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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】ブロックコポリマー及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 81/00 20060101AFI20240125BHJP
   C08F 265/06 20060101ALI20240125BHJP
   C08F 255/00 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
C08G81/00
C08F265/06
C08F255/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020049020
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2020193323
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-10-17
(31)【優先権主張番号】P 2019097652
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 公平
(72)【発明者】
【氏名】岡田 春樹
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2016/143869(JP,A1)
【文献】特開2016-065033(JP,A)
【文献】特開2016-204410(JP,A)
【文献】特開2013-112741(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111087602(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 2/00-85/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの第1のポリマーセグメント(A’)が、2以上の第2のポリマーセグメント(B’)の間に位置する構成を有する、ブロックコポリマーの製造方法であって、
両末端に炭素-炭素二重結合基を有する第1のポリマー(A)と、少なくとも一方の末端に炭素-炭素二重結合基を有する第2のポリマー(B)と、2官能のニトリルオキシド化合物(C)と、を用いて、前記ブロックコポリマーを得る、ブロックコポリマーの製造方法。
【請求項2】
下記第1の反応工程と第2の反応工程を有する、請求項1に記載のブロックコポリマーの製造方法。
第1の反応工程:前記第1のポリマー(A)及び前記第2のポリマー(B)の一方のポリマーと、前記ニトリルオキシド化合物(C)と、を反応させて変性ポリマー(D)を得る反応工程
第2の反応工程:前記第1のポリマー(A)及び前記第2のポリマー(B)の他方のポリマーと、前記変性ポリマー(D)と、を反応させて前記ブロックコポリマーを得る反応工程
【請求項3】
前記第2のポリマー(B)は、両末端のうち一方の末端のみに炭素-炭素二重結合基を有する、請求項1又は2に記載のブロックコポリマーの製造方法。
【請求項4】
前記第1の反応工程において前記ニトリルオキシド化合物(C)と反応させるポリマーの末端の炭素-炭素二重結合基量に対する前記ニトリルオキシド化合物(C)のモル比が、2.0以上である、請求項に記載のブロックコポリマーの製造方法。
【請求項5】
前記ニトリルオキシド化合物(C)が、下記式(C-1)で表される化合物である、請求項1~4のいずれか1項に記載のブロックコポリマーの製造方法。
【化1】
式(C-1)中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数4~10の炭化水素基又は炭素数4~10のハロゲン化炭化水素基であり、Xは、2価の炭化水素基、-O-、-S-又は-N(R)-であり、Rは、水素原子又は炭素数1以上6以下の炭化水素基であり、Yは、2価の有機基である。
【請求項6】
前記第1のポリマー(A)は、オレフィン又は(メタ)アクリル酸エステルを主たる構成単位とするポリマーである、請求項1~5のいずれか1項に記載のブロックコポリマーの製造方法。
【請求項7】
前記第2のポリマー(B)は、(メタ)アクリル酸エステルを主たる構成単位とするポリマーである、請求項1~6のいずれか1項に記載のブロックコポリマーの製造方法。
【請求項8】
少なくとも1つの第1のポリマーセグメント(A’)が、2官能のニトリルオキシド化合物に由来する部位(C’)を介して、2以上の第2のポリマーセグメント(B’)の間に位置しており、
前記2官能のニトリルオキシド化合物に由来する部位(C’)が下記式(E-2)で表される、ブロックコポリマー
【化2】
前記式(E-2)において、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数4~10の炭化水素基又は炭素数4~10のハロゲン化炭化水素基であり、Xは、2価の炭化水素基、-O-、-S-又は-N(R)-であり、Rは、水素原子又は炭素数1以上6以下の炭化水素基であり、Yは、2価の有機基であり、R21は、それぞれ独立して水素原子または1価の有機基であり、R22およびR23は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1以上8以下の炭化水素基である。
【請求項9】
前記ブロックコポリマーが下記式(F-1)で表される構造を有する、請求項8に記載のブロックコポリマー。
【化3】
前記式(F-1)において、R 及びR は、それぞれ独立して、炭素数4~10の炭化水素基又は炭素数4~10のハロゲン化炭化水素基であり、Xは、2価の炭化水素基、-O-、-S-又は-N(R )-であり、R は、水素原子又は炭素数1以上6以下の炭化水素基であり、Yは、2価の有機基であり、R 21 は、それぞれ独立して水素原子または1価の有機基であり、R 22 およびR 23 は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1以上8以下の炭化水素基であり、aは、前記第1のポリマーセグメント(A’)であり、bは、前記第2のポリマーセグメント(B’)である。
【請求項10】
前記ポリマーセグメント(A’)又は前記ポリマーセグメント(B’)の少なくとも一方が、(メタ)アクリル酸エステルを主たる構成単位とするポリマーである、請求項8又は9に記載のブロックコポリマー。
【請求項11】
前記第1のポリマーセグメント(A’)及び前記第2のポリマーセグメント(B’)のうち一方が、(メタ)アクリル酸エステルを主たる構成単位とするポリマーであって、他方がオレフィンを主たる構成単位とする、請求項10に記載のブロックポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロックコポリマー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性エラストマーは、使用温度では加硫ゴムと同様の性質を持つが、加熱すると熱可塑性樹脂と同様に溶融成形できる材料であり、柔軟成分(ソフトセグメント)と分子拘束成分(ハードセグメント)からなるアロイ構造を有している。熱可塑性エラストマーはスチレン系、オレフィン系、塩化ビニル系等、多種多様な形式が存在しており、例えばスチレン系熱可塑性エラストマーでは、スチレンブロックが凝集してハードセグメントとして働き、ブタジエン系ブロックあるいはイソプレン系ブロックがソフトセグメントとして働くことになる。
【0003】
例えば、特許文献1には、耐久性及び力学性能に優れたポリスチレン-b-ポリイソブチレン-b-ポリスチレンのブロックコポリマーが開示されている。また、特許文献2には、溶融粘度が低く溶融成形性に優れたポリメタクリル酸メチル-b-ポリアクリル酸ブチル-b-ポリメタクリル酸メチルのブロックコポリマーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-301955号公報
【文献】国際公開02/026847号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2に示されるように熱可塑性エラストマーは、ブロックコポリマーを構成する各ポリマーセグメントに由来するそれぞれの物性を併せ持つことが期待できるために様々な用途への適用が考えられる。しかしながら、このようなブロックコポリマーを用いる熱可塑性エラストマーでは、製造方法の制約から、自由に各ポリマーセグメントを組み合わせることが困難であった。本発明は上記課題を解決するものであり、すなわち、所望の物性を有するブロックコポリマーを簡易に製造することが可能なブロックコポリマーの製造方法を提供することを目的とする。また、従来に無い物性を併せ持つ新規なブロックコポリマーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定のニトリルオキシド化合物を使用することにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を達成するに至った。すなわち、本発明は以下を要旨とする。
【0007】
[1]少なくとも1つの第1のポリマーセグメント(A’)が、2以上の第2のポリマーセグメント(B’)の間に位置する構成を有する、ブロックコポリマーの製造方法であって、両末端に炭素-炭素二重結合基を有する第1のポリマー(A)と、少なくとも一方の末端に炭素-炭素二重結合基を有する第2のポリマー(B)と、2官能のニトリルオキシド化合物(C)と、を用いて反応させることにより、前記ブロックコポリマーを得る、ブロックコポリマーの製造方法。
[2]下記第1の反応工程と第2の反応工程を有する、[1]に記載のブロックコポリマーの製造方法。
第1の反応工程:前記第1のポリマー(A)及び前記第2のポリマー(B)の一方のポリマーと、前記ニトリルオキシド化合物(C)と、を反応させて変性ポリマー(D)を得る反応工程
第2の反応工程:前記第1のポリマー(A)及び前記第2のポリマー(B)の他方のポリマーと、前記変性ポリマー(D)と、を反応させて前記ブロックコポリマーを得る反応工程
[3]前記第2のポリマー(B)は、両末端のうち一方の末端のみに炭素-炭素二重結合基を有する、[1]又は[2]に記載のブロックコポリマーの製造方法。
[4]前記第1の反応工程において前記ニトリルオキシド化合物(C)と反応させるポリマーの末端の炭素-炭素二重結合基量に対する前記ニトリルオキシド化合物(C)のモル比が、2.0以上である、[1]~[3]のいずれかに記載のブロックコポリマーの製造方法。
[5]前記ニトリルオキシド化合物(C)が、下記式(C-1)で表される化合物である、[1]~[4]のいずれかに記載のブロックコポリマーの製造方法。
【0008】
【化1】
【0009】
式(C-1)中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数4~10の炭化水素基又は炭素数4~10のハロゲン化炭化水素基であり、Xは、2価の炭化水素基、-O-、-S-又は-N(R)-であり、Rは、水素原子又は炭素数1以上6以下の炭化水素基であり、Yは、2価の有機基である。
[6]前記第1のポリマー(A)及び前記第2のポリマー(B)のうち一方は、(メタ)アクリル酸エステルを主たる構成単位とするポリマーである、[1]~[5]のいずれかに記載のブロックコポリマーの製造方法。
[7]前記第1のポリマー(A)及び前記第2のポリマー(B)のうち他方は、オレフィンを主たる構成単位とするポリマーである、[6]に記載のブロックコポリマーの製造方法。
[8]少なくとも1つの第1のポリマーセグメント(A’)が、イソオキサゾリン環を有する構造を介して、2以上の第2のポリマーセグメント(B’)の間に位置しているブロックコポリマー。
[9]前記イソオキサゾリン環を有する構造が下記式(E-2)で表される、[8]に記載のブロックコポリマー。
【0010】
【化2】
【0011】
前記式(E-2)において、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数4~10の炭化水素基又は炭素数4~10のハロゲン化炭化水素基であり、Xは、2価の炭化水素基、-O-、-S-又は-N(R)-であり、Rは、水素原子又は炭素数1以上6以下の炭化水素基であり、Yは、2価の有機基であり、R21は、水素原子または1価の有機基であり、R22およびR23は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1以上8以下の炭化水素基である。


[10]前記ブロックコポリマーが下記式(F-1)で表される構造を有する、[8]又は[9]に記載のブロックコポリマー。
【0012】
【化3】
前記式(F-1)において、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数4~10の炭化水素基又は炭素数4~10のハロゲン化炭化水素基であり、Xは、2価の炭化水素基、-O-、-S-又は-N(R)-であり、Rは、水素原子又は炭素数1以上6以下の炭化水素基であり、Yは、2価の有機基であり、R21は、水素原子または1価の有機基であり、R22およびR23は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1以上8以下の炭化水素基であり、aは前記第1のポリマーセグメントであり、bは前記第2のポリマーセグメント(B’)である。
[11]前記第1のポリマーセグメント(A’)及び前記第2のポリマーセグメント(B’)のうち一方が、(メタ)アクリル酸エステルを主たる構成単位とするポリマーである、[8]~[10]のいずれかに記載のブロックコポリマー。
[12]前記第1のポリマーセグメント(A’)及び前記第2のポリマーセグメント(B’)のうち一方が、(メタ)アクリル酸エステルを主たる構成単位とするポリマーであって、他方がオレフィンを主たる構成単位とする、である、[11]に記載のブロックポリマー。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、所望の物性を有するブロックコポリマーの簡便な製造方法を提供することができる。また、従来に無い物性を併せ持つ新規なブロックコポリマーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るブロックコポリマーの製造方法について詳細に説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、本発明は下記に限定されない。
【0015】
本実施形態に係るブロックコポリマーの製造方法は、両末端に炭素-炭素二重結合基を有する第1のポリマー(A)(以下、単に第1のポリマー(A)と称す場合がある)と、少なくとも一方の末端に炭素-炭素二重結合基を有する第2のポリマー(B)(以下、単に第1のポリマー(B)と称す場合がある)と、2官能のニトリルオキシド化合物(C)(以下、単にニトリルオキシド化合物(C)と称す場合がある)と、を用いてブロックコポリマーを製造する方法である。
【0016】
この方法により、第1のポリマー(A)及び第2のポリマー(B)の末端に存在する炭素-炭素二重結合基が、ニトリルオキシド化合物(C)が有するニトリルオキシド基と反応して、少なくとも1つの第1のポリマーセグメント(A’)が、2官能のニトリルオキシド化合物に由来する部位(C’)を介して、2以上の第2のポリマーセグメント(B’)の間に位置する構成を有するブロックコポリマーを製造することができる。なお、本発明において、第1のポリマーセグメント(A’)とは、両末端に炭素-炭素二重結合基を有する第1のポリマー(A)を構成するポリマー部分を意味し、第2のポリマーセグメント(B’)とは、少なくとも一方の末端に炭素-炭素二重結合基を有する第2のポリマー(B)を構成するポリマー部分を意味する。なお、第1のポリマー(A)と第2のポリマー(B)を構成するポリマーの主たる構成単位は異なる。また、ニトリルオキシド化合物(C)に由来する部位(C’)とは、ニトリルオキシド化合物のニトリルオキシド基が、該ニトリルオキシド基とポリマーの炭素-炭素二重結合基との反応により形成されたイソオキサゾリン環に置き換わった構造を意味する。
【0017】
なお、第1のポリマー(A)と、第2のポリマー(B)と、ニトリルオキシド化合物(C)と、を用いて、ブロックコポリマーを製造する際は、第1のポリマー(A)と、第2のポリマー(B)と、ニトリルオキシド化合物(C)と、を同時に反応させてブロックコポリマーを製造してもよいし、下記に示す第1の反応工程と第2の反応工程を有して製造してもよい。
【0018】
第1の反応工程:第1のポリマー(A)及び第2のポリマー(B)のうち一方のポリマーと、ニトリルオキシド化合物(C)とを反応させて変性化合物(D)を得る反応工程
第2の反応工程:該変性化合物(D)と第1のポリマー(A)及び第2のポリマーのうち他方のポリマーとを反応させる反応工程
【0019】
上記の中でも、少なくとも1つの第1のポリマーセグメント(A’)が、2官能のニトリルオキシド化合物に由来する部位(C’)を介して、2以上の第2のポリマーセグメント(B’)の間に位置する構成を有するブロックコポリマーを効率良く製造するためには、後者、すなわち、第1の反応工程と第2の反応工程とを組み合わせてブロックコポリマーを製造することが好ましい。以下、第1の反応工程と、第2の反応工程と、を組み合わせてブロックコポリマーを製造する方法について詳細に説明する。
【0020】
<1.2官能のニトリルオキシド化合物(C)>
本発明において2官能のニトリルオキシド化合物(C)とは、2つの末端にそれぞれニトリルオキシド基を有する化合物を意味するものとする。すなわち、3以上の末端それぞれにニトリルオキシド基を有する化合物は、2官能のニトリルオキシド化合物とは称しないものとする。
【0021】
ニトリルオキシド化合物(C)としては、上述の通り、2つの末端にそれぞれニトリルオキシド基を有してさえいれば特段の制限はないが、好ましくは、下記式(C-1)で表される化合物が挙げられる。
【0022】
【化4】
【0023】
およびRは、それぞれ独立して炭素数4~10の炭化水素基または炭素数4~10のハロゲン化炭化水素基である。炭素数4~10の炭化水素基または炭素数4~10のハロゲン化炭化水素基としては、tert-ブチル基、イソブチル基、フェニル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、4-クロロフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、3,4-ジメチルフェニル基等が挙げられる。RおよびRとしては、ニトリルオキシド化合物の融点が高くなりやすく、ニトリルオキシド基が二量化しにくい点から、炭素数6~8のアリール基が好ましい。炭素数6~8のアリール基としては、フェニル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、4-クロロフェニル基等が挙げられ、フェニル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。RおよびRは、同一であってもよく、異なっていてもよい。RおよびRは、分子の対称性が高くなり、ニトリルオキシド化合物(C)が固体化しやすく、室温での保存安定性に優れる点から、同じであることが好ましい。
【0024】
Xは、2価の炭化水素基、-O-、-S-または-N(R)-である。Xとしては、ニトリルオキシド化合物(C)の合成がさらに容易である点から、-O-または-S-が好ましく、-O-がより好ましく、また、耐熱性の観点からは2価炭化水素基が好ましい。Xにおける2価の炭化水素基としては、炭素数1~3のアルキレン基、炭素数6~8のアリーレン基、これらの組み合わせが挙げられ、中でも、メチレン基が好ましい。Rは、水素原子または炭素数1~6の炭化水素基である。炭素数1~6の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等が挙げられる。Rとしては、ニトリルオキシド化合物(C)の合成がさらに容易である点から、水素原子またはメチル基が好ましい。
【0025】
Yは、2価の有機基である。有機基は、炭素原子を必須とし、必要に応じて水素原子、酸素原子、塩素原子、窒素原子、硫黄原子等を有する。有機基としては、炭化水素基(アルキレン基、アリーレン基等)、炭化水素基と各種結合(-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O) -等)との組み合わせ、炭化水素基と極性官能基(ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、アミノ基、アミド基、アルコキシ基等)との組み合わせ、炭化水素基と各種結合と極性官能基との組み合わせ等が挙げられる。
【0026】
これらの中でも、本発明のニトリルオキシド化合物(C)を、ポリマーに付加する際に、接着性、染色性、反応性等の機能を付与するという観点から、RおよびRが、それぞれ独立して炭素数6~8のアリール基であり、Xが、2価の炭化水素基、-O-、-S-または-N(R)-であり、Yは2価の有機基であることが好ましい。また、Xが、-O-の場合、RおよびRが、それぞれ独立して炭素数6~8のアリール基であり、Yは2価の有機基であることが好ましい。また、Xが、2価の炭化水素基の場合、RおよびRが、それぞれ独立して炭素数6~8のアリール基であり、Yは2価の有機基
であることが好ましい。
【0027】
また、ニトリルオキシド化合物(C)の融点が高くなりやすく、室温での保存安定性に優れる点から、本発明のニトリルオキシド化合物(C)としては、下記の(i)又は(ii)のニトリルオキシド化合物が好ましい。
(i)一般式(C-1)において、Yが炭素数2~10のアルキレン基であるニトリルオキシド化合物。
(ii)一般式(C-1)において、Yが後述する一般式[I]で表される基であるニトリルオキシド化合物。
【0028】
(i)のように対称性が高く、炭素鎖が短いアルキレン基を導入することによって、ニトリルオキシド化合物の融点を高めることができる。
(ii)のように対称性が高く、剛直なアリーレン基を有する一般式[I]で表される基を導入することによって、ニトリルオキシド化合物の融点を高めることができる。
【0029】
(i)におけるYは、炭素数2~10のアルキレン基である。(i)におけるYとしては、室温以上の融点を発現させ、ニトリルオキシド化合物を固体化させ、ポリオレフィンに近い融点を発現させる点から、炭素数3~8のアルキレン基が好ましく、炭素数4~6のアルキレン基がより好ましい。(i)におけるYとしては、1,2-エチレン基、1,3-プロピレン基、2-メチル-1,3-プロピレン基、2,2-ジメチル-1,3-プロピレン基、1,4-ブチレン基、1,5-ペンチレン基、1,6-ヘキシレン基、1,7-ヘプチレン基、1,8-オクチレン基、3-メチル-1,5-ペンチレン基、1,4-シクロへキシレン基、1,4-シクロヘキサジメチレン基、1-メチル-1,2-エチレン基、1-メチル-1,3-プロピレン基等が挙げられる。(i)におけるAとしては、1,3-プロピレン基、1,4-ブチレン基、1,6-ヘキシレン基、1,4-シクロヘキサジメチレン基、1,4-シクロへキシレン基、3-メチル-1,5-ペンチレン基が好ましく、1,4-ブチレン基、1,6-ヘキシレン基、3-メチル-1,5-ペンチレン基がより好ましい。
【0030】
(ii)におけるYは、一般式(I)で表される基である。
-(R-O)-R-(O-R- ・・・(I)
mは、0または1である。kは、ニトリルオキシド化合物の製造のしやすさの点からは、1が好ましく、ニトリルオキシド化合物の融点の点からは、0が好ましい。Rは、炭素数2~4のアルキレン基である。Rとしては、1,2-エチレン基、1,3-プロピレン基等が挙げられる。Rとしては、炭素数が小さいほどニトリルオキシド化合物の融点を高めることができる点から、1,2-エチレン基が好ましい。
【0031】
は、一般式(II)で表される基または一般式(III)で表される基である。Rとしては、一般式(III)で表される基が好ましく、ニトリルオキシド化合物により高い融点を発現する観点からは、一般式(II)で表される基であることが好ましい。また、Rとしては、変性後ポリマーの末端部と導入官能基の距離を長くし、変性ポリマーの反応性を高める点から、一般式(III)で表される基が好ましい。
【0032】
【化5】


【0033】
~Rは、それぞれ独立して水素原子、炭素数1~6の炭化水素基またはハロゲン原子であり、RとRが連結して芳香族環または脂肪族環を形成してもよく、RとRが連結して芳香族環または脂肪族環を形成してもよい。炭素数1~6の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。R~Rとしては、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、フェニル基、塩素原子が好ましく、水素原子、メチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基がより好ましく、水素原子、メチル基がさらに好ましい。
【0034】
10~R17は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1~6の炭化水素基またはハロゲン原子であり、R10とR11が連結して芳香族環または脂肪族環を形成してもよくR12とR13が連結して芳香族環または脂肪族環を形成してもよく、R14とR15が連結して芳香族環または脂肪族環を形成してもよく、R16とR17が連結して芳香族環または脂肪族環を形成してもよい。炭素数1~6の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。R10~R17としては、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、フェニル基、塩素原子が好ましく、水素原子、メチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基がより好ましく、水素原子、メチル基がさらに好ましい。
【0035】
nは0または1である。nは、溶解性の観点から、1が好ましい。また、nは、変性後にポリマー末端部と導入官能基の距離を長くし、変性ポリマーの反応性を高める点から、1が好ましい。
【0036】
Qは、-C(R18)(R19)-、-C(=O)-、-S-または-S(=O)-である。Qとしては、溶解性の観点から、-C(R 18 )(R 19 )-が好ましい。R18およびR19は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1~6の炭化水素基またはハロゲン原子であり、R18とR19が連結して芳香族環または脂肪族環を形成してもよい。炭素数1~6の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基等が挙げられる。R18とR19が連結した例としては、1,1-シクロへキシレン基が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。R18およびR19としては、水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基が好ましい。
【0037】
ニトリルオキシド化合物の好ましい具体例としては、下記の化合物が挙げられる。構造式中の「Ph」はフェニル基を意味する。
【0038】
【化6】
【0039】
【化7】
【0040】
【化8】
【0041】
【化9】
【0042】
上記に例示した化合物以外にもニトリルオキシド基のα位のフェニル基がメチルフェニル基やジメチルフェニル基に置換された構造も同様に例示することができる。
【0043】
ニトリルオキシド化合物(C)の融点は、特段の制限はないが、室温での保存安定性の向上のために、25℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがさらに好ましく、60℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることが特に好ましい。一方、後述の溶液反応中にニトリルオキシド化合物(C)を融解しやすくして反応性を高めるため、ニトリルオキシド化合物(C)の融点は、300℃以下が好ましく、280℃以下がさらに好ましく、260℃以下がより好ましく、240℃以下が特に好ましい。なお、ニトリルオキシド化合物(C)の融点を25℃以上とするためには、例えば、式(V)中のXに対称性の高い構造を有する基を用いたり、剛直性の高い基、又は短鎖の基を導入したりすることが好ましい。
【0044】
ニトリルオキシド化合物(C)のニトリルオキシド当量は、特段の制限はないが、1.0~4.5mmol/gであることが好ましく、1.2~4.4mmol/gであることがさらに好ましく、1.5~4.3mmol/gであることがより好ましい。ニトリルオキシド化合物(C)のニトリルオキシド当量が前記範囲の下限値以上であれば、質量当たりの官能基量が多くなる。また、ニトリルオキシド化合物(C)の分子量が低く抑えられるため、特にポリマーとの反応では相溶性や粘度比の問題が発生しにくい。そのため、ニトリルオキシド化合物(C)の反応性が高くなる。また、ニトリルオキシド化合物(C)のニトリルオキシド当量が前記範囲の上限値以下であれば、分子量運動が抑制され、分子間二量化の副反応が抑制されやすくなる。
【0045】
ニトリルオキシド化合物(C)の製造方法は特段の制限はなく公知の方法により製造することができる。例えばchemisty Letters、第46巻、2017年、315-318頁を参照して製造することができる。
【0046】
<2.両末端に炭素-炭素二重結合基を有する第1のポリマー(A)>
両末端に炭素-炭素二重結合基を有する第1のポリマー(A)を構成するポリマーとしては特段の制限はなく、第2のポリマー(B)との組み合わせにより、ブロックコポリマーとして所望の物性が得られるように任意で選択すればよい。このようなポリマーの具体例としては、オレフィン系ポリマー、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー、アクリロニトリル系ポリマー、スチレン系ポリマー、カーボネート系ポリマー、アミド系ポリマー、芳香族エステル系ポリマー、脂肪族エステル系ポリマー、塩化ビニル化系ポリマー、フェニレンエーテル系ポリマー、アセタール系ポリマー、スルフォン系ポリマー、アリレート系ポリマー、フェニレン系ポリマー、フェニレンスルフィド系ポリマー、アミドイミド系ポリマー、エーテルイミド系ポリマー、ウレタン系ポリマー、又はこれらのコポリマーが挙げられる。
【0047】
オレフィン系ポリマーの主たる構成単位となるモノマーとしては、特段の制限はないが、炭素数2以上のオレフィンであることが好ましい。一方、炭素数20以下のオレフィンであることが好ましく、炭素数16以下のオレフィンであることがさらに好ましく、炭素数10以下のオレフィンであることが特に好ましい。このようなオレフィンの具体例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、シクロペンテン、1,3-ブタジエン、イソプレン、又はこれらのブロックコポリマー並びにランダムコポリマーが挙げられる。なかでも、得られるブロックコポリマーの耐熱性の点から、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン、1,3-ブタジエン、イソプレン、又はこれらのブロックコポリマー並びにランダムコポリマーが好ましく、イソブチレンであることが特に好ましい。すなわち、第1のポリマー(A)は、イソブチレンを主たる構成単位とする、両末端に炭素-炭素二重結合基を有するポリマーであることが特に好ましい。なお、本発明において、主たる構成単位とは、ポリマーを構成する全構成単位の中で、最もモル比の大きい構成単位を意味するものとする。
【0048】
メタクリル酸系ポリマーの主たる構成単位となるモノマーとしては、特段の制限はないが、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2-ヒドロキシブチル、メタクリル酸3-ヒドロキシブチル、メタクリル酸4-ヒドロキシブチル、メタクリル酸ポリエチレングリコール、メタクリル酸ポリプロピレングリコール、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸エトキシエチル、メタクリル酸n-ブトキシエチル、メタクリル酸イソブトキシエチル、メタクリル酸t-ブトキシエチル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸ノニルフェノキシエチル、メタクリル酸3-メトキシブチルなどが挙げられる。
【0049】
アクリル酸系ポリマーの主たる構成単位となるモノマーとしては、特段の制限はないが、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸2-ヒドロキシブチル、アクリル酸3-ヒドロキシブチル、アクリル酸4-ヒドロキシブチル、アクリル酸ポリエチレングリコール、アクリル酸ポリプロピレングリコール、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシエチル、アクリル酸n-ブトキシエチル、アクリル酸イソブトキシエチル、アクリル酸t-ブトキシエチル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸ノニルフェノキシエチル、アクリル酸3-メトキシブチルなどが挙げられる。
【0050】
なかでも、(メタ)アクリル酸系ポリマーの主たる構成単位となるモノマーは、(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、なかでも、好ましい(メタ)アクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸メチル、アクリル酸n-ブチル、又はアクリル酸2-エチルヘキシルが挙げられる。すなわち、第2のポリマーセグメントとしては、(メタ)アクリル酸エステルのホモポリマー又は(メタ)アクリル酸エステル同士のコポリマーであることが好ましく、なかでも、メタクリル酸メチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸メチル、アクリル酸n-ブチル、又はアクリル酸2-エチルヘキシルのホモポリマー、又はこれらのコポリマーであることがさらに好ましい。これらのなかでも、第2のポリマーセグメントは、メタクリル酸メチル又はアクリル酸メチルのホモポリマー又はメタクリル酸メチルとアクリル酸メチルとのコポリマーがより好ましく、メタクリル酸メチルとアクリル酸メチルとのランダムコポリマーが特に好ましい。
【0051】
アクリロニトリル系ポリマーの主たる構成単位となるモノマーとしては、特段の制限はないが、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-クロロアクリロニトリルなどが挙げられる。
【0052】
スチレン系ポリマーの主たる構成単位となるモノマーとしては、特段の制限はないが、スチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、α-メチルスチレン、o-,m-,p-メチルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレンなどが挙げられる。
【0053】
第1のポリマー(A)の重量平均分子量は特段の制限はないが、成形体の機械強度のために、10000以上であることが好ましく、20000以上であることがさらに好ましく、30000以上であることが特に好ましく、一方、成形体作製時の加工性のために、1000000以下であることが好ましく、300000以下であることがさらに好ましく、150000以下であることが特に好ましい。なお、第1のポリマー(A)の重量平均分子量はゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0054】
これらのポリマーの製造方法は特段の制限はなく、公知の方法により製造することが出来る。例えば、モノマーの重合反応により製造することができる。
【0055】
上記のような両末端に炭素-炭素二重結合基を有するポリマーを製造する方法としては、例えば、2官能の開始剤を用いて重合反応を行い、両末端の官能基に炭素-炭素二重結合基を導入する方法が挙げられる。ポリマーの末端に炭素-炭素二重結合基を導入する方法は、特段の制限はなく、公知の方法を用いることができる。例えば特開平3-152164号公報等に記載された方法を参照することができる。
【0056】
<3.少なくとも一方の末端に炭素-炭素二重結合基を有する第2のポリマー(B)>
少なくとも一方の末端に炭素-炭素二重結合基を有する第2のポリマー(B)としては、少なくとも一方の末端に炭素-炭素二重結合基を有するポリマーであれば特段の制限はない。
【0057】
少なくとも一方の末端に炭素-炭素二重結合基を有する第2のポリマー(B)を構成するポリマー部分としては特段の制限はなく、第1のポリマー(A)との組み合わせにより、ブロックコポリマーとして所望の物性が得られるように任意で選択すればよい。このようなポリマーの具体例としては、上述の第1のポリマー(A)において説明したポリマーが挙げられる。しかしながら、所望の特性を有するブロックコポリマーを製造するために、第2のポリマー(B)を構成する主たる構成単位のモノマーは、第1のポリマー(A)を構成する主たる構成単位とは異なるモノマーであることが好ましい。
【0058】
上記のなかでも、柔軟性や成形加工性、及び高い耐熱性の特性を有するブロックコポリマーを製造するために、第1のポリマー(A)が、オレフィン又は(メタ)アクリル酸エステルを主たる構成単位とするポリマーであり、第2のポリマー(B)が、オレフィン又は(メタ)アクリル酸エステル又はスチレンを主たる構成単位とするポリマーである組み合わせが好ましい。なかでも、第1のポリマー(A)がオレフィンを主たる構成単位とするポリマーであり、第2のポリマー(B)が(メタ)アクリル酸エステルを主たる構成単位とするポリマーである組み合わせがさらに好ましい。
【0059】
第2のポリマー(B)の重量平均分子量は特段の制限はないが、成形体の機械強度向上のために、3000以上であることが好ましく、5000以上であることがさらに好ましく、10000以上であることが特に好ましく、一方、成形体作製時の加工性のために、500000以下であることが好ましく、300000以下であることがさらに好ましく、100000以下であることが特に好ましい。なお、第2のポリマー(B)の重量平均分子量はゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0060】
ポリマーの少なくとも一方の末端に炭素-炭素二重結合基を導入する方法は特段の制限はなく、公知の方法を用いることができる。
【0061】
ポリマーの片末端に炭素-炭素二重結合基を有するポリマーを製造する方法としては単官能の開始剤を用いて重合反応を行う際、或いは行った後に、片末端の官能基に炭素-炭素二重結合基を導入すれば良い。例えば、第2のポリマー(B)が、(メタ)アクリル酸エステルを主たる構成単位とするポリマーである場合には、重合反応時に末端に炭素-炭素二重結合基を導入することも出来る。具体的には、例えば、コバルト連鎖移動剤を用いて製造する方法(米国特許第4680352号)、α-ブロモメチルスチレン等のα置換不飽和化合物を連鎖移動剤として用いる方法(国際特許公開88/04304号パンフレット)等を参照することができる。これらの中で、片末端に炭素-炭素二重結合基を有する第2のポリマーの製造方法としては、製造工程数が少なく、触媒使用量が少ない点でコバルト連鎖移動触媒を用いて製造する方法が好ましい。なお、両末端に炭素-炭素二重結合基を有するポリマーを製造する場合、上述の両末端に炭素-炭素二重結合基を有する第1のポリマー(A)の製造方法を適用することができる。
【0062】
<4.第1の反応工程>
上述の通り、第1の反応工程は、第1のポリマー(A)及び第2のポリマー(B)のうち一方のポリマーと、ニトリルオキシド化合物(C)と、を反応させて、変性ポリマー(D)を得る工程である。
【0063】
第1の反応工程において、第1のポリマー(A)又は第2のポリマー(B)が有する炭素-炭素二重結合基と、ニトリルオキシド化合物(C)が有するニトリルオキシド基とが反応することにより変性ポリマー(D)が得られることになる。
【0064】
すなわち、第1の反応工程においてニトリルオキシド化合物(C)と反応させるポリマーが第1のポリマー(A)の場合、主に下記式(D-1)で表される変性ポリマーが得られることになる。
【0065】
【化10】
【0066】
式(D-1)中、mは、1以上の整数を表わす。但し、効率良く所望のブロックコポリマーを製造するために、mは、5以下であることが好ましく、3以下であることがさらに好ましく、1であることが特に好ましい。
【0067】
aは、前記第1のポリマー(A)を構成するポリマー部分を表わす。より具体的には、末端の炭素-炭素二重結合基が、ニトリルオキシド化合物(C)のニトリルオキシド基と反応して形成されたイソオキサゾリン環以外の第1のポリマー(A)由来の構造を表わす。cは、ニトリルオキシド化合物(C)の構造からニトリルオキシド基を除いた構造を表わす。
【0068】
式(D-1)中、R21は水素原子または1価の有機基である。なお、R21は、第1のポリマー(A)を構成する構成単位に由来する基である。
【0069】
1価の有機基としては、炭化水素基、炭化水素基と各種結合(-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)-等)との組み合わせ、炭化水素基と極性官能基(ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、アミノ基、アミド基、アルコキシ基等)との組み合わせ、炭化水素基と各種結合と極性官能基との組み合わせ等が挙げられる。
【0070】
炭化水素基としては、好ましくは、アルキル基又はアリール基が挙げられる。
【0071】
アルキル基としては、特段の制限はなく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。
【0072】
アリール基としては、特段の制限はなく、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0073】
炭化水素基と各種結合との組み合わせとしては、好ましくは、アルキルエステル基が挙げられる。アルキルエステル基としては、特段の制限はなく、メチルエステル基、エチルエステル基、n-プロピルエステル基、n-ブチルエステル基等が挙げられる。
【0074】
炭化水素基と各種結合と極性官能基との組み合わせとしては、好ましくは、グリシジルエステル基、2-ヒドロキシエチルエステル基、2-ヒドロキシプロピルエステル基、ポリエチレングリコールエステル基、ポリプロピレングリコールエステル基、メトキシエチルエステル基、エトキシエチルエステル基、フェノキシエチルエステル基等が挙げられる。
【0075】
22およびR23は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1以上8以下の炭化水素基である。炭化水素基としては、アルキル基が好ましい。炭素数1以上8以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。なかでも、ブロックコポリマー製造時の反応性を高めるという点から、R22およびR23は、それぞれ独立して、立体障害の小さな水素原子又はメチル基が好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0076】
一方、第1の反応工程において、ニトリルオキシド化合物(C)と反応させるポリマーとして第2のポリマー(B)を用いる場合、主に下記式(D-2)で表される変性ポリマーが得られることになる。
【0077】
【化11】




【0078】
式(D-2)中、cは、式(D-1)中のcと同義である。bは、前記第2のポリマー(B)を構成するポリマー部分を表わす。より具体的には、末端の炭素-炭素二重結合基が、ニトリルオキシド化合物(C)のニトリルオキシド基と反応して形成されるイソオキサゾリン環を除いた第2のポリマー(B)由来の構造を表わす。
【0079】
第1の反応工程において、ニトリルオキシド化合物(C)と反応させるポリマーの末端の炭素-炭素二重結合基量に対するニトリルオキシド化合物(C)のモル比は、特段の制限はないが、2.0以上であることが好ましく、3.0以上であることがさらに好ましく、一方、20.0以下であることが好ましく、10.0以下であることがさらに好ましく、5.0以下であることが特に好ましい。
【0080】
上述の通り、第1の反応工程におけるポリマーの末端の炭素-炭素二重結合基量に対するニトリルオキシド化合物(C)のモル比が2.0以上であることにより、式(D-1)中のmが1である変性ポリマーが得られやすくなり、その結果、分子量分布が均一であり、かつ多量の変性ポリマー(D)が得られる傾向がある。一方、第1の反応工程におけるポリマーの末端の炭素-炭素二重結合基量に対するニトリルオキシド化合物(C)のモル比が20.0以下であることにより、第1の反応工程後に残存するニトリルオキシド化合物(D)を少なくすることができる。
【0081】
<5.第2の反応工程>
第2の反応工程において、上述の通り、変性ポリマー(D)と、第1のポリマー(A)と第2のポリマー(B)のうちの他方のポリマーと反応させてブロックコポリマーを製造することができる。
【0082】
すなわち、第1の反応工程において、第1のポリマー(A)を用いて変性ポリマー(D-1)を製造した場合、第2の反応工程において、該変性ポリマー(D-1)と、第2のポリマー(B)と反応させてブロックコポリマーを製造することができる。一方、第1の反応工程において、第2のポリマー(B)を用いて変性ポリマー(D-2)を製造した場合、該変性ポリマー(D-2)と第1のポリマー(A)とを反応させてブロックコポリマーを製造することができる。
【0083】
第2の反応工程において用いる第1のポリマー(A)及び第2のポリマー(B)の他方のポリマーの末端の炭素-炭素二重結合基量の、第1の反応工程において用いた第1のポリマー(A)及び第2のポリマー(B)の一方のポリマーの末端の炭素-炭素二重結合基量に対するモル比は、0.5以上であることが好ましく、0.8以上であることがさらに好ましく、1.0以上であることが特に好ましく、一方、5.0以下であることが好ましく、3.0以下であることがさらに好ましく、2.0以下であることが特に好ましい。
【0084】
上述の通り、第1のポリマー(A)及び第2のポリマー(B)の他方のポリマーの末端の炭素-炭素二重結合基量の、第1の反応工程において用いた第1のポリマー(A)及び第2のポリマー(B)の一方のポリマーの末端の炭素-炭素二重結合基量に対するモル比が0.5以上であることにより、ブロックコポリマー中のニトリルオキシド基の残存が少なくなり、より効率的にブロックコポリマーが得られる傾向がある。一方、第1のポリマー(A)及び第2のポリマー(B)の他方のポリマーの末端の炭素-炭素二重結合基量の、第1の反応工程において用いた第1のポリマー(A)及び第2のポリマー(B)の一方のポリマーの末端の炭素-炭素二重結合基量に対する第2のポリマー(B)のモル比が5.0以下であることにより、残存する未反応のポリマーが少なくなる傾向がある。
【0085】
<6.第1の反応工程及び第2の反応工程におけるその他の条件>
第1の反応工程において、ニトリルオキシド化合物(C)と第1のポリマー(A)とを反応させる場合、目的とする変性ポリマー(D)が得られる限りにおいて、系中に、他のポリマーが存在していてもよい。この場合、例えば、第2のポリマー(B)が存在していてもよいし、第1のポリマー(A)及び第2のポリマー(B)以外のポリマーが存在していてもよい。同様に、第1の反応工程において、ニトリルオキシド化合物(C)と第2のポリマー(B)とを反応させる場合、目的とする変性ポリマー(D)が得られる限りにおいて、系中に、他のポリマーが存在していてもよい。この場合、例えば、第1のポリマー(A)が存在していてもよいし、第1のポリマー(A)及び第2のポリマー(B)以外のポリマーが存在していてもよい。但し、所望の変性ポリマー(D)を効率良く得るために、第1の反応工程において、ポリマーの全仕込み量に対するその他のポリマーの重量比は、20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがさらに好ましく、5重量%以下であることが特に好ましい。
【0086】
同様に、第2の反応工程において、変性ポリマー(D)と第1のポリマー(A)とを反応させる場合、目的とするブロックコポリマーが得られる限りにおいて、系中に、他のポリマーが存在していてもよい。この場合、例えば、第2のポリマー(B)が存在していてもよいし、第1のポリマー(A)及び第2のポリマー(B)以外のポリマーが存在していてもよい。また、第2の反応工程において、変性ポリマーと第1のポリマー(A)とを反応させる場合、目的とするブロックコポリマーが得られる限りにおいて、系中に、他のポリマーが存在していてもよい。この場合、例えば、第2のポリマー(B)が存在していてもよいし、第1のポリマー(A)及び第2のポリマー(B)以外のポリマーが存在していてもよい。但し、所望の変性ポリマー(D)を効率良く得るために、第2の反応工程において、ポリマーの全仕込み量に対するその他のポリマーの重量比は、20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがさらに好ましく、5重量%以下であることが特に好ましい。
【0087】
第1の反応工程、及び第2の工程における反応は、溶媒を使用してもよいし、溶媒を使用しなくてもよい。
【0088】
溶媒を用いる場合、溶媒は特段の制限はないが、第1のポリマー(A)、第2のポリマー(B)及び/又は化合物(C)に溶解しやすく、かつ、第1のポリマー(A)及び/又は第2のポリマー(B)と反応しない溶媒が好ましい。具体的には、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、N,N-ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
【0089】
反応を無溶媒で行う場合には、空気下で行っても良く、不活性ガスが充填された雰囲気下で行ってもよい。不活性ガスとしては、特に限定されないが、アルゴンガス、窒素ガス等が挙げられる。
【0090】
反応を無溶媒で行う場合には、効率よく反応を進める点から、混練装置を用いて混練装置内で反応を行うことが好ましい。溶融混練の方法としては、二軸押出機、バンバリーミキサー等の公知の装置を用いる方法が挙げられる。溶融混練の方法の詳細は、例えば、”Thermoplastic Elastomers 2nd.ed.”,Hanser Gardner Publications,1996年,p.153-190を参照することができる。
【0091】
溶媒を用いる場合の反応温度は、特段の制限はないが、50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがさらに好ましく、80℃以上であることが特に好ましく、一方、200℃以下であることが好ましく、180℃以下であることがさらに好ましく、150℃以下であることが特に好ましい。
【0092】
溶媒を用いる場合の反応時間は、特段の制限はないが、30分以上であることが好ましく、1時間以上であることがさらに好ましく、2時間以上であることが特に好ましく、一方、24時間以下であることが好ましく、15時間以下であることがさらに好ましく、10時間以下であることが特に好ましい。
【0093】
なお、第1の反応工程における反応条件と、第2の工程における反応条件は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0094】
本実施形態に係るブロックコポリマーの製造方法は、上述の第1の反応工程及び第2の反応工程を含むことが好ましいが、他の工程を含んでいてもよい。
【0095】
例えば、下記理由により、第1の反応工程後に、再沈殿を行うことが好ましい。第1の反応工程後には、系中にニトリルオキシド化合物(C)が残存する場合がある。この場合、第2の反応工程において、該ニトリルオキシド化合物が、第1のポリマー(A)及び第2のポリマー(B)のうち他方のポリマーと反応してしまい、所望のブロックコポリマーを効率的に製造するのが困難となる場合がある。そのため、第1の反応工程後に、系中からニトリルオキシド化合物(C)を除去するために再沈殿を行うことが好ましい。再沈殿の条件は特段の制限はなく公知の方法により行うことができるが、系中にニトリルオキシド化合物(C)が溶解しやすい溶媒を加え、その後、該溶媒を分離することが好ましい。
【0096】
再沈殿を行う際に使用する溶媒としては、ニトリルオキシド化合物(C)を溶解させられるものであれば特段の制限はないが、第1の反応工程により得られる変性ポリマー(D)は不溶である溶媒が好ましい。このような溶媒としては、例えば、アセトン、2-ブタノン等が挙げられるが、汎用性の観点からアセトンが特に好ましい。
【0097】
なお、再沈殿を行う場合、第1の反応工程において使用するポリマーは、第1のポリマー(A)及び第2のポリマー(B)のうち、再沈殿に使用する溶媒に対して溶解性が低いポリマーを使用することが好ましい。第1の反応工程により、再沈殿に使用する溶媒に対して溶解性が低いポリマーを使用することにより、第1の反応工程後の再沈殿の際に、残存するニトリルオキシド化合物(C)と、ポリマーとニトリルオキシド化合物(C)との反応により得られた変性ポリマー(D)との分離を効率的に行うことができる。
【0098】
<7.ブロックコポリマー>
上述の通り、本発明に係る製造方法により、少なくとも1つの第1のポリマーセグメント(A’)が、下記式(E-1)で表される2官能のニトリルオキシド化合物に由来する部位(C’)を介して、2以上の第2のポリマーセグメント(B’)の間に位置する構成を含むブロックコポリマーを得ることができる。
【0099】
【化12】






式(E-1)においてc、R21、R22、R23は、それぞれ、式(D-1)中のc、R21、R22、R23と同義である。なお、上記式(E-1)中には、R21、R22、R23基がそれぞれ2つ存在しているが、これらはそれぞれ互いに同じ基であってもよいし、異なる基であってもよい。
【0100】
なかでも、上記式(E-1)は、下記式(E-2)で表される構造であることが好ましい。
【0101】
【化13】







式(E-2)において、R、R、R21、R22、R23、XおよびYは、それぞれ、式(D-1)中のR21、R22、R23、XおよびYと同義である。すなわちこれらの好ましい基は、式(C-1)における説明を参照することができる。なお、上記式(E-1)中には、R21、R22、R23がそれぞれ2つ存在しているが、これらはそれぞれ互いに同じ基であってもよいし、異なる基であってもよい。
【0102】
なお、第1のポリマーセグメント(A’)及び第2のポリマーセグメント(B’)は、上述の第1のポリマー(A)及び第2のポリマー(B)において説明したポリマーが挙げられ、好ましい組み合わせも同様である。
【0103】
このようなブロックコポリマーとして具体的には、下記式(E-3)で表されるブロックコポリマーが挙げられる。
【0104】
【化14】

上記式(E-3)中、a、b、c、R21、R22、R23、及びmは、それぞれ、式(D-1)及び式(D-2)中のa、b、c、R21、R22、R23、及びmと同義である。
なお、上記式(E-3)中の、R21、R22、R23はそれぞれ互いに同じ基であってもよいし、異なる基であってもよい。
【0105】
本実施形態に係るブロックコポリマーは、特段の制限はないが、熱可塑性エラストマーとして使用することができる。例えば、自動車部品、電気・電子部品、包装材料、建築材料、土木材料、雑貨品等の分野において、シート、フィルム材料、制振材、防振剤、グリップ、緩衝材等の成形体等に使用することができる。
【0106】
本実施形態に係るブロックコポリマーを含む成形体を製造する方法は、特段の制限はなく、該コポリマーを含む組成物を射出成形、押出成形、射出延伸ブロー成形、ブロー成形、キャスト成形、プレス成形、スタンピング成形、インフレーション成形、ロール成形等の公知の方法を使用すればよい。これらの成形方法により目的とする成形体、例えば、フィルム、シート、中空成形体、射出成形体、繊維等に加工することができる。
【0107】
組成物中に含まれる本実施形態に係るブロックコポリマー以外の化合物としては、特段の制限はない。例えば、用途に合わせて他の化合物を含有していてもよい。また、紫外線吸収剤、難燃剤、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、抗菌剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、スリップ防止剤、発泡剤、防曇剤、衝撃改良剤、粘着剤等の添加剤を含有していてもよい。これらのポリマーや添加剤は公知の物を使用することができる。また、組成物に本実施形態に係るブロックコポリマー以外の化合物や添加剤を含有する場合、各含有割合は、用途に合わせて適宜、選択すればよい。
【実施例
【0108】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は以下の例によって限定されるものではない。なお、実施例における重量平均分子量、ポリマーの炭素-炭素二重結合基量、ガラス転移温度、ヘーズ、及び全光線透過率は下記の方法により測定した。
【0109】
(重量平均分子量)
重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)(東ソー社製、商品名:HLC-8220)を使用し、以下の条件にて測定した。
カラム:TSK GUARD COLUMN SUPER H―H(4.6×35mm)と2本のTSK-GEL SUPER HM-H(6.0×150mm)を直列に接続
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
流速:0.6mL/分
なお、重量平均分子量はPolymer Laboratories製のPMMA(Mp(ピークトップ分子量)=2,100,000、1,100,000、600,000、300,000、122,300、50,100、35,000、11,800、4,900および1,950の10種)を用いて作成した検量線を使用して求めた。
【0110】
(炭素-炭素二重結合基量)
ポリマーの末端の炭素-炭素二重結合基量は、H-NMR測定によりポリマー主鎖のピークの積分値と炭素-炭素二重結合基のピークの積分値との比から求めることが出来る。H-NMR測定は核磁気共鳴装置を用いて実施した。以下に測定条件を示す。
装置:UNITY INOVA500(Varian社製)
重溶媒:重クロロホルム(シグマ-アルドリッチ社製)
測定条件:積算回数1000回、測定温度23℃
【0111】
(引張測定)
JIS K7127に準拠して、テンシロン万能試験機RTC-1250A(オリエンテック社製)を用いて試験片の引張試験を行った。室温23℃及び引張速度5mm/分で引張試験を実施して得られた応力歪み曲線から、引張応力と破断点伸度を求めた。
【0112】
(ガラス転移温度)
動的機械的特性解析装置(セイコーインスツル社製、商品名:EXSTAR DMS6100)により、引張りモード、昇温速度2℃/分、周波数1Hzの条件でtanδ曲線を測定し、25℃以上のtanδ曲線のピークトップの温度をガラス転移温度として測定した。
【0113】
(ヘーズ)
JIS K7136に準拠して、ヘーズメーター(日本電色工業社製、商品名:NDH2000)を用いて試験片のヘーズを測定した。
【0114】
(全光線透過率)
JIS K7361-1に準拠して、ヘーズメーター(日本電色工業社製、商品名:NDH2000)を用いて試験片の全光線透過率を測定した。
【0115】
[製造例1:ニトリルオキシド化合物(a)の合成]
【0116】
【化15】
【0117】
1,6-ヘキサンジオール14.17g(120mmol)を脱水テトラヒドロフラン120mLに溶解し、0℃に冷却した。この溶液に、窒素ガス下で水素化ナトリウム16g(400mmol)を加え、0℃で1時間撹拌した。この液に、1-ニトロ-2,2-ジフェニルエチレン60g(266mmol)を加え、20℃で16時間撹拌した。溶液を0℃に冷却した後、2mol/Lの塩化水素水溶液でpHが6~7となるように中和した。中和後の液について、ジクロロメタンを用いて抽出を行った。ジクロロメタン溶液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した。ろ液を濃縮し、精製した。得られた固体を酢酸エチルで洗浄することによって白色固体の化合物(a-1)を50g得た(収率70%)。
【0118】
化合物(a-1)のNMRスペクトル:
H-NMR(400MHz,CDCl):δ7.36-7.24(m,20H),5.34(s,4H),3.35(t,4H)、1.74-1.61(m,4H),1.47-1.32(m,4H)ppm.
【0119】
化合物(a-1)を25g(44.0mmol)、脱水ジクロロメタン750mLに溶解した。この溶液に、4-クロロフェニルイソシアネート22.5mL(176mmol)、トリエチルアミン26.90g(266mmol)及びモレキュラーシーブス4Aを50g投入し、窒素ガス下、20℃で16時間撹拌した。溶液をろ過し、ろ液を濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(酸性シリカゲル、溶媒:n-ヘキサン/酢酸エチル1=0,3/1)で精製した。白色固体のニトリルオキシド化合物(a)を7.87g得た(収率34%)。
【0120】
ニトリルオキシド化合物(a)のNMRスペクトル:
H-NMR(400MHz,CDCl):δ7.44-7.30(m,20H),3.45(t,4H),1.69(m,4H),1.41(m,4H)ppm.
【0121】
[製造例3:変性ポリマー(1)の合成]
攪拌機、冷却管、および温度計を備えた反応容器内に、アリル基末端ポリイソブチレン(カネカ社製、商品名:エピオンEP400A)100質量部、上記のニトリルオキシド化合物(a)10.6質量部およびトルエン900質量部を添加、撹拌して、均一な溶液とした。次に、溶液を110℃に昇温してから5時間保持した後、室温に冷却して反応溶液を得た。攪拌機を備えたビーカーにアセトン10,000質量部を仕込み、室温で撹拌しながら、反応溶液を注入し、沈殿物を得た。トルエン及びアセトンをデカンテーションにて除去した後、減圧下40℃にて12時間乾燥し、変性ポリマー(1)を得た。得られた変性ポリマー(1)の重量平均分子量は20,000であった。
【0122】
[製造例4:分散剤の合成]
撹拌機、冷却管および温度計を備えた反応容器内に、17%水酸化カリウム水溶液61.6質量部、メタクリル酸メチル19.1質量部及び脱イオン水19.3質量部を仕込んだ。次に、反応容器内の液を室温にて撹拌し、発熱ピークを確認した後、更に4時間撹拌した。この後、反応装置内の反応液を室温まで冷却してメタクリル酸カリウム水溶液を得た。
【0123】
次に、撹拌機、冷却管および温度計を備えた反応容器内に、脱イオン水900質量部、42質量%メタクリル酸2-スルホエチルナトリウム水溶液(三菱ケミカル社製、商品名:アクリエステルSEM-Na)70質量部、上記のメタクリル酸カリウム水溶液16質量部およびメタクリル酸メチル7質量部を入れて撹拌し、反応容器内を窒素置換しながら、50℃に昇温した。その中に、重合開始剤としてV-50(和光純薬工業社製、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、商品名)0.053質量部を添加し、更に60℃に昇温した。重合開始剤投入後、15分毎にメタクリル酸メチル1.4質量部ずつ、計5回(メタクリル酸メチルの合計量7質量部)、分割添加した。この後、反応容器内の液を撹拌しながら60℃で6時間保持した後、室温に冷却して、固形分8質量%の分散剤を得た。
【0124】
[製造例5:連鎖移動剤(1)の合成]
撹拌装置を備えた反応容器中に、窒素雰囲気下で、酢酸コバルト(II)四水和物(和光純薬社製)2.00g(8.03mmol)およびジフェニルグリオキシム(東京化成社製)3.86g(16.1mmol)および予め窒素バブリングにより脱酸素したジエチルエーテル100mlを入れ、室温で2時間攪拌した。次に、反応容器中に三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(東京化成社製)20mlを加え、更に6時間攪拌した。得られたものを濾過し、固体をジエチルエーテルで洗浄し、減圧下で、20℃において12時間乾燥し、茶褐色固体の連鎖移動剤5.02g(7.93mmol、収率99質量%)を得た。
【0125】
[製造例6:末端に炭素-炭素二重結合基を有するポリマー(b-1)の合成]
撹拌機、冷却管および温度計を備えた反応容器中に、脱イオン水145質量部、硫酸ナトリウム(NaSO)0.1質量部および製造例4により得られた分散剤(固形分8質量%)0.26質量部を入れて撹拌した。次に、メタクリル酸メチル95質量部、アクリル酸メチル5質量部、製造例5により得られた連鎖移動剤0.01質量部及び重合開始剤としてパーオクタO(日油社製、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、商品名)1.5質量部を加え、水性分散液とした。この後、反応容器内を十分に窒素置換し、水性分散液を80℃に昇温してから3時間保持し、更に90℃に昇温して2時間保持した。その後、反応液を40℃に冷却して、水性懸濁液を得た。この水性懸濁液を濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄し、40℃で16時間乾燥して、片末端に炭素-炭素二重結合基を有するポリマー(b-1)を得た。得られた末端が炭素-炭素二重結合基を有するポリマー(b-1)の重量平均分子量は8,000であり、末端の炭素-炭素二重結合基量はポリマー1gに対して0.25mmolであった。
【0126】
[実施例1:ブロックコポリマーの合成および物性評価]
攪拌機、冷却管、および温度計を備えた反応容器内に、製造例3により得られた変性ポリマーを60質量部、製造例6により得られた、末端に炭素-炭素二重結合基を有するポリマー(b-1)を40質量部、トルエン900質量部を添加し、撹拌して、均一な溶液とした。次に、溶液を110℃に昇温してから5時間保持した後、室温に冷却して反応溶液を得た。攪拌機を備えたビーカーにメタノール10,000質量部を仕込み、室温で撹拌しながら、反応溶液を注入し、沈殿物を得た。トルエンをデカンテーションにて除去した後、減圧下40℃にて12時間乾燥し、ブロックコポリマーを得た。得られたブロックコポリマーの重量平均分子量は31,000であった。
【0127】
ミニテストプレス(東洋精機社製)を用いて、得られたブロックコポリマーを、200℃で熱プレス成形し、厚さ0.2mm×100mm(幅)×100mm(長さ)の成形体としてヘーズおよび全光線透過率の測定を行った。また、0.2mm(厚さ)×10mm(幅)×60mm(長さ)のダンベル試験片を作製し、引張測定を行った。また、0.2mm(厚さ)×5mm(幅)×50mm(長さ)の試験片を作製し、ガラス転移温度の測定を行った。結果を表1に示す。
【0128】
【表1】
【0129】
成形体の柔軟性、耐熱性および透明性を優れたものとするために、ブロックコポリマーの破断点伸度は50%以上であることが好ましく、ガラス転移温度は100℃以上であることが好ましく、ヘーズ値は40以下であることが好ましい。ここで、表1の結果を参照すると、実施例1に係るブロックコポリマーの場合、ガラス転移温度及びヘーズ値がいずれも優れた値であることが分かる。