(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】風味油の製造方法、食用油脂組成物の製造方法及び食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23D 9/00 20060101AFI20240126BHJP
A23L 7/10 20160101ALN20240126BHJP
A23L 35/00 20160101ALN20240126BHJP
【FI】
A23D9/00 504
A23L7/10 A
A23L35/00
(21)【出願番号】P 2018550114
(86)(22)【出願日】2017-10-24
(86)【国際出願番号】 JP2017038230
(87)【国際公開番号】W WO2018088188
(87)【国際公開日】2018-05-17
【審査請求日】2020-08-18
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】P 2016219359
(32)【優先日】2016-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】平岡 香織
(72)【発明者】
【氏名】廣島 理樹
(72)【発明者】
【氏名】小薗 伸介
【合議体】
【審判長】加藤 友也
【審判官】磯貝 香苗
【審判官】中村 和正
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-330262(JP,A)
【文献】特開平4-311364(JP,A)
【文献】特開昭61-124343(JP,A)
【文献】特開平5-3764(JP,A)
【文献】特開平2-200159(JP,A)
【文献】特開昭56-58450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23D
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分含有風味付与食品を油脂で炒める炒め工程と、
油脂を
添加して100℃以上に加熱する第1加熱工程と、
前記第1加熱工程により
前記油脂が100℃以上になった状態で乾燥食品を添加する乾燥食品添加工程と、
前記油脂を160℃以上に加熱して該温度にて所定時間保持する第2加熱工程とを
含み、
前記乾燥食品が、ガーリック、オニオン、ネギ、ショウガ、大根、ニンジン、キャベツ、もやし、にら、ごぼう、セロリ、じゃがいも、トマト、ラッキョウ、エシャロット、椎茸、しめじ、マツタケ、マイタケ、エビ、カニ、イカ、カツオ、サバ、イワシ、アジ、サケ、ホタテ、アサリ、シジミ、昆布、ワカメ、ヒジキ、鶏肉、豚肉、牛肉、馬肉から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする、風味油の製造方法。
【請求項2】
前記乾燥食品添加工程において、前記油脂を105℃を下回らない温度に加熱した状態で前記乾燥食品を添加する、請求項
1に記載の風味油の製造方法。
【請求項3】
第2加熱工程において、前記油脂温度を200℃以下に保つ、請求項
1又は2に記載の風味油の製造方法。
【請求項4】
前記乾燥食品添加工程における前記乾燥食品の添加量は、油脂100質量部に対して3~30質量部とする、請求項1~
3のいずれか1項に記載の風味油の製造方法。
【請求項5】
前記乾燥食品は、ガーリック、オニオンから選ばれた1種又は2種である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の風味油の製造方法。
【請求項6】
前記水分含有風味付与食品は、ネギ、ガーリック、オニオンから選ばれた1種又は2種以上である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の風味油の製造方法。
【請求項7】
前記乾燥食品がガーリック、オニオンから選ばれた少なくとも1種であり、前記水分含有風味付与食品がネギである、請求項1~4のいずれか1項に記載の風味油の製造方法。
【請求項8】
食用油脂に請求項1~
7のいずれか1項に記載された製造方法で得られた風味油を含有させることを特徴とする、食用油脂組成物の製造方法。
【請求項9】
食品に請求項1~
7のいずれか1項に記載された製造方法で得られた風味油及び請求項
8に記載された製造方法で得られた食用油脂組成物から選ばれた1種又は2種以上を含有させることを特徴とする、食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥食品の風味が十分に付与された、生産効率の良い風味油の製造方法、食用油脂組成物の製造方法及び該風味油を利用した食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食材を食用油脂で処理することで、その食材に由来する風味を付与した風味油が知られている。風味油は、ネギ、オニオン、ガーリック、唐辛子、バジル等の野菜類や、エビ、煮干し、鰹節等の魚介類、醤油等の調味料など、様々な食材について、その食材に由来する特有の風味が高められた食品を簡単に調理、加工等することができるので、レストランの調理や冷凍食品加工などの業務用では勿論のこと、一般家庭の消費者にも好評である。
【0003】
このような風味油の製造方法としては、例えば、天然源植物性可食材料と、可食性油脂類とを、調合香料組成物の添加共存下に加熱変性処理し、得られた加熱変性処理物から生成した加熱変性処理ずみ香味成分を分離採取する方法(特許文献1)、風味性材料を油の存在しない条件下で加熱を伴う前処理を行なった後、食用油脂に前処理を経た風味性材料を一定量配合し加熱して風味成分を抽出する方法(特許文献2)、食用油脂と、野菜と、単糖とを加熱する方法(特許文献3)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭58-40063号公報
【文献】特開平10-262561号公報
【文献】特開2013-201905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の技術で得られた風味油では食材に由来する風味が十分に付与されているとは言えず、また、風味油の製造に用いる釜に食材が焦げ付くことで生産効率が悪くなるという問題点があった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、乾燥食品の風味が十分に付与された、生産効率の良い風味油の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため、油脂を所定温度以上に加熱してから乾燥食品を添加し、更に所定温度以上になるまで加熱を続けることで、乾燥食品の風味が十分に付与された風味油を、生産効率よく製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の1つは、油脂を100℃以上に加熱する第1加熱工程と、
前記第1加熱工程により油脂が100℃以上になった状態で乾燥食品を添加する乾燥食品添加工程と、前記油脂を160℃以上に加熱して該温度にて所定時間保持する第2加熱工程とを含むことを特徴とする、風味油の製造方法を提供するものである。
【0009】
上記発明によれば、乾燥食品の風味が十分に付与されると共に、香ばしい風味が付与され、乾燥食品の焦げ付きを抑制して、不快な焦げ風味が感じられない、風味油を得ることができる。また、乾燥食品の釜への焦げ付きが抑制されて、釜を綺麗に維持することができるため、生産効率が良好となる。さらに、乾燥食品同士が付着しにくいので、乾燥食品から油に効率よく香りを移すことができ、風味の強い風味油を得ることができる。
【0010】
また、本発明のもう1つは、水分含有風味付与食品を油脂で炒める炒め工程と、油脂を添加して100℃以上に加熱する第1加熱工程と、前記第1加熱工程により油脂が100℃以上になった状態で乾燥食品を添加する乾燥食品添加工程と、前記油脂を160℃以上に加熱して該温度にて所定時間保持する第2加熱工程とを含むことを特徴とする風味油の製造方法を提供するものである。
【0011】
上記発明によれば、水分を含有している状態で良い香り付けができる水分含有風味付与食品に由来する風味と、乾燥している状態で良い香り付けができる乾燥食品に由来する風味とが良好に付与された風味油を得ることができる。
【0012】
本発明の風味油の製造方法の前記乾燥食品添加工程においては、前記油脂を105℃を下回らない温度に加熱した状態で乾燥食品を添加することが好ましい。
【0013】
本発明の風味油の製造方法の前記第2加熱工程においては、前記油脂温度を200℃以下に保つことが好ましい。
【0014】
本発明の風味油の製造方法の前記乾燥食品添加工程における前記乾燥食品の添加量は、油脂100質量部に対して3~30質量部とすることが好ましい。これによれば、乾燥食品の風味がさらに強い風味油を得ることができる。
【0015】
本発明の風味油の製造方法においては、前記乾燥食品は、ガーリック、オニオンから選ばれた1種又は2種であることが好ましい。
【0016】
本発明の風味油の製造方法においては、前記水分含有風味付与食品は、ネギ、ガーリック、オニオンから選ばれた1種又は2種以上であることが好ましい。
【0017】
さらに、本発明は、食用油脂に前記製造方法で得られた風味油を含有させることを特徴とする食用油脂組成物の製造方法を提供するものである。
【0018】
さらに、本発明は、食品に前記製造方法で得られた風味油及び前記の製造方法で得られた食用油脂組成物から選ばれた1種又は2種以上を含有させることを特徴とする食品の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の風味油の製造方法の1つによれば、乾燥食品由来の風味と香ばしさによる風味が感じられ、一方で不快な焦げ風味が感じられない、風味油を得ることができる。また、乾燥食品の釜への焦げ付きが抑制され、釜を綺麗に維持することができるため、効率的に風味油を得ることができる。さらに、乾燥食品同士が付着しにくいので、乾燥食品から油に効率よく香りを移すことができ、風味の強い風味油を得ることができる。
【0020】
また、本発明の風味油の製造方法のもう1つによれば、水分を含有している状態で良い香り付けができる水分含有風味付与食品に由来する風味と、乾燥している状態で良い香り付けができる乾燥食品に由来する風味とが良好に付与された風味油を得ることができる。
【0021】
さらに、本発明の食品の製造方法によれば、乾燥食品や水分含有風味付与食品の風味が良好に付与された食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の風味油の製造方法の1つは、油脂を100℃以上に加熱する第1加熱工程と、前記第1加熱工程により油脂が100℃以上になった状態で乾燥食品を添加する乾燥食品添加工程と、前記油脂を160℃以上に加熱して該温度にて所定時間保持する第2加熱工程とを含む。
【0023】
また、本発明の風味油の製造方法のもう1つは、水分含有風味付与食品を油脂で炒める炒め工程と、油脂を添加して100℃以上に加熱する第1加熱工程と、前記第1加熱工程により油脂が100℃以上になった状態で乾燥食品を添加する乾燥食品添加工程と、前記油脂を160℃以上に加熱して該温度にて所定時間保持する第2加熱工程とを含む。
【0024】
本発明において、油脂としては、特に制限はなく、食用のものを適宜採用し得る。例えば、菜種油(キャノーラ油)、コーン油、パーム油、綿実油、紅花油、米油、大豆油、オリーブ油、ゴマ油、ひまわり油、落花生油、パーム核油、ヤシ油等の植物油脂、牛脂、豚脂、鶏脂等の動物脂、あるいはこれら油脂に分別、水素添加、エステル交換等を施した加工油脂などが挙げられる。油脂は、1種類を単品で用いてもよく、あるいは2種類以上が混合されたものを用いてもよい。また、水分含有風味付与食品を炒める油脂と、さらに添加する油脂は同じ種類のものを用いても良く、異なる種類のものを用いても良い。
【0025】
本発明において、乾燥食品とは、食品を加熱や減圧等の処理により水分含量を20質量%以下にした食品を指す。乾燥食品を用いることにより、水分含有量の高い食品を用いるよりも、食品を油脂に投入した際の、油脂の温度低下を防ぐことができるため生産効率が良くなり、また、風味が凝縮された乾燥食品を用いることにより、より強い風味を付与することができる。
【0026】
乾燥食品に使用する食品の種類としては、ガーリック(ニンニク)、オニオン(玉ネギ)、ネギ、ショウガ、大根、ニンジン、キャベツ、もやし、にら、ごぼう、にんじん、セロリ、じゃがいも、トマト、ラッキョウ、エシャロット等の野菜類、パセリ、生姜、唐辛子、ナツメッグ、クミン、ローズマリー、こしょう、山椒、わさび、バジル等の香辛料類、椎茸、しめじ、マツタケ、マイタケ等の茸類、エビ、カニ、イカ、カツオ、サバ、イワシ、アジ、サケ等の魚介類、ホタテ、アサリ、シジミ等の貝類、昆布、ワカメ、ヒジキ等の海藻類、鶏肉、豚肉、牛肉、馬肉等の肉類、酢、ソース、醤油等の調味料類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。乾燥食品としては、乾燥状態で強い風味を持つことから、なかでも、ガーリック(ニンニク)、オニオン(玉ネギ)をより好ましく例示することができる。乾燥食品は、1種類を単品で用いてもよく、あるいは2種類以上を併用してもよい。
【0027】
乾燥食品は、例えば、上記に示した食品を、細断、破砕、又は粉砕して乾燥したり、食品を乾燥した後に、細断、破砕、又は粉砕したりして、調製することができる。乾燥食品を得るための食品の乾燥方法としては、特に限定されないが、例えば、熱風乾燥、凍結乾燥、天日干し、焼成、油ちょう(フライ)などの方法が挙げられる。
【0028】
乾燥食品の形態は、特に制限はなく、パウダー状、ミンス状、粒状、顆粒(コース)状、フレーク状、ダイス状、球状、方形、シート状、不定形状など、各種形状が採用できる。乾燥食品の長さは、特に限定されないが、0.1mm以上10mm以下が好ましい。
【0029】
乾燥食品の添加量は、特に限定されないが、油脂100質量部に対して3~30質量部であることが好ましく、5~25質量部であることがより好ましい。所定の添加量とすることで、乾燥食品由来の風味と香ばしさを充分に付与することができる。
【0030】
本発明において、水分含有風味付与食品とは、水分50%以上である食品を指し、水分60%以上である食品を用いることが好ましい。
【0031】
水分含有風味付与食品に使用する食品の種類としては、乾燥食品に使用する食品の種類として上記に示した食品と同様の食品を使用することができる。水分含有風味付与食品としては、水分を含有した状態、特に生の状態で強い風味を持つことから、なかでも、ネギ、ガーリック、オニオンを好ましく例示することができ、ネギをより好ましく例示することができる。水分含有風味付与食品は、1種類を単品で用いてもよく、あるいは2種類以上を併用してもよい。
【0032】
水分含有風味付与食品の形態は、特に制限はなく、裁断した状態のもの、ダイス状、球状、方形、シート状、不定形状、粉砕形状など、各種形状が採用できる。水分含有風味付与食品の体積は、特に限定されないが、1mm3以上8000mm3以下が好ましく、1mm3以上5000mm3以下がより好ましい。
【0033】
水分含有風味付与食品の添加量は、特に限定されないが、油脂100質量部に対して3~30質量部であることが好ましく、5~25質量部であることがより好ましい。所定の添加量とすることで、水分含有風味付与食品由来の風味を充分に付与することができる。
【0034】
本発明において、加熱手段に特に制限はなく、常法により、例えば釜等の容器に備わる電熱式、直火バーナー式、マイクロ波式、蒸気式、熱風式の加熱手段などで加熱すればよい。
【0035】
乾燥食品は、油脂を100℃以上に加熱してから添加することが好ましく、105℃以上に加熱してから添加することがより好ましく、115℃以上に加熱してから添加することがさらに好ましく、140℃以上に加熱してから添加することが最も好ましい。乾燥食品を添加する時の油脂の温度の上限は、特に限定されないが、200℃以下が好ましく、180℃以下がより好ましい。所定の温度で添加することで、乾燥食品由来の風味や香ばしい風味を十分に油に移すことができる。
【0036】
また、乾燥食品を添加した後の保持加熱温度は、160~200℃が好ましく、165~190℃がより好ましい。所定の温度で保持加熱することで、乾燥食品由来の風味や香ばしい風味を十分に油に移すことができる。
【0037】
水分含有風味付与食品は、予め、例えば油温90~110℃で炒め、その後油脂を添加する。具体的に一例を挙げると、油脂と水分含有風味付与食品とを釜へ張り込み、加熱攪拌を開始する。油温が100℃に達してから、油温95~100℃で60分水分含有風味付与食品を炒め、さらに油脂を添加する。このように水分含有風味付与食品を予め油脂で炒めることで、水分を含有している状態で良い香り付けができる水分含有風味付与食品に由来する風味を、油脂に効率よく付与することができる。
【0038】
なお、油脂を100℃以上に加熱してから乾燥食品を添加完了後、160℃になるまでの時間は特に限定されないが、0~60分が好ましく、0~40分がより好ましい。但し、添加完了時の油脂の温度が160℃以上の場合は、当該加熱時間は0分とみなす。
【0039】
さらに、160℃以上での保持加熱時間は特に限定されないが、0~90分が好ましく、1~60分がより好ましく、3~50分がさらに好ましい。
【0040】
こうして加熱処理した後、油脂の温度が好ましくは100℃未満、より好ましくは90℃以下になるまで放冷又は冷却し、ろ過、遠心分離等の手段によって、添加した乾燥食品や水分含有風味付与食品とを除去して、風味油を得ることができる。
【0041】
こうして得られた本発明の風味油は、そのまま使用してもよいし、食用油脂で希釈して食用油脂組成物として用いてもよい。
【0042】
上記のようにして得られた風味油又は食用油脂組成物は、炒飯、野菜炒め等の炒め物類、お好み焼き、焼そば、焼肉等の焼き物類、ラーメンスープ、コンソメスープ、カレー、シチュー等のスープ類、パスタソース、麻婆豆腐のソース、ゴーヤチャンプルのソース、味付け肉のたれ等のソース類、餃子、肉まんの具、ハンバーグ、ソーセージ等の食肉加工品類、炊き込みご飯、ピラフ等の米飯類、ロールパン、クッキー等の製菓製パン類、魚肉ソーセージ、かまぼこ等の水産加工品類、唐揚げ粉、チヂミ粉、粉末スープ等の調整粉類、シーズニングソース、ドレッシング、マヨネーズ、ポン酢、中華料理の素、鍋つゆ等の調味料類、マーガリン、ファットスプレッド等のマーガリン類、フレンチフライ、唐揚げ、イカリング、コロッケ等の油ちょう食品等の各種食品に使用でき、それらに良好な風味を付与することができる。すなわち、各種食品の調理、加工、あるいは製造等におけるほぐし油、炊飯油、炒め油及びフライ油等の調理用油、ボックスオイル及び天板油等の離型油、練りこみ油、インジェクション用油及び仕上げ油等の調味用油等として用いることによって、あるいは各種食品の調理、加工、あるいは製造等の後に、添加、混合、塗布、溶解、分散、乳化等して当該食品に組み込ませることで、風味油に由来する風味をその食品に付与して、その食品の風味を高めることができる。よって、流通や電子レンジ加熱などにおける風味の劣化、消失等が問題となる、冷凍加工食品、冷蔵加工食品、レトルト食品、瓶詰食品、缶詰食品、乾燥食品、弁当等の流通加工食品製品などに特に好適に使用され得る。
【実施例】
【0043】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を何ら限定するものではない。なお、特に断らない限り、含有率を示す%は、質量%を表す。
【0044】
[試験例1]
乾燥食品(オニオン)の投入温度を検討した。
【0045】
<乾燥食品原料>
オニオン(製品名:オニオンミンスG5、株式会社カネカサンスパイス社、水分10%、長さ約3mm)を使用した。
【0046】
<油脂>
キャノーラ油(製品名:さらさらキャノーラ油、株式会社J-オイルミルズ)を使用した。
【0047】
<風味油の調製>
4L容ステンレス製直火釜にキャノーラ油1kgを張り込み、加熱攪拌を開始した。油温が25℃(対照、比較例1),80℃(比較例2),105℃(実施例1),150℃(実施例2)に到達した時点で、オニオン200gをそれぞれ投入した。それぞれの油温が180℃になるまで加熱を行い、180℃に達したら20分間温度を維持した。その後加熱を止め、油温が70℃まで低下したら、濾紙で濾別して風味油を得た。
【0048】
<評価>
(1)焦げ付きの評価
上記で風味油を調製した後の釜底を観察し、下記の評価基準により評価を行った。
(釜焦げ付きの評価基準)
○:対照に比べ非常に焦げ付きが少ない
△:対照に比べ焦げ付きが少ない
×:対照と同じ、又は、焦げ付きが多い
(2)風味の評価
炒飯(製品名:焼きガラ醤油仕立ての香ばし炒飯、株式会社セブンイレブンジャパン)を電子レンジで1500W35秒温めた。炒飯50gに得られた風味油を1g混ぜて、専門パネラー(n=3)の合議の上で、下記の評価基準により評価を行った。
(オニオンの風味、香ばしい風味の評価基準)
◎:対照に比べ非常に強く感じる
○:対照に比べ強く感じる
△:対照に比べやや強く感じる
×:対照と同じ、又は、弱く感じる
(不快な焦げ風味の評価基準)
○:ほとんど感じない
△:やや感じる
×:感じる
【0049】
結果を表1に示す。
【0050】
【0051】
その結果、油温80℃でオニオンを投入した風味油(比較例2)では、油温25℃でオニオンを投入した風味油(比較例1)と比べて、釜焦げ付きは少なかった。しかし、オニオンの風味と香ばしい風味は同じ又は弱く感じ、不快な焦げ風味を感じた。油温105℃でオニオンを投入した風味油(実施例1)では、対照と比べ、釜焦げ付きは少なかった。また、オニオンの風味は強く感じ、香ばしい風味はやや強く感じ、不快な焦げ風味をやや感じた。油温150℃でオニオンを投入した風味油(実施例2)では、対照と比べ、釜焦げ付きは非常に少なかった。また、オニオンの風味や香ばしい風味は非常に強く感じ、不快な焦げ風味をほとんど感じなかった。
【0052】
[試験例2]
乾燥食品(ガーリック)の投入温度を検討した。
【0053】
<乾燥食品原料>
ガーリック(製品名:ガーリックコースA、ヤスマ株式会社、水分10%、長さ約1mm)を使用した。
【0054】
<風味油の調製>
4L容ステンレス製直火釜にキャノーラ油1kgを張り込み、加熱攪拌を開始した。油温が25℃(対照、比較例3),120℃(実施例3),150℃(実施例4)に到達した時点で、ガーリック200gを投入した。150℃に到達した時点で、ガーリックを投入した場合(実施例4)の投入完了時の油温は170℃であった。それぞれの油温が180℃になるまで加熱を行い、180℃に達したら20分間温度を維持した。その後加熱を止め、油温が70℃まで低下したら、濾紙で濾別して風味油を得た。
【0055】
<評価>
(1)焦げ付きの評価
上記試験例1と同様に評価を行った。
(2)風味の評価
炒飯(製品名:焦がし醤油仕立ての焼豚炒飯おにぎり、株式会社セブンイレブンジャパン)を電子レンジで1000W10秒温めた。炒飯50gに得られた風味油を1.5g混ぜて、専門パネラー(n=3)の合議の上で、下記評価基準により評価を行った。
(ガーリックの風味、香ばしい風味の評価基準)
◎:対照に比べ非常に強く感じる
○:対照に比べ強く感じる
△:対照に比べやや強く感じる
×:対照と同じ、又は、弱く感じる
(不快な焦げ風味の評価基準)
○:ほとんど感じない
△:やや感じる
×:感じる
【0056】
結果を表2に示す。
【0057】
【0058】
その結果、油温120℃でガーリックを投入した風味油(実施例3)では、油温25℃でガーリックを投入した風味油(対照、比較例3)と比べて、釜焦げ付きが少なかった。また、ガーリックの風味はやや強く感じ、香ばしい風味は強く感じ、不快な焦げ風味はやや感じた。油温150℃でガーリックを投入した風味油(実施例4)では、対照と比べ、釜焦げ付きは非常に少なかった。また、ガーリックの風味と香ばしい風味は非常に強く感じ、不快な焦げ風味はほとんど感じなかった。
【0059】
特に、油温25℃でガーリックを投入した場合、加熱を続けていくうちにガーリックが粘性を増し、ガーリック同士が付着して塊を形成した。さらに塊が攪拌羽に付着したり、沈んで釜底へ固結したりして、油中に分散することなく焦げ付いていった。その結果、ガーリックが油に均一に分散されなかったため、ガーリック風味や香ばしい風味が弱くなり、不快な焦げ風味が強くなった。
【0060】
一方で、油温150℃でガーリックを投入した場合、油面で熱によってガーリックが変性し、それに伴いガーリック同士の付着、及びガーリックと攪拌羽や釜底との付着がほとんど見られず、油に均一に分散していた。このことから、風味が油へ効率的に移行したと思われる。
【0061】
[試験例3]
乾燥食品の量を検討した。
【0062】
<乾燥食品原料>
オニオン(製品名:オニオンミンスG5、株式会社カネカサンスパイス社、水分10%、長さ約3mm)を使用した。
【0063】
<風味油の調製>
15cm径ステンレス製片手鍋にキャノーラ油50gを張り込み、加熱攪拌を開始した。油温が150℃に到達した時点で、オニオン2.5g(実施例5)、5g(実施例6)、10g(実施例7)を投入した。いずれもオニオン投入完了時の油温は160℃以上であった。それぞれ油温が180℃になるまで加熱を行い、180℃に達したら加熱を止めた。油温を室温まで低下させ、濾紙で濾別して風味油を得た。なお、対照として、キャノーラ油50gとオニオン10gを最初から同時に張り込み、同様に加熱攪拌して風味油を得た(対照、比較例4)。
【0064】
<評価>
(1)焦げ付きの評価
上記で風味油を調製した後の鍋底を観察し、下記の評価基準により評価を行った。
(評価基準)
○:対照に比べ、焦げ付きが少ない
×:対照と同じ、又は、焦げ付きが多い
(2)風味の評価
上記試験例1と同様に評価を行った。
【0065】
結果を表3に示す。
【0066】
【0067】
その結果、油温150℃でオニオンを投入した風味油(実施例5~7)では、最初からオニオンを投入した風味油(対照、比較例4)と比べて、鍋焦げ付きが少なかった。
【0068】
オニオンを5質量部投入した風味油(実施例5)では、対照と比べ、オニオンの風味がやや強く感じられ、香ばしい風味は強く感じ、不快な焦げ風味はほとんど感じられなかった。オニオンを10質量部投入した風味油(実施例6)では、対照と比べ、オニオンの風味と香ばしい風味は強く感じ、不快な焦げ風味はほとんど感じられなかった。オニオンを20質量部投入した風味油(実施例7)では、対照と比べ、オニオンの風味と香ばしい風味は非常に強く感じ、不快な焦げ風味はほとんど感じられなかった。
【0069】
[試験例4]
パウダー状の乾燥食品(オニオン)を使用した。
【0070】
<乾燥食品原料>
オニオンパウダー(製品名:オニオンパウダースノーホワイト、ヤスマ株式会社、水分5%、長さ約0.5mm)を使用した。
【0071】
<風味油の調製>
15cm径ステンレス製片手鍋にキャノーラ油50gを張り込み、加熱攪拌を開始した。油温が150℃に到達した時点で、オニオンパウダー10gを投入した。オニオンパウダー投入後、加熱攪拌し30秒後に160℃に達した。さらに加熱攪拌を3分続け、170℃に達したら加熱を止めた。油温を室温まで低下させ、濾紙で濾別して風味油を得た(実施例8)。
【0072】
<評価>
(1)風味の評価
炒飯(製品名:焼きガラ醤油仕立ての香ばし炒飯、株式会社セブンイレブンジャパン)を電子レンジで1500W35秒温めた。炒飯50gに得られた風味油を1g混ぜて、専門パネラー(n=3)の合議の上で、評価を行った。
【0073】
その結果、オニオンパウダーを投入した風味油(実施例8)では、オニオンの風味や香ばしい風味を非常に強く感じた。
【0074】
[試験例5]
乾燥食品と水分含有風味付与食品とを使用して作製した風味油について検討した。
【0075】
<乾燥食品原料>
ガーリック(製品名:ガーリックコースA、ヤスマ株式会社、水分10%、長さ約1mm)を使用した。
【0076】
<水分含有風味付与食品原料>
長ネギ(市販の長ネギを、包丁を使用して5mm幅にカット、水分含量91%、体積約1500mm3)を使用した。
【0077】
<風味油の調製>
4L容ステンレス製直火釜にキャノーラ油200g、ネギ200gを張り込み、加熱攪拌を開始した。油温が100℃に達してから、油温95~100℃で60分ネギを炒めた。その後、キャノーラ油800gを追加し、150℃まで加熱した。油温が150℃に達してから、ガーリック200gを10分かけて少しずつ投入した。ガーリック投入完了時の油温は175℃であった。カーリック投入完了後、5分加熱撹拌し、油温が180℃に達してから、油温175~180℃でさらに20分加熱攪拌を続け、加熱を止めた。油温を70℃まで低下させ、濾紙で濾別して風味油を得た(実施例9)。
【0078】
<評価>
(1)風味の評価
炒飯(製品名:焼きガラ醤油仕立ての香ばし炒飯、株式会社セブンイレブンジャパン)200gをテフロン(登録商標)フライパン表面が180℃になった時点で投入し、1分炒めた。その後、風味油を2g加えて混ぜて火からおろし、専門パネラー(n=3)の合議の上で、評価を行った。
【0079】
その結果、ネギを油で炒めてガーリックを投入した風味油(実施例9)では総合的なネギ・ガーリックの風味や香ばしい風味を非常に強く感じた。