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特許7427406イースト含有冷凍生地用小麦粉組成物及びイースト含有冷凍生地
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】イースト含有冷凍生地用小麦粉組成物及びイースト含有冷凍生地
(51)【国際特許分類】
   A21D 10/00 20060101AFI20240129BHJP
   A21D 13/00 20170101ALI20240129BHJP
   A21D 13/60 20170101ALI20240129BHJP
   A21D 2/38 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
A21D10/00
A21D13/00
A21D13/60
A21D2/38
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019182702
(22)【出願日】2019-10-03
(65)【公開番号】P2021058098
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】市川 昂典
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-041604(JP,A)
【文献】特開2018-027057(JP,A)
【文献】特開2013-188206(JP,A)
【文献】特開2002-330693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉を30質量%以上含む、イースト含有冷凍生地用小麦粉組成物
【請求項2】
BSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉を30質量%以上含む、イースト含有冷凍生地用小麦粉組成物であって、
前記イースト含有冷凍生地が、(i)予備発酵させて得た休眠状のイースト液、(ii)ゼラチン、及び(iii)α化澱粉、を含まない、上記イースト含有冷凍生地用小麦粉組成物。
【請求項3】
前記小麦粉が、GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1の酵素活性を欠損しておらず、SSIIa-B1及びSSIIa-D1の酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉である、請求項1または2記載のイースト含有冷凍生地用小麦粉組成物。
【請求項4】
GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉を、穀粉合計質量に対して30質量%以上含む、イースト含有冷凍生地用プレミックス粉。
【請求項5】
GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉を、穀粉合計質量に対して30質量%以上含む、イースト含有冷凍生地用プレミックス粉であって、
前記イースト含有冷凍生地が、(i)予備発酵させて得た休眠状のイースト液、(ii)ゼラチン、及び(iii)α化澱粉、を含まない、上記イースト含有冷凍生地用プレミックス粉
【請求項6】
前記小麦粉が、GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1の酵素活性を欠損しておらず、SSIIa-B1及びSSIIa-D1の酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉である、請求項4または5記載のイースト含有冷凍生地用プレミックス粉。
【請求項7】
イーストドーナツ製造用である、請求項1~3のいずれか一項記載のイースト含有冷凍生地用小麦粉組成物、又は、請求項4~6のいずれか一項記載のイースト含有冷凍生地用プレミックス粉。
【請求項8】
GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉を、穀粉合計質量に対して30質量%以上含む、イースト含有冷凍生地。
【請求項9】
GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉を、穀粉合計質量に対して30質量%以上含み、(i)予備発酵させて得た休眠状のイースト液、(ii)ゼラチン、及び(iii)α化澱粉、を含まない、イースト含有冷凍生地。
【請求項10】
前記小麦粉が、GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1の酵素活性を欠損しておらず、SSIIa-B1及びSSIIa-D1の酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉である、請求項8または9記載のイースト含有冷凍生地。
【請求項11】
イーストドーナツ製造用である、請求項8~10記載のイースト含有冷凍生地。
【請求項12】
生地中の穀粉合計質量を100質量部としたときに、加水量が35~55質量部である、請求項8~11のいずれか一項記載のイースト含有冷凍生地。
【請求項13】
生地中の穀粉合計質量を100質量部としたときに、加水量が42~51質量部である、請求項12記載のイースト含有冷凍生地。
【請求項14】
請求項8~13のいずれか一項記載のイースト含有冷凍生地を加熱調理してなるベーカリー製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イーストドーナツ等の、イースト含有冷凍生地から製造されるベーカリー製品の製造に用いる小麦粉組成物、プレミックス粉及び冷凍生地に関する。
【背景技術】
【0002】
ドーナツには一般的に、膨張剤を使用するケーキドーナツと、パン酵母の発酵力を用いるイーストドーナツがある。一般的にイーストドーナツは、小麦粉、小麦粉以外の粉末原料、液体原料、イースト及び油脂を混捏して得られる生地を約1時間発酵させ、大分割し、平均的にガス抜きをして15分ほど休ませ、得られた生地を成形し、20分~50分程度発酵させた後、10分~20分間のラックタイムを取ってからフライして製造される。ここで、混捏して生地を得る際に、小麦粉が水と接触することにより小麦粉中のグルテニンとグリアジンからグルテンが形成され、混捏の衝撃によりグルテンが絡み合ってグルテンネットワークが構築され、このグルテンネットワークがイーストドーナツの多孔質構造の骨格となる。
近年では、店舗オペレーションの簡便化の観点から、イーストドーナツ生地の冷凍生地化が進んでいる。工場で生産したドーナツ生地を冷凍して配送し、店舗で解凍した後あるいは解凍することなくフライすることで揚げたてのドーナツを販売するものであり、店舗での生地調製の手間が省けるため店舗オペレーションの簡略化及び効率化を図ることができる。イーストドーナツ生地を冷凍する場合、生地中で氷結晶が大きくなるために、グルテンネットワークが損傷を受け、生地に細孔が生じてガスの保持力が低下し、その結果としてフライ後のイーストドーナツの食感やボリュームが損なわれるという冷凍障害が問題になる。
イーストドーナツ生地の冷凍障害を抑制するために、一般的に加水量を減らす、いわゆる低加水にすることが行われており、その他にも油脂や脱脂粉乳、卵などを多く添加したリッチな生地配合にすること、乳化剤を添加することなどが行われている。しかしながら、加水量を減らす場合、フライしたイーストドーナツのボリュームが小さくなり、内層が固く、くちゃつきのある食感になりやすい。また、加水量を減らすと生地がまとまりにくくなり作業性が大きく低下するという問題もある。一方、リッチな配合にする場合、カロリーが高くなる、アイシングやトッピング、フィリング等の味を邪魔するなどの問題がある。乳化剤を添加する場合、乳化剤独特の臭いがイーストドーナツの風味を損ね、くちゃつきのある食感になりやすいという問題がある。
このような冷凍生地の問題はイーストドーナツに限るものではなく、パン類等のイーストの発酵力を利用してドウ生地を焼成やフライ等の加熱手段により膨張させて多孔質構造を形成させるベーカリー製品の冷凍生地における共通の問題であり、その解決のために種々検討されている。特許文献1では、冷凍耐性の高い冷凍生地によるパン類を製造するために、少なくともヘミセルラーゼ、グルコースオキシダーゼ、カタラーゼ及びアスコルビン酸及び/又はシスチンを含有するパン品質改良剤、及びその品質改良剤を用いたパン類の製造方法が開示されている。特許文献2では、冷凍耐性が付与された冷凍パン生地、並びに、焼成後も外観や内相の良好なパン類、特に、ソフトでしっとりした食感を有するパン類を製造するために使用する、HLB9以上のポリグリセリン脂肪酸エステルを必須成分として含有し、前記ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンの平均重合度が3以上であり、構成脂肪酸にベヘン酸を有していることを特徴とする冷凍パン生地改良剤が開示されている。これらは何れも冷凍耐性の高い生地を得るために有効な手段ではあるが、特別な資材を必要としており、ふんわりと柔らかい食感のベーカリー製品とするには不十分であった。
一方で、イーストドーナツ等のイーストの発酵力を利用して製造されるベーカリー製品の食感をふんわりと柔らかくする場合、生地における加水量や糖添加量を増やすことが通常行われている。しかしながら、前述のとおり、加水量の増加は冷凍障害の原因になり、糖添加量が多くなると凝固点降下が生じて冷凍効率が低下するため、冷凍生地にはこれらの手法は適用できない。また、加水量が多くなると生地が柔らかくなりすぎてベタつき、作業性が悪くなる場合がある。特にドーナツではドーナツカッターを使用して生地成形する際、生地が柔らかすぎるとカッターでのカット中に生地が変形してリング状等の所望の形状にならなくなるという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-211814号公報
【文献】特開2010-178723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ふんわりと柔らかい食感を有するベーカリー製品を得ることができるイースト含有冷凍生地用小麦粉組成物、イースト含有冷凍生地用プレミックス粉及び前記小麦粉組成物若しくはプレミックス粉を含むイースト含有冷凍生地を提供することを目的とする。
本発明はまた、従来の水分量と比較して、より低加水量であっても、ふんわりと柔らかい食感を有するベーカリー製品及び作業性の良い生地を得ることができるイースト含有冷凍生地用小麦粉組成物、イースト含有冷凍生地用プレミックス粉及びイースト含有冷凍生地を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、イースト含有冷凍生地用小麦粉組成物合計質量に対して30質量%以上のGA-SX小麦粉(GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉)を含有する、イースト含有冷凍生地用小麦粉組成物、穀粉合計質量に対して30質量%以上のGA-SX小麦粉を含有する、イースト含有冷凍生地用プレミックス粉、及び前記小麦粉組成物又は前記プレミックス粉を使用して得られるイースト含有冷凍生地を用いることにより、上記課題が解決することを見いだし、本発明を完成した。
本発明によれば、低加水量による生地の冷凍障害を回避しつつ、生地の冷凍を行わないスクラッチ製法で製造した製品の食感に近い食感を有するベーカリー製品を得ることができる。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の態様を包含する。
[1] GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉を30質量%以上含む、イースト含有冷凍生地用小麦粉組成物。
[2] 前記小麦粉が、GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1の酵素活性を欠損しておらず、SSIIa-B1及びSSIIa-D1の酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉である、[1]記載のイースト含有冷凍生地用小麦粉組成物。
[3] GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉を穀粉合計質量に対して30質量%以上含む、イースト含有冷凍生地用プレミックス粉。
[4]前記小麦粉が、GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1の酵素活性を欠損しておらず、SSIIa-B1及びSSIIa-D1の酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉である、[3]記載のイースト含有冷凍生地用プレミックス粉
[5] [1]若しくは[2]記載の小麦粉組成物又は[3]若しくは[4]記載のプレミックス粉を含む、イースト含有冷凍生地。
[6] 生地中の穀粉合計質量を100質量部としたときに、加水量が35~55質量部である、[5]記載のイースト含有冷凍生地。
[7] [5]又は[6]記載のイースト含有冷凍生地を加熱調理してなるベーカリー製品。
【発明の効果】
【0007】
本発明のイースト含有冷凍生地用小麦粉組成物を使用すれば、ふんわりと柔らかいベーカリー製品を製造することができる。また、冷凍障害を予防するため、従来のイースト含有冷凍生地の水分量と比較して低加水量であっても、作業性の良い生地を得ることができ、かつふんわりと柔らかい食感を有するベーカリー製品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<イースト含有冷凍生地用小麦粉組成物>
本発明において「イースト含有冷凍生地」は、本発明のイースト含有冷凍生地用小麦粉組成物又は後述するイースト含有冷凍生地用プレミックス粉と、少なくともイースト(パン酵母)とを含む、ベーカリー製品を製造するための生地であって、最終の加熱調理がまだなされていない生地を冷凍したものである。生地の他の成分及び製造方法については後述する。
本発明の「イースト含有冷凍生地用小麦粉組成物」は前記イースト含有冷凍生地を製造するために使用される小麦粉組成物である。
【0009】
本発明のイースト含有冷凍生地用小麦粉組成物は、GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1、SSIIa-B1及びSSIIa-D1のうちのいずれか2つの酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉(GA-SX小麦粉)を含んでいる。
普通系コムギは、異質6倍体であり、その染色体には同祖染色体であるA、B、Dの3つのゲノムがそれぞれ1~7番まで存在する(1A~7A、1B~7B、1D~7D)。
「GBSSI」とは、アミロースの合成に関与する顆粒結合性澱粉合成酵素であり、GBSSI-A1、GBSSI-B1、GBSSI-D1が、それぞれ7A、4A、7D染色体上に座乗する遺伝子によってコードされている。
「SSIIa」とは、アミロペクチンの分岐鎖合成に関与する澱粉合成酵素であり、SSIIa-A1、SSIIa-B1、SSIIa-D1が、それぞれ7A、7B、7D染色体上に座乗する遺伝子によってコードされている。
【0010】
「酵素活性を欠損する」とは、コムギ植物体内で正常な酵素活性を有するタンパク質が機能していないこと、好ましくは正常な酵素活性を有するタンパク質が発現していないことをいう。具体的には、遺伝子配列の変異(一つ又は複数の塩基の置換、欠失、挿入、逆位、転座などの変異をいい、遺伝子領域全体の欠失も含む)、mRNA転写の欠損、タンパク質翻訳の欠損、コムギ植物体内での酵素活性の阻害などの態様が挙げられ、野生型の酵素活性の10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは1%未満にまで酵素活性が低下ないし欠失していれば、いずれの態様であってもよい。
【0011】
GA-SX小麦粉としては、酵素活性を欠損した2種類のSSIIaの組み合わせにより、以下の小麦粉が挙げられる。
GA-SA小麦粉:GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-A1の酵素活性を欠損しておらず、SSIIa-B1及びSSIIa-D1の酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉;
GA-SB小麦粉:GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-B1の酵素活性を欠損しておらず、SSIIa-A1及びSSIIa-D1の酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉;
GA-SD小麦粉:GBSSI-A1の酵素活性を欠損しておらず、GBSSI-B1及びGBSSI-D1の酵素活性を欠損し、かつ、SSIIa-D1の酵素活性を欠損しておらず、SSIIa-A1及びSSIIa-B1の酵素活性を欠損したコムギの収穫物を製粉して得られた小麦粉。
これらのうち、GA-SA小麦粉が好ましい。
GA-SX小麦粉は、公知の方法、例えば、特開2013-188206号記載の方法に従って、製造することができる。
【0012】
本発明のイースト含有冷凍生地用小麦粉組成物は、GA-SX小麦粉に加え、さらにGA-SX小麦粉以外の他の小麦粉を含んでいてもよい。他の小麦粉としてはGA-SX小麦以外の小麦から製粉した小麦粉であれば特に限定はない。例えば、GBSSI(GBSSI-A1、GBSSI-B1及びGBSSI-D1)及びSSIIa(SSIIa-A1,SSIIa-B1及びSSIIa-D1)の6種の酵素活性の欠損の組み合わせ(ただし、GA-SXを除く)で酵素活性を欠損した小麦並びにGBSSI及びSSIIaの何れの酵素活性も欠損していない小麦から製粉した小麦粉が挙げられる。あるいは一般に使用される、強力粉、中力粉、薄力粉、及びそれらの混合物であってよい。
【0013】
GA-SX小麦粉の含有量は、イースト含有冷凍生地用小麦粉組成物の合計質量に対して、30質量%以上の範囲から選択され、40質量%以上が好ましく、70質量%以上がよりさらに好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。30質量%以上において、GA-SX小麦粉による効果を得ることができ、ふんわりと柔らかい食感を得ることができる。
【0014】
<イースト含有冷凍生地用プレミックス粉>
本発明において、イースト含有冷凍生地の製造には、上記イースト含有冷凍生地用小麦粉組成物若しくはGA-SX小麦粉を含むイースト含有冷凍生地用プレミックス粉を用いてもよい。一般にプレミックス粉は、その使用用途に応じて、小麦粉に、小麦粉以外の穀粉、化学膨張剤、調味料、香料、色素等の粉末原料、任意に油脂類などを混合したものをいう。本発明のイースト含有冷凍生地用プレミックス粉はベーカリー製品の製造、さらに好ましくはイ-ストドーナツあるいはパン類の製造に用いられるものであるから、小麦粉以外の材料はかかる用途に応じたものを用いることができる。本発明のイースト含有冷凍生地用プレミックス粉は、GA-SX小麦粉または上述の小麦粉組成物に加えて、例えば、ライ麦粉、コーンフラワー、大麦粉、米粉などの穀粉類;タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦澱粉等の澱粉類;澱粉をα化、エーテル化、エステル化、アセチル化、架橋処理等を行った加工澱粉類;ブドウ糖、果糖、乳糖、砂糖、イソマルトースなどの糖類;卵黄、卵白、全卵を粉末化したものやその他の卵に由来する成分である卵成分;粉乳、脱脂粉乳、大豆粉乳等の乳成分;ショートニング、ラード、マーガリン、バター、液状油等の油脂類;乳化剤;食塩等の無機塩類;保存料;香料;香辛料;ビタミン;カルシウム等の強化剤等の通常パン製造に用いる副原料を使用することができる。
本発明のイースト含有冷凍生地用プレミックス粉が小麦粉以外の穀粉を含む場合、イースト含有冷凍生地用プレミックス粉に含まれる穀粉全体の質量に対するGA-SX小麦粉の質量割合は好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらにより好ましくは90質量%以上である。
本発明のイースト含有冷凍生地用プレミックス粉が小麦粉以外の穀粉を含む場合、小麦粉以外の穀粉の合計量は、イースト含有冷凍生地用プレミックス粉に含まれる穀粉全体(小麦粉を含む)の質量に対し、50質量%以下とすることが好ましく、25質量%以下とすることがより好ましく、10質量%以下とすることがさらに好ましい。
【0015】
<イースト含有冷凍生地>
本発明において「イースト含有冷凍生地」は、本発明のイースト含有冷凍生地用小麦粉組成物又はイースト含有冷凍生地用プレミックス粉と、少なくともイースト(酵母)を含むベーカリー製品を製造するための生地であり、最終の加熱調理をする前に冷凍されたものである。
本発明のイースト含有冷凍生地中のイーストの含有量は特に限定されるものではないが、例えば、生地中の穀粉合計質量を100質量部としたときに、3~15質量部程度である。
【0016】
プレミックス粉を使用しない場合、本発明のイースト含有冷凍生地には、本発明の小麦粉組成物に加えて、通常イーストを用いて製造されるベーカリー製品の製造に使用される原料であれば何れも配合することができる。
例えば、ライ麦粉、コーンフラワー、大麦粉、米粉などの穀粉類;タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦澱粉等の澱粉類;澱粉をα化、エーテル化、エステル化、アセチル化、架橋処理等を行った加工澱粉類;ブドウ糖、果糖、乳糖、砂糖、イソマルトースなどの糖類;卵黄、卵白、全卵及びそれらを粉末化したものやその他の卵に由来する成分である卵成分;粉乳、脱脂粉乳、大豆粉乳等の乳成分;ショートニング、ラード、マーガリン、バター、液状油等の油脂類;乳化剤;食塩等の無機塩類;保存料;香料;香辛料;ビタミン;カルシウム等の強化剤等の通常パン製造に用いる副原料を使用することができる。
【0017】
生地調製における加水量は、生地中の穀粉合計質量を100質量部としたときに、35~55質量部であることが好ましく、38~53質量部がより好ましく、40~51質量部であることがさらに好ましく、42~49質量部であることがよりさらに好ましい。35質量部以上になると、外層の食感に加えて内層の食感も良好になり、ボリュームがより高くなる。55質量部以下では、作業性を維持でき、また内層の食感が良好でボリュームも高く維持できるため好ましい。
【0018】
本発明のイースト含有冷凍生地中の油脂類の使用量は、特に制限されるものではないが、生地中の穀粉合計質量を100質量部としたとき、好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは5~25質量部、よりさらに好ましくは10~20質量部の質量で用いた場合に、本発明の効果が顕著になりやすい。
また、本発明のイースト含有冷凍生地中の糖類含量は、穀粉合計質量100質量部に対し、3~20質量部であることが好ましく、5~15質量部程度であることがさらに好ましい。
【0019】
本発明のイースト含有冷凍生地は、従来のベーカリー食品の食感改善剤(乳化剤、増粘剤など)を配合しなくても、ソフトでしっとりとした食感を得ることができる。従って、本発明のイースト含有冷凍生地は食感改善剤を含んでいても含まなくてもよい。本発明のイースト含有冷凍生地の好ましい一つの態様は、食感改善剤を含まない生地である。
【0020】
イースト含有冷凍生地は、上述の材料をミキサー等で混合(混捏)して製造される。
本発明のイースト含有冷凍生地は少なくとも以下の工程を含む方法により製造することができる:
上述のイースト含有冷凍生地用小麦粉組成物又はイースト含有冷凍生地用プレミックス粉とイーストとを少なくとも含む混合物に加水する工程であって、前記加水量が、生地中の穀粉合計質量100質量部に対し、35~55質量部である工程、
前記加水混合物を混捏し、発酵させてイースト含有生地を製造する工程、及び
前記イースト含有生地を冷凍する工程。
【0021】
また、さらに柔らかくしっとりとした食感のパンやイーストドーナツ等のベーカリー製品を得るために、小麦粉を水和させる工程を追加することも可能である。本発明における水和工程とは、あらかじめ小麦粉と液体原料とを混合して一定時間以上保持して小麦粉を水和させることである。このような水和工程を含むベーカリー製品の製造方法としては中種法、中麺法、老麺法、これらをアレンジした各種の亜法が知られている。水和時間に特に制限はなく、水和時間の延長と共に食感改良効果が得られる。しかし、18時間以上になると生地が柔らかくべたつく傾向になるため、作業性の観点から望ましくない。水和工程において、本発明の効果が損なわれない範囲で小麦粉以外の粉末原料を小麦粉と共に水和工程に供しても問題ない。
冷凍工程は当該技術分野において通常行われている条件、手法により行うことができる。冷凍温度は目的に応じて適宜決定することができるが、通常、-15~-50℃程度であり、-20~-40℃であることが好ましい。この際、氷の結晶が成長するとイースト含有生地の組織やイーストが極力損傷を受けないようにするために、氷結晶が最も成長する最大氷結晶生成帯(-1~-5℃付近)を速やかに通過するようにイースト含有生地を急速冷凍することが望ましい。
【0022】
<ベーカリー製品>
本発明のベーカリー製品は、上記イースト含有冷凍生地を必要に応じて解凍及び成形し、これを加熱調理してなるものである。冷凍生地を解凍せずに加熱調理してもよい。冷凍前に成形しておいてもよい。
本発明におけるベーカリー製品には、イーストドーナツ、あるいは食パン、菓子パン、ロールパン、ベーグル、クロワッサン等のパン類を含むイーストを用いて製造されるベーカリー食品が挙げられる。
【0023】
冷凍生地の加熱調理において、加熱温度や加熱時間に特に制限はないが、製品の種類によって適宜変えることができる。加熱調理には、焼成やフライが揚げられる。
焼成は、例えば、フライパン、ホットプレートあるいはオーブン等による焼成であってもよい。ホットプレートによる焼成を行う場合、その時間と温度は限定されるものではないが、例えば150~250℃で数十秒~数分程度である。
オーブンによる焼成を行う場合、その時間と温度は限定されるものではないが、例えば150~250℃で数分~数十分程度である。
フライにおいて、その時間と温度に特に制限はなく、例えば150~250℃で数十秒から数分程度である。
【実施例
【0024】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0025】
製造例1 イーストドーナツ用冷凍生地及びイーストドーナツの製造
下記配合表にしたがって、標準的な小麦粉を使用した標準的な冷凍イーストドーナツ生地を製造した。表1にその配合を示した。標準的な小麦粉として、クイン(日本製粉社製)を使用した。
ショートニングを除く資材をミキサー(エスケーミキサー社製SK-20型ミキサー)に投入し、フックを使用して1速2分、3速4分で混合した後、ショートニングを加えてさらに1速2分、3速8分混合し、生地を得た。この生地を18℃、相対湿度75%で20分休ませたのち、45g/個となるようにドーナツカッターでリング状に分割成形した。続いて庫内温度-30℃のバランスフリーザー(大森冷凍工業社製急速凍結庫BF-1DHU)で15分間急速冷凍してイーストドーナツ用冷凍生地を得た。
得られた冷凍生地を-20℃で30日間保管した後、表2に記載の条件で解凍、予熱及びホイロ(発酵)し、10分間のラックタイムののちに片面60秒ずつ、合計120秒間フライした後に油きりしてイーストドーナツを得た。
【0026】
表1. 冷凍イーストドーナツ生地の配合
標準的な小麦粉として、クイン(日本製粉社製)を使用した。
【0027】
表2. 冷凍イーストドーナツ生地の発酵方法
【0028】
評価例1 イーストドーナツの評価
製造例1に従って製造したイーストドーナツの粗熱を取った後、10名の熟練パネラーにより下記評価基準表にしたがって食感を評価した。なお、製造例1に従って、標準的な小麦粉を用いて製造したイーストドーナツの食感を3点とし(比較例5)、生地を冷凍しないスクラッチ製法で製造したイーストドーナツの食感を5点とした(参考例1)。スクラッチ製法のイーストドーナツ生地の作業性を3点とした(参考例1)。
なお、比較例5の食感(内層及び外層)を3点としたのは、標準的な小麦粉を用いた冷凍生地から製造したイーストドーナツの中で最も食感の評価が高かったからである。
また、参考例1の食感を5点としたのは、生地を冷凍せずに作成されたイーストドーナツが目標となるイーストドーナツの食感だからである。
【0029】
表3. 評価基準表
【0030】
試験例1 加水量の検討
標準的な小麦粉(クイン:日本製粉社製)又はGA-SA小麦粉を使用し、下記表4記載の加水量にした以外は製造例1に従ってイーストドーナツを製造し、評価した。結果を表4に記載する。
比較例5は、標準的な小麦粉を使用したイーストドーナツ用冷凍生地であり、加水量は小麦粉100質量部に対して53質量部である。
参考例1は、スクラッチ製法によるイーストドーナツであり、イーストドーナツ生地を冷凍することなく予熱及びホイロし、ラックタイムの後にフライした。なお、加水はスクラッチ製法の標準的な加水量(小麦粉100質量部に対して水58質量部)で行った。
【0031】
標準的な小麦粉を使用した場合、比較例3~5では加水量の減少に伴って硬く且つボリュームのない内層のイーストドーナツになった。比較例4の作業性は比較例5と大差なかったが、比較例3は加水が少ないため生地がやや硬くなり、やや伸展性が悪かった。比較例1及び2では加水量が少な過ぎたため生地がまとまらず成形できなかったので食感及び生地性の評価ができなかった。スクラッチ法と同じ加水量にした比較例6では、冷凍障害が出たために硬くボリュームのない内層になった。
GA-SA小麦粉を使用した実施例2~5では、内層が柔らかくボリュームのあるイーストドーナツであり、特に実施例3ではスクラッチ製法のイーストドーナツと遜色ない食感であり、実施例3の作業性は標準的な冷凍生地である比較例5と同等であった。実施例5では、やや柔らかいために作業性の悪い生地であったが、イーストドーナツの製造に難はなく、また、やや吸油が増えたためか外層部の表面(皮部)のみがわずかに硬くなり、内層と外層等の食感にコントラストのあるものであり、消費者の嗜好性によっては好まれるものである。実施例1は、加水量が同じである比較例1が製造不可であることと対比すると良好なものであるといえる。
【0032】
表4. 加水量

【0033】
試験例2 小麦粉配合比の検討
標準的な小麦粉(クイン:日本製粉社製)とGA-SA小麦粉を表5記載の配合割合にし、作業性が実施例3と同等になるように加水量を調節した以外は製造例1に従ってイーストドーナツを製造し、評価した。その結果を表5に記載する。
その結果、GA-SA小麦粉を小麦粉全量に対して20質量部使用した場合には、加水量が低いにも関わらず作業性は良いが、GA-SA小麦粉を入れた効果が十分に発揮されず、食感(内層及び外層)は普通~やや硬いという評価であり、ボリュームも若干小さいものであった(比較例7)。GA-SA小麦粉を小麦粉全量に対して少なくとも30質量部以上使用することで、加水量を低減しつつも比較例5の標準的な冷凍イーストドーナツ用生地をフライして得られるイーストドーナツよりも優れた食感になることがわかった。
【0034】
表5. 小麦粉配合量
【0035】
製造例2 パン用冷凍生地及びパンの製造
表6記載の配合表にしたがって、標準的な小麦粉を使用した標準的な冷凍パン生地を製造した。標準的な小麦粉として、クイン(日本製粉社製)を使用した。
ショートニングを除く資材をミキサー(エスケーミキサー社製SK-20型ミキサー)に投入し、フックを使用して1速2分、2速3分、3速1分で混合した後、ショートニングを加えてさらに1速1分、2速3分、3速6分で混合し、生地を得た。この生地を20℃、相対湿度75%で10分休ませたのち、50g/個となるように丸型に成形した。続いて-40℃のバランスフリーザー(大森冷凍工業社製急速凍結庫BF-1DHU)で20分間急速冷凍してパン用冷凍生地を得た。
得られた冷凍生地を-20℃で30日間保管した後、表7に記載の条件で解凍及びホイロ(発酵)し、上火230℃、下火200℃のオーブンで12分焼成して丸型パンを得た。
【0036】
表6.冷凍パン生地の配合
【0037】
表7.冷凍パン生地の発酵方法
【0038】
評価例2 パンの評価
製造例2に従って製造したパンの粗熱を取った後、10名の熟練パネラーにより下記評価基準表にしたがって食感を評価した。なお、製造例2に従って、標準的な小麦粉を用いて製造したパンの食感を3点とし(比較例11)、生地を冷凍しないスクラッチ製法で製造したパンの食感を5点とした(参考例2)。スクラッチ製法のパン生地の作業性を3点とした(参考例2)。
なお、比較例11の食感(内層及び外層)を3点としたのは、標準的な小麦粉を用いた冷凍生地から製造したパンの中で最も食感の評価が高かったからである。
また、参考例2の食感を5点としたのは、生地を冷凍せずに作成されたパンが目標となるパンの食感だからである。
【0039】
表8. 評価基準表
【0040】
試験例3 加水量の検討
標準的な小麦粉(クイン:日本製粉社製)又はGA-SA小麦粉を使用し、下記表9記載の加水量にした以外は製造例2に従ってパンを製造し、評価した。結果を表9に記載する。
比較例11は、標準的な小麦粉を使用したパン用冷凍生地であり、加水量は小麦粉100質量部に対して49質量部である。
参考例2は、スクラッチ製法によるパンであり、パン生地を冷凍することなくホイロした後に焼成した。なお、加水はスクラッチ製法の標準的な加水量(小麦粉100質量部に対して水55質量部)で行った。
その結果、標準的な小麦粉を使用した場合、比較例9、10では加水量の減少に伴って硬くかつボリュームのないパンになった。比較例10の作業性に難はなかったが、比較例9は加水が少ないために生地がやや硬くなり、やや伸展性が悪かった。比較例8では加水量が少なすぎて生地がまとまらず成形できなかったので食感及び生地性の評価が出来なかった。
GA-SA小麦粉を使用した実施例9~12では、柔らかくボリュームのあるパンであった。特に実施例10ではスクラッチ製法のパンである参考例2と遜色ない食感であり、実施例10の作業性は標準的な小麦粉を使用した冷凍生地である比較例11の作業性と同等であった。実施例12の生地は、やや柔らかいために作業性の悪い生地であったが、パンの製造に難はなかった。実施例9は、加水量が同じである比較例8が製造不可であることと対比すると相当に良好なものであるといえる。加水量を55質量部にした実施例13では、冷凍障害が生じたためにやや硬くなりボリュームのないパンであったが、標準的な小麦粉で加水量を55質量部とした場合と比較すると良好であった。
【0041】
表9. 加水量