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特許7426039非水電解質二次電池用の電極、非水電解質二次電池及び非水電解質二次電池用の電極に用いるための集電体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池用の電極、非水電解質二次電池及び非水電解質二次電池用の電極に用いるための集電体
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20240125BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20240125BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20240125BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20240125BHJP
   H01M 4/74 20060101ALI20240125BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240125BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240125BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20240125BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/139
H01M4/134
H01M4/66 A
H01M4/74 C
H01M10/052
H01M4/62 Z
H01M10/0566
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019150082
(22)【出願日】2019-08-20
(65)【公開番号】P2021034143
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000231556
【氏名又は名称】日本精線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】山下 直人
(72)【発明者】
【氏名】向井 孝志
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 博
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀明
(72)【発明者】
【氏名】柳田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】岩本 博
【審査官】森 透
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-089303(JP,A)
【文献】特開2005-294168(JP,A)
【文献】特表2018-526791(JP,A)
【文献】特開平09-045334(JP,A)
【文献】特表2018-535535(JP,A)
【文献】特表2016-519399(JP,A)
【文献】特開2010-153140(JP,A)
【文献】特開2018-113108(JP,A)
【文献】特開2000-129311(JP,A)
【文献】特開平06-093305(JP,A)
【文献】特開2012-160320(JP,A)
【文献】特表2017-529663(JP,A)
【文献】特開平7-085863(JP,A)
【文献】特開2006-310261(JP,A)
【文献】特開2010-257839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13
H01M 4/139
H01M 4/134
H01M 4/62
H01M 4/66
H01M 4/74
H01M 10/052
H01M 10/0566
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水電解質二次電池用の電極であって、
導電性を有する集電体と、
前記集電体に固定された活物質を含む活物質層と、
前記活物質層に隣接して配された空隙層とを含み、
前記集電体は、多数の孔を有する三次元構造体であり、
前記活物質層は、電解液を吸収・放出可能な多数の孔を有するように前記集電体に形成されており、
前記空隙層は、電解液を吸収・放出可能な多数の孔を有する弾性変形可能な材料からなり、かつ、前記活物質層の空隙率よりも高い空隙率を有し、
前記集電体は、第1金属繊維を用いて形成された第1層と、第2金属繊維を用いて形成された第2層とを隣接して備えた不織布からなり、
前記第1層には、前記活物質層が形成されており、
前記第2層は、前記活物質を含まない前記空隙層であり、
前記第2金属繊維の繊維径は、前記第1金属繊維の繊維径よりも小さく、
前記第2層は、前記第1層よりも低い剛性を有する、
非水電解質二次電池用の電極。
【請求項2】
前記空隙層は、その多数の孔の体積が小さくなるように、収縮変形が可能な弾性骨格を有する、請求項1記載の非水電解質二次電池用の電極。
【請求項3】
前記空隙層は、前記活物質層が膨張変形したときの外力を受けたときに、自らの見かけ体積が減じるように収縮変形可能な弾性骨格を有する、請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池用の電極。
【請求項4】
前記空隙層の両側に、前記活物質層が形成されている、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用の電極。
【請求項5】
キャリア放出状態での前記活物質層の空隙率が5%~50%の範囲にある、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用の電極。
【請求項6】
キャリア放出状態での前記空隙層の空隙率が40%~80%の範囲にある、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用の電極。
【請求項7】
前記第1金属繊維及び前記第2金属繊維の材質がステンレス鋼である、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用の電極。
【請求項8】
前記第2金属繊維の繊維径が12μm以下である、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用の電極。
【請求項9】
前記第2金属繊維の繊維径が1μm以上であり、前記第1金属繊維の繊維径が5μm以上である、請求項8に記載の非水電解質二次電池用の電極。
【請求項10】
前記不織布は、さらに、銅、ニッケル、クロム、チタンのいずれかの遷移金属元素からなる金属、又は、これら遷移金属元素を主成分とする合金で被覆されている、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用の電極。
【請求項11】
前記活物質は、ケイ素を含む材料である、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用の電極。
【請求項12】
前記活物質層は、前記活物質及びバインダーを含む合剤の層、又は、前記活物質及び固体電解質を含む合剤の層である、請求項1ないし11のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用の電極。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれか1項に記載の電極の前記空隙層に、電解液が充填されている、非水電解質二次電池。
【請求項14】
充電時又は放電時において、前記空隙層は、前記活物質層が膨張変形したときの外力を受けたときに、自らの見かけ体積が減じるように収縮変形可能な弾性骨格を有する、請求項13に記載の非水電解質二次電池。
【請求項15】
リチウムイオンをキャリアとする請求項13又は14に記載の非水電解質二次電池。
【請求項16】
請求項13ないし15のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池を用いた組電池。
【請求項17】
請求項16に記載された非水電解質二次電池を用いた組電池を用いた電気機器。
【請求項18】
非水電解質二次電池用の電極に用いるための集電体であって、
導電性を有し、かつ、多数の孔を有する構造体からなり、前記構造体は、活物質を固定するための第1層と、電解液を吸収・放出可能な第2層とを隣接して含み、
前記第2層は、活物質を含まない空隙層であり、
前記第2層は、前記第1層よりも高い空隙率を有し、
前記第1層は、第1金属繊維を用いて形成されており、
前記第2層は、前記第1金属繊維よりも小さい繊維径を有する第2金属繊維を用いて形成されており、
前記第2層は、前記第1層よりも低い剛性を有する、
集電体。
【請求項19】
前記第2層の両側に、前記第1層を備えてなる、請求項18に記載の集電体。
【請求項20】
前記第2金属繊維は、前記第1金属繊維よりも小さい弾性率を有する、請求項18又は19に記載の集電体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池用の電極、非水電解質二次電池及び非水電解質二次電池用の電極に用いるための集電体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次電池が様々な製品に使用されている。長寿命、高出力及び高エネルギー密度を備えた二次電池が市場から求められている。この種の二次電池としては、リチウムイオン電池に代表される非水電解質二次電池が知られている。高エネルギー密度を実現するために、例えば、電極の単位体積当たり(又は単位質量当たり)に極力多くの活物質を充填することや、負極活物質として、黒鉛系材料に代えて、リチウムと合金化する例えばシリコン(Si)系材料を用いること等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-153140号
【文献】特開2017-21888号
【文献】特開2018-113108号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電極への活物質の充填量が多くなると、その量に比例して電極の体積変化量も増加する。例えば、負極活物質として充電時にリチウムイオンと合金化する材料を用いた場合、合金化に伴い体積が著しく膨張する。例えば、Si系材料の場合、その体積は約4倍に膨張する。つまり、このような二次電池においては、充放電に伴って活物質層が大きく膨張・収縮する。
【0005】
活物質層の膨張・収縮は、活物質粒子の破壊、集電体と活物質層との界面等での損傷、さらには、電極間や活物質層で電解液が不足するいわゆる「液涸れ」を招く傾向がある。液涸れは、イオンの円滑な移動を阻害し、電池容量の低下や内部抵抗の上昇を招く原因となる。
【0006】
本発明は以上のような問題に鑑み案出されたものであり、液涸れの発生を防止し、長寿命、かつ、高いエネルギー密度を実現することが可能な非水電解質二次電池用の電極などを提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、非水電解質二次電池用の電極であって、導電性を有する集電体と、前記集電体に固定された活物質を含む活物質層と、前記活物質層に隣接して配された空隙層とを含み、前記集電体は、多数の孔を有する三次元構造体であり、前記活物質層は、電解液を吸収・放出可能な多数の孔を有するように前記集電体に形成されており、 前記空隙層は、電解液を吸収・放出可能な多数の孔を有する弾性変形可能な材料からなり、かつ、前記活物質層の空隙率よりも高い空隙率を有する。
【0008】
本発明の他の態様では、前記空隙層は、その多数の孔の体積が小さくなるように、収縮変形が可能な弾性骨格を有しても良い。
【0009】
本発明の他の態様では、前記空隙層は、前記活物質層が膨張変形したときの外力を受けたときに、自らの見かけ体積が減じるように収縮変形可能な弾性骨格を有しても良い。
【0010】
本発明の他の態様では、前記空隙層の両側に、前記活物質層が形成されていても良い。
【0011】
本発明の他の態様では、キャリア放出状態での前記活物質層の空隙率が5%~50%の範囲であっても良い。
【0012】
本発明の他の態様では、キャリア放出状態での前記空隙層の空隙率が40%~80%の範囲であっても良い。
【0013】
本発明の他の態様では、前記空隙層が、金属繊維の不織布からなるものでも良い。
【0014】
本発明の他の態様では、前記金属繊維の材質がステンレス鋼であっても良い。
【0015】
本発明の他の態様では、前記金属繊維の繊維径が12μm以下であっても良い。
【0016】
本発明の他の態様では、前記集電体は、第1金属繊維を用いて形成された第1層と、第2金属繊維を用いて形成された第2層とを隣接して備え、前記第1層には、前記活物質層が形成されており、前記第2層は、前記活物質を含まない前記空隙層であり、前記第2金属繊維の繊維径は、前記第1金属繊維の繊維径よりも小さく構成されても良い。
【0017】
本発明の他の態様では、前記第2金属繊維の繊維径が1μm以上であり、前記第1金属繊維の繊維径が5μm以上であっても良い。
【0018】
本発明の他の態様では、前記不織布は、さらに、銅、ニッケル、クロム、チタンのいずれかの遷移金属元素からなる金属、又は、これら遷移金属元素を主成分とする合金で被覆されていても良い。
【0019】
本発明の他の態様では、前記活物質は、ケイ素を含む材料であっても良い。
【0020】
本発明の他の態様では、前記活物質層は、前記活物質及びバインダーを含む合剤の層、又は、前記活物質及び固体電解質を含む合剤の層であっても良い。
【0021】
本発明の他の態様では、上記いずれかに記載の電極の前記空隙層に、電解液が充填されている、非水電解質二次電池として構成されても良い。
【0022】
本発明の他の態様では、非水電解質二次電池として、充電時又は放電時において、前記空隙層は、前記活物質層が膨張変形したときの外力を受けたときに、自らの見かけ体積が減じるように収縮変形可能な弾性骨格を有しても良い。
【0023】
本発明の他の態様では、非水電解質二次電池として、正極と負極との間に、固体電解質又はゲル電解質を備えていても良い。
【0024】
本発明の他の態様では、非水電解質二次電池として、リチウムイオンをキャリアとしても良い。
【0025】
本発明の他の態様では、上記いずれかに記載の非水電解質二次電池を用いた組電池であっても良い。
【0026】
本発明の他の態様では、上記組電池を用いた電気機器であっても良い。
【0027】
本発明の他の態様では、非水電解質二次電池用の電極に用いるための集電体であって、導電性を有し、かつ、多数の孔を有する構造体からなり、前記構造体は、活物質を固定するための第1層と、電解液を吸収・放出可能な第2層とを隣接して含み、前記第2層は、前記第1層よりも高い空隙率を有するものでも良い。
【0028】
本発明の他の態様では、前記第2層の両側に、前記第1層を備えるものでも良い。
【0029】
本発明の他の態様では、前記第1層は、第1金属繊維を用いて形成されており、前記第2層は、前記第1金属繊維よりも小さい繊維径を有する第2金属繊維を用いて形成されても良い。
【0030】
本発明の他の態様では、前記第1層は、第1金属繊維を用いて形成されており、
前記第2層は、前記第1金属繊維よりも小さい弾性率を有する第2金属繊維を用いて形成されても良い。
【発明の効果】
【0031】
本発明では、集電体が、これまでの箔材とは異なり、多数の孔を有する三次元構造体からなる。また、活物質層は、電解液を吸収・放出可能な多数の孔を有するように前記集電体に形成されている。したがって、前記集電体は、表面積が大きく、多くの活物質を三次元的に固定することができる。これは、より高いエネルギー密度および出力密度の二次電池を提供するのに役立つ。
【0032】
また、本発明では、活物質層に隣接して空隙層が配されている。この空隙層は、電解液を吸収・放出可能な多数の孔を有する弾性変形可能な材料からなる。また、空隙層は、前記活物質層の空隙率よりも高い空隙率を有する。このため、活物質層の膨張変形時、空隙層は、弾性収縮して自らが保持する電解液を、隣接する活物質層へと供給することができる。したがって、活物質層での電解液不足が抑制される。逆に、活物質層の収縮変形時には、空隙層は元の形状へと復元しつつ、収縮した活物質層にとって余剰の電解液を回収する。このように、活物質層の膨張・収縮形態に応じて、活物質層と空隙層との間で電解液の授受が行われるため、予め過度に電解液を充填することなく、活物質層又は電極間での液涸れが抑制される。
【0033】
なお、「弾性」とは、外力によって変形した部材が、その外力が除かれた時、元の形に戻ろうとする性質を意味する。そのため、弾性は性質を表す語であり、それ自体は数値で表される指標ではない。ただ、多くの部材は、加える力が小さい間では弾性を有するが、ある限度を超えて力が大きくなった場合では、力を除いても変形が元に戻らなくなることが知られている。本願では、充放電に伴って膨張・収縮する活物質の種類によって、最適な弾性率が変わるので、少なくとも本発明の効果が発揮され得る弾性変形可能な材料であればよい。また、本願における「弾性骨格」とは、前述の弾性変形可能な材料を骨格とする、もしくは基本的な構造に由来して弾性を示す骨格をいう。
【0034】
さらに、箔状の集電体では、充放電に伴う活物質層の繰り返しの膨張・収縮変形により、活物質層内又は活物質層と集電体との界面に亀裂等の損傷が発生しやすい傾向がある。これに対して、本発明では、活物質層の膨張・収縮変形により生じる応力は、隣接する空隙層へも伝播することにより緩和される。したがって、本発明では、電極における内部亀裂等の損傷が抑制され、長寿命化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の一実施形態の非水電解質二次電池の概略模式図である。
図2】負極の拡大模式図である。
図3図2の負極活物質が膨張した状態を示す模式図である。
図4図2の負極活物質が収縮した状態を示す模式図である。
図5】負極集電体を説明する模式図である。
図6】正極を説明する模式図である。
図7】活物質層及び空隙層の一例を示す300倍の拡大断面写真である。
図8】サイクル試験後の比較例の負極の状態を示す写真である。
図9】サイクル試験後の実施例の負極の状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。図面は、実際の構造が有する寸法比とは必ずしも一致しておらず、むしろ誇張されて表現されている場合がある。また、同一又は共通する要素については同一の符号が付されており、重複する説明が省略されている。さらに、実施形態及び図面に表された具体的な構成は、本発明の内容理解のためのものであって、本発明は、図示された具体的な構成に限定されるものではない。
【0037】
[二次電池の全体構造]
図1には、本発明の一実施形態を適用した非水電解質二次電池(以下、単に「二次電池」という。)1として、リチウムイオンをキャリアとするリチウムイオン二次電池の模式図が示される。
【0038】
図1に示されるように、二次電池1は、正極2と、負極3と、これらの間に配されたセパレータ4とを含んでおり、これらがケーシング5に内蔵されている。二次電池1は、正極2及び負極3の一組を一単位とし、必要電圧に応じてその単位数が調整される。各正極2は、リード6を介して、電池外部の正極ターミナル7へと接続される。同様に、各負極3は、リード8を介して電池外部の負極ターミナル9へと接続される。図示していないが、ケーシング5内の正極2、セパレータ4及び負極3には、いずれも非水系電解液が含浸している。以下、これらの構成要素が詳細に説明される。
【0039】
[ケーシング]
ケーシング5は、二次電池の正極2、負極3、セパレータ4及び電解液を収容するための外装体であり、いわゆる電池の外形をなす容器である。ケーシング材料としては、特に限定されるわけではないが、薬液による腐食に強く、かつ、機械的強度も備えたステンレス鋼が適する。他の態様では、ケーシング材料として、表面処理が施された鉄系材料の他、機械的強度を求めなければ、アルミニウム系材料や樹脂より構成されるラミネートフィルム等も採用され得る。
【0040】
[セパレータ]
セパレータ4は、正極2と負極3との直接接触を防ぐためにこれらの間に配された隔膜である。正極2と負極3との間で電解液中のリチウムイオンが移動できるように、セパレータ4は、例えば、微細孔が複数設けられた多孔膜で構成されている。このようなセパレータ4としては、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等の樹脂、又は、ガラスなど非金属無機材料などが用いられる。
【0041】
[電解液]
電解液は、リチウムイオンの移動のために必要な媒体である。電解液が不足乃至は涸渇した(すなわち、液涸れ)領域では、リチウムイオンは移動できず、充放電に支障が生じる。リチウムイオン電池では、電解液として、例えば、リチウム塩を溶解させた有機系電解液が採用される。非水電解液を構成する電解質としては、リチウムトリフルオロメタンスルホニルアミド(Li-TFSA)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)等の公知の電解質を用いることができる。非水電解液の溶媒としては、例えば、カーボネート(エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート等)、エーテル(テトラグライム等)、ニトリル、含硫黄化合物等の非水溶媒系二次電池の溶媒として公知のものが採用され得る。
【0042】
[負極]
図2には、電極の一例として、図1の負極3の拡大図が示される。図2に示されるように、負極3は、導電性を有する集電体(以下、「負極集電体」という。)30と、負極集電体30に固定された活物質(以下、「負極活物質」という。)を含む活物質層(以下、「負極活物質層」という。)31と、負極活物質層31に隣接して配された空隙層32とを含む。
【0043】
[負極集電体]
本実施形態において、負極集電体30は、多数の孔を有する三次元構造体で構成されている。三次元構造体は、規則的及び/又は不規則的に多数の孔を形成するあらゆる構造要素を含む。好ましい態様では、三次元構造体は、高い通液性を有するように、集電体内部を不規則に横断する多数の連続した孔を含む。このような負極集電体30は、同一の見かけ体積を有する箔材料に比べて、表面積が大きいため、より多くの活物質を三次元的に固定することができる。このような負極集電体30は、より高いエネルギー密度および出力密度の二次電池を提供するのに役立つ。
【0044】
上記のような負極集電体30の材質としては、例えば、ステンレス鋼をはじめとする金属繊維不織布が好適である。金属繊維不織布は、特定の方位性を持たない多数の金属繊維に、熱又は機械的圧力(例えば、プレス、焼結、ニードルパンチ加工等)を与えることにより、前記金属繊維を三次元的に交絡させた布材である。好適な金属繊維不織布の詳細については後記する。
【0045】
[負極活物質層]
負極活物質層31は、負極活物質を含む。負極活物質は、電子の授受を行わせることを目的とした還元剤であって、様々な材料を用いることができる。負極活物質としては、例えば、黒鉛系材料やチタン酸リチウム系材料などが挙げられる。また、負極活物質は、二次電池の容量や高エネルギー密度化を図るために、リチウムと合金化する材料、例えば、ケイ素(Si)系材料でも良い。リチウムと合金化する材料としては、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、ビスマス(Bi)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ケイ素(Si)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、鉛(Pb)から選択される単体、またはこれらを主成分とする合金、酸化物、カルコゲン化合物、ハロゲン化物などを挙げることができる。これらの負極活物質は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0046】
負極活物質層31は、電解液を吸収・放出可能な多数の孔を有するように負極集電体30に形成されている。本実施形態の負極活物質層31は、例えば、負極活物質に、導電助剤やバインダーなどの添加剤を混合した合剤を、三次元構造体の負極集電体30の孔を完全に埋めることなく塗布、硬化させることで形成される。これにより、本実施形態の負極活物質層31は、電解液を吸収・放出可能な多数の孔を有する三次元構造(網目構造)よりなる負極集電体30に固定される。
【0047】
導電助剤は、二次電池の電極(正極2、負極3)を形成するに当たり、活物質粒子間の電荷移動の抵抗、よりマクロ的には電極の内部抵抗を低減する目的で使用される材料である。導電助剤としては、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック又は気相成長炭素繊維(VGCF)等が採用され得る。
【0048】
バインダーは、活物質や導電助剤その他添加剤を負極集電体30に固定するための結着剤である。バインダーとしては、例えば、ポリ弗化ビニリデン等の熱可塑性フッ素重合、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)等のゴムポリマー、さらにはポリイミド樹脂などが採用され得る。
【0049】
なお、合剤は、さらに、固体電解質又はゲル電解質を含んでも良い。この構成によれば、正極と負極との間に介在する電解質が固体電解質又はゲル電解質であった場合に、活物質層のイオン伝導性を向上させ、入出力特性に優れた電池とすることができる。固体電解質など輸率が1に近いものは、効率的にキャリアを移動させることができる。また、固体電解質、ポリマー電解質等を利用した場合、セパレータが省略されても良い。さらに、電解液の存在により、固体電解質等の破断が修復可能となる。
【0050】
本実施形態の二次電池1の一態様では、正極2と負極3との間に、固体電解質又はゲル電解質を備えていても良い。この構成によれば、正極と負極との間には、固体電解質又はゲル電解質が介在し、電極には電解液が含まれる電池が提供される。一般的な電解液は、引火しやすい液体であるが、固体電解質又はゲル電解質はこれと比べて引火しにくい傾向がある。したがって、この態様では、電解液による良好なイオン伝導性を維持しつつ、引火しにくい電池を構成することができる。
【0051】
また、本構成の電池によれば、充放電に伴う活物質層の体積変化で電極が保有している電解液を、正極と負極との間に介在している固体電解質又はゲル電解質に供給することが可能となる。このため、活物質層の体積変化が大きい電極であるほど、電解液の供給量が増えることになる。したがって、正極と負極との間に流動性に乏しい電解質を用いた電池であっても、イオン伝導性を確保しやすくすることができる。また、正極と負極との間には、固体電解質又はゲル電解質が介在することで、電池に使用される電解液の量を減らすことができ、優れた安全性を示す電池とすることが期待できる。
【0052】
本実施形態では、空隙層32の両側に、負極活物質層31がそれぞれ形成されている。他の態様では、負極活物質層31が空隙層32の片側にのみ形成されても良い。
【0053】
[空隙層]
空隙層32は、電解液を充填するための層である。本実施形態の空隙層32は、電解液を吸収・放出可能な多数の孔を有し、かつ、弾性変形可能な材料からなる。本実施形態の空隙層32は、例えば、負極集電体30と同様、ステンレス鋼をはじめとする材質よりなる金属繊維不織布で構成されている。金属繊維不織布は、その表面から内部に至って、規則的及び/又は不規則的に多数の連続した孔を形成する。空隙層32は、これらの孔内に、電解液を保持することができる。
【0054】
本実施形態において、空隙層32は、本質的に負極活物質を含む前記合剤が塗工されておらず、金属繊維不織布のままの状態で用いられている。したがって、負極活物質層31と空隙層32との間には、境界40が形成される。
【0055】
空隙層32は、弾性変形可能な材料とされているので、例えば、外力を受けたときに、その内部の孔の体積を減じるよう収縮変形が可能な弾性骨格を有する。なお、本明細書において、「見かけ体積」とは、対象部分の外形寸法から計算される体積とする。
【0056】
さらに、本実施形態では、空隙層32の空隙率は、負極活物質層31の空隙率よりも高く形成されている。本明細書において、「空隙率」とは、対象部分の見かけ体積に対して、空間体積が占める比率であり、空隙層32の空隙率は下式(1)で、負極活物質層31の空隙率は下式(2)でそれぞれ計算される。
空隙層の空隙率(%)
=(空間体積)/(空隙層の見かけ体積)×100 …(1)
負極活物質層の空隙率(%)
={(負極活物質層の見かけ体積)-(負極集電体の体積)-(負極活物質を含む合剤体積)}/(負極活物質層の見かけ体積)×100 …(2)
【0057】
以上のように構成された負極3では、図3に示されるように、充電時には、負極活物質層31は、リチウムイオンを吸蔵して膨張変形する。この膨張に伴い、負極活物質層31に隣接する空隙層32は、負極活物質層31からの外力を受けて弾性収縮し、自らが保持する電解液を放出する。空隙層32が放出した電解液は、隣接する負極活物質層31へと供給される。したがって、負極活物質層31周辺での電解液不足が抑制される。
【0058】
逆に、図4に示されるように、放電時には、負極活物質層31がリチウムイオンを放出することで収縮変形する。この収縮変形に伴い、負極活物質層31に隣接している空隙層32は、元の形状へと弾性復元し、収縮した負極活物質層31にとって余剰となった電解液を自らの孔内に回収することができる。加えて、空隙層32の弾性復元により、空隙層32と負極活物質層31との境界40で隙間が形成されるのを抑制する。これにより、さらに、液涸れが抑制される。
【0059】
このように、負極活物質層31の膨張・収縮の変形形態に応じて、負極活物質層31と空隙層32との間で必要な電解液の授受が行われる。したがって、本実施形態の電極(負極3)によれば、電極内に予め過度に電解液を充填しておくことなく、負極活物質層31及び/又は電極(正極2、負極3)間での液涸れを抑制することができる。このような利点は、負極活物質層31の膨張変化量が大きい態様、すなわち、負極活物質として、リチウムと合金化する材料を用いた場合において、特に有用である。
【0060】
また、これまで多用されている箔状の集電体では、充放電に伴う活物質層の繰り返しの膨張・収縮の変形により、活物質層内又は活物質層と集電体との界面に亀裂等の損傷が発生しやすい傾向があった。これに対して、本実施形態では、負極活物質層31の膨張・収縮の変形により生じる応力は、隣接する空隙層32へも伝播することで緩和される。したがって、本実施形態の電極では、電極の内部亀裂等の損傷をし、長寿命化を図ることが可能である。
【0061】
空隙層32は、上述のように、電解液を保持し、必要なときに負極活物質層31へ供給する機能(電解液保持機能)、自らの弾性的な形状復元による負極活物質層31を充電前形状へ回復させる機能(形状復元機能)、及び、負極活物質層31の体積変化に対する緩衝機能を担う。このような機能をより効果的に実現させるために、キャリア放出状態(電池が放電した状態)での空隙層32の空隙率は、好ましくは、40%~80%、さらに好ましくは60%~80%の範囲とされる。
【0062】
負極活物質層31の空隙率が5%未満の場合、層内により多くの活物質量を確保できる利点があるものの、負極活物質層31の膨張変形時の体積変化を緩衝できず、充放電、すなわち、膨張・収縮の繰り返しに伴う亀裂や活物質層の脱離、剥落等の原因となる。一方、負極活物質層31の空隙率が60%以上であると、層内に十分な活物質量が確保できないおそれがある。したがって、負極活物質層31は、電解液を保持しつつ十分な表面積を提供するために、キャリア放出状態(電池が放電した状態)での空隙率は、5%~50%の範囲とされるのが望ましい。
【0063】
好ましい態様では、空隙層32は、ステンレス鋼からなる金属繊維の不織布で構成される。ステンレス鋼の種類としては、特に限定されないが、耐食性、溶接性及び加工性等に優れたオーステナイト系ステンレス鋼が好適であり、とりわけSUS316Lが望ましい。
【0064】
他の態様では、空隙層32は、銅、ニッケル、クロム、チタン又はこれらいずれかの合金からなる金属繊維が適用されても良い。
【0065】
空隙層32を構成する金属繊維の繊維径は、例えば、12μm以下であるのが望ましい。このように、繊維径を細線化することにより、電解液を吸収・放出可能な多数の孔を容易に形成できる。また、空隙層32の剛性を低下させ、ひいては、その緩衝機能を高めるのに役立つ。なお、前記金属繊維の繊維径は、空隙層32の耐久性などを考慮すると、例えば、1μm以上とされるのが望ましい。
【0066】
好ましい態様では、負極活物質層31を固定するための負極集電体30は、図5に示されるように、第1金属繊維311を用いて形成された第1層310と、第2金属繊維321を用いて形成された第2層320とを隣接して備えた不織布からなる。第1層310と第2層320とは、予め一体に形成されても良いし、それぞれ別体で形成された後、互いに積層されても良い。図5の実施形態では、好ましい例として、第1層310が、第2層320の両側に形成されている。
【0067】
好ましい態様では、第2金属繊維321の繊維径は、第1金属繊維311の繊維径よりも小さく構成される。そして、第1層310は、負極活物質を含む合剤が塗布、硬化されることで負極活物質層31(図2に示す)として形成される。また、第2層320は、前記合剤が塗布されないことで、空隙層32(図2に示す)として形成される。
【0068】
このような実施形態では、空隙層32を構成する第2層320が、負極活物質層31を固定する第1層310よりも低い剛性を有する。したがって、空隙層32は、負極活物質層31の膨張変形時に、優れた緩衝機能を発揮することができる。
【0069】
第2金属繊維321の繊維径は、好ましくは1μm以上とされ、より好ましくは2μm以上とされる。第2金属繊維321の繊維径の上限値は、前述のように、12μm以下とされるのが望ましい。
【0070】
第1金属繊維311の繊維径は、好ましくは5μm以上とされ、より好ましくは7μm以上とされる。第1金属繊維311の繊維径の上限値は、例えば、20μm以下とされるのが望ましい。このように、相対的に太い第1金属繊維311を用いた第1層310は、負極活物質層31の大きな膨張・収縮による塑性変形が抑制され、負極活物質層31の弾性変形機能を維持するのに役立つ。
【0071】
好ましい態様では、負極集電体30において、第2層320は、第1層310よりも高い空隙率を有するように構成されても良い。このような第2層320は、負極活物質層31に比して、相対的に多くの電解液を保持することができる。また、負極活物質層31の膨張変形時に、優れた緩衝機能を発揮する空隙層32を形成する。
【0072】
好ましい態様では、第2層320を構成する第2金属繊維321は、第1層310を構成する第1金属繊維311よりも小さい弾性率を有するように構成されても良い。このような第2層320は、負極活物質層31の膨張・収縮変形時に、それに追従するように柔軟に変形し、優れた緩衝機能を発揮する空隙層32を形成する。
【0073】
また、負極集電体30は、さらに、銅、ニッケル、クロム、チタンのいずれかの遷移金属元素からなる金属、又は、これら遷移金属元素を主成分とする合金で被覆されたものでも良い。このような金属を被覆することで、弾性変形機能を有する負極集電体でありながら、導電性に優れる集電体となり、これを用いた電極は金属被覆していない集電体と比べて、オーミック成分の抵抗値が低くなる。
【0074】
[正極]
二次電池1の電極の一例として、これまで、負極3について詳述したが、上記負極3の構成は、正極2についても同様に適用されても良い。正極2は、負極3に比べると充放電時の体積変化は小さいものの、放電時にはリチウムイオンを吸蔵することで体積膨張が生じるので、上記負極で説明された構成が正極2に適用されても良い。
【0075】
図6には、上述のような正極2の部分拡大図を示す。図6に示されるように、正極2は、導電性を有する集電体(以下、「正極集電体」という。)20と、正極集電体20に固定された活物質(以下、「正極活物質」という。)を含む活物質層(以下、「正極活物質層」という。)21と、正極活物質層21に隣接して配された空隙層22とを含む。ここで、正極集電体20及び空隙層22は、それぞれ、負極集電体30及び空隙層32と同様の構成を有するもので、ここでは、繰り返しの説明が省略される。
【0076】
正極活物質は、正極2にてイオンの授受を行わせることを目的とした酸化剤であり、例えば、粉末状の活物質を導電助剤やバインダーなどと混合し、圧粉成型したものが用いられる。正極活物質としては、例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO)やリン酸鉄リチウム(LiFePO)、三元系材料(Li(Ni,Co,Mn)O)などが好適である。また、正極活物質は、二次電池の容量や高エネルギー密度化を図るために、キャリアを吸蔵して大きな体積変化を示す材料、例えば、硫黄系材料やシリケート系材料、バナジウム系材料などでも良い。なお、これらの正極活物質は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることもできる。なお、正極として用いる場合では、空隙層22は、ステンレス鋼からなる金属繊維の不織布で構成されることが好ましい。他の態様では、空隙層22は、アルミニウム又はこの合金からなる金属繊維が適用されても良い。
【0077】
[組電池]
以上のように構成された二次電池(単電池)1を複数個接続して、組電池(図示省略)が構成されても良い。組電池の形状や接続方法については、用途に応じて適宜設計され得る。このような組電池は、例えば、高エネルギー密度、高容量が求められる電気自動車やハイブリッド自動車のモーター電源として好適に利用される。
【0078】
[電気機器]
本実施形態の二次電池1又は前記組電池を内蔵する各種の電気機器が構成され得る。このような電気機器としては、例えば、電気自動車、ハイブリッド自動車、携帯電話、スマートフォン、コンピュータ、蓄電設備などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0079】
以上、本発明の実施形態が詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な開示に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内において、種々変更して実施することができる。また、上記実施形態では、リチウムイオン二次電池を例にとって説明したが、本発明は、例えば、ナトリウムイオン二次電池、カリウムイオン二次電池、マグネシウムイオン二次電池、アルミニウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池にも適用可能である。また、本明細書において開示されたいくつかの態様は、それぞれ単独で実施される他、相互に組み合わせることも可能である。
【実施例
【0080】
本発明の効果を確認するため、3種類の二次電池(比較例、実施例1、2)を試作し、それぞれについて定電流充放電試験が実施された。
【0081】
比較例の二次電池は、負極集電体として、ステンレス鋼の箔が用いられた。
【0082】
一方、実施例の二次電池の負極の構成は、図7に示されるとおりである。図7に示されるように、負極3は、空隙層32と、その両側に形成された一対の負極活物質層31とからなる。負極活物質層31は、負極集電体に固定されている。この例では、負極集電体及び空隙層は、いずれもステンレス鋼(SUS316L)の金属繊維の不織布が用いられている。
【0083】
負極活物質として一酸化ケイ素(SiO、粒子径2~3μm、粒子表面にカーボン被覆(SiO:カーボン(C)=99:1(重量%)))、導電助剤としてアセチレンブラック(AB、デンカ(株)、デンカブラック)、バインダーとしてポリイミド前駆体(ポリアミック酸)を85:5:15 (重量%)の割合で秤量し、溶媒にN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を用いて、自公転式ミキサー((株)シンキー、ARE-310)を使用して混練し、負極スラリーを作製した。
【0084】
次に、実施例については、得られた負極スラリーが、ステンレス鋼の金属繊維の不織布(繊維径φ5.6μmまたは9.2μm)に充填された。比較例については、前記負極スラリーが、ステンレス鋼の金属箔(厚さ10μm)の両面に塗工された。次に、実施例及び比較例について、真空乾燥器を用いて、真空下 240℃で10時間の条件で熱処理された。負極活物質層を形成した面積は、5cm×5cmとした。
【0085】
得られた各電極を試験極として、対極に金属リチウム(厚さ500μm)、セパレータにガラスフィルター(アドバンテック、GA-100)とポリオレフィン系微多孔膜、電解液に1M LiPFEC(炭酸エチレン)/DEC(炭酸ジエチル)(=1/1、v/v)、外装材にアルミニウムラミネートフィルムをそれぞれ用いて、ラミネート型電池を作製した。作製した各電池について、環境温度を30℃、充放電レートを0.1Cレート、電圧範囲を0.01-1.2Vとして、定電流充放電試験を実施した。充放電試験の評価として、放電容量維持率が採用された。放電容量維持率は、4回目の放電容量を100%としたときに対する10回目、20回目、40回目の放電容量の比率を表す。数値が大きいほど、良好であることを示す。テストの結果は、表1に示される。
【0086】
【表1】
【0087】
表1から明らかなように、実施例1及び2は、比較例に比べて、放電容量の低下が抑制されていることが確認できた。
【0088】
また、テストの後、各電池を分解し、それぞれの負極の状態を肉眼で観察した。観察の結果、比較例の負極は、図8に示されように、シワや変形、亀裂が発生し、負極集電体からの負極活物質層の剥離も確認された(図中の白っぽい模様がシワや亀裂を示す)。これは、充電時の負極活物質層の約4倍の体積膨張と収縮によるものと推察される。一方、実施例1の負極は、図9に示されるように、電極にシワや変形、亀裂、集電体からの活物質層の剥離はいずれも確認できなかった。
【符号の説明】
【0089】
1 非水電解質二次電池
2 正極
3 負極
4 セパレータ
5 ケーシング
20 正極集電体
21 正極活物質層
22 空隙層
30 負極集電体
31 負極活物質層
22、32 空隙層
310 第1層
311 第1金属繊維
320 第2層
321 第2金属繊維
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9