(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】ケーキ類生地及びケーキ類の製造方法
(51)【国際特許分類】
A21D 2/34 20060101AFI20240129BHJP
A21D 2/30 20060101ALI20240129BHJP
A21D 8/06 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
A21D2/34
A21D2/30
A21D8/06
(21)【出願番号】P 2019194106
(22)【出願日】2019-10-25
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000187079
【氏名又は名称】昭和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154597
【氏名又は名称】野村 悟郎
(72)【発明者】
【氏名】水野 陽太
(72)【発明者】
【氏名】高橋 翔大
【審査官】吉森 晃
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-000036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D 2/34
A21D 2/30
A21D 8/06
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
卵白を含む材料を泡立てて中間生地を調製する工程、及び
前記中間生地に、穀粉及び/又はでん粉類からなる穀粉類材料、並びに起泡性乳化油脂を含むその他の材料を加えて撹拌してケーキ類生地を調製する工程を含み、
前記中間生地の比重が、0.25
超~0.40g/cm
3であることを特徴とするケーキ類生地の製造方法。
【請求項2】
前記中間生地が、糖類を15~60質量%含有する請求項1に記載のケーキ類生地の製造方法。
【請求項3】
前記穀粉類材料の配合量が、前記中間生地100質量部に対して、100~300質量部である請求項1又は2に記載のケーキ類生地の製造方法。
【請求項4】
前記起泡性乳化油脂の配合量が、前記ケーキ類生地に基づいて、1~4質量%である請求項1~3のいずれか1項に記載のケーキ類生地の製造方法。
【請求項5】
前記ケーキ類生地の比重が、0.70g/cm
3以下である請求項1~4のいずれか1項に記載のケーキ類生地の製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法によって得られるケーキ類生地を加熱する工程を含むケーキ類の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーキ類生地の製造方法に関し、別立て法の特徴を有するケーキ類を簡便且つ安定的に製造できる製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スポンジケーキ等のケーキ類生地の製造方法には、卵白と卵黄を別々に泡立てて作る「別立て法」、全卵を泡立てて作る「共立て法」、及び全ての材料を同時に合わせて泡立てる「オールインミックス法」がある。一般に、別立て法によってケーキ類を作製すると、別立て法特有の横に開いたやや大きめなキメの気泡を有し、弾力、ふんわり感、及びしっとり感を有する食感のケーキ類が得られる。しかし、作り方が非常に煩雑であることに加え、泡立てた卵白(いわゆる「メレンゲ」)の気泡は消泡し易いため、熟練の技術が必要とされ、工業的な大量生産ラインに適さない製造方法である。一方、共立て法は、別立て法と比べると簡便であり、安定した生地を作り易いが、得られるケーキ類がややパサつきを感じやすい食感になる傾向がある。オールインミックス法は、多くの製菓工場で行われている最も簡便な製造方法であり、連続的に安定した生地を作り易いが、ミキシングの最終段階で小麦粉を加える別立て法及び共立て法と異なり、ミキシング開始時から小麦粉を加えるため、グルテンが形成されやすく、他の製造方法で得られたケーキ類に比べてくちゃつきを感じやすい食感になる傾向がある。
【0003】
オールインミックス法については、さらに食感の改善等のため、種々の開発が行われている。例えば、特許文献1では、オールインミックス法により製造しても焼成品がネトついた食感を呈することのないケーキ類の製造法、及びかかるケーキ類を製造するのに適したオールインミックスが可能な製菓用油脂組成物を提供することを目的とし、ケーキ類を製造するに際し、原料配合中に加熱によりゲルを形成するゲル化剤を添加併用することを特徴とする、ケーキ類の製造法が開示されている。また、特許文献2では、スフレのように食感がふんわりで、かつしっとりとみずみずしくて、口解けが良く、しかも従来のスフレには必須であったメレンゲの添加を削減もしくは特に添加を必要とせず、平易かつ安定的に、さらには大量生産をすることができるスフレ様菓子ならびにそのスフレ様生地の製造法を提供する事を目的とし、卵類、糖類及び澱粉性原料を含む生地を含気させた生地(A)に塑性乳化物(B)を加配するスフレ様生地(C)の製造法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平04-173047号公報
【文献】特開2010-233558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これまで開発された簡便な方法でも、卵白を泡立ててメレンゲを別途調製する別立て法によって得られるような特有のキメの気泡を有し、弾力、ふんわり感、及びしっとり感を有する食感のケーキ類を十分に再現することは困難であり、さらなる開発が望まれている。
【0006】
したがって、本発明の目的は、別立て法によって得られるような、特有の横に開いたやや大きなキメの気泡を有し、弾力、ふんわり感、及びしっとり感を有する食感のケーキ類を、簡便、且つ安定的に、工業的な大量生産ラインにおいても製造できるケーキ類生地及びケーキ類の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、卵白を泡立ててメレンゲを調製する際、所定の比重にし、その後、所定の材料を含むその他の材料をそのまま(別に生地化する工程を必須とせずに)加えても、安定性の高いケーキ類生地を調製できることを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、上記目的は、卵白を含む材料を泡立てて中間生地を調製する工程、及び前記中間生地に、穀粉及び/又はでん粉類からなる穀粉類材料、並びに起泡性乳化油脂を含むその他の材料を加えて撹拌してケーキ類生地を調製する工程を含み、前記中間生地の比重が、0.25超~0.40g/cm3であることを特徴とするケーキ類生地の製造方法によって達成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、卵白を泡立ててメレンゲを別途調製する別立て法によって得られるような、特有の横に開いたやや大きめなキメの気泡を有し、弾力、ふんわり感、及びしっとり感を有する食感のケーキ類を、簡便、且つ安定的に、工業的な大量生産ラインにおいても製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例におけるケーキ類の内相の評価基準を説明するための写真である。いずれも同一のスケール(1.8×1.2cm)でケーキの内相を撮影したものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のケーキ類生地の製造方法は、卵白を含む材料を泡立てて中間生地を調製する工程、及び前記中間生地に、穀粉及び/又はでん粉類からなる穀粉類材料、並びに起泡性乳化油脂を含むその他の材料を加えて撹拌してケーキ類生地を調製する工程を含み、前記中間生地の比重が、0.25~0.4g/cm3であることを特徴とする。前記中間生地は、上述の通り、一般にメレンゲともいい、別立て法の場合、通常、0.1~0.2g/cm3程度の比重に泡立てて調製される。別立て法の場合は、メレンゲを、別に作製した卵黄や全卵を含む生地と混ぜ合わせ、その後、小麦粉等を混ぜ合わせ、さらに溶かしバターなどの油脂類を加えてケーキ類生地を調製する。後述する実施例で示す通り、このような通常の比重のメレンゲに、卵黄、全卵、砂糖、小麦粉等のその他の材料を別途生地化せずに、そのまま加えて撹拌した場合、メレンゲの気泡が消失してしまい、得られるケーキ類生地の安定性が低くなったり、メレンゲがうまく混合されずに偏在してしまうことで食感及び外観が悪化する。また、その他の材料として起泡性乳化油脂を含まない場合も、生地の安定性が低くなる。本発明においては、上記範囲の比重になるように泡立てて前記中間生地を調製するとともに、起泡性乳化油脂を含むその他の材料を用いることで、前記中間生地に、その他の材料をそのまま加えても、気泡が消失し難く、安定性が高い良好なケーキ類生地を得ることができる。これにより、複数のミキサーボウルを使用する必要なく、簡便、且つ安定的にケーキ類生地が得られるため、工業的な大量生産ラインでも適用可能な製造方法で、別立て法によって得られるような特有のキメの気泡を有し、弾力、ふんわり感、及びしっとり感を有する食感のケーキ類を製造することができる。この作用機作は明確ではないが、前記中間生地の泡立ての程度を通常よりも抑えることで、その他の材料との親和性が良好になり、起泡性乳化油脂を配合することで、さらに気泡を安定させることができるためと考えられる。本発明において、前記中間生地の比重は、0.30~0.35g/cm3であることが好ましい。
【0012】
本発明において、前記中間生地は、卵白を含む。卵白(生卵白:水分約90質量%)は40質量%以上含むことが好ましい。卵白としては、生卵白、殺菌液卵白、凍結卵白、乾燥卵白等を使用することができる。本発明の効果を損なわない限り、卵白の他、通常メレンゲを調製する際に用いる材料を適宜配合することができる。前記中間生地に配合される卵白以外の材料としては、砂糖(上白糖、グラニュー糖、粉糖、ざらめ、和三盆、三温糖等)、ぶどう糖、果糖、マルトース、トレハロース等の糖類;デキストリン、オリゴ糖、粉末水あめ、糖アルコール等の糖類以外の糖質;果汁;香料;ゼラチン、ホエーたん白、アルブミン等のたん白質;増粘多糖類等の添加剤;食塩;酒石酸水素カリウム等が挙げられる。本発明においては、より安定性の高い中間生地を調製するため、前記中間生地が、糖類を15~60質量%含有することが好ましく、25~55質量%含有することがさらに好ましく、35~55質量%含有することが特に好ましい。本発明において、糖類は砂糖が主成分である(すなわち、砂糖を50質量%以上含む)ことが好ましい。本発明において、前記中間生地の調製は、メレンゲの調製と同様に、常法に従って行うことができる。なお、前記中間生地の比重も常法に従って測定することができる。例えば、容積が100cm3である計量容器に中間生地をすり切りいっぱいに満たし、内容物の質量を測定することで算出することができる。
【0013】
本発明において、ケーキ類生地製造時に、前記中間生地を作製した後に加えるその他の材料は、穀粉及び/又はでん粉類からなる穀粉類材料、並びに起泡性乳化油脂を含む。前記穀粉類材料としては、小麦粉(薄力粉、中力粉、準強力粉、強力粉、全粒粉、デュラム小麦粉等)、大麦粉、大豆粉、そば粉、ライ麦粉、米粉、トウモロコシ粉等の穀粉;コーンスターチ、馬鈴薯でん粉、タピオカでん粉、サゴでん粉、これらのでん粉に物理的、化学的な加工を単独又は複数組み合わせて施した加工でん粉等のでん粉類が挙げられる。本発明においては、より安定性の高いケーキ類生地を得るため、前記穀粉類材料の配合量が、前記中間生地100質量部に対して、100~300質量部であることが好ましく、150~260質量部であることがさらに好ましく、180~210質量部であることが特に好ましい。本発明において、前記その他の材料が、起泡性乳化油脂を含むことにより、さらに気泡を安定させ、安定性の高いケーキ類生地を得ることができるため、前記ケーキ類生地が、起泡性乳化油脂を1~4質量%含有することが好ましく、1.5~3.5質量%含有することがさらに好ましく、2~3質量%含有することが特に好ましい。起泡性乳化油脂は、油脂及び乳化剤を、糖類、水等の混合物中に分散させたものである。起泡性乳化油脂としては、市販品を適宜選定して使用することができ、ハイロフティ、マリッシュゴールド(花王株式会社);リョートーエステルSP(三菱ケミカルフーズ株式会社);パティグラース-300、パティグラース-500(理研ビタミン株式会社);ジセル30、ジセル100(日清オイリオグループ株式会社製)、トルテ(株式会社ADEKA)などを例示できる。
【0014】
本発明において、前記穀粉類材料及び起泡性乳化油脂以外のその他の材料としては、本発明の効果を損なわない限り、通常ケーキ類を製造する際に用いる材料を適宜配合することができる。例えば、砂糖、デキストリン、オリゴ糖、ぶどう糖、粉末水あめ、糖アルコール等の糖質;マーガリン、ショートニング、バター、粉末油脂、液状油等の油脂類(前記起泡性乳化油脂を除く);液卵黄、凍結卵黄、乾燥卵黄、液全卵、凍結全卵、乾燥全卵等の卵類;脱脂粉乳、牛乳、ヨーグルト、チーズ等の乳製品;グアガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、キサンタンガム等の増粘多糖類;炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム等のガス発生剤;ガス発生剤と組み合わせて膨張剤として用いる酒石酸、酒石酸水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、フマル酸、フマル酸ナトリウム、グルコノデルタラクトン等の酸性剤;グリセリン脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤;有機酸、有機酸塩等のpH調整剤;水;食塩;色素;香料;甘味料;種々の品質改良剤等が挙げられる。
【0015】
ケーキ類生地を調製する際は、前記中間生地に、上述のその他の材料(篩や網でダマや塊を除去することが好ましい)を、別々に加えて撹拌してもよく、その他の材料の一部、又は全部を予め混合してから加えて撹拌してもよい。本発明においては、中間生地に、その他の材料を別途生地化せずに加えて撹拌しても、安定性が高い良好なケーキ類生地を得ることができ、簡便性の点で好ましい。本発明において、より安定性の高いケーキ類生地とするため、前記ケーキ類生地の比重は、0.70g/cm3以下であることが好ましく、0.40~0.60g/cm3であることがさらに好ましく、0.45~0.55g/cm3であることが特に好ましい。
【0016】
本発明はまた、本発明の製造方法によって得られるケーキ類生地に関する。本発明のケーキ類生地は、卵白を含む中間生地を調製して、その中間生地にその他の材料を加えて撹拌するという簡便な方法で製造されるにもかかわらず、気泡が壊れ、減少することが抑制された安定性の高いケーキ類生地である。
【0017】
また、本発明は、本発明の製造方法によって得られるケーキ類生地を加熱する工程を含むケーキ類の製造方法、及びその製造方法によって得られるケーキ類に関する。本発明の製造方法によって得られるケーキ類生地を、焼成、油ちょう、蒸し、電子レンジ加熱等で加熱することによって、別立て法によって得られるような特有のキメの気泡を有し、弾力、ふんわり感、及びしっとり感を有する食感のケーキ類を製造することができる。本発明において、ケーキ類は、スポンジ様の内相を有するものであれば、特に制限はない。例えば、スポンジケーキ、ブッセ、パンケーキ、スフレケーキ、ケーキドーナツ、蒸しケーキ等が挙げられる。
【実施例】
【0018】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
1.ケーキ類の各種製造方法
(1)別立て法(参考例1)
(a)表1に示した配合で、中間生地(メレンゲ)を調製する。具体的には卵白をミキサーで泡立てながら、砂糖を1/3量ずつ加えて最終的に表1に示した比重に泡立てる。
(b)表1に示した配合で、(a)とは別のボウルを用いて、まず卵黄をミキサーで溶き、砂糖を加え、湯せんにかけながら泡立てる。なお、生地温度が人肌程度になったら湯せんから外して泡立てる。
(c)泡立てた卵黄生地(b)に(a)のメレンゲを1/4程度入れ、ゴムべらで混ぜ合わせて、卵黄生地を軟らかくしてから、残りのメレンゲと混ぜ合わせる。その後、篩った小麦粉を生地の全面に散らすように振り入れ、気泡をつぶさないように手早く混ぜ合わせ、液体油脂を加えてさらに混ぜ合わせる。ケーキ類生地の最終比重は、表1に示した通りである。
(d)得られたケーキ類生地を6号丸型に350g入れ、180℃で35分間焼成する。
(2)共立て法(参考例2)
(a)表1に示した配合で、まず全卵をミキサーで溶き、砂糖を加え、湯せんにかけながら泡立てる。なお、生地温度が人肌程度になったら湯せんから外して泡立てる。その後、篩った小麦粉を生地に散らすように振り入れ、ゴムべらで手早く混ぜ合わせ、液体油脂を加えてさらに混ぜ合わせる。ケーキ類生地の最終比重は、表1に示した通りである。
(b)得られたケーキ類生地を6号丸型に350g入れ、180℃で35分間焼成する。
(3)オールインミックス法(参考例3)
(a)表1に示した配合で、全ての材料をミキサーで混ぜ合わせる。ケーキ類生地の最終比重は、表1に示した通りである。
(b)得られたケーキ類生地を6号丸型に350g入れ、180℃で35分間焼成する。
(4)本願実施例及び比較例
(a)表1~表4に示した配合で、中間生地を調製する。具体的には、卵白をミキサーで軽くほぐした後、砂糖を全量加えて最終的に表1~表4に示した比重に泡立てる。
(b)表1~表4に示した配合で、全ての材料を(a)の中間生地に投入し、ミキサーで混ぜ合わせる。ケーキ類生地の最終比重は、表1~表4に示した通りである。生地捏上温度は20~25℃程度になるよう調整した。
(c)得られたケーキ類生地を6号丸型に350g入れ、180℃で35分間焼成する。
2.中間生地比重及び最終生地比重の測定方法
容積が100cm3である計量容器に、中間生地またはケーキ類生地をすり切りいっぱいに満たし、内容物の質量を測定し算出した。
【0019】
3.ケーキ類生地、及びケーキ類の評価
(1)生地安定性
各ケーキ類生地を調製後、60分間静置した後の比重を測定し、最終比重からの変化(比重が大きくなる)幅を求め、以下の基準で評価した。
5:0.01未満(生地安定性が非常に高い)
4:0.01~0.03(生地安定性が高い)
3:0.03~0.05(生地安定性がやや高い)
2:0.05~0.07(生地安定性がやや低い)
1:0.07超(生地安定性が低い)
(2)食感
各ケーキ類の焼成後、室温に置いて冷却した後、以下の評価基準で食感を評価した。評点は、訓練を受けた専門のパネル5名で合議して決定した。
5:非常にふんわり感が強い
4:ふんわり感が強い
3:ややふんわり感が強い
2:ややふんわり感が弱い
1:ふんわり感が弱い
(3)内相
各ケーキ類の焼成後、室温に置いて冷却した後、断面を観察して内相を評価した。評価は、
図1(a)に示した別立て法(参考例1)による内相(横に開いたやや大きなキメ)を5点、
図1(b)に示したオールインミックス法(参考例3)による内相(丸く細かく、詰まったキメ)を1点として、1~5点の評点をつけた。評点は、訓練を受けた専門のパネル5名で合議して決定した。
【0020】
【0021】
表1に示した通り、卵白を含む材料を泡立て、比重が、0.30g/cm3になるように中間生地を調製し、前記中間生地に、穀粉類材料(小麦粉)及び起泡性乳化油脂を含むその他の全ての材料を加えて撹拌してケーキ類生地を調製する実施例1の方法で得られたケーキ類生地は、生地安定性が非常に高く、焼成したケーキ類の食感、内相の評価も非常に良好であった。一方、卵白と卵黄を別々に泡立ててから混合して生地を調製する参考例1の別立て法では、焼成したケーキ類の食感及び内相の評価は非常に良好であったが、生地安定性が低かった。全卵を泡立ててから生地を調製する参考例2の共立て法でも焼成したケーキ類の食感及び内相の評価は比較的良好であったが、生地安定性が低かった。また、全ての材料を混ぜ合わせる参考例3のオールインミックス法では、生地安定性は非常に高かったが、焼成したケーキ類の食感の評価は、別立て法、共立て法の場合より劣り、内相の評価は低かった。したがって、本願方法によれば、オールインミックス法と同等の生地安定性を有し、別立て法と同等の食感及び内相を有するケーキ類を焼成可能な、ケーキ類生地を調製できることが示された。
【0022】
【0023】
表2は、実施例1の方法において、中間生地の比重を変えてケーキ類生地を調製し、中間生地の比重の影響を調べた結果である。表2に示した通り、中間生地の比重が0.25g/cm3の実施例2、及び0.40g/cm3の実施例3では、生地安定性が良好であり、食感及び内相の評価も良好であった。一方、中間生地の比重が0.15g/cm3の比較例1では、生地安定性が低くなり、食感及び内相の評価も低下し、0.45g/cm3の比較例2でも、生地安定性及び食感の評価が低下し、内相の評価が低かった。したがって、中間生地の比重は、0.25~0.40g/cm3であることが必須であることが示唆された。
【0024】
【0025】
表3は、実施例1の方法において、中間生地における糖類の含有量、その他の材料として、穀粉類材料の配合量、起泡性乳化油脂の配合量を変えてケーキ類生地を調製し、各材料の配合量の影響を調べた結果である。表3に示した通り、中間生地における糖類(砂糖)の含有量が、16.7質量%の実施例4、及び58.3質量%の実施例5でも生地安定性が良好なケーキ類生地が得られ、食感及び内相が良好なケーキ類が得られることが認められた。これらの評価結果からは、中間生地における糖類の含有量は、15~60質量%であることが好ましいことが示唆された。また、中間生地100質量部に対する穀粉類材料の配合量が333質量部の実施例4、250質量部の実施例6、及び100質量部の実施例7でも生地安定性が良好なケーキ類生地が得られ、食感及び内相が良好なケーキ類が得られることが認められた。これらの評価結果からは、穀粉類材料の配合量は、前記中間生地100質量部に対して、100~300質量部であることが好ましいことが示唆された。さらに、起泡性乳化油脂の配合量については、ケーキ類生地全体に基づいて、1.4質量%配合した実施例8、及び3.7質量%配合した実施例9でも生地安定性が良好なケーキ類生地が得られ、食感及び内相が良好なケーキ類が得られることが認められた。一方、起泡性乳化油脂を配合していない比較例3では、生地安定性が低く、食感及び内相の評価も低かった。これらの評価結果から、起泡性乳化油脂の配合は必須であり、ケーキ類生地における、起泡性乳化油脂の含有量は、1~4質量%であることが好ましいことが示唆された。
【0026】
【0027】
表4は、実施例1の方法において、ケーキ類生地の最終比重を変えて、ケーキ類生地を調製し、ケーキ類生地の比重の影響を調べた結果である。表4に示した通り、ケーキ類生地の最終比重が0.35g/cm3の実施例10、0.40g/cm3の実施例11、0.60g/cm3の実施例12、及び0.70g/cm3の実施例13でも生地安定性が良好なケーキ類生地が得られ、食感及び内相が良好なケーキ類が得られることが認められた。これらの評価結果から、ケーキ類生地の比重は0.70g/cm3以下が好ましく、0.40~0.60g/cm3がさらに好ましいことが示唆された。
【0028】
以上により、卵白を含む材料を泡立てて中間生地を調製する工程、及び前記中間生地に、起泡性乳化油脂を含むその他の材料を加えて撹拌してケーキ類生地を調製する工程を含み、前記中間生地の比重が、0.25~0.40g/cm3であることを特徴とするケーキ類生地の製造方法によって、卵白を泡立ててメレンゲを別途調製する別立て法によって得られるような特有のキメの気泡を有し、また弾力、ふんわり感、及びしっとり感を有する食感のケーキ類を、簡便、且つ安定的に製造することができることが示された。
【0029】
なお、本発明は上記の実施の形態の構成及び実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明により、卵白を泡立ててメレンゲを別途調製する別立て法によって得られるような、特有の横に開いたやや大きめなキメの気泡を有し、弾力、ふんわり感、及びしっとり感を有する食感のケーキ類を、簡便、且つ安定的に、工業的な大量生産ラインにおいても製造することができる。