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特許7426425粘着フィルム、それを含む光学部材およびそれを含む光学表示装置
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  • 特許-粘着フィルム、それを含む光学部材およびそれを含む光学表示装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】粘着フィルム、それを含む光学部材およびそれを含む光学表示装置
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20240125BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20240125BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240125BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20240125BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/06
C09J11/06
C09J175/04
G02B5/30
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022047095
(22)【出願日】2022-03-23
(65)【公開番号】P2022151811
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2022-03-23
(31)【優先権主張番号】10-2021-0037617
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】李 正 孝
(72)【発明者】
【氏名】金 源
(72)【発明者】
【氏名】金 泰 志
(72)【発明者】
【氏名】黄 伍 顯
(72)【発明者】
【氏名】金 一 鎭
(72)【発明者】
【氏名】尹 東 憲
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智子
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-065113(JP,A)
【文献】特開2020-186330(JP,A)
【文献】特開2013-014704(JP,A)
【文献】特開2020-132658(JP,A)
【文献】特開2013-018937(JP,A)
【文献】特開2012-021148(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル系共重合体、硬化剤、芳香族含有一官能以上のモノマー、および開始剤を含む粘着剤組成物から形成されてなる粘着フィルムであって、
前記芳香族含有一官能以上のモノマーは、下記化学式1で表される化合物を含み、
前記芳香族含有一官能以上のモノマーは、ホモポリマーのガラス転移温度が-20℃以上であり、
下記数式1で表される剥離強度上昇率が5.0以上である、粘着フィルム:
【化1】

化学式1において、Rは水素原子またはメチル基であり、sは0~10の整数であり、Rは置換もしくは非置換の炭素数6~50のアリール基、または置換もしくは非置換の炭素数6~50のアリールオキシ基であり、Tは置換または非置換の炭素数1~6のアルキレン基である:
【数1】

数式1において、
P1は、粘着フィルムとポリイミド系フィルムとの試験片で測定された前記ポリイミド系フィルムに対する前記粘着フィルムの初期剥離強度(単位:gf/inch)(ただし、1(gf/inch)=3.86×10-3(N/cm)である)であり、
P2は、粘着フィルムとポリイミド系フィルムとの試験片に光照射した後の前記ポリイミド系フィルムに対する前記粘着フィルムの剥離強度(単位:gf/inch)(ただし、1(gf/inch)=3.86×10-3(N/cm)である)である。
【請求項2】
(メタ)アクリル系共重合体、硬化剤、芳香族含有一官能以上のモノマー、および開始剤を含む粘着剤組成物から形成されてなる粘着フィルムであって、
前記芳香族含有一官能以上のモノマーは、下記化学式1で表される化合物を含み、
前記芳香族含有一官能以上のモノマーは、ホモポリマーのガラス転移温度が-20℃以上であり、
粘着フィルムとポリイミド系フィルムとの試験片で測定された前記ポリイミド系フィルムに対する前記粘着フィルムの初期剥離強度が0gf/inch(0N/cm)超100gf/inch(0.386N/cm)以下であり、
粘着フィルムとポリイミド系フィルムとの試験片に光照射した後の前記ポリイミド系フィルムに対する前記粘着フィルムの剥離強度が300gf/inch(1.158N/cm)以上である、粘着フィルム:
【化2】

化学式1において、Rは水素原子またはメチル基であり、sは0~10の整数であり、Rは置換もしくは非置換の炭素数6~50のアリール基、または置換もしくは非置換の炭素数6~50のアリールオキシ基であり、Tは置換または非置換の炭素数1~6のアルキレン基である。
【請求項3】
前記P1は、0gf/inch(0N/cm)超100gf/inch(0.386N/cm)以下である、請求項1に記載の粘着フィルム。
【請求項4】
前記P2は、300gf/inch(1.158N/cm)以上である、請求項1に記載の粘着フィルム。
【請求項5】
25℃における貯蔵モジュラスが50kPa以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の粘着フィルム。
【請求項6】
下記数式2の剥離強度上昇率が0.7以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の粘着フィルム:
【数2】

数式2において、
P1は、粘着フィルムとポリイミド系フィルムとの試験片で測定されたポリイミド系フィルムに対する粘着フィルムの初期剥離強度(単位:gf/inch)(ただし、1(gf/inch)=3.86×10-3(N/cm)である)であり、
P3は、粘着フィルムとポリイミド系フィルムとの試験片を、25℃、相対湿度50%RHで7日放置した後の前記粘着フィルムの前記ポリイミド系フィルムに対する剥離強度(単位:gf/inch)(ただし、1(gf/inch)=3.86×10-3(N/cm)である)である。
【請求項7】
前記芳香族含有一官能以上のモノマーのホモポリマーのガラス転移温度は、前記(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度よりも高い、請求項1~6のいずれか1項に記載の粘着フィルム。
【請求項8】
前記芳香族含有一官能以上のモノマーのホモポリマーのガラス転移温度と、前記(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度との差は、20℃以上である、請求項1~7のいずれか1項に記載の粘着フィルム。
【請求項9】
前記芳香族含有一官能以上のモノマーは、前記(メタ)アクリル系共重合体100重量部に対して30重量部~150重量部で含まれる、請求項1~8のいずれか1項に記載の粘着フィルム。
【請求項10】
前記(メタ)アクリル系共重合体は、ガラス転移温度(Tg)が-10℃以下である、請求項1~9のいずれか1項に記載の粘着フィルム。
【請求項11】
前記(メタ)アクリル系共重合体は、アルキル基含有(メタ)アクリル系単量体および水酸基含有(メタ)アクリル系単量体を含む単量体混合物の共重合体を含み、前記水酸基含有(メタ)アクリル系単量体は、前記単量体混合物中の単量体の全モル数に対して0.1モル%~10モル%で含まれる、請求項1~10のいずれか1項に記載の粘着フィルム。
【請求項12】
前記単量体混合物は、ホモポリマーのガラス転移温度が-80℃以上の(メタ)アクリル系単量体を含む、請求項11に記載の粘着フィルム。
【請求項13】
前記単量体混合物は、カルボン酸基含有単量体をさらに含む、請求項11または12に記載の粘着フィルム。
【請求項14】
前記硬化剤は、イソシアネート系硬化剤と金属キレート系硬化剤との混合物を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の粘着フィルム。
【請求項15】
前記開始剤は光ラジカル開始剤および光カチオン開始剤の少なくとも一方を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の粘着フィルム。
【請求項16】
前記粘着剤組成物は、前記(メタ)アクリル系共重合体100重量部、前記硬化剤0.01重量部~8重量部、前記芳香族含有一官能以上のモノマー30重量部~150重量部、前記開始剤0.03重量部~7.5重量部を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の粘着フィルム。
【請求項17】
フレキシブルパネルおよび前記フレキシブルパネルの少なくとも一面に形成された粘着フィルムを含み、前記粘着フィルムは、請求項1~16のいずれか1項に記載の粘着フィルムを含む、光学部材。
【請求項18】
前記光学部材は、フレキシブル基板を含む前記フレキシブルパネル、前記フレキシブル基板の下部面に積層された前記粘着フィルム、および前記粘着フィルムの下部面に積層された保護層を含む、請求項17に記載の光学部材。
【請求項19】
請求項1~16のいずれか1項に記載の粘着フィルムを含む、光学表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着フィルム、それを含む光学部材およびそれを含む光学表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機発光ダイオード(OLED)に基づいた光学表示装置の開発が進められている。特に、フレキシブル特性を有する有機発光ダイオードに基づいた光学表示装置が注目を浴びている。
【0003】
フレキシブル特性を有する有機発光ダイオードに基づいたフレキシブルパネルは、パネルの上部および下部にそれぞれポリイミド系フィルム等のプラスチックフィルムを備える。フレキシブルパネルは、液晶パネルおよび通常の有機発光ダイオードに基づいたパネルに比べて相対的に柔軟である。よって、フレキシブルパネルの加工、組立て、および/または検査等の工程中に、フレキシブルパネルの表面において傷の発生またはパネルを保護するための工程用保護フィルムが、フレキシブルパネルに一時的に貼付される必要がある。フレキシブルパネルの検査時に外観異常や異物等の不良がある場合、工程用保護フィルムをフレキシブルパネルから容易に剥離するためには、剥離強度が低くなければならない。フレキシブルパネルの検査後は、パネルを支持し、外部環境からパネルを保護するために、パネルに永久的に粘着される補強用保護フィルムが粘着されなければならない。よって、補強用保護フィルムは工程用保護フィルムに比べて高い剥離強度と信頼性とが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5683369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のパネルの製造過程では、パネルに工程用の一時的な保護フィルムを貼付する工程、工程用の一時的な保護フィルムをパネルから剥離する工程、およびパネルに補強用保護フィルムを貼付する工程が順に全て行われなければならないため、工程が複雑だった。また、工程用保護フィルムは剥離工程後は捨てることになるため、経済性および環境親和性に劣るという問題点があった。
【0006】
そこで、本発明は、光学部材に粘着された後に容易に除去でき、所定の工程によって光学部材に固定できる粘着フィルムを提供することを目的とする。
【0007】
本発明の他の目的は、光照射前は被着体に低い剥離強度で貼付されて被着体を一時的に保護し、粘着フィルムの不要な部分だけを選択的に切断して被着体が変形および/または損傷することなく、被着体から容易に除去される粘着フィルムを提供することにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、光照射後は、光照射前に比べて剥離強度が著しく高くなるため、被着体に固定されて光学部材の耐久性を高くすることのできる粘着フィルムを提供することにある。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、光学部材に粘着した後、長期間経過しても剥離強度上昇率が低く、長期間経過しても光学部材から容易に除去できる粘着フィルムを提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、被着体表面において濡れ性(Wetting)に優れた粘着フィルムを提供することにある。
【0011】
本発明の一側面によれば、下記の粘着フィルムを提供する。
【0012】
1.(メタ)アクリル系共重合体、硬化剤、芳香族含有一官能以上のモノマー、および開始剤を含む粘着剤組成物から形成されてなる粘着フィルムであって、下記数式1で表される剥離強度上昇率が5.0以上である粘着フィルム:
【0013】
【数1】
【0014】
数式1において、
P1は、粘着フィルムと被着体との試験片で測定された前記被着体に対する前記粘着フィルムの初期剥離強度(単位:gf/inch)であり、
P2は、粘着フィルムと被着体との試験片に光照射した後の前記被着体に対する前記粘着フィルムの剥離強度(単位:gf/inch))である。
【0015】
2.(メタ)アクリル系共重合体、硬化剤、芳香族含有一官能以上のモノマー、および開始剤を含む粘着剤組成物から形成されてなる粘着フィルムであって、粘着フィルムと被着体との試験片で測定された前記被着体に対する前記粘着フィルムの初期剥離強度が0gf/inch超100gf/inch以下であり、粘着フィルムと被着体との試験片に光照射した後の前記被着体に対する前記粘着フィルムの剥離強度が300gf/inch以上である、粘着フィルム。
【0016】
3.上記1.において、前記数式1中の前記P1は、0gf/inch超100gf/inch以下であり得る。
【0017】
4.上記1.または3.において、前記数式1中の前記P2は、300gf/inch以上であり得る。
【0018】
5.上記1.~4.において、前記粘着フィルムは、25℃における貯蔵モジュラスが50kPa以下であり得る。
【0019】
6.上記1.~5.において、前記粘着フィルムは、下記数式2の剥離強度上昇率が0.7以下であり得る:
【0020】
【数2】
【0021】
数式2において、
P1は、粘着フィルムと被着体との試験片で測定された前記被着体に対する前記粘着フィルムの初期剥離強度(単位:gf/inch)であり、
P3は、粘着フィルムと被着体とを粘着させて製造された試験片を、25℃および相対湿度50%RHで7日放置した後の前記粘着フィルムの前記被着体に対する剥離強度(単位:gf/inch)である。
【0022】
7.上記1.~6.において、前記芳香族含有一官能以上のモノマーのホモポリマーのガラス転移温度は、前記(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度よりも高くなり得る。
【0023】
8.上記1.~7.において、前記芳香族含有一官能以上のモノマーのホモポリマーのガラス転移温度と、前記(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度と、の差は、20℃以上であり得る。
【0024】
9.上記1.~8.において、前記芳香族含有一官能以上のモノマーは、ホモポリマーのガラス転移温度が約-20℃以上になり得る。
【0025】
10.上記1.~9.において、前記芳香族含有一官能以上のモノマーは、下記化学式1の化合物を含み得る:
【0026】
【化1】
【0027】
化学式1中、Rは水素原子またはメチル基であり、sは0~10の整数であり、Rは置換もしくは非置換の炭素数6~50のアリール基または置換もしくは非置換の炭素数6~50のアリールオキシ基であり、Tは置換もしくは非置換の炭素数1~6のアルキレン基または置換もしくは非置換の炭素数1~6のアルキレンオキシ基である。
【0028】
11.上記1.~10.において、前記芳香族含有一官能以上のモノマーは、前記(メタ)アクリル系共重合体100重量部に対して30重量部~150重量部で含まれ得る。
【0029】
12.上記1.~11.において、前記(メタ)アクリル系共重合体は、ガラス転移温度(Tg)が-10℃以下であり得る。
【0030】
13.上記1.~12.において、前記(メタ)アクリル系共重合体は、アルキル基含有(メタ)アクリル系単量体および水酸基含有(メタ)アクリル系単量体を含む単量体混合物の共重合体を含み、前記水酸基含有(メタ)アクリル系単量体は、前記単量体混合物中の単量体の全モル数に対して0.1モル%~10モル%で含まれ得る。
【0031】
14.上記13.において、前記単量体混合物は、ホモポリマーのガラス転移温度が-80℃以上の(メタ)アクリル系単量体を含み得る。
【0032】
15.上記13.または14.において、前記単量体混合物は、カルボン酸基含有単量体をさらに含み得る。
【0033】
16.上記1.~15.において、前記硬化剤はイソシアネート系硬化剤と金属キレート系硬化剤との混合物を含み得る。
【0034】
17.上記1.~16.において、前記開始剤は光ラジカル開始剤および光カチオン開始剤の少なくとも一方を含み得る。
【0035】
18.上記1.~17.において、前記粘着剤組成物は、前記(メタ)アクリル系共重合体 100重量部、前記硬化剤 0.01重量部~8重量部、前記芳香族含有一官能以上のモノマー 30重量部~150重量部、前記開始剤 0.03重量部~7.5重量部を含み得る。
【0036】
本発明の光学部材は、フレキシブルパネルおよび前記フレキシブルパネルの少なくとも一面に積層された本発明の粘着フィルムを含む。
【0037】
本発明の光学表示装置は、本発明の粘着フィルムを含む。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】(a)はT形剥離強度(T-peel strength)を測定するための試験片を示した図であり、(b)は試験片からT形剥離強度を測定する際の測定駆動を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
添付の実施形態によって、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。本発明は、様々な相違する形態に具現することができ、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0040】
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよび/またはメタクリルを意味し得る。
【0041】
本明細書において、「共重合体」は、ポリマーまたは樹脂を含むことができる。
【0042】
本明細書において、「ガラス転移温度」は、測定対象の単量体またはモノマーのホモポリマー、あるいは(メタ)アクリル系共重合体などのポリマーに対してTA Instrument社製のDSC Discoveryを用いて測定したガラス転移温度(Tg)を意味する。具体的には、測定対象の単量体またはモノマーのホモポリマーに対して、20℃/分の昇温速度で180℃まで温度を上げた後、徐々に冷まして-100℃まで冷却し、10℃/分の速度で100℃まで昇温した時の吸熱転移曲線でデータを得た後、吸熱転移曲線の変曲点をガラス転移温度として決定することができる。
【0043】
本明細書において、「貯蔵モジュラス」は、動的粘弾性測定装置のレオメーター(Rheometer)(Anton paar社)を使用してshear rate 1 rad/sec,strain 1%、周波数1Hzでauto strain条件でtemperature sweep testモードで測定された値である。具体的には、粘着フィルムを複数個積層させて厚さ800μmの積層物を製作し、前記積層物を直径が8mmの穿孔機で穿孔して試験片を製造し、8mmのジグを用いて前記試験片にノーマルフォース3Nで力を加えた状態で-50℃~100℃の温度で5℃/minの温度上昇速度で温度を上昇させながら25℃で測定した値である。
【0044】
本明細書において、数値範囲を記載する際、「X~Y」はX以上Y以下(X≦、≦Y)を意味する。
【0045】
本発明の粘着フィルムは、光照射前の状態としては剥離強度(初期剥離強度)が低い粘着フィルムである。本発明の粘着フィルムは、光照射前は剥離強度が適正範囲を有し、被着体に低い剥離強度で貼付されて被着体を一時的に保護し、被着体が変形および/または損傷することなく被着体から容易に除去することができる。これは、従来の光硬化型粘着剤組成物で粘着フィルムを形成する際、光照射前は剥離強度が全くない粘着フィルム形成用塗膜とは区別されるものであり、この塗膜は被着体の一時的な保護を行うことができない。
【0046】
具体的には、本発明の粘着フィルムは、初期剥離強度が0gf/inch超100gf/inch以下、具体的には、0.1gf/inch、5gf/inch、10gf/inch、15gf/inch、20gf/inch、25gf/inch、30gf/inch、35gf/inch、40gf/inch、45gf/inch、50gf/inch、55gf/inch、60gf/inch、65gf/inch、70gf/inch、75gf/inch、80gf/inch、85gf/inch、90gf/inch、95gf/inch、100gf/inch、例えば、10gf/inch~100gf/inch、20gf/inch~70gf/inch、25gf/inch~70gf/inch、30gf/inch~70gf/inchであり得る。上記初期剥離強度は、(メタ)アクリル系共重合体、硬化剤、芳香族含有一官能以上のモノマー、および開始剤を含む粘着剤組成物によって具現できる。これについては、下記で詳しく説明する。なお、1(gf/inch)=3.86×10-3(N/cm)である。
【0047】
本発明の粘着フィルムは、光照射後は光照射前に比べて被着体に対する剥離強度が著しく増加する剥離強度向上粘着フィルムである。本発明の粘着フィルムは、光照射後は剥離強度が高くなって、光照射後は被着体に貼付されて被着体の永久的な保護効果を提供する。よって、本発明の粘着フィルムは、被着体の一時的な保護および永久的な保護を同時に行って、工程用の一時的な保護フィルムと補強用保護フィルムとして共に使用できるため、工程簡素化、経済性および環境親和性効果を全て得ることができる。工程用の一時的な保護フィルムは、被着体に一時的に貼付され除去されるフィルムで、被着体を一時的に保護するフィルムである。補強用保護フィルムは、被着体に永久的に貼付されて被着体を外部環境等から保護し、被着体から除去されないフィルムである。
【0048】
本発明の粘着フィルムは、補強用保護フィルムに使用できる。補強用保護フィルムは、フレキシブルパネルの少なくとも一面に積層されて外部の衝撃等からフレキシブルパネルを保護する保護フィルムを意味する。
【0049】
本明細書において、「被着体」は、プラスチックフィルムであり、例えば、ポリイミド系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリエチレンナフタレート系フィルム、ポリエチレンテレフタレート系フィルム等を含むポリエステル系フィルム、ポリエーテルスルホン系フィルムおよびポリウレタンフィルム等を含み得る。好ましくは、被着体はポリイミド系フィルムであり得る。
【0050】
「ポリイミド系フィルム」は、前駆体であるポリアミド酸で重合反応により加工され、繰り返し単位内にイミド基と芳香族基とを含有している高分子フィルムであり、優れた機械的特性によりフレキシブル用OLEDパネルの基板として広く使用されている。
【0051】
以下、本発明の一実施形態にかかる粘着フィルムを説明する。
【0052】
本実施形態にかかる粘着フィルム(以下、単に「粘着フィルム」とも称する)は、下記数式1で表される剥離強度上昇率((光照射前後の)剥離強度比)が5.0以上である。このような範囲であれば、被着体に貼付され光照射後の被着体に高剥離強度および高信頼性で貼付されることにより、被着体に対する接着効果を表し得る:
【0053】
【数3】
【0054】
数式1において、
P1は、粘着フィルムと被着体との試験片で測定された被着体に対する粘着フィルムの初期剥離強度(単位:gf/inch)であり、
P2は、粘着フィルムと被着体との試験片に光照射した後の被着体に対する粘着フィルムの剥離強度(単位:gf/inch))である。
【0055】
好ましくは、上記数式1で表される剥離強度上昇率は、好ましくは、5.0~30であり、具体的には、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、より好ましくは8.0~30であり得る。上記範囲であれば、粘着フィルムの初期剥離強度および光照射後の剥離強度の確保が容易になり得る。
【0056】
粘着フィルムは、好ましくは、上記数式1中のP1(初期剥離強度)が0gf/inch超100gf/inch以下であり、具体的には、0.1gf/inch、5gf/inch、10gf/inch、15gf/inch、20gf/inch、25gf/inch、30gf/inch、35gf/inch、40gf/inch、45gf/inch、50gf/inch、55gf/inch、60gf/inch、65gf/inch、70gf/inch、75gf/inch、80gf/inch、85gf/inch、90gf/inch、95gf/inch、100gf/inch、例えば、10gf/inch~100gf/inch、20gf/inch~70gf/inch、25gf/inch~70gf/inch、30gf/inch~70gf/inchになり得る。上記範囲であれば、被着体が変形および/または損傷することなく被着体から容易に除去でき、光照射後の剥離強度上昇が容易になり得る。
【0057】
粘着フィルムは、上記数式1中のP2が300gf/inch以上、具体的には、300gf/inch、350gf/inch、400gf/inch、450gf/inch、500gf/inch、550gf/inch、600gf/inch、650gf/inch、700gf/inch、750gf/inch、800gf/inch、850gf/inch、900gf/inch、950gf/inch、1000gf/inch、例えば、300gf/inch~1000gf/inch、300gf/inch~950gf/inch、300gf/inch~900gf/inchになり得る。上記範囲であれば、被着体に高剥離強度および高信頼性で貼付されることにより、被着体に対する接着効果を表すことができる。
【0058】
本発明において、P2は、粘着フィルムと被着体との試験片に光照射した後に測定された値である。本発明では、光照射後の粘着フィルムの凝集力および/またはモジュラス向上による粘着フィルムの物理的変化、および光照射による芳香族含有一官能以上のモノマーの硬化にもかかわらず、粘着フィルムの収縮を抑制することにより、光照射後の粘着フィルムの剥離強度を高めることができる。一般に、一官能以上のモノマーが光照射によって硬化されると、硬化収縮を起こしながら剥離強度減少を起こすが、本発明では光照射後にも粘着フィルムの収縮を抑制することができる。これについては、下記で詳述する。
【0059】
上記「光照射」は、波長280nm~430nm、具体的には、280nm、290nm、300nm、310nm、320nm、330nm、340nm、350nm、360nm、370nm、380nm、390nm、400nm、410nm、420nm、430nm、例えば、波長350nm~390nmにおいて1000mJ/cmでエネルギーを照射することを含み得る。UV照射は、UV LED、高圧水銀ランプ、およびメタルハライドランプからなる群より選択される少なくとも1種の光源を用いて行うことができる。
【0060】
粘着フィルムは、好ましくは、25℃で貯蔵モジュラスが50kPa以下、より好ましくは45kPa以下であり、具体的には、1kPa、5kPa、10kPa、15kPa、20kPa、25kPa、30kPa、35kPa、40kPa、45kPa、50kPa、例えば、1kPa~50kPa、5kPa~45kPaであり得る。上記範囲であれば、光照射前は100gf/inch以下の低い剥離強度を有し、被着体に対して優れた濡れ性(Wetting)効果が表れ得る。
【0061】
粘着フィルムは、光照射前は、下記数式2の剥離強度上昇率が約0.7以下になり得る。上記範囲であれば、被着体に貼付された後に長期間経過しても被着体に対する剥離強度が低いため、被着体から容易に除去することができる。例えば、下記数式2の剥離強度上昇率は、具体的には、0.05、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、例えば0.1~0.7、例えば0.2~0.7になり得る。
【0062】
【数4】
【0063】
数式2において、
P1は、粘着フィルムと被着体との試験片で測定された被着体に対する粘着フィルムの初期剥離強度(単位:gf/inch)であり、
P3は、粘着フィルムと被着体との試験片を、25℃および相対湿度50%RHで7日放置した後の被着体に対する粘着フィルムの剥離強度(単位:gf/inch)である。
【0064】
一具体例において、数式2において、P1(初期剥離強度)は0gf/inch超100gf/inch以下であり、具体的には0.1gf/inch、5gf/inch、10gf/inch、15gf/inch、20gf/inch、25gf/inch、30gf/inch、35gf/inch、40gf/inch、45gf/inch、50gf/inch、55gf/inch、60gf/inch、65gf/inch、70gf/inch、75gf/inch、80gf/inch、85gf/inch、90gf/inch、95gf/inch、100gf/inch、例えば、10gf/inch~100gf/inch、20gf/inch~70gf/inch、25gf/inch~70gf/inch、30gf/inch~70gf/inchであり得る。一具体例において、上記数式2において、P3は、P1よりも大きく、0gf/inch超100gf/inch以下であり、具体的には0.1gf/inch、5gf/inch、10gf/inch、15gf/inch、20gf/inch、25gf/inch、30gf/inch、35gf/inch、40gf/inch、45gf/inch、50gf/inch、55gf/inch、60gf/inch、65gf/inch、70gf/inch、75gf/inch、80gf/inch、85gf/inch、90gf/inch、95gf/inch、100gf/inch、例えば、10gf/inch~100gf/inch、20gf/inch~90gf/inch、30gf/inch~80gf/inchであり得る。
【0065】
本発明の粘着フィルムは、(メタ)アクリル系共重合体、硬化剤、芳香族含有一官能以上のモノマー、および開始剤を含む粘着剤組成物から形成される。一具体例において、粘着フィルムは、(メタ)アクリル系共重合体と硬化剤との熱硬化によって形成された粘着フィルムマトリックスに芳香族含有一官能以上のモノマーおよび開始剤が分散されていてもよい。
【0066】
(メタ)アクリル系共重合体
(メタ)アクリル系共重合体は、粘着フィルムのマトリックスを形成し、硬化剤によって硬化されることにより、粘着フィルムの初期剥離強度を提供することができる。(メタ)アクリル系共重合体は、光照射後に芳香族含有一官能以上のモノマーと一緒に粘着フィルムのモジュラスおよび凝集力向上の助けにもなり得る。
【0067】
(メタ)アクリル系共重合体は、ガラス転移温度(Tg)が-10℃以下であり得、また、-20℃以下であり得る。上記範囲であれば、粘着フィルムの初期剥離強度向上の助けになり得、光照射後は一官能以上のモノマーで形成されたオリゴマーに比べてガラス転移温度の調節によって粘着フィルムの収縮を抑制することにより、剥離強度を高めることができる。好ましくは、(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度が-15℃以下、具体的には、-70℃、-65℃、-60℃、-55℃、-50℃、-45℃、-40℃、-35℃、-30℃、-25℃、-20℃、-15℃、例えば-60℃~-20℃であり得る。上記範囲であれば、被着体に対する濡れ性(wetting、密着力)がより改善される効果を表し得る。
【0068】
(メタ)アクリル系共重合体は、一具体例において、重量平均分子量が500,000g/mol以上であり、具体的には、500,000g/mol、600,000g/mol、700,000g/mol、800,000g/mol、900,000g/mol、1,000,000g/mol、1,100,000g/mol、1,200,000g/mol、1,300,000g/mol、1,400,000g/mol、1,500,000g/mol、例えば、600,000g/mol~1,500,000g/molであり得る。上記範囲であれば、被着体に対する濡れ性(wetting、密着力)と粘着フィルムの初期剥離強度を提供することができる。なお、本明細書において、重量平均分子量は、ポリスチレンを標準物質としたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した値を採用する。
【0069】
(メタ)アクリル系共重合体は、アルキル基含有(メタ)アクリル系単量体および水酸基含有(メタ)アクリル系単量体を含む単量体混合物の共重合体を含み得る。
【0070】
アルキル基含有(メタ)アクリル系単量体は、粘着フィルムのマトリックスを形成するものであり、非置換の炭素数1~20、具体的には、炭素数2~11のアルキル基を含有する(メタ)アクリル酸エステルを含み得る。例えば、アルキル基を含有する(メタ)アクリル系単量体は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、およびラウリル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含むことができる。一具体例は、n-ブチル(メタ)アクリレートおよびメチル(メタ)アクリレートを組み合わせて用い、また、一具体例は、n-ブチルアクリレートおよびメチルアクリレートを組み合わせて用いる。
【0071】
アルキル基含有(メタ)アクリル系単量体の含有量は、一具体例において、単量体混合物中の単量体の全モル数に対して、85モル%~99.5モル%であり、具体的には、85モル%、86モル%、87モル%、88モル%、89モル%、90モル%、91モル%、92モル%、93モル%、94モル%、95モル%、96モル%、97モル%、98モル%、99モル%、99.5モル%、例えば、90モル%~98モル%、95モル%~99モル%で含まれ得る。上記範囲であれば、被着体に対する濡れ性と粘着フィルムの初期剥離強度とを提供する効果が表れ得る。
【0072】
水酸基含有(メタ)アクリル系単量体は、1個以上の水酸基を含有する(メタ)アクリレートであり得る。例えば、水酸基含有(メタ)アクリレートは、1個以上の水酸基を有する炭素数1~20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、1個以上の水酸基を有する炭素数5~20のシクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、または1個以上の水酸基を有する炭素数6~20のアリール基を有する(メタ)アクリル酸エステルであり得る。具体的には、水酸基含有(メタ)アクリレートは、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、1-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシシクロペンチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、およびシクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種以上であり得る。一具体例は、水酸基含有(メタ)アクリレートは、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、およびヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種以上であり得る。
【0073】
水酸基含有(メタ)アクリル系単量体の含有量は、一具体例において、単量体混合物中の単量体の全モル数に対して、0.1モル%~10モル%であり、具体的には、0.1モル%、0.5モル%、1モル%、1.5モル%、2モル%、2.5モル%、3モル%、3.5モル%、4モル%、4.5モル%、5モル%、5.5モル%、6モル%、6.5モル%、7モル%、7.5モル%、8モル%、8.5モル%、9モル%、9.5モル%、10モル%、例えば、0.5モル%~10モル%、0.5モル%~5モル%、2モル%~10モル%、1モル%~5モル%で含まれ得る。上記範囲であれば、粘着層に凝集力を付与して粘着層を形成させ、粘着フィルムの初期剥離強度の提供に効果を表し得る。
【0074】
単量体混合物は、カルボン酸基含有単量体をさらに含み得る。カルボン酸基含有単量体は、(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度を高めて初期粘着力の提供に役立ち得る。カルボン酸基含有単量体は、(メタ)アクリル酸、さらにはアクリル酸を含み得るが、これに制限されるものではない。
【0075】
カルボン酸基含有単量体の含有量は、一具体例において、単量体混合物中の単量体の全モル数に対して、0モル%~約5モル%であり、具体的には、0.05モル%、0.1モル%、0.5モル%、1モル%、1.5モル%、2モル%、2.5モル%、3モル%、3.5モル%、4モル%、4.5モル%、5モル%、具体的には、0.05モル%~5モル%、0.1モル%~5モル%で含まれ得る。上記範囲であれば、粘着層に凝集力を付与して粘着層を形成させ、粘着フィルムの初期剥離強度の提供に効果を表し得る。
【0076】
単量体混合物は、一具体例において、ホモポリマーのガラス転移温度が-80℃以上0℃以下であり、具体的には、-80℃、-75℃、-70℃、-65℃、-60℃、-55℃、-50℃、-45℃、-40℃、-35℃、-30℃、-25℃、-20℃、-15℃、-10℃、-5℃、0℃、例えば、-60℃~-20℃の(メタ)アクリル系単量体を含み得る。上記範囲であれば、上記ガラス転移温度の範囲を有する(メタ)アクリル系共重合体の製造が容易になり得る。
【0077】
単量体混合物は、メチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸等を含み得るが、これに制限されるのではない。
【0078】
一具体例において、単量体混合物は、芳香族基を有する単量体を含まなくてもよい。芳香族基を有する単量体を含む単量体混合物から形成された(メタ)アクリル系共重合体から製造された粘着フィルムは、上記数式1で表される剥離強度上昇率の好適な範囲に到達し難くなり得る。
【0079】
(メタ)アクリル系共重合体は、単量体混合物を通常の重合方法で重合させて製造できる。重合方法は、当業者に知られている通常の方法を含み得る。例えば、(メタ)アクリル系共重合体は、単量体混合物に開始剤を添加した後、通常の共重合体重合、例えば、懸濁重合、乳化重合、溶液重合等で製造できる。重合温度は、約60℃~約70℃、重合時間は約4時間~約8時間であり得る。開始剤は、アゾ系重合開始剤;および/または過酸化ベンゾイルまたは過酸化アセチルのような過酸化物等を含む通常のものを使用できる。
【0080】
硬化剤
硬化剤は、(メタ)アクリル系共重合体を熱硬化させて粘着フィルムのマトリックスを形成し、粘着フィルムの初期剥離強度の提供に役立ち得る。
【0081】
硬化剤は、熱硬化剤として、イソシアネート系硬化剤、金属キレート系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、アジリジン系硬化剤、およびエポキシ系硬化剤からなる群より選択される少なくとも1種を含むことができる。好ましくは、イソシアネート系硬化剤単独、またはイソシアネート系硬化剤と金属キレート系硬化剤との混合物を含み得る。上記混合物は、本発明の効果の具現をより容易にさせることができる。
【0082】
イソシアネート系硬化剤は、2官能以上、具体的には、2官能~6官能のイソシアネート系硬化剤を含み得る。一具体例において、イソシアネート系硬化剤は、m-キシレンジイソシアネート等を含むキシレンジイソシアネート(XDI)、4,4’-メチレンビス(フェニルイソシアネート)等を含むメチレンビス(フェニルイソシアネート)(MDI)、ナフタレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、およびイソホロンジイソシアネートからなる群より選択される少なくとも1種、またはこれらの付加体を含み得る。例えば、付加体は、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体、キシレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体であり得る。イソシアネート系硬化剤は、上記組成物の1種以上を含み得る。
【0083】
イソシアネート系硬化剤の含有量は、一具体例において、(メタ)アクリル系共重合体100重量部に対して5重量部以下であり、具体的には、0.001重量部、0.005重量部、0.1重量部、0.5重量部、1重量部、1.5重量部、2重量部、2.5重量部、3重量部、3.5重量部、4重量部、4.5重量部、5重量部、例えば、0.001重量部~3重量部、より具体的には、0.01重量部~2重量部で含まれ得る。上記範囲であれば、粘着フィルムの信頼性を高めることができる。
【0084】
金属キレート系硬化剤は、通常の金属キレート系硬化剤を使用できるが、例えば、アルミニウム、チタン、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタニウム、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム、ジルコニウム等の金属を含む硬化剤を含むことができる。例えば、金属キレート系硬化剤は、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムイソプロピレート、モノ-sec-ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウム-sec-ブチレート、アルミニウムエチレート、テトライソプロピルチタネート、テトラノーマルブチルチタネート、ブチルチタネート二量体、チタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテート、ポリヒドロキシチタンステアレート、およびアルミニウムアセチルアセトネートからなる群より選択される少なくとも1種を含み得る。
【0085】
金属キレート系硬化剤の含有量は、一具体例において、(メタ)アクリル系共重合体100重量部に対して3重量部以下、具体的には、0.001重量部、0.005重量部、0.1重量部、0.5重量部、1重量部、1.5重量部、2重量部、2.5重量部、3重量部、例えば0.001重量部~1重量部、より具体的には0.01重量部~1重量部で含まれ得る。上記範囲であれば、本発明の粘着フィルムの効果に影響を与えず、さらなる効果を得ることができる。
【0086】
硬化剤の含有量は、一具体例において、(メタ)アクリル系共重合体100重量部に対して、0.01重量部~8重量部、具体的には、0.01重量部、0.05重量部、1重量部、2重量部、3重量部、4重量部、5重量部、6重量部、7重量部、8重量部、例えば0.01重量部~3重量部、より具体的には0.1重量部~2重量部で含まれ得る。上記範囲であれば、粘着フィルムの信頼性を高めることができる。
【0087】
芳香族含有一官能以上のモノマー
芳香族含有一官能以上のモノマーは、芳香族基と開始剤によって反応し得る1個以上の官能基とを有する。「芳香族基」は、炭素数6~50の単環の芳香族基、多環の芳香族基または複素環官能基を意味し得る。好適には、芳香族基は、炭素数6~50の単環または多環の芳香族基である。例えば、芳香族基は、置換または非置換の、ベンジル基、フェニル基、ビフェニル基、テルフェニル基、ナフタレニル基等を意味し得る。また、上記「官能基」は、ビニル基または(メタ)アクリレート基を意味し得、光照射による硬化時に粘着フィルムが収縮し過ぎることを効果的に防ぐことができる。
【0088】
芳香族含有一官能以上のモノマーは、芳香族基を含有することにより、被着体、例えば芳香族を有するプラスチックフィルム、具体的にはポリイミド系フィルムとのπ-π結合によるスタッキング(stacking)効果を通じて粘着フィルムの粘着層とポリイミド系フィルムに対する靭力を高めることにより、被着体に対する粘着フィルムの粘着力向上に寄与することができる。また、芳香族基は、直鎖型または分枝鎖型アルキル基に比べてバルキーな置換基であり、光照射前には(メタ)アクリル系共重合体と硬化剤のネットワーク型硬化物、例えばIPN(interpenetrating polymer networks)構造またはsemi-IPN構造間に挿入されていることにより、被着体に対する粘着フィルムの初期剥離強度が上昇し過ぎることの抑制を助ける。
【0089】
芳香族含有一官能以上のモノマーは、光照射後の粘着フィルムの凝集力および/またはモジュラスを上昇させることができる。よって、粘着フィルムが被着体の表面に粘着された状態で光硬化されると、粘着フィルムが被着体により高い剥離強度で粘着されるようになって、粘着フィルムの剥離強度を高めることができる。
【0090】
芳香族含有一官能以上のモノマーのホモポリマーのガラス転移温度は、(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度に比べて所定の範囲を有するようにすることが好ましい。これにより、粘着フィルムが光照射によって硬化しても、粘着フィルムの収縮を抑制することにより、光照射後の剥離強度を高めることができる。芳香族含有一官能以上のモノマーのホモポリマーのガラス転移温度は、(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度よりも高いことが好ましく、その差は20℃以上、具体的には、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、110℃、115℃、120℃℃、例えば、20℃~120℃、25℃~100℃、40℃~100℃が好ましい。上記範囲であれば、光照射後の剥離強度上昇が期待できる。
【0091】
芳香族含有一官能以上のモノマーは、ホモポリマーのガラス転移温度が-20℃以上、具体的には、-30℃、-25℃、-20℃、-15℃、-10℃、-5℃、0℃、5℃、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、例えば-20℃~50℃、5℃~50℃であり得る。上記範囲であれば、(メタ)アクリル系共重合体に比べて、ガラス転移温度が高くなり光照射後の凝集力向上による粘着フィルムの剥離強度向上効果を得ることができる。
【0092】
芳香族含有一官能以上のモノマーは、下記化学式1で表される化合物を含むことができるが、これに制限されるものではない:
【0093】
【化2】
【0094】
化学式1中、Rは水素原子またはメチル基であり、sは0~10の整数であり、Rは置換もしくは非置換の炭素数6~50(好ましくは炭素数6~30、より好ましくは炭素数6~20)のアリール基、または置換もしくは非置換の炭素数6~50(好ましくは炭素数6~30、より好ましくは炭素数6~20)のアリールオキシ基であり、Tは置換もしくは非置換の炭素数1~6のアルキレン基、または置換もしくは非置換の炭素数1~6のアルキレンオキシ基である。
【0095】
本明細書において、「置換または非置換の」における置換は、1つ以上の水素原子が炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のチオアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、ハロゲン原子(F、Cl、BrまたはI)、炭素数3~10のシクロアルキル基、または炭素数6~20のアリール基で置換されることを意味する。
【0096】
具体的には、Rは、置換または非置換のフェノキシ基、置換または非置換のフェニル基、置換または非置換のビフェニル基、置換または非置換のテルフェニル基、置換または非置換のナフチル基等であり得る。
【0097】
具体的には、芳香族含有一官能以上のモノマーは、フェノキシ(メタ)アクリレート、2-エチルフェノキシ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2-エチルチオフェニル(メタ)アクリレート、2-フェニルエチル(メタ)アクリレート、3-フェニルプロピル(メタ)アクリレート、4-フェニルブチル(メタ)アクリレート、2-(2-メチルフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(3-メチルフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(4-メチルフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(4-プロピルフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(4-(1-メチルエチル)フェニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(4-メトキシフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(4-シクロヘキシルフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(2-クロロフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(3-クロロフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(4-クロロフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(4-ブロモフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(3-フェニルフェニル)エチル(メタ)アクリレート、オルソビフェニル(メタ)アクリレート、メタビフェニル(メタ)アクリレート、パラビフェニル(メタ)アクリレート、2,6-テルフェニル(メタ)アクリレート、オルソテルフェニル(メタ)アクリレート、メタテルフェニル(メタ)アクリレート、パラテルフェニル(メタ)アクリレート、4-(4-メチルフェニル)フェニル(メタ)アクリレート、4-(2-メチルフェニル)フェニル(メタ)アクリレート、2-(4-メチルフェニル)フェニル(メタ)アクリレート、2-(2-メチルフェニル)フェニル(メタ)アクリレート、4-(4-エチルフェニル)フェニル(メタ)アクリレート、4-(2-エチルフェニル)フェニル(メタ)アクリレート、2-(4-エチルフェニル)フェニル(メタ)アクリレート、2-(2-エチルフェニル)フェニル(メタ)アクリレート、エチレングリコールフェニルエーテル(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニルアクリレート(Phenyl(EO)1 acrylate,Phenyl(EO)2 acrylate)、エトキシ化フェニルフェノールアクリレート(o-Phenylphenol(EO)acrylate)、フェノキシベンジルアクリレート(Phenoxy benzyl acrylate)、ビフェニルメチルアクリレート(Biphenylmethyl Acrylate)、およびナフチルアクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含むことができる。
【0098】
好ましくは、芳香族含有一官能以上のモノマーとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールフェニルエーテル(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニルアクリレート(Phenyl(EO)1 acrylate,Phenyl(EO)2 acrylate)、エトキシ化フェニルフェノールアクリレート(o-Phenylphenol(EO)acrylate)、フェノキシベンジルアクリレート(Phenoxy benzyl acrylate)、ビフェニルメチルアクリレート(Biphenylmethyl Acrylate)、および1-ナフチルアクリレート等を含むナフチルアクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含むことができる。
【0099】
芳香族含有一官能以上のモノマーの含有量は、好ましくは、(メタ)アクリル系共重合体100重量部に対して、30重量部~150重量部であり、具体的には、10重量部、15重量部、20重量部、25重量部、30重量部、35重量部、40重量部、45重量部、50重量部、55重量部、60重量部、65重量部、70重量部、75重量部、80重量部、85重量部、90重量部、95重量部、100重量部、105重量部、110重量部、115重量部、120重量部、125重量部、130重量部、135重量部、140重量部、145重量部、150重量部重量部、例えば、40重量部~100重量部、50重量部~90重量部、55重量部を超え85重量部以下で含まれ得る。上記範囲であれば、光照射後の粘着フィルムの剥離強度上昇に貢献することができ、粘着フィルムの収縮を抑制することができる。
【0100】
開始剤
開始剤は、芳香族含有一官能以上のモノマーを硬化させる役割を果たし、これにより、光照射による粘着フィルムの物理的変化を提供することができる。開始剤は、光ラジカル開始剤およびカチオン光開始剤の1種以上を含み、熱開始剤をさらに含むことができる。
【0101】
一具体例において、開始剤は、上記の光照射時に適用される照射波長の範囲内で最大吸収波長を有する光開始剤を含むことができる。例えば、開始剤は、波長約280nm~約430nmで最大吸収波長を有し得る。上記範囲であれば、光照射によって芳香族含有一官能以上のモノマーの光硬化効果を得ることができる。具体的には、光開始剤は、リン系開始剤、ケトン系開始剤等を含むことができるが、これらに制限されない。
【0102】
開始剤は、(メタ)アクリル系共重合体100重量部に対して、0.01重量部~7.5重量部、具体的には0.03重量部~4.5重量部で含まれ得る。上記範囲であれば、光照射による芳香族含有一官能以上のモノマーに対する均一な硬化効果および残量の開始剤による粘着フィルムの透明性の低下防止効果を提供することができる。
【0103】
粘着剤組成物は、硬化促進剤をさらに含むことができる。
【0104】
硬化促進剤は、粘着フィルムの硬化反応を助け、粘着層の凝集力をさらに高めることができる。硬化促進剤は、当業者に知られている通常の硬化促進剤を含むことができる。具体的には、例えば、スズ系金属化合物、亜鉛金属化合物、アミン類化合物、チタン系金属化合物、ビスマス系金属化合物およびアルミニウム系金属化合物を挙げることができる。これらのなかでも、スズ系金属化合物が好ましく使用でき、例えば、ジブチルスズジラウレート、ビス-アセチルアセトネート-ジブチルスズ、ジブチルスズジマレート、およびジマレートスズ等の4価または2価の有機スズ系化合物を含むことができるが、これらに制限されるものではない。
【0105】
硬化促進剤は、(メタ)アクリル系共重合体100重量部に対して、0.001重量部~3重量部で含まれ得る。上記範囲であれば、粘着フィルムの硬化速度を高め、凝集力の向上を助けることができる。
【0106】
粘着剤組成物は、シランカップリング剤をさらに含むことができる。
【0107】
シランカップリング剤は、粘着フィルムの剥離強度をさらに高める役割を果たす。シランカップリング剤としては、当業者に知られている通常のシランカップリング剤を使用することができる。例えば、シランカップリング剤は、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤を含み得るが、これらに制限されるものではない。
【0108】
シランカップリング剤は、(メタ)アクリル系共重合体100重量部に対して0.01重量部~5重量部で含まれ得る。上記範囲であれば、剥離強度の改善効果がさらに表れ得る。
【0109】
粘着剤組成物は、添加剤をさらに含むことができる。添加剤は、粘着フィルムに含まれるもので、当業者に知られている通常の添加剤を含むことができる。例えば、添加剤は、顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、帯電防止剤、遅延剤、触媒、リワーク剤の1種以上を含むことができるが、これに制限されるのではない。
【0110】
粘着剤組成物は溶剤をさらに含むことができる。溶剤は、粘着剤組成物の塗工性を高めて薄くかつ均一な表面を有する粘着フィルムができるようにする。溶剤は、当業者に知られている通常のものを含むことができる。例えば、溶剤は、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルアセテート、トルエン等を含むことができるが、これらに制限されるものではない。一具体例において、粘着剤組成物は、固形分含有量が約15重量%~約40重量%、具体的には約20重量%~約30重量%であり得る。上記範囲であれば、組成物の塗工性が優れ得る。
【0111】
粘着フィルムは、可視光領域(例:波長380nm~780nm)でヘーズ(haze)が5%以下、具体的には0.1%~2%、全光線透過率が80%以上、具体的には85%~95%であり得る。上記範囲であれば、光学透明性が良いため光学表示装置に使用できる。
【0112】
粘着フィルムの粘着層の厚さは通常200μm以下、具体的には0μm100μm以下、より具体的には5μm~50μmであり得る。上記範囲であれば、フレキシブルパネルに対する保護効果を提供する助けになり得る。
【0113】
本発明の光学部材は、フレキシブルパネルおよびフレキシブルパネルの少なくとも一面に形成された粘着フィルムを含み、粘着フィルムは本発明の粘着フィルムを含み得る。
【0114】
本発明の一実施形態による光学部材は、フレキシブル基板を含むフレキシブルパネル、フレキシブル基板の下部面に積層された粘着フィルム、および粘着フィルムの下部面に積層された保護層を含み得る。
【0115】
光学部材は、フレキシブル基板、フレキシブル基板の下部面に積層された粘着フィルム、および粘着フィルムの下部面に積層された保護層を含み得る。一具体例において、フレキシブル基板の下部面は、フレキシブルパネルから発光する方向と反対側の面になり得る。
【0116】
フレキシブル基板は、有機発光ダイオード等の光学素子を支持する役割を果たすことができる。フレキシブル基板は、プラスチックフィルムとして、例えば、ポリイミド系フィルム、ポリエチレンテレフタレート系フィルム、ポリエチレンナフタレート系フィルム等を含むポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリエーテルスルホン系フィルム等を含むことができる。
【0117】
保護層は、光学的に透明且つ屈曲性を提供できるならば、特に制限されない。例えば、保護層は、ポリエチレンテレフタレート系フィルム、ポリエチレンナフタレート系フィルム等を含むポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリエーテルスルホン系フィルム等を含む保護フィルムを含み得る。
【0118】
フレキシブル基板の上部面には光学素子がさらに積層され得る。光学素子は、光学表示装置の一定の光学的機能、例えば、発光、偏光、光学補償、ディスプレイ画質改善、および/または導電性を提供することができる。光学素子は、OLED素子、ウィンドウフィルム、ウィンドウ、偏光板、カラーフィルター、位相差フィルム、楕円偏光フィルム、反射偏光フィルム、反射防止フィルム、補償フィルム、輝度向上フィルム、配向膜、光拡散フィルム、ガラス飛散防止フィルム、表面保護フィルム、OLED素子バリア層、プラスチックLCD基板、またはITO(indium tin oxide)、FTO(fluorinated tin oxide)、AZO(aluminum dopped zinc oxide)、CNT(carbon nanotube)、Agナノワイヤー、グラフェン等を含む透明電極フィルム等を挙げることができる。
【0119】
光学部材は、当業者に知られている通常の方法を適宜応用して製造することができる。例えば、光学部材は、フレキシブル基板を含むフレキシブルパネルを準備し、フレキシブル基板の下部面に粘着フィルムと保護層との積層体を接合し、フレキシブル基板またはフレキシブルパネルに外観異常や異物等の不良がなければ、光照射をすることにより、粘着フィルムと保護層との積層体を高い剥離強度でフレキシブルパネルに接合させ、製造することができる。しかし、外観異常や不良がある場合は、粘着フィルムと保護層との積層体をフレキシブルパネルから剥離すればよい。
【0120】
本発明の光学表示装置は、本発明の粘着フィルムを含む。
【0121】
光学表示装置は、有機発光素子表示装置、液晶表示装置等を含むことができる。光学表示装置は、フレキシブルディスプレイ装置を含むことができる。しかし、光学表示装置は非フレキシブルディスプレイ装置を含んでもよい。
【実施例
【0122】
以下、本発明の好ましい実施例を通じて本発明の構成および作用をより詳しく説明する。但し、これは本発明の好ましい例示として提示したものであり、如何なる意味でもこれによって本発明が制限されると解釈してはならない。
【0123】
製造例1
窒素ガスが還流し、温度調節が容易になるように冷却装置が設けられた1Lの反応器に、溶媒である酢酸エチルを添加した。n-ブチルアクリレート(BA)85モル%、メチルアクリレート(MA)10モル%、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)4モル%、およびアクリル酸(AA)1モル%を含む単量体混合物100重量部を、上記反応器に添加した。単量体混合物に窒素ガスを30分間投入して酸素を除去した後、反応器の内部温度を62℃に維持した。単量体混合物を均一に攪拌し、開始剤であるV-601(アゾ系ラジカル開始剤,富士フイルム和光純薬株式会社製)0.08重量部を投入し、62℃で8時間反応させて、(メタ)アクリル系共重合体(重量平均分子量:1,298,112g/mol、ガラス転移温度:-50℃)を製造した。溶媒である酢酸エチルを添加して、(メタ)アクリル系共重合体溶液(固形分重量:30重量%)を製造した。
【0124】
製造例2~製造例5
製造例1において、各単量体の含有量を下記表1(単位:モル%)のように変更したことを除いては、製造例1と同様の方法で、(メタ)アクリル系共重合体溶液を製造した。
【0125】
【表1】
【0126】
実施例1
固形分基準で、製造例1で製造された(メタ)アクリル系共重合体(Tg:-50℃)100重量部、硬化剤としてTD-75(イソシアネート系硬化剤、綜研化学株式会社製)0.5重量部と、Hardener M-2(アルミニウムキレート系硬化剤、サイデン化学株式会社製)0.3重量部、芳香族含有一官能モノマーとしてM-140(エチレングリコールフェニルエーテルアクリレート、ミウォンスペシャリティーケミカル社製、ホモポリマーのTg:7℃)60重量部、開始剤としてIrgacure TPO(BASF社製、リン系光開始剤)0.5重量部を添加し、硬化促進剤として促進剤S(スズ系硬化促進剤、綜研化学株式会社製)0.2重量部を添加し、メチルエチルケトンを添加して、希釈して粘着剤組成物(固形分25重量%)を製造した。
【0127】
上記で製造した粘着剤組成物を、基材フィルムのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(SKC社製、厚さ:75μm、一面にウレタン系プライマーコーティングされている)のプライマーコーティングされた面に、厚さ13μmになるように塗布した。その後、90℃で4分間乾燥させた後、得られた粘着層に、離型フィルム(厚さ:25μm、一面にシリコン離型処理されている)を接合し、50℃で2日間放置させ、基材フィルムに粘着フィルム(厚さ:13μm)および離型フィルムが順に積層された粘着フィルム含有シートを製造した。
【0128】
実施例2~実施例8
実施例1で各成分の種類および/または含有量(重量部)を下記表2のように変更したことを除いては、実施例1と同様の方法で、粘着フィルム含有シートを製造した。
【0129】
実施例9
固形分基準で、製造例4で製造された(メタ)アクリル系共重合体(Tg:-30℃)100重量部、硬化剤としてTD-75(イソシアネート系硬化剤、綜研化学株式会社製)0.5重量部とBXX-4805(アルミニウムキレート系硬化剤,サムヨンインク社)0.5重量部、芳香族含有一官能モノマーのエチレングリコールフェニルエーテルアクリレート60重量部、開始剤としてIrgacure TPO(BASF社,リン系光開始剤)0.5重量部を添加し、メチルエチルケトンを添加して、希釈させて粘着剤組成物(固形分25重量%)を製造した。
【0130】
上記で製造した粘着剤組成物を、基材フィルムのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(SKC社製、厚さ:75μm、一面にウレタン系プライマーコーティングされている)のプライマーコーティングされた面に厚さ13μmになるように塗布した。その後、90℃で4分間乾燥させた後、得られた粘着層に、離型フィルム(厚さ:25μm,一面にシリコン離型処理されている)を接合し、50℃で3日間放置し、基材フィルムに粘着フィルム(厚さ:13μm)および離型フィルムが順に積層された粘着フィルム含有シートを製造した。上記シートで剥離強度測定を行った。
【0131】
上記で製造した粘着剤組成物を、基材フィルムとして離型フィルム(厚さ:75μm、一面にシリコン離型処理されている)のシリコン離型コーティングされた面に厚さ13μmになるように塗布した。その後、90℃で4分間乾燥させた後、得られた粘着層に離型フィルム(厚さ:25m、一面にシリコン離型処理されている)を接合し、50℃で3日間放置させて、両面離型フィルム間に粘着層が積層されたNCF(non carrier film)形態のシートを製造した。上記シートでモジュラス測定用粘着剤サンプルを製造した。
【0132】
実施例10~実施例12
実施例9において、各成分の種類および/または含有量を下記表3のように変更したことを除いては、実施例9と同じ方法で粘着フィルム含有シートを製造した。
【0133】
以下、実施例および比較例で使用した成分のうち、一官能以上のモノマーは次の通りである。
モノマーA:ベンジルアクリレート
モノマーB:エチレングリコールフェニルエーテルアクリレート
モノマーC:フェノキシベンジルアクリレート
モノマーD:ビフェニルメチルアクリレート
モノマーE:1-ナフチルアクリレート
モノマーF:メチルアクリレート
モノマーG:n-ブチルメタクリレート
モノマーH:ステアリルメタクリレート
モノマーI:イソボルニルアクリレート
モノマーJ:ラウリルアクリレート
比較例1~比較例5
実施例1において、各成分の種類および/または含有量を下記表2のように変更したことを除いては、実施例1と同様の方法で、粘着フィルム含有シートを製造した。
【0134】
比較例6~比較例8
実施例9において、各成分の種類および/または含有量を下記表3のように変更したことを除いては、実施例9と同じ方法で粘着フィルム含有シートを製造した。
【0135】
実施例と比較例で製造した粘着フィルム含有シートに対して、下記の物性を評価し、その結果を下記表2および表3に示した。
【0136】
(1)初期剥離強度(P1,単位:gf/inch):実施例および比較例の粘着フィルム含有シートから、離型フィルムを剥離して粘着フィルムを露出させた。露出された粘着フィルムの表面に、ポリイミド系フィルム(GF200、SKCKOLON社製、厚さ:50μm)を貼付し、2kg荷重のロールで圧着し、幅×長さを25mm×100mmの大きさに切断して試験片を製造した。製造した試験片を図1の(a)に示した。図1の(a)を参照すると、PETフィルム(1)、粘着フィルム(2)、ポリイミド系フィルム(3)が順に積層されている。試験片を23±1℃および相対湿度55±5%RHで30分間放置した。JIS Z 2037(2009)に基づいて引張試験機Texture analyzer(TA industry社)を用いて、剥離温度25℃、剥離速度2400mm/min、剥離角度180°の条件で、T形剥離強度測定方法で、粘着フィルムからポリイミド系フィルムを剥離させた際の剥離強度を測定した。T形剥離強度は、図1の(b)を参考にして測定することができる。T形剥離強度は、PETフィルム(1)および粘着フィルム(2)からポリイミド系フィルム(3)を剥離させた際の剥離強度である。T形剥離強度測定時のPETフィルム(1)、粘着フィルム(2)は、TA Instrument社製のジグに固定された状態でポリイミド系フィルム(3)を図1の(b)の矢印方向のように引っ張って測定できる。
【0137】
(2)UV照射後の剥離強度(P2,単位:gf/inch):上記(1)と同じ方法でPETフィルム、粘着フィルム、ポリイミド系フィルムの順に積層された試験片を製造した。試験片に対してPETフィルム側からUV LED照射機(SUV-L5160A、UVSMT社製)を使用して、波長385nmでUV照射エネルギー1000mJ/cmで照射し、23±1℃および相対湿度55±5%RHで30分間放置した。JIS Z 2037(2009)に基づいて引張試験機Texture analyzer(TA industry社製)を用いて、剥離温度25℃、剥離速度2400mm/min、剥離角度180°の条件で、T形剥離強度測定方法によって、粘着フィルムからポリイミド系フィルムを剥離した際の剥離強度を測定した。
【0138】
(3)被着体に貼付してから7日後の剥離強度(P3,単位:gf/inch):23℃および相対湿度50%RHで実施例および比較例の粘着フィルム含有シートから離型フィルムを剥離して粘着フィルムを露出させた。露出した粘着フィルムの表面にポリイミド系フィルム(GF200、SKCKOLON社製、厚さ:50μm)を貼付し、2kg荷重のロールで圧着し、幅×長さが25mm×100mmの大きさに切断して、試験片を製造した。製造した試験片を23℃および相対湿度50%RHで7日間放置した。(1)と同じ方法で粘着フィルムからポリイミド系フィルムを剥離した時の剥離強度を測定した。
【0139】
(4)貯蔵モジュラス(単位:kPa):動的粘弾性測定装置のレオメーター(Rheometer)(Anton paar社)を使用してshear rate 1 rad/sec,strain 1%、周波数1Hzでauto strain条件でtemperature sweep testモードで粘着フィルムの貯蔵モジュラスを測定した。実施例および比較例で製造した粘着フィルム含有シートから粘着フィルムだけを分離した後、粘着フィルムを複数個積層させて厚さ800μmの積層物を製作した。積層物を直径が8mmの穿孔機で穿孔して試験片として使用した。8mmのジグを用いて試験片にノーマルフォース3Nで力を加えた状態で-50℃~100℃の温度で5℃/minの温度上昇速度で温度を上昇させながら測定を行い、25℃で貯蔵モジュラスを求めた。
【0140】
(5)粘着フィルム中のUVモノマー(芳香族含有一官能以上のモノマー)のTg(単位:℃):実施例および比較例の粘着シートから粘着フィルムを分離した後、粘着フィルムにUV LED照射機(SUV-L5160A、UVSMT社)を使用して、波長385nmでUV照射エネルギー1000mJ/cmで照射させた。次に、粘着フィルムの一部を引っ掻いて示差走査熱量計(DSC8000,Perkin Elmer社)を使用してUVモノマーのTgを得た。
【0141】
(6)Weetting性(濡れ性):実施例および比較例の粘着フィルム含有シートを幅×長さが50mm×100mmの大きさに切断して試験片を製造した。23℃および相対湿度50%RHで30分間放置した後、離型フィルムを剥がして粘着フィルムを露出させた。PETフィルム上に粘着フィルムが粘着された状態を粘着テープと言う。粘着テープの両端をそれぞれ手で掴みながら露出させた粘着フィルムの中心部をガラス板に接触させた後、手を離した。粘着テープの中心部とガラス板の接触によって粘着テープ全体がガラス板に密着するまでの時間を測定してガラス板に対する濡れ性を評価した。密着するまでの時間が短いほど、ガラス板に対する親和性が良好になるため、ガラス板を使用するディスプレイおよびディスプレイ製造工程でガラス板を保護しやすいことを意味する。
○:密着するまでの時間が3秒未満(濡れ性が優れる)
△:密着するまでの時間が3秒以上5秒未満(濡れ性が良い)
×:密着するまでの時間が5秒以上(使用不可能)
【0142】
【表2】
【0143】
【表3】
【0144】
上記表2および表3に表したように、本発明の粘着フィルムは、初期剥離強度が100gf/inch以下である。よって、上記表2では示していないが、被着体に貼付された後に被着体から容易に除去できる。本発明の粘着フィルムは、数式1で表される剥離強度上昇率が5.0以上である。よって、上記表2に表してはいないが、光照射前に比べて剥離強度が著しく高いため、被着体に固定されて被着体を含む光学部材の耐久性を高めることができる。よって、本発明の粘着フィルムはフレキシブルパネル基板に対して工程用の一時的な保護フィルムと、選択的に一部分のみ剥離された後、パターンを形成するパターン補強用保護フィルムとして同時に使用できる。
【0145】
よって、本発明は、光学部材に粘着した後、容易に除去することができ、所定の工程によって光学部材に固定され得る粘着性保護フィルムを提供する。本発明は、光照射前は被着体に低い剥離強度で粘着して被着体を一時的に保護し、粘着フィルムの不要な部分のみを選択的に切断して被着体が変形および/または損傷することなく、被着体から容易に除去される粘着フィルムを提供する。本発明は、光照射後は光照射前に比べて剥離強度が著しく高くなるため、被着体に固定されて光学部材の耐久性を高くすることができる粘着性保護フィルムを提供する。本発明は、フレキシブルOLEDパネル基板から、工程用の一時的な保護フィルムと、選択的に一部分のみ剥離されてパターンを形成するパターン補強用保護フィルムとして同時に使用できる粘着フィルムを提供する。本発明は、光学部材に粘着された後、長期間経過しても剥離力上昇率が低く長期間経過しても光学部材から容易に除去できる粘着フィルムを提供する。本発明は、濡れ性に優れた粘着フィルムを提供する。
【0146】
一方、本発明の構成から外れる比較例の粘着フィルムは、本発明の全ての効果を有しなかった。
【0147】
本発明の単純な変形あるいは変更は、本分野の通常の知識を有する者によって容易に実施することができ、このような変形や変更は全て本発明の範囲に含まれると見なすことができる。
図1