同様である。)
【0093】
図21の例では、2つの最大負荷動作位置P1,P2が互いに一致(重複)しているので、手差し底板カム軸65に生じる駆動負荷(負荷トルク)の合計は、最大で、2つの最大負荷動作位置P1,P2を合計した駆動負荷Lをとる。このような大きな駆動負荷Lが加わる場合、手差し底板カム軸65を駆動するための駆動機構(モータやクラッチなど)として、大きな駆動負荷Lに対応する駆動機構を必要とし、高コスト化を招く。また、手差し底板カム軸65や手差し給紙部30を構成する部品にも、より大きな負荷に耐えられるような部品(厚肉で重い部品など)を必要とし、高コスト化や高重量化を招く。
【0094】
図22は、手差しトレイ31から記録シートSの給紙を行うときの手差し底板カム軸65の最大負荷動作位置P1と、中継ローラ対42のニップ圧を切り替えるときの手差し底板カム軸65の最大負荷動作位置P2とがずれている一例を示すグラフである。
図22の例では、2つの最大負荷動作位置P1,P2が互いにずれている(重複していない)ので、手差し底板カム軸65に生じる駆動負荷(負荷トルク)の合計は、最大でも、図21の例の最大駆動負荷Lよりも小さい駆動負荷L’となる。したがって、手差し底板カム軸65を駆動するための駆動機構として、比較的小さな駆動負荷L’に対応する駆動機構で済むので、低コスト化を達成でき、また、低重量化を図ることができる。
【0095】
図23は、手差しトレイ31から記録シートSの給紙を行うときの手差し底板カム軸65の最大負荷動作位置P1と、中継ローラ対42のニップ圧を切り替えるときの手差し底板カム軸65の最大負荷動作位置P2とがずれている他の例を示すグラフである。
図23の例でも、2つの最大負荷動作位置P1,P2が互いにずれている(重複していない)。ただし、手差しトレイ31から記録シートSの給紙を行うときに生じる手差し底板カム軸65の駆動負荷も、中継ローラ対42のニップ圧を切り替えるときに生じる手差し底板カム軸65の駆動負荷も、手差しトレイ31から記録シートSの給紙を行うときの最大駆動負荷L1と、中継ローラ対42のニップ圧を切り替えるときの最大駆動負荷L2とのうちのいずれか大きい方よりも、常に小さい。
【0096】
したがって、図23の例では、手差し底板カム軸65に生じ得る駆動負荷は、手差しトレイ31から記録シートSの給紙を行うときの最大駆動負荷L1と、中継ローラ対42のニップ圧を切り替えるときの最大駆動負荷L2とのうちのいずれか大きい方を超えることはない。よって、手差し底板カム軸65を駆動するための駆動機構として、より小さな駆動負荷に対応する駆動機構で済むので、低コスト化を達成でき、また、低重量化を図ることができる。
【0097】
特に、図23の例では、手差しトレイ31から記録シートSの給紙を行うときに生じる手差し底板カム軸65の駆動負荷も、中継ローラ対42のニップ圧を切り替えるときに生じる手差し底板カム軸65の駆動負荷も、手差しトレイ31から記録シートSの給紙を行うときの最大駆動負荷L1と、中継ローラ対42のニップ圧を切り替えるときの最大駆動負荷L2とのうちのいずれか小さい方よりも、常に小さい。したがって、図23の例では、手差し底板カム軸65を駆動するための駆動機構として、更に小さな駆動負荷に対応する駆動機構で済むので、低コスト化を達成でき、また、低重量化を図ることができる。
【0098】
図24は、更にずれ量を大きくした他の例を示すグラフである。
図24の例は、手差しトレイ31から記録シートSの給紙を行うときの手差し底板カム35の最大押圧力が生じる手差し底板カム軸65の最大押圧力回転位置P1と、中継ローラ対42のニップ圧を切り替えるときの押圧部65eの最大押圧力が生じる手差し底板カム軸65の最大押圧力回転位置P2とが180°ずれている。なお、本実施形態では、最大押圧力回転位置P1,P2がそれぞれ一定の幅をもっているので、ずれ角は、それぞれの幅の中心位置(回転角度)間におけるずれ角とする。
【0099】
図24の例によれば、部品の寸法誤差、制御誤差などによって手差し底板カム軸65の回転位置が多少ばらつくような場合であっても、2つの最大負荷動作位置P1,P2が互いに一致(重複)してしまうような事態が起きにくい。よって、手差し底板カム軸65に過大な駆動負荷が加わるのを安定して抑制することができる。
【0100】
図24の例によれば、手差し底板カム軸65の回転角度を180°単位で切り替えるという簡単な制御で、手差しトレイ31から記録シートSの給紙を行うときの手差し底板34の動作、及び、中継ローラ対42のニップ圧を切り替える動作を実現することができる。特に、これらの動作の切替時間がいずれも等しくなることから、例えば異なる用紙厚の画像形成動作が連続した場合の画像形成動作の切り替わりの待ち時間を一定にすることが可能となるなど、制御が簡易になる。
【0101】
また、本実施形態においては、手差し底板カム軸65上の押圧部65eが、図14(a)及び図15(a)に示すように非押圧位置に位置するとき、加圧板37dは加圧スプリング37bの付勢力によって中継駆動ローラ42aから離れる方向へ移動する。このとき、加圧板37dの当該移動を、押圧部65eに当接することによって規制してもよいが、図25(a)及び図26に示すように、押圧部65eとは別の部材、例えば手差し給紙部30の支持フレーム38に取り付けられる取付部材38bに当接するようにして規制してもよい。
【0102】
押圧部65eだけに当接させて加圧板37dの移動を規制する構成であると、押圧部65eが経時使用によって摩耗するため、加圧板37dの移動を規制する位置が経時的に変化し、経時的に安定した付勢力を得ることが難しい。これに対し、図25(a)及び図26に示すように、押圧部65eとは別の部材である取付部材38bに当接させて加圧板37dの移動を規制する構成とすれば、取付部材38bが加圧板37dと摺擦することがないので、経時使用による摩耗がなく、経時的に安定した付勢力を得やすい。その結果、中継ローラ対42の安定したニップ圧を得ることができる。
【0103】
特に、本実施形態において、取付部材38bは、図25(a)及び図26に示すように、加圧板37dに対して面接触することにより加圧板37dの移動を規制する。取付部材38bが加圧板37dに対して局所的に接触するような構成だと、取付部材38bと加圧板37dとの接触位置ズレによって加圧板37dの姿勢が変わりやすく、経時的に安定した付勢力を得ることが難しい。これに対し、面接触する構成であれば、取付部材38bと加圧板37dとの接触位置ズレが生じても、加圧板37dの姿勢が変わりにくく、経時的に安定した付勢力を得やすい。
【0104】
なお、ここでは、押圧部65eとは別の部材が、手差し給紙部30の支持フレーム38に取り付けられる取付部材38bであるが、例えば、支持フレーム38であってもよい。
【0105】
図27は、中継ローラ対42を斜め下方から見たときの外観斜視図である。
本実施形態においては、押圧部65eとは別の部材が、手差し給紙部30の支持フレーム38に取り付けられる取付部材38bであることにより、組み立て容易性が高い構成となっている。すなわち、手差し給紙部30の支持フレーム38には、支持フレーム38に形成されているガイド部に入れ込まれる加圧板37d、並びに、手差し底板カム軸65や、この手差し底板カム軸65に取り付けられる押圧部65eや手差し底板カム35などの各種カムなどを組み付ける必要がある。このとき、支持フレーム38には、ガイド部に加圧板37dを入れ込んで組み付けるための十分な間口をもつ開口を備えていることが望まれる。ただし、このような開口を設けると、支持フレーム38の剛性が低下するため、支持フレーム38にステーなどの構造部品を取り付けて剛性を確保するのが一般的である。
【0106】
本実施形態では、支持フレーム38に十分な間口をもつ開口を形成して、組み立て容易性を高めるとともに、剛性確保のために取り付ける構造部品として機能する取付部材38bを設けて、この取付部材38bで加圧板37dの移動を規制するものである。したがって、剛性確保と加圧板37dの移動規制とをそれぞれ別々の部材によって行う場合よりも、部品点数が少なく、小型化、軽量化を図ることが可能となる。
【0107】
以上、本実施形態においては、本体給紙路R1で用いられる中継ローラ対42のニップ圧(加圧スプリング37bの付勢力)を、手差し給紙路R2で用いられる可動部材としての手差し底板34の動作に連動して切り替えるが、これに限られない。例えば、手差し給紙部30が、手差し給紙ローラ32を下降させる動作により、手差しトレイ上の記録シートに手差し給紙ローラ32を押し当てて送り出す方式のシート給送手段を採用したものである場合には、当該手差し給紙ローラ32を可動部材とし、この手差し給紙ローラ32の動作に連動して中継ローラ対42のニップ圧を切り替える構成であってもよい。また、例えば、手差し給紙路R2以外の給紙路(例えば反転再送路R5など)で用いられる可動部材の動作に連動して切り替えてもよい。
【0108】
また、本実施形態においては、本体給紙路R1で用いられる中継ローラ対42のニップ圧(加圧スプリング37bの付勢力)を切り替える構成について説明したが、例えば、他の搬送ローラ対(例えば、排紙ローラ対46など)のニップ圧を切り替える構成などにも適用することが可能である。また、本実施形態のニップ圧の切替対象であった中継ローラ対42は、一方が駆動ローラで他方が従動ローラである搬送ローラ対であるが、両方とも駆動ローラであったり、両方とも従動ローラであったりする搬送ローラ対であってもよい。
【0109】
また、本実施形態では、画像形成装置の例としてプリンタを例に挙げて説明したが、画像読取装置を備えた複写機や、ファクシミリなどの機能も備えた複合機などの画像形成装置であってもよい。また、電子写真方式で画像を形成する画像形成装置に限らず、インクジェット方式や、特開2002-307737号公報等に記載のトナープロジェクション方式など、他の方式で画像を形成する画像形成装置にも適用が可能である。また、画像形成装置に限らず、シート搬送装置を備えたものであれば、自動給送装置(ADF)を備えた画像読取装置などであってもよい。
【0110】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[第1態様]
第1態様は、搬送されるシート(例えば記録シートS)を挟持するローラ対(例えば中継ローラ対42)と、前記ローラ対を構成する一方のローラ(例えば中継従動ローラ42b)を他方のローラ(例えば中継駆動ローラ42a)に向けて付勢する付勢手段(例えば加圧スプリング37b)とを備えたシート搬送装置であって、前記ローラ対のローラ同士が離間不能に構成されており、前記ローラ対にシートが挟持される前に、該シートの種類に応じて前記付勢手段による付勢力を切り替える付勢力切替手段(例えば加圧板37d、押圧部65eなど)を有することを特徴とするものである。
本態様においては、ローラ対のローラ同士が離間不能に構成されているため、ジャムが発生して当該ローラ対に挟持されているシートを取り除く場合、ローラ対に挟み込まれた状態のシートを引き抜くという作業が必要となる。このとき、強度の低いシート(例えば薄紙)がジャムした場合、シート引き抜き時のローラ対の当接圧が高すぎると、シートを引き抜く際にシートが破れてしまうことがある。
ここで、従来のように、ジャムを検知してからローラ対の当接圧を弱めるという構成を採用した場合、ジャム発生後に当接圧を弱める動作が適切に実行されれば、シート引き抜き時に強度の低いシートが破れてしまうことを抑制できる。しかしながら、ジャムの発生タイミングやジャム処理動作を実現する構成内容等によっては、ジャムが発生した後に当接圧を弱める動作を実行できない場合がある。この場合、ローラ対のローラ間に働く当接圧を弱める動作を行う駆動源を駆動させることができず、シート引き抜き時のローラ対の当接圧を低くすることができない。なお、ジャムが発生した後に当接圧を弱める動作を実行できないような緊急時でもローラ対のローラ間に働く当接圧を弱める動作を行う駆動源を駆動させることができる構成を採用してもよいが、高コスト化を招く懸念がある。
また、シート搬送当初から、ローラ対の当接圧を低くしておくことも考えられるが、この場合、厚紙などの搬送負荷の高いシートの搬送時には当接圧が不足して搬送不良を引き起こすおそれがある。
以上の課題を受けて、本態様においては、ローラ対にシートが挟持される前に、そのシートの種類に応じて、付勢手段による付勢力が切り替わる構成を採用している。この構成によれば、例えば、強度の低い種類のシート搬送時には、低い付勢力に切り替えてローラ対の当接圧を低くしておくことで、ジャムが発生した場合でも、ローラ対の当接圧が低いので、そのままの状態で当該ローラ対からシートを引き抜いても、シートが破れることを抑制できる。しかも、強度の低い種類のシートは、通常、搬送負荷が小さいので、ローラ対の当接圧が低い状態で搬送しても、搬送不良を発生させることがない。一方、例えば、強度の高い種類のシート搬送時には、高い付勢力に切り替えてローラ対の当接圧を高くしておくことで、搬送負荷が大きくても、搬送不良を発生させることなく搬送することが可能である。しかも、強度の高い種類のシートであれば、ローラ対の当接圧が高い状態のままでも、シートを破ることなく引き抜くことが可能である。
以上のように、本態様によれば、ジャム発生後にローラ対の当接圧を弱めるという動作を必要とせずに、当該ローラ対からシートを引き抜く際のシート破れを抑制することができる。
【0111】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記シートの種類は、該シートの強度の異なる種類を含むことを特徴とするものである。
これによれば、強度の低いシートをローラ対から引き抜く際のシート破れを抑制することができる。
【0112】
[第3態様]
第3態様は、第2態様において、前記シートの種類は、該シートの厚みの異なる種類を含むことを特徴とするものである。
これによれば、厚みの薄いシートをローラ対から引き抜く際のシート破れを抑制することができる。
【0113】
[第4態様]
第4態様は、第2又は第3態様において、前記付勢力切替手段は、前記シートの強度が低い種類ほど前記付勢力が弱くなるように切り替えることを特徴とするものである。
これによれば、強度の低いシートをローラ対から引き抜く際のシート破れを適切に抑制することができる。
【0114】
[第5態様]
第5態様は、シート搬送装置によって搬送されるシートに画像を形成する画像形成装置(例えばプリンタ)であって、前記シート搬送装置として、第1乃至第4態様のいずれかのシート搬送装置を用いることを特徴とするものである。
本態様によれば、ジャム発生後にローラ対の当接圧を弱めるという動作を必要とせずに、当該ローラ対からシートを引き抜く際のシート破れを抑制できる画像形成装置を提供することができる。
【0115】
[第6態様]
第6態様は、第5態様において、前記シート搬送装置の前記ローラ対は、複数の搬送路(例えば本体給紙路R1と手差し給紙路R2)のうちの第一搬送路(例えば本体給紙路R1)中を搬送されるシートを挟持するものであり、前記付勢力切替手段は、前記複数の搬送路のうちの第二搬送路(例えば手差し給紙路R2)中をシートが搬送されるにあたって動作する可動部材(例えば手差し底板34)の動作に連動して、前記付勢手段による付勢力を切り替えることを特徴とするものである。
本態様においては、第一搬送路におけるローラ対の当接圧(付勢手段による付勢力)を切り替える動作が、第二搬送路のシート搬送に用いられる可動部材の動作に連動して行われる。本態様に係る画像形成装置は、複数の搬送路の中から選択された搬送路を用いてシートを搬送しているときには、他の搬送路がシート搬送に用いられることはない。したがって、第一搬送路のローラ対の当接圧を切り替える際、第二搬送路のシート搬送に用いられる可動部材を動作させても、支障が出ることはない。
本態様によれば、第二搬送路のシート搬送に用いられる可動部材の動作を利用して第一搬送路のローラ対の当接圧を切り替えることができるので、切り替え専用の動作手段を設る必要がなく、装置の小型化及びコスト低減を実現できる。
【0116】
[第7態様]
第7態様は、第6態様において、前記可動部材を動作させることにより、シート載置部(例えば手差し底板34)に載置されたシートを前記第二搬送路へシート給送することを特徴とするものである。
これによれば、第二搬送路へ送り出すシート給送の可動部材の動作に連動して、第一搬送路のローラ対の当接圧を切り替えることができる。
【0117】
[第8態様]
第8態様は、第7態様において、前記シート給送は、前記可動部材を上昇させ又は下降させ、シートを給送ローラに当接して行うことを特徴とするものである。
これによれば、第二搬送路へ送り出すシート給送の可動部材の上昇または下降の動作に連動して、第一搬送路のローラ対の当接圧を切り替えることができる。
【0118】
[第9態様]
第9態様は、第6乃至第8態様のいずれかの態様において、前記可動部材は回転軸(例えば手差し底板カム軸65)を回転させることにより動作し、前記付勢力切替手段は、前記回転軸の回転に連動して前記付勢手段を支持する付勢支持部(例えば加圧板37d)を移動させることにより、前記付勢手段による付勢力を切り替えることを特徴とするものである。
これによれば、第一搬送路におけるローラ対の当接圧を切り替える動作を、第二搬送路のシート搬送に用いられる可動部材の動作に連動して行う構成を、簡易な構成で実現できる。
【0119】
[第10態様]
第10態様は、第9態様において、前記付勢力切替手段は、前記回転軸の回転により、該回転軸上のカムが前記付勢支持部を押圧する押圧状態を変化させることにより、該付勢支持部を第一移動位置(例えば押圧位置)及び第二移動位置(例えば非押圧位置)へ移動させ、前記付勢支持部は、前記第一移動位置及び前記第二移動位置のうちのいずれか一方の移動位置に位置するとき、前記カムとは別の部材(例えば取付部材38b)によって移動が規制されることを特徴とするものである。
これによれば、経時的に安定した移動規制が実現しやすく、当該いずれか一方の移動位置に位置するときの安定した付勢力を実現できる。
【0120】
[第11態様]
第11態様は、第10態様において、前記別の部材は、前記付勢支持部に対して面接触することにより該付勢支持部の移動を規制することを特徴とするものである。
これによれば、当該別の部材と付勢支持部との接触位置ズレが生じても、付勢支持部の姿勢が変わりにくく、経時的に安定した付勢力を得やすい。
【0121】
[第12態様]
第12態様は、第10又は第11態様において、前記別の部材は、前記付勢支持部を移動可能に支持する支持部材(例えば支持フレーム38)に取り付けられる取付部材38bであることを特徴とするものである。
これによれば、例えば、組み立て容易性を高めるために十分な間口をもつ開口を支持部材に形成する場合において、部品点数を増やすことなく、剛性確保と付勢支持部の移動規制とを実現することができる。
【0122】
[第13態様]
第13態様は、第9乃至第12態様のいずれかの態様において、前記付勢力切替手段は、前記回転軸の回転により前記回転軸上の押圧部65eが、前記付勢支持部における前記付勢手段の支持位置Aからずれた位置Bで該付勢支持部を押圧して、該付勢支持部を移動させることを特徴とするものである。
本態様によれば、回転軸上の押圧部が付勢支持部における付勢手段の支持位置Aと同じ位置B’で付勢支持部を押圧できない制約がある場合にも対応することができる。
【0123】
[第14態様]
第14態様は、第13態様において、前記押圧部はカムであり、前記シートの種類に応じた付勢力を得るときの前記回転軸の回転角度を含む所定の角度幅α内で、前記カムの径が一定であることを特徴とするものである。
本態様によれば、部品の公差や制御上の停止時間の誤差により押圧部が押圧するときの回転位置がずれた場合でも、目標の付勢力(ローラ対の当接圧)を得ることができる。
【0124】
[第15態様]
第15態様は、第9乃至第14態様のいずれかの態様において、前記回転軸の回転により前記回転軸上の押圧部が前記付勢支持部を押圧して該付勢支持部を移動させるときに該回転軸が受ける反力で該回転軸が撓むのを抑制する撓み抑制手段(例えば接触部37e)を有することを特徴とするものである。
本態様によれば、回転軸の撓みを抑制して、回転軸上の押圧部が付勢支持部を適切に押圧することができるようにし、目標の付勢力(ローラ対の当接圧)を得ることができる。
【0125】
[第16態様]
第16態様は、第6乃至第15態様のいずれかの態様において、前記第二搬送路は、手差し給送の搬送路(例えば手差し給紙路R2)であることを特徴とするものである。
これによれば、装置本体内に残存するシートの除去のために装置本体内のローラ対の当接圧を切り替えるために、手差し搬送路の可動部材の動作を利用することができる。
【0126】
[第17態様]
第17態様は、第6乃至第16態様のいずれかの態様において、前記第一搬送路中を搬送されるシートに搬送不良が発生したときに前記可動部材を動作させることを特徴とするものである。
本態様によれば、第一搬送路中を搬送されるシートに搬送不良が発生したときに、第一搬送路中のローラ対の当接圧を低くして、シートの引き出すときに要する力を弱めて、シート破れを抑制し、また、シートを取り除く際の作業性を向上させることができる。
【0127】
[第18態様]
第18態様は、第6乃至第17態様のいずれかの態様において、前記第二搬送路中をシートが搬送されるにあたって動作する前記可動部材のシート搬送用動作中に最大負荷L1が生じる該可動部材の最大負荷動作位置P1と、前記付勢力切替手段により前記付勢手段による付勢力を切り替えるときの前記可動部材の付勢力切替動作中に最大負荷L2が生じる該可動部材の最大負荷動作位置P2とが、互いにずれていることを特徴とするものである。
仮に、2つの最大負荷動作位置P1,P2が互いに一致(重複)している場合、可動部材に生じ得る負荷は、最大で、当該2つの最大負荷動作位置P1,P2での最大負荷L1,L2を合計したものとなる。このような大きな負荷が発生する場合、可動部材の動作のための駆動機構として、大きな負荷に対応できる駆動機構を必要とし、高コスト化を招く。また、各種構成部品についても、大きな負荷に耐えられるような部品を必要とし、高コスト化や高重量化を招く。
本態様によれば、当該2つの最大負荷動作位置P1,P2が互いにずれている(重複していない)ので、可動部材に生じ得る負荷は、最大でも、当該2つの最大負荷動作位置P1,P2での最大負荷L1,L2の合計よりも小さいものとなる。したがって、2つの最大負荷動作位置P1,P2が互いに一致(重複)している場合と比べて、低コスト化、軽量化を図ることができる。
【0128】
[第19態様]
第19態様は、第18態様において、前記シート搬送用動作中に生じる負荷、及び、前記付勢力切替動作中に生じる負荷は、前記シート搬送用動作中に生じる前記最大負荷L1と、前記付勢力切替動作中に生じる前記最大負荷L2とのうちのいずれか大きい方よりも、常に小さいことを特徴とするものである。
これによれば、より低コスト化、軽量化を図ることができる。
【0129】
[第20態様]
第20態様は、第19態様において、前記シート搬送用動作中に生じる負荷、及び、前記付勢力切替動作中に生じる負荷は、前記シート搬送用動作中に生じる前記最大負荷L1と、前記付勢力切替動作中に生じる前記最大負荷L2とのうちのいずれか小さい方よりも、常に小さいことを特徴とするものである。
これによれば、更に低コスト化、軽量化を図ることができる。
【0130】
[第21態様]
第21態様は、第6乃至第17態様のいずれかの態様において、前記可動部材は、前記第二搬送路中をシートが搬送されるときに、回転軸(例えば手差し底板カム軸65)を回転させて該回転軸上の第一カム(例えば手差し底板カム35)による押圧状態を変化させることにより動作し、前記付勢力切替手段は、前記回転軸の回転により、該回転軸上の第二カム(例えば押圧部65e)が前記付勢手段を支持する付勢支持部(例えば加圧板37d)を押圧する押圧状態を変化させることにより、該付勢支持部を移動させて前記付勢手段による付勢力を切り替え、前記第二搬送路中をシートが搬送されるときの前記可動部材のシート搬送用動作中に前記第一カムの最大押圧力が生じる該可動部材の最大押圧力回転位置P1と、前記付勢力切替手段により前記付勢手段による付勢力を切り替えるときの前記可動部材の付勢力切替動作中に前記第二カムの最大押圧力が生じる該可動部材の最大押圧力回転位置P2とが、互いにずれていることを特徴とするものである。
仮に、2つの最大押圧力回転位置P1,P2が互いに一致(重複)している場合、可動部材に生じ得る負荷は、最大で、当該2つの最大押圧力回転位置P1,P2でそれぞれが最大押圧力を生じさせたときの負荷を合計したものとなる。このような大きな負荷が発生する場合、可動部材の動作のための駆動機構として、大きな負荷に対応できる駆動機構を必要とし、高コスト化を招く。また、各種構成部品についても、大きな負荷に耐えられるような部品を必要とし、高コスト化や高重量化を招く。
本態様によれば、当該2つの最大押圧力回転位置P1,P2が互いにずれている(重複していない)ので、可動部材に生じ得る負荷は、最大でも、当該2つの最大押圧力回転位置P1,P2でそれぞれが最大押圧力を生じさせたときの負荷の合計よりも小さいものとなる。したがって、2つの最大押圧力回転位置P1,P2が互いに一致(重複)している場合と比べて、低コスト化、軽量化を図ることができる。
【0131】
[第22態様]
第22態様は、第21態様において、前記シート搬送用動作中における前記可動部材の最大押圧力回転位置P1と、前記付勢力切替動作中における前記可動部材の最大押圧力回転位置P2とのずれ角が180°であることを特徴とするものである。
本態様によれば、部品の寸法誤差、制御誤差などによって可動部材における回転位置が多少ばらつくような場合であっても、2つの最大押圧力回転位置P1,P2が互いに一致(重複)してしまうような事態が起きにくい。よって、可動部材の動作に過大な負荷が加わるのを安定して抑制することができる。
【符号の説明】
【0132】
1 :感光体
30 :手差し給紙部
31 :手差しトレイ
32 :手差し給紙ローラ
33 :分離パッド
34 :手差し底板
34a :底板ガイド部
35 :手差し底板カム
36 :底板スプリング
37a :軸受部
37b :加圧スプリング
37c :スライド長孔
37d :加圧板
37e :接触部
38 :支持フレーム
38b :取付部材
39 :開閉ドア
41 :本体給紙ローラ
42 :中継ローラ対
42a :中継駆動ローラ
42b :中継従動ローラ
43 :レジストローラ対
44 :定着装置
46 :排紙ローラ対
47 :切換爪
48 :分離パッド
49 :レジストセンサ
50 :本体筐体
51 :制御部
61 :メインモータ
61a :モータ軸
62 :給紙ローラ軸
62a :本体給紙クラッチ
63 :中継ローラ軸
63a :中継クラッチ
64 :手差し給紙ローラ軸
64a :手差し給紙クラッチ
65 :手差し底板カム軸
65a :手差し底板カムクラッチ
65b :カム検知フィラー
65c :フィラーセンサ
65d :押し下げレバー
65e :押圧部
66 :ローラ軸
100 :給紙カセット
101 :本体給紙底板
R1 :本体給紙路
R2 :手差し給紙路
R3 :共通搬送路
R4 :排紙路
R5 :反転再送路
S :記録シート
【先行技術文献】
【特許文献】
【0133】
【文献】特開2006-39336号公報
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