IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ポリプラスチックス株式会社の特許一覧

特許7426543環状オレフィン共重合体、樹脂組成物及びフィルム状又はシート状の成形品
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-24
(45)【発行日】2024-02-01
(54)【発明の名称】環状オレフィン共重合体、樹脂組成物及びフィルム状又はシート状の成形品
(51)【国際特許分類】
   C08F 232/04 20060101AFI20240125BHJP
   C08F 210/02 20060101ALI20240125BHJP
   C08L 45/00 20060101ALI20240125BHJP
   C08F 4/6592 20060101ALN20240125BHJP
【FI】
C08F232/04
C08F210/02
C08L45/00
C08F4/6592
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023540888
(86)(22)【出願日】2022-12-22
(86)【国際出願番号】 JP2022047460
(87)【国際公開番号】W WO2023120669
(87)【国際公開日】2023-06-29
【審査請求日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2021209777
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】多田 智之
(72)【発明者】
【氏名】中野 篤志
(72)【発明者】
【氏名】青島 広宣
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/060723(WO,A1)
【文献】特開2009-051922(JP,A)
【文献】特開2013-018962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 232/04
C08F 4/6592
C08F 210/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノルボルネン単量体由来の構成単位とエチレン由来の構成単位とを含み、
前記ノルボルネン単量体由来の構成単位が、メソ型の二連子部位とラセモ型の二連子部位及び三連子部位とを有し、
前記ラセモ型の二連子部位の含有率(mol%)に対する前記メソ型の二連子部位の含有率(mol%)の比の値が0.10~3.00であり、前記三連子部位の含有率が2.5mol%以下であり、
ガラス転移温度が110℃以下である、環状オレフィン共重合体。
【請求項2】
ノルボルネン単量体由来の構成単位とエチレン由来の構成単位とを含み、
前記ノルボルネン単量体由来の構成単位が、メソ型の二連子部位とラセモ型の二連子部位及び三連子部位とを有し、
前記ラセモ型の二連子部位の含有率(mol%)に対する前記メソ型の二連子部位の含有率(mol%)の比の値が0.10~3.00であり、前記三連子部位の含有率が2.5mol%以下であり、ラセモ型の二連子部位及びメソ型の二連子部位の合計含有率が0.1~10mol%である、環状オレフィン共重合体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の環状オレフィン共重合体を含有する樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の環状オレフィン共重合体を成形してなる、フィルム状又はシート状の成形品。
【請求項5】
請求項3に記載の樹脂組成物を成形してなる、フィルム状又はシート状の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状オレフィン共重合体、該環状オレフィン共重合体を含有する樹脂組成物、及び該環状オレフィン共重合体又は該樹脂組成物を成形してなるフィルム状又はシート状の成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
環状オレフィン単独重合体及び環状オレフィン共重合体は、低吸湿性及び高透明性を有し、光ディスク基板、光学フィルム、光学ファイバー等の光学材料の分野をはじめ、様々な用途に使用されている。代表的な環状オレフィン共重合体として、透明樹脂として広く使用される、環状オレフィンとエチレンとの共重合体が知られている。環状オレフィンとエチレンとの共重合体は、そのガラス転移温度(Tg)を環状オレフィンとエチレンとの共重合組成に応じて変えることが可能なため、広い温度領域でガラス転移温度を調整した共重合体を製造することができる(例えば、非特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Incoronata,Trittoら、Coordination Chemistry Reviews,2006年、第250巻、p.212-241
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
環状オレフィン共重合体としては、例えば、環状オレフィンたるノルボルネン単量体由来の構成単位の連鎖部位が存在し、その立体規則性としてメソ型の二連子部位及びラセモ型の二連子部位が知られている。そして、非特許文献1に記載の製法により得られる環状オレフィン共重合体はメソ型もラセモ型も得られる。一方、環状オレフィン共重合体は、共重合に使用する触媒により立体規則性を制御したものが多く、そのような制御により、ノルボルネン単量体由来の構成単位の連鎖部位(二連子)の大半がメソ型となる。
【0005】
上記の通り、ノルボルネン単量体とエチレンとを共重合体してなる環状オレフィン共重合体は、従来においては、ノルボルネン単量体由来の構成単位の連鎖部位(二連子)の大半がメソ型である。そのような環状オレフィン共重合体は、靭性等の機械特性に優れるものの、溶融粘度が高いため加工性に劣っていた。また、従来において、メソ型及びラセモ型の双方ともに含む環状オレフィン共重合体の製造は可能であったが、メソ型及びラセモ型の割合が物性に与える影響は不明であった。
【0006】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、その課題は、加工性及び機械特性の双方ともに優れる環状オレフィン共重合体、該環状オレフィン共重合体を含有する樹脂組成物、及び該環状オレフィン共重合体又は該樹脂組成物を成形してなるフィルム状又はシート状の成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、ノルボルネン単量体とエチレンとを共重合してなる環状オレフィン共重合体において、ノルボルネン単量体由来の構成単位の連鎖部位(二連子)がメソ型のみならず、ラセモ型が所定の比率で存在することで、機械特性を犠牲にせず、溶融粘度を改善できることを見出た。さらに、ノルボルネン単量体由来の構成単位の連鎖部位(三連子)の含有率が所定の割合以下であることを同時に満たすことで、機械特性が優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
前記課題を解決する本発明の一態様は以下の通りである。
(1)ノルボルネン単量体由来の構成単位とエチレン由来の構成単位とを含み、
前記ノルボルネン単量体由来の構成単位が、メソ型の二連子部位とラセモ型の二連子部位及び三連子部位とを有し、
前記ラセモ型の二連子部位の含有率(mol%)に対する前記メソ型の二連子部位の含有率(mol%)の比の値が0.10~3.00であり、前記三連子部位の含有率が2.5mol%以下である、環状オレフィン共重合体。
【0009】
(2)ガラス転移温度が110℃以下である、前記(1)に記載の環状オレフィン共重合体。
【0010】
(3)ノルボルネン単量体とエチレンとを、ホスフィンイミド基を有する触媒の存在下で共重合してなる、前記(1)又は(2)に記載の環状オレフィン共重合体。
【0011】
(4)前記ホスフィンイミド基を有する触媒がシクロペンタジエン環を有し、前記シクロペンタジエン環が無置換、又は置換基としてメチル基及びトリメチルシリル基のうちの少なくとも1種を有する、前記(3)に記載の環状オレフィン共重合体。
【0012】
(5)前記(1)~(4)のいずれかに記載の環状オレフィン共重合体を含有する樹脂組成物。
【0013】
(6)前記(1)~(4)のいずれかに記載の環状オレフィン共重合体又は前記(5)に記載の樹脂組成物を成形してなる、フィルム状又はシート状の成形品。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、加工性及び機械特性の双方ともに優れる環状オレフィン共重合体、該環状オレフィン共重合体を含有する樹脂組成物、及び該環状オレフィン共重合体又は該樹脂組成物を成形してなるフィルム状又はシート状の成形品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<環状オレフィン共重合体>
本実施形態の環状オレフィン共重合体は、ノルボルネン単量体由来の構成単位とエチレン由来の構成単位とを含む。そして、ノルボルネン単量体由来の構成単位が、メソ型の二連子部位とラセモ型の二連子部位及び三連子部位とを有し、ラセモ型の二連子部位の含有率(mol%)に対するメソ型の二連子部位の含有率(mol%)の比の値が0.10~3.00であり、前記三連子部位の含有率が2.5mol%以下である。
【0016】
上述の通り、ノルボルネン単量体とエチレンとを共重合してなる環状オレフィン共重合体においては、ノルボルネン単量体由来の構成単位の連鎖部位としてメソ型の二連子部位が大半を占めると、機械特性に優れるものの、溶融粘度が高いため加工性に劣る。そこで、本実施形態の環状オレフィン共重合体においては、ノルボルネン単量体由来の構成単位の二連子部位としてメソ型及びラセモ型を所定の比率で含み、かつ、三連子部位が所定の割合以下となるようにして、機械特性と加工性との両立を図っている。
【0017】
ノルボルネン単量体由来の構成単位の二連子部位としてメソ型及びラセモ型、及び三連子部位は、以下の構造で示される。
【0018】
【化1】
【0019】
【化2】
【0020】
本実施形態の環状オレフィン共重合体においては、ラセモ型の二連子部位の含有率(mol%)に対するメソ型の二連子部位の含有率(mol%)の比の値が0.10~3.00である。当該比の値が0.10未満であると機械特性、すなわち靭性が低下し、3.00を超えると溶融粘度が増大し、加工性が低下する。当該比の値は0.20~2.5が好ましく、0.20~2.0がより好ましく、0.20~1.5がさらに好ましく、0.20~1.0がより一層好ましく、0.20~0.90が特に好ましく、0.20~0.60が最も好ましい。
また、ラセモ型の二連子部位及びメソ型の二連子部位の合計含有率は、0.1~10mol%が好ましく、0.2~8mol%がより好ましく、0.3~7mol%がさらに好ましい。
さらに、環状オレフィン共重合体における、ノルボルネン単量体由来の構成単位の三連子部位の含有率は、2.5mol%以下である。当該含有率が、2.5mol%を超えると、機械特性、すなわち靭性が低下し、加工性が低下する。当該含有率は、2.3mol%以下であることが好ましく、2.0mol%以下であることがより好ましい。また、当該三連子部位の含有率の下限としては、0mol%であることが好ましい。
なお、本実施形態の環状オレフィン共重合体において、ラセモ型の二連子部位の含有率(mol%)に対するメソ型の二連子部位の含有率(mol%)の比の値は、13C-NMRにより各部位を同定して比率(mol%)を算出し、メソ型の二連子部位の比率をラセモ型の二連子部位の比率で除することにより得られる。また、本実施形態の環状オレフィン共重合体において、ノルボルネン単量体由来の構成単位の三連子部位の含有率は、13C-NMRにより三連子部位を同定して比率(mol%)を算出することにより得られる。
【0021】
また、ラセモ型の二連子部位の含有率(mol%)に対するメソ型の二連子部位の含有率(mol%)の比の値を0.10~3.00とし、三連子部位の含有率を環状オレフィン共重合体に対して2.5mol%以下とすることは、例えば、ホスフィンイミド基を有する所定の触媒を用いて、ノルボルネン単量体とエチレンとを共重合することにより実現でき、それについては後述する。
【0022】
本実施形態の環状オレフィン共重合体においては、ラセモ型の二連子部位の含有率(mol%)に対するメソ型の二連子部位の含有率(mol%)の比の値が0.10~3.00であり、メソ型の二連子部位の比率がラセモ型の二連子部位の比率よりも少ない傾向にある。そのような構造は、立体的に機械特性には不利な構造であると考えられるが、機械特性はメソ型の二連子部位が大半を占める従来の環状オレフィン共重合体と変わりがない。これは、本実施形態の環状オレフィン共重合体のガラス転移温度が110℃以下であることに起因すると考えられる。すなわち、 環状オレフィン共重合体のガラス転移温度が110℃以下であると、共重合体中のノルボルネンの量が少なく、柔軟なエチレンユニットが十分に多い。そのため、立体的に機械特性には不利な構造を有するものの、十分な含有量のエチレンユニットの柔軟性により、機械特性に与える影響は少ないと考えられる。従って、本実施形態の環状オレフィン共重合体のガラス転移温度は110℃以下であることが好ましく、10~100℃であることがより好ましい。一方、本実施形態の環状オレフィン共重合体においては、ノルボルネン単量体由来の構成単位の三連子部位の含有率が環状オレフィン共重合体に対して2.5mol%以下である。上記の通り、ラセモ型の二連子部位の含有率(mol%)に対するメソ型の二連子部位の含有率(mol%)の比の値が0.10~3.00であり、かつ、三連子部位の含有率が2.5mol%以下であることにより、本実施形態の環状オレフィン共重合体は機械特性に優れる。
【0023】
以上のような、ノルボルネン単量体由来の構成単位が、メソ型の二連子部位とラセモ型の二連子部位とを所定の比率で有し、かつ、三連子部位を所定の割合で含有する環状オレフィン共重合体は、以下の製法により得ることができる。当該製法は、少なくとも、ノルボルネン単量体とエチレンとをモノマーとして重合容器内に仕込む工程(以下、「仕込み工程」と呼ぶ。)と、重合容器内の前記モノマーを、ホスフィンイミド基を有する触媒の存在下に重合させる工程(以下、「重合工程」と呼ぶ。)と、を含む。
以下に各工程において詳述する。
【0024】
[仕込み工程]
仕込み工程においては、少なくとも、ノルボルネン単量体とエチレンとをモノマーとして重合容器内に仕込む。重合容器には、本実施形態の製造方法に悪影響を及ぼさない範囲で、ノルボルネン単量体、及びエチレン以外の他の単量体が仕込まれてもよい。環状オレフィン共重合体における、ノルボルネン単量体に由来する構成単位の比率と、エチレンに由来する構成単位の比率との合計は、典型的には、全構成単位に対して、80質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上がさらに好ましい。
【0025】
重合溶液へのエチレンの仕込み方法は、所望する量のエチレンを重合容器内に仕込める限り特に限定されない。典型的には、エチレンは、重合容器内でのエチレンの仕込み圧力が、0.5MPa以上であるように重合容器に仕込まれる。エチレンの仕込み圧力は、0.55MPa以上が好ましく、0.6MPa以上がより好ましい。エチレンの仕込み圧力を高くすると、生成ポリマーあたりの触媒の使用量を少なくすることができる。上限について、エチレンの仕込み圧力は、例えば、10MPa以下が好ましく、5MPa以下がより好ましく、3MPa以下がさらに好ましい。
【0026】
重合容器内には、ノルボルネン単量体及びエチレンとともに、溶媒が仕込まれてもよい。溶媒としては、重合反応を阻害しない溶媒であれば特に限定されない。溶媒の例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、イソドデカン、ミネラルオイル、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン(デカリン)、ベンゼン、トルエン、及びキシレン等の炭化水素溶媒や、クロロホルム、メチレンクロライド、ジクロロメタン、ジクロロエタン、及びクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶媒が挙げられる。
【0027】
溶媒中にノルボルネン単量体を仕込む場合の、ノルボルネン単量体の濃度は、下限については、例えば0.5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。上限については、例えば50質量%以下が好ましく、35質量%以下がさらに好ましい。
【0028】
以下、ノルボルネン単量体について詳述する。
【0029】
[ノルボルネン単量体]
ノルボルネン単量体としては、例えば、ノルボルネン及び置換ノルボルネンが挙げられ、ノルボルネンが好ましい。ノルボルネン単量体は、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0030】
上記置換ノルボルネンは特に限定されず、この置換ノルボルネンが有する置換基としては、例えば、ハロゲン原子、1価又は2価の炭化水素基が挙げられる。置換ノルボルネンの具体例としては、下記一般式(I)で示される化合物が挙げられる。
【0031】
【化3】
[一般式(I)中、R~R12は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、及び、炭化水素基からなる群より選ばれるものであり、
とR10、R11とR12は、一体化して2価の炭化水素基を形成してもよく、
又はR10と、R11又はR12とは、互いに環を形成していてもよい。
また、nは、0又は正の整数を示し、
nが2以上の場合には、R~Rは、それぞれの繰り返し単位の中で、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
ただし、n=0の場合、R~R及びR~R12の少なくとも1個は、水素原子ではない。]
【0032】
一般式(I)で示される置換ノルボルネンについて説明する。一般式(I)におけるR~R12は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、及び、炭化水素基からなる群より選ばれるものである。
【0033】
~Rの具体例としては、例えば、水素原子;フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子;炭素原子数1~20のアルキル基等を挙げることができ、これらはそれぞれ異なっていてもよく、部分的に異なっていてもよく、また、全部が同一であってもよい。
【0034】
また、R~R12の具体例としては、例えば、水素原子;フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子;炭素原子数1~20のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、エチルフェニル基、イソプロピルフェニル基、ナフチル基、アントリル基等の置換又は無置換の芳香族炭化水素基;ベンジル基、フェネチル基、その他アルキル基にアリール基が置換したアラルキル基等を挙げることができ、これらはそれぞれ異なっていてもよく、部分的に異なっていてもよく、また、全部が同一であってもよい。
【0035】
とR10、又はR11とR12とが一体化して2価の炭化水素基を形成する場合の具体例としては、例えば、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基等のアルキリデン基等を挙げることができる。
【0036】
又はR10と、R11又はR12とが、互いに環を形成する場合には、形成される環は単環でも多環であってもよく、架橋を有する多環であってもよく、二重結合を有する環であってもよく、またこれらの環の組み合わせからなる環であってもよい。また、これらの環はメチル基等の置換基を有していてもよい。
【0037】
一般式(I)で示される置換ノルボルネンの具体例としては、5-メチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5,5-ジメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-エチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-ブチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-エチリデン-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-ヘキシル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-オクチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-オクタデシル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-メチリデン-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-ビニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-プロペニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン等の2環の環状オレフィン;
トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3,7-ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3-エン;トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ-3,7-ジエン若しくはトリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ-3,8-ジエン又はこれらの部分水素添加物(又はシクロペンタジエンとシクロヘキセンの付加物)であるトリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ-3-エン;5-シクロペンチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-シクロヘキシル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-シクロヘキセニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-フェニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エンといった3環の環状オレフィン;
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン(単にテトラシクロドデセンともいう)、8-メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-メチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-ビニルテトラシクロ[4,4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-プロペニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エンといった4環の環状オレフィン;
8-シクロペンチル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-シクロヘキシル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-シクロヘキセニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-フェニル-シクロペンチル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン;テトラシクロ[7.4.13,6.01,9.02,7]テトラデカ-4,9,11,13-テトラエン(1,4-メタノ-1,4,4a,9a-テトラヒドロフルオレンともいう)、テトラシクロ[8.4.14,7.01,10.03,8]ペンタデカ-5,10,12,14-テトラエン(1,4-メタノ-1,4,4a,5,10,10a-ヘキサヒドロアントラセンともいう);ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]-4-ヘキサデセン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]-4-ペンタデセン、ペンタシクロ[7.4.0.02,7.13,6.110,13]-4-ペンタデセン;ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]-5-エイコセン、ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.03,8.14,7.012,17.113,l6]-14-エイコセン;シクロペンタジエンの4量体等の多環の環状オレフィンを挙げることができる。
【0038】
中でも、アルキル置換ノルボルネン(例えば、1個以上のアルキル基で置換されたビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン)、アルキリデン置換ノルボルネン(例えば、1個以上のアルキリデン基で置換されたビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン)が好ましく、5-エチリデン-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン(慣用名:5-エチリデン-2-ノルボルネン、又は、単にエチリデンノルボルネン)が特に好ましい。
【0039】
ノルボルネン単量体及びエチレン以外の他の単量体は、ノルボルネン単量体及びエチレンと共重合可能である限り特に限定されない。かかる他の単量体の、典型的な例としては、α-オレフィンが挙げられる。α-オレフィンは、ハロゲン原子等の少なくとも1種の置換基で置換されていてもよい。
【0040】
α-オレフィンとしては、C3~C12のα-オレフィンが好ましい。C3~C12のα-オレフィンは特に限定されないが、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、及び1-ドデセン等が挙げられる。中でも、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセンが好ましい。
【0041】
[重合工程]
上述の通り、本実施形態においては、ノルボルネン単量体由来の構成単位が、メソ型の二連子部位とラセモ型の二連子部位とを所定の比率で有する環状オレフィン共重合体を得るため、共重合に際して、ホスフィンイミド基を有する所定の触媒を用いる。
【0042】
重合工程においては、ホスフィンイミド基を有する特定の触媒の存在下において重合容器内のモノマーを重合させる。
重合時の温度は特に限定されない。環状オレフィン共重合体の収率が良好であることなどから、重合時の温度は、20℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましく、60℃以上がさらにより好ましく、70℃以上が特に好ましい。重合時の温度は80℃以上であってもよく、85℃以上とすることもできる。
重合時の温度の上限は特に限定されない、重合時の温度の上限は、例えば200℃以下であってよく、140℃以下であってもよく、120℃以下であってもよい。
【0043】
(ホスフィンイミド基を有する触媒)
ホスフィンイミド基を有する触媒(以下、「触媒A」と呼ぶ。)としては、下記式(a1)で表される含金属化合物を用いることが好ましい。かかる触媒を用いることにより、ノルボルネン単量体由来の構成単位が、メソ型の二連子部位とラセモ型の二連子部位とを所定の比率で含有し、かつ、三連子部位が所定の割合以下の環状オレフィン共重合体を製造することができる。
【0044】
【化4】
【0045】
式(a1)中、Mは、Ti、Zr、又はHfであり、触媒Aの入手や製造が容易である点や、触媒の活性の点等からTi及びZrが特に好ましい。
MがZrである場合は、触媒活性向上の観点から、触媒とアルキルアルミニウム化合物とを予め接触させてから(混合してから)重合系内へ添加することが好ましい。
アルキルアルミニウム化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、MAO(一般的に、アルキルアルミニウムを含有する)等が好ましく使用される。
触媒と混合するアルキルアルミニウム化合物の量は、触媒に対して1~100当量であることが好ましく、2~50当量であることがより好ましく、2~10当量であることがさらに好ましい。
Xは、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の有機置換基、又はハロゲン原子である。
は、下記式(a1a)又は式(a1b)で表される基である。また、Lは、下記式(a1b)で表される基である。式(a1)中、L及びLがともに式(a1b)で表される基である場合、L及びLは同一の基でも異なった基でもよく、同一の基であるのが好ましい。
【0046】
【化5】
【0047】
式(a1a)中、Ra1~Ra5は、それぞれ独立に、同一でも異なっていてもよく、水素原子、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~3の有機置換基、又は無機置換基である。Ra1~Ra5のうちの5員環上で隣接する2つの基は相互に結合して環を形成してもよい。
式(a1b)中、Ra6~Ra8は、それぞれ独立に、同一でも異なっていてもよく、水素原子、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の有機置換基、又は無機置換基である。Ra6~Ra8から選択される2つの基が相互に結合して環を形成してもよい。
【0048】
式(a1)中、Xは、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の有機置換基、又はハロゲン原子である。
ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の有機置換基については、有機置換基がヘテロ原子を含む場合、ヘテロ原子の種類は本実施形態の製造方法の効果を阻害しない範囲で特に限定されない。ヘテロ原子の具体例としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子、セレン原子、及びハロゲン原子等が挙げられる。
【0049】
有機置換基としては、上記式(a1)で表される含金属化合物の生成反応を阻害しない基であれば特に限定されない。例えば、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、炭素原子数3~20のシクロアルキル基、炭素原子数2~20の脂肪族アシル基、ベンゾイル基、α-ナフチルカルボニル基、β-ナフチルカルボニル基、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基、炭素原子数7~20のアラルキル基、炭素原子数3~20のトリアルキルシリル基、炭素原子数3~20のトリアリールシリル基、炭素原子数1~20の炭化水素基で置換されたモノ置換アミノ基、及び炭素原子数1~20の炭化水素基で置換されたジ置換アミノ基が挙げられる。
【0050】
これらの有機置換基の中では、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、炭素原子数3~8のシクロアルキル基、炭素原子数2~6の脂肪族アシル基、ベンゾイル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、炭素原子数3~10のトリアルキルシリル基、及び炭素原子数3~10のトリアリールシリル基が好ましい。
【0051】
有機置換基の中では、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、アダマンチル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、フェニル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、及びトリスペンタフルオロフェニルシリル基がより好ましい。
【0052】
Xとしてはハロゲン原子が好ましく、塩素原子、及び臭素原子がより好ましく、塩素原子が特に好ましい。
【0053】
式(a1a)中、Ra1~Ra5は、それぞれ独立に、同一でも異なっていてもよく、水素原子、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~3の有機置換基、又は無機置換基である。また、Ra1~Ra5のうちの5員環上で隣接する2つの基は相互に結合して環を形成してもよい。
a1~Ra5としての、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~3の有機置換基の具体例及び好ましい例は、それぞれ、Xとしての、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~3の有機置換基の具体例及び好ましい例と同様である。
【0054】
無機置換基としては、上記式(a1)で表される含金属化合物の生成反応を阻害しない基であれば特に限定されない。
無機置換基の具体例としては、ハロゲン原子、ニトロ基、無置換のアミノ基、及びシアノ基等が挙げられる。
【0055】
式(a1b)中、Ra6~Ra8は、それぞれ独立に、同一でも異なっていてもよく、水素原子、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の有機置換基、又は無機置換基である。また、Ra6~Ra8から選択される2つの基が相互に結合して環を形成してもよい。
a6~Ra8としての、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の有機置換基の具体例及び好ましい例は、それぞれ、Xとしての、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の有機置換基の具体例及び好ましい例と同様である。さらに、Ra6~Ra8としての、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の有機置換基としては、アダマンチル基及びo-トリル基も好ましい例として挙げられる。
加えて、Ra6~Ra8としての、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の有機置換基としては、式(a1b)で表される基であって、Ra6~Ra8が、それぞれ独立に炭素原子数1~20の炭化水素基である基も好ましい。
a6~Ra8としての、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の有機置換基が、式(a1b)で表される基である場合の好ましい例としては、-N=P(Me)、-N=P(Et)、-N=P(n-Pr)、-N=P(iso-Pr)、-N=P(n-Bu)、-N=P(iso-Bu)、-N=P(sec-Bu)、-N=P(tert-Bu)、-N=P(-N=P(tert-Bu))Ph、及び-N=P(Ph)が挙げられる。これらの中では、-N=P(tert-Bu)、及び-N=P(iso-Pr)が好ましく、-N=P(tert-Bu)がより好ましい。なお、Meはメチル基であり、Etはエチル基であり、n-Prはn-プロピル基であり、iso-Prはiso-プロピル基であり、n-Buはn-ブチル基であり、iso-Buはイソブチル基であり、sec-Buはsec-ブチル基であり、tert-Buはtert-ブチル基であり、Phはフェニル基である。
また、Ra6~Ra8としての、無機置換基の具体例は、Ra1~Ra5としての、無機置換基の具体例と同様である。
a6~Ra8としては、環状又は非環状の第三級アルキル基、又は、オルト位に少なくとも1つ以上のアルキル基を有する芳香環基であることが好ましい。環状の第三級アルキル基としてはアダマンチル基等が挙げられ、非環状の第三級アルキル基としてはtert-ブチル基等が挙げられる。オルト位に少なくとも1つ以上のアルキル基を有する芳香環基としては、o-トリル基、メシチル基等が挙げられる。
【0056】
式(a1b)で表される基の好ましい例としては、-N=P(Me)、-N=P(Et)、-N=P(n-Pr)、-N=P(iso-Pr)、-N=P(n-Bu)、-N=P(iso-Bu)、-N=P(sec-Bu)、-N=P(tert-Bu)、-N=P(Ph)、-N=P(-N=P(tert-Bu))Ph、及び-N=P(-N=P(iso-Pr))Phが挙げられる。中でも、-N=P(tert-Bu)3、及び-N=P(iso-Pr)が好ましく、-N=P(tert-Bu)がより好ましい。
【0057】
以上説明した式(a1)で表される含金属化合物の好ましい具体例としては、以下の含金属化合物が挙げられる。なお、下記式におけるMは、式(a1)中のMと同様である。
また、下記式中、Si(Me)はトリメチルシリル基であり、Si(Me)tert-ブチルは、tert-ブチルジメチルシリル基である。
【0058】
【化6】
【0059】
【化7】
【0060】
【化8】
【0061】
以上のホスフィンイミド基を有する触媒は、シクロペンタジエン環を有し、シクロペンタジエン環が無置換、又は置換基としてメチル基及びトリメチルシリル基のうちの少なくとも1種を有するものが好ましい。例えば、前記式(a1)中、Lとして式(a1a)で表される基を含み、式(a1a)中のRa1~Ra5が水素原子、メチル基、及びトリメチルシリル基のうちの少なくとも1種を有するものが該当する。
【0062】
モノマーの重合は、上記触媒Aと助触媒との存在下に行われるのが好ましい。助触媒としては、一般的にオレフィンの重合において助触媒として使用されている化合物を特に限定なく用いることができる。助触媒の好適な例としては、アルミノキサン、及びイオン化合物が挙げられる。重合反応が良好に進行しやすい点から、モノマーの重合は、特に、アルミノキサン、及びイオン化合物としてのボレート化合物の少なくとも一方を助触媒として用いて行われるのが好ましい。
【0063】
このため、上記の触媒Aは、アルミノキサン、及び/又はイオン化合物と混合して、触媒組成物とされるのが好ましい。
ここで、イオン化合物は、触媒Aとの反応によりカチオン性遷移金属化合物を生成させる化合物である。
【0064】
触媒組成物は、触媒Aの溶液を用いて調製されるのが好ましい。触媒Aの溶液に含まれる溶媒は、特に限定されない。好ましい溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、イソドデカン、ミネラルオイル、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン(デカリン)、ミネラルオイル、ベンゼン、トルエン、及びキシレン等の炭化水素溶媒や、クロロホルム、メチレンクロライド、ジクロロメタン、ジクロロエタン、及びクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶媒が挙げられる。
【0065】
溶媒の使用量は、所望する性能の触媒組成物を製造できる限り特に限定されない。典型的には、触媒A、アルミノキサン、及びイオン化合物の濃度が、好ましくは0.00000001~100mol/L、より好ましくは0.00000005~50mol/L、特に好ましくは0.0000001~20mol/Lである量の溶媒が使用される。
【0066】
触媒組成物の原料を含む液を混合する際、触媒A中の遷移金属元素のモル数をMとし、アルミノキサン中のアルミニウムのモル数をMb1とし、イオン化合物のモル数をMb2とする場合において、(Mb1+Mb2)/Mの値が、好ましくは1~200000、より好ましくは5~100000、特に好ましくは10~80000であるように、触媒組成物の原料を含む液が混合されるのが好ましい。
【0067】
触媒組成物の原料を含む液を混合する温度は特に限定されないが、-100~100℃が好ましく、-50~50℃がより好ましい。
【0068】
触媒組成物を調製するための触媒Aの溶液と、アルミノキサン、及び/又はイオン化合物との混合は、重合前に、重合容器とは別の装置内で行われてもよく、重合容器において、重合前、又は重合中に行われてもよい。
【0069】
以下、触媒組成物の調製に使用される材料や、触媒組成物の調製条件について説明する。
【0070】
[アルミノキサン]
アルミノキサンとしては、従来より種々のオレフィンの重合において助触媒等として使用されている種々のアルミノキサンを特に制限なく用いることができる。典型的には、アルミノキサンは有機アルミノキサンである。
触媒組成物の製造に際して、アルミノキサンは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
アルミノキサンとしては、アルキルアルミノキサンが好ましく用いられる。アルキルアルミノキサンとしては、例えば、下記式(b1-1)又は(b1-2)で表される化合物が挙げられる。下記式(b1-1)又は(b1-2)で表されるアルキルアルミノキサンは、トリアルキルアルミニウムと水との反応により得られる生成物である。
【0072】
【化9】
[式(b1-1)及び式(b1-2)中、Rは炭素原子数1~4のアルキル基、nは0~40、好ましくは2~30の整数を示す。]
【0073】
アルキルアルミノキサンとしては、メチルアルミノキサン及びメチルアルミノキサンのメチル基の一部を他のアルキル基で置換した修飾メチルアルミノキサンが挙げられる。修飾メチルアルミノキサンとしては、例えば、置換後のアルキル基として、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基等の炭素原子数2~4のアルキル基を有する修飾メチルアルミノキサンが好ましく、特に、メチル基の一部をイソブチル基で置換した修飾メチルアルミノキサンがより好ましい。アルキルアルミノキサンの具体例としては、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、プロピルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、メチルエチルアルミノキサン、メチルブチルアルミノキサン、メチルイソブチルアルミノキサン等が挙げられ、中でも、メチルアルミノキサン及びメチルイソブチルアルミノキサンが好ましい。
【0074】
アルキルアルミノキサンは、公知の方法で調製することができる。また、アルキルアルミノキサンとしては、市販品を用いてもよい。アルキルアルミノキサンの市販品としては、例えば、MMAO-3A、TMAO-200シリーズ、TMAO-340シリーズ、固体MAO(いずれも東ソー・ファインケム(株)製)やメチルアルミノキサン溶液(アルベマール社製)等が挙げられる。
【0075】
[イオン化合物]
イオン化合物は、触媒Aとの反応によりカチオン性遷移金属化合物を生成する化合物である。
かかるイオン化合物としては、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのアニオン、ジメチルフェニルアンモニウムカチオン((CHN(C)H)のような活性プロトンを有するアミンカチオン、(Cのような三置換カルボニウムカチオン、カルボランカチオン、メタルカルボランカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオン等のイオンを含むイオン性化合物を用いることができる。
【0076】
イオン化合物の好適な例としては、ボレートが挙げられる。ボレートの好ましい具体例としては、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)トリチルボレート、ジメチルフェニルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、及びN,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N-メチルジノルマルデシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等のN-メチルジアルキルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが挙げられる。
【0077】
また、良好な収率で環状オレフィン共重合体を製造しやすい点から、重合容器内には、触媒A、又は触媒Aを含む触媒組成物を加える前に、アルミノキサン、アルキルアルミニウム化合物から選択される1種以上を存在させるのが好ましい。
【0078】
アルミノキサンについては、触媒組成物の製造方法において説明した通りである。
アルキルアルミニウム化合物としては、オレフィン類の重合等に従来より用いられている化合物を特に限定なく使用できる。アルキルアルミニウム化合物としては、例えば、下記一般式(II)で示される化合物が挙げられる。
(R10AlX3-z (II)
(一般式(II)中、R10は炭素原子数が1~15、好ましくは1~8のアルキル基であり、Xはハロゲン原子又は水素原子であり、zは1~3の整数である。)
【0079】
炭素原子数が1~15のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、n-オクチル基等が挙げられる。
【0080】
アルキルアルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-sec-ブチルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム;ジメチルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド等のジアルキルアルミニウムハライド;ジイソブチルアルミニウムハイドライド等のジアルキルアルミニウムハイドライド;ジメチルアルミニウムメトキシド等のジアルキルアルミニウムアルコキシドが挙げられる。
【0081】
触媒A、又は触媒Aを含む触媒組成物を加える前に、重合容器内にアルミノキサンを加える場合の使用量は、触媒A1モルに対するアルミノキサン中のアルミニウムのモル数として、1~1000000モルが好ましく、10~100000モルがより好ましい。
触媒A、又は触媒Aを含む触媒組成物を加える前に、重合容器内にアルキルアルミニウム化合物を加える場合の使用量は、触媒A1モルに対するアルミニウムのモル数として、1~500000モルが好ましく、10~50000モルがより好ましい。
【0082】
重合は、触媒Aと、アルミノキサンとの存在下、又は触媒Aと、イオン化合物と、アルキルアルミニウムとの存在下に行われるのが好ましい。
【0083】
重合条件は、所望する物性の環状オレフィン共重合体が得られる条件であれば、特に限定されず、公知の条件を用いることができる。
触媒組成物の使用量は、その調製に用いられる含金属化合物の使用量から導出される。触媒組成物の使用量は、その調製に用いられた含金属化合物の質量として、ノルボルネン単量体1モルに対し、0.000000001~0.005モルが好ましく、0.00000001~0.0005モルがより好ましい。
【0084】
重合時間は特に限定されず、所望する収率に達するか、重合体の分子量が所望する程度に上昇するまで重合が行われる。
重合時間は、温度や、触媒の組成や、単量体組成によっても異なるが、典型的には0.01時間~120時間であり、0.1時間~80時間が好ましく、0.2時間~10時間がより好ましい。
【0085】
触媒組成物の少なくとも一部、好ましくは全部が、重合容器に連続的に添加されるのが好ましい。
触媒組成物を連続的に添加することにより、環状オレフィン共重合体の連続製造が可能になり、環状オレフィン共重合体の製造コストを低減させることが可能になる。
【0086】
上記の方法により製造される環状オレフィン共重合体は、加工性及び機械特性(靭性)に優れる。そのため、上記の方法により製造される環状オレフィン共重合体は、光学フィルム又は光学シートや、シュリンク包装フィルム、医薬品の包装、医療器具の包装、食品の包装等の包装材料用の機能包装フィルム又はシートの材料等に特に好ましく使用される。
【0087】
一方、本実施形態の環状オレフィン共重合体を用いて成形する際、フィルム加工性を向上させるため、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、スチレン系エラストマー等のエラストマー等を、プラント添加、コンパウンド時に添加する等の種々の方法によりブレンドして成形などの加工に供してもよい。
【0088】
<樹脂組成物>
本実施形態の樹脂組成物は、以上の本実施形態の環状オレフィン共重合体を含有する。本実施形態の樹脂組成物においては、本実施形態の環状オレフィン共重合体を含有するため、当該樹脂組成物及びそれを成形してなる成形品は、加工性及び機械特性の双方ともに優れるものが得られる。
【0089】
本実施形態の樹脂組成物は、さらに酸化防止剤を含有することが好ましい。酸化防止剤を含有させることで、加工時における樹脂組成物の分解・劣化や黄変を抑制することができる。
【0090】
酸化防止剤は、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤等が挙げられる。さらに、ヒンダードアミン系酸化防止剤や硫黄化合物等の酸化防止剤と組み合わせて使用してもよい。ヒンダードフェノール系酸化防止剤として、具体的には、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ステアリル-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシベンジル)チオグリコレート、ステアリル-β-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)プロピオネート、ジステアリル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート、ジステアリル(4-ヒドロキシ-3-メチル-5-tert-ブチル)ベンジルマロネート、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス〔6-(1-メチルシクロヘキシル)-p-クレゾール〕、ビス〔3,3-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)ブチリックアシド〕グリコールエステル、4,4’-ブチリデンビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2,4,6-トリメチルベンゼン、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス〔(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、2-オクチルチオ-4,6-ジ(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチル)フェノキシ-1,3,5-トリアジン、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、トリエチレングリコール-ビス〔3-(3-tert-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6-ヘキシルジオール-ビス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4-ビス-オクチルチオ-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、2,2-チオ-ジエチレンビス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N,N-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマミド)、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンジルホスホネート-ジエチルエステル、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、イソオクチル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,4-ビス〔(オクチルチオ)メチル〕-o-クレゾール等が挙げられる。
【0091】
本実施形態において、酸化防止剤は、樹脂組成物中、0.01~5質量%含有することが好ましく、0.1~1質量%含有することがより好ましい。
【0092】
本実施形態の樹脂組成物は、その効果を害さない範囲で、上記各成分の他、その目的に応じた所望の特性を付与するために、一般に熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂に添加される公知の添加剤、即ち、離型剤、潤滑剤、可塑剤、難燃剤、染料や顔料等の着色剤、結晶化促進剤、結晶核剤、熱安定剤、耐候性安定剤、腐食防止剤等を配合してもよい。
【0093】
<フィルム状又はシート状の成形品>
本実施形態のフィルム状又はシート状の成形品は、以上の本実施形態の環状オレフィン共重合体又は本実施形態の樹脂組成物を成形してなる。上述の通り、本実施形態の環状オレフィン共重合体は、加工性及び機械特性(靭性)に優れる。そのため、フィルム状又はシート状の形状に成形することが容易である。また、得られるフィルム状又はシート状の成形品は機械特性(靭性)に優れる。
【0094】
本実施形態のフィルム状又はシート状の成形品は、上述の本実施形態の環状オレフィン共重合体単独又は必要に応じて他の樹脂成分又は添加物を添加した組成物を、T型ダイを用いた押出成形等、公知の押出成形によりフィルム状又はシート状に成形して得ることができる。
【実施例
【0095】
以下に、実施例により本実施形態をさらに具体的に説明するが、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。
【0096】
[実施例1~7、比較例1~2]
各実施例・比較例において、窒素雰囲気下、十分に窒素置換した1mのSUS製重合機に、デカリン157kg及びノルボルネン23kgを添加した後、助触媒1としてTIBA(トリイソブチルアルミニウム(東ソー・ファインケム(株)製)/トルエン溶液(1mol/L))を表1に記載の量になるように投入した(実施例4、比較例1及び2を除く。)。次いで、重合機内にエチレンを流通させ、飽和させた。重合機を90℃、ゲージ圧0.9MPaに昇温、昇圧させ、重合機内の温度が十分に安定化したのを確認後、各実施例・比較例において表1に示す触媒(トルエン溶液)及び触媒量で添加した。但し、実施例6及び実施例7については、次のように行った。すなわち、実施例6は触媒6(トルエン溶液)へ、TMAO(下記参照)を、トリメチルアルミニウムの添加量が触媒量に対して3当量になるようにゆっくり滴下した後、室温にて1時間攪拌したものを、表1に示す触媒の使用量で添加した。また、実施例7は触媒7(トルエン溶液)へ、トリメチルアルミニウムのトルエン溶液を、トリメチルアルミニウムの添加量が触媒量に対して3当量になるようにゆっくり滴下した後、室温にて1時間攪拌したものを、表1に示す触媒の使用量で添加した。さらに、各実施例・比較例において、表1に示す助触媒2を3g投入後、15分間反応させた後、重合溶液に2-プロパノールを添加して重合を停止させた。なお、表1に示す助触媒2において、「ボレート」は、N-メチルジアルキルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(アルキル:C14~C18(平均:C17.5))(東ソー・ファインケム(株)製))を示す。また、「TMAO」は、TMAO-211トルエン溶液(9.0質量%(Al原子の含有量として)メチルアルミノキサンの溶液、東ソー・ファインケム(株)製、なお全Alに対して26mol%のトリメチルアルミニウムを含有する)、「MMAO」は、MMAO-3Aトルエン溶液(6.5質量%(Al原子の含有量として)[(CH0.7(iso-C0.3AlO]で表されるメチルイソブチルアルミノキサンのトルエン溶液、東ソー・ファインケム(株)製、なお全Alに対して6mol%のトリメチルアルミニウムを含有する)を用いた。また、各実施例・比較例で使用した触媒の構造を以下に示す。
【0097】
【化10】
【0098】
【化11】
【0099】
各実施例・比較例において得られた環状オレフィン共重合体に対して、13C-NMRにより、ラセモ型の二連子部位、メソ型の二連子部位、及び三連子部位を同定し、それぞれの存在量(mol%)を算出した。測定溶媒(CCl)の中心ピークを74ppmとした。併せて、ラセモ型の二連子部位(mol%)に対するメソ型の二連子部位(mol%)の比の値を算出した。算出結果を表1に示す。なお、比較例3においては、すべてがメソ型であったため「∞」と表記している。また、13C-NMR測定の測定条件は以下の通りである。
・測定機器:BRUKER社製、AVANCE400III III
・測定溶媒:CCl(1,1,2,2-Tetrachloroethane-d
・測定温度:100℃
【0100】
<分子量測定>
数平均分子量(Mn)、及び重量平均分子量(Mw)を以下の測定条件に従って、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した。標準試料:単分散ポリスチレンを用いた。
・測定機器:Malvern社製 Viscotek TDA302検出器+Pump autosampler装置
・検出器:RI
・測定溶媒:トルエン
・測定温度:75℃
【0101】
[評価]
(1)溶融粘度
各実施例・比較例において得られた環状オレフィン共重合体に対して、(株)東洋精機製作所製キャピログラフを用い、キャピラリーとして1mmφ×10mmLのフラットダイを使用し、シリンダー温度180、220、260℃における溶融粘度を測定し、230℃における溶融粘度を求めた。
(2)引張伸び
各実施例・比較例において得られた環状オレフィン共重合体を用い、射出成形機(住友重機械工業(株)製、商品名:SE75D)にて、シリンダー温度220℃、金型温度50℃、射出速度80mm/secで、70mm×70mm×厚み2mmの平板を成形し、試験片を得た。この試験片を用い、ISO527-1,2に準じて、引張伸び(%)を測定し、降伏点における引張伸び、及び破断における引張伸びを求めた。測定結果を表1に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
表1より、実施例1~7の環状オレフィン共重合体は、低溶融粘度であり、かつ、引張降伏伸び及び引張破断伸びが大きく、靭性(機械特性)に優れることが分かる。すなわち、実施例1~7の環状オレフィン共重合体は、加工性及び機械特性の双方ともに優れる。特に、実施例1~3、6~7は、ラセモ型の二連子部位の含有率(mol%)に対するメソ型の二連子部位の含有率(mol%)の比の値が特に好ましい範囲(0.20~0.90)にあり、その範囲内にない実施例4、実施例5よりも、溶融粘度(加工性)と靭性(機械特性)のバランスが良好な結果が得られた。一方、比較例1~2の環状オレフィン共重合体は、溶融粘度と、引張降伏伸び及び引張破断伸びとのいずれかにおいて良好な結果が得られなかった。具体的には、当該比の値が0.10未満の比較例1においては、引張破断伸びに劣っていた。また、比較例2においては、ラセモ型の二連子部位の含有率(mol%)に対するメソ型の二連子部位の含有率(mol%)の比の値が3.00超であり、溶融粘度が高かった。