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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】エッジアライメント方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240129BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
H01L21/304 601B
G01B11/00 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020047195
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021150416
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】小松 淳
(72)【発明者】
【氏名】牧野 香一
【審査官】三浦 みちる
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-249572(JP,A)
【文献】特開2007-108835(JP,A)
【文献】特開2017-098407(JP,A)
【文献】特開平07-181140(JP,A)
【文献】特開2014-052257(JP,A)
【文献】特開2016-192462(JP,A)
【文献】特開平07-302828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
G01B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤状の被加工物のエッジアライメント方法であって、
チャックテーブルで該被加工物を保持する保持ステップと、
該チャックテーブルで保持された該被加工物の外周部の複数の箇所をカメラユニットで撮像する外周部撮像ステップ、又は、該チャックテーブルで保持された該被加工物の外周部の複数の箇所に対してレーザー変位計から光を照射して該被加工物からの反射光を該レーザー変位計で受光することにより該被加工物のエッジに対応する可能性のある一点の位置をそれぞれ検出する位置検出ステップと、
該被加工物の周方向において、該被加工物の外周部の異なる複数の箇所の各々において該被加工物のエッジに対応する可能性のある一点の座標を算出する座標算出ステップと、
該座標算出ステップで算出された全ての座標に対して最小二乗法を用いることで近似円を作成する近似円作成ステップと、
該近似円作成ステップで作成された該近似円と、該全ての座標の各々とのずれ量を算出し、ずれ量が予め設定した閾値以上である座標が存在する場合には、ずれ量が最大の座標を誤検出位置と判定し、誤検出位置と判定された座標を考慮対象から除外する誤検出位置除外ステップと、
該誤検出位置除外ステップの後、除外されずに残った3個以上の座標から該被加工物のエッジの位置を推定し、推定されたエッジの位置に基づいて該被加工物の外周部における加工領域を割り出す加工領域割り出しステップと、
を備えることを特徴とするエッジアライメント方法。
【請求項2】
該誤検出位置除外ステップでずれ量が最大の座標を除外した後に、該誤検出位置除外ステップで考慮対象から除外されずに残った全ての座標に対して最小二乗法を用いることで、再度、近似円を作成する、追加の近似円作成ステップを更に備えることを特徴とする請求項1記載のエッジアライメント方法。
【請求項3】
該追加の近似円作成ステップで作成された近似円と、該誤検出位置除外ステップで考慮対象から除外されずに残った全ての座標の各々とのずれ量を算出し、ずれ量が予め設定した閾値以上である座標が存在する場合には、ずれ量が最大の座標を誤検出位置と判定し、誤検出位置と判定された座標を考慮対象から除外する追加の誤検出位置除外ステップを更に備え、
該追加の近似円作成ステップで作成された近似円と、該誤検出位置除外ステップで考慮対象から除外されずに残った全ての座標の各々とのずれ量を算出し、ずれ量が予め設定した閾値以上である座標が存在しない場合には、該加工領域割り出しステップを行うことを特徴とする請求項2記載のエッジアライメント方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円盤状の被加工物の外周部において加工が施される加工領域を割り出すエッジアライメント方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハ等の円盤状の被加工物には、表面側の外周部の角部と裏面側の外周部の角部とがそれぞれ面取りされたベベル部が形成されていることがある。ベベル部が形成されている被加工物の裏面側を研削して例えば半分以下の厚さとすると、裏面側の外周部に鋭利な領域(所謂、シャープエッジ)が形成される。
【0003】
シャープエッジには、ひび、欠け等が形成され易い。また、シャープエッジに形成されたひび等を起点として、亀裂が伸展して被加工物が破損する恐れがある。そこで、シャープエッジの形成を防ぐために、裏面側の研削の前に、表面側の外周部を予め所定の厚さだけ除去して表面側のベベル部を除去するエッジトリミング技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
エッジトリミングを行う際には、通常、切削装置が使用される。切削装置は、被加工物を吸引保持するチャックテーブルを有する。チャックテーブル上には、切削ユニットが配置されている。切削ユニットは、チャックテーブルの上面に略平行に配置された円柱状のスピンドルと、スピンドルの一端部に装着された切削ブレードとを含む。また、切削ユニットには、チャックテーブルで吸引保持された被加工物を撮像するためのカメラが設けられている。
【0005】
エッジトリミングを行う際には、まず、エッジアライメントを行う。エッジアライメントでは、被加工物の裏面側をチャックテーブルで吸引保持し、カメラを用いて被加工物の表面側の外周部の複数の箇所を撮像する。そして、各箇所においてエッジ上の一点の座標を特定し、複数点の座標から被加工物のエッジの位置を推定する。このエッジから表面の中心側の所定の範囲までの環状の領域が、切削により除去される。
【0006】
高い精度でエッジトリミングを行うためには、このエッジアライメントにおいて、被加工物のエッジの位置を高い精度で推定する必要がある。しかし、エッジの位置の推定精度は、様々な要因で低下する。例えば、ベベル部に付着した異物、チャックテーブルの保持面に付着した水滴や異物、カメラのレンズに付着した異物等がある場合に、この異物の位置がエッジ上の一点であると誤認されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2000-173961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
異物の位置がエッジ上の一点であると誤認されると、被加工物のエッジの位置が適切に推定されず、ひいては、切削を施す領域が大幅にずれてしまう。本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、異物の位置がエッジ上の一点と誤認されたとしても、精度良く被加工物のエッジの位置を推定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、円盤状の被加工物のエッジアライメント方法であって、チャックテーブルで該被加工物を保持する保持ステップと、該チャックテーブルで保持された該被加工物の外周部の複数の箇所をカメラユニットで撮像する外周部撮像ステップ、又は、該チャックテーブルで保持された該被加工物の外周部の複数の箇所に対してレーザー変位計から光を照射して該被加工物からの反射光を該レーザー変位計で受光することにより該被加工物のエッジに対応する可能性のある一点の位置をそれぞれ検出する位置検出ステップと、該被加工物の周方向において、該被加工物の外周部の異なる複数の箇所の各々において該被加工物のエッジに対応する可能性のある一点の座標を算出する座標算出ステップと、該座標算出ステップで算出された全ての座標に対して最小二乗法を用いることで近似円を作成する近似円作成ステップと、該近似円作成ステップで作成された該近似円と、該全ての座標の各々とのずれ量を算出し、ずれ量が予め設定した閾値以上である座標が存在する場合には、ずれ量が最大の座標を誤検出位置と判定し、誤検出位置と判定された座標を考慮対象から除外する誤検出位置除外ステップと、該誤検出位置除外ステップの後、除外されずに残った3個以上の座標から該被加工物のエッジの位置を推定し、推定されたエッジの位置に基づいて該被加工物の外周部における加工領域を割り出す加工領域割り出しステップと、を備えるエッジアライメント方法が提供される。
【0010】
好ましくは、エッジアライメント方法は、該誤検出位置除外ステップでずれ量が最大の座標を除外した後に、該誤検出位置除外ステップで考慮対象から除外されずに残った全ての座標に対して最小二乗法を用いることで、再度、近似円を作成する、追加の近似円作成ステップを更に備える。
【0011】
また、好ましくは、エッジアライメント方法は、該追加の近似円作成ステップで作成された近似円と、該誤検出位置除外ステップで考慮対象から除外されずに残った全ての座標の各々とのずれ量を算出し、ずれ量が予め設定した閾値以上である座標が存在する場合には、ずれ量が最大の座標を誤検出位置と判定し、誤検出位置と判定された座標を考慮対象から除外する追加の誤検出位置除外ステップを更に備え、該追加の近似円作成ステップで作成された近似円と、該誤検出位置除外ステップで考慮対象から除外されずに残った全ての座標の各々とのずれ量を算出し、ずれ量が予め設定した閾値以上である座標が存在しない場合には、該加工領域割り出しステップを行う。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様に係るエッジアライメント方法では、座標算出ステップで算出された全ての座標に対して最小二乗法を用いることで近似円を作成する(近似円作成ステップ)。更に、近似円作成ステップで作成された近似円と、全ての座標の各々とのずれ量を算出し、ずれ量が予め設定した閾値以上である座標が存在する場合には、ずれ量が最大の座標を誤検出位置と判定し、誤検出位置と判定された座標を考慮対象から除外する(誤検出位置除外ステップ)。
【0013】
そして、除外されずに残った3個以上の座標から被加工物のエッジの位置を推定し、推定されたエッジの位置に基づいて被加工物の外周部における加工領域を割り出す(加工領域割り出しステップ)。この様に、複数の座標のうち誤検出位置と判定された座標を除外することで、被加工物のエッジの位置をより精度良く推定できる。それゆえ、加工領域を精度良く割り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】切削装置の斜視図である。
図2図2(A)は被加工物等の上面図であり、図2(B)は被加工物等の一部断面側面図である。
図3図3(A)は表示画面の一例であり、図3(B)は被加工物の外周部の一箇所における画像の一例の拡大図である。
図4図4(A)は近似円等を示す図であり、図4(B)は複数の座標のうちずれ量が最大の座標を除外して形成された第2の近似円等を示す図である。
図5】切削領域を示す図である。
図6】エッジアライメント方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。図1は、切削装置2の斜視図である。図1に示すX軸方向(加工送り方向、前後方向)、Y軸方向(割り出し送り方向)、及び、Z軸方向(鉛直方向、高さ方向)は互いに直交する。
【0016】
また、図1では、構成要素の一部を機能ブロックで示す。切削装置2は、各構成要素が搭載される基台4を備える。基台4の上面には、X軸移動機構6が設けられている。X軸移動機構6は、X軸方向に概ね平行な一対のX軸ガイドレール8を有する。
【0017】
X軸ガイドレール8には、X軸移動テーブル10がスライド可能に取り付けられている。X軸移動テーブル10の下面(裏面)側には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、X軸ガイドレール8に平行なX軸ボールねじ12が回転可能な態様で連結されている。
【0018】
X軸ボールねじ12の一端部には、X軸パルスモータ14が連結されている。X軸パルスモータ14でX軸ボールねじ12を回転させることで、X軸移動テーブル10は、X軸ガイドレール8に沿ってX軸方向に移動する。
【0019】
X軸移動テーブル10の上面側(表面側)には、円柱状のθテーブル16が設けられている。θテーブル16は、モータ等の回転駆動源(不図示)を有する。θテーブル16上には、円盤状のテーブル基台18a等が設けられている。
【0020】
テーブル基台18aの周囲にはテーブルカバー18bが設けられており、このテーブルカバー18bのX軸方向の一方側及び他方側には、伸縮可能な蛇腹状の防塵防滴カバー(不図示)が配置されている。テーブルカバー18b及び防塵防滴カバーは、X軸移動機構6の上方を覆っている。
【0021】
テーブル基台18aの上面には、円盤状のチャックテーブル20が設けられている。チャックテーブル20の下部は、テーブル基台18aを介してθテーブル16に連結されており、Z軸方向に概ね平行な回転軸20a(図2(A)参照)の周りに回転可能である。
【0022】
チャックテーブル20は、ステンレス鋼等の金属で形成された円盤状の枠体を有する。枠体の上面側には凹部が形成されており、この凹部には、多孔質セラミックスで形成され、凹部の内径と略同じ外径を有する円盤状のポーラス板が固定されている。
【0023】
ポーラス板は、枠体に形成されている流路を介して真空ポンプ、エジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。吸引源を動作させると、ポーラス板の上面(保持面20b)には負圧が発生する。この負圧により、保持面20bでは被加工物11が吸引保持される。
【0024】
被加工物11は、例えば、シリコン等の半導体で形成された円盤状のウェーハであり、その表面11a側に、デバイス領域と、デバイス領域を囲む外周余剰領域とを有する。デバイス領域は、格子状に配列された分割予定ラインで複数の領域に区画されており、各領域には、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等のデバイスが形成されている。
【0025】
基台4の上面には、X軸移動機構6を跨ぐ様に配置された、門型の支持構造30が設けられている。支持構造30の前面には、切削ユニット移動機構32が設けられている。切削ユニット移動機構32は、支持構造30の前面に配置された一対のY軸ガイドレール34を備える。
【0026】
各Y軸ガイドレール34は、Y軸方向に概ね平行に配置されている。一対のY軸ガイドレール34には、2つのY軸移動プレート36がY軸方向にスライド可能に取り付けられている。各Y軸移動プレート36の裏面側には、ナット部(不図示)が設けられている。
【0027】
各ナット部には、互いに異なるY軸ボールねじ38が回転可能な態様で連結されている。Y軸ボールねじ38は、Y軸ガイドレール34に概ね平行に配置されており、各Y軸ボールねじ38の一端部には、Y軸パルスモータ40が連結されている。
【0028】
Y軸パルスモータ40でY軸ボールねじ38を回転させれば、Y軸移動プレート36は、Y軸ガイドレール34に沿ってY軸方向に移動する。各Y軸移動プレート36の前面には、切り込みユニットが設けられている。
【0029】
切り込みユニットは、Y軸移動プレート36の前面に設けられた一対のZ軸ガイドレール42を有する。各Z軸ガイドレールは、Z軸方向に概ね平行に配置されている。一対のZ軸ガイドレール42には、1つのZ軸移動プレート44がスライド可能に取り付けられている。
【0030】
Z軸移動プレート44の裏面側には、ナット部(不図示)が設けられており、このナット部には、Z軸ガイドレール42に平行なZ軸ボールねじ46が回転可能な態様で連結されている。Z軸ボールねじ46の一端部には、Z軸パルスモータ48が連結されている。
【0031】
Z軸パルスモータ48でZ軸ボールねじ46を回転させれば、Z軸移動プレート44は、Z軸ガイドレール42に沿ってZ軸方向に移動する。Y軸方向の一方側に位置するZ軸移動プレート44の下部には、切削ユニット50aが固定されている。
【0032】
また、Y軸方向の他方側に位置するZ軸移動プレート44の下部には、切削ユニット50bが固定されている。切削ユニット50a、50bの各々は、長手部がY軸方向に略平行に配置された角柱状のスピンドルハウジングを有する。
【0033】
スピンドルハウジングの内部には、長手部がY軸方向と略平行に配置された円柱状のスピンドル(不図示)が収容されている。スピンドルは、スピンドルハウジングにより回転可能な態様で支持される。
【0034】
スピンドルの一端部には、サーボモーター等の回転駆動源が連結されている。スピンドルの他端部は、スピンドルハウジングの外に突出しており、当該他端部には、環状の切り刃を有する切削ブレード52が装着されている。
【0035】
切削ユニット50aのスピンドルハウジングの前面側の側面には、カメラユニット54aが配置されている。また、切削ユニット50bのスピンドルハウジングの前面側の側面にも、同様に、カメラユニット54bが配置されている。
【0036】
カメラユニット54a、54bの各々は、保持面20bで保持された被加工物11等の被写体を可視光で撮像する。カメラユニット54a、54bの各々は、LED等の光源と、対物レンズ(不図示)と、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の撮像素子56とを含む。
【0037】
例えば、カメラユニット54a、54bは、エッジアライメントを行う際に、被加工物11の周方向において、表面11a側の外周部の複数の箇所を撮像する。カメラユニット54a、54bで撮像された被加工物11の画像は、ディスプレイ58に表示される。
【0038】
ディスプレイ58は、切削装置2の前面側に配置されている。ディスプレイ58は、例えば、オペレータからの指示を切削装置2へ入力するための入力装置と、画像を表示するための表示装置とを兼ねるタッチパネルである。
【0039】
切削ユニット50a、50bの各々の下方には、切削ブレード52の下端の位置(高さ)を検出するためのブレード位置検出ユニット60が設けられている。ブレード位置検出ユニット60は、金属板等で形成された硬質の導電部材(不図示)等を有する。
【0040】
導電部材は、例えば、直方体形状を有する。高さ方向における導電部材の上面の位置は、予め定められている。回転する切削ブレード52の下端が導電部材の上面に接触すると、切削ブレード52、金属板等で閉回路が形成されるので、切削ブレード52の下端の位置が特定される。
【0041】
切削装置2には、X軸移動機構6、θテーブル16、切削ユニット移動機構32、切削ユニット50a、50b、カメラユニット54a、54b、ブレード位置検出ユニット60等の動作を制御する制御部62が設けられている。
【0042】
制御部62は、例えば、CPU(Central Processing Unit)に代表されるプロセッサ等の処理装置と、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等の主記憶装置と、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等の補助記憶装置と、を含むコンピュータによって構成されている。
【0043】
補助記憶装置には、所定のプログラムを含むソフトウェアが記憶されている。このソフトウェアに従い処理装置等を動作させることによって、制御部62の機能が実現される。制御部62は、カメラユニット54a等で得られた被加工物11の外周部の各箇所の画像において、被加工物11のエッジ11c(図2(B)参照)に対応する一点の座標を算出する座標算出部62aを含む。
【0044】
座標算出部62aは、プログラムで構成されており、例えば、表示領域が略正方形であり多階調(画素値が0から255までの256段階)で構成された画像(図3(A)及び図3(B)参照)を、所定の画素値(例えば、125)を閾値として二値化処理する。
【0045】
座標算出部62aは、更に、二値化処理により作成された画像中の境界線と、略正方形の画像の所定の対角線との交点を、エッジ11cに対応する点(一点)64(図4(A)等参照)と見なし、この点64の座標を算出する。なお、点64の座標は、回転軸20aを原点として算出される。
【0046】
制御部62は、各点64の座標に対して最小二乗法を用いて近似円21(図4(A)参照)を作成する近似円作成部62bを更に含む。近似円作成部62bは、プログラムで構成されている。
【0047】
最小二乗法を用いて近似円21を作成するアルゴリズムについて簡単に説明する。n個の点64の各座標を(Xi,Yi)とし、最小二乗法で算出される近似円21の中心を(a,b)とし、半径をrとする。但し、nは2以上の自然数であり、iは1以上n以下の自然数である。
【0048】
そして、Σ{(Xi-a)2+(Yi-b)2-r22=0を、Σ{Xi 2+Yi 2+AXi+BYi+C}2=0と変形した上で、これに対してA、B及びCについてそれぞれ偏微分を施す。なお、Σはiについての和を意味する。
【0049】
これにより、A、B及びCについての3個の方程式が得られ、3個の方程式を解くことでA、B及びCの解が各々得られる。上述の式変形において、A=-2a、B=-2b、C=a2+b2-r2であるので、A、B及びCの解から、近似円21を構成する中心座標(a,b)及び半径rがそれぞれ得られる。
【0050】
近似円作成部62bは、近似円21の直径よりも予め設定した閾値だけ直径が小さい内側閾値円23と、近似円21の直径よりも所定の閾値だけ直径が大きい外側閾値円25とを更に作成する(図4(A)等参照)。
【0051】
内側閾値円23及び外側閾値円25は、近似円21と同心円状に配置される円である。本実施形態において、閾値は50μmに設定されるが、閾値は50μmに限定されず、40μm、30μm等に設定されてもよい。
【0052】
制御部62は、プログラムで構成されている判定部62cを更に含む。判定部62cは、作成された近似円21と、全ての点64の座標の各々とのずれ量27(図4(A)参照)を算出する。
【0053】
ずれ量27は、近似円21の径方向における近似円21から点64までの距離で規定される。次に、判定部62cは、ずれ量27が上述の予め設定した閾値以上である点64の座標が存在する場合に、ずれ量27が最大である点64の座標を誤検出位置と判定する。
【0054】
また、判定部62cは、誤検出位置と判定した点64の座標を、近似円作成部62bが次に近似円21を作成する際の考慮対象から除外する。例えば、判定部62cは、除外される点64を近似円作成部62bに通知することで、誤検出位置を考慮対象から除外する。
【0055】
なお、判定部62cは、除外されずに残った全ての点64を近似円作成部62bに通知してもよい。近似円作成部62bは、判定部62cからの通知に基づいて、除外されずに残った3個以上の点64の座標に基づいて、再度、近似円21を作成する(図4(B)参照)。
【0056】
制御部62は、切削領域を割り出すための切削領域割出部62dを更に含む。切削領域割出部62dは、プログラムで構成されており、最新の近似円21を被加工物11の外周部のエッジ11cの位置であると推定する。
【0057】
そして、切削領域割出部62dは、最新の近似円21から、最新の近似円21の中心側の所定位置までの環状領域を切削領域(加工領域)とする。この様にして切削が施される切削領域が割り出される。この切削領域は、エッジ11cから表面11aの所定位置11dまでの環状領域11e(図2(B)参照)に略対応する。
【0058】
なお、全ての点64の座標において当初から誤検出位置が存在しない場合には、切削領域割出部62dは、当初の全ての点64の座標に基づいて作成された近似円21が、被加工物11のエッジ11cであると推定し、切削領域を割り出す。
【0059】
次に、図2(A)及び図2(B)から図6を参照して、被加工物11のエッジアライメント方法について説明する。なお、図6は、本実施形態に係るエッジアライメント方法のフロー図である。
【0060】
まず、被加工物11の裏面11b側をチャックテーブル20の保持面20bで吸引保持する(保持ステップS10)。このとき、裏面11bの中心は、保持面20bの中心と略一致する様に配置される。
【0061】
保持ステップS10の後、例えば、カメラユニット54aを用いて、静止状態の表面11a側の外周部の一箇所を上方から撮像する。図2(A)は、外周部撮像ステップS20を示す被加工物11等の上面図である。
【0062】
そして、チャックテーブル20を回転軸20aの周りに所定角度だけ回転させた後、チャックテーブル20を静止させて、再び、カメラユニット54aで表面11a側の外周部の他の一箇所を上方から撮像する。
【0063】
この様に、所定角度の回転と、表面11a側の外周部の撮像と、を複数回繰り返すことで、被加工物11の周方向において異なる複数の箇所を撮像する(外周部撮像ステップS20)。
【0064】
本実施形態では、カメラユニット54aを用いて、30度ずつチャックテーブル20を回転させることで、被加工物11の外周部における異なる12箇所を撮像する。なお、回転角度は、一定の角度に限定されず、40度、10度、25度、40度、10度、25度…の様に所定のパターンで変化させてもよく、ランダムに変化させてもよい。
【0065】
ところで、カメラユニット54aに代えてカメラユニット54bを用いてもよく、カメラユニット54a及び54bの両方を用いてもよい。カメラユニット54a及び54bの両方を用いれば外周部撮像ステップS20に要する時間を、片方を用いる場合に比べて短縮できる。
【0066】
図2(B)は、被加工物11の外周部における、被加工物11等の一部断面側面図である。外周部をカメラユニット54a等で撮像すると、光の反射率の違い等に起因して、エッジ11cを境界に画像の明暗が反転する。
【0067】
例えば、図3(A)、図3(B)に示す様に、表面11aの径方向において、エッジ11cよりも外側に対応する領域は一様な明るさとなる。また、ベベル部では、表面11aの中心に近いほど暗くなる。更に、ベベル部の内周端部よりも表面11aの中心側では、略一様な暗さとなる。
【0068】
図3(A)は、ディスプレイ58に表示される表示画面の一例である。表示画面は、被加工物11の外周部の画像を含む。図3(B)は、被加工物11の外周部の一箇所における画像の一例の拡大図である。なお、画像の明暗は上述の例に限定されず、エッジ11cよりも外側を暗くし、エッジ11cよりも内側を明るくしてもよい。
【0069】
座標算出部62aは、上述の様に、所定の画素値を閾値として画像を二値化処理し、二値化処理で作成された境界線と、画像の所定の対角線(図3(B)の破線)との交点を点64とする。図3(B)では、点64を記号“+”で示す。
【0070】
その後、座標算出部62aは、外周部撮像ステップS20で撮像された各箇所において、被加工物11の点64の座標を算出する(座標算出ステップS30)。点64は、被加工物11のエッジ11cに対応する可能性のある点である。
【0071】
本実施形態の座標算出部62aは、外周部撮像ステップS20で1つの画像が得られる度に、その画像での点64の座標を算出する。但し、座標算出部62aは、外周部撮像ステップS20で取得される複数又は全ての画像が得られた後に、各画像における点64の座標をまとめて算出してもよい。
【0072】
全ての点64の座標が算出された後、近似円作成部62bが、座標算出ステップS30で算出された全ての点64の座標に対して最小二乗法を用いることで近似円21を作成する(近似円作成ステップS40)。
【0073】
本実施形態の近似円作成ステップS40では、近似円21の中心座標(a,b)及び半径rが算出されれば、近似円21が作成されたと見なす。なお、近似円作成ステップS40では、作成された近似円21が実際にディスプレイ58に表示されてもよい。
【0074】
以降では、説明の便宜上、近似円作成ステップS40で近似円21が表示される場合を説明する。図4(A)は、近似円作成ステップS40で作成された近似円21等を示す図である。
【0075】
図4(A)では、S10からS30までで得られた各点64を×で示し、近似円21を実線で示す。また、近似円21に対して同心円状に各々配置された内側閾値円23及び外側閾値円25を破線で示す。
【0076】
点64は、様々な要因で、内側閾値円23と外側閾値円25との間の範囲(許容範囲66)から外れることがある。例えば、ベベル部に付着した異物、保持面20bに付着した水滴や異物、カメラユニット54aのレンズに付着した異物、撮像時の不適切な光量、エッジ11cの形状の異常等に起因して、点64は許容範囲66から外れることがある。
【0077】
本実施形態では、許容範囲66外に位置する点64を誤検出位置と見なし、誤検出位置を次に行われる近似円作成ステップS40の考慮対象から除外する。このために、判定部62cは、まず、近似円21と全ての点64の座標の各々とのずれ量27を算出する。
【0078】
そして、判定部62cは、ずれ量27が許容範囲66外に位置する点64が存在するか(即ち、ずれ量27が予め設定した閾値以上である)かどうかを判定する(ずれ量比較ステップS50)。
【0079】
S50でYESの場合、判定部62cは、誤検出位置と判定した点64を、近似円作成部62bが次に近似円21を作成する際の考慮対象から除外する(誤検出位置除外ステップS60)。これにより、誤検出位置を除外しない場合に比べて、被加工物11のエッジ11cの位置をより精度良く推定できる。
【0080】
なお、全ての点64が許容範囲66内に位置する場合(S50でNO)、切削領域割出部62dは、近似円21を被加工物11のエッジ11cの位置であると推定する。そして、切削領域割出部62dは、推定されたエッジ11cの位置に基づいて、切削領域31を割り出す(切削領域割り出しステップ(加工領域割り出しステップ)S70)。
【0081】
具体的には、切削領域割出部62dは、近似円21(即ち、エッジ11cの推定位置)から、近似円21の中心側の所定位置29までの環状領域を切削領域31とする。図5は、切削領域31を示す図である。S70の後、切削ユニット50a等を用いて、この切削領域31が予め定められた深さだけ切削されて除去される。
【0082】
ところで、上述の様に、S50でYESの場合は、誤検出位置除外ステップS60の後、再び、S40に戻る。そして、近似円作成部62bは、考慮対象から除外されずに残った全ての点64の座標に対して最小二乗法を用いることで、再度、近似円を作成する(第2(追加)の近似円作成ステップS40)。
【0083】
図4(B)は、複数の点64のうち、ずれ量27が最大である座標(図4(B)において10時の位置にある点64)を除外して形成された第2の近似円21a等を示す図である。なお、第2の近似円21aの中心及び半径は、通常、以前の近似円21の中心及び半径とは異なる。
【0084】
第2の近似円作成ステップS40の後、S50において、判定部62cが、第2の近似円21aと、除外されずに残った全ての点64の座標の各々とのずれ量27aを算出する。判定部62cは、ずれ量27aが予め設定した閾値以上である点64の座標が存在する場合に(即ち、S50でYES)、ずれ量27aが最大の点64の座標を該誤検出位置と判定する。
【0085】
そして、判定部62cは、誤検出位置と判定された点64の座標を考慮対象から除外する(第2(追加)の誤検出位置除外ステップS60)。この誤検出位置除外ステップS60と、近似円作成ステップS40とは、誤検出位置が無くなるまで(即ち、S50でNOとなるまで)繰り返される。
【0086】
ずれ量27aが予め設定した閾値以上である点64の座標が存在しなくなった場合に(即ち、S50でNO)、切削領域割出部62dは、除外されずに残った3個以上の点64の座標からエッジ11cの位置を推定し、切削領域31を割り出す(切削領域割り出しステップS70)。
【0087】
本実施形態では、ずれ量27、27a等が比較的大きな点64の座標を誤検出位置として近似円21の考慮対象外とすることで、より精度良く被加工物11のエッジ11cを推定できる。それゆえ、切削領域31を精度良く割り出すことができる。
【0088】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。例えば、カメラユニット54a、54bに代えて、レーザー変位計(不図示)が用いられてもよい。
【0089】
レーザー変位計は、レーザーダイオード等の光源(不図示)を有する。光源から出射されたレーザービームは、投光レンズ(不図示)により、レーザービームの進行方向に対して直交する所定の方向に拡張する様に整形され、エッジ11cを横切る様に表面11a側にライン状に照射される。
【0090】
被写体で反射された光は、受光レンズ(不図示)を経て、10μm程度の所定の間隔で直線上に配列された複数の光電変換素子を有するリニアセンサ(不図示)へ導かれる。次に、このレーザー変位計を使用して、エッジアライメントを行う方法について説明する。
【0091】
まず、保持ステップS10で、裏面11b側を保持する。S10の後、外周部撮像ステップS20に代えて、レーザー変位計を用いて位置検出ステップS25を行う。S25では、静止状態の被加工物11の表面11a側に対して、エッジ11cを横切る様にライン状に光を照射する。
【0092】
そして、反射光をリニアセンサで受光することにより、エッジ11cに対応する可能性のある点64の位置を検出する。その後、上述のS20と同様にチャックテーブル20を回転させて、被加工物11の周方向において被加工物11の外周部の異なる複数の箇所の各々で、エッジ11cに対応する可能性のある点64の位置を検出する。
【0093】
位置検出ステップS25の後、座標算出部62aが、回転軸20aを原点として、各箇所の点64の座標を算出する(座標算出ステップS30)。S30以降の処理は、上述のエッジアライメント方法と同じである。
【符号の説明】
【0094】
2:切削装置
4:基台
6:X軸移動機構
8:X軸ガイドレール
10:X軸移動テーブル
11:被加工物
11a:表面、11b:裏面、11c:エッジ、11d:所定位置、11e:環状領域
12:X軸ボールねじ
14:X軸パルスモータ
16:θテーブル
18a:テーブル基台、18b:テーブルカバー
20:チャックテーブル、20a:回転軸、20b:保持面
21,21a:近似円
23:内側閾値円、25:外側閾値円
27,27a:ずれ量、
29:所定位置
30:支持構造
31:切削領域
32:切削ユニット移動機構
34:Y軸ガイドレール
36:Y軸移動プレート
38:Y軸ボールねじ
40:Y軸パルスモータ
42:Z軸ガイドレール
44:Z軸移動プレート
46:Z軸ボールねじ
48:Z軸パルスモータ
50a,50b:切削ユニット
52:切削ブレード
54a,54b:カメラユニット
56:撮像素子
58:ディスプレイ
60:ブレード位置検出ユニット
62:制御部
62a:座標算出部、62b:近似円作成部、62c:判定部、62d:切削領域割出部
64:点
66:許容範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6