IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立金属株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ワイヤハーネス 図1
  • 特許-ワイヤハーネス 図2
  • 特許-ワイヤハーネス 図3
  • 特許-ワイヤハーネス 図4
  • 特許-ワイヤハーネス 図5
  • 特許-ワイヤハーネス 図6
  • 特許-ワイヤハーネス 図7
  • 特許-ワイヤハーネス 図8
  • 特許-ワイヤハーネス 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-25
(45)【発行日】2024-02-02
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/00 20060101AFI20240126BHJP
   H01B 7/282 20060101ALI20240126BHJP
   H02G 15/04 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
H01B7/00 301
H01B7/282
H02G15/04 060
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019097833
(22)【出願日】2019-05-24
(65)【公開番号】P2020194630
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-08-16
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(72)【発明者】
【氏名】高橋 範行
【合議体】
【審判長】山澤 宏
【審判官】山内 裕史
【審判官】富澤 哲生
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-10303(JP,A)
【文献】国際公開第2019/058687(WO,A1)
【文献】特開2002-216890(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
H02G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線と前記電線を被覆するシースとを有するケーブルと、
前記シースの端部から露出している前記電線の外周に接触させて設けられたシール部材と、
前記シール部材を保持する保持部材と、
前記シースの外周面に接触する第1の内周面と、前記保持部材の外周面に接触する第2の内周面とを有する筒状の弾性体からなる筒状部材と、を備え、
前記電線は、前記保持部材から延出しており、
前記筒状部材は、前記第1の内周面を有して前記シースを収容する第1の収容部と、該第1の収容部と接続する第2の収容部と、該第2の収容部と接続し前記第2の内周面を有して前記保持部材を収容する第3の収容部とを含んで構成されており、
前記保持部材は、円柱状の本体部と、前記本体部に被せられる円板状の蓋体とを備え、
前記本体部は、前記本体部の径方向の外向きに突出し、前記蓋体を前記本体部に固定するための係合突起を有し、
前記係合突起は、前記本体部の底面からの軸方向における長さが前記第3の収容部の軸方向における長さよりも高い位置に設けられている、
ワイヤハーネス。
【請求項2】
前記筒状部材の内部において、前記第1の収容部と前記第2の収容部との間に、前記シースの端面と接触する第1の段差部が形成されている、
請求項に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記筒状部材の内部において、前記第3の収容部と前記第2の収容部との間に、前記保持部材の前記底面と接触する第2の段差部が形成されている、
請求項又はに記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記第2の収容部の軸方向のおける長さは、1mm以上20mm以下である、
請求項からのいずれか1項に記載のワイヤハーネス。
【請求項5】
前記第3の収容部の軸方向における長さは、5mm以上30mm以下である、
請求項からのいずれか1項に記載のワイヤハーネス。
【請求項6】
電線と前記電線を被覆するシースとを有するケーブルと、
前記シースの端部から露出している前記電線の外周に接触させて設けられたシール部材と、
前記シール部材を保持する保持部材と、
前記シースの外周面に接触する第1の内周面と、前記保持部材の外周面に接触する第2の内周面とを有する筒状の弾性体からなる筒状部材と、を備え、
前記電線は、前記保持部材から延出しており、
前記筒状部材は、前記第1の内周面を有して前記シースを収容する第1の収容部と、該第1の収容部と接続する第2の収容部と、該第2の収容部と接続し前記第2の内周面を有して前記保持部材を収容する第3の収容部とを含んで構成されており、
前記第1の収容部の外周面に巻き付けられて前記筒状部材を保持し、前記筒状部材を固定対象に固定するための固定部材をさらに備える、
ワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスに関し、特に自動車の車両において水沫等の液体が付着し得る部位に配策されるワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車のABS(アンチロックブレーキシステム)用の信号用電線と、電動式のパーキングブレーキを動作させる電源用電線とを共通のシースで被覆して一体化したワイヤハーネスが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2014/103499号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のワイヤハーネスでは、シースの端部からシース内へ水等の液体が浸入する虞がある。たとえば、シースの端部からシース内へ液体が浸入し、当該液体が凍結した状態で、ワイヤハーネスが屈曲すると信号用電線や電源用電線が損傷する虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、シースの端部からシース内へ液体が浸入することを抑制することが可能なワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、電線と前記電線を被覆するシースとを有するケーブルと、前記シースの端部から露出している前記電線の外周に接触させて設けられたシール部材と、前記シール部材を保持する保持部材と、前記シースの外周面に弾接する第1の内周面と、前記保持部材の外周面に弾接する第2の内周面とを有する筒状の弾性体からなる筒状部材と、を備え、前記電線は、前記保持部材から延出している、ワイヤハーネスを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るワイヤハーネスによれば、シースの端部からシース内へ液体が浸入することを抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態に係るワイヤハーネスを示す斜視図である。
図2図1のX-X’断面図である。
図3】グロメットを示す斜視図である。
図4図3に示すグロメットの縦断面図である。
図5】ホルダーを示す分解図である。
図6】ワイヤーシールを示す斜視図である。
図7】ワイヤハーネスの製造工程の途中で形成される中間体を示す図である。
図8】ワイヤーシールが装着されたホルダーの組立図である。
図9】本発明の一変形例に係るワイヤハーネスを示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係るワイヤハーネスを示す斜視図である。図2は、図1のX-X’断面図である。本発明の実施の形態に係るワイヤハーネス1は、例えば、自動車の電動パーキングブレーキ装置や電動ブレーキ装置に用いられるものであり、より詳細には、自動車の各車輪に対応して設けられた電動パーキングブレーキ装置にその動作のための作動電流を供給するとともに、車輪の回転速度を計測するための回転速度センサの信号(例えば、アンチロックブレーキシステム(ABS)に用いられる信号)を伝達するものである。
【0010】
図1に示すように、このワイヤハーネス1は、電線(第1のコア線2及び第2のコア線3)と、電線を被覆するシース4と、筒状部材としてのグロメット5と、保持部材としてのホルダー6と、シール部材としてのワイヤーシール7と、を備えて構成されている。
【0011】
シース4は、第1のコア線2及び第2のコア線3を被覆する。第1のコア線2及び第2のコア線3は、このシース4の端部4aから露出している。また、第1のコア線2及び第2のコア線3は、ホルダー6から延出している。ワイヤーシール7は、ホルダー6に形成された挿入孔610,611に挿入され、これら挿入孔610,611及び第1のコア線2及び第2のコア線3との間でそれぞれ止水を行う。ワイヤーシール7は、シース4の端部4aから露出している第1のコア線2及び第2のコア線3の外周に接触させて設けられている。
【0012】
ホルダー6は、ワイヤーシール7を保持する。グロメット5は、シース4の一方の端部4a(以下、単に「一端部4a」ともいう。)を保持するとともに、この一端部4aとの間で止水を行う。ここで、第1のコア線2及び第2のコア線3がシース4により被覆されたものを「ケーブル」ともいう。以下、各構成要素の詳細について説明する。
【0013】
(第1のコア線2)
第1のコア線2は、例えば、電動パーキングブレーキ装置に作動電流を供給するために用いられる電源線である。第1のコア線2は、一対の第1の絶縁電線21,21を含んで構成されている。また、一対の第1の絶縁電線21,21は、それぞれ、例えば、銅からなる複数の素線を撚り合わせた第1の導体線211、及び第1の導体線211を被覆するポリエチレンからなる第1の絶縁体212を含む。
【0014】
(第2のコア線3)
第2のコア線3は、例えば、回転速度センサの信号を伝送するために用いられる信号線である。第2のコア線3は、一対の第2の絶縁電線31,31を含んで構成されている。また、一対の第2の絶縁電線31,31は、それぞれ、例えば、銅からなる複数の素線を撚り合わせた第2の導体線311、及び第2の導体線311を被覆するポリエチレンからなる第2の絶縁体312を含む。第2の絶縁電線31は、第1の絶縁電線21よりも小さい外径を有し、第1の絶縁電線21よりも細く形成されている。
【0015】
(シース4)
シース4は、筒状の形状を有し、第1のコア線2及び第2のコア線3を一括して被覆している。シース4は、例えば、熱可塑性ウレタン等のウレタン系の樹脂により形成されている。なお、シース4の内部には、シース4の内面と第1のコア線2及び第2のコア線3との間に、繊維状の介在(不図示)が配置されていてもよい。
【0016】
第1のコア線2及び第2のコア線3は、シース4の一端部4aから導出され、この一端部4aから露出している。また、シース4の一端部4aは、グロメット5に保持され、他方の端部(図示省略、以下、「他端部」)は図略の制御装置のケースに保持されている。
【0017】
(グロメット5)
図3は、グロメット5を示す斜視図である。図4は、図3に示すグロメット5の縦断面図である。グロメット5は、例えば、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等のゴム系の弾性を有する素材で形成されている。
【0018】
グロメット5は、シース4の一端部4aを収容し、この一端部4aの外周面4aaと弾接する第1の内周面51aを有する第1の収容部51と、シース4の一端部4aから導出されて露出している第1のコア線2及び第2のコア線3を収容する第2の収容部52と、複数のワイヤーシール7を保持するホルダー6の本体部61を収容し本体部61の外周面61aと弾接する第2の内周面53aを有する第3の収容部53とを一体に備えている。ここで、「弾接」とは、ゴム材の弾性力によって接触することをいう。
【0019】
第1の収容部51は、一端側に配置されており、第3の収容部53は、他端側に配置されている。第2の収容部52は、第1の収容部51及び第3の収容部53との間に位置し、これら第1の収容部51及び第3の収容部53と連続的に接続されている。換言すれば、第2の収容部52により、第1の収容部51及び第3の収容部53は互いに離間して配置されている。
【0020】
第1の収容部51は、第1の収容部51内径r及び外径Rが軸方向の全体に亘って均一である円筒状の形状を有している。また、第3の収容部53は、円筒状の形状を有している。つまり、第3の収容部53の内径r及び外径Rは、軸方向の全体に亘って均一である。第3の収容部53の内径r及び外径Rはそれぞれ、第1の収容部51の内径r及び外径Rよりも大きい(r<r、R<R)。
【0021】
第2の収容部52は、第1の収容部51と接続する第1の筒部521と、第3の収容部53と接続する第2の筒部522と、第1の筒部521及び第2の筒部522の間に位置し、第1の収容部51側から第3の収容部53側に向かって拡径するテーパ状の形状を有する中間部523とを一体に有している。
【0022】
以上を換言すれば、第1の収容部51は、シース4の一端部4aの外周面4aaと弾接する第1の内周面51aを有する小径筒部であり、第3の収容部53は、本体部61の外周面61aと弾接する第2の内周面53aを有する大径筒部であり、第2の収容部52は、第1の収容部51と第3の収容部53とを連結する連結部である。以下、各収容部の機能の詳細について説明する。
【0023】
(1)第1の収容部51
第1の収容部51の内径rは、シース4を収容する前の自然状態において、シース4の外径よりも小さい。したがって、シース4は、第1の収容部51を、例えば、空気等により拡径した状態で第1の収容部51に収容される。
【0024】
シース4が第1の収容部51に収容された後には、第1の収容部51は、拡径された状態から縮径されてシース4の一端部4aの外周面4aaに弾接する。これにより、シース4には、第1の収容部51からの締付け力(すなわち、「緊縛力」)が働く。かかる緊縛力により、シース4の外周面4aaと第1の内周面51aとが密着して、第1の収容部51側から第2の収容部52側(図1の図示左側から右側)への液体の浸入を抑制することが可能となる。
【0025】
(2)第2の収容部52
第2の収容部52の第1の筒部521の内径r21は、第1の収容部51の内径rよりも小さい(r21<r)。すなわち、第1の収容部51と第2の収容部52との間には、シース4の一端部4aの先端面4ab(以下、単に「シース4の端面4ab」ともいう。)と接触してシース4の第1の収容部51内における位置合わせを行うストッパとして機能する第1の段差部51bが形成されている。
【0026】
また、第2の収容部52の第2の筒部522の内径r22は、第3の収容部53の内径rよりも小さい(r22<r)。すなわち、第3の収容部53と第2の収容部52との間には、本体部61の底面61b(図5参照)と接触して本体部61の第3の収容部53内における位置合わせを行うストッパとして機能する第2の段差部53bが形成されている。
【0027】
また、中間部523の軸方向における長さLは、好ましくは、1mm以上20mm以下である。換言すれば、グロメット5にシース4及びホルダー6の本体部61が収容された状態において、シース4とホルダー6とは、シース4の長手方向において互いに1mm以上20mm以下離間して配置される。シース4とホルダー6とを一定以上近付けすぎると、シース4の一端部4aから導出された第1のコア線2及び第2のコア線3が一定の角度以上で傾斜した状態でホルダー6に挿通され、ホルダー6との隙間が生じて止水性を低下させる虞があるためである。
【0028】
(3)第3の収容部53
第3の収容部53の内径rは、ホルダー6の本体部61を収容する前の自然状態において、本体部61の外径よりも小さい。したがって、本体部61は、第3の収容部53を、例えば、空気等により拡径した状態で第3の収容部53に収容される。
【0029】
本体部61が第3の収容部53に収容された後には、第3の収容部53は、拡径された状態から縮径されて本体部61の外周面61aに弾接する。これにより、本体部61には、第3の収容部53からの緊縛力が働く。かかる緊縛力により、第2の内周面53aと本体部61の外周面61aとが密着して、第2の内周面53aと本体部61の外周面61aとの間からグロメット5内へ浸入することを抑制することが可能となる。
【0030】
また、第3の収容部53の軸方向における長さL(すなわち、第2の内周面53aの高さ)は、好ましくは、5mm以上30mm以下である。第3の収容部53の長さLが5mm未満の場合、第3の収容部53からの緊縛力が十分に得られず、第3の収容部53の内周面53a(すなわち、第2の内周面53a)と本体部61の外周面61aとの間に期待する止水性が得られない虞がある。また、第3の収容部53の長さLが30mmを超える場合、第3の収容部53の緊縛力が強すぎて、本体部61を収容する作業が困難になる虞がある。
【0031】
(ホルダー6)
図5は、ホルダー6を示す分解図である。ホルダー6は、ワイヤーシール7を保持する保持部材である。図5に示すように、ホルダー6は、円柱状の形状を有する本体部61と、本体部61上に被せられる円板状の形状を有する蓋体62とを備えている。本体部61は、所定の高さ(図2でいえば、軸方向における長さ)Hを有している。本体部61の高さHは、上述した第3の収容部53の長さLよりも大きい(すなわち、H>L)。好ましくは、本体部61の底面61bから、後述する係合突起613の下端までの高さが第3の収容部53の長さLよりも大きい。ホルダー6を最大限に第3の収容部53に収容した場合であっても、係合突起613がグロメット5の外部に位置するようにするためである。
【0032】
本体部61には、本体部61の軸方向に沿って上面から底面61bまで貫通する4つの挿入孔610,611が形成されている。これら4つのうち2つの挿入孔610は、残りの2つの挿入孔611に対して大径である。2つの大径の挿入孔610(以下、「第1の挿入孔610」ともいう。)は、互いに同一の径を有する。2つの小径の挿入孔611(以下、「第2の挿入孔611」ともいう。)は、互いに同一の径を有する。なお、ここで、「同一」とは、完全に同じであることのみをいうものではなく、多少の誤差も含むものである。多少の誤差とは、数%(例えば、5%)以下の誤差をいう。以下、「同一」を記した場合は同様とする。
【0033】
これら4つの挿入孔610,611には、それぞれワイヤーシール7が挿入される。また、4つの挿入孔610,611は、本体部61が第3の収容部53に収容された状態で、ワイヤハーネス1の横断面視における第1のコア線2及び第2のコア線3の位置に対応するように配置されている。
【0034】
また、本体部61は、外周面61aに、本体部61の径方向の外向きに突出し本体部61の中心軸を挟んで互いに対向する位置に設けられた一対の突起状の係合突起613,613を備えている。係合突起613は、本体部61の高さ方向において、本体部61が第3の収容部53に収容された状態でグロメット5の外部に配置される位置、すなわち、底面61bからの高さが第3の収容部53の軸方向における長さLよりも高い位置に設けられている。なお、係合突起613の数は、2つに限定されるものではなく、3つ以上でもよい。
【0035】
蓋体62は、本体部61の上面全体を覆う円板状の部材である。蓋体62は、(例えば図2の右方向に)ワイヤーシール7が本体部61から離脱することを抑制する機能を有している。蓋体62は、本体部61に被せられた状態で、本体部61の一対の係合突起613,613とそれぞれ係合する一対の係合部620を備えている。蓋体62には、第1のコア線2及び第2のコア線3をそれぞれ挿通させる挿通孔622、623が形成されている。第1のコア線2及び第2のコア線3は、当該挿通孔622、623を介してホルダー6から延出している。
【0036】
この一対の係合部620は、蓋体62の中心軸を挟んで互いに対向する位置に設けられている。それぞれの係合部620は、蓋体62の外縁部において軸方向下向きに延出し、中央部に係合孔620aを形成する環状の係合片621を有している。この係合孔620aと係合突起613とが係合して蓋体62が本体部61に固定されるようになっている(図8参照)。
【0037】
(ワイヤーシール7)
図6は、ワイヤーシール7を示す斜視図である。ワイヤーシール7は、例えば、シリコンゴム等のゴム材により形成されている。図6に示すように、ワイヤーシール7は、一対(2つ)の大径の第1のワイヤーシール71と、一対(2つ)の小径の第2のワイヤーシール72とを含んで構成されている。
【0038】
第1のワイヤーシール71は、円筒状の形状を有している。また、第1のワイヤーシール71の内部には、第1のコア線2を第1のワイヤーシール71に挿入する際に、第1のコア線2と第1のワイヤーシール71との間の摩擦力を低減するために、第1のワイヤーシール71の軸方向に沿って径方向に凹凸を繰り返す凹凸構造が形成されている。
【0039】
第1のワイヤーシール71は、上述した第1の挿入孔610に挿入される。そのため、第1のワイヤーシール71の外周面71aには、第1のワイヤーシール71の軸方向に沿って径方向に凹凸を繰り返す凹凸構造が形成されている。第1のワイヤーシール71を本体部61の第1の挿入孔610に挿入する際に、第1の挿入孔610の内壁610aと接触する外周面71aの面積を小さくして内壁610aと外周面71aとの間に働く摩擦力を低減し、第1のワイヤーシール71を本体部61の第1の挿入孔610に挿入しやすくするためである。
【0040】
第1のワイヤーシール71を第1の挿入孔610に挿入する前の自然状態において、第1のワイヤーシール71の外径Dは、第1の挿入孔610の内径φよりも大きい。したがって、第1のワイヤーシール71は、縮径した状態で第1の挿入孔610に挿入される。
【0041】
第1のワイヤーシール71が第1の挿入孔610に挿入された後には、第1のワイヤーシール71は、縮径された状態から拡径されて第1の挿入孔610の内壁610aに弾接する。これにより、第1のワイヤーシール71には、第1の挿入孔610からの緊縛力が働く。かかる緊縛力により、第1のワイヤーシール71の外周面71aと第1の挿入孔610の内壁610aとが密着して、第1のワイヤーシール71の外周面71aと第1の挿入孔610の内壁610aとの間から液体が浸入することを抑制することが可能となる。
【0042】
また、第1の貫通孔710には、第1のコア線2が挿通される。第1のコア線2を第1の貫通孔710に挿通する前の自然状態において、第1のワイヤーシール71の内径dは、第1のコア線2の外径よりも小さい。
【0043】
第1のコア線2が第1の貫通孔710に挿通された後には、第1の貫通孔710は、拡径された状態から縮径されて第1の絶縁電線21の外周面21aに弾接する。これにより、第1のコア線2には、第1のワイヤーシール71からの緊縛力が働く。かかる緊縛力により、第1の絶縁電線21の外周面21aと第1の貫通孔710の内壁710aとが密着して、第1の絶縁電線21の外周面21aと第1の貫通孔710の内壁710aとの間から液体が浸入することを抑制することが可能となる。
【0044】
第2のワイヤーシール72は、円筒状の形状を有している。また、第2のワイヤーシール72の内部には、第2のコア線3を第2のワイヤーシール72に挿入する際に、第2のコア線3とワイヤーシール72との間の摩擦力を低減するために、第2のワイヤーシール72の軸方向に沿って径方向に凹凸を繰り返す凹凸構造が形成されている。
【0045】
第2のワイヤーシール72は、上述した第2の挿入孔611に挿入される。そのため、第2のワイヤーシール72の外周面72aには、第1のワイヤーシール71の外周面71aと同様に、第2のワイヤーシール72の軸方向に沿って径方向に凹凸を繰り返す凹凸構造が形成されている。第2のワイヤーシール72を本体部61の第2の挿入孔611に挿入しやすくするためである。
【0046】
第2のワイヤーシール72を第2の挿入孔611に挿入する前の自然状態において、第2のワイヤーシール72の外径Dは、第2の挿入孔611の内径φよりも大きい。したがって、第2のワイヤーシール72は、縮径した状態で第2の挿入孔611に挿入される。
【0047】
第2のワイヤーシール72が第2の挿入孔611に挿入された後には、第2のワイヤーシール72は、縮径された状態から拡径されて第2の挿入孔611の内壁611aに弾接する。これにより、第2のワイヤーシール72には、第2の挿入孔611からの緊縛力が働く。かかる緊縛力により、第2のワイヤーシール72の外周面72aと第2の挿入孔611の内壁611aとが密着して、第2のワイヤーシール72の外周面72aと第2の挿入孔611の内壁611aとの間から液体が浸入することを抑制することが可能となる。
【0048】
また、第2の貫通孔720には、第2のコア線3が挿通される。第2のコア線3を第2の貫通孔720に挿通する前の自然状態において、第2のワイヤーシール72の内径dは、第2のコア線3の外径よりも小さい。したがって、第2のコア線3は、第2の貫通孔720を、例えば、空気等により拡径した状態で第2の貫通孔720に挿通される。
【0049】
第2のコア線3が第2の貫通孔720に挿通された後には、第2の貫通孔720は、拡径された状態から縮径されて第2の絶縁電線31の外周面31aに弾接する。これにより、第2のコア線3には、第2のワイヤーシール72からの緊縛力が働く。かかる緊縛力により、第2の絶縁電線31の外周面31aと第2の貫通孔720の内壁720aとが密着して、第2の絶縁電線31の外周面31aと第2の貫通孔720の内壁720aとの間から液体が浸入することを抑制することが可能となる。
【0050】
(ワイヤハーネス1の製造工程)
図7は、ワイヤハーネス1の製造工程の途中で形成される中間体を示す図である。図8は、ワイヤーシール7が装着されたホルダー6の組立図である。まず、図7に示すように、グロメット5をシース4の一端部4aから導出されている第1のコア線2及び第2のコア線3に挿通するとともにこの一端部4aを収容して中間体1Aを形成する。このとき、上述したように、第1の収容部51を拡径した状態で、シース4の一端部4aをグロメット5に収容する。
【0051】
次に、図8に示すように、ワイヤーシール7をホルダー6の本体部61の挿入孔610,611に挿入する。このとき、上述したように、ワイヤーシール7を縮径した状態で挿入孔610,611に挿入する。次に、ワイヤーシール7が装着された状態の本体部61に蓋体62を被せる。このとき、蓋体62の係合部620と、本体部61の係合突起613とを係合させてホルダー6を組み立てる。
【0052】
最後に、図7に示す中間体1Aのグロメット5の第3の収容部53に、図8に示すワイヤーシール7入りのホルダー6を収容する。このとき、上述したように、第3の収容部53を拡径した状態で、ホルダー6の本体部61を収容するとともに、ワイヤーシール7を拡径した状態で、第1のコア線2及び第2のコア線3を対応する大きさのワイヤーシール7に挿通させる。以上のようにして、図1に示すようなワイヤハーネス1が完成する。なお、ワイヤハーネス1は、所望の方向にコア線を引き出すために分岐カバー(不図示)に装着してもよい。
【0053】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明した実施の形態によれば、シース4の外周面4aaに接触する第1の内周面51aと、ホルダー6の外周面61aに接触する第2の内周面53aとを有する筒状の弾性体からなるグロメット5を備えている。これにより、シース4の外周面4aaと第1の内周面51aとの間から(グロメット5内を通じて)シース4内に浸入してくる液体を抑制することが可能であるとともに、ホルダー6の外周面61aと第2の内周面53aとの間から(グロメット5内を通じて)シース4内に浸入してくる液体を抑制することが可能となる。また、本実施の形態では、ワイヤーシール7とホルダー6の挿入孔の内周面とが接触している。これにより、第1のコア線2及び第2のコア線3と挿入孔との間がワイヤーシール7により封止され、第1のコア線2及び第2のコア線3と挿入孔との間から(グロメット5内を通じて)シース5内に浸入してくる液体を抑制することが可能となる。以上、本実施の形態によれば、シース4の端部4aからシース4内へ液体が浸入することを抑制することができる。
【0054】
また、グロメット5を用いることにより、従来のモールド成形による場合に樹脂部材を製作するのに要していた金型や金型成形機を不要とすることができる。高額な金型成形機を使用しないことにより、高額な設備投資が不要となりコストを低減することができる。また、該金型成形機を設置する場所が不要となることから、製造の省スペース化を実現することができる。
【0055】
なお、シースの端部をモールドすることで止水(シース内へ液体が浸入することを抑制)する方法もあるが、電線を構成する絶縁体の種類によっては、モールドに用いられるモールド樹脂と溶け合わないものがある。この場合、電線とモールド樹脂との間で止水性が得られない場合がある。しかしながら、本発明は、モールド樹脂を用いず、シール部材と筒状部材とにより止水する構成となっているので、絶縁体の種類に関わらず、シース内へ液体が浸入することを抑制することが可能となる。
【0056】
(変形例)
図9は、本発明の一変形例に係るワイヤハーネス1を示す要部断面図である。図9に示すように、ワイヤハーネス1は、グロメット5の第1の収容部51の外周面に巻き付けられてグロメット5を保持するブラケット8をさらに備えてもよい。ブラケット8は、例えば、アルミニウム等の板状の金属からなる固定金具である。ブラケット8は、固定部材の一例である。
【0057】
ブラケット8は、例えば、グロメット5の外周面に巻き締められた巻き締め部81、及び車体側の固定対象に固定される固定部82を一体に有して構成される。固定部82には、板厚方向に貫通する貫通孔820が形成されている。なお、巻き締め部81は、第1の収容部51の少なくとも一部の外周面に巻き締められていればよい。
【0058】
このようなブラケット8を設けることで、巻き締め部81の押圧力により、第1の内周面51aとシース4の一端部4aの外周面4aaとをより密着させることが可能となり、第1の内周面51aとシース4の一端部4aの外周面4aaとの間の止水性をさらに向上させることができる。
【0059】
また、グロメット5の第3の収容部53の外周面に、締付部材9をさらに備えてもよい。締付部材9は、例えば、一方の端部に緩み防止用のノッチ付きの開口(不図示)を設け、他方の端部を開口に挿通させて他方の端部を引き込むことにより対象物を締め付けるものでよい。締付部材9は、例えば、SUS等の金属でもよいし、ポリアミド系樹脂等の樹脂でもよい。
【0060】
このような締付部材9を設けることにより、第2の内周面53aとホルダー6の本体部61の外周面61aとの間の止水性をさらに向上させることができる。なお、本実施の形態では、グロメット5とホルダー6とは、別体に形成されているが、グロメット5とホルダー6とは、一体に形成されてもよい。
【0061】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0062】
[1]電線(2,3)と前記電線(2,3)を被覆するシース(4)とを有するケーブルと、前記シース(4)の端部(4a)から露出している前記電線(2,3)の外周に接触させて設けられたシール部材と、前記シール部材を保持する保持部材と、前記シース(4)の外周面(4aa)に接触する第1の内周面(51a)と、前記保持部材の外周面に接触する第2の内周面(53a)とを有する筒状の弾性体からなる筒状部材と、を備え、前記電線は、前記保持部材から延出している、ワイヤハーネス(1)。
[2]前記シール部材は、前記電線(2,3)が挿通された筒状であり、前記保持部材に形成された挿入孔(610,611)に挿入されるとともに、前記シール部材は、前記挿入孔(610,611)の内壁(610a,611a)に接触する外周面(71a,72a)と、挿通された前記電線(2,3)の外周面(21a,31a)に接触する内壁(710a,720a)とを有する、前記[1]に記載のワイヤハーネス(1)。
[3]前記筒状部材は、前記第1の内周面(51a)を有して前記シース(4)を収容する第1の収容部(51)と、該第1の収容部(51)と接続する第2の収容部(52)と、該第2の収容部(52)と接続し前記第2の内周面(53a)を有して前記保持部材を収容する第3の収容部(53)とを含んで構成されている、前記[1]又は[2]に記載のワイヤハーネス(1)。
[4]前記保持部材は、円柱状の本体部(61)と、前記本体部(61)に被せられる円板状の蓋体(62)とを備え、前記本体部(61)は、前記本体部(62)の径方向の外向きに突出し、前記蓋体(62)を前記本体部(62)に固定するための係合突起(613)を有し、前記係合突起(613)は、前記本体部(62)の底面(61b)からの軸方向における長さが前記第3の収容部(53)の軸方向における長さよりも高い位置に設けられている、前記[3]に記載のワイヤハーネス(1)。
[5]前記筒状部材の内部において、前記第1の収容部(51)と前記第2の収容部(52)との間に、前記シース(4)の端面(4ab)と接触する第1の段差部(51b)が形成されている、前記[3]又は[4]に記載のワイヤハーネス(1)。
[6]前記筒状部材の内部において、前記第3の収容部(53)と前記第2の収容部(52)との間に、前記保持部材の前記底面(61b)と接触する第2の段差部(53b)が形成されている、前記[3]から[5]のいずれか1つに記載のワイヤハーネス(1)。
[7]前記第2の収容部(52)の軸方向のおける長さは、1mm以上20mm以下である、前記[3]から[6]のいずれか1つに記載のワイヤハーネス(1)。
[8]前記第3の収容部(53)の軸方向における長さは、5mm以上30mm以下である、前記[3]から[7]のいずれか1つに記載のワイヤハーネス(1)。
[9]前記第1の収容部(51)の外周面に巻き付けられて前記筒状部材を保持し、前記筒状部材を固定対象に固定するための固定部材をさらに備える、前記[3]から[8]のいずれか1つに記載のワイヤハーネス(1)。
[10]前記第3の収容部(53)の外周面に、該外周面を締め付ける締付部材をさらに備える、前記[3]から[9]のいずれか1つに記載のワイヤハーネス(1)。
【0063】
(付記)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0064】
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では、ワイヤハーネス1を自動車の電動パーキングブレーキ装置や電動ブレーキ装置に用いる場合について説明したが、ワイヤハーネス1の用途はこれに限らない。また、上記実施の形態では、第1のコア線2を電源線として使用し、また第2のコア線3を信号線として使用する場合について説明したが、第1のコア線2を信号線として使用してもよく、第2のコア線3を電源線として用いてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1…ワイヤハーネス
1A…中間体
2…第1のコア線
21…第1の絶縁電線
21a…外周面
211…第1の導体線
212…第1の絶縁体
3…第2のコア線
31…第2の絶縁電線
31a…外周面
311…第2の導体線
312…第2の絶縁体
4…シース
4a…一方の端部(一端部)
4aa…外周面
4ab…端面
5…グロメット
51…第1の収容部
51a…第1の内周面
51b…第1の段差部
52…第2の収容部
521…第1の筒部
522…第2の筒部
523…中間部
53…第3の収容部
53a…第2の内周面
53b…第2の段差部
6…ホルダー
61…本体部
61a…外周面
61b…底面
610…第1の挿入孔
610a…内壁
611…第2の挿入孔
611a…内壁
613…係合突起
62…蓋体
620…係合部
620a…係合孔
621…係合片
7…ワイヤーシール
71…第1のワイヤーシール
71a…外周面
710…第1の貫通孔
710a…内壁
72…第2のワイヤーシール
72a…外周面
720…第2の貫通孔
720a…内壁
8…ブラケット
81…巻き締め部
82…固定部
820…貫通孔
9…締付部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9