(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】シリコン系粘着性保護フィルム及びこれを含む光学部材
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20240125BHJP
C09J 183/07 20060101ALI20240125BHJP
C08L 83/07 20060101ALI20240125BHJP
C09J 183/05 20060101ALI20240125BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J183/07
C08L83/07
C09J183/05
C08L83/05
(21)【出願番号】P 2021565982
(86)(22)【出願日】2020-05-08
(86)【国際出願番号】 KR2020006122
(87)【国際公開番号】W WO2020226461
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】10-2019-0054556
(32)【優先日】2019-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514278061
【氏名又は名称】サムスン エスディアイ カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20, Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si,Gyeonggi-do 17084,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ハン,トン イル
(72)【発明者】
【氏名】ナム,イリナ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ウォン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒュン スン
(72)【発明者】
【氏名】キム,イル チン
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-189945(JP,A)
【文献】国際公開第2019/159611(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/121930(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
C08L 83/00- 83/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物、及び架橋剤を含む組成物で形成されるシリコン系粘着性保護フィルムであって、
前記アルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物は、下記の成分(i)と下記の成分(ii)の混合物を含み、
成分(i):一分子当たりケイ素が結合された炭素数3乃至炭素数10のアルケニル基を少なくとも1個以上有する有機ポリシロキサン、
成分(ii):一分子当たりケイ素が結合されたビニル基を少なくとも1個以上有する有機ポリシロキサン、
前記架橋剤は、分子のうち両末端にSiH基があるポリシロキサンを含み、
前記シリコン系粘着性保護フィルムは、伸び率が80%以上である、シリコン系粘着性保護フィルム。
【請求項2】
前記シリコン系粘着性保護フィルムは、引張強度が5MPa以下である、請求項1に記載のシリコン系粘着性保護フィルム。
【請求項3】
前記成分(i)で、炭素数3乃至炭素数10のアルケニル基はヘキセニル基である、請求項1に記載のシリコン系粘着性保護フィルム。
【請求項4】
前記ヘキセニル基は5-ヘキセニル基である、請求項3に記載のシリコン系粘着性保護フィルム。
【請求項5】
前記成分(i)は、下記の化学式1の有機ポリシロキサンを含む、請求項1に記載のシリコン系粘着性保護フィルム:
[化1]
(R
1R
2SiO
2/2)x(R
3R
4SiO
2/2)y
(前記化学式1において、
R
1は、炭素数3乃至炭素数10のアルケニル基、
R
2は、炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、
R
3、R
4は、それぞれ独立して炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、
0<x≦1、0≦y<1、x+y=1)
【請求項6】
前記成分(ii)は、一分子当たりケイ素が結合された芳香族基をさらに有する、請求項1に記載のシリコン系粘着性保護フィルム。
【請求項7】
前記成分(ii)は、下記の化学式2の有機ポリシロキサンを含む、請求項1に記載のシリコン系粘着性保護フィルム:
[化2]
(R
1R
2SiO
2/2)x(R
3R
4SiO
2/2)y(R
5R
6SiO
2/2)z
(前記化学式2において、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6は、それぞれ独立して炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、ビニル基、又は炭素数6乃至炭素数10のアリール基、
R
1、及びR
2のうち一つ以上はビニル基、
0<x≦1、0≦y<1、0≦z<1、x+y+z=1)
【請求項8】
前記化学式2で、0<y<1であって、R
3、及びR
4のうち一つ以上は、炭素数6乃至炭素数10のアリール基である、請求項7に記載のシリコン系粘着性保護フィルム。
【請求項9】
前記成分(ii)は、分子のうち両末端にシリコンが結合されたビニル基(Si-Vi)を2個以上有する有機ポリシロキサンをさらに含む、請求項1に記載のシリコン系粘着性保護フィルム。
【請求項10】
前記成分(i)と成分(ii)の計100重量部のうち成分(i)は1重量部乃至80重量部で、成分(ii)は20重量部乃至99重量部で含まれる、請求項1に記載のシリコン系粘着性保護フィルム。
【請求項11】
前記架橋剤は下記の化学式5で表される、請求項1に記載のシリコン系粘着性保護フィルム:
[化5]
R
5R
6R
7SiO(R
1R
2SiO
2/2)x(R
3R
4SiO
2/2)ySiR
8R
9R
10
(前記化学式5において、
R
1、R
2、R
3、R
4は、それぞれ独立して炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、
R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10は、それぞれ独立して水素又は炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、
R
5、R
6、及びR
7のうち少なくとも一つは水素、
R
8、R
9、及びR
10のうち少なくとも一つは水素、
0≦x<1、0<y≦1、x+y=1)
【請求項12】
前記架橋剤は、前記アルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物100重量部に対して1重量部乃至10重量部で含まれる、請求項1に記載のシリコン系粘着性保護フィルム。
【請求項13】
前記組成物は、有機ポリシロキサン樹脂をさらに含み、前記有機ポリシロキサン樹脂は、下記の成分(iii)、及び成分(iv)のうち1種以上を含む、請求項1に記載のシリコン系粘着性保護フィルム:
成分(iii):R
1R
2R
3SiO
1/2単位(R
1、R
2、R
3は、それぞれ独立して炭素数1乃至炭素数6のアルキル基)(M単位)及びSiO
4/2単位(Q単位)を含む有機ポリシロキサン樹脂。
成分(iv):R
4R
5R
6SiO
1/2単位(R
4、R
5、R
6は、それぞれ独立して炭素数1乃至炭素数6のアルキル基又は炭素数2乃至炭素数10のアルケニル基で、R
4、R
5、及びR
6のうち一つ以上は、炭素数2乃至炭素数10のアルケニル基)(M単位)及びSiO
4/2単位(Q単位)を含む有機ポリシロキサン樹脂。
【請求項14】
前記組成物は、ヒドロシリル化触媒をさらに含む、請求項1に記載のシリコン系粘着性保護フィルム。
【請求項15】
光学フィルム;及び前記光学フィルムの一面に形成された請求項1乃至請求項14のうちいずれか1項の本発明のシリコン系粘着性保護フィルムを含む、光学部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン系粘着性保護フィルム及びこれを含む光学部材に関する。
【背景技術】
【0002】
光学表示装置の使用、保管及び製造環境が苛酷になっている。また、ウェアラブル装置、ポータブル装置などの新しい光学表示装置に対する関心が高まっている。これによって、光学表示装置のパネルを保護する粘着性保護フィルムに対しても多くの物性が要求されている。
【0003】
粘着性保護フィルムは、被着体に粘着し、被着体を保護する。被着体と粘着性保護フィルム積層体は、光学表示装置のうち被着体の目的とする大きさに従って切断された後、粘着性保護フィルムが被着体から剥離される。粘着性保護フィルムが被着体に粘着し、被着体を保護しながら剥離されるという点で、粘着性保護フィルムの被着体に対する剥離力は重要である。しかし、前記切断工程は、光学表示装置の製造時に必須的に要求されるので、切断過程で粘着性保護フィルムから飛散が起こる場合、被着体が損傷したり、飛散粒子によって目標とする光学表示装置の製造工程に支障が生じ得る。よって、被着体に積層した後で切断するときに、飛散粒子が少ないことから飛散特性が改善された粘着性保護フィルムが要求される。
【0004】
本発明の背景技術は、韓国公開特許第2012-0050136号などに開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、被着体に粘着した後で切断するときの飛散特性が改善されたシリコン系粘着性保護フィルムを提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、被着体に対する優れた保護効果、低い剥離力上昇率、優れたウェッティング性及び優れた段差埋め性を提供するシリコン系粘着性保護フィルムを提供することにある。
【0007】
本発明の更に他の目的は、被着体に粘着した後で剥離させたとき、被着体の汚染及び損傷が生じないようにするシリコン系粘着性保護フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一観点は、シリコン系粘着性保護フィルムである。
【0009】
1.シリコン系粘着性保護フィルムは、アルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物、及び架橋剤を含む組成物で形成され、前記アルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物は、下記の成分(i)及び下記の成分(ii)の混合物を含み、
成分(i):一分子当たりケイ素が結合された炭素数3乃至炭素数10のアルケニル基を少なくとも1個以上有する有機ポリシロキサン、
成分(ii):一分子当たりケイ素が結合されたビニル基を少なくとも1個以上有する有機ポリシロキサン、
前記架橋剤は、分子のうち両末端にSiH基があるポリシロキサンを含み、前記シリコン系粘着性保護フィルムは、伸び率が80%以上である。
【0010】
2.1において、前記シリコン系粘着性保護フィルムは、引張強度が5MPa以下であってもよい。
【0011】
3.1から2において、前記成分(i)で、炭素数3乃至炭素数10のアルケニル基はヘキセニル基であってもよい。
【0012】
4.3において、前記ヘキセニル基は5-ヘキセニル基であってもよい。
【0013】
5.1から4において、前記成分(i)は、下記の化学式1の有機ポリシロキサンを含んでもよい:
[化1]
(R1R2SiO2/2)x(R3R4SiO2/2)y
(前記化学式1において、
R1は、炭素数3乃至炭素数10のアルケニル基、
R2は、炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、
R3、R4は、それぞれ独立して炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、
0<x≦1、0≦y<1、x+y=1)
6.1から5において、前記成分(ii)は、一分子当たりケイ素が結合された芳香族基をさらに有してもよい。
【0014】
7.1から6において、前記成分(ii)は、下記の化学式2の有機ポリシロキサンを含んでもよい:
[化2]
(R1R2SiO2/2)x(R3R4SiO2/2)y(R5R6SiO2/2)z
(前記化学式2において、
R1、R2、R3、R4、R5、R6は、それぞれ独立して炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、ビニル基、又は炭素数6乃至炭素数10のアリール基、
R1、及びR2のうち一つ以上はビニル基、
0<x≦1、0≦y<1、0≦z<1、x+y+z=1)
8.1から7において、前記化学式2で、0<y<1であって、R3、及びR4のうち一つ以上は、炭素数6乃至炭素数10のアリール基であってもよい。
【0015】
9.1から8において、前記成分(ii)は、分子のうち両末端にシリコンが結合されたビニル基(Si-Vi)を2個以上有する有機ポリシロキサンをさらに含んでもよい。
【0016】
10.1から9において、前記成分(i)と成分(ii)の計100重量部のうち成分(i)は1重量部乃至80重量部で、成分(ii)は20重量部乃至99重量部で含まれてもよい。
【0017】
11.1から10において、前記架橋剤は、下記の化学式5で表され得る:
[化5]
R5R6R7SiO(R1R2SiO2/2)x(R3R4SiO2/2)ySiR8R9R10
(前記化学式5において、
R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立して炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、
R5、R6、R7、R8、R9、R10は、それぞれ独立して水素又は炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、
R5、R6、及びR7のうち少なくとも一つは水素、
R8、R9、及びR10のうち少なくとも一つは水素、
0≦x<1、0<y≦1、x+y=1)
12.1から11において、前記架橋剤は、前記アルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物100重量部に対して1重量部乃至10重量部で含まれてもよい。
【0018】
13.1から12において、前記組成物は、有機ポリシロキサン樹脂をさらに含み、
前記有機ポリシロキサン樹脂は、下記の成分(iii)、及び成分(iv)のうち1種以上を含んでもよい:
成分(iii):R1R2R3SiO1/2単位(R1、R2、R3は、それぞれ独立して炭素数1乃至炭素数6のアルキル基)(M単位)及びSiO4/2単位(Q単位)を含む有機ポリシロキサン樹脂。
【0019】
成分(iv):R4R5R6SiO1/2単位(R4、R5、R6は、それぞれ独立して炭素数1乃至炭素数6のアルキル基又は炭素数2乃至炭素数10のアルケニル基で、R4、R5、及びR6のうち一つ以上は、炭素数2乃至炭素数10のアルケニル基)(M単位)及びSiO4/2単位(Q単位)を含む有機ポリシロキサン樹脂。
【0020】
14.1から13において、前記組成物は、ヒドロシリル化触媒をさらに含んでもよい。
【0021】
本発明の光学部材は、光学フィルム、及び前記光学フィルムの一面に形成された本発明のシリコン系粘着性保護フィルムを含む。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、被着体に粘着した後で切断するとき、飛散特性が改善されたシリコン系粘着性保護フィルムを提供することができる。
【0023】
本発明は、被着体に対する優れた保護効果、低い剥離力上昇率、優れたウェッティング性及び優れた段差埋め性を提供するシリコン系粘着性保護フィルムを提供することができる。
【0024】
本発明は、被着体に粘着した後で剥離させたとき、被着体の汚染及び損傷が生じないようにするシリコン系粘着性保護フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実験例でシリコン系粘着性保護フィルムの引張強度及び伸び率の測定のための試片の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[発明を実施するための最善の形態]
以下、本発明の各実施例をより詳細に説明する。しかし、本出願に開示された技術は、ここで説明する各実施例に限定されなく、他の形態に具体化することも可能である。但し、ここで紹介する各実施例は、開示された内容を徹底的且つ完全にするために、そして、当業者に本出願の思想を十分に伝達するために提供されるものである。
【0027】
本明細書において、「炭素数3乃至炭素数10のアルケニル基」は、炭素数3乃至炭素数10のモノアルケニル基であって、プロフェニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、又はデケニル基になってもよい。
【0028】
本明細書において、「炭素数3乃至炭素数10のアルケニル基」は、有機ポリシロキサンのうちシリコンに結合され、好ましくは、前記アルケニル基は、シリコンから最末端に配置されてもよい。
【0029】
本明細書において、「ヘキセニル基」(Hex)は、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基又は5-ヘキセニル基になってもよい。好ましくは、ヘキセニル基は、5-ヘキセニル基(*-(CH2)4-CH=CH2、*は、シリコンに対する連結部位)になってもよい。
【0030】
本明細書において、「ビニル基」(Vi)は、*-CH=CH2(*は連結部位)を意味する。
【0031】
本明細書において、「Ph」はフェニル基になってもよい。
【0032】
本明細書において、「被着体」は、ガラス板、ポリイミドフィルム又はアクリルフィルムなどのプラスチックフィルム、アクリル板などを含んでもよい。好ましくは、被着体は、ガラス板、ポリイミドフィルム、又はアクリルフィルムになってもよい。
【0033】
本明細書において、「剥離力」は、JISZ2037に準じて引張試験測定機を使用し、剥離速度2400mm/min、剥離角度180゜、剥離温度25℃で測定した値である。
【0034】
本明細書において、「伸び率」は、破断伸び率であって、ASTM D882測定方法で測定された値である。
【0035】
本明細書において、「引張強度(tensile strength)」は、ASTM D882測定方法で測定された値である。
【0036】
本明細書において、数値範囲の記載時、「X乃至Y」は、X以上Y以下(X≦そして≦Y)を意味する。
【0037】
本発明の発明者は、下記の詳述するアルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物及び架橋剤を含み、前記架橋剤は、分子のうち両末端にSiH基があるポリシロキサンを含む組成物でシリコン系粘着性保護フィルムを形成した。
【0038】
これを通じて、シリコン系粘着性保護フィルムの伸び率は80%以上になり、その結果、シリコン系粘着性保護フィルムを被着体に粘着させた後で切断するときの飛散粒子、及び/又は飛散される異物の個数又は含量などを著しく低下させることによって飛散性を改善し、シリコン系粘着性保護フィルムと被着体の積層体を切断するときの工程性を著しく改善することができる。
【0039】
具体的に、伸び率は、80%乃至200%、さらに好ましくは90%乃至180%になってもよい。
【0040】
シリコン系粘着性保護フィルムは、引張強度が5MPa以下、具体的に0MPa乃至5MPa、さらに具体的に0.5MPa乃至4MPaになってもよい。前記範囲で、段差埋め性が改善されるという効果を奏し得る。
【0041】
また、シリコン系粘着性保護フィルムは、被着体に対する剥離力に優れ、被着体保護効果に優れており、被着体にシリコン系粘着性保護フィルムを粘着した後で保管するときの剥離力上昇が低いので、被着体からシリコン系粘着性保護フィルムを剥離したときに被着体の変形及び/又は損傷が生じなく、保管安定性に優れる。また、シリコン系粘着性保護フィルムは、被着体に対する段差埋め性及び/又はウェティング性に優れ、被着体にシリコン系粘着性保護フィルムを粘着させたときに気泡などが発生しないので、シリコン系粘着性保護フィルムと被着体の切断時に工程性に優れる。また、シリコン系粘着性保護フィルムは、被着体に粘着した後で剥離させたとき、被着体の汚染及び損傷が生じないので工程性に優れる。
【0042】
具体的に、シリコン系粘着性保護フィルムは、被着体に対する剥離力が15gf/inch以下、例えば、0gf/inch乃至15gf/inch、0gf/inch超過15gf/inch未満になってもよい。前記範囲で、被着体に対する保護効果がある。
【0043】
以下、本発明の一実施例のシリコン系粘着性保護フィルムを説明する。
【0044】
シリコン系粘着性保護フィルムは、アルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物及び架橋剤を含むシリコン系粘着性保護フィルム用組成物で形成され、前記アルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物は、下記の成分(i)及び下記の成分(ii)の混合物を含み;
成分(i):一分子当たりケイ素が結合された炭素数3乃至炭素数10のアルケニル基を少なくとも1個以上有する有機ポリシロキサン、
成分(ii):一分子当たりケイ素が結合されたビニル基を少なくとも1個以上有する有機ポリシロキサン、
前記架橋剤は、分子のうち両末端にSi-Hがあるポリシロキサンを含む。
【0045】
<アルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物>
アルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物は、シリコン系粘着性保護フィルムのマトリックスを形成する。
【0046】
アルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物は、下記の成分(i)及び下記の成分(ii)を含むことによって被着体に対する剥離力を確保し、被着体に粘着した後で被着体から容易に除去され、被着体の損傷及び/又は変形を防止することができる。下記の成分(i)及び下記の成分(ii)を含む成分に下記の詳述する架橋剤を共に含む。
【0047】
本発明の組成において、アルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物のうち成分(ii)を含まず成分(i)のみを含む組成物で形成されたシリコン系粘着性保護フィルムの場合は、飛散性及び段差埋め性が良くないという問題があり得る。本発明の組成において、アルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物のうち成分(i)を含まず成分(ii)のみを含む組成物で形成されたシリコン系粘着性保護フィルムの場合は、経時剥離力が上昇するという問題があり得る。
【0048】
成分(i)
成分(i)は、成分(ii)と共にシリコン系粘着性保護フィルムに含まれ、シリコン系粘着性保護フィルムの剥離力が過度に高くなるという問題を防止し、本発明の剥離力、剥離力上昇率、及び残留剥離力の変化率を確保することができる。
【0049】
成分(i)において、炭素数3乃至炭素数8のアルケニル基は、好ましくはヘキセニル基、さらに好ましくは5-ヘキセニル基になってもよい。5-ヘキセニル基は、有機ポリシロキサンのうちシリコンに結合され、シリコンから最末端にアルケニル基が備えられることにより、速い反応速度によって硬化密度を高め、経時剥離力を低下させるという効果を奏することができる。
【0050】
成分(i)は、一分子当たりケイ素が結合された炭素数3乃至炭素数8のアルケニル基を少なくとも1個以上有する線形、好ましくは直線型の有機ポリシロキサンであって、炭素数3乃至炭素数10のアルケニル基を有するジオルガノシロキサン単位を少なくとも1個含んでもよい。
【0051】
例えば、成分(i)は、R1R2SiO2/2単位を含んでもよく、前記R1は、炭素数3乃至炭素数10のアルケニル基になってもよい。また、前記R2は、炭素数1乃至炭素数10のアルキル基になってもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などになってもよい。
【0052】
成分(i)のうちR1R2SiO2/2単位は、前記有機ポリシロキサンのうち0.01mmol/g乃至0.5mmol/g、好ましくは0.05mmol/g乃至0.3mmol/gで含まれてもよい。前記範囲で、シリコン系粘着性保護フィルムは、適切な硬化密度を有するという効果を奏し得る。
【0053】
一具体例において、成分(i)は、下記の化学式1の有機ポリシロキサンを含んでもよい:
[化1]
(R1R2SiO2/2)x(R3R4SiO2/2)y
(前記化学式1において、
R1は、炭素数3乃至炭素数10のアルケニル基、
R2は、炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、
R3、R4は、それぞれ独立して炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、
0<x≦1、0≦y<1、x+y=1)
前記化学式1の有機ポリシロキサンにおける(R1R2SiO2/2)単位は、0.01mmol/g乃至0.5mmol/g、好ましくは0.05mmol/g乃至0.3mmol/gで含まれてもよい。前記範囲で、シリコン系粘着性保護フィルムは、適切な硬化密度を有するという効果を奏し得る。
【0054】
好ましくは、前記化学式1において、0<x<1、0<y<1、x+y=1、さらに好ましくは0.0001≦x≦0.3、0.7≦y≦0.9999、さらに好ましくは0.01≦x≦0.3、0.7≦y≦0.99になってもよい。前記範囲で、本発明の段差埋め性及び飛散性がさらに改善され得る。
【0055】
前記化学式1の有機ポリシロキサン又は成分(i)は、重量平均分子量が10万乃至100万、好ましくは20万乃至80万になってもよい。前記範囲で、シリコン系粘着性保護フィルムは、適切な硬化密度及びウェッティング性を有するという効果を奏し得る。
【0056】
好ましくは、有機ポリシロキサン混合物のうち成分(i)は、一成分系有機ポリシロキサンになってもよい。
【0057】
一具体例において、成分(i)は、(Hex(CH3)SiO2/2)及び((CH3)2SiO2/2)を含む有機ポリシロキサンを含んでもよい。
【0058】
一具体例において、成分(i)は、(Hex(CH3)SiO2/2)単位及び((CH3)2SiO2/2)単位からなる有機ポリシロキサンを含んでもよい。
【0059】
一具体例において、成分(i)は、ビニル基が結合されたシロキサン単位[例えば、ビニル基が結合されたジアルコキシシラン単位、ビニル基が結合されたトリアルコキシシラン、又はビニル基が結合されたモノアルコキシシラン]を含まなくてもよい。
【0060】
一具体例において、成分(i)は、SiO4/2単位(Q単位)を含まなくてもよい。
【0061】
例えば、成分(i)は、下記の化学式1-1の末端キャッピングされた有機ポリシロキサンを含んでもよい:
[化1-1]
R5R6R7SiO(R1R2SiO2/2)x(R3R4SiO2/2)ySiR8R9R10
(前記化学式1-1において、
R1は、炭素数3乃至炭素数10のアルケニル基、
R2は、炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、
R3、R4は、それぞれ独立して炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、
R5、R6、R7、R8、R9、R10は、それぞれ独立して炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、
0<x≦1、0≦y<1、x+y=1)
好ましくは、前記化学式1-1において、0<x<1、0<y<1、x+y=1、好ましくは0.0001≦x≦0.3、0.7≦y≦0.9999、さらに好ましくは0.01≦x≦0.3、0.7≦y≦0.99になってもよい。前記範囲で、本発明の段差埋め性及び飛散性がさらに改善され得る。
【0062】
一具体例において、前記化学式1-1の有機ポリシロキサンは、(CH3)3SiO-(Hex(CH3)SiO2/2)x-((CH3)2SiO2/2)y-Si(CH3)3を含む有機ポリシロキサンを含んでもよい。
【0063】
前記成分(i)は、(R1R2SiO2/2)及び(R3R4SiO2/2)を提供するそれぞれのアルコキシシランの加水分解及び縮合によって製造可能であり、加水分解及び縮合は、それぞれ当業者に知られている通常の方法によって行われ得る。
【0064】
アルケニル基含有有機ポリシロキサン混合物又は成分(i)と成分(ii)の計100重量部のうち成分(i)は、1重量部乃至80重量部、好ましくは1重量部乃至60重量部、さらに好ましくは5重量部乃至50重量部、最も好ましくは10重量部乃至30重量部で含まれてもよい。前記範囲で、シリコン系粘着性保護フィルムは、適切なウェッティング性及び経時剥離力の上昇を低下させるという効果を奏し得る。
【0065】
成分(ii)
成分(ii)は、成分(i)と共にシリコン系粘着性保護フィルムに含まれ、シリコン系粘着性保護フィルムの剥離力を高め、本発明の剥離力を確保することができる。
【0066】
成分(ii)は、一分子当たりケイ素が結合されたビニル基を少なくとも1個以上有する線形の有機ポリシロキサンであって、ビニル基を有するジオルガノシロキサン単位を少なくとも1個含んでもよい。
【0067】
成分(ii)は、SiO4/2単位(Q単位)を含まなくてもよい。
【0068】
一具体例において、一分子当たりケイ素が結合されたビニル基を少なくとも1個以上有する有機ポリシロキサンは、側鎖に一分子当たりケイ素が結合されたビニル基を少なくとも1個以上有する線形、好ましくは直線型の有機ポリシロキサンを含んでもよい。
【0069】
一具体例において、一分子当たりケイ素が結合されたビニル基を少なくとも1個以上有する有機ポリシロキサンは、側鎖に一分子当たりケイ素が結合された芳香族基を少なくとも1個以上有する線形、好ましくは直線型の有機ポリシロキサンを含んでもよい。
【0070】
一具体例において、一分子当たりケイ素が結合されたビニル基を少なくとも1個以上有する有機ポリシロキサンは、SiO4/2単位(Q単位)を含まなくてもよい。
【0071】
例えば、一分子当たりケイ素が結合されたビニル基を少なくとも1個以上有する有機ポリシロキサンは、下記の化学式2の有機ポリシロキサンを含んでもよい:
[化2]
(R1R2SiO2/2)x(R3R4SiO2/2)y(R5R6SiO2/2)z
(前記化学式2において、
R1、R2、R3、R4、R5、R6は、それぞれ独立して炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、ビニル基、又は炭素数6乃至炭素数10のアリール基、
R1、及びR2のうち一つ以上はビニル基、
0<x≦1、0≦y<1、0≦z<1、x+y+z=1)
一具体例において、R1、及びR2のうち一つ以上は、炭素数6乃至炭素数10のアリール基又は炭素数1乃至炭素数10のアルキル基であってもよい。
【0072】
一具体例において、0<y<1であって、R3、及びR4のうち一つ以上は、炭素数6乃至炭素数10のアリール基であってもよい。
【0073】
一具体例において、0<z<1であって、R5、及びR6のうち一つ以上は、炭素数1乃至炭素数10のアルキル基になってもよい。
【0074】
一具体例において、前記化学式2で、0<x<1、0<y<1、0<z<1、x+y+z=1、好ましくは、0.001≦x≦0.05、0.001≦y≦0.05、0.9≦z≦0.998であってもよい。前記範囲で、本発明の段差埋め性及び飛散性がさらに改善され得る。
【0075】
好ましくは、前記化学式2の有機ポリシロキサンは、(Vi(CH3)SiO2/2)x-(Ph2SiO2/2)y-((CH3)2SiO2/2)zを含む有機ポリシロキサン、及び(Vi(CH3)SiO2/2)x-((CH3)2SiO2/2)z(以上、x、y、zは、前記化学式2で定義した通りである。)を含む有機ポリシロキサンのうち1種以上を含んでもよい。
【0076】
一具体例において、化学式2の有機ポリシロキサンは、末端キャッピングされ、下記の化学式2-1の有機ポリシロキサンを含んでもよい:
[化2-1]
R7R8R9SiO(R1R2SiO2/2)x(R3R4SiO2/2)y(R5R6SiO2/2)zSiR10R11R12
(前記化学式2-1において、
R1、R2、R3、R4、R5、R6は、それぞれ独立して炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、ビニル基、又は炭素数6乃至炭素数10のアリール基、
R1、及びR2のうち一つ以上はビニル基、
R7、R8、R9、R10、R11、R12は、それぞれ独立して炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、
0<x≦1、0≦y<1、0≦z<1、x+y+z=1)
前記成分(ii)又は化学式2で、ビニル基当量は、0.01mmol/g乃至0.5mmol/g、好ましくは0.03mmol/g乃至0.3mmol/gになってもよい。前記範囲で、シリコン系粘着性保護フィルムは、適当な反応速度及び反応性を有するという効果を奏し得る。
【0077】
好ましくは、前記化学式2-1の有機ポリシロキサンは、(CH3)3SiO-(Vi(CH3)SiO2/2)x-(Ph2SiO2/2)y-((CH3)2SiO2/2)z-Si(CH3)3を含む有機ポリシロキサン、及び(CH3)3SiO-(Vi(CH3)SiO2/2)x-((CH3)2SiO2/2)z-Si(CH3)3を含む有機ポリシロキサンのうち1種以上を含んでもよい。
【0078】
成分(ii)は、分子のうち両末端にシリコンが結合されたビニル基(Si-Vi)を2個以上有する有機ポリシロキサンをさらに含んでもよい。両末端にシリコンが結合されたビニル基(Si-Vi)を2個以上有する線形の有機ポリシロキサンは、線形、好ましくは直線型であって、ジオルガノシロキサン単位を含んでもよい。
【0079】
一具体例において、両末端にシリコンが結合されたビニル基を2個以上有する線形の有機ポリシロキサンは、SiO4/2単位(Q単位)を含まなくてもよい。
【0080】
一具体例において、両末端にシリコンが結合されたビニル基を2個以上有する線形の有機ポリシロキサンは、下記の化学式3の有機ポリシロキサンを含んでもよい:
[化3]
R5R6R7SiO(R1R2SiO2/2)x(R3R4SiO2/2)ySiR8R9R10
(前記化学式3において、
R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立して炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、
R5、R6、R7は、それぞれ独立してビニル基又は炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、
R5、R6、及びR7のうち一つ以上はビニル基、
R8、R9、R10は、それぞれ独立してビニル基又は炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、
R8、R9、及びR10のうち一つ以上はビニル基、
0≦x≦1、0≦y≦1、x+y=1)
前記成分(ii)又は化学式3において、ビニル基当量が0.01mmol/g乃至0.5mmol/g、好ましくは0.05mmol/g乃至0.3mmol/gになってもよい。前記範囲で、シリコン系粘着性保護フィルムは、適当な反応速度及び反応性を有するという効果を奏し得る。
【0081】
前記成分(ii)又は化学式3は、重量平均分子量が1万乃至30万、好ましくは3万乃至20万になってもよい。前記範囲で、シリコン系粘着性保護フィルムは、適切な反応性を有するという効果を奏し得る。
【0082】
一具体例において、0<x<1、0<y<1、x+y=1、好ましくは0.0001≦x≦0.3、0.7≦y≦0.9999、さらに好ましくは0.01≦x≦0.3、0.7≦y≦0.99であってもよい。前記範囲で、飛散性及び段差埋め性がさらに改善され得る。
【0083】
好ましくは、前記化学式3の有機ポリシロキサンは、Vi(CH3)2SiO-((CH3)2SiO2/2)n-Si(CH3)2Vi(nは、0超過2000以下の整数)を含む有機ポリシロキサンを含んでもよい。
【0084】
アルケニル基含有有機ポリシロキサン混合物又は前記成分(i)、化学式2、化学式3の計100重量部に対して、前記成分(i)は1重量部乃至50重量部で、化学式2は1重量部乃至95重量部で、化学式3は1重量部乃至50重量部で含まれてもよい。前記範囲で、飛散性及び段差埋め性の改善などの効果を奏し得る。好ましくは、前記成分(i)、化学式2、化学式3の計100重量部に対して、前記成分(i)は3重量部乃至30重量部で、化学式2は40重量部乃至90重量部で、化学式3は2重量部乃至40重量部で含まれてもよい。
【0085】
成分(ii)は、一分子当たりケイ素が結合されたビニル基を少なくとも1個以上有する有機ポリシロキサンであって、側鎖にシリコンが結合されたビニル基(Si-Vi)を有する線形の有機ポリシロキサンをさらに含んでもよい。前記側鎖にシリコンが結合されたビニル基(Si-Vi)を有する線形、好ましくは直線型の有機ポリシロキサンは、ジオルガノシロキサン単位を含んでもよい。
【0086】
一具体例において、側鎖にシリコンが結合されたビニル基(Si-Vi)を有する線形の有機ポリシロキサンは、SiO4/2単位(Q単位)を含まなくてもよい。
【0087】
一具体例において、側鎖にシリコンが結合されたビニル基(Si-Vi)を有する線形の有機ポリシロキサンは、下記の化学式4の有機ポリシロキサンを含んでもよい:
[化4]
(R1R2SiO2/2)x(R3R4SiO2/2)y
(前記化学式4において、
R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立して炭素数1乃至炭素数10のアルキル基又はビニル基、
R1、及びR2のうち一つ以上はビニル基、
0<x≦1、0≦y<1、x+y=1)
一具体例において、前記化学式4の有機ポリシロキサンは、(Vi(CH3)SiO2/2)x-((CH3)2SiO2/2)yを含む有機ポリシロキサンを含んでもよい。
【0088】
前記成分(ii)又は化学式4において、ビニル基当量は、0.01mmol/g乃至0.5mmol/g、好ましくは0.1mmol/g乃至0.3mmol/gになってもよい。前記範囲で、シリコン系粘着性保護フィルムは、適当な反応速度及び反応性を有するという効果を奏し得る。
【0089】
前記成分(ii)又は化学式4は、重量平均分子量が5万乃至20万、好ましくは10万乃至15万になってもよい。前記範囲で、シリコン系粘着性保護フィルムは、適切な硬化密度及びウェッティング性を有するという効果を奏し得る。
【0090】
例えば、化学式4は、下記の化学式4-1の有機ポリシロキサンを含んでもよい:
[化4-1]
R5R6R7SiO(R1R2SiO2/2)x(R3R4SiO2/2)ySiR8R9R10
(前記化学式4-1において、
R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立して炭素数1乃至炭素数10のアルキル基又はビニル基、
R1、及びR2のうち一つ以上はビニル基、
R5、R6、R7、R8、R9、R10は、それぞれ独立して炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、
0<x≦1、0≦y<1、x+y=1)
一具体例において、前記化学式4-1の有機ポリシロキサンは、(CH3)3SiO-(Vi(CH3)SiO2/2)x-((CH3)2SiO2/2)y-Si(CH3)3を含む有機ポリシロキサンを含んでもよい。
【0091】
アルケニル基含有有機ポリシロキサン混合物又は成分(i)と成分(ii)の計100重量部のうち成分(ii)は、20重量部乃至99重量部、好ましくは40重量部乃至99重量部、さらに好ましくは50重量部乃至95重量部、最も好ましくは70重量部乃至90重量部で含まれてもよい。前記範囲で、適切な初期剥離力を有し、優れたウェッティング性を有するという効果を奏し得る。
【0092】
<架橋剤>
架橋剤は、分子のうち両末端にシリコンが結合された水素(Si-H)を2個以上有する水素オルガノポリシロキサンを含んでもよい。水素オルガノポリシロキサンのうちシリコンが結合された水素が両末端に結合されていることにより、アルケニル基含有ポリシロキサンの混合物との架橋反応時に、伸び率がさらに高くなり得る。
【0093】
架橋剤は、両末端に結合されたSi-H基を2個以上有する線形、好ましくは直線型の水素オルガノポリシロキサンを含んでもよい。
【0094】
一具体例において、架橋剤は、下記の化学式5で表され得る:
[化5]
R5R6R7SiO(R1R2SiO2/2)x(R3R4SiO2/2)ySiR8R9R10
(前記化学式5において、
R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立して炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、
R5、R6、R7、R8、R9、R10は、それぞれ独立して水素又は炭素数1乃至炭素数10のアルキル基、
R5、R6、及びR7のうち少なくとも一つは水素、
R8、R9、及びR10のうち少なくとも一つは水素、
0≦x<1、0<y≦1、x+y=1)
一具体例において、架橋剤は、H(CH3)2SiO-[(CH3)2SiO2/2]n-Si(CH3)2H(nは、0超過2000以下、例えば、0超過1500以下、0超過1000以下、0超過500以下の整数)になってもよい。
【0095】
架橋剤は、前記アルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物又は成分(i)と成分(ii)の計100重量部に対して1重量部乃至10重量部、好ましくは3重量部乃至10重量部で含まれてもよい。前記範囲で、本発明の伸び率が確保されるという効果を奏し得る。
【0096】
一具体例において、前記組成物は、分子のうち側鎖にシリコンが結合された水素(Si-H)を1個以上、好ましくは2個以上有する水素オルガノポリシロキサンを含まなくてもよい。
【0097】
シリコン系粘着性保護フィルム用組成物は、ヒドロシリル化触媒をさらに含んでもよい。
【0098】
<ヒドロシリル化触媒>
ヒドロシリル化触媒は、有機ポリシロキサンと架橋剤との間の反応を触媒する。ヒドロシリル化触媒は、白金系、ルテニウム系、又はオスミウム系触媒を含んでもよく、具体的な種類は、当業者に知られている通常の白金触媒を含んでもよい。例えば、ヒドロシリル化触媒は、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とオレフィンの錯体、塩化白金酸とアルケニルシロキサンの錯体などを含んでもよい。
【0099】
ヒドロシリル化触媒は、前記アルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物又は成分(i)と成分(ii)の計100重量部に対して0.1重量部乃至3重量部、好ましくは0.5重量部乃至2重量部で含まれてもよい。前記範囲で、剥離力の経時変化率が低下するという効果を奏し得る。
【0100】
シリコン系粘着性保護フィルム用組成物は、アンカー剤をさらに含んでもよい。
【0101】
<アンカー剤>
アンカー剤は、シリコン系粘着性保護フィルムの剥離力をさらに高めることができる。アンカー剤は、シロキサン系化合物として当業者に知られている通常の化合物を含んでもよい。アンカー剤は、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及び3-(メト)アクリルオキシプロピルトリメトキシシランのうち1種以上、又は、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及び3-(メト)アクリルオキシプロピルトリメトキシシランのうちいずれか一つから由来したシロキサン単位を有する有機ポリシロキサンを含んでもよい。
【0102】
アンカー剤は、前記アルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物又は成分(i)と成分(ii)の計100重量部に対して1重量部未満、具体的には、0.05重量部以上1重量部未満、好ましくは、0.1重量部乃至0.5重量部で含まれてもよい。前記範囲で、シリコン系粘着性保護フィルムの基材フィルムに対する密着性が高くなるという効果を奏し得る。
【0103】
シリコン系粘着性保護フィルム用組成物は、有機溶剤をさらに含むことによって、前記組成物の塗布性を高め、薄膜の塗布膜を得ることができる。有機溶剤は、特に制限されなく、トルエン、キシレン、ヘキセン、ヘプタン、メチルエチルケトンなどを含んでもよいが、これに制限されない。
【0104】
シリコン系粘着性保護フィルム用組成物は、ヒドロシリル化反応抑制剤をさらに含んでもよい。ヒドロシリル化反応抑制剤は、アルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物と架橋剤との間の反応及び/又は有機ポリシロキサン樹脂の混合物と架橋剤との間の反応を抑制することによって、目的とする粘度の組成物を得られるようにし、保管安定性を高めることができる。ヒドロシリル化反応抑制剤は、当業者に知られている通常の種類を含んでもよい。例えば、ヒドロシリル化反応抑制剤は、3-メチル-1-ブチン-1-オール、3,5-ジメチル-1-ブチン-1-オールなどになってもよいが、これに制限されない。
【0105】
以下、本発明の他の実施例のシリコン系粘着性保護フィルムを説明する。
【0106】
本実施例のシリコン系粘着性保護フィルムは、アルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物、架橋剤及び有機ポリシロキサン樹脂を含み、前記架橋剤は、両末端にSiH基があるポリシロキサンを含む組成物でシリコン系粘着性保護フィルムを形成した。有機ポリシロキサン樹脂をさらに含むという点を除いては、本発明の一実施例のシリコン系粘着性保護フィルムと実質的に同一である。以下、有機ポリシロキサン樹脂を説明する。
【0107】
<有機ポリシロキサン樹脂>
有機ポリシロキサン樹脂は、シリコン系粘着性保護フィルムに含まれ、粘着性保護フィルムの経時剥離力の上昇を防止し、信頼性を高めることができる。
【0108】
有機ポリシロキサン樹脂は、下記の成分(iii)、及び下記の成分(iv)のうち1種以上を含んでもよい。好ましくは、有機ポリシロキサン樹脂は、下記の成分(iii)を含むことによって、本発明の効果である伸び率及び引張強度をさらに高めることができる。
【0109】
成分(iii):R1R2R3SiO1/2単位(R1、R2、R3は、下記で詳細に説明する。)(M単位)及びSiO4/2単位(Q単位)を含む有機ポリシロキサン樹脂。
【0110】
成分(iv):R4R5R6SiO1/2単位(R4、R5、R6は、下記で詳細に説明する。)(M単位)及びSiO4/2単位(Q単位)を含む有機ポリシロキサン樹脂。
【0111】
成分(iii)は、非反応性MQ樹脂である。
【0112】
成分(iv)は、反応性MQ樹脂である。
【0113】
前記「反応性」は、前記アルケニル基含有有機ポリシロキサンに対して反応性であることを意味する。
【0114】
前記R1R2R3SiO1/2単位で、R1、R2、R3は、それぞれ独立して炭素数1乃至炭素数6のアルキル基であって、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基又はN-プロピル基などのプロピル基になってもよい。
【0115】
一具体例において、前記R1R2R3SiO1/2単位で、R1、R2、及びR3のうち2個以上又は3個以上はメチル基になってもよい。
【0116】
成分(iii)で、有機ポリシロキサン樹脂のうちR1R2R3SiO1/2単位とSiO4/2単位のうちR1R2R3SiO1/2単位:SiO4/2単位のモル比率は、0.5:1乃至1.5:1、好ましくは0.7:1乃至1.3:1になってもよい。前記範囲で、初期剥離力を高めるという効果を奏し得る。前記「モル比率」は、シリコン系粘着保護フィルムに対してシリコンNMRを測定し、SiO1/2単位とSiO4/2単位との間の面積比を通じて得ることができるが、これに制限されない。
【0117】
前記R4R5R6SiO1/2単位で、R4、R5、R6は、それぞれ独立して炭素数1乃至炭素数6のアルキル基又は炭素数2乃至炭素数10のアルケニル基であって、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基又はN-プロピル基などのプロピル基、ビニル基又はアリール基になってもよく、R4、R5、及びR6のうち一つ以上は、炭素数2乃至炭素数10のアルケニル基になってもよい。
【0118】
一具体例において、前記R4R5R6SiO1/2単位で、R4、R5、及びR6のうち一つ以上はビニル基になってもよい。
【0119】
成分(iv)で、有機ポリシロキサン樹脂のうちR4R5R6SiO1/2単位とSiO4/2単位のうちR4R5R6SiO1/2単位:SiO4/2単位のモル比率は、0.5:1乃至1.5:1、好ましくは0.7:1乃至1.3:1になってもよい。前記範囲で、適切な引張強度を有しながら、硬化密度を上昇させるという効果を奏し得る。
【0120】
成分(iv)で、R4、R5、R6全体のうち炭素数2乃至炭素数10のアルケニル基は、0.1mmol/g乃至1.5mmol/g、好ましくは0.5mmol/g乃至1.0mmol/gになってもよい。前記範囲で、経時剥離力の上昇を著しく防止することができる。
【0121】
有機ポリシロキサン樹脂は、前記アルケニル基含有有機ポリシロキサンの混合物又は成分(i)と成分(ii)の計100重量部に対して0.01重量部乃至30重量部、好ましくは0.5重量部乃至25重量部、さらに好ましくは10重量部乃至20重量部で含まれてもよい。前記範囲で、適切な初期剥離力を有し、経時剥離力を低下させるという効果を奏し得る。
【0122】
前記組成物のうちアルケニル基含有有機ポリシロキサン及び架橋剤の合計に対する有機ポリシロキサン樹脂の含量の重量比(R/P)は、0.01乃至1.5、好ましくは0.02乃至1になってもよい。前記範囲で、適正な剥離力及び経時剥離力の制御効果を奏し得る。
【0123】
シリコン系粘着性保護フィルムは、ヘイズが5%以下、例えば、0%乃至1%以下になってもよい。前記範囲で、シリコン系粘着性保護フィルムを光学表示装置の用途で使用することができる。
【0124】
シリコン系粘着性保護フィルムは、厚さが100μm以下、例えば、75μm以下、0μm超過75μm以下になってもよく、前記範囲で、被着体に粘着したときに、被着体を保護し、被着体から容易に剥離させることができる。
【0125】
シリコン系粘着性保護フィルムは、シリコン系粘着性保護フィルム用組成物で形成されてもよい。
【0126】
本発明の一実施例に係る光学部材は、光学フィルム、及び前記光学フィルムの少なくとも一面に形成された粘着性保護フィルムを含み、粘着性保護フィルムは、本発明の各実施例に係るシリコン系粘着性保護フィルムを含んでもよい。
【0127】
光学フィルムは、ディスプレイパネルであって、ポリイミドフィルムを含んでもよい。一具体例において、光学フィルムは、発光素子層、及び発光素子層の少なくとも一面に形成されたポリイミドフィルムで構成されてもよい。光学フィルムとシリコン系粘着性保護フィルムとの間には、有機絶縁膜又は無機絶縁膜がさらに形成されてもよい。光学部材は、シリコン系粘着性保護フィルムの他の一面に離型フィルム(ライナー)をさらに含んでもよい。離型フィルムは、粘着性保護フィルムが外部の異物などによって汚染することを防止することができる。離型フィルムとしては、上述した光学フィルムと同種又は異種の物質で形成された光学フィルムを使用することができる。例えば、離型フィルムは、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリ(メト)アクリレート樹脂、サイクリックオレフィンポリマー樹脂、及びアクリル樹脂のうち一つ以上の樹脂で形成されたフィルムであってもよい。離型フィルムは、厚さが10μm乃至100μm、好ましくは10μm乃至50μmになってもよく、前記範囲で、粘着性保護フィルムを支持することができる。
【0128】
[発明を実施するための形態]
以下、本発明の好適な実施例を通じて、本発明の構成及び作用をさらに詳細に説明する。但し、下記の実施例は、本発明の理解を促進するためのものであって、本発明の範囲が下記の実施例に限定されることはない。
【0129】
実施例1
固形分を基準にして、下記の表1の成分を下記の表1の含量(単位:重量部)で混合し、溶媒であるトルエン10重量部をさらに混合することによってシリコン系粘着性保護フィルム用組成物を製造した。
【0130】
製造した組成物を離型フィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ:75μm)に所定の厚さで塗布し、80℃で2分間、130℃で3分間乾燥させ、50℃で2日間熟成させ、シリコン系粘着性保護フィルム(厚さ:75μm)と離型フィルムの積層体を製造した。
【0131】
実施例2乃至実施例5
実施例1において、シリコン系粘着性保護フィルム用組成物のうち各成分の種類及び含量を下記の表1のように変更したことを除いては、実施例1と同一の方法でシリコン系粘着性保護フィルムを製造した。
【0132】
比較例1乃至比較例3
実施例1において、シリコン系粘着性保護フィルム用組成物のうち各成分の種類及び含量を下記の表1のように変更したことを除いては、実施例1と同一の方法でシリコン系粘着性保護フィルムを製造した。
【0133】
実施例と比較例で製造したシリコン系粘着性保護フィルムに対して下記の物性を評価し、その結果を下記の表1に示した。
【0134】
(1)引張強度(単位:MPa):フッ素処理されたフィルム(ドンウォンインテック、FL-75BML)の一面に実施例と比較例の粘着剤組成物を所定の厚さでコーティングし、前記コーティング層にPETフィルムを合わせた後、130℃で5分間硬化させ、フッ素処理されたフィルムとPETフィルムとの間に厚さ75μmのシリコン系粘着性保護フィルムが積層された積層体を製造した。前記積層体を
図1のドッグボーン(dog bone)の形状に切断し、前記フッ素処理されたフィルムとPETフィルムを除去し、引張強度の測定のための試片を製造した。
【0135】
図1を参照すると、試片は、ドッグボーンの形状を有し、ドッグボーンの全体長さは40mmで、ドッグボーンの全体幅は15mmで、厚さは75μmである。製造した引張強度測定用試片に対して、引張強度測定装置(Instron社)を用いて引張強度を測定した。具体的に、
図1のドッグボーンのうち左側末端を前記引張強度測定装置の第1ジグに連結し、右側末端を前記引張強度測定装置の第2ジグに連結した。このとき、左側末端のうち第1ジグに連結される部分と、右側末端のうち第2ジグに連結される部分は同一の面積にした。その後、第1ジグは固定させた状態で、第2ジグをロードセル(load cell)1kN、引張速度50mm/min、25℃で引っ張り、
図1のドッグボーンのうち幅15mm、厚さ5mmで表示された部分が切れるときの値を引張強度値として求めた。
【0136】
(2)伸び率(単位:%):(1)と同一の方法でドッグボーンの形状の試片を製造し、ASTM D882方法によって、U.T.Mを用いてクロスヘッドスピード(cross head speed)を50mm/minで25℃で引っ張った後、試片が破断されるまで試片が伸びた最終長さを測定した後、伸び率を次のように計算した:試片の最初の長さは40mmである。
【0137】
伸び率(%)=(試片が破断されるまで試片が伸びた最終長さ/試片の最初の長さ)×100
(3)飛散性:シリコンPSAフィルムのコーティング層に対して鉛筆硬度計(CT-PC2、コアテック)を用いてJIS K5400方法によって測定したものである。飛散の測定時、SUSペンは、独自製作したものであって、直径が1mmである。コーティング層に対するSUSペンの荷重は1kg、引く角度は45゜、引く速度は48mm/minにした。3回評価し、顕微鏡での観察時、パーティクルの有無で確認した。「良好」は、パーティクルが発生しなかったことを意味する。
【0138】
【0139】
*前記表1において、「R/P」は、組成物のうち(7426の含量)/(7654、X-40-3306k、7626、Modifier 705、7028の総含量)の比を意味する。
【0140】
*前記表1において、実施例及び比較例で、組成物のうち触媒の総含量は同様に73ppmである。
【0141】
*前記表1で使用した各成分を下記の表2に示した。
【0142】
【0143】
前記表1で示したように、本発明のシリコン系粘着性保護フィルムの場合は、伸び率及び引張強度を満足させ、被着体に粘着した後で切断するときの飛散特性が改善された。その一方で、伸び率及び引張強度が本発明の範囲を満足できない比較例1、比較例2、及び伸び率が本発明の範囲を満足できない比較例3の場合は、飛散特性が良くないので、飛散特性の評価時にパーティクルが発生した。
【0144】
本発明の単純な変形及び変更は、本分野で通常の知識を有する者によって容易に実施可能であり、このような変形や変更は、いずれも本発明の領域に含まれるものと見なすことができる。