IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人高知大学の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】指先用医療用具
(51)【国際特許分類】
   A61B 90/00 20160101AFI20240126BHJP
【FI】
A61B90/00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021530623
(86)(22)【出願日】2020-06-30
(86)【国際出願番号】 JP2020025643
(87)【国際公開番号】W WO2021006113
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-07-05
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504174180
【氏名又は名称】国立大学法人高知大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】弁理士法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆幸
【合議体】
【審判長】佐々木 一浩
【審判官】近藤 利充
【審判官】栗山 卓也
(56)【参考文献】
【文献】特許第6675662(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 90/00
A61B 42/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂層とその片面に設けられた粘着層とを有する、指先に直接貼付されるシール状の触診用医療用具であって、該樹脂層は赤色蛍光又は近赤外蛍光を発し、該医療用具は指の腹内に貼付できる大きさを有し、触診を可能とする大きさの開窓部を有し、該医療用具と共に使用する手術用手袋と同様の柔軟性となるように該樹脂層はJIS T9107による切断時引張力が9.0N以上、切断時伸びが600%以上、300%伸び時引張力が3.0N以下を示し、樹脂層の厚さが、0.1~0.3mmである触診用医療用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤色又は近赤外蛍光を発光する樹脂層を有し、該樹脂層を指先に被着させる指先用医療用具に関する。
【背景技術】
【0002】
直腸等の管状の人体組織の粘膜に発生した癌等の診断に、内視鏡が使用されている。診断には術者の指を体内に挿入する触診も併用される。そこで、指サックの先端部に撮像装置を取り付けると共に、指サックに触診用の開窓部を設けることが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002―291746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の指サックを指に装着し、その指を直腸等の管状の人体組織に挿入することにより、管状の人体組織の粘膜側の表面状態を観察できると共に、粘膜側組織の触診を行うことが可能となり、さらに、癌の除去の処置が必要になった場合には、患部を観察しつつ穿刺処置を行うことが可能となる。
【0005】
一方、管状の人体組織の粘膜に発生した癌を外科的に切除する場合には、癌の位置を管状の人体組織の漿膜側から特定することが必要となる。しかしながら、特許文献1に記載の指サックを用いても癌の位置を漿膜側から特定することはできない。そのため、例えば、内視鏡や触診で直腸癌があると診断された場合、標準的には、診断された癌の位置に前後2cm程度のマージンをもたせた範囲を切除することが行われており、これにより癌の存在が確認されていない肛門が切除され、人工肛門が必要になる場合もある。
【0006】
これに対し、本発明は、直腸等の管状の人体組織の粘膜を触診することにより医師が患部の位置を特定した場合に、その位置を管状の人体組織の漿膜側から特定できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、触診を行う指の先端部に赤色蛍光又は近赤外蛍光を発する樹脂層を被着させると、該樹脂層が発光する蛍光を漿膜側から観察することで、触診により粘膜側で特定した患部の位置を漿膜側から特定できることを想到し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明は、赤色蛍光又は近赤外蛍光を発する樹脂層を有する、指先に被着される指先用医療用具を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、指先に赤色蛍光又は近赤外蛍光を発する樹脂層を被着させることができるので、該樹脂層が発光する蛍光を観察することで、粘膜側の触診で特定された患部の位置を漿膜側から特定することが可能となる。したがって、粘膜側の触診で特定された患部を外科的に切除する場合に、患部の位置を精確に特定できないために必要とされていた切除範囲のマージンを顕著に低減させるか、不用とすることができ、切除範囲を必要最小限にすることができる。よって、例えば、従前では不用に切除されていた肛門を温存することが可能となり、患者の負担が軽減する。
【0010】
また、本発明によれば触診が可能であるため、粘膜の硬さから癌の大きさなどについて正確に診断することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、指サック形状の実施例の指先用医療用具1Aの正面図である。
図2A図2Aは、患部が直腸にある場合の、該患部の体内における位置の説明図である。
図2B図2Bは、直腸にある患部の位置を実施例の指先用医療用具1Aで特定する方法の説明図である。
図3図3は、実施例の指先用医療用具1Bの斜視図である。
図4図4は、実施例の指先用医療用具1Cの斜視図である。
図5図5は、実施例の指先用医療用具1Dの斜視図である。
図6図6は、実施例の指先用医療用具1Eの斜視図である。
図7図7は、実施例の指先用医療用具1Fの斜視図である。
図8図8は、実施例の指先用医療用具1Gの斜視図である。
図9A図9Aは、実施例の指先用医療用具1Hの斜視図である。
図9B図9Bは、手袋に貼付された状態の実施例の指先用医療用具1Hの斜視図である。
図10A図10Aは、実施例の指先用医療用具1Iの斜視図である。
図10B図10Bは、手袋に貼付された状態の実施例の指先用医療用具1Iの斜視図である。
図11A図11Aは、白色照明下でデジタルカラーカメラによって撮影した実施例の指先用医療用具1Aの画像である。
図11B図11Bは、シリコーンシートの背後に実施例の指先用医療用具1Aをおき、そのシリコーンシートの前面を白色照明下でデジタルカラーカメラによって撮影したときの該前面の画像である。
図11C図11Cは、シリコーンシートの背後に実施例の指先用医療用具1Aをおき、そのシリコーンシートの前面を励起光で照射し、その前面を近赤外カラーシステムによって撮影したときの該前面の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明を詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は同一又は同等の構成要素を表している。
【0013】
(指サック形状の指先用医療用具)
図1は、指サック形状を有する、本発明の一実施例の指先用医療用具1Aの正面図であって、破線はこの指サック形状の指先用医療用具1Aを指に装着した手を表している。このように、本発明の指先用医療用具は、指先、特に指の腹又は指の腹の周りに、赤色蛍光又は近赤外蛍光を発する樹脂層を被着させる。より具体的には、この指先用医療用具1Aは、指に装着したときに指先から指の第1関節を覆う長さを有し、また、指の腹の少なくとも中央部を露出させる開窓部2を有する。開窓部2があることにより術者は、開窓部2から露出した指の腹を用いて容易に触診を行うことができる。
【0014】
開窓部2の大きさは、触診を可能とする点からは幅w1を5~15mm、長さh1を5~20mmとすることが好ましい。一方、後述するように、人体組織の粘膜側の患部に指先用医療用具1Aの開窓部を当てて励起光を照射すると、指先用医療用具1Aの樹脂層が蛍光を発するので、その蛍光像を漿膜側から観察すると、開窓部2は暗く、開窓部2の周りがリング状に明るく観察され、開窓部の位置、即ち患部の位置を特定することができるが、より精確に患部の位置を特定できるようにする点からは開窓部2の幅w1を10~15mm、長さh1を10~20mmとすることが好ましい。これに対し、開窓部2の大きさが小さすぎると、漿膜側から観察される発光部分がリング状にならず、開窓部2に対応する部分も発光しているように見えるので患部の位置を精確に特定することが難しくなり、反対に大きすぎても暗く観察される部分のどこに患部があるのかを特定することが難しくなる。
【0015】
(指先用医療用具を形成する樹脂)
指先用医療用具1Aは、赤色蛍光又は近赤外蛍光を発する樹脂で形成されている。赤色蛍光又は近赤外蛍光を発する樹脂としては、例えば、蛍光色素を混練りした可撓性樹脂を使用することができる。ここで可撓性樹脂としては、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアミドエラストマー等に、必要に応じて硬化剤を配合したものを使用することができる。硬化後のショア硬度が30A~70Aとなるものが好ましい。また、切断時伸びが300%以上の樹脂を使用することにより、指サック形状の指先用医療用具1Aを指先に嵌めたときのフィット感が良好となる。
【0016】
指サック形状を形成する樹脂層の好ましい厚さは、蛍光色素を含有した樹脂層の発光強度に応じて定まり、したがって、蛍光色素の種類や濃度によって異なるが、通常厚さ0.1~2mmが好ましい。
【0017】
(蛍光色素)
可撓性樹脂に混練りする蛍光色素としては、600~1400nmの赤色乃至近赤外の波長域、好ましくは700~1100nmの赤色光又は近赤外光の波長域で蛍光を発するものが好ましい。このような波長域の光は、皮膚、脂肪、筋肉等の人体組織に対して透過性が高く、例えば、直腸等の管状の人体組織の粘膜から漿膜面まで良好に到達することができる。
【0018】
上述の波長域の蛍光を発する蛍光色素としては、リボフラビン、チアミン、NADH(nicotinamide adenine dinucleotide)、インドシアニングリーン(ICG)、特開2011-162445号公報に記載のアゾ-ホウ素錯体化合物、WO2016/132596号公報に記載の縮合環構造を有する色素等をあげることができる。
【0019】
近赤外蛍光を発する樹脂における蛍光色素の好ましい濃度は当該蛍光色素やバインダーとする樹脂の種類等に応じて定まり、通常、0.001~1質量%とすることが好ましい。
【0020】
可撓性樹脂に蛍光色素を含有させる方法としては、例えば、二軸混練機を使用して樹脂に蛍光色素を混練する。その後、押出成形または射出成形にて指サック形状に成形すればよい。
【0021】
(添加剤)
蛍光樹脂には、必要に応じて硫酸バリウム等の造影剤を添加してもよい。これにより、生体内で指先用医療用具1Aが指から外れても、生体内の指先用医療用具1Aを、X線を用いて撮影することにより追跡することが可能となる。
【0022】
(指先用医療用具の使用方法)
指先用医療用具1Aの使用方法としては、例えば、図2Aに示す直腸癌の位置Xを漿膜側から特定できるようにする場合、まず、術者の手、好ましくは手術用手袋を嵌めた術者の手の指に図1に示すように指サック形状の指先用医療用具1Aを嵌める。この場合、指の腹上に開窓部2を位置させる。
【0023】
次に、図2Bに示すように、指サック形状の指先用医療用具1Aを嵌めた指を肛門から直腸に挿入し、直腸を触診して癌の位置を特定し、開窓部2から露出している指の腹で癌を押さえる。そして、直腸の漿膜側に、指先用医療用具1Aを形成している樹脂に赤色蛍光又は近赤外蛍光を発光させるための励起光を照射し、指先用医療用具1Aが発する蛍光を漿膜側から観察する。
【0024】
ここで、励起光の照明方法としては、開腹により直腸の漿膜を露出させ、そこに励起光を照射してもよく、手術用内視鏡を腹壁に開けた孔から挿入し、漿膜側から照射しても良い。励起光の波長は蛍光の波長よりも短いが、赤色蛍光又は近赤外蛍光を発光させる励起光の波長域も人体組織に対する透過性が高く、漿膜側に照射された励起光は直腸の組織や血液で殆ど吸収阻害されることなく、粘膜側にある指先用医療用具1Aで吸収され、指先用医療用具1Aの樹脂層が赤色蛍光又は近赤外蛍光を発する。したがって、蛍光が赤色の場合には肉眼観察により、蛍光が近赤外の場合には公知の赤外可視変換ガラスを通して観察することにより、あるいは直腸を漿膜側から撮影し、画像処理で近赤外蛍光を可視化することにより、容易に指先用医療用具1Aによるリング状の発光を漿膜側から観察することができ、さらに、リング状の発光部の内側の、開窓部2による暗部を癌の発生位置として特定できる。こうして漿膜側から癌の位置を特定できると、電気メスで印をつけ、患部の切除時にはその印を目安にすることができる。
【0025】
本発明の指先用医療用具1Aの適用場面は、上述の直腸のように人体の外部から指を挿入して届く範囲の患部の位置の特定に限らない。例えば、指先用医療用具1Aを装着した指を、腹腔鏡や手術器具の挿入のために腹壁に開けた孔に挿入し、さらに胃壁に開けた孔から胃腔内に挿入し、胃粘膜における患部の位置を胃漿膜側から特定する場合にも使用することができる。
【0026】
なお、例えば特許6161096号公報に記載の金属製のクリップで患部の粘膜を挟持し、漿膜側から観察することによっても、該クリップに取り付けられている蛍光色素含有樹脂の発光により患部の位置を特定することができるが、患部の切除時に金属製のクリップがメスに当たり、メスが破損する虞がある。これに対し、本発明の指先用医療用具によれば、仮に生体内で指先用医療用具が術者の指から外れ、患部の切除時にその指先用医療用具にメスが当たってもメスが破損する虞は無い。
【0027】
(指先用医療用具の変形態様)
本発明の指先用医療用具は種々の態様をとることができる。例えば、図3に示した指先用医療用具1Bは、図1に示した指先用医療用具1Aの端部に取出糸3を接着又は溶着により取り付けたものである。指先用医療用具1Bに取出糸3が取り付けられていることにより、体内で指先用医療用具1Bが指先から外れても、取出糸3を摘まんで引っ張ることにより、容易に指先用医療用具1Bを体内から取り出すことができる。
【0028】
なお、取出糸3を指先用医療用具本体1に強固に取り付けるため、取出糸3の接着領域3aの長さを十分に確保することが好ましい。
【0029】
図4に示した指先用医療用具1Cは、図1に示した指先用医療用具1Aにおいて長さを指先から第2関節が覆われるように長くし、開窓部2よりも下側(即ち、指挿入口側)に赤外又は近赤外光不透過性樹脂で目盛り4を所定間隔に付したものである。これにより、漿膜側から粘膜側にある指先用医療用具1Cを観察した場合に、指サック型の発光領域内に開窓部2と目盛り4が暗部として観察され、この目盛りを患部の切除マージンの目安に使用することができる。
【0030】
図5に示した指先用医療用具1Dは、図4に示した指先用医療用具1Cにおいて、目盛りを赤外又は近赤外光不透過性樹脂で形成したのに代えて、目盛り状に打ち抜いた孔5を有する赤外又は近赤外光不透過性樹脂フィルム6の医療用具本体1への貼付、赤外又は近赤外光不透過性樹脂層の印刷等により赤外又は近赤外光不透過性樹脂層を設けたものである。この孔5からは赤外又は近赤外蛍光を発光する樹脂が露出しているので、励起光を照射し、漿膜側から指先用医療用具1Dを観察した場合に、指に嵌めた指先用医療用具1Dの指先側では指サック型の発光領域内に開窓部2が暗部として観察され、開窓部の下側には暗部領域に発光する目盛りを観察することができる。
【0031】
図6に示した指先用医療用具1Eは、形状自体は図4に示した指先用医療用具1Cと同様に開窓部2を有する指サック型をしており、指先から第2関節までが覆われる長さを有している。しかしながら、この指サック型の形状自体は、赤光蛍光又は近赤外蛍光を発する蛍光色素を含有していない樹脂15で形成されている。一方、開窓部2の周りには、赤色蛍光又は近赤外蛍光を発する蛍光色素を含有する塗料の塗布によりリング状の樹脂層8が形成されている。また、開窓部2の下側には赤色蛍光又は近赤外蛍光を発する蛍光色素を含有する塗料により目盛り4が形成されている。この指先用医療用具1Eは、図4に示した指先用医療用具1Cと同様に使用することができる。
【0032】
このように、本発明の指先用医療用具が開窓部を有する指サック型である場合に、指先用医療用具が赤色蛍光又は近赤外蛍光を発する樹脂で形成されている態様としては、少なくとも開窓部の周りが赤色蛍光又は近赤外蛍光を発する樹脂で形成されていればよい。したがって、図1に示した指先用医療用具1Aのように指サック型形状の全体がこの樹脂で形成されていてもよく、図6に示した指先用医療用具1Eのように開窓部2の周りに塗布層として赤色蛍光又は近赤外蛍光を発する樹脂層8が形成されていてもよい。
【0033】
図7に示した指先用医療用具1Fは手袋形状を有し、この手袋7の人差し指の腹の部分に、赤色又は近赤外蛍光を発する樹脂で形成されたリング状の印刷層8を有している。このリング状の印刷層8は、指の腹の中央部を囲むように形成されている。
【0034】
手袋7としては、天然ゴム製又は合成ゴム製の一般的な手術用手袋を使用することができる。
【0035】
この指先用医療用具1Fによれば、指先用医療用具1Fを嵌めた手のリング状の印刷層8がある指先で触診により患部の位置を特定する。そして、漿膜側から励起光を照射し、リング状の印刷層8に赤色又は近赤外蛍光を発光させ、その蛍光を図1に示した指先用医療用具1Aと同様に漿膜側から観察し、印刷層8によるリング状の発光部の内側の暗部として患部を精確に特定することができる。
【0036】
図8に示した指先用医療用具1Gは、図7に示した手袋形状を有する指先用医療用具1Fにおいて、赤色蛍光又は近赤外蛍光を発する樹脂で形成されたリング状の印刷層8に代えて、同様の樹脂で形成された円形の印刷層9を設けたものである。この指先用医療用具1Gによれば、図1に示した指先用医療用具1Aと同様に漿膜側から蛍光の発光部を観察することにより、円形の発光部として患部を精確に特定することができる。
【0037】
図9Aに示した指先用医療用具1Hは、図7に示したリング状の印刷層8と同様の、赤色蛍光又は近赤外蛍光を発する樹脂で形成されたリング状の樹脂層10の片面に粘着層を設け、その粘着層を剥離フィルム11上に貼付したシール状の指先用医療用具である。
【0038】
このシール状の指先用医療用具1Hの樹脂層10は、好ましくは指の腹内に貼付できる大きさを有している。そこで、指先用医療用具1Hを剥離フィルム11から剥離し、図9Bに示すように、リング状の樹脂層10を手術用手袋12に貼付することにより、図7に示した手袋型の指先用医療用具1Fと略同様の構成を得ることができる。この指先用医療用具1Hによれば、日常的に使用されている手術用手袋12を使用して、より低コストに本発明の指先用医療用具を構成することができる。また、このシール状の指先用医療用具1Hの使用方法としては、リング状の樹脂層10を指の腹に直接貼付し、その上から手術用手袋12を装着してもよい。これによりリング状の樹脂層10が触診中に体内に剥がれ落ちる虞を解消することができる。
【0039】
図10Aに示した指先用医療用具1Iは、図9Aに示した指先用医療用具1Hにおいて、リング状の樹脂層10を円形の樹脂層13に形成したシール状の指先用医療用具である。この指先用医療用具1Iも剥離フィルム11から剥離し、図10Bに示すように円形の樹脂層13を手術用手袋12に貼付することにより、図8に示した手袋型の指先用医療用具1Gと略同様の構成を得ることができる。このシール状の指先用医療用具1Iの使用方法としても、円形の樹脂層13を指の腹に直接貼付し、その上から手術用手袋12を装着し、円形の樹脂層13が体内に剥がれ落ちる虞を解消させてもよい。
【0040】
上述の指先用医療用具1H、1Iのように本発明の指先用医療用具をシール状とする場合、シール状の指先用医療用具を貼付した指先での触診に支障がきたされないようにするため、指に被着される部分となる樹脂層10、13は手術用手袋と同様の薄さと柔軟性を有することが好ましい。そこで、指に被着される部分となる樹脂層は厚さを0.1~0.3mmとし、JIS T9107に規定されている手術用手袋の物性と同様に切断時引張力を9.0N以上、切断時伸びを600%以上、300%伸び時引張力を3.0N以下とすることが好ましい。
【0041】
上述した本発明の指先用医療用具の特徴は適宜組み合わせることができ、例えば、図4図5に示した指サック形状の指先用医療用具1C、1Dに取出糸3を設けても良い。
【実施例
【0042】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。
WO2016/132596号公報に記載の縮合環構造を有する色素をABS樹脂に混練りし、厚さ2mmの図1に示した指サック型の指先用医療用具1Aを製造し、この指先用医療用具1Aを指に嵌めた。指に嵌めた指先用医療用具1Aを白色照明で撮影した画像を図11Aに示す。
【0043】
指に嵌めた指先用医療用具を、ヒト組織を模倣したシリコーンシート(厚さ3mm)14の背後に置き、白色照明下でシリコーンシート14の前面からデジタルカラーカメラで撮影した。この画像を図11Bに示す。
【0044】
さらに、シリコーンシート14の前面から励起光(波長740~760nm)を照射し、その前面を近赤外カラーカメラシステム(ミズホ株式会社)で撮影した。この画像を図11Cに示す。図11Cに示すように、指サック型の発光部の内側に開窓部2に対応する暗部を観察できた。よって、この指先用医療用具1Aの開窓部2から露出した指の腹で体腔の粘膜側の患部を押さえ、励起光を照射することにより、その患部の位置を漿膜側から特定できることがわかる。
【符号の説明】
【0045】
1 医療用具本体
1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G、1H、1I 指先用医療用具
2 開窓部
3 取出糸
3a 取出糸の接着領域
4 目盛り
5 目盛り状に打ち抜いた孔
6 赤外又は近赤外光不透過性樹脂フィルム
7 手袋
8 リング状の印刷層、樹脂層
9 円形の印刷層
10 片面に粘着層を有するリング状の樹脂層
11 剥離フィルム
12 手術用手袋
13 片面に粘着層を有する円形の樹脂層
14 シリコーンシート
15 蛍光色素を含有していない樹脂
h1 長さ
w1 幅
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C