(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】ワークピースの研削方法
(51)【国際特許分類】
B24B 7/04 20060101AFI20240129BHJP
B24B 47/12 20060101ALI20240129BHJP
B24B 49/16 20060101ALI20240129BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
B24B7/04 A
B24B47/12
B24B49/16
H01L21/304 622R
H01L21/304 631
(21)【出願番号】P 2019230084
(22)【出願日】2019-12-20
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】山本 敬祐
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-150421(JP,A)
【文献】特開平05-285806(JP,A)
【文献】実開平01-143343(JP,U)
【文献】特開2016-097476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 7/04
B24B 47/12
B24B 49/16
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非円形状のワークピースを保持した保持テーブルと、研削用の砥石が固定された研削ホイールと、をそれぞれ回転させた状態で、該ワークピースの被研削面に該砥石を接触させて該ワークピースを研削するワークピースの研削方法であって、
該砥石から該ワークピースに作用する荷重が第1の値となるように該ワークピース
の平面視における全域を研削する第1研削ステップと、
該第1研削ステップの後に、該荷重が、該第1の値よりも小さい第2の値から該第2の値よりも大きく該第1の値よりも小さい第3の値に変化するように該ワークピース
の平面視における全域を研削する第2研削ステップと、を含
み、
該第1研削ステップ及び該第2研削ステップは、共通の研削条件で行われ、
該第1の値は、該ワークピースの研削時間の経過とともに増大する該荷重が達する最大値であることを特徴とするワークピースの研削方法。
【請求項2】
矩形状の該ワークピースを研削することを特徴とする請求項1に記載のワークピースの研削方法。
【請求項3】
該第2研削ステップでは、該砥石を該ワークピースの該被研削面から離して該荷重を該第2の値にした後に、該砥石を該ワークピースの該被研削面に再び接触させて該荷重を該第3の値に変化させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のワークピースの研削方法。
【請求項4】
該第1の値は、該ワークピースと該砥石との接触にかかる面積が該ワークピースの領域毎に異なることに起因して生じる該ワークピースの厚みのばらつきが許容値を超える値に設定され、
該第2の値及び該第3の値は、該第1研削ステップで発生した該ワークピースの厚みのばらつきを減少させる値に設定されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のワークピースの研削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面視で非円形状に形成されたワークピースを研削する際に用いられるワークピースの研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機やパーソナルコンピュータに代表される電子機器では、LSI(Large Scale Integration)等のデバイスを備えたデバイスチップが必須の構成要素になっている。デバイスチップは、例えば、シリコン等の半導体材料でなるウェーハの表面を分割予定ライン(ストリート)で複数の領域に区画し、各領域にデバイスを形成した後、この分割予定ラインでウェーハを分割することにより得られる。
【0003】
上述のような方法で複数のデバイスチップを得た後には、例えば、これら複数のデバイスチップをCSP(Chip Size Package)用の基板上に配置し、ワイヤボンディング等の方法で各デバイスチップを基板の端子等に接続する。そして、複数のデバイスチップを樹脂等で封止してパッケージ基板を形成し、このパッケージ基板を各デバイスチップに対応する複数のパッケージデバイスチップへと分割する。
【0004】
このように、各デバイスチップを樹脂等で封止することにより、衝撃、水、光、熱等の外的な要因からデバイスチップを保護できるようになる。なお、デバイスチップを樹脂等で封止して得られるパッケージ基板は、平面視で非円形状(代表的には、矩形状)に形成されることがある。
【0005】
近年では、電子機器の小型化及び薄型化が進められており、この電子機器に搭載されるパッケージデバイスチップにも、更なる小型化及び薄型化が求められている。薄型のパッケージデバイスチップを製造する際には、例えば、パッケージデバイスチップへと分割される前のパッケージ基板を研削等の方法によって薄くする(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、パッケージ基板のような非円形状のワークピースと、環状に配列された複数の砥石と、を相互に回転させて接触させる方法でこのワークピースを研削する場合には、研削後のワークピースの厚みをその全体で等しくすることが難しい。非円形状のワークピースの回転に起因して、砥石とワークピースとの接触にかかる面積が変化し、砥石からワークピースに作用する圧力が一定にならないためである。なお、接触にかかる面積が大きくなると、砥石からワークピースに作用する圧力が小さくなって、研削は進み難くなる。
【0008】
これに対して、例えば、上述の特許文献1では、矩形状のワークピースと砥石との接触にかかる面積が大きくなる対角線の方向でワークピースの回転の速度を下げ、対角線から離れる方向でワークピースの回転の速度を上げる方法が提案されている。この方法では、単位時間当たりに砥石とワークピースとが接触する面積を一定に保つことで、研削後のワークピースの厚みのばらつきを小さく抑えている。しかしながら、この方法では、複雑な制御によってワークピースの回転の速度を最適化する必要があった。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、非円形状のワークピースに発生する厚みのばらつきを簡単な制御で小さく抑えられるワークピースの研削方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、非円形状のワークピースを保持した保持テーブルと、研削用の砥石が固定された研削ホイールと、をそれぞれ回転させた状態で、該ワークピースの被研削面に該砥石を接触させて該ワークピースを研削するワークピースの研削方法であって、該砥石から該ワークピースに作用する荷重が第1の値となるように該ワークピースの平面視における全域を研削する第1研削ステップと、該第1研削ステップの後に、該荷重が、該第1の値よりも小さい第2の値から該第2の値よりも大きく該第1の値よりも小さい第3の値に変化するように該ワークピースの平面視における全域を研削する第2研削ステップと、を含み、該第1研削ステップ及び該第2研削ステップは、共通の研削条件で行われ、該第1の値は、該ワークピースの研削時間の経過とともに増大する該荷重が達する最大値であるワークピースの研削方法が提供される。
【0011】
本発明の一態様では、矩形状の該ワークピースを研削することがある。
【0012】
また、本発明の一態様において、該第2研削ステップでは、該砥石を該ワークピースの該被研削面から離して該荷重を該第2の値にした後に、該砥石を該ワークピースの該被研削面に再び接触させて該荷重を該第3の値に変化させることが好ましい。
【0013】
また、本発明の一態様において、該第1の値は、該ワークピースと該砥石との接触にかかる面積が該ワークピースの領域毎に異なることに起因して生じる該ワークピースの厚みのばらつきが許容値を超える値に設定され、該第2の値及び該第3の値は、該第1研削ステップで発生した該ワークピースの厚みのばらつきを減少させる値に設定されることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様にかかるワークピースの研削方法では、砥石からワークピースに作用する荷重が第1の値となるようにワークピースを研削し、その後、この荷重が、第1の値よりも小さい第2の値から第2の値よりも大きく第1の値よりも小さい第3の値に変化するようにワークピースを研削する。つまり、所定の荷重でワークピースを研削した後に、それよりも小さな荷重でワークピースを研削する。
【0015】
砥石からワークピースに作用する荷重が大きくなると、研削後のワークピースに発生する厚みのばらつきは大きくなる。一方で、砥石からワークピースに作用する荷重が小さくなると、研削後のワークピースに発生する厚みのばらつきも小さくなる。よって、本発明の一態様にかかるワークピースの研削方法のように荷重を制御することで、非円形状のワークピースに発生する厚みのばらつきを小さく抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】
図2は、ワークピースが研削される様子を示す断面図である。
【
図3】
図3は、研削ホイールを一定の速度で下降させてワークピースを研削する際に研削ホイールからワークピースに作用する荷重と、時間と、の関係を示すグラフである。
【
図4】
図4は、研削後のワークピースの厚みのばらつきを模式的に示す平面図である。
【
図5】
図5は、本実施形態にかかるワークピースの研削方法で研削ホイールからワークピースに作用する荷重と、時間と、の関係を示すグラフである
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態にかかるワークピースの研削方法で使用される研削装置2を示す斜視図であり、
図2は、この研削装置2でワークピース11が研削される様子を示す側面図である。なお、
図2では、一部の要素を切断面によって示している。また、
図2では、説明の便宜上、一部の要素の形状等を誇張している。更に、以下の説明で用いられるX軸方向(前後方向)、Y軸方向(左右方向)、及びZ軸方向(鉛直方向)は、互いに垂直である。
【0018】
図1に示すように、研削装置2は、各構成要素が搭載される基台4を備えている。基台4の後端には、柱状の支持構造6が設けられている。基台4の上面には、X軸方向に長い開口4aが形成されている。開口4a内には、ボールネジ式のX軸移動機構8と、X軸移動機構8の一部を覆うカバー10とが配置されている。X軸移動機構8は、X軸移動テーブル8aを備えており、このX軸移動テーブル8aをX軸方向に移動させる。開口4aの前方には、研削の条件等を入力する際に使用される操作パネル12が設置されている。
【0019】
X軸移動テーブル8a上には、板状のワークピース11(
図2等)を保持するための保持テーブル(チャックテーブル)14が設けられている。ワークピース11は、例えば、シリコン等の半導体や封止用の樹脂等を用いて平面視で矩形状に形成されたパッケージ基板である(
図4参照)。本実施形態では、このワークピース11の第1面(被研削面)11aを研削する。
【0020】
ただし、ワークピース11は、少なくとも平面視で非円形状に形成されていれば良く、その材質、形状、構造、大きさ等に大きな制限はない。例えば、他の半導体、他の樹脂、セラミックス、金属等の材料を用いて形成される基板をワークピース11として用いることもできる。ワークピース11の第1面11aとは反対の第2面11b側(研削されない面側)には、LSI(Large Scale Integration)等のデバイスが設けられていても良い。
【0021】
保持テーブル14の上面の一部は、ワークピース11を保持するための保持面14aになっている。保持面14aは、円錐の側面を中央の一部に含むように構成され、保持テーブル14の内部に形成された吸引路14b(
図2)等を介して吸引源(不図示)に接続されている。また、保持面14aは、平面視でワークピース11に対応する形状(矩形状)に形成されている。
【0022】
この保持面14aにワークピース11を載せ、吸引源の負圧を作用させることで、ワークピース11を保持テーブル14によって吸引し、保持できる。なお、
図2では、保持面14aの一部を構成する円錐の側面の形状を誇張しているが、実際には、保持面14aの最も高い点と最も低い点との差(高低差)が15μm~20μm程度になる。
【0023】
保持テーブル14は、モータ等の回転駆動源(不図示)に連結されており、円錐の頂点に相当する保持面14aの頂点14cが回転の中心となるように、Z軸方向に対して平行な回転軸、又はZ軸方向に対して僅かに傾いた回転軸の周りに回転する。また、保持テーブル14は、上述したX軸移動機構8によって、X軸移動テーブル8aとともにX軸方向に移動する。
【0024】
支持構造6の前面には、Z軸移動機構16が設けられている。Z軸移動機構16は、Z軸方向に対して概ね平行な一対のZ軸ガイドレール18を備えており、このZ軸ガイドレール18には、Z軸移動プレート20がスライドできる態様で取り付けられている。Z軸移動プレート20の後面側(裏面側)には、ボールネジを構成するナット(不図示)が固定されており、このナットには、Z軸ガイドレール18に対して概ね平行なネジ軸22が回転できる態様で連結されている。
【0025】
ネジ軸22の一端部には、Z軸パルスモータ24が連結されている。Z軸パルスモータ24によってネジ軸22を回転させることにより、Z軸移動プレート20はZ軸ガイドレール18に沿ってZ軸方向に移動する。Z軸移動プレート20の前面(表面)には、前方に突出する支持具26が設けられている。
【0026】
支持具26には、ワークピース11を研削するための研削ユニット(加工ユニット)28が支持されている。研削ユニット28は、支持具26に固定されるスピンドルハウジング30を含んでいる。スピンドルハウジング30には、回転軸となるスピンドル32が回転できる状態で収容されている。
【0027】
スピンドル32の下端部は、スピンドルハウジング30の外部に露出している。このスピンドル32の下端部には、円盤状のホイールマウント34が設けられている。ホイールマウント34の下面には、ホイールマウント34と概ね同径に構成された円盤状の研削ホイール36がボルト等で固定されている。
【0028】
研削ホイール36は、ステンレスやアルミニウム等でなる円盤状(円環状)のホイール基台38(
図2)を備えている。ホイール基台38は、互いに概ね平行な上面と下面とを有し、その中央には、ホイール基台38を上面から下面まで貫通する円形の開口が形成されている。また、ホイール基台38の内部には、純水等の液体(加工液)を下方に供給するための流路が設けられている。
【0029】
ホイール基台38の下面には、樹脂や金属等の結合剤にダイヤモンドやCBN(Cubic Boron Nitride)等の砥粒を分散させてなる研削用の複数の砥石40が環状に配列されている。砥石40を構成する結合剤の種類(材質)や、砥粒の材質、大きさ等に特段の制限はないが、これらは、例えば、ワークピース11の材質や、研削に求められる平坦度等に合わせて任意に設定される。
【0030】
研削装置2を用いてワークピース11の第1面11aを研削する際には、まず、ワークピース11の第2面11bの全体を保持テーブル14の保持面14aに接触させて、この保持面14aに吸引源の負圧を作用させる。これにより、ワークピース11の第2面11bが保持テーブル14によって吸引され、ワークピース11は、第1面11aが上方に露出した状態で保持テーブル14に保持される。
【0031】
保持テーブル14でワークピース11を保持した後には、X軸移動機構8で保持テーブル14を移動させて、例えば、
図2に示すように、保持面14aの頂点14cに相当する位置を砥石40が通過できるように、保持テーブル14と研削ホイール36との相対的な位置を調整する。
【0032】
次に、保持テーブル14と研削ホイール36とを所定の方向にそれぞれ所定の回転数で回転させる。保持テーブル14の回転数は、例えば、10rpm~1000rpmであり、研削ホイール36の回転数は、例えば、1000~5000rpmである。ただし、保持テーブル14の回転数及び研削ホイール36の回転数は、これらに限定されない。
【0033】
そして、ホイール基台38の流路等を通じてワークピース11の第1面11aに液体(加工液)を供給しながら、ワークピース11の第1面11aに砥石40を接触させて、研削ホイール36を所定の速度で下降させる。これにより、
図2に示すように、砥石40によってワークピース11の第1面11a側を削り取るように加工して、ワークピース11を薄くできる。
【0034】
研削ホイール36を下降させる速度は、例えば、0.1μm/s~1.0μm/sであり、液体の供給量は、例えば、1.0L/min~10.0L/minである。ただし、研削ホイール36を下降させる速度及び液体の供給量は、これらに限定されない。
【0035】
図3は、研削ホイール36を一定の速度で下降させてワークピース11を研削する際に、研削ホイール36からワークピース11に作用する荷重wと、時間tと、の関係を示すグラフである。なお、この荷重wは、例えば、保持テーブル14の下部に設けられた荷重センサによって測定される。
【0036】
図3に示すように、ワークピース11に砥石40が接触した時間t
sから所定の時間t
1までの間は、時間の経過とともに、砥石40からワークピース11に作用する荷重wが増大する。時間t
1で荷重wが第1の値w
1になった後には、研削が終了する時間t
eまで荷重wは殆ど変動しない。なお、研削が終了する時間t
eは、例えば、ワークピース11を所望の厚さまで加工する際に必要となる研削ホイール36の下降量等に基づいて決定される。
【0037】
ところで、平面視で矩形状のワークピース11を上述の方法で研削すると、矩形状の対角線に近い領域では、対角線から離れた領域に比べて研削が進み難くなる。対角線に近い領域では、対角線から離れた領域に比べてワークピース11と研削ホイール36(砥石40)とが広い面積で接触し、単位面積当たりの荷重(すなわち、圧力)が小さくなるためである。
【0038】
よって、平面視で矩形状のワークピース11を一定の荷重で研削した場合には、このワークピース11に厚みのばらつきが発生し易くなる。同様の現象は、非円形状のワークピースを一定の荷重で研削する場合にも発生する。
図4は、研削後のワークピース11の厚みのばらつきを模式的に示す平面図である。なお、
図4では、ワークピース11内の厚い領域を密なハッチングで示し、ワークピース11内の薄い領域を疎なハッチングで示している。
【0039】
図4に示すように、研削後のワークピース11は、対角線に近い領域で厚く、対角線から離れた領域で薄い。つまり、研削後のワークピース11の厚みは、対角線に最も近い領域Aで最大となり、対角線から最も遠い領域Dで最小となる。より詳細には、ワークピース11は、領域A、領域B、領域F、領域C、領域E、領域Dの順に薄くなる。このように、荷重wが第1の値w
1となった後に殆ど変動しない上述の方法では、平面視で矩形状(非円形状)のワークピース11を必ずしも平坦に研削できない。
【0040】
そこで、本実施形態にかかるワークピースの研削方法では、ワークピース11の厚みのばらつきが小さくなるように荷重wを変化させる。具体的には、ワークピース11と砥石40との接触によって発生する荷重wが第1の値w1となる条件でワークピース11を研削し(第1研削ステップ)、その後、荷重wが第1の値w1よりも小さい第2の値w2から第2の値w2よりも大きく第1の値w1よりも小さい第3の値w3に変化する条件でワークピース11を研削する(第2研削ステップ)。
【0041】
図5は、本実施形態にかかるワークピースの研削方法において、研削ホイール36からワークピース11に作用する荷重wと、時間tと、の関係を示すグラフである。本実施形態にかかるワークピースの研削方法でも、ワークピース11を保持した保持テーブル14と、砥石40が固定された研削ホイール36と、をそれぞれ回転させた状態で、上方に露出するワークピース11の第1面(被研削面)11aに砥石40を接触させて、ワークピース11を研削する。
【0042】
保持テーブル14の回転数は、例えば、10rpm~1000rpm、代表的には、300rpm程度であり、研削ホイール36の回転数は、例えば、1000~5000rpm、代表的には、1700rpm程度である。ただし、保持テーブル14の回転数及び研削ホイール36の回転数は、これらに限定されない。
【0043】
また、研削ホイール36を下降させる速度は、例えば、0.1μm/s~1.0μm/s、代表的には、0.6μm/s程度であり、液体の供給量は、例えば、1.0L/min~10.0L/min、代表的には、4.0L/min程度である。ただし、研削ホイール36を下降させる速度及び液体の供給量は、これらに限定されない。
【0044】
図5に示すように、ワークピース11に砥石40が接触した時間t
sから所定の時間t
1までの間は、時間の経過とともに、ワークピース11と砥石40との接触によって発生する荷重wが増大する。時間t
1で荷重wが第1の値w
1になった後には、時間t
2まで荷重wが殆ど変動しない。なお、この第1の値w
1は、ワークピース11の大きさや材質、研削ホイール36の大きさ、砥石40の材質、研削ホイール36を下降させる速度等の条件によって決まる。本実施形態では、第1の値w
1を55N程度にしている。
【0045】
時間t2になると、荷重wが第1の値w1よりも小さい第2の値w2へと変化するように研削装置2を動作させる。例えば、研削ホイール36を上昇させて、砥石40をワークピース11の第1面11aから離すことで、荷重wを第1の値w1よりも小さい第2の値w2へと変化させることができる。なお、この場合には、第2の値w2がゼロ(すなわち、無荷重)になる。
【0046】
その後、時間t3でワークピース11に砥石40を再び接触させる。保持テーブル14の回転数、研削ホイール36の回転数、研削ホイール36を下降させる速度、液体の供給量等の条件は、時間t1(時間ts)から時間t2までの間に行われる研削(第1研削ステップ)の条件と同じで良い。
【0047】
そして、荷重wが第1の値w1よりも小さい第3の値w3に達した時間teにおいて、ワークピース11の研削を終了させる。すなわち、荷重wが第1の値w1まで増大する前に、ワークピース11の研削を終了させる。第3の値w3は、例えば、第1の値w1の3/4以下、好ましくは、第1の値w1の2/3以下である。なお、本実施形態では、第3の値w3を30N程度にしている。
【0048】
このように、研削の最後のタイミングで荷重wを小さくすることにより、ワークピース11の厚みのばらつきを小さく抑えることができる。本実施形態にかかるワークピースの研削方法は、荷重wが大きくなるほどワークピース11の厚みのばらつきが大きくなり、荷重wが小さくなるほどワークピース11の厚みのばらつき小さくなるという新たな知見に基づくものである。
【0049】
なお、上述した第1の値w1、第2の値w2、及び第3の値w3に特段の制限はない。例えば、第1の値w1は、許容値を超えるような厚みのばらつき(ワークピース11と砥石40との接触にかかる面積がワークピース11の領域毎に異なることに起因して生じる厚みのばらつき)がワークピース11に発生する値に設定されることがある。
【0050】
一方で、第2の値w2及び該第3の値w3は、第1の値w1での研削(第1研削ステップ)によって発生したワークピース11の厚みのばらつきを減少させることができる値に設定される。ただし、第2の値w2は、ゼロ(無荷重)でなくとも良い。すなわち、砥石40をワークピース11の第1面11aから完全に離さなくても良い。
【0051】
なお、砥石40をワークピース11の第1面11aから完全に離す場合には、砥石40がワークピース11の第1面11aと再び接触する際に砥石40が摩耗するので、いわゆる自生発刃が生じ易い。そのため、砥石40をワークピース11の第1面11aから完全に離さない場合に比べて、より良い状態の砥石40でワークピース11を研削できるようになる。
【0052】
以上のように、本実施形態にかかるワークピースの研削方法では、所定の荷重w(第1の値w1)でワークピース11を研削した後に、それよりも小さな荷重w(第2の値w2~該第3の値w3)でワークピースを研削するので、所定の荷重w(第1の値w1)でワークピース11を研削し続ける場合に比べて、非円形状のワークピースに発生する厚みのばらつきを小さく抑えられる。
【0053】
なお、本発明は、上述した実施形態の記載に制限されず種々変更して実施可能である。例えば、上述した実施形態では、平面視でワークピース11に対応する形状(矩形状)の保持面14aを含む保持テーブル14を使用しているが、平面視で円形状に形成された保持面を含む保持テーブルを使用しても良い。この場合には、例えば、保持面の全体を覆うことのできるテープ等をワークピース11に貼付すれば良い。
【0054】
また、上述した実施形態では、時間t3から時間teまでの間に行われる研削(第2研削ステップ)の条件を、時間t1(時間ts)から時間t2までの間に行われる研削(第1研削ステップ)の条件と同じにしているが、これらを異ならせても良い。例えば、第3の値w3がより小さくなるように、時間t3から時間teまでの間に行われる研削の条件を設定することができる。
【0055】
その他、上述した実施形態や変形例にかかる構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて変更して実施できる。
【符号の説明】
【0056】
2 :研削装置
4 :基台
4a :開口
6 :支持構造
8 :X軸移動機構
8a :X軸移動テーブル
10 :カバー
12 :操作パネル
14 :保持テーブル(チャックテーブル)
14a :保持面
14b :吸引路
14c :頂点
16 :Z軸移動機構
18 :Z軸ガイドレール
20 :Z軸移動プレート
22 :ネジ軸
24 :Z軸パルスモータ
26 :支持具
28 :研削ユニット
30 :スピンドルハウジング
32 :スピンドル
34 :ホイールマウント
36 :研削ホイール
38 :ホイール基台
40 :砥石
11 :ワークピース
11a :第1面(被研削面)
11b :第2面
A :領域
B :領域
C :領域
D :領域
E :領域
F :領域