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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】2液型ウレタン系接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/04 20060101AFI20240126BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
C09J175/04
C09J11/06
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022143610
(22)【出願日】2022-09-09
(65)【公開番号】P2023047310
(43)【公開日】2023-04-05
【審査請求日】2023-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2021155673
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】506416400
【氏名又は名称】シーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100166637
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 圭
(72)【発明者】
【氏名】松木 裕一
(72)【発明者】
【氏名】阿部 愛美
(72)【発明者】
【氏名】三浦 和樹
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/31483(WO,A1)
【文献】特開2007-31483(JP,A)
【文献】特開2018-21104(JP,A)
【文献】国際公開第2018/100674(WO,A1)
【文献】特開平1-299882(JP,A)
【文献】特開2018-90671(JP,A)
【文献】特開2022-108817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-5/10、9/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート成分(A)を含有する主剤と、
水と、複数の活性水素を有する活性水素含有化合物(B)とを含有する硬化剤とを有し、
前記活性水素含有化合物(B)が、下記式(4)で表される窒素含有化合物を含み、
前記主剤において、前記ポリイソシアネート成分(A)は、複数の活性水素を有する活性水素含有化合物(A-1)と2官能以上のイソシアネート化合物(A-2)とによって形成されるウレタンプレポリマー(A-3)を含み、前記活性水素含有化合物(A-1)の活性水素(A1-H)の数に対する前記イソシアネート化合物(A-2)のイソシアネート基の数の比R1(NCO/H)は1.5~10であり、
前記硬化剤において、前記活性水素含有化合物(B)の平均活性水素濃度(BH-c)が0.50~3.50mol/kgであり、且つ、前記活性水素含有化合物(B)と前記水との平均活性水素濃度(BWH-c)が2.00~8.00mol/kgであり、
前記主剤と前記硬化剤との混合量が、前記活性水素含有化合物(B)の活性水素(B-H)の数に対する前記ポリイソシアネート成分(A)のイソシアネート基の数の比R2(NCO/H)が1~5であること、及び、前記活性水素含有化合物(B)と前記水との合計活性水素の数に対する前記ポリイソシアネート成分(A)のイソシアネート基の数の比R3(NCO/H)が0.5~2.5であることを満たす、2液型ウレタン系接着剤組成物。ただし、前記活性水素含有化合物(B)はケイ素を有さない。
【化1】

式(4)中、R6~R9はそれぞれ独立にアルキレン基を表し、R10はアルキレン基又はポリオキシアルキレン基を表し、a~dはそれぞれ独立に0~10を表す。
【請求項2】
前記ウレタンプレポリマー(A-3)は、未反応の2官能以上のイソシアネート化合物(A-2′)を含む、請求項1に記載の2液型ウレタン系接着剤組成物。
【請求項3】
前記主剤は、更に、シランカップリング剤(F)を含み、
前記シランカップリング剤(F)は、脂肪族ポリイソシアネートの変性体とアミノシランカップリング剤とを反応させて得られる、変性体由来の骨格とイソシアネート基とを有する、シランカップリング剤(F-1)、及び/又は、モノスルフィド含有シランカップリング剤(F-2)を含む、請求項1又は2に記載の2液型ウレタン系接着剤組成物。
【請求項4】
前記シランカップリング剤(F)は、前記シランカップリング剤(F-1)を含む、請求項3に記載の2液型ウレタン系接着剤組成物。
【請求項5】
前記脂肪族ポリイソシアネートの変性体が、HDIのビウレット体を含む、請求項3に記載の2液型ウレタン系接着剤組成物。
【請求項6】
前記アミノシランカップリング剤はNH2基又はNH基を有し、前記アミノシランカップリング剤において、前記NH2基の数は前記アミノシランカップリング剤1分子当たり0又は1個であり、前記NH2基及び前記NH基の合計は1個以上である、請求項3に記載の2液型ウレタン系接着剤組成物。
【請求項7】
前記主剤が、更に、脂肪族系ジイソシアネートの、イソシアヌレート体、ビウレット体及びアロファネート体からなる群から選ばれる少なくとも1種の脂肪族ジイソシアネート誘導体(C)を含み(ただし、前記脂肪族ジイソシアネート誘導体(C)はケイ素を有さない。)、
前記脂肪族ジイソシアネート誘導体(C)の含有量が、前記主剤全量中の0.1~10質量%である、請求項1又は2に記載の2液型ウレタン系接着剤組成物。
【請求項8】
前記硬化剤が、
前記式(4)で表され、R6~R9はそれぞれ独立にプロピレン基及び/又はエチレン基を表し、R10は炭素数2~10のアルキレン基を表し、a~dはそれぞれ独立に1~10を表し、a~dのうち少なくとも1つは3以上である、窒素含有化合物1、
下記式(5)で表される窒素含有化合物2、及び、
前記式(4)で表され、R6~R9はそれぞれ独立にアルキレン基を表し、R10はポリオキシアルキレン基を表し、a~dはそれぞれ独立に0を表す、窒素含有化合物3からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項1又は2に記載の2液型ウレタン系接着剤組成物。
【化2】

式(5)中、R56~R59はそれぞれ独立にプロピレン基及び/又はエチレン基を表し、R50は炭素数2~10のアルキレン基を表し、a~dはそれぞれ独立に1~2を表し、a~dのうち少なくとも1つは2である。
【請求項9】
前記硬化剤が、前記窒素含有化合物1と、前記窒素含有化合物2及び/又は前記窒素含有化合物3とを含有する、請求項8に記載の2液型ウレタン系接着剤組成物。
【請求項10】
前記硬化剤が、更に、アルコキシシリル基及び/又はシラノール基を有する化合物(D)を含み、
前記硬化剤に含有される前記化合物(D)の含有量が、組成物全量中の0.002~5質量%である、請求項1又は2に記載の2液型ウレタン系接着剤組成物。
【請求項11】
前記化合物(D)が、アミノ基を複数有するアミノシランカップリング剤を含有する、請求項10に記載の2液型ウレタン系接着剤組成物。
【請求項12】
前記アミノ基を複数有するアミノシランカップリング剤が、骨格として、有機鎖又はシロキサン骨格を有する、請求項11に記載の2液型ウレタン系接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は2液型ウレタン系接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2液型ウレタン系接着剤組成物が、例えば自動車用に使用されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6621847号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようななか、本発明者らは特許文献1を参考にして2液型ウレタン系接着剤組成物を調製しこれを評価したところ、このような組成物から得られる接着性が今般要求されているレベルを満足できない場合があることが明らかとなった。
そこで、本発明は接着性が優れる2液型ウレタン系接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、主剤と硬化剤とを有し、硬化剤が水と複数の活性水素を有する活性水素含有化合物(B)とを含有し、活性水素含有化合物(B)と水との平均活性水素濃度等が特定の範囲であること等によって、所望の効果が得られることを見出し、本発明に至った。
本発明は上記知見等に基づくものであり、具体的には以下の構成により上記課題を解決するものである。
【0006】
[1]
ポリイソシアネート成分(A)を含有する主剤と、
水と、複数の活性水素を有する活性水素含有化合物(B)とを含有する硬化剤とを有し、
上記活性水素含有化合物(B)が、後述する式(4)で表される窒素含有化合物を含み、
上記主剤において、上記ポリイソシアネート成分(A)は、複数の活性水素を有する活性水素含有化合物(A-1)と2官能以上のイソシアネート化合物(A-2)とによって形成されるウレタンプレポリマー(A-3)を含み、上記活性水素含有化合物(A-1)の活性水素(A1-H)の数に対する上記イソシアネート化合物(A-2)のイソシアネート基の数の比R1(NCO/H)は1.5~10であり、
上記硬化剤において、上記活性水素含有化合物(B)の平均活性水素濃度(BH-c)が0.50~3.50mol/kgであり、且つ、上記活性水素含有化合物(B)と上記水との平均活性水素濃度(BWH-c)が2.00~8.00mol/kgであり、
上記主剤と上記硬化剤との混合量が、上記活性水素含有化合物(B)の活性水素(B-H)の数に対する上記ポリイソシアネート成分(A)のイソシアネート基の数の比R2(NCO/H)が1~5であること、及び、上記活性水素含有化合物(B)と上記水との合計活性水素の数に対する上記ポリイソシアネート成分(A)のイソシアネート基の数の比R3(NCO/H)が0.5~2.5であることを満たす、2液型ウレタン系接着剤組成物。ただし、上記活性水素含有化合物(B)はケイ素を有さない。
[2]
上記ウレタンプレポリマー(A-3)は、未反応の2官能以上のイソシアネート化合物(A-2′)を含む、[1]に記載の2液型ウレタン系接着剤組成物。
[3]
上記主剤は、更に、シランカップリング剤(F)を含み、
上記シランカップリング剤(F)は、脂肪族ポリイソシアネートの変性体とアミノシランカップリング剤とを反応させて得られる、変性体由来の骨格とイソシアネート基とを有する、シランカップリング剤(F-1)、及び/又は、モノスルフィド含有シランカップリング剤(F-2)を含む、[1]又は[2]に記載の2液型ウレタン系接着剤組成物。
[4]
上記シランカップリング剤(F)は、上記シランカップリング剤(F-1)を含む、[3]に記載の2液型ウレタン系接着剤組成物。
[5]
上記脂肪族ポリイソシアネートの変性体が、HDIのビウレット体を含む、[3]又は[4]に記載の2液型ウレタン系接着剤組成物。
[6]
上記アミノシランカップリング剤はNH2基又はNH基を有し、上記アミノシランカップリング剤において、上記NH2基の数は上記アミノシランカップリング剤1分子当たり0又は1個であり、上記NH2基及び上記NH基の合計は1個以上である、[3]~[5]のいずれかに記載の2液型ウレタン系接着剤組成物。
[7]
上記主剤が、更に、脂肪族系ジイソシアネートの、イソシアヌレート体、ビウレット体及びアロファネート体からなる群から選ばれる少なくとも1種の脂肪族ジイソシアネート誘導体(C)を含み(ただし、上記脂肪族ジイソシアネート誘導体(C)はケイ素を有さない。)、
上記脂肪族ジイソシアネート誘導体(C)の含有量が、上記主剤全量中の0.1~10質量%である、[1]~[6]のいずれかに記載の2液型ウレタン系接着剤組成物。
[8]
上記硬化剤が、
上記式(4)で表され、R6~R9はそれぞれ独立にプロピレン基及び/又はエチレン基を表し、R10は炭素数2~10のアルキレン基を表し、a~dはそれぞれ独立に1~10を表し、a~dのうち少なくとも1つは3以上である、窒素含有化合物1、
後述する式(5)で表される窒素含有化合物2、及び、
上記式(4)で表され、R6~R9はそれぞれ独立にアルキレン基を表し、R10はポリオキシアルキレン基を表し、a~dはそれぞれ独立に0を表す、窒素含有化合物3からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する、[1]~[7]のいずれかに記載の2液型ウレタン系接着剤組成物。
[9]
上記硬化剤が、上記窒素含有化合物1と、上記窒素含有化合物2及び/又は上記窒素含有化合物3とを含有する、[8]に記載の2液型ウレタン系接着剤組成物。
[10]
上記硬化剤が、更に、アルコキシシリル基及び/又はシラノール基を有する化合物(D)を含み、
上記硬化剤に含有される上記化合物(D)の含有量が、組成物全量中の0.002~5質量%である、[1]~[9]のいずれかに記載の2液型ウレタン系接着剤組成物。
[11]。
上記化合物(D)が、アミノ基を複数有するアミノシランカップリング剤を含有する、[10]に記載の2液型ウレタン系接着剤組成物。
[12]
上記アミノ基を複数有するアミノシランカップリング剤が、骨格として、有機鎖又はシロキサン骨格を有する、[11]に記載の2液型ウレタン系接着剤組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の2液型ウレタン系接着剤組成物は、接着性が優れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施例で行われたクリープ試験の概略的な側面図である。
図2図2は、載荷後のサンプル1の一部を示す、概略的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明について以下詳細に説明する。
なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を含む範囲を意味する。
本明細書において、特に断りのない限り、各成分はその成分に該当する物質をそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。成分が2種以上の物質を含む場合、成分の含有量は、2種以上の物質の合計の含有量を意味する。
本明細書において、接着性がより優れることを、本発明の効果がより優れるということがある。
本明細書において、ポリイソシアネート成分(A)を単に「(A)」と称する場合がある。ほかの成分についても同様である。
【0010】
[2液型ウレタン系接着剤組成物]
本発明の2液型ウレタン系接着剤組成物(本発明の接着剤組成物)は、
ポリイソシアネート成分(A)を含有する主剤と、
水と、複数の活性水素を有する活性水素含有化合物(B)とを含有する硬化剤とを有し、
上記活性水素含有化合物(B)が、後述する式(4)で表される窒素含有化合物を含み、
上記主剤において、上記ポリイソシアネート成分(A)は、複数の活性水素を有する活性水素含有化合物(A-1)と2官能以上のイソシアネート化合物(A-2)とによって形成されるウレタンプレポリマー(A-3)を含み、上記活性水素含有化合物(A-1)の活性水素(A1-H)の数に対する上記イソシアネート化合物(A-2)のイソシアネート基の数の比R1(NCO/H)は1.5~10であり、
上記硬化剤において、上記活性水素含有化合物(B)の平均活性水素濃度(BH-c)が0.50~3.50mol/kgであり、且つ、上記活性水素含有化合物(B)と上記水との平均活性水素濃度(BWH-c)が2.00~8.00mol/kgであり、
上記主剤と上記硬化剤との混合量が、上記活性水素含有化合物(B)の活性水素(B-H)の数に対する上記ポリイソシアネート成分(A)のイソシアネート基の数の比R2(NCO/H)が1~5であること、及び、上記活性水素含有化合物(B)と上記水との合計活性水素の数に対する上記ポリイソシアネート成分(A)のイソシアネート基の数の比R3(NCO/H)が0.5~2.5であることを満たす、2液型ウレタン系接着剤組成物である。ただし、上記活性水素含有化合物(B)はケイ素を有さない。
以下、本発明の接着剤組成物に含有される各成分について詳述する。
【0011】
本発明の接着剤組成物は、主剤と硬化剤(広義の硬化剤)とを有する2液型のウレタン系接着剤組成物である。
【0012】
[主剤]
本発明において、主剤は、ポリイソシアネート成分(A)を含有する。
【0013】
[ポリイソシアネート成分(A)]
本発明において、主剤に含有されるポリイソシアネート成分(A)は、複数の活性水素を有する活性水素含有化合物(A-1)と2官能以上のイソシアネート化合物(A-2)とによって形成されるウレタンプレポリマー(A-3)を含む。
【0014】
〔ウレタンプレポリマー(A-3)〕
本発明において、ウレタンプレポリマー(A-3)は、イソシアネート基を複数有することが好ましい。(A-3)は、イソシアネート基を末端に有することが好ましい。
【0015】
〔活性水素含有化合物(A-1)〕
本発明において、ウレタンプレポリマー(A-3)を形成するために使用される、複数の活性水素を有する活性水素含有化合物(A-1)は、1分子あたり活性水素を2個以上有する化合物である。
【0016】
〔活性水素(A1-H)〕
(A-1)が有する活性水素(A1-H)は、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、イミノ基、メルカプト基、カルボキシ基のような官能基を形成してもよい。
(A-1)が有する活性水素(A1-H)は、本発明の効果がより優れるという観点から、ヒドロキシ基を形成することが好ましい。
(A-1)は、本発明の効果がより優れるという観点から、活性水素(A1-H)を1分子当たり、2~3個有することが好ましい。
【0017】
・(A-1)の主鎖骨格
(A-1)の主鎖骨格は特に制限されない。例えば、炭化水素、ポリエーテル、ポリエステル、これらの組み合わせが挙げられる。
【0018】
・(A-1)の具体例
(A-1)としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアミンが挙げられる。
(A-1)は、本発明の効果がより優れるという観点から、ポリエーテルポリオールを含むことが好ましい。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールが挙げられる。
【0019】
〔イソシアネート化合物(A-2)〕
ポリイソシアネート成分(A)において、ウレタンプレポリマー(A-3)を形成するために使用される、2官能以上のイソシアネート化合物(A-2)は、1分子あたりイソシアネート基を複数(2個以上)有する化合物である。
【0020】
〔イソシアネート基〕
(A-2)は、本発明の効果がより優れるという観点から、イソシアネート基を1分子当たり、2~3個有することが好ましい。
【0021】
・(A-2)の主鎖骨格
(A-2)の主鎖骨格は特に制限されない。例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらの組合せのような炭化水素基が挙げられる。
【0022】
・(A-2)の具体例
(A-2)としては、例えば、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(無置換のMDI。ピュアMDI、モノメリックMDIともいう)、1,4-フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメリックMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート(ピュアMDI)を高分子量化した化合物)、変性MDI等のような芳香族系ポリイソシアネート;
ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)のような、脂肪族系ポリイソシアネートが挙げられる。
【0023】
脂肪族系ポリイソシアネート(複数のイソシアネート基が脂肪族炭化水素に結合する化合物)が有する脂肪族炭化水素基としては、例えば、直鎖状、分岐状、環状、又は、これらの組合せが挙げられる。
【0024】
(A-2)は、芳香族系ポリイソシアネート(複数のイソシアネート基が芳香族炭化水素に結合する化合物)を含むことが好ましく、ジフェニルメタンジイソシアネートを含むことがより好ましい。
【0025】
〔比R1(NCO/H)〕
本発明において、(A-1)の活性水素(A1-H)の数に対する(A-2)のイソシアネート基の数の比R1(NCO/H)は1.5~10である。
比R1(NCO/H)は、本発明の効果がより優れるという観点から、1.6~8.5であることが好ましく、1.6~7.0がより好ましい。
【0026】
(イソシアネート化合物(A-2′))
上記のとおり、本発明において比R1(NCO/H)は1.5~10であり、ポリイソシアネート成分(A)においてイソシアネート基が活性水素(A1-H)に対して過剰なので、ウレタンプレポリマー(A-3)は、反応生成物としてのウレタンプレポリマーの他に、未反応の2官能以上のイソシアネート化合物(A-2′)を含んでよい。
ウレタンプレポリマー(A-3)は、本発明の効果がより優れるという観点から、未反応の2官能以上のイソシアネート化合物(A-2′)を含むことが好ましい。
【0027】
(脂肪族ジイソシアネート誘導体(C))
主剤は、本発明の効果がより優れるという観点から、更に、脂肪族系ジイソシアネートの、イソシアヌレート体、ビウレット体及びアロファネート体からなる群から選ばれる少なくとも1種の脂肪族ジイソシアネート誘導体(C)を含むことが好ましい。ただし、脂肪族ジイソシアネート誘導体(C)はケイ素を有さない。上記ただし書きは、(C)から後述するシランカップリング剤(F)及び化合物(D)を除く趣旨である。
【0028】
脂肪族系ジイソシアネート(2個のイソシアネート基が脂肪族炭化水素に結合する化合物)が有する脂肪族炭化水素基としては、例えば、直鎖状、分岐状、環状、又は、これらの組合せが挙げられる。
脂肪族ジイソシアネート誘導体(C)を形成する脂肪族系ジイソシアネートとしては、例えば、(A-2)として例示された脂肪族系ポリイソシアネートが挙げられる。
脂肪族ジイソシアネート誘導体(C)は、本発明の効果がより優れるという観点から、ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体及び/又はペンタメチレンジイソシアネートのアロファネート体を含むことが好ましく、ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体及びペンタメチレンジイソシアネートのアロファネート体を含むことがより好ましい。
【0029】
・脂肪族ジイソシアネート誘導体(C)の含有量
脂肪族ジイソシアネート誘導体(C)の含有量は、本発明の効果がより優れるという観点から、主剤全量中の0.1~10質量%であることが好ましく、0.5~5.0質量%であることがより好ましい。
【0030】
(シランカップリング剤(F))
主剤は、本発明の効果がより優れるという観点から、更に、シランカップリング剤(F)を含むことが好ましい。
シランカップリング剤は、加水分解性シリル基と加水分解性シリル基以外の官能基とを有する化合物である。
【0031】
加水分解性シリル基としては、例えば、アルコキシシリル基、シラノール基が挙げられる。
【0032】
・アルコキシシリル基
シランカップリング剤(F)が有し得るアルコキシシリル基は、ケイ素にアルコキシ基が1~3個結合した基である。
上記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基が挙げられる。
・アルコキシ基以外の基
アルコキシシリル基が有するアルコキシ基が1~2個である場合、ケイ素原子に結合する残りの基は特に制限されない。上記の残りの基としては、例えば、ヘテロ原子を有してもよい炭化水素基が挙げられ、具体的には例えば、無置換の炭化水素基が挙げられる。
アルコキシシリル基としては、例えば、メトキシシリル基、エトキシシリル基が挙げられる。
【0033】
・シラノール基
シランカップリング剤(F)が有し得るシラノール基は、ケイ素にOH基が1~3個結合した基である。
シラノール基としては、例えば、上記アルコキシシリル基が有するアルコキシ基が部分的に又は全て加水分解したものが挙げられる。
【0034】
主剤がシランカップリング剤(F)を更に含む場合、シランカップリング剤(F)は、本発明の効果がより優れるという観点から、アルコキシシリル基を有することが好ましい。
【0035】
シランカップリング剤(F)が有する、加水分解性シリル基以外の官能基は、本発明の効果がより優れるという観点から、イソシアネート基、メルカプト基、モノスルフィド基(例えば-C-S-Si結合)、アミノ基(上記アミノ基は、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基の概念を含む。)が好ましい。
【0036】
加水分解性シリル基と加水分解性シリル基以外の官能基とは有機基を介して結合することができる。上記有機基は特に制限されない。例えば、脂肪族炭化水素基のような炭化水素基が挙げられる。
なお、加水分解性シリル基と有機基としての炭化水素基とは、モノスルフィド結合(-S-)を介して結合してもよい。
【0037】
シランカップリング剤(F)は、本発明の効果がより優れるという観点から、イソシアネート基含有シランカップリング剤(例えば後述するシランカップリング剤(F-1))、及び/又は、モノスルフィド含有シランカップリング剤(F-2)を含むことが好ましく、脂肪族ポリイソシアネートの変性体とアミノシランカップリング剤とを反応させて得られる、変性体由来の骨格とイソシアネート基とを有する、シランカップリング剤(F-1)、及び/又は、モノスルフィド含有シランカップリング剤(F-2)を含むことがより好ましく、シランカップリング剤(F-1)を含むことが更に好ましい。
【0038】
シランカップリング剤(F-1)の原料である脂肪族ポリイソシアネートの変性体としては、例えば、複数のイソシアネート基を有する炭化水素化合物の、イソシアヌレート体、ビウレット体、及びアロファネート体が挙げられる。
上記脂肪族ポリイソシアネートの変性体が、本発明の効果がより優れるという観点から、脂肪族ジイソシアネートのビウレット体を含むことが好ましく、HDIのビウレット体を含むことがより好ましい。
【0039】
シランカップリング剤(F-1)の原料であるアミノシランカップリング剤としては、例えば、NH2基及び/又はNH基を有するシランカップリング剤が挙げられる。
上記アミノシランカップリング剤は、本発明の効果がより優れるという観点から、NH2基又はNH基を有し、NH2基の数はアミノシランカップリング剤1分子当たり0個又は1であり、NH2基及びNH基の合計は1個以上であることが好ましい。
上記アミノシランカップリング剤は、本発明の効果がより優れるという観点から、(N-フェニル)アミノアルキルトリアルコキシシランを含むことが好ましく、(N-フェニル)アミノプロピルトリメトキシシランを含むことがより好ましい。
【0040】
脂肪族ポリイソシアネートの変性体とアミノシランカップリング剤との反応は、上記変性体が有するイソシアネート基のモル数が上記アミノシランカップリング剤が有するアミノ基のモル数に対して過剰になる量で、両者を反応させることが好ましい。
【0041】
・モノスルフィド含有シランカップリング剤(F-2)
モノスルフィド含有シランカップリング剤(F-2)は、モノスルフィド結合と加水分解性シリル基とを有し、モノスルフィド結合と加水分解性シリル基が有するケイ素原子とが直接結合するモノスルフィド化合物である。
【0042】
モノスルフィド含有シランカップリング剤(F-2)は、本発明の効果がより優れるという観点から、モノスルフィド結合に結合する加水分解性シリル基とは別に、更に、第2の加水分解性シリル基を有することが、好ましい態様の1つとして挙げられる。
第2の加水分解性シリル基は、モノスルフィド結合に結合する加水分解性シリル基と同様のものが挙げられ、モノスルフィド結合に結合する加水分解性シリル基と同一であっても異なってもよい。
第2の加水分解性シリル基は、上記モノスルフィド結合と、炭化水素基を介して結合することができる。炭化水素基は特に制限されない。
炭化水素基としては、例えば、アルキレン基(例えば炭素数1~10のアルキレン基)、シクロアルキレン基、アリーレン基、またはこれらの組合せが挙げられる。炭化水素基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよい。
【0043】
モノスルフィド含有シランカップリング剤(F-2)は、接着性がより優れるという観点から、下記式(11)で表される化合物を含むことが好ましい。
【0044】
【化1】
【0045】
式中、R、Rは各々独立にヘテロ原子を有してもよい炭化水素基であり、nは各々独立に1~3の整数であり、Rは炭化水素基である。
【0046】
としてのヘテロ原子を有してもよい炭化水素基は特に制限されない。例えば、上記アルコキシシリル基におけるアルコキシ基が有する炭化水素基と同様のものが挙げられる。
としてのヘテロ原子を有してもよい炭化水素基は、上記の、1個の加水分解性シリル基が有するアルコキシ基の数が1~2個である場合、加水分解性シリル基のケイ素原子に結合することができる基としてのヘテロ原子を有してもよい炭化水素基と同様である。
nは各々独立に3であることが好ましい。
としての炭化水素基は、上記の、第2の加水分解性シリル基とモノスルフィド結合とを介する炭化水素基と同様である。当該炭化水素基としては例えば、-C2m-が挙げられる。mは1~5の整数であることが好ましい。
【0047】
モノスルフィド含有シランカップリング剤(F-2)は、接着性がより優れるという観点から、下記式(12)で表される化合物(トリエトキシシリルチオプロピルトリメトキシシラン)を含むことが好ましい。
【0048】
【化2】
【0049】
・シランカップリング剤(F)の含有量
主剤が更にシランカップリング剤(F)を含有する場合、シランカップリング剤(F)の含有量は、本発明の接着剤組成物全量中の0.02~5質量%であることが好ましい。なお、硬化剤が更に化合物(D)を含有する場合、主剤に含有されるシランカップリング剤(F)の含有量は、上記と同様とできる。
【0050】
[硬化剤]
本発明において、硬化剤(広義の硬化剤)は、水と、複数の活性水素を有する活性水素含有化合物(B)とを含有し、活性水素含有化合物(B)が、後述する式(4)で表される窒素含有化合物を含む。
水と、複数の活性水素を有する活性水素含有化合物(B)とは、ポリイソシアネート成分(A)と反応して本発明の接着剤組成物を硬化させうる硬化剤(狭義の硬化剤)として機能することができる。
【0051】
[水]
硬化剤(広義の硬化剤)に含有される水は、特に制限されない。例えば、精製水が挙げられる。
【0052】
[活性水素含有化合物(B)]
硬化剤(広義の硬化剤)に含有される活性水素含有化合物(B)は、1分子あたり活性水素を2個以上有する化合物である。ただし、本発明において活性水素含有化合物(B)はケイ素を有さない。
【0053】
〔活性水素(B-H)〕
活性水素含有化合物(B)が有する活性水素(B-H)は、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、イミノ基、メルカプト基、カルボキシ基のような官能基を形成してもよい。
(B)が有する活性水素(B-H)は、本発明の効果がより優れるという観点から、ヒドロキシ基、アミノ基を形成することが好ましい。
(B)は、本発明の効果がより優れるという観点から、活性水素(B-H)を1分子当たり、2~4個有することが好ましい。
【0054】
・(B)の主鎖骨格
(B)の主鎖骨格は特に制限されない。例えば、炭化水素、ポリエーテル、ポリエステル、これらの組み合わせが挙げられる。
【0055】
式(4)で表される窒素含有化合物
本発明において、活性水素含有化合物(B)は、下記式(4)で表される窒素含有化合物(式(4)で表わされる化合物)を含む。
【化3】

式(4)中、R6~R9はそれぞれ独立にアルキレン基を表し、R10はアルキレン基又はポリオキシアルキレン基を表し、a~dはそれぞれ独立に0~10を表す。
【0056】
式(4)中、R6~R9のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基が挙げられる。
10の炭素数2~10のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、テトラメチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、オクチレン基、デシレン基が挙げられる。上記炭素数2~10のアルキレン基は、エチレン基が好ましい。R10は(B)の骨格の一部となりうる。
(B)が有し得る骨格としてのポリエーテルについて、例えば、式(4)中のaが3以上である場合、H-(O-R6-は、末端にヒドロキシ基を有するポリエーテルとなる。b~dについても同様である。
【0057】
式(4)で表わされる化合物としては、例えば、後述する、窒素含有化合物1、窒素含有化合物2、窒素含有化合物3が挙げられる。
【0058】
・窒素含有化合物1
窒素含有化合物1は、上記式(4)で表され、R6~R9はそれぞれ独立にプロピレン基及び/又はエチレン基を表し、R10は炭素数2~10のアルキレン基を表し、a~dはそれぞれ独立に1~10を表し、a~dのうち少なくとも1つは3以上である、4官能のヒドロキシ化合物である。
【0059】
窒素含有化合物1の重量平均分子量は、本発明の効果がより優れるという観点から、200~2,000であることが好ましく、400~800であることがより好ましい。
【0060】
・窒素含有化合物2
窒素含有化合物2は、式(5)で表される化合物である。窒素含有化合物2は、4官能のヒドロキシ化合物である。
【化4】

式(5)中、R56~R59はそれぞれ独立にプロピレン基及び/又はエチレン基を表し、R50は炭素数2~10のアルキレン基を表し、a~dはそれぞれ独立に1~2を表し、a~dのうち少なくとも1つは2である。
【0061】
式(5)中、R50の炭素数2~10のアルキレン基は式(4)中のR10と同様である。
【0062】
窒素含有化合物2の重量平均分子量は、本発明の効果により優れるという観点から、100~1,000であることが好ましく、200~500であることがより好ましい。
【0063】
・窒素含有化合物3
窒素含有化合物3は、上記式(4)で表され、R6~R9はそれぞれ独立にアルキレン基を表し、R10はポリオキシアルキレン基を表し、a~dはそれぞれ0を表す、ジアミン化合物である。
【0064】
硬化剤は、本発明の効果がより優れるという観点から、窒素含有化合物1~3からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましく、窒素含有化合物1を含有することがより好ましい。
硬化剤が窒素含有化合物1を含有する場合、本発明の効果がより優れるという観点から、更に、窒素含有化合物2及び/又は窒素含有化合物3とを含有することが好ましく、窒素含有化合物2を含有することがより好ましい。
【0065】
活性水素含有化合物(B)は、式(4)で表される化合物以外の活性水素含有化合物(その他の活性水素含有化合物)を更に含むことができる。
その他の活性水素含有化合物としては、例えば、窒素原子を有さないポリエーテルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリエステルポリオール、シュガーベースのポリオールのようなポリオール;式(4)においてa~dの少なくとも1つが0である化合物を除くアミン化合物が挙げられる。
本発明の効果がより優れる(特に後述するクリープ試験5の評価が優れる)という観点から、活性水素含有化合物(B)が式(4)で表される化合物以外に更にヒドロキシ基を3個以上有するポリエーテルポリオールを含むことが好ましい。
本発明の効果がより優れる(特にせん断強度が優れる)という観点から、活性水素含有化合物(B)が式(4)で表される化合物以外に更に、ポリブタジエンポリオール、ポリエステルポリオール、及びヒドロキシ基を2個有するポリエーテルポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0066】
本発明において、活性水素化合物の重量平均分子量は、溶媒THF(テトラヒドロフラン)を使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算値とすることができる。本発明における活性水素化合物の重量平均分子量の測定方法及び測定条件は以下のとおりである。
【0067】
(活性水素化合物の重量平均分子量の測定方法及び測定条件)
GPC:LC Solution(SHIMAZU製)
検出器:SPD-20A(SHIMAZU製)
カラム:商品名Shim-pack GPC-801(SHIMAZU製)を2本直列させる
溶媒:テトラヒドロフラン
温度:40℃
流速:0.5ml/min
濃度:2mg/ml
標準試料:ポリスチレン
【0068】
[(B)の平均活性水素濃度(BH-c)]
本発明において、活性水素含有化合物(B)の平均活性水素濃度(BH-c)は0.50~3.50mol/kgである。
活性水素含有化合物(B)の平均活性水素濃度(BH-c)は、活性水素含有化合物(B)全量(kg)に対する、上記活性水素含有化合物(B)が有する全活性水素のモル数で表わされる。
(BH-c)は、本発明の効果がより優れるという観点から、0.7~3.5mol/kgであることが好ましく、1.5~2.9mol/kgがより好ましい。
【0069】
本発明において、活性水素含有化合物(B)の平均活性水素濃度(BH-c)は、各活性水素含有化合物(B)の活性水素濃度及び含有量(質量)から算出することができる。
活性水素含有化合物(B)の活性水素濃度は、活性水素含有化合物(B)の水酸基価から算出することができる。つまり、各活性水素含有化合物(B)の水酸基価をKOHの分子量で除算すればよい。
活性水素含有化合物(B)の水酸基価は、JIS K1557に準じて測定することができる。
・活性水素含有化合物(B)の含有量
活性水素含有化合物(B)の含有量(活性水素含有化合物(B)が2種以上である場合はこれらの合計含有量)は、本発明の効果がより優れるという観点から、硬化剤全量中の、50~90質量%であることが好ましく、55~80質量%がより好ましく、60~70質量%が更に好ましい。
【0070】
[平均活性水素濃度(BWH-c)]
本発明において、活性水素含有化合物(B)と水との平均活性水素濃度(BWH-c)は、2.00~8.00mol/kgである。
活性水素含有化合物(B)と水との平均活性水素濃度(BWH-c)は、活性水素含有化合物(B)と水との合計量(kg)に対する、上記活性水素含有化合物(B)が有する活性水素のモル数と上記水が有する活性水素のモル数の合計で表わされる。
(BWH-c)は、本発明の効果がより優れるという観点から、2.50~6.50mol/kgであることが好ましく、3.20~5.50mol/kgがより好ましく、3.7~5.50mol/kgが更に好ましく、4.20~5.20mol/kgであることがより更に好ましい。
【0071】
本発明において、活性水素含有化合物(B)と水との平均活性水素濃度(BWH-c)は、各活性水素含有化合物(B)及び水の、活性水素濃度及び含有量(質量)から算出することができる。
活性水素含有化合物(B)の活性水素濃度及び含有量は、上記と同様である。
【0072】
(水の活性水素濃度)
本発明において、水の活性水素濃度を、111.1mol/kgとした。上記値は、水の水酸基価を6233mgKOH/gとして、これをKOHの分子量で除算して求めた。
なお、水の水酸基価が計算上6233mgKOH/gであることは、例えば、特開2005-249957号公報[0043]、特開2009-156944号公報[0050]、特開2011-68719号公報[0103]に記載されている。
・水の含有量
水の含有量は、本発明の効果がより優れるという観点から、硬化剤全量中の、0.1~5質量%であることが好ましく、1.1~2.5質量%がより好ましく、1.2~1.5質量%が更に好ましい。
【0073】
(化合物(D))
硬化剤は、本発明の効果がより優れるという観点から、更に、アルコキシシリル基及び/又はシラノール基を有する化合物(D)を含むことが好ましい。硬化剤が化合物(D)を更に含む場合、上記化合物(D)はシラノール基を有することが好ましい。
【0074】
・アルコキシシリル基、シラノール基
化合物(D)が有し得るアルコキシシリル基、シラノール基は、上述したシランカップリング剤(F)が有し得るアルコキシシリル基、シラノール基と同様である。
【0075】
化合物(D)は、本発明の効果がより優れるという観点から、アルコキシシリル基及びシラノール基以外の官能基を有することができる。上記官能基は、アミノ基及び/又はイミノ基が好ましい。
【0076】
化合物(D)は、本発明の効果がより優れるという観点から、アルコキシシリル基及び/又はシラノール基と、アミノ基(上記アミノ基は、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基の概念を含む。)とを有する化合物を含有することが好ましく、アルコキシシリル基及び/又はシラノール基と複数のアミノ基とを有するアミノシランカップリング剤を含有することがより好ましい。
【0077】
化合物(D)としての、上記アミノ基を複数有するアミノシランカップリング剤は、本発明の効果がより優れるという観点から、骨格として、有機鎖又はシロキサン骨格を有することが好ましく、有機鎖を有することがより好ましい。
上記骨格としての有機鎖は特に制限されない。
上記骨格としてのシロキサン骨格は特に制限されない。例えば、-Si-(O-Si)n―O―Si-で表わされ、nが0以上のシロキサン骨格が挙げられる。
【0078】
アミノ基を複数有するアミノシランカップリング剤としては、例えば、モノマーレベルのアミノ基含有シランカップリング剤、又は、そのオリゴマーが挙げられる。
モノマーレベルのアミノ基含有シランカップリング剤としては、例えば、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランのようなN-(アミノアルキル)-アミノアルキルトリアルコキシシラン(1級アミノ基、2級アミノ基を1つずつ有する)が挙げられる。
アミノ基を複数有するアミノシランカップリング剤は、アミノ基含有シランカップリング剤のオリゴマーが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0079】
・アミノ基含有シランカップリング剤のオリゴマー
アミノ基含有シランカップリング剤のオリゴマーはアミノ基含有シランカップリング剤がオリゴマー化した化合物であれば特に制限されない。上記の場合、オリゴマーを形成し得るアミノ基含有シランカップリング剤はアミノ基を1個以上有すればよい。オリゴマーを形成し得るアミノ基含有シランカップリング剤は、オリゴマー化するための反応基を更に有してもよい。
オリゴマーの重合度は特に限定されないが、好ましくは3~10であり、より好ましくは3~8であり、さらに好ましくは4~8である。
化合物(D)としての、アミノ基含有シランカップリング剤のオリゴマーは、例えばアミノ基含有シランカップリング剤をオリゴマー化し、得られたオリゴマーの骨格が有機鎖又はシロキサン骨格を有する化合物が挙げられる。オリゴマーの上記骨格が有機鎖である場合、上記骨格に、アルコキシシリル基及び/又はシラノール基、並びに、複数のアミノ基が結合することができる。オリゴマーの上記骨格がシロキサン骨格である場合、シロキサン骨格を形成するケイ素は炭化水素基、OH基又はアルコキシ基と結合してもよく、上記骨格に複数のアミノ基が結合することができる。
【0080】
・化合物(D)の含有量
硬化剤が更に化合物(D)を含有する場合、化合物(D)の含有量は、本発明の効果がより優れるという観点から、本発明の接着剤組成物全量中の0.002~5質量%であることが好ましい。
【0081】
・シランカップリング剤(F)と化合物(D)の合計含有量
主剤が更にシランカップリング剤(F)を含有し、硬化剤が更に化合物(D)を含有する場合、シランカップリング剤(F)と化合物(D)の合計含有量は、本発明の効果がより優れるという観点から、本発明の接着剤組成物全量中の0.03~5質量%であることが好ましい。
【0082】
[主剤と硬化剤との混合量]
本発明において、主剤と硬化剤との混合量は、活性水素含有化合物(B)の活性水素(B-H)の数に対するポリイソシアネート成分(A)のイソシアネート基の数の比R2(NCO/H)が1~5であること、及び、活性水素含有化合物(B)と水との合計活性水素の数に対するポリイソシアネート成分(A)のイソシアネート基の数の比R3(NCO/H)が0.5~2.5であることを満たす。
【0083】
[比R2(NCO/H)]
活性水素含有化合物(B)の活性水素(B-H)の数に対するポリイソシアネート成分(A)のイソシアネート基の数の比R2(NCO/H)は、本発明の効果がより優れるという観点から、1.5~4.5であることが好ましい。
【0084】
[比R3(NCO/H)]
活性水素含有化合物(B)と上記水との合計活性水素の数に対するポリイソシアネート成分(A)のイソシアネート基の数の比R3(NCO/H)は、本発明の効果がより優れるという観点から、1.0~1.8であることが好ましい。
【0085】
(添加剤)
本発明の接着剤組成物は、必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲で、さらに添加剤を含有することができる。添加剤としては例えば、カーボンブラック、炭酸カルシウムのようなフィラー;フタル酸ジイソノニルのような可塑剤;金属触媒、アミン系触媒のような触媒;テルペンに由来する骨格を有する化合物(E)、酸化防止剤、老化防止剤、チクソ付与剤が挙げられる。添加剤の種類、含有量は、適宜選択することができる。
上記各添加剤は、主剤及び硬化剤のうちのいずれか一方又は両方に添加することができる。
【0086】
・フィラーの含有量
本発明の接着剤組成物がさらにフィラーを含有する場合、フィラーの含有量は、本発明の接着剤組成物全量中の20~80質量%であることが好ましい。
・可塑剤の含有量
本発明の接着剤組成物がさらに可塑剤を含有する場合、可塑剤の含有量は、本発明の接着剤組成物全量中の2~50質量%であることが好ましい。
【0087】
・テルペンに由来する骨格を有する化合物(E)
本発明の接着剤組成物は、本発明の効果がより優れるという観点から、主剤及び/又は硬化剤が、更に、テルペンに由来する骨格を有する化合物(E)を含有することが好ましい。
テルペンに由来する骨格を有する化合物(E)としては、例えば、モノテルペンに由来する骨格を有する化合物が挙げられ、具体的には例えば、カンフェンとフェノールとの付加物が挙げられる。
カンフェンとフェノールとの付加物としては、例えば、下記式(Z1-1)で表される化合物1、式(Z1-2)で表される化合物2、式(Z2-1)で表される化合物3、式(Z2-2)で表される化合物4及び式(Z3-1)で表される化合物5からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含むものが挙げられる。
【化5】



本発明の接着剤組成物がさらにテルペンに由来する骨格を有する化合物(E)を含有する場合、(E)の含有量は、本発明の効果がより優れるという観点から、本発明の接着剤組成物全量中の0.2~10質量%であることが好ましい。
【0088】
・金属触媒
金属触媒は、イソシアネート基の反応を活性化しうる、金属を有する化合物であれば特に制限されない。金属触媒としては、例えば、ビスマス系触媒、錫系触媒が挙げられ、具体的には例えば、ビスマストリオクテートのようなビスマス系触媒、ジオクチル錫(IV)ジラウレートのような4価のスズ触媒が挙げられる。
本発明の接着剤組成物がさらに金属触媒を含有する場合、金属触媒の含有量は、本発明の接着剤組成物全量中の0.001~0.1質量%であることが好ましい。
【0089】
・アミン系触媒
アミン系触媒は、イソシアネート基の反応を活性化しうる、アミノ基、イミノ基、又は3級アミノ基を有する化合物であれば特に制限されない。アミン系触媒としては、例えば、3級アミノ基を有する触媒が挙げられ、具体的には例えば、ジメチルアミノエチルモルフォリンのようなモノモルフォリン化合物、ジモルフォリノジエチルエーテルのようなジモルフォリン化合物、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテルのような鎖状のエーテル化合物、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンが挙げられる。
本発明の接着剤組成物がさらにアミン系触媒を含有する場合、アミン系触媒の含有量は、本発明の接着剤組成物全量中の0.1~2.0質量%であることが好ましい。
【0090】
(製造方法)
本発明の接着剤組成物はその製造方法について特に制限されない。例えば、ポリイソシアネート成分(A)、脂肪族ジイソシアネート誘導体(C)、シランカップリング剤(F)、フィラー、金属触媒、アミン系触媒、テルペンに由来する骨格を有する化合物(E)等を窒素ガス雰囲気下で十分に混合する方法によって主剤を調製することができる。
また、水、式(4)で表される化合物、その他の活性水素含有化合物(B)、化合物(D)、フィラー、金属触媒、アミン系触媒、テルペンに由来する骨格を有する化合物(E)等を十分に混合する方法によって硬化剤を調製することができる。
【0091】
(使用方法)
本発明の接着剤組成物を使用する際は、主剤と硬化剤とを上記の混合量で混合し、得られた混合物を本発明の接着剤組成物として使用することができる。
本発明の接着剤組成物は、例えば、-20~+50℃の条件下で硬化することができる。
本発明において「ポリウレタン系接着剤組成物」は、本発明の接着剤組成物から得られる硬化物が、広義のウレタン系ポリマー、つまり、イソシアネート基から誘導されるポリマー系(ポリウレタン系)の化合物となることを意味する。
【0092】
本発明の組成物は、接着剤として使用することができる。
本発明の接着剤組成物を適用することができる被着体(基材)は特に制限されない。例えば、金属(塗板、電着塗装鋼板を含む。)、プラスチック、ゴム、ガラスが挙げられる。
被着体に対して必要に応じてプライマーを使用してもよい。プライマーは特に制限されない。例えば、イソシアネート基、及び/又は、アルコキシシリル基のような加水分解性シリル基を有する化合物を含有する組成物が挙げられる。
【0093】
本発明の接着剤組成物は、例えば、車体と窓ガラスとの接着剤;ロケットピン及びヒンジのような部品と窓ガラスとの接着剤として使用することができる。
【実施例
【0094】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし本発明はこれらに限定されない。実施例において特に断りのない限り「%」は「質量%」を意味する。
【0095】
<ポリイソシアネート成分(A)の調製>
1.ポリイソシアネート成分(A1)
以下の各成分を含む混合物を80℃で5時間反応させて、ウレタンプレポリマー(A-3-1)を含むポリイソシアネート成分(A1)を調製した。以下において、Fは官能基数を、Mwは重量平均分子量を、OHVは水酸基価(単位:mgKOH/g)を表す。
(各成分、配合量、得られたポリイソシアネート成分(A1)の詳細)
・活性水素含有化合物(A-1)
・・サンニックス PL-2100(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール。F=2、Mw=2400、OHV:44、三洋化成工業社製) 198質量部
・・エクセノール 1020(ポリオキシプロピレンポリオール。F=2、Mw=1000、OHV:112、AGC社製) 71質量部
・・エクセノール 837(エチレンオキシド付加されたポリオキシプロピレンポリオール。F=3、Mw=6000、OHV:28、AGC社製。以下同様) 443質量部
・イソシアネート化合物(A-2)
・・MDI(ミリオネート MT)(NCO2官能、東ソー社製。以下同様)109質量部
・Total 821質量部
・比R1(NCO/H)=1.68
・ポリイソシアネート成分(A1)のNCO%:1.80%
・ポリイソシアネート成分(A1)中の残存MDIモノマー:2%
【0096】
2.ポリイソシアネート成分(A2)
以下の各成分を含む混合物を80℃で5時間反応させて、ウレタンプレポリマー(A-3-2)を含むポリイソシアネート成分(A2)を調製した。Fは官能基数を表す。
(各成分、配合量、得られたポリイソシアネート成分(A2)の詳細)
・活性水素含有化合物(A-1)
・・エクセノール 2020(F=2、Mw=2000、OHV:56、AGC社製)230質量部
・・エクセノール 837(同上)690質量部
・イソシアネート化合物(A-2)
・・MDI(同上) 574質量部
・Total 1494質量部
・比R1(NCO/H)=8.00
・ポリイソシアネート成分(A2)のNCO%:11.73%
・ポリイソシアネート成分(A2)中の残存MDIモノマー:29%
【0097】
<シランカップリング剤(F-1-1)の調製>
以下の各成分を含む混合物を40℃で8時間反応させて、アルコキシシリル基及び/又はシラノール基と、イソシアネート基とを有するシランカップリング剤(F-1-1)を調製した。
(各成分、配合量、得られたシランカップリング剤(F-1-1)の詳細)
・HDIのビウレット体(D-165N、三井化学社製) 100g
・3-(N-フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン(Y-9669、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製。以下同様) 47.2g
・シランカップリング剤(F-1-1)のNCO%:10.55%
シランカップリング剤(F―1-1)は、1分子中に平均で、イソシアネート基を2個及びトリメトキシシリル基を1個、有する。
【0098】
<シランカップリング剤(F-1-2)の調製>
以下の各成分を含む混合物を40℃で8時間反応させて、アルコキシシリル基及び/又はシラノール基と、イソシアネート基とを有するシランカップリング剤(F-1-2)を調製した。
(各成分、配合量、得られたシランカップリング剤(F-1-2)の詳細)
HDIのイソシアヌレート体(D-170N、三井化学社製)と、3-(N-フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン(同上)とをモル比3:1で反応させた。
・シランカップリング剤(F-1-2)のNCO%:10.36%
シランカップリング剤(F―1-2)は、1分子中に平均で、イソシアネート基を2個及びトリメトキシシリル基を1個、有する。
【0099】
<接着剤組成物の製造>
・主剤
下記第1表~第3表の各成分を同表に示す組成(質量部)で用いて、主剤をそれぞれ調製した。
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
【表3】
【0103】
第1表~第3表の(主剤)欄に示した各成分の詳細は以下のとおりである。
<ポリイソシアネート成分(A)>
・ポリイソシアネート成分(A1):上記のとおり調製したポリイソシアネート成分(A1)
・ポリイソシアネート成分(A2):上記のとおり調製したポリイソシアネート成分(A2)
【0104】
・可塑剤:DINP。ジイソノニルフタレート、ジェイプラス社製
【0105】
・脂肪族ジイソシアネート誘導体(C):ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体とペンタメチレンジイソシアネートのアロファネート体の混合物。商品名D-376N、三井化学社製。NCO%=23.6%
【0106】
(シランカップリング剤(F))
・シランカップリング剤(F-2-1):モノスルフィド含有シランカップリング剤(下記式(12)の構造)。商品名X-12-1056ES、信越化学工業社製
【化6】

・シランカップリング剤(F-1-1):上記のとおり調製したシランカップリング剤(F-1-1)、NCO%=10.55%
・シランカップリング剤(F-1-2):上記のとおり調製したシランカップリング剤(F-1-2)、NCO%=10.36%
【0107】
・モノテルペンに由来する骨格を有する化合物(E1):カンフェンとフェノールとの付加物。上記付加物は、下記式(Z1-1)で表される化合物1、式(Z1-2)で表される化合物2、式(Z2-1)で表される化合物3、式(Z2-2)で表される化合物4及び式(Z3-1)で表される化合物5からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む。ヤスハラケミカル社製。
【化7】


【0108】
(フィラー)
・フィラー1(カーボン):商品名ニテロン♯200、新日化カーボン社製、HAF級カーボンブラック
・フィラー2(炭カル):重質炭酸カルシウム。商品名スーパーS、丸尾カルシウム社製
【0109】
(金属系触媒)
・金属系触媒1:ビスマストリオクテート。商品名ネオスタンU-600、日東化成社製。
・金属系触媒2:DOTL。ジオクチル錫(IV)ジラウレート。日東化成社製ネオスタンU-810
【0110】
(アミン系触媒)
・アミン系触媒1:ジメチルアミノエチルモルフォリン。商品名X-DM、エボニック社製
・アミン系触媒2:ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル。商品名BL-19、エボニック社製
・アミン系触媒3:DMDEE。ジモルフォリノジエチルエーテル(サンアプロ社製)。下記構造
【化8】
【0111】
・硬化剤
下記第1表~第3表の(硬化剤)欄の各成分を同表に示す組成(質量部)で用いて、硬化剤をそれぞれ調製した。
【表4】
【0112】
【表5】
【0113】
【表6】
【0114】
第1表~第3表の(硬化剤)欄に示した各成分の詳細は以下のとおりである。
<活性水素含有化合物(B)>
・活性水素含有化合物(B1):ポリエーテルポリオール。商品名エクセノール837、AGC社製。活性水素濃度0.50mol/kg、水酸基価28mgKOH/g。F(Fはポリオール1分子あたりの平均の水酸基数)=3。重量平均分子量6000
【0115】
・活性水素含有化合物(B2):ポリエーテルテトラオール。商品名エクセノール450ED、AGC社製。活性水素濃度8.02mol/kg、水酸基価450mgKOH/g。1分子中にヒドロキシ基を4個有する、下記式(4)で表される化合物。上述の式(4)で表される化合物のうちの窒素含有化合物1に該当する。重量平均分子量550。室温(23℃)条件下で液状である。
【化9】

式(4)中、R6~R9はそれぞれ独立にプロピレン基を表し、R10はエチレン基を表し、a~dはそれぞれ独立に1~10を表す。a~dのうち少なくとも1つは3以上である。
【0116】
・活性水素含有化合物(B3):N-ポリオキシアルキレンポリアルキレンポリアミン。商品名アデカポリエーテルBM-34、アデカ社製。活性水素濃度14.74mol/kg、水酸基価827mgKOH/g。1分子中にヒドロキシ基を4個有する、下記式(5)で表される化合物。上述の式(4)で表わされる化合物のうちの窒素含有化合物2に該当する。重量平均分子量280。室温(23℃)条件下で液状である。
【化10】

式(5)中、R56~R59はそれぞれ独立にプロピレン基及び/又はエチレン基を表し、R50はエチレン基を表し、a~dはそれぞれ独立に1~2を表す。a~dのうち少なくとも1つは2である。
【0117】
・活性水素含有化合物(B4):ポリブタジエン骨格のポリオール。商品名Poly bd R15HT、出光興産社製。活性水素濃度1.83mol/kg、水酸基価103mgKOH/g。F=2
・活性水素含有化合物(B5):ポリブタジエン骨格のポリオール。商品名Poly bd R45HT、出光興産社製。活性水素濃度0.83mol/kg、水酸基価47mgKOH/g。F=2
【0118】
・活性水素含有化合物(B6):ポリエーテルポリオール。商品名エクセノール1020、AGC社製。活性水素濃度2.00mol/kg、水酸基価112mgKOH/g。F=2
・活性水素含有化合物(B7):2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールと無水フタル酸とによるポリエステルポリオール。商品名HS 2N-226P、豊国製油社製。活性水素濃度0.94mol/kg、水酸基価53mgKOH/g。F=2
【0119】
・活性水素含有化合物(B8):骨格としてポリプロピレングリコール(PPG)を有しアミノ基を2個(活性水素4個)有するアミン。上述の式(4)で表わされる化合物のうちの窒素含有化合物3に該当する。商品名ジェファーミンD-400、サンテクノケミカル社製。活性水素濃度9.30mol/kg
【0120】
・比較活性水素含有化合物:シュガーベースのポリオール。商品名エクセノール450SN、AGC社製。活性水素濃度8.0mol/kg、水酸基価450mgKOH/g。F=4以上
【0121】
・水:精製水
【0122】
・モノテルペンに由来する骨格を有する化合物(E2):主剤に含有される(E1)と同様
【0123】
(アルコキシシリル基及び/又はシラノール基含有化合物(D))
・化合物(D-1-1):アミノ基含有シランカップリング剤のオリゴマー。商品名KBP90、信越化学工業社製。固形分濃度30%。溶媒:水
・化合物(D-1-2):アミノ基含有シランカップリング剤のオリゴマー。商品名X-12-972F、信越化学工業社製。固形分濃度15%、溶媒:アルコール
・化合物(D-1-3):N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン。商品名KBM-603、信越化学工業社製。
【0124】
・フィラー3(炭カル):炭酸カルシウム。商品名カルファイン200、丸尾カルシウム社製
【0125】
・アミン系触媒4:TEDA。1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン
・金属系触媒4:ジブチルスズビス(アセチルアセトネート)。商品名U-220H、日東化成社製
・金属系触媒2:主剤に使用された金属系触媒2と同様
【0126】
<主剤と硬化剤との混合>
主剤と硬化剤とを下記第1表~第3表の(主剤と硬化剤との混合)欄に示した質量比で混合して各混合物を得た。このときの比R2(NCO/H)、比R3(NCO/H)を併記する。
【表7】
【0127】
【表8】
【0128】
【表9】
【0129】
<評価>
上記のとおり製造された各混合物を用いて以下の評価を行った。結果を第1表~第3表の(評価結果)欄に示す。評価方法を後述する。
【0130】
【表10】
【0131】
【表11】
【0132】
【表12】
【0133】
<評価方法>
(試験片の作製)
・樹脂基板の表面処理
・・プラズマ処理
樹脂基板[タルク-PP(TSOP5)]をFG3001(Generator)及びRD1004(Nozzle-Jet)(Plasmatreat社製)を使用し、濡れ指数が52mN/mになるように、プラズマ処理で表面処理した。
【0134】
・・プライマー処理
上記のとおりプラズマ処理した各樹脂基板について、プライマー(商品名RC-50E、横浜ゴム社製)によるプライマー処理をしたものと、プライマー処理をしないものとをそれぞれ準備した。
【0135】
・試験片の調製
上記のとおり表面処理された樹脂基板に、上記のとおり製造された、2液型の接着剤組成物の各混合物を塗布し、その上にカチオン電着鋼板(ED板)を重ねて、接着剤層が長さ25mm×幅10mm×厚さ3mmとなるように樹脂基板とカチオン電着鋼板とを圧着して、積層体とした。
【0136】
・養生(硬化)の条件
養生条件1:上記積層体を、20℃、相対湿度65%の条件下に30分置いて養生させ、初期サンプルを得た。
養生条件2:上記積層体を、20℃、相対湿度65%の条件下に24時間置いて養生させ、硬化後サンプル(24時間後)を得た。
養生条件3:上記積層体を、20℃、相対湿度65%の条件下に1週間置いて養生させ、1週間硬化後サンプルを得た。
【0137】
・クリープ試験
上記のとおり得られた各初期又は硬化後サンプルを用いて、クリープ試験を行った。
図1は、本発明の実施例で行われたクリープ試験の概略的な側面図である。
図1において、クリープ試験では、サンプル1(養生条件1の初期サンプル、養生条件2の硬化後サンプル)を垂直にして使用した。サンプル1は、樹脂基板2とカチオン電着鋼板4とが接着剤層3で接着されている。接着剤層3の厚さt(樹脂基板2とカチオン電着鋼板4との間の距離)は3mmである。樹脂基板2と接着剤層3との接着面積は、接着剤層3の長さ(図1においては接着剤層3の奥行きに対応する)25mm×接着剤層3の幅L110mmである。カチオン電着鋼板4と接着剤層3との接着面積も同様である。
上記の試験片の調製において積層体を上記の養生(硬化)の条件で養生させたのち、直ちにサンプル1を図1に示すように垂直に立て、カチオン電着鋼板4に重り5をつけて、以下の条件下でクリープ試験を行い、カチオン電着鋼板4に重り5をつけてからカチオン電着鋼板4が落下するまでの保持時間及び変位量(載荷前後でのカチオン電着鋼板4の上端部の位置のズレ)を測定した。
【0138】
図2は、載荷後のサンプル1の一部を示す、概略的な側面図である。
図2において、位置6は、載荷前のカチオン電着鋼板4の上端部の位置を示す。位置7は、載荷後のカチオン電着鋼板4の上端部の位置を示す。変位量L2は、位置6と位置7との間の距離を指す。
【0139】
・クリープ試験の条件
本実験では、以下の5つのパターンのクリープ試験を行った。
(1)クリープ試験1:試験温度20℃、相対湿度65%の条件下で、プライマー有の初期サンプルに、クリープ応力30kPaとなる重り(0.77Kg。以下同様)を載荷(載荷時間:最大1時間)した。(養生条件:1)
(2)クリープ試験2:試験温度80℃の条件下で、プライマー有の硬化後サンプルに、クリープ応力5kPaとなる重り(0.13Kg。以下同様)を載荷(載荷時間:最大48時間)した。
(3)クリープ試験3:試験温度20℃、相対湿度65%の条件下で、プライマーレスの初期サンプルに、クリープ応力30kPaとなる重りを載荷(載荷時間:最大1時間)した。
(4)クリープ試験4:試験温度80℃の条件下で、プライマーレスの硬化後サンプルに、クリープ応力5kPaとなる重りを載荷(載荷時間:最大48時間)した。
(5)クリープ試験5:クリープ試験3において、重りの重さを代えて、クリープ試験開始後1時間の間に、重りがサンプルの一部を伴ってサンプルから落下したときの重りの重さを評価した。
【0140】
(各クリープ試験の評価基準)
本発明において、クリープ試験1~5及び接着力の評価結果を総合して、接着性を評価した。各クリープ試験の評価基準は以下のとおりである。
・クリープ試験1(プライマー有、初期)、クリープ試験3(プライマーレス、初期)
◎:保持時間(重りが落下しなかった時間。以下同様)が1時間以上であり、かつ、変位量が1mm未満であった場合
初期クリープの載荷時間は1時間なので、保持時間1時間以上とは、クリープ試験開始から1時間以上、重りがサンプルに下がったままの状態を維持したことを表す。
○:保持時間が1時間以上であり、かつ、変位量が1mm以上であった場合
△:保持時間が20分以上1時間未満であった場合(20分以上1時間未満で重りがサンプルの一部を伴ってサンプルから落下。落下について以下同様)
×:保持時間20分未満であった場合
【0141】
・クリープ試験2(プライマー有、硬化後)、クリープ試験4(プライマーレス、硬化後)
◎:保持時間が48時間以上であった場合
硬化後クリープの載荷時間は48時間なので、保持時間48時間以上とは、クリープ試験開始から48時間以上、重りがサンプルに下がったままの状態を維持したことを表す。
○:保持時間が24時間以上48時間未満であった場合(24時間以上48時間未満で重りがサンプルの一部を伴ってサンプルから落下。落下について以下同様)
△:保持時間が12時間以上24時間未満であった場合
×:保持時間が12時間未満であった場合
【0142】
・クリープ試験5
◎:クリープ試験3(プライマーレス、初期)において、載荷後1時間の間、重さ2.5kgの重りを用いた場合、重りがサンプルに下がったままの状態を維持した。
○:重さ2.5kgの重りを用いた場合、重りがサンプルの一部を伴ってサンプルから落下したが、重さ1.0kgの重りを用いた場合、重りがサンプルに下がったままの状態を維持した。
△:重さ1.0kgの重りを用いた場合、重りがサンプルの一部を伴ってサンプルから落下したが、重さ0.5kgの重りを用いた場合、重りがサンプルに下がったままの状態を維持した。
×:重さ0.5kgの重りを用いた場合、重りがサンプルの一部を伴ってサンプルから落下したが、重さ0.1kgの重りを用いた場合、重りがサンプルに下がったままの状態を維持した。
××:重さ0.1kgの重りを用いた場合、重りがサンプルの一部を伴ってサンプルから落下した。
【0143】
・せん断試験
上記の養生条件3で養生させ、得られた1週間硬化後サンプルについて、JIS K6850-1999に準じてせん断試験(23℃条件下、引張速度5.1cm/分)を行い、せん断強度を測定した。せん断強度の結果を第1表~第3表(評価結果)の「接着力」欄に示す。
【0144】
・接着力の評価基準
上記せん断強度による接着力の評価基準は以下のとおりである。
上記せん断強度が3.0MPa以上であった場合、接着力が高いと評価した。
一方、上記せん断強度が3.0MPa未満であった場合、接着力が低いと評価した。
【0145】
[接着性の評価基準](クリープ試験1~5及び接着力による接着性の総合評価基準)
本発明において、クリープ試験1~4の評価結果のうち少なくとも3つが○以上であり(1個だけなら△でも×でもよい)、クリープ試験5の評価結果が×以上であり、かつ、せん断強度が3.0MPa以上であった場合、接着性が優れると評価した。
上記の場合、クリープ試験1~4の評価結果のうち少なくとも1つが◎であった場合、クリープ試験1~4の評価結果のすべてが○以上であった場合、クリープ試験5の評価結果が△以上であった場合、又は、せん断強度が3.0MPaよりも大きかった場合、接着性がより優れると評価した。
一方、クリープ試験1~4の評価結果のうち2つ以上が△以下であった場合、クリープ試験5の評価結果が××であった場合、又は、せん断強度が3.0MPa未満であった場合、接着性が悪いと評価した。
【0146】
第1表~第3表に示す結果から明らかなように、実施例1に対して、硬化剤が水を含有せず、平均活性水素濃度(BWH-c)、及び、主剤と硬化剤との混合における比R3が所定の範囲を外れる比較例1は、クリープ試験3、4、5及び接着力の結果が悪かったため、接着性が悪かった。
主剤と硬化剤との混合における比R2、比R3が所定の範囲を外れる比較例2は、クリープ試験1、3及び5の結果が悪かったため、接着性が悪かった。
硬化剤が式(4)で表わされる化合物を含有しない比較例9は、クリープ試験1、3及び5の結果が悪かったため、接着性が悪かった。
【0147】
実施例6に対して、硬化剤が式(4)で表わされる化合物を含有せず、代わりに比較活性水素含有化合物を含有する比較例3は、クリープ試験3、4及び接着力の結果が悪かったため、接着性が悪かった。
硬化剤が水を含有しない比較例4は、クリープ試験5及び接着力の結果が悪かったため、接着性が悪かった。
硬化剤が式(4)で表わされる化合物を含有しない比較例10は、クリープ試験1、3及び5の結果が悪かったため、接着性が悪かった。
【0148】
実施例12に対して、硬化剤が水を含有せず、平均活性水素濃度(BWH-c)、比R3が所定の範囲を外れる比較例5は、クリープ試験1~5及び接着力の結果が悪かったため、接着性が悪かった。
硬化剤が水を含有せず、平均活性水素濃度(BWH-c)、比R3が所定の範囲を外れる比較例6は、クリープ試験3~5及び接着力の結果が悪かったため、接着性が悪かった。
硬化剤が水を含有せず、比R3が所定の範囲を外れる比較例7は、クリープ試験5及び接着力の結果が悪かったため、接着性が悪かった。
硬化剤が式(4)で表わされる化合物を含有せず、代わりに比較活性水素含有化合物を含有する比較例8は、クリープ試験3、4及び接着力の結果が悪かったため、接着性が悪かった。
比較例8の上記条件に加え水の含有量が比較例8よりも少なく、比R3が所定の範囲を外れる比較例11は、クリープ試験3~5及び接着力の結果が悪かったため接着性が悪かった。比較例11のクリープ試験3、5及び接着力の結果は、比較例8よりも悪かった。
【0149】
これに対して、本発明の2液型ウレタン系接着剤組成物は、接着性が優れた。
【符号の説明】
【0150】
1 クリープ試験
2 樹脂基板
3 接着剤層
4 カチオン電着鋼板
5 重り
6、7 位置
1
2 変位量
図1
図2